平成19年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(片桐章浩議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)
○片桐章浩君 おはようございます。
 最初に、今春の統一地方選では数多くの皆様方から御支援を賜り、県議会に送り出していただきましたこと、感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。また、先輩議員、同僚議員の皆様方にはぜひとも御指導いただきますようお願い申し上げたいと思います。また、初めての県議会では早速一般質問の機会を与えていただきましたことを改めて感謝申し上げ、議長のお許しをいただきましたので、通告に基づきまして一般質問をさしていただきたいと思います。どうか、よろしくお願いします。
 最初に、企業誘致について御質問をさしていただきます。
 和歌山県、特に和歌山市の場合でございますが、ここの産業は古くから住友金属や花王などに代表されるような重厚長大型の産業構造で、これについては今も余り変わっていない、こういう状況であろうかと思います。経済成長の時代には、和歌山県の工業製品の出荷額、この伸び率は全国でも上位クラスに位置していたわけですが、現在では最下位に近い位置に低迷している、こういう状況であります。
 一方、和歌山県も景気回復の兆しが見られていると言われておりますが、域内経済をリードしているのは、やはり住友金属などを代表とする産業で、これは、もちろん既存の産業が好調なのはとてもうれしいことなのですが、それだけではやはり全国的に比較して低位置から抜け出すことができない、こういう状況であります。
 その理由として考えられることは、他府県、これは産業構造の転換がうまく図られているのに対して、和歌山県の産業構造は従来のままであると、このことに起因していると思います。例えば山形県、熊本県、こういった県は、かつて経済規模は全国的には低位でした。しかし、現在は電子機器や電気部品などの高機能材料、こういった企業誘致に成功、産業構造の転換にうまく成功しております。これらの県内の工業製品出荷額に占める高付加価値産業、これが生み出す利益は約50%に達している。これに対して和歌山県の場合、これらの産業が占める割合はわずか5%。これにすぎないということが現実であります。
 産業集積のために必要なものは、分業、専門化、高付加価値化、この手順で、いきなり高付加価値産業に達することはできませんから、産業構造の転換がおくれたことが和歌山県の経済停滞要因の1つだと言えます。
 では、和歌山県が今から他府県と同じような取り組みをしたとしても同種の産業構造の転換が図れるかというと、これは疑問符がつきます。なぜなら、現在稼働している、または稼働しようとしている工場群は、2005年ごろ既に工場の新設や移転を行っておりまして、その用地というのは近隣の用地で適地を見つけています。産業構造を転換する意味は、ある意味で、1つの基幹産業が立地するとそれに付随して周辺産業が集積していくのです。そのため、先行して企業立地に取り組んできた府県がリードしているのは当然のことであります。
 さて、和歌山県の場合、今から単に企業誘致、これを図るだけでは現状を突破するのは非常に難しい。ですから、和歌山県発の新産業を創造するぐらいの意気込みが必要かと思います。
 企業への訪問活動におきましては、和歌山県の将来像を語れる、あるいは将来の産業について夢を語れる、こういったことから導入をして、和歌山県に進出することは当該企業にとってメリットがあることを営業してほしいと思います。
 さて、産業政策は3つに分類できるというふうに思います。
 1つ、これは手っ取り早い方法なんですが、県外から和歌山県への企業誘致。手っ取り早いですが、非常に難しい問題です。他府県との競争が激しい空中戦ですが、即効性が期待できる分野。これが1つ。
 2つ目、今ある企業に力をつけてもらうこと。新しいビジネスを育成することや地場産品の販売力を強化することで県内の経済活性化が図れますが、そのためには県の支援施策を講じて研究開発や販売ルートの開拓、こういった支援、ここに行政の力添えが必要かと思います。
 3つ目、基幹産業のすそ野を広げる。これは代表的なのは、豊田市におけるトヨタ自動車のように、本体があって部品などの関連企業が周囲に存在している、こういう状況をつくり出すことであります。
 この3つのスタイルがあると思いますが、そこで必要なものが産業振興ビジョン。これが必要かと思います。
