平成18年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(須川倍行議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 一番須川倍行君。
  〔須川倍行君、登壇〕(拍手)
○須川倍行君 議長のお許しをいただきましたので、通告どおり一般質問を行います。
 知事が道州制検討委員会にて御活躍されている現在、都道府県の再編問題等について質問します。
 私は、道州制の導入に関しては積極的に賛成する者の一人であります。今、なぜ道州制が必要なのか。それは、一世紀以上変わらない現在の都道府県の形は、人、物、金が自由に行き交う現状に間尺が合わないからであります。東京都には近県から毎日何百万人が通勤・通学するのに、都政に声が届かない。これでは、統治の仕組みとしては不完全です。日本はこれまで、中央政府が大都市圏から地方への財源再配分を行い、世界でも珍しいほど地域格差の小さい国をつくりました。だけど、地方が、東京からお金が来ると当然のように感じて、自立を失いつつあります。それを取り戻すのが道州制であります。
 具体的な利点としては、九州のある県は香港に事務所を構え、中国全土を対象に県への観光や投資を呼びかけています。しかし、中国人はその県を知りません。魅力を感じてもらえるのは、せいぜい九州という地域であります。グローバル経済の中で地域が生き残る手段は、九州なり関西という州単位でアピールして世界からお金を取ってくることだと思います。
 人口減少が進む中、道州制は、地方分権の話だけでなく、日本の浮沈の問題なのであります。国と地方の役割分担と財源配分を見直し、市町村は福祉や教育といった対人サービス、州は産業振興や治山治水、環境管理といった広域的課題に特化する。つまり、内政は地方で完結させる。今は国から補助金が出て、国の出先機関、県、市町村がそれぞれの職員を張りつかせています。これがなくなれば物すごい行政改革になると思います。したがって、道州制がいつ政治の優先課題になってもいいように政策を練るべきだと考えます。
 私は、都道府県の枠組みのあり方としては、和歌山県は、紀伊半島は一つだという観点から奈良県、三重県と一緒であるべきことが重要であるという立場で発言いたしますが、最近、新聞等で報道された首相の諮問機関である地方制度調査会が、道州制のあり方についての答申案での幾つかの枠組みの中では、いずれもすべて三重県は本県とは異なる枠組みとなっていることに大変残念な思いをしているわけであります。このままではいけない、放っておけないという思いから、和歌山県としては、今よりもさらに県境を越えたさまざまな広域的事業を積極的に提案、実施に移していくべきだと考えます。
 ただし、知事が三重県とは一緒になるべきではないと、そういうようにお考えの場合は話は別でありますが、その点のところも考慮して答弁をいただきたいのですが。
 青森、岩手、秋田の北東北三県は、二〇一〇年から二〇一五年に道州制への移行を目指すべき構想を発表し、さらに、共通の産業廃棄物税の導入や韓国ソウルでの合同事務所の開設、共同でミニ公募債を発行しての資金調達等を行っています。こうした取り組みの積み重ねなどにより、国に対して一層の権限や財源の移譲もアピールでき、本県にとって望ましい広域行政の枠組みも見え、県民意識の醸成につながっていくのではないでしょうか。知事の御所見をお尋ねいたします。
 次に、合併後の市町についてであります。
 第一次の平成の大合併は本県においてもほぼ終結され、早くも新たに合併新法による次の第二次合併の案が答申されました。私は、市町村合併はゴールではなく、新たな町づくりのスタートであると考えています。旧来の市町村の持つ独自制度のすり合わせや合併後の中心地域と周辺部との連携強化など、これから克服すべき課題も多く山積しています。
 そこで、今や、地方分権の主体、受け皿として進めてきた市町村合併は、本格的な機能強化に向け、新たな局面を迎えていると思います。中長期的な視点に立った合併後の自治体の課題として、一つ目に地域の一体感の醸成があり、地域住民の連帯意識を高めるハード面、ソフト面の行政施策の展開が強く求められます。二つ目は、行財政の効率化であります。合併の効果として、行政のスリム化、財政面での効率化が挙げられますが、組織や人員、歳出面での見直しはある程度の期間を要するものであり、現在の地方財政をめぐる状況から見ても、合併後、数年間の行財政運営はむしろ相当厳しいのが現実ではないでしょうか。合併後の市町にとっては、この期間にいかに簡素で効率的な体制を確立するかが最大の課題であると思います。三つ目は、地域を担う人材の育成であります。合併後の新しい町づくりのためには、新しい発想とビジョンを持つ自立型の地域リーダーの育成や支援が必要不可欠であると思います。
