平成19年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)


県議会の活動

平成十九年二月 和歌山県議会定例会会議録 第六号
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議事日程 第六号
 平成十九年二月二十六日(月曜日)午前十時開議
  第一 議案第四号から議案第十九号まで、議案第三十四号から議案第五十二号まで、議案第五十四号から議案第七十七号
     まで、及び議案第七十九号から議案第九十一号まで(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第四号から議案第十九号まで、議案第三十四号から議案第五十二号まで、議案第五十四号から議案第七十七号
     まで、及び議案第七十九号から議案第九十一号まで(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十四人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       新   島       雄
     四  番       山   下   直   也
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     九  番       藤   山   将   材
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十五 番       平   越   孝   哉
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       花   田   健   吉
     十八 番       前   岡   正   男
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       飯   田   敬   文
     二十二番       谷       洋   一
     二十三番       井   出   益   弘
     二十五番       東       幸   司
     二十六番       藤   本   眞 利 子
     二十八番       原       日 出 夫
     二十九番       冨   安   民   浩
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       中   村   裕   一
     三十三番       浦   口   高   典
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       玉   置   公   良
     三十六番       江   上   柳   助
     三十七番       森       正   樹
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       阪   部   菊   雄
     四十 番       新   田   和   弘
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(なし)
 〔備考〕
     二十四番欠員
     二十七番欠員
説明のため出席した者
     知事         仁   坂   吉   伸
     副知事(総務部長事務取扱)
                原       邦   彰
     知事公室長      野   添       勝
     危機管理監      石   橋   秀   彦
     企画部長       高   嶋   洋   子
     環境生活部長     楠   本       隆
     福祉保健部長     小   濱   孝   夫
     商工労働部長     下           宏
     農林水産部長     西   岡   俊   雄
     県土整備部長     宮   地   淳   夫
     教育委員会委員    湯   川       力
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員    片   山   博   臣
     警察本部長      辻       義   之
     人事委員会委員長   西   浦   昭   人
     代表監査委員     垣   平   高   男
     選挙管理委員会委員長 山   本   恒   男
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       山   本   庄   作
     次長         植   野   博   文
     議事課長       下   出   喜 久 雄
     議事課副課長     薮   上   育   男
     議事班長       土   井   敏   弘
     議事課主査      石   垣   悦   二
     議事課主査      湯   葉       努
     総務課長       島       光   正
     調査課長       辻       和   良
 (速記担当者)
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課主査      保   田   良   春
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  午前十時二分開議
○議長(向井嘉久藏君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第四号から議案第十九号まで、議案第三十四号から議案第五十二号まで、議案第五十四号から議案第七十七号まで、及び議案第七十九号から議案第九十一号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十八番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。
 一つ目に、防災についてであります。
 昨年の六月議会でも取り上げさせていただいたんですが、まず一つ目に災害の事前対策についてであります。
 ことしは亥年、イノシシ年であります。十二年前の一月十七日午前五時四十六分五十二秒に阪神・淡路大震災は発生しました。地震で亡くなった方は六千四百三十四人、このうち約五千五百人の方が即死に近かったと言われております。偶然かもしれませんが、日本史上最大の震災と言われている一七〇七年の宝永地震や、死者・行方不明者十万五千人、百九十万人が被災者となった一九二三年の関東大震災、これも亥年に発生した記録があります。
 地震に限らず、大雨、土砂崩れ等、大自然による災害はいつ起こるか知れません。人間が自然環境を自由に扱うことはできません。だからこそ事前に大災害に備えた予防対策は必要であります。
 去る一月十八日、県民文化会館において、地震に関するセミナー「地震に備え、防災意識と地域防災力の向上を図る」が文部科学省と和歌山県の共催で開催され、来県された文科省研究開発局地震・防災研究課地震調査研究企画官中嶋秀俊氏は、「東南海地震の発生確率は、三十年以内に六〇から七〇%に引き上げられたが、三十年以内とは、きょうかもあすかもしれないという数値である。今の日本では、いつ、どこで地震が起こってもおかしくはない」と明言されました。
 我が和歌山県には、二つの大規模地震が必ず来ると言われています。一つは、和歌山市を初めとして紀伊水道を南に下り熊野灘から三重県にかかるまでの紀伊半島の海沿いすべての市町に被害が及ぶと言われている東南海・南海地震、その津波であります。二つ目は、県都和歌山市には市内を左右に通る磯ノ浦断層と近年発表された和歌山北断層があり、その断層は、岩出市の根来断層から紀の川市、かつらぎ町、橋本市を通って奈良県まで続く中央構造線があります。いわゆる和歌山直下型地震区域です。
 昨年、自主防災組織の中心的な担い手である地域防災リーダーを育成する防災講座「紀の国防災人づくり塾」の講師に来県された富士常葉大学助教授小村隆史氏は、「地震が発生した後を想定して行われる事後対策では人の命を守れない。予防(事前)対策が八割、地震発生時の応急対応に一割、復旧・復興に一割という割り振りで対策に取り組むべきである」と述べられております。
 災害対策は三通りあります。地震が発生する前から備えておく事前対策、地震が発生した際に自分の置かれている環境でどう応急対応するかを判断する事中というか応急対策、そして地震が発生した後の事後対策であります。幾ら避難訓練を繰り返しても、事後対策では生命は守れません。避難訓練も大事ですが、ともすると現状では発災後訓練であり、肝心なのは発災前の被害を減らす減災に対する啓発、意識が必要です。
 災害が起こる前に事前対策をしておくことが二つの大きな減災につながります。一つは、生命という最も大事な財産を守ることであり、二つ目は、資産の被害を抑えることにつながります。生きていればこそ、避難も、その後の生活も財産も行使できるのであります。地震が発生したときの判断は、ふだんの危機管理をみずから考え、事前の対策を講じていなければ難しいと思われます。
 さて、我が和歌山県は、仁坂知事のもと、安心・安全の確保、安全・安心の和歌山の実現を目指して耐震整備に取り組んでおります。しかし、耐震補強した建物だからといって地震の被害を受けないということではありません。地震が発生して建物は倒壊せずに残っていても、中にいる人間がたんすや食器棚などの下敷きになって帰らぬ人になってしまっては何にもなりません。
 建物は無事でも、室内の家具などが地震によって転倒、落下、散乱します。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震の被災者の中には、倒壊した家の方だけが被災者になったのではなく、建物は何の支障もないのに自宅内で亡くなったり重傷を負われた方がたくさんいらっしゃいました。事前対策、これは室内における転倒防止、落下防止、ガラス飛散防止の三つであります。
 地震防災先進県の静岡県、愛知県、そして三重県では、建物対策と室内対策の二つを一つにして耐震補強ととらえています。全国に先駆けて愛知県の豊田市が、事前対策として転倒、落下、ガラス飛散防止対策を市民に呼びかけるとともに、豊田市役所本庁舎、支庁舎も事前対策を実施しています。豊田市に誘発された東海地区一帯では、児童福祉施設、高齢者施設、身体障害者施設等の社会的弱者対象施設を第一に優先した事前対策を実施しているようです。
 東南海・南海地震による津波の警戒対策も大事ですが、日本の場合、一九六〇年のチリ津波を除いて、大津波の前に大体大地震が起こります。「地震が来たらすぐに避難せよ」と理屈や言葉でわかっていても、人間の体はすぐに動かないものです。
 震度五以上の揺れを感じた場合、体が硬直して動けなくなったり、その場でひっくり返らないようにするのが精いっぱいです。震度六以上となると、自由はききません。家では、家具が転倒し、テレビが飛び、生活用品が散乱するのです。職場では、ロッカーや書棚が転倒し、パソコンやプリンターが宙を舞います。けが人のいない家庭や職場はあり得ないでしょう。地震がおさまったときには、逃げるどころか、生きているか死んでいるかのどちらかかもしれません。生きていた人だけが、次に頭を切りかえて津波から避難する行動をとれるのです。どんなにすばらしい避難道、避難場所をつくっても、家屋や職場から外に脱出できなければ生命は幾つあっても足りません。
 中央防災会議前委員、内閣府地震防災対策強化地域判定会会長の溝上東京大学名誉教授は、「家具類の転倒・落下防止をするだけで被害は相当防げる。市民もできる範囲で対策をしてほしい」と所見を述べられております。また、昨年九月に和歌山県立医科大学講堂で行われた和歌山県災害医療従事者研修会の講演会で講師に招かれた兵庫県災害医療センター顧問、西宮病院名誉院長の鵜飼卓氏は、「予防(事前対策)にまさる治療なし。患者さんの生命をお守りするのは当然として、院内機器一つそろえるだけでも大変である。今、事が起こる前に対処すれば一億円で済むことが、災害に遭ってしまったら百億円では済まなくなる。悔いを残さないようにしてほしい」と教訓を残されました。
 教育施設を含む避難場所に指定されている耐震補強された公共施設でも、いざというときに施設内のロッカー、靴箱などが散乱しガラスが割れて飛散していれば、そこは避難場所ではなくなってしまいます。
 新潟県中越地震の一例を挙げますと、新潟県小千谷市では、小千谷市民病院内が地震によって手術室、病室、ナースセンター、院長室とすべての部屋が散乱し、病院機能は全室使用不可となりました。たまたま隣に病院の老人介護施設があったので、震災後に入院患者をそこに臨時に移動することができましたが、近隣の住民の方々も助けを求めてこられ、避難場所に指定されていなかった老人施設が急遽臨時避難施設になってしまったという例もあります。
 このように、災害時には予想もつかないことが起こるので、公共施設だけでなく、私立の保育園、幼稚園、学校施設、老人施設、障害者施設、養護施設、病院なども事前対策をしっかり施すべきであります。
 学校には、ピアノやエレクトーン、ロッカーや体育用具があります。これが大震災で飛んだり転倒したりするのです。子供にぶち当たったり上からのしかかったりしないかと想像するだけで、ぞっとします。耐震補強については、建物だけでなく、室内における事前対策についても震度五以上の地震に耐えられるだけのものかどうか確認することも必要ではないでしょうか。
 県民の安全を守る警察、消防、人の命に直結する病院についてですが、阪神・淡路大震災時に、警察、消防、病院に勤務する職員の皆さんも被害に遭い、出動・出勤が阻まれたところがありました。大地震や大災害が発生すると、和歌山県民全員が被災者になります。警察、消防、病院職員も大切な和歌山県民です。職員の皆さんがいざというときにこそ職務を立派に遂行できるよう、事前から署内・院内の室内事前対策について準備を施していかなければなりません。
