平成19年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(片桐章浩議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)
○片桐章浩君 おはようございます。
 ただいま議長からお許しをいただきましたので、通告に従いまして、今回は和歌山県の防災対策について一般質問を行います。どうかよろしくお願いいたします。
 さて、地震対策というのは、そのうち行えばいいと、こういうもんではなくて、今起きたとしても県民の皆様方の生命の保全を図れること、これを前提として対策を講じるべき、こういう問題だと思います。
 既に県では、耐震診断、建物改修についての施策は実施されているところでありますが、それと比較しておくれていると感じるのが事前対策であります。過去にも、事前対策、いわゆる室内対策なんですが、県議会で取り上げられたこともありますが、どうも具体化されていない、そういうふうに感じます。
 ことし2月、本会議で知事は、防災対策は県政の最重要課題の1つに位置づけている、このようにお答えをした上で、本庁舎、警察本部、総合庁舎あるいは学校施設、こういったものに関して平成22年度までに耐震化を図ると答弁されています。しかし、室内対策については具体的には触れられていませんでした。
 ところが、室内対策というのは建物の耐震化、耐震補強と同じように生命を守る上で重要な事前対策なのです。例えば阪神・淡路大震災、これを例にとりますと、国土交通省のデータに基づいたところによりますと、死因の原因の約80%、これは家屋、家具の倒壊による圧死、また日本建築学会によりますと、負傷原因の約50%は家具の転倒と落下、なお30%がガラスの破損によるもの、こう報告されております。このように家具や備品に地震が発生したときの危険が潜んでいるわけですから、これらに対する事前対策が建物改修と同様に重要性があると言えます。
 ここで事前対策といいますのは、3つあります。室内における転倒防止、落下防止、ガラスの飛散防止、この3つでありますから、たとえ耐震構造を施した家屋であっても、家具やテレビなどの転倒、ガラスの飛散対策、こういったものがなければ事前対策は不十分、このように言えると思います。つまり、大震災による大きな揺れが発生すると、耐震補強している建物であっても、室内で固定していないものは、移動する、倒れる、こういったレベルではなく、飛んでくる、こういう状況になります。生活環境の中にある家具や室内の備品が凶器となり飛び交い、私たちを直撃したり、下敷きになって犠牲者が出る、こういうおそれがあるわけです。
 また、備品内に収納していたもの、あるいはガラス、こういったものの散乱で避難するときに負傷すること、こういったことも考えられます。さらに、転倒した備品類が避難経路をふさいだりドアの開閉を妨げたりして避難できなくなると、こういうおそれも出てくるわけです。
 防災対策の先進県と言われている静岡県、ここではこういったコメントがあります。「津波やがけ崩れ対策としては、一刻も早く避難できるかどうかにかかっている。過去に発生した地震では、部屋の中で家具が転倒し、落下物が散乱し、さらに停電でなかなか玄関までたどり着けなかったというケースがありました。つまり、家を出るまでにかなり時間がかかり、本来であれば避難に余裕がある場所にいたはずなのに避難時間がなくなってしまったケースです。一見無関係に見えますが、家の中の防災対策は津波などの対策に極めて有効です」、このように報告しております。スムーズに私たちが避難するためには事前対策がいかに大きな役割を果たしているか、これをうかがい知ることができます。
 これらの室内対策は、繰り返しますが、建物の耐震補強と同等の重要性を持ちますが、耐震補強と比較すると比較的少額で、防災対策としては極めて効果的なものであると、このように評価できると思います。ところが、防災対策の現状は、建物の倒壊を補強するために耐震補強を行えばほぼ対策は終えた、このような空気があり、室内対策は余り重点を置かれていないように思います。地震の後、建物がたとえ残ったとしても、肝心の家族がそこにいなくなってしまう、これでは何の意味もありません。
 阪神・淡路大震災は、御存じのように早朝午前5時46分に発生した地震ですから、自宅での死亡者、負傷者、これが大半でした。また、これ以外にも大きな地震は、偶然だと思いますが、土曜、日曜、祝日、こういった日に発生しておりまして、これが平日の昼間であれば職場での死傷者も発生する、こういう危険性が潜んでるわけです。ですから、家庭だけの問題ではなく、企業も含めて、あるいは職場も含めて積極的に事前対策を講じる、こういう必要があろうかと思います。つまり、建物、室内、50対50の同等の割合で対策を講じなければ安心・安全な空間は確保できないと思います。
