平成19年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十二番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 まず最初に、この春をもって御勇退される皆さんに一言申し上げます。
 県議会議員として、また市議会、町議会議員として長年御活躍をされてこられました。先輩の皆さんが担当されたのは、国の成長期からバブルがはじける大変な時期、地方自治にとりましても大変難しい時期を御担当いただいたわけであります。選挙で当選し続けることは本当に大変で、御本人、御家族の御苦労に心から敬意を申し上げます。
 世間の評価以上に苦労が多い議員の仕事であります。その中で頑張ってこられたのは、恐らくふるさとに対する熱い思い、そういう高い志のなせるわざではないかというふうに思います。そのとうとい志に敬意と感謝を申し上げる次第であります。
 どうか、これからも健康に御留意をいただきまして、我々後進のことをお見守りいただきますとともに、立場を変えて和歌山県県勢発展のために御活躍いただきますことを心からお願いを申し上げます。(拍手)
 さて、それでは通告に従いまして一般質問を行ってまいります。
 県が県民にアンケートをとると、要望の第一位は道路整備だと言われております。その理由は、県民が、県というところは道路をつくったり川を直したり、福祉や医療の仕事をするところだと思っているからで、私は、県民の一番の願いというものは実はほかにあると思います。その願いとは、子供たちが学校を卒業し就職をするとき、ふるさと和歌山に残りたいと希望する子供たちがみんな残れることではないでしょうか。つまり、県内に若者の働くところをつくってほしいと思っているのです。
 知事は、出馬表明以来、県下をめぐり、多くの県民の声を聞いて五つの目標を掲げられました。その中でも仕事づくりを大きく取り上げておられます。私も含めて大多数の県民は、知事が何をおいても県経済の発展のために頑張ってくれると大いに期待しております。
 そこでまず、即効果がある企業誘致について伺います。
 企業誘致については、私も平成十七年十二月定例会で取り組みの強化をただしましたが、翌年には誘致奨励金百億円制度や千社訪問などの方針が打ち出されました。まず、その成果について知事から御報告願います。
 さらに、知事はこれまで企業誘致を強力に推進し、みずからもトップセールスで臨むと主張してこられましたが、果たして具体的にどのような方針、体制で取り組まれるのでしょうか、お聞かせ願います。
 次に、観光振興については五つの目標に取り上げておられますが、現在のところ、県の企業誘致優遇施策にはホテルなどの観光関連産業は対象となっておりません。恐らく、地域内での競争や観光産業は幅が広く線引きが難しいことから対象となっていないものと推測しますが、工場であろうとホテルであろうと、迷惑施設でない限り、土地を買い設備投資をして雇用を生んでくれることはよい投資であると考えます。
 最近、マカオではカジノ免許を外国資本にも開放した結果、投資が進み、入り込み客、売り上げが増加したことが報道されております。観光立県を目指す我が県こそ、観光関連産業にも優遇の対象を拡大すべきであります。知事はどのようにお考えでしょうか。企業を誘致し、さらに観光を振興されるという知事の御判断を伺います。
 また、県では、五十一人槽以上の合併浄化槽も現在のところ補助対象となっておりません。国が決めた制度では補助できることになっており、県費補助には交付税算入があるとのことで、幾らかでも助成金が節約できます。下水道の未整備地域での企業誘致対策、環境対策として大変有効でありますので、ぜひ今後は補助するよう要望しておきます。
 ところで、皆さん、話は変わりますが、人は何を求めて集まると思いますか。植物や昆虫は光に集まる習性、すなわち走光性があるということを理科の時間に習いました。実は人という社会的動物は、富と文化が生まれるところに集まる習性があるのです。そういう意味において、人口減少の本県では、仕事をつくる産業振興と同時に文化振興にも大いに力を注がねばと思います。知事の言われる「楽しい和歌山の実現」とは、恐らくこの文化の振興ということかと存じますが、具体的にどのようなことをおっしゃるのでしょうか、お答え願います。
