平成17年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(藤井健太郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十三番藤井健太郎君。
  〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行わせていただきます。
 まず、行財政運営についてお尋ねをいたします。
 地方分権推進法が平成七年に制定されて、ことしで十年になります。遅々として進まなかった地方自治体への権限と財源の移譲が、三位一体の改革という手法で、国、自治体側、それぞれの立場や考え方の違いを持ちながらではありますが、進められてまいりました。
 国は、十六、十七、十八年度の三年間で、国庫補助負担金について四兆円程度を廃止・縮減し、地方が主体となって実施する事業について、基幹税を基本に税源移譲を行い、地方交付税については財源保障機能を見直して縮小する、こういうものでありました。
 十六年度は、全国ベースでは国庫補助負担金の削減が一兆円、地方へ移譲された譲与税や交付金は六千五百五十億円で、全額補てんされず、おまけに臨時財政対策債を含む地方交付税が二兆九千億円カットされ、全国の自治体は青息吐息に追い込まれました。本県でも二百八十六億円の前年比減となりました。これは、警察費の一年分の予算が突然なくなったのと同じ事態でもありました。
 十七年度は、国と地方自治体側との合意による三位一体改革の全体像が明らかにされた上での予算編成でした。その内容には、義務教育費や国民健康保険負担金、その上に生活保護費や児童扶養手当など、国の都合によるものが入り込み、国庫補助負担金の廃止・縮減額四兆円に対して税源移譲はおおむね三兆円規模を目指すとされ、地方の固有財源でもある地方交付税もさらに縮減が進められることとなりました。
 本県では、十七年度地方交付税は大幅削減された前年度並みに見積もられ、国民健康保険や公営住宅家賃対策への補助金カット分の譲与税、交付金での全額補てんは見込まれず、三位一体絡みで五十二億円の減収となり、十七年度当初見込みで生じる百九億円の財源不足は県債管理基金からの繰り入れで補てんすることとなりました。結局、三位一体の改革は地方自治体の財源を一層窮屈にし、さらに国の地方財政対策により自治体財政の切り詰めが進められ、今後も縮小の方向が続くことは間違いがありません。
 バブル景気以降の起債に頼った経済対策で膨れ上がった財政を適正規模に戻すことは、後年度負担の軽減のためにも必要なことではあります。しかし、職員の年齢階層も無視した一律の人員削減や、本来自治体が担うべき福祉施設などを初め小規模補助金の一律カットなどは、自治体の存立意義を損ないかねない問題があると思うわけです。
 また、三位一体の改革によって自治体の裁量が広がったとはいえ、手放しで評価できない問題もあります。二次救急への対応として機能している病院群輪番制に対する国の補助がなくなり、県は診療時間が自由になったと評価していますが、補助金が一般財源化されるに伴い、救急医療機関が受け取る補助金の単価が従前より大幅に削減されるなど、住民の救急医療の受け入れ先である医療機関からは決して評価されていない、こういう問題もあります。
 三位一体改革についての評価は、県行政からの視点だけではなく、住民の視点から最終的にどのようになっていっているのか見届ける必要があると思います。来年度は、三位一体改革に二期があるとしたら、一期の仕上げの年として、また二期につなげていく年として重要な意味を持っています。
 そこで、知事並びに関係部長にお尋ねをいたします。
 今、これから新年度の予算編成作業が本格化しようとしているわけですが、三位一体改革の改革期間の最終年度となる来年度予算編成に当たっての知事の基本的な考え方をお聞かせください。三位一体改革をどうしていくのか。地方側の意見がどの程度反映されていくのか。特に地方交付税の扱いがどのようになるのか。また、新年度予算の規模、重点課題、予算編成のあり方などなど、新年度に向けての知事のお考えというのが今あるだろうと思うんですが、その構えとしてどういう気概を持って臨もうとするのかをお尋ねしたいと思います。
 二つ目に新地方行革指針について、これも知事にお尋ねをいたします。
 総務省が策定した地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針、新地方行革指針と呼ばれていますが、ことしの三月二十九日付で総務事務次官から都道府県知事並びに政令指定都市長に通知され、県内の市町村にも周知するように求めています。