 和歌山県庁舎も、平成十七年度から二十二年度にかけて、和歌山県庁耐震等改修事業として六十九億二千二百七十一万五千円の予算をかけて耐震補強を既に行っていますが、現状のままでは、大地震が発生した場合、建物はしっかりしていても、中に生存者がいるかどうかわからないようなことになりかねません。県民がたちまち困ってしまいます。
 地震防災先進県の静岡、愛知、三重県の市町村のように、この県庁、各振興局等各庁舎も耐震補強とともに事前対策を行い、あわせて消防を含めた市町村の庁舎への取り組みも推進し、県及び市町村職員が安全を確保し、県民の皆さんの一大事のときに速やかに対応できる環境をつくることが県民の皆さんへの積極的な事前対策を呼びかける手本になると思います。
 さて、質問に移りますが、知事の推進される安心・安全の確保、安心・安全の和歌山の実現に向けて、事前対策についての仁坂知事の所見、あわせて担当部局の責任者である福祉保健部長と教育長の御答弁もお聞かせください。
 二番目、市町村における特別査察隊について。
 昨年十月より、和歌山市消防局において、市内五つの消防署で予防業務に従事する職員の中から予防技術員等の専従員を人選して特別査察隊が結成されております。措置命令や告発も辞さない決意で違反処理活動、期日を設けた改善の呼びかけを行い、何十年も違反を続けてきたところも改善するようになるなど、改善率を上げてきておられます。
 去る一月二十日には八人の死傷者を出した宝塚市のカラオケ店「ビート」の火災事故がありましたが、和歌山県としても、先日、県内のカラオケボックス六十二店を対象に行った消防法令違反状況の点検結果を発表されました。自動火災報知設備がなかったり、消火器の期限が切れていたり、あるいは避難誘導灯がなかったりといった消防用設備等に係る不備の店舗が五三・二%もあったり、防火管理等に係る不備が六二・九%もあったりで、何らかの消防法令違反が確認された店は四十六店舗で、全対象物の七四・二%もあったということであります。だからこそ、和歌山市消防局による特別査察の取り組みは大変効果的なものであり、営業店舗に危機意識を持ってもらうために、県としても県内消防本部の予防業務の充実にさらに取り組んでいただきたいと思いますが、危機管理監、いかがですか。
 三番目、民間救援隊の活動と防災士の養成について。
 大規模災害の発生時に迅速な行動ができるよう、和歌山市災害対策本部と和歌山民間救援隊が、去る一月の八日、和歌山市消防局において連携訓練を行いました。私も友人とともに、バイクやヘリに設置されたカメラから映し出される大画面、逐次行われる報告と対策協議といった緊張感、臨場感あふれる訓練を拝見させていただきました。
 同日、午後一時三十四分、紀伊半島沖で地震が発生し、和歌山市で震度六弱の揺れを観測したとの想定で訓練がなされました。民間救援隊のバイク四機、ヘリコプター二機で被害状況を本部へ報告、静止画像や動画が送信され、その都度対策の協議を行う様子を興味深く、引き込まれながら見さしていただきました。行政だけでは対応し切れない部分を民間救援隊が補完するという、市民の防災ボランティアの大きな力と現実的な必要性を痛切に感じさせていただきました。
 地域の防災リーダーとしての防災士の養成とともに、民間救援隊等防災ボランティアの活用について、危機管理監の所見をお聞かせください。
 四番目に、先日竣工されました平成十九年四月業務開始の和歌山県庁南別館、県防災センターの役割と市町村とのかかわりについて、危機管理監、聞かせてください。
 二つ目に、和歌山下津港についてであります。
 去る二月六日、アバローム紀の国にて、和歌山港ポートフォーラム二〇〇七が開催されました。その中で、ペトロマテリアル株式会社代表取締役三宅社長が、「和歌山下津港への企業進出と今後の展望」と題して興味深い講演をされました。当社は、新会社として日本石油鋼管株式会社を二〇〇五年十月に和歌山市雑賀崎工業団地へ鋼管物流加工センターとして設立されました。また、先日二月十四日に、同社と県との間で、さらに第二工場の進出協定が締結されました。油井管、掘削工具の製造を行うもので、住友金属工業株式会社和歌山製鉄所等の石油採掘用鋼管といった製品を取り扱い、主に中国向け等今後の輸出展開、殊に和歌山下津港からの輸出が大いに期待できるものであります。
 昨年の六月定例会で、ガントリークレーンの有効利用について提案させていただきまして、県当局からは、技術的に対応可能かどうかを検討してまいりたいといった趣旨の答弁をいただいたところでありますが、早速今議会にガントリークレーンの長時間利用に係る使用料の値下げ改定の条例案を提出いただいております。今後、ガントリークレーンを効率よく利用するためにも、他の鋼管を初め、それ以外のばら積み貨物への荷役活用も期待できるのではないでしょうか。
 去る一月二十日には鋼管荷役のトライアルも行われ、スムーズにとり行われたようです。準備オーケーであります。とにかく、地方の特定重要港湾として和歌山下津港に特徴を持たせてセールスをしていかないと、阪神港のスーパー中枢港湾、それに隣接する港湾の勢いにのみ込まれてしまいます。ぜひ港の生き残りをかけて、このビジネスチャンスを生かしてほしいものであります。
 それでは、質問に移ります。県土整備部長に御答弁願います。
 一つ目に、中国との定期航路開設は和歌山下津港にとって長年の夢でありますが、この石油採掘用鋼管の取り扱いが今後の中国航路開設の呼び水になるのではないでしょうか。
 二つ目に、今後の和歌山下津港における新規展開として、コンテナのみならず、鋼管のようなばら積み貨物を和歌山下津港の主要取扱貨物として、ポートセールスの目玉として他の荷主を呼び寄せてはいかがでしょうか。
 三番目に、和歌山市内の東西を結ぶ幹線都市計画道路についてであります。
 一つ目、和歌山市内各地で都市計画道路網も随分整備が進んでまいりました。市駅小倉線の県道井ノ口秋月線の西和佐から和佐区間、湊神前線の新堀橋から手平区間、南港山東線の県道三田三葛線の一部道路改良、塩屋区間の一部供用等のおかげで、利便性は向上されてきております。やはり生活上、産業振興上必要な道路は、厳しい財政下にあっても整備を進めていただきたいと思わない県民はいないと思います。
 仁坂知事におかれましては、知事の道路政策、特に県都和歌山市における都市計画道路について整備のあり方をどうお考えですか。
 二番目、紀の川以北は新興団地も多く、朝夕の交通渋滞は目を覆うばかりであります。その中で、都市計画道路西脇山口線も第二阪和国道以西が本脇のあたりまで供用され、おかげさまで大変な時間短縮が図られるようになりました。あとは、事業中の区間として、加太へ至る区間、第二阪和国道以東の善明寺工区、六十谷工区、宇田森工区の進捗状況はいかがでしょうか。また、園部区間と六十谷駅以東の未着手区間の事業化への見通しを、県土整備部長、お聞かせください。
 三番目に、都市計画道路南港山東線は和歌山市の事業で、ようやく塩屋の区間も道が見えてきましたし、小雑賀交差点東側の県道三田三葛線の坂田までの区間が進みましたが、それ以東の竈山神社の北を通る地点、神武天皇のお兄様の御陵を削らないよう配慮もいただきながら、いよいよ岡崎、山東方面への期待も膨らんできます。
 かつて幼少のころ水軒の浜海水浴場まで通った、今も近隣にある複数の小・中・高校の生徒たちが通学に使って、登校時間帯には自動車、二輪車、そして歩行者が入り乱れる水軒口交差点から和工前交差点までの市道部分も和歌山市の事業ということですが、何といっても和歌山市内の環状道路網の南のかなめであります。どうか県市歩調を合わせて、産業道路であるとともに生活道路の位置づけもある大事な道路区間でありますし、近くの住民の一人として早く進めていただきたいと思います。
 また、南港山東線の最西端に位置する旧臨港鉄道線路敷の道路拡幅工事ですが、江戸時代の水軒堤防の関係等でしばらくストップしております。背後に臨海地帯があり、港湾関係、工場関係、それに中央市場関係等々、たくさんの皆様が働く場所であり、朝夕渋滞する交通の要衝ポイントであります。早期の工事再開を望む声は、実際、大きいです。
 歴史的建造物、文化財の調査・保存ももちろん大切ではありますが、もはや使用されることのない堤防ですから、道路拡幅に支障のない離れたところへ公共的な展示場所を設置して重要文化財として役立てていく等々御検討いただいて、いち早く工事を再開いただきたいと思いますが、それもあわせた南港山東線の事業中区間の進捗状況と竈山神社以東の今後の事業化についての見通しを、県土整備部長、教えてください。
 最後に、二巡目国体開催に向けてであります。
 一つ目、平成二十七年の和歌山県における待望の二巡目国体開催が内定し、私も県民の一人として、スポーツを愛する一人として、この上ない喜びを味わっております。仁坂知事は、この国体開催を今後の和歌山県にとってどのようなものととらえておられますか。知事の和歌山県のスポーツ振興におけるコンセプトとあわせてお答えください。
 二番目に、県財政、極めて厳しい中、スポーツ施設整備予算というのは費用対効果の点から非常にシビアに考えなければいけないものでありますが、既設の施設をできる限り有効に活用いただいて、どうしても必要な整備はいただきたい。
 例えば、紀三井寺野球場の観客席でも、コンクリートむき出しであります。そうではなくて、せめて観客が座りやすいようプラスチックを上乗せするぐらいの配慮、同じ紀三井寺のテニスコートにも夜間照明をつけて長時間利用を可能にする、あるいは既設の野球場、市町村含めいっぱいありますが、こういうものを活用したソフトボールグラウンドの確保等々、要望が多い、低コストででき得ることはお願いしたいものであります。
 前知事によれば近隣他府県とも連携して施設面での利用等配慮して行おうということでありましたが、いろんな競技があります。会場の確保について基本的考えを、教育長、お聞かせください。
 三番目に、国体の開催地になるからには、県民意識の高揚、ふるさと和歌山県に対する愛郷心のためにも、いい成績は残してもらいたいものであります。それには、個々の選手の能力もさることながら、選手養成の綿密な計画性とともに、何といっても優秀なコーチ・指導者体制、これの整備が必要であります。教員を含め国体に向けた指導者体制の構築について、教育長、聞かせてください。
 以上四点、第一回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 防災についての御質問にお答えいたします。
 災害から県民の生命や財産を守ることは、県に課せられた大きな責務であります。そのための公共事業を初め、各種防災訓練や啓発活動、あるいは地域防災力の向上など、さまざまな対策に取り組んでいかなければならないと思っております。とりわけ本県においては、近い将来、御指摘のように東南海・南海地震の発生が予想されておりまして、甚大な被害が予測されております。そのため、防災対策を県政の最重点課題の一つに位置づけ、計画的に取り組んでいるところであり、平成十九年度は四百四十九億円の防災関連予算案を計上しております。
 昨年五月に公表した本県の地震被害想定結果におきましては、東南海・南海地震による死者の最大で七三%が建物の倒壊等に起因するとされておりまして、防災面における安心で安全な和歌山県づくりを進める上で、建築物等の耐震化や家具備品類の転倒防止は大きな課題であると考えております。
 議員お話しのとおり、災害発生時の行政施設や医療施設、学校施設の安全確保、こういうことは重要な問題であると認識しておりまして、一定規模等の県有施設の耐震化につきましては平成二十六年度末までに完了することを目標にいたしまして、特に防災対策上重要な本庁舎や警察本部の庁舎、あるいは総合庁舎、学校施設等、平成二十二年度までに耐震化を図るようにしております。
 各分野の取り組みについては、後ほど担当部長等から答弁させます。
 次に、和歌山市における幹線道路についてでございます。
 道路整備については、元気な和歌山を実現するための交流ネットワークの整備といたしまして、まず県にとって背骨となる高速道路である近畿自動車道紀勢線、京奈和自動車道、それから大阪府との交流を促進する府県間道路及び骨格となるネットワーク関連道路を最重点に整備しているところでございます。また、市街地における渋滞の緩和や市街地の利便性の向上を図るため、都市の基盤となる道路整備を進めているところでございます。
 今後も、和歌山市における主な都市計画道路のネットワークを早く形成するよう、市と連携しながら重点的かつ計画的に取り組んでまいりたいと思います。
 三番目に、国体についてでございます。
 国体の開催とスポーツ振興に対するコンセプトについてお答え申し上げます。
 昨年末の全国高校女子駅伝での県和商チームの活躍などにも見られるとおり、レベルの高い大会で活躍する競技者のひたむきな姿は、多くの県民に夢と感動を与えるとともに、地域の活性化や一体感を促し、和歌山を元気にする重要な、大事な要素であると考えております。また、スポーツを振興することは、県民の心身両面における健康の保持増進に貢献するとともに、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成に大きく寄与するものと考えております。
 第七十回和歌山国体の開催に当たりましては、本県の大変厳しい財政状況を勘案し、簡素化、効率化を図りながらも、新しい時代に適応した和歌山の魅力を最大限に生かした質の高い大会を目指すこととしております。
 また、国体終了後も、活気あふれるふるさとづくりや心豊かでたくましい人づくりに十分つながるものとなるように、開催に向けて鋭意取り組みを進めてまいりたいと存じております。
○議長(向井嘉久藏君) 福祉保健部長小濱孝夫君。
  〔小濱孝夫君、登壇〕
○福祉保健部長(小濱孝夫君) 災害の事前対策についてでございますが、議員御指摘のとおり、高齢者や障害者の方などが入所する社会福祉施設や医療機関等に対する災害の事前対策は大変重要であると考えます。
