平成17年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(玉置公良議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時二分開議
○議長(吉井和視君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第二百四号から議案第二百三十三号まで、並びに知事専決処分報告報第十四号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十五番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。
 早速でございますけども、通告に従いまして一般質問を行います。
 今まで私は、地球の危機、その中でも一番大きな環境問題であります地球温暖化についていろんな角度から調査をし、知事の考え方をお聞きをしてきました。私としましては、環境問題として陸の問題については一通り検証し終わったことにして、次のテーマに移りたいと思います。
 それは、今回は海の中の問題を取り上げたいと思います。
 この夏、私は紀南の海を歩きながら、果たして私のふるさとである紀南の海は大丈夫なのか、食卓に上る豊かなおいしい魚や貝は私たちにすばらしい幸をいただいているが、このまま続くことができるのか、このままにしておいて本当に大丈夫なのか、そうした心配のもとに、この夏に海のことで専門家の方を訪ね、調査を行ってきました。
 マグロの養殖で名を高めた近畿大学の熊井英水先生や県関係者の方々、また、海藻類の藻の造成分野では日本の第一人者の東京海洋大学の能登谷正浩教授、私の友人で、ことし世界遺産に登録されました知床のオホーツク海で研究をしています東京農業大学オホーツク海キャンパスの鈴木淳志教授、さらには海の専門家といった方々にお会いをしたり、去る七月に出席をさせていただいた田辺で行われました海藻シンポジウム等で、海中は、海底はどういう状況にあるのか、何が今海の中で起こっているのかを探ってみました。
 今まで水産関係での質問は幾つかテーマで取り上げられていますが、これから行います内容は、県議会で取り上げるのは初めてだと思います。今まで論じ合ったことはないと思います。これは不思議だなあと思いながら、調査研究をする中でいろんな問題が噴出をしてきました。和歌山県として早急に対応しなければならない緊急の課題や永久に対応しなければならないものなど、幾つかにまとめて報告をし、知事の海への深い理解を得たいと思い、質問をしてまいります。
 まず、私がつくった海のパネルや資料を見てもらいますので、それから知事の海に対する造詣の深さをお聞かせください。
 まず、和歌山の海の状況がありますので、御紹介いたします。(パネルを示す)皆さんの資料では一から三ページであります。
 まず、何が変わってきておるのかと言いますと、一つは、ちょっと見にくいんですけども、田辺湾の海水の温度が、三十年前から比べたら、冬場の水温で言えば平均して三度上がっています。これが一つであります。
 これは、海水の温度が高くなってその上を風が通ったら急激にエネルギーを持って台風の規模が大きくなると、このように最近もよく言われております。先日のアメリカのハリケーンとか、また大型台風もそうであります。和歌山県にも上陸は時々しますけども、そういった海の水温が上がることによって災害の被害が大きくなると、そういうことが秘められておるんではないかと思います。これが一点であります。
 それと、もう一つ何が変わってきておるんかと言いますと、和歌山県の海の状態、実は海藻がなくなってきておるんです。カジメ群落の立ち枯れ現象とか磯焼けで、全然なくなってきています。海藻というのは魚とか貝の保育場でもあって、窒素とか燐を吸収して海をきれいにすると、そういう作用を持っています。さらに、生態系というんですか、それを正常化していくという役割があるわけですけども、それが──この地図を見てください──この日高の比井崎の方から新宮の方まで、実は磯焼けが進行しております。これは、聞きますと、ちょうど今から十七年前ぐらいから発生をしたということであります。県も努力をされて藻場造成というのをやっておられますけども、これからであります。
 もう一つ、生態系で言えば、海藻がここでなくなってきています。本来、こういう三角形の食物連鎖の概要図でありますけども、実は海藻がなくなってきておるので、だんだん細くなっていって魚が少なくなってきてると、そういう現象であります。きょうは、ほんまは本物の海藻を持ってきたかったんですけども、ちょっと手に入りませんでしたんで──海藻は大体年単位で成長する、そして長いもので三年で終わってしまう、だからその収穫できんものは海で枯れていってしまうと、こういう特徴を持っているらしいんです。これが二つ目であります。