 その内容は、都道府県、市町村すべての自治体に、新たな行政改革大綱の策定や従来の大綱の見直し、十七年度を起点とし、おおむね二十一年度までの事務事業の再編・整理、統合・廃止、給与・人員の削減、民間委託の推進など、国の示す九項目の課題の達成目標を数値化した集中改革プランを作成し、公表することとなっています。特に職員の適正化計画などは、退職者数、採用者数の見込みを明示して、四・六%以上の職員削減を目標とした平成二十二年四月一日における明確な数値目標を掲げることなど、きめ細かい内容となっています。もちろん、計画の策定に当たっては国のヒアリングも予定がされています。
 国が自治体に対して行政改革の推進を求める通知は、平成九年十一月以来、約七年ぶりになるのではないでしょうか。地方分権一括法が平成十二年四月に施行され、機関委任事務や通知・通達行政は基本的には廃止をされました。しかし、国の地方自治体に対する関与の仕組みは、助言、勧告、資料の提出の要求など自治事務においても強く残され、さらに国が都道府県知事に、市町村に対して助言、勧告をしたり、資料の提出をするように指示できるという、そういう新たな規定も盛り込まれています。
 私は、このこと自身が地方分権への逆流ではないかと、このように思うところなんですが、今回もこの規定に基づいて新行革指針の通知がなされました。地方分権の推進の立場に立つ知事は、このことをどのように受けとめておられるのでしょうか。また、市町村への対応はどのようにされたのでしょうか、知事にお尋ねをいたします。
 私は、自治体の行財政改革というのは、人から言われるまでもなく、最少の経費で最大の効果を上げることを日常不断に追求し、住民に奉仕するための組織と行政サービスをつくり上げていくことにあると思います。当然、その自治体ごとの改革すべき課題があって、取り組まねばならないテーマや手順も異なってくるはずです。それを全国なべて一律の課題で縛り上げるようなやり方、また県に、市町村に対してまでその役割を求めることには賛同できるものではありません。知事の所見を求めるものです。
 続いて、財政改革プログラムに関連してお尋ねをいたします。
 今や、三位一体改革と地方行財政改革は軌を一にするものとなってきました。三位一体の改革が自治体の行財政改革を促進する役割をも担っています。国の経済財政運営と構造改革に関する基本方針、骨太方針二〇〇三で、地方財政計画の歳出の見直し、地方交付税総額の抑制と財源保障機能の縮小、投資的経費の抑制などが掲げられ、これに呼応する形で多くの都道府県が、名前の違いこそあれ、財政の自主再建プランの策定に着手しております。それに加えて、十六年度の地方交付税の大幅カットが再建団体転落への警鐘を鳴らし、地方財政の危機感を一気に高めることになりました。多くの自治体がこの地方財政危機を乗り越えるために財政再建のための計画を策定し、実践に足を踏み出しています。
 本県では、平成十六年度から二十年度までの五年間を計画期間とする財政改革プログラムが行政内部で策定され、公表されております。その最大の目標は、計画期間の最終年度の赤字を再建団体転落ラインにとどめることに設定されているように、再建団体転落の回避となっています。地方自治体が自治体の機能を発揮して、住民に犠牲を強いるだけのものではなく、住民サービスの向上のための自主的な財政改革の推進を願うものです。
 そこで、財政改革プログラムについて、総務部長に二点お尋ねいたします。
 一点目は、十六年度決算と今後の見通しについてです。
 十六年度の決算が発表されております。財政改革プログラムは、十六年度当初予算をベースとして組み立てられています。十六年度決算に対してどのような評価をされているのでしょうか。
 十六年度当初九十七億円の財源不足が生じるとして、県債管理基金からの繰り入れで出発をいたしました。普通会計の十六年度決算では、実質単年度収支が二十一億円余の黒字となっています。財政調整基金の取り崩しはなく、県債管理基金は十八億円余の取り崩しで済んでいるわけです。一般会計では、県債管理基金からの取り崩しは二十二億円となっていますが、同時に起債の繰り上げ償還が二十億円近くできております。結局、一般会計の実質単年度収支、一億七千万円の赤字で済んでいるわけですが、財政改革プログラムと比較してどのように評価されるのでしょうか。
 また、十七年度の収支見通しとそれ以降の見通しをどのように持っているのでしょうか。これは総務部長から答弁をお願いいたします。
 二点目は、県民の声の反映と全体像を明らかにしてもらいたいということです。
 県民の視点に立っての行財政改革のあり方の議論が必要だということです。前の宮地総務部長は、昨年の九月議会で、財政改革プログラムを策定するに当たっては県民の意見も聞きながら実施していきたいと言われていましたが、どのように県民の意見を聞いてこられたのでしょうか。プログラムそのものに対するパブリックコメントはされていないように思います。
