平成18年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(全文)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○副議長(大沢広太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十一番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 通告に従い、一般質問を早速させていただきます。
 まず最初に、歴史的町並みを生かした町づくりについてお伺いをいたします。
 去る六月七日、木村知事は、湯浅町の歴史的な町並みを視察されました。この地域は、北町、北鍛冶、北中、北浜と、古くからの風情ある町並みが残されていて、湯浅町として、重要伝統的建造物群の選定に向けて地元を挙げて取り組んでいます。私も一昨年の六月議会の一般質問でこの問題を取り上げ、知事からは応援していきたいとの答弁をいただいたところです。
 和歌山県下で初めてとなる、この国による重要伝統的建造物群の選定に向け、平成十一年から調査を始め、昨年の十二月には町条例が制定をされ、現在さまざまな手続を経ながら秋の文化庁文化審議会に向けた国への申し出、冬には国の選定が無事受けられるようにと、まさに大詰めに入ったところであります。
 この時期に木村知事に現地を視察いただき、町並みや地域資源をすばらしいと評価していただいたことは、地元住民の一層の関心と期待の高まりという点で大きな力を発揮していただいたと喜んでいます。知事もお感じになったと思いますが、地元の自発的な大勢の皆さんの出迎えに地元の熱意がこもっていたというふうに思っています。
 湯浅町は、この重要伝統的建造物群への選定を起爆剤としながら、熊野古道が通る中心市街地の活性化や町並みを生かした誇りある町づくり、暮らしやすい町づくりにと取り組んでいます。歴史的な町並みを大切にしながら、町の耐震性や防火性をどう高めていくのか、快適な住環境をどうつくっていくのかがこれからの課題となってきます。また、お隣、広川町の稲むらの火の堤防とあわせて、観光などの面でも魅力ある地域資源として大きな可能性を期待しているところであります。
 知事が視察においでになって触れ合っていただいた町並み、地元住民、伝統産業、お店屋さんなど含め、湯浅町のこの歴史的な町並みの感想を伺うとともに、県下初の選定を目指す町並み保存や整備・活用への県の支援について、木村知事の御答弁をお願いいたします。
 次に、津波防災教育センター(仮称)について質問をさせていただきます。
 稲むらの火で大変注目をされていますが、浜口梧陵堤防のそばに広川町と県が共同で整備を進めてまいりました津波防災教育センターは、建物の建設はほぼ今月中に完了し、これから館内の施設の工事に入るところであり、今年度中の完成、来年度からの開設に向けて着々と準備が進んでいるところであります。
 国、県の予算的支援を得てこの広川町が津波から命を守った記念館、防災教育の拠点としてこの施設を整備することは大きな意義のあることで、県立、町立とか言わないで一緒になってつくっていこうと、こう支援していただいた知事の姿勢と関係部局のお力添えに改めてお礼を申し上げるものでございます。
 さて、この津波防災教育センターの整備費が昨年九月の補正予算で提案されましたときに、私は、質問でその概要をお尋ねするとともに、広川町との連携、役割分担について十分協議していくように指摘をさせていただきました。その後、さまざまな検討を重ねていただいていることと思いますが、町の方からは、津波防災教育センターを運営するに当たって専門的な知識を持った職員の配置をしてほしい、こういうことを初め、管理運営に県としても積極的に協力してほしいとの要望があると聞いています。
 広川町議会の六月議会でも、一般質問に立たれた議員さんが二人いて、お二人ともこの問題を取り上げられたと聞きました。神戸の人と未来防災センターでは地元のボランティアの皆さんが体験や実感を込めて展示の説明に当たっておられますけれども、こういった取り組みが展示や資料の値打ちや厚みをうんと増しているし、来館者の心にぐっと迫るものになっています。
 この津波防災教育センターが、地域住民はもとより県内外からも広く来訪者を迎えて、震災、津波から命を守る意識の向上に寄与するためにも、また地震、津波や避難体制づくりなどの研究成果や、新しい情報を取り入れた展示や催し、来館者への説明や地域の取り組みに力となるスタッフ、地元ボランティアの育成、こういった人づくりが重要になってくると思います。
