平成18年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十五番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。
 ただいまから、地球環境時代における和歌山の進路と企業誘致について質問をしてまいります。
 企業誘致については、幾つかの実績を上げられ御尽力されている関係者の皆様に敬意を表します。私は、御努力いただいています企業誘致についてですが、幾つかの点で心配をしています。和歌山県百年の計に立ち、十年先、五十年先、百年先の和歌山の進路をきちんと見据えた議論が必要であると思い、今回質問をさせていただきます。
 全国最大規模の助成額百億円企業誘致については、二月県議会予算委員会で質問をし、答弁をいただきましたが、私自身、いまだ完全に理解するには至っておりません。くどい感じがするでしょうが、その理由は、バブル時の全国各地の企業誘致失敗の印象が強過ぎるからです。いろんな企業が倒産をし、不良の建物を囲い込み、経済だけではなく家庭の崩壊までにつながったという、その印象が強過ぎるのであります。
 私は、二十一世紀の和歌山の進路について、今までの議会質問で一貫して訴えています考え方は、二十一世紀は積極的に和歌山のよさを全国にPRし、県民一人一人が知恵を出し合って自分たちに必要な経費をみずから生み出すことが求められている時代であるということ、かつてのような国からの交付税や補助金等によって財源を賄うのではなくて、和歌山県内に蓄積をされている資源や人材、生き抜くためのノウハウや知恵を使い、和歌山県自身の創造と努力によってそれをなし遂げること、それが二十一世紀の和歌山県勢の進路であると信じています。つまり、無から有を生む発想で県が幸せになる、一石二鳥、一石三鳥の政策を生み出していく時代であることを提言してまいりました。
 私は、専門的なところまで具体的なことはわかりませんが、再びバブル時のような企業誘致の失敗が起こらないかという懸念を持っています。
 ここに、民間のコンサル会社が全国都道府県、政令指定都市の合計六十自治体に地方自治体による企業誘致のアンケートをした結果報告書があります。交通のアクセスがよいことをアピールしている自治体が多い、助成金の額が大きい、土地代などのインフラ費用が安いといった企業のコスト意義を魅了する点をアピールする自治体が多いのも特筆すべき点であると述べられています。つまり、どこの自治体も金額の大小の競争であり、みずからのふるさとの資源を有効に活用して企業と共生し、ともに発展をしていくという視点が感じられないのです。
 そこで、私は、企業誘致の失敗事例を県外へ直接出向いたり電話取材をして探したのですが、よいことは言うのですが、なかなか表に出してくれません。ここに情報公開がされていない大きな問題点があることが今回の調査でよくわかりました。そうした中でも、いろいろと手を尽くしたところ、私の和歌山大学の友人の協力をいただき、二つの県の事例を調べて二つの問題点が見つかりました。
 一つは、企業誘致に早くから取り組まれた岐阜県の事例です。
 一九八〇年代に、ある大手電気メーカーの子会社を誘致しました。このような先端技術企業では、技術の秘密そのものが商品の競争力の第一条件となっており、県内に関連企業がふえませんでした。また、地域では就業機会の拡大を期待するわけですが、工場内の自動化が進み、資本投下規模に比較して雇用力は小さい傾向にありました。
 この誘致工場と地場産業の地域経済効果とを比較したものが岐阜県のシンクタンク報告「岐阜県経済の成長過程と県内企業の事業活動の展開」の中であらわされていますが、地場産業に比べて、企業誘致による地域経済効果は期待されるほど大きくないということだったのであります。
 しかも、それだけではありません。もう一つは、企業間の技術開発競争の激化により、事業所の立地と閉鎖・撤退のサイクルは短くなってきているということであります。例えば、一九八〇代以降、高速道路網の整備等によって進出企業による工場立地が盛んに行われた岩手県では、二〇〇一年以降、誘致工場の閉鎖・撤退が相次いでいます。二〇〇一年から二〇〇二年にかけて、誘致企業の閉鎖・撤退事業所数は十三に上り、従業者数で二千三百一人、工業出荷額で一千四百十七億円も減少し、県も誘致企業の撤退や工場閉鎖の影響深刻と厳しく受けとめています。