 そこで知事にお尋ねいたしますが、合併後の市町の持つ課題をどのようにとらえていらっしゃるのか。また、分権型社会にふさわしい自治体として、また住民に最も近い自治体としてどのような町づくりを期待されているのか、御所見をお伺いします。
 次に、少子化問題についてであります。
 近年、和歌山県はもちろんのこと、我が国の出生率は低下を続け、毎年、過去最低を更新している現状であります。子供を何人持つかは個人の選択の問題だという考え方もあります。しかし、我々が現在直面している出生率の低下は、個人の選択を超えた国家的な危機と考えるべきだと思うんです。
 子供を育てることが有利になるような、またせめて不利にならないような仕組みを組み込むことや、若者の雇用環境を改善して結婚力を高める必要があると思います。また、保育サービスの充実などによる育児の社会化を進め、子育ての直接的、間接的な費用を小さくする方向で、政策資源を高齢層向けから若年層、子育て層向けに転換していくという、思い切った施策も検討していく段階に来ているやもしれません。
 したがって、現時点では少子化の流れを変えるための出生率回復の具体的な数値目標を掲げて対応すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 また、少子化の進行や労働力人口の減少に伴い日本経済の成長率が低下し、いずれ縮小に転じるのは避けられません。そこで、企業活動や財政、社会保障制度、社会資本整備など、これまでの拡大経済に対応したシステムを縮小経済に対応したシステムに早急に再構築する必要があると思います。地方自治においてもそれらを展望した施策が必要だと思いますが、知事の御見解をお尋ねいたします。
 次に、紀南の医師不足についてであります。
 本県の紀南、特に新宮医療圏域における医師不足について一つ提言しますが、これは三重県での取り組み例であります。
 医師不足に悩む三重県南部の基幹病院に若手研修医を集めるため、三重大医学部は、一月から学内の中堅医師を若手の指導に当たる特命教授、特命助教授に任命して派遣する新制度を導入しています。これは、都市部から離れた病院を十分な指導が受けられないと敬遠する若手医師の不安解消がねらいであるそうです。もう少し詳しく説明いたしますと、県立志摩、尾鷲総合、紀南の三病院を地域教育基幹病院と定め、三重大医学部に籍を置く特命教授・助教授が出向、三重大卒の研修医を現地で指導する。任期は一年で、継続は可能、給与は赴任先の病院から支給される。三重大附属病院の内田院長は、「任期終了後は大学に戻ってもらい、数年サイクルのローテーションを組みたい。本人も幅広い経験が得られ、地域医療の活性化につながる」と話しています。
 平成十六年四月から卒業後の医師が研修先を自由に選べる臨床研修制度が始まり、地方病院で研修する医師が減少、さらに、地方大学では大学病院に残る研修医が減少し、人手不足解消のため関連病院から医師を引き揚げるケースも相次ぎ、地域医療機関の医師確保は今や全国的な課題となっています。三重県は、三重大の新制度を全国的にも珍しい試みとして歓迎し、文部科学省医学教育課も「医師不足問題への対応策の一つとして注目したい」と話しています。
 和歌山県としては、今後、医師不足問題に関してどのように取り組むのか、三重大のような取り組みは検討できないのか、福祉保健部長にお尋ねいたします。
 次に、熊野川の川舟下りについてであります。
 川の参詣道として世界唯一の世界文化遺産である熊野川は、地域の財産でもあり、世界の宝であります。昨年十二月よりシーズンオフのため休止していました熊野川の川舟運航が三月一日より再スタートいたしましたが、おかげさまで既に四千人を超える予約が入っている状況で、大変人気を博している事業であります。
 佐藤新宮市長を会長とする熊野川川舟運航協議会は、新宮市や新宮市観光協会など五団体で構成されており、運営主体の新熊野体験研修協会をサポートしていますが、ことしは飛躍的な乗客の増加が見込まれることなどから、国、県、近隣町村など十八団体の協力を得て、景観形成、安全運航、地域振興の三部会から成る連絡協議会として発展的に構築する方向で近く再設立する予定であるそうです。
