平成17年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


県議会の活動

平成十七年九月 和歌山県議会定例会会議録 第五号
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議事日程 第五号
 平成十七年九月二十八日(水曜日)午前十時開議
  第一 議案第二百四号から議案第二百三十三号まで、並びに報第十四号(質疑)
  第二 一般質問
  第三 議案等の付託
  第四 請願付託の件
会議に付した事件
   一 議案第二百四号から議案第二百三十三号まで、並びに報第十四号(質疑)
   二 一般質問
   三 議案等の付託
   四 請願付託の件
   五 休会決定の件
出席議員(四十五人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       新   島       雄
     四  番       山   下   直   也
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     九  番       前   川   勝   久
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十五 番       平   越   孝   哉
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       花   田   健   吉
     十八 番       藤   山   将   材
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       飯   田   敬   文
     二十二番       谷       洋   一
     二十三番       井   出   益   弘
     二十四番       宇 治 田   栄   蔵
     二十五番       東       幸   司
     二十六番       山   下   大   輔
     二十八番       原       日 出 夫
     二十九番       冨   安   民   浩
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       中   村   裕   一
     三十三番       浦   口   高   典
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       玉   置   公   良
     三十六番       江   上   柳   助
     三十七番       森       正   樹
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       阪   部   菊   雄
     四十 番       新   田   和   弘
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(なし)
 〔備考〕
     二十七番欠員
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        小 佐 田   昌   計
     出納長        水   谷   聡   明
     知事公室長      野   添       勝
     危機管理監      石   橋   秀   彦
     総務部長       原       邦   彰
     企画部長       高   嶋   洋   子
     環境生活部長     楠   本       隆
     福祉保健部長     嶋   田   正   巳
     商工労働部長     下           宏
     農林水産部長     西   岡   俊   雄
     県土整備部長     宮   地   淳   夫
     教育委員会委員長   駒   井   則   彦
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員    島       正   博
     警察本部長      宮   内       勝
     人事委員会委員長   西   浦   昭   人
     代表監査委員     垣   平   高   男
     選挙管理委員会委員長 山   本   恒   男
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       小   住   博   章
     次長         土   井   陽   義
     議事課長       下   出   喜 久 雄
     議事課副課長     薮   上   育   男
     議事班長       山   本   保   誠
     議事課主査      湯   葉       努
     議事課主査      楠   見   直   博
     総務課長       島       光   正
     調査課長       辻       和   良
 (速記担当者)
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課主査      保   田   良   春
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  午前十時二分開議
○議長(吉井和視君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第二百四号から議案第二百三十三号まで、並びに知事専決処分報告報第十四号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十五番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。
 早速でございますけども、通告に従いまして一般質問を行います。
 今まで私は、地球の危機、その中でも一番大きな環境問題であります地球温暖化についていろんな角度から調査をし、知事の考え方をお聞きをしてきました。私としましては、環境問題として陸の問題については一通り検証し終わったことにして、次のテーマに移りたいと思います。
 それは、今回は海の中の問題を取り上げたいと思います。
 この夏、私は紀南の海を歩きながら、果たして私のふるさとである紀南の海は大丈夫なのか、食卓に上る豊かなおいしい魚や貝は私たちにすばらしい幸をいただいているが、このまま続くことができるのか、このままにしておいて本当に大丈夫なのか、そうした心配のもとに、この夏に海のことで専門家の方を訪ね、調査を行ってきました。
 マグロの養殖で名を高めた近畿大学の熊井英水先生や県関係者の方々、また、海藻類の藻の造成分野では日本の第一人者の東京海洋大学の能登谷正浩教授、私の友人で、ことし世界遺産に登録されました知床のオホーツク海で研究をしています東京農業大学オホーツク海キャンパスの鈴木淳志教授、さらには海の専門家といった方々にお会いをしたり、去る七月に出席をさせていただいた田辺で行われました海藻シンポジウム等で、海中は、海底はどういう状況にあるのか、何が今海の中で起こっているのかを探ってみました。
 今まで水産関係での質問は幾つかテーマで取り上げられていますが、これから行います内容は、県議会で取り上げるのは初めてだと思います。今まで論じ合ったことはないと思います。これは不思議だなあと思いながら、調査研究をする中でいろんな問題が噴出をしてきました。和歌山県として早急に対応しなければならない緊急の課題や永久に対応しなければならないものなど、幾つかにまとめて報告をし、知事の海への深い理解を得たいと思い、質問をしてまいります。
 まず、私がつくった海のパネルや資料を見てもらいますので、それから知事の海に対する造詣の深さをお聞かせください。
 まず、和歌山の海の状況がありますので、御紹介いたします。(パネルを示す)皆さんの資料では一から三ページであります。
 まず、何が変わってきておるのかと言いますと、一つは、ちょっと見にくいんですけども、田辺湾の海水の温度が、三十年前から比べたら、冬場の水温で言えば平均して三度上がっています。これが一つであります。
 これは、海水の温度が高くなってその上を風が通ったら急激にエネルギーを持って台風の規模が大きくなると、このように最近もよく言われております。先日のアメリカのハリケーンとか、また大型台風もそうであります。和歌山県にも上陸は時々しますけども、そういった海の水温が上がることによって災害の被害が大きくなると、そういうことが秘められておるんではないかと思います。これが一点であります。
 それと、もう一つ何が変わってきておるんかと言いますと、和歌山県の海の状態、実は海藻がなくなってきておるんです。カジメ群落の立ち枯れ現象とか磯焼けで、全然なくなってきています。海藻というのは魚とか貝の保育場でもあって、窒素とか燐を吸収して海をきれいにすると、そういう作用を持っています。さらに、生態系というんですか、それを正常化していくという役割があるわけですけども、それが──この地図を見てください──この日高の比井崎の方から新宮の方まで、実は磯焼けが進行しております。これは、聞きますと、ちょうど今から十七年前ぐらいから発生をしたということであります。県も努力をされて藻場造成というのをやっておられますけども、これからであります。
 もう一つ、生態系で言えば、海藻がここでなくなってきています。本来、こういう三角形の食物連鎖の概要図でありますけども、実は海藻がなくなってきておるので、だんだん細くなっていって魚が少なくなってきてると、そういう現象であります。きょうは、ほんまは本物の海藻を持ってきたかったんですけども、ちょっと手に入りませんでしたんで──海藻は大体年単位で成長する、そして長いもので三年で終わってしまう、だからその収穫できんものは海で枯れていってしまうと、こういう特徴を持っているらしいんです。これが二つ目であります。
 そして三つ目、こういったいろんな複数の原因によってか、実は和歌山県の漁獲量も、いわゆる魚が激減しております。減ってきております。これは、今から二十年前の昭和六十年代。多いときは大体八万五千トンぐらいの水揚げがあって、金額で言うたら五百五十億円。これが最近では四万五千トンに、そして金額が二百五億円。このように大体半分に激減してきておるということが言えます。
 これらの状況を今説明をいたしましたけども、こんなことが複合してどんなことが起こっておるかと言いますと、実は日本海の方で大きなお化けクラゲ、巨大クラゲ──エチゼンクラゲと言われるんですけども、これが実はこの和歌山県にも、この間の八月に紀伊水道沖に出てきました。これが巨大クラゲのエチゼンクラゲです。これも広島大学の上教授から借用したんですけども、かさの直径が一・五メーター、触手が八メーターぐらいあると、こういうことであります。
 今言いましたように、動物プランクトンの研究で有名な広島大学の上真一教授は、今、日本海側で巨大クラゲが大発生をして漁業に影響を及ぼしていると。このクラゲはエチゼンクラゲと言い、かさの直径は一・五メーター、触手の長さは八メーターにも及ぶ世界最大級のクラゲだと言うのです。
 クラゲの大発生は漁業に悪影響を与えます。定置網にかかったクラゲの毒で魚が傷んだり網が破れたり、そうした被害が出ています。ここ数年は立て続けに大発生が起こっているのであります、そして、先ほど説明をしました一番大事な食物連鎖の生態系が崩れてきているのであります。
 実は、他人事のように思っていた和歌山の海にもこの巨大クラゲが出てきたのであります。もう他人事ではなくなってきたのではないでしょうか。今のうちはまだまだ深刻な問題だと思っていない人が多いと思うのですが、巨大クラゲの発生を初め、将来とんでもない海の危機的なことが起こってくると大きな警鐘を鳴らしています。
 今、巨大クラゲ発生や大型台風の発生などの話をしましたが、このままいくと、私たちの海が取り返しのつかないことになってしまいます。海を汚さないためにも、生態系を守るためにも、海をきれいにする法律や条例があるのか、早速調べてみました。
 海へ流す規制の法律や条例は、例えば工場からの有害物や人間が海へ捨てる、流す規制はあるのですが、海をきれいにする法律や条例がないのに気づかされました。県内の海底や海中は定点を決めて調査はされていますが、継続的に現場を調査をしたり清掃することはほとんどされていないのが現状であります。
 海に対する私たちの責任はどこまであるのか。海を守るために取り組んでおられる、特に大阪湾の再生や波打ち際を守れと警鐘を鳴らす海産工学を研究されている大学の先生方や水産の専門家に、海に対する個人の責任はどこまであるのか、波打ち際から何キロメートルぐらいまでなのかと私が聞いたら、大陸棚は確実にきれいに保つことが必要である、言いかえれば水深五十メーターから百メーターの底まではきれいに保つことが大事だ、例えば田辺湾では十キロメートルぐらい、串本では数キロになると話してくれました。その理由は、大陸棚は一番生物生産をする大事なところだからであります。海を汚さないためにも生態系を守り、自然の魚を残すことによって海をきれいにするため海中・海底を定期的に調査をし、パトロールをし、きれいに手入れをするべきだと強く感じました。
 そして、調査から初めて大きな発見をしました。それは、海の環境を守るという具体的な法律がほとんどないということであります。陸では大変厳しい規制があるにもかかわらず、海については野放しにされていたのです。このままいくと、私たちの海が取り返しのつかないことになってしまうのではないでしょうか。
 知事、私は、和歌山から海の環境を守る条例をつくり、全国に発信することを提案します。このことは、世界遺産を持つ我が環境先進県和歌山としても当然進めるべきではないでしょうか。そのことは、県民はもちろん、水産関係者にとっても大きな喜びをもたらすのではないでしょうか。知事にお伺いをしたいと思います。
 もう一つの解決策を提案したいと思います。それは海藻であります。
 海藻は地球の生態系を正常に戻す大変大事なもの、切り札になってくるだろうということが実はわかってきました。海藻は魚や貝を育てる保育場であり、成長の過程で窒素や燐を取り込む効果があるとともに、今一番注目されているのが、実は地上や海水の温度まで上げている地球温暖化の元凶である二酸化炭素を吸収する重要な役割を果たしていることです。
 海藻・藻類分野では日本の第一人者の東京海洋大学の能登谷教授の話によりますと、海藻が悪玉の二酸化炭素を吸収し地球温暖化防止に寄与していることがようやく認められて、京都議定書の見直しや来年の国の科学政策に取り上げられようとしている、海水温が三度上がっていることも、この海藻をふやすための藻場造成という事業によって解決されるかもしれないと。
 また、北海道大学の松永克彦先生は、例えば北海道の面積の二〇%から三〇%の海域で昆布養殖をした場合、日本で放出する二酸化炭素、年間十億トンの五〇%は削減できる、日本各地の海域でやれば日本で放出される二酸化炭素の大部分は回収できると述べておられます。
 皆さん、これなんです。海藻が地球を救うという大きな役割を持っていることがわかったんです。すなわち、森林のように京都議定書にCO2吸収としての役割が認められることによって、海藻をふやす藻場造成事業や海藻の養殖は、地球を救うとともに大きな新たな産業としての可能性を秘めているという画期的なことがわかったのであります。
 そこで、早速でありますけども、私は県の水産試験場増養殖研究所にお願いをして、海藻による二酸化炭素吸収の和歌山県のシミュレーションをつくりました。(パネルを示す)これが海藻によるCO2の削減のシミュレーションであります。これも皆さん方のお手元の四ページから五ページに載せております。これは、県の方々、大変努力をしていただきまして、こういうシミュレーションをつくっていただきました。これを見てもらったら、資料にもありますとおり、アオサを水槽でふやし収穫する方法では、一例として、アオサ一トンを五十メータープールに入れると一週間でアオサは水分を含んだ量では約十七倍になり、ふえた分だけ収穫すると三千八百六十三キログラムの二酸化炭素が回収されることになります。そのシミュレーションは、今のパネルや資料に示しています。アオサが順調にふえていく期間は四月から十一月までの三十四週間ですので、三千八百六十三キログラム掛ける三十四週で約百三十一トンの二酸化炭素が回収できるのであります。
 これを海で考えてみますと、昔、田辺湾の養殖生けすがあったんですけども、大体三十メーターの円型の生けすが百個ぐらいあったのを覚えております。それで言いますと、ここで一・三一万トンの二酸化炭素が回収できるということになります。専門家に聞けば、県内の海域で言えば百カ所一万個ぐらいは可能だと言われました。一万カ所で言えば百三十一万トンの二酸化炭素の回収ができることになります。
