平成17年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


県議会の活動

平成十七年六月 和歌山県議会定例会会議録 第三号
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議事日程 第三号
 平成十七年六月二十一日(火曜日)午前十時開議
  第一 議案第百三十五号から議案第百九十二号まで、並びに報第八号から報第十三号まで(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第百三十五号から議案第百九十二号まで、並びに報第八号から報第十三号まで(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十五人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       新   島       雄
     四  番       山   下   直   也
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     九  番       前   川   勝   久
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十五 番       平   越   孝   哉
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       花   田   健   吉
     十八 番       藤   山   将   材
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       飯   田   敬   文
     二十二番       谷       洋   一
     二十三番       井   出   益   弘
     二十四番       宇 治 田   栄   蔵
     二十五番       東       幸   司
     二十六番       山   下   大   輔
     二十八番       原       日 出 夫
     二十九番       冨   安   民   浩
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       中   村   裕   一
     三十三番       浦   口   高   典
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       玉   置   公   良
     三十六番       江   上   柳   助
     三十七番       森       正   樹
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       阪   部   菊   雄
     四十 番       新   田   和   弘
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(なし)
 〔備考〕
     二十七番欠員
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        小 佐 田   昌   計
     出納長        水   谷   聡   明
     知事公室長      野   添       勝
     危機管理監      石   橋   秀   彦
     総務部長       原       邦   彰
     企画部長       高   嶋   洋   子
     環境生活部長     楠   本       隆
     福祉保健部長     嶋   田   正   巳
     商工労働部長     下           宏
     農林水産部長     西   岡   俊   雄
     県土整備部長     酒   井   利   夫
     教育委員会委員長   駒   井   則   彦
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員長   大   岡   淳   人
     警察本部長      宮   内       勝
     人事委員会委員長   西   浦   昭   人
     代表監査委員     垣   平   高   男
     選挙管理委員会委員長 山   本   恒   男
     医科大学学長     南   條   輝 志 男
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       小   住   博   章
     次長         土   井   陽   義
     議事課長       下   出   喜 久 雄
     議事課副課長     薮   上   育   男
     議事班長       山   本   保   誠
     議事課主査      湯   葉       努
     議事課主査      楠   見   直   博
     総務課長       島       光   正
     調査課長       辻       和   良
 (速記担当者)
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課主査      保   田   良   春
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  午前十時三分開議
○議長(小川 武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第百三十五号から議案第百九十二号まで、並びに知事専決処分報告報第八号から報第十三号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十六番江上柳助君。
  〔江上柳助君、登壇〕(拍手)
○江上柳助君 皆さん、おはようございます。
 ただいま議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問さしていただきます。
 今回もまたこのように一般質問の機会を与えていただきました先輩・同僚議員の皆様に、心から感謝、御礼申し上げます。ありがとうございます。
 冒頭に、質問へ入る前に、貴志川線存続の御礼と要望をさしていただきます。
 私は、一昨年十二月、貴志川線存続問題で貴志川線を存続させていくための利用促進について、この本会議で一般質問さしていただきました。知事は、鉄道軌道敷地の取得について県の負担とする旨の英断をされました。県の負担が二億四千万、そして八億二千万を十年間で貴志川町が三五%、そして和歌山市が六五%ということで決まりまして、後継事業者の公募をいたしまして九者が応募に応じたわけでありますが、本年四月に後継事業者に岡山市の岡山電気軌道が決まりました。
