平成18年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


県議会の活動

平成十八年六月 和歌山県議会定例会会議録 第三号
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議事日程 第三号
 平成十八年六月二十一日(水曜日)午前十時開議
  第一 議案第百十一号から議案第百三十七号まで、並びに報第一号から報第七号まで(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第百十一号から議案第百三十七号まで、並びに報第一号から報第七号まで(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十二人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       新   島       雄
     四  番       山   下   直   也
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十五 番       平   越   孝   哉
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       花   田   健   吉
     十八 番       藤   山   将   材
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       飯   田   敬   文
     二十二番       谷       洋   一
     二十三番       井   出   益   弘
     二十五番       東       幸   司
     二十八番       原       日 出 夫
     二十九番       冨   安   民   浩
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       中   村   裕   一
     三十三番       浦   口   高   典
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       玉   置   公   良
     三十六番       江   上   柳   助
     三十七番       森       正   樹
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       阪   部   菊   雄
     四十 番       新   田   和   弘
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(なし)
 〔備考〕
     九  番欠員
     二十四番欠員
     二十六番欠員
     二十七番欠員
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        小 佐 田   昌   計
     出納長        水   谷   聡   明
     知事公室長      野   添       勝
     危機管理監      石   橋   秀   彦
     総務部長       原       邦   彰
     企画部長       高   嶋   洋   子
     環境生活部長     楠   本       隆
     福祉保健部長     小   濱   孝   夫
     商工労働部長     下           宏
     農林水産部長     西   岡   俊   雄
     県土整備部長     宮   地   淳   夫
     教育委員会委員長   樫   畑   直   尚
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員    島       正   博
     警察本部長      辻       義   之
     人事委員会委員長   西   浦   昭   人
     代表監査委員     垣   平   高   男
     選挙管理委員会委員長 山   本   恒   男
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       山   本   庄   作
     次長         植   野   博   文
     議事課長       下   出   喜 久 雄
     議事課副課長     薮   上   育   男
     議事班長       土   井   敏   弘
     議事課主査      石   垣   悦   二
     議事課主査      湯   葉       努
     総務課長       島       光   正
     調査課長       辻       和   良
 (速記担当者)
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課主査      保   田   良   春
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  午前十時二分開議
○議長(吉井和視君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第百十一号から議案第百三十七号まで、並びに知事専決処分報告報第一号から報第七号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 四十番新田和弘君。
  〔新田和弘君、登壇〕(拍手)
○新田和弘君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 まず初めに、行財政改革の推進についてお尋ねいたします。
 去る六月十四日、国の財政制度等審議会が「歳出・歳入一体改革に向けた基本的考え方」(建議)をまとめました。これは、近く策定される政府の経済財政運営と構造改革に関する基本方針いわゆる骨太方針二〇〇六に反映されるものであります。
 建議では、国と地方とを合わせた借金の総額が約七百七十五兆円に上り、対国民総生産(GDP)比では約一五〇%に達し、先進国の中でも最悪である、政府が歳出の約四分の一を借金の支払いに充て、利息分だけでも年間約八・六兆円にも及んでいる、そのため、二〇一一年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標の達成はもとより、国債残高の圧縮を最重要課題として歳出・歳入一体での改革を求めています。
 さらに、最近の企業業績を背景に昨年の税収が伸びたことを理由に基礎的収支の赤字見通しを圧縮する動きに対して、堅実な財政再建を求め、最大の歳出項目である医療や介護などの社会保障給付と負担に不均衡が生じているため、制度を安定的に維持するため、「社会保障に係る安定財源確保についての論点整理」を公表しました。
 建議は、第二の支出項目である地方交付税について、国税の一定割合を交付税に回す法定率の引き下げを求めています。その理由は、地方は既に基礎的収支(プライマリーバランス)が黒字化しており、国民負担の軽減に積極的に貢献するのは当然だとしているのであります。
 国の基礎的収支の改善の方策として、地方交付税総額を大幅に削減しようとする論議が起こってきています。本年五月二十六日に竹中総務大臣の私的諮問機関である地方分権二十一世紀ビジョン懇談会が報告書を提出しました。その報告では、地方交付税は、「国の規則・関与の廃止・縮小を大胆に進めるとともに、『結果平等、規律の緩みを生みやすい仕組み』から『機会平等、住民による自己規律が働く仕組み』への転換を目指すべきである」としています。「国の規制や基準づけに基づく部分を縮小させ、地方が自由に歳出を決定できる部分を拡大すべきである。地方が自由に歳出を決定する部分については、現行の複雑な交付税の算定基準を抜本的に改め、誰でもわかる簡便な算定基準に順次変えていくべきである」として、平成十九年度予算から人口と面積を基本として算定する新型交付税を導入し、今後その比率を高めていくと報告しております。
 こうした国の動きに対して、地方は対抗して、全国知事会にある新地方分権構想検討委員会が本年五月十一日に地方財政自立のための七つの提言を行いました。その提言三において、地方交付税は国から地方へ恩恵的に与えられるものではなく、みずからの財源を他の自治体のために融通し合うことによりすべての自治体が国に依存せずに住民に対して一定水準の行政サービスを提供できるようにすべきであるとの考えから、名称を「地方共有税」として、法定率の引き上げを提言しております。
 現在、自治体間の財政力格差がある中で、国による関与や義務づけの見直しを行わないままで地方交付税全体が圧縮されてしまうと、相対的に税収が少ない自治体では住民にとって必要なサービスの提供に余裕がなくなり、財政調整機能が十分機能しなくなると心配されています。
 去る五月三十一日に、東京での地方自治危機突破総決起大会で地域の実情を踏まえた地方交付税の改革に向けた緊急アピールを取りまとめ、本県関係国会議員に対し要請活動を実施しています。さらに、全国知事会等地方六団体においても、六月七日、地方自治法に基づき内閣に意見書を提出しています。
 本県及び県内市町村の行財政運営は地方交付税に大きく依存しており、交付税が削減された場合、住民への行政サービスに重大な支障が生じてきます。さらに、交付税を人口と面積のみで算定・配分しようとする新型交付税導入の議論がありますが、本県の場合、試算によっては現在千八百億円ある交付税が約六百億円減収になることが見込まれる状況にあります。平成十六年度の県税収入が八百二十三億円でありますので、その減収状況は危機的と言わざるを得ません。
 こうした状況の中、県議会においても、六月十三日に「地方交付税の改革に対する意見書」を国に提出したところであります。
 そこで、木村知事にお尋ねいたします。
 国における歳入・歳出の一体改革において地方交付税改革に対する知事の所見はどうか、お尋ねいたします。
 次に、事業仕分けについてお尋ねいたします。
 事業の仕分けは、選択と集中により施策の重点化を図るとともに、行政の責任領域においても民間活力を積極的に活用することによって歳出削減を行うことがねらいであります。去る五月二十六日に成立した行政改革推進法においても事業の仕分けの実施が盛り込まれました。
 本県では、行財政改革推進プランにおいて、今後五年間で知事部局で千四百人を削減し、教育委員会で五百人の削減を行うことを発表してきています。この職員定数の削減計画には県立医科大学の独立行政法人化に伴う減や教育委員会における児童生徒の減少による減もありますが、職員定数を削減する場合は、業務自体を削減しなければ労働強化や行政サービスの低下を招いてしまうことにもなります。そこで、県の実施しているすべての事業を仕分けし、国が行うべき事業、引き続き県が行うべき事業、市町村に移管すべき事業、民間に委託すべき事業、廃止すべき事業に分けて県行政のスリム化を図っていくべきであります。
 本県では、五月三十日に今年度の約千六百事業すべてについて事業の仕分けを実施する旨を発表しました。それによりますと、今年の十月をめどに実施し、全事業の仕分け結果を公表し、新年度の予算編成や組織改革、職員削減に反映させるとしています。
 今回の事業仕分けでは、事業の必要性や事業主体の見直しなどの結果を受けて必要最小限の職員数を割り出して職員削減にまで踏み込む取り組みは全国でも初めてと注目をされております。私は、事業の仕分けに当たっては、弱者への配慮、人格や情操を高める文化・芸術分野への配慮を行って、県民が合意できるよう努力していただきたいと思っています。
 そこで、知事にお尋ねいたします。
 事業の仕分けをどのように実施し、本県の行財政改革を推進されるのか、お尋ねいたします。
 次に、県税収入の確保についてお尋ねいたします。
 五月末で出納閉鎖がされましたので、平成十七年度の県税収入額が確定されました。十七年度は企業業績が伸びた企業も多くあり、株価の上昇も加わり、大手金融機関等は好決算のため、もうけ過ぎとの批判も出てきています。しかし、本県の場合は景気回復がまだまだであるとの意見もあります。
 また、本年四月からスタートした地方税回収機構は、発足して一カ月で初年度の目標である十六億円の三分の二を超える十億八千百万円の実績を上げていると伺っております。今日まで市町村では滞納者の徴収には苦慮してきており、回収機構の設立は税収増に対して喜ばしい結果となっております。
 そこで、総務部長にお尋ねいたします。
 平成十七年度の県税収入の状況と平成十八年度の税収見通しはどうか、お尋ねをいたします。
 次に、都市計画道路の見直しに関連してお尋ねいたします。
 本県の都市計画道路のうち、未着工になっている路線は百四路線あり、区間は三百五十八キロメートルあります。県は今回、これらに対して、廃止も含めて全面的に見直す方針を決めました。見直しの理由は、人口減少に伴う需要の低下や財政難から効率的な事業の推進で少しでも道路整備が進むよう検討するなど、地域の実情を再調査して身の丈に合った道路を整備するとして、平成十八年度当初予算に新規に一千万円を計上いたしました。
 都市計画道路は、都市計画法に基づき、安全性や防災面、景観などを総合的に考慮して都市計画区域内に建設される道路で、整備が予定されている地域では将来の整備事業の妨げにならないよう建物の建築が制限されています。
 本県の都市計画道路は、新法制定の一九六八年前後に計画された道路が大半で、二百八十四路線、約六百九十キロメートルあります。整備率は、県施行分が三三%、和歌山市施行分が四五%であり、いずれも全国平均五四・六%を下回っております。
 今回の見直し事業では、都市計画自体の廃止のほか、車線数の削減、中央分離帯の撤廃、街路樹の植栽部分の縮小などを想定し、道路のスリム化を目指しています。