 この数字はちょっとわかりにくいんで、もうちょっとわかりやすく、我々の日常生活で言えばどういうつながりがあるのか申し上げたいと思います。例えば、和歌山県下の二酸化炭素吸収の対象になる山林は約二十五万ヘクタールで、毎年の吸収量は約百十九万トンと言われており、和歌山県全体の山林の吸収量をこのアオサの養殖だけで実は上回ることになるのであります。特に海が汚い、言いかえれば富養化した和歌山港や大阪湾などにたくさん活用していけば、海もきれいになり、魚も戻ってき、一石三鳥の効果を生むのであります。
 今までは海藻について申し上げましたが、次に、県もやられております藻場造成について申し上げます。
 そこで、本県における藻場から二酸化炭素の回収ができるシミュレーションをしていただきました。和歌山県の藻場面積は、本年度の推定では一千ヘクタールぐらいだそうでありますけども、専門家が言う海藻の二酸化炭素固定量というのは、若干いろいろ違いがありまして、最少で言えば九千トン、最大で言えば七万三千トンの吸収をしてくれるということになるらしいです。このように、今後藻場造成に力を入れることによっても地球温暖化防止に大きく寄与していけるのであります。
 海藻利用は、ほかにも注目をされています。昆布などの海藻は、この中から今よく使われていますアルギン酸が抽出できて、医薬品や多方面への活用が世界的にされています。先日の海藻シンポジウムでも、日本の海藻利用が少ないこととコストが高いことからほとんど外国に頼っている話がされていましたが、こうした活用にも引っ張りだこになってくるのではないかと思います。
 また、アオサの中でも──粒々があるんですけども、アナアオサと言うんですけども──アナアオサは全国的にもいち早く和歌山県の水産試験場でえさにしたり、環境浄化などの活用で研究をされていますが、新たにこのアナアオサが燃料のかわりになるということが注目をされてきており、メタンガスとかバイオエネルギーの活用が研究されています。世界的にも科学技術の進歩は著しく、こうした技術開発は近い日にできるだろうと専門家の方々は言っています。これが実現できれば、県内の海で養殖ができて、地球温暖化防止に大きく寄与できることになっていくのであります。
 今、海藻による二酸化炭素吸収のシミュレーションを説明し、京都議定書への見直しの動きや海藻が地球を救うという画期的なことになると申し上げましたが、緑の雇用のときのように知事にリーダーシップをとっていただき、京都議定書の見直しが早急に実現するよう、また全国知事会や関係省に働きかけていただくとともに和歌山からこの取り組みを進めていただきたいと思いますが、知事及び地球温暖化防止の担当部である環境生活部長にお伺いします。
 今までは、和歌山県の海がどんなに変わってきているのか、そして将来の海の危機に対して我々の海をどのように守っていくのか、解決策の提言を申し上げてきました。海の中を見たことのない人も、調査をしたこともない人も、この調査したことを通じて海に関心を持っていただけたと思います。そして、このことによって予想もつかない雇用促進につながることが期待されるのであります。それを皆さんに今から申し上げます。
 先ほども申しましたとおり、海藻には食料として市場に流れてくるものと、アナアオサのように、食料ではありませんが、燃料のエネルギーとして活用されるものとがあります。現実は、こうした海藻をとるための人手不足と漁業者の高齢化のため、自然に生えているものも含め県内の半分以上は収穫できていなく、枯れてしまっていると言われています。
 今注目を浴びていますアナアオサは、県内の海岸で養殖ができ、雇用促進につながっていくことが期待できます。しかも、案外簡単に養殖ができ、成長が早いのも大きな利点であります。今後、海藻の藻場造成や人工養殖によっての雇用が新たな注目を浴びてくるのであります。
 中高年齢者の再就職は難しいと言われていますが、陸では若い人とかなり力の差があるということで、働くチャンスが少ないと言われています。しかし反対に、海では中高年齢者にうってつけの仕事であると私は思います。海に対する経験があればあるほど、その人に価値があるのであります。ベテランとか豊かな経験とか、その人でなければ海の病は治せないと言われています。その人たちの知恵と協力で海を復活させることができるのであります。力仕事ではなく、海に対する深い知識と経験が物を言い、安定した海の雇用につながってくると思うのであります。漁業の経験のある中高年齢者こそ海を救う中心人物なのであります。つまり、その人たちの長い経験をつなげていくことを県行政がアプローチしていくことによって若い人たちにも海にあこがれる人がふえ、海への雇用というものが大きく進んでくるのではないでしょうか。
 先ほど申し上げましたように、アオサの養殖を県下全域で一万カ所は十分可能であります。そのアオサ養殖の仕事にかかわる人員を専門家に聞きますと、例えば一人十カ所の養殖生けすを担当するとすれば、千人の新しい雇用というものが生まれてくるのであります。さらに、これらを運ぶ人や乾燥させる人、運送関係等、新しい仕事、雇用というものが広がってきます。また、藻場造成事業や海をきれいにするための監視員等の雇用創出も出てきます。このように大きな雇用が期待できることがわかりました。
 知事、陸では緑の雇用事業として全国に発信していく取り組みが進んでいますが、陸の雇用もさることながら、今度は新たに海の雇用事業として和歌山発の取り組みを提案します。このことによって未知の世界が生まれ、膨大な雇用が生まれてくることが期待されますが、いかがでしょうか。
 今までは、専門家に会い、調査をしたことを提案してまいりましたが、次に入らせていただきます。それは、海をきれいにする体制づくりと新たな水産研究所の任務と仕事、水産行政の充実についての提案であります。
 今回、現場を見たり取材をする中で、海をきれいにする県の体制が手薄であるということがわかりました。また、雨とか台風とかの予報士はありますが、そのための海中・海底の調査費用を新たに計上し、例えば海の監視員など新しい雇用創出の仕事をつくったり、新しくできてくる県の水産研究所にその任務、仕事をつくってみてはどうかと思うのですが、いかがでしょうか。
 近大の熊井先生は、最近「水産」という言葉がなくなってきている、水産に取り組む専門の職員が少ないと指摘をされました。海の時代が始まろうとしているやさきであり、その第一歩が大事であります。県行政の水産にかける体制の充実を提案したいと思いますが、どうお考えでしょうか。
 例えば、三重県の水産行政を調査してみますと、海の環境を守るための中心事業であります藻場造成事業には、平成十七年度分で和歌山県の約二倍強に当たる一億三千万円の予算を投入して取り組んでいます。また、県の水産研究所への要望として近大の熊井先生からは、県下の海の中心センターとなって、いろんな水産機関の連携の中心地、水産管理する司令塔としての機能を発揮してほしい、こうした提言をいただきました。
 以上、新しくできる県の水産研究所に対する提言や海をきれいにする体制づくりについて申し上げてきましたが、農林水産部長の考え方をお伺いしたいと思います。
 もう一つ、知事に提案があります。私は、今回の取材を通じまして、陸から海への時代やということを痛感いたしました。「紀州・山の日」が制定されているように、例えば、海の中をきれいにするということを行い、漁民だけでなくて県民全員が海に愛着と関心を持つ、そうした「海の日」というものを提唱したいと思いますが、知事、いかがでしょうか。
 最後になりました。今、和歌山県が企業や大学や行政が協力して世の中のために県民の生活を豊かにしようと進めています産学官の改革として、海洋研究事業の活用についてお伺いします。
 七月に田辺市で開催されました産学官の共同事業の和歌山県地域結集型共同研究事業の一環として行われました海藻シンポジウムに参加させていただきましたが、大変勉強になりました。いろんなことが産学官挙げて研究されていることがわかりました。また、同じ七月に、近大の熊井先生を訪ねてマグロの養殖の研究について取材をさせていただきました。これまた、大変勉強させられました。せっかくのこのような県内の海洋研究の成果をもっと県民全体に知らせていくことが必要だと感じました。海が汚くなる、海が怒り始めていることを事前にキャッチし、これからの津波・地震対策にも活用していけると私は思うのであります。
 こうした産学官の海洋研究を、もっとハードルを低くして県民に情報を公開し、もっと海中汚染の予防及びそのほか海に対する愛着、関心を高めることが県行政の大きな仕事ではないでしょうか。また、産学官の共同事業や近大の熊井先生方の研究を有効に使うなど、その積極的活用について県がもっと研究されてはいかがでしょうか。知事にお伺いをしたいと思います。
 以上、申し上げてきましたが、今回は海をきれいにするというだけの積極的な質問だけではなく、自分で言うのもおかしいんですが、県民への多少なりとも海への関心の第一歩になればと思い、海を取り上げたことに意義があったと思っています。もっと海に対して多方面の専門家、科学者、行政が協力をし合って、知恵と技術を総動員して積極的に海の中に入っていく時代であると私は思います。私は、この質問をすることによって県民の皆さんにまた新たな私たちの海への希望がわいてくることを期待いたしまして、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの海の地球温暖化防止と新たな雇用創出へに関する質問、私も目からうろこが落ちるような気持ちで聞かせていただきました。全国初の海の環境を守る条例というものを、この海国和歌山といいますか、海県和歌山で考えたらどうかと。これは非常に有意義な提案だと思います。ちょっとその中身をどんなものにしていくのかということについて、いろいろあると思いますので、これは本当に前向きに、発表するときは和歌山県がびりだったというようなことにならないように頑張っていきたいと思います。
 それから、和歌山県は緑の雇用でCO2の吸収ということと結びつけて大分いろいろ施策しているんですけども、海についてこれを注目しようということについては大変な卓見だと思います。特に、私は知りませんでしたけども、海藻の生育期間が三年ということであれば、木材なんかは八十年、百年というようなことの中で、大きくなった木はもうCO2を吸収しないというふうな問題もありますので、この海藻、アオサとかそういうふうなものに着目していくことは非常に重要なことだと思います。
 県も、藻場の造成事業など、二年ぐらい前から積極的に進めているんですけども、このアオサの増殖というか、そういうふうなことにも注目するとともに、またこれがCO2の吸収、京都議定書の達成というふうなことにどういう形で貢献するかということを研究して、必要であれば国の方なんかへもこういうふうなことの提言をしていきたい、このように思っております。
 それから、新たな海の雇用事業の創出についてということですが、これは県もいわゆる雇用の三位一体というような関係で、緑の雇用、それから農業やってみよう、そして漁師への道ということで今一生懸命やっているんです。まあ、なかなか進みません。ただ、今のお話にあったように、海藻をつくって、そのことで雇用を生むというのは、またそれとはちょっと違った視点になろうかと思いますので、こういうことの可能性についても前向きに検討をしていきたいと思います。
 それから「海の日」については、これは国の方でも「海の日」がありますので、同じ「海の日」をつくると、ちょっと県民の人も混同してしまうかもしれませんが、これだけ海に囲まれている和歌山ですから、何か県民の人が海というものを改めて見詰め直すような大きな機会があるというふうなことは必要だと思いますので、そういう観点でまた研究をしていきたいと思います。
 さらに、最後に産学官の改革ということで海洋研究事業をやりましょうということなんですが、私は、今つくっている水産研究所に、今までと違う機能、今までと同じものをつくるだけだったら何の意味もありませんので、そういうことはもう常日ごろから言っておりますので、熊井先生なんかとも十二分に相談しながら、この水産研究所がこういうふうな海洋研究事業でも少しいろんなことができるような形にしていきたいと思います。
 箱物をつくることが目的ではなくて、それがどのように活用されるかということが一番大事だというふうな認識でおりますので、よろしくお願いします。
○議長(吉井和視君) 環境生活部長楠本 隆君。
  〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 海藻のCO2吸収に関する御質問にお答えを申し上げます。
 二〇〇一年にまとまりました気候変動に関する政府間パネルの報告によりますと、地球全体で毎年二百三十億トンのCO2など温室効果ガスが排出をされておりまして、このうち森林と海が百十億トンを吸収していると言われております。したがいまして、差し引き毎年百二十億トンのCO2等が大気中に増加している状況でございまして、これが地球温暖化の原因となっております。
 自然吸収のいわゆる百十億トンのうち、海が六十億トン吸収していると報告をされております。その中で海藻も大きな役割を果たしているという研究も行われていることは、議員御指摘のとおりでございます。
 しかしながら、国際的な地球温暖化の枠組みを定めました京都議定書では、森林のみが吸収源として認められているだけでございます。地球温暖化防止対策としましては、まずは排出量の削減というものが喫緊の課題であると考えますが、今後、森林を含めたいわゆる自然吸収の役割というものがますます増大していくものと思っております。
 議員御提案の件につきましては、国に対して働きかけていくため、CO2吸収源としての海藻の研究につきましても関係部局とともに取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 農林水産部長西岡俊雄君。
  〔西岡俊雄君、登壇〕
○農林水産部長(西岡俊雄君) 海をきれいにするという御質問の中で、今後の水産行政についてお答えをいたします。
 議員御承知のとおり、串本にございます水産試験場におきましては、これまでも、毎月一回でございますが、沖合、浅海、沿岸の三定線において水温、塩分等の定点観測等を行い、海洋環境の把握に努めてきたところでございます。
 来年の四月オープン予定の新しい水産研究所につきましては、これからの本県の水産業の情報発信基地として整備を進めてございまして、最新の分析機器の導入や研究体制の充実を図るとともに、従前からの試験研究の成果に加えまして、産官学の共同事業の取り組み、あるいは海洋環境の保全、あるいは持続的な漁業の振興等に向けた取り組みもあわせ、進め得るところと考えてございます。
 また、水産業の振興を図る上からも、海の環境を守ることは大変重要なことと認識してございます。今後とも、関係部局や水産関係機関との連携を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十五番玉置公良君。
○玉置公良君 本当に前向きな御答弁、ありがとうございました。この質問を今回する中で海を調査したんですけども、海のことを自分の言葉で説明するのって大変難しいなということを実感しました。それだけやっぱり──陸は人間の目で見えますけども、海というのは人間の見えない、気づかない、そういうところで、例えば海の地球温暖化とか、また環境破壊とか、それが進んでおるんではないか。反対にまだ海の方が深刻ではないかなという気もいたしました。そういった意味において、海の環境を守る条例とか、そういう前向きな検討をいただきましたんで、ぜひとも実現の方、よろしくお願いいたします。
 それと、今、環境生活部長も、京都議定書の中に海藻が入っていないということも言われました。実は僕は、この地球温暖化防止のやつをいろいろ勉強させてもらって、このように思うんですわね。人間がいわゆる排出量を削減するということだけでは、一人一人の人間の限界があると思うんです。排出量を削減する──そこにはなぜ限界があるかと言うたら、やっぱり生態系が絡まっておると思うんです。海の生態系とか。だからこそ、その海藻も京都議定書の中へ見直しを入れて、世界的な問題にしていかなあかんと思っておるんで。そういう点も含めて、あとは県民全体の問題として、新しい水産研究所の体制をつくっていくということも言われましたんで、よろしくお願いをいたしまして、要望といたします。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十三番藤井健太郎君。
  〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行わせていただきます。
 まず、行財政運営についてお尋ねをいたします。
 地方分権推進法が平成七年に制定されて、ことしで十年になります。遅々として進まなかった地方自治体への権限と財源の移譲が、三位一体の改革という手法で、国、自治体側、それぞれの立場や考え方の違いを持ちながらではありますが、進められてまいりました。
 国は、十六、十七、十八年度の三年間で、国庫補助負担金について四兆円程度を廃止・縮減し、地方が主体となって実施する事業について、基幹税を基本に税源移譲を行い、地方交付税については財源保障機能を見直して縮小する、こういうものでありました。