 まさに建物は完成を迎えつつあるわけですが、来館者がまた今度は家族を連れてもう一回来ようと、そういうふうになるような、そんな魅力的な施設となるかどうかはひとえに今後の運営次第、ここにかかっているというふうに考えています。
 施設が完成してしまえば県は手を引いてあとは地元自治体にお任せということにならないよう、県と町がそれぞれの立場やネットワーク、地域性や専門性を生かした、そういう役割分担について十分協議をしながら進めていただきたいと願うものですが、木村知事の御答弁をお願いいたします。
 三点目の津波対策防波堤の質問に移らせていただきます。
 現在、湯浅広湾では津波対策防波堤の建設が進められており、だんだんとその堤防が姿をあらわし始め、十年計画の折り返し点を迎えています。地元からは、できるだけ早く、一年でも早い完成をという願いが出されています。また、この湯浅広湾の北隣である栖原湾では、堤防の完成により津波のエネルギーがお隣の湾にどう影響するのか、栖原湾の対策をどうするのかと、こういうことも議論をされてまいりました。
 そんな中、今回、関西電力御坊発電所計画で使用予定であったケーソンを活用して、栖原湾沖に防波堤が設置されることとなったと聞いています。この沖防波堤の事業概要と津波対策としての効果はどうか、こういう点について、まずお尋ねをいたします。
 次に、湯浅広湾の津波防波堤そのものについてお尋ねします。
 湯浅広湾は歴史的にも津波被害の甚大であったところであり、そのV字型の湾の地形によって沿岸部に来れば来るほど津波が高さを増していく、そういう地域であり、過去の大津波では、海抜九メートルほどある広八幡神社、この神社の石段三段目まで津波が押し寄せたという記録があるほどです。この津波を沿岸部、水際で防ごうと思えば巨大な構造物が必要となり、コスト的にも、また海岸線を生かした町づくりという点でもマイナスが大き過ぎるわけです。
 そこで、湾の入り口付近で防波堤をつくって津波の高さが低いうちに津波の力を弱めることができればと事業化され、国直轄でなく県が主体となって建設する津波防波堤は全国初であり、その効果が期待をされてまいりました。
 しかし、その反面、湾の入り口をほぼふさいでしまう、そういう形で人工の構造物ができるわけですから、湾内の水質や自然環境に対する影響、また将来的には湾を埋めてしまうことにつながりはしないか、そういう不安の声など、住民からはさまざまな意見も出されたという経過があります。
 そんな中、今回質問させていただくきっかけになったのは住民からの声でした。堤防の建設が進み、湾内にその姿をあらわすにつれて、住民の皆さんからこんなふうに聞かれます。「ええ堤防できてきたのう。しかし、低いもんやけど、あの高さでもう終わりかえ」とか、「津波というのはあのぐらいの高さで来るんかいな」、そういう素朴な疑問なんですね。そうじゃないんですよね。私は、はっとさせられました。住民にもっと正確な情報を知らせる必要があると思ったんです。
 今回、私が問題提起をしたいのは、この堤防が昭和の南海地震を、その震度や津波の高さを想定して設計された構造物だということなんです。今日、地震被害想定や浸水マップ、避難対策などは、歴史的にも小規模であった昭和南海地震ではなくて、いずれも東海・東南海・南海地震が、この三つが同時発生したときを想定してこの対策を立てています。こういう点からすれば、この津波防波堤が三地震同時発生のときにどうなのかというのを客観的に検証する必要があると思うんです。
 地震が発生したときに防波堤は構造的に大丈夫なのかどうか、液状化でがたがたになっていないか、また、設計を大きく超える津波が押し寄せて、堤防をどんどん乗り越えて湾内に押し寄せてくるわけですから、その場合はどのぐらいの被害軽減効果があるのかなど、確かめることが求められています。東海・東南海・南海地震同時発生では、どの程度の津波対策の効果が見込めるのでしょうか。
 また、津波を人工構造物で完全に防ぐのは、コスト的にも物理的にも不可能です。だからこそ、その限界を冷静につかみ、住民に対しても、この津波防波堤の効果も、そして限界もきちっと示すことが重要です。
 例えば、堤防や水門などの人工構造物が機能したときの浸水シミュレーションと、そして震災などによって機能しなかった場合の浸水シミュレーションも両方見てもらうことにより、意識や認識を高め、避難対策に生かしていく、そういう取り組みが必要になってくるんではないでしょうか。また、一日も早い完成を願うものですけれども、その進捗状況についても御答弁をお願いします。
