平成19年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十二番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 議長のお許しを得ましたので、市町村合併について質問をいたします。
 昨年は、和歌山県政史上、最悪の年でした。「談合三兄弟」とやゆされ、全国に向けての報道となり、県政に対して県民の方々の大きな失望と不信を招いてしまいました。青少年や子供たちは、どんなふうに大人たちのことを見ているのでしょうか。
 談合とそれにまつわる金を大きく問題視されていますが、大事なことは、今回不祥事から得たそれぞれの教訓を風化させてはならないことです。県民に軸足を置いた県政を回復してこそ、県民の支持を得ることができ、地方自治体が成り立つと考えます。
 幸い、有能な知事さんのもと、新たなスタートを切りました。もちろん、談合防止策だけを念頭に改革を進めているとは思いませんが、これらの不祥事を思うとき、私は、当事者でなくても周りの者がそれぞれの本分を果たしていける環境づくりに改革の柱を据えていただきたいと考えます。知事の本分、副知事、部長また職員の本分、さらには議員や各種委員会の委員の本分等々であります。
 とりわけ、私たち議会と行政側の緊張感が薄れていることも事実であります。事が起こると、当事者だけがトカゲのしっぽ切りで終わってしまいますが、私自身、これを機に本分をわきまえ、県民に対し責任を果たすことを真摯に受けとめたいと考えます。
 議会と行政が本来掲げ持っている役割とその意識づけを痛感し、暴挙を許した我々議会の責任や機能を十二分に果たしていないことへの反省は、本当に大事なことです。昨今とみに言われている格差社会よりも、むしろ、このようなことで生まれる不信社会の方がより深刻であります。本県では、二度とこのような大きなダメージにつながらない、正義と透明性の高い土壌を形成しなければなりません。
 さて、御存じのように、今、地方は大きく疲弊しております。市街中心部の空洞化、いわゆるシャッター通りに代表される雇用面や環境面、また教育や福祉に及んでいます。一次合併した市町村の現状と二次合併に備えている市町村の行く末を案じますと、今さらながら事の深刻さに気を重くいたしております。
 翻って、トヨタ自動車の純利益が、昨年には九カ月で一兆円の達成と報道されました。大企業の収益はバブル期以上であり、我が国経済のグローバル化による景気は長期化の様相にあります。恩恵のある関東圏や中部圏等と本県のような地方との二極化が著しく、まるでよその国の出来事のようであります。
 中小企業も若干設備投資の上向きもあると言われていますが、本格的には至っておりませんし、また、大企業の好調ぶりをよそに、大多数の個人所得者には反映せず、国内消費に勢いはありません。年金制度の破綻問題、少子高齢化社会の到来、団塊の世代の大量退職への課題、環境問題や防災等々、いろいろなマイナス要因が絡み合う、何と課題の多い現代社会でありましょうか。何より、本県の主産業である農林業も極度に勢いが衰えてきました。
 こうした中で、本県の市町村の二次合併に向けて事務レベル協議が始まっていると思いますが、百年の大計を誤らないためにも、地方においては市町村合併と道州制の是非を最重要事項として徹底した議論が必要であります。
 新合併特例法に基づく県の二次合併構想は、二十三市町村を六に再編成することを示しており、一次合併を経て、最終的には五十から十三の市町村を目指したものであります。県の影響力は非常に大きく、今後の決定を左右すると思われますが、合併推進のあり方と地方自治の本質をどこまでとらえているのかが重要となり、二次合併の考え方と県主導の有無並びに基本姿勢等を当局に質問したいと考えます。
 前知事のもと、一次合併では五十から三十市町村の再編をなした県の役割は大きかったと思います。この二次合併においても、新知事の地方分権と地方自治に対する考え方が示される大切な局面と考えるため、新知事の所信をまずお聞かせ願いたいと考えます。
 私は、平成十四年二月の議会で、大きな合併より小さな合併を取り上げました。南部町と南部川村の小規模合併がモデルとなります。地理的条件に加えて、地場産業の共通点、そして心が一になるという点で理想的でありました。
 しかし、これらの点を全く無視した合併も本県では散見されます。特に、やたらと大きさのみを求めた地域がありました。一次合併を前にして、県の示した案を丸のみし、推進派の当時の首長たちが異口同音にスケールメリットを声高に唱えていたことが鮮明な記憶としてよみがえってまいります。
 今、この大規模合併をなし遂げたそれぞれの住民の方々はどのような思いでいるのか、御存じでしょうか。悔しい思いでいるのか、よかったのか。また、当該自治体の職員の思いはいかばかりでありましょうか。私の把握の範囲では、住民の方々に結論だけが説明され、思案する間がなかった、また、その道のプロである市町村職員の意見が反映されなかった、首長と県の考えが最優先した形等がよく耳にするところであります。
 ここで、私は、県の関与、助言が大きく影響したことも一因であると申し上げておきます。県は、当時、もっと大きな合併構想を市町村に示唆していました。例えば、県は一次合併構想で田辺市を中心とした十カ市町村を平然と示したときには、私は唖然としました。広域合併の行き着くところは一極集中であります。すなわち、山間に点在する集落を一定規模の中心地に一気に集約することを誘発しがちであるからです。
