平成17年12月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(下川俊樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十六番下川俊樹君。
  〔下川俊樹君、登壇〕(拍手)
○下川俊樹君 議長のお許しをいただきました。本日は最終日であります。皆さん大変お疲れであろうと思いますけれども、最後まで御清聴いただき、質問四点、そして御意見を一点申し上げて私の質問とさせていただきたいと思います。
 第一点の問題は、救命救急医療センターについてでございます。
 県では、現在、第三次の救急医療機関として、日高、田辺、新宮の各医療圏、合わせておおむね三十万人の人口を対象に新型救命救急センターを整備しようとしてございます。五名の専任医師及び専任スタッフを有するセンターであり、北に偏在する本県の医療実態を勘案すれば、大歓迎であります。一日も早い整備をお願い申し上げたいと思います。
 しかしであります。平成十六年度のドクターヘリの運航状況や各医療圏ごとの医療機関の整備水準を見ますと、果たしてこれで十分なのかなとの印象を私は持ってございます。
 御坊医療圏、人口七万二千九百八十五人、面積五百七十八・九六キロ平米、医師の数は百四十名、新宮医療圏、人口八万八千二十九人、面積一千百二十七・〇八キロ平米、医師の数は百七十一名。田辺には、南和歌山医療センターや社会保険紀南病院という立派な基幹病院がございます。
 問題は、この基幹病院までの時間距離であります。高速道路の整備もあり、御坊からはあっという間であります。恐らく三十分もあれば十分ではないのかと思います。一方、新宮からはどうでしょう。約二時間というのが実感であります。もし田辺に位置するというならば、近い御坊と広くて遠い新宮圏域では同じ基準では考えられないのではないかと思います。
 平成十六年度のドクターヘリの運航実績は三百二十八件。ドクターヘリの導入により全県的に多くの生命が救われたところであり、高く評価するものであります。今後は、さきの本会議において同僚尾崎要二議員が質問をされました運航時間の延長など、運航体制の充実を図っていくことが必要であると考えてございます。
 そこで、このドクターヘリの運航状況の内訳を見ますと、旧串本町を加えた新宮・東牟婁地域の搬送件数五十四件、三重県、奈良県の十件を加えますと合計六十四件になります。伊都郡の六十六件に匹敵する実績となってございます。広さゆえ、高齢者が多いゆえの救急医療に対する要求の結果ではないかと思います。救急医療圏として、二時間は遠過ぎます。せめて一時間の範囲で考えていただきたいと思います。
 発想を変えて、新宮を中心とした一時間救急医療圏域を想定いたしますと、新宮・東牟婁地域八万八千二十九人に三重県熊野市、北牟婁、南牟婁郡の六万四千五百二十七人を加え、十五万二千五百五十六人のいわゆる熊野圏エリアが設定されるわけであります。広域医療圏のセンター機能を担う、これが将来にわたる新宮市の位置づけだと私は考えてございます。
 田辺まで二時間の時間のハンデを解消し、熊野圏エリアの中核都市としての機能を備えるため、この二つの要因をもとに、私は新宮救命救急医療センターの設置を要望するところであります。新宮市立医療センターを基幹病院とする新宮救命救急医療センター設置提案に関する知事の御所見をお伺いしたいと思います。
 質問の第二点は、熊野川河口大橋の建設についてであります。
 この問題につきましてはこれまでも何度か質問もし、当局にあっても着実に調査を進めていただいておりますので、本日は重複を避けて、お願いを申し上げたいと思います。
 全国的に少子高齢化が急ピッチで進み、同時に都市への一極集中といった社会的、経済的背景にあって地方都市はますます疲弊し、このままでは、紀南地域の中心都市としての役割や位置づけを果たしてきた新宮市も、早晩深刻な事態を迎えることになるのじゃないかなと心配をしてございます。
 熊野古道や熊野三山が、皆さんのおかげで世界遺産に指定をされました。大変すばらしいことだと思います。近くの串本の海がラムサール条約の対象地域として指定をされたわけであります。いわば海の世界遺産であり、新宮市を中心とする熊野地域は、山と海の二つの世界遺産を同時に有する極めて意義深い地域となりました。
 このすばらしい自然環境をどう守り、育てていくのか。私は、そこに住む人々の暮らしを忘れてこの答えはないと思ってございます。すばらしい自然環境は、今もそこに住み暮らしている地域の人々が守り育てているから常に私たちに優しいんだろうと、そのように感じております。このことは、これまでも、そしてこれからも変わることはありません。