 建物対策につきましては、例えば民間病院の耐震診断費用の補助事業を今年度から二年計画で開始し、来年度以降、補強が必要な場合に改修工事の施設整備についても補助するほか、障害者施設につきましては、耐震化を含めた建てかえに対する補助を行っているなど、施設の耐震化に努めているところであります。
 室内対策につきましても、児童福祉施設や医療機関において、室内に置かれている機器等の転倒防止策などの取り組みを開始しております。
 しかしながら、医療機関や社会福祉施設全体としては、事前対策が十分であるとは言えない状況にあることから、引き続き耐震化を促進するとともに、事前対策の必要について啓発や指導を徹底してまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 危機管理監石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○危機管理監(石橋秀彦君) 防災についての三項目についてお答えを申し上げます。
 まず、特別査察隊でありますが、カラオケボックス店など防火対象物の点検につきましては各消防本部が定期的に点検を行っているところでありますが、今回の宝塚市における事故にかんがみ、知事の指示により各地の消防本部に特別査察をお願いいたしました。その結果、行われた特別査察は、議員御指摘のとおり、和歌山市消防局の特別査察隊のように、各消防本部における予防業務体制の充実は大変重要であります。しかし、県内には小規模消防本部が多い状況にあることから、県内消防本部の広域化を図るなど、市町村や各消防本部と連携し、予防業務体制の充実が図られるよう取り組んでまいります。
 次に、民間救援隊の活用と防災士の養成についてでありますが、和歌山民間救援隊については、従来より救援ボランティアチームとして登録をいただき、県が実施する防災総合訓練やコーディネーター研修なども参加いただいているところでございます。同救援隊は、ヘリコプターやバイクなどの装備を持つ全国でも有数のボランティア組織であり、大規模災害時には被害情報の収集や物資搬送等において大きな役割を果たしていただけると期待をしております。今後も、訓練等を通じ、さらに連携を図ってまいります。
 また、防災士の養成につきましては、地域の防災力を向上させるため、十七年度より紀の国防災人づくり塾を開講しリーダーの養成に努めており、二カ年で計二百七十五名の方に受講いただき、このうち百五十九名がNPO法人日本防災士機構が認証する防災士の資格を取得してございます。今後とも、研修会や情報交換の場の設定などの支援を行ってまいります。
 最後に、防災センターの役割と市町村とのかかわりについてお答えします。
 和歌山県防災センターの役割は、災害発生時の迅速な被害情報の収集、適切な対策の実施が極めて重要な指令拠点であると考えております。このため、発災後直ちに応急対策が実施できるよう、大型の災害情報表示装置を備えた災害対策本部室、関係職員約百五十名が同時に作業のできる防災対策室、緊急へリポートなどを設置いたします。
 また、市町村とのかかわりについてですが、防災センターの心臓部である総合防災情報システムが稼働いたしますと、県、市町村、消防本部等による速やかな防災情報の収集、配信、共有が可能となり、より緊密に連携した総合的な応急・復旧対策が実施できるものと考えております。
 業務を開始する本年秋以降、市町村を初め関係機関との連携を深めるため、防災センターを活用した災害対策本部運営訓練など、実践的な訓練を行ってまいります。
 以上でございます。
○議長(向井嘉久藏君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 和歌山下津港について二点、和歌山市内の東西幹線道路について二点、御質問がありました。
 まず、中国との定期航路開設についてお答えをいたします。
 議員御指摘のとおり、平成十八年十月に日本石油鋼管株式会社が和歌山下津港雑賀崎地区で操業を開始しております。現在、この会社は、他の港ではなく直接和歌山下津港から中国天津港に向け、船での石油採掘用鋼管の輸送を検討中であると聞いております。この船舶を天津港から和歌山下津港への貨物輸送にも活用することが考えられることから、このような企業の動向を見きわめつつ、地元関係者や荷主の意向把握を行い、定期中国航路開設の可能性について検討してまいりたいと考えております。
 次に、ばら積み貨物の取り扱いについては、和歌山下津港の利用促進を図る観点から、ガントリークレーン使用料の引き下げに向けた条例改正案をこの二月議会に提出させていただいております。今後、ガントリークレーンの多目的な利用や通関手続が周辺の大規模港よりも早くできることなど、和歌山下津港の特色を生かしたポートセールス活動を展開してまいりたいと考えております。
 次に、西脇山口線の進捗状況等についてお答えをいたします。
 最初に、市北部の幹線道路であります西脇山口線につきましては、坂田工区、善明寺工区、六十谷工区及び宇田森工区で事業を実施しており、坂田工区は平成十九年度の完成を、善明寺工区では平成二十年度の完成を目指して事業を進めております。六十谷工区では、現在用地買収を進めており、平成十九年度には六十谷交差点付近の工事に着手してまいります。宇田森工区は、JR紀伊駅の前の渋滞対策として平成十六年度から事業に着手し、用地買収を進めているところでございます。また、園部地区と六十谷駅以東の未着手区間につきましては、現在事業中の箇所の進捗状況を勘案しながら事業化について検討を行ってまいります。
 次に、南港山東線の進捗状況等についてお答えをいたします。
 市南部においては、周辺部と中心部を結ぶ東西幹線道路として、南港山東線、市駅小倉線、及びこれらを連結する南北幹線道路である松島本渡線の整備を進めております。
 南港山東線につきましては、県道和歌山海南線、通称国体道路から東側のJRとの立体交差部の区間二百七十メートルを平成十七年三月に供用開始し、続く竈山神社西側の県道三田三葛線との交差点部までの約一千百五十メーターの区間について、平成十八年八月及び十一月に順次供用したところであります。現在は、竈山神社東側の県道秋月海南線までの区間について用地買収を進めております。また、塩屋交差点から西側三百五十メーターの区間を和歌山市が事業を進めており、平成二十二年度の完成を目指して用地買収を進めていると聞いております。竈山神社以東の未着手区間につきましては、現在事業中の箇所の進捗状況を勘案しながら、ネットワーク形成の観点から事業化について検討してまいります。また、水軒旧踏切部分の交差点改良につきましては、文化財担当部局と協力し、平成十九年内の工事着手について進めてまいりたいというふうに考えてございます。
○議長(向井嘉久藏君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育関係の二点についてお答えいたします。
 まず、災害の事前対策ですが、県教育委員会では、平成十五年に「学校における防災教育指針─地震・津波等の災害発生に備えて─」を定めて事前対策の推進を図っているところでございます。今後とも、各県立学校及び市町村教育委員会に対し、安全確保のため、学校施設の整備やロッカー、書棚、ピアノ等の転倒・移動防止対策、安全点検を実施するなど、災害に備えた事前対策の徹底について指導してまいります。
 次に、二巡目国体開催に向けた会場の確保についての基本的な考え方についてお答えいたします。
 競技会場につきましては、県内の既存施設や近畿各府県の施設を有効に活用することを前提に、県内の競技団体及び市町村などとの緊密な連携のもと、近畿各府県教育委員会や近畿の競技団体とも調整を図り、平成十九年度に設立予定の準備委員会におきまして、さまざまな角度から検討することとしております。
 なお、その際、競技会場については、地域バランスを考慮して広く県内各地に配置するとともに、国体後においても地域スポーツ振興の拠点として住民に広く活用していただけるものにしてまいりたいと考えております。
 最後に、指導者体制の構築については、先日、尾崎要二議員の質問にもお答えしましたとおり、本年度から新たにスタートさせたきのくにエクセレントコーチでは、現在、七競技で八名が指導に当たっております。来年度はこの制度を拡充し、より円滑で実効あるものにしてまいりたいと考えております。
 また、従前から県体育協会と連携しながら中央競技団体のトップレベルの優秀なコーチを招聘し、レベルの高い技術の習得と本県指導者の意識の高揚を図るトップ強化コーチ招聘事業を展開しております。さらに、教員採用試験において、全国大会や国際大会等でトップレベルの成績をおさめた競技者については一次検査の一部を免除し、優秀な指導者となる人材の採用・確保に努めております。
 本県のスポーツ振興を図る上で指導者の確保とその資質向上は重要であり、今後とも優秀な指導者の養成・確保に努めるとともに、県外指導者の積極的な招聘や交流等を含め、総合的な指導体制の確立を図ってまいります。
 以上でございます。
○議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十八番長坂隆司君。
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
 災害の事前対策についてでありますが、防災先進県の取り組みのように、耐震補強とはあくまで建物対策と室内対策の二つを一つにしたものであるとの認識を強く持っていただきまして、各分野において室内対策も急いでほしいと思います。
 また、自治会単位でそれぞれ自主防災の取り組みもなされていることと思うんですけど、大災害時のパニック状況の中では、防災のリーダーたる方の冷静でかつ情熱あるリーダーシップ、そういうものが欠かせないと思います。防災士の養成についても引き続き御尽力いただきたいと思います。
 和歌山下津港についてですが、日本石油鋼管株式会社の和歌山下津港での輸出展開、これ、当港の命運のかかった大変ありがたい、起死回生の大きな期待の持てるものであると思います。県におかれましては、行政当局としてのできる限りのソフト・アンド・ハード──両面でのバックアップですね──これを引き続きよろしくお願いいたします。
 以上、要望さしていただいて、私の一般質問を終わります。
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十三番藤井健太郎君。
  〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 まず最初に、地方分権と財政運営についてお伺いをいたします。
 十六年度から三年間の期限を設けての三位一体の改革が一段落をいたしました。新年度は、国の予算レベルでは大きな変化はないと言われておりますが、地方自治体では改革の影響が次第にあらわれてくるものと思います。今回の三位一体の改革は、全国ベースでの国庫補助負担金の削減額四兆七千億円に対して所得税から住民税への税源移譲は三兆円にとどまり、地方自治体の独自財源でもある地方交付税等は五兆一千億円削減されるという結果になっております。
 国は国庫補助負担金の削減と事業そのものの廃止・縮減を進めましたが、義務教育費国庫負担金や市町村国民健康保険事業への財政調整交付金など、地方自治体の裁量が及ばない義務的経費に当たる事業が移譲されたものの、地方交付税等でその全額が補てんされているわけではありません。果たして、地方分権はどこまで進み、自治体の財政基盤は強化されたのでしょうか。地方自治体への税財源の移譲は、地方分権の推進と呼べるにふさわしいものであったのでしょうか。今後、三位一体の改革の総括と今後の取り組み方針を県民に示していくことが求められていると思います。
 私にとりましては今議会が任期最後の議会質問となるわけですが、新年度予算の姿から三位一体改革が県財政にどうあらわれているのか、また、国と県、県と市町村の仕事の分担と財政負担のあり方についての所見と今後の対応についてお尋ねをしておきたいと思います。
 新年度予算は、予算規模の四年連続のマイナスとなっています。県税収入は税源移譲もあり伸びが見られるものの、地方交付税の減、所得譲与税の皆減など、国からの依存財源の大幅減で歳入は減少、歳出面では、職員定数と給与のカット、事務事業の縮小・廃止などを進め、それでも不足する財源は、退職手当債、行政改革債などの起債と基金からの繰入金で賄う内容となっています。
 十八年度最終補正予算で基金への繰り戻し八十六億円と新たな積み立て七十億円を行っていますが、新年度当初で二百二十二億円を基金から繰り入れ、結果、起債残高は過去最高の七千九百二十四億円に、基金残高はこの五年間で最低の四百三億円を見込むなど、厳しい予算となっています。
 県民には、定率減税の廃止や森づくり税など新たな税負担や医療、介護などの社会保障負担がふえる一方で、住民向け事業の廃止・縮小が行われ、ひいては住民サービスの後退となり、しかも県財政も一層厳しくなるというのでは納得がいかないところであります。
 議会も、議員報酬や費用弁償などの議員に係る経費の削減を進めているところでありますが、地方分権の推進を住民福祉の向上につなげていくには、自主財源、とりわけ一般財源の充実強化は欠かせない課題でもあります。
 そこで、知事に何点かお尋ねをいたします。
 三位一体の改革と税財源の移譲で県財政は強化されたのでしょうか。どのように判断されているのでしょうか。職員と県民に負担を強いる財政となっているのではないでしょうか。
 二点目に、地方分権を進める上での必要とする一般財源の確保はできたと考えておられるのでしょうか。国は、地方財政対策において、地方税、地方交付税などの一般財源総額は前年度比五千億円程度の増となっており、地方が必要とする一般財源は確保されたとしていますが、本県ではどのようになっているのでしょうか。どのように受けとめ、今後の対応はどうしていくのか、お尋ねをいたします。
 三点目に、新年度、国が目指す地方交付税の支援措置として、頑張る地方応援プログラムや新型交付税算定方式の実施がされようとしていますが、どのように考えて対応されようとしているのか。