 県の改革プログラムでは、数値目標が掲げられているだけで、中身がよくわかりません。職員の四百三十名削減と言われていますが、これまで企業局の廃止や試験場からの事務職の引き揚げが行われてまいりました。指定管理者制度や新しい市ができること、そういったことで県の職員数削減が進むと思いますが、今後どのようにして進めるのか。また、教育委員会でも約四百名の削減が言われていますが、児童生徒数の減に対応するだけのものなのか、県立学校の統廃合を視野に入れたものなのか、県民生活とのかかわりが見えてきません。
 また、徹底した事務事業の見直しと言われていますが、県単独の住民生活に密着した福祉医療制度、また小規模作業所への補助金などがどういうことになるのか、全体像が見えないわけです。財政改革プログラムの全体像を県民にわかりやすく明らかにすることを求めるものです。
 また、県政に対する県民の声、要望、苦情など広く募集し、県民の生活意識や行政需要をしっかりと把握することが必要だと思います。同時に、県政についての広報と説明責任を十分に果たす手だても必要です。財政改革プログラムは、昨年十二月の「県民の友」に掲載されただけであります。これでは県財政と改革の方向は行政にお任せになってしまい、結局住民にとっては犠牲が強いられる、そういう姿になってしまうのではないでしょうか。
 続いて、国直轄事業の地方からの点検について。これは要望としたいと思います。
 国直轄事業を含めて予算が数億円単位の大型公共事業、これの総点検をしていただきたいということであります。ことしの予算編成要領で、大規模施設整備の抑制が掲げられました。総事業費五億円以上の事業については緊急性や効果等を検証する、また、着手済みの事業についても先送り、規模の見直し、事業費の縮減を検討する、構想中については新規着工を凍結するということでした。これは時宜を得た対応だと思います。
 前の総務部長は、二月議会で、事前協議を経ていない新規整備事業の要求はなかった、計画中の事業については規模、構造等を見直し、後年度負担にも留意して可能な限り工事費等の抑制に努めたと、県庁南別館の建設費を例にして答弁をされました。
 県負担金を伴う国の直轄事業についても、ぜひ視野に入れていただくことを要望したいと思います。
 例えば、住友金属西防波堤沖の埋立地、第二工区は発電所立地用地となっています。県のホームページによりますと、LNG(液化天然ガス)を使用燃料として合計三百七十万キロワットの出力を備えた火力発電所が平成十一年度に準備工事着手、十二年度に本体工事着手、十六年度中に一号系列百六十四・四万キロワットが稼働し、二十五年度までには二号系列二百五・六万キロワットが稼働する、このように県のホームページには記載されているわけです。
 それにあわせて、十万トンクラスのLNGタンカーが寄港できるように、国が平成十二年度から直轄事業として、総工費三百億円の予算で千メートルの南防波堤の築造工事を進めております。第三工区には県の公共岸壁があるわけですが、しかし、この南防波堤はLNGタンカーの寄港を主目的として建設がされています。しかし、肝心の発電所は、事業者の供給計画によりますと毎年のように先送りされ、今では平成二十七年度以降、十年先の運転予定となっています。
 現在、国はこの防波堤の完成年度を平成二十七年度以降とし、完成年度を明確に決めずに工事だけは進めている。県も毎年多額の負担金を計上しております。緊急性があるようには思えません。見直しを提言すべきではないでしょうか。今回、私の意見として申し上げておきたいと思います。
 次に、社会保障についてお尋ねをいたします。
 平成十六年、昨年の十二月に、内閣府広報室が「日本二十一世紀ビジョンに関する特別世論調査」の結果の概要を報じています。その中で、「豊かで快適な国民生活のために重点を置くべき分野」という設問に対して、「少子・高齢化対策」は一位、「持続可能な社会保障制度の構築と雇用の確保」が同率で二位となっています。同時期に行われた内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」では、将来の自分の日常生活への不安を感じる高齢者が六八%になっていること、また、「国民生活に関する世論調査」では、日常生活での悩みや不安を感じていると答えた人が六六%あります。その内容は、老後の生活設計が不安が五二%、自分の健康四四%、今後の収入や資産の見通し三九%という順番になっています。
 これらの結果を見ても、現在と将来の生活に対する不安や悩みを多くの国民が感じていて、子供を産み育てられる環境づくりとなる少子化対策や現在と将来の暮らしの不安を取り除いてくれる医療、介護、年金など、社会保障制度の拡充に期待を寄せていることがわかります。
 ことしの二月議会での私の社会保障に関する質問に対して、知事は、県民の中で弱い立場にある人が厳しい状況に置かれないように県として弱者に優しい県政に少しでも配慮していきたいと答弁され、福祉保健部長は、持続可能な制度となるよう再構築を進める、地域密着型で福祉サービスが必要な人にこたえる仕組みづくりが大切と答えられました。