 さらに、専門家の意見も聞くことができました。財政学や経済学で有名で、国の審議委員になっておられる、また木村知事が参加されています分権型研究センターの役員でもあります東京大学大学院経済学研究科の神野直彦教授から直接お聞きをしたところ、茨城県の鹿嶋では企業誘致でインフラ整備の投資をしたが、工場の縮小をしたからマイナスになり、動き始めてからは利益がないから事業税は上げていないということ。また、日本企業でもそうした企業進出を積極的に進めるところはなくなり始めている、三重県もいずれ行き詰まってくるのではないかと警鐘を鳴らされました。
 また、日本の公害の原点と言われる水俣病は、ことしの五月一日で公式確認から五十年を迎えました。高度経済成長の中、工場から垂れ流された水銀は、住民から命と健康な生活を無残にも奪いました。今も三千七百人以上が国に認定を求めています。半世紀を経ても水俣病は終わっていません。
 もう一つ、大変大事なことがございます。それは、地球温暖化防止という大きな地球上の異常に対する闘いが必要な時代になったということであります。地球温暖化防止のために県は二〇一〇年度に一〇・六%のCO2などの排出量削減目標を打ち出しましたが、企業誘致との関係では正反対のことが出てくるのではないでしょうか。
 さらに、企業誘致によって雇用が本当に定着していくのかということであります。若者の雇用に対するニーズが大きく変わってきています。企業への就職離れが起こっていることを経済評論家の専門家も指摘をされています。つまり、最近の若者は就職した企業を、失業社会にもかかわらず、すぐにやめてしまう。若者の仕事に対する意識とのずれが出てきています。地域の雇用創出は地域の望みではありますが、目先の雇用のみにとらわれない戦略的な地域づくりが必要であると私は思います。少子化時代である今、パート労働など不安定な雇用で安心して子供を産み育てたいと思えるでしょうか。
 そこで、今申し上げた心配を持ちながら、これから具体的に質問をしていきたいと思います。
 まず一点目は、企業を選ぶ人の選定であります。
 今の時代は、県行政がゴーサインを出したのに、県民が反対をし、ストップするという奥深いところに来ている時代です。県がゴーサインを出して企業誘致をするだけでは問題があります。もちろん最終決定の決断は知事が行うのでありますが、その前段として、行政側だけで企業を選ぶのではなく、誘致企業の選定に県民の代表の意向が入るような、そういったシステムをつくることが必要ではないでしょうか。
 そこで、選ぶ人の選定についてですが、その人は県民に、負託していい人なのかどうか。また、調印をするときは県民の代表が入るのか。審議会などをつくるとしたら、どういう人が委員になるのでしょうか。商工労働部長のお考えをお伺いします。
 二点目は、企業を選ぶのに何を基準にするかであります。
 中身の問題、選定する条件など、企業の言いわけは通用しない厳しい方針を出すことが大事であると思います。今までの企業誘致は、どちらかといえば、県民の方向よりも企業の方向に目を向けていました。したがって、あめとむちのあめのところに重点を置いてきたと思いますが、それでよいのでしょうか。
 例えば、熊本県では水が豊富ですが、来てくれる企業に対して、その水を有効に使ってもらうための再利用や水を守る基金への協力など、水を大切にする義務づけなどを厳しくしています。つまり、企業に厳しい条件を課しています。テレビなどで経済や地球環境問題で活躍をされています経済評論家で有名な内橋克人先生は、二十一世紀の企業について、これからの企業価値判定、判断として、大量生産をし資源略奪型の企業ではなく、地球環境を守り、その企業によって今の環境がさらによくなるような、また資源を浪費しない地域の基幹産業が求められていると、こう述べられています。また、水俣病やアスベスト等の教訓のように、将来大きな問題になり禍根を残すことにならないようにするためにも、企業を選ぶ基準は厳しい条件というものを考えていくことが必要だと思いますが、どのような条件を考えておられるのか、商工労働部長にお伺いします。
 さらに、地球温暖化防止という視点から企業誘致をどのように考えておられるのか、環境生活部長にお伺いします。
 続いて三点目は、選ばれた企業の公約とその責任であります。
 県民を裏切らない企業を期待しますが、万が一その期待を裏切ったことを心配するのであります。そのときは、知事や選考委員をだますだけではなく、県民をもだますことになり、その責任の度合いは大きいと考えます。履行できなかった場合、約束を破った場合、どういうペナルティーがあるのでしょうか。
 例えば、今までの事例の一つとして御坊火力発電所の誘致がありますが、第三号機についてエネルギー事情でできなくなり地元自治体の期待を裏切ることになったケースもありますが、税金を投入して支援するのですから、我々は慎重に慎重を期し、具体的に責任まできちんと問わなくてはならないと思います。