 頑張る地方応援プログラムは、自治体に〇七年度から〇九年度までの三年間、地方独自のプロジェクトの策定と公表を求め、地方交付税措置などで支援するというものです。頑張りの成果に応じて算定するとされていますが、その頑張りの指標とされているのが、行政改革の推進、転入者人口、農業出荷額、小売業商品販売額、製造品出荷額、事業所数、若年者就業率、ごみ処理数、出生率の九項目となっています。行政改革における指標は、大都市、地方都市という地域による条件差は余りないと思われますが、他の項目は、過疎化の進む地方都市にとっては厳しいものがあります。この手法は補助金のような特定財源の性格があり、それこそ地方の特色を生かした個性的な取り組みを応援することにはならず、同じ指標での都市間競争となり、都市間の一層の格差拡大を招きはしないか危惧するところであります。
 新型交付税は、人口と面積を基本として基準財政需要額が算定されることから、実際の行政需要との乖離が生まれるのではないかと懸念されます。全国的な平均では前年度と比較して変動がないとも言われていますが、実際の行政需要との乖離が生まれないように国に対する要望が必要だと思います。
 次に、国直轄事業負担金の廃止に向けて。
 国直轄事業負担金制度についての知事の考え方と今後の対応についてお尋ねをいたします。
 大滝ダム、紀の川大堰に象徴されるように、国が直轄施行する土木建設工事で国から県に求められる負担金ですが、新年度予算では、見受けるところ、百四十六億円が計上されています。普通建設事業中、県が主体となって行う国庫補助金による補助事業や県の単独事業は減少傾向にある中で、国直轄事業負担金はほぼ横ばいとなっています。国直轄事業は国家的政策として国の責任において行う事業であることから、地元自治体に財政負担を負わせることについては疑問を感じるところであります。
 また、事業の進め方、内容を見ても問題があるのではと思われる事業もあります。例えば大滝ダム建設負担金ですが、昭和三十七年度から奈良県川上村で吉野川、紀の川流域の治水・利水と発電を目的とした多目的ダムとして着工され、以来四回の計画変更を繰り返し、その都度事業費が膨らみ、平成十六年二月議会では五回目の計画変更を行いました。総事業費三千二百十億円を三千四百八十億円と二百七十億円の追加を行い、工期を平成十四年度から二十一年度までに延長、それによる県の負担は、二十五億五千万円の新たな追加負担が課せられることとなりました。ダム本体の完成を見たものの、ダムの試験貯水により白屋地区で亀裂現象が起こり、地区住民の移転補償と地すべり対策が必要として事業費の追加変更となったものです。
 これまでの計画変更のほとんどは、地すべり対策として行われてまいりました。今回の計画変更の中でも、地すべり対策を進める中で、ボーリング調査の結果、さらに二カ所の新たな地すべり対策が必要であり、さらなる追加負担と工期の延長の可能性も、ことしに入り報道がされております。いつまで追加負担をし続けねばならないのか、国の責任を問いたい問題です。
 もう一つ指摘しておきたいのは、住友金属西防波堤沖の埋立地、関西電力のLNG火力発電所立地予定地に十万トンクラスのLNGタンカーの接岸を予定して、延長千メートル、事業費三百億円で平成十二年度から防波堤築造工事が国直轄事業として進められ、県も負担をいたしております。
 火力発電所は、当初計画では平成十六年度中に一号系列百六十四万キロワットが稼働する予定でしたが、いまだに着工予定が決まったという話は聞いてはおりません。しかし、防波堤工事だけは進められています。毎年、国の事業費に応じて負担しており、既に二十九億円の負担となっています。果たして緊急性があるのか、県負担金の支出に疑問を感じるところであります。
 次に、県工事の市町村負担金の廃止に向けて。
 新年度、県が施行する道路、港湾、急傾斜地対策などの土木建設事業に、市町村からの負担金を徴収する議案が提出されています。県内三十市町村から、事業費約二百四十六億五千万円に対して三十九億七千六百万円の負担金を、市町村の財政規模にかかわりなく、事業ごとの負担割合を定め徴収する内容となっています。
 市町村からの要望もあって事業量を確保する上での財源確保のためということもあろうかとは思いますが、県土保全と災害防除のための対策工事の施行は県の責務だと思うところです。これまでも機会を見つけては要望を重ねてきたところではありますが、改めて知事に、県工事負担金の一層の軽減と廃止に向けてのプログラムをつくる必要があるのではないか、お尋ねをいたします。
 二番目に、県民の暮らし、雇用、社会保障についてお尋ねをいたします。
 新年度予算編成に当たって、県民の暮らしの実態をどのようにとらえての予算と施策になっているのか、お尋ねをいたします。
 新聞報道などでは、景気が回復し好景気が史上最長と喧伝されておりますが、県民生活の暮らしの実感としては身近には感じられないように思えます。むしろ、縦並び社会、格差社会と言われるように、暮らしの格差が拡大し、固定化の傾向になっているのではないでしょうか。税や社会保障制度が所得の再分配の機能を発揮し、所得格差の是正の方向に有効に働いているのか、疑問を感じます。
 勤労者の給与収入、年金生活者の年金収入が減少するもとで定率減税の縮小・廃止や年金課税への強化が実施をされ、それが国民健康保険料、介護保険料のそもそもの引き上げと見かけ上の所得の増大によるはね返りも加わって、社会保障費に対する県民負担が増大をしてきております。
 所得の減少と保険料負担の増大は保険料滞納世帯の増大を招き、国民健康保険では、短期被保険者証や資格証明書を持つ世帯がふえる傾向にあります。県民の暮らしの最後のよりどころでもある生活保護制度を見ても、高齢者世帯、母子世帯の被保護者がふえ続けています。生活保護制度は、生活に困窮するすべての国民に対し、憲法で定められた生存権の保障をするとともに生活の自立を助長することを目的としております。
 その生活保護制度が、生活の自立のためにということで、老齢加算、母子加算の縮小・廃止が行われました。また、母子家庭への児童扶養手当も削減されていくなど、援護を必要とする世帯の所得が、自立支援の施策を準備するからということで、自立に足る所得を得ているかどうかの確認もされずに一方的に減らされようとしているのは問題があります。
 勤労者の雇用形態も、正規雇用から非正規雇用へと流動化が進み、そのことにより低賃金と不安定就労がもたらされ、「ワーキングプア」という言葉まで生まれています。働けど働けど暮らしが楽にならない。とりわけ将来を担う若年層での低賃金、不安定就労と失業率の高さの改善は喫緊の問題でもあります。住民福祉の向上を使命とする地方自治体として見過ごすことのできない問題でもあります。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 知事の県民の暮らしと格差拡大についての認識はどうか。どのように受けとめて新年度予算で対応されているのか。知事の所信では、出生にかかわる経済的負担の軽減、子育て世代への支援に意を尽くされたということでありますが、格差拡大への取り組みとして、ほかにもどのような予算措置がなされているのでしょうか。
 二点目に、長期総合計画と社会保障アクションプランについてであります。
 知事は、県行政にかかわる中長期の基本構想と基本計画を定めると言われています。その中に、県が実施をする社会保障施策のあり方についても基本的な事項が記述されることになるとは思います。
 一方、県は平成十八年三月に、行財政改革の根幹をなす計画として、平成十七年度から二十一年度までの五カ年を取り組み期間として行財政改革推進プランを策定しました。その中に、福祉、医療等社会保障制度の安定的運営を図るためとして、社会保障アクションプランを策定するとしています。
 当局のこの計画をつくる動機として、社会保障費の増加を抑制するために施策の重点化と県民負担のあり方を示し、県民の理解と制度の維持を目指すことがあったと思われますが、なかなか着手できていないようでもあります。私は、目まぐるしく移り変わる医療・福祉の制度が県民の暮らしの実態から見て果たしてどのように有効に働いているのか、県民が求める社会保障制度のあり方の検証を行うとともに、県としてのあるべき社会保障、福祉の施策の方向を示し、中長期に必要とする社会保障財源の展望を持った計画とすべきではないかと訴えてまいりました。
 知事の社会保障アクションプランについての今後の対応についてお尋ねしておきたいと思います。
 次に、市町村国保への支援の強化について。
 県内の国保料・税の滞納世帯が、昨年は国保加入世帯の一七%にもなっています。滞納世帯に対して、被保険者証にかわって資格証明書が発行されている世帯は四千四百世帯、被保険者証が窓口で留保されている世帯は二千四百世帯、一カ月有効、三カ月有効という短期の被保険者証が発行されている世帯は一万三百世帯、これらを合わせると国保加入世帯数の七%の世帯が通常の被保険者証を持たない世帯となり、安心して医療を受けることができない世帯が増大しつつあります。
 とりわけ、家計収支での負担が最も多くなる五十歳代、年金生活に移行しつつある六十歳での滞納がふえてきているのが特徴だとも聞いております。市町村国保の運営も、平成十四年十月より老人保健医療の対象が七十歳から七十五歳以上へと段階的に引き上げられ、これまで老人保健から給付されていた高齢者の医療給付を国保から行うこととなり、単年度収支が赤字となる市町村がふえてきております。
 市町村国保の担当者からは、当初予算で収支を合わせようとすると保険料の大幅引き上げを行わねばならず、国保料負担が限界に来ていることを考えると保険料引き上げは実施はできない、国、県からの支援をふやして保険料を引き下げられる方向にしてほしいとの声も聞いております。市町村国保の財政の安定を図り、加入者が適切な保険料で必要とする医療給付が受けられるようにしていくことが求められております。
 市町村国保への財政支援策として、三位一体の改革の中で、市町村国保への財政調整交付金や低所得者への保険料の法定減免分を国にかわって県が負担することになりました。また、県が実施をする六十七歳から六十九歳までを対象とする老人医療、重度心身障害児(者)医療、乳幼児医療、ひとり親家庭への医療給付など、いわゆる所得制限を設けての福祉医療分について、国は市町村国保への負担金を減額する措置をとっております。その減額分を補てんする県の市町村国保への支援が行われておりますが、乳幼児医療とひとり親家庭についての県からの支援は実施をされておりません。また、老人医療、重度心身障害児(者)医療への財政支援も減額されつつあるということです。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 市町村国保へどのような支援をしているのか。新年度での対応はどうか。
 福祉医療制度に対する県の財政支援を強化していくべきではないのか。また、国の国保への負担金カットへの対応をどうしていくのか。お尋ねをいたします。
 次に、障害者自立支援特別対策についてお尋ねをいたします。
 昨年四月、障害者自立支援法の制定により、これまでサービス利用については本人収入に応じた負担割合だったものが、低所得者減額制度が設けられたとはいえ、事業費に対して原則一割の利用者負担となり、利用者並びに生計を同一とする家庭に重くのしかかってくることとなりました。
 作業施設に通って受け取る工賃よりも利用料の方が高くなるということや、生計を同じくする世帯への利用料負担となり、減額制度が有効に働かないことなど、利用者負担の増大が施設利用の抑制効果となってあらわれ、障害を持った人の自立を逆に阻むということにもなりました。また、施設への収入が月額定額制から利用日数をもとにした収入へと変わり、経営の不安定さを招きました。以来、障害者、家族、施設関係者を初め、自治体からも国に対して改善を求める運動が広がり、本県でも、県当局が利用者や施設の実態調査、意見聴取を行い、国に対して改善要望を重ねてきたところでもあります。
 そういう中で、昨年十二月下旬、国は、利用者負担の軽減、事業者への激変緩和措置、新法移行への緊急緩和措置などを柱とする一定の改善の方向を示す特別対策を行うことを発表いたしました。利用者、関係者の運動が実ったものとして歓迎するものでありますが、次の見直しまでの二年間の経過措置であることや利用者負担の軽減も負担総額の四分の一程度であることなどから、これにとどまることなく今後も引き続き改善を求めていくことが必要だと思うところです。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 県内で実施をされる特別対策の主な内容はどういうものになるのでしょうか。利用者、事業者の負担改善にどこまでつながるのでしょうか。原則一割負担のためにサービス利用を断念、制限を余儀なくされている人のサービス利用に再び結びつけることができるのでしょうか。
 また、特別対策後の利用状況調査を行い、次の見直しにつなげていくべきだと思いますが、準備はされるのでしょうか。
 障害者の地域移行への促進を図る施策が進められつつありますが、居宅での支援のあり方、サービスの組み立て、生活全般の相談に気軽に応じることのできる相談体制の確立がぜひとも必要であります。本人の不安はもとより、家族の心労には大変なものがあります。市町村が中心となっての相談事業となっているようですが、県の支援も十分行い、気兼ねなく二十四時間対応できるような相談体制の確立を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、若年者、母子家庭の雇用と今後の取り組みについてです。
 若年者、母子家庭の雇用の実態と就労に向けての支援策、新年度予算での対応についてお尋ねをいたします。
 県は、平成十六年十一月、景気・雇用対策本部を中心に全庁的に景気雇用対策に取り組むとして、雇用創出に係る具体的目標数値を設定した雇用創出プログラム「わかやまジョブ・クリエイション」を平成十六年度から十九年度までの四年間のプログラムとして策定をいたしました。十九年度、新年度がプログラムの最終年度となっています。