 以上、防波堤関係二点については県土整備部長よりお願いをします。
 四つ目の柱である道路問題で二点、お伺いをいたします。
 まず、県道吉備金屋線有田川町垣倉地内での地すべり問題についてです。
 梅雨の雨の多い時期を迎えるに当たり、県は先月末に、この工事箇所において地すべりの兆候があることを発表し、住民にその情報を知らせ、警報機の設置を初めとする対策を講じてきました。地元住民への説明会も開いていただきました。私も横で聞かせていただきましたが、住民への説明、意見に対する対応も実に丁寧で、安心して聞いていられました。この間の関係部局の迅速で誠実な対応に、まず感謝を申し上げるものです。
 私は、地すべりという報告を受けたときに、県道工事のために山腹を削った、そののり面がずれてきたんだな、角度も急だったからやはり無理があったんだなと、そういうぐらいに思っていたんですね。配付させていただいている資料の黄色いのり面の部分です。
 ところが、詳しく報告をお聞きすると、のり面の滑りとともに隣接する斜面が滑ってきているというのを聞いてびっくりしたんですね。写真の赤い楕円の部分です。黄色い楕円ののり面に、今現在押さえ盛り土を置いて、これ以上滑らないように対応していただいていますが、四月六日、計測器を設置した以降でも、赤い楕円の部分で最大四十三ミリの地すべり兆候が確認をされています。
 先月末に開かれた地元説明会では、まず住民から出た意見はこうでした。「県はこの山がどんな山かということを工事の前にちゃんと地元に聞いてくれたんか」、こういうことなんですね。どういうことかと言いますと、この山は石切り山として過去に石の採掘を何方向からもしてたんですね。だから、その小さな山のふもとをあっちこっちからも削って、いわばカップケーキのような非常に不安定な形の山になってきていたわけです。
 今回地すべりの兆候があらわれた赤い楕円の斜面の下も、採掘現場でした。現場が何度も崩れてきて採石業者がこれ以上削ると危ないということで、また南の斜面の方に移動したその跡なんですね。二十年ほど前には、大音響とともに地割れがこの上で発生し、幅八十センチ、深さ二メートル、人間が入れるほどの大きな割れ目がずっと広がったというふうに聞いております。「県道工事でその横の隣の斜面をきつい勾配で削ってるんで不安に思っていた」、こうおっしゃるんですね。
 確かに県は、のり面工事をする前に二カ所のボーリング調査をして大丈夫かどうか調べています。しかし、そのボーリング調査は、この黄色いのり面斜面だけでやってたんですね。この隣の赤い斜面は影響なしと考えて、調査すらしていなかったんですね。しかも、その調査したはずののり面の方もずれてしまった。工事を進めた県から見れば想定外の地すべりが発生したと、こういうことかもしれませんけれども、住民から見れば恐れていたことが現実のものとなったということになるわけで、県の見通しの甘さも率直に指摘しなければなりません。
 今回の地すべり対策のために作成した図面──配付資料の下半分ですけども、この図面には、赤い矢印を書き込んでいるこの斜面、ここに上下に並んで六段ほどの過去の地すべりの痕跡と思われる段差が幾つも記されています。その最大のものは、段差二メートル、幅約五十メートルにも及びます。
 私は、地元の方と実際にこの両方の斜面に登って調査をしてきました。黄色いこのコンクリートで固められたのり面の方は、上からずれてきていて、中間に、横に走っていたU字溝、ぺちゃんこにつぶれていました。そして、問題のこの赤い方の隣の斜面ですが、下から見上げるよりもずうっと勾配が急に感じられました。また、地すべりの痕跡と見られる段差、それぞれ高さ一メートルから二メートルで、まるで段々畑のように幾つも幾つもこの痕跡が広がっていたんですね。段差に沿った樹木、これはもう倒れていました。想像をはるかに超えるこの危険な斜面の状態に、調査に行っていた我々も、「おい、そっと歩けよ。我がら体重重いんやから崩れるぞ」、こう言いながら冗談を言ってたんですが、本当にそんな気持ちになるほど危険な状態だったんですね。
 この地形を事前に把握をして地すべり痕跡の段差が記されたこの図面が工事をする前にきちんと作成をされていたら、見る人が見ればすぐに危ないとわかります。つまり、地元住民の声も聞き、周辺の地形に目も配っていれば、結果としてこういうふうなことにはならなかったと思うわけです。
