平成17年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時三分再開
○議長(吉井和視君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十二番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
 第一の柱は、これまでも取り上げました国道三百七十号、海南市の阪井バイパスにかかわる問題であります。
 これまでの質問で一貫しているのは、阪井バイパスというのは海南市の動脈とも言える道路・国道三百七十号の渋滞を解消するものであり、早く完成してもらいたいという立場であります。特に最近二回の質問では、早期完成のためにも地域住民の意見をもっと聞くべきではないかということを申し上げてきました。本日は、その立場をさらに具体化した提言をしながら、県当局の御意見をお伺いいたしたいと思います。
 阪井バイパスについて測量・調査の予算がついていますが、住民との話し合いが進展していません。この道路は、往々に都市計画道路がそうなっているような、線引きはしたが凍結というようなことにするわけにはいきません。海南市にとっては死活の問題です。精力的に話し合いを進めていただきたいと思います。
 前回の質問では、国土交通省も計画段階で複数の案を出して計画を決定するという市民参加型道路計画プロセスのガイドラインというものを出しているが、阪井バイパスの計画にはその考え方が生かされていない、都市計画審議会でも県がつくった計画を一方的に押しつけるという印象を与えているということを問題にしましたが、そういう印象をぬぐい去らないと住民の皆さんとの話し合いは進展しません。
 審議会で承認された計画というものは、地質調査、測量、そして住民との話し合いによって計画の修正を前提としているものです。測量や地質調査を通じて、どう住民の皆さんの意見との接点を求めるのかという立場に立っていただきたいと思うわけであります。
 何といっても一番の心配は、盛り土によって地域が分断されるのではないかという問題です。盛り土には防災上の心配の声もあります。盛り土を下げて平面交差にする方法はないのでしょうか。手前の山にトンネルを通すという方法があります。切り土をもっと深くして平面交差にするという方法もあります。さらに、平面交差が不可能な場合、盛り土でなく、柱を立てる工法も考えられます。龍部池という池に橋をかけるか、埋め立てできるかでも条件が変わってきます。
 トンネルを掘ることは技術的に不可能ではないでしょう。山が低過ぎて難しいという意見もありますが、これまでの計画ではトンネルは考えていなかったから、手前の山を迂回するような曲がったルートが選ばれているのです。トンネルにするなら、迂回せずに真っすぐに道路をつけることができます。一体トンネルにすればどれだけ土が出るのか、どれだけ費用がかかるのか、あらゆる工法について試算をし、住民に提示し、住民合意を図るべきではないでしょうか。さらに、計画は往復四車線という広い道路ですが、まず往復二車線の道路を早く通すことを考えてもいいのではないでしょうか。
 しかし、現在の当局の姿勢というものは、住民の側から見ると、都市計画審議会を通すときに考えた計画が一番いいんだという立場で、住民を説得することしか考えていないように見えてしまうわけです。計画どおりにするためにというのでなくて、住民の要求と接点を求めるために住民の皆さんと話し合っていただきたいと思うわけです。
 阪井バイパスはどうしても進めなくてはならないという立場で、思い切って住民の意見を受け入れながら接点をつくっていくという私の提言についてどうお考えでしょうか。県土整備部長からお答えください。
 さらに、地域のいろいろな考えをお持ちのお宅を訪問してみました。さまざまな心配をしていらっしゃる方がおられます。例えば、その地域で陶器を焼く窯をお持ちの方がいらっしゃる。陶芸家として評価されている方です。その窯が道路用地にかかるかもしれない。その方は、道路のためには協力しなければいけないと思っていますとおっしゃっていますが、それでも簡単ではありません。
 陶器というものは、焼き始めると、つきっきりで泊まり込んで火かげんの調整をしなくてはならないんだそうです。そういう窯は煙が出るから近所から苦情が出る。どこにでも置けるものではないんだそうです。こんな私とこみたいな事情を行政は理解してくれるんだろうか、その方は不安そうにしておられました。ごく一例ですが、それぞれの方がいろいろな事情をお持ちだと思います。
 用地買収にかかわる、あるいは近接するお宅について、測量や用地買収の金銭交渉より前に、個々の御家庭の事情を聞いて回ってほしいという声もお聞きしました。そういうことはすぐにすべきだし、できると思うのですが、いかがでしょうか。これも県土整備部長からお答えいただきたいと思います。