 その中で、若年者の円滑な就労支援対策を進め、平成十四年度の本県における若年者の失業率一二・三%だったものを、四年間でその当時の全国平均並みの九・五%以下にするという目標数値を設定しました。以来、若年者の高い失業率、フリーター、ニートの増加、高い離職率などに対応する施策を若年者就職支援センター「ジョブカフェ」の設置と充実を行い、労働局など関係機関との連携を図り、対策を進めてきております。
 若年者雇用についての取り組みは全国的な課題でもあり、それぞれの自治体においても取り組みが進められています。働く場をつくることや労働法制の改善が基本的な問題であることは論をまちませんが、若年者の能力と適性に応じた相談、情報の提供、技術の習得への支援など、側面的な支援も欠かせない課題でもあり、県が目指すとした失業率改善の目標数値を新年度でまさに全国平均以下にすることが期待されるところでもあります。
 そこで、商工労働部長にお尋ねをいたします。
 若年者を取り巻く雇用状況は、県内においてどのようになっているのか。実態とその動向をどのように把握されているのか。新年度の取り組みと失業率改善の目標数値の達成見込みはどうか。お尋ねをいたします。
 福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 母子家庭の雇用状況、就労状況はどのようになっているのか。実態と就労の動向をどのように把握されているのか。児童扶養手当の削減とともに自立支援策が並行して進められていますが、どのような成果があらわれているのか。新年度の取り組みと期待される効果についてお尋ねをいたします。
 最後に、高校授業料減免制度の拡充について教育長にお尋ねをいたします。
 小中学校では、義務教育は無償とする憲法の要請に基づき、経済的に困窮している家庭に学用品や入学準備金、給食費、医療費などを補助する就学援助制度が市町村を実施主体として行われています。従来、この制度は、費用の半額を国が補助する仕組みになっていましたが、三位一体改革の中で就学援助に対する国の補助が削減され、国は生活保護世帯に限り補助することとし、それ以外の世帯については交付税措置という一般財源化にしたため、この義務教育における就学援助の制度の適用となる所得水準が引き下げられました。対象者や支給項目がそのために狭められてきております。
 高校においては、経済的困難さを抱える家庭に対して、生活保護家庭に対しては自立助長を促す視点から就学費の支給が新たに始まり、それ以外の家庭で経済的理由により修学が困難な場合には修学奨励金の制度と授業料減免措置、定時制・通信制では、それに加えて教科書等の無償給付、私立の高等学校で授業料軽減を実施する学校に対しての補助制度などが設けられています。
 就学奨励金、授業減免制度は家庭の所得による制限が設けられて運用されていますが、問題は、運用基準が生活保護の食費、水光熱費などの一般生活費の基準額に準拠しており、その一般生活費が年々引き下げられてきていることです。その一方では県立高校授業料の引き上げが行われ、空調設備を設置する高校では、その使用料が授業料に加算されて徴収されています。県民の高等教育を受ける権利を保障し、生徒の将来に向けての自立を促進していくためにも授業料減免制度の充実強化が求められているのではないでしょうか。
 そこで、教育長にお尋ねをいたします。
 授業料減免制度の持つ意義をどのように認識しておられるのか。また、授業料減免者数の推移をどのように把握されているのでしょうか。
 生活保護基準が引き下げられてきている中にあって、生活保護基準よりも上回る減免基準の設定が必要ではないでしょうか。どのように考えておられるのかお尋ねをして、私の第一問といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 地方分権と財政運営についてお答え申し上げます。
 まず、三位一体改革と今後の対応についてでございます。
 本県の財政は、三位一体改革により地方交付税は減少し、また県税は、税源移譲による増収があるものの、それを上回って所得譲与税が減少するなど、財源面だけを見れば大変厳しい状況にあります。また、財政調整基金、県債管理基金があと一、二年で枯渇する見通しであることから、今後も県民ニーズに的確に対応し和歌山を元気づける施策を積極的に展開するためには、持続可能な財政を目指して、痛みを伴いますけれども、県民の御理解と御協力を得ながら行財政改革を強力に推進する必要があると思います。
 あわせて、安定的な財源を確保するため、税源の偏在の是正など、地方税財源の拡充を国などに対して強く訴える必要があると考えております。
 頑張る地方応援プログラムにつきましては、やる気のある地方を応援する、支援する制度ですので、本県も主体的な努力を前提にいたしまして、しっかり取り組む必要があると考えております。
 新型交付税につきましては、人口規模のコスト差の反映などにより変動額は最小限にとどめるとの方針が示されていることから、ひとまず安心ということでございます。
 次に、国直轄事業負担金についてでございます。
 国直轄事業負担金につきましては、全国知事会の「平成十九年度国の施策並びに予算に関する提案・要望」において、地方分権改革の税財政対策として国直轄事業負担金の廃止を提言しております。今後も全国知事会と連携してまいりたいと考えております。
 次に、県工事の市町村負担金についてでございます。
 県営事業負担金につきましては、地方財政法第二十七条に基づき、事業に要する経費の一部を市町村に負担していただくものであります。平成十七年度に、東南海・南海地震対策が喫緊の課題であることから、海岸防災関連事業に係る地元負担金を廃止するなど、随時見直しを行っておりますけれども、一方で県の財政が厳しい状況にあることから、法に基づき、引き続き市町村の御協力をお願いせざるを得ない状況にもあります。本件の問題は、これからの地方分権のあり方の一つとして、制度全体の大きな見地から検討されるべきものと思っております。
 次に、県民の暮らしと格差拡大についての認識についての御質問でございます。
 近年、全国的に生活保護率は上昇傾向にありますが、本県においても上昇が見られるところであり、このように貧困の問題は大変重要な政策課題であるというふうに考えております。しかしながら、県において働く場所が少ないことにこれは根本的な原因があると私は思っておりまして、企業の育成支援などの産業振興を通じて職づくりを進め、全体としての所得を伸ばしていく中で考えていく必要があると考えております。同時に、生活保護を初めとする社会のセーフティーネットが有効に機能していなければならないということも考えております。
 このために、県が独自にできることには限界がありますけれども、県民の方々が将来に不安を感じることがないように、安心・安全に心がけて予算編成を行ったところです。具体的には、フリーター等若年層の就労を支援するためにジョブナビゲーターをジョブカフェ・わかやまに新たに配置するほか、障害者施策につきましても、さらなる利用者負担が生じないようにするために、利用者上限超過額補助制度や小規模作業所への助成制度等、国の施策に加え、県独自のきめ細かな政策を盛り込んだところです。
 いずれにいたしましても、喫緊の行政課題への的確な対応を図り、すべての県民が安心して生活できる和歌山づくりを可能な限り実施してまいりたいと思います。
 次に、長期総合計画と社会保障アクションプランについてであります。
 長期総合計画と社会保障アクションプランについての関係及び当該プランが社会保障費の削減を目的とするものではないかとの御質問についてお答え申し上げます。
 社会保障に関しましては、基本的に長期総合計画に盛り込むことと考えております。しかしながら、福祉、保健、医療は県民にとって身近でかつ最も関心の深い問題でありまして、いろいろ詳細な問題も発生し、長期総合計画に盛り込めない部分も生じる可能性があります。したがって、その場合には、同計画を補うような形でプランの策定も検討する必要があると考えております。
 また、社会保障関係経費については、その持続可能性を念頭に、必要な人に必要な施策が行き渡るようにその充実に努めてまいりたいと考えております。
○議長(向井嘉久藏君) 福祉保健部長小濱孝夫君。
  〔小濱孝夫君、登壇〕
○福祉保健部長(小濱孝夫君) 県民の暮らし、雇用、社会保障についての御質問のうち、三点の御質問にお答えいたします。
 まず、市町村国保への支援の強化についてですが、市町村の国民健康保険財政に対する県の支援については、医療給付費等の七%を国民健康保険財政調整交付金として負担しているほか、低所得者を多く抱える市町村保険者を支援し、中間所得者層の保険料の負担を軽減するために保険料軽減分を公費で補てんしております。県が補てんの四分の三を負担しているところであります。
 また、一件八十万円以上の高額な医療費が発生した場合に、国保財政の急激な影響の緩和を図るため、各市町村国保からの拠出金を財源として費用負担を調整している高額医療費共同事業に、市町村国保の拠出金に対し、国と県が四分の一ずつ負担し支援を行っています。
 福祉医療実施に伴う国庫負担金の減額措置に対する補てんにつきましては、厳しい財政状況の中でやむを得ず、県民への影響を最小限にとどめる形で、他府県の状況も踏まえ、平成十九年度から見直すことといたしましたが、これらの負担金、補助金を合わせ、市町村国保に対する県の負担は対前年度約一億一千万円増の九十六億九千六百万円を平成十九年度予算案に計上しているところであり、御理解をいただきたいと思います。
 なお、こうした状況の中で補てん制度をさらに乳幼児医療やひとり親医療にまで拡大することは困難であると考えますので、県といたしましては、引き続き国庫負担減額措置の廃止につきまして国に強く働きかけてまいります。
 次に、障害者自立支援特別対策についてですが、障害者自立支援法は、障害福祉サービスの提供についての抜本的な改革であることから、さまざまな御意見があります。こうした御意見に対応するため、国において、障害福祉サービスの利用者負担のさらなる軽減や事業者に対する激変緩和措置、新法への移行等のための経過措置などの改善策が平成二十年度まで講じられることとなりました。
 県といたしましては、これに基づく特別対策として、グループホーム等のバリアフリー化や新体系に移行するための施設改修等の基盤整備支援、直ちに新体系へ移行できない小規模作業所等への経過的な支援などを行ってまいります。市町村においてもデイサービス事業所への経過的な支援などが進められる予定であります。
 また、このたびの改善策について、市町村や事業者等への説明会などを通して広く周知し、負担増大を理由にサービス利用を控えておられた方々の利用再開等につなげていきたいと考えております。
 なお、特別対策後も利用状況については引き続き注視し、その上で必要があれば国に働きかけてまいりたいと考えております。
 さらに、県といたしましては、こうした相談支援事業に携わる人材の育成を初め、地域のネットワークづくりの支援に努めるなど、障害のある方の地域生活を支える相談支援体制の整備や充実強化を図ってまいります。
 次に、母子家庭の雇用状況と今後の取り組みについてですが、雇用状況につきましては、平成十五年の全国母子世帯等調査によると八三・〇%が就業しており、うち臨時・パートが四九・〇%と最も多く、次いで常用雇用者が三九・二%となっております。平成十年の調査と比べ、常用雇用者が一一・五%低下し、臨時・パートが一〇・七%増加しております。
 県では、母子家庭等就業・自立支援センターを設置し、就業に関する相談、助言や求人情報の提供など、自立に向けた取り組みを行っております。また、就業に結びつけやすい資格取得のための講習や職業能力の開発を支援するための給付金支給などの支援を行っているところです。平成十九年度は、これに加え、新たに母子家庭の母を常用雇用に転換した事業主に支給する奨励金や個々の事業等に配慮した自立支援プログラムの策定等により支援策の充実に努めてまいります。
 以上です。
○議長(向井嘉久藏君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 若年者の雇用状況と取り組みについてでございますが、景気の回復基調によりまして雇用情勢は改善傾向にありますが、フリーター、ニートの増加、高い失業率や離職率など、若者を取り巻く雇用問題は深刻なものがあります。そのため、実態把握のために平成十七年に実施したアンケート調査から、県内にはニートが約五千七百人、フリーターは約一万四千人いると推計しているところであります。これらに対応するため、昨年四月に若年者就職支援センター「ジョブカフェ・わかやま」を移転、拡張するとともに、ハローワークの学生職業相談室を併設し、機能の充実強化を図ったところであり、今年度一月末現在の利用者数は七千三百二十七人、就職者数は三百五人で、前年同期に比べてそれぞれ一・九倍、一・四倍の増加となっております。また、来年度は、ジョブカフェ・わかやまに新たにジョブナビゲーターを配置し、就職前の大学生等を対象とした巡回カウンセリングの実施や企業の求人ニーズの情報の収集などを行ってまいります。
 今後とも、和歌山労働局など関係機関と連携を図りながら、若者のニーズに応じた多様な支援メニューにより早期就職や職場定着ができるよう支援してまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 高等学校の授業料減免についてお答えいたします。
 平成十七年度の減免者数は、生徒数全体の約八%に当たる二千四百二十八名で、減免の総額は約二億一千百万円であり、三年前と比較すると、人数で五百八十七名、金額では約六千六百万円の増加となっております。生徒数が減少しているにもかかわらず、県内の厳しい経済状況を反映して減免者数は年々増加しているという状況であり、この傾向は全国も同様であります。
 授業料減免制度は、生活困窮等により授業料の納入が困難な生徒に対して授業料の免除を行い、就学機会の確保を図る対策の一つであります。生活保護世帯については、生業扶助の中で高校の就学費が対象とされておりますので授業料減免の対象外となりますが、生活保護世帯以外についても、生活保護基準に準じる世帯には全額免除を、収入が生活保護基準の一・二倍までの世帯には半額の免除を行っております。
