平成17年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(山下大輔議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時三分開議
○議長(小川 武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第百三十五号から議案第百九十二号まで、並びに知事専決処分報告報第八号から報第十三号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 二十六番山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 皆さん、おはようございます。一般質問最終日、朝一番の質問ですので、張り切って頑張ります。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、早速、通告に従って一般質問をさせていただきます。
 まずは、御報告から。
 去る五月二十五日から六月三日にかけて、自由民主党県議団の井出益弘議員並びに新生わかやま県議団の野見山海議員の両先輩議員とともに、議会からの調査命令を受けてドイツを訪問し、環境政策を中心に都市政策、世界遺産に係る調査などを行ってまいりました。詳細については別途報告書を提出させていただきますが、この議場ではその概要を御説明申し上げます。
 我々三名は、先月五月二十五日に日本を離れ、一路ドイツへ。機中一泊の十四時間の飛行を経て、ドイツ・フランクフルト空港に到着しました。今回訪問したのはドイツの中南部地域で、ノルトライン・ウェストファーレン州、ラインラント・ファルツ州、そしてヘッセン州の三州にまたがる地域で、フランクフルトからデュッセルドルフ、クレフェルト、ケルン、オプホーベン、ミュンスター、マインツ、そして最終はビースバーデンまで、八日間の間に八つの町を訪問しました。
 ドイツ国内の移動には、バス、電車、船を利用して七百キロを超える移動を繰り返し、当初予定していた二十一カ所での調査を無事終了し、帰国いたしました。
 ドイツでは環境保護政策が国策の中心に据えられ、国政、地方ともに徹底した取り組みが進められています。環境に配慮した税制、再生可能エネルギーの大規模な導入、循環型経済の構築など、ドイツの環境政策は、ここ数年、国際的にも常に注目し続けられている状況にあり、我々の調査においても非常に参考になる事例が数多くありました。
 まずドイツ初日の二十六日には、デュッセルドルフにてドイツと日本の環境への取り組みの違いなどについて、ドイツみずほ銀行勤務の和歌山出身、西下奈穂子さんからお話を伺いました。午後からは、近代美術作品の収集で名高いK21美術館の経営責任者であるデトマー・ウェストホフ氏から環境文化に関しての講義を受けました。
 翌二十七日にはクレフェルトの風力発電会社を訪問し、現在のドイツ国内における自然エネルギー政策についての説明を受け、さらに同社の所有する風車を視察。実際に風力発電機にも上り、その構造を見学させていただきました。(写真を示す)これがその状況の様子を示した写真なのですけれども、向かって右側が、その事務所の方で説明を聞いている様子。右側の方が、風車の上まで上がりまして、周りの近隣にも幾つかの風車が立っておりますので、その状況を見てまいりました。現在ドイツでは、年間二千基という物すごいペースで電力風車が建設されているそうです。
 翌五月二十八日には、世界遺産の調査を二カ所行っています。まず午前中は、ライン川の世界遺産登録地域を訪れました。この中部ライン渓谷の両岸の町は、いまだに渡し船によって行き来し、一本の橋もかかっていません。また、この地域では現代建築のビルや風景にそぐわない建物も一切建てることはできないものとなっていて、徹底して景観が保全されています。世界遺産登録とは、光の部分だけでなく、陰の努力が大変で、ある面では住民にも大いに不便をかけるものとなります。世界遺産に登録され、それを守り続けるというのは相当の覚悟が要るものと改めて再認識させられました。
 午後からはケルンに移動して、世界遺産と景観環境問題についての調査を行っています。ここでも、登録された建物だけでなく、周辺エリアを含めた全体として景観を守ることがいかに大切かをさらに考えさせられました。
 昨年二〇〇四年に、高野・熊野が世界遺産に登録された第二十八回中国蘇州での世界遺産委員会で、ケルン大聖堂が危機にさらされている世界遺産リスト・危機遺産リストに入れられてしまいました。その原因は、近隣の高層ビル建築による景観破壊でした。遺産そのものの価値は変わらないのに、周辺の開発による景観の変化が原因というこの事例は極めて異例であり、新たな動きとして大きな注目を集めています。今後は、文化遺産と景観の問題は世界遺産保護を考える上で非常に大切な視点となり、我々にとっても重要な問題が提起されているものと思います。
 これは先ほど説明したライン川で、こういった一帯、川沿いできれいな風景が広がっているんですけれども、一本の橋もかかっていないという状況が六十五キロにわたって景観として保護されている状況があります。これはライン川です。
 もう一点が、これがケルンの大聖堂のてっぺんから撮った写真です。ちょうどこの真ん中にあるビル、これができたことによってケルンの世界遺産登録が取り消されようとしていると。周辺のビルが建つことによって、ケルンの大聖堂自体は変わっていないんですけれども、その世界遺産登録自体が検討し直されているという状況があります。