 県では、見直しの第一号として、田辺都市計画道路内環状線において、平成十八年度から事業化を予定している延長二百六十メートルの区間を地方の実情に応じた形で、両側の歩道部分の植樹帯の幅をそれぞれ当初の四・五メートルから一メートル削減することで事業費の縮減に努めています。さらに、和歌山市の都市計画道路六十谷手平線四百六十六メートルで、総幅員を十六メーターから十四メーターに変更し、現道である県道有功天王線を活用することでコスト縮減を図ろうとしています。
 近年、道路事業を取り巻く環境は、公共投資全体の抑制などの影響で事業評価や徹底したコスト縮減を行い、道路整備において重点化、効率化が求められています。加えて、道路特定財源の見直し問題でも、昨年十二月に政府・与党で見直しに関する基本方針が了承され、一般財源化へ一歩踏み出したことは本県にとっても大きな課題であります。
 大阪府においても、平成十五年三月に基本方針を策定し、平成十六年度末までに見直しを行った結果、二十八路線、三十四区間、三十七・七キロメートルを廃止しています。また、岐阜県では、平成十三年五月に見直し方針案を策定し、平成十六年三月末までに見直しを検討した結果、二十路線、三十四・七キロメートルを廃止してきています。
 本県では、二〇〇二年から通行量の余り多くない山間部で、和歌山方式として一・五車線の道路整備を進めてきています。二車線で工事をすると七メートル必要な道路幅が五メートルで済みます。県では既に十二・四キロメートルが完成しており、事業費も減額できたとのことであります。
 そこで、県土整備部長にお尋ねいたします。
 一、本県の都市計画道路の未着工路線を廃止も含め全面的に見直す方針ですが、今後どう見直しを実施されるのか。また、今回の見直しによるコスト縮減効果はどうか。
 二、和歌山市域の都市計画道路の未着工路線への見直しはどう進められるのか。
 三、和歌山市内の交通渋滞対策として進められている都市計画道路市駅小倉線栗栖から国道二十四号線に至る一・四キロメートルは事業が進められております。現在、国道との交差部が国、県、市の協議で二車線部分が立体交差とのことであり、和歌山市施行部分の西側は事業がおくれているため、県は交差部への対応と東側の供用開始にどう取り組まれるのか。また、都市計画道路湊神前線の開通により、都市計画道路松島本渡線が進めば渋滞解消へ大きく寄与すると思われます。同路線の進捗状況と一部供用への取り組みはどうか。
 四、都市計画道路南港山東線は、東工区中島─田尻間〇・七キロメートル及び県道三田三葛線道路改修事業として田尻─坂田間〇・五キロメートルで事業が進められています。また、県道和歌山橋本線において、森小手穂付近約〇・四キロメートルで交差点改良事業が進められております。これらの道路は、交通渋滞の解消のため、早期に供用が求められております。各事業の進捗状況と供用開始の見通しはどうか。
 以上四点、お尋ねをいたします。
 次に、公立小学校・中学校の適正規模化についてお尋ねいたします。
 少子化の進行により、県内の小中学校は急激な小規模化が進んできており、学校の活力や教育効果などの面で課題が生じていることから、早急に対応する必要に迫られてきています。
 県教育委員会は、教育長の諮問機関である義務教育ニュービジョン研究会議を設置し、同会議から、平成十八年一月に「和歌山の未来をひらく義務教育」と題する報告書をいただいております。報告書の「少子化が進行する現状にあって、学校における教育活動の活性化と維持・発展させる観点から学校の適正規模化を検討すべき」との提言に基づいて作業を進め、本年四月に県教育委員会に小中学校課市町村支援室を設置しました。
 さらに、去る六月十六日に県教育長の定例記者会見で、「公立小・中学校の適正規模化について(指針)」を発表したところであります。指針では、小中学校の適正規模として、小学校ではクラスがえが可能である一学年平均二学級を下限とする十二学級から十八学級、中学校では、クラスがえに加えて教科担任制と学習集団の弾力的な編成等のための教員確保から一学年平均三学級を下限とする九学級から十八学級とし、これらを下回った場合には統廃合を検討すべきとの方針を示しています。
 昨年五月現在の県内の小学生は約六万人、中学生は約三万二千人で、いずれも昭和三十年代の半分以下に減少してきています。また、適正規模に満たない学校は、小学校が二百九十八校中二百十三校で七一・五%、中学校が百三十八校中九十六校、六九・六%と、いずれも七割に達しています。とりわけ市町村教育委員会において積極的な検討が望まれる学校として、適正規模の基準を下回る中学校、複式学級を解消するための過小規模小中学校、小学校の分校、都市の中心部における人口の空洞化による極端に児童生徒が減少している小中学校等を挙げています。
 そこで、教育長にお尋ねいたします。
 一、小中学校の適正規模化において、県教育委員会は指針を踏まえ今後どう取り組んでいくのか。また、市町村教育委員会が積極的に検討が必要とされる学校はどの程度あるのか。
 二、県教育委員会は行財政改革推進プランで今後五年間で五百人の教員の削減を行うとしていますが、小中学校の適正規模化への取り組みとの関連はどうか。
 三、小中学校の学級数を確保する観点からすると、現在県が実施している三十五人学級の基準を緩和し、学級数を確保していくことも必要と思われますが、三十五人学級のさらなる充実にはどう取り組まれるのか。
 四、少子化による児童生徒の減少により生じた小中学校の余裕教室の実態と有効利用への取り組みはどう行っているのか。
 以上四点、お尋ねをいたします。
 次に、紀伊風土記の丘事業の充実についてお尋ねいたします。
 県立紀伊風土記の丘は、特別史跡岩橋千塚古墳群の保存と活用を目的として昭和四十六年に設立された考古・民俗系の博物館施設であります。総面積は約六十五万平方メートルあり、古墳や文化財民家、万葉植物園、復元竪穴住居、資料館など、文化財に直接触れながら歴史や自然を体験学習できます。また、桜を初め四季折々の花なども楽しめ、ハイキングコースとしても親しまれています。
 同史跡の沿革をたずねますと、大正十三年八月に和歌山県師範学校代用附属西和佐尋常高等小学校が発行しました「西和佐郷土誌」によりますと、「岩橋千塚の位置と由来」として、「当古墳は岩橋字前山にある元安藤家の所有地であったが、廃藩置県の際、同家より下付され、岩橋共有山としたものである。この前山にある古墳は、その数約五百、今なお原型をとどむるもの約三百、そのほかは多く発掘の厄に遭っている。明治三十三年以降、最も多く発掘されたものである。その年代とその何人の墳墓であるかはわからないが、少なくとも千二百年以前のもので、上古最も尊敬を受けた豪族の墳墓であることは疑うことのできないことである。しかも、その数の多いのと特別の構造を備えていることは、考古学上まことに珍しい遺跡である」と紹介しています。
 さらに、「大正十一年十二月、皇太子殿下(後の昭和天皇)には、四国原野に陸軍特別大演習を統監あらせられ、御還啓の途次、本県へ行啓あそばされ、殊に実業補習学校教員養成所へ行啓のため、我が西和佐村へも駕を迎え奉ったのは、まことに村民無上の光栄であります」とあり、その折に岩橋千塚発掘物なども台覧に供したと記されております。
 少し余談になりますが、同郷土誌には西和佐尋常高等小学校の就学状況が、大正十二年で男子二百七十一人、女子二百四十九人、計五百二十人で、就学率はいずれも一〇〇%とあります。現在の市立西和佐小学校と単純には比較できませんが、男子百七十二人、女子百九人、計二百八十一人であり、生徒数が大正十二年から八十数年を経過して半分近くまで減少しているのには驚かされた次第であります。
 本題に戻りまして、昭和六年七月には岩橋千塚古墳群が国の史跡に指定され、戦後、昭和二十七年三月に国の特別史跡に指定されました。その後、昭和四十三年十月に紀伊風土記の丘建設事務所が県庁内に設置され、県指定文化財旧谷村家住宅、旧小早川家住宅の移築に続いて、国指定の重要文化財旧柳川家住宅、旧谷山家住宅が移築され、昭和四十六年八月に紀伊風土記の丘が開園されました。さらに、関係の皆様の協力で、昭和四十九年にはJR和歌山駅から風土記の丘間に路線バスが運行を開始し、施設がより利用しやすくなりました。
 平成八年には、開園二十五周年記念事業として、古代米などを栽培できるミニ水田の造成や古墳時代の復元竪穴住居が完成し、小学生等を対象にした体験教室が人気を呼んでおります。去る六月十八日、日曜日にも古代人の米づくりの体験教室があり、子供たち約三十人が古代米や米づくりのルーツを学習した後、古代衣装を身につけて田植えを行い、参加者に大変喜ばれました。
 平成十七年四月には資料館への入館者も百万人を超え、今後は、学校における総合学習や職場体験学習など、学校と紀伊風土記の丘が連携した取り組みが一層期待されています。
 さらに、最近の健康志向の中でハイキング等に訪れる人たちも増加して、施設の充実が要望されております。施設設備の充実については、開園以来、周辺の用地の追加買い入れやカヤぶき屋根のふきかえ及び周辺整備事業を実施してきています。しかし、同施設への進入道路を含めた園内の道路等は、昭和四十六年の開園以来改修が行われていないため、傷みが激しい状況にあります。特に、進入道路は風土記の丘の管理道路のため、路線バスが運行し、市営住宅などが隣接している状況で県道や市道に移管されていないため、改修には紀伊風土記の丘が予算計上する必要があります。
 そこで、教育長にお尋ねいたします。
 一、紀ノ川緑の歴史回廊の事業を初め、紀伊風土記の丘を活用した事業の充実にどう取り組まれるのか。また、地域力を生かし、語り部の育成に取り組まれてはどうか。
 二、進入道路を初め施設内の道路や風土記の丘の諸施設の抜本的な充実にどう取り組まれるのか。
 以上二点お尋ねをいたしまして、一回目の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの新田和弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、地方交付税改革についての御質問でございます。
 この問題については、一つは地方交付税の総額をどうするかという問題、それからもう一つは配分の仕方が今非常に難しいのでこれを簡素化しようというふうな問題の二つがありまして、簡素化の方は、三位一体の改革で残されたのが交付税の問題というふうなことの中で、一つは面積と人口を基準にしたような配り方というふうなものを考えようという動きが出ておりますが、もう一つは、歳入・歳出一体改革の中で、五年後を見据えて地方交付税の法定率というふうなものを下げていこう──国の方がプライマリーバランスが赤字になっている、地方の方はそうではないということで、簡単に言えば、赤字を国から地方へつけかえようというふうな感じの策動というふうなことが行われているということだろうと思います。
 御質問の中にもありましたように、和歌山県で独自にこの人口、面積を単純に利用した形で試算すると非常に不利な形になるということが一つ配分の問題ではありますし、そしてまた法定率の問題で言えば、県が、これも粗い計算ですけども、してみたら、法定率を下げるというよりも逆に八%引き上げなければならないというふうな形の計算結果も出てきております。
 いずれにいたしましても、地方公共団体がこれだけいろいろな形で行政改革に努力をし、さらにはこれからも努力をしようというふうなときに、まだ理屈なしにむだが多いんだというような形でこういうふうな地方財政に対する攻撃が行われるということは、これはゆゆしきことだろうと思っておりますので、今週の土曜日に、これはまだ全国でも非常に少ないんですけども、地方自治危機突破和歌山県大会というのを関係者で開いて、県当局、そしてまた県議会、町村会、市長会等々と一緒に開いて、この和歌山県の持っている、和歌山県内の市町村の持っている危機感というものを全国に表明していきたい、このように思っているところでございます。
 次に事業の仕分けについてでございますが、これにつきましては、地方行革ということも相当進んできて、今までのやり方ではもうこれ以上進めるのは大変だと。やはり、一つずつ事業を点検していって、そしてそれが本当に県がやるのが適当なのか、民間でできるのか、市町村へ移管すればいいのか、そういうことをきっちり仕分けして対応していこうということですが、今回のこの仕分けの特色としては、この結果を、ただ単にこういうことをやりましたということにとどめるのではなく、予算でありますとか組織でありますとか定数配置というふうなものにきっちりと反映していこうというふうなことが一つ。それからまた、こういうふうな仕分けを県民の人にわからないところでやっていても、これはぐあい悪いので、民間の方を委員とした評価委員会をつくって、そしてその評価委員会の様子は公開で行うということで、県民の方にもこういうふうな形で今事業の見直しということが行われているんだということがわかるような形で対応していこうというふうな形でやっていこうと思っております。
○議長(吉井和視君) 総務部長原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 県税収入に関するお尋ねがございました。
 まず、平成十七年度、昨年の県税収入についてでありますが、約八百二十八億円、前年度に比べまして約五億円の増収となる見込みであります。主な原因は、法人二税が減収となりましたが、輸入総額の増加や株価の回復などで地方消費税や県民税配当割などが増収になったことによるものであります。
 なお、収入率につきましては、滞納処分の強化、個人住民税の直接徴収や御案内の和歌山地方税回収機構設立のアナウンス効果などが寄与しまして対前年〇・二%増の九六%と、三年連続で向上させたところであります。
 次に、平成十八年度の今年度の県税収入の見通しについてですが、定率減税の縮減等の税制改正や企業収益の回復における増収などを見込みまして、当初予算として約八百五十四億円を計上しているところであります。また、徴収面におきましても、さらなる滞納整理の強化を図るとともに機構の本格稼働による効果も期待しつつ、県税収入の確保に全力を尽くしてまいります。
 以上であります。
○議長(吉井和視君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 都市計画道路の見直しについては四点お尋ねがありました。