 県としても非常に熱心にこの事業に対しては参画、協力していただいていますが、お話をお聞きしたところ、マイカーで来た乗船客を回送するマイクロバスを貸与することと川舟を新しく一つ製造する補助金を出していただけるらしいんですが、私、この事業、ことし見たんですが、本年度の主要事業の中には何も入ってないんです。予算書の中には、川舟を一つ建造するというのは計上されているんですが、マイクロバスに関しては、どこを探しても見当たらないんですね。ですから、改めて、これが本当であるのか明確な答弁を賜りたいのと同時に、県としての今後のこの事業に対する方針を商工労働部長にお聞きいたします。
 最後に、台湾からの白浜空港チャーター便についてであります。
 このたび、二階経済産業大臣の御尽力により、南紀白浜空港と石川県の能登空港を活用した台湾からの航空機チャーター便が四月から七月まで運航される見込みであります。その内容は、四月中旬から開始し、当面七月末までの五十便程度、このうち南紀白浜空港は十数便の就航見込みだそうです。
 先般、尾崎要二議員を会長とする和歌山県議会の日華友好親善議員連盟は、台湾の台北市議会と李登輝前総統を訪問、面談し、今後の友好交流を深めてまいりましたが、そのときの話によると、和歌山ツアーの評判は大変よく、今回のチャーター便での人気が高まれば、その後も延長されることになる可能性が高いと思われます。
 新宮市には徐福さんのお墓がある徐福公園があり、近年、台湾からの観光客がふえており、今後、その流れに拍車がかかることはもちろんのこと、南紀における白浜温泉、龍神温泉、本宮温泉郷、勝浦温泉、また世界遺産・熊野のさらなる活性化につながると確信しております。
 和歌山県にとりましても、今回の機会を千載一遇のチャンスととらえ、受け入れ体制の充実を図り、何らかのイベントやPR活動を行っていかなければいけないと思いますが、知事の所見をお伺いいたします。
 以上、大変短くて恐縮でございますが、以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの須川倍行君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、都道府県の再編についての御質問でございます。
 道州制に関する議員の御意見、非常に参考になりました。
 この区域というふうなことについては、先般の地方制度調査会の答申では紀伊半島は一つという理念は余り表に出ていませんが、あれは一つの案を示したということで、必ずこれで行くというふうなことではありません。当然のことながら、紀伊半島を一つの地域として考えていくというのは、これは大事な考え方だろうと思います。
 ただ、やっぱり道州制を考えるときには、その地域地域に大きな経済的な中心が一つないし二つ以上あるというふうなことを考えると、近畿がどういうふうな形になっていくかということは、おのずから出てくる面もあります。
 ただ、この道州制とは離れて、三重県、そしてまた奈良県というものとの協力ということはもう非常に大事で、今の県境というものをある意味では取り払った形で考えていかないとそこに住んでいる住民の人にとってはプラスにならないというふうな考えがありますので、私もそういうふうな気持ちで行政を進めていきたいというふうに思っております。
 次に、合併後の市町村の考え方ということです。
 和歌山県でも五十あった市町村が三十になるということで、合併されたところは、今まで別々にやっていたところが一つになるということで、現在大変御苦労されているということは私も十分承知しております。ただ、やはりその苦労の中から新しい熱が出てきて、そしてまた地域間の連携ということがさらに高まってくるというふうなことだろうというふうに思っております。
 いろいろな問題を解決する中から、よりよいものが出てくる。そしてまた、職員の人たちも、今までの割と小さな範囲を対象にして行政を行ったり部署の移転を行ったりしていたのが、やはり大きな形で動くことによって見聞も広まり、物の考え方も変わってくるというふうなこと、こういうふうなプラスの面ということが合併ということには考えられますので、県としても、そういうふうな合併のいい面がどんどん発揮されるよういろんな形で支援をしていきたいというふうに思っております。
 次に少子化問題について、数値目標ということですが、これは僕は非常に大事なことだろうと思います。漠然といろんな政策を進めていくというふうなことでは、これは県民の人にも見えません。実際問題として少子化に対応するということは難しいわけですが、ヨーロッパの一部の国では現に小まめにいろんな政策を行ったことによって出生率が高まっているという例もあるわけで、和歌山県でも、来年度から就学前のお子さんの医療費を無料化するとか、こういうふうなこともやっていくわけですが、そのほかにもいろいろなこういうふうな対策が、どんな形で数値に結びついたかということ、また結びつかなかったかということを示していくというふうな努力が必要だというふうに思っております。