 また、知事は、一月の臨時議会において、新たに長期総合計画をつくることを表明されました。五つの目標を実現するため、目指すべき姿や県政運営の基本方針、県が取り組むべき施策の基本的方向を明らかにするとのことですが、具体的にどのようなものをおつくりになるのでしょうか。
 四番目に、地方分権について伺います。
 平成十一年三月末に全国で三千二百三十二あった市町村は、合併特例法の期限、平成十八年三月末には千八百二十一になり、さらに本年三月末には千八百四になると言われております。県内でも五十市町村が三十になりました。
 新合併特例法施行後、県では市町村合併推進審議会から素案の報告を受け、新たな市町村合併推進構想を策定しました。しかし、それ以降、どこにも合併の動きが見当たりません。一次合併を振り返ってみて、当初は合併をしなければ生き残れないとまで言われたのに、合併をしなくてもちゃんとやっているし、合併したところでもどれだけよくなったのかわからないというのが理由ではないでしょうか。我々県会議員でさえ判別しにくいのですから、なおさら県民にはわかりづらいと思います。それどころか、最近では「知事がかわったのだから構想は無効だ。やり直し」との声も聞かれます。
 そこで、知事に、市町村合併についての認識と今後の取り組みについて伺います。また、道州制についてもお聞かせください。
 五番目は、メタンハイドレートについて。
 石油価格は、ことしに入り多少下落したものの、依然として高値圏にあり、景気のマイナス要因とも言われております。そもそも資源の少ない我が国においては石油確保は生命線であり、エネルギーは国家の基本政策であります。
 このような中、国産エネルギーとしてにわかに注目されるのがメタンハイドレートであります。メタンハイドレートとは、メタンガスの氷の結晶で、南海トラフなど日本近海の海底に豊富に埋蔵されており、うまく開発できれば日本はエネルギー資源大国になるとも言われています。二〇一六年までに商業化のための技術確立を目指して調査が続いていると聞きますが、早期の開発に大きな期待がかかります。
 ところが、この採掘予定地は、我が国の経済水域ではあっても領海すなわち県域ではないため、せっかく将来採掘されるようになっても県へ鉱区税が入らないのではないかと心配いたします。
 県議会では、平成十四年の九月定例会において下川議員がその開発促進と新宮港の利活用についてただされ、昨日も御発言がありましたが、改めて国のエネルギー政策を担当された経験のある知事に開発の見通しと本県のかかわりについて伺います。
 六番目は、県土の守りという視点から四点について伺います。
 去る二月十九日、安倍総理の指示により、内閣に美しい森林づくりのための関係閣僚会議が発足しました。森は美しい国の礎との位置づけで、森林づくりへの参画促進や木材利用、地域づくりを政府が国民の幅広い理解と協力を得て一体となって進めていくそうです。この盛り上がりにより森林の公益的価値への理解がさらに深まり、森林・林業問題が国民的課題になるものと喜んでおります。
 いよいよ本県においても新年度から紀の国森づくり税をいただくことになっておりますが、知事はどのように評価されていますか。
 また、初登庁時に自民党県議団よりその使途について多岐にわたる要望を行いましたが、どのようにお考えでしょうか。
 特に、花粉症対策についても申し上げました。昨夜から本日朝におきまして新聞やテレビでは、花粉症対策で花粉症の健康食品を飲んだ県内の女性が全身性のアレルギー反応で一時意識不明の重体になったということを県が発表されておられます。幸い二日後には意識を回復し、今は快方に向かっているということが言われておりますが、実は花粉症というのは国民の四割の人がかかっているという国民病でございます。しかも、医療費にして六千億円もの大金が使われております。残念ながら、若い人、特に子供を中心に、今でも増加しております。原因は複合的でなかなか明らかではありませんが、拡大造林が大きな原因であることは間違いありません。治療方法の根本的な方法はまだないということであります。
 そんな中で、我々自由民主党県議団におきまして、花粉症対策に注目をいたしましていろいろ研究をいたしました。大阪医科大学の耳鼻科の教授であります竹中教授からもいろいろ御助言をいただき、二つの要望を知事に行わしていただきました。
 一つは、ハイリスク児の看護であります。花粉症は、お父さんが花粉症かお母さんが花粉症の子供は花粉症になりやすい、それから、生後三カ月から六カ月の異物認証機能ができる時期に大量に花粉を浴びると花粉症になりやすいと言われておりますが、そういった子供たちをハイリスク児と呼びますが、この子供たちを早く発見してあげて看護することによって花粉症になることが防げるということを言われております。