 また、翌二十九日にはオプホーベンにある環境教育施設「自然の宝庫」を訪問し、ドイツの環境教育を実際に体験してまいりました。これもその写真ですけれども、多くの子供たちが近隣の学校からやってきて、自然体験を通して環境問題を生き生きと遊びながら学んでいるというのが印象的でした。ドイツにはこういった施設がたくさんあります。学校だけじゃなくて、学校外において子供たちが遊びながら自然の大切さ、環境を守ることについて勉強するという施設があります。これがその写真なんですけれども、向かって左のようにたくさんの緑がある公園の中で子供たちが──こっちがちょうどお誕生日会がありまして、そこで自然環境の勉強もしながら、そういう楽しい遊びもしているという状況がありました。
 さて、五月三十日にはミュンスターのエコホテル・コルピンホテルにて環境経営並びにエコ対策などを見学しました。取締役専務のアンドレア・ハンセン氏によると、環境対策に取り組むメリットとしては、環境保護への貢献だけでなく自社のコスト削減にも大きな効果があるとのことでした。
 午後からはミュンスター市の最終廃棄物処理場で、ごみを燃やさない、ごみ分別、減量の取り組みについての説明を受け、その後、ミュンスター大学にて屋上ソーラー発電を見学、続いて車を持たない人だけが住民となれるカーフリー団地を訪ね、それぞれに説明を受けました。
 夕方からは、ミュンスター市議会を訪問。現在ドイツ国内では連立与党を形成するキリスト教民主同盟と緑の党ですが、特に環境政策を主導する緑の党で、環境政策及び都市政策に係る現在の取り組み内容などについてお話を伺いました。あわせて、ミュンスター緑の党議員団の皆さんが政策を議論する会議にも実際に同席させていただきました。それがこの写真です。これは、ミュンスター市議会の中、すぐ近くの会議室のところで政策の会議をしているところです。議員団の皆さんが政策を議論している会議に同席させてもらった中で感じたことは、ドイツが地方分権、住民自治の手本と世界からも評価されているように、地域において住民も参加して政策をつくり上げる、その取り組みは感心させられるものでした。この中でも、当然議員さんもいるんですけれども、それぞれの政党の支援者等に入っている方で一般住民の方、市民の方、例えば建築の専門家であるとか環境の専門家、そういう人たちに定期的に来ていただいて一緒に政策をつくり上げて、それを議会に提案していくと、そういったことが日常的に繰り返されていると。そういう部分においては非常に勉強になり、感心もさせられるものでありました。
 翌五月三十一日には、ミュンスター廃棄物処理会社にて廃棄物政策に関するヒアリングと見学を行い、あわせて環境相談所にてミュンスター市の環境政策についての説明を受けました。
 午後からはラインラント・ファルツ州の州都マインツに移動し、現在のドイツ経済界で若い世代を代表する実業家であり、前ドイツ青年会議所会頭も務められたマティアス・エス氏らと会談、地元経済人との交流会にも出席し、ドイツ経済の現状、エネルギー戦略などに関して意見交換を行いました。
 最終日は、ラインラント・ファルツ州経済担当副大臣を訪問。その経済担当副大臣のウォルター・シュトルツ副大臣とは経済政策、環境問題など幅広く議論を行い、お互いの認識を深め、両国、両地域の今後ますますの発展とその友好関係を深めることを確認いたしました。
 会議の最後には、木村知事から託されていた親書を副首相あて、副大臣あてにそれぞれ井出益弘議員、野見山海議員から無事お渡しすることができたことも、この場で御報告をさせていただきます。また、このときに副大臣から、ぜひ今後は和歌山とラインラント・ファルツ州との間でより実質的な関係を発展させ、人材交流を初めとして経済交流などを活発に進めていきたい旨の御発言があり、こちらも戻って知事に伝えることを約束してまいりました。
 そこで、このドイツ報告では一点だけ知事に質問し、御答弁いただきたいのですが、ラインラント・ファルツ州との友好関係について、二〇〇二年十一月にはラインラント・ファルツ州から公式訪問団を和歌山県として受け入れ、木村知事とも会見されています。その後も今日まで友好な関係を深めてくる中で、将来的には友好提携も視野に入れたさらなる取り組みを期待いたしますが、知事の御所見を賜りたいと思います。
 最後に、総括としまして、今回のドイツ訪問からは多くのことを学ばせていただいたのですが、まず何よりもドイツでは、あらゆる分野に一貫して「環境」というキーワードが貫かれていることに感心しました。これは日本での取り組みとは大きな差があるように感じます。
 一例を挙げると、日本では、電気を消すエコ運動も、過去の取り組みでは、急に思いついてまたいつの間にかやめていると──今のクールビズなんかももしかしたらそうかもわかんないですけれども──といったことの繰り返しですが、ドイツでは徹底した取り組みが進められています。ドイツを訪問した八日間のうち、行政機関、民間のオフィスなど数多く訪ねましたが、昼間に電気をつけている部屋は一つもありませんでした。先ほどオフィスの写真なんかを見せましたけれども、こういったところでも窓からの光をできるだけ取り入れるようにして、ほとんどもう一つとして例外なく昼間には電気がついていない状況がありました。これだけ徹底して電気が消されている状況には正直驚きました。
 ドイツでは、単に表面上で省エネ運動を進めるのではなく、もっと根本的なところから取り組まれています。この電気を消す運動などでも、外光を確保するために建築法自体が改正されているそうです。ドイツの建築法では、オフィスなど居室の奥行きが窓面から六メートル程度で規制されていて、建物をつくるところから省エネへの取り組みが徹底されています。これはあくまで一例ですが、上辺だけでなく一貫した取り組みを進めるドイツの姿勢は我々も見習うべき点がたくさんあり、本当に今回の視察では多くのことを学べたと感じています。今後は、今回のドイツ訪問で得た成果をしっかりと県勢発展につなげていきたいと考えております。
 以上で、ドイツの調査報告を終わらせていただきます。
 さて次に、今回のドイツ調査も踏まえて、環境をテーマに幾つかの具体的提案と質問をさせていただきたいと思います。