 企業誘致の目的は、雇用を生み、経済活動を活発にすることで私たちの生活を豊かにすることにあります。どんな生活を、どんな経済活動を志向して豊かな郷土をつくるかに目標を定め、それに合った企業に誘致活動を行いたいところであります。それによって私たちの生活は安定、豊かにつながるわけです。
 ところが、現状はそうなっていない状況があります。例えば、和歌山市に暮らす私たちの消費生活からの推測ですが、仮に所得を100──ここでは税金とか光熱費というのはすべて捨象さしていただきますが──そのうち市内で消費している比率というのは50以下、あるいは極端な場合は30以下ではないかと思われるところがあります。これは、中心市街地から人を集める力が失われ、和歌山県外で時間的距離が比較的短いところ、ここに大型商業施設が進出している中において、この傾向はさらに上昇しているような気がします。
 このように、域内で流通するお金がなくなっている。これは資本のミイラ化を意味し、域内での経済活動がこのままでは成り立たない、こういう状況、危機的状況にさらされている、このような気もいたします。つまり、企業から見ると、和歌山県では生産活動に支障を生じ、事業活動ができにくい状況にある。ですから進出にはつながらない、見合わせる、こういうことにつながっているのが現状ではないでしょうか。この経済活動を成立させるためには、域内での消費のマイナスとなる分を外から稼いでくる、こういう姿勢が必要であります。
 さて、この産業振興ビジョンなるものは約70%の都道府県で策定しているようであります。残念ながら、和歌山県には存在しておりません。ただ、和歌山県で発足している企業立地課、この活躍ぶりは、聞くところによりますと非常にすばらしいもので、発足以来既に約900社の企業と接触し、企業誘致活動にも取り組んでいます。そして、企業立地のある程度の成果も上げていますし、今後進出が見込まれる企業もあると伺っております。そこに欠けているものは、和歌山県が企業誘致するには全国に誇れる産業をつくろうとする産業振興のあるべき姿です。1つの課だけが懸命に取り組むのではなく、企業誘致に関する課員が横断的な活動ができる体制を設けてほしいと思います。
 ところで、企業はボランティアで進出してくれるはずもなく、採算ベースに乗らないことには和歌山県には来てくれません。そのもとになるのは、何といっても企業用地の価格であります。
 平成17年度和歌山県の土地鑑定価格に基づく企業用地価格、これは全国で14番目と、相対的に高い水準にあります。和歌山県企業立地ガイド、これは発刊されているものによりますと、主な企業団地の中で西浜地区の用地、これの賃貸価格は月額平米当たり204円、坪単価にいたしまして673円、雑賀崎地区用地、これが坪単価607円、北勢田ハイテクパーク、これが坪単価284円となっております。これでは、よほどの産業ビジョンがあるか、例えば10年分相当額の固定資産税の補助など飛び抜けた優遇措置があるかなどの施策がない限り、進出は見込まれないと思います。
 さらに、この企業用地の問題について考えますと、大規模な基幹産業となるような企業が進出するためにはかなりの坪数──10万坪や20万坪では当然不足しますから、50万クラス以上の土地が必要となってきます。
 ここで、企業に貸す賃貸価格について1つの目安を示したいと思います。
 お隣大阪府、ここのある市では企業進出が進んでおりますが、そのため賃貸価格を坪単価300円に上げた、こういったところ、最近は企業進出を見合わせているところが非常に多くなっています。大阪府下でもその状況です。瀬戸内海沿岸に位置するある市では坪単価150円です。しかし、ここでは消費地から離れているために企業進出がなかなか見込まれていない。そして九州のある市、坪単価を30円から50円に抑えております。そのため、九州では最近非常に企業進出が活発、あるいは見込まれる、こういう状況になっております。
 こういったお隣や企業進出が図れている府県と比べまして、いかにも和歌山県の企業用地の賃貸価格というのは高い水準にあるのではないかなというふうに考えます。
 複数の企業から、和歌山市内の企業用地に限って評価を伺ってまいりました。これらの企業からすると、和歌山市の企業、賃貸価格の坪単価おおむね70円以下、こういった水準でないとなかなか進出は和歌山には難しいよと、こういう評価をいただいております。これを超えると採算ベースに乗らないため進出は難しい、このように判断されるわけです。
 工業立地に当たっては、企業用地の賃貸契約と初期投資額との関係がここで問題になります。