 この夏、失業中の夫が脳卒中で倒れて救急車で病院に運ばれ、集中治療室で治療を受け、一命は取りとめたけど、幼児を含め四人の子供を抱えて生活する中で、国保料が払えていない、保険証がなく医療費が払えない、生活もどうすればいいのか途方に暮れているという相談がその人の奥さんからありました。こういうときに社会保障が有効に機能することが求められているわけです。
 倒産、失業、病気や事故による生活苦、いつ我が身に襲ってくるかわかりません。まさに弱者に優しい県政であり、また地域でも住民同士が支え合っていける、そういう町づくりの推進が本当に求められていると痛感いたします。
 そこで、知事並びに関係部長にお尋ねをいたします。
 国の方では、御承知のとおり、社会保障構造改革が着々と進められてきています。既に年金改革が実施され、改正介護保険法が来年四月から本格的実施に移されます。廃案となった障害者自立支援法もこの特別国会に再提出が予定され、来年は高齢者医療制度を中心に医療制度改革が進められようとしています。
 ここ一、二年で社会保障制度改革が集中的に行われようとしているわけですが、こういった国の動向ともかかわって、今現在住民が求めている、住民が期待する社会保障制度のあり方、知事はどのように考えておられるのでしょうか。また、和歌山県政でどういう姿の社会保障や福祉のあり方を描いているのか、お尋ねをいたします。
 二つ目に、生活実態の把握をどのようにされているのか、福祉保健部長にお尋ねをいたします。県民の生活はどのようになってきていると認識をされているのか、どのように把握されているのかということです。
 所得の減少が言われております。そういう中で、税や社会保険料などの負担は確実にふえてきています。国民年金の未加入者や年金保険料の未納がふえ、国民健康保険料も払えない世帯が増加傾向にあります。生活保護率も上昇を続けております。県民の所得間格差も開きつつあるように思いますが、このような県民生活の実態をどのように把握されているのでしょうか。
 三つ目に、税制改正による保険料負担の増大への対応についての問題です。
 十六、十七年度税制改正によって、六十五歳以上の公的年金所得者の最低控除額が百四十万円から百二十万円に切り下げられ、老年者控除五十万円も廃止、住民税では、六十五歳以上の所得百二十五万円までの非課税措置の廃止が行われました。個人住民税については来年度からの実施となります。収入はふえないのに非課税世帯から課税世帯へ税負担がふえることはもちろんですが、国民健康保険料や介護保険料にもはね返ってきます。
 和歌山市の試算では、国民健康保険料で二万一千世帯が影響を受け、中でも、法定減免から外れ、国保料が四倍近くにふえる世帯もあるということや、介護保険料でも今回の改正により本人非課税から課税となり、保険料区分が変更し、保険料が一・二五倍の負担増となる人が八千五百人見込まれることが明らかになっています。
 県はこの問題をどのように受けとめているのか。県民生活への影響をどのように考えているのでしょうか。福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 また、十七年度の税制改正に当たり、政府・与党の税制改正大綱には、個人住民税の制度改正に伴い国民健康保険料等の負担が増大する問題については、地方分権の趣旨にかんがみ、関係市町村において必要に応じ適切な措置を講ずることを期待する、このように言われています。住民負担が増大することは認め、この解決を自治体へゆだねるとしています。住民側からすれば、ぜひこの期待にこたえてもらいたいと思うわけですが、市町村任せにせず、県も一緒に考えてもらいたいと思うのです。どのような対応を考えておられるのか、これも福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 最後に、改正介護保険法の一部実施についてお尋ねをいたします。
 介護保険が発足して、ことしで五年目です。制度見直しを五年ごとに行うとなっており、持続可能な介護保険制度の構築ということで、高齢者の自立支援と尊厳の保持を基本として、予防重視型システムへの転換、施設給付の見直し、新たなサービス体系の確立、サービスの質の向上、負担のあり方、制度運営の見直し、介護サービス基盤の整備などを柱とする改正介護保険法が、基本的には来年四月施行となりますが、その中の施設給付の見直しだけことしの十月一日から前倒し実施がされます。
 その内容は、ショートステイを含む介護保険三施設──特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の居住費と食費が保険給付から外され、全額自己負担になるというものです。通所系サービスの食費についても保険給付の対象外とされます。