 都市計画道路につきましては、議員御指摘のとおり、平成十七年三月末で百四路線、延長三百五十八キロが未着手となっております。これらについては、少子高齢化や人口減少など社会経済情勢の変化や公共事業費の縮減などを考慮し、計画路線のスリム化を図るため、総合的に道路の必要性を検証しながら、周辺土地利用や道路の利用状況なども考慮して、地域の実情に応じ、廃止も含め必要な規模に見直すこととしております。具体的には和歌山市の全路線でカルテを作成するなど、順次見直しに着手しております。また、平成十八年度は、カルテの成果を踏まえ、見直しの手順をまとめたガイドラインの作成を予定しております。
 見直しは事業未着手の全箇所を対象として実施することとしておりますが、都市計画道路は町づくりの根幹的な都市施設であり、また現に建築制限がかかっていることもあり、市町村と連携を図り、住民の御意見も取り入れながら作業を進めてまいります。
 コスト縮減効果については、今後、未着手の箇所を対象に具体的な検討を行うことにより明確になりますが、さきに発表した田辺市の内環状線では約八千万円、和歌山市の六十谷手平線では約五億円と試算してございます。
 二点目の和歌山市域の未着工路線の見直しにつきましては、昨年度から県、市の関係部局におきまして個別路線ごとにワーキングを設置し、先ほど申し上げたとおりカルテを作成して全路線で検討を実施してきており、現在、これを見直し案として取りまとめております。今後も和歌山市となお一層連携を図りながら作業を進め、効率的、効果的な道路整備を図ってまいります。
 三点目の市駅小倉線及び松島本渡線についてお答えをいたします。
 市駅小倉線につきましては、県道岩橋栗栖線から国道二十四号までの区間約一・四キロを県で施行しており、県道岩橋栗栖線から丹生神社付近までの約六百メーターを今年度末に四車線で供用する予定でございます。また、国道二十四号との交差部につきましては、和歌山市との調整に努めてまいります。
 次に、松島本渡線につきましては、わかやま電鉄貴志川線神前駅東側の神前地区におきまして、県道和歌山橋本線までの約一キロの区間において平成十七年度から事業に着手し、測量、設計を行っているところであり、今年度から用地買収を進めてまいります。
 四点目の南港山東線及び県道和歌山橋本線についてでございますが、南港山東線の東工区六百五十メーターの区間につきましては、本年八月末に供用開始を予定しております。続く竈山神社西側の県道三田三葛線交差点部までの五百メーターの区間につきましては、本年十一月に供用する予定でございます。
 また、県道和歌山橋本線の森小手穂交差点は三差路が二つ続くクランクとなっておりまして、渋滞の原因となっております。現在、右折車線を新設する等の交差点改良を実施しており、現在の進捗は、用地買収について九八%、工事については七一%という状況で、平成十九年度中に供用する予定でございます。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 初めに、小中学校の適正規模化への支援についてお答えいたします。
 少子化が進む中、県教育委員会といたしましては、学校における教育活動の活力を維持・発展させるという観点から、市町村の参考となるよう「公立小・中学校の適正規模化について」の指針を策定したところであります。適正規模を下回る学校は、現在、小中学校ともに県内の学校数全体の約七割に上り、中でも小規模の中学校や複式学級を含む過小規模校等が多くを占め、これらについて特に統廃合の検討が望まれます。
 こうした検討は、基本的には設置者である市町村が主体的に保護者や地域の人々の意見や考えを尊重しながら行っていくものであります。県教育委員会の役割といたしまして、教職員の配置、児童生徒の通学、学校施設・設備の充実等について必要な支援措置がとれるよう努力してまいります。
 また、小中学校の適正規模化は子供にとって最善の学習環境を確保するという観点から進められるべきものであり、行財政改革推進プランに組み込まれたものではありません。
 次に、このたびの指針においては、国の学級編制基準をもとに適正な学校規模を示しております。少人数学級編制は、よりきめ細かな学習指導や生徒指導の充実を目的として取り組んできており、平成十八年度は小中学校の全学年で実施しております。今後もその成果の検証に努めてまいります。
 小中学校の余裕教室については、従前から特別活動室や少人数指導を行うための教室として、また廃校等による空き教室については学童保育や社会教育施設等に転用されております。今後は、余裕教室の有効活用促進のため県独自に実態調査を実施し、市町村が積極的に地域住民にこれを開放するなど、学校施設の有効利用を図れるよう指導、助言してまいります。
 続いて、紀伊風土記の丘についてお答えいたします。
 特別史跡岩橋千塚古墳群を母体とする紀伊風土記の丘では、これまでの考古・民俗資料の展示活動や体験学習等に加え、平成十五年度以降は紀ノ川緑の歴史回廊事業の拠点施設の一つとして代表的な古墳の再整備を行うとともに、学校教育並びに生涯学習活動に対するより一層の支援に努めているところです。
 地域ボランティアにつきましても、体験学習や資料の整理において既に御協力をいただいていますが、今後は、古墳群としては全国で二例しかない特別史跡の意義やすばらしさを説明できるボランティアの育成並びにその活用について検討してまいります。
 次に、進入道路並びに園内の諸施設につきましては、開館から既に約三十五年が経過して周辺環境が大きく変化するとともに老朽化が進んでいることは、議員御指摘のとおりであります。県道からの進入道路の改修は、必要に応じて部分修繕等の対応をしてまいりましたが、今後は、その所管がえも視野に入れ、関係機関と協議してまいります。
 施設の改修につきましては、平成十五年度に消防設備、十七年度に屋根、空調設備などの工事を実施し、本年度は受水槽などの改修を予定しております。今後とも計画的な改善・充実に努め、より安全で快適な施設にしてまいりたいと考えております。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(吉井和視君) 以上で、新田和弘君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十五番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。
 ただいまから、地球環境時代における和歌山の進路と企業誘致について質問をしてまいります。
 企業誘致については、幾つかの実績を上げられ御尽力されている関係者の皆様に敬意を表します。私は、御努力いただいています企業誘致についてですが、幾つかの点で心配をしています。和歌山県百年の計に立ち、十年先、五十年先、百年先の和歌山の進路をきちんと見据えた議論が必要であると思い、今回質問をさせていただきます。
 全国最大規模の助成額百億円企業誘致については、二月県議会予算委員会で質問をし、答弁をいただきましたが、私自身、いまだ完全に理解するには至っておりません。くどい感じがするでしょうが、その理由は、バブル時の全国各地の企業誘致失敗の印象が強過ぎるからです。いろんな企業が倒産をし、不良の建物を囲い込み、経済だけではなく家庭の崩壊までにつながったという、その印象が強過ぎるのであります。
 私は、二十一世紀の和歌山の進路について、今までの議会質問で一貫して訴えています考え方は、二十一世紀は積極的に和歌山のよさを全国にPRし、県民一人一人が知恵を出し合って自分たちに必要な経費をみずから生み出すことが求められている時代であるということ、かつてのような国からの交付税や補助金等によって財源を賄うのではなくて、和歌山県内に蓄積をされている資源や人材、生き抜くためのノウハウや知恵を使い、和歌山県自身の創造と努力によってそれをなし遂げること、それが二十一世紀の和歌山県勢の進路であると信じています。つまり、無から有を生む発想で県が幸せになる、一石二鳥、一石三鳥の政策を生み出していく時代であることを提言してまいりました。
 私は、専門的なところまで具体的なことはわかりませんが、再びバブル時のような企業誘致の失敗が起こらないかという懸念を持っています。
 ここに、民間のコンサル会社が全国都道府県、政令指定都市の合計六十自治体に地方自治体による企業誘致のアンケートをした結果報告書があります。交通のアクセスがよいことをアピールしている自治体が多い、助成金の額が大きい、土地代などのインフラ費用が安いといった企業のコスト意義を魅了する点をアピールする自治体が多いのも特筆すべき点であると述べられています。つまり、どこの自治体も金額の大小の競争であり、みずからのふるさとの資源を有効に活用して企業と共生し、ともに発展をしていくという視点が感じられないのです。
 そこで、私は、企業誘致の失敗事例を県外へ直接出向いたり電話取材をして探したのですが、よいことは言うのですが、なかなか表に出してくれません。ここに情報公開がされていない大きな問題点があることが今回の調査でよくわかりました。そうした中でも、いろいろと手を尽くしたところ、私の和歌山大学の友人の協力をいただき、二つの県の事例を調べて二つの問題点が見つかりました。
 一つは、企業誘致に早くから取り組まれた岐阜県の事例です。
 一九八〇年代に、ある大手電気メーカーの子会社を誘致しました。このような先端技術企業では、技術の秘密そのものが商品の競争力の第一条件となっており、県内に関連企業がふえませんでした。また、地域では就業機会の拡大を期待するわけですが、工場内の自動化が進み、資本投下規模に比較して雇用力は小さい傾向にありました。
 この誘致工場と地場産業の地域経済効果とを比較したものが岐阜県のシンクタンク報告「岐阜県経済の成長過程と県内企業の事業活動の展開」の中であらわされていますが、地場産業に比べて、企業誘致による地域経済効果は期待されるほど大きくないということだったのであります。
 しかも、それだけではありません。もう一つは、企業間の技術開発競争の激化により、事業所の立地と閉鎖・撤退のサイクルは短くなってきているということであります。例えば、一九八〇代以降、高速道路網の整備等によって進出企業による工場立地が盛んに行われた岩手県では、二〇〇一年以降、誘致工場の閉鎖・撤退が相次いでいます。二〇〇一年から二〇〇二年にかけて、誘致企業の閉鎖・撤退事業所数は十三に上り、従業者数で二千三百一人、工業出荷額で一千四百十七億円も減少し、県も誘致企業の撤退や工場閉鎖の影響深刻と厳しく受けとめています。
 さらに、専門家の意見も聞くことができました。財政学や経済学で有名で、国の審議委員になっておられる、また木村知事が参加されています分権型研究センターの役員でもあります東京大学大学院経済学研究科の神野直彦教授から直接お聞きをしたところ、茨城県の鹿嶋では企業誘致でインフラ整備の投資をしたが、工場の縮小をしたからマイナスになり、動き始めてからは利益がないから事業税は上げていないということ。また、日本企業でもそうした企業進出を積極的に進めるところはなくなり始めている、三重県もいずれ行き詰まってくるのではないかと警鐘を鳴らされました。
 また、日本の公害の原点と言われる水俣病は、ことしの五月一日で公式確認から五十年を迎えました。高度経済成長の中、工場から垂れ流された水銀は、住民から命と健康な生活を無残にも奪いました。今も三千七百人以上が国に認定を求めています。半世紀を経ても水俣病は終わっていません。
 もう一つ、大変大事なことがございます。それは、地球温暖化防止という大きな地球上の異常に対する闘いが必要な時代になったということであります。地球温暖化防止のために県は二〇一〇年度に一〇・六%のCO2などの排出量削減目標を打ち出しましたが、企業誘致との関係では正反対のことが出てくるのではないでしょうか。
 さらに、企業誘致によって雇用が本当に定着していくのかということであります。若者の雇用に対するニーズが大きく変わってきています。企業への就職離れが起こっていることを経済評論家の専門家も指摘をされています。つまり、最近の若者は就職した企業を、失業社会にもかかわらず、すぐにやめてしまう。若者の仕事に対する意識とのずれが出てきています。地域の雇用創出は地域の望みではありますが、目先の雇用のみにとらわれない戦略的な地域づくりが必要であると私は思います。少子化時代である今、パート労働など不安定な雇用で安心して子供を産み育てたいと思えるでしょうか。
 そこで、今申し上げた心配を持ちながら、これから具体的に質問をしていきたいと思います。
 まず一点目は、企業を選ぶ人の選定であります。
 今の時代は、県行政がゴーサインを出したのに、県民が反対をし、ストップするという奥深いところに来ている時代です。県がゴーサインを出して企業誘致をするだけでは問題があります。もちろん最終決定の決断は知事が行うのでありますが、その前段として、行政側だけで企業を選ぶのではなく、誘致企業の選定に県民の代表の意向が入るような、そういったシステムをつくることが必要ではないでしょうか。
 そこで、選ぶ人の選定についてですが、その人は県民に、負託していい人なのかどうか。また、調印をするときは県民の代表が入るのか。審議会などをつくるとしたら、どういう人が委員になるのでしょうか。商工労働部長のお考えをお伺いします。
 二点目は、企業を選ぶのに何を基準にするかであります。
 中身の問題、選定する条件など、企業の言いわけは通用しない厳しい方針を出すことが大事であると思います。今までの企業誘致は、どちらかといえば、県民の方向よりも企業の方向に目を向けていました。したがって、あめとむちのあめのところに重点を置いてきたと思いますが、それでよいのでしょうか。
 例えば、熊本県では水が豊富ですが、来てくれる企業に対して、その水を有効に使ってもらうための再利用や水を守る基金への協力など、水を大切にする義務づけなどを厳しくしています。つまり、企業に厳しい条件を課しています。テレビなどで経済や地球環境問題で活躍をされています経済評論家で有名な内橋克人先生は、二十一世紀の企業について、これからの企業価値判定、判断として、大量生産をし資源略奪型の企業ではなく、地球環境を守り、その企業によって今の環境がさらによくなるような、また資源を浪費しない地域の基幹産業が求められていると、こう述べられています。また、水俣病やアスベスト等の教訓のように、将来大きな問題になり禍根を残すことにならないようにするためにも、企業を選ぶ基準は厳しい条件というものを考えていくことが必要だと思いますが、どのような条件を考えておられるのか、商工労働部長にお伺いします。
