平成18年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(藤井健太郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十三番藤井健太郎君。
  〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 まず、格差社会の認識と県の基本姿勢についてお尋ねをいたします。
 知事は、所信で「日本は格差社会になりつつあると言われております」と、えんきょく的な言い回しをされているわけです。昨日もこの場で議論がされたところでありますが、最近になって格差社会、縦並び社会とも言われ、マスコミも特集を組むようになってきました。雇用をめぐる地域間の格差、労働条件の正規、非正規との格差、大都市と地方都市など都市間の格差や所得による社会的な格差の開きなど、さまざまな格差の広がりが社会問題として指摘をされてきております。その中で、今回は県民の中での所得間格差の開きの拡大を中心に、知事並びに県当局の見解と対応についてお尋ねをいたします。
 本来国民の所得間格差を是正する役割を持つ所得税や各種の社会保障制度が所得の再分配機能として有効に働かず、比較的所得の低い人が一層の税負担、社会保障負担を強いられ、社会的な格差がさらに拡大しているのではないかという問題であります。
 今般の国の税制改正を見てみましても、六十五歳以上の公的年金所得者の最低控除額の引き下げ、老年者控除の廃止、住民税非課税措置の廃止など、高齢者への課税強化が実施をされ、年金額は減るのに所得はふえたこととなって非課税から課税へ、それがさらに国保税、介護保険料にはね返ってくることとなります。課税ラインが引き下がり、それにより社会保障負担がふえるということは、相対的に所得の低い人の負担率がふえることとなります。さらに、社会保障構造改革によって介護、医療、障害者福祉の制度そのものの保険料や利用料負担の増が重なって、つまり二重の負担増となってきます。国の政策そのものが国民の可処分所得の格差拡大をもたらし、県民の暮らしの圧迫や社会保障、福祉の制度を受けにくいものにしてきているのではないか、そういうもとでの地方自治体のあり方が問われているのではないかと思うところです。
 県政が県民の暮らしや福祉をしっかりと守ってくれる、そういう県政であることを願って知事にお尋ねをいたします。
 国の税制や社会保障制度の改正によって、比較的所得の低い高齢者、障害者など社会的弱者と言われる人の負担がふえ、そのことが一層県民の暮らしを圧迫し、格差社会の拡大につながってきているのではないかと考えますが、知事は、格差社会と言われ出したそもそもの要因は何だと考えられているのか。昨日、答弁でさまざまな要因があるというふうに答えられていましたが、政治のあり方そのものに主たる要因があるのではないでしょうか。また、県民の所得格差の拡大や暮らしの実情、変化についてどのように認識をされているのでしょうか。
 また、知事は所信で、「社会的に厳しい状況に置かれている方々に対するセーフティーネットとしての行政の役割が重要になってくる。そのような方々に温かい心配りをする施策を進めていく」とも言われております。国民の暮らしのセーフティーネットは、第一義的には国の責任でナショナルミニマムとして整備していくのが当然のことであります。しかし、今、格差社会が広がりつつある現状のもとで、知事はこれまでにも議会答弁で「県として弱者に優しい県政に少しでも配慮していきたい」と言われてきました。
 セーフティーネットとしての行政の役割が重要と言われていますが、県政が担うべきセーフティーネットの役割については果たせているのでしょうか。県政における県民のセーフティーネットの基本的な考え方はどうなのか、新年度予算では何をセーフティーネットの対象として予算にどのように反映されているのか、お尋ねいたします。
 次に、社会保障、福祉施策についてであります。
 最初に、国民健康保険をめぐる問題です。
 国民健康保険は、御承知のように、自営業者、高齢者、パート労働など被用者以外の人が加入する医療保険で、収入の不安定な人、非課税世帯など所得の低い人の加入が多く、その上、保険料賦課のあり方が世帯当たり、一人当たりという応益割と収入、資産に応じた所得割の合計となっていて、住民税などと違いまして扶養家族がふえるほど保険料負担がかさむ、所得割額も所得の一割を超えるなど、被用者保険に比べると保険料負担が割高になっているという特徴があります。一定の所得以下の人には保険料の減額制度が設けられていますが、前年度所得に賦課されるため、病気、倒産、失業など、年度途中での収入減による現年度対応が不十分な点もあって、保険料滞納へとつながる人もあります。