 コスモパーク加太を例にとり仮定しますと、例えば周辺部を含めて賃貸する土地を70万坪、投資額を200億円として10年で償却する、こうさしていただきますと、1年当たりは20億円、1坪当たり年2800円、1カ月の坪単価が230円となり、土地の賃貸料を仮に70円とすると坪単価が300円となりますから、これだったら企業にとっても進出が見込まれる、その程度になろうかと思います。
 地方都市にとって土地価格を低く抑えることが企業誘致活動の原則となりますから、幾らで貸すのか、これを提示するのが必要なことです。
 さらに、外資系企業の誘致についても、付加価値製品を扱っている日本市場の魅力、そして日本製ブランド力の魅力を求めて日本に工業立地を考えている企業もあります。港湾があり、十分な用地を確保できる和歌山県への進出も不可能ではありません。外資系企業からすると、大阪であろうが和歌山であろうが、地球規模からすると、その距離は誤差の範囲だそうです。港湾があり関西空港にも近い和歌山県が適地になり得ると思いますが、外資系企業へのアプローチや国内外の企業に対する企業誘致サーチャー制度、この活用もぜひ検討してほしいところであります。
 そこで、質問をさしていただきます。
 産業振興ビジョンを策定して企業誘致から和歌山県の根幹になる産業誘致と育成を図る必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 2点目、和歌山県の企業用地は、鑑定価格制度を導入した後でも全国的には相対的に高い水準にあるのはどのような理由からですか。他府県と比較して競争力がないとも言える状況ですが、解決するための手段をどのように考えておりますか。
 企業関係者との懇談の中で感じることですが、企業が今まで立地したことのない県に進出するのは相当の覚悟が必要で、絶対に後戻りできない、そういう覚悟で出向いてきます。決死の覚悟で県の扉をたたいているのに何となく結論が出ないままの交渉になるとすれば、県の本気度がわからない、こう経営陣に報告し、その時点で進出計画は消滅してしまいます。
 和歌山県に進出してほしいとする熱意、一緒に地域の産業をつくり上げようとする夢を見られるような県である、これが重要ですが、基幹産業となり得る企業に、ぜひ和歌山県に来てほしいという決意を知事の言葉で語っていただきたいと思います。
 以上、知事に質問をお願いします。
 3点目、何が問題で企業誘致が進展しないと考えているでしょうか。また、企業立地活動をどのように考えておりますか。これは商工観光労働部長からお答え願いたいと思います。
 また、企業に和歌山県に来てもらうためには、企業用地の価格を和歌山県で採算ベース──企業が採算ベースですね──乗った形で生産活動ができる水準に下げる必要があります。価格は企業用地によって違いますが、例えばコスモパーク加太では、先行事例と同等の価格でないと企業に来てもらうことは難しいと思います。
 地方自治体財政健全化法が成立し、地方自治体の決算が連結決算へと変化する中、コスモパーク加太の問題は放置できないものです。県の基幹産業となり得る企業であれば、相当思い切ったインセンティブの導入や、公社保有地には県が関与した支援など、コスモパーク加太対策検討委員会の報告に基づいた優遇措置などの提供、あるいは企業に見てもらうために思い切って賃貸価格を抑え、そのかわりに一定以上の雇用を条件とする──今以上のですね──そういうことはできないでしょうか。企画部長はこのコスモパーク加太に関して今後の取り組み方針についてどう考えているのか、お尋ねいたします。
 5点目、企業誘致サーチャー制度についてであります。この制度は、既に登録者数も多く、成果も上げているとお伺いしておりますが、さらに成果を生み出すためにも、外資系企業への展開を図る意味でも、原資総額、これはそのままで、成果を出した登録者への活動費を含めたインセンティブについて検討できないでしょうか。この点につきましては商工観光労働部長からお答えをいただきたいと思います。
 2点目であります。観光医療立県和歌山の取り組みについてでございます。
 現在、全国で約240の地域で、観光と何らかの健康に関するコンテンツ、これを合わせた取り組みがなされていますが、残念ながらほとんどがうまく他地域と差別化できていないのが現状であります。そして、この分野では和歌山県内の取り組みが2年から3年は他地域をリードして全国のトップを走っている、こういう評価があります。