 厳しい財政状況の中ではありますが、今後とも就学対策として奨学金制度等について活用の周知に努めるとともに、授業料減免制度を堅持してまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 答弁をいただきましたけども、今回要望ということでさしてもらいたいと思うんです。
 三位一体の改革が、結局は地方財政の強化に結びつかなかったのではないかと、今のところね。そういう中で、行財政改革を推進しながら新たな事業の財源をひねり出していかなくてはいけない、起債と基金に頼るという、こういう構図になってると思うんですが、前からも言ってることなんですが、やっぱり地方分権、三位一体の改革というのは、国の事業量と財源ということで見れば、国が仕事が二だとしたら地方が三やってる。財源は国が三取って地方が二という、こういう偏在といいますかね、こういうようなバランスが崩れてるというところに私は大きな問題がまずあるだろうとは思うんですが、その是正というのは大変なことであります。
 そういう点から、やっぱり今後とも、この真の地方分権と言うにふさわしい地方の財源のあり方ということで声を上げていっていただきたいと。それは当然そうしていただけるものと思っておりますが。
 そういう中で、今、県民の暮らしが大変な状況になっとるわけです、格差の拡大と固定化ということで。県経済全体の底上げを図りながら県民所得をふやしていくという、これは戦略的な課題だとは思うんですが、当面目の前で困っている県民がいてる、そういう実態が一方ではあるわけなんですね。そこに直接手を差し伸べていくということが地方自治体の本来の使命ではないかと私は考えるんです。
 前知事は、打ち出の小づちがあるわけではないということで、そのセーフティーネットに対する財政配分、財政措置というのは難しいんだというような話をされてましたが、私、一問でも言いましたように、国の事業の直轄工事の負担金であるとか、それから、県が実施する施策の中でもまだまだむだを省いていく、それから、県民の生活を直接底支えしていく、そういうところへ予算を回していくということが、本当に目の前の困った人を助けるということが今大事だろうと思うんですね。
 教育の授業料の減免措置なんかでも、基準となる生活保護基準がどんどん下がっていっているんだけど、減免しなくてはいけない家庭がふえてきてるというところに、やはり今の現状があるだろうと思うんです。そういった点も十分に意を尽くしていただいて、これからの県政の運営と予算の配分に意を尽くしていただきたいということを申し上げて、私の質問といたします。
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時四十分休憩
────────────────────
  午後一時三分再開
○副議長(谷 洋一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十番野見山 海君。
  〔野見山 海君、登壇〕(拍手)
○野見山 海君 しばらくの間、おつき合いを願いたいと思います。
 私は田辺市に住んで四十五年になりますが、その間、県会議員として四期十六年を務めることができました。これも県民の皆さんから今日まで変わらぬ御支援をいただいたたまものと、厚くお礼を申し上げる次第であります。
 私は、常に「謙虚さと初心を忘れず、おごることなく」をモットーに、自分に言い聞かせながら今日まで努めてまいりました。県民の皆さん、地域住民の皆さんが安心・安全で暮らせる地域づくりのために、微力ながら地域を回り、地域住民の皆さんの生の声を聞き、いろんな課題に取り組んでまいりました。私なりに幾つかの要望の解決ができたと思っています。もちろん、それは行政職員の理解があってのことだと感謝申し上げます。今回の質問も、自分なりに地域を回った結果であり、地域の生の声を代弁するものであります。
 それでは、通告に従いまして質問をさせていただきます。
 最初に、南北格差是正について質問いたします。
 昨年は、前知事が官製談合で逮捕されるという県政史上前代未聞の出来事がありました。私も微力ながら知事選挙で前知事を支援してまいりましたが、こうした事件を起こしたことに対する激しい怒りを感じます。県民の皆さん方に大変申しわけなく思っておる一人であります。
 遅くなりましたが、過日の知事選挙で見事当選されました仁坂知事、まことにおめでとうございます。今後、県民は、しがらみのない県政のかじ取りを願っており、各地域住民の声を生かした元気ある和歌山、活力ある和歌山づくりを期待しているものと思います。
 仁坂知事は、選挙を通じて和歌山県内各地を回ってこられたと思いますが、すぐには全体を把握し切れないだろうと思います。私が住む紀南地域の県民の切実な願いを知事に伝えたいと思います。
 それは、和歌山全体にとっての大きな課題の一つである南北格差の、あるいは都市と農村部の格差の問題であります。何をもって南北格差というのか、さまざまな基準があります。複雑でありますが、私は、所得格差のみならず人口増減などもその指数となり得ると思います。つまり、地域が活性化しているところは人口はふえ、逆に停滞すれば人口は減るという形であらわれ、人口の増減は地域活性化のバロメーターになり得ると思っております。
 そこで、人口の資料を使いながら、少し南北格差問題について考えたいと思います。知事の南北格差是正についての御所見を伺いたいと思います。
 経済的停滞を続けている和歌山県では、全体としても人口減少を余儀なくされていますが、特に私が住む紀南の人口減少は著しいものがあります。平成十二年から平成十七年の人口減少は、実は県平均がマイナス三・二%ですが、西牟婁郡が平均より少ないマイナス二・九%なのを除き、田辺市がマイナス三・七%、新宮市がマイナス三・九%、東牟婁郡に至ってはマイナス六・九%、軒並み県平均を上回る減少率でございます。
 人口減少には、社会的人口減少と出生率の低下による自然的人口減少が考えられます。これといった産業のない紀南では、若者の働く場所がなく、若年層の流出に歯どめがかからず、社会的人口減少が出生率の減少を生み、さらに地域の高齢化人口比率を高めてしまったと考えられます。
 ちなみに、平成十八年三月現在の高齢人口比率は、県平均が二三・八%に対し、田辺市が二五%、新宮市が二七・八%、西牟婁郡が二六・三%、東牟婁郡が三三・一%と、極めて高いものになっています。このことは、地方自治体にとりましても、税収の減少とは逆に、高齢者負担増となって地方財政を苦しめる結果となっております。
 平成十八年度の「和歌山県のすがた」という統計資料の人口一人当たりの市町村民税の市町村別ランキング表を見ましても、紀南のほとんどの市町村では県平均を下回っています。税収の低下は財政力指数にも影響を与え、紀南の多くの市町村の財政力指数は低位にあると思います。
 地方交付税削減の中、今後ますます紀南地方の自治体の財政は苦しくなると予想されます。地方自治体の困窮化は、当然、地域住民サービスの低下につながり、住みにくい町につながると思います。高齢人口比率の高まりとともに、田辺市では、ひとり暮らしの老人の数が増加しております。平成十四年から平成十八年にかけて、ひとり暮らしの老人は千三百八十二人もふえ、この間の増加率は四一・二%になっております。
 新田辺市になって、私は山間部の町村をくまなく歩いて、お年寄りの声を聞く機会を得ました。特に、山間部でのひとり暮らしのお年寄りの悩みには深刻なものがあります。多くの老人が、病気になったときや災害時にどうしたらよいのかという不安を抱えております。息子さんが都会に住むある老人は、「将来、息子と同居するというのも選択肢ですが、私としたら、住みなれたこの地で生涯を終えたい。一番よいのは息子が帰ってくることだが、働く場所がないのでどうしようもない」と嘆いておられました。
 今、紀南で進行している地域の衰退、若年層の流出、税収の低下、行政サービスの低下と続く流れがさらなる地域の衰退化を生むというマイナスの悪循環をどこかで断ち切る必要があります。そして反対に、地域の活性化、若者の定着、税収の増加、行政サービスの向上というプラスの流れをつくり、紀南に光を当てていく必要があろうかと思います。
 知事自身は、紀南の再生に向けて、紀南に光を当てるためにどういう手順で何をどうするのか、知事の考えをお伺いいたしたいと思います。
 幸い、熊野古道の世界遺産登録や高速道路の南下が進み、紀南の町づくりに幾つかの条件が整いつつあります。働く場所の確保には、紀南の自然や文化を生かした教育文化施設や企業の誘致、地場産業の育成が大切であります。しかし、国家の財政難の中、これまでの国の補助金や地方交付税頼みの企業誘致の基盤整備事業、いわゆる中央依存型の地域振興策には限界があります。
 そこで、地方財政難の中で、これからは自前の地域づくり、地域振興策が必要になってくると思います。これまでの、行政だけがすべての公共サービスを担い住民は単なるお客様という仕組みを見直し、住民と行政がともに町づくり、村づくりにかかわるという行政と地域の関係を見直す必要があろうかと思います。
 高知県では、「自らの力で歩む高知」を理念に、県職員の中に縦割り組織にとらわれない地域元気応援団長やその下に地域支援企画員をつくり、市町村と協力しながら具体的な地域振興策に取り組んでいると伺っております。
 こうした職員は、これまでの前例踏襲型の発想ではやっていけず、当然失敗も予想されるでしょうが、リスクを恐れない勇気と、しかも高い政策立案能力や行財政経営能力が求められると思います。つまり、職員は仕掛け人であり、演出家であり、調整役であり、高いコスト意識が求められていると思います。こうした職員の行政能力は町づくり、村づくりの中で鍛えられ、身につけるより方法はありませんが、こうした能力が今後ますます住民から求められることになると思います。
 こうした高知県のようなシステムは地方分権時代の広域自治体職員の一つのあり方を示していると考えますが、いかがでしょうか。副知事にお伺いしたいと思います。
 次に、防災拠点についてお伺いいたします。
 各地でことしも最高気温を記録するなど、異常な状況ではないでしょうか。気象予報士の話では、北極の寒気が日本に南下しないため高い気温をもたらしており、また南から暖気が入りやすくなり暖冬の大きな原因になっているとのことであります。さらに、地球温暖化も進み、近い将来、日本も食糧不足、水不足が起こり、既に西日本でも暑過ぎて米がとれない時代になってきており、日本列島の農産物生産形態も大きく変わってくると言われております。
 今、地球温暖化で世界各地で大きな災害が起こっていますが、本県でもいつ起こるかもしれません。先日完成した県庁南別館の中に設置される防災センターが県民の安心・安全のために生かされることを願う一人であります。
 さて、県は、昨年五月末に東海・東南海・南海地震の被害想定調査を発表しました。次いで昨年末には県地震防災対策アクションプログラムを発表して、最大で約五千人を上回るという死者数を今後十年間で半減させる姿勢を示されました。私は、県の防災への積極的な姿勢を評価するとともに、今後さらに体系的かつ有効な防災対策を進めていただくことを強く要望するものであります。
 私は、アクションプログラムで取り上げられておりますが、広域防災拠点についてさきの九月の県議会でも取り上げ、被害想定の最も多い田辺市にこそ防災拠点を持ってくるべきだと提案し、前知事から、田辺市の南紀スポーツセンター付近の土地が有力な防災拠点の候補地になり得るという答弁をいただいております。仁坂知事も、これまで積み上げてきた防災計画をどのように踏襲して来年度以降の計画に反映されるのか、また紀南地方での防災拠点をどのようにお考えになっておられるのか、知事にお伺いいたします。
 次に、交通量の増加に伴う道路の線形改良について質問いたします。
 知事は、去る一月二十六日に大阪市内で開催された関西プレスクラブで「元気な和歌山づくり」をテーマに講演され、報道陣に対して、県内沿岸の高速道路整備のおくれを補うために平成十九年度から内陸道路の国道百六十八号、三百十一号、四百二十四号及び四百二十五号の整備を重点的に行う考えを明らかにされました。
 そこで、改めてまず道路整備全体に対する知事の考えをお伺いいたします。
 平成十六年に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録された以降、熊野を訪れる観光客は大きくふえております。例えば本宮町では、登録された平成十六年には日帰り、宿泊客合わせて百十五万一千の観光客が訪れていますが、これは平成十年を一〇〇とすると二倍以上の二一七に上る数字だと言われております。特に、ことしも熊野本宮大社への初もうで客がふえ、昨年末から本年初めにかけて二十五万七千六百人の人々が本宮町を訪れたと聞いております。
 こうした観光客の増加につれて熊野への交通量も増加しており、残念ながら、同時に交通事故も増加傾向にあります。先日も国道三百十一号の逢坂トンネルで二重衝突があり、二名が死亡するという痛ましい事故が発生しましたが、この道路、国道三百十一号で起こる事故が後を絶ちません。しかも、事故発生場所が、ある地域に偏って起こる傾向にあります。
 特に、上富田町下鮎川の加茂から田辺市鮎川下附にかけての場所はカーブが多く、見通しの悪い場所であります。ここで、平成十四年十二月から平成十八年十二月の間に十件の交通事故が発生しております。今後、地元の交通事情がわからない県外からのドライバーがふえることも考えれば、このままではますます事故がふえるものと危惧されます。早急にドライバーに対する注意喚起や交通事故多発の看板をつくるなどの安全対策が求められていると思います。
 さらに、道路の構造的な欠陥も指摘されています。見通しをよくするように道路改修を進めて交通安全対策を進めるとともに、世界遺産登録後の観光客の増加や高速道路南下に伴う交通量の増加にどう対応し、線形改良にどのように取り組むのか、県土整備部長にお伺いいたします。
