平成19年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(藤井健太郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十三番藤井健太郎君。
  〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 まず最初に、地方分権と財政運営についてお伺いをいたします。
 十六年度から三年間の期限を設けての三位一体の改革が一段落をいたしました。新年度は、国の予算レベルでは大きな変化はないと言われておりますが、地方自治体では改革の影響が次第にあらわれてくるものと思います。今回の三位一体の改革は、全国ベースでの国庫補助負担金の削減額四兆七千億円に対して所得税から住民税への税源移譲は三兆円にとどまり、地方自治体の独自財源でもある地方交付税等は五兆一千億円削減されるという結果になっております。
 国は国庫補助負担金の削減と事業そのものの廃止・縮減を進めましたが、義務教育費国庫負担金や市町村国民健康保険事業への財政調整交付金など、地方自治体の裁量が及ばない義務的経費に当たる事業が移譲されたものの、地方交付税等でその全額が補てんされているわけではありません。果たして、地方分権はどこまで進み、自治体の財政基盤は強化されたのでしょうか。地方自治体への税財源の移譲は、地方分権の推進と呼べるにふさわしいものであったのでしょうか。今後、三位一体の改革の総括と今後の取り組み方針を県民に示していくことが求められていると思います。
 私にとりましては今議会が任期最後の議会質問となるわけですが、新年度予算の姿から三位一体改革が県財政にどうあらわれているのか、また、国と県、県と市町村の仕事の分担と財政負担のあり方についての所見と今後の対応についてお尋ねをしておきたいと思います。
 新年度予算は、予算規模の四年連続のマイナスとなっています。県税収入は税源移譲もあり伸びが見られるものの、地方交付税の減、所得譲与税の皆減など、国からの依存財源の大幅減で歳入は減少、歳出面では、職員定数と給与のカット、事務事業の縮小・廃止などを進め、それでも不足する財源は、退職手当債、行政改革債などの起債と基金からの繰入金で賄う内容となっています。
 十八年度最終補正予算で基金への繰り戻し八十六億円と新たな積み立て七十億円を行っていますが、新年度当初で二百二十二億円を基金から繰り入れ、結果、起債残高は過去最高の七千九百二十四億円に、基金残高はこの五年間で最低の四百三億円を見込むなど、厳しい予算となっています。
 県民には、定率減税の廃止や森づくり税など新たな税負担や医療、介護などの社会保障負担がふえる一方で、住民向け事業の廃止・縮小が行われ、ひいては住民サービスの後退となり、しかも県財政も一層厳しくなるというのでは納得がいかないところであります。
 議会も、議員報酬や費用弁償などの議員に係る経費の削減を進めているところでありますが、地方分権の推進を住民福祉の向上につなげていくには、自主財源、とりわけ一般財源の充実強化は欠かせない課題でもあります。
 そこで、知事に何点かお尋ねをいたします。
 三位一体の改革と税財源の移譲で県財政は強化されたのでしょうか。どのように判断されているのでしょうか。職員と県民に負担を強いる財政となっているのではないでしょうか。
 二点目に、地方分権を進める上での必要とする一般財源の確保はできたと考えておられるのでしょうか。国は、地方財政対策において、地方税、地方交付税などの一般財源総額は前年度比五千億円程度の増となっており、地方が必要とする一般財源は確保されたとしていますが、本県ではどのようになっているのでしょうか。どのように受けとめ、今後の対応はどうしていくのか、お尋ねをいたします。
 三点目に、新年度、国が目指す地方交付税の支援措置として、頑張る地方応援プログラムや新型交付税算定方式の実施がされようとしていますが、どのように考えて対応されようとしているのか。