 私は、地すべりに対する住民への周知、安全対策、応急対策などでこの間県が築いてきた地元住民との信頼関係を一層深めながら対策工事に取り組み、一日も早く住民も安心でき、県道バイパスを通る多くの通行者の安全を確保できるよう願うものです。
 そこで、県土整備部長にお尋ねします。
 今回の県道工事に伴うのり面と隣接斜面の地すべり問題では、関係住民や県道通行者への安全対策、斜面への応急対策に万全を期すとともに、恒久対策については綿密な調査をもとに地元住民の意見もよく聞いて対応策をとるように求めるものですが、いかがでしょうか。
 続いて二点目に、国道四百二十四号修理川バイパスの工事現場では、この間、斜面崩壊により工期がおくれているというふうに聞いています。その後の工事の進捗状況と開通に向けての見通しについても県土整備部長より御答弁を願います。
 さて、最後の柱であります人権課題現況調査についての質問に入らせていただきます。
 私は、昨年の二月議会の予算委員会質問で、この人権課題現況調査がかつての同和問題実態調査の再現やプライバシー侵害の調査になるおそれはないかという点を取り上げてまいりました。質問の中で、同和問題を含めた現況調査は非常に難しい問題だと。法期限前の平成十二年に国、県が指導して湯浅町が実施をしました同和地区実態調査、この調査では調査員が聞き取り調査で各家庭を回り、あなたの出生地はどこですかと、こういう設問をし、一、この地区、二、他の同和地区、三、同和地区外、四、わからない、こういう答えを選択させました。続いて、配偶者にも同じ設問を繰り返しました。こんなことを続けていては、いつまでも行政の側が同和地区と同和地区外に垣根をつくり続けることになる、実態調査ということでこういうことが繰り返されては困ると問題点を指摘し、その調査対象や規模、調査項目をただしました。
 県当局は、さまざまな人権課題を調査するものであり、かつての同和問題の実態調査とは違った視点、手法で行います、調査内容は検討中です、案が確定した段階で予算も含め議会に諮る予定ですと答弁をしていたところです。
 ところが、アンケート調査の原案作成はおくれにおくれて、人権施策推進審議会の開催にも支障が出る、また実施のためのこの間の予算議会の県議会となっても原案は示されないままでした。さきの二月県議会の総務委員会でも、共産党県議団の藤井県議より、人権調査の内容やスケジュールと調査項目について、また議会に相談したいと言っていたが、その予定はあるのか、こういう質問に対し、現在アンケート調査の作成中、調査を行う前には調査票を見ていただく機会もあると思うと、こういう答弁をしています。調査票の作成過程自体も非常に問題があると思います。
 県議会の中ではこういった議論が続けられてきた一方で、県知事の附属機関であり、弁護士を初め障害者、女性など各人権分野に精通する委員で構成された人権施策推進審議会、ここでは県の人権施策について話し合う中でこの人権課題現況調査の問題点が指摘をされ、去る三月二十二日に審議会として六つの理由を挙げてこの現況調査に賛同できないとの意見書、これを決議し、知事に提出をされました。これを受けて県は、六月に予定していたこの調査の実施を見合わせてきました。私は、この質問で、改めてこの人権課題現況調査の問題点を指摘し、調査の撤回と県の姿勢をただすことを求めたいと思います。
 私は、今回の人権施策審議会の意見書を県は重大に受けとめなければならないと考えています。県議会では私ども共産党県議団は、そういうことをやっちゃだめだと主張をいたしました。県は、だめだという意見もあるが、やった方がいいという意見もある、だからやるんだという理屈を立ててきました。
 しかし、今回の意見書が出された審議会は、法の終了後、さまざまな人権の問題にかかわる専門家や代表者の方々に集まっていただいて人権施策への提言や御意見をいただく方々であり、専門家の皆さんからの御意見は、まさに客観的で県民の代表的な意見だと思うんです。この審議会は歴史的な経緯からしても重要な役割があると思いますが、県としてこの審議会の位置づけをどう考えておられるのか、まず最初にお答えをいただきたいと思います。
 次に、審議会の意見書をどう受けとめ、今後の県の人権施策に生かすのかという点で、以下二点について質問をさせていただきます。
 県は、人権課題現況調査の施策概要という文書の中で、その目的を、さまざまな人権について、その今日的課題やその原因を明らかにするとともに、昭和四十四年以来の同和行政の成果を把握し、今後の有効かつ適切な人権行政のあり方を検討するために必要な基礎資料を得る、こういうふうにしています。数多くある人権課題の中で同和問題の課題を引き出すために、調査の対象を旧同和地区、そしてその周辺地区、一般の地区と三つに分けて調査分析をし、結果を出そうと計画をしてきました。