 僻地集落が淘汰された後、山林の保全や河川の保護といったとうとい自然の世話などを一体だれがするのか、不安でもあります。広域合併というものはそのような副作用を有するものである、この点について触れなければ、県はみずからの指導に対して説明責任を果たしたことにはなりません。また、功罪どちらであっても、県の指導により導かれた結果であると言っても過言ではありません。
 いずれにいたしましても、ここで一次合併の検証をしなくてはなりません。予定どおり国の手厚い財政等の優遇措置がなされているのか、その後、危機的財政状況に陥っていないのかどうか、また、小規模でできなかった行政サービスやインフラ整備等の進捗、これらが大規模で有利に働き、住民にプラスになったのかどうか、検証すべきであります。長期視点でなくては判断できないというならば、早々と大規模合併を県が率先して推進したことは適当な想定の範囲でしか判断していなかったからであります。
 先般、報道番組で、夕張市や全国の自治体の状況が放映されました。ちなみに、信憑性のほどは別として、その指数とは、実質公債費比率、経常収支比率、投資的経費比率等、幾つかの指標の総合ポイントをワースト順に紹介したものであります。北海道や、本県も含む近畿圏の自治体が多く見られましたのには驚きました。
 また、「日経新聞」では、経常収支比率のワースト五に本県のA市が記載されていました。法人税収の伸びない本県の事情をまさに反映しています。
 詳しく調べてみますと、まだまだ目を覆いたくなるかもしれません。全国の市町村で十八年度普通交付税不交付団体は百六十九団体で、一番多いのは愛知県で、三十六団体もあります。うらやましい限りであります。ちなみに、本県はゼロであります。夕張市の状況も対岸の火事ではありません。
 昨年秋に、地方財政審議会から「地方財政の健全化の推進に関する意見」のレポートが出されました。重要な二点について申しますと、一つに、地方財政健全化の成果は地域住民に還元することを基本とし、取り組みとして、地方の財政情報の公開など徹底した行政改革を行うと述べています。また、健全化が緊急課題として、一つに、地方が自立できる仕組みを整える、二つ目、地方が潜在力を自由に発揮するとあります。今後、総務省と都道府県の連携により、これらの施策を市町村指導をする上でどう生かしていくのか、地方分権との整合をどう図っていくのか、補助金を減らした税源移譲が十九年度に反映されるが今後何が変わっていくのかを十分論考していくべきであります。
 ここで、今回の質問に関連して、私が議員生活二期八年間において議会で申し上げた町づくりに関する提案事項を当局がいかに取り上げてくれたのか、はたまた聞き流しただけなのかと思いをはせながら、その後の検証の意味を込めて申し上げます。
 一貫して述べてきたことは、美しいふるさと再生、きれいな町づくり、そして農林業を守り育てることを中心に据えたことです。地場産業の振興、地産地消、これらをベースとした息の長い、しかし実現可能な、訪れたい町づくりがテーマであります。空き地の芝生化運動、また国道や県道の広告類、特に旗等の規制や沿道の花いっぱい運動等であります。さらにその先には、人々をいやし、引きつけてやまない町づくりと観光を目指すべきことを強調しました。何もかも世界遺産絡みでなくてもいいのであります。農業にしても付加価値を強調しました。二十一世紀のテーマと言われています水を資源として、循環型社会にあって小規模農業が成長産業になり得るのです。
 そうした中で市町村合併を論ずるべきであって、決して効率本位やスケールメリット等と他力本願的な生き方を根拠に県の姿勢を見せないでほしいからであります。川の流れに、里山に、平野に、海辺に、それぞれに人々が手を取り合って暮らせる、心を一にできる範囲を基本とした合併であってほしい、そう考えます。
 行政サービスの低下や人員効率を得るための推進は徒労であり、同じ水源、下流域に暮らす範囲の合併が限度と考えます。また、産業形態や目的が共通していること、文化に差異がない等、このように人間が将来生きていくためのよりよい効率を模索せずして、本来、合併協議はあり得ないのではないでしょうか。農業も林業も漁業も商業もといった百貨店では立ち行かない。流域が上流と下流に分離するような合併にも、相当無理が生じます。
 ジャーナリストの内橋克人によれば、「生きる、働く、暮らすが新たな農的価値を生み、それを統合した存在として人間はある」と述べています。和歌山県では、このように働き、このように暮らし、このように生きるという将来予測のある行政シナリオがこれからの役所に求められるのではないでしょうか。「グローバルスタンダード」の呪文ばかりでなく、人間が暮らすふるさとを基軸として、二十一世紀に再び見直されるであろう農的価値のある産業復活を県政挙げて取り組んでほしい、きれいなふるさとづくりが、やがて多くの方々が紀州に訪れ、やがて安定した観光資源となるような遠大な計画が実現するグループ分けが合併の根幹となるような発想であってほしいと考えます。
 そこで、推進に向けて指導、助言の立場にある当局にお聞きします。
 一つ目、一次合併の後の検証はどうあったのか。特に、財務状況変化等、予期せぬ事態も含め、どのように把握しているのか。また、その分析を第二次合併に生かせられるのかどうか。
 二つ目、合併を控えた市町村の財務状況等、県民が十分理解できる内容説明が不可欠であり、開示の必要性は重要と考えるが、どのような助言をしているのか。