 経緯を述べますと、平成16年度都市再生プロジェクトで和歌浦地域を中心とした調査事業、平成16年度国土施策創発調査での世界遺産を活用したこころの空間・癒しの交流づくりに関するもの、そして地形療法を中心とした和歌山県の熊野健康村構想、平成18年度には和歌山県立医科大学の観光医学講座開講、和歌山大学観光学科の開設、そして経済産業省のサービス産業創出支援事業に採択された観光医療立県和歌山の成果により、一躍、和歌山県のこの分野が全国的に注目をされ始めました。
 整理さしていただきますと、和歌山県が中心となっている熊野健康村構想の取り組み、医療機関と民間とのコンソーシアムで進めている県内周遊型の取り組み、この2つがあるわけです。
 ここで、観光医療ツアー、どういうものかというのを紹介さしていただきますと、楽しく観光しながら安心して代替医療のコンテンツ効果が期待でき、参加者に健康を認識してもらうことを目的とした取り組みであります。そのため、現在、和歌山県では健康障害に対して有効と思われる施設や観光資源を抽出し、代替医療を中心とした観光の受け入れ態勢を整え、観光客に提供しています。つまり、今ある観光資源を生かし、観光産業としての付加価値を高め、他地域との差別化を図れるもの、それは高付加価値型の観光施策としてニューツーリズムと言われるものに数えられるものであります。
 平成18年度の主な取り組みは、まず市場形成のための健康保険組合や患者の会などへのヒアリング、それからこれをデータベース化、商品開発としての運動療法、温泉療法など和歌山県で代替可能な代替医療効果の調査と特定疾患患者への対応ノウハウを基盤とした健康づくりや予防医療のプログラムコース、これの開発、交通・宿泊・食事・物販などを連携させ受け入れ施設の高度化と集客力の強化を図り事業性を想定、お客さんと地域観光資源を結びつける役割を担う日本初の観光医療指導師育成プログラムの構築、ツアー参加者の属性を管理するデータベースの開発、こういったものを既に完成さしているわけです。その結果、観光と医療を融合さした次世代型の観光産業を開発し、顧客の開拓、商品開発、サービス体制、人材育成、こういったことを実施することで和歌山県内でのサービス事業の仕組みが既に完成しているわけです。
 この中で和歌山県内の取り組みが評価されているのは、特定疾病対策、予防医療ツアー、美容目的ツアー、こういったものを実践、検証し、本格的に取り組みを開始しているところにあります。特に特定疾病の患者さんのツアーとして、パーキンソン病、糖尿病の患者さん、人工肛門の患者さんなど、今まで観光したくてもできなかった方々にも和歌山県の観光を安全に、そして健康的に提供しています。
 当然、こういった皆さん方を対象としたツアーの実施は全国で初めてのことで、これを行える知識とノウハウを形成しているからこそ、引き続いての健康関心層への展開が図れ、それが他地域と決定的な差を生み出しているわけであります。つまり、心身の健康バランスを向上させながら楽しめる観光プログラムを提供することにつながっております。
 現在では、全国で初となる観光医学講座の開講、そして観光医療指導師、観光健康指導士、2つの資格認定講座を開講し、観光の安心と安全を支援するための人材育成を平成19年7月から開始させる計画があります。これは、医学の専門家集団が医療が産業につながる価値を見出し、和歌山県の観光産業と結びついたことが大きいと思いますし、他地域を明らかにリードしているこの産業は観光医療立県和歌山の柱になる可能性を秘めております。
 さきの6月14日、つくば市で開催された第57回日本病院学会、ここにおきまして日本病院学会の藤原秀臣学会長は、その会長講演「医療の実践と社会の変革」の中で和歌山県の取り組みを紹介してくれています。この内容は、これからは病院も観光と組むべきとした上で和歌山県の先進性を紹介し、高く評価してくれているわけです。
 また、観光医学、この視点から地域医療を見直すことも可能です。地域医療とは、住民の皆さんへの安心と安全を提供するものです。地域医療の体制が備わっていることで、和歌山県を訪れる観光客に対しても安心と安全を提供できるのです。住民への医療サービス、産業としての観光客への医療サービス、こういったものを支えるためには県立医科大学を中心とした医療ネットワークづくりが不可欠かと思います。
 全国的には、観光地の過疎化、これが進んでいます。地域医療が崩壊すると、地域の方の不安の高まりはもちろん、観光客にも泊まってもらえない、こういった地域になり、和歌山県は安心・安全な観光地でなくなる、こういうこともあります。
 県立医大は、観光地の過疎化を食いとめ、観光医療立県和歌山モデルを支えることができる唯一の医療機関であろうかと言えます。視点を変えますと、医科大学が独立行政法人となったことは、正社員1200人を超える大企業が和歌山県に誕生したことを意味します。医学はどんな産業にも付加価値を高めてくれるものですから、この大企業が持つ知的財産をもっと活用すべきです。今後、主流となる新しい観光の姿、健康・美容サービス産業を補強するのがこの大学の新たな役割だと思います。