 内閣府発行の「減災のてびき」、これによりますと、「『生き残ってから』のことよりも、『生きるため/死なないための努力』を先に行いましょう」、そのためには、「まずは、身近な空間の安全点検と必要な対策が最優先です」、このように記載されてるわけであります。
 また、今回質問するに当たりまして、中央防災会議前委員、内閣府地震防災対策強化地域判定会会長の溝上恵東京大学名誉教授にも、和歌山県が防災対策として欠けていると思われる点の指摘について御協力をいただいております。同教授によりますと、「家具類の転倒、落下防止をするだけで被害は相当防げる。市民でもできる範囲で対策をしてほしい」と所見を述べた上で、御自身が和歌浦に住んでいたこの経験からも、「和歌山県は直下型についても危ない地域なので、その対策については常日ごろから気にしている」、こう話されております。
 防災対策の要諦は、教授によりますと、事前の予防対策、直後の応急対策、これが2本柱であります。3つ目の柱、これを入れるとすれば早期検知、こういったものを辛うじて立てているとした上で、防災会計を先手必勝的な概念とセットにすべきだというふうに指摘をいただきました。
 愛知県を引き合いに出さしていただきますが、同県では「被災後の災害対策は、警察、消防、自衛隊、こういったところの役割であり、県行政としては、事後対策も当然のことですが、事前対策を実施することも復旧活動と同等に防災の目的である」、このように話されております。愛知県の方針を受けた豊田市、ここでは、予防にまさる防災対策はない、このような考え方から、平成14年度から16年度、既に公共建築物の耐震化、本庁舎と公共施設の窓ガラスの飛散防止、本庁舎と公共施設の書庫、ロッカーなど事務機器などの転倒防止、これは既に終了しております。現在は、パソコンの転倒防止策を講じるとともに、一般の門やブロック、遊具、こういったものの工作物、観光施設、文化財、展望台、こういったところの耐震改修に着手していると、進んだ活動をしております。まさに溝上教授の考え方を実践する形で対策を講じているわけであります。
 我が県におきましても、何点かの指摘がされております。
 平成18年9月、和歌山県立医科大学、ここで行われました和歌山県災害医療従事者研修会におきまして、兵庫県災害医療センターの顧問・鵜飼卓先生は「予防、事前対策にまさる治療なし。今1000万円で済むことが、災害に遭ってしまったら100億円では済まなくなる。悔いを残さないようにしてください」、このような教訓を残してくれております。
 また、平成17年、和歌山市に来てくれました当時の消防庁長官の林省吾さん──後の総務省の事務次官になられた方ですが──林さんからも、「家具の倒れの防止、それとガラスの飛散防止、これが大変大事だ」と、こう話していただいたことが思い出されます。
 このように、防災の専門家と言われる先生方からは、一様に事前対策の重要性、これの指摘がされているわけであります。
 また、内閣府の中央防災会議、ここでは、平成18年4月21日に決定された災害被害を軽減する国民運動、この推進に関する基本方針には次のような記載があります。「近年の度重なる自然災害や事件・事故により、安全・安心の価値がこれまでになく社会の中で認識されるようになってきた」として、「個人や家庭、地域、企業、団体等が日常的に減災のための行動と投資を息長く行う国民運動を展開することにより、災害の被害を軽減し、1人でも多くの人を救うことにつなげていかなければならない」、このようにされております。つまり、何度も「減災」という言葉が使われているように、減災、すなわち災害を減らす行動は、まさに事前対策でなければなし得ない予防対策だと言うべきものです。
 そこで、知事にお伺いさしていただきます。
 1点目、溝上教授は、家屋密集地帯の火災対策あるいは工業地帯の火災対策が都市が持つ共通した課題だと指摘をした上で、中央構造線による地震への対応は決して進んでいるとは言えないとされています。このように、和歌山県では和歌山市が県内で一番地盤が弱い地域だという認識の中、東南海・南海地震に関しての見解はよく聞くことがありますが、和歌山市を中心とした中央構造線による地震に関しての知事の認識と、その防災対策の考え方についてお聞かせいただきたいと思います。
 2点目、愛知県や豊田市の防災の目的と同様の考え方で、防災とは未然に災いを防ぐことであり、被害を低減する、いわゆる減災の効果が生じる事前対策でなければならないわけですが、災害が発生してから対応する災害後の処置、対策では減災にならず、人的被害を低減できません。和歌山県でも事前対策による防災対策を実行する必要性があると思いますが、この点についてどうお考えでしょうか、お答えください。