 十六年度は、全国ベースでは国庫補助負担金の削減が一兆円、地方へ移譲された譲与税や交付金は六千五百五十億円で、全額補てんされず、おまけに臨時財政対策債を含む地方交付税が二兆九千億円カットされ、全国の自治体は青息吐息に追い込まれました。本県でも二百八十六億円の前年比減となりました。これは、警察費の一年分の予算が突然なくなったのと同じ事態でもありました。
 十七年度は、国と地方自治体側との合意による三位一体改革の全体像が明らかにされた上での予算編成でした。その内容には、義務教育費や国民健康保険負担金、その上に生活保護費や児童扶養手当など、国の都合によるものが入り込み、国庫補助負担金の廃止・縮減額四兆円に対して税源移譲はおおむね三兆円規模を目指すとされ、地方の固有財源でもある地方交付税もさらに縮減が進められることとなりました。
 本県では、十七年度地方交付税は大幅削減された前年度並みに見積もられ、国民健康保険や公営住宅家賃対策への補助金カット分の譲与税、交付金での全額補てんは見込まれず、三位一体絡みで五十二億円の減収となり、十七年度当初見込みで生じる百九億円の財源不足は県債管理基金からの繰り入れで補てんすることとなりました。結局、三位一体の改革は地方自治体の財源を一層窮屈にし、さらに国の地方財政対策により自治体財政の切り詰めが進められ、今後も縮小の方向が続くことは間違いがありません。
 バブル景気以降の起債に頼った経済対策で膨れ上がった財政を適正規模に戻すことは、後年度負担の軽減のためにも必要なことではあります。しかし、職員の年齢階層も無視した一律の人員削減や、本来自治体が担うべき福祉施設などを初め小規模補助金の一律カットなどは、自治体の存立意義を損ないかねない問題があると思うわけです。
 また、三位一体の改革によって自治体の裁量が広がったとはいえ、手放しで評価できない問題もあります。二次救急への対応として機能している病院群輪番制に対する国の補助がなくなり、県は診療時間が自由になったと評価していますが、補助金が一般財源化されるに伴い、救急医療機関が受け取る補助金の単価が従前より大幅に削減されるなど、住民の救急医療の受け入れ先である医療機関からは決して評価されていない、こういう問題もあります。
 三位一体改革についての評価は、県行政からの視点だけではなく、住民の視点から最終的にどのようになっていっているのか見届ける必要があると思います。来年度は、三位一体改革に二期があるとしたら、一期の仕上げの年として、また二期につなげていく年として重要な意味を持っています。
 そこで、知事並びに関係部長にお尋ねをいたします。
 今、これから新年度の予算編成作業が本格化しようとしているわけですが、三位一体改革の改革期間の最終年度となる来年度予算編成に当たっての知事の基本的な考え方をお聞かせください。三位一体改革をどうしていくのか。地方側の意見がどの程度反映されていくのか。特に地方交付税の扱いがどのようになるのか。また、新年度予算の規模、重点課題、予算編成のあり方などなど、新年度に向けての知事のお考えというのが今あるだろうと思うんですが、その構えとしてどういう気概を持って臨もうとするのかをお尋ねしたいと思います。
 二つ目に新地方行革指針について、これも知事にお尋ねをいたします。
 総務省が策定した地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針、新地方行革指針と呼ばれていますが、ことしの三月二十九日付で総務事務次官から都道府県知事並びに政令指定都市長に通知され、県内の市町村にも周知するように求めています。
 その内容は、都道府県、市町村すべての自治体に、新たな行政改革大綱の策定や従来の大綱の見直し、十七年度を起点とし、おおむね二十一年度までの事務事業の再編・整理、統合・廃止、給与・人員の削減、民間委託の推進など、国の示す九項目の課題の達成目標を数値化した集中改革プランを作成し、公表することとなっています。特に職員の適正化計画などは、退職者数、採用者数の見込みを明示して、四・六%以上の職員削減を目標とした平成二十二年四月一日における明確な数値目標を掲げることなど、きめ細かい内容となっています。もちろん、計画の策定に当たっては国のヒアリングも予定がされています。
 国が自治体に対して行政改革の推進を求める通知は、平成九年十一月以来、約七年ぶりになるのではないでしょうか。地方分権一括法が平成十二年四月に施行され、機関委任事務や通知・通達行政は基本的には廃止をされました。しかし、国の地方自治体に対する関与の仕組みは、助言、勧告、資料の提出の要求など自治事務においても強く残され、さらに国が都道府県知事に、市町村に対して助言、勧告をしたり、資料の提出をするように指示できるという、そういう新たな規定も盛り込まれています。
 私は、このこと自身が地方分権への逆流ではないかと、このように思うところなんですが、今回もこの規定に基づいて新行革指針の通知がなされました。地方分権の推進の立場に立つ知事は、このことをどのように受けとめておられるのでしょうか。また、市町村への対応はどのようにされたのでしょうか、知事にお尋ねをいたします。
 私は、自治体の行財政改革というのは、人から言われるまでもなく、最少の経費で最大の効果を上げることを日常不断に追求し、住民に奉仕するための組織と行政サービスをつくり上げていくことにあると思います。当然、その自治体ごとの改革すべき課題があって、取り組まねばならないテーマや手順も異なってくるはずです。それを全国なべて一律の課題で縛り上げるようなやり方、また県に、市町村に対してまでその役割を求めることには賛同できるものではありません。知事の所見を求めるものです。
 続いて、財政改革プログラムに関連してお尋ねをいたします。
 今や、三位一体改革と地方行財政改革は軌を一にするものとなってきました。三位一体の改革が自治体の行財政改革を促進する役割をも担っています。国の経済財政運営と構造改革に関する基本方針、骨太方針二〇〇三で、地方財政計画の歳出の見直し、地方交付税総額の抑制と財源保障機能の縮小、投資的経費の抑制などが掲げられ、これに呼応する形で多くの都道府県が、名前の違いこそあれ、財政の自主再建プランの策定に着手しております。それに加えて、十六年度の地方交付税の大幅カットが再建団体転落への警鐘を鳴らし、地方財政の危機感を一気に高めることになりました。多くの自治体がこの地方財政危機を乗り越えるために財政再建のための計画を策定し、実践に足を踏み出しています。
 本県では、平成十六年度から二十年度までの五年間を計画期間とする財政改革プログラムが行政内部で策定され、公表されております。その最大の目標は、計画期間の最終年度の赤字を再建団体転落ラインにとどめることに設定されているように、再建団体転落の回避となっています。地方自治体が自治体の機能を発揮して、住民に犠牲を強いるだけのものではなく、住民サービスの向上のための自主的な財政改革の推進を願うものです。
 そこで、財政改革プログラムについて、総務部長に二点お尋ねいたします。
 一点目は、十六年度決算と今後の見通しについてです。
 十六年度の決算が発表されております。財政改革プログラムは、十六年度当初予算をベースとして組み立てられています。十六年度決算に対してどのような評価をされているのでしょうか。
 十六年度当初九十七億円の財源不足が生じるとして、県債管理基金からの繰り入れで出発をいたしました。普通会計の十六年度決算では、実質単年度収支が二十一億円余の黒字となっています。財政調整基金の取り崩しはなく、県債管理基金は十八億円余の取り崩しで済んでいるわけです。一般会計では、県債管理基金からの取り崩しは二十二億円となっていますが、同時に起債の繰り上げ償還が二十億円近くできております。結局、一般会計の実質単年度収支、一億七千万円の赤字で済んでいるわけですが、財政改革プログラムと比較してどのように評価されるのでしょうか。
 また、十七年度の収支見通しとそれ以降の見通しをどのように持っているのでしょうか。これは総務部長から答弁をお願いいたします。
 二点目は、県民の声の反映と全体像を明らかにしてもらいたいということです。
 県民の視点に立っての行財政改革のあり方の議論が必要だということです。前の宮地総務部長は、昨年の九月議会で、財政改革プログラムを策定するに当たっては県民の意見も聞きながら実施していきたいと言われていましたが、どのように県民の意見を聞いてこられたのでしょうか。プログラムそのものに対するパブリックコメントはされていないように思います。
 県の改革プログラムでは、数値目標が掲げられているだけで、中身がよくわかりません。職員の四百三十名削減と言われていますが、これまで企業局の廃止や試験場からの事務職の引き揚げが行われてまいりました。指定管理者制度や新しい市ができること、そういったことで県の職員数削減が進むと思いますが、今後どのようにして進めるのか。また、教育委員会でも約四百名の削減が言われていますが、児童生徒数の減に対応するだけのものなのか、県立学校の統廃合を視野に入れたものなのか、県民生活とのかかわりが見えてきません。
 また、徹底した事務事業の見直しと言われていますが、県単独の住民生活に密着した福祉医療制度、また小規模作業所への補助金などがどういうことになるのか、全体像が見えないわけです。財政改革プログラムの全体像を県民にわかりやすく明らかにすることを求めるものです。
 また、県政に対する県民の声、要望、苦情など広く募集し、県民の生活意識や行政需要をしっかりと把握することが必要だと思います。同時に、県政についての広報と説明責任を十分に果たす手だても必要です。財政改革プログラムは、昨年十二月の「県民の友」に掲載されただけであります。これでは県財政と改革の方向は行政にお任せになってしまい、結局住民にとっては犠牲が強いられる、そういう姿になってしまうのではないでしょうか。
 続いて、国直轄事業の地方からの点検について。これは要望としたいと思います。
 国直轄事業を含めて予算が数億円単位の大型公共事業、これの総点検をしていただきたいということであります。ことしの予算編成要領で、大規模施設整備の抑制が掲げられました。総事業費五億円以上の事業については緊急性や効果等を検証する、また、着手済みの事業についても先送り、規模の見直し、事業費の縮減を検討する、構想中については新規着工を凍結するということでした。これは時宜を得た対応だと思います。
 前の総務部長は、二月議会で、事前協議を経ていない新規整備事業の要求はなかった、計画中の事業については規模、構造等を見直し、後年度負担にも留意して可能な限り工事費等の抑制に努めたと、県庁南別館の建設費を例にして答弁をされました。
 県負担金を伴う国の直轄事業についても、ぜひ視野に入れていただくことを要望したいと思います。
 例えば、住友金属西防波堤沖の埋立地、第二工区は発電所立地用地となっています。県のホームページによりますと、LNG(液化天然ガス)を使用燃料として合計三百七十万キロワットの出力を備えた火力発電所が平成十一年度に準備工事着手、十二年度に本体工事着手、十六年度中に一号系列百六十四・四万キロワットが稼働し、二十五年度までには二号系列二百五・六万キロワットが稼働する、このように県のホームページには記載されているわけです。
 それにあわせて、十万トンクラスのLNGタンカーが寄港できるように、国が平成十二年度から直轄事業として、総工費三百億円の予算で千メートルの南防波堤の築造工事を進めております。第三工区には県の公共岸壁があるわけですが、しかし、この南防波堤はLNGタンカーの寄港を主目的として建設がされています。しかし、肝心の発電所は、事業者の供給計画によりますと毎年のように先送りされ、今では平成二十七年度以降、十年先の運転予定となっています。
 現在、国はこの防波堤の完成年度を平成二十七年度以降とし、完成年度を明確に決めずに工事だけは進めている。県も毎年多額の負担金を計上しております。緊急性があるようには思えません。見直しを提言すべきではないでしょうか。今回、私の意見として申し上げておきたいと思います。
 次に、社会保障についてお尋ねをいたします。
 平成十六年、昨年の十二月に、内閣府広報室が「日本二十一世紀ビジョンに関する特別世論調査」の結果の概要を報じています。その中で、「豊かで快適な国民生活のために重点を置くべき分野」という設問に対して、「少子・高齢化対策」は一位、「持続可能な社会保障制度の構築と雇用の確保」が同率で二位となっています。同時期に行われた内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」では、将来の自分の日常生活への不安を感じる高齢者が六八%になっていること、また、「国民生活に関する世論調査」では、日常生活での悩みや不安を感じていると答えた人が六六%あります。その内容は、老後の生活設計が不安が五二%、自分の健康四四%、今後の収入や資産の見通し三九%という順番になっています。
 これらの結果を見ても、現在と将来の生活に対する不安や悩みを多くの国民が感じていて、子供を産み育てられる環境づくりとなる少子化対策や現在と将来の暮らしの不安を取り除いてくれる医療、介護、年金など、社会保障制度の拡充に期待を寄せていることがわかります。
 ことしの二月議会での私の社会保障に関する質問に対して、知事は、県民の中で弱い立場にある人が厳しい状況に置かれないように県として弱者に優しい県政に少しでも配慮していきたいと答弁され、福祉保健部長は、持続可能な制度となるよう再構築を進める、地域密着型で福祉サービスが必要な人にこたえる仕組みづくりが大切と答えられました。
 この夏、失業中の夫が脳卒中で倒れて救急車で病院に運ばれ、集中治療室で治療を受け、一命は取りとめたけど、幼児を含め四人の子供を抱えて生活する中で、国保料が払えていない、保険証がなく医療費が払えない、生活もどうすればいいのか途方に暮れているという相談がその人の奥さんからありました。こういうときに社会保障が有効に機能することが求められているわけです。
 倒産、失業、病気や事故による生活苦、いつ我が身に襲ってくるかわかりません。まさに弱者に優しい県政であり、また地域でも住民同士が支え合っていける、そういう町づくりの推進が本当に求められていると痛感いたします。
 そこで、知事並びに関係部長にお尋ねをいたします。
 国の方では、御承知のとおり、社会保障構造改革が着々と進められてきています。既に年金改革が実施され、改正介護保険法が来年四月から本格的実施に移されます。廃案となった障害者自立支援法もこの特別国会に再提出が予定され、来年は高齢者医療制度を中心に医療制度改革が進められようとしています。
 ここ一、二年で社会保障制度改革が集中的に行われようとしているわけですが、こういった国の動向ともかかわって、今現在住民が求めている、住民が期待する社会保障制度のあり方、知事はどのように考えておられるのでしょうか。また、和歌山県政でどういう姿の社会保障や福祉のあり方を描いているのか、お尋ねをいたします。
 二つ目に、生活実態の把握をどのようにされているのか、福祉保健部長にお尋ねをいたします。県民の生活はどのようになってきていると認識をされているのか、どのように把握されているのかということです。
 所得の減少が言われております。そういう中で、税や社会保険料などの負担は確実にふえてきています。国民年金の未加入者や年金保険料の未納がふえ、国民健康保険料も払えない世帯が増加傾向にあります。生活保護率も上昇を続けております。県民の所得間格差も開きつつあるように思いますが、このような県民生活の実態をどのように把握されているのでしょうか。
 三つ目に、税制改正による保険料負担の増大への対応についての問題です。
 十六、十七年度税制改正によって、六十五歳以上の公的年金所得者の最低控除額が百四十万円から百二十万円に切り下げられ、老年者控除五十万円も廃止、住民税では、六十五歳以上の所得百二十五万円までの非課税措置の廃止が行われました。個人住民税については来年度からの実施となります。収入はふえないのに非課税世帯から課税世帯へ税負担がふえることはもちろんですが、国民健康保険料や介護保険料にもはね返ってきます。
 和歌山市の試算では、国民健康保険料で二万一千世帯が影響を受け、中でも、法定減免から外れ、国保料が四倍近くにふえる世帯もあるということや、介護保険料でも今回の改正により本人非課税から課税となり、保険料区分が変更し、保険料が一・二五倍の負担増となる人が八千五百人見込まれることが明らかになっています。
 県はこの問題をどのように受けとめているのか。県民生活への影響をどのように考えているのでしょうか。福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 また、十七年度の税制改正に当たり、政府・与党の税制改正大綱には、個人住民税の制度改正に伴い国民健康保険料等の負担が増大する問題については、地方分権の趣旨にかんがみ、関係市町村において必要に応じ適切な措置を講ずることを期待する、このように言われています。住民負担が増大することは認め、この解決を自治体へゆだねるとしています。住民側からすれば、ぜひこの期待にこたえてもらいたいと思うわけですが、市町村任せにせず、県も一緒に考えてもらいたいと思うのです。どのような対応を考えておられるのか、これも福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 最後に、改正介護保険法の一部実施についてお尋ねをいたします。