 大きな第二の柱、日方川の改修にかかわる問題です。
 海南市の日方川の改修が少しずつ進んでいます。この川の改修が急がれるのは、その上流の重根地域で区画整理事業が進んでおり、急速に田んぼが宅地に変わっているからです。雨が降れば田んぼが調整機能を果たしてきた水が、一気に日方川に流れ込みます。河川の改修の予算が少なくなっている中ですが、一日も早く進めていただきたいと思います。
 ところで、この日方川の東橋という橋の上流の十数戸のお宅が河川改修に協力して立ち退きをしたのは、もう何年も前のことです。河川改修の計画では、この部分は階段状にして川に親しめるような設計になっていますが、今のところは立ち退き跡地は空き地のままになっています。そして一方、その空き地に沿って市道が通っていますが、車の対向には大変苦労するような道路であります。
 私は議会に出させていただいてから何度も、小さい問題ではありますが、行政の谷間とか、県、市の行政の協力ということを申し上げてきました。一方では、河川改修のために確保した余裕のある用地がある。一方では、それに隣接して大変狭くて困っている道がある。工夫をすれば、余りお金をかけなくても市民に喜んでいただけるようにできるのではないでしょうか。
 さらに、この問題で、市民の中から、日方川のこの部分の階段状の改修計画は、大水が出たときに、例えばそれを見に行った人が水に巻き込まれるとか心配なのではないか、こういう意見もありまして、もう少し検討も要るのかなと考えたところであります。
 そこで、県土整備部長にお伺いいたします。
 一つは、日方川の改修計画の全体像と見通しをお教えください。
 二番目に、東橋上流の立ち退き跡地の一部を市道拡幅のために提供することについていかがですか。あるいは、河川改修に当たって、周辺道路交通への配慮ということもできるのではないでしょうか。
 第三番目に、階段状の河川改修計画について、地元及び海南市の皆さんの御意見をよく聞いて検討したらいいと思うのですが、いかがでしょうか。
 以上、県土整備部長への質問であります。
 第三の柱は、教育の問題です。
 その第一は、通学路の安全確保の問題です。
 具体的な問題から入りますが、一例を挙げますと、国道四百二十四号は大変整備がおくれた国道で、これまでも海南市から金屋に越えるのも大変狭いことが問題になっていますが、本日取り上げるのはこの道路、中野上から北野上に向かっての部分であります。
 歩道が整備されていない道路を大きなトラックが走ります。通学する中学生が自転車で側溝に飛び込んだとか、七山・青葉台団地から北野上小学校に通う児童の安全が心配だとか、いろいろな声が上がっています。せめて児童生徒の通学にかかわる部分ぐらい優先して歩道整備をお願いしたいと思います。ここだけの問題ではないと思うんですが、県土整備部長の見解をお伺いいたします。
 さらに、こういう問題、県下にはたくさんあるだろうと思っています。県教育委員会は通学路の安全のために道路担当者とどう連携をとっておられるのか、教育長にお伺いいたします。
 教育問題の第二番目は、教員の広域異動、特に管理職の広域異動にかかわって教育長にお伺いいたしたいと思います。
 先日、私のところに、みなべ町の退職教員の方から電話がありまして、突然の電話なので何だろうと思ったんですが、「教員の広域異動がひど過ぎると思うんです。教職員の疲労を大きくし、通勤手当が多くかかるだけでむだではないか」、こんなお話でありました。
 さらに気になるのは、管理職の広域異動であります。ある中学校で──その中学校区には三つの小学校があります。その四つの学校の中で、その中学校と三つある小学校の二つの小学校、その校長が他郡市から通勤をしており、その郡市では教職経験を持たない方であります。また、その中学校の教頭もこの地域で教職経験を持っていない方が教頭になっておられる。校長も教頭も地域での教職経験を持たない人事配置では、管理職が地域のことを知らないばかりか、時間外に子供にかかわる問題が起こっても、すぐに駆けつけるということができないなどの問題もあります。どうしてこういう無理な人事をなさるんだろうか、こんな声を、地域の保護者や、そしてそこに限らず幾つかの教育委員会関係者からもお聞きしたことがございます。
 今、地方分権ということが言われているその立場でも、もっとこうした人事は市町村の教育委員会に任せた方がいいんではないか、こういうふうに考えるんですが、教育長のお考えをお聞きしたいと思います。
 最後の第四の柱は、「和歌山の部落史」とその中心になっている社団法人和歌山県人権研究所にかかわる問題についてお伺いいたします。