 3点目、限られた予算と手段、これをどう組み合わせて減災するのかが大切な問題ですが、そのために防災会計、この経済的概念の中で、どの順序でどこへ投入しているのでしょうか。平成20年度の防災予算の考え方についてお示しください。
 続いて、公共施設の事前対策についてお伺いします。
 大地震が発生した際には、指定された避難場所、ここに避難することになります。ただ、過去、大地震の事例では、市町村の庁舎や公民館、こういったところにも避難する事例が多くあります。ですから、その場所に事前対策が施されていないとすれば当該施設は活用できなくなる、こういうおそれがあります。
 先ほど引き合いに出しました愛知県、あるいはそのほかの地震対策先進県と言われる静岡県、三重県では、建物の耐震対策と室内対策の2つを1つとして耐震補強ととらえています。
 全国に先駆けて愛知県の豊田市──先ほどの豊田市ですが──事前対策として、転倒、落下、ガラス飛散防止、これを市民に呼びかけるとともに、本庁舎、ここも事前対策を既に実施されております。それまで、東海地震や津波、こういったものは静岡県に来ても愛知県には来ないものとされていましたが、平成14年4月、東海地震防災対策強化地域に愛知県を含めとする地域が指定され、以降、愛知県58市町村はすべて事前対策に取りかかっていると聞いております。
 そこで、質問でございます。危機管理監にお尋ねいたします。
 平成18年の9月議会におきまして危機管理監は、公共施設の室内対策の質問に対し、「耐震化だけではなく、備品等の転倒防止が欠かせず」、このように答弁されております。その後、現状と今後の取り組みについてお示しをいただきたいと思います。
 また、公助を行う側の行政機関の職場環境、これもいざというときの備えを平素から万全にしてほしいと思っております。公助を施す方々が被災に遭い、活動に支障を来すようでは、公の存在はなくなってしまいます。私たちと同様に公助を行う立場の職員の皆さんの職場環境を整備することは、公務員の皆さんにとっての自助であります。県民の皆さんよりも前に規範を示してほしいと思いますが、県庁を初めとする庁舎での事前対策についてお答えをいただきたいと思います。
 3点目、室内対策というのは物品を買うのと意味が全く違います。いわゆる高い安いの問題ではなくて、安全と県民の皆さんの生命、これを守るために実施するものです。ですから、安全だという実証データのある工法や物品、こういったものを事前対策として活用すべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか、お答えいただきたいと思います。
 続きまして、自助・公助への支援対策についてです。
 防災対策の基本は、まず家庭にあります。まず家族単位での話し合いから、自身の身は自分で守る、自助を理解、認識し、その上、御近所、自治会、職場、こういった社会環境における共助につながっていくと思います。
 平成17年度「兵庫県生活復興調査結果報告書」、ここで自助に取り組むべき課題として、家具などの転倒防止が86.6%とトップを占めております。家庭で災害が起こる前に事前の対策をしていくことが自身を災害から守り、減災することにつながる、このような意見が出ているわけであります。
 そこで、これも危機管理監にお尋ねをさしていただきます。
 県では、平成16年、県地震防災対策アクションプログラムを作成、その後、ことし3月に改定をしております。ここでは、死者数ゼロ、これを目指して、平成27年度までに最大想定死者数5000人を半減させるという減災目標と、その目標を達成するための具体的な対策が既に定められております。その中で、住宅の必要な部分、家具固定率については、平成27年度までに平成16年度の24%から51%に引き上げることを目標に定めておりますが、県民の皆さんへの周知方法と具体的支援について現状をお示しください。
 また、神戸市では、家具の固定促進事業として、高齢者や子供、障害者のいる世帯を対象に、家具固定などの室内対策に要した費用の2分の1、ただし上限は1万円となっておりますが、補助する制度を設けております。和歌山県として、国の指摘もあり、被災市が実施している室内対策への支援施策を導入する考えがありますか。この点についてお答えをいただきたいと思います。
 続きまして、病院の耐震補強と室内対策、この点についてであります。