 さて、和歌山県の地域支援活用型のこの企画は、他地域に集客モデルを普及されるところまで至っております。既に京都や鹿児島、こういったところからも視察調査に訪れる予定があるほか、和歌山県と並び観光・健康サービスが進んでいる他地域との間でもノウハウ連携の仕組みが図られようとしています。
 このように、本格的な取り組みが開始されようとしている中、単に調査事業や成功事例だけに終わらないで、観光産業のクラスター創成、ここに広がっている様子もうかがえる一面があります。
 例えば、医学と医療、健康ウオークや水中エクササイズ、タラソテラピーや温泉療法などの健康分野、また美容分野では、既に東京の化粧品メーカーが和歌山県にある民間組織と共同研究、こういったものも開始され始めました。地元の食材を活用した自然食料理の提供などのホテル、旅館、飲食業の分野、そして健康サービスコンテンツを提供しながら周遊観光型の輸送の分野、全体を企画コーディネートするサービス提供者など、こういった事業者があらわれ、お互い補完し合う連携が図られていることから、今後の新産業への発展が期待できるわけです。
 国レベルでも、平成19年6月1日まとめられた観光立国推進戦略会議の報告書でも、地域固有の伝統、文化、歴史、産業、自然、こういった観光資源を活用するように提言されております。つまり、産業施設や素朴な家庭料理など、従来は観光の対象から外れていたものが観光資源になる、このように提言されているわけです。
 このように地元発で新産業としての広がりを見せており、他府県から使節団を迎え入れているだけに、和歌山県はこの分野での施策をさらに講じていただきたいところだと思います。
 そこで、質問をさしていただきます。
 1点目、経済産業省の事業採択を受け、全国的にも関心を集め、和歌山県での取り組みが始まっている観光医療立県和歌山としての健康サービス、美容サービス、こういった産業化を図る取り組みについて、そして日本病院学会でも評価されている和歌山県の新しい観光産業づくりに資する取り組みについて、これは将来の和歌山県の観光産業の核となる可能性を感じます。この点について知事の認識をお示しください。
 2点目、これは商工観光労働部長にお伺いさしてもらいます。本格的に和歌山県の新しい観光産業としてのクラスター創成まで発展しようとしている状況において、和歌山県もブランディング、こういった部分で支援してほしいところです。例えば、「和歌山県と言えば観光医療立県ですね」と他府県から言われるぐらいのブランディングが必要だと思いますが、ここでの県としてのかかわりはできないものでしょうか。
 参考までに、この事業化というのは、まさに民間の自助努力でありますから、民間主導、県がここにかかわって支援する、こういった支援方策についての考え方はいかがでしょうか。
 3点目、産業支援課の新施策に観光産業プロジェクトマネージャー、こういった新施策があります。これは、観光産業と他産業が連携した新たなサービス産業を育成する、こういった役割が担わされているようですが、この活用について商工観光労働部長から言及していただきたいと思います。
 以上、何点かをお伺いさしていただきまして、第1問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございます。(拍手)
○議長(中村裕一君) ただいまの片桐章浩君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、企業誘致関係でございます。
 国内の産業構造が転換する中で、県内産業の相対的な力が徐々に低下し、今日では、御指摘のとおり製造品出荷額の伸び率では下位に甘んじております。
 多くの県民が県経済の立て直しを期待しているところから、私は、職づくり、人づくり、地域づくりによる元気で活力あるふるさと和歌山を実現するために全力で取り組んでおります。その際、本県経済の屋台骨として成長してきた企業群の生産性向上や次世代の和歌山県を担う主力産業の創出といった県内企業の育成、振興と、それから企業誘致を一体的、総合的に推進することが肝要と考えております。
 そこで、現在策定中の新長期総合計画の検討の中で、このようなものをしっかり議論し、産業振興のビジョンを示してまいりたいと、こういうふうに考えております。
 第2に、企業用地でございます。