 さらに、地球温暖化防止という視点から企業誘致をどのように考えておられるのか、環境生活部長にお伺いします。
 続いて三点目は、選ばれた企業の公約とその責任であります。
 県民を裏切らない企業を期待しますが、万が一その期待を裏切ったことを心配するのであります。そのときは、知事や選考委員をだますだけではなく、県民をもだますことになり、その責任の度合いは大きいと考えます。履行できなかった場合、約束を破った場合、どういうペナルティーがあるのでしょうか。
 例えば、今までの事例の一つとして御坊火力発電所の誘致がありますが、第三号機についてエネルギー事情でできなくなり地元自治体の期待を裏切ることになったケースもありますが、税金を投入して支援するのですから、我々は慎重に慎重を期し、具体的に責任まできちんと問わなくてはならないと思います。
 また、首長の責任は今まで問われていなかったのですが、これからは問われる時代であると私は思います。選ばれた企業の公約とその責任についてはどのようにお考えになっているのでしょうか。また、途中で目標を達成しない場合、企業に支援したお金はどういう形で返却されるのでしょうか。商工労働部長にお伺いします。
 また、知事の責任についてはどのようにお考えになっているのでしょうか。知事にあわせてお伺いをいたします。
 最後の四点目は、県民が判断する基本情報であります。
 二月の県議会予算委員会では、企業誘致のこれまでの成果についての私の質問に、本年度までに約八十社の物づくり関連企業が県内各地に立地、約三千人の雇用が発生をし、県内産業への波及効果は大きいと、いいことばかりの答弁をいただきましたが、その事業税収や県としての立地をするためのエネルギーの消費や税金は幾ら投資したのか、また撤退した企業は幾つあるのか、その理由は、企業及び雇用の定着率や平均年数など総合的に見てどれほどのプラスになっているのでしょうか。
 さて、そこでまた二年間で一千社以上の訪問をしていくという強い意気込みをも答弁をしていただきましたが、どういう反応があるのでしょうか。すぐさま情報公開として出してほしいと思いますが、商工労働部長にお伺いをしたいと思います。
 情報公開をすれば、企業に企業秘密などと断られ、入り口で問題が起きるおそれがあると思いますが、このようなことに対する現在の適切な対応が後世の大きな評価を得るもとになると私は思います。水俣病やアスベストの教訓のように、将来大きな問題や禍根を残さないことにつながると思います。
 なぜこんな質問をするのかと言いますと、私の質問は、企業にとってマイナスではなく、県民の理解を得てやっていけると、プラス面が多いと考えるからであります。実は、私が会った企業のトップも、県民の理解のあるところで仕事をしたいと言っています。県民の理解が得られるオープンな手順が必要です。
 企業は企業秘密と言うかもしれませんが、我々県民サイドから見れば違うのであります。水俣、アスベストなどの原因は、情報がなかったということであります。こうした教訓とは、県民が判断する情報であります。そして、知事も県民もそうした中で選択を重視することが求められており、そのためにも透明なミーティングというものを県民にオープンに知らせることが重要であると思いますが、いかがでしょうか。商工労働部長にお伺いします。
 県民に嫌われたら企業活動はできません。県民の支援があって、初めて企業の活動ができるということです。もっと言うならば、県民の支援を受けながら企業活動をしていく時代になったということであります。そのためには、天気予報みたいに数字であらわす企業予報みたいなモニター制度を考えてみてはいかがでしょうか、商工労働部長にお伺いします。
 さて、今までは心配な点について、大きく分けて四点について質問をしましたが、これからは和歌山の進路と企業誘致そのものの是非についての総括的な質問に入りたいと思います。
 そこで、私の素人判断ではなくて、専門の学者が言っていることを御紹介します。
 先ほど申し上げました東大大学院教授の神野直彦氏に直接話を伺うことができ、企業誘致について明確に答えてくれたのです。その先生の考え方と私とは基本的に近いと感じましたので、そのことを今から申し上げたいと思います。ここに先生のコメントがありますので読み上げたいと思います。
 「経済が発展するというのはどういうことなのか。発展を英語で『ディベロップ』、ほぐす、ほどくという意味で、その反対を『エンベロープ』、包み込む、封を閉じるという意味である。つまり、前の段階で内在させていたのを開花させていくのが発展ということだ。例えば、卵が幼虫になり、さなぎになり、成虫に成長していくということ、また、花でも種から芽が出、幹になり、花を咲かすということが発展という意味だ。しかし、外から別の力を加えてするのは発展とは言わない。従来の企業誘致政策は、外から企業を呼んでくるときに、その地域の生活様式、生活循環を発展させるのではなかった。そのときの武器は何であったか。それは、賃金や土地が安いから来てくださいと、地域の発展と無関係でやってきたのである。結果的にも、賃金も地価も安い海外へ企業をフライトさせてしまうことになった。日本がこれまで求め続けてきた経済の拡大の失敗を和歌山が後追いして繰り返してはならない。発展なき拡大ではなく、その地域の生活様式を大切にし、地域の活力を蓄えていく方向で進めることこそが五十年、百年先の和歌山をつくるのである」、こういったコメントをいただきました。
 今言われたことを私流に簡単に言うと、本当の地域づくりのためには、外からの力頼みではなく地域の内側から沸き上がる力、また地域の人、物、資源を生かしたものであるべきだと。もう一言、言わせてもらいますと、和歌山に行って、ここに住んでみたい地域にせなあかんと、こういうことだと思います。
 例えば、国内においては、神奈川県の相模原市や厚木市には知恵やアイデアを出す研究所が集結をしています。緑と水が豊かな自然の中でアイデアが出せる。フレックスタイムなので、時々行ってアイデアを出し、デザイン化するなど、仕事をする場所をつくり出しています。
 人間が住みたくなる町には、有能な人材が集結をして、先端産業も花開いています。地域社会では在宅勤務が進み、職と住が近づくというよりも、住に職が近づいてくる。あんな町に住みたいと人材が集まってくるのであります。
 鳥取県智頭町では、人形浄瑠璃の復活で町づくりをしています。町外でやっていたのを町内の中で復活をさせました。そのことによって人形浄瑠璃を学ぶというカルチャースクールができ、着物や伝統的な工業が復活をし、町全体で地域開発グループがNPOとして動き、仕事を創出しています。
 外国の事例で言えば、スウェーデンでは企業誘致よりも赤ちゃん誘致をしています。噴水などのある公園、医療の充実、保育園の充実などをして、子供を育てたい環境をつくる子供誘致をしています。ヨーロッパなどは、この町で住みたい、ここだったら住みたい、そうした地域社会をつくり出しています。バッグ等で有名なルイ・ヴィトンも、実は職人芸の伝統工芸品であります。
 こんな声も最近よく聞くようになりました。県民の意識もバブル時と比べて百八十度変わってきているということです。県行政としては企業誘致によって税金を入れてくれると言いますが、県民は、自分たちのふるさとを大切にしてくれることの方が大事だと言います。一般的に、税収が入るという欲望や実利的な損得よりも、その土地でその人たちが何代も生活し続ける環境を守ってくれることの方が大事であるとの県民の声を最近多く聞きます。その声を反映させたのが世界遺産登録や緑の雇用事業、企業の森事業だったのではないでしょうか。
 例えば、昨年の五月に県内の銀行のシンクタンクが発表した世界遺産登録効果は、一昨年の登録された七月から半年間で観光客が約百五十三万人増の三千九十万人、経済効果に直すと約七十八億円増に上る。雇用効果で言えば、約一千人増の雇用が生まれた。従来の企業誘致や公共事業に比べ、少ない投資で経済効果は抜群と分析をしています。さらに、県内の総生産を押し上げているとも指摘をしています。
 また、緑の雇用事業では、現在約三百三十人の雇用も生まれてきています。さらに、企業の森事業では、私どもが活動しています高野熊野世界遺産連絡会も空海の森事業として去る四月に調印をしていただき、二十番目の団体として参加させていただき、森林組合を初め多くの雇用が生まれてきています。このような形で企業参加を促すのは大変よいことだと県民の評価も高いのです。今申し上げたことからも、世界遺産登録された和歌山県の進む方向と少し逆行していくことになるのではとの心配の方が大きいのであります。
 我が和歌山県でも既に企業誘致がされて、幸いにも成功しているところもあると伺っています。しかし、その当時と今とは状況が私は違うと思います。その当時と今と違うのは、地球温暖化防止という大きな地球上の異常に対する人間の闘いが必要な時代だと、そういうことであります。
 さらに、百億円と言いますが、バブル時の百億円と今の百億円とは全く違った受けとめ方を県民はしていると思います。例えば、百億円あれば、今和歌山県内で優先的にやらなければならない防災や地球温暖化防止事業などもできるのであります。大変なリスクがある中で百億円という巨額な金額を使っていいのか、県民の不満の声を最近よく聞くのであります。
 以上のように、いろんな心配点を申し上げてきましたが、知事の企業誘致に対する基本姿勢と和歌山の進路についてお伺いをしたいと思います。
 最後になりましたが、私は、企業誘致の是非の判断を求める大事なことは、一つは、県民全体のお金だということです。つまり、知事の権限もさることながら、県民一人一人の意思や命と健康が優先される時代ではないでしょうか。私は、和歌山県づくりを長い目で見るということが今必要であると思います。つまり、きょう、あすの目先の利益、すなわち税収、雇用よりも十年後、五十年後、百年後の未来の豊かさを求める時代を考えていくことではないでしょうか。
 例えば、中長期の観点から、和歌山の資源の活用と再生を行うプロジェクトを策定して、戦略的な地域づくりを全国に先駆けて、県民の意思や命と健康、環境を優先する魅力のある地域づくりのモデルを発信してはいかがでしょうか。私たちは、地球人としての自覚を持ち、世界遺産と地球温暖化防止との濃密な関連性の中で、選択を誤ることのない和歌山の進路をつくり上げていかなければならないと思います。
 和歌山は、自然環境が全国の中でも恵まれているがゆえに、特に企業活動と県民の命というのは密であることが必要だと私は思っており、県当局におかれましても御理解をいただき、御答弁をお願いし、私の質問を終わります。
 御清聴、ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 企業誘致等についての御質問でございます。
 バブルがはじけて長く日本の国は経済が低迷し、その間に国内にあった企業はどんどん海外へ生産拠点を移す、さらにはまた国内で工場を閉鎖するというふうなことがどんどん起こっていたというふうな事実があったのは御案内のとおりでございます。
 そして、ここへ来て景気が回復し、企業も、今まで生産拠点を海外へ移していたのを、やはり基幹的なものは国内でやっていかなければならないというようなことで設備投資意欲が出てきているというふうな状況があるわけです。
 そういうふうな中で、和歌山県は非常にいろいろな条件で企業誘致には厳しい条件があるということではありますけれども、しかしながら、これで手をこまねいていては、和歌山県で生まれ育った人が、基本的には、学ぶ場所がないということが言われてるんですが、それよりも何よりも働く場所がないというふうなことがあるわけで、これについて何もしないということは、知事として非常にこれは責任があるというふうに私は考えております。
 現に今、数年間をとった企業の進出ということから見ると和歌山県は全国でも最下位のグループに属しているということで、こういうふうな地域間競争の時代に、環境だけがいいとか歴史だけがすばらしいということで、こういうふうな企業の誘致を等閑視するということは、これは許されないだろうと。
 しかしながら、今御質問の中にありましたように、だからといって、どんな企業でも来てもらえばいいというふうな時期はやはり過ぎていると思いますし、今まで、日本の国の水俣病でありますとかアスベストの問題でありますとか、いろいろやはりこれからそういうことを経験として生かしながらやっていかなければならない部分は大いにありますので、当然のことながら企業誘致に当たっても、和歌山県のためになる適正な企業というものが来るというふうな仕組みづくりということは、これはもう当然必要なことでありますので、景気が回復し出したのはごく最近のことですし、そしてまた和歌山県が、これはキャッチフレーズですけども、百億円というふうなものを打ち出したのもことしからです。これは、試行錯誤の中で一番いい形というものを生み出していく必要があるということですので、その点については十分これから検討していかなければならないというふうに思っております。
 基本的な私の考え方は、和歌山県というふうな自然豊か──自然豊かと言えば言葉がいいですが、山がちな地域においてお金を出したり、鳴り物入りで企業を他の地域と競争しながら呼んでいくということは、余り効率的ではないと思います。ただ、先ほども言いましたように、これはやはり地域で雇用の場を確保するという責任から思い切りやっていこうということでやっているわけで、長期的に見れば、やはり観光であるとか、それから地域に根差したいろいろな力というふうなものを地域づくりの中で生かしていって、そして、そこに住んでいる人が幸せに生きていけるということが本当の理想だと思います。
 ただ、今そういうことだけを──緑の雇用とか企業の森とか世界遺産とか、まさにそういうふうな系列の事業であるわけですけども、それだけでたくさんの人が生活していけるというふうなわけではありません。緑の雇用だけやってたら和歌山県の人口が全然減ってしまったというふうなことになるのも、これもやはりぐあいが悪いことですので、こういうことのバランスをとりながら、ただ和歌山県ではできるだけそういうふうな自然とか歴史とか、そういうふうなものを生かす方向に重点を置きながらやっていこうというのが私の基本的な方針でございます。