 そして三つ目、こういったいろんな複数の原因によってか、実は和歌山県の漁獲量も、いわゆる魚が激減しております。減ってきております。これは、今から二十年前の昭和六十年代。多いときは大体八万五千トンぐらいの水揚げがあって、金額で言うたら五百五十億円。これが最近では四万五千トンに、そして金額が二百五億円。このように大体半分に激減してきておるということが言えます。
 これらの状況を今説明をいたしましたけども、こんなことが複合してどんなことが起こっておるかと言いますと、実は日本海の方で大きなお化けクラゲ、巨大クラゲ──エチゼンクラゲと言われるんですけども、これが実はこの和歌山県にも、この間の八月に紀伊水道沖に出てきました。これが巨大クラゲのエチゼンクラゲです。これも広島大学の上教授から借用したんですけども、かさの直径が一・五メーター、触手が八メーターぐらいあると、こういうことであります。
 今言いましたように、動物プランクトンの研究で有名な広島大学の上真一教授は、今、日本海側で巨大クラゲが大発生をして漁業に影響を及ぼしていると。このクラゲはエチゼンクラゲと言い、かさの直径は一・五メーター、触手の長さは八メーターにも及ぶ世界最大級のクラゲだと言うのです。
 クラゲの大発生は漁業に悪影響を与えます。定置網にかかったクラゲの毒で魚が傷んだり網が破れたり、そうした被害が出ています。ここ数年は立て続けに大発生が起こっているのであります、そして、先ほど説明をしました一番大事な食物連鎖の生態系が崩れてきているのであります。
 実は、他人事のように思っていた和歌山の海にもこの巨大クラゲが出てきたのであります。もう他人事ではなくなってきたのではないでしょうか。今のうちはまだまだ深刻な問題だと思っていない人が多いと思うのですが、巨大クラゲの発生を初め、将来とんでもない海の危機的なことが起こってくると大きな警鐘を鳴らしています。
 今、巨大クラゲ発生や大型台風の発生などの話をしましたが、このままいくと、私たちの海が取り返しのつかないことになってしまいます。海を汚さないためにも、生態系を守るためにも、海をきれいにする法律や条例があるのか、早速調べてみました。
 海へ流す規制の法律や条例は、例えば工場からの有害物や人間が海へ捨てる、流す規制はあるのですが、海をきれいにする法律や条例がないのに気づかされました。県内の海底や海中は定点を決めて調査はされていますが、継続的に現場を調査をしたり清掃することはほとんどされていないのが現状であります。
 海に対する私たちの責任はどこまであるのか。海を守るために取り組んでおられる、特に大阪湾の再生や波打ち際を守れと警鐘を鳴らす海産工学を研究されている大学の先生方や水産の専門家に、海に対する個人の責任はどこまであるのか、波打ち際から何キロメートルぐらいまでなのかと私が聞いたら、大陸棚は確実にきれいに保つことが必要である、言いかえれば水深五十メーターから百メーターの底まではきれいに保つことが大事だ、例えば田辺湾では十キロメートルぐらい、串本では数キロになると話してくれました。その理由は、大陸棚は一番生物生産をする大事なところだからであります。海を汚さないためにも生態系を守り、自然の魚を残すことによって海をきれいにするため海中・海底を定期的に調査をし、パトロールをし、きれいに手入れをするべきだと強く感じました。
 そして、調査から初めて大きな発見をしました。それは、海の環境を守るという具体的な法律がほとんどないということであります。陸では大変厳しい規制があるにもかかわらず、海については野放しにされていたのです。このままいくと、私たちの海が取り返しのつかないことになってしまうのではないでしょうか。
 知事、私は、和歌山から海の環境を守る条例をつくり、全国に発信することを提案します。このことは、世界遺産を持つ我が環境先進県和歌山としても当然進めるべきではないでしょうか。そのことは、県民はもちろん、水産関係者にとっても大きな喜びをもたらすのではないでしょうか。知事にお伺いをしたいと思います。
 もう一つの解決策を提案したいと思います。それは海藻であります。
 海藻は地球の生態系を正常に戻す大変大事なもの、切り札になってくるだろうということが実はわかってきました。海藻は魚や貝を育てる保育場であり、成長の過程で窒素や燐を取り込む効果があるとともに、今一番注目されているのが、実は地上や海水の温度まで上げている地球温暖化の元凶である二酸化炭素を吸収する重要な役割を果たしていることです。