 災害発生時には民間の児童施設、老人施設、病院に近隣の方が避難してきた、こういう事例は数多く報告されております。新潟中越沖地震の例を挙げますと、新潟県小千谷市では、小千谷市民病院内が地震によって手術室、病室、ナースセンター、院長室、すべての部屋が混乱し、病院機能は全室使用不可能となりました。たまたま隣に病院が経営する老人介護施設がありましたから、震災後も入院患者をそこに移動する、こういうことで対処できたわけですが、このように住民の方々に助けを求められ、避難施設に指定していなかった老人施設が急遽臨時避難所になった、こういう実例があります。
 阪神・淡路大震災の病院も同じような状況がありました。病院の建物が持ちこたえたとしても、病院内のモニターや手術機器類が固定されていなかったことから転倒・落下、薬は一面に飛散、注射器、注射針もばらばらになってどこに行ったかわからない、応急治療も手術もできない、こういった事例が数多く報告されております。また、医療スタッフも被災者と言えますから、医者も医療機器の下敷きになったりすれば、これはどうすることもできません。
 愛知医科大学の教授の野口宏先生は、日本集団災害医学会会長として、震災時の転倒防止、ガラス飛散防止を熱心に説いておられます。東海地方と同様に大地震の影響を受けるとされている和歌山県でも、危機感を持って具体的な取り組みが必要だと思っております。
 県も、必要とされる予算枠はいっぱいで、いつ来るかわからない災害への事前対策を講じるのは、これはもう大変なことはわかっております。しかし、人の生命に直接かかわる問題ですから、大事なことです。
 愛知県では、発生が危惧されている東海・東南海地震などの大規模地震から人の命や財産を守るために、地域ぐるみで家屋の耐震化、家具の転倒防止、ブロック塀などの安全対策に取り組むまちづくりを進めると宣言しております。事前対策が整うまで大地震が待ってくれるわけではないからです。既に静岡県では、静岡市総合病院ではこの室内対策を完了しておりますし、静岡の日赤病院、ここでは室内対策を現在実施中です。また、伊勢にあります日赤病院、こちらも室内対策を準備中。
 このように、地震が予測されている地域の病院では事の重大性をわかっているので取り組みを既に開始しているところであります。
 以下、福祉保健部長にお尋ねをしたいと思います。
 災害拠点病院や医師会、病院協会を中心に構成する災害医療対策会議等において具体的な転倒防止策について研究するとともに災害拠点病院に対しても適切な措置を講じるように指導すると、福祉保健部長は以前、議会答弁されておりますが、県内8施設の災害拠点病院の耐震補強と室内対策の現状についてお示しください。
 また、愛知県や静岡県と比べた和歌山県の災害医療にかかわる予算配分の比率についてもお答えください。
 続いて、県立医科大学附属病院の室内対策に万全を期すべきだと考えますが、この点についてはいかがでしょうか、お答えください。
 それから、最大の優先課題として、災害拠点病院の室内対策は無論のこと、69ある民間病院に対しても対策を講じる、このように働きかけてほしいところですが、これらの点について福祉保健部長の答弁をお願いしたいと思います。
 次に、学校への事前対策についてお伺いいたします。
 私たちは、災害対策ですが、自己管理、自己責任、このようにして地震に対処すべきものだと思いますが、子供たちに関しては大人が守ってあげる、この責任があります。家庭のことは家庭で、企業は企業内で対処してもらわなければなりませんが、こういった学校施設は行政が責任を持って対処していただきたい、このように思います。
 学校施設には、ピアノ、エレクトーン、テレビ、こういった重量のあるものが設備されておりますが、阪神・淡路大震災のとき、被災地のある学校ではグランドピアノが壁を突き破って外に出てしまった、こういう事例があります。また、神戸市内の幼稚園ではアップライトピアノはほとんどひっくり返ってしまった、このように報告されております。私のところにも子供を持つ保護者から、児童施設への地震の事前対策について備えは大丈夫か、こういった相談をいただいているところであります。
 そこで、教育長に質問いたします。
 県立中学校、県立高等学校における室内対策は実施されているのでしょうか。実施しているのであれば、どの点について実施しているのか。実施されていないようでしたら、今後の対応について、また、いつまでに市町村を含めて事前対策が講じられる予定なのか。この点に関してお答えをいただきたいと思います。
 残り2点であります。災害時要援護者救済、こちらへの対応についてお伺いをさしていただきます。