 また、首長の責任は今まで問われていなかったのですが、これからは問われる時代であると私は思います。選ばれた企業の公約とその責任についてはどのようにお考えになっているのでしょうか。また、途中で目標を達成しない場合、企業に支援したお金はどういう形で返却されるのでしょうか。商工労働部長にお伺いします。
 また、知事の責任についてはどのようにお考えになっているのでしょうか。知事にあわせてお伺いをいたします。
 最後の四点目は、県民が判断する基本情報であります。
 二月の県議会予算委員会では、企業誘致のこれまでの成果についての私の質問に、本年度までに約八十社の物づくり関連企業が県内各地に立地、約三千人の雇用が発生をし、県内産業への波及効果は大きいと、いいことばかりの答弁をいただきましたが、その事業税収や県としての立地をするためのエネルギーの消費や税金は幾ら投資したのか、また撤退した企業は幾つあるのか、その理由は、企業及び雇用の定着率や平均年数など総合的に見てどれほどのプラスになっているのでしょうか。
 さて、そこでまた二年間で一千社以上の訪問をしていくという強い意気込みをも答弁をしていただきましたが、どういう反応があるのでしょうか。すぐさま情報公開として出してほしいと思いますが、商工労働部長にお伺いをしたいと思います。
 情報公開をすれば、企業に企業秘密などと断られ、入り口で問題が起きるおそれがあると思いますが、このようなことに対する現在の適切な対応が後世の大きな評価を得るもとになると私は思います。水俣病やアスベストの教訓のように、将来大きな問題や禍根を残さないことにつながると思います。
 なぜこんな質問をするのかと言いますと、私の質問は、企業にとってマイナスではなく、県民の理解を得てやっていけると、プラス面が多いと考えるからであります。実は、私が会った企業のトップも、県民の理解のあるところで仕事をしたいと言っています。県民の理解が得られるオープンな手順が必要です。
 企業は企業秘密と言うかもしれませんが、我々県民サイドから見れば違うのであります。水俣、アスベストなどの原因は、情報がなかったということであります。こうした教訓とは、県民が判断する情報であります。そして、知事も県民もそうした中で選択を重視することが求められており、そのためにも透明なミーティングというものを県民にオープンに知らせることが重要であると思いますが、いかがでしょうか。商工労働部長にお伺いします。
 県民に嫌われたら企業活動はできません。県民の支援があって、初めて企業の活動ができるということです。もっと言うならば、県民の支援を受けながら企業活動をしていく時代になったということであります。そのためには、天気予報みたいに数字であらわす企業予報みたいなモニター制度を考えてみてはいかがでしょうか、商工労働部長にお伺いします。
 さて、今までは心配な点について、大きく分けて四点について質問をしましたが、これからは和歌山の進路と企業誘致そのものの是非についての総括的な質問に入りたいと思います。
 そこで、私の素人判断ではなくて、専門の学者が言っていることを御紹介します。
 先ほど申し上げました東大大学院教授の神野直彦氏に直接話を伺うことができ、企業誘致について明確に答えてくれたのです。その先生の考え方と私とは基本的に近いと感じましたので、そのことを今から申し上げたいと思います。ここに先生のコメントがありますので読み上げたいと思います。
 「経済が発展するというのはどういうことなのか。発展を英語で『ディベロップ』、ほぐす、ほどくという意味で、その反対を『エンベロープ』、包み込む、封を閉じるという意味である。つまり、前の段階で内在させていたのを開花させていくのが発展ということだ。例えば、卵が幼虫になり、さなぎになり、成虫に成長していくということ、また、花でも種から芽が出、幹になり、花を咲かすということが発展という意味だ。しかし、外から別の力を加えてするのは発展とは言わない。従来の企業誘致政策は、外から企業を呼んでくるときに、その地域の生活様式、生活循環を発展させるのではなかった。そのときの武器は何であったか。それは、賃金や土地が安いから来てくださいと、地域の発展と無関係でやってきたのである。結果的にも、賃金も地価も安い海外へ企業をフライトさせてしまうことになった。日本がこれまで求め続けてきた経済の拡大の失敗を和歌山が後追いして繰り返してはならない。発展なき拡大ではなく、その地域の生活様式を大切にし、地域の活力を蓄えていく方向で進めることこそが五十年、百年先の和歌山をつくるのである」、こういったコメントをいただきました。