 「和歌山の部落史」については、これまでも二度取り上げてきました。第一回は昨年の六月県議会、「和歌山の部落史」を編さんするために社団法人和歌山人権研究所の補助金が当初予算に組まれていたのに、予算審議をした県議会には全くわからない形で組まれていた問題でした。ことしの二月県議会では、その企画の可否はともかくとして、本当に十年でできるのかということもお聞きしました。いろいろ心配をしていたんですが、その後、この企画にかかわるずさんさといいましょうか、また社団法人和歌山人権研究所にかかわる不思議な問題が明らかになってまいりました。今からその問題について申し上げます。
 問題の第一は、関係団体への不正常な県からの補助金が出ているのではないかという問題です。
 「和歌山の部落史」編さんの中心になる社団法人和歌山人権研究所なるもの、その前身は、和歌山県部落解放・人権研究所という運動団体が設立した研究団体でありました。この団体が「牢番頭家文書」と言われる古文書を出版するに当たって、和歌山市から平成十一年度から五年間、毎年百万円の補助金を受けています。和歌山市議会議事録によると、「和歌山県部落解放・人権研究所に対し、県と同額の補助金を交付するものであります」、こういうふうに議事録に出てきます。それは、この研究所が、県の補助金も受けるから和歌山市も出してほしいというふうに和歌山市に対して要請してきたからであります。ところが、和歌山県は、その補助金についての情報公開を求められて、県は補助金を出してもいないし、依頼もないという回答をしたわけであります。
 和歌山市に提出された人権研究所の事業報告を見てみました。そこには、県の補助金が記載されています。ところが、県は補助金を出していないと言っている。このなぞは何なのか。人権研究所がうそを言っているのか、和歌山県が事実を隠しているのか。これは二つに一つしかないわけであります。人権研究所が県から補助金を受けているということが事実だったとしても、それは裏金と考えるほかはないのではないでしょうか。これが明らかになった事実です。
 第二の問題は、「和歌山の部落史」にかかわる問題です。
 七月十一日に、和歌山の部落史研究促進協議会の総会が開かれています。これは、「和歌山の部落史」にお金を出す和歌山県及び市町村を会員とする協議会でして、会長は木村良樹となっている。そして、そこで決定された規約には「本会の住所を和歌山ビッグ愛、財団法人和歌山人権啓発センターとする」と書かれていました。
 田辺市から出向する職員は、人権啓発センターに住所を持つ和歌山の部落史研究促進協議会に派遣されることになっていました。そして、それを田辺市との間で取り決めた文書、「木村良樹」という大きな角印が押されています。ところが、ここに事務局を置くということは、当の人権啓発センターの了解も得ていないということが明らかになりました。それでは、職員はどこに出勤しているのかと言えば、同じビッグ愛の中にある社団法人和歌山人権研究所に出勤しているということであります。私は、八月八日にビッグ愛の中にある二つの事務所に足を運んで、この事実を確認してまいりました。
 この二つの事実を踏まえて、質問をいたします。
 まず、知事及び企画部長から、「牢番頭家文書」出版にかかわる県の補助金というもののなぞについて御説明いただきたいと思います。県はお金を出したのかどうか、出したとすればどういう性格のお金であったのかという問題であります。
 次に、社団法人和歌山人権研究所という団体、こうした疑惑が生まれた中で果たして公益法人としての適格性、どうなんでしょう。その適格性が問われているのではないでしょうか。これは、この団体を管轄する教育長の見解をお伺いしたいと思います。
 さらに、多額の補助金を出して「和歌山の部落史」をこの社団法人を中心に編さんするということの可否も再検討しなくてはならないと考えます。また、和歌山の部落史研究促進協議会の事務所の問題、一体どうしてこんなことになったのでしょうか。さらに、田辺市から派遣される職員は、協定を結んだ相手とは別の──その協定を結んだ事務所がそのときはなかったわけですが──全く別人格である社団法人に派遣されているとすれば、これも問題があると思います。いかがでしょうか。以上は、企画部長にお伺いいたしたいと思います。
 以上で、私の第一回目の質問を終わりにさしていただきます。どうもありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 「紀州藩牢番頭家文書」、これは平成十一年度から編さんが始まり、平成十五年五月に「城下町警察日記」として刊行されたもので、これは幕藩時代の和歌山の歴史的な文書を出版するということで価値のあるものができ上がったという印象を、私も見ましたけれども、持っておりました。