 国が定めている災害時要援護者とは、高齢者、障害者、乳幼児、傷病者、妊産婦、難病者、外国人、こういった方々を指すとされております。高齢者は老人福祉施設、障害者は教育委員会及び福祉施設、乳幼児は福祉保健施設、傷病者は医療法人あるいは福祉施設、こういったふうに、教育委員会を除けば県が認可した福祉法人、医療法人、このような方々が運営されている法人施設にお世話になっている、このような状況であります。
 先ほどの小千谷市での前例のように、緊急時には公的な役割を担う社会的立場として、緊急時の避難施設に指定されていないこれらの施設に対しても、平素から事前対策を講じておく必要があるのではないでしょうか。健常者の方であっても、災害が起こったときには、今まで述べましたように事前対策をしていなければ、そこにいる環境によって生命を左右されることにもなりかねないのに、要援護者の皆さんにとって何も対策を施されていない環境にいることは、どれだけ不安な状況に置かれているのか、このことを考えていただきたいと思います。1人では移動できない、介護を要する方が災害に遭われたときの過去の例からしても、それは大変な社会問題の1つであります。
 そこで、質問をさしていただきます。
 行政が認可した法人として、その施設に入園、入院されている幼児や高齢者、そして患者さんの危機対策、安全対策としても平素からの事前対策は必須であると考えますが、福祉保健部長には、県の認可された施設の現状についてお答えをいただきたいと思います。
 最後になります。企業への事業継続計画の普及、この点についてお伺いをさしていただきます。
 企業が地震対策に備える、このことにつきましては、既に上場企業を中心に緊急時事業継続計画、一般的にBCPと言われておりますが、この策定が活発化しております。BCPを一言で言いますと、企業が被災しても重要事業を中断させないこと、また、中断したとしても可能な限り短時間で再開させるための計画であります。リスクマネジメントシステム構築のための指針として受けとめられておりますが、それがすべてではなく、事業計画とともに生命の安全確保、2次災害の防止、地域貢献、地域との共生、こういったものに合わせて対応する、これも必要とされているわけであります。
 企業を1つの家庭と考えた場合、個人と同様に企業防衛を行うことは企業としての自助でもあります。企業というあるじが社長であり、社員の命を左右することになります。これは、大会社だからこそしなければならない、こういった問題ではなく、地場産業、中小企業、これらの企業に関しても同様なことが言えると思います。
 和歌山県内を調べてみすまと、株式会社オークワさん、ここが既に防災への取り組みが特にすぐれた企業として日本政策投資銀行から防災格付融資を実行されましたが、ここに続く企業は今のところまだ見当たりません。もちろん和歌山県は、最近、「県民の友」やラジオ、こういった媒体を通じてBCPについての呼びかけを県内企業にしているところでありますが、企業ではまだ具体的な取り組みに至っていない、これが現状であります。
 和歌山県内部の都市部に地震や津波が発生すれば、無防備状態の企業は一夜にして操業停止に陥り、和歌山県経済は崩壊しかねません。自然災害に対する危機意識の向上、危機管理の重要性を企業管理責任者の胸に痛感することがない限り、和歌山県の企業防衛はなかなか難しいと言えます。震災からたとえ企業が生き残れたとしても、建物がつぶれてしまえば多くの社員の生活も路頭に迷う、こういうことになるわけです。
 震災は、私たちの生活環境を奪ってしまいます。だからこそ、企業責任者の方々の意識改革は必要だと思います。大企業だけのテーマにすることなく、中小企業の生き残りの対策として自然災害の脅威、恐ろしさを認識していただき、危機意識と企業責任を真摯に学んでいただきまして、被災後に後悔しないための取り組みを今から実施していただきたいと、このように思う次第であります。
 参考までに、ことし7月16日に発生いたしました新潟県中越沖地震の震源地・柏崎市の柏崎商工会議所が会員企業2045社を対象にアンケート調査をした結果があります。回答した724社──これ、全体の35%でありますが──被害額は、直接被害71億4053万円、間接被害95億8522万円、合計いたしますと167億2575万円、雇用状況につきましては31社が従業員の方を解雇、今後の見通しについては50.8%の企業が厳しい、このように回答しているわけであります。
 このように地震が残したつめ跡の深さが明らかになっておりますが、幸い、これにしても、被災した日が海の日、祝日だったことからこの程度の被害におさまっておりますが、これが平日だったとしたら、企業の被害額、これは数倍以上になっていると思われますし、しかもこのデータは2045社のうち724社の回答ですから、実際の新潟県経済の被害額というのはこの回答以上、このようになるのではないかというふうに思えます。