 保険料滞納世帯に対しては、保険者から被保険者証のかわりに国保の資格を証明する資格証明書が発行されています。資格証明書で医療機関を受診すると医療費の十割の支払いを求められ、一たん医療費の十割を支払って後日保険料の一部を支払うと、保険から七割分が返還されることになっています。しかし、ほとんどの保険者は──市町村ですが──滞納保険料の未払い分の補てんに充てるとしています。資格証明書を持つ人が救急車で搬送され即日入院となっても、後日保険料の支払いができなければ保険給付が受けられません。滞納保険料の一部を払って七割償還を受けても未払い保険料の補てんに充てられ、医療機関での三割窓口負担金の支払いが困難となった人もあります。
 医療保険証はまさに県民の命綱であり、国民皆保険制度を維持する上でも、支払い能力に応じた保険料設定と経済的理由などによる保険料、自己負担金の減額制度が有効に機能することが県民の命と健康のセーフティーネットとして重要なことだと思うところです。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 国民健康保険料の滞納による資格証明書、短期被保険者証の発行はどのような基準でなされているのか。また、最近の推移はどのようになってきているのでしょうか。
 四月に設立されます和歌山地方税回収機構、ここでは国保税や国保料の滞納処分も取り扱うことになっているようですが、県民の生存権が損なわれるようなことにはならないのでしょうか。
 医療機関窓口での自己負担金についても、国保法では減額できる規定がありますが、県内の自治体では適用されているのでしょうか。されていないとしたら、適用していくようにするべきではないのでしょうか。どのような考え方を持っておられるのか。
 二番目に、改正介護保険法による施設入所者への影響についてお尋ねいたします。
 昨年十月より介護保険三施設、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設での入所者の居住費と食費が全額自己負担となり、年金収入で年間八十万円を超えると月々の利用料が標準で一万五千円から三万円の負担増、ユニット型に入所している人はそれ以上の負担がふえています。
 九月議会で福祉保健部長は、入所者の居住費、食費の負担増については低所得者への軽減措置がとられており、適正な実施について支援を行うと答弁されていました。そこで、福祉保健部長に、軽減措置がうまく機能しているのか、どのような支援を行ってきたのか、お尋ねいたします。
 県内での施設や施設入所者への影響をどのように把握をされているのでしょうか。
 世帯全員非課税の場合は、市町村へ申請をして負担限度額認定証の交付を受ける必要があります。市町村ではすべて把握されているはずで、申請を待たずにできるはずでもあります。該当者にはすべて交付されているのでしょうか。
 社会福祉法人と自治体が負担し合って利用料の負担軽減をする、いわゆる社会福祉法人軽減制度の適用はどのぐらいあるのか。すべての社会福祉法人で実施されているのでしょうか。
 高齢者夫婦二人暮らしで一方が個室に入った場合に、残された配偶者の年収が八十万円以下、預貯金四百五十万円以下の世帯での軽減制度、こういう制度がありますが、利用はどのぐらいあるのでしょうか。残された配偶者の年収が八十万円以下の場合というのでは生活が大変です。余りに低過ぎるのではないかと思うところですが、これでは必要があるのに個室に入ることもできなくなります。実態をどのように把握されているでしょうか。
 新年度税制改正によって、収入はふえなくても非課税から課税世帯となって税負担と利用料負担がふえた上に、さらに一段階以上は利用料負担が引き上がることになりますが、県として対応は何か考えておられるのでしょうか。
 三番目に、障害者自立支援法での利用者負担増大への対応についてです。
 先月、ある更生施設に入所している人の父親から──この人も重度障害を持たれていますが──相談がありました。子供が療育手帳B1、身体障害者手帳三級の障害があって、収入は、障害基礎年金と施設での工賃を含め、月々八万円から九万円になるそうです。現在、施設への支払いは月三万四百円、手元に五万円ほど残るわけですが、この方は、手足のけいれんなどが常時あって医者通いは欠かせず、入退院を繰り返しているそうです。通院では医療費助成の対象とならず、入院したときの経費などの負担もあって、手元には余り残らない状態だと言います。このたび施設長から、四月から法が変わることによって食費と光熱水費が全額自己負担となるので、今まで月三万四百円だったが、月六万円程度の自己負担になると言われたそうです。そうなりますと、月々二万円から三万円ほどしか手元に残らず、医療費や、ことしからこの方、介護保険料の支払いが入ってくるわけですが、やっていけるだろうかと不安に思っているということでした。親として親亡き後の行く末のことを考えてわずかばかりの貯蓄をしてやっているけども、それには手をつけたくないということも話されていました。