 頑張る地方応援プログラムは、自治体に〇七年度から〇九年度までの三年間、地方独自のプロジェクトの策定と公表を求め、地方交付税措置などで支援するというものです。頑張りの成果に応じて算定するとされていますが、その頑張りの指標とされているのが、行政改革の推進、転入者人口、農業出荷額、小売業商品販売額、製造品出荷額、事業所数、若年者就業率、ごみ処理数、出生率の九項目となっています。行政改革における指標は、大都市、地方都市という地域による条件差は余りないと思われますが、他の項目は、過疎化の進む地方都市にとっては厳しいものがあります。この手法は補助金のような特定財源の性格があり、それこそ地方の特色を生かした個性的な取り組みを応援することにはならず、同じ指標での都市間競争となり、都市間の一層の格差拡大を招きはしないか危惧するところであります。
 新型交付税は、人口と面積を基本として基準財政需要額が算定されることから、実際の行政需要との乖離が生まれるのではないかと懸念されます。全国的な平均では前年度と比較して変動がないとも言われていますが、実際の行政需要との乖離が生まれないように国に対する要望が必要だと思います。
 次に、国直轄事業負担金の廃止に向けて。
 国直轄事業負担金制度についての知事の考え方と今後の対応についてお尋ねをいたします。
 大滝ダム、紀の川大堰に象徴されるように、国が直轄施行する土木建設工事で国から県に求められる負担金ですが、新年度予算では、見受けるところ、百四十六億円が計上されています。普通建設事業中、県が主体となって行う国庫補助金による補助事業や県の単独事業は減少傾向にある中で、国直轄事業負担金はほぼ横ばいとなっています。国直轄事業は国家的政策として国の責任において行う事業であることから、地元自治体に財政負担を負わせることについては疑問を感じるところであります。
 また、事業の進め方、内容を見ても問題があるのではと思われる事業もあります。例えば大滝ダム建設負担金ですが、昭和三十七年度から奈良県川上村で吉野川、紀の川流域の治水・利水と発電を目的とした多目的ダムとして着工され、以来四回の計画変更を繰り返し、その都度事業費が膨らみ、平成十六年二月議会では五回目の計画変更を行いました。総事業費三千二百十億円を三千四百八十億円と二百七十億円の追加を行い、工期を平成十四年度から二十一年度までに延長、それによる県の負担は、二十五億五千万円の新たな追加負担が課せられることとなりました。ダム本体の完成を見たものの、ダムの試験貯水により白屋地区で亀裂現象が起こり、地区住民の移転補償と地すべり対策が必要として事業費の追加変更となったものです。
 これまでの計画変更のほとんどは、地すべり対策として行われてまいりました。今回の計画変更の中でも、地すべり対策を進める中で、ボーリング調査の結果、さらに二カ所の新たな地すべり対策が必要であり、さらなる追加負担と工期の延長の可能性も、ことしに入り報道がされております。いつまで追加負担をし続けねばならないのか、国の責任を問いたい問題です。
 もう一つ指摘しておきたいのは、住友金属西防波堤沖の埋立地、関西電力のLNG火力発電所立地予定地に十万トンクラスのLNGタンカーの接岸を予定して、延長千メートル、事業費三百億円で平成十二年度から防波堤築造工事が国直轄事業として進められ、県も負担をいたしております。
 火力発電所は、当初計画では平成十六年度中に一号系列百六十四万キロワットが稼働する予定でしたが、いまだに着工予定が決まったという話は聞いてはおりません。しかし、防波堤工事だけは進められています。毎年、国の事業費に応じて負担しており、既に二十九億円の負担となっています。果たして緊急性があるのか、県負担金の支出に疑問を感じるところであります。
 次に、県工事の市町村負担金の廃止に向けて。
 新年度、県が施行する道路、港湾、急傾斜地対策などの土木建設事業に、市町村からの負担金を徴収する議案が提出されています。県内三十市町村から、事業費約二百四十六億五千万円に対して三十九億七千六百万円の負担金を、市町村の財政規模にかかわりなく、事業ごとの負担割合を定め徴収する内容となっています。
 市町村からの要望もあって事業量を確保する上での財源確保のためということもあろうかとは思いますが、県土保全と災害防除のための対策工事の施行は県の責務だと思うところです。これまでも機会を見つけては要望を重ねてきたところではありますが、改めて知事に、県工事負担金の一層の軽減と廃止に向けてのプログラムをつくる必要があるのではないか、お尋ねをいたします。
 二番目に、県民の暮らし、雇用、社会保障についてお尋ねをいたします。
 新年度予算編成に当たって、県民の暮らしの実態をどのようにとらえての予算と施策になっているのか、お尋ねをいたします。