 介護保険が発足して、ことしで五年目です。制度見直しを五年ごとに行うとなっており、持続可能な介護保険制度の構築ということで、高齢者の自立支援と尊厳の保持を基本として、予防重視型システムへの転換、施設給付の見直し、新たなサービス体系の確立、サービスの質の向上、負担のあり方、制度運営の見直し、介護サービス基盤の整備などを柱とする改正介護保険法が、基本的には来年四月施行となりますが、その中の施設給付の見直しだけことしの十月一日から前倒し実施がされます。
 その内容は、ショートステイを含む介護保険三施設──特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の居住費と食費が保険給付から外され、全額自己負担になるというものです。通所系サービスの食費についても保険給付の対象外とされます。
 十月一日実施を前にして、幾つかの施設を訪問して実情を聞かせていただきました。どこへ行っても苦慮しているとのことでした。これまで食事代は、管理栄養士がいて適時適温給食がされていれば、日額二千百二十円の算定で利用者の自己負担は七百八十円。保険からはその差額が施設に支払われていました。今回の改正で、保険からの支払いが廃止をされ、自己負担の標準額が千三百八十円と設定されています。利用者は六百円の負担増となり、施設の収入は七百四十円の減額となるんです。百床の施設なら、利用者全員では年額二千百九十万円の負担増に、施設は二千七百万円の減収となってしまいます。居住費は二人部屋以上で月一万円、ユニット型個室では月六万円が自己負担となり、その分、施設への保険からの支払いは減額となります。所得の低い人には補足的給付ということで、自己負担の上限が設けられていますが、既に居住費については利用者に負担を求めている施設もあります。
 個室では、七万円近い負担増を想定している施設もありました。居住費と食費が全額自己負担になることによって、入所者が安心して生活をそこで続けることができるのか、施設にとっても、利用者に迷惑をかけずに安定した運営を維持するにはどうすればいいのか、非常に悩んでおられました。
 入所している人の話を聞きますと、今個室に入っているが、今でも負担がしんどい、大部屋にかわりたいと施設に言っているが空き部屋がないと言われた、自分の年金だけで足りるのか心配、家族に負担を頼むのがつらい、こういう話も聞かされました。ある施設では、この値段では個室の利用者が見込めず値引きせざるを得ない、食事の質を落とさずにやっていけるか今検討していると、こういう話もありました。
 県は、十月改正の問題点をどのように把握され、対応されようとしているのか。利用者が安心して生活し続けられるためにも、実情を把握し、国への働きかけを初め、県としても必要な対応を急いで検討するべきではないでしょうか。これも福祉保健部長にお尋ねをいたしまして、私の第一問といたします。ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず新年度予算編成についての御質問ですが、地方分権という観点から、私は、この三位一体の改革は何としてもある程度和歌山県、地域ごとに痛みが伴っても達成していかなければならないものだというふうに思っております。ただ一方で、地方公共団体間に大きな財政格差があるということも、これまた事実でございますので、そういうことについては、適宜適切に地方交付税等の調整措置によって、そういうところが一気に困ることがないようにしていくということは必要だと思いますので、そういう観点から国に対しても大いに働きかけていきたいと思っております。
 そういうことの中で来年度の予算編成ということですが、これは先般、ほかにも御質問があったときにもお答えしたんですけども、当然のことながら、国、地方合わせて非常に厳しい財政状況の中で、切るべきものは切り、さらに取れる歳入は思い切り取っていくということの中で、やはりめり張りをつけて、ようやく景気も回復基調にある中で、和歌山県がおくれることのないように、成長の芽を伸ばすような形での予算編成をしていきたいなと、今漠然と考えているところでございます。
 次に新地方行革指針についての考え方ですけども、これは以前、地方行革指針というのを旧自治省が各地方公共団体につくるのを求めたことがあります。私もそのときにいたんですけども、そのときと今回の新地方行革指針を求めている総務省の立場では、地方と国の立場ということでは、もう全く状況が変わっているというふうな認識に立っております。
 私どもは、国から言われたからこういうことをやるということじゃなくて、当然こういうふうなことは自分たちでやっていく、それを国の方がある程度一定、今こういうふうな時期であるので確かめてみたいというふうな観点からやるんだろうなというふうな認識でおりますし、そしてまた、こういうことをつくることについての主体性ということは、当然のことながら地方の方にあるというふうな考え方でございます。
 ただ、こういうことを全国的にやりますと、やはり問題があることは、今、大阪市の例なんか見てもらっても、どこの県とか自治体でも同じようなことがあることは間違いありませんので、そういう中では、一斉に調査して、自分のところはどこが問題かというふうなことを改めて認識するということは非常に意義のあることですし、そういう観点で自主的な努力を行っていくということのきっかけにしていくということは、これは僕は非常に大事だと思います。
 そしてまた市町村についても、こういうことを県の方が、やりなさいとかしなさいと、そういう立場じゃなくて、当然のことながら、こういう時期に地方分権の立場から一緒に進めていこうという観点からの助言といいますか、一緒にやっていこうという観点での関与ということを考えているわけでございまして、こうしなかったらけしからんとか、ああしなかったらけしからんというような気持ちは全くないということを申し上げておきます。
 最後に、社会保障のあるべき姿についての考え方ということですが、私は、一つは持続可能性ということが非常に大事だろうと思っております。今、昔と違って、どんどん社会の状況、人員構成、所得の位置づけとかいろんなことが変わってきている。そういうことに適宜適切に対応できるような制度設計ということを考えていかなければ、今はよくても将来の人が大いに不幸になるというふうな観点から、これは果断に制度設計を考えていかなければならないと思います。
 そしてまた、そのときには当然のことながら既得権益ということを切り捨てていくということが必要になってくるわけで、これは例えば、僕自身も公務員を長くしておりましたので、そうすると、その上乗せのところがなくなるというふうなことは、そういう公務員にとっては物すごくやっぱり負担になることなんです。だけど、それも今の大きな、将来のことを考えれば必要であるということであれば、そういうことについても十分国民に理解を求めながら進めていく決断ということがこの時期、求められていると思います。
 ただ、その二つの点は非常に大事なんですが、第三点として大事なのは、本当に社会保障ということが必要な人、この人に重点的に物事が当たっていくような形にしていかなければ、これは何のためにある社会保障かわからなくなるというふうなことで、その点については、今、非常に新自由主義的な立場で、どちらかというと弱者と強者が分かれてくるような時代になってきているので、本当の弱者の人、その人たちが生存していくのに必要な社会保障ということについては今まで以上にきめ細かに対応していかなければならない。この三点で社会保障ということを考えていかなければならない、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 総務部長原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 昨年策定いたしました財政改革プログラムに関する二点のお尋ねがありました。
 まず、平成十六年度決算を受けて、十六年度の当初予算をベースに策定したプログラムに影響があるのではないかという御指摘でございます。
 十六年度決算では、職員の給与カットなどの歳出削減に取り組みました結果、黒字を確保したものの、本県の財政は厳しい状況にございます。財政改革プログラムとの関連で申し上げれば、十六年度末の財政調整基金と県債管理基金の残高は、黒字決算を確保したこともありまして、プログラムで見込んだ額を上回って三百四十七億円となっております。
 さらに、十七年度当初予算におきましても、職員定数の削減などに取り組みました結果、当初予定していた財政健全化債を発行することもなく、収支不足額はプログラムで見込んでいた額とほぼ同額の百九億円となっておりまして、現在のところ、財政改革プログラムで想定している財政の姿と大きな乖離もなく財政は推移しているものと思っております。
 十七年度以降の見通しにつきましては、本県をめぐる財政環境がすぐに好転するというふうには考えにくいわけでありまして、引き続きプログラムに沿って改革を進めてまいりたいと考えております。
 次に、財政改革プログラムに県民の声の反映をさせ、さらに全体像を示すべきではないかという御指摘でございます。
 財政改革プログラムにつきましては、御指摘にもありましたが、「県民の友」に掲載をいたしますとともに、県民の皆様に御意見を伺いながら実施しているところでありまして、また来年四月に実施いたします振興局の見直しについては、パブリックコメントも実施したところであります。
 今後とも、「県民の友」あるいはマスコミへのPRなどを通じまして情報公開や県民の声の把握に努めますとともに、内容も十分県民に説明してまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 社会保障についてのお尋ねの中で、まず生活実態の把握はどうかということでございますけれども、県民の平均所得は平成十年から平成十四年にかけては微減である一方、国の制度改正等により県民の税や社会保障の負担が増加しておりまして、国民年金や国民健康保険の保険料の未納も増加しているというふうに考えてございます。
 低所得者の割合を示します一つの指標である生活保護の保護率につきましては、平成九年を境に増加傾向に転じ、平成十七年六月には一〇・七三パーミルとなってございます。いずれにしましても、社会保障負担につきましては、生活実態を正確に見きわめたきめ細やかな配慮が必要であると認識をしております。
 次に、保険料増大への対応についてでございます。
 このたびの税制改正による国民健康保険料、介護保険料への影響についてでございますが、平成十六年度及び十七年度の税制改正により年金課税の見直しや高齢者の非課税限度額の廃止が行われ、保険料が上昇することとなる被保険者もございます。国におきましては激変緩和措置などの対策を検討しているところであり、県としましても、保険料が上昇することとなる方に対する対策を引き続き国に要望してまいりたいと思います。
 次に改正介護保険法の一部実施についてでございますが、今回の法改正によりまして、本年十月から介護保険施設等における居住費、食費について──いわゆるホテルコストでございますが──介護保険給付の対象外として介護に関する部分に給付を重点化することとなります。この見直しは在宅生活との負担の公平性の観点から行われたものでございまして、保険料の急激な上昇をできるだけ抑え、介護保険制度が持続可能でかつ将来にわたり耐えられる制度とするために行われたものと認識してございます。
 見直しに当たっては、居住費、食費の負担が低所得者の方にとって過重とならないよう、所得に応じた低額の負担限度額を設けるとともに、社会福祉法人による利用者負担の軽減制度の拡充などの負担軽減措置が講じられてございます。
 また、現在の利用者が引き続き入所できるよう、十月一日に既に従来型個室に入所されている方については、当分の間、多床室の介護報酬を適用し、利用者負担を軽減するなどの経過措置が設けられたところでございます。
 県としましても、利用者の方々がこの先も安心して入所していただけるよう、国、市町村、介護保険施設などとの連携を密にし、低所得者対策などの適正な実施について必要な支援を行うとともに、介護保険施設等に対し安定した運営が継続できるよう必要な指導を行い、介護サービスの質の確保、向上に努めてまいります。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 再質問、おおむね知事にお伺いしたいと思うんですが。
 新年度の予算編成の時期を迎えて三位一体改革がどうなるのかというのが大変懸念をされ、その中で、地方財政計画、国の概算要求を見ても、これは地方には厳しいものがあるなというふうに思っています。
 そういう中で、どのようにして和歌山県の地域の経済を元気にしていくのか、県民の暮らしを守っていくのか、そういうことが求められていると思うんですが、その中では、財政改革プログラムが国の新行革指針に基づいて見直しをされて一年間延長した計画をつくるということになっているようでありますが、私は、こういう厳しいときだからこそ、こういったプログラムそのものについても直接県民の意見を聞くといいますか、声を聞くというんですか──このプログラムそのものについてのパブリックコメントというのはされてないわけですよ。
 行政内部で努力をして経費を節減できる、そういうところは大いにやっていただいたらいいと思うんですが、ただ県民向けのいろんな事業にしわ寄せが来るという問題については、これはぜひ決定をする前に住民に相談をかけていただいて、こういうことを考えているんだがどうか、これをすることによってこうなるんだ、ただ県民に犠牲を押しつけるだけのものではないんだという、その辺のやりとりというのがやっぱりこれから必要になってくるだろうと。そうでないと、県民の県政に対する信頼というのがなかなか築きにくいということになってくるんではないかと危惧をするわけです。
 そういう意味で、知事に対して、この新行革指針に基づく見直しの過程において、決定したからこうだということにせずに、ぜひ住民にも事前に明らかにして住民の意見を反映させていく、やりとりをしながら、まさにキャッチボールをしながらつくり上げていくということが必要ではないかと思うんですが、知事としてその辺どういうふうに考えておられるのかということ。
 それから、社会保障についてです。
 これも、社会保障アクションプランの編成作業が進められております。今一番懸念するのは、知事もおっしゃいましたが、持続可能な制度ということで、今、受益と給付のあり方、それから負担の公平性ということが言われる中で、保険料とか利用料とか県民負担がふえてきておるわけですよ。それは部長からも答弁があったとおりだと思うんですね。結局、そのことによって制度そのものが崩壊をしてしまう。国民年金なんかはまさにそういう状態になってきていると思うんです。だから、受益と給付の公平とか負担の公平ということで持続性ということを追求すると、その制度そのものから阻害をされる。このこと自身が大きな社会問題になってしまうということでは、社会保障の役割というのは発揮できないと思うんですね。
 知事は、社会保障、本当に必要な人に対して何とかせなあかんというお話がありました。部長からは、負担については、所得に応じた、収入に応じたきめ細かな配慮が必要ということがありましたけど、国に要望するということに今の答弁だったらとどまっているんですよね。
 知事は、必要な人には必要な手だてが、きめ細かな対応が必要だとおっしゃいましたが、じゃ、国に要望するだけじゃなくて、県として直接その支援の手を差し伸べていくんだと、市町村に対しても、基礎的な自治体がやらなくてはいけないということになるんですが、そこに対して県としても必要な手だてを差し伸べていくという考えはないんでしょうか。
 それと、私は、社会保障問題を論じるときに、やっぱり社会保障制度の支え手を厚くしていくということが一方では大事だと思うんですね。ところが、今はもう薄くしていく方向ばっかりですよ。出生率が下がっていく。企業の中を見ても、常用雇用から非常勤へ──アルバイト、パート、派遣労働、ますます身分や収入が不安定な労働環境、雇用環境というのはつくられていっているわけで、そこのところも改善していかないと社会保障の支え手を厚くできない。これ、そういう社会システムに変えていくということも同時に私は必要だと思うんですね。そのことについて知事はどう考えておられるのか、どうしていこうとされているのか。そこのとこも大事な問題だと思いますので、以上、その三つの点、知事から御答弁をぜひいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、今度の新しい財政計画というふうなものをつくるときに県民の人の考え方を聞くのは、これは非常に大事なことなんで、今、どんなふうな仕組みでやるかはあれですが、今いろんなパブリックコメントのとり方がありますので、こういうようなことについては十分配慮していきたいというふうに思っています。