 自立支援法は、居宅施設での障害福祉サービスや更正医療、育成医療、精神通院医療を利用したときに、費用の原則一割を支払う仕組みとなっています。低所得者への負担軽減策として、所得が四段階に区分され、負担上限額が定められていますが、この人の場合は、住民税非課税世帯で年収八十万円以上に区分される低所得二に該当し、月二万四千六百円の負担上限額に食費、光熱水費が全額自己負担となって、月六万円程度の負担ということです。
 福祉サービスを受ける場合、低所得者の負担上限額が生活保護、住民税非課税世帯で年収八十万円以下と八十万円以上、住民税課税世帯という四つの区分しかなく、それに食費、光熱水費、国保や介護保険などの保険料負担、医療費の自己負担を考えれば、障害基礎年金を主たる収入とする入所者にとっては、安心して入所を続けられるのかどうか不安になってまいります。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 県は国に対して負担の上限額を定める所得区分段階を四段階からさらに細分化することを求めておりますが、県として実施をする考えはないのでしょうか。
 施設入所者で重度心身障害児(者)医療費助成の対象とならない軽度の人が受ける医療費の負担を現在の三割から自立支援医療の負担と同じように一割負担に軽減することなど、負担の緩和策が必要ではないでしょうか。
 四番目に、重度心身障害児(者)医療費助成制度の改定についてお尋ねをいたします。
 ことしの八月一日から、六十五歳以上で新たに重度心身障害者になった人を制度の対象から除くというものです。八月一日以前からこの制度の対象となり受給者証を持つ人は、引き続き医療費の助成が受けられるとしております。六十五歳以上で重度心身障害者の手帳を取得した人は国の老人保健医療で対応していくこととなり、医療費の一割が自己負担となってきます。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 今回の重度心身障害児(者)医療の年齢による助成の制限、これは県の姿勢として制度の後退になるのではないでしょうか。もともと心身障害児者の医療費助成制度は、重度障害を持つことにより生活基盤が不安定となることから、医療費の自己負担分を助成して障害者福祉の向上に資するものとして実施をされてまいりました。六十五歳以上だから生活基盤が安定しているとは限りません。
 国民生活基礎調査で見ても、高齢者世帯の四〇%は所得二百万円まで、一四%が所得百万円までの世帯となっていて、全世帯の所得区分での分布と比較すれば、高齢者は低い所得層での分布割合が多くなっています。その上に、病気や事故で重度障害を負った場合、生活に不安を感じるのは同じことだと思うわけですが、高齢になって障害を持った人の生活実態を勘案した上での改定なのか、疑問が残るところであります。
 昨年の九月議会で福祉保健部長は、社会保障負担については生活実態を見きわめたきめ細かな配慮が必要であると認識しているという答弁をされておりましたが、今回の改定についても、六十五歳以上で重度障害を持つこととなる高齢者の生活実態を見きわめた上での提案なのかどうか、お尋ねいたします。
 次に、経済、雇用問題についてお尋ねをいたします。
 全国的には国内総生産、鉱工業生産指数とも伸びを示し、雇用指数でもある有効求人倍率は、地域間格差はあるものの伸びが見られる一方で、実質賃金指数や常用雇用指数は低迷状況にあります。
 知事は、本県での経済活性化への取り組みとして地域経済への波及効果を見据えた産業振興を掲げられ、産業イノベーション構想の推進、中小企業制度融資の充実、企業誘致のための破格とも言える奨励制度、若年者雇用の推進策としてジョブカフェの充実などの施策を打ち出されています。
 最近の工業統計、商業統計を見てみますと、本県の事業所数、従業者数とも減少を続け、景気動向調査では、原油や原材料価格の高騰が販売価格に転嫁できず経営を圧迫していることや資金調達も悪化の傾向にあると報告されております。事業所企業統計の雇用をめぐる環境では、民営事業所での雇用者総数は減少する一方で、雇用者に占める非正社員、臨時雇用者の割合はふえ、雇用者総数の三九%にもなっています。有効求人倍率が改善されたとはいえ、近畿では最低の状況にあり、県民意識調査でも雇用の確保を望む声がトップに来ており、雇用環境の改善は県政の重要課題でもあります。
 そこで、商工労働部長にお尋ねをいたします。
 県経済の現状と課題をどのようにとらえ、目標をどのように設定して新年度予算に反映させているのでしょうか。とりわけ、本県において雇用の多くの部分を担っているのが、事業所数で八割を占める従業員十九人までの小規模零細事業所です。そういう意味でも中小の零細企業の経営が存続できるような施策を重視する必要があると思われますが、新年度、これだという重点施策としてどのようなものがあるのでしょうか。