 今回ドイツを訪問した際、町の美しさに感動しました。日本では、町じゅうで美しい景観に感動することは余り多くありませんが、ドイツでは、美しい並木道や親水型の河原、また公園などが町じゅうにたくさんあり、あちこちに心を奪われる美しい風景があります。これは、たまたまつくられたものではなく、ドイツ国民が努力して環境への取り組みを徹底して進めてくる中でつくり上げてきたものです。ドイツでは法律の規定もあり、日曜・祝日のほとんどは店が閉まるようになっています。よって多くの住民は近くの並木道や湖畔をサイクリングしたり、河原で寝転がって本を読んだり、公園で子供と一緒の時間を過ごしたりするそうです。日本では休日を楽しく過ごすにはたくさんのお金が必要となることも多いですが、ドイツではお金をかけずにのんびり過ごせる数多くの選択肢が町の至るところにあります。
 こういった様子を眺めてくる中で、これこそ和歌山の目指すべき地域づくりの一つのよい手本になると確信して帰ってきた次第です。和歌山県も美しい海があり、美しい川があり、美しい山がある自然に恵まれた地です。この地域特性、地域資源を十分に生かして自然と共生した、都会にはない和歌山独自の魅力をつくっていくことこそが大切だと思います。そのためにも徹底した環境政策の実行が求められ、そこから都会との違いを際立たせる魅力ある和歌山づくりを進め、地域の活性化、産業の振興までつなげていく。
 今回の提案はあくまで環境にかかわる視点によってのみ行うものではなく、県独自の魅力づくりから県勢発展につなげるという、これまでの私自身が発言してきている一貫した視点を持つ中での質問ですので、ぜひとも前向きな御答弁をお願いいたします。
 そこで、まず現状で、環境先進県を目指す和歌山県の取り組み状況全般について知事の御認識をお伺いしたいと思います。
 和歌山県では、環境先進県として温暖化防止や環境保護の推進、循環型社会への取り組みなどを進めようとしていますが、しかしながら和歌山県財政課の資料によると、平成十七年度予算の概要では、全体予算が五千二百五十八億円のうち、目的別歳出として一位に教育費、二位に土木費、三位が公債費の六百七十六億円で、三位でも一二・九%と続いている状況があります。一方、環境生活部の予算額は、約三十億円が計上されているだけで、比率としては〇・六%にすぎません。こういった和歌山の現状、税の配分、予算の執行状況に見る環境分野への取り組みについて、知事はどのような認識をお持ちでしょうか。御所見を賜りたいと思います。
 ただ、この財政状況も厳しい中で、単に環境関連の特別事業をどんどんつくって投資するのがよいと私も思っているわけではありません。しかしながら、現実問題として環境対策への予算的配慮は少ないということも、これもまた事実です。
 そんな中、今後取り組むべきことは、教育、土木費など歳出費目で上位にある事業にいかにして環境の視点を組み入れていくかということであり、今後は、環境政策単体の取り組みではなく、より以上に幅広く環境政策関連の投資をふやしていくことが大切となります。
 そこで今回は、環境の視点を組み入れた環境に貢献する公共事業の提案として、ドイツを中心にヨーロッパ各国で積極的に取り入れられている公共工事の新たな手法、近自然工法の取り組みについて、特に河川整備、川づくりに関しての具体的な提案をさせていただきたいと思います。
 この「近自然工法」、「多自然型工法」といった言葉は、多くの人にとってまだまだ耳なれないものと思いますが、オリジナルはドイツ語で、自然に近い、自然に近づく建設工法ということです。我が国では一九九一年十一月に当時の建設省が多自然型川づくりという事業名で全国通達を出し、その積極的な推進を指示したのが出発点となっています。簡単にその内容を説明すると、従来までのコンクリートで固めた直線水路ではなく、本来その川が持っていた姿、自然の形に近いものとして利水治水を考えていこうというものです。
 近自然河川工法、多自然型川づくりは、人間と豊かな自然が共生共存するための取り組みであり、安全性を確保しつつも自然な景観を取り戻し、現代人が欲する自然の豊かな風情が感じられる快適な空間を生み出すというものです。現状では全国でも成功事例は数えるほどしかありませんが、代表的なものとしては、埼玉県の荒川中流域で行われている自然再生事業、また佐賀県松浦川中流域で行われているアザメの瀬・湿地の機能再生事業などは、本来の理念がしっかりと生きた事例と言えます。
 これらの事例は二件とも人工的につくり上げるのではなく、自然の再生力を生かし、時間をかけて機能や環境を再生していくことを基本としています。しかし、現状においては、多自然型川づくりと言いながらも、そもそもの基本理念を踏まえることもなく、従来までの護岸工事、河川工事をした上に単に見ばえだけで木を植え、緑をふやすといった誤った認識の多自然型工事が幾つも見受けられるのが現実で、その原因としては、事業内容が軽んじられる予算至上主義と行政特有の前例主義があると指摘されています。
 国土交通省が近自然工法の採用を積極的に取り入れるように促してからはや十年が経過しますが、全国的に見てもその取り組みはまだまだ進んでいないのが実態です。そんな中では、このタイミングで和歌山県が近自然工法の理念をしっかりと踏まえ、全国に先駆けて環境に配慮した新たな公共事業のモデルを積極的に実践していくことは非常に価値の高い取り組みであり、かつ環境先進県和歌山の存在を際立たせるものともなります。
 そこで質問ですが、まず和歌山県の取り組み状況を確認するため、各部局のさまざまな資料に目を通しました。その中では、環境生活部発行の平成十六年度版の「和歌山県環境白書」に「多自然型川づくりを推進していく」とする記述が見られます。しかし、実際に工事・事業を行うのは県土整備部となるわけですが、この二つの部局でどのような話し合いがされ、どういった共通認識を持っているのかがよくわかりません。