 今回、この人権施策推進審議会で採択された知事への意見書では、県の人権課題現況調査について次のように述べています。「今回の同和問題の実態調査は、かつて行われた同和対策事業対象地域を他の地域との比較において、実態調査しようとするものであることが明らかである。かつて行われた行政施策の『地区指定』は、当時としては止むを得ないものであったにしろ、多くの問題をはらむものである。かつて地域指定された対象地区が、人口の流動や、地域の変動により差別が解消しつつある今日、かつての地域指定を再認識させ、ここが地区であったと、一般の意識に呼び戻すおそれのある調査を行うことは、同和問題の解消に逆行するものと思われる。かような実態調査のあり方は、地域住民から、調査自体が人権問題であるとして指摘追及されるおそれがある」こういうふうに指摘をしているんですね。
 これまで私たちが指摘してきたとおりのことをこの意見書は書いているわけですが、この指摘にあるように、行政の側がいつまでも旧同和地区と一般地域の垣根をつくり続けることは、もうやめるべきです。その大きな転換点として指摘のあった問題点を持つ今回の人権課題現況調査はきっぱりと撤回すべきだと思いますが、いかがでしょうか、答弁をお願いいたします。
 二点目です。今回の審議会意見書では、全部で六項目にわたって調査そのものへの問題点指摘と同時に、県人権局の姿勢に対する意見が出されています。一部を原文のまま引用いたしますと、一番目にはこうあります。「県内の人権問題は数多くあり、女性、子ども、障害者、高齢者等々、多くの課題がある。今回、県人権局が実態調査の焦点として、同和問題を最重点課題として捉えていることには疑問なきをえない。女性問題等上記緊急の課題に取り組む者からすれば、県人権局の取り組む姿勢には、未だに『同和問題をはじめとする人権問題』からの脱却が認められず、失望と挫折感を禁じ得ない。のみならず、同和問題を人権局が突出した形で捉えることは、同和問題自身の解決方法としても好ましいものではない」、こういうふうにあります。また四番目には、「今回の実態調査は、民間運動団体からの実施要請に応諾させられたかの如き印象を拭えない。このことは、いまだに同和問題を含む人権問題への取り組みが、特定の民間運動団体の意図する方向に動かされている感を一般県民に抱かせるものであって、他の人権運動に取り組む運動団体や、一般市民に与えるマイナス影響があまりにも大きすぎる」、こういうふうに指摘をしているわけなんですね。
 県として、審議会のこれらの指摘を真摯に受けとめて、今後の人権施策の方向性に生かしていく必要があるんじゃないでしょうか。県当局の考え方をお示しいただきたいと思います。
 以上、人権課題現況調査にかかわる質問三点は、企画部長より御答弁をお願いいたします。
 以上をもって、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 湯浅町を中心とする歴史的町並みを生かした町づくりについての考え方ということですが、先般、私、湯浅町へ参りました。湯浅町は、そのときにも思ったんですけれども、しょうゆ、金山寺みそ、そしてミカン山があり、海があり、すばらしい昔の建物があり、熊野古道が通っている。和歌山県でこの重要伝統的建造物群保存地区に選定されるとしたら、本当にここが一番になるのが一番適当なところだろうなという感じを深くいたしました。
 私が知っている、例えば四国の愛媛県の内子とか徳島県の脇町、こういうところと比べても決して遜色のあるところではないという感じを濃くしましたので、早くこの地域が指定されて、そして世界遺産に続く──世界遺産も通っているわけですけども──続く和歌山の大きな観光の重要拠点として発展することを望んでいますし、県もいろいろな協力ということをしていこうというふうに思っているところでございます。
 次に、津波防災教育センターの運営管理についてのお話ですが、この施設は、和歌山県で初めて、県営とか町営とかいうふうなことじゃなくて一緒につくっていこうと。中は仕分けはしてありますけども、そういうところへまた国の補助金も入ってでき上がったというもので、ある意味では画期的な施設だと思っています。
 原則的にこの運営管理は、やはり地元がそこにある浜口梧陵記念館と一緒にやるのがいいとは思うんですけども、ただこれは広川町だけの地域限定の施設ということじゃなくて、日本全体から子供さんとかいろんな人に来てもらって津波のことを勉強してもらおうというふうな施設でもありますので、その運営管理に当たっては県も、どういう形がいいかわかりませんけれども、これから町とよく相談してできる限り協力をしていこうというふうに思っております。