 海藻・藻類分野では日本の第一人者の東京海洋大学の能登谷教授の話によりますと、海藻が悪玉の二酸化炭素を吸収し地球温暖化防止に寄与していることがようやく認められて、京都議定書の見直しや来年の国の科学政策に取り上げられようとしている、海水温が三度上がっていることも、この海藻をふやすための藻場造成という事業によって解決されるかもしれないと。
 また、北海道大学の松永克彦先生は、例えば北海道の面積の二〇%から三〇%の海域で昆布養殖をした場合、日本で放出する二酸化炭素、年間十億トンの五〇%は削減できる、日本各地の海域でやれば日本で放出される二酸化炭素の大部分は回収できると述べておられます。
 皆さん、これなんです。海藻が地球を救うという大きな役割を持っていることがわかったんです。すなわち、森林のように京都議定書にCO2吸収としての役割が認められることによって、海藻をふやす藻場造成事業や海藻の養殖は、地球を救うとともに大きな新たな産業としての可能性を秘めているという画期的なことがわかったのであります。
 そこで、早速でありますけども、私は県の水産試験場増養殖研究所にお願いをして、海藻による二酸化炭素吸収の和歌山県のシミュレーションをつくりました。(パネルを示す)これが海藻によるCO2の削減のシミュレーションであります。これも皆さん方のお手元の四ページから五ページに載せております。これは、県の方々、大変努力をしていただきまして、こういうシミュレーションをつくっていただきました。これを見てもらったら、資料にもありますとおり、アオサを水槽でふやし収穫する方法では、一例として、アオサ一トンを五十メータープールに入れると一週間でアオサは水分を含んだ量では約十七倍になり、ふえた分だけ収穫すると三千八百六十三キログラムの二酸化炭素が回収されることになります。そのシミュレーションは、今のパネルや資料に示しています。アオサが順調にふえていく期間は四月から十一月までの三十四週間ですので、三千八百六十三キログラム掛ける三十四週で約百三十一トンの二酸化炭素が回収できるのであります。
 これを海で考えてみますと、昔、田辺湾の養殖生けすがあったんですけども、大体三十メーターの円型の生けすが百個ぐらいあったのを覚えております。それで言いますと、ここで一・三一万トンの二酸化炭素が回収できるということになります。専門家に聞けば、県内の海域で言えば百カ所一万個ぐらいは可能だと言われました。一万カ所で言えば百三十一万トンの二酸化炭素の回収ができることになります。
 この数字はちょっとわかりにくいんで、もうちょっとわかりやすく、我々の日常生活で言えばどういうつながりがあるのか申し上げたいと思います。例えば、和歌山県下の二酸化炭素吸収の対象になる山林は約二十五万ヘクタールで、毎年の吸収量は約百十九万トンと言われており、和歌山県全体の山林の吸収量をこのアオサの養殖だけで実は上回ることになるのであります。特に海が汚い、言いかえれば富養化した和歌山港や大阪湾などにたくさん活用していけば、海もきれいになり、魚も戻ってき、一石三鳥の効果を生むのであります。
 今までは海藻について申し上げましたが、次に、県もやられております藻場造成について申し上げます。
 そこで、本県における藻場から二酸化炭素の回収ができるシミュレーションをしていただきました。和歌山県の藻場面積は、本年度の推定では一千ヘクタールぐらいだそうでありますけども、専門家が言う海藻の二酸化炭素固定量というのは、若干いろいろ違いがありまして、最少で言えば九千トン、最大で言えば七万三千トンの吸収をしてくれるということになるらしいです。このように、今後藻場造成に力を入れることによっても地球温暖化防止に大きく寄与していけるのであります。
 海藻利用は、ほかにも注目をされています。昆布などの海藻は、この中から今よく使われていますアルギン酸が抽出できて、医薬品や多方面への活用が世界的にされています。先日の海藻シンポジウムでも、日本の海藻利用が少ないこととコストが高いことからほとんど外国に頼っている話がされていましたが、こうした活用にも引っ張りだこになってくるのではないかと思います。
 また、アオサの中でも──粒々があるんですけども、アナアオサと言うんですけども──アナアオサは全国的にもいち早く和歌山県の水産試験場でえさにしたり、環境浄化などの活用で研究をされていますが、新たにこのアナアオサが燃料のかわりになるということが注目をされてきており、メタンガスとかバイオエネルギーの活用が研究されています。世界的にも科学技術の進歩は著しく、こうした技術開発は近い日にできるだろうと専門家の方々は言っています。これが実現できれば、県内の海で養殖ができて、地球温暖化防止に大きく寄与できることになっていくのであります。