 それから、何でも国にやってくれ、国にやってくれということじゃなくて、県で当然やれることはやっていかないかんし、特に制度のすき間、谷間に落ちて、先ほどのお話にあったような、どうしようもなくなっているような人に手を差し伸べるようなことは、やっぱり基礎的な自治体、そしてまた県というふうなことがやれる分野だと思うので、そういうふうなところについては力いっぱいやっていかないといかんと思うんです。
 ただ、問題は、「入るをはかって出るを制する」という言葉があって、幾らでもお金が入ってくるんだったら、ありとあらゆることをやれば、もう一番好ましいことなんだけど、それができない中でいろいろ苦労しているというふうなことをやっぱり御勘案願いたいということを思います。
 それから一方で、確かに常用雇用がなくなって、ニートの問題であるとか、パートタイマーのいろいろな労働環境の悪化の問題とか、こういうのが社会問題になっていることは十二分に承知しております。県としても、できるだけそういうふうなことじゃなくて、若い人に技術がつくようないろんな施策というふうなことを考えていかなければならないということで現にやっているわけですけども、一方で、日本の国がそういうふうな雇用形態を変えてきたことによって、血を流すような努力によって、この十数年企業が変えてきたことによって今日本の景気がようやく回復しつつあるという事実もこれは厳然たる事実なんで、このあたりをうまく兼ね合いをとりながらやっていかなければならないと。そういう中で、自治体はやはり弱者の方になるような人に優しい目を向けるような政策ということを可能な限りやっていきたいと、こういうふうな考え方です。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 今、お金の問題もあるんで、可能な限りやっていきたいというお話でありました。
 十月一日から改正介護保険法の施設給付の問題、食費と居住費の自己負担が始まります。これは国の制度でそうなってるものです。しかし、これは都道府県や市町村によってはあらわれ方が随分違うと思うんですね。所得段階によってそれぞれ負担区分があります。新四段階以上は、これはもう自由に設定できるというふうなことにもなっておりますが、ただ年金所得のぎりぎりのライン、段階がぽっと一個上がるというとこら辺が大変な負担になるだろうと思うんですね。
 そういったところを十分に県としても見きわめて、実情がどうなっているんだろうかということを把握しながら、住民の皆さんが、入所者の皆さんが安心して入所し続けられる──また施設にとっても、経営が安定しないと大変なことになってしまうんですね。そういう点も含めて、県として必要な手だてはとっていくんだということをぜひはっきりと言ってもらいたいなと思うんですが、その点、知事はどうでしょうかね。言えなかったら要望にしておきたいと思うんですが──要望として、来年までこれやっていくわけですが、ぜひその辺の手だてをとっていけるように、また十分に配慮をしながら、市町村の状況も聞きながら、弱者がさらに弱者になってしまうということにならないようにしていただきたいという点を申し上げて、私の質問を終わります。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十分休憩
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  午後一時四分再開
○議長(吉井和視君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十六番山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 皆さん、こんにちは。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従って一般質問をさせていただきます。今議会も貴重な質問の機会を与えていただけたことに感謝をして、心を込めて質問、提案をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 さて、暑い夏も終わり、もう秋です。時間のたつのが本当に早く感じますが、この夏は、多くの先輩・同僚議員の皆様も選挙に大変な御苦労をされたものと思います。私も、無所属の立場で高校の先輩となる候補の方を応援させていただいたものですが、大変な思いをいたしました。
 政治はなかなかつらいことが多いと実感させられるきょうこのごろですが、しかし、選挙においてお手伝いをする中で、いろいろと勉強になることもございました。その中で、特にトヨタ自動車の仕事の進め方、その真髄といったことについて、非常におもしろいお話をお聞きいたしました。これは今の行政運営にも参考になると思いますので、少し御紹介させていただきたいと思います。
 トヨタでは、うまく事を運べた、大成功したものがあれば、翌年には必ず抜本的な見直しを行うということです。うまくいった、成功したものがあったら本来は、行政的な発想で言えば、うまくいったんなら来年も同じように事を運ぼうというのが普通の発想だと思いますが、しかしトヨタの奥田会長は、先頭に立って、そういった停滞する考えを厳しく戒めるそうです。ことしうまくいったのなら、それは社会情勢、消費者のマインドなどが一致したピークであって、来年は社会情勢、さまざまな環境も当然変化するわけで、ことし成功したものを同じように繰り返せば、逆に来年は成功することはないという考え方です。社会は一刻もとどまってくれるものではなく、必ずその変化に対応していかなくてはいけない。現在の行政にとっても非常に参考になる話だと思います。
 今、県としても停滞していることは許されず、これまで皮膚感覚で身についているスピード感を変えていく必要があります。のんびりと一日千秋の思いで仕事をしていては決して望むべき成果を上げることはできません。特に、地域間における厳しい競争環境が生まれようとしている今日には、より積極的に状況に応じた判断を行い、さまざまな取り組みを進化、加速させていこうとする姿勢が必要とされます。県民から大きな期待を寄せられる政治、行政に停滞は許されません。さらなる成果を上げるためにも、私自身も立ちどまることなく、徹底した活動を進めていかなくてはならないと強く感じた話でした。
 それでは、第一問目で、立ちどまらない和歌山県の挑戦として、地域の特徴を伸ばす取り組みのさらなる進展、観光医療産業の振興策、恵まれた和歌山の自然などの観光資源と予防医学、健康サービスなどとの連携を加速させる取り組みについて。
 さて、今、三位一体の改革などを通じて地方分権が進展し、分権型の国家像が模索される状況にあります。私自身も前回の議会で御報告申し上げたドイツでの調査を経験して、改めて分権国家のあるべき姿、その基本理念として、魅力ある地域の集合体として魅力ある国家が形成されるということを実感しました。
 そんな中で、我が国では、過去、金太郎あめとやゆされた地方の状況を省みて、将来を見据えてどういった取り組みが必要とされるのか、真剣な検討が各地域で進められようとしています。そこでは、地方も生き残りをかけた激しい競争環境が生まれ、地域の特性を生かした徹底した個性化、ブランド化が必要とされる中で、それぞれの地方の知恵比べが始まっています。
 そんな中、今、和歌山県でも木村知事のもと、都市との交流の視点から、半島に位置する条件も含めて、地方である特性をとらえたさまざまな施策が積極的に推進されています。今議会冒頭の知事説明の中でも述べられていましたが、緑の雇用事業に始まり、農業をやってみようプログラム、また青の振興和歌山モデル事業など、全国的にも注目を集めるさまざまな取り組みが実行されています。地域の特徴を伸ばすそれぞれの取り組みは重要なもので、県として努力されていることは大いに評価しつつも、しかし現実問題として、和歌山の置かれた客観情勢は、やはりまだまだ厳しいのが実際のところです。
 国土交通省は、この九月二十日に、二〇〇五年の都道府県地価調査を発表しました。先日、浦口さんも触れられていましたが、「日経流通新聞」によると、商業地は、東京都と東京都区部がともに一九九〇年以来十五年ぶりに全体で上昇に転じ、また都市再生事業などがうまくいっている札幌、福岡市などの地方都市でも上昇する地点があらわれて、全国的に見ても土地価格の下落状況は下げどまりつつあるとの認識が示されていました。関西、大阪などでも大阪市天王寺、阿倍野、旭の三区、また京都市上京区、兵庫県芦屋市などでは平均値をとっても上昇していて、京阪神地域においては上昇や横ばいに転じた地点が目立つようになっているようです。
 しかし、私たちの和歌山については、まだまだ厳しい状況が続いています。調査対象となった住宅地、商業地を合わせて全国で二万六千五百二十一地点のうち、下落率が最大であった十の地点が公表されていましたが、その中で、和歌山は何とそのワーストテンに二カ所も入る状況となっています。第五位にマイナス二二・二%の下落として和歌山市本町一丁目、そして第七位に和歌山市有家字寺田のマイナス二〇・一%と続く状況です。
 この地価というのは、非常に重要な地域の価値をはかる物差しであり、その地域の現在、未来の可能性を示すバロメーターとも言われます。当然、価値の高い地域、魅力のある地域の価値は高くなるわけで、現在の和歌山の地価が下げどまらない状況については、その現実をしっかりと受けとめることが必要です。
 もはや今の厳しい和歌山の現状については、決して小手先の取り組みで改善されるものではないことを覚悟して、今こそ、つらく厳しいときですが、長期の展望に立って和歌山の地域というものを根本的に生まれ変わらせていく努力が必要とされているんだと思います。
 そこでは、やはり和歌山の地域資源を生かして和歌山独自の魅力を磨き上げ、地域としてのブランドづくりを進めていくという、今、県が取り組んでいるものを辛抱強くやり抜く決意が必要で、あわせて今重要なことは、できるだけそれらの取り組みをスピードアップさせていくということが望まれています。
 そこで今回は、これまでも提案してきました和歌山の特徴である恵まれた自然環境を生かした観光と健康サービス、予防医学などを組み合わせた取り組み、いやしの地和歌山のブランドづくりを加速させる提案をさせていただきたいと思います。
 私自身、初めて県議会に登壇し、最初の議会質問で提案させていただいてから、その後も民間企業などを含め、さまざまな研究機関が行う勉強会に参加させてもらってくる中で、やはりこの観光と健康サービス、観光と医療、特に予防医学などを組み合わせた取り組みは日本の将来にとっても欠くことのできない産業となるものであり、和歌山にとっては地域の魅力創造、地域の価値を高めるものとして非常に有効な取り組みであると改めて確信しているところです。
 ことし三月にも、厚生労働省、国土交通省の協力を得て本県で進められていた調査事業「こころの空間・癒しの交流づくり」に関する調査報告書が出されていますが、そこでも改めて、この観光資源に健康サービス、医療、特に予防医療の付加価値をつけた取り組みが将来にわたって大きな可能性のあることが示されています。
 さて、そんな中で、現在の和歌山県の観光、医療にかかわる具体的な動きとしては、本宮町・熊野エリアで熊野健康村構想として県職員の皆さんが努力をされて、さまざまな成果を上げつつあります。しかし、今後は、さらにそれらの取り組みを加速させていくことが必要とされます。
 本県には、熊野地域だけではなく、まだまだ県下全域を対象として「観光医療」といったくくりで取り組める可能性のある素材がたくさんあります。それらをどのようにして短期間のうちにうまく事業化させていくことができるのか、知恵の絞りどころだと思います。そこでは、あくまで行政は縁の下の力持ちであり、主役は民間で、民間の事業者にどれだけ活躍してもらえるのかが重要なポイントとなります。
 これは知事もよく言われていることですが、民間の事業者の皆さんが活発に事業を行える環境づくりをするのが行政である。しかしながら、単にほうっておいて、勝手にこちらの望む事業を行ってくれるわけではありませんので、政策によって誘導することは欠かせません。民間の事業者の知恵、アイデアをうまく引き出して、民間事業者が主体となって積極的に事業を行ってもらえる環境づくりを進めることが今急がれます。
 そこで提案ですが、現状でまず取り組むべきものとして、県内事業者のみならず、外部からの資本、事業者を呼び込む呼び水となる補助、助成、優遇などの制度整備について御検討願いたいと思います。
 これまで県でも、職員の皆さんが懸命な努力をしていただき、幾つかのモデル事業を立ち上げてくれていますが、しかし今後は、並行して外部からより多くの協力者を得る努力を一気に進めるべき時期に来ています。観光と健康サービス、予防医学などを組み合わせた取り組みに興味を示す全国の事業者に呼びかけて、ぜひ和歌山県を舞台に魅力ある事業を推進してもらう。具体的な制度設計については、最初は全く新しいものを考えなくても既存の制度をうまく組み合わせるなど、これまでのものを活用しながら実現していけるものと考えます。
 また、制度を整備する上で重要なポイントとして、とにかく魅力ある支援制度を早急に整えて、全国から多くの事業者の集積を図ることが大切です。地域においてブランド化を進める有効な手段としては、共通のコンセプトを持って事業を進める事業者を集積させることが何より重要となります。そこから集積のメリット、スケールメリットを引き出す。一業者でやるよりも、共通の考え方、コンセプトを持った多くの事業者が集まることで、それぞれに宣伝、集客などで相乗効果を上げて投資効率を高めていくことが期待できます。魅力ある事業の集積が始まれば、そこからは行政が特に手を出さなくても連鎖的に好循環が始まり、さらなる事業者を引き寄せることにつながります。
 現状であれば、全国的にもさまざまな動きは出ていますが、まだ観光医療、健康サービスを目的とする事業者の集積は可能なタイミングだと思います。早急に支援体制、支援制度を整えていただいて、できるだけ早い段階で幾つかの核となる事業を実現させてもらいたいと思います。
 また、この支援制度を整備することについては、そのこと自体にも大きな意義があります。支援制度をつくるところから既に和歌山のブランド化が始まります。それは、情報発信といった視点から新たにつくる支援制度を売り出していくことで、和歌山の考えていることを多くの人に知ってもらうきっかけとなり、いやし、健康、観光和歌山といった情報発信の一つのコアとなります。和歌山県が未来に向けてどういった地域になろうとしているのか、どういった方向で地域の自立、ブランド化を図っていこうとしているのか、そのことを理解してもらう一つの重要な取り組みとなるのです。
 さて、そこで知事にお伺いいたしますが、昨年、ことしと熊野健康村構想に取り組み、また調査事業などを行ってきていますが、その調査報告の内容などを受けて、改めて豊かな和歌山の自然などの観光資源と予防医学、健康サービスを結びつけた取り組みを県内全域で進める意義、その可能性についてどのように認識されておられるのか、御所見を賜りたいと思います。
 また、あわせて、目の前の課題として、和歌山県内の事業者のみならず、県外の事業者を含めて民間の投資、事業を呼び込む呼び水となる支援制度、支援体制の整備を早急に進めてもらいたいと考えますが、その取り組みについても御見解をお伺いいたしたいと思います。
 続きまして、産業振興に係る取り組みについて。
 この九月定例議会のタイミングは、来年度を見越して、予算また組織、機構の改革を提案させていただくのに非常に大切な時期に当たります。このタイミングにおいて、改めて私自身がこれまで議会で取り組んできたわかやま産業振興財団を初めとする産業振興施策にかかわる諸問題について、これまでの進捗状況の確認とあわせて幾つかの新たな提案をさせていただきたいと思います。
 まず、この産業振興にかかわる最初の質問として、知事に現状における和歌山の景況認識と産業支援に対する姿勢についてお伺いしたいと思います。
 今、三位一体の改革、財政の構造改革などにより、地方にとってはある面ではいよいよ痛みも出てくる来年、平成十八年度となりそうですが、そこでは産業振興に係る取り組みについても、国として進めてきた幾つかの事業について施策の統合・廃止などが進められ、国庫補助の削減も現実のものとなりそうです。
 そんな中、産業支援の知事の意気込みをお聞かせいただきたいと思うのですが、今、和歌山県も産業の立て直し、再構築といったことで重要な局面に来ています。あくまで産業の再生、経済の立て直しなくして将来のどんな施策の充実もあり得ないわけで、経済の語源となる「経世済民」の言葉どおり、しっかりと経済を安定させて県民の皆様に将来への希望を持っていただかなくてはなりません。特に産業政策の取り組みについては、国も力を緩めようとする中で今が肝心なところであり、これまで県として力を入れて進めてきたものについては、単に国からの支援が削減されるということで、同じように力を弱めてはいけないのだと考えます。
 そもそも産業支援というのは、経済環境、景気によって伸び縮みするものであり、景気がよくなれば支援策を縮小するのは当然ですが、しかし悪ければ拡大させていくべきもののはずです。