 新聞報道などでは、景気が回復し好景気が史上最長と喧伝されておりますが、県民生活の暮らしの実感としては身近には感じられないように思えます。むしろ、縦並び社会、格差社会と言われるように、暮らしの格差が拡大し、固定化の傾向になっているのではないでしょうか。税や社会保障制度が所得の再分配の機能を発揮し、所得格差の是正の方向に有効に働いているのか、疑問を感じます。
 勤労者の給与収入、年金生活者の年金収入が減少するもとで定率減税の縮小・廃止や年金課税への強化が実施をされ、それが国民健康保険料、介護保険料のそもそもの引き上げと見かけ上の所得の増大によるはね返りも加わって、社会保障費に対する県民負担が増大をしてきております。
 所得の減少と保険料負担の増大は保険料滞納世帯の増大を招き、国民健康保険では、短期被保険者証や資格証明書を持つ世帯がふえる傾向にあります。県民の暮らしの最後のよりどころでもある生活保護制度を見ても、高齢者世帯、母子世帯の被保護者がふえ続けています。生活保護制度は、生活に困窮するすべての国民に対し、憲法で定められた生存権の保障をするとともに生活の自立を助長することを目的としております。
 その生活保護制度が、生活の自立のためにということで、老齢加算、母子加算の縮小・廃止が行われました。また、母子家庭への児童扶養手当も削減されていくなど、援護を必要とする世帯の所得が、自立支援の施策を準備するからということで、自立に足る所得を得ているかどうかの確認もされずに一方的に減らされようとしているのは問題があります。
 勤労者の雇用形態も、正規雇用から非正規雇用へと流動化が進み、そのことにより低賃金と不安定就労がもたらされ、「ワーキングプア」という言葉まで生まれています。働けど働けど暮らしが楽にならない。とりわけ将来を担う若年層での低賃金、不安定就労と失業率の高さの改善は喫緊の問題でもあります。住民福祉の向上を使命とする地方自治体として見過ごすことのできない問題でもあります。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 知事の県民の暮らしと格差拡大についての認識はどうか。どのように受けとめて新年度予算で対応されているのか。知事の所信では、出生にかかわる経済的負担の軽減、子育て世代への支援に意を尽くされたということでありますが、格差拡大への取り組みとして、ほかにもどのような予算措置がなされているのでしょうか。
 二点目に、長期総合計画と社会保障アクションプランについてであります。
 知事は、県行政にかかわる中長期の基本構想と基本計画を定めると言われています。その中に、県が実施をする社会保障施策のあり方についても基本的な事項が記述されることになるとは思います。
 一方、県は平成十八年三月に、行財政改革の根幹をなす計画として、平成十七年度から二十一年度までの五カ年を取り組み期間として行財政改革推進プランを策定しました。その中に、福祉、医療等社会保障制度の安定的運営を図るためとして、社会保障アクションプランを策定するとしています。
 当局のこの計画をつくる動機として、社会保障費の増加を抑制するために施策の重点化と県民負担のあり方を示し、県民の理解と制度の維持を目指すことがあったと思われますが、なかなか着手できていないようでもあります。私は、目まぐるしく移り変わる医療・福祉の制度が県民の暮らしの実態から見て果たしてどのように有効に働いているのか、県民が求める社会保障制度のあり方の検証を行うとともに、県としてのあるべき社会保障、福祉の施策の方向を示し、中長期に必要とする社会保障財源の展望を持った計画とすべきではないかと訴えてまいりました。
 知事の社会保障アクションプランについての今後の対応についてお尋ねしておきたいと思います。
 次に、市町村国保への支援の強化について。
 県内の国保料・税の滞納世帯が、昨年は国保加入世帯の一七%にもなっています。滞納世帯に対して、被保険者証にかわって資格証明書が発行されている世帯は四千四百世帯、被保険者証が窓口で留保されている世帯は二千四百世帯、一カ月有効、三カ月有効という短期の被保険者証が発行されている世帯は一万三百世帯、これらを合わせると国保加入世帯数の七%の世帯が通常の被保険者証を持たない世帯となり、安心して医療を受けることができない世帯が増大しつつあります。
 とりわけ、家計収支での負担が最も多くなる五十歳代、年金生活に移行しつつある六十歳での滞納がふえてきているのが特徴だとも聞いております。市町村国保の運営も、平成十四年十月より老人保健医療の対象が七十歳から七十五歳以上へと段階的に引き上げられ、これまで老人保健から給付されていた高齢者の医療給付を国保から行うこととなり、単年度収支が赤字となる市町村がふえてきております。