 そこで知事に、和歌山県としてこの近自然工法、多自然型工法といったものについてどのような認識を持たれているのか、また、和歌山県で取り組む必要性をどのように感じておられるのか、御所見を賜りたいと思います。
 次に、環境生活部と県土整備部において、この近自然・多自然型川づくりというものについて、ここまでどのような協議が重ねられてきているでしょうか。また、協議を重ねてくる中で、その必要性、実行に向けた可能性などについてどういった認識を持たれていますか。これは、両部を代表して県土整備部長に御答弁をいただきたいと思います。
 あわせて、現状で多自然型として行っている事業として県内で二カ所ほど実験的に取り組まれているものがあるようですが、その成果をどのように検証し、今後の事業にどうやって生かしていこうとされているのか。これもあわせてお聞きいたします。
 また、この質問の最後に、多自然型・近自然工法による河川整備は、私たちが先日訪問した先進地のドイツなどでは、土木工学の専門家だけではなく、少なくとも生態学、景観工学の専門家が加わることが義務づけられています。ポイントは、この三者が参加しなければプロジェクトとして認められないということです。しかし、日本の河川改修は、多くの場合、河川工学を専門とする者が行い、他の専門家は助言をすることはあっても対等な関係でプロジェクトが進められるということはありません、
 そこで提案ですが、河川工事を行う場合に、和歌山モデルとして土木工学の専門家だけでなく、環境、生態、景観といった専門家を計画段階から参画させるという県独自のルールづくりを行ってはどうでしょうか。そのような取り組みをルール化しているところはまだ全国にありません。ぜひこういったところでも和歌山モデルを確立していただきたいと思いますが、これも県土整備部長に御答弁をいただきたいと思います。
 続きまして、和歌山観光のバージョンアップ、世界遺産登録後の取り組みについて。
 和歌山の観光振興は、昨年七月七日に高野・熊野が紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産に登録されてから、右肩上がりの状況です。その実態は、観光客の入り込み動向にもよくあらわれています。
 伊都郡の高野エリアでは、平成十五年度に二百五十万人だった観光客の入り込み数が平成十六年度には三百二十万人と七十万人もの増加、前年比で一二六・五%となっています。東牟婁郡熊野エリアでも、平成十五年度には約四百万人だった観光客が平成十六年度には七十万人増加して四百七十万人。県全体の宿泊客数を見ても、平成十五年度には六万人だったものが平成十六年度には何と十一万人となっていて五万人も増加し、対前年で一八〇%と倍増する勢いです。あわせて外国人宿泊客数も、高野・熊野エリアを合わせて平成十五年度には約二万四千人だったものが平成十六年度には三万四千人となっており、実に一万人の増加を記録するものとなっています。
 今まさに和歌山県は、過去にない観光の大きなチャンスが訪れていて、世界遺産登録を契機として、和歌山観光といったものが全国から注目され、世界からも注目されるという新たな段階に入っています。
 しかし、そんな今こそ冷静に考えなくてはいけないのだと思います。チャンスはピンチ、絶好の機会は大きな危機とも隣り合わせになっていることも多いものです。現状の望ましい状況、そのチャンスをしっかりとつかみ将来へとつなげるためにも、今、私たちはある面では冷静に状況を把握し、その中で問題のある部分をしっかりと見詰め、対策を講じる、今のタイミングで改めて和歌山における観光の細部の点検、見直しを行うことが必要とされていると私は強く感じます。
 今回はそういった観点から、特に高野山の観光客の受け入れ態勢を例として、問題点を提起しつつ将来を展望してみたいと思います。
 昨年、高野・熊野が世界遺産に登録された後、私自身、何度もこの地域を訪れる機会がありました。それは議員として招かれることもありましたし、また、全くのプライベートで県外からのお客様を案内して訪れることも何度かありました。そんな中で、実際に高野山を歩いて感じた問題点の中から、今回は観光案内ガイド、高野山の交通問題、そしてPRといった側面から提案並びに質問をさせていただきたいと思います。
 まずは、観光案内ガイドについて。
 ことしの三月二十日、私は東京からお客様を案内して高野山を訪れる機会がありました。そのときに私自身は、初めて観光案内のガイドさんをお願いしたのですが、壇上伽藍、金剛峯寺、そして奥の院を回る約二時間八千円の案内を受ける中で、数多くの問題を感じることになりました。細かく言い出すと切りがないのですが、時間を短縮しようと先を急ぐ案内、それぞれの施設でも説明が十分でなく、とにかくお客様の立場に立った案内ができていないというものでした。
 一例を挙げると、奥の院では戦国武将織田信長のお墓の近くに行ったときに、東京のお客さんが階段を上がって信長のお墓を見たいと言ったのですが、ガイドさんは露骨に嫌な顔をして、「ちっちゃなお墓やから見てもしゃあないで」と言うのです。確かに少しミーハーかもしれませんが、多くのお客様はドラマの主人公にもなる人物のお墓に興味を持ち、見てみたいと思うのは自然だと思います。しかし、そのようなお客様の気持ちを察することもなく、最後には頼んでもいないお土産物屋さんに連れていかれて三十分足どめされました。残念ながら、このようなガイドを受けたことで高野山観光の魅力は半減してしまったように思います。
 当然、すべてのガイドさんがそういった方ではないのだと思います。しかしながら、私自身、今回担当したガイドさんと道々ですれ違う同僚のガイドさんがすれ違いざまに会話しているのを聞いた印象では、少なからず同じようなガイドさんがいるのも確かだと思います。一緒に行った東京からのお客様も、「自分たちのことは別にして、これから多くのお客様をお迎えするのだから、これから何とか対処してよいように持っていければいい」とやんわりと話されて東京に帰られました。こういったことを繰り返していれば、せっかく世界遺産登録でたくさんのお客さんにお越しいただきながら、それは将来へとつながらないものになってしまいます。