 そんな中で、中央政府は国全体を見ての景況判断について、踊り場を脱して成長過程にあるとの認識を持って産業支援を縮小する方向を示していますが、しかし地方の現実、特に和歌山などでは景気の底入れというところまでは来ておらず、まだまだ厳しい状況が続いています。国の施策はあくまで画一的で、しかし、経済浮揚の実態が特におくれる地方においては、国の方針どおりに進むのではなく、県として毅然とした対応をすべきだと考えますが、そこで知事に、現在の景況認識と平成十八年度に向けた今後の産業支援に対する取り組み姿勢について、その基本的なお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 続いて、わかやま産業イノベーション構想について。この構想については私自身も大きな期待を持ってこれまで議会でも取り上げさせてもらいましたが、多くの事業も軌道に乗って、当初の思惑に近い形で進んでいるようです。
 私も、友人何名かの若い経営者にこの取り組みを紹介し、一緒に話を聞きに行きもいたしました。時宜を得た事業だと多くの人が評価されていましたが、さらに今後に期待しつつ、現状の取り組み内容を改めて確認させていただきたいのですが、まず、平成十六年六月一日に、県庁組織の再編とあわせてテクノ振興財団と中小企業振興公社が統合されてわかやま産業振興財団が誕生しています。そこでは、新規創業や新分野進出、技術革新、経営革新など多様な事業を総合的にサポートする体制が整えられ、これまでばらばらの窓口で進められていた産業政策をワンストップで解決していく取り組みの有効性が強調されていますが、具体的にここまでどういった成果が出てきているのか。今後の展望とあわせて商工労働部長に御答弁をいただきたいと思います。
 また、わかやま産業振興財団では、私自身強く要望していた民間企業出身者の活用についても積極的な取り組みが進められているようです。民間企業の優秀な人材を財団のラインの部長に思い切って登用するなどは、非常に評価されるべきものと考えます。経営支援部長として松下電器産業から木瀬良秋氏、花王からはテクノ振興部長として西村敏郎氏をそれぞれお迎えしたことの評価は特に高いようです。また、財団の看板事業となっている企業プロデュース事業並びにものづくり支援アドバイザー事業においても、民間から多くの有能な人材を積極的に引き入れて事業を推進されておられます。
 そこで、実際に民間企業から経験のある能力の高い人材を受け入れてくる中で、どのような成果が上がっていると考えられているでしょうか。また、実際にサービスを利用している県内の中小事業者の皆さんの反応はどういったものとなっているでしょうか。これもあわせて商工労働部長から御答弁を願いたいと思います。
 さて、このように国の内外で活躍されていた民間の優秀な人材を取り込んで地域の中小事業の活性化に役立ててもらうというのは、非常に有効な取り組みだと考えます。
 そこで、新たな提案ですが、今後、二〇〇七年問題、団塊の世代の優秀な企業人が会社の縛りが解けて一気に社会に出てこられる状況が目前となっていて、一部マスコミなどでも報道されていますが、これは地方の中小企業にとって大きなチャンスになるものと私は考えます。そこでは、単にそういった人材を県でストックするのではなく、優秀な企業人に地域の中小企業へダイレクトに入っていってもらうことができないかと考えます。しかしながら、実際問題として、地域の中小事業者の方が独自でそのような人材を確保していくことは、その出会いの機会からも非常に難しい現状があります。
 そこで、具体的な提案として、地域の中小事業者の皆さんと企業から出てこられる有能な人材のマッチングを図る仕組みづくりを県として提供していく。例えば、県が音頭をとって全国から参加者を募り、スケールの大きな再雇用市といったものを開催して、企業の紹介から人材のマッチングを図るといったコーディネートをする取り組みなどをぜひ行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。これは知事から御所見を賜りたいと思います。
 さて、この産業振興にかかわる最後として、SOHO事業の活性化について。
 昨年の議会で私自身、SOHOを本来の価値ある取り組みとするためには、企業の成長を支援するインキュベーションマネジャーの設置がぜひとも必要であるといった提案をさせていただきましたが、その後もSOHO入居者の方たちといろんな話をしてくる中で、やはりその必要性を強く感じているところです。
 そんな中で、先日、日本の起業家支援の先駆者である芝浦工業大学・星野教授から突然、和歌山に来ているので会えないかという電話をいただきました。しかし、ちょうどさきの衆議院選挙の期間中であったので、とてもお会いできる状況にはなく失礼をしたのですが、その後、改めてお話を伺うと、和歌山県に来てインキュベーション施設の調査をしてくれていたそうです。そこでは、やはり星野先生も、和歌山のSOHO事業で致命的な問題としてインキュベーションマネジャーの必要性を強調されていました。せっかくよいSOHOが和歌山県には二拠点もあるのに、このままでは宝の持ちぐされになってしまうと心配してくれていました。
 そこで、昨年来提案していたことですが、来年、平成十八年度に向けて経済センター並びにリサーチラボのSOHOオフィスにインキュベーションマネジャーを配置することを何としても実現させていただきたいのですが、これも商工労働部長からお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 さて、最後に、子供の育つ環境整備の一方策、里親制度への支援策の充実について。
 今、子供の育つ環境をどのように整備していくのか。これは、少子化対策なども含めて、国家の運営、地域運営の根本を揺るがす大きな政策テーマであり、喫緊の課題となっています。私自身も今後とも強い問題意識を持ってしっかりと取り組んでいかなくてはならないと思っていますが、そういった思いを持ちつつ、最近のテレビのニュースなどを見ると、毎日と言ってよいほど、児童虐待の事件など子供に関する非常に残念なニュースが報道されている現実があります。私も小さな子供を持つ親として非常に残念に感じるとともに、何ともやりきれない思いがしますが、そんな中で、特に今回は何らかの事情で実の親元で暮らすことができなくなった子供たちの問題について、児童養護、里親制度といったものに焦点を絞って質問、提案をさせていただきたいと思います。
 現在、厚生労働省の統計によると、子供の虐待件数は、平成二年が一千百一件であったものが、虐待防止法が施行された平成十二年、約十年たって何と約十六倍の一万七千七百二十五件となり、直近の調査を行った平成十六年にはさらに三万二千九百七十九件と、倍増する状況にあります。また、理由は虐待だけではないのですが、実の親のもとで育てられない子供たちは、平成十四年度末で全国で約三万五千人にも上っています。
 日本では、親が育児を放棄したり虐待が理由で保護された子供たちのほとんどが養護施設で生活をしていますが、そんな子供たちの中で、まだまだ少数でありますが、一般の家庭で預かる制度として里親制度があります。この里親制度は既に長い歴史のあるものですが、しかし、社会的には依然として浸透していないのが現実です。
 そもそも里親制度とは、子供の幸せのための制度とも言われています。子供はあくまで家庭の中で親の愛情を受けて育つのが本来の姿ですが、しかし、何らかの事情で自分の家庭で暮らすことのできない子供たちに温かい家庭を提供する制度であり、さまざまな事情のある子供を迎え入れて、たくさんの愛情を注ぎつつ子供を健全に成長させていく、本当の家族のようにサポートしてくれるのが里親さんです。
 現在は、保護者のいない児童、また保護者に監督・保護させることが不適当であると認められる児童の養育を都道府県が里親に委託する形となっています。里親の登録数は、昭和三十八年の約一万九千人をピークとして減少傾向が続いてきていましたが、実際に委託される里親数については、平成十一年を底に上向きに転じています。今後は、国の方針としても、大規模施設での児童養護から小規模施設並びに里親制度の活用といったことへ大きくかじが切られようとしていて、大規模施設に偏った取り組みが見直されようとしています。
 これも、厚生労働省の調査によると、全国で里親登録をしているのは平成十五年三月現在で七千百六十一家庭ですが、実際に里子を育てている里親さんは千九百五十八家族にとどまっています。和歌山県の状況としても、里親の登録数は、この八月末現在で七十二家庭あるのですが、実際に里子として受け入れられているのは十三家族、十四人となっています。これらの数字は、乳児院、児童養護施設に全国で約三万人、和歌山県では約三百五十人が入所しているのに比べると非常に少ない数字であり、日本の特に施設に偏った児童養護の実態があります。
 先進国の例を比較してみると、イタリアの場合では施設での養護が七二%、里親の養護が二八%、ドイツでは施設五七%、里親四三%、フランスでは施設が四七%に里親が五三%、デンマークなどでは施設が三九%、里親が六一%、アメリカ、イギリスなどに至っては、施設養護は約一〇%程度であり、九〇%近い子供を家庭のケアで受けとめている実態があります。日本の場合は施設九三%、里親が七%といった状況で、日本の場合は特に施設対応に偏った状況が浮き彫りになっています。
 児童養護施設出身者や在籍している子供たちの中には、里親と一緒に暮らしたかった、自分だけに愛情を注いでくれる里親家庭で暮らしたいという声が多いそうです。
 先日、この和歌山で実際に里親として子供を育てられた経験のある四家族の方にお会いし、お話を伺ってきました。そこでは、集団の中の一人としてではなく、愛情を独占できる里親を子供たちは求めている、子供を預かっていて、施設でいるときよりも多くの改善点が見られる、字の書き方も大きく変わり、精神的にも落ちつきを取り戻している、何事にも意欲的に取り組めるようになり、特に褒められる喜びを知ることから多くのことが改善されているなどといった事例をお聞かせいただきました。確かにケース・バイ・ケースで施設での取り組みも大切ではありますが、しかし、里子として家庭の中で子供を成長させることの意義は大きいと思います。
 養護児童の中には、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)に悩まされている子供も多く、彼らの心の傷をいやすのは、「あなたは大切な人なんです」という里親からの強力なメッセージが必要であり、あくまで施設は集団で、そこにいる大人は先生でしかなく、里子の場合は家庭に引き取られ、擬似的にでも家族、親といった立場で見守られることになり、集団では行き届かないケアも家庭での取り組みで何とか改善していけるケースも少なくないとも話されていました。
 他人の子供を育てるということは当然簡単なことではありませんし、多くの里親さんの家庭では、言葉で言いあらわせない大変な苦労を積み重ねられて、血のつながった家庭以上の努力をして家族をつくっています。
 さて、このような状況を御理解いただいた上で、今、里子として受け入れを考えておられる家庭において、もっと体系立った支援が必要だと言われています。里親同士の交流支援、委託前後の研修の実施、実の両親との交渉援助、子供の心理的な負担を解消するカウンセリングの実施など。また、何よりも経済的な負担が大きいのが問題となっていて、経済的な支援策の充実も急がれています。里親制度が実の両親にかわって温かい家庭を提供する制度であるにもかかわらず、里親になる人が減少している。その大きな要因の一つには、やはり経済的な困難さもあるようです。
 さて、そこで幾つかの質問をさせていただきたいのですが、まず知事に、現在の子供が育つ環境の中で、児童虐待、最近は特に実の両親からの虐待が大きな社会問題ともなっていて、親元を離れて暮らさなければならない子供がふえている状況がありますが、この現状についてどのような御認識を持たれているでしょうか、御所見を賜りたいと思います。
 また現在、厚生労働省は、小規模施設もしくは里親制度を活用した家庭での子供の養育の重要性を認めて、これまでの大規模施設偏重の取り組み方針を大きく変えようとしています。そんな中、今後、和歌山県としてどういった方針で児童養護について取り組んでいかれようとするのか。今後の取り組み姿勢、その方針といったものについて、これも知事から御答弁をいただきたいと思います。
 またあわせて、今年度、和歌山県の施設児童等扶助事業県費援護費要綱が改定され、幾つかの扶助費が廃止されています。少し調べてみると、平成十六年度の実績で、就職支度費で七十万、その他自立支援費の名目で四十五万といった県からの支援について、すべて削られてしまっています。今、国でも特に里親制度については数値目標も設定してその推進を図ろうとしていて、また県としても子供を育てる環境を充実させるという方針を打ち出しているときに、この改定には疑問を持ちます。
 子供という社会的にも最も弱い、しかも実際の親から引き離されるという厳しい環境にある子供への対応として、とても残念な話になっていると感じます。ぜひこの支援制度については、形はどうであれ、何とかしてその状況を改善してもらいたいと考えますが、これは福祉保健部長から御見解をお聞かせ願いたいと思います。
 また、里親制度自体に対する社会的な認識も非常に進んでいない現状においては、県としてこれまで以上に普及啓発をしていく取り組みを進めてほしいと思いますが、あわせて御答弁を願いたいと思います。
 以上で、私の一問目を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの山下大輔君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、熊野健康村構想というものについての考え方ということですけれども、今非常に世の中はせわしないんですが、一般の人の中には、健康で人間らしい暮らしということを求めるという傾向もまた強くなっているということが現実でして、これが「スローライフ」とか「スローステイ」とかいうふうな言葉で今もてはやされているというふうなことだろうと思います。
 そういう中で、和歌山県のこの熊野地方というのは、その名前を聞いただけで精神的な安らぎが得られるというふうなこともありますので、ここを大々的にこういう特質を生かして何か、NPOであるとか民間企業であるとか、そういうところと協力しながら観光、そしてまた医療、安らぎというものを合わせたような産業地域にできないかということで、去年ぐらいから本格的に取り組んでいるのがこの熊野健康村構想です。
 ようやく、NPOであるとか県の職員とか、いろいろな努力によって、かなり都会の方でも注目を集めるようになってきましたし、現に進出をして、いろいろな健康的な試みをしようというところも出てきております。ただ、まだ全体像がもうひとつはっきりしないんで、私もあっちこっちでいろいろこのことのPRをするんだけど、言っている本人がよくわかってないというようなところもありますので、来年度に向けて、全体をやはりある程度体系化して、どういう方向を目指していくのかということをもう少し一般の人にもわかりやすい形にしていきたいと思います。
 そしてまた、この熊野の地域でこれが成功すれば、例えば和歌山には高野山もありますし、いろんなところでこういうことの可能性のある地域もあると思うので、またこれを県下に広げていくような努力もしていきたいと思います。
 さらには、これは役所主導じゃなくて、NPOであるとか民間企業とか、そういうところの独創的な活動とか意欲というものを大事にしておりますので、こういうことをやろうというところについては県の方が支援をするというふうな、後方サポートというような形で積極的にいろんな支援体制というものをつくっていきたい、このように考えております。
 次に、和歌山県の景況認識と今後の産業支援ということですけれども、景気については、はっきり日本全体で、もういろんな面でよくなってきています。和歌山県でも、確かに一進一退ではありますけれども、個別の指標を見れば、全国ほどではないけれども改善が見られることは、これは間違いのない事実です。
 ただ、今回の景気の回復は、個人についても非常に強者と弱者をつくる、まあ言ってみれば、自分で自由主義で自立して頑張っていこうというふうなことですので、これは地域にとっても同じことが言えるわけで、余り努力をしなければ、ある程度は発展はするかもしれないけれども弱者の側に立たされるという危険が今までの景気の回復期と違って非常に大きいと。
 そういうふうなこともありますので、和歌山県でも、例えば住金が一千億の投資をするなど明るいこともあるんですが、よそ頼みにしていてはいけないんで、和歌山県の地場の産業なんかに新しい形で光を当てて支援していく方策であるとか、それから新規の起業を行う人たちにいろんな形でサポートしていく仕組みであるとか、県の工業試験場なんかがこういう新しいことをする企業にできるだけいろんな支援ができるような仕組みをつくっていくこととか、それからもう一つは、企業誘致についても、ここ十数年はもう日本全体が冷え切っていたので、はっきり言って、幾ら努力しても来るところはないわというふうな状況だったんですが、やっぱり状況が今変わりつつあるんで、和歌山県内にもまだいろいろな遊休土地を県も抱えておりますので、こういうところを弾力的に提供するような仕組みをつくって、しかも相手が来るのを待っているということじゃなくて積極的に、こういう地域では新たに設備投資を始めそうだと、そして和歌山がいい条件を出せば来てくれるかもしれないというふうなところについては前向きにこちらからもう出向いていって引っ張ってくるというふうな努力も必要だと思いますし、現にそういうことをしていく体制を今年度から来年度にかけて積極的につくっていきたい、このように思っております。