 こうした歴史的な役割や県土のバランス、あるいは紀伊半島南端に住まいする人々にとっても、新宮市は熊野の中心都市として健全に維持・発展していかなければなりません。もとの新宮市だけでは、人口の減少や高齢化は覆うべくもありません。こうした現実を認識し、なおかつ新宮市の都市機能を維持し、さらに高めるためには、新宮市への流入人口をふやすことであります。その対象が、東牟婁に限らず、三重県であっても同じだと思います。
 広域医療都市、広域商業都市、広域教育都市、新宮が果たす役割、新宮市の可能性──私は、キーワードは「広域」にあると考えてございます。新宮市が三重県の南部地域まで、すなわち二県を越えたいわゆる熊野圏の中心都市としての役割を果たす、このキー施設が熊野川河口大橋なのであります。
 現在、国道四十二号にかかる大橋が朝夕強烈なラッシュに見舞われること、現在の市街地は人家密集で新たな道路を建設する物理的空間がない、用地を求めるとすれば海岸通りから熊野川河口に求めざるを得ないことなども、既に当局も調査を通じて共通の認識であろうと思ってございます。
 もう一本、通勤や買い物や、そして救急に対する橋が欲しいんです。これは、三重県側の要求でもあります。幸い、国土交通省もほぼ同じ認識に至ってございます。地元も大変な盛り上がりを見せており、既に熊野川河口に橋を架ける会も結成をされ、活発に活動を始めています。一日も早い実現が待たれるところでございます。現在の調査の状況と今後の方針を県土整備部長にお伺いをしたいと思います。
 第三点は、市町村合併についてであります。
 平成の市町村合併も、ようやく一段落との感じでございます。効率のよい自治体のスケールを目指すとした合併当初の目的は満たされたのでしょうか。全国的には三千二百三十二の自治体が千八百二十一に、県下では五十市町村が三十市町村となりました。和歌山県の削減率は四〇%、削減順位は三十位ということでございます。
 個別の市町村では、それぞれ地元の事情を抱え、大変な御苦労や苦渋の選択があったことと思いますが、結果としては合併により新しい動きも起こってまいりました。私たちの身近なところでも、選挙区の組みかえや議員定数の見直しなど、余波が及んでございます。
 私なりに今回の合併の結果を総括しますと、大方の県民が「まあよかったな」と思った合併の結果であったと評価をしてございます。しかしながら、一部には、必ずしも今回の大きな合併に乗らないと申しますか、乗れない町村も見受けられました。一万人以下の町村が十一存在することが、この間の事情を物語っていると思います。
 こうした全国の動向や問題点、課題等を踏まえながら、総務省は第二段階の市町村合併を促すべく、平成十六年五月二十六日、法律第五十九号として市町村の合併の特例等に関する法律を公布いたしました。
 新法では、県知事は合併を推進する必要があると認められる市町村の組み合わせ等を内容とする市町村の合併の推進に関する構想を定める、知事は構想の対象となった市町村に対し合併協議会の設置を勧告することができる、さらに、構想対象市町村で構成する合併協議会に対し合併に関する協議の推進に関し勧告することができるとされてございます。もう一段の合併を推し進めるのだとの決意のあらわれだと理解できます。
 私は、一昨年六月の本会議で新宮・東牟婁九市町村の広域大合併を主張してまいりましたとおり、今も十万人の新市の誕生を期待する立場であります。このことは、先ごろ経済産業省が取りまとめた二〇三〇年の都市圏ごとの経済規模予測によりますと、人口規模が小さいところ、出生率が低いところほど経済活動も落ち込みが激しいという結果報告からも主張の根拠となり得るものであり、一方、規模の小さな町村にあって、既に必要なインフラ整備が終わっているとか、一定額の財政調整基金があるといった理由から、小さい規模のまま現在の町村運営は可能と主張するところもあるやに聞いてございます。
 各振興局では既にこうした町村からヒアリングを始めているとのことでありますが、今般、県が新法に基づき新たな作業をスタートさせるに当たり、どのような市町村合併について考えておられるのか、県の方針を確認するものであります。総務部長の御見解をお伺いしたいと思います。
 最後に、東南海・南海地震対策についてお伺いをいたしたいと思います。
 今年八月、米国南東部に甚大な被害を与えた大型ハリケーン「カトリーナ」──浸水した建物の屋上で援助を待つ市民の姿は、昨年のスマトラ沖地震に伴うインド洋大津波をほうふつさせるものであり、自然災害の脅威と悲惨さを改めて認識させられたところであります。
 さて、本県においてはどうでしょうか。今後三十年以内に五〇から六〇%の確率で発生が懸念される東南海・南海地震。この喫緊の課題に対し、東南海・南海地震対策特別措置法の制定を初め、これまでの知事のスピード感あふれる積極的な取り組みに深く理解をするものであります。昨年、県が実施した県民意識調査においても実に九五%もの県民が関心を持つなど、東南海・南海地震に対する県民の意識は非常に高まっているものと評価するところであります。