○議長(吉井和視君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 企業誘致に関する六点の御質問にお答えをいたします。
 まず、県民参加の仕組みづくりという御質問についてでございます。
 県では、各地域の立地条件や地域ニーズに対応した企業誘致を進めるため、市町村との連携、協議を誘致交渉段階から行っています。また、市町村と企業との進出協定締結を県の支援措置の前提としているところです。
 企業誘致活動においては、市町村が住民ニーズを把握した上で誘致戦略を構築することが重要であり、今後とも市町村の意向を尊重し、連携を密にしながら企業誘致活動に取り組んでまいります。
 次に、誘致基準の明確化についてでございます。
 誘致対象企業の具体的な基準については誘致企業決定方針等において定めており、また本年度から、県内企業の協力を得ながら、県内企業と連携が期待できる企業や県の産業構造の改革につながるすそ野の広い企業、また長期間にわたり安定雇用の創出に寄与できる企業等を重点ターゲットとして誘致活動を展開しているところです。また、誘致企業に対しては、県内企業と同様に、雇用や地域貢献、環境、人権等の社会的責任を果たすよう要請をしているところでございます。
 次に、誘致企業の責任というお尋ねでございます。
 誘致企業については、県、市町村との間で進出協定を締結しておりますので、誘致した企業が進出協定に反した場合には、当然その責任を問うことになります。今後は、地球環境保全が重要であることから、誘致企業に対し、地球環境保全に係る法令の遵守につきましても、環境生活部と連携の上、指導してまいりたいと考えております。なお、進出協定に反する場合以外は企業の責任を追及することは想定をしてございません。
 次に、千社以上訪問の反応についてでございます。
 現在までの企業訪問により、今後の企業設備投資に関する情報等、貴重な情報を多く得ることができております。また、情報開示につきましては、法令に基づき、訪問先企業名等の情報公開は可能でございますが、企業内情報に関するものは、企業の了解が得られない限り情報を開示することは難しいものと考えております。
 次に、県民が判断する情報開示についてでございますが、企業誘致に関する情報開示につきましては、企業の進出が決まった段階で情報を公表し、その後、一定の期間を設けて進出協定の締結を行っており、最も早いタイミングで県民の皆様にお知らせするよう努めているところです。
 なお、誘致検討段階で地元住民のコンセンサスが立地の前提条件として必要不可欠な場合には、検討段階において地元住民や関係機関と協議する場合も想定をしてございます。
 最後に、企業予報的なモニター制度づくりについてでございます。
 進出した企業は地元企業の一つとして地域と一体となった企業活動を行っており、県としましては、県内企業と同様に、法令に基づき、必要な指導や規制、支援措置を講じております。また、企業も法令等に基づき情報公開を行っているところであり、新たな措置は必要ないものと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 環境生活部長楠本 隆君。
  〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 地球温暖化防止と企業誘致についての御質問でございます。
 二十一世紀は環境の世紀と言われておりますが、特に地球温暖化問題は、その影響の大きさや深刻さから見て人類の生存基盤にかかわる最も重要な環境問題の一つであり、議員御指摘のとおり、大量生産、大量消費、大量廃棄を基調とした従来の社会システムを人々の意識や価値観の転換により抜本的に変革し、温室効果ガスの排出削減努力を全世界的な取り組みとして積み重ねていく必要があると考えております。
 本県では、この三月、和歌山県地球温暖化対策地域推進計画を策定いたしまして、平成二十二年度を目標年度にいたしまして、平成二年度と比較して森林による吸収六・七%の確保を含む最大一〇・六%の温室効果ガスの削減を目指すこととしております。環境問題への積極的な取り組みが新たな投資や技術革新を生み出し、企業や地域の競争力を高め、経済の活性化が環境を改善させる、いわゆる環境と経済の好循環を実現することが重要であると考えております。
 一方、企業につきましても、単に既存の環境規制を遵守するだけではなく、例えば議員御指摘の企業の森など、環境に対するさまざまな配慮を行うことが求められております。
 このような観点から、県では独自に、企業の森事業により吸収をいたしました二酸化炭素量を評価・認証する制度を新たに創設したところでございます。和歌山県に進出をされる企業につきましても、地球温暖化防止という視点はもちろん、和歌山県の豊かな自然環境に配慮した活動を展開し、地域に貢献していただけるよう関係部局とも連携し、今後とも環境と経済が両立した持続可能な社会の構築を目指し、地球温暖化防止対策を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十五番玉置公良君。
○玉置公良君 御答弁、ありがとうございました。
 十分な答弁ももらいましたし──まあもらってないやつもありますけども──幾つかだけ、再質問というよりも要望として意見を述べておきたいと思います。
 一つは、今回の質問は、大きく二つに分けて問わせていただきました。その一つは、社会保険庁の問題とかバブル時の教訓のように、行政側だけで決めていく、お金を使っていくということではなくて、県民の税金だという視点を持ってほしい。だからこそ、県民の参加の仕組みづくり、情報公開というのが必要ではないかと私は訴えさしてもらいました。
 そこについては、若干不満はありますけども、答弁では、「企業誘致活動においては、市町村が住民ニーズを把握した上で誘致戦略を構築することが重要であり、今後とも市町村の考えを尊重し」と、こういった答弁がございました。私は、それでは、どれだけの市町村がどうした手法でそういった住民のニーズを把握しておるのか、また、その要望についての中身は具体的にどんなものか、すべて把握をしておるのかどうか、もしかして市町村、行政側だけでそういう判断とか要望が来てるんではないかとか、そういったいろんな疑問を持ちます。ここで言うてくれとは言いませんから、ぜひとも今後そういった情報公開をしていってほしいと思いますんで、それは要望としておきます。
 もう一つ、私の質問の誘致基準の明確化や責任の所在については、部長は、県の誘致企業方針──ここに持ってますけども(資料を示す)、誘致企業方針と協定書、こういうものがあるからということで、あんまり新たに誘致基準の明確化をせえということについては触れられてなかったと思います。
 私、この方針なり、取り寄せて見せていただきました。これを見ると、方針では、たった二つの大まかな基準ということを書かれています。例えば「環境に配慮した立地」とか、協定書では、例えば公害の防止について「法令等の定める基準」などと、当たり前の中身ですね。当たり前の中身。
 僕、当たり前だけの、そういう法令を守るだけの内容ではなくて、これから和歌山県がやっぱりこの中長期戦略を持って積極的に行っていく、例えば地球温暖化防止対策など、そういった努力義務とか、例えば企業の森に参加してくださいとか、そういった中身を盛り込んでいくことが必要じゃないかと思うんですね。これもきょうはもう質問はしませんけども、要望としておきます。
 そして、昨日の新島議員からも質問がございましたけども、雇用奨励金の問題、こういった問題なども、起きてから対処をするのではなくて、起こる前に、県民のいろんな声を反映させた、そういった基準づくりが必要ではないでしょうか。これらについては、行政側の人だけでつくるのではなくって、県民が入った中で幅広い意見を取り入れていくべきだと思いますので、これもひとつ検討していただきたいと思います。
 最後に、今回の質問の流れで一貫して申し上げたのは、やっぱり以前と今と決定的に変わったことがあるということです。つまり、地球温暖化防止の京都会議が一九九七年に日本で開かれました。そして、日本の批准が二〇〇二年に行われました。そして、二〇〇五年に発効されました。こういった意味からも、日本は率先してやっぱりやっていくと、この地球温暖化防止について。ただし、アメリカは批准をしてませんから、いわゆるまだまだ経済活動──二酸化炭素、いわゆる化石燃料を使ってのそういう経済活動というのは、こっちの方を重視しとるんですけども、私は今の時点ではやっぱり日本もこの地球温暖化防止、特にそちらの方に重点が置かれてきてある、そういう認識でやっぱりこれから取り組んでいかなあかんなと思っております。
 特に世界遺産を抱えた和歌山県でありますから、これまた地球環境のシンボルと言われております。そういった意味においてもとりわけ──先ほど知事さんの方からも中長期的なそういう戦略はお答えいただきましたからあれですけども、ぜひとも各全部局にそういう地球温暖化、地球環境に配慮していく、そこに重点を置いた政策づくりを皆さん方と一緒にやっていただきたいなと思います。
 いろいろと大変でしょうけども、後世に憂いのない和歌山をつくり上げていただけるよう、やっぱり和歌山に住んでみたいということがあってこそそこに人がふえて、新しいまた仕事も出てくるん違うかなと私は思ってますんで、よろしくお願いいたしまして、質問を終わります。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十三分休憩
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  午後一時二分再開
○副議長(大沢広太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十三番藤井健太郎君。
  〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 議長のお許しをいただきましたので一般質問を行います。本日のトリの質問でございますので、ひとつ最後までよろしくお願い申し上げます。
 まず、行財政運営についてお尋ねをいたします。
 平成十六年度から十八年度までの三年間を改革期間とする三位一体の改革が一応区切りをつけました。地方財政の強化や地方分権はどれだけ進んだのでしょうか。全国ベースでの国庫補助負担金の削減四・七兆円に対し、税源移譲は三兆円、地方交付税等の総額は五・一兆円の抑制という結果に終わり、地方自治体にとっては財政強化につながっていないと思います。
 本県でも、この三年間の影響額として、予算ベースで見ると、国庫補助負担金の削減額二百五十億円に対して税源移譲額は百七十五億円でマイナス七十五億円、地方交付税とそれにかわる臨時財政対策債の削減額が四百九億円で、税収の伸びが七十二億円ある一方で国庫補助負担金と地方交付税等合わせて四百八十四億円もの減額となって財源不足を基金から取り崩しで補うなど、大変厳しいものとなっております。
 地方分権の成果につきましても、地方の自主性、裁量が一定拡大されたというものの、より一層の歳出削減を余儀なくされるもとで、職員定数、職員給与を初め、行政内部の経費はもとより、県民向けの県単独の事務事業についても削減が進められています。国の介護、障害者福祉など社会保障制度改革に伴う県民負担の増大に対して、県独自の軽減策の実施を求める県民の願いもかなえられていません。その上に、今、国においては歳出・歳入一体の改革が強力に進められており、中でも地方財政の歳出削減をめぐっては、公務員人件費の抑制とともに、地方交付税の抜本的見直しを進める動きが伝えられております。
 既に本議会でも議論が交わされたところではありますが、交付税総額を抑制するために、交付税算定の方法を人口や面積を基準にしたものを創設する、交付税財源である国税五税の地方への配分比率を引き下げることなどが検討されています。
 そもそも地方交付税は、国が地方にかわって徴収する地方税としての性格を持っており、地方の独自財源として財源保障の機能を果たすべきものであります。さらなる交付税改革としての地方交付税等の一方的な削減は、地方財政を一層厳しいものにすることは明らかです。
 これらの動きに対して全国知事会など地方六団体は、内閣と国会に対して十二年ぶりに「地方分権の推進に関する意見書」を提出し、国と地方の税源配分を五対五とすることや、地方交付税は国の一般会計を通さず特別会計に直接繰り入れて総額の一方的な抑制はしないことという地方税財源の強化、確保と地方分権の推進を強力に進める意思をあらわしました。
 国は地方自治体に一層の歳出削減を求め、自治体側は財源確保と分権を目指してのせめぎ合いの構図となっているわけですが、自治体としても、どのような自治体づくりを目指すのか、そこでの住民の暮らしはどうなるのか、明確な自治と自立のビジョンを持って住民に説明するとともに、県民的な議論ができるようにすることが今まさに求められていると思います。
 また同時に、自治体が財政的な自立を目指していく上で、一般会計についてはもちろんのことでありますが、特別会計や外郭団体が抱える未収金、債務残高や県からの貸付金返済などに解決の道筋をつけていくことも重要な問題となっています。それらを放置しておいて行財政改革の名で県民に負担と犠牲を強いることには問題があります。
 そこで、知事並びに担当部長に幾つかお尋ねをいたします。
 自治のビジョンと県民的議論についてです。
 竹中総務大臣が発足させた地方分権二十一世紀ビジョン懇談会の中間取りまとめでは、国から地方への流れを加速させ、道州制を視野に入れての国、地方のあり方が示され、交付税改革、地方行革の新指針の策定、自治体の破綻制度創設や一定規模以上の自治体については半分以上を交付税不交付団体にするべきなど、国から見た自治体の形づくりについての考え方を見てとることができます。