 以上をもって質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(谷 洋一君) ただいまの野見山海君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 南北格差、特に紀南の再生について私の考え方を申し述べさせていただきます。
 県政の重要課題であります紀南地域の再生には、鉱工業の成長や、あるいは企業誘致に加えまして、地域の強みである豊富な農林水産物と観光資源の付加価値を高め、広くこれを売り出すということが有効な方法であると考えております。このため、関係者や市町村の意見をお聞きしながら農産物や紀州材の販売促進策や新たな加工法を検討するとともに、観光についても地域の特性に応じたプロモーション戦略の検討を行っているところであります。また、企業誘致についても市町村と一体となって積極的に取り組む必要があると考えております。同時に、高速道路の紀南延伸、県内の道路ネットワーク整備を重点的に進めまして、県北部はもとより、関西の大都市圏との時間距離を短縮することにより紀南地域の再生を図りたいと考えております。
 防災計画につきまして、とりわけ防災拠点につきまして御質問がございました。
 防災計画につきましては、議員お話しのとおり、昨年公表いたしました地震被害想定結果や、あるいは国の地震防災戦略などをもとに、地震等大災害による被害軽減の具体的な目標を定めた県地震防災対策アクションプログラムを改定しているところであります。今後も、引き続き本プログラムに基づいた防災対策をより効果的に進めてまいりたいと考えております。
 次に防災拠点につきましては、東南海・南海地震等の発生により大きな被害が想定される本県にとりまして、災害応急対策を早急に実施するため広域防災拠点を整備しておくことは重要なことであると考えております。現在、平成十九年度末を目途に基本構想の策定を進めているところでありますが、甚大な被害が想定される紀南地方におきましてもその整備が必要であるというふうに考えております。
 続きまして、道路整備全体についての考えでございます。
 道路整備につきましては、元気な和歌山を実現するための交流ネットワークの整備として、まず、県にとって背骨となる高速道路である近畿自動車道紀勢線、京奈和自動車道、大阪府との交流を促進する府県間道路及び骨格となるネットワーク関連道路を最重点に整備したいと考えております。これらの道路網は、今後発生が予測される東南海・南海地震に備えた防災面や緊急医療、さらには企業誘致、物流、あるいは観光振興などの観点からも早急に整備をする必要があると考えております。
 特に高速道路の整備に努力をしてまいりますけれども、完成に至るまでには時間がかかります。したがいまして、内陸部の橋本、田辺、新宮などの主要都市と高速国道をつなぐ三けたの国道をネットワーク関連道路として、おおむね五年を目標に整備してまいりたいと考えております。
○副議長(谷 洋一君) 副知事原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○副知事(原 邦彰君) 地方分権時代における職員のあり方についてのお尋ねがございました。
 議員御指摘のとおり、今後の地方自治体は、すべての公共サービスを行政だけが担うのではなく、個々の地域にふさわしい公共サービスに行政と地域住民がともにかかわっていく必要があると考えております。そのため、県では、職員が県民の皆様のもとへ出張して施策を説明する「出張!県政おはなし講座」を実施するほか、複雑多様化する行政需要に迅速かつ弾力的に即応する機動的組織として平成十七年度からプロジェクトチーム制度を設け、その中においても町づくりなどの分野で市町村や地域住民の協力を得ながら地域振興に寄与する活動も展開しております。
 今後とも、これらの活動を積極的に推進していくとともに、職員の資質向上に努めてまいります。
○副議長(谷 洋一君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 国道三百十一号の線形改良についてお尋ねがありました。
 国道三百十一号は、県内陸部の交通を受け持ち、観光の振興や高速道路の開通に伴い交通量の増加が見込まれる重要な路線であります。その中で、議員御指摘の区間は、二車線改良は済んでいるものの、比較的長い直線区間に続いて小さなカーブが連続する区間であり、スピードの出し過ぎや町道交差点付近における前方車両の視認のおくれ等が原因と思われる事故が発生しております。このため、公安委員会と連携し、平成十九年度に運転者に減速を促し注意を喚起する標識や路面標示等の交通安全対策を実施いたします。また、線形改良につきましては、十九年度に実施する交通安全対策の効果を見きわめながら検討してまいります。
○副議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十番野見山 海君。
○野見山 海君 御答弁、ありがとうございました。三つほど要望させていただきたいと思います。
 一つは南北格差是正についてでございますが、県内の市町村では平成の第一次合併が一段落し、第二次合併が進められようとしておりますが、しかし地域住民からは、「合併による効果を期待していたが、期待外れだ」という批判の声が聞こえてきます。「年金は減るし、介護保険は高くなった」というあきらめの声を少しでも和らげるため、地域住民の皆さんが安心して暮らせるような地域づくりをしていただきたいと思います。さらに、雇用の場を確保するために、県内外の企業を誘致するとともに地域産業を活性化させ、老人も若者もともに住める元気な和歌山、活力ある和歌山を目指していただきたいと思います。そのためには、県職員にはもっと地域に積極的に足を運んでいただき、地域住民の中に溶け込んでいただき、地域の思いをしっかり受けとめて県行政の中で生かしていただくことを強く要望しておきたいと思います。
 もう一つは防災拠点についてでございますが、「災害は忘れたころにやってくる」と言われます。今、世界各地で地球温暖化が原因とされる異常気象による災害が起きています。紀南地方にもいつ地震が、津波が襲ってくるかもわかりません。特に紀南地方では海岸沿いに民家が多くあるだけに、災害時の迅速な対応が急務だと思われます。一日も早い防災拠点整備を強く要望しておきたいと思います。
 三つ目は交通量の増加に伴う道路の線形改良でございますが、本県の道路は約七六%が整備されていると伺っておりますが、さらなる道路整備をお願いするところであります。今回私が指摘しました国道三百十一号は、平成十一年の南紀熊野体験博の開催に合わせほとんどが整備されましたが、私の知る限りでは未整備箇所があと三カ所ほど残っていると思います。
 この国道三百十一号線は、地域の物流、観光、生活道路でもあり、新宮市からの利用者も増加傾向にあります。特に、指摘しております田辺市鮎川から上富田町下鮎川にかけた区間約百五十メートルぐらいですか、曲がりくねった箇所があり、交通事故が多発しております。警察に届けない事故も多いと周辺の住民の話もございます。
 私は、知事が去る一月二十六日に大阪で開催された関西プレスクラブで報道陣に対して、国道三百十一号は曲がりくねった箇所があり早急に整備したいと発言された記事を見ましたんで、「ああ、中身よく知ってくれてるな」と喜んでる一人であります。死亡事故防止のためにもぜひ線形改良に取り組んでいただくことを強く要望いたします。
 また、二月の十一日、二月二十四日にも交通事故が発生したことを報告して、要望といたします。ありがとうございました。
○副議長(谷 洋一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で野見山海君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十六番下川俊樹君。
  〔下川俊樹君、登壇〕(拍手)
○下川俊樹君 議長のお許しをいただきましたので、質問を順次進めてまいりたいと思います。
 まず初めに、市町村合併についてお尋ねをしたいと思います。
 今議会でも、坂本登議員、吉井和視議員から当局を厳しく追及する意見もございました。振り返ってみますと、第一次合併、この議場の中でほとんどの議員が和歌山県の行く末を考えて合併是非論の議論を集中されたことを思います。高齢化の高い、そして過疎地の多い我が和歌山県にとって合併がどのように作用するのか、大変難しい状況であります。そういうことを踏まえながら質問を進めてまいりたいと思います。
 先月二十七日に那智勝浦町において、県主催の地域まちづくりシンポジウムが開催をされました。私も、地元県会議員の皆さんと一緒に出席をさしていただきました。シンポジウムは、常磐大学・井上教授による「地域連携と新しいまちづくり」についての基調講演、そして「新宮・東牟婁地域の課題と将来像を考える」をテーマに地元自治体や商工関係者などによるパネルディスカッションが行われ、多くの参加者が熱心に耳を傾けるなど、まことに有意義なものであったと思います。
 そこで、私が注目したのは、参加者を対象に実施されたアンケートの結果であります。私なりに総括しますと、住民が思い描く地域の将来像として、観光・交流の町、健康と福祉の町、そして自然環境の保護・保全を優先する町に対する期待が非常に大きいことを感じました。同時に、今後の町づくりの施策として、多くの方々が医療、高齢者・障害者福祉の充実と観光振興、そして道路網の整備の必要性を特に重視をしていることであります。そして、こうした町づくりを進めるための手法として、全体の六割以上の方が市町村合併が必要だと認識をされておるように感じました。
 アンケート結果にもあらわれているとおり、町づくりのキーワードは、やはり広域と集積であり、私がかねてより新宮・東牟婁地方八万人の広域大合併を主張していることとも通じるところであります。しかしながら、その実態はと申しますと、第一次の合併により五十市町村が三十市町村となりましたが、この間、地域の事情により必ずしも合併に加わらないと申しますか、合併できない町村も見受けられました。人口一万人以下の町村が十一町村存在することがこの間の事情を物語っているところであります。
 市町村合併は、基本的には地域の自主的な判断が前提となるというのはある程度理解をいたします。同時に、少子高齢化が今後も進展をする中、とりわけ小規模町村の存在は地域間での新たな不均衡の源にもなりかねないという大いに危惧するところがございます。また、一次合併によって合併はしたけれど合併前の予想や期待とはかけ離れ、こんなはずではなかったと後悔している地域もあるかもわかりません。
 県は、昨年二月に策定した和歌山県市町村合併推進構想において、第二次合併対象市町村の組み合わせを示されました。そして、これを促進するため、合併新法では、知事による合併協議会の設置勧告権が付与されるなど、県の役割も強化されているところであります。第一次合併の成果を踏まえ第二次の合併はどうあるべきか、市町村に対する指導をどうなされるのか、市町村合併に対する知事の基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
 また、副知事にお尋ねをいたしたい。合併新法の期限は平成二十二年三月末、合併協議会を経て合併に至るまでおおむね二年を要するとお聞きをしてございます。逆算すると、タイムリミットは平成二十年三月ごろ、来年度が市町村の合併のまさに正念場に当たる年ではないかと思います。県内各地域においては、市町村合併推進構想に基づいて既に勉強会、研究会が設置されているやにお聞きしていますが、現在の県下の検討状況と今後の対応について答弁を求めたいと思います。
 次に、公共下水道についてお尋ねをいたします。
 私の地元である新宮市は、いわゆる熊野地方の中心都市として、これまでその役目を果たし、またこれからもその役割を担うべき都市として整備充実していかなければならないと私は信じてございます。
 何ゆえか、理由は二点ございます。世界遺産熊野は、今や熊野古道と熊野三山を超えて熊野全域が世界遺産としての広がりを見せてございます。熊野は全国ブランドになった、私はそう断言していいと思います。その玄関都市であり中心都市である新宮市がそれにふさわしい都市機能を持つことが必要であります。さらに言えば、この時期に政治に携わる私たちの責任でもあろうかと思います。
 その都市機能とは何か。私はこれまで何度かこのことに言及をし、主張してまいりました。熊野圏という、和歌山、三重、奈良、三県にまたがる県境を超えた熊野地域を対象にその中核都市としての新宮市がいかにあるべきか、どのような都市機能を備えなければならないか。常にキーワードは「広域」であります。
 広域医療、広域商業、広域消防、広域交通等々、これらはすべて新宮市が人口約十万人の熊野圏の中心都市として備えるべき、あるいは果たすべき役割としての新宮市の都市機能なのであります。今回は取り上げませんが、新宮市立医療センターやドクターヘリ、熊野文化会館の整備充実などは、こうした認識のもとで主張してまいったわけであります。
 今回、新たに公共下水道をこれに加えていただきたいと思います。新宮市が公共下水道を整備し、都市機能を充実することは、もちろんそこに住む人々の生活雑排水やトイレの水洗化など生活環境の向上に資するとともに熊野川の水質を保全することとなり、これも熊野圏の中核都市としての新宮市の役割であろうかと思います。人々が住みたい町、訪れたい町をつくることがねらいであります。
 もとより、公共下水道の整備には、気の遠くなるような事業期間と事業費が必要であることは指摘されるまでもありません。しかしながら、このことを恐れていては下水道整備の全国ワースト二位の汚名返上は難しくなるばかりであります。
 公共下水道の整備は、幹線や終末処理場の整備といった補助対象事業と、家庭内設備とか宅内配管といった受益者負担の事業に大別されます。今後、公共事業がますます縮減されていくことが予想される中、公共事業と受益者負担の両方をうまく組み合わせることにより地域の新たな事業を生み出したい。こうしたことにより、地域経済の活性化に大きな波及効果が期待をされるわけであります。私は、新宮市における公共下水道の事業採択を通してこのことへの一つの答えを見出していきたいと考えております。