 そしてまた、花粉の発生原因であります森林でありますけども、山全体から花粉が飛び散っているのではなくて、山の端の方であるとか、そしてまた、公園でありますとか学校にある単独で生えている孤立木、こういうものを施業することによって花粉の発生を少しでも防げると、こういうことがだんだんとわかってまいりまして、知事に要望する中で花粉症対策として特にお願いをしておりますが、いかがでしょうか。
 さらに、税条例の提案時、当局へ申し上げた林業予算の森林整備へのシフト、わかやま森林と緑の公社の経営改善について、その後どのように取り組まれたでしょうか。農林水産部長に伺います。
 さて、知事は会見で、森林・林業問題の根本的解決には木材が適正に流通することが必要との見解を示されました。本当におっしゃるとおりですが、果たしてどのようにすれば木材は売れるのでしょうか。やはり他の建材のように品質確保やブランド化が、さらに外国へは木材そのものではなく和風というデザインで売るような仕組み等々の販売戦略が必要であると思いますが、どうでしょうか。
 昨年、上海の紀州材展示場に県会議員の有志で視察をしてきました。率直に言って、店舗は木材を並べただけの改装中のような印象で、周りの店舗に比べて明らかに見劣りしました。価格も、ヒノキの床材が六割引きでも隣の店のカシ材より高いので、これでは商売にならないなというふうに思いました。戦略としては間違っていないので、この際、抜本的に見直してはいかがでしょうか。
 次は、企業による森林所有について伺います。
 かつて紀州の山は、その時々の資産家が所有し、林業という数十年もの長い投資期間の後にようやく資金が回収できる、大変気の長い事業を継続することによって山を守ってきました。しかし、高度成長期が過ぎると木材価格が低迷し、ほかの収入で林業経営を賄ってきましたが、だんだんとそれも困難になってきました。もはや林業家だけでは山は守れない状況にあります。私たちも紀の国森づくり税をそういう危機的な認識のもとで提案いたしました。
 しかし、よく考えてみれば、国内のもう一方には世界を席巻する景気のいい大企業がひしめき、史上最大の利益を上げています。その中には、わざわざ外国にまで植林をして地球環境のために貢献していることを宣伝している企業があります。
 私は、それほど余力があるのなら、まず国内の山に目を向けろと言いたいのです。企業の社会的責任が問われ、有力企業はどんどんと社会的貢献活動に励みます。しかし、今のところ、自分の国の森林が崩壊しかけているからといって、そのことを知らないのか、それともメリットがないためか、一部を除いて森林を所有する大企業の話は聞きません。
 そこで、企業の森事業を一歩進めて、有力企業に山を所有してもらう仕組みはつくれないものでしょうか。
 以上三点について、知事の御見解を伺います。
 最近は森林を緑のダムに例えますが、同様に農地も立派な緑のダムであると言えます。次は、この農地のダムについて伺います。
 昨年七月と九月の二回、中紀地方に降った集中豪雨は、時間雨量が九十ミリを超える記録的な大雨となり、大きな被害が出ました。御坊市内では、七月に五十一カ所、九月には六十一カ所の農地災害が起き、それぞれ十一カ所、三十五カ所が災害復旧事業に採択されました。残りは規模が小さいという理由で採択されませんでした。しかし、被災後、私が見てきたところでは、災害箇所は急峻地の水田が多く、稲作の採算性や農家の高齢化を考えれば自己復旧はかなわず、そのまま放置されるのではと心配します。
 古来より我が国では、稲をつくることにより治水を図ってきました。それを二千年以上も続けて今日の農村環境ができ上がったわけですが、高度成長以降のわずか数十年で、米価の低落、農家の高齢化、後継者不足のため、その環境が崩壊しかけています。今や森林同様、農家だけでは農地が守れない状況にあります。沖積平野や扇状地に発達した我が国の都市では、水田の崩壊によって、いずれ莫大な河川改修費、内水対策費がツケとして回ってくるのではないでしょうか。
 こうした農地の災害を今修繕することは、将来の治水・環境対策費を節約する効率的な投資であると思いますが、農林水産部長はどのようにお考えでしょうか。
 七番目は、高速道路の四車線化について伺います。