 また、和歌山の地域産業を支えてきた地場産業と言われる木材・木工、建具、家具、繊維、皮革などの製造業の分野、また中心市街地商店街や駅前商店街を核とした町づくりを含めての商業振興策の重点施策にはどのようなものがあるのでしょうか。
 二番目に、住友金属和歌山製鉄所の雇用、地域経済への貢献についてお尋ねいたします。
 ことしの社長年頭あいさつで、「十七度連結決算で経常利益二千五百億円、当期純利益で千九百億円という過去最高の収益が見通せることになった。九千名を超える出向先への移籍、構造改革とコストダウンを着実に実行してきた成果」と言われています。和歌山でも多くの出向労働者が移籍し、下請単価の大幅カットなどに見られるように、県民の雇用や地域経済にも大きな影響をもたらしてきました。
 昨年六月に住友金属和歌山製鉄所は、外需の拡大や高収益が見込まれるもとで上工程更新プランを発表しました。高炉の更新と環境対策を備えた新コークス炉の建設を行い、生産量を三百八十万トンから四百三十万トンへと増産し、新鋭中規模製鉄所として将来にわたる存立基盤を強化するということです。
 住友金属和歌山製鉄所の動向が和歌山の地域経済や雇用、県民生活に及ぼす影響は極めて大きく、自治体行政としても、県民の暮らしと雇用を守る立場から、これまでの経緯を踏まえると受け身であってはならないと思います。
 そこで、商工労働部長に、今回の住友金属和歌山製鉄所の事業計画をどのように受けとめ、県民の雇用確保と下請単価改善や地域経済への貢献をどのように働きかけていくのか、お尋ねいたします。
 三番目に、県内基幹産業でのリストラ問題と地域経済への影響についてです。
 ことしの一月二十四日、日本ハムが生産拠点再編の方針を決定し、和歌山工場の六月末での閉鎖を発表しました。工場を訪れて経緯や今後の方針などを工場長に伺ってまいりましたが、工場跡地にグループ内の食品工場を建設し、五、六十名の希望者受け入れは想定しているとのことでした。和歌山工場の閉鎖によって、二百六十人を超す従業員や原材料の納入業者、専属の保冷車での運送を一〇〇%近く担っている業者など関係業者約二十社と、そこで働く従業員の仕事がなくなることになります。また二月八日には、ノーリツ鋼機が「高コスト体制からの脱却を目指して」と称する構造改革に取り組むことを発表しました。本社で、ことし三月二十日までを募集期間として四百人の希望退職者を募るとしています。
 そこで、商工労働部長にお尋ねをいたします。
 日本ハム和歌山工場の閉鎖やノーリツ鋼機のリストラ計画による雇用と県経済への影響をどのように考えているのか。
 県として、雇用の確保や関係業者の経営破綻を招かないようにどう対応していくのか。当該事業所への要請も含めて、県として積極的な対応を進めてもらいたいところであります。
 最後に、地震防災対策についてお尋ねをいたします。
 昨年三月の中央防災会議で、大規模地震に関する人的被害、経済被害の軽減について、達成時期を含め具体的目標をまとめた地震防災戦略が策定され、それに基づく地域目標の策定を地方公共団体にも要請するとしました。
 昨年の九月二十七日には、中央防災会議決定として建築物の耐震化緊急対策方針が出され、地方公共団体が目標や方針を定め、計画的に耐震改修を促進する仕組みの構築など、耐震化に取り組む環境の整備や制度の見直しへの取り組みが言われております。その中で、住宅の耐震化促進として、住宅の耐震化率を今後十年間で九〇%まで引き上げるとし、住宅の耐震化に関する意識啓発を徹底して実施するとしています。住宅の耐震化は、阪神・淡路大震災での犠牲者の約八割が建物の倒壊によるものということからも最大の教訓であります。県内では約十五万戸が昭和五十六年五月以前の建築で、震度六弱の揺れに対して倒壊、大破するおそれがあると言われています。
 そこで、県土整備部長にお尋ねをいたします。
 住宅の耐震化を急ぐ必要があるわけですが、中央防災会議の地震防災戦略で言う住宅の耐震化について、どういう見解を持って今後臨んでいこうとされているのか。
 二番目に、きのくに木造住宅耐震化促進事業について。
 平成十六年度から二十年度までの五年間に耐震改修の目標を三千戸と定め、耐震診断の結果、総合評点が〇・七未満であり、耐震改修工事後の評点が一・〇以上となる住宅を対象とし、改修費用の県、市町村それぞれ三分の一ずつ合計六十万円を限度に補助を行うという事業が現在実施をされております。新年度は三年目となり、計画期間五年目の折り返し点です。これまでの成果とその評価、新年度予算を含め、計画達成に向けてどのように臨むのか。
 三番目に、耐震改修制度の多様化についてであります。
 住宅の耐震改修や倒壊防止を進めるには、県民の皆さんの耐震化への意識を高めていくことが重要な課題でもあります。より積極的に耐震改修を進めるためにも、より利用しやすい多様な制度であることが求められているのではないでしょうか。