 十月一日実施を前にして、幾つかの施設を訪問して実情を聞かせていただきました。どこへ行っても苦慮しているとのことでした。これまで食事代は、管理栄養士がいて適時適温給食がされていれば、日額二千百二十円の算定で利用者の自己負担は七百八十円。保険からはその差額が施設に支払われていました。今回の改正で、保険からの支払いが廃止をされ、自己負担の標準額が千三百八十円と設定されています。利用者は六百円の負担増となり、施設の収入は七百四十円の減額となるんです。百床の施設なら、利用者全員では年額二千百九十万円の負担増に、施設は二千七百万円の減収となってしまいます。居住費は二人部屋以上で月一万円、ユニット型個室では月六万円が自己負担となり、その分、施設への保険からの支払いは減額となります。所得の低い人には補足的給付ということで、自己負担の上限が設けられていますが、既に居住費については利用者に負担を求めている施設もあります。
 個室では、七万円近い負担増を想定している施設もありました。居住費と食費が全額自己負担になることによって、入所者が安心して生活をそこで続けることができるのか、施設にとっても、利用者に迷惑をかけずに安定した運営を維持するにはどうすればいいのか、非常に悩んでおられました。
 入所している人の話を聞きますと、今個室に入っているが、今でも負担がしんどい、大部屋にかわりたいと施設に言っているが空き部屋がないと言われた、自分の年金だけで足りるのか心配、家族に負担を頼むのがつらい、こういう話も聞かされました。ある施設では、この値段では個室の利用者が見込めず値引きせざるを得ない、食事の質を落とさずにやっていけるか今検討していると、こういう話もありました。
 県は、十月改正の問題点をどのように把握され、対応されようとしているのか。利用者が安心して生活し続けられるためにも、実情を把握し、国への働きかけを初め、県としても必要な対応を急いで検討するべきではないでしょうか。これも福祉保健部長にお尋ねをいたしまして、私の第一問といたします。ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず新年度予算編成についての御質問ですが、地方分権という観点から、私は、この三位一体の改革は何としてもある程度和歌山県、地域ごとに痛みが伴っても達成していかなければならないものだというふうに思っております。ただ一方で、地方公共団体間に大きな財政格差があるということも、これまた事実でございますので、そういうことについては、適宜適切に地方交付税等の調整措置によって、そういうところが一気に困ることがないようにしていくということは必要だと思いますので、そういう観点から国に対しても大いに働きかけていきたいと思っております。
 そういうことの中で来年度の予算編成ということですが、これは先般、ほかにも御質問があったときにもお答えしたんですけども、当然のことながら、国、地方合わせて非常に厳しい財政状況の中で、切るべきものは切り、さらに取れる歳入は思い切り取っていくということの中で、やはりめり張りをつけて、ようやく景気も回復基調にある中で、和歌山県がおくれることのないように、成長の芽を伸ばすような形での予算編成をしていきたいなと、今漠然と考えているところでございます。
 次に新地方行革指針についての考え方ですけども、これは以前、地方行革指針というのを旧自治省が各地方公共団体につくるのを求めたことがあります。私もそのときにいたんですけども、そのときと今回の新地方行革指針を求めている総務省の立場では、地方と国の立場ということでは、もう全く状況が変わっているというふうな認識に立っております。
 私どもは、国から言われたからこういうことをやるということじゃなくて、当然こういうふうなことは自分たちでやっていく、それを国の方がある程度一定、今こういうふうな時期であるので確かめてみたいというふうな観点からやるんだろうなというふうな認識でおりますし、そしてまた、こういうことをつくることについての主体性ということは、当然のことながら地方の方にあるというふうな考え方でございます。
 ただ、こういうことを全国的にやりますと、やはり問題があることは、今、大阪市の例なんか見てもらっても、どこの県とか自治体でも同じようなことがあることは間違いありませんので、そういう中では、一斉に調査して、自分のところはどこが問題かというふうなことを改めて認識するということは非常に意義のあることですし、そういう観点で自主的な努力を行っていくということのきっかけにしていくということは、これは僕は非常に大事だと思います。
 そしてまた市町村についても、こういうことを県の方が、やりなさいとかしなさいと、そういう立場じゃなくて、当然のことながら、こういう時期に地方分権の立場から一緒に進めていこうという観点からの助言といいますか、一緒にやっていこうという観点での関与ということを考えているわけでございまして、こうしなかったらけしからんとか、ああしなかったらけしからんというような気持ちは全くないということを申し上げておきます。