 本年一月四日正午過ぎ、有田川町の湯浅御坊道路上り線で乗用車二台が正面衝突し、男女三人が死亡し、二人がけがをするという大事故が発生しました。現場は吉備湯浅パーキングエリアから一キロほど離れた片側一車線の直線部分で、下りの車が対向車線にはみ出したことが原因と言われております。
 また、一昨年の四月一日には、印南町の阪和道で反対車線からはみ出したトラックと乗用車が正面衝突し、一家四人が死傷しました。楽しい思い出になる家族旅行が、一瞬の出来事で家族の悲しい永遠の別離に変わったのです。
 これまでにも、海南─みなべ間でははみ出しによる事故が頻発していることが報じられています。過去五年間の発生状況を調べてみますと、人身、物損合わせて事故が六十二件も発生しており、そのうち死亡事故が四件、平成十八年中では十三件、死亡事故が二件という状況であります。死者を伴う重大事故に発展する可能性が高いことがうかがえます。
 また、夏場などの行楽シーズンには、上下線とも海南─みなべ間を中心に渋滞が著しく、下り線では最長三十キロもの渋滞が発生しました。観光客、特にリピーターの減少も懸念されるところであります。
 和歌山県にとって、高速道路は一メートルでも先へ延ばすことが大切なことであります。しかし、できた高速道路を安全、快適な四車線の本物の高速道路にすることも、同様に大切であります。
 そこで、県土整備部長に、近畿道海南─湯浅間の整備状況並びに湯浅御坊道路の四車線化についてお考えを伺います。
 八番目は、全国公募についてであります。
 先般、伊豆半島の稲取温泉観光協会事務局長が全国公募され、三人の子供を育てる四十六歳の大学院生が合格し、大きな話題になりました。ほかにも調べてみますと、北海道羅臼町、京都府亀岡市、大分県日出町、群馬県片品村などでも観光協会事務局長が公募されています。かといって、全国公募は決してはやりではなく、既に大分県では一年前に公募がありました。県内でも以前、御坊商工会議所が緊急雇用対策で日高港のポートセールスを東京、大阪で募集しましたが、すばらしい人材が応募してきた実績があります。
 このような観点で、以下、二問伺います。
 まず、中高一貫校の教員についてであります。
 本年度、開設準備予算が計上され、いよいよ平成二十年度から日高地方に中高一貫校が配置されることになりました。この場をおかりして、知事、教育長初め教育委員会、関係者の皆さんに心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
 さて、併設中学で教鞭をとる教員については、既に県教委では昨年度から県内公募されていますが、私は、この際、全国公募を提案します。
 今、団塊の世代問題が言われ、盛んに地方への移住を勧めていますが、団塊の世代にかかわらず、地方へ、しかもふるさとへの思いは若い世代でもみんな持っています。この人たちの中には、都会の進学校や予備校で活躍されている人、またいた人も必ずいます。そういう人の力をかりることは即戦力として、子供たちだけではなく教職員に対してもよい効果が望めると考えますが、教育長の御所見はいかがでしょうか。
 関連して、新年度の予算案には専門職の採用が幾つか計画されています。例えば、わかやま産業振興財団に設置される特許事業化コーディネーター、上海のビジネスコーディネーター等々、たくさんあります。予算の概要をぱらぱらめくっただけで、実に十五ほどありました。
 役所にはプロがいないとの心配しますが、もし外部に優秀な人材を求めるとするなら、中学同様に広く公募してはと思いますが、副知事、いかがでしょうか。
 最後に、行政組織で使用する名称について要望いたします。
 今議会に提案されている議案第三十六号は商工労働部の名称を「商工観光労働部」に変更するものですが、知事の観光に力を入れるとの強い意思の表明であろうかと思います。しかし、少々長過ぎるのではないでしょうか。
 また、県庁本庁には何々推進という課室が実に十四もあります。例えば長寿社会推進課は、額面どおりに受け取ると、長寿社会になることを推進しているように聞き取れます。港湾空港振興局には振興課という課がありますが、単独では何を振興しているのか全くわかりません。観光振興課と観光交流課の違いをだれか説明できますか。しかも、このような部局名の変更は機構改革のたびに行われ、ようやく覚えたころにはまた変わっています。