 しかしながら、「みずからの命はみずから守る。ぐらっと来たらすぐ高いところへ避難する」、こうしたインパクトの強い啓発は、県民の防災意識の向上に直結した反面、県民の不安感を増幅させる結果ともなってございます。
 とりわけ紀南においては、津波の第一波が地震発生後十分前後で到達することが予測されてございます。本当に避難できるんだろうかと。特に小さなお子さんや障害者、高齢者のいる家庭にとって、事態は一層深刻であります。服を着たまま寝ている人、高台に転居された人、シェルターが必要であると言われる人など、住民の不安は募るばかりであります。
 対応時間が限定されている中、こうした住民の不安解消を図りつつ効果的な対策を推進するためには、画一的な対策だけではなく、より地域の実情に即応した多様な手法が重要であると考えてございます。津波到達予定時間と避難時間等を考慮した避難場所、避難路の確保、災害時要援護者対策、堤防・護岸・防波堤などの津波防護施設の整備・改良、水門の閉鎖等、各地域の置かれた現状を踏まえたソフト、ハードが一体となった総合的な津波予防対策を強力に推進することが重要であります。
 県では、現在、災害発生時の司令塔として防災センターの整備と衛星系無線の導入等通信手段の強化に取り組まれておりますが、津波対策に関しては、こうした行政防災体制の強化とともに、地域の防災力を高めることが肝要であると考えてございます。
 高速道路は紀北から紀南へ、防災は紀南から紀北なんです。危険度の高い紀南地域から重点的に施策を推進していくことが重要であると考えております。
 津波対策は生命にかかわる問題であり、県政の最重要課題として重点的に予算を確保し、強力に施策を推し進める必要があると私は考えますが、知事の御所見をお伺いしたいと思います。
 最後に、紀の国森づくり条例について一言申し上げたいと思います。
 今回、我が自由民主党県議団が、戦後初めてと言われるように、議員提案による課税条例を提出いたしました。この議案提案に対する賛否さまざまな意見があることは、この四日間の本会議場での質疑を聞いていると明白であります。議員各位、市町村、あるいは県民の方々、それぞれの立場から本提案に対し意見が百出し、あらゆる角度から議論が活発化をすることは大いに歓迎するべきことであります。
 この厳しい県民生活の中で、新たな課税で県民に一層の負担増をもたらすとの意見もございます。しかしながら一方で、本県が有する三十六万三千ヘクタールに及ぶ広大な森林をこのまま荒れるがままに任せて放置しておいていいものかという意見もあります。森林は、整備が進めば進むほど本来の県土保全機能を高め、私たちにきれいな水や空気といった豊かな環境をもたらしてくれます。多少の税負担があっても森林を整備すべしとの声もございます。結果として山林地域の活性化や雇用の創出につながればうれしいなという声もあります。
 次代に誇れるふるさとを残してやりたいです。私は、この勇気ある提案に対し、本会議で前向きで適切な判断をしていただけると思ってございます。提案者の一人として意見を申し上げ、私の質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの下川俊樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、三次救急医療体制整備についての御質問でございます。
 この問題は、もう皆さん方も御案内のように長く、紀南地域にこの三次救急医療体制を整備したいということは、もう本当に悲願だったわけです。ただ、御案内のように非常に厳しい財政状況があるというふうな中で、ドクターヘリを飛ばしたり、いろいろな形での対応という形をしてきたわけですが、このたび新型の救命救急センターという制度ができたので、これにうまく乗ることができれば今までの懸案の一部でも解消できるのではないかというふうに考えているところです。
 ただ、御質問にもありましたように、この救急というのは時間距離が非常に大事なわけでございまして、そういうことからいえば、今想定されている場所に仮にできたとしても、例えば新宮の地域から二時間かかるということになれば、これはなかなかこれで対応できるというふうなものではないということは、もう私どもも十分理解しているところでございます。
 いずれにせよ、先ほど熊野圏構想という構想が出されましたけれども、この実態に即して、今後、関係医療機関や保健機関などを中心に検討会を早期に開催をしてこの地域の救急医療体制の整備について具体的な検討を進めていきたい、このように考えているところでございます。
 またドクターヘリについても、今、非常に有効に動いていてうれしいわけですが、さらに改善できるものがあれば改善していく努力も続けていきたいと、このように思っております。