 最後に、社会保障のあるべき姿についての考え方ということですが、私は、一つは持続可能性ということが非常に大事だろうと思っております。今、昔と違って、どんどん社会の状況、人員構成、所得の位置づけとかいろんなことが変わってきている。そういうことに適宜適切に対応できるような制度設計ということを考えていかなければ、今はよくても将来の人が大いに不幸になるというふうな観点から、これは果断に制度設計を考えていかなければならないと思います。
 そしてまた、そのときには当然のことながら既得権益ということを切り捨てていくということが必要になってくるわけで、これは例えば、僕自身も公務員を長くしておりましたので、そうすると、その上乗せのところがなくなるというふうなことは、そういう公務員にとっては物すごくやっぱり負担になることなんです。だけど、それも今の大きな、将来のことを考えれば必要であるということであれば、そういうことについても十分国民に理解を求めながら進めていく決断ということがこの時期、求められていると思います。
 ただ、その二つの点は非常に大事なんですが、第三点として大事なのは、本当に社会保障ということが必要な人、この人に重点的に物事が当たっていくような形にしていかなければ、これは何のためにある社会保障かわからなくなるというふうなことで、その点については、今、非常に新自由主義的な立場で、どちらかというと弱者と強者が分かれてくるような時代になってきているので、本当の弱者の人、その人たちが生存していくのに必要な社会保障ということについては今まで以上にきめ細かに対応していかなければならない。この三点で社会保障ということを考えていかなければならない、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 総務部長原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 昨年策定いたしました財政改革プログラムに関する二点のお尋ねがありました。
 まず、平成十六年度決算を受けて、十六年度の当初予算をベースに策定したプログラムに影響があるのではないかという御指摘でございます。
 十六年度決算では、職員の給与カットなどの歳出削減に取り組みました結果、黒字を確保したものの、本県の財政は厳しい状況にございます。財政改革プログラムとの関連で申し上げれば、十六年度末の財政調整基金と県債管理基金の残高は、黒字決算を確保したこともありまして、プログラムで見込んだ額を上回って三百四十七億円となっております。
 さらに、十七年度当初予算におきましても、職員定数の削減などに取り組みました結果、当初予定していた財政健全化債を発行することもなく、収支不足額はプログラムで見込んでいた額とほぼ同額の百九億円となっておりまして、現在のところ、財政改革プログラムで想定している財政の姿と大きな乖離もなく財政は推移しているものと思っております。
 十七年度以降の見通しにつきましては、本県をめぐる財政環境がすぐに好転するというふうには考えにくいわけでありまして、引き続きプログラムに沿って改革を進めてまいりたいと考えております。
 次に、財政改革プログラムに県民の声の反映をさせ、さらに全体像を示すべきではないかという御指摘でございます。
 財政改革プログラムにつきましては、御指摘にもありましたが、「県民の友」に掲載をいたしますとともに、県民の皆様に御意見を伺いながら実施しているところでありまして、また来年四月に実施いたします振興局の見直しについては、パブリックコメントも実施したところであります。
 今後とも、「県民の友」あるいはマスコミへのPRなどを通じまして情報公開や県民の声の把握に努めますとともに、内容も十分県民に説明してまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 社会保障についてのお尋ねの中で、まず生活実態の把握はどうかということでございますけれども、県民の平均所得は平成十年から平成十四年にかけては微減である一方、国の制度改正等により県民の税や社会保障の負担が増加しておりまして、国民年金や国民健康保険の保険料の未納も増加しているというふうに考えてございます。
 低所得者の割合を示します一つの指標である生活保護の保護率につきましては、平成九年を境に増加傾向に転じ、平成十七年六月には一〇・七三パーミルとなってございます。いずれにしましても、社会保障負担につきましては、生活実態を正確に見きわめたきめ細やかな配慮が必要であると認識をしております。
 次に、保険料増大への対応についてでございます。