 同様に、今年度予算を見ても、事業名には外来語というよりも外国語が多く登場し、中には珍名もあります。最近、新しい概念を説明するためにはどうしても外国語がふえる傾向にありますが、県民にわかりやすい名称をよく考えて使用するよう、この際強く要望し、私の一般質問を終わります。
 御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの中村裕一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 企業誘致についてお答え申し上げます。
 本年度の企業誘致施策の成果につきましてでございますが、奨励金の増額による企業誘致を推進する県としてのPR効果に加えまして、県庁の職員が積極的な企業訪問をいたしまして、それによりまして昨年四社五工場の進出が決定しております。例年の二、三件という数字に比べて少し増加をしているという状況でございます。
 今後におきましても、企業の設備投資意欲の拡大と国内回帰傾向が少し出てきているという経済情勢を絶好の好機ととらえまして、市町村との連携をより強化いたしまして、企業用地の確保や基本的インフラ整備、地域や用地の特性に合ったターゲット業種の選定など、新たな企業誘致方針、企業誘致戦略を現在策定中でございます。
 企業誘致活動の体制でございますが、本年度、商工労働部に企業立地局を新設し、体制を強化したところでございます。来年度からは、さらに市町村との連携を図る一環として、市町村職員の受け入れも検討しております。私もトップセールスをして、できるだけ企業を回って訴えていきたいと思っております。そういう意味で、さらにこの政策を充実してまいりたいと考えております。
 それから、優遇対象業種の拡大、特に観光業についてどうかというお話がございました。
 これに関しましては、県の優遇策としては企業立地促進資金貸付制度があります。それから、過疎地域に立地する旅館業に対しましては、不動産取得税及び事業税の課税免除制度があります。しかしながら、補助金制度はまだ踏み切れておりません。
 私は、現在、現に旅館等を行っている企業も大事でありますけれども、新たにビジネスを始める企業もひとしく大事でありまして、歓迎すべきものと思います。しかしながら、補助金をつけることについては、私自身もちょっとちゅうちょしております。
 その理由につきましては、観光保養制度の立地要因が地域固有の景観やあるいは温泉といった環境そのものでありまして、他地域との競合が少ないという特色があります。補助金によるインセンティブ効果が、そういう意味では、例えば製造業などの例に比べると少ないというふうに考えることもあると思っております。また、限られた資源をめぐって、既存の企業、現に旅館を営んでいるような企業との関係も発生するかもしれません。したがいまして、観光保養施設を企業立地促進補助金制度の対象とするには、市町村や関係団体との合意形成なども含めまして、まだまだ議論が必要だと考えております。
 それからその次に、「楽しい和歌山の実現」についてでございます。
 本県は、議員御指摘のように、風光明媚な自然に恵まれ、幾多の偉人も輩出するなど、伝統と文化の薫り高い地域でありますが、最近は、経済的にも活力が失われつつあることに加えまして、昨年の官製談合を初め、悪い意味で社会をにぎわす事件が続発いたしました。郷土に自信を持つことができない方々がふえていることを憂慮しているところであります。こういったことから、県民の皆様が地域に誇りを持ち、自信を持って元気に暮らせる楽しい和歌山を五つの政策目標の一つといたしたところでございます。
 このために、議員の御質問にもございましたように、文化に着目し、埋もれている資源・財産の発掘や、あるいは活用や、地域での文化活動を応援することで、和歌山を味のある、元気のある地域にしたいと考えております。また、子供から高齢者まで生涯にわたりスポーツに親しむことのできる環境をつくるとともに、国際交流を活発にいたしまして、世界の人と楽しく交流できる地域づくりを進めることなどを通じて、和歌山での暮らしを心豊かなものにしてまいりたいと考えております。
 次に、新長期総合計画に関しましてお答え申し上げます。
 新たな長期総合計画では、県民が元気になるような将来像をお示ししたいとかねてより申し上げているところでございます。