 次に、東南海・南海地震対策でございますが、御指摘のように、いろいろなことをやってまいりました。津波の大変さというのは、この問題が提起したときよりも、スマトラ沖地震なんかが出て非常に切実なものになっておりますので、図上シミュレーション訓練の実施でありますとか、総合避難訓練の実施でありますとか、それぞれの個人に着目した避難台帳の整備でありますとか、こういうふうな和歌山独自というか、和歌山でしかまだやっていないような制度もどんどんやってきたところでございます。
 そしてまた、この津波の被害というのは特に紀南の地域で大きいものが予想されるし、しかも、避難時間というのが限られているということも、これまた事実でございます。こういうふうな状況を踏まえて、今言ったようなソフトの整備はもちろん、そしてまた啓発はもちろん行いながら、例えば避難タワーの整備でありますとか、それから避難路・避難場所の整備、そしてまた有効な本当に必要な場所での堤防の整備と、こういうふうなことを、これから厳しい財政状況の中でも人の命は一番大事ですので、そういうふうな観点から今後進めていきたいと思いますし、また、その紀南が重要であるということの意識を持って行っていきたいと、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 熊野川河口の架橋につきましては、昨年度から国土交通省、三重県と協力し、熊野川下流地域幹線道路網検討会議を設置して、国の補助を活用し、調査を実施しているところでございます。調査の現状につきましては、河口部周辺の道路現況ネットワークの問題点を抽出し、道路交通問題を解決するため必要となる新たな道路網の素案と課題の整理等について、今年度中に中間取りまとめを行う予定でございます。
 また、地元においても、熊野川河口に橋を架ける会による国土交通省への活動など、当地域における道路ネットワークの強化を求める強い要望がなされているものと認識しております。
 来年度も引き続き補助調査を要望しており、国及び三重県と連携しながら、将来交通流動や架橋位置の検討等、必要性、可能性の両面から一層調査を進め、構想の具体化に向けて努めてまいりたいと思っております。
○議長(吉井和視君) 総務部長原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 市町村合併についてのお尋ねがございました。
 旧合併特例法におきまして県内の市町村は三十団体に再編することとなりますが、なお合併に至らなかった地域や、御指摘にもありました小規模な町村も残されております。
 本年四月から新しい合併特例法が施行されまして、この法律のもと本県においても市町村合併推進審議会を設置いたしまして、市町村合併推進構想を策定すべく、今、御審議をいただいているところであります。この審議会での十分な議論を通じまして、各市町村の意向や将来見通しも勘案しながら、旧法で合併に至らなかった地域や小規模の町村が存在する地域などについて、県内の市町村の望ましい姿を示してまいります。
 今後、第一次の合併における行政面、財政面の具体的な効果があらわれてくることも踏まえまして、積極的に県も役割を果たしてまいりたいと考えており、年度内には合併推進構想をお示しし、その後の各市町村における取り組みの進展状況によっては、御指摘にもありました新法に基づく勧告権の活用も含め、積極的に対応してまいります。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(吉井和視君) 以上で、下川俊樹君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問は、これをもって終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(吉井和視君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
 次に日程第三、議案等の付託について申し上げます。
 ただいま議題となっております全案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
 次に日程第四、請願付託の件について報告いたします。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
 なお、常任委員会の会場はお手元に配付しておりますので、御了承願います。
 お諮りいたします。十二月十二日及び十三日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(吉井和視君) 御異議なしと認めます。よって、十二月十二日及び十三日は休会とすることに決定いたしました。
 次会は、十二月十四日定刻より再開いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時二十五分散会

このページの先頭へ