 今、海藻による二酸化炭素吸収のシミュレーションを説明し、京都議定書への見直しの動きや海藻が地球を救うという画期的なことになると申し上げましたが、緑の雇用のときのように知事にリーダーシップをとっていただき、京都議定書の見直しが早急に実現するよう、また全国知事会や関係省に働きかけていただくとともに和歌山からこの取り組みを進めていただきたいと思いますが、知事及び地球温暖化防止の担当部である環境生活部長にお伺いします。
 今までは、和歌山県の海がどんなに変わってきているのか、そして将来の海の危機に対して我々の海をどのように守っていくのか、解決策の提言を申し上げてきました。海の中を見たことのない人も、調査をしたこともない人も、この調査したことを通じて海に関心を持っていただけたと思います。そして、このことによって予想もつかない雇用促進につながることが期待されるのであります。それを皆さんに今から申し上げます。
 先ほども申しましたとおり、海藻には食料として市場に流れてくるものと、アナアオサのように、食料ではありませんが、燃料のエネルギーとして活用されるものとがあります。現実は、こうした海藻をとるための人手不足と漁業者の高齢化のため、自然に生えているものも含め県内の半分以上は収穫できていなく、枯れてしまっていると言われています。
 今注目を浴びていますアナアオサは、県内の海岸で養殖ができ、雇用促進につながっていくことが期待できます。しかも、案外簡単に養殖ができ、成長が早いのも大きな利点であります。今後、海藻の藻場造成や人工養殖によっての雇用が新たな注目を浴びてくるのであります。
 中高年齢者の再就職は難しいと言われていますが、陸では若い人とかなり力の差があるということで、働くチャンスが少ないと言われています。しかし反対に、海では中高年齢者にうってつけの仕事であると私は思います。海に対する経験があればあるほど、その人に価値があるのであります。ベテランとか豊かな経験とか、その人でなければ海の病は治せないと言われています。その人たちの知恵と協力で海を復活させることができるのであります。力仕事ではなく、海に対する深い知識と経験が物を言い、安定した海の雇用につながってくると思うのであります。漁業の経験のある中高年齢者こそ海を救う中心人物なのであります。つまり、その人たちの長い経験をつなげていくことを県行政がアプローチしていくことによって若い人たちにも海にあこがれる人がふえ、海への雇用というものが大きく進んでくるのではないでしょうか。
 先ほど申し上げましたように、アオサの養殖を県下全域で一万カ所は十分可能であります。そのアオサ養殖の仕事にかかわる人員を専門家に聞きますと、例えば一人十カ所の養殖生けすを担当するとすれば、千人の新しい雇用というものが生まれてくるのであります。さらに、これらを運ぶ人や乾燥させる人、運送関係等、新しい仕事、雇用というものが広がってきます。また、藻場造成事業や海をきれいにするための監視員等の雇用創出も出てきます。このように大きな雇用が期待できることがわかりました。
 知事、陸では緑の雇用事業として全国に発信していく取り組みが進んでいますが、陸の雇用もさることながら、今度は新たに海の雇用事業として和歌山発の取り組みを提案します。このことによって未知の世界が生まれ、膨大な雇用が生まれてくることが期待されますが、いかがでしょうか。
 今までは、専門家に会い、調査をしたことを提案してまいりましたが、次に入らせていただきます。それは、海をきれいにする体制づくりと新たな水産研究所の任務と仕事、水産行政の充実についての提案であります。
 今回、現場を見たり取材をする中で、海をきれいにする県の体制が手薄であるということがわかりました。また、雨とか台風とかの予報士はありますが、そのための海中・海底の調査費用を新たに計上し、例えば海の監視員など新しい雇用創出の仕事をつくったり、新しくできてくる県の水産研究所にその任務、仕事をつくってみてはどうかと思うのですが、いかがでしょうか。
 近大の熊井先生は、最近「水産」という言葉がなくなってきている、水産に取り組む専門の職員が少ないと指摘をされました。海の時代が始まろうとしているやさきであり、その第一歩が大事であります。県行政の水産にかける体制の充実を提案したいと思いますが、どうお考えでしょうか。
 例えば、三重県の水産行政を調査してみますと、海の環境を守るための中心事業であります藻場造成事業には、平成十七年度分で和歌山県の約二倍強に当たる一億三千万円の予算を投入して取り組んでいます。また、県の水産研究所への要望として近大の熊井先生からは、県下の海の中心センターとなって、いろんな水産機関の連携の中心地、水産管理する司令塔としての機能を発揮してほしい、こうした提言をいただきました。
 以上、新しくできる県の水産研究所に対する提言や海をきれいにする体制づくりについて申し上げてきましたが、農林水産部長の考え方をお伺いしたいと思います。