 市町村国保の担当者からは、当初予算で収支を合わせようとすると保険料の大幅引き上げを行わねばならず、国保料負担が限界に来ていることを考えると保険料引き上げは実施はできない、国、県からの支援をふやして保険料を引き下げられる方向にしてほしいとの声も聞いております。市町村国保の財政の安定を図り、加入者が適切な保険料で必要とする医療給付が受けられるようにしていくことが求められております。
 市町村国保への財政支援策として、三位一体の改革の中で、市町村国保への財政調整交付金や低所得者への保険料の法定減免分を国にかわって県が負担することになりました。また、県が実施をする六十七歳から六十九歳までを対象とする老人医療、重度心身障害児(者)医療、乳幼児医療、ひとり親家庭への医療給付など、いわゆる所得制限を設けての福祉医療分について、国は市町村国保への負担金を減額する措置をとっております。その減額分を補てんする県の市町村国保への支援が行われておりますが、乳幼児医療とひとり親家庭についての県からの支援は実施をされておりません。また、老人医療、重度心身障害児(者)医療への財政支援も減額されつつあるということです。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 市町村国保へどのような支援をしているのか。新年度での対応はどうか。
 福祉医療制度に対する県の財政支援を強化していくべきではないのか。また、国の国保への負担金カットへの対応をどうしていくのか。お尋ねをいたします。
 次に、障害者自立支援特別対策についてお尋ねをいたします。
 昨年四月、障害者自立支援法の制定により、これまでサービス利用については本人収入に応じた負担割合だったものが、低所得者減額制度が設けられたとはいえ、事業費に対して原則一割の利用者負担となり、利用者並びに生計を同一とする家庭に重くのしかかってくることとなりました。
 作業施設に通って受け取る工賃よりも利用料の方が高くなるということや、生計を同じくする世帯への利用料負担となり、減額制度が有効に働かないことなど、利用者負担の増大が施設利用の抑制効果となってあらわれ、障害を持った人の自立を逆に阻むということにもなりました。また、施設への収入が月額定額制から利用日数をもとにした収入へと変わり、経営の不安定さを招きました。以来、障害者、家族、施設関係者を初め、自治体からも国に対して改善を求める運動が広がり、本県でも、県当局が利用者や施設の実態調査、意見聴取を行い、国に対して改善要望を重ねてきたところでもあります。
 そういう中で、昨年十二月下旬、国は、利用者負担の軽減、事業者への激変緩和措置、新法移行への緊急緩和措置などを柱とする一定の改善の方向を示す特別対策を行うことを発表いたしました。利用者、関係者の運動が実ったものとして歓迎するものでありますが、次の見直しまでの二年間の経過措置であることや利用者負担の軽減も負担総額の四分の一程度であることなどから、これにとどまることなく今後も引き続き改善を求めていくことが必要だと思うところです。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 県内で実施をされる特別対策の主な内容はどういうものになるのでしょうか。利用者、事業者の負担改善にどこまでつながるのでしょうか。原則一割負担のためにサービス利用を断念、制限を余儀なくされている人のサービス利用に再び結びつけることができるのでしょうか。
 また、特別対策後の利用状況調査を行い、次の見直しにつなげていくべきだと思いますが、準備はされるのでしょうか。
 障害者の地域移行への促進を図る施策が進められつつありますが、居宅での支援のあり方、サービスの組み立て、生活全般の相談に気軽に応じることのできる相談体制の確立がぜひとも必要であります。本人の不安はもとより、家族の心労には大変なものがあります。市町村が中心となっての相談事業となっているようですが、県の支援も十分行い、気兼ねなく二十四時間対応できるような相談体制の確立を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、若年者、母子家庭の雇用と今後の取り組みについてです。