 それだけに、先日、担当の部局からこの編さん事業に対する県からの支援に関連して不適切な事務処理が行われた形跡がある旨報告を受けまして、大変残念な思いをしているところでございます。
 さまざまな改革や見直しを進めている中で、過去のこととはいえ、このようなことが判明いたしましたことは極めて重大なことと受けとめるとともに、関係部局に対し、直ちに調査を行い、実態を解明の上、厳正に対処するよう指示したところでございます。
 内容等については、担当部長の方から答弁をいたします。
○議長(吉井和視君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 阪井バイパスについてお答えをいたします。
 阪井バイパスにつきましては、国道三百七十号の海南市東部地区での交通渋滞や幅員狭小区間を解消し、安全で円滑な交通の確保を目的として計画をされ、昨年十二月に都市計画決定をされたところであります。その手続において、多くの意見書が提出されたこともあり、県及び市の都市計画審議会において地域住民と十分な協議を行い、特に環境面において十分に配慮することとの附帯意見がつけられたところであります。(「目線を質問者の方へ向けなさいよ」と呼ぶ者あり)はい。
 今年度より、測量、地質調査、道路詳細設計を予定しておりますが、その作業の中で、都市計画決定の際、提出された意見を含め、地域分断の問題や大規模な切り土に伴う環境問題など、さまざまな観点から検討を行うとともに、住民の方々と十分協議しながら事業を進めてまいります。その結果についても、住民の方々に説明をしてまいります。
 議員から、トンネルの検討など技術的に困難な御指摘もいただいておりますが、技術的にも十分な検討をしてまいりたいというふうに考えてございます。
 また、陶芸の方のお話などございましたが、住民の方々の個々の事情を伺いながらきめ細かな計画を行うのは、これは当然のことでございます。この六月に測量立ち入りの地元説明会も開催し、地元の意見も伺っておりますが、当面は地権者の方々への測量の立ち入りの了解を得る機会を通じ、地元の意見も再度伺ってまいります。
 いずれにしましても、都市計画審議会の附帯意見を十分尊重し、事業を進めてまいります。
 次に、日方川改修計画についてお答えいたします。
 日方川改修計画の全体像と見通しにつきましては、昭和六十三年度に河川改修事業に着手し、新町橋から神田橋までの間、八百九十メーターを重点整備区間と位置づけ、整備を進めているところであります。平成十七年度から十九年度にかけて井松原橋をかけかえし、その後、上流の神田橋までを整備していく予定としております。
 次に、河川整備にあわせた周辺道路整備につきまして、議員御指摘の箇所は、親水性護岸の用地や水防活動等、河川管理上の必要性から確保しているところでありますが、今後、実施に当たり、海南市と河川空間の有効活用、利用方法について協議をしてまいります。
 階段護岸による改修計画は地元の意見も踏まえてという御質問でございますが、階段護岸につきましては親水性に配慮して計画をしたものであり、これまでに地元に説明をしているところであります。今後も実施に当たり、治水上の安全を確保するとともに、地元の皆様の御意見を参考に、安全で親しみやすい河川整備等を検討してまいります。
 次に──済みません。ちょっと答弁書を忘れました。──大変失礼をいたしました。
 次に、通学路の安全確保についてお答えいたします。
 通学路の安全確保は非常に重要であると考えており、交通安全事業の中でも重点的に取り組んでおります。御指摘の箇所の歩道整備については必要性を認識しており、歩道設置を検討してまいります。なお、事業化には海南市や地元皆様方の協力が不可欠であり、今後とも調整に努めてまいります。
 以上であります。
○議長(吉井和視君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 御質問にお答えをいたします。
 まず、「紀州藩牢番頭家文書」の編さんにつきましてでございますが、平成十年度に県と和歌山市に対しまして人権研究所が支援要請を行いまして、それぞれ同額を負担するということで平成十一年度から事業がスタートしたというふうに聞いております。
 和歌山市は、補助金といたしまして五年間で五百万円の支出を行っておりますけれども、本県では会計上の正規な補助金として支出されていないことが判明しております。関係者等の聞き取りなどから、県から人権研究所に対しまして補助金に相当するものが支払われたことは事実のようであります。具体的には、平成十一年度から三年間で数件、書籍や啓発ビデオなどの購入名目で支出をしておりまして、支出先は人権研究所が実質的に運営をしております解放出版社和歌山支局となっております。