 県が保有する企業用地につきましては、その価格算定基準を平成18年度に従来の簿価から鑑定価格に変更し、実勢価格に応じた用地の提供に努めようとしているところでございます。しかしながら、立地の決め手となる用地取得について、誘致に係る地域間競争が激しさを増す現在、県が実施する鑑定価格よりもさらに低廉な価格での提供を求める企業も多く存在し、交渉価格としての割高感が発生しているということも事実であります。
 個別具体的な企業の要請も踏まえつつ、今後とも社会情勢を見ながら、この用地価格についての検討は引き続き実施してまいりたいと思っております。
 次に、企業誘致に関する知事の決意というようなことでございました。
 県民の期待に全力でこたえたいと思っておりまして、そのためには職づくり、人づくり、地域づくりに邁進し、良質な労働力と暮らしやすさを提供する地域、つまり元気な和歌山になるということが必要であります。
 企業誘致はその1つの手段ですが、私が常々肝に銘じていることは、企業との関係において決して逃げないということだろうというふうに思っております。
 私は、経済産業省の役人をやっておりますときに、企業が何かの問題に直面したとき、幾つかの自治体が「それは企業の問題です」と言って突き放すケースというのがあったのを数多く見てまいりました。私は、そのようなことをしておりますと、その企業群あるいは産業群が持つその地域のイメージが随分悪くなるなあというふうに思います。
 もちろん、例えば公害の発生、不都合な問題、そういう問題については県は全力を挙げてその是正に取り組まないといけないわけですけれども、一方では地元の企業との共存共栄を目指し、特に雇用に着目してその意義についてもちゃんと把握をして、柔軟かつ責任のある態度を県当局としてはやっていかないと、その地域がすべての産業界から見放されると、そういうふうに思っているわけでございます。こういう考え方で、私自身も各企業のトップにそのような気持ちをお伝えして企業誘致に資してまいりたいと考えているところでございます。
 次に、観光医療立県というお話がございました。
 本県には、熊野に象徴されるようないやし、よみがえりの地としての背景と、それから予防医療への応用が可能とされる農林水産物とか、あるいは温泉とか、きれいな景色とか、そういう地域資源が豊富にございます。こうした本県のポテンシャルを生かした新たな観光形態として観光医療の分野は期待できるものでありまして、議員御指摘のように、県立医科大学が全国に先駆け開設した観光医学講座の取り組みなど、その実現への一歩と受けとめているところであります。
 いずれにいたしましても、観光は元気な和歌山をつくる大きな柱の1つでありまして、本県観光のメニューに観光医療が加わるということになればさらなる観光の振興につながるものと考えておりますので、本件の問題についても関心を持って見守って育てていきたいと考えております。
○議長(中村裕一君) 商工観光労働部長永井慶一君。
  〔永井慶一君、登壇〕
○商工観光労働部長(永井慶一君) まず、企業誘致の対応状況につきましてお答えいたします。
 企業が立地を決定する際には、教育水準の高さ、住環境や文化的生活はどうか、あるいは良質的な労働力と人々の暮らしやすさをその地域が提供できるかどうかという立地周辺環境が前提であろうと考えております。
 次に、企業が事業活動を拡張する場合には、既存工場や本社等との近接性を重要視しております。この10年間において誘致活動に懸命であった地域とそうでなかった地域との差異を感じております。
 最後に、直接的に誘致を決定する諸要因について1つ申し上げたいと存じます。
 立地決定の最も大きな要因は、受け皿となる用地とその価格であります。本県の地理的状況、事業活動基盤等をかんがみますと、これらについては不断の検討が必要であろうと考えております。
 企業への誘致活動につきましては、昨年度より数値目標を掲げ、精力的に行っているところでございます。この活動の精度を向上させるためにも、今申し上げましたような課題に対し、部全体として取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
 次に、企業誘致サーチャー事業は、企業の地域進出情報の収集力を高めるために平成17年度より実施しているところでございます。本事業では、和歌山県にゆかりのある全国の方々に依頼し、広く民間の力をおかりしながら進出希望企業の情報をいち早くキャッチすることで、その後の誘致活動をより有利に展開していくことを目指してございます。