 今言われたことを私流に簡単に言うと、本当の地域づくりのためには、外からの力頼みではなく地域の内側から沸き上がる力、また地域の人、物、資源を生かしたものであるべきだと。もう一言、言わせてもらいますと、和歌山に行って、ここに住んでみたい地域にせなあかんと、こういうことだと思います。
 例えば、国内においては、神奈川県の相模原市や厚木市には知恵やアイデアを出す研究所が集結をしています。緑と水が豊かな自然の中でアイデアが出せる。フレックスタイムなので、時々行ってアイデアを出し、デザイン化するなど、仕事をする場所をつくり出しています。
 人間が住みたくなる町には、有能な人材が集結をして、先端産業も花開いています。地域社会では在宅勤務が進み、職と住が近づくというよりも、住に職が近づいてくる。あんな町に住みたいと人材が集まってくるのであります。
 鳥取県智頭町では、人形浄瑠璃の復活で町づくりをしています。町外でやっていたのを町内の中で復活をさせました。そのことによって人形浄瑠璃を学ぶというカルチャースクールができ、着物や伝統的な工業が復活をし、町全体で地域開発グループがNPOとして動き、仕事を創出しています。
 外国の事例で言えば、スウェーデンでは企業誘致よりも赤ちゃん誘致をしています。噴水などのある公園、医療の充実、保育園の充実などをして、子供を育てたい環境をつくる子供誘致をしています。ヨーロッパなどは、この町で住みたい、ここだったら住みたい、そうした地域社会をつくり出しています。バッグ等で有名なルイ・ヴィトンも、実は職人芸の伝統工芸品であります。
 こんな声も最近よく聞くようになりました。県民の意識もバブル時と比べて百八十度変わってきているということです。県行政としては企業誘致によって税金を入れてくれると言いますが、県民は、自分たちのふるさとを大切にしてくれることの方が大事だと言います。一般的に、税収が入るという欲望や実利的な損得よりも、その土地でその人たちが何代も生活し続ける環境を守ってくれることの方が大事であるとの県民の声を最近多く聞きます。その声を反映させたのが世界遺産登録や緑の雇用事業、企業の森事業だったのではないでしょうか。
 例えば、昨年の五月に県内の銀行のシンクタンクが発表した世界遺産登録効果は、一昨年の登録された七月から半年間で観光客が約百五十三万人増の三千九十万人、経済効果に直すと約七十八億円増に上る。雇用効果で言えば、約一千人増の雇用が生まれた。従来の企業誘致や公共事業に比べ、少ない投資で経済効果は抜群と分析をしています。さらに、県内の総生産を押し上げているとも指摘をしています。
 また、緑の雇用事業では、現在約三百三十人の雇用も生まれてきています。さらに、企業の森事業では、私どもが活動しています高野熊野世界遺産連絡会も空海の森事業として去る四月に調印をしていただき、二十番目の団体として参加させていただき、森林組合を初め多くの雇用が生まれてきています。このような形で企業参加を促すのは大変よいことだと県民の評価も高いのです。今申し上げたことからも、世界遺産登録された和歌山県の進む方向と少し逆行していくことになるのではとの心配の方が大きいのであります。
 我が和歌山県でも既に企業誘致がされて、幸いにも成功しているところもあると伺っています。しかし、その当時と今とは状況が私は違うと思います。その当時と今と違うのは、地球温暖化防止という大きな地球上の異常に対する人間の闘いが必要な時代だと、そういうことであります。
 さらに、百億円と言いますが、バブル時の百億円と今の百億円とは全く違った受けとめ方を県民はしていると思います。例えば、百億円あれば、今和歌山県内で優先的にやらなければならない防災や地球温暖化防止事業などもできるのであります。大変なリスクがある中で百億円という巨額な金額を使っていいのか、県民の不満の声を最近よく聞くのであります。
 以上のように、いろんな心配点を申し上げてきましたが、知事の企業誘致に対する基本姿勢と和歌山の進路についてお伺いをしたいと思います。
 最後になりましたが、私は、企業誘致の是非の判断を求める大事なことは、一つは、県民全体のお金だということです。つまり、知事の権限もさることながら、県民一人一人の意思や命と健康が優先される時代ではないでしょうか。私は、和歌山県づくりを長い目で見るということが今必要であると思います。つまり、きょう、あすの目先の利益、すなわち税収、雇用よりも十年後、五十年後、百年後の未来の豊かさを求める時代を考えていくことではないでしょうか。