 現時点で当部が把握しております状況は以上のとおりでございますけれども、当時のいきさつや個々の支出につきましてさらに詳しく調査を実施いたしまして、その結果を踏まえて適切な対応を行ってまいります。
 次に「和歌山の部落史」の件でございますけども、部落史は、差別の歴史的過程を解明することにより部落差別の本質を明らかにし、よって効果的な人権教育、人権啓発に結びつけるとともに、差別とこれを解決するための取り組みの歴史を教訓として後世に残そうとするものであり、学術的に非常に価値のある事業であることから、県といたしましては推進していく立場に何ら変わりはございません。
 この八月には、学者、研究者で構成する和歌山の部落史編纂委員会が発足いたしまして、薗田委員長初め──この方は関西大学の名誉教授でございますが──八人の委員の方々が決まりまして、編さん体制が整っているところでございます。また、高野山において貴重な歴史的文書の公開も決まるなど、人権研究所において順調に進められております。
 さらに、四点目であります和歌山の部落史研究促進協議会の事務所の所在地につきましては、当初、研究業務を円滑に行うため、財団法人和歌山人権啓発センターとしておりました。その後、協議会業務を進めていく上で同センターとしておく必要がなくなったので、現在は和歌山県企画部人権局を所在地としております。
 なお、田辺市の職員が研究所で編さん業務に従事することにつきましては、問題ないものと考えております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) まず、通学路の安全につきましては、県土整備部や警察本部と協力して、その改善に努めているところであります。また、地域の方々の協力を得ながら児童生徒の登下校時の安全確保に努めていくことが重要であると考えております。
 次に、教職員の人事異動につきましては、全県的な視野に立って本県教育の一層の充実・発展を期すため、市町村教育委員会との緊密な連携のもと、適材を適所に配置し、教育効果を高めることを目的として実施しております。特に管理職の異動は、教職員の情熱や意欲を喚起し、能力を発揮させることができる有能な人材を配置する観点から、平成十四年度以降、より広域的に進めているところであります。
 今後ともこうした趣旨を踏まえつつ、御指摘の点も含め、市町村教育委員会と十分協議しながら、地域の実情に配慮し、広い視野に立ってバランスのとれた人事異動に努めてまいります。
 最後に、社団法人和歌山県人権研究所につきましてお答えします。
 当研究所は、部落差別を初めあらゆる差別の撤廃を図るため、人権教育等に関する調査、研究並びに啓発活動を実施することを目的に、平成十四年十月に認可した公益法人であります。当該法人に対しては、本年八月に定期の実地検査を行っております。その結果、収支状況及び資産状況等について公益法人として適格性に欠けるような不適正な事実は認められておりません。今後、必要に応じて関係機関と連携を図りながら調査を行ってまいりたいと考えております。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 御答弁ありがとうございました。幾つか前向きの答弁もいただきました。
 まず、再質問を二つしたいと思います。
 質問事項から先に申し上げますが、一つは、管理職の広域人事の問題です。
 「適材適所」「教育効果」、どこでも使える言葉でお答えいただきまして。まあしかし、「質問のことも生かしながら」ということも言っていただいたんですが、もう少しお聞きしたいと思います。
 今、地方分権というのが一つの流れでしょう。ところが、今、教育行政を見てみますと、教育事務所が廃止されて、人事行政も県教委に集中するようになっていることが少なくないのではないかという心配をするわけです。
 教職員、特に管理職が幾つかの地域や学校を経験することも、もちろん必要なことだろうと思います。その場合も、例えばある小さい町で、教育委員会がこの教員に管理職として立派になってもらいたい、そのために大きな学校も経験させたいと考えた場合に、その小さい町の教育委員会が、例えば和歌山市なりなんなり大きな町の教育委員会に話をかけて、「この先生は期待している教員なので、しばらくおたくの教育委員会で教頭を経験させてくれませんか」、こういうお話をする。そして、それを受けた大きな町の方でも、「それはお受けしましょう」と。それで、「私とこでも、この小さい学校のよさを学んできてもらいたい先生がいるので、それじゃ今度は私とこのだれだれという者をそちらでしばらく預かってくれませんか」「そうしましょう」と、こういうことのやりとりでもありまして、その間の仲介のようなことを教育委員会がしたらいいんではないかと私は思うんですよ。