 計画策定につきましては、先日、新田議員にもお答えいたしましたけれども、人口や経済の将来を見据えた課題の設定とその対応策を検討してまいりたいと思います。具体的には、本県の持つ歴史や文化、自然といった地域資源の活用、あるいは人、物、情報の流れを支える基盤整備、少子高齢化への対応、経済の礎となる産業振興、安全・安心な社会づくりなどは当然盛り込んでいく必要があると考えております。
 今後、県議会議員の皆様からも御意見をいただきながら検討を深めてまいります。そして、県が責任を持って取り組む施策の基本方針、方向についても明らかにいたしまして、県民一人一人がふるさとに誇りと自信を持ち、活力を実感できる社会を目指してまいりたいと考えております。
 計画の策定は、ほぼ一年をかけて行いたいと考えております。また、先日、中村議員から御提案のありました条例案の成立に従いまして、県議会での御議決を得ることになろうかと思います。県議会における十分な御検討が可能となるように、途中段階でもお諮りしてまいりたいと思います。
 次に、市町村合併について御質問がございました。
 市町村合併は地域の将来を大きく方向づける重要な事柄でありまして、基本的には地域において自主的に判断されるべきものと考えております。
 一連の合併を受けて、県内各市町村ではそれぞれ懸命に経営努力をされているところと考えております。しかしながら、地方分権改革を推進し、自立した個性豊かで元気な地域づくりのためには、合併による効果を生かした行財政基盤の強化も有効となります。一方では、地元の方々の気持ちも大切であると思います。その意味で真摯な議論が必要だと考えております。
 そこで、地域の現状や抱える課題等を十分踏まえ、地域の将来像や行政のあるべき姿について、合併も含め、住民の方々も交えたしっかりとした議論を行うことが今必要であると考えております。
 こうした議論を始めるに当たっては、住民の皆様に十分御理解いただけるよう地域の将来像に関する情報を提供することは重要でありまして、県もその議論には積極的に参加をし、地域の方々と一緒になって取り組んで、またできるだけの支援を行ってまいりたいと考えております。
 次に、道州制についてであります。
 道州制の導入は、日本全体のことを考えれば行政の効率化を図るという点で意味があると思いますが、現時点ではイメージが必ずしも日本じゅうで共有されているわけではありません。したがって、地方分権を推進するものとなるかどうか、また、和歌山県民にとって現在及び未来において有益なものとなるかどうかをしっかり見きわめる必要があると私は考えております。
 いずれにいたしましても、道州制は我が国の統治機構全体を改革するものでありまして、そのあり方について国民的な議論を展開していくべき課題でありますので、本県といたしましても、和歌山県民の利益につながるかという観点から、全国知事会等を通じて、道州制の制度設計やその必要性等について積極的に議論に参加してまいりたいと思っております。
 次に、メタンハイドレートについてでございます。
 和歌山県沖の熊野灘では、二〇〇四年度までに音波探査や試錘調査が実施されまして、基礎データの蓄積が行われております。同海域が二〇〇九年度以降に実施される海洋産出試験実施場所の候補の一つと考えられることから、今後ともメタンハイドレート開発計画の進展に着目し、情報収集に努めるとともに必要な対応を行ってまいりたいと思っております。
 なお、議員御指摘のあった領海外での鉱区税賦課につきましては、鉱業権の設定は排他的経済水域内であれば可能でありまして、課税できるものと考えております。ただ、メタンハイドレートの賦存域はずっと沖合でありますので、したがって、その県間の境界確定が必要かと。そういう意味での調整が今後必要になってくると思いまして、その調整を待ちたいと考えております。
 それから、紀の国森づくり税のお話がございました。
 紀の国森づくり税に対する評価についてでございますが、県内の森林の中に放置され荒廃が進んでいる人工林や里山が多く存在するということは憂慮すべきことであると考えております。本税は、そういった本県の森林の現状を県民の皆様一人一人に理解していただき、森林環境を自分たちが守っていこうという意識を高める上で意義のあるものだと考えております。
 次に、昨年末、自由民主党県議団からいただきました御提案であります紀の国森づくり税の使途についてでございますが、森林の公益的役割を発揮し、県民理解が深まる諸事業を初めとした貴重な御提案をいただきました。
 その中で、花粉症対策につきましても大事な政策課題だと考えておりますので、県民や社会の負担を軽減する意味からも、県民の理解を得ながら進めてまいりたいと考えております。