 さらに、そういうふうに子供がふえる努力ということは惜しみなく、ある程度税金をつぎ込んででもやっていかないといかんわけですが、しかしながら、日本の国がやはりこれから長期的にある程度人口が減っていくということは、これは否めない事実であって、そういうふうなときに、やはり今までの膨張型の社会というものに合わせた行財政のシステムを完全に見直さなければならないということは、僕はもう必要なことだろうというふうに思っております。
 県でも、そういうふうなことの中から、職員の数を減らしていくとか、いろいろな行財政改革を考えているわけですし、それからまた、日本も本当の意味で、ある意味では人口が減りながら生活の量よりは質を高めていくというふうな形、さらには高年齢者の方の参画というふうなことを促していったり官と民の協働というふうな中からいろんなことを進めていくようなシステムと、いろいろそれぞれの方々が自己実現できるような社会というものを人口が減っていく減少型の中で確立していくということが、和歌山県にとっても、日本にとっても必要なことだろうというふうに思っております。
 最後に、台湾からのチャーター便です。
 これは、御質問にもありましたように、二階大臣の大変なお骨折りによって相当数の数が台湾からチャーター便として来るということで、県としても大いに期待しているところでございます。
 外国からの観光客の導入といっても、やはりその中心は台湾なんかが大きな部分を占めているということは当然のことでございますので、この際、今回のチャーター便というものをきっかけにして、和歌山県への台湾からの観光客の人がもっともっとふえるような政策ということを県も協力して進めていきたいと、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 紀南地域の医師不足についてお答えを申し上げます。
 地域における医師不足を解消するためには、医師を養成する県立医科大学、医師を受け入れる医療機関及び行政の三者が連携して取り組んでいくことが必要であろうと考えております。
 県におきましては、従来の自治医大制度に加えまして、わかやまドクターバンク制度を創設し、地域医療を担う医師の確保に努めているのを初め、大学、地域の公的病院、医師会などの関係者による医療対策特別委員会において、医師確保のための方策について協議を進めているところでございます。
 また、十八年度からは、不足の著しい小児科、産婦人科、麻酔科の医師を確保するための修学資金制度の創設や、和歌山の医師募集を含む医療情報をインターネットにより一元的に発信するなど、さらなる医師確保対策に取り組んでまいります。
 議員御提言の三重大学方式による医師の派遣に取り組めないかということにつきましては、三重県では現在一名の派遣があると聞いておりますけれども、本県における医師確保に向けた対策について、今後、こうした方式を含めて医療対策特別委員会等において引き続き検討してまいります。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 熊野川川舟下りについてお答えをいたします。
 本事業につきましては、議員の御発言にもございましたが、地域住民の方々を初め、地元行政機関、関係機関が一体となって取り組んでいただいた結果、昨年は、二カ月間ではありましたが、一千人以上の乗船実績を上げることができ、地域の新たな魅力づくりにつながったと認識をしております。
 この成果を今後も継続し、シーズンを通して安全かつ安定的に運航していくため、予備船の建造及び個人や小グループでお越しになった観光客の乗り場までの回送に必要なバスの購入につきまして、所要の経費を予算計上してございます。
 さらに、この事業を核に地域の魅力を高めるため、流域の熊野川の景観整備に取り組むとともに、今後とも、新聞や旅行雑誌等、メディアを活用した誘客を積極的に行ってまいります。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(吉井和視君) 以上で、須川倍行君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時十六分休憩
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