 しかしながら、本事業の効果をより高めるためには、サーチャー登録者の活動を活発化し、成果を残した者が報われ、また、その他の者が励みとなるような仕組みとしていくことが不可欠、肝要であると認識してございます。
 こうしたことから、現在の成功報酬制度に加え、活動費のあり方や外資系企業へのさらなる働きかけを含め、サーチャーの有効な活用方法等について必要に応じ検討を行い、事業のより一層の改善に向けて取り組んでまいりたいと考えています。
 続きまして、観光産業クラスター創成への支援についてお答えいたします。
 議員御提案の新しい観光産業の形態は、今後、時代を先取りした観光産業の1つとして認識してございます。このため、県立医科大学が先駆的に取り組んでいらっしゃる特定疾病の患者を対象にしたツアーや観光医療にかかわる人材の育成などの成果を生かし、医療サービスという価値を付加した新たな観光産業が民間主導によりうまく定着していけるよう、県としては機会あるごと、情報発信の分野等で支援してまいりたいと考えております。
 それから、観光産業プロジェクトマネージャーの活用についてお答えいたします。
 この事業は、観光の専門家による県内の巡回支援活動などを通じて元気で頑張る観光事業者を掘り起こし、その経営面等からの指導、育成に取り組むものでございます。
 今後、当該マネージャーの支援活動によって、健康関連サービスの視点を加味した新たな商品開発等の取り組みも促進してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 企画部長森 崇君。
  〔森 崇君、登壇〕
○企画部長(森 崇君) コスモパーク加太への企業誘致の取り組みについてお答えいたします。
 現在、平成15年12月の調停に代わる決定に基づき、コスモパーク加太の県土地開発公社所有地の一部108.8ヘクタールを県が賃借し、土地の利活用を図っているところでございます。
 企業誘致につきましては、利活用の1つとして極めて有効であると認識しておりまして、県議会コスモパーク加太対策検討委員会からの報告を踏まえ、企業立地奨励金を初め、思い切った優遇措置を提供しながら取り組んでいるところでございます。
 今後も、優遇措置や基盤整備等につきまして、関係部局と連携しながら、新規雇用の創出など、経済波及効果が期待できる企業の誘致に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再質問を許します。
 34番片桐章浩君。
○片桐章浩君 御答弁ありがとうございました。
 要望をさしていただきまして終わらしていただきたいと思いますが、企業誘致も、産業を創造する、こういったものも、すべて対象となるのは人ですから、県の思いが熱伝導しないことには決してこういったものは来てくれないと思います。熱は人から人へ伝わり、その空気をも一変させるものですから、ぜひ熱意を持って取り組んでいただきたい。
 誘致のための補助金やインフラ、こういったものはもちろん必要なんですが、この地域を企業と一緒になって盛り上げていくというふうな熱伝導が絶対に欠かせないと思います。
 きょうも、ひょっとしたら議場かモニターで企業関係者がこのやりとりを聞いているかもわかりません。そういった方に伝わるような思いを知事も持っていただきたいというふうに思います。
 また、もう1つわかっていただきたいのは、企業からの要望をまず否定から入る、こういった殿様商法では決して進出してくれないということです。最低限ファイブオール、この立場で企業からの要望にはスピードをもって提案していく、積極的に提案していく、こういう姿勢を持っていただきたいと思います。
 もう1つ大切な観点が、もう御存じのように、企業が動くためには相当シビアな採算計算が求められます。これはメーンバンクや株主の意向、こういったものが影響を与えてるわけですから、困難な課題を一緒になって和歌山県は解決するんだ、してくれるんだ、そういうふうな姿勢をぜひ発信していただきたい、このように思います。
 熱意とスピード、そして、問い合わせに際しては窓口を1つにして、どうするか、諸課題を解決するのか、企業の立場になって提言してほしい、このように思います。
 以上、要望として終わらしていただきます。ありがとうございます。
○議長(中村裕一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で片桐章浩君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時27分休憩
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