 例えば、中長期の観点から、和歌山の資源の活用と再生を行うプロジェクトを策定して、戦略的な地域づくりを全国に先駆けて、県民の意思や命と健康、環境を優先する魅力のある地域づくりのモデルを発信してはいかがでしょうか。私たちは、地球人としての自覚を持ち、世界遺産と地球温暖化防止との濃密な関連性の中で、選択を誤ることのない和歌山の進路をつくり上げていかなければならないと思います。
 和歌山は、自然環境が全国の中でも恵まれているがゆえに、特に企業活動と県民の命というのは密であることが必要だと私は思っており、県当局におかれましても御理解をいただき、御答弁をお願いし、私の質問を終わります。
 御清聴、ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 企業誘致等についての御質問でございます。
 バブルがはじけて長く日本の国は経済が低迷し、その間に国内にあった企業はどんどん海外へ生産拠点を移す、さらにはまた国内で工場を閉鎖するというふうなことがどんどん起こっていたというふうな事実があったのは御案内のとおりでございます。
 そして、ここへ来て景気が回復し、企業も、今まで生産拠点を海外へ移していたのを、やはり基幹的なものは国内でやっていかなければならないというようなことで設備投資意欲が出てきているというふうな状況があるわけです。
 そういうふうな中で、和歌山県は非常にいろいろな条件で企業誘致には厳しい条件があるということではありますけれども、しかしながら、これで手をこまねいていては、和歌山県で生まれ育った人が、基本的には、学ぶ場所がないということが言われてるんですが、それよりも何よりも働く場所がないというふうなことがあるわけで、これについて何もしないということは、知事として非常にこれは責任があるというふうに私は考えております。
 現に今、数年間をとった企業の進出ということから見ると和歌山県は全国でも最下位のグループに属しているということで、こういうふうな地域間競争の時代に、環境だけがいいとか歴史だけがすばらしいということで、こういうふうな企業の誘致を等閑視するということは、これは許されないだろうと。
 しかしながら、今御質問の中にありましたように、だからといって、どんな企業でも来てもらえばいいというふうな時期はやはり過ぎていると思いますし、今まで、日本の国の水俣病でありますとかアスベストの問題でありますとか、いろいろやはりこれからそういうことを経験として生かしながらやっていかなければならない部分は大いにありますので、当然のことながら企業誘致に当たっても、和歌山県のためになる適正な企業というものが来るというふうな仕組みづくりということは、これはもう当然必要なことでありますので、景気が回復し出したのはごく最近のことですし、そしてまた和歌山県が、これはキャッチフレーズですけども、百億円というふうなものを打ち出したのもことしからです。これは、試行錯誤の中で一番いい形というものを生み出していく必要があるということですので、その点については十分これから検討していかなければならないというふうに思っております。
 基本的な私の考え方は、和歌山県というふうな自然豊か──自然豊かと言えば言葉がいいですが、山がちな地域においてお金を出したり、鳴り物入りで企業を他の地域と競争しながら呼んでいくということは、余り効率的ではないと思います。ただ、先ほども言いましたように、これはやはり地域で雇用の場を確保するという責任から思い切りやっていこうということでやっているわけで、長期的に見れば、やはり観光であるとか、それから地域に根差したいろいろな力というふうなものを地域づくりの中で生かしていって、そして、そこに住んでいる人が幸せに生きていけるということが本当の理想だと思います。
 ただ、今そういうことだけを──緑の雇用とか企業の森とか世界遺産とか、まさにそういうふうな系列の事業であるわけですけども、それだけでたくさんの人が生活していけるというふうなわけではありません。緑の雇用だけやってたら和歌山県の人口が全然減ってしまったというふうなことになるのも、これもやはりぐあいが悪いことですので、こういうことのバランスをとりながら、ただ和歌山県ではできるだけそういうふうな自然とか歴史とか、そういうふうなものを生かす方向に重点を置きながらやっていこうというのが私の基本的な方針でございます。
○議長(吉井和視君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 企業誘致に関する六点の御質問にお答えをいたします。
 まず、県民参加の仕組みづくりという御質問についてでございます。