 また、全国知事会が設置した有識者による新地方分権構想検討委員会の分権型社会のビジョン中間報告では、分権改革について、暮らしの安全・安心をつくるなどの五つの視点から分権改革に向けての制度設計を組み立てて提言し、国民的議論を呼びかけています。今まさに各方面で地方自治のあり方、その将来像をめぐって、それぞれの立場からの議論が熱く交わされているところでありますが、三位一体の改革にしても地方分権の問題についても、住民にとっては重要な課題でありながら、肝心の住民のところでいまひとつ県民的な議論の場が提供できていないようにも思えます。地方分権の推進によって住民の暮らしやなりわいがどうなるのか、少子高齢社会を迎えてだれもが安心して暮らせる社会になるのか、地域の産業や雇用問題が前進するのか、子供たちの安全や教育など住民の暮らしをよくしていくことになるのか、日々の生活での現在と将来の不安要素が拡大していく中で住民ニーズに果たしてこたえていくことができるのか、その展望を示すことができるのでしょうか。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 知事は、将来の分権型社会として道州制に向けての取り組みを進められていますが、現在の自治体への税財源の拡充と地方分権の推進について、そもそもの目的は何であったのかを絶えず明らかにしながら取り組みを強めていくことが求められているのではないでしょうか。また、知事は、自治や自治体のあり方についてどのようなビジョンを持って県民に理解を求め、県民との議論や運動を進めていこうとされているのか、お答えを願います。
 二つ目に、行財政改革推進プランについて担当部長にお尋ねをいたします。
 県は、平成十八年三月に、今後の行財政改革の根幹をなす計画という位置づけで、平成十七年度から向こう五年間を計画期間とする行財政改革推進プランを策定し、発表しています。平成十八年度から二十一年度までの四年間の取り組みの結果、一般財源ベースで、人件費や民間開放などの事務システム変更による歳出削減額八百六十一億円、県税や退職手当債など歳入の新たな確保額六百九億円で千四百七十億円の対策の強化となっていますが、平成二十一年度では財政調整基金、減債基金とも使い果たし、特定目的基金を臨時的に活用したとしても百二十八億円の財源不足が出ると試算されています。実際の年度ごとの予算は国が示す地方財政対策によって左右されることになりますが、後年度に財政破綻を招くような無謀な事業を避けるためにも中長期の見通しを持った計画的な財政運営が求められています。
 そこで、担当部長にお尋ねをいたします。
 県は、国の地方交付税改革の動きをとらえて、人口、面積要件を取り入れた新型交付税での基準財政需要額の試算を発表し、試算によっては減収ワースト十位になるとしていますが、そうなった場合、策定した行財政改革推進プランの中の歳入見込みへの影響はどのように生じてくると考えておられるのか。
 プランの中で、中小企業振興資金の百十八億円の未収金、土地造成事業の企業債残高百五十七億円、和歌山森林と緑の公社の長期債務残高百四十一億円など、特別会計や外郭団体が抱える債務が事業運営のいかんによっては県財政を圧迫させると危惧が表明されていますが、特別会計や外郭団体が抱える未収金、債務等により行財政改革推進プランが影響を受けることは想定されていないのか。
 また、特別会計の未収金、県が出資や貸し付けを行い、指導監督すべき法人、団体などで財政健全化への取り組みが必要だと考えられている法人、団体はどのような団体で、どのぐらいあるのでしょうか。また、具体的な解決に向けてのプログラムはどこまでつくられて、どのように点検、指導する体制になっているのか、お答えを願います。
 三つ目に、市場化テストと事業仕分けについてお尋ねをいたします。
 国は、歳出削減を進める手法として、小さくて効率的な政府を目指し、官から民へ、国から地方へなどの観点から行政改革を進め、行政のスリム化、効率化を一層徹底するとして、地方自治体にも同様のことを求めてきています。
 ことしの五月末に成立した行政改革推進法では、その基本理念において、行政改革の進め方として、政府及び地方公共団体の事務の必要性の有無及び実施主体のあり方について、仕分けを踏まえた検討を行い、民間活動の領域を拡大することなど、行政事務の民間開放を大きく打ち出しています。地方公共団体もその基本理念にのっとり行政改革を推進する責務を有するとされ、民間開放を一層進める方策として、これまでの指定管理者制度、独立行政法人、PFIなどに加え、すべての行政サービスを対象として市場化テスト、事業仕分けの実施が位置づけられました。
 市場化テストは、官が仕事をするか民が仕事をするかを競争入札で決めようとするもので、事業仕分けは、その仕事そのものの必要性にさかのぼって検討し、行政の事務として必要かどうか、また必要だとしても実施主体はどこが適当かを分類・整理し、仕分けをしていくもので、いずれも行政事務の効率化を民間にゆだねることによって進めることが特徴となっています。
 本県においては、国に先立ち、行財政改革推進プランの中で、職員定数見直しの手法として、事業仕分けにより民間委託を推進し、事務量の削減を図るとされており、あわせて官民競争入札制度、市場化テストについても和歌山版市場化テストガイドラインを策定し、県庁南別館の施設管理を実施するほか、対象を拡大するとしています。
 そこで、行政事務の民間開放という観点から担当部長に幾つかお尋ねをいたします。
 県が市場化テストや事業仕分けに取り組もうとする理念と目的は何か。その結果、県政と住民にとってどのような効果をもたらすと考えているのか。
 地方公共団体が直接責任を負って実施していた事務や事業を民間開放していくことになるわけですが、規制緩和と抱き合わせの民間開放ということになりますと、耐震偽装問題に見られるような行政の公的責任が問われる事態の発生も懸念されます。県は、公共性の確保と行政の公的責任をどのように明らかにしていくのか。民間開放していく基準のようなものは考えられているのか。
 また、情報公開や個人情報保護の規定整備をどう考えているのか。
 公務の民間への開放が進めば行政の専門家の育成がより困難となり、ひいては公共サービスの安定的な提供を困難にするのではないか。公務員の専門家の育成について、どのような方針を持っているのか。
 この問題の最後に、事業仕分けについて具体的にお尋ねをいたします。
 仕分けする対象の事業の範囲はどこまでを考えているのか。民間開放の方法はどのように考えているのか。事業仕分けの結果は最終的にどこで決めるのか。また、事業仕分けの民間評価委員会の構成とその役割は何なのか。住民の参加の保障はどこまでできているのでしょうか。ことしの六月三十日までと期限を切っての意見募集が現在行われているところですが、それ以後も意見表明できる場はあるのでしょうか。
 四つ目に、指定管理者制度についてお尋ねをいたします。
 平成十五年の改正自治法によって旧来の管理委託制度が廃止され、改正以前の委託施設について、県が指定する団体に管理運営させる指定管理者制度が発足しております。指定管理者制度は、従来委託できなかった株式会社など、営利を目的とする法人、団体にまで委託の範囲を広げ、単なる管理業務の委託だけではなく、利用許可などの行政処分、条例の範囲内とはいえ利用料金の設定ができ、使用料、利用料はみずからの収入となって利用者の増加を図ることと県からの委託費をより節減して運営することで利益を上げることができる、そういう制度となっています。そういうことから、県は住民サービスの向上と行政経費の削減につながると説明をしてきました。
 現在、これまで直営だった三施設を含め、四十一施設が指定管理者として公共施設の管理運営に当たっています。四十一施設のうち、公募して新たな団体が指定されたもの十三施設、公募して旧来の団体が指定されたもの十二施設、非公募で指定されたもの十六施設となっています。
 十八年度当初予算では、四十一施設の委託費合計額が前年度比十五億円の削減となって、全体として経費が削減されたことについては目に見えてわかりますが、個々の施設の利用状況、利用者サービスの内容やプライバシーの保護はどうなっているのか、またそこで働く従業員の労働条件はどのようになっているのかなど、公共施設としてふさわしい運営管理がされているのかどうかも問われてくると思います。
 そこで、担当部長にお尋ねをいたします。
 指定管理者制度での施設の公平・公正な利用と利用状況、サービスの内容、プライバシー保護、従事する人の労働環境など管理のあり方についての検証をするということや検証結果を公表するという方針はあるのでしょうか。
 今議会に、情報交流センター「Big・U」についての維持運営管理委託料四億四百八十二万円が十八年度から二十三年度までの債務負担行為として予算計上されています。Big・Uは施設開設時点から指定管理者制度で運営されているわけですが、どのように評価をされているのでしょうか。今回の債務負担行為の限度額は、前回と単年度比較するとどのように設定されているのでしょうか。また、どのような運営方針を持って今後に臨もうとされているのか。それぞれ担当部長よりお答えを願います。
 次に、震災対策についてお尋ねをいたします。
 県は独自に、東海・東南海・南海地震が同時に発生した場合、和歌山県北部を東西に走る中央構造線による地震が発生した場合、田辺市内陸直下地震が発生した場合の三つの地震について、最悪の状況を想定した県内の被害予測調査の結果を公表しました。
 東海・東南海・南海地震が同時発生した場合では、最大見込みで、人的被害では死者五千人、負傷者八千三百人、建物全壊・焼失十万五千棟、避難所生活者二十四万人の被害想定をしています。その被害の規模は、ことしの五月に確定された阪神・淡路大震災での被害状況の死者六千四百三十四人、全壊住宅十万四千九百六棟に相当する被害の大きさとなっています。
 東海地震については、一九七八年(昭和五十三年)に制定された大規模地震対策特別措置法により、予知観測体制の整備、地震防災計画に基づく地震災害の防止・軽減対策などが多年にわたり蓄積され、関係自治体職員、事業所や住民の防災意識も高くなっています。
 一方、東南海・南海地震への国の対策は、二〇〇三年(平成十五年)に東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法が施行され、県内すべての市町村が地震防災対策推進地域の指定を受けたところであります。
 東海地震は近い将来に発生する可能性が高いと言われ、東南海・南海地震が三十年以内に発生する確率は約五〇から六〇%、同時または相互に近接して起こると言われています。日本は地震頻発期に入ったとされており、地震防災への備えは緊急の課題となっています。
 文部科学省が今月発表した公立小中学校の校舎や体育館などの耐震化率は、東海地震の影響を受ける神奈川八五%、静岡八一%と全国一位、二位を占めていて、東南海地震の影響を受ける三重が七八・七%と三位、愛知六七・六%で六位、一方、和歌山は四七・一%で三十二位と出おくれている状況にあります。
 ことし五月に発生したインドネシア・ジャワ島中部の地震は、中程度の地震とのことですが、死者六千二百人、家屋の全半壊十万軒を超す大惨事となりました。被災住民への支援活動が各方面から進められているところでありますが、巨大地震が頻発している中で震災対策への備えがどうだったのかという問題も指摘されています。
 今回の県独自の地震被害想定調査の結果は、県の地勢、人口密度、町並み、産業集積、建築物の耐震化の状況、道路輸送の整備状況など、地震の規模のみではなく、県の地理的要素、社会的要素も大きく影響しているものと思います。この結果を今後の町づくりについてどう生かしていくのかがまさに問われています。
 そこで、知事並びに担当部長にお尋ねをいたします。
 地震防災対策の今後の対応についてでありますが、せんだって議会で知事は、この結果を重く受けとめていると、そういうお話がありましたが、今回の結果を受けて、国などの関係機関への働きかけの強化も含めて、地震防災対策の重点をどのように考えておられるのでしょうか。
 二点目に、地震防災対策推進条例の制定について担当部長にお尋ねをいたします。
 地震防災対策の推進について、想定される被害をより少なくしていくという点に着目をして、安全で災害に強い地域社会の形成を目標に、行政、防災機関、住民、事業所の役割分担を定め、総合的な防災施策の体系を明らかにし、その実現のための方針を示して協力体制を構築していく必要があります。そうした取り組みを進めていくためにも、地震防災対策推進条例の制定と防災対策の内容、求められている数値目標、達成時期を示した計画づくりを急ぐ必要があるのではないでしょうか。
 以下、具体的な課題について何点か、到達状況と残された課題、今後の取り組み姿勢について担当部長にお尋ねをいたします。
 一つは、一時避難場所の確保についてです。
 県民の防災意識を高める取り組みが今さまざまに行われているところですが、地域での一時避難の場所の確保と避難のための訓練をすることにより、地震防災がより身近なものに感じられ、自主防災活動への取り組みも高めることができます。
 和歌山市内の中心部で、木造住宅が密集している地域の自治会、消防団で、自主的に事業者と交渉して駐車場を一時避難場所として確保しました。そして、避難訓練に取り組んでいます。体の不自由な人がどこにいるか地図に入れて、車いすで介助をしながら避難する練習や炊き出しをするなど、住民の意識を高めることに努力されています。訓練には、ほとんどの世帯の人が参加をいたしました。一時避難場所づくりと援護を要する人を含めての避難訓練の実施が地域の防災意識を高めるためにも有効だと感じたところです。
 県内での一時避難場所を確保する取り組みはどのようになっているのでしょうか。県や土地開発公社などが所有する土地で利用計画や処分のめどが立たない未利用地を住民の一時避難場所として地域への開放を進めてはどうでしょうか。
 防災ボランティアの受け入れ態勢、支援のあり方の整備についてですが、災害救援ボランティアの活動が活発化してきています。阪神・淡路大震災を機に、新潟中越地震でも全国から駆けつけました。参加者も、各分野の専門家、技術者、学生、勤労者など多様化し、国民的活動にもなってきています。県でもボランティアの登録が始められているようでありますが、保険への加入、現場での業務のコーディネート、必要備品の整備、宿泊などなど、体制整備の内容や手順の充実、マニュアルづくりと受け入れ訓練など、いざというときもたつかないようにしておく必要がありますが、どのように準備が進められているのでしょうか。
 より広域的な自治体間の相互応援協定についてです。