 このたびの税制改正による国民健康保険料、介護保険料への影響についてでございますが、平成十六年度及び十七年度の税制改正により年金課税の見直しや高齢者の非課税限度額の廃止が行われ、保険料が上昇することとなる被保険者もございます。国におきましては激変緩和措置などの対策を検討しているところであり、県としましても、保険料が上昇することとなる方に対する対策を引き続き国に要望してまいりたいと思います。
 次に改正介護保険法の一部実施についてでございますが、今回の法改正によりまして、本年十月から介護保険施設等における居住費、食費について──いわゆるホテルコストでございますが──介護保険給付の対象外として介護に関する部分に給付を重点化することとなります。この見直しは在宅生活との負担の公平性の観点から行われたものでございまして、保険料の急激な上昇をできるだけ抑え、介護保険制度が持続可能でかつ将来にわたり耐えられる制度とするために行われたものと認識してございます。
 見直しに当たっては、居住費、食費の負担が低所得者の方にとって過重とならないよう、所得に応じた低額の負担限度額を設けるとともに、社会福祉法人による利用者負担の軽減制度の拡充などの負担軽減措置が講じられてございます。
 また、現在の利用者が引き続き入所できるよう、十月一日に既に従来型個室に入所されている方については、当分の間、多床室の介護報酬を適用し、利用者負担を軽減するなどの経過措置が設けられたところでございます。
 県としましても、利用者の方々がこの先も安心して入所していただけるよう、国、市町村、介護保険施設などとの連携を密にし、低所得者対策などの適正な実施について必要な支援を行うとともに、介護保険施設等に対し安定した運営が継続できるよう必要な指導を行い、介護サービスの質の確保、向上に努めてまいります。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 再質問、おおむね知事にお伺いしたいと思うんですが。
 新年度の予算編成の時期を迎えて三位一体改革がどうなるのかというのが大変懸念をされ、その中で、地方財政計画、国の概算要求を見ても、これは地方には厳しいものがあるなというふうに思っています。
 そういう中で、どのようにして和歌山県の地域の経済を元気にしていくのか、県民の暮らしを守っていくのか、そういうことが求められていると思うんですが、その中では、財政改革プログラムが国の新行革指針に基づいて見直しをされて一年間延長した計画をつくるということになっているようでありますが、私は、こういう厳しいときだからこそ、こういったプログラムそのものについても直接県民の意見を聞くといいますか、声を聞くというんですか──このプログラムそのものについてのパブリックコメントというのはされてないわけですよ。
 行政内部で努力をして経費を節減できる、そういうところは大いにやっていただいたらいいと思うんですが、ただ県民向けのいろんな事業にしわ寄せが来るという問題については、これはぜひ決定をする前に住民に相談をかけていただいて、こういうことを考えているんだがどうか、これをすることによってこうなるんだ、ただ県民に犠牲を押しつけるだけのものではないんだという、その辺のやりとりというのがやっぱりこれから必要になってくるだろうと。そうでないと、県民の県政に対する信頼というのがなかなか築きにくいということになってくるんではないかと危惧をするわけです。
 そういう意味で、知事に対して、この新行革指針に基づく見直しの過程において、決定したからこうだということにせずに、ぜひ住民にも事前に明らかにして住民の意見を反映させていく、やりとりをしながら、まさにキャッチボールをしながらつくり上げていくということが必要ではないかと思うんですが、知事としてその辺どういうふうに考えておられるのかということ。
 それから、社会保障についてです。
 これも、社会保障アクションプランの編成作業が進められております。今一番懸念するのは、知事もおっしゃいましたが、持続可能な制度ということで、今、受益と給付のあり方、それから負担の公平性ということが言われる中で、保険料とか利用料とか県民負担がふえてきておるわけですよ。それは部長からも答弁があったとおりだと思うんですね。結局、そのことによって制度そのものが崩壊をしてしまう。国民年金なんかはまさにそういう状態になってきていると思うんです。だから、受益と給付の公平とか負担の公平ということで持続性ということを追求すると、その制度そのものから阻害をされる。このこと自身が大きな社会問題になってしまうということでは、社会保障の役割というのは発揮できないと思うんですね。
 知事は、社会保障、本当に必要な人に対して何とかせなあかんというお話がありました。部長からは、負担については、所得に応じた、収入に応じたきめ細かな配慮が必要ということがありましたけど、国に要望するということに今の答弁だったらとどまっているんですよね。