 次に、木材をどのように売っていくかというお尋ねでございます。
 紀州材の販路拡大につきましては、生産者から最終消費者まで紀州材のよさを広く認識していただくということが重要と考えております。このため、今後とも紀州材の評価がさらに高まるように、さまざまな機会をとらえ、積極的にPRしてまいりたいと存じます。このための予算もいささか増額して御提案をさしていただいたところであります。
 また、御指摘の輸出に関しましても、ぜひ挑戦してみたいと考えております。中でも中国の販路開拓につきましては、中国における木材流通の実態を踏まえまして、紀州材のよさを生かした提案や、あるいは知名度を高めるということなどにより販路開拓につなげてまいりたいと存じます。
 次に、企業による森林所有であります。
 議員御提案の、企業が森林を所有する仕組みづくりにつきましては、企業や地域それぞれの事情が想定されるところでありますが、関係者がその方向で合意されるということがありますならば歓迎すべきことだと考えております。
 もちろん、企業の森事業は、和歌山の森林を生かすために企業の力をかりているわけでありますので、企業の取り組み姿勢や考え方を考慮しなければならないということはもちろんのことであります。
 今後とも、より多くの企業等に森林保全活動への参画を呼びかけ、さらに大きな広がりになるよう積極的に本件に取り組んでまいりたいと考えております。現在、このような積極化のための仕掛けを検討中であります。
○議長(向井嘉久藏君) 副知事原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○副知事(原 邦彰君) アドバイザーなど専門職の公募についてのお尋ねがございました。
 県では、職員が直接業務を執行するばかりでなく、必要に応じて、民間の知識経験を活用するため外部の方にお願いする場合がございます。その際の採用については、関係団体からの推薦などにより対応する場合もありますが、基本的には、透明性を確保するなどの観点からも広く公募によることが適当と認識しておりまして、全国に公募する方法も有効な手段の一つと考えております。
 今後とも、議員御指摘の点も踏まえ、優秀な人材の確保に努めてまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 農林水産部長西岡俊雄君。
  〔西岡俊雄君、登壇〕
○農林水産部長(西岡俊雄君) 紀の国森づくり税に関連して、二点お尋ねがございました。
 まず、森林整備に関連する事業予算につきましては、農林水産部が所管してございます林業関係公共事業予算に占める割合を、平成十七年度には三〇%でございましたものを平成十八年度では三八%、平成十九年度では四一%と年々重点化を図る中で間伐等を積極的に実施し、森林の公益的機能の持続的な発揮に努めているところでございます。
 次に、わかやま森林と緑の公社の経営改善の取り組みについてでございますが、分収林の長伐期化への移行、また施業転換資金の活用による低利資金への借りかえや県借入金の無利子化に加えまして、事業内容の見直し、また一般管理経費の縮減、こういったことを図っているところでございます。
 こうした公社の厳しい経営環境につきましては、全国的な課題でもあることから、他府県と連携し、国に対して支援を提言してまいります。
 次に、農地災害についてのお尋ねがございました。
 国庫補助対象とならない小規模なものにつきましては、市町村が実施する小災害復旧制度や農業近代化資金融資制度での対応をお願いしているところでございます。
 また、中山間地域等直接支払制度や平成十九年度から実施される農地・水・環境保全向上対策、いわゆる環境支払い制度でございますが、こういったものにより地域全体で農地や農業用水などを保全していく仕組みづくり、こういったものを推進してまいりたいと考えてございます。
 議員お話がございましたように、農地は、農業生産の場という位置づけだけでなく、国土の保全を図るという観点から、農地の持つ多面的機能を維持することが重要と考えてございます。こうした視点に立って既存の施策の活用に努めるとともに、市町村とも連携し、農地の総合的な保全対策について研究してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(向井嘉久藏君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 高速道路の四車線化について二点お尋ねがありました。