 そういうふうなやりとりでこの管理職のそういう人事がやられているんだったら、私が今話したような、ある中学校区で四つしか学校がないのに、そのうちの三つの学校にその地域の経験のない管理職が来ている、あるいは一つの学校で二人ともその地域での教職経験がないなどということは、まず起こりようがないと思うんですね。何か、この上の方からやっているからそういうことが起こるんじゃないか。だから、もっとこの地方分権というね。だから、県の教育委員会、いつも何かやる場合は「市町村の教育委員会と相談してやってます」というふうに言われますけども、やっぱりまず地方の方が先であって、そしてその調整や手伝いを県の教育委員会がしたらいいんだというぐらいのそんな割り切り方をした方がこういう人事行政でうまくいくんではないかという気持ちを、私は持っています。
 余り考えていること違うんではない、否定されないと思うんですけど、ひとつ教育長の御見解をもう一度お伺いしたいと思います。
 次に、社団法人和歌山人権研究所と「和歌山の部落史」の問題ですが、知事からも企画部長からも重大な問題を含んでいるという認識が示されまして、恐らく調査に一定の時間がかかるのはやむを得ないだろうと思います。ただ、それをしながら一方では「和歌山の部落史」、あるいはこの社団法人和歌山人権研究所にかかわる問題というのは全く手つかずでそのまま進めていくという、こういう御答弁なので、もう少し私は突っ込んでこの問題について申し上げたいと思うんです。
 問題を解明するために、私は和歌山市の担当課にもお会いをして話を聞きました。和歌山市は補助金の交付規則を持っていますから、その規則で補助団体には立入調査をする権限を持っています。そこで和歌山市は、五月の二十五日と二十七日の二度にわたって立入調査をしたそうです。そこで、県からちゃんとこんなぐあいに振り込んでいますよという通知を見せてもらったそうですね。初め一たんは、ああ、そうかと思ったそうです。しかし、県から振り込みをすれば、通帳というものは、どこどこから振り込みというふうにちゃんと機械で出てきますね。それがないではないかということが問題になって、一体どうしてですかというふうに聞いたら、別の通帳に振り込まれたものを一たん引き出して、それをATMで自分で現金でその通帳へ入れたから、だから振込先がないんだと。こういうことがはっきりしてきたという、こういうことでありました。そして、これはどういうお金かということになってきたわけです。
 その後、判明したのは、企画部長も少し触れていただいたんですが、「解放出版社和歌山支局支局長」という名前で書籍代の請求書が送りつけられて、県が受け付けの判を押しているということがはっきりしました。中身を見ますと、びっくりするんです。二〇〇二年度には「部落そして人権・環境」、単価二千五百円のものを百冊買っています。それから、「新修 部落問題事典」という本は、六千五百円という高いものですが、これも百冊買っています。その年は九十四万五千円。まだ百万円に足りませんね。それとは別に、大阪にある解放出版社からも書籍代の請求があり、振り込みしているんですが、こちらの方は一冊ずつ振り込んでいるんです。恐らく、これは本当に買って、そしてどっかへ、センターへ置いたんでしょうね。
 一方、和歌山支局支局長への振り込みは、補助金相当の裏金でないかと推測されるわけで、このことは企画部長も今そういうことについて言われました。
 しかし、この情報公開で私が手に入れたものでは、二〇〇二年度で九十四万五千円、二〇〇一年度で七十一万四千円でありまして、和歌山市に提出された和歌山県部落解放・人権研究所からの事業報告によりますと、県からの補助金は、初めの年にかなり多くて──後の方で百万円になるんですが──五百八十六万二千五百円となっています。ですから、まだどこかにこのお金の出どころがあるわけですね。だから、企画部長が答弁された「書籍や啓発ビデオなどの購入の名目で支出をしており」ということで、これからその中身をずっと五百八十六万になるまで調べていただけるんでしょうね。
 だれがこういうことにかかわったのか、担当職員だけでできるものではありませんから、この責任がどこまで当時の上層部に及ぶのかなど、調査も時間がかかるでしょう。しかし、何らかの裏金が動いたという事実は、県当局は既にはっきりしておられると思います。
 また、百冊の支出が名目だけで実際に書籍が購入されていないとすれば、請求書を出した側はどうなるのか。つまり、百冊という解放出版社支局長というので判を押して請求書を出しているのは、解放出版社の側です。そして、その方は和歌山県部落解放・人権研究所の役員の方でもあります。つまり、不正な金を渡した場合、渡した方にも責任はあるけども、もらった方は責任がないなんて、そんなばかな話はない。