 そういう点で、神戸方式は一つの参考になるのではないかと思います。神戸市では、本県が実施しているきのくに木造耐震化促進事業と同じ内容の事業が実施されていますが、それに加えて、瞬時に倒壊に至らない、そういう程度の小規模の耐震工事であっても耐震診断と耐震化計画の策定、耐震改修に対する補助制度をことしに入って始めました。さらに、住宅密集地での住宅の解体・撤去する費用への補助制度を設け、その上、高齢者、障害者世帯を対象にしてではありますが、たんすや食器棚、家電製品など、家具の転倒を未然に防止するための金具による家具固定促進事業として費用の一部を補助し始めています。より実用的で利用しやすい耐震制度への多様化、このことが県民の耐震化についての意識を高めることにもつながってくると思うわけですが、県土整備部長の所見をお尋ねいたしまして私の第一問といたします。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 格差社会への認識ということでございますが、けさの新聞にも出てましたけれども、この十数年、日本の国は、能力のある者が能力を発揮して思い切りやってくる、規制はいろいろ緩和して自由にいろんなことしていくというふうなことの中で経済が復興してきたということも、一つは否めない事実だろうと思うわけですが、ただやっぱり、そういう中で努力してもなかなかその成果の出ない人、そしてまた努力をしても構造的にそういう恩恵に浴せない地域というふうなものがあるのも、これまた事実でございます。
 行政というのは、やはりそういう部分に目配りをしていくということが非常に大事だろうというふうに思っており、これは個人についてもそうですし、そしてまた地域ということについてもそうです。三位一体の改革というのを私も一生懸命、ある意味では進めてきたわけですが、これが地方へ交付税がどんどん行くというふうなことがむだだというふうなことに今何となくなりつつあるということに非常な懸念と憂いを持っているところなんで、これからそういうふうなことにならないように、日本の国が、都市ももちろんですが、地方もやはり元気よく皆が暮らしていけるということが日本の国の健全な発展にとって大事だというふうな観点から、いろいろな主張とか施策を行っていきたいと思っております。
 そして、そういう中で、県としてはとりあえずセーフティーネットとしてどういうふうなことを考えたのかということです。これは、なかなか財源的な問題もあって、いろんなことができるというわけではないわけですが、例えば、悪徳商法にお年寄りがひっかからないようないろいろな対応措置をつくったり、そしてまた小規模作業所、皆さんいろいろ頑張っているんだけども、なかなか物が売れない、やっぱりいい物をつくっていかなければならないというようなところに対して、それがステップアップするための助成であるとか、それから児童養護施設等、ちょっとしたお金があれば皆さんが物すごく暮らしやすくなるのにというふうな部分、しかしそのちょっとしたお金がないというふうなことで問題があるというふうなところにもう全額補助を県の方として、これは異例なことなんですが、やっていくということとか、そしてまた就学前の子供さんが病院へかかった場合の費用を無料化していくというふうなこと、いろいろそういうふうなことに気を配りながら施策を進めていきたいと、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 社会保障、福祉施策についての四項目の御質問にお答え申し上げます。
 まず、国民健康保険の資格証明書及び短期被保険者証の交付基準でございますけれども、資格証明書は、特別の事情がないにもかかわらず保険料を一年以上滞納した場合に、被保険者証にかえて発行するものでございます。また短期被保険者証は、納付相談や納付指導を行うため、三カ月や六カ月など有効期間の短い被保険者証を交付するものでございます。
 最近二カ年の交付状況は、本年一月末現在、国民健康保険の全加入世帯数約二十三万七千世帯のうち、資格証明書が四千七百十世帯、短期被保険者証が九千三百四十一世帯に交付されており、前年の同期に比べますと、資格証明書が三百十七世帯減少し、短期被保険者証が百九十二世帯増加をしております。
 次に、和歌山地方税回収機構で国保税の滞納処分を取り扱うことについてでございますけれども、国民健康保険税は市町村が徴収しており、同機構への移管についても市町村の判断で行われることになります。その選定に当たっては、悪質でやむを得ないケースのみが市町村から移管されるものと考えてございます。
 次に、国民健康保険一部負担金の減免でございます。
 県内の市町村ではこれまで一部負担金の減免を実施した実績はございませんが、法の規定では、災害その他の特別な理由がある被保険者については一部負担金を減免することができる旨を定めており、今後、県としましては市町村においてこれが適切に行われるよう助言をしてまいります。