 そこで、質問をさしていただきます。
 このような事例が少しでも減災されるように、県内企業の有志の皆さんに、行政指導まではいかなくても、BCPの根本的な意味と重要性を把握し、早期に事前対策を実施するように一層強く働きかけていくべきではないでしょうか。
 11月17日付の「朝日新聞」でも、「巨大地震 会社にいたら」という記事が掲載されております。東京消防庁では、日本家具オフィス協会の協力を得て、オフィスでの転倒・落下防止、これに関する指針を策定して企業への呼びかけを実施しているようであります。
 この点に関しましては商工観光労働部長の答弁をお願い申し上げまして、第1問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(中村裕一君) ただいまの片桐章浩君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御質問のうち、私に対して答弁せよというお話がありました点について御答弁申し上げます。
 まず、中央構造線による地震への対応についてということでございます。
 中央構造線による地震につきましては、国の地震調査研究推進本部によりますと、活動期間が2000年から1万2000年とされております。2000年前に一度起こったということでございまして、今後30年以内の発生確率は0から5%となっております。しかしながら、ゼロではありません。
 そこで、本県では、海溝型地震の東海・東南海・南海地震とあわせて、内陸型地震の中央構造線による地震についても被害想定調査を実施し、公表いたしました。
 この被害想定調査によりますと、和歌山市から橋本市にかけての紀の川沿いの低地で震度7の揺れが予想されるということで、和歌山市等の低地で液状化危険度が極めて高いとされているところが広く分布しております。このため、県内で最大死者数4500人、負傷者数1万3000人、全壊・焼失の建物数13万8000棟と、東海・東南海・南海地震と同程度の甚大な被害が予想されております。死者の大半が建物の倒壊と火災によるものであり、住宅の耐震化と密集市街地、狭隘道路の解消などの災害に強いまちづくりの推進が特に重要であるというふうに認識しております。
 これらを踏まえまして、県地震防災対策アションプログラムを平成19年3月に改定いたしまして、最終的には想定死者数を限りなく減少させることを目標としておりますが、平成27年度末までに半減させるという減災目標と、それを達成するための具体的な目標を定め、対策を進めておるところでございます。
 今後とも、防災対策の着実かつ迅速な実行に努め、あらゆる地震に備えてまいりたいと考えております。
 2番目に、和歌山県の事前対策ということでございます。
 防災対策の中でも事前対策が大変重要でありまして、アクションプログラムにおいても、平成27年度末までに住宅の耐震化率を67%から85%にすることや、家具の固定率を23%から51%にすることなどの具体的な数値目標を定めて取り組んでいるところであります。そのため、議員御指摘のようにいろいろな対策をとっておりますけれども、特に民間住宅の耐震助成を用意しておりますが、これが静岡などの他府県に比べますと、御利用いただいている率が極めて少ないわけでございます。逆に言うと、民間住宅の耐震化がなかなか進んでおらんということであろうかと思います。利用のしやすさを図って、これをもうそれこそなりふり構わずPRをしてるんですが、残念ながら余り進んでないということを自覚しております。
 そこで、さらに町内会などの組織を通じて、ぜひ御近所の方々に勧めてくださいということをお願いしようとしておりまして、これを関係部局に指示をしたところなんです。今後、その実行を期待していきたいと思っております。
 第3に、平成20年度防災予算の考え方についてでございます。
 今議会で議論をお願いしております新長期総合計画の素案におきまして、「県民の命と暮らしを守る安全・安心和歌山」というのを大きな柱立てにしようとしておりますが、これに向けた取り組みとして防災・減災社会の実現を位置づけているところであります。
 平成20年度予算編成の方針においても、これは過日発表いたしましたけれども、元気な和歌山を創造するためにこの県民の命と暮らしを守る安全・安心の確立を6つの柱の1つに位置づけまして、とりわけ東南海・南海地震対策の充実を重点項目にいたしまして、現在、予算編成作業を行ってるところでございます。
 引き続き、アクションプログラムに定めました減災目標をぜひ実現したいということで、効果的な対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