 若年者、母子家庭の雇用の実態と就労に向けての支援策、新年度予算での対応についてお尋ねをいたします。
 県は、平成十六年十一月、景気・雇用対策本部を中心に全庁的に景気雇用対策に取り組むとして、雇用創出に係る具体的目標数値を設定した雇用創出プログラム「わかやまジョブ・クリエイション」を平成十六年度から十九年度までの四年間のプログラムとして策定をいたしました。十九年度、新年度がプログラムの最終年度となっています。
 その中で、若年者の円滑な就労支援対策を進め、平成十四年度の本県における若年者の失業率一二・三%だったものを、四年間でその当時の全国平均並みの九・五%以下にするという目標数値を設定しました。以来、若年者の高い失業率、フリーター、ニートの増加、高い離職率などに対応する施策を若年者就職支援センター「ジョブカフェ」の設置と充実を行い、労働局など関係機関との連携を図り、対策を進めてきております。
 若年者雇用についての取り組みは全国的な課題でもあり、それぞれの自治体においても取り組みが進められています。働く場をつくることや労働法制の改善が基本的な問題であることは論をまちませんが、若年者の能力と適性に応じた相談、情報の提供、技術の習得への支援など、側面的な支援も欠かせない課題でもあり、県が目指すとした失業率改善の目標数値を新年度でまさに全国平均以下にすることが期待されるところでもあります。
 そこで、商工労働部長にお尋ねをいたします。
 若年者を取り巻く雇用状況は、県内においてどのようになっているのか。実態とその動向をどのように把握されているのか。新年度の取り組みと失業率改善の目標数値の達成見込みはどうか。お尋ねをいたします。
 福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 母子家庭の雇用状況、就労状況はどのようになっているのか。実態と就労の動向をどのように把握されているのか。児童扶養手当の削減とともに自立支援策が並行して進められていますが、どのような成果があらわれているのか。新年度の取り組みと期待される効果についてお尋ねをいたします。
 最後に、高校授業料減免制度の拡充について教育長にお尋ねをいたします。
 小中学校では、義務教育は無償とする憲法の要請に基づき、経済的に困窮している家庭に学用品や入学準備金、給食費、医療費などを補助する就学援助制度が市町村を実施主体として行われています。従来、この制度は、費用の半額を国が補助する仕組みになっていましたが、三位一体改革の中で就学援助に対する国の補助が削減され、国は生活保護世帯に限り補助することとし、それ以外の世帯については交付税措置という一般財源化にしたため、この義務教育における就学援助の制度の適用となる所得水準が引き下げられました。対象者や支給項目がそのために狭められてきております。
 高校においては、経済的困難さを抱える家庭に対して、生活保護家庭に対しては自立助長を促す視点から就学費の支給が新たに始まり、それ以外の家庭で経済的理由により修学が困難な場合には修学奨励金の制度と授業料減免措置、定時制・通信制では、それに加えて教科書等の無償給付、私立の高等学校で授業料軽減を実施する学校に対しての補助制度などが設けられています。
 就学奨励金、授業減免制度は家庭の所得による制限が設けられて運用されていますが、問題は、運用基準が生活保護の食費、水光熱費などの一般生活費の基準額に準拠しており、その一般生活費が年々引き下げられてきていることです。その一方では県立高校授業料の引き上げが行われ、空調設備を設置する高校では、その使用料が授業料に加算されて徴収されています。県民の高等教育を受ける権利を保障し、生徒の将来に向けての自立を促進していくためにも授業料減免制度の充実強化が求められているのではないでしょうか。
 そこで、教育長にお尋ねをいたします。
 授業料減免制度の持つ意義をどのように認識しておられるのか。また、授業料減免者数の推移をどのように把握されているのでしょうか。
 生活保護基準が引き下げられてきている中にあって、生活保護基準よりも上回る減免基準の設定が必要ではないでしょうか。どのように考えておられるのかお尋ねをして、私の第一問といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 地方分権と財政運営についてお答え申し上げます。
 まず、三位一体改革と今後の対応についてでございます。