○副議長(大沢広太郎君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 津波対策について二点、道路問題について二点、お尋ねがありました。
 まず栖原湾沖防波堤の整備につきましては、湯浅町が管理する栖原漁港の港内静穏度の向上を図るため、本年度より二カ年で、湯浅町が漁港事業の一環として約七十メーターを整備する計画となっております。
 なお、御坊第二火力発電所埋立工事で使用予定であったケーソンについては、その一部を関西電力より無償で譲り受け、県が行っている新宮港と当栖原漁港の防波堤工事に活用していくこととし、これにより整備コストを低減できると考えております。
 また、この防波堤は当漁港の入り口に整備することから、ある程度、津波高さの低減が期待できるものと聞いております。
 次に、湯浅広港で整備を進めております津波防波堤は、御指摘のとおり平成十年に着工したもので、昭和南海地震規模の津波を想定して設計がされております。
 その後、平成十四年に国の中央防災会議で検討された東海・東南海・南海地震が同時発生した場合については、平成十七年に公表された施設のない最悪のケースの津波浸水予測によると、湯浅町、広川町のかなりの範囲にわたって一メーター以上の浸水の発生が想定されています。
 事業中の津波防波堤が完成し、また既設の堤防等の耐震対策が完了した場合、浸水面積で約三割程度の低減効果があると考えておりますが、後背地への浸水を完全に防ぐことはできません。これらの結果については、防災部局と調整しながら、県民に的確に情報提供を行い、避難対策や住民の意識向上に生かしていきたいと考えております。
 また、津波防波堤工事の進捗ですが、平成十八年度末で湯浅町側四百五十メーターのうち二百五メーター、広川町側四百メーターのうち二百三十二メーターが概成し、率にして六五%の進捗となる予定でございます。引き続き、平成二十二年度の完成を目途に事業推進を図ってまいります。
 次に、道路問題についてお答えをいたします。
 県道吉備金屋の垣倉地区における地すべりについては、本年一月に兆候を確認し、以来、応急対策を実施してまいりました。梅雨時期を迎えたこともあり、五月には警報装置を設置するとともに、関係住民の皆様には去る六月七日に地元説明会を開催し、現状と対策について説明させていただいたところであります。現在は排水ボーリングと防護さく設置の工事を行っており、七月初旬にはこれらの応急対策を終えたいと考えております。
 また、あわせて詳細な調査を行っており、この結果に基づき、恒久対策を検討していく予定であります。その際には、地元住民の皆様に事前に説明をさせていただき、意見もお聞きしたいと考えております。
 次に、国道四百二十四号修理川地区において平成十七年三月に発生した斜面崩壊箇所につきましては、現地調査、原因究明、対策工法について学識経験者の意見もいただき、検討を進め、平成十七年九月、緩傾斜のり面構築による復旧工法を決定いたしました。本年四月から復旧工事を進めており、平成十八年度において追加工事を発注する予定で、年度末完成に向けて努力してまいりたいと考えております。
 なお、平成十九年度中には有田川町修理川の二・一キロの区間について供用を予定しております。
 以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 人権課題現況調査についての三点の御質問でございます。
 まず、和歌山県人権施策推進審議会につきましては、和歌山県人権尊重の社会づくり条例におきまして定められている諮問機関でございまして、人権施策基本方針に関する事項、そういったものの審議をいただくほか、さまざまな御提言をいただくこととなっております。委員の方々は各分野の専門家や有識者でありまして、本県が人権施策を進めていく上で極めて重要な役割を担っていただいている機関であるというふうに考えております。
 また、今回のアンケート調査につきましては、調査に当たって旧同和対策事業対象地域を区分することが新たな差別を誘発することも考えられることから、統計法上の規制を含め、個人情報の秘密保持には万全を期すると、そういうふうなこととしておりました。しかしながら、和歌山県人権施策推進審議会におきまして、県が考えておりました調査手法により調査を実施することは県民から調査自体が人権問題と指摘されるおそれがあるというふうな意見が採択されたところでございます。県では、この意見を重く受けとめまして調査手法の見直しを決めたところでございます。