 まず、近畿道海南─湯浅間の整備状況につきましては、二月現在において用地取得率が九七%に至っており、工事につきましても、昨年度から全線にわたり着手がされるなど、順調に進んでいるところでございます。今後とも、関係機関に対し早期供用を強く働きかけてまいります。
 次に湯浅御坊道路については、高速道路のみなべまでの延伸、昨年からのETC割引の適用などにより、交通量が大きく増加しております。また、今後予定している田辺までの開通や海南─吉備間の四車化に伴い交通量はさらに増加すると考えられ、四車線化の必要性が高まるものと思われます。
 一方で、湯浅御坊道路については、高速自動車国道としての位置づけがあるものの、事業化の前段階である基本計画区間にとどまったまま一般有料道路として事業化をし、平成八年に二車線で完成したものであります。したがって、その拡幅四車線化については事業手法が問題となります。
 県といたしましては、今後とも近畿自動車道紀勢線における事業中区間の早期整備とあわせて、湯浅御坊道路の四車線化の整備方針の早期確立を精力的に国に働きかけてまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 中高一貫校教職員の全国公募についてお答えします。
 併設型中高一貫教育の県立中学校では、中学校と高等学校の六年間を見通した計画的、系統的な学習指導を行い、生徒の能力や創造性を伸ばす特色ある教育を進めております。そのため、昨年度から県内の全教員を対象に、県立中学校の教育に強い関心と意欲のある教員を公募するシステムを導入しております。
 今後、教員の採用検査において和歌山らしい教育を進める優秀な人材を確保するため、さらに県内外での説明会を拡大するとともに、議員御提案の県立中学校教員を全国から公募することについても、その具体的な方法を検討してまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十二番中村裕一君。
○中村裕一君 一点、要望を申し上げたいと思います。
 観光施設、観光関連産業に対する誘致策の拡大についてでありますが、投資家が、工場やホテル、観光産業、いずれにしましても投資を考えるときにキャッシュフローを考えましたら、どれだけのお金を投資して幾らの利益が得られるかという、そういう視点があるわけでありますから、私は、工場と同じようにホテルやテーマパークなどのそういう集客施設も、その場所のロケーションでありますとか景色でありますとか歴史でありますとか、そういうことももちろん考慮されるのは当たり前でありますけども、トータルのこのキャッシュフローということを考えれば、この誘致策を拡大するということは有効であるというふうに思っております。
 それから、いろいろお話を伺う中で、今までそんなことを要望されたこともなかったということでありますが、バブル以降、残念ながら、観光関連の投資というのは和歌山県でほとんど行われておらない。だから、そんなことを聞くチャンスがなかったんではないかと私は思っております。
 これから我が県では南海道地震が起きると言われております。観光客をお迎えする上では、安全ということをすごく考えてやっていかなくてはなりません。当然、その観光施設、ホテルなどでも地震対策ということをやっていかなくてはならないわけであります。そのときに、今ある制度──税制の制度があるわけですけども、それだけではなかなか対応し切れないところがあるので、観光施設の耐震化を応援するということとあわせて、こういう新たな投資を呼び込むということがセットで出せば理解をしていただけるんではないかというふうに思います。
 今あるものを有効に磨いて売り出すということも大事でありますけども、その過程で、やはり新しい投資を呼び込むということはぜひとも大事であると思いますので、よく御検討いただきますことをお願い申し上げまして、要望といたします。
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で中村裕一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十五分休憩
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