 本県の財政は、三位一体改革により地方交付税は減少し、また県税は、税源移譲による増収があるものの、それを上回って所得譲与税が減少するなど、財源面だけを見れば大変厳しい状況にあります。また、財政調整基金、県債管理基金があと一、二年で枯渇する見通しであることから、今後も県民ニーズに的確に対応し和歌山を元気づける施策を積極的に展開するためには、持続可能な財政を目指して、痛みを伴いますけれども、県民の御理解と御協力を得ながら行財政改革を強力に推進する必要があると思います。
 あわせて、安定的な財源を確保するため、税源の偏在の是正など、地方税財源の拡充を国などに対して強く訴える必要があると考えております。
 頑張る地方応援プログラムにつきましては、やる気のある地方を応援する、支援する制度ですので、本県も主体的な努力を前提にいたしまして、しっかり取り組む必要があると考えております。
 新型交付税につきましては、人口規模のコスト差の反映などにより変動額は最小限にとどめるとの方針が示されていることから、ひとまず安心ということでございます。
 次に、国直轄事業負担金についてでございます。
 国直轄事業負担金につきましては、全国知事会の「平成十九年度国の施策並びに予算に関する提案・要望」において、地方分権改革の税財政対策として国直轄事業負担金の廃止を提言しております。今後も全国知事会と連携してまいりたいと考えております。
 次に、県工事の市町村負担金についてでございます。
 県営事業負担金につきましては、地方財政法第二十七条に基づき、事業に要する経費の一部を市町村に負担していただくものであります。平成十七年度に、東南海・南海地震対策が喫緊の課題であることから、海岸防災関連事業に係る地元負担金を廃止するなど、随時見直しを行っておりますけれども、一方で県の財政が厳しい状況にあることから、法に基づき、引き続き市町村の御協力をお願いせざるを得ない状況にもあります。本件の問題は、これからの地方分権のあり方の一つとして、制度全体の大きな見地から検討されるべきものと思っております。
 次に、県民の暮らしと格差拡大についての認識についての御質問でございます。
 近年、全国的に生活保護率は上昇傾向にありますが、本県においても上昇が見られるところであり、このように貧困の問題は大変重要な政策課題であるというふうに考えております。しかしながら、県において働く場所が少ないことにこれは根本的な原因があると私は思っておりまして、企業の育成支援などの産業振興を通じて職づくりを進め、全体としての所得を伸ばしていく中で考えていく必要があると考えております。同時に、生活保護を初めとする社会のセーフティーネットが有効に機能していなければならないということも考えております。
 このために、県が独自にできることには限界がありますけれども、県民の方々が将来に不安を感じることがないように、安心・安全に心がけて予算編成を行ったところです。具体的には、フリーター等若年層の就労を支援するためにジョブナビゲーターをジョブカフェ・わかやまに新たに配置するほか、障害者施策につきましても、さらなる利用者負担が生じないようにするために、利用者上限超過額補助制度や小規模作業所への助成制度等、国の施策に加え、県独自のきめ細かな政策を盛り込んだところです。
 いずれにいたしましても、喫緊の行政課題への的確な対応を図り、すべての県民が安心して生活できる和歌山づくりを可能な限り実施してまいりたいと思います。
 次に、長期総合計画と社会保障アクションプランについてであります。
 長期総合計画と社会保障アクションプランについての関係及び当該プランが社会保障費の削減を目的とするものではないかとの御質問についてお答え申し上げます。
 社会保障に関しましては、基本的に長期総合計画に盛り込むことと考えております。しかしながら、福祉、保健、医療は県民にとって身近でかつ最も関心の深い問題でありまして、いろいろ詳細な問題も発生し、長期総合計画に盛り込めない部分も生じる可能性があります。したがって、その場合には、同計画を補うような形でプランの策定も検討する必要があると考えております。
 また、社会保障関係経費については、その持続可能性を念頭に、必要な人に必要な施策が行き渡るようにその充実に努めてまいりたいと考えております。
○議長(向井嘉久藏君) 福祉保健部長小濱孝夫君。
  〔小濱孝夫君、登壇〕
○福祉保健部長(小濱孝夫君) 県民の暮らし、雇用、社会保障についての御質問のうち、三点の御質問にお答えいたします。