 知事は、必要な人には必要な手だてが、きめ細かな対応が必要だとおっしゃいましたが、じゃ、国に要望するだけじゃなくて、県として直接その支援の手を差し伸べていくんだと、市町村に対しても、基礎的な自治体がやらなくてはいけないということになるんですが、そこに対して県としても必要な手だてを差し伸べていくという考えはないんでしょうか。
 それと、私は、社会保障問題を論じるときに、やっぱり社会保障制度の支え手を厚くしていくということが一方では大事だと思うんですね。ところが、今はもう薄くしていく方向ばっかりですよ。出生率が下がっていく。企業の中を見ても、常用雇用から非常勤へ──アルバイト、パート、派遣労働、ますます身分や収入が不安定な労働環境、雇用環境というのはつくられていっているわけで、そこのところも改善していかないと社会保障の支え手を厚くできない。これ、そういう社会システムに変えていくということも同時に私は必要だと思うんですね。そのことについて知事はどう考えておられるのか、どうしていこうとされているのか。そこのとこも大事な問題だと思いますので、以上、その三つの点、知事から御答弁をぜひいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、今度の新しい財政計画というふうなものをつくるときに県民の人の考え方を聞くのは、これは非常に大事なことなんで、今、どんなふうな仕組みでやるかはあれですが、今いろんなパブリックコメントのとり方がありますので、こういうようなことについては十分配慮していきたいというふうに思っています。
 それから、何でも国にやってくれ、国にやってくれということじゃなくて、県で当然やれることはやっていかないかんし、特に制度のすき間、谷間に落ちて、先ほどのお話にあったような、どうしようもなくなっているような人に手を差し伸べるようなことは、やっぱり基礎的な自治体、そしてまた県というふうなことがやれる分野だと思うので、そういうふうなところについては力いっぱいやっていかないといかんと思うんです。
 ただ、問題は、「入るをはかって出るを制する」という言葉があって、幾らでもお金が入ってくるんだったら、ありとあらゆることをやれば、もう一番好ましいことなんだけど、それができない中でいろいろ苦労しているというふうなことをやっぱり御勘案願いたいということを思います。
 それから一方で、確かに常用雇用がなくなって、ニートの問題であるとか、パートタイマーのいろいろな労働環境の悪化の問題とか、こういうのが社会問題になっていることは十二分に承知しております。県としても、できるだけそういうふうなことじゃなくて、若い人に技術がつくようないろんな施策というふうなことを考えていかなければならないということで現にやっているわけですけども、一方で、日本の国がそういうふうな雇用形態を変えてきたことによって、血を流すような努力によって、この十数年企業が変えてきたことによって今日本の景気がようやく回復しつつあるという事実もこれは厳然たる事実なんで、このあたりをうまく兼ね合いをとりながらやっていかなければならないと。そういう中で、自治体はやはり弱者の方になるような人に優しい目を向けるような政策ということを可能な限りやっていきたいと、こういうふうな考え方です。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 今、お金の問題もあるんで、可能な限りやっていきたいというお話でありました。
 十月一日から改正介護保険法の施設給付の問題、食費と居住費の自己負担が始まります。これは国の制度でそうなってるものです。しかし、これは都道府県や市町村によってはあらわれ方が随分違うと思うんですね。所得段階によってそれぞれ負担区分があります。新四段階以上は、これはもう自由に設定できるというふうなことにもなっておりますが、ただ年金所得のぎりぎりのライン、段階がぽっと一個上がるというとこら辺が大変な負担になるだろうと思うんですね。
 そういったところを十分に県としても見きわめて、実情がどうなっているんだろうかということを把握しながら、住民の皆さんが、入所者の皆さんが安心して入所し続けられる──また施設にとっても、経営が安定しないと大変なことになってしまうんですね。そういう点も含めて、県として必要な手だてはとっていくんだということをぜひはっきりと言ってもらいたいなと思うんですが、その点、知事はどうでしょうかね。言えなかったら要望にしておきたいと思うんですが──要望として、来年までこれやっていくわけですが、ぜひその辺の手だてをとっていけるように、また十分に配慮をしながら、市町村の状況も聞きながら、弱者がさらに弱者になってしまうということにならないようにしていただきたいという点を申し上げて、私の質問を終わります。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十分休憩
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