 新宮市における公共下水道の整備について、県土整備部長にお伺いをしたいと思います。
 次に、熊野川河口大橋についてお尋ねをいたします。
 御存じのとおり、新宮市は、和歌山県と三重県を結ぶ国道四十二号、そして和歌山県と奈良県を結ぶ国道百六十八号との交通結節点に位置をしてございます。先ほども申し上げたように、三重県南部地域までを含むと、人口十万人の熊野圏の中核都市として周辺地域との有機的連携のもとに成立している都市であります。国道四十二号では、東西に近畿自動車道紀勢線、熊野尾鷲道路、そして那智勝浦道路、国道百六十八号では地域高規格道路など、広域にわたり幹線道路網の整備が着実に進められているところであります。ところが、そこで大きなネックになるのが、熊野川を挟んで三重県との間に国道四十二号の新熊野大橋ただ一本しかないということであります。
 新宮市と三重県の紀宝町は、ともに熊野川河口に位置し、属する県こそ違え、生活、経済、文化を共有する一体となった圏域であります。両地域を結ぶ新熊野大橋においては、交通量の多さから朝夕に慢性的な渋滞が発生をし、圏域住民の日常生活に大きな障害となっているだけでなく、一度交通事故が発生すると和歌山─三重間の交通が寸断をされるなど、非常に脆弱な状態にあります。熊野圏の中核都市としての機能を果たす上で、また差し迫る東南海・南海地震などの大規模災害への対応としても、現状では大きな問題があります。
 私は、県議会議員に当選直後から海岸沿いの新線建設を強く訴え続け、現在では県道あけぼの広角線として着実に整備が進められています。この道の持つ意味は、言うまでもなく、新宮市内のバイパス機能であります。さきに申しました国道四十二号の現状と海岸沿いの県道の役割を考え合わせ、私は、この県道を熊野川河口大橋として延長し、三重県と連結することがぜひ必要であると訴えているところであります。
 地元でも大変な盛り上がりを見せており、既に「熊野川河口に橋を架ける会」も結成をされ、活発な活動を展開しているところであります。先週も、新宮市長、紀宝町長、そして須川県議ともども私も同席をし県当局に要望をしたところであり、一日も早い実現が待たれるところであります。
 熊野川河口大橋について知事の御所見をお伺いし、あわせて県の取り組み状況、今後の予定について県土整備部長にお尋ねをいたします。
 最後に、熊野学センターについてお尋ねをいたします。
 この熊野学センターの設立は、昭和六十三年に開催をされました日本文化デザイン会議において、特に地方の文化が色濃く残る熊野地域の歴史、自然、宗教などを対象に、これを研究し、集積し、発信することで熊野の魅力を全国に伝えようとする提案でありました。
 その後、哲学者の梅原猛先生を中心に熊野学シンポジウムを毎年開催し、西口元知事の時代には、新宮市に熊野学研究センターを設置してという段階まで議論が進みました。国、地方の財政難などから施設の建設は敬遠され、プロジェクトは中断という状態に置かれてございました。平成十一年、南紀熊野体験博の開催、その翌年、博覧会のテーマであった「癒し」が流行語のトップテンに選ばれ、熊野は再び全国から注目をされることとなりました。そして、平成十七年、熊野古道と熊野三山が世界遺産として登録されるに及び、国民の関心は再び熊野に集まりました。
 熊野はいやしの地、よみがえりの地として人々は競って熊野を目指して、観光客も大幅に増加をいたしました。ことしの初もうでには、熊野本宮大社が和歌山県の二位という二十五万人を超える参拝、熊野速玉大社は十六万、那智大社が十六万と本当に多くの方が紀南の地に訪れ、そして新春を祝って誓ってくれた地であります。
 さて、団塊の世代が大量に退職するこれからの高齢化社会は、知識、経験の豊富な高齢者が大きなウエートを占める社会でもあります。「うんちく商法」という言葉がありますように、旅行一つ、買い物一つにそれなりの理屈、理由づけが必要な時代となってございます。地方の時代は、地方競争の時代であります。熊野地方がこれまでの魅力に加え、いま一段の飛躍を遂げるためには、やはり熊野の魅力を学問的にも研究、集約し、世界遺産センターとともに訪れる人々の知的好奇心を満たすことも重要なことであります。
 もちろん、このことは、梅原先生の言葉をかりれば、日本全国でも少ない縄文文化の残る地域・熊野の歴史、文化、宗教、自然などの学問としての文化センターを整備することであり、この面からも重要なプロジェクトであることは申すまでもありません。今回ようやくその願いが通じ、来年度予算で熊野学センター関連予算が計上され、実現に向けて大きく前進することになりました。この場をおかりして、知事初め関係各位に厚く御礼を申し上げますとともに、改めて知事に熊野学センターについて御所見をお伺いしたいと思います。
 通告にはなかったんですけれども、通告を締め切ったすぐに、新宮市に大変な朗報が届きました。南海トラフの掘削調査、ことし九月から四年間、新宮港が物資補給拠点にということで、この二十一日に決定をしていただきました。
 なぜこの話題を通告もなしに皆さんに報告をさしていただきたかったかと言えば、知事が当選をされて三週間ぐらいたった後に、メタンハイドレートのこの熊野灘での三カ所の調査が始まるわけでありますが、その港を新宮港にぜひと今までの経緯を説明しながら協力を要請しに行ったときに、知事から「もっとすごい話がありますよ。この熊野灘のトラフにまで届く地震計を入れて、東南海・南海地震に備える調査を始めます」という報告を聞いたんですよね。そのときに、こんなに短期間に決定をしていただけると思ってなかったもんですから、「まあ知事、頑張ってください」ということで聞き流して──と言うたら悪いですけど、また時間かかるんだろうなと思って帰ってきたわけです。そしたら、もう早く決定をしていただいた。
 もちろん、新宮港が物資補給拠点になるということは、熊野地方に経済的にも大変大きな波及効果を及ぼします。ただ、私はもっとうれしいのは、新宮港が──日本的にまだまだ二流の港であるその港に「ちきゅう」号──総トン数五万七千八十七トン、全長二百十メートル、幅三十八メートル、高さ百二十一メートル、定員は研究者も入れて百五十人ほど乗り込むらしいですけども、その大きな船がこの新宮港に着岸できるということを全国に発信ができることが大変うれしいんですよね。
 そして、この「ちきゅう」号が調査に動くたびに、日本全国に向けて新宮の名前が発信をされます。ぜひ、その経済効果、そして今後、新宮港の前途に大きな明るい光を投げかけてくれたこの四年間のトラフの掘削調査、成功さしていただいて、そしてメタンハイドレートの寄港としての新宮港の効果も皆さんとともに全国に発信できる、そういう明るいニュースになるようにお力添えを賜りますことをお願い申し上げ、また、これは質問でございませんので知事に答弁を求めるわけではありませんけども、知事が一生懸命頑張ってやってくれた仕事ですから、感じることがあれば一言でも御発言をいただければと思います。
 以上で、質問を終わります。ありがとうございます。(拍手)
○副議長(谷 洋一君) ただいまの下川俊樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 市町村合併につきまして、基本的な考え方を申し上げさしていただきます。
 市町村合併につきましては、地方分権改革を推進し、自立した個性豊かで元気な地域づくりのためには、合併による効果を生かした行財政基盤の強化も有効となると思います。一方では、地元の方々の気持ちも大切であると思っております。したがって、その意味で真摯な議論が必要だと考えております。
 今回有田川町と那智勝浦町で開催いたしましたシンポジウムには大変多くの方々の参加があり、住民の方々の関心の高さがうかがわれます。これを契機として、地域の現状や抱える課題等を十分踏まえ、合併も含めた地域の将来像や、あるいは行政のあるべき姿について、住民の方々も交えたしっかりとした議論を行うことが必要であると考えております。県もその議論に積極的に参加をいたしまして、地域の方々と一緒になって取り組んで、またできるだけの支援も行ってまいりたいと考えております。
 続きまして、熊野川河口大橋についてでございます。
 新宮市は紀南地方における産業、経済及び文化の拠点であり、世界遺産登録を契機に今後一層地域の活性化が期待される地域でありますことは、議員御指摘のとおりであります。そのためには、高速道路体系の整備が大きな課題となっております。
 一方、国道四十二号線一本に地域間交通を依存する構造でありますために、慢性的な渋滞が発生しております。御指摘の熊野川河口大橋につきましては、高速交通ネットワークと整合を図りつつ、構想の早期具体化を三重県と連携し国に働きかけてまいりたいと思います。
 次に、熊野学センターについてでございます。
 熊野には魅力ある豊かな自然があり、また、その中で先人たちがはぐくんでこられた歴史、文化、宗教があります。これらの資源を総合的に研究し、熊野の魅力を全国に発信、アピールしていくことは熊野地域の振興に大変重要なことであると考えております。
 熊野学センターにつきましては、設置主体となります地元新宮市が旧熊野川町役場跡の利用を中心に検討されておりますが、県としては、熊野学研究の中心としていろいろな機能をそこに集中させ、より効果的な施設とすることによりまして、国内外の研究者、愛好者を初め、広く一般の方々にも訪れていただける、また熊野の魅力を全国にアピールできる施設となるように、関係機関と連携しながら協議を進めてまいりたいと思っております。
 それから、一言所信をというふうに議員おっしゃられましたが、今回の新宮市への「ちきゅう」号の寄港につきましては、大変喜んでおります。なぜならば、これは、経済的効果もさることながら、一つには、地球研究に関する世界的な、あるいは日本一の研究施設、あるいは研究の機会でございます。国内外の研究者もたくさんそこに集うということでありますので、新宮市がいわばこれの母港化をすることによって、そこで多くの学問的な交流や、あるいは青少年に対する刺激がそこにもたらされると思っております。これが第二点でございます。それから第三点は、この「ちきゅう」号の研究目的は、実は地震の解明ということにもございます。したがいまして、地震対策で浜口梧陵先生の御衣鉢を継ぐ和歌山県といたしましては、こういう問題について、「ちきゅう」号の母港を新宮という町に持ってくるということにつきましては大変意義のあることだと考えております。そういう意味で私は大変喜んでおります。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(谷 洋一君) 副知事原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○副知事(原 邦彰君) 市町村合併の検討状況と今後の対応についてのお尋ねがございました。
 現在の検討状況については、構想をお示ししましたそれぞれの地域におきまして研究会が設置され、県も参加をして、地域の課題や将来見通し等についての研究が行われております。
 今回シンポジウムを開催した有田及び新宮・東牟婁地域におきましては、研究会での成果も活用しながら、さらに踏み込んだ議論が行われるものと期待をしております。行政と住民の皆様が一体となって行われる新たな地域づくりや市町村合併についての活発な議論に県も積極的に参加してまいりたいと考えております。
 今後は、ほかの地域におきましても研究会と並行して順次シンポジウムを開催するなど、地域における機運の醸成と住民も交えた活発な議論の喚起を図ってまいりたいと考えており、その議論には、知事も御答弁申し上げたとおり県も参加し、できるだけの支援を行うなど、法期限も見据え、積極的な役割を果たしてまいりたいと考えております。
○副議長(谷 洋一君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 新宮市における公共下水道及び熊野川河口大橋に対する取り組み状況についてお尋ねがありました。
 公共下水道の整備は、快適で衛生的な生活環境を確保し、河川など公共用水域の水環境を保全するために重要であり、また、さまざまな波及効果も期待されるところであります。
 県下の平成十七年度末の汚水処理人口普及率は四〇・八%、また下水道処理人口普及率は一四・三%と、全国に比べてかなりおくれております。県では、全県域汚水適正処理構想に基づき、平成二十年度末の汚水処理人口普及率五〇%を目標に、公共下水道を初め、農業集落排水、浄化槽など、地域の実情に応じた汚水処理施設の整備を効率的に進めているところであります。
 議員お尋ねの新宮市の公共下水道につきましては、事業主体となる市の計画等の熟度に応じ、県としても積極的に取り組んでまいります。
 続きまして、熊野川河口大橋の取り組み状況についてお答えをいたします。
 平成十六年度から国土交通省及び三重県と検討会議を設置し、国の補助調査として熊野川河口大橋を含めた幹線道路網調査を実施しております。国道四十二号新熊野大橋付近は、日二万四千台の交通量があり、慢性的な渋滞が発生しております。熊野川渡河交通のうち、広域的な交通が五〇%以上混在をしております。
 調査においては、新宮市広域圏の一体的な発展のための広域交通の整備や世界遺産を活用した観光ルートの強化、災害時の代替路確保、さらに生活交通の利便性向上等の課題解決のため、熊野川を渡河する新たな架橋の必要性について検討を進めているところであります。
 今年度は、構想を早期に実現するため、高速道路と生活道路の機能を兼ね備えた道路の可能性について検討を行っております。来年度も引き続き補助調査を要望しており、国及び三重県と連携しながら、今年度の調査結果を受け、ルートの具体化の検討を進めてまいります。
○副議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(谷 洋一君) 以上で、下川俊樹君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時五分散会

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