 そこでまず、この高野山の案内も含め、県全体の問題として観光ガイドの資質向上について、これまで県では語り部制度など観光案内ガイドの育成に力を入れてこられていますが、しかし現実にはまだ課題は多いと思います。私自身、身をもって経験しましたが、観光ガイドさんの役割は非常に重要であり、その地域の印象まで左右するものになります。高野山の場合は少し特殊事情もあるようですが、早急に地元自治体とも協力してお客様の受け入れ態勢を改めて点検し、その再整備を進めてもらいたいと考えますが、商工労働部長より御答弁をいただきたいと思います。
 またあわせて、こういったガイド案内のサービスを向上させる具体策として、そのサービスを評価する仕組みを導入することを提案します。
 今さまざまなサービス業で、お客様アンケートなど、そのサービスを評価するシステムが導入されています。これはホテルなどでは経営改善の重要なツールとして欠かせないものとされていますが、このお客様の声こそ貴重な情報源であり、サービスを改善し、新たなサービスを生み出す原動力となる財産です。ぜひ、観光案内、ガイド事業を再整備する中で、そのサービスを評価してもらう評価シートなどの導入を徹底させて今後の和歌山観光のレベルアップを図ってもらいたいと考えますが、いかがでしょうか。あわせて御答弁をいただきたいと思います。
 次に、高野山に上がってもう一つ気がかりなのは、交通問題です。
 大門から入り奥の院へと続くその車道は、特に土日ともなると、その狭いエリアに車が詰め込まれ、排気ガスが充満する最悪の環境となっています。私自身、何度か目にした光景として、外国人を含め、多くの観光客がタオルで口を押さえて車の間を縫って歩く。これは見るに忍びない状況です。こういった状況を改善するのも緊急の課題だと思います。
 この交通問題は世界遺産の登録前から心配されていたもので、その対応策は以前から検討されていたように記憶しています。その中で、パーク・アンド・ライド方式を導入し、高野山内の観光スポットとなるエリアについて一般車両の通行を制限することなどが検討されていたように思いますが、その後、この取り組みはどうなっているでしょうか。県としてのかかわり状況と、どういった対応を具体的にしてきているのか、あわせて今後の見通しについて企画部長にお伺いいたします。
 また、このパーク・アンド・ライドと一緒に、環境に優しい新たな移動手段の確保として、京都などで定着しているベロタクシーの導入を提案したいと思います。
 「ベロ」とはラテン語で自転車を意味するもので、お客様を乗せて運ぶように設計された自転車タクシーのことです。ベロタクシーは、一九九七年、ドイツ・ベルリンで誕生し、日本では二〇〇二年に京都で初めて走行を開始し、現在では全国の各都市に普及しています。これは環境に配慮した車にかわる移動手段として、また観光資源としても期待され、導入を検討する価値のあるものと思いますが、これは商工労働部長に御答弁をお願いします。
 さて、この高野山観光関連の質問の最後として、PRの問題について。
 現状では、世界遺産登録を契機として、マスコミ取材も大幅に増加し、マスコミへの露出も大きく伸びている状況です。和歌山県観光連盟のまとめによると、平成十六年二月からことしの三月にかけて、世界遺産登録に関連したマスコミ露出は、新聞百四媒体、雑誌百六十三媒体、テレビ三十七媒体、ラジオその他で二十五媒体の計三百二十九の媒体で取り上げられています。これは各市町村に直接取材を依頼したものは入っていないのですが、それでも二十億円以上の広告効果があったと推計されています。このマスコミ露出がふえている今がチャンスです。全国的にも注目を浴びている今こそ、この状況を持続させるためにもマスコミ取材の受け入れ態勢の充実を図ることが重要だと考えます。
 そこで、これは以前に経済警察委員会において先輩議員の山下直也議員も提案されていますが、改めてフィルムコミッションの設立を提案したいと思います。
 このフィルムコミッションとは、映画、テレビドラマ、CMなどのロケ撮影を誘致し、実際の撮影をスムーズに進めるためのさまざまな支援を行う組織であり、地域をさらに売り出すのに大きな役割を果たすものです。その立ち上げには、手間はかかりますが、決してたくさんの予算を必要とするものではなく、しかも効果は大きいと言われる取り組みです。和歌山の露出が一気に伸びている今こそチャンスです。ぜひフィルムコミッションの設置に向けて努力していただきたいと考えますが、これも商工労働部長に御答弁をいただきたいと思います。
 最後の質問項目として、指定管理者制度の活用について。
 この指定管理者制度は、行政にとっても大きな効果が望める制度ですが、民間事業者の方にも大きなチャンスを与えます。三菱総合研究所の調査では、指定管理者制度の導入で、潜在規模として十兆円の新市場が生まれると試算されていて、全国では今、多くの民間企業が参入への意欲を示している状況があります。
 私自身、昨年の議会でも質問し、強い関心を持ってきたものですが、今議会ではいよいよ指定管理者制度の導入に向けた幾つもの議案が提出されるものとなっています。これから年末にかけてさまざまな調整活動が活発化し、来年四月に向けて準備も急ピッチで進められるものとなります。
 もとより、この制度をよりよく活用し、住民サービスの向上から県行政の再構築にまでしっかりと効果を上げてもらいたいと望むものですが、今議会ではその細部について幾つかの提案、質問をさせていただきたいと思います。