 次に、改正介護保険法による施設入所者への影響についてでございます。
 平成十七年十月の介護保険施設等における居住費、食費、いわゆるホテルコストの導入を受けまして、その実態を把握するため、県独自に県内のすべての介護保険三施設及び通所介護サービス事業所に対しまして導入後の施設利用者数や料金設定に関する調査を実施し、現在、調査票の集計並びに分析作業を行っているところでございます。
 次に、世帯非課税の場合の負担限度額認定証の交付につきましては、市町村、施設事業者と連携を図りながら制度の周知徹底を図ってございまして、該当者全員に交付されたものと思っております。
 三点目の施設利用料に対する社会福祉法人軽減の適用につきましては、現在、県内で対象となる七十事業所のうちの六十事業所で実施をされております。県としましては、市町村及び施設事業者に対し社会福祉法人軽減制度の活用について引き続き要請するとともに、制度適用のための経費を十八年度当初予算において大幅に増額をしているところでございます。
 四点目の特例減額措置の適用につきましては、現在のところ県内に適用者はないと聞いております。今後とも、対象となる方について的確な把握に努めるよう市町村に助言をしてまいります。
 五点目の平成十七年度税制改正による施設利用料への影響につきましては、施設の利用料は入所者の所得によって負担の区分がなされていることから、議員御指摘のとおり、今回の税制改正によりまして、場合によっては利用者負担区分が二段階以上上がる可能性がございます。しかしながら、そういった場合でも利用者負担区分を一段階の上昇にとどめる激変緩和措置が二年間講じられます。
 いずれにいたしましても、施設利用者の方々がこの先も安心して入所いただけるよう、引き続き国、市町村、介護保険施設等との連携を図りながら、低所得者対策や社会福祉法人軽減などの適正な実施について必要な支援を行うとともに、介護サービスの質の確保、向上に努めてまいります。
 次に、障害者自立支援法での利用者の方々の負担の増大への対応についてでございます。
 国におきましては、低所得者に対して個別減免や社会福祉法人減免等、きめ細やかな負担軽減措置がなされているところであり、過大な負担にはならないものと理解しております。
 現在、市町村等に対してこれら軽減措置が利用者に適切に利用されるよう積極的に指導しているところでございまして、県独自の負担区分の細分化や医療費の緩和措置につきましては、給付と負担の均衡など総合的に判断して、難しいものと考えております。
 なお、新法による各種のサービスがこれからスタートしようとしているところでございまして、県としましては、実施主体である市町村の実施状況や利用者の利用状況を踏まえ、障害者の方々が必要なサービスを適切に安心して受けられるよう努めるとともに、制度に不都合があると思われるときは国に対して要望してまいりたいと考えてございます。
 次に、四点目の重度心身障害(児)者医療助成制度の改定についてでございます。
 今回の改正は六十五歳以上で新たに重度心身障害者になった方を除くものでありますが、本制度は、若年期から重度心身障害児者である方は生活基盤が脆弱な場合が多く、こうした方々が安心して医療が受けられるようにとの趣旨のものでございまして、六十五歳以降に新たに重度心身障害者になった方とは異なるとの観点から改正するものでございます。
 また、六十五歳以降に新たに重度障害等になった方につきましては、老人保健法により医療費の自己負担を一割とする特別措置があり、また、生活実態に配慮し、低所得者に対しましては自己負担限度額の措置が講じられているところでございます。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 経済、雇用問題についての三点の御質問に一括して答弁させていただきます。
 一点目の県経済と産業振興策についてですが、本県の経済は鉄鋼、石油、化学等の基幹産業が好調であり、全体としては緩やかな回復基調にあるものの、中小企業においては、最近の原材料の高騰による経営環境悪化など、業種、業態、規模などにより業況はまだら模様の状況となっており、さらに一部大手企業では事業の再構築などが発表されるなど、一進一退の状況であると考えてございます。
 県としましては、こうした景気回復の流れを確実なものとし、さらに将来の持続的な発展が可能となる足腰の強い産業構造を構築していくことを目指し、県内産業のイノベーションの推進のため、県のSOHO施設入居者等のアドバイザーの設置や、これまでの産学官連携に大企業、金融機関を加えた新たな共同研究グループへの支援など、県内中小企業や起業家の業績向上につながる事業を推進していくとともに、平成十八年度、十九年度の二年間に千社以上の企業訪問を実施するなど、積極的に企業誘致を進めることとしています。