 県では、各地域の立地条件や地域ニーズに対応した企業誘致を進めるため、市町村との連携、協議を誘致交渉段階から行っています。また、市町村と企業との進出協定締結を県の支援措置の前提としているところです。
 企業誘致活動においては、市町村が住民ニーズを把握した上で誘致戦略を構築することが重要であり、今後とも市町村の意向を尊重し、連携を密にしながら企業誘致活動に取り組んでまいります。
 次に、誘致基準の明確化についてでございます。
 誘致対象企業の具体的な基準については誘致企業決定方針等において定めており、また本年度から、県内企業の協力を得ながら、県内企業と連携が期待できる企業や県の産業構造の改革につながるすそ野の広い企業、また長期間にわたり安定雇用の創出に寄与できる企業等を重点ターゲットとして誘致活動を展開しているところです。また、誘致企業に対しては、県内企業と同様に、雇用や地域貢献、環境、人権等の社会的責任を果たすよう要請をしているところでございます。
 次に、誘致企業の責任というお尋ねでございます。
 誘致企業については、県、市町村との間で進出協定を締結しておりますので、誘致した企業が進出協定に反した場合には、当然その責任を問うことになります。今後は、地球環境保全が重要であることから、誘致企業に対し、地球環境保全に係る法令の遵守につきましても、環境生活部と連携の上、指導してまいりたいと考えております。なお、進出協定に反する場合以外は企業の責任を追及することは想定をしてございません。
 次に、千社以上訪問の反応についてでございます。
 現在までの企業訪問により、今後の企業設備投資に関する情報等、貴重な情報を多く得ることができております。また、情報開示につきましては、法令に基づき、訪問先企業名等の情報公開は可能でございますが、企業内情報に関するものは、企業の了解が得られない限り情報を開示することは難しいものと考えております。
 次に、県民が判断する情報開示についてでございますが、企業誘致に関する情報開示につきましては、企業の進出が決まった段階で情報を公表し、その後、一定の期間を設けて進出協定の締結を行っており、最も早いタイミングで県民の皆様にお知らせするよう努めているところです。
 なお、誘致検討段階で地元住民のコンセンサスが立地の前提条件として必要不可欠な場合には、検討段階において地元住民や関係機関と協議する場合も想定をしてございます。
 最後に、企業予報的なモニター制度づくりについてでございます。
 進出した企業は地元企業の一つとして地域と一体となった企業活動を行っており、県としましては、県内企業と同様に、法令に基づき、必要な指導や規制、支援措置を講じております。また、企業も法令等に基づき情報公開を行っているところであり、新たな措置は必要ないものと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 環境生活部長楠本 隆君。
  〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 地球温暖化防止と企業誘致についての御質問でございます。
 二十一世紀は環境の世紀と言われておりますが、特に地球温暖化問題は、その影響の大きさや深刻さから見て人類の生存基盤にかかわる最も重要な環境問題の一つであり、議員御指摘のとおり、大量生産、大量消費、大量廃棄を基調とした従来の社会システムを人々の意識や価値観の転換により抜本的に変革し、温室効果ガスの排出削減努力を全世界的な取り組みとして積み重ねていく必要があると考えております。
 本県では、この三月、和歌山県地球温暖化対策地域推進計画を策定いたしまして、平成二十二年度を目標年度にいたしまして、平成二年度と比較して森林による吸収六・七%の確保を含む最大一〇・六%の温室効果ガスの削減を目指すこととしております。環境問題への積極的な取り組みが新たな投資や技術革新を生み出し、企業や地域の競争力を高め、経済の活性化が環境を改善させる、いわゆる環境と経済の好循環を実現することが重要であると考えております。
 一方、企業につきましても、単に既存の環境規制を遵守するだけではなく、例えば議員御指摘の企業の森など、環境に対するさまざまな配慮を行うことが求められております。
 このような観点から、県では独自に、企業の森事業により吸収をいたしました二酸化炭素量を評価・認証する制度を新たに創設したところでございます。和歌山県に進出をされる企業につきましても、地球温暖化防止という視点はもちろん、和歌山県の豊かな自然環境に配慮した活動を展開し、地域に貢献していただけるよう関係部局とも連携し、今後とも環境と経済が両立した持続可能な社会の構築を目指し、地球温暖化防止対策を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十五番玉置公良君。