 今議会では、きょうが一般質問の最終日であり、さきに町田先輩議員を初めとして同僚議員からも質問された内容と一部重複する部分もあるかとは思いますが、できるだけ視点を変えて質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 昨年、地方自治法の一部が改正され、公の施設管理について、これまでの管理委託制度にかわるものとして指定管理者制度が導入されました。そもそもこの法改正の目的は、住民サービスの向上、管理経費の節減、管理運営の効率化などが挙げられていますが、その上に私は、民間事業者の新たな発想による施設活用から、その施設自体の価値向上にも非常に期待しているところです。従来からの官の発想、官の手法による運営では限界があり、あくまでこの制度の導入においては、これまでの延長線上に物事を考えるのではなく、新しい民間の発想をもって、単なる運営から新たな価値を創造する経営にシフトする取り組みが期待されます。
 この制度は国の特段の制約もなく、ある面では各自治体における知恵比べ的な側面もあります。和歌山県でもこの指定管理者制度を活用して、他の地域以上に質の高い公共サービスが提供されることを期待しつつ、幾つかの質問をさせていただきます。
 まず最初に、この指定管理者制度に対しての知事の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
 私自身は、前段でもお話ししたように、この制度は、その取り組みいかんによって民間事業の活性化と行政活動の再構築に非常に大きな効果があると期待しています。ただ、県の姿勢によっては、これを消極的に取り組めばこれまでの受託先を再委託するだけの制度に終わってしまいますし、積極的に取り組めば活発な民間参入も期待できるものと考えます。
 そこで、知事の姿勢として、指定管理者制度自体の評価も含めてこの制度に対してどういった姿勢で取り組もうとされているのか、その御認識をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、今議会では指定管理者を導入する施設として四十一の施設がリストアップされていますが、しかしながら、その中では非公募も含めて検討されていることをお聞きしています。公募を行うか、非公募とするかの判断はどのようにされているでしょうか。その判断を行っている基準についても御説明をいただきたいと思います。
 また、今議会で出された指定管理者制度の導入予定施設の中には類似施設もあり、管理・運営、経営といった視点で見ると、幾つかまとめた形にして受託することによって、より効率的、より質の高いサービスが提供できるものと考えます。
 そこで提案ですが、管理者を募集する前の段階において、施設のあり方検討会的なものをつくり、今ある四十一施設について、まずはそれぞれの組み合わせなども含めて整理しておくことを提案しますが、これは総務部長に御答弁をいただきたいと思います。
 次に、それぞれの公共施設のさらなる有効活用について。
 これまでは、行政が管理運営をしていたために、施設のポテンシャルを十二分に引き出すことができていなかった部分もあったと思います。しかし今後は、縛りの少ない民間事業者が参入し、独自のノウハウを活用することで、その施設の潜在的な力をより以上に引き出してもらえることが期待されます。しかし、そこでは事業者側からの提案を待っているだけではなく、行政側からもそれぞれの施設の理想とする姿をきちんと提示すべきだと考えます。そのためには、指定管理者制度を導入する前に、それぞれの施設でどのようなサービスが不足しており、新たに何を期待するのかきっちりと点検し、それらを契約内容などに盛り込んでおくことが大切だと考えます。これにより、新しい管理者に変わるメリットもより明確になると思いますが、総務部長の御所見をお伺いいたします。
 また、指定管理者を選考するに当たっては、施設ごとに明確な選定基準を設けておくことも必要だと考えます。単に安かろう悪かろうではだめですし、また地域への貢献が強く期待されている施設については、コストだけでない選定基準も必要になってきます。そこでは施設内容に応じてきめ細かい条件設定が必要であり、例えば各施設ごとの必要とされる専門性、サービスの質、地域への貢献度など、その選定基準をより具体的に明示しておくことが必要だと考えますが、これも総務部長からお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 あわせて、管理者の選定時に選定委員会というものを設置して選考するということですが、この選定委員会の人選について、その基準などがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
 最後の質問として、委託後の対応について。
 指定された管理者を評価する仕組みも大切になってきます。この指定管理者制度では、数年ごとに契約の更新がされるものとなりますが、そのときには当該の施設管理者が本当に当初の見込みどおりの成果を上げることができているのかを確認する作業が必要になります。そのときには、抽象的な議論に陥らないためにも、より明確な評価の基準が必要であり、また、そこではユーザー、利用者による評価も重要なものとなってくると考えます。そういったさまざまな視点を加えた施設運営に係る幅広い評価、チェックする仕組みを検討しておくことを提案しますが、あわせて総務部長から御答弁を願います。
 以上で、私の一問目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの山下大輔君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず第一点の、ドイツのラインラント・ファルツ州との交流をもっと進めたらどうかということです。
 御質問にもありましたように、ラインラント・ファルツ州は、ワインの生産も盛んですし、それから精密機械やITとか、そういう産業も非常に盛んな、ドイツでも非常に重要な地域だと思います。幸い和歌山県とは、副首相が平成十四年に来られて私もお会いして、非常にざっくばらんな人柄でありましたし、それを機会にラインラント・ファルツ協会というのが和歌山で結成され、これも割と活発に活動しているというふうなこともありますので、今後何かもう少し実質的な交流みたいなのができるような方策はないか、いろいろ探っていきたいというふうに思っております。