 それから、民間OBの人の活用ということですが、これからの団塊の世代で、さらに、例えばスローステイをしたいという人も出てくると思うんだけど、企業とかいろんなところで自己実現を続けていきたいと思うような人がたくさん出てくる可能性があります。都会を中心にそういう人が出てくると思うんですが、そういう人に和歌山の企業で少しそういう面での人材に欠けているというふうなところに来ていただくということは、非常に有効なことです。
 県の外郭団体に来ていただいた方も、先ほど御質問にありましたように八面六臂の大活躍ということで非常に評価を受けているというふうなこともありますから、この面でのマッチングの施策、どういうふうな形がいいのか、これはまた担当の方で検討すると思いますけども積極的に対応していきたい、このように思っております。
 それから、児童虐待についてのことですが、今、現代社会、非常に複雑化して、また子育てが大変というようなこともあって、そういう中で親が子供をいじめると──まあ昔もあったんでしょうけども極端にそういう傾向が出てくるというふうなことで、和歌山でもこういうことが深刻な問題になっていることは私も十分に理解をしております。
 そういう中で、やはり子供のときに何かそういうふうな迫害とか精神的な打撃を受けた子供は必ずそれがトラウマになって、また次に同じことが繰り返されるというふうな傾向が強いということも医学的にもある程度証明されていることですので、そういうふうな悲しい目に遭った子供にできるだけ家庭的な温かさということを与えてあげて、そしてできるだけ回復してもらうというふうなことは、これはもう非常に大事だと思いますし、そういう中で里親制度ということが、施設での取り組みということも大事ですけども、それだけじゃなくて、この里親制度というのが多分物すごく大きな役割を果たすだろうと私は思います。
 今お話を伺って、やはり体系立った支援であるとか、それから実の親との交渉であるとか、そういうふうなことがすべて里親に任せ切りになるということでは、これ、なかなか、幾ら心が優しくてそういうふうな里親になってあげようという人がいても二の足を踏んでしまうというふうなことはあると思いますし、それから経済的な面でも、何から何まですべて里親の負担ということになると、これまた二の足を踏むというふうなことになると思いますので、そういうふうな非常に福祉の心を持った方々の厚意が生かされるような仕組み、これも担当課の方でいろいろまたちょっといい仕組みを考えていかないといかんと、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 産業振興の取り組みについて、三点の御質問にお答えをいたします。
 まず、和歌山産業イノベーション構想の現在までの成果と今後の展望についてでございますが、構想の推進に当たり、統合により財団法人わかやま産業振興財団を発足させ、県の産業支援課を県経済センターに移し、県内の中小企業を総合的、一体的に支援できる体制を整えました。このことにより、ワンストップで中小企業者の皆さん方の相談に応じることが可能となり、また現場を積極的に訪問して企業の課題解決に取り組むとともに、商談会、展示会、あるいは個別の販路開拓などを通じて着実に成果を得ているところです。今後、さらに拡大を図ってまいりたいと考えております。
 次に、民間人登用の成果、利用者である中小事業者の皆さんの反応についてでございますが、いろいろなノウハウを蓄積された民間企業OBの方々の経験は社会の貴重な財産であり、財団幹部職員への登用を初めとし、現場での実地指導など、各方面において県内中小企業振興のために専門的な知識や人脈を活用いただいているところです。
 なお、企業プロデュース事業を御利用いただいた中小企業者のアンケートにおきましても、約九割の方から満足との回答を得ており、期待した効果を上げつつあるものと考えております。
 次に、SOHO事業の活性化策としてのインキュベーションマネジャーの配置についてでございますが、事業経験の乏しい新規事業者には、創業、技術、経営、営業など企業活動全般に関する悩みに対して、同じ目線に立ってアドバイスできる専門家が必要と考えております。有識者の御意見もお聞きしながら検討を進めているところでございます。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 里親制度の中で、まず里親さんへの支援策の充実でございますが、里親制度においては、養育費として里親手当、生活費、学校教育費、児童の医療費などを公費で給付しておりますが、それでも里親さんの経済的負担が大きいことは承知をしてございます。このため国においても年々支援制度が改善されておりますが、議員御指摘の県独自の支援につきましても、関係者等の御意見も伺いながら時代のニーズに対応した児童の処遇の向上及び安定した自立のための支援策を講じてまいりたいと、こう考えております。
 次に里親制度の普及啓発でございますけれども、里親制度は、議員御指摘のとおり、よりきめ細かい個別的な養育環境が必要な児童や施設における集団養護になじみにくい児童にとって大変重要な制度であると考えております。
 しかしながら、一部には、里親と養子縁組は同義というような誤解もございまして、里親制度が十分に理解されているとは申せません。このため、県ホームページへの掲載やテレビ、ラジオでの広報、パンフレットの配布などを行っているところでございますけれども、今後ともさまざまな機会を通じて県民の皆さんへの認識が深められるよう、より一層の普及啓発に努めてまいりたいと思います。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十六番山下大輔君。
○山下大輔君 御答弁いただき、ありがとうございました。
 まず、観光と医療を組み合わせてという部分で、知事もおっしゃっていましたけれども、観光、医療、いやし、安らぎ、そういうことを来年度で一たん整理しながら、和歌山県としてどういう形で一気に進めていく方策があるのかということを検討していただくということですんで、ぜひお願いしたいと思います。
 その中で、質問でもお話ししましたが、支援策、支援制度、支援体制というのは早急に整えていただきたいと。これはもう待っているんじゃなくて、県としてもそういう企業に対してアプローチして、呼んでこれるような積極的な働きをすると。それはもう、支援制度、支援体制を整えていただいたら、私も和歌山のセールスマンとなっていろんな制度自体を売っていきたいと。そういう売れるための武器というのをしっかりとつくっていただいて、県外事業者、県内事業者を含めて活発なそういう観光、医療にかかわる事業が発展できるような取り組みをぜひ進めていただきたいと思います。これは要望でお願いいたします。
 それともう一点、里親さんへの取り組みなんですけれども、知事並びに部長が前向きに里親の必要性というのを御理解いただいて、これからしっかり取り組んでいただくということなんですけれども、私もお話を伺いに行って、本当にもう家庭での負担というのが物すごくやっぱり重いと。ある程度周りの環境をつくってあげないと、幾ら気持ちがあっても、なかなかうまく里親制度というのを活用していけない現状もあるように思いますので、細かい部分についてはまた適宜、担当課、部長を含めてお願いしていきたいと思っておりますので、ぜひ今後とも、大規模施設に頼るということだけじゃない、小規模施設、里親制度の活用というのを県として御答弁いただいたとおり積極的にお進めいただけるようにお願いいたしまして、これも要望として二点お願いいたしたいと思います。
 以上です。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で山下大輔君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十一番尾崎要二君。
  〔尾崎要二君、登壇〕(拍手)
○尾崎要二君 九月定例会一般質問の最終を務めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
 県議会の中には、議員連盟が幾つか結成されております。それぞれ県政の重要な施策を推進するため、県議会として時には県当局と力を合わせ、スクラムを組みながら、過去にも多くの成果を上げてまいりました。
 例えば、平成七年に農林水産振興議員連盟が発足しておりますが、その前より、自由民主党県議団においてはみかん振興議員連盟があり、平成三年の生果、同じく平成四年にはジュースのオレンジ自由化に際し全国のミカン生産府県に本県より呼びかけ、昭和六十三年には全国みかん生産府県議会議員対策協議会を発足させ、全国みかん生産府県知事会と協力しながら再編対策など大きな力を発揮し、生産現場の声を国政に反映させることに成功いたしました。
 発足当時より、全国みかん生産府県議会議員対策協議会の会長県として和歌山県がその先頭に立ってまいりました。私も発足当時よりその役員を務めさせていただき、平成十六年五月まで会長もさせていただきました。毎年年二回、東京で総会を開き、財務省を初め全国の国会議員の会であります果樹振興議員連盟とも協議を重ね、時には農林水産省と激論を交わしたり、またバックアップをしながら今日まで至っております。そのような縁で、本年の三月二十八日、二十九日には、本県の議員連盟の招きで農林水産省生産局果樹花き課長が直接、急峻な本県のミカン生産現場を視察していただくことになり、生産者との話し合いも持っていただきました。
 このように、県議会としても大きな問題を解決していくために議員連盟を発足させ、力を合わせて取り組んでいるのであります。
 そのような議員連盟でありますが、去る九月十五日には、すべての会派の御賛同を得て和歌山県議会スポーツ振興議員連盟が設立され、私が先輩・同僚議員の皆様方から会長に推挙されました。今後、本県の体育スポーツ振興に対して積極的に支援してまいりたいと考えております。
 高校時代には競泳選手として長崎国体、和歌山国体に出場し、最近では県水泳連盟会長として高知、静岡、昨年の埼玉、そしてことしの岡山国体へも応援に行かせていただいている立場も含め、国民体育大会を中心とした本県スポーツの競技力向上についてお尋ねいたします。
 アテネオリンピックでの日本選手の活躍に日本じゅうが興奮し、力いっぱい競技する選手の姿が我々に多くの勇気と感動を与えてくれたのは記憶に新しいところであります。スポーツは、明るく、活力に満ちた社会の形成や心身の健全な発達に欠かせないものであり、また全国大会等で優秀な成績をおさめることは県民に夢と感動を与え、一体感を醸成し、本県の活性化に大きく寄与するものであります。
 本県の高校生も、この八月、千葉で開催されたインターハイにおいて、自転車競技で和歌山北高校が総合優勝、フェンシング競技の女子団体で同じく和歌山北高校が優勝し、アーチェリー競技女子団体で和歌山高校が、これまた優勝しております。個人でも、水泳、テニス、柔道、体操、レスリング競技など、多くの選手が入賞を果たしています。また中学生では、同じく八月、三重県で開催された全国中学校体育大会において、体操競技男子団体で明洋中学校が第二位、ソフトテニス競技女子団体で学文路中学校が第三位、柔道競技で岩出第二中学校がベストエイト、個人でもソフトテニス、水泳、体操競技で入賞を果たしています。このように、本県の次代を担う中学生、高校生のジュニア選手は各大会において活躍を見せてくれています。
 しかしながら一方、本県のスポーツの現状を国体成績で見ると、先般も指摘がございましたが、昭和四十六年に開催された黒潮国体の総合成績一位をピークに右肩下がりの状況が続き、残念ながら昨年は総合四十七位と、全国最下位になっております。黒潮国体以降、昭和五十四年宮崎国体までは総合順位が十位以内、また十位前後でありましたが、最近では三十位後半から四十位台の成績に終始をしております。その原因としては、平成元年の二巡目の京都国体から得点制度が変更されたこと、平成十五年静岡国体から団体競技に多くする新得点制度が実施されたこと、指導者の高齢化、さらには昨今の財政状況による選手強化費の減少が考えられます。
 先般、そのような現状に危機感を持ち、高校野球、東京六大学野球で活躍をされ、その後、新宮高校野球部の監督としてチームを甲子園に導き、小原議員のような優秀な選手を育てた先輩の下川議員、全日本空手道連盟剛柔会会長で剣道・空手道連盟の会長をされている同僚の宇治田県議とともに、文部科学省競技スポーツ課の坂元企画官にお会いするため上京してまいりました。そして、昨年のアテネオリンピックでのメダル倍増の要因を伺いましたが、ニッポン復活プロジェクトとして新たに整備された国立スポーツ科学センターにおけるスポーツ医学・科学の研究成果を活用した科学的なトレーニングの実施や競技団体に対する強化費の増額など、人、物、金を集中して執行したと聞いてまいりました。
 このような中、本県の体育スポーツ施設、中でもプールに関しては、中高校生が年間を通じてトレーニングをできる室内プールはなく、県内の有望な選手がよりよい練習環境を求めて他府県に流出する事例も見受けられます。このような状況を踏まえ、本県においても競技力の向上を目指した有効な取り組みが必要であると考えますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
 また、国体は少年種別だけではなく成年種別もあり、企業や大学が少ない本県において、成年の部の強化については厳しい面もあります。それゆえに、まず県内の中学校、高校の競技力のレベルを早急に向上させるべきと考えます。
 その先頭に立つのが県教育委員会でありますが、昨年の国体最下位という現状の認識と、それをどのように立て直していこうとするのか、その対応に疑問な点も見受けられるのであります。今日の厳しい状況を踏まえ、それに対応する和歌山県スポーツ復活のための基本計画など強化策について、教育長にお聞きしたいと思います。
 また高校野球では、野球王国和歌山と言われるように、箕島高校や智辯学園和歌山高校の全国優勝、分校として甲子園出場で話題を集めた日高中津分校など、長きにわたり全国トップレベルの競技力を維持しております。これは、指導者の力によるところが大きいと考えます。高い専門技術を有する情熱を持った教員を適正配置することにより、競技力も大幅に向上すると考えます。教員配置にはさまざまな事情を考慮する必要があることは承知をしておりますが、スポーツの専門技術を持った情熱ある教員が当該部活動のない学校に配置されたり専門外の部活を担当したりしている現状は極力避ける必要があります。本県の競技力向上を図る上でも、県教委、体育協会、競技団体と十分な話し合いを持つことやスポーツを指導する教員の適正な配置をすべきであると考えますが、教育長にお答えいただきたいと思います。
 続きまして、ドクターヘリについてお尋ねいたします。
 平成十五年一月に近畿で初めて、国公立病院としては全国で初めて導入されて以来、出動件数は平成十四年度三十五件、十五年度二百六十五件、十六年度三百三十八件、十七年度もこの八月末までに百七十件と年々着実に増加を続けており、多数の重篤患者の命を救ってまいりました。和歌山県のように地形が南北に長くて山間地が多く、かつ三次救急医療機関が県北端の和歌山市にしかないという現状において、救急専門医と看護師が搭乗した空飛ぶ救命室が現場にやってきてくれるわけでありますから、一刻を争う患者御本人、御家族にとっては何よりも頼もしく思われることが想像にかたくないところであります。私ごとでありますが、先般、私の妻の父親も事故でドクターヘリのお世話になり、あと少し時間がかかっていれば危うかったところを救っていただきました。
 さて、このように県民から頼りにされているドクターヘリでありますが、現在の運航時間は午前九時から午後五時、夏場の五月から八月については午前九時から午後六時までであり、恐らくこの時間帯以外の時間でドクターヘリが出動できれば救われたであろう、あるいは後遺症を残さず健康回復できたであろう事例も、また多数あるのではないかと思われます。
 和歌山県立医科大学の研究によれば、夜間ドクターヘリの適応症例は年間六百八十六人ということであります。平成十六年度の三百三十八件という昼間の件数に比べ、夜間には約二倍の需要があるということであり、二十四時間運航を実施する価値は十分あると考えます。
 もちろん、運航時間の延長には、医師、看護師、操縦士、整備士、運航管理士の増員等人的要素、またヘリ機体の確保、夜間照明設備、一定の基準を満たした照明施設を幅員に余裕のある道路や学校のグラウンド、休耕田などに設置をして夜間でも利用可能な発着現場の確保など物的要素が必要であり、県財政も厳しさを増す中ではありますが、例えば、ドクターヘリの予測適応症例数が最も多い午前八時台に対応するため運航開始時間を一時間早めることから始めて、次の段階では操縦士の連続勤務が可能な午後八時まで、最終的には二十四時間体制の確立に向けて段階的に進めることは可能と考えます。運航時間延長と、そして二十四時間体制について知事の所見をお伺いいたします。