 理念や将来構想がしっかりしたものなのか。国の数字合わせに終始していないのか。
 四つ目、住民の声を最大限反映するシステムとして合併協議会をリードしているのか。
 以上、新知事から総合的見地からの所信と、当局から四項目について伺います。
 これで、第一回目の質問といたします。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○副議長(谷 洋一君) ただいまの坂本登君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 市町村合併について、総合的見地からの新知事の所信についてというお話でございました。
 市町村合併は地域の将来を大きく左右するような重要な事柄でありまして、基本的には地域において自主的に判断されるものであると考えております。それには住民の人々の気持ちといったものも大事であろうと思います。
 一方、少子高齢化、人口減少社会の進展あるいは厳しい財政状況など、地方を取り巻く現状は大変厳しい中におきまして地方分権改革を推進し、自立した個性豊かで元気な地域づくりのためには、合併の効果等から成る行財政基盤の強化もまた一つの有効策となることも事実であると思います。
 そこで、地域の現状や抱える課題、あるいは文化や産業、議員から御指摘のありました地理的、歴史的なつながりを伴う共通の基盤、そういったものを十分踏まえまして、また一次合併の経緯、経験を重く受けとめ、地域の将来像や行政のあるべき姿について、合併も含め、住民の方々も交えたしっかりとした議論を行うことが一番今必要だと考えております。
 県もその議論には積極的に参加をいたしまして、地域の方々と一緒になって取り組んで、またできるだけの支援を行ってまいりたいと考えております。
○副議長(谷 洋一君) 副知事原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○副知事(原 邦彰君) 市町村合併に関連して、四点のお尋ねがございました。
 まず一点目の一次合併の検証についてでございますが、合併直後は、市町村建設計画に基づく新しい町づくりのための事業の積極的な実施等により臨時的に歳出が多くなる面もありますが、一方では、コミュニティーバスの導入等の行政サービスの向上、地域ブランドの発信や地域資源の売り出しなど、既に合併効果があらわれている団体もあり、また、人件費縮減を中心とした財政効果についても中長期的に今後徐々にあらわれてくるものと考えております。
 次に、二点目の合併協議に当たっての関係市町村の財政状況等の開示などについてのお尋ねですが、積極的な情報開示は合併論議において広く住民の意見を反映させるための前提となるものであり、不可欠であると考えております。
 三点目の二次合併構想の考え方についてですが、合併構想は、その組み合わせの策定に当たり、議員御指摘にもございました地域の地理的、文化的つながり、一次合併における経緯、広域行政の実施状況等を考慮し、あくまで新しい法律のもとで合併を目指すための議論のきっかけとなるように各地域に一通りの組み合わせを提示したものであります。
 最後に、県のリーダーシップに関するお尋ねがございました。
 合併につきましては、知事から御答弁申し上げたとおり、まず地域において活発な議論が展開されることが大事でありますので、広く住民への情報開示が図られ、住民の間で開かれた議論、論議が行われるよう、また一次合併の効果が新たな合併や元気な地域づくりに生かせるよう、県としても情報提供を初め適切な助言を積極的に行ってまいります。
 以上でございます。
○副議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十二番坂本 登君。
○坂本 登君 知事並びに副知事に答弁をいただきました。
 私は、合併に反対しているのではないのであります。できる限り小さな合併でも、行財政基盤の強化を図るに十分であると言っているのであります。大きな合併は地方自治の自立を促し、個性豊かで元気な地域づくりとは、一体現実をどう見ているのか。過疎を一気に進める副作用はあっても当然と言っているんか。また、行財政改革だけで心の通わない合併、また心の触れ合い、机の上だけで──生きた人間の心の通った合併であってほしい。
 そういう中で、先ほども副知事から、人件費の縮減を中心とした財政効果についても中長期的に今後徐々にあらわれてくるものと言っているが、一体何を考えているのか、理解に苦しみます。職員のやる気をそいだり、住民サービスの低下を招くだけではないのか。もっと大きな視点から合併を考えるべきではないのか。国の考え方そのままの発想で発言するのは、和歌山県人にとって大変不愉快である。住民に受けるつもりであろうが、県内の景気が悪くなり、合併効果をだれも気づかずに終わるだけと考える。
 和歌山県のふるさとを孫子の代まで守り育てていく姿勢が感じられないので、これで質問は終了しますが、最後に、知事並びに副知事の官僚的な答弁には大変失望し、今まで経験したことのないショックを受けたことを伝えて、終わります。(拍手)
○副議長(谷 洋一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で坂本登君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時二十二分散会

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