 なお、実態把握につきましても必要であると考えております。その手法等について再検討を行い、必要な調査を実施してまいります。
 同和問題につきましては、現在、平成十六年に策定しました和歌山県人権施策基本方針において人権分野の一つとして位置づけ、取り組んでいるところでございます。今回の調査につきましては、和歌山県人権尊重の社会づくり条例における県の責務として、また平成十五年に和歌山県人権施策推進審議会の方からも必要にして適切な調査を実施すべきというふうな意見もちょうだいしておりまして、人権に関する実態把握のための調査を行うこととしたものでございます。
 以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 答弁をいただきました。
 重要伝統的建造物群の指定や、また津波防災教育センターについては、県としても協力してやっていきたいというふうな知事の答弁もいただきました。ぜひ、これからが大事なところというところでありますので、さらなる支援、お願いをしておきたいというふうに思っております。
 それから、人権課題現況調査の問題で、企画部長に二点、再質問をさせていただきたいと思います。
 人権施策推進審議会の位置づけについては、おっしゃるとおり、重要な役割を担っていただいているというふうに思います。その次の審議会からの意見書をどう受けとめるかという質問に対し、人権調査についてはこの意見を重く受けとめ調査手法の見直しを決めたと、そういうふうに答弁をされました。「見直し」という言葉は大変幅の広い言葉でして、根本的な見直しもあれば、お化粧直しの見直しで済ませることも見直しです。
 そこで、一点目の再質問としてお聞きしますが、今回県が準備してきた旧同和地区と一般地区を分けてする調査というのは、これは取りやめる、撤回するということでよろしいでしょうか。また、今回の調査という問題だけにとどまらず、旧同和地区と一般地区を分けて扱う、旧同和地区を再認識させる、そういうような施策はやめておこうと考えているということでよろしいでしょうか。再度御答弁をお願いしたいと思います。
 次に、意見書の中で、人権局の取り組みの姿勢に対する御意見もいただいていました。これに対する受けとめ方を問うた質問に対し、部長の答弁は、人権分野の一つとして取り組んでいると。つまり、同和問題だけが突出しているつもりはないということだったですね。また、条例や審議会からの意見に基づいて事業をしているんですということで、特定の運動団体に左右されているつもりはないと、そういう、どちらもはっきりした答弁であったかというふうに思うんです。
 県がその御指摘の点は心配御無用ですというふうに胸を張るのは悪いことじゃないし、そうあっていただかなければならないことだと私は思っています。しかし、今回の審議会の意見書というのは、いつもそうやって胸を張る県当局に対して、今回あえて今度の問題をとらえて、いや現実はそうじゃない、気をつけなさいと率直な御意見をいただいていると、真摯に受けとめるべきだと僕は思うんですね。そんなとらえ方をしている、誤解をされている一部の県民がいるだろうが、県はそんなつもりはないと、そんなレベルの話ではなくて、審議会としての名前で採択をされた意見書なんです。ここが大事だと私はこの質問で思うんですね。
 審議会でも慎重に審議がされてまいりました。この意見書を採択するときに反対意見を述べられた委員さんはお一人だけだったと言います。最終的に賛否をとったらしいですが、そのときも、出席十二人中十人の委員さんが審議会の名で知事に意見書を提出することに賛成されました。まさに人権の専門家、有識者のほぼ全員、大多数の声として、この意見書を軽く扱ってもらっては困ると私は思うんですね。
 ここで、私からももう一点あえて指摘をさせていただきますと、審議会の議事録、これはホームページでも公開をされていますけれども、こういった中を見せていただくと、ただ一人だけ今回の人権調査は意味のあることだというふうに主張をされているんですね。「三層に分けるという分け方は賛成なんです。多分、それでかなり課題が明らかになると思います」、「この調査に賛成です」というふうに発言をされています。社団法人和歌山人権研究所の理事長をされていらっしゃる委員さんだと思います。