 続きまして、世界遺産と和歌山についてお尋ねいたします。
 県民挙げての長年の取り組みが実を結び、平成十六年七月に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産として登録決定されました。登録に至るまでの多大な努力が報われた結果として、登録地一市十町では観光客が対前年比一二六・三%、特に熊野古道周辺の中辺路町、本宮町にあっては一九〇%、高野山周辺のかつらぎ、九度山、高野町にあっては一三〇%から一四〇%と、大幅な増加をいたしました。もちろん、この増加には、登録にあわせて東京や名古屋を初め全国各地で行われた県の大型観光キャンペーンなどのPR活動が大きな役割を果たしたわけでありますが、今後とも世界遺産高野・熊野と和歌山のPR、また訪れた方々の期待を裏切らないように、自然と一体となった霊場や参詣道を守っていく地道な努力が必要であります。
 その中で、私には、一点気になることがございます。それは、せっかく高野山が脚光を浴びるにもかかわらず、県都和歌山市を初め県内各地とのつながりがどうにも薄いのではないかなということであります。
 私が東京で学生時代を過ごした折、同級生に和歌山について知っていることを聞いたところ、当時、高校野球で甲子園を沸かせていた箕島高校という言葉が真っ先に返ってきました。その次に和歌山県で知っているのはと尋ねたところ、ほとんど知らないというような返事でありました。空海が開いた真言宗の高野山は和歌山にあるのだと私が言いますと、高野山は聞いて知っている、しかし奈良県にあるものだと思っていたと、逆に驚かれるような始末でありました。
 よく考えてみますと、和歌山に住む人にとって栃木、群馬、茨城といった東京周辺の県の位置や町の名前はよく知らないのと同じであります。無理からぬところもございます。高野山と並び称される比叡山延暦寺についても、京都府に位置すると思っている人が多いわけであります。実際は滋賀県大津市なのでありますが、その原因は、京都から比叡山に登る人が多いからでありましょう。
 さて、高野山を訪れる人々はどのようなルートをたどるのでありましょうか。古くは参詣道として高野街道がありますが、現在の参詣道は鉄道と車の利用が主であります。鉄道ルートでは、遠方から関空に到着した方々も含めて、大阪の難波から南海高野線を利用している。車ルートにつきましても、大阪から紀見峠を越えてくるのが一般的であり、県都和歌山市を経由することはほとんどないのが実情ではないかと思われます。これではまるで高野山は大阪からというのが定着してしまい、高野にやってきたとは思っても、和歌山を訪れたという記憶はほとんど残らないのであります。まことに残念であります。
 そこで、せっかく高野・熊野地方を訪れる人々に県都和歌山市周辺のよさを知っていただくため、既にJR和歌山線や国道三百七十号、四百八十号など、良質なアクセスを持つこの地域と高野山のつながりの強調がぜひとも必要であります。
 鉄道関係では、和歌山駅から橋本駅を経てJRと南海との相互乗り入れ、また和歌山市から高野山への直行バスの運行、道路関係では、阪和自動車道の海南東インターに「高野登山口インター」などの愛称の付与、県道海南高野線、同じく有田高野線──もとの名前でありますけれども、昇格しておりますので今は国道三百七十号、四百八十号という名前でありますけれども、──もとの路線名の復活など、高野山と一体性を高めるための方策を世界遺産登録という追い風が吹いているこの機会にぜひ考えるべきものと思いますが、鉄道関係等については企画部長、道路関係については県土整備部長の答弁を求めます。
 最後に、東南海・南海地震の津波対策についてお尋ねいたします。
 東南海・南海地震の発生確率は、今後三十年以内に五〇から六〇%、五十年以内に八〇%から九〇%と言われ、発生確率が年々高まってきており、また昨年九月には紀伊半島沖地震が発生するなど、県民はいやが応でも迫りくる大地震を意識せざるを得ない状況であります。
 自由民主党県議団では、このたび、地震対策などの県政の危機管理体制の確立に向け、調査研究や当局に対して提案、提言を行うことを目的に自由民主党県議団危機管理調査会を設立し、私が会長を務めさせていただくことになりましたが、東南海・南海地震対策についてまず考えなければいけないことは津波対策であります。
 昨年十二月の二十六日に発生したスマトラ沖地震は、日本で発生が懸念される東南海・南海地震と同じく海溝型巨大地震であり、震源地から遠く離れたアフリカ大陸にまで津波が押し寄せて甚大な被害をもたらしております。テレビを通じて津波にまさにのみ込まれようとしている人々を目の当たりにし、その恐ろしさに肝を冷やしましたが、その映像を見ておりまして、津波とは決して波ばかりではなく、港にある船舶や貯木などが濁流となって陸地を襲い、地上の構造物を破壊していくものであり、単に水がどこまで浸水するかといった問題でないということを改めて知ったところであります。波だけであれば難を逃れることができたのに、一緒に流されてきたものに衝突されたため被害に巻き込まれてしまったこともたくさんあったはずであります。
 本県では、昨年までの二カ年で、大阪府と共同で津波浸水域のシミュレーション調査を行っており、十二・五メートルメッシュというかなり細かい単位で、地形等も考慮に入れた上で津波の到達地点や高さ、到達時間、また浸水した場合の水深等が出されておりますが、これは、東海・東南海・南海地震が同時発生し、なおかつ海岸構造物がすべて機能しないという最悪の場合を想定しているそうであります。この結果は、インターネット公開、津波ハザードマップの作成といった県民への啓発や、より実際に即した対策研究に役立てていくものと思いますが、その一環として、海岸構造物の耐震性、海岸沿いにある民家の密集度合い、船舶や貯木等が陸上に与えるダメージ、昭和の南海地震の被害等を調査し、また体験者からの聞き取りなどによってできるだけ実態に即したシミュレーションを行い、危険性をランクづけして、同じ港の中でも特に危険な場所については長期停泊、係留船舶や貯木などを規制することがぜひとも必要であります。
 港湾振興の観点から言えば規制する場所は必要最小限にすることが望ましいと思いますので、慎重に対処することも大事でありますが、条例化を含めた対応について、県土整備部長の答弁を求めます。
 以上で、一回目の質問を終わります。
○議長(吉井和視君) ただいまの尾崎要二君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) スポーツでいい成績をおさめるということが県民に元気を与えるということは、私もそのとおりだというふうに思います。そういうふうな中で、実は私も、去年の国体での四十七位というのには非常にショックを受けました。三十番台ぐらいならまあ仕方がないなというような感じだったんだけど、びりになるというのはなかなか大変なことです。
 それで、これはいかんということでいろいろ調べましたら、やはりちょっと強化対策等々についてこのところ低迷しているというところもあるというふうなことで、もう去年ぐらいから大々的に若手を中心に振興していこうというふうなことはしているんですけども、ただやみくもに今までと同じようなことをやっていても、これはなかなか効果が上がるというふうなものではありませんので、日本の国がこの間オリンピックですばらしい成績を上げたその原因というものがまた和歌山でも役に立つようなことがあると思いますので、そういうことを含めながら、ある意味では物心両面でといいますか、やっぱりもう何もなしで割と──選手強化費が、これも全国で最下位ぐらいのところまで来ているというようなこともありますので、なかなかトップにするようなことは和歌山県では難しいですが、やっぱりそこそこのところでその土台がちゃんとよくなっていくようにしたいと思います。
 私自身も、知事になって初めてことし岡山の国体へ行こうというふうに思っているんですが、これも四十七位になったということの危機感のあらわれですので、これは一朝一夕に成果が上がるというふうなものではないと思いますけれども、地道にいろいろ努力をしていきたいと、このように思っております。
 次にドクターヘリですが、これは、うれしい誤算といいますか、初めは、このドクターヘリをつくっても予定ほどの利用件数はないだろうというのが大方の見方だったわけです。ところが、毎年毎年、利用件数が予想を大幅に上回るというふうな状況になっている中で、当初から言っておりました二十四時間運航ということの重要性が僕はどんどん増してきていると思います。
 今、御質問の中にもありましたように、夜は病気にならない、昼病気になるというのは、病人の人は別にそれを選ぶわけじゃありませんので、むしろ夜の方がそういう危機の状況は大きいということはあろうかと思います。
 ただ、正直言いまして、ヘリコプターですので、夜、山の中を飛ぶということはなかなか技術的にも難しいし、そしてまた医師の人、それから運航の技術者の人なんかの対応というようなこともいろいろあって、今のところ研究段階で、実質的になかなか二十四時間というのに進んでないということはあって非常に歯がゆい思いをしているわけですが、ただ、今お話にありましたように、朝の九時からというのを例えば八時からにするとかいうふうなこと、それから夜六時までを七時までとか七時までを八時までにするというようなことは、これはやり方によっては対応可能であるというふうに考えますので、抜本的な二十四時間にする改革ということはあわせて検討しながら、そういうふうな少しずつ改善していくというふうな努力もこの制度の利用状況から見ると非常に大事なことだと思いますので前向きに対応していきたいと、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 和歌山市を経由して高野山を結ぶ交通アクセスのうち、鉄道、バスについてお答えをいたします。
 まず、議員お話しのJR和歌山線と南海高野線の相互乗り入れにつきましては、相互乗り入れのための車両でありますとか保安設備の改良等多額の経費を要することや、鉄道事業者の経営方針にかかわる問題であることなど、多くの課題がございます。今後、議員御提案の趣旨を踏まえまして、長期的な課題ではありますが、関係機関と連携しながら研究をしてまいります。
 また、和歌山市─高野山間の直行バスの運行につきましては、現在、和歌山市内の主なホテル間をバスが巡回しまして、和歌山マリーナシティから野上町、美里町経由で高野山に至る乗り合いバスが季節運行されております。和歌山市内を起点とする高野山観光の貴重なアクセスであると考えております。
 県といたしましては、議員御提案のとおり、和歌山市及び海南・海草地域から高野山にかけましては歴史的にもつながりがあり、交通アクセスは重要であると認識をしております。関西国際空港から和歌山市経由の高野山方面へのバスツアーの企画を大手旅行会社に働きかけるなど、今後とも和歌山市と高野山を結ぶさまざまなルート開発に積極的に取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 高野山へのアクセスのうち、道路関係についてお答えをいたします。
 海南東インター等から高野山へのアクセスである国道三百七十号につきましては、現在、阪井バイパス、美里バイパス等の整備を進めているところであります。引き続き整備促進を図るとともに、来訪者の皆様を適切に誘導できるよう、案内標識の整備等に努めてまいります。
 なお、インター等の愛称名については、観光振興の観点も含め、関係市町と連携をし、道路整備の進捗を踏まえて検討していきたいと考えております。また、和歌山インター周辺で和歌山県の世界遺産をPRできるような案内等についても、関係部局とともに検討してまいります。
 次に、津波対策についてお答えをいたします。
 大規模な津波におきましては、倒壊家屋等が瓦れきとなって流出し被害が拡大することが懸念され、議員御指摘のとおり、港内船舶や港湾貨物につきましても同様のおそれがございます。このため、過去の被災状況、港湾利用や後背地の現況を正確に把握し、関係機関、地元等とも十分連携を図りながら船舶や港湾貨物の流出が周辺に与える影響につきまして調査し、港湾の利活用と整合のとれた津波対策につきまして検討を進めてまいります。
 また、台船等、港内に長期にわたり停泊している船舶につきましても、条例による規制も含め、津波被害低減の視点からも対策を検討してまいります。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) スポーツ振興についてお答えします。
 本県におきましては、競技スポーツの推進、生涯スポーツの振興など、四つの柱に基づく振興方策を本県長期総合計画の中に位置づけているところです。新たなスポーツ振興計画につきましては、和歌山県スポーツ振興審議会において現在鋭意検討していただいているところであり、本年度中を目途に策定が完成する予定であります。
 議員御指摘のとおり、早急に競技力を高めるために、特にジュニア選手を組織的、計画的に育成する一貫指導体制の早期実施や指導者の養成、確保等が最も重要であると考えております。
 昨年の国体最下位を脱するための特別強化策として、最重点・重点競技の指定と強化費の効果的な配分、競技に必要な器具、備品を購入するとともに、小中学生のトップジュニアを拠点施設に集め育成・強化を図るきのくにジュニアトレーニングセンター事業に取り組んでおります。
 次にスポーツ担当教員の配置については、各学校の教員定数や担当教科等との関係に留意しながら、ハイスクール強化指定校等を中心に、本県の競技力向上の視点に立って行ってきたところであります。今後、引き続き専門性を持った教員の力が十分に発揮できる配置となるよう、最大限努力をしてまいります。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十一番尾崎要二君。
○尾崎要二君 スポーツ振興で一点、要望を申し上げたいと思います。
 まず、試合で勝つことで多くを学び、そして負けることで、これもまた多くを学ぶことがスポーツであろうと思います。しかし、毎度負けておりますと負け癖がつくというのも余り褒められたようなものではないというわけであります。
 「天才肌の選手」という言葉がありますが、それはごく一部の選手であって、「努力にまさる天才はなし」という言葉のように、中学生、高校生、すべての人に大きな可能性があるわけであります。スポーツでも文化活動でも勉強でもそうでありますが、ひたむきに努力を重ねていけば、全力で頑張っていけば必ず道が開けるという、このことを子供たちに学んでいただきたいと思います。
 その可能性を引き出していく指導者の役割は、大変大きなものがあると思います。平日、授業が終わってから夜遅くまで熱心に指導をし、そして休みの日には、またこれ練習指導や水泳の大会、またいろいろ各競技の大会というように、大会へも一生懸命その手伝いとして、コーチとして出かけていくと。そのように、家族サービスも犠牲にしながら頑張っている指導者、教員に対して、もっと大きな理解と高い評価があってしかるべきであると、常々私もそれを考えております。
 今の現状はまだ不満だなという思いがあります。これからスポーツ振興のためにひとつ県を挙げて一生懸命取り組んでいただきたいということを要望申し上げて、質問を終わります。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で尾崎要二君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問は、これをもって終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(吉井和視君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
 次に日程第三、議案等の付託について申し上げます。
 ただいま議題となっております全案件のうち、議案第二百三十一号平成十六年度和歌山県歳入歳出決算の認定について及び議案第二百三十二号平成十六年度和歌山県公営企業決算の認定についてを除くその他の案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
 次に日程第四、請願付託の件について報告いたします。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
 なお、常任委員会の会場はお手元に配付しておりますので、御了承願います。
 お諮りいたします。九月二十九日及び三十日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(吉井和視君) 御異議なしと認めます。よって、九月二十九日及び三十日は休会とすることに決定いたしました。
 次会は、十月三日定刻より再開いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時三十三分散会

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