 次に、環境の問題です。
 御質問にもありましたように、環境と銘打った予算というのは確かに予算の中では非常に少ないわけですけども、ありとあらゆることがこれから地球環境の保全、そしてまた県土の美しさを守っていくというふうなことにつながっていくという発想から、いろんな形で環境への配慮を行っているところです。
 例えば、緑の雇用なんかもそういうことです。それから、企業の森なんかもそういうこと。それから、県産材を利用した公共事業のあり方とか、いろんなことで対応しているんですけども、まだ確かに各部局ごとというふうな面がないということは言えないと思いますので、この点、いろいろなところへ協力して、そして、環境というものは一回寄せて、どういうものが環境に役に立っているかというようなトータルなあり方というものを見えるような形にすることも一つだろうというふうに思っております。
 それから、それと関連して近自然工法ということですが、これは御質問にもありましたが、ちょっと思い切り和歌山の方策としても売り出していきたい。和歌山にはすばらしい川があるわけです。つい先日も古座川をテレビでやっているのを見ましたけど、本当に考えられないぐらいいい魚もいますし、すばらしいものがある。ただ、今までの近自然型工法というのは、どちらかというとびほう策といいますか、セメントの上にちょっと何かかぶせて親水とかいうような形にしているのを若干僕も疑問を持っていた面があるんですけども、これをもう少し高度な、本当の意味での近自然型の工法というのを和歌山のすばらしい川から打ち出すことができたら、これは一つ特色のある政策になるのじゃないかと思いますので、これはいろいろ研究をしたいと思います。
 それから、最後に指定管理者の問題です。
 指定管理者については、私も非常にこの制度が今までの施設管理というもののあり方を変えるのではないかということで大いに期待しておりまして、また逆に言えば変えるような方向で運営する、かわりばえのしないような形にならないようにしていくことが非常に大事だろうということで積極的に評価しているわけです。
 ただ、施設がたくさんあるんですけども、例えば先般来問題になっていた知的障害者の人の施設とか、そういうふうな施設では、今までのところとの人間関係みたいなことで物すごくそれが安定につながっているというふうな面もあるので、そういうふうな面も十分に考慮しながら、例えばそういうところについては非公募にするというふうな選択もこれは考えていかなければならないと思っています。
 ただ、いずれにせよ、恣意的に公募・非公募が決められるとかいうようなことになると制度本来のあり方ということを大いに減殺してしまうということがありますので、そういうことのないように厳正に対処していきたいと、このように思っております。
○議長(小川 武君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 和歌山独自の魅力づくりの関係三点、お答え申し上げます。
 まず、県土整備部と環境生活部との協議の状況でございます。
 平成九年に河川法が改正され、治水利水に加え、新たに環境がその目的に加えられ、新しい河川計画制度が導入されました。
 河川整備の長期的な方針を示す河川整備基本方針や具体的な整備内容を定める河川整備計画の策定に当たっては、環境生活部を初めとする関係部局と協議を重ねているところでございます。このような協議に加え、住民の皆様の御意見を聞き、計画を策定することで治水安全度の向上とともに環境に配慮した河川整備が可能となると考えております。
 次に、この工法を取り入れた工事の実行状況でございますが、我が県では平成十二年ごろより、これまでの八つの区間でモデル的に取り組んでおります。例えば初期のころに取り組んだ切目川や加茂川では、その改修などにあわせて自然石を置き、川の流れを変化させるなど、自然の力を利用して瀬やふちを創出できるよう施工したところであり、現在では小魚のすみかとなっていることが確認されるなど、良好な河川環境が創出されております。
 最後に、河川工事実行プロセスにおける和歌山モデルの構築でございます。
 河川改修を行う場合、旧来型の整備だけではなく、河川の特性や地域の歴史・文化、環境にも配慮することが重要であると認識しております。
 今後、議員御提案の御趣旨やモデル地区での事例などを参考に、より幅広い学識経験者や住民の皆様の御意見を聞くなど、近自然型あるいは多自然型川づくりを進めるための取り組み手法を検討し、安全性、それから経済性にも配慮しつつ、和歌山らしい川づくりにより積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 観光に関する御質問三点にお答えをします。
 まず観光ガイドの資質の向上につきましては、おもてなしの一つとして、またリピーターを生む要因として非常に重要であると認識をしてございます。県では昭和六十一年から紀州語り部制度を設け、毎年研修会を実施しており、本年度は、この研修に加え、ガイド組織を通じた自主研修を支援する事業を実施することとしております。
 世界遺産登録によるガイド不足に対応するため、昨年、熊野古道及び高野山町石道の語り部養成講座を実施したところ、百六名の方々が受講し、受講者の中には既に語り部として活躍している方もいます。
 高野山内の観光ガイドにつきましては、高野町案内人条例を制定している高野町と連携をして、資質向上と新たな人材育成に努力してまいりたいと考えております。
 ガイドの仕組みにつきましても、紀州語り部登録制度を市町村合併を機会に見直しを行うこととしており、来訪者にとってより一層利用しやすい仕組みに変えていきたいと考えてございます。