○議長(中村裕一君) 危機管理監杉本雅嗣君。
  〔杉本雅嗣君、登壇〕
○危機管理監(杉本雅嗣君) 防災対策に関しまして、公共施設の事前対策、室内対策についての御質問にお答えいたします。
 地震による被害を軽減するためには、議員御指摘のとおり、建物の耐震化とともにロッカーや家具類の転倒防止などの室内対策が大変重要であると認識しております。
 県庁舎などの室内対策についてでございますが、本庁舎や総合庁舎などの防災拠点施設につきましては平成22年度までに耐震化を図ることとしております。計画的に耐震化を行いまして、各課各室などの移転の関係もございますので、今後、耐震化と調整を図りながら順次計画的に室内対策に取り組む方向で関係部局と協議を行い、検討を進めてまいりたいと考えております。その際、家具などの固定が有効に行われる工法や器具などを活用した室内対策につきましては、今後、実施に当たり効果的に行うよう検討を進めてまいります。
 また、市町村の庁舎や公民館などの公共施設の室内対策につきましては、市町村防災担当課長会議などを通じ助言、指導に努めているところでございまして、今後とも引き続きさまざまな機会をとらえて市町村などの施設管理者の取り組みを促してまいります。
 次に、自助・公助への支援対策についての御質問にお答えいたします。
 県民の皆さんに取り組んでいただく住宅の室内対策を促進するため、県では、市町村と連携して自主防災組織の活動強化を図るとともに、防災講座の開催、「県民の友」やパンフレットの配布などにより県民の皆さんへの啓発を進めておりまして、今後も一層情報発信に積極的に取り組んでまいります。
 また、住民の皆さんを対象にした家具の固定促進につきましては、基本的には市町村が取り組む課題ではありますが、重要な問題でありますので、今後、市町村と十分協議してまいります。
○議長(中村裕一君) 福祉保健部長井畑文男君。
  〔井畑文男君、登壇〕
○福祉保健部長(井畑文男君) 病院への耐震補強と室内対策についてお答え申し上げます。
 災害拠点病院の耐震補強の現状につきましては、県内8病院のうち、既に耐震化されている施設が5病院、未耐震棟の建てかえ工事を計画されている施設が1病院、耐震診断を実施している施設が1病院となってございます。また、室内対策の現状につきましては、7病院で転倒防止器具を備品に設置し、壁面に固定するなどの取り組みを行っているところでございます。
 次に、災害医療にかかる他県との予算配分の比較につきましては、平成19年度の予算においては、愛知県は災害拠点病院のヘリポート整備に要する経費など約9700万円、静岡県は災害拠点病院の耐震整備に要する経費など約5700万円を計上してございます。本県の19年度予算額は約1億1900万円を計上いたしまして、民間の救急告示病院等の耐震診断や耐震整備などに取り組んでいるところでございます。
 県立医科大学附属病院の室内対策につきましては、本県における災害時の医療対策の中核施設である総合災害医療センターとして県内全域の医療救護活動を担うことから十分な対策を講じる必要があり、集中治療室等において医療機器の固定などの室内対策に取り組んでいるところでございます。今後も順次、室内対策を実施する計画となっております。
 民間病院の室内対策については、本年3月に県内の全病院に対して対策を講じるよう働きかけを行うとともに、本年7月と8月には、全病院の職員等を対象に、医療機器等の転倒防止対策の必要性等について研修会を行ってございます。今後とも、県内の医療機関の耐震化や室内対策について積極的に働きかけを行ってまいります。
 次に、災害時要援護者救済への対策についてでございますが、議員御指摘のとおり、高齢者や障害者などの方々が入所する社会福祉施設での災害の事前対策は大変重要であると認識してございます。
 社会福祉法人等が運営する施設におきましては、関係法令等により、非常災害に関する計画の作成、定期的な避難訓練の実施、地域協力体制の整備等の災害時事前対策をみずから行わなければならないとされております。県といたしましては、こうした防災対策の徹底を図るため、各施設への指導監査または実地指導におきまして、施設の避難体制や防災計画の内容の確認を行うとともに、防災対策への適正な取り組みを指導しているところであります。また、市町村に対しましても、平素から管内の福祉施設等との連携を密にし、災害発生時の連絡、情報伝達方法の整備を図るよう指導しているところでございます。