 まず、市町村国保への支援の強化についてですが、市町村の国民健康保険財政に対する県の支援については、医療給付費等の七%を国民健康保険財政調整交付金として負担しているほか、低所得者を多く抱える市町村保険者を支援し、中間所得者層の保険料の負担を軽減するために保険料軽減分を公費で補てんしております。県が補てんの四分の三を負担しているところであります。
 また、一件八十万円以上の高額な医療費が発生した場合に、国保財政の急激な影響の緩和を図るため、各市町村国保からの拠出金を財源として費用負担を調整している高額医療費共同事業に、市町村国保の拠出金に対し、国と県が四分の一ずつ負担し支援を行っています。
 福祉医療実施に伴う国庫負担金の減額措置に対する補てんにつきましては、厳しい財政状況の中でやむを得ず、県民への影響を最小限にとどめる形で、他府県の状況も踏まえ、平成十九年度から見直すことといたしましたが、これらの負担金、補助金を合わせ、市町村国保に対する県の負担は対前年度約一億一千万円増の九十六億九千六百万円を平成十九年度予算案に計上しているところであり、御理解をいただきたいと思います。
 なお、こうした状況の中で補てん制度をさらに乳幼児医療やひとり親医療にまで拡大することは困難であると考えますので、県といたしましては、引き続き国庫負担減額措置の廃止につきまして国に強く働きかけてまいります。
 次に、障害者自立支援特別対策についてですが、障害者自立支援法は、障害福祉サービスの提供についての抜本的な改革であることから、さまざまな御意見があります。こうした御意見に対応するため、国において、障害福祉サービスの利用者負担のさらなる軽減や事業者に対する激変緩和措置、新法への移行等のための経過措置などの改善策が平成二十年度まで講じられることとなりました。
 県といたしましては、これに基づく特別対策として、グループホーム等のバリアフリー化や新体系に移行するための施設改修等の基盤整備支援、直ちに新体系へ移行できない小規模作業所等への経過的な支援などを行ってまいります。市町村においてもデイサービス事業所への経過的な支援などが進められる予定であります。
 また、このたびの改善策について、市町村や事業者等への説明会などを通して広く周知し、負担増大を理由にサービス利用を控えておられた方々の利用再開等につなげていきたいと考えております。
 なお、特別対策後も利用状況については引き続き注視し、その上で必要があれば国に働きかけてまいりたいと考えております。
 さらに、県といたしましては、こうした相談支援事業に携わる人材の育成を初め、地域のネットワークづくりの支援に努めるなど、障害のある方の地域生活を支える相談支援体制の整備や充実強化を図ってまいります。
 次に、母子家庭の雇用状況と今後の取り組みについてですが、雇用状況につきましては、平成十五年の全国母子世帯等調査によると八三・〇%が就業しており、うち臨時・パートが四九・〇%と最も多く、次いで常用雇用者が三九・二%となっております。平成十年の調査と比べ、常用雇用者が一一・五%低下し、臨時・パートが一〇・七%増加しております。
 県では、母子家庭等就業・自立支援センターを設置し、就業に関する相談、助言や求人情報の提供など、自立に向けた取り組みを行っております。また、就業に結びつけやすい資格取得のための講習や職業能力の開発を支援するための給付金支給などの支援を行っているところです。平成十九年度は、これに加え、新たに母子家庭の母を常用雇用に転換した事業主に支給する奨励金や個々の事業等に配慮した自立支援プログラムの策定等により支援策の充実に努めてまいります。
 以上です。
○議長(向井嘉久藏君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 若年者の雇用状況と取り組みについてでございますが、景気の回復基調によりまして雇用情勢は改善傾向にありますが、フリーター、ニートの増加、高い失業率や離職率など、若者を取り巻く雇用問題は深刻なものがあります。そのため、実態把握のために平成十七年に実施したアンケート調査から、県内にはニートが約五千七百人、フリーターは約一万四千人いると推計しているところであります。これらに対応するため、昨年四月に若年者就職支援センター「ジョブカフェ・わかやま」を移転、拡張するとともに、ハローワークの学生職業相談室を併設し、機能の充実強化を図ったところであり、今年度一月末現在の利用者数は七千三百二十七人、就職者数は三百五人で、前年同期に比べてそれぞれ一・九倍、一・四倍の増加となっております。また、来年度は、ジョブカフェ・わかやまに新たにジョブナビゲーターを配置し、就職前の大学生等を対象とした巡回カウンセリングの実施や企業の求人ニーズの情報の収集などを行ってまいります。