 東海・東南海・南海地震が同時に発生したとなると、自治体間の相互応援協定の必要性がより広域に及ぶことになります。近畿圏内など近隣地域に頼った応援協定では、互いに被災すると実効性を持たないことになります。より広域的な相互応援体制や国による支援体制の確立が急がれます。十九年度の国への要望の中には、津波・高潮対策、木造住宅耐震改修支援、被災者生活再建支援の拡充、緊急輸送道路の確保など盛り込まれていますが、より広域的な被害に対する即応体制の確立を国に強く求めていく必要があります。
 企業、事業所の安全管理と地域防災への協力の要請についてです。
 和歌山市内のガソリンスタンド経営者の中に、燃料タンクが償却期限を過ぎ、更新時期を迎えていることや、原油価格の高騰も重なってタンク劣化による災害への懸念から廃業を選択せざるを得ない、そういう事業者の方が目立ってきています。
 県は、老朽化した橋梁など公共建築物の耐震化、長命化に取り組んでいるところですが、民間事業者で危険物を扱う事業所の安全管理と防災体制の確立、燃料タンクや工業施設プラントの老朽化への対応、保守管理、保安体制など、万全のものとなっているのでしょうか。また、大規模事業所のみならず、中小規模事業所も含めて、防災教育や防災訓練の実施や津波避難ビルとしての利用、重機・機材や物資の提供、避難施設としての開放などなど、地震防災対策への取り組み状況や地震防災への協力要請はどのようになっているのでしょうか。
 最後に、在日米軍再編と米軍艦船入港問題についてお尋ねをいたします。
 ことし五月十一日から十四日まで、和歌山下津港本港区西浜第三岸壁に、米海軍第七艦隊の誘導ミサイル巡洋艦「カウペンズ」が入港接岸しました。目的は、親善訪問とされています。全国で米軍艦船の民用港寄港がことしに入り増大しています。ことしの一月から五月まで、全国十二の港に十六隻が入港しています。この五カ月間で、昨年一年間の十三港十七隻に迫る勢いとなっています。
 五月三十日の閣議で、日米両政府の合意した在日米軍再編に関する最終報告が実現可能であるとの認識が示され、的確かつ迅速に実施すると明記した基本方針が決定されています。在日米軍基地の再編計画の対象自治体となっている沖縄県名護、神奈川県座間、山口県岩国を初め、横須賀の原子力空母母港化などに対し、自治体住民から反対や了解できないとの声が上がっています。また、在日米軍再編に対する施設整備費用は日本が負うことや在沖縄米軍のグアム移転費用負担など、合わせると三兆円にもなるという報道もされています。
 日米安全保障協議委員会の在日米軍再編の最終報告では、在日米軍再編は、日米同盟が新たな段階に入るものであり、日米双方のコミットメント、日本との共同作戦をより強化すると言われています。和歌山下津港への米軍艦船の入港は、二〇〇一年八月の巡洋艦「ヴァンデグリフト」以来五年ぶりになりますが、アメリカの世界戦略への日本の組み込みが強まるもとで、本県においても一層の協力を求められることになるものと思われます。
 そこで、知事に三点お尋ねをいたします。
 在日米軍再編についてでありますが、在日米軍再編による日米同盟関係の強化が進められようとしているわけです。知事は、在日米軍再編をどのように受けとめ、今後どう対応していこうと考えておられるのか。
 知事は以前に、沖縄県の最後の官選知事、島田知事が県民を守って自分も亡くなられたという本を読んでいると、もうお忘れになったかもしれませんが、本会議場でお話をされたことがあります。私はその話を大変新鮮に受けとめたわけですが、日米同盟強化の動きの中で、住民の生命と財産を守る使命を持つ自治体の首長がどのような見解を持って今後対処していこうとされているのか。私は重要なことだと思いますので、この際、知事の見解を尋ねておきたいと思います。
 民用施設と軍事訓練についてでありますが、武力攻撃事態やそのおそれに対する対処を想定した米軍支援法、特定公共施設利用法など有事法制では、空港、港湾など、自治体管理施設の米軍優先使用を求めています。今回の米軍艦船の入港は親善目的としていますが、有事を想定しての軍事訓練も兼ねた入港と見ても不自然ではありません。白浜空港は平常時の軍事訓練には使わせない申し合わせがありますが、自治体管理の港湾施設、その他公共施設についても平常時の軍事訓練には使わせないことが必要ではないでしょうか。
 非核証明書の提出についてです。
 和歌山下津港の地元自治体である和歌山市は非核平和都市宣言をしており、非核三原則を将来とも遵守し、あらゆる国のすべての核兵器の廃絶と軍縮を全世界に強く呼びかけています。和歌山下津港の港湾管理者は県になっていますが、外国艦船の入港に当たっては、非核証明書、核兵器を積んではいないという証明書の提出を求めるべきではないでしょうか。
 以上、お尋ねいたしまして、私の第一問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、地方分権と行財政運営についての考え方ということですが、最近、竹中ビジョン懇の意見であるとか、それから地方六団体の意見であるとか、これからの地方行財政をどうしていくかということについての議論というのは中央の方では非常にかまびすしいものがあるわけですけれども、御質問にもありましたように、住民の人にとっては全く議論も盛り上がってないし、ぴんとこないような状況にあるというのが現実だろうと思います。
 私自身、この分権ということについてどういうふうに考えているかというと、今、例えば自治体のしている仕事の八割から九割、これがいろいろ国の規制によって、こういうふうにやりなさい、ああいうふうにやりなさいということが決まっていて、自由な発想で行えるような状況になっていない。こういうふうな状況を取り払って、地方が住民の要求に合わせたような行政ができるようにするということが一つです。
 それからもう一つは、それに係るお金ですけれども、今、税源が非常に地方の方は貧弱であり、和歌山県でもそうですけれども、補助金であるとか地方交付税というものに頼ってこれを運営するというふうな状況になっているわけですけども、できるだけこの自治体が行っている仕事については自治体の税金で行っていくと。そのことが納税者の意識というふうなものを高めるということにもなるし、必要なことだろうと思います。
 交付税というのは、一般的には地方の財源──我々は地方の財源だというふうに考えておりますけれども、最近の中央の議論では補助金に類するようなものというふうな極端な考え方も出てきているわけで、本来は税源と、税金という形で取れるような形に持っていって、住民に近い形の行政、そして住民のためになるような行政が行われるようにしないといかんと思います。一方では、国は国の本来の仕事というものに特化していって、地方のことは地方に任せるような形ということが望ましいと思います。
 そういうふうな中で、地方ごとに、人口が多いところとか少ないところとか、企業があるところとかないところとか、いろいろなことがあるので、今のままでは税源の移譲ということを行っても調整ということが物すごく大きくなってきて、そうすると、今度は持てる自治体と持たない自治体との間でまた争いが出てくるというふうなこともあるので、今後は、例えば道州制のような形で大きくそれぞれの圏域が大きなエンジンを持ちながら、自分のところで取った税金であまねくその圏域の住民が自発的にいろいろなことに対応できるというふうな形にしていくということが究極の分権の形に近づくのではないかというふうに考えているところでございます。
 次に地震防災対策ですが、先般発表された想定に私も非常に関心を持ち、また大きな脅威を感じているところでございます。こういうことにあわせて、現在、県有施設の耐震化であるとか、教育施設の耐震化であるとか、そういうふうなことをどんどん進めてきておりますし、自主防災組織の設置促進、そしてまた避難路や避難タワーというふうなものの設置とか、いろいろなことをやってきているわけです。そしてまた、紀南の方では今の国道四十二号線、これは海沿いを走っているもんですから津波等に非常に弱いというふうなことが言われておりますので、高速道路の南伸というふうなことについても力を注いでいるわけです。
 しかしながら、自治体としてやれることというのはある程度限界もありますので、この問題は国の大きな災害ということで認定されているわけですから、国についても引き続きこの東南海・南海地震対策について本腰を入れて対策をとってくれるようにいろいろな形で働きかけをしていきたい、このように考えております。
 最後に、在日米軍の再編と米軍の艦船の入港問題ですけれども、これについては一括してお答えを申し上げます。
 まず、在日米軍再編についてでございますけども、在日米軍再編の問題を初め、防衛、外交など国家の基本的事項は、当然のことながら国が責任を持って判断すべきものであるというふうに考えております。しかしながら、自治体は関係ないということではございません。危機管理の中でも大きな役割を果たしておりますので、いかなる事態が発生した状況においても県民生活の安全と安心を最優先に考え、そのことを念頭に県行政を進めていくということは、これは当然のことでございます。
 次に、民用施設と軍事訓練についての関係でございますが、今回の米軍艦船の入港は親善と乗組員の休養が目的であり、軍事訓練を兼ねたものではないというふうに理解をいたしております。また、この港の施設の使用については、米軍艦船は国同士の取り決めである日米地位協定で日本の港に出入りできることとなっており、これは基本的に国が判断すべき問題であるというふうに考えております。
 次に、非核証明書の提出についてでございますが、今回の米国艦船の入港に当たり県から外務省に問い合わせたところ、日米安全保障条約上、いかなる核の持ち込みも事前協議の対象であり、持ち込みについての事前協議が行われた場合、政府としては常にこれを拒否する所存であるので非核三原則を堅持する我が国の立場は確保されている、今回の入港に際しても、事前協議が行われていないので核の持ち込みがないことについて政府として疑いを有していないと、こういう明確な回答を得ており、県としては今後ともこのような対応をとってまいりたいと、このように考えております。
○副議長(大沢広太郎君) 総務部長原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 行財政改革推進プランに関して二点、市場化テストなどに関して五点、指定管理者制度に関して一点、合わせて八点のお尋ねがございました。
 まず、行財政改革推進プランについてお答え申し上げます。
 人口や面積を基本に配分するいわゆる新型交付税の影響ですが、単純に人口と面積で試算すれば本県のような財政力の弱い地方自治体の財源が激減するため、地域の実情を十分踏まえた激変緩和措置や格差是正措置が不可欠であると考えております。
 この点については、地方のこうした懸念が広がっておりまして、先ごろ国から新型交付税の導入には十分な経過措置を講じるといった方針は示されてはおりますが、なおその取り扱いが不透明な状況にあります。また、現在、国の歳出・歳入一体改革の議論の中で地方財政分野の大幅な削減が検討されているというふうに聞いております。
 こうしたことでありますので、現時点で新型交付税など新たな国の制度が導入された場合の行革プランへの影響ということを予測することは困難でありますけれども、いずれにしても、県としてはいろいろな機会をとらえ、地方の安定的な財政運営に必要な地方交付税が確保されるよう、今後とも十分に留意してまいりたいと思っております。
 次に、特別会計における貸付金や外郭団体が抱える将来にわたる債務等についてですが、議員御指摘のとおり、これらの事業運営状況は県の財政にも大きな影響を及ぼすものと認識いたしております。主な債務といたしましては、行政改革プランにお示しした中小企業振興資金の特別会計、あるいは土地開発公社など、六項目を掲げております。県としては、これらについて、例えば従前から償還指導室を設置して貸付金の滞納整理体制を強化したり、公営企業会計の中期計画を策定したり、土地開発公社についても専門の担当課を設置するなどして経営健全化を図っておりますが、今後も積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、市場化テストなどに関する五点のお尋ねであります。
 まず、第一点目の市場化テストや事業の仕分けに取り組む理念、目的などについてでございますが、これらの取り組みは、官から民へ、国から地方へといった大きな流れに沿って行政改革を進め、広域的自治体としての県の役割を踏まえた上で簡素で効率的な体制を整備するために実施するものであり、このことにより、真に県が担うべき行政サービスの維持向上に重点的に取り組むことができると考えております。
 次に、公共性の確保や行政の責任、情報公開や個人情報についてですが、現在、県が直接実施している行政サービスを民間委託する場合は、さきに導入しました指定管理者制度の例に倣い、十分配慮する必要があると認識しております。
 また、民間開放の基準についてですが、そもそも県が行うべきなのか、県がやるとしたら、それを民間に委託することができないかといった観点から、ゼロベースで議論をしてまいりたいと考えております。
 四点目の行政の専門家の育成と公共サービスの安定的供給についてですが、民間委託は、行政サービスの質の向上を図るため民間のすぐれたノウハウを取り入れるものであり、逆に特別に公共性が必要とされる分野については、職員の資質の向上を図り、責任ある行政を進めてまいりたいと考えております。
 第五点目に、事業の仕分けの対象事業の範囲、民間開放の方法、民間評価委員会の構成と役割などについてでございますが、現在県が実施しておりますおよそ千六百程度の事業について、現在、広く県民の皆様から意見募集を行っているところであります。いただいた御意見を参考にしながら仕分け案を作成し、民間評価委員会にお諮りし、庁内の検討会を経て仕分け結果を公表したいと考えております。仕分けを行った事業については、その区分に応じ、市町村への権限移譲、国への提言、民間活力の活用など、計画的に進めてまいりたいと考えております。
 最後に、指定管理者制度についてであります。
 民間事業者の専門的な手法やノウハウを活用することで住民サービスの向上を図ることを目的としておりますこの制度は、県民にとっては、より質の高いサービスが受けられるようになるものと期待をしております。県としても、管理の状況や個人情報保護の状況に注意するとともに、以前御答弁申し上げましたけれども、導入後の利用状況やサービス内容なども調査し、公表する予定であります。