 さらに、中小零細企業等への対応といたしましては、ニーズの高い元気わかやま資金や小企業応援資金の融資枠の拡大を図るとともに、引き続きわかやま産業振興財団と各種経済団体とが一体となって小規模事業者の幅広い経営支援などを推進し、すそ野の広い景気回復となるよう取り組んでまいります。
 次に、地域経済を支える重要な産業である本県の地場産業につきましては、産地の方々の意見を十分お聞きした上で、その活性化の取り組みに対して各種振興策を講じているところでございます。具体的には、国内外での競争力を高めるために最終消費者を意識した企画提案型の新商品開発への取り組みや、新たな販路開拓のための首都圏や海外での展示会の出展等の取り組みなどに対し、支援を行ってまいります。
 また、中心市街地、商店街の活性化につきましては、商店街振興組合等が市町村と一体となって実施するハード、ソフト事業に対して補助を行ってまいります。さらに、活性化への取り組みの機運の盛り上げやまちづくり三法の改正の動向を見ながら、中心市街地活性化法に基づく新たな基本計画の策定等への地域の取り組みに参画してまいりたいと考えております。
 二点目の住友金属和歌山製鉄所の雇用、地域経済への貢献についてでございますが、住友金属工業和歌山製鉄所の一千億円以上とも言われる高炉更新プランと職員採用計画が昨年六月に発表されましたが、本県の経済にとりまして住友金属工業は大きなウエートを占める非常にすそ野の広い会社であることから、最近の住友金属工業の好調は、安定的な雇用の確保や取引業者の企業体質の強化などを初め、地域経済に幅広い波及効果を及ぼすものと大きな期待を持って受けとめているところでございます。
 県としましては、住友金属工業和歌山製鉄所や協力会社との情報交換の場を設け、下請単価が改善されてきている状況などをお聞きしておりますが、今後ともこうした情報交換を行うとともに、やる気のある県内企業が住友金属工業と取引をできるような必要な支援を行っていきたいと考えています。
 最後に、三点目の県内基幹産業でのリストラ問題と地域経済への影響についてですが、最近発表されましたノーリツ鋼機と日本ハム和歌山工場の構造改革は、短期的には雇用の場が減少することとなり、残念な事態であると考えております。ノーリツ鋼機は将来に向けた構造改革であり、日本ハムは全国規模での生産拠点の再編成ではありますが、県としましては、当該企業に対し、従業員の雇用の場の確保や下請関係企業への配慮など地域経済に与える影響を軽減するよう要請するとともに、今回の変革期を乗り越え、企業体質が強化され、本県において新たな事業展開をしていただけるよう、要請や必要な協力を行ってまいりたいと考えております。
 また、従業員の円滑な雇用の確保を促進するため、ハローワーク等と連携するとともに、中小企業制度融資やわかやま産業振興財団の相談機能、下請取引あっせん支援事業などを活用し、関係業者の資金繰り支援等の経営安定化を図っていきたいと考えています。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 地震防災対策について三点お尋ねがありました。
 まず、地震防災戦略における住宅の耐震化につきましては、中央防災会議で決定された建築物の耐震化緊急対策方針で住宅の耐震化率を九〇%に引き上げることとされており、この目標値は大変厳しいものではありますが、今後見直しを行う地域防災計画と耐震改修促進法に基づく国の基本方針を踏まえ、できる限り達成できるよう促進計画を策定してまいります。
 次に、きのくに木造住宅耐震化促進事業につきましては、平成十六年度から実施しております。平成十七年度二月現在の申し込み受け付け状況は、耐震診断一千八百五十四戸、耐震改修六十七戸となっております。平成十六年度、十七年度の耐震診断を実施した結果、総合評点の低い住宅の耐震改修が進まない現状を踏まえ、その要因の把握のため意識調査を実施しているところであり、県民に耐震化促進の重要性を認識していただけるよう、さらに相談窓口や情報提供の充実を進め、事業促進に努めてまいります。
 また、本県においては高齢化が進んでいることや、古い木造住宅が多く改修に多額の費用を要するなど改修上の課題があり、地域の実情に合った耐震化等を推進する観点から、先進地事例も参考にし、事業実施市町村と連携を図り、耐震改修制度の多様化について検討してまいります。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 知事にお尋ねをしたいと思うんですが、今回の私の質問は、格差社会の拡大ということを一つのテーマにして、社会保障分野、雇用の分野、防災対策の分野ということでお尋ねをいたしました。