○玉置公良君 御答弁、ありがとうございました。
 十分な答弁ももらいましたし──まあもらってないやつもありますけども──幾つかだけ、再質問というよりも要望として意見を述べておきたいと思います。
 一つは、今回の質問は、大きく二つに分けて問わせていただきました。その一つは、社会保険庁の問題とかバブル時の教訓のように、行政側だけで決めていく、お金を使っていくということではなくて、県民の税金だという視点を持ってほしい。だからこそ、県民の参加の仕組みづくり、情報公開というのが必要ではないかと私は訴えさしてもらいました。
 そこについては、若干不満はありますけども、答弁では、「企業誘致活動においては、市町村が住民ニーズを把握した上で誘致戦略を構築することが重要であり、今後とも市町村の考えを尊重し」と、こういった答弁がございました。私は、それでは、どれだけの市町村がどうした手法でそういった住民のニーズを把握しておるのか、また、その要望についての中身は具体的にどんなものか、すべて把握をしておるのかどうか、もしかして市町村、行政側だけでそういう判断とか要望が来てるんではないかとか、そういったいろんな疑問を持ちます。ここで言うてくれとは言いませんから、ぜひとも今後そういった情報公開をしていってほしいと思いますんで、それは要望としておきます。
 もう一つ、私の質問の誘致基準の明確化や責任の所在については、部長は、県の誘致企業方針──ここに持ってますけども(資料を示す)、誘致企業方針と協定書、こういうものがあるからということで、あんまり新たに誘致基準の明確化をせえということについては触れられてなかったと思います。
 私、この方針なり、取り寄せて見せていただきました。これを見ると、方針では、たった二つの大まかな基準ということを書かれています。例えば「環境に配慮した立地」とか、協定書では、例えば公害の防止について「法令等の定める基準」などと、当たり前の中身ですね。当たり前の中身。
 僕、当たり前だけの、そういう法令を守るだけの内容ではなくて、これから和歌山県がやっぱりこの中長期戦略を持って積極的に行っていく、例えば地球温暖化防止対策など、そういった努力義務とか、例えば企業の森に参加してくださいとか、そういった中身を盛り込んでいくことが必要じゃないかと思うんですね。これもきょうはもう質問はしませんけども、要望としておきます。
 そして、昨日の新島議員からも質問がございましたけども、雇用奨励金の問題、こういった問題なども、起きてから対処をするのではなくて、起こる前に、県民のいろんな声を反映させた、そういった基準づくりが必要ではないでしょうか。これらについては、行政側の人だけでつくるのではなくって、県民が入った中で幅広い意見を取り入れていくべきだと思いますので、これもひとつ検討していただきたいと思います。
 最後に、今回の質問の流れで一貫して申し上げたのは、やっぱり以前と今と決定的に変わったことがあるということです。つまり、地球温暖化防止の京都会議が一九九七年に日本で開かれました。そして、日本の批准が二〇〇二年に行われました。そして、二〇〇五年に発効されました。こういった意味からも、日本は率先してやっぱりやっていくと、この地球温暖化防止について。ただし、アメリカは批准をしてませんから、いわゆるまだまだ経済活動──二酸化炭素、いわゆる化石燃料を使ってのそういう経済活動というのは、こっちの方を重視しとるんですけども、私は今の時点ではやっぱり日本もこの地球温暖化防止、特にそちらの方に重点が置かれてきてある、そういう認識でやっぱりこれから取り組んでいかなあかんなと思っております。
 特に世界遺産を抱えた和歌山県でありますから、これまた地球環境のシンボルと言われております。そういった意味においてもとりわけ──先ほど知事さんの方からも中長期的なそういう戦略はお答えいただきましたからあれですけども、ぜひとも各全部局にそういう地球温暖化、地球環境に配慮していく、そこに重点を置いた政策づくりを皆さん方と一緒にやっていただきたいなと思います。
 いろいろと大変でしょうけども、後世に憂いのない和歌山をつくり上げていただけるよう、やっぱり和歌山に住んでみたいということがあってこそそこに人がふえて、新しいまた仕事も出てくるん違うかなと私は思ってますんで、よろしくお願いいたしまして、質問を終わります。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十三分休憩
────────────────────

このページの先頭へ