 そうすると、和歌山県部落解放・人権研究所というものが今後のこの調査の中では、公益法人としてふさわしいのかどうか。今、教育委員会の教育長の答弁では、八月に調べたときは不正はなかったというふうに言われているんだけども、しかし、これは部落解放・人権研究所だけでなくて、社団法人になってからまで引きずっている問題ですよ。
 ところが、その不正が、まあ言うたら見つけることができなかったということなんでしょうが、答弁が。そしたら、今後一体どうなるのか。まずこういう事実について、私の申し上げたことに県としての認識上の違いがあるのか。それは違いますよとなったら「違いますよ」と言うてくれたらいいですし。その点を企画部長にもお伺いしたいし、それは今後、こういう金を渡したも不正なら、もらったも不正だという関係が出てきた場合に、公益法人という問題について再検討する必要があるか。もちろん、今それをどうするという結論は求めませんが、そういうことも含めて問題になってくるんではないかと私は思うんですが、その点、教育長にもお伺いしたいと思います。
 なお、田辺市の職員の勤務については、問題ないと言い切っていいんだろうか。これは、判こを押しているのは──恐らく事務所はまたその後、判を押し直して移したんだと思いますけどね。しかし、この社団法人というのは別人格ですから、そこで仕事をして何も問題ございませんというのでは少し問題があるんではないかということだけ申し上げておきます。
 それから、知事にお伺いいたしますが、こうした事実の究明で、県庁内の個人の責任究明ももちろん要るんですけど、私はそれ以上に大事だと思うのは、やはりこういう運動団体と県の間の不正常な、まあ「癒着」という言葉は適切か、余り使ってほしくないでしょうけども、やっぱり癒着でしょうね。そうしか言いようないですね。そういう問題を断ち切るチャンスだというふうに私は思っているんです。これが明らかになった機会にそのうみを出し切ってもらいたいというふうに思うんですが、そういう観点で知事からももう一言、答弁をいただきたいと思います。
 あと、まだありますか。──あと、少し要望を申し上げておきたいと思います。
 きょうは、阪井バイパスの問題で多くの皆さんが傍聴に見えていただいています。先日、この皆さんの中の何人かが県庁の前でチラシも配布されたそうです。「県庁の前でチラシを配布するなんてことは生まれて初めてだ」というふうに多くの皆さんが言っておられましたね。
 その中で一人が言われたんですけど、「一生懸命チラシまいていたら、県庁の職員でも興味を持って受け取ってくれた人があってうれしかった」と。しかし、全く受け取ろうとしない職員もいましてね、「一体この人ら、県民の声をどない思ってるんやろうと思って悲しかった」という感想を述べられた方がおられました。
 これは勤務時間外ですから、県庁の職員、何も、受け取らなんだらけしからんとかそんなこと、私は言う気ないですよ。全くそれは個人の御自由なんですけどね。しかし、そのことを皆さん言われるのは、やっぱり県がもうちょっとわしらの思いを聞いてほしいという必死の思いがその声にもあるんだなというふうに思ったということも御紹介して、ぜひともこれからの仕事をするのにそういう皆さんの声をしっかりと聞いていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 それから日方川の改修の問題ですが、これは、当面の橋を二年間でつくって、そこから先、いつまでできるかという期限がなかなか出ないんですね。これはやっぱり河川改修の予算が削られてきている中で、私もこの本会議でも言いましたし、決算委員会でも申し上げましたけども、かつては十六億ぐらいあった予算が六分の一に減っているということも指摘しまして──ことしの予算では少し復活していただいたんですが、やはりこの河川の安全問題、大変大事だと思います。同時に、もう一つの用地買収が済んだ用地を活用する問題というのは、何もその場所まで工事が進むまで待たなくてもできる話ですんで、これはできることからどんどんやっていただきたいと思っています。
 以上のことをお願いしまして、私の第二回目の質問と要望事項を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
○議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 私は、この同和問題ということについては公正無私ということで、知事に就任して以来、ずっとその方針で対応してきております。これは、今までどういうことをしてきたかということを見ていただければわかると思うんですが。そして、その中で、この今問題になっております和歌山人権研究所というのは人権問題の調査研究を目的とした公益社団法人で、これに参加されている学者の方、私も個人的に知っている方もおられますけども、非常に立派な方で、今まで人権に関する研究集会や講座の開催、出版などを行ってきているというふうに認識をしているところでございます。