 もう一つ、知事に提案があります。私は、今回の取材を通じまして、陸から海への時代やということを痛感いたしました。「紀州・山の日」が制定されているように、例えば、海の中をきれいにするということを行い、漁民だけでなくて県民全員が海に愛着と関心を持つ、そうした「海の日」というものを提唱したいと思いますが、知事、いかがでしょうか。
 最後になりました。今、和歌山県が企業や大学や行政が協力して世の中のために県民の生活を豊かにしようと進めています産学官の改革として、海洋研究事業の活用についてお伺いします。
 七月に田辺市で開催されました産学官の共同事業の和歌山県地域結集型共同研究事業の一環として行われました海藻シンポジウムに参加させていただきましたが、大変勉強になりました。いろんなことが産学官挙げて研究されていることがわかりました。また、同じ七月に、近大の熊井先生を訪ねてマグロの養殖の研究について取材をさせていただきました。これまた、大変勉強させられました。せっかくのこのような県内の海洋研究の成果をもっと県民全体に知らせていくことが必要だと感じました。海が汚くなる、海が怒り始めていることを事前にキャッチし、これからの津波・地震対策にも活用していけると私は思うのであります。
 こうした産学官の海洋研究を、もっとハードルを低くして県民に情報を公開し、もっと海中汚染の予防及びそのほか海に対する愛着、関心を高めることが県行政の大きな仕事ではないでしょうか。また、産学官の共同事業や近大の熊井先生方の研究を有効に使うなど、その積極的活用について県がもっと研究されてはいかがでしょうか。知事にお伺いをしたいと思います。
 以上、申し上げてきましたが、今回は海をきれいにするというだけの積極的な質問だけではなく、自分で言うのもおかしいんですが、県民への多少なりとも海への関心の第一歩になればと思い、海を取り上げたことに意義があったと思っています。もっと海に対して多方面の専門家、科学者、行政が協力をし合って、知恵と技術を総動員して積極的に海の中に入っていく時代であると私は思います。私は、この質問をすることによって県民の皆さんにまた新たな私たちの海への希望がわいてくることを期待いたしまして、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの海の地球温暖化防止と新たな雇用創出へに関する質問、私も目からうろこが落ちるような気持ちで聞かせていただきました。全国初の海の環境を守る条例というものを、この海国和歌山といいますか、海県和歌山で考えたらどうかと。これは非常に有意義な提案だと思います。ちょっとその中身をどんなものにしていくのかということについて、いろいろあると思いますので、これは本当に前向きに、発表するときは和歌山県がびりだったというようなことにならないように頑張っていきたいと思います。
 それから、和歌山県は緑の雇用でCO2の吸収ということと結びつけて大分いろいろ施策しているんですけども、海についてこれを注目しようということについては大変な卓見だと思います。特に、私は知りませんでしたけども、海藻の生育期間が三年ということであれば、木材なんかは八十年、百年というようなことの中で、大きくなった木はもうCO2を吸収しないというふうな問題もありますので、この海藻、アオサとかそういうふうなものに着目していくことは非常に重要なことだと思います。
 県も、藻場の造成事業など、二年ぐらい前から積極的に進めているんですけども、このアオサの増殖というか、そういうふうなことにも注目するとともに、またこれがCO2の吸収、京都議定書の達成というふうなことにどういう形で貢献するかということを研究して、必要であれば国の方なんかへもこういうふうなことの提言をしていきたい、このように思っております。
 それから、新たな海の雇用事業の創出についてということですが、これは県もいわゆる雇用の三位一体というような関係で、緑の雇用、それから農業やってみよう、そして漁師への道ということで今一生懸命やっているんです。まあ、なかなか進みません。ただ、今のお話にあったように、海藻をつくって、そのことで雇用を生むというのは、またそれとはちょっと違った視点になろうかと思いますので、こういうことの可能性についても前向きに検討をしていきたいと思います。
 それから「海の日」については、これは国の方でも「海の日」がありますので、同じ「海の日」をつくると、ちょっと県民の人も混同してしまうかもしれませんが、これだけ海に囲まれている和歌山ですから、何か県民の人が海というものを改めて見詰め直すような大きな機会があるというふうなことは必要だと思いますので、そういう観点でまた研究をしていきたいと思います。