 また、児童入所施設における防災対策の補助施策といたしまして総合防災対策強化事業がございます。県といたしましては、こうした事業の活用を促進するとともに、今後ともさまざまな機会を通じ、各福祉施設管理者に対しまして、入所者や利用者の方々の不安を解消し、生命の安全確保に万全を期すよう指導してまいりたいと、そのように考えてございます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 商工観光労働部長永井慶一君。
  〔永井慶一君、登壇〕
○商工観光労働部長(永井慶一君) 企業への事業継続計画の普及についての御質問にお答えさしていただきます。
 議員御指摘のとおり、企業のオフィス、工場等が被災した場合に備えた事業継続計画の策定を普及させることは、従業員や地域住民の安全確保のみならず、災害後の県経済の復興を速やかに進める上でも重要なことであり、特に東南海・南海地震の発生可能性が高まっている本県におきましては、積極的な対応が必要であると認識してございます。
 国においては、ほぼすべての大企業と過半数の中堅企業が今後10年間に事業継続計画を策定するよう防災計画に位置づけることとなっており、同時に中小企業に対しましては中小企業事業継続計画策定運用指針を示し、その普及啓発を行っております。県におきましても、商工会議所、商工会等を通じ、国の指針をPRするとともに、本年度には、県内中小企業の方々を対象に、具体的な計画策定のポイントを説明するセミナーを県内2カ所で開催することとしてございます。
 今後、より一層効果的、実践的な普及策を講じながら、中小企業の規模、業態に応じた事業継続計画の策定が着実に進展していくよう取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 学校への事前対策についてお答えいたします。
 県教育委員会では、平成15年に「学校における防災教育指針―地震・津波等の災害発生に備えて―」を定めまして、その中で学校での室内対策の推進を図っているところでございます。
 現在、県立中学校及び県立高等学校におきましては、ほとんどの学校がピアノやテレビ、ロッカー等の転倒・移動防止対策を施しておりまして、未実施校に対しましては早急に実施するよう指導しているところであります。
 また、市町村教育委員会に対しましては、これまでも学校における防災対策の充実を働きかけてまいりましたが、今後も県下市町村教育委員会教育長会議や学校安全講習会等さまざまな機会をとらえ、建物の耐震化とあわせ、学校における室内対策を徹底するよう働きかけてまいります。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再質問を許します。
 34番片桐章浩君。
○片桐章浩君 御答弁いただきましてありがとうございます。2問目は要望ということでさしていただきたいと思います。
 新潟県の例なんですけども、新潟県中越地震の折、これは震度6弱、マグニチュード6.8、こういった震災を受けた長岡市長岡駅前にあるホテルでは、4階から12階、これ最上階なんですが、すべての室内のテレビが吹っ飛んで壁にぶち当たってしまった、数メートル先に飛んでベッドの下に落ちたり、机の横に組み込まれている冷蔵庫が飛び出していた、こういう事例が報告されております。また、ホテルの半数以上のドアの開閉ができなくなって係の人がお客様の安否を確認する、これも大変だった、このように報告されております。
 この事例を申し上げましたが、近年のたび重なる地震の発生によりまして、団体旅行あるいは観光先、どこに行くか、観光にもこういった危機管理ができているか否か、こういったところが選択肢の1つというふうに、今指摘さしていただきましたように、学校や医療機関、官公庁だけではなくて、社会としては観光事業にもこういう目が向けられている、こういう厳しい状況がございます。
 本日提案した学校や病院、これらの防災対策、企業への減災対策などは、ぜひとも県が主導して実効性のある対策を講じる、あるいは指導力を発揮して取り組んでほしいというふうに思います。
 現在策定中の新長期総合計画にも記載されておりますように、和歌山県は防災対策における先進地である、住んでも安心、訪れても安心、このような地域づくりを目指していただくことをお願い申し上げまして、一般質問とさしていただきます。ありがとうございます。
○議長(中村裕一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で片桐章浩君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問は終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時33分休憩
────────────────────

このページの先頭へ