 今後とも、和歌山労働局など関係機関と連携を図りながら、若者のニーズに応じた多様な支援メニューにより早期就職や職場定着ができるよう支援してまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 高等学校の授業料減免についてお答えいたします。
 平成十七年度の減免者数は、生徒数全体の約八%に当たる二千四百二十八名で、減免の総額は約二億一千百万円であり、三年前と比較すると、人数で五百八十七名、金額では約六千六百万円の増加となっております。生徒数が減少しているにもかかわらず、県内の厳しい経済状況を反映して減免者数は年々増加しているという状況であり、この傾向は全国も同様であります。
 授業料減免制度は、生活困窮等により授業料の納入が困難な生徒に対して授業料の免除を行い、就学機会の確保を図る対策の一つであります。生活保護世帯については、生業扶助の中で高校の就学費が対象とされておりますので授業料減免の対象外となりますが、生活保護世帯以外についても、生活保護基準に準じる世帯には全額免除を、収入が生活保護基準の一・二倍までの世帯には半額の免除を行っております。
 厳しい財政状況の中ではありますが、今後とも就学対策として奨学金制度等について活用の周知に努めるとともに、授業料減免制度を堅持してまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 答弁をいただきましたけども、今回要望ということでさしてもらいたいと思うんです。
 三位一体の改革が、結局は地方財政の強化に結びつかなかったのではないかと、今のところね。そういう中で、行財政改革を推進しながら新たな事業の財源をひねり出していかなくてはいけない、起債と基金に頼るという、こういう構図になってると思うんですが、前からも言ってることなんですが、やっぱり地方分権、三位一体の改革というのは、国の事業量と財源ということで見れば、国が仕事が二だとしたら地方が三やってる。財源は国が三取って地方が二という、こういう偏在といいますかね、こういうようなバランスが崩れてるというところに私は大きな問題がまずあるだろうとは思うんですが、その是正というのは大変なことであります。
 そういう点から、やっぱり今後とも、この真の地方分権と言うにふさわしい地方の財源のあり方ということで声を上げていっていただきたいと。それは当然そうしていただけるものと思っておりますが。
 そういう中で、今、県民の暮らしが大変な状況になっとるわけです、格差の拡大と固定化ということで。県経済全体の底上げを図りながら県民所得をふやしていくという、これは戦略的な課題だとは思うんですが、当面目の前で困っている県民がいてる、そういう実態が一方ではあるわけなんですね。そこに直接手を差し伸べていくということが地方自治体の本来の使命ではないかと私は考えるんです。
 前知事は、打ち出の小づちがあるわけではないということで、そのセーフティーネットに対する財政配分、財政措置というのは難しいんだというような話をされてましたが、私、一問でも言いましたように、国の事業の直轄工事の負担金であるとか、それから、県が実施する施策の中でもまだまだむだを省いていく、それから、県民の生活を直接底支えしていく、そういうところへ予算を回していくということが、本当に目の前の困った人を助けるということが今大事だろうと思うんですね。
 教育の授業料の減免措置なんかでも、基準となる生活保護基準がどんどん下がっていっているんだけど、減免しなくてはいけない家庭がふえてきてるというところに、やはり今の現状があるだろうと思うんです。そういった点も十分に意を尽くしていただいて、これからの県政の運営と予算の配分に意を尽くしていただきたいということを申し上げて、私の質問といたします。
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時四十分休憩
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