 さらに、最後に産学官の改革ということで海洋研究事業をやりましょうということなんですが、私は、今つくっている水産研究所に、今までと違う機能、今までと同じものをつくるだけだったら何の意味もありませんので、そういうことはもう常日ごろから言っておりますので、熊井先生なんかとも十二分に相談しながら、この水産研究所がこういうふうな海洋研究事業でも少しいろんなことができるような形にしていきたいと思います。
 箱物をつくることが目的ではなくて、それがどのように活用されるかということが一番大事だというふうな認識でおりますので、よろしくお願いします。
○議長(吉井和視君) 環境生活部長楠本 隆君。
  〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 海藻のCO2吸収に関する御質問にお答えを申し上げます。
 二〇〇一年にまとまりました気候変動に関する政府間パネルの報告によりますと、地球全体で毎年二百三十億トンのCO2など温室効果ガスが排出をされておりまして、このうち森林と海が百十億トンを吸収していると言われております。したがいまして、差し引き毎年百二十億トンのCO2等が大気中に増加している状況でございまして、これが地球温暖化の原因となっております。
 自然吸収のいわゆる百十億トンのうち、海が六十億トン吸収していると報告をされております。その中で海藻も大きな役割を果たしているという研究も行われていることは、議員御指摘のとおりでございます。
 しかしながら、国際的な地球温暖化の枠組みを定めました京都議定書では、森林のみが吸収源として認められているだけでございます。地球温暖化防止対策としましては、まずは排出量の削減というものが喫緊の課題であると考えますが、今後、森林を含めたいわゆる自然吸収の役割というものがますます増大していくものと思っております。
 議員御提案の件につきましては、国に対して働きかけていくため、CO2吸収源としての海藻の研究につきましても関係部局とともに取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 農林水産部長西岡俊雄君。
  〔西岡俊雄君、登壇〕
○農林水産部長(西岡俊雄君) 海をきれいにするという御質問の中で、今後の水産行政についてお答えをいたします。
 議員御承知のとおり、串本にございます水産試験場におきましては、これまでも、毎月一回でございますが、沖合、浅海、沿岸の三定線において水温、塩分等の定点観測等を行い、海洋環境の把握に努めてきたところでございます。
 来年の四月オープン予定の新しい水産研究所につきましては、これからの本県の水産業の情報発信基地として整備を進めてございまして、最新の分析機器の導入や研究体制の充実を図るとともに、従前からの試験研究の成果に加えまして、産官学の共同事業の取り組み、あるいは海洋環境の保全、あるいは持続的な漁業の振興等に向けた取り組みもあわせ、進め得るところと考えてございます。
 また、水産業の振興を図る上からも、海の環境を守ることは大変重要なことと認識してございます。今後とも、関係部局や水産関係機関との連携を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十五番玉置公良君。
○玉置公良君 本当に前向きな御答弁、ありがとうございました。この質問を今回する中で海を調査したんですけども、海のことを自分の言葉で説明するのって大変難しいなということを実感しました。それだけやっぱり──陸は人間の目で見えますけども、海というのは人間の見えない、気づかない、そういうところで、例えば海の地球温暖化とか、また環境破壊とか、それが進んでおるんではないか。反対にまだ海の方が深刻ではないかなという気もいたしました。そういった意味において、海の環境を守る条例とか、そういう前向きな検討をいただきましたんで、ぜひとも実現の方、よろしくお願いいたします。
 それと、今、環境生活部長も、京都議定書の中に海藻が入っていないということも言われました。実は僕は、この地球温暖化防止のやつをいろいろ勉強させてもらって、このように思うんですわね。人間がいわゆる排出量を削減するということだけでは、一人一人の人間の限界があると思うんです。排出量を削減する──そこにはなぜ限界があるかと言うたら、やっぱり生態系が絡まっておると思うんです。海の生態系とか。だからこそ、その海藻も京都議定書の中へ見直しを入れて、世界的な問題にしていかなあかんと思っておるんで。そういう点も含めて、あとは県民全体の問題として、新しい水産研究所の体制をつくっていくということも言われましたんで、よろしくお願いをいたしまして、要望といたします。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。

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