 今後とも、この研究所とは、当然のことながら協力をできるところは協力し、お互いの立場で人権問題に取り組んでいきたいと、こういう考え方でございますし、それから運動体の問題につきましては、これは真剣に活動しているあらゆる団体と自由な意見交換を行い、当事者としての意見を聞きながら県として主体性を持って人権行政の推進に努めていくと、これはもう大原則ですし、私はそのとおりこれからもやっていきたいと、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 再質問にお答えいたします。
 先ほどの回答と重複いたしますが、詳しく事実を究明いたしまして、調査いたしまして究明しまして、その結果を厳しく受けとめまして県として対応してまいりたいというふうに考えております。
 それからまた部落史につきましては、高野山金剛峯寺の支援とか、多くの学者、研究者が参加するなど、事業が順調に今進んでおります。県といたしましても、和歌山の部落史研究促進協議会を通じまして、研究所に対して適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) お答えいたします。
 和歌山人権研究所の件につきましては、法人の認可を行った県教育委員会として、今後必要とあらばさらなる調査を行うことにやぶさかではございません。
 次に、教職員の人事、なかんずく管理職の人事異動につきまして種々御意見をちょうだいいたしました。
 おっしゃるようなさまざまな学校の置かれている環境の違い等を踏まえ、規模や地域、それらをさまざまそれなりに経験をしてもらいながら、管理職としてより高い識見を持ってもらうというのは大事なことでありますから、広域的な人事はこれからも進めていきたいと思っております。その際に、現状においても既に行っているわけでありますが、県教育委員会の担当の人事主事と各市町村の教育長との間では、長時間にわたって非常にきめの細かい協議を行っております。おっしゃられたような仲介的な役割を県教育委員会が果たしているケースも間々あります。
 そういう中で、当該地方に勤務経験があるかないかということが最大唯一の問題点ではなくて、その学校に勤務した中で地域との新たな関係が生まれるということも十分ありますし、多くの新しい息吹が生まれてきたというふうな好評をいただいているケースも多々ありますので、先ほどお答えしましたように、十分な配慮を行いながら、より広い範囲で和歌山県全体の教育の向上のために頑張ってくれる管理職を育成していきたいというふうに考えております。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 「和歌山の部落史」と人権研究所の問題は、今議会でけりがつく話でなくて、調査をしたのを受けてさらに議論をすることになるので、あとはもう意見だけを申し上げておきますが。
 やはり知事がおっしゃったことは、こういう不正な金の受け渡しというものが発覚しない前ならその話でいいんですよ。立派な学者がいて、どうこうこうこうという。それは立派な学者がおられるでしょう。けども、立派な学者がおられても、あるいは立派な大学の先生であっても、不正なことをやったということが問題になって裁判になったりいろいろしたことがあるし。今、問題は、そういう、そこに所属する学者がどうであるかという話じゃなくて、現に五百万の金、あるいはそれを超える金を、県が出してないのに人権研究所が受け取っている、そのためにそれに関係する者を使って、にせの請求書をつくって、こういう金を回したということがほぼはっきりしてきて、これから真相を究明する段階へ来てるという中での話なんですね。
 そういう話で言うと、知事の答弁というのは全く納得できないということだけ申し上げて。しかし、これはきょうで終わる話ではありませんから、そして知事は公正でというふうに言われましたから、ぜひともこの際、これまで和歌山県にあったうみのようなものがあれば出し切るのに頑張っていただきたい。引き続いてこの議論をしていきたいと思います。
 以上で、私の質問は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は九月二十六日定刻より再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時五十八分散会

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