 また、議員御提案の評価シートにつきましても、観光客の満足度やニーズを把握することは重要であり、情報を得るための方策として検討してまいりたいと考えております。
 次に、ベロタクシーの導入についてでございます。
 ベロタクシーは人力で動く環境に優しい乗り物であり、NPO団体が運営する事例があるなど、全国的にも注目をされており、その運行自体が新たな観光素材になる可能性を秘めていると認識をしております。
 議員御提言の高野山におけるベロタクシーの導入につきましては、庁内関係部局を初め、地元自治体や観光事業者等と連携を図りながら研究をしてまいります。
 次に、フィルムコミッションの設立についてでございます。
 テレビドラマ等の撮影地を観光客の誘致につなげていくフィルムコミッションは、観光地の情報発信の有効な一つの手段であると考えてございます。
 本県におきましては、誘致のための組織化には至ってはおりませんが、テレビ局等の協力依頼により、ロケ地の紹介や地元関係者との調整など積極的に取り組んでいるところであり、平成十四年度から十六年度までの三年間で二十件の対応実績がございます。
 今後とも、県内への映画やテレビドラマ等の撮影誘致に向け、情報の収集と発信に取り組むとともに、フィルムコミッションの設立につきましても他府県の状況も研究しながら検討してまいります。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) パーク・アンド・ライドについてでございます。
 観光地の交通は、地域の魅力を際立たせまして、来訪者にとっても利便性の高いものであるということが必要であるというふうに思っております。そういう意味でパーク・アンド・ライドといいますのは、とても有効な、そういうふうな一つであるというふうに認識をしております。このため県では、平成十六年度に近畿運輸局や地元自治体、交通事業者等で構成いたします高野山パーク&ライド実行委員会をつくりまして、秋の行楽シーズンに観光客の車をふもとの河川敷に駐車させまして、バスと電車で山上に誘導するパーク・アンド・ライドの実証実験を実施いたしました。
 自動車の通行制限を行い、パーク・アンド・ライドに誘導することがもちろん効果的ではありますけれども、高野山は聖地であると同時に多くの人が生活する場でもあります。龍神方面などへの生活や産業道路の分岐点でもあることから、これらの交通を処理するための道路整備や大型駐車場の建設などが必要となってきておりますし、また、地元住民の生活や商店の営業と密接に関係をしてまいります。
 高野山におきましては、アイドリングストップやエコカーの推進等、環境に配慮した施策が進められているところでありますが、県といたしましても、高野山にふさわしいパーク・アンド・ライドの事業化に向けまして、地元の意向を十分聞くとともに、引き続き関係者と連携して取り組んでまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 総務部長原 邦彰君。
  〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 指定管理者制度に関しまして四点の御提案、御質問がございました。
 まず一点目の指定管理者の募集方法についてでございますが、今回の制度導入は、民間ノウハウの積極的な活用によりまして住民サービスの向上を図ることなどを目的としておりまして、議員御指摘の効率化や施設運営の一体化なども踏まえまして、現在関係各部において具体的な募集方法は検討しております。
 なお、どういった募集方法がより効率的であるかなどにつきましては、本制度の導入実績を踏まえながら今後検討してまいりたいと考えております。
 二点目の募集時における新たな行政サービスの付加についてでございますが、施設の設置目的などがさまざまでございますので一概にはなかなか申し上げにくいわけでありますが、議員御提案のような住民ニーズに合ったさまざまな取り組みを展開していくということは大変重要な視点だと認識しておりまして、今後もそういった点に配慮しながら住民サービスの一層の向上を図れるよう努めてまいりたいと考えております。
 三点目の指定管理者の選定についてでございますが、今後それぞれの選定委員会で選定基準が決定されますが、その基準としては単にコストが安ければいいというだけではなくて、もちろんコストも大事な視点でございますけれども、適切な管理を行うための必要な物的・人的能力は備わっているか、あるいはその施設の特性を最大限に発揮できるのかどうかといった観点からの検討も重要な要素であると考えております。
 選定委員会につきましては、各部局あるいは各施設ごとに設置することになり、現在準備を進めているところであります。
 選定委員会の委員については、これも準備を進めておりますが、原則的には外部から複数の有識者に入っていただくというふうに考えておりまして、例えばそれぞれの分野に精通しております大学の先生、あるいは公認会計士といった方々に入っていただくのではなかろうかというふうに考えております。
 第四点目の運営状況を評価するシステムでございますけれども、現行では、指定された事業者に対し、毎年度、県への事業報告を義務づける一方、県ではその事業者に対しまして実地検査等も行うことができ、また監査の対象ともなっております。
 議員御提案の評価の重要性は十分認識しておりますが、まずはこのような現行制度を十分活用する中で適正な評価に努めた上で、さらによりよい方法がないか、今後検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──この際、申し上げます。発言時間は残り二十六秒であります。再質問されますか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(小川 武君) 以上で、山下大輔君の質問が終了いたしました。

このページの先頭へ