 さまざまなセーフティーネットの役割というのがあるだろうと思うんですね。知事がおっしゃいました、高齢者の方が被害に遭わないように防止のための手だてとか、小規模作業所が自立支援法で法人化していくための手助けとか、三位一体改革で一般財源投入できるということでの児童養護施設の対応とか、あるだろうと思うんですが、やっぱり、私、問題にしていたのは、税制改正とか社会保障負担がふえることによって所得間格差が一層拡大していくのではないかと。そのことに対して、県としてどういうセーフティーネットの役割を果たしていくのかと。
 社会的弱者の方に優しい、温かい配慮をしていかなくてはいけないということを言われておりますので、そういったことに対しても、介護なり障害なりで利用料負担がふえることによって、収入はふえないんだけども、利用料負担がふえることによって可処分所得が減ると。一層生活が苦しくなってくると。
 先ほど、福祉保健部長は、過大な負担ではないというようなお話があって、県独自の措置というのは難しいというお話がありましたが、しかし私は、そういうのも、軽減措置を県独自でつくっていくというのも一つのセーフティーネットの有効な手段ではないか、そういう選択肢もあり得るのではないかと。そのために財源をどうするのだという話はありますが、それは県の姿勢として、そういうセーフティーネットが必要であってつくっていくんだという方向で財源捻出も考えていくということも、これはできるだろうと思うんですね。
 そういう点で、知事に対して、県政が県民の暮らしを下支えしていく、格差がこれ以上広がらないように、社会保障制度の機能を有効に働かして利用料負担金等の軽減措置なども考えていくというようなことも県政のセーフティーネットの役割ではないかと思うんですが、その点についての知事の見解をお尋ねしたいと思うんです。
 あと、雇用が破壊される問題であるとか、地震に対して住宅を耐震化していく問題とか、重要な問題がたくさんあります。住宅の耐震化については、多様化については検討していくというお話でありまして、あと、日本ハム、ノーリツ鋼機等については雇用の確保、地域経済への影響を極力少なくしていくというんですか、配慮してもらいたいという要請もしていくということでありますので、それをどういうふうに検討されて、どういうふうに推移していったのかと、またの機会にお尋ねをしたいと思うんですが、知事に対して最初申し上げましたその点について答弁をお願いいたします。
○議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 答えがちょっと足らなくて申しわけなかったんですけども、社会保障制度自身は、大きく国全体の中でどういうふうにしていくか、負担の適正化の問題も含めて今考えているところだと思うんです。そして、当然のことながら、そういう中でこういうふうな格差社会が言われているというところで、その厳しい状況に置かれている人にできるだけしわ寄せがいかないようにというふうなことは、私は県としても声を大にして言っていかないといかんと思っています。
 ただ、大きな制度設計の中でその部分を和歌山県だけが特にこういうふうな形でやっていくということになると、これはもう、今言いましたように打ち出の小づちがあるわけじゃないんで、何もかもできるというわけにはやっぱりいかないというふうなことで、県の方としては今の限られた財源とかいろんなことの見合いの中で、できるだけそういうふうな厳しい状況に置かれた方が暮らしやすいような形でいろんなことを考えていくというふうなことに努めているということですので、それで御理解いただきたいと、このように思います。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 今、知事から打ち出の小づちというお話がありましたけど、確かに、限られた財源の中で、どういう政策をとって、どこにどれだけ予算を張りつけていくのかということは考えなくてはいけない問題だと思うんです。
 ただ、今の格差社会、所得間格差が開いて、社会保障制度が所得再分配の機能の役割を十分に果たしてなくて──昨日も知事はジニ係数というのを出されていましたが、〇・五ということで。これ、十年前は〇・三ちょっとぐらいだったと思うんですね。だから、要するにこの数字が大きくなれば一層不平等社会が広がってきているということになるわけですから、その分を、地方自治体でありますから、やっぱり住民の福祉や生活、これをきっちりと見て安定させ向上させていくという役割があるわけですから、そういうところへの直接的な給付──今度、乳幼児医療制度が拡大をされるということで、それは歓迎するものでありますが、そういった点も十分に目配りをして、予算配分のあり方なんかもぜひ検討していってもらいたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十五分休憩
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