 そして、きょうここにあるのは今回の調査の作成を委託した金額の載っている見積書なんですが、今回の調査項目案の作成は、結局この社団法人和歌山人権研究所が約二百五万円で仕事を受けているわけなんですね。私は大学に委託をしてつくっているというふうに報告を受けていましたが、当の人権研究所が窓口です。そして、こういう問題のある調査を作成し、代金二百五万円は既に支払いをされたというふうに聞いています。調査が必要だと主張するところと、そして調査の策定の仕事を二百五万円で受けるところが一緒だというのでは、これでは県の姿勢が問われてしかるべきだと私は思います。
 きょうは、私が今指摘した問題については詳しく見解を求めるものではありません。審議会からいただいた意見書をどう受けとめますかというのがきょうの私の質問の趣旨ですから、二つ目の再質問を整理しますと、県行政の姿勢についてのこの意見書の指摘に対して、県はちゃんとやっていますという見解だけでいいのかと。今回の意見書を真摯に受けとめ、今後の人権局の施策に生かしていくという姿勢が必要ではないでしょうか。
 以上、答弁をお願いいたします。
○副議長(大沢広太郎君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 再質問に対してお答えいたします。
 まず、調査の手法についての見直しでございますが、全面的な見直しか、あるいは少しだけの見直しかというふうな趣旨だったかというふうに思っておりますが、議員御指摘のように、三層についてそういうふうなことをするのは、審議会の意見にもございましたように、新たな人権侵害を起こすおそれがあるというふうなところを重く受けとめまして、これについては見直しをやっていこうというふうなことでございます。
 ただ、そういうふうな、今調査の見直しにつきましては検討中でございますが、あくまで人権侵害にならないような、そういうふうな方法により実施をしてまいりたいというふうに考えております。
 もう一点、審議会自身のことについてでございますが、先ほども申し上げましたように、審議会といいますのは、和歌山県の人権施策についての大きな提言をちょうだいするところでございます。ですから、その審議会の意見というものを十分に重く受けとめるということは当然のことでございますけれども、ただ、先ほどありましたように、私ども県の姿勢といたしましては、さまざまな県民の方々からの御意見をちょうだいする、それが運動団体だけではなくて、さまざまな、いろんなところからの御意見をちょうだいして、それを、審議会にも諮りますが、県が主体的に判断をしながら実施をしていくというのが行政の姿勢ではないかというふうに考えておりますので、その一つの運動団体ということではなくて、いろんなところから御意見をちょうだいしたものを県として主体的に受けとめていくというふうなことでございます。
 以上です。
○副議長(大沢広太郎君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 御答弁いただきました。
 人権調査そのものの答弁では、三層に分けてそういうことをするのは、今回指摘もいただいたことだし、もうしないという御答弁であったというふうに思うんですね。そういう点については、私は、今後の県人権局の施策の大きな転換点になる御意見だったんじゃないかというふうに思っているんです。
 しかし、今回の審議会からの意見書を、じゃどう受けとめるのかという点については、余りにもその部長の答弁が竹を割ったような、そんなことございませんという答弁だったから私は再質問したわけで、それに対し、いろんなところから意見をいただくけれども、県としては主体的にやっていくんだというお話でしたね。しかし、私が今回言うてるのは、審議会からの御意見だと。いろんな意見を聞きながら県が主体的にやってると言うけれども、県の姿勢というのをいま一度振り返る必要があるんじゃないかという意見を審議会からいただいたということをきっちりと受けとめなきゃいけないんじゃないかというふうに思っているわけなんですね。
 ですから、少し話が平行線になっていますから、きょうはこれぐらいにしますけども、私は、本当に今度の審議会の意見書で出された指摘というのをきっちり県が受けとめて今後の人権局の施策や県の姿勢に生かしていただきたい。このことを再度強く要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時五十二分散会

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