 以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 情報交流センターBig・Uについてお答えをいたします。
 Big・Uでは、平成十七年一月の供用開始以来、県として初めての指定管理者制度を導入した運営を行っておりまして、現在まで約四十万人の利用があるなど、多くの県民の方々に御利用をいただいております。これは、県による積極的な利用推進はもとより、指定管理者によるIT人材研修等自主的な事業の展開や民間ならではの柔軟な発想を生かした利用者サービスの充実など、複合施設としての特性を生かしたさまざまな効果が生じたものと考えております。
 債務負担の限度額につきましては、前回は新規施設の開設でありまして、単年度で約一億円としたところでございます。今回は、指定管理者により効率的に運営されていることから、昨年度の運営実績を基本に、今後新たに発生する維持管理サービスの充実を見込んだ上で、単年度で約八千万円とする五年間の債務負担行為の設定をお願いしております。
 今後の運営管理につきましては、これまでの成果を生かし、施設の設置目標であります人材育成、産業支援、ITの普及促進等をより一層充実させるとともに、国際的なITフォーラムや企業研修の誘致など、積極的に取り組んでまいります。
 以上です。
○副議長(大沢広太郎君) 危機管理監石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○危機管理監(石橋秀彦君) 震災対策の五項目についてお答えいたします。
 まず、地震防災対策推進条例についてでありますが、本県では条例は定めておりませんが、地震対策の基本となる地震防災対策アクションプログラムにより、平成十六年度から取り組んでいるところでございます。その中で、自助、共助、公助が連携する防災協働社会の構築が最も重要なことであると明確に打ち出した上で個々の事業の達成時期や目標数値を設定し、防災対策に全庁的に取り組んでいるところでございます。
 議員御提言の地震防災対策推進条例は、先日公表した被害想定を踏まえ、今後、アクションプログラムを見直す中で、防災協働社会の構築に向けた一つの方策として研究をしてまいります。
 次に、災害時に県民の生命を守るための一時的な避難場所の確保については、市町村や地域住民が民間事業者と交渉し、津波避難ビルとして指定するなど、確保に努めているところであります。また、県の施設についても、地域住民の要望を受けて津波避難ビルとして指定されているものでございます。
 御指摘の県等の未利用地の一時避難場所への開放につきましても、所管部局との調整のもと、推進していく必要があると考えてございます。
 次に、防災ボランティアの受け入れ支援についてでありますが、本県の防災ボランティアにつきましては、個人及び団体の構成員を合わせて約千六百名の方が登録されており、現在、募集・登録の充実に努めているところです。その活動を支援し、災害発生時にスムーズなボランティア活動ができるよう、市町村や社会福祉協議会なども対象にして防災ボランティアコーディネーター研修会を開催しており、本年二月には図上訓練も実施したところです。
 また、ボランティアの円滑な受け入れ態勢等につきましては、ワーキンググループを中心に検討を行っているところであり、今後、より一層取り組みを進めてまいります。
 次に、災害等発生時の相互の応援協定につきましては、近畿府県間の応援体制として、近畿二府七県危機発生時の応援に関する基本協定を本年四月に締結したところでございます。また、全国知事会におきましても、全国都道府県における災害時の広域応援に関する協定を平成八年度に締結し、現在見直しを行っているところです。さらに、国におきましては、東南海・南海地震発生時の応急対策について、関係都府県と連携を図りながら、食糧、生活物資の供給対応など、具体化に向けた取り組みが進められているところでございます。
 最後に、事業所の安全管理と地域防災への協力要請であります。
 危険物等を取り扱う事業所につきましては、定期的に立入検査を行うとともに、企業みずからも保守点検を行っているところであります。一方、震災時の防災対策につきましては、各企業が国の通知に基づき耐震等技術的基準に適合するよう施設の改修などを実施するとともに、予防規程等において災害時の対応を規定しております。県としましては、技術的な強化と防災規程が有効に機能するよう指導するなど、保安体制がより万全なものになるよう引き続き取り組んでまいります。
 また、大規模災害時に被害を最小限にする上で企業防災の果たす役割は非常に大きいと考えており、企業を対象にした啓発冊子を作成するなど、企業の防災力向上を図っているところです。災害発生直後の初動態勢において迅速な協力を得るため、企業等と各種消防協定を締結するとともに、防災訓練なども連携して実施しているところでございます。
 以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 再質問をさせていただきます。
 地方分権の問題でありますが、知事は、住民のための仕事という、そういうことでお話をされましたが、まさにそこが問われているんじゃないかと思うんです。地方分権というのは、あくまでもその器の問題といいますかね。だから、住民のためになる仕事といえば、より住民に身近なところで行政サービスを行うと。それが効率的で住民のニーズに的確にこたえた行政サービスと。それを進めていくためには、今の国のいろんなしがらみを取っ払って、住民のニーズに合った形で的確に迅速にするためにも、地方分権、地方の自主性、裁量を高めていかなくてはいけないというところをしっかり押さえるということが私、大事だと思うんですね。
 それで、住民のための仕事とは何かというふうなことの次の段階の話になってくるわけなんですが、そこで今、行政改革という話が同時に進行しているわけです。それで市場化テスト、事業仕分けということが出てきておりますが、この行政改革というのが、従来は国からの通知、新地方行革指針とか指針という形で示されてきたのが今回法律になったんですね。
 それは、自治体の責務という形でこれを推し進めるということになってきたわけなんですが、私は、例えば市場化テストにしても、官と民を競争させる、これ、同じ土俵で競争すべき問題ではないというふうに思うんですね。もちろん競争できるところはあろうかと思うんですが、競争できないところもある。地方自治体でなければできない仕事もあるし、地方自治体がするべき、公務労働として提供しなくてはいけないという分野もあると思うんです。
 事業仕分けについても、やっぱり公務員がすべき仕事というのがあると思うんですね。総務部長の話では、千六百の事業すべてについて仕分けを行うという話がありましたが、その基準は何かということも同時に聞かしてもらったわけなんですが、余り明確なお話はなかったように、そういう印象を受けたわけなんです。
 やっぱり、今本当に大事なのは、公務員制度が改革を言われてますが、その地方公務員のするべき仕事とは一体何かということをしっかりと議論をして、それと、この市場化テストとか事業仕分けというものに臨んでいくということがないと非常にわからなくなってしまうということになるんじゃないかという点を私は危惧するんです。
 そこで知事にお尋ねをしたいんですが、私は、公的責任を確保するその中身というのは、いろんな公共性サービスの提供主体は幾つかあっていいとは思うんです。NPOであったり、個人であったり、民間事業者であったりしてもいいと思うんですが、公務員でなければできない事務事業もあると思うんですね。それはやっぱり、住民の生存権とか教育権、良好な環境のもとで暮らしをするさまざまな憲法の要請による基本的人権をどう守り擁護していくのか、これは公務員の仕事です。使命であり責務であるわけですね。
 住民参加を進めていく上でも、どれだけ自治能力を持った──自分のことは自分で決める、自立していく市民をどうつくっていくかという、その自治能力を高めるというのも大事な公務員の仕事だと思うんですが、こういう今から事業仕分けとか市場化テストとかいう形で民間開放を進めるに当たって、知事はその公務労働とは一体何かというところのお考えをぜひ聞かしていただきたい。それをもって行政改革にどう臨むのかということによって随分変わってくると思うので、そういった点のお話を聞かしていただきたい。これは知事への再質問です。
 あとは要望という形になろうと思うんですが、県が独自に県の東海・東南海・南海地震という巨大地震が同時に発生した場合という、非常に厳しい深刻な局面を調査されて公表されたわけですが、かなりの決意が要るだろうと思うんです。ただ、それが公表された以上は、これにどう対応していくのかというのが県民からすれば問われてくるといいますか、県民からそれを問わなくてはいけないということになってくるわけなんですね。
 ところが、今の取り組み状況では、かなり温度差がある。地域によっても住民によってもさまざまなとらえ方、事業所、企業によってもいろんな温度差がある中で、県としてこの防災対策というのをどう進めるのかということでは、一つのその指標として条例的なものがやはり要るんじゃないかなということを最近感じるようになってきたわけで、その提案といいますか、そういう考え方というのを話をさしてもらったわけです。
 研究をしていくというお話でありましたが、ぜひそれは──研究ということでありますので、真剣に一度研究をしていただいて、絶えず検証しながら、この防災対策どう進めるのかと。これは行政だけではできません。本当に住民の真剣な取り組み、企業、事業所の真剣な取り組みが必要なわけで、それを一体的に進めるんだという決意を示すという意味でも、私は、条例というのが一つの大きなインパクトになるんではないかなと、そういうふうに思いますので、この点は要望をしておきたいと思います。
 最後に、日米再編の問題で、知事は自分のお言葉で語られたのかどうかわかりませんが、国の方ではどんどんと米国との同盟関係の強化ということで有事法制がつくられる、戦争を想定してのいろんな準備体制がつくられるわけで、その中で、地方自治体として国の方針とか法律に唯々諾々と従っていくということで、それでいいのかという問題が、地方分権という、地方自治ということから言っても明確な方向を一定持つべきではないかなというふうに思うわけです。
 国民保護法制にしても、そうでしょう。閣議が──国で決めるんですね、和歌山県の国民保護の内容を。この議会では、その内容については議論したり議決するという問題でないわけなんですね。この問題もまた議論していきたいと思うんですが、そういう意味でも、自治体の平和行政をしっかり確立していくということが、今、米軍再編の沖縄であるとか、山口であるとか、各地域、米軍基地があるところを見ても思うわけなんです。ぜひそれはまた研究をしていっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
 知事から再答弁をお願いします。
○副議長(大沢広太郎君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 今の公務の範囲とは何かというのは、私は非常に大事な視点だろうと思います。戦後、日本は、あれもこれも公務員がやるべきだというようなことで、いろいろサービス行政の分野なんかで、本来なら別の主体ができたかもしれない、そしてまた、県でなくて市町村がやる方が適切であったかもしれない部分について手を出してきたというふうなことがあって、「官から民へ」という言葉のもとに、こういうふうな、それぞれ仕分けして全部調べてみるとか、それから市場化テストを行うとか、そういうふうな流れが出てきているわけです。
 しかしながら、この公務の範囲というのは時代によって大きく変化はしてきているものの、コアになる部分というのは当然のことあるわけで、何もかも全部民間でやれるんだったらもう都道府県も市町村も要らないというふうなことになるので、そういうことではありません。千六百の事業を全部見直すと言っても、当然のことながら、その多くの部分は将来的にも公が担っていくというふうなことになっていくと思いますし、その限界的な部分について、民間とかそういうところでやった方が効率的にできるだろう、そしてまた、その効率的にできることが、そこへ回している部分をもっと別のサービス、住民サービスに回せるというふうなことで、これは住民のためにもなるというふうな観点で行っていくということだろうと思います。
 ただ、今のところ、そういうふうなきっちりした線が引けるもんじゃないんですけども、基準があるわけではないわけですが、こういうふうな仕分けの中でも委員会をつくって検討していくわけで、そういうふうな中で、一つずつそういう事業を俎上に上げる中で、これは本来的に公がやる部分、これはそうでなくてもやれる部分というふうなことが帰納的にだんだんと明らかになってくるのではないかというふうに思っております。
 それから、安全保障の問題なんですけれども、現在、これは発表はしておりませんけれども、例えば北朝鮮のテポドンの配備について、和歌山県では自発的に県の職員が二人ずつ、何かあったときのために対応して宿直をしているというふうなことで、何もかもそういうふうな安全の問題が国の責任だというふうなことで言っているわけではないわけです。
 言っているわけではなくて、県は当然そうなんだけれども、やはり国が決めてやる部分は、自治体が勝手にいろいろなことをやると、これはもう国としての統一もとれなくなるから、これは決まり事の中でいろいろきっちりやってることだということを言ってるわけで、和歌山県としても自主的に県民の安全を守るためにいろいろな配慮は行っているし、また行っていくと、こういうことです。
○副議長(大沢広太郎君) 答弁漏れはありませんか。──ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。──もう時間も参りました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時四分散会

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