 南海電鉄はこれまで、ことしの九月末の営業終了を表明しておりましたが、一方、事業を引き継ぐ岡山電気軌道は、運転士の研修期間が必要なため、来年四月からの運行を希望、和歌山市などは南海電鉄に半年間の営業期間延長を要望しておりました。
 このたび南海電鉄は、地域の交通政策に貢献をする、さらには円滑に継承するためとして六月九日、国土交通省に廃止予定日を来年三月末までとする繰り下げの届け出書を提出いたしました。
 貴志川線の存続を求める「貴志川線の未来をつくる会」の皆様、知事を初め県当局、和歌山市、貴志川町の関係者の御尽力に心から敬意を表し、御礼を申し上げます。
 今、全国的にこのローカル線の存続が危ぶまれる中、全国のモデルケースとなる鉄道の運行事業でもあります。今後、円滑な移管に向けてさまざまな問題があると思います。どうか県当局としても、岡山電気軌道の営業開始に向けて積極的に協力していただくことを強く要望さしていただきます。
 それでは、質問に入らしていただきます。
 本県の保健医療体制の充実についてお尋ねいたします。
 皆様御承知のとおり、本県には、医療施設として九十二の病院、一般診療所千八十四施設──この一般診療所の数は人口比で全国一多い数であります──さらに歯科診療所五百六十五施設があります。高度医療機関として、和歌山県立医科大学附属病院、日本赤十字社和歌山医療センターがあります。日赤和歌山医療センターは、「医療センター」と名のつく日本赤十字社の病院では、東京と和歌山の二つのみであります。
 自分や家族の健康に不安を覚えたとき、病気になったとき、病院や医師に求めるものは、人それぞれ違うわけであります。がんで手術が必要になった場合どこで受ければいいのか、脳や心臓の手術はどの病院が大丈夫か、少しでもよい医療、満足できる医療を受けられる病院は、医師はといった不安が募ってきます。
 厚生労働省は、二〇〇二年から心臓外科、肺がんの手術など難度の高い手術について、一定の年間手術数を満たすかどうかで病院の診療報酬に五%加算の格差をつけました。これには、手術件数が多い病院は治療実績がよいという考え方が根底にあるからであります。
 例えば、医師という職業は、医師免許を取得しただけではペーパードライバーならぬペーパードクターであります。特に、外科手術は知識の上に熟練された技術が必要とされます。医療事故の八割は医師の未熟さが原因と言われております。
 最近になって、専門医の医療技術の底上げを図るため、認定試験に実技審査を導入する学会が出てきております。本来、治療は専門医ということが一番よいわけであります。それが不十分な現在、信頼の指標として参考になるのが手術や症例数なのであります。一般的に、手術、症例件数によって、よい病院、病院の実力と称されております。
 それでは、本県の県立医科大学附属病院を初めとする県の医療水準はどのくらいであるのか。きょうは資料をお配りさしていただいております。この資料は、最新の「週刊朝日」、「ヨミウリウイークリー」臨時増刊号の診療科目ごとの手術症例数ランキングであります。
 全国には九千百二十五の病院があります。この中で基準いわゆる手術件数が、心臓の場合は百件以上、消化器系がんの場合は百件以上、脳腫瘍、肺がんの場合は五十件以上、肝臓がんと脾臓がんもそうですが十例以上であります。ところが、専門医がいる場合は、その六割以上ということで基準がなってございます。その基準を満たしております千五百三十二の病院で、全国と近畿の手術件数の順位をまとめてみました。
 手術項目によって違いはあるものの、全国トップ五十位以内に、医科大学附属病院では胃がん手術の二十九位──トップ五十に胃がん手術の二十九位、また脳腫瘍手術など四項目が入っております。近畿圏トップ二十位の中では、医大附属病院で胃がん手術の七位を初め七手術項目が入っております。日赤和歌山医療センターでは、大腸がん手術が近畿でトップでございます。第一位を初め、四手術項目が入っております。
 確かに、大都市の病院、地方の病院の違いはあるものの、本県は大都市の病院と遜色のない高い医療水準であることがうかがえます。この背景には、医大と日赤の高度医療機関や中核病院、一般診療所との医療ネットワークや手術を担当する外科医、麻酔科医、病理医、看護師、臨床工学技士などの医療チームの並々ならぬ御苦労があるからだと思います。医療関係者の御尽力に心から敬意を表したいと思います。
 とりわけ、麻酔科医の存在を見逃すわけにまいりません。手術医の中で患者の体調に一番目配りをして手術を安全に進めるのは、麻酔科医の仕事であります。
 今回は、脳疾患、心臓病、がんなど一定の手術項目のランキングであります。ところが、医大の整形外科では年間六百件、救急で二百件の脊椎手術数があり、近畿ではトップクラスであります。三カ月先まで手術の予約が入っているそうであります。また、糖尿病などの内科でも数多くの症例数があります。症例数が多いということは、よい医師が育つ環境であり、質の高い満足の医療を受けられるということであります。
 一方、医大は、県内の中核病院に多くの医師を派遣しております。例えば、整形外科医だけでも橋本市民病院に四人、公立那賀病院に五人、社会保険紀南病院──五月一日より紀南綜合病院が紀南病院に改められました──に五人、新宮市民病院に五人派遣しております。これは整形外科医だけでございます。ほかの診療科目によっても派遣されております。なお、救急患者の半分、五割が、また六十五歳以上の四分の一、二五%が整形外科の患者であることを申し添えておきます。
 また、麻酔科医は毎日のように県下の中核病院に医大から送られております。なぜならば、麻酔がなければ手術ができないからであります。医大の役割の一つは、地域医療への貢献にあります。医大に活力と活気があれば医大を卒業した多くの臨床研修医が本県に残り、県民のために医師として地域医療に従事していくことになります。
 今日まで県は、奈良県立医科大学と比較した場合、金額は少ないものの多額の県費を医大に繰り出しております。私は、医大へ先行投資したお金は決してむだではなかった、負の赤字ではないと思うわけであります。それは、医大の存在が県民医療、地域医療にどれだけ貢献しているかははかり知れないからであります。
 今、医大は、木村知事を初め歴代の知事、県議会の皆様の地域医療への温かい思いやりと医師を中心とした医療関係者のたゆまぬ努力によって、花を咲かせ、実を結ぼうとしております。その果実は、とりもなおさず県民、国民がひとしく享受するものであります。
 そこで、知事にお尋ねいたします。
 和歌山県立医科大学は、来年四月から地方独立行政法人化されるわけであります。日赤と並んで医大は、第三次高度医療機関として高い医療水準を誇っております。地域には中核病院があり、一般診療所の数は、先ほど申し上げましたとおり、人口比で全国一であります。また、本県は世界で初めて全身麻酔による乳がん摘出手術に成功した那賀町の医聖・華岡青洲、我が国で初めて天然痘の予防ワクチンを開発した日置川町の医師・小山肆成のゆかりの地でもあります。
 県民がひとしく安心安全、満足の保健や医療を受けられるよう、今後さらに保健医療供給体制を確立し、医科大学を中核とした地域医療先進県を目指すべきだと考えます。本県の医療水準に対する知事の御感想とあわせ、御見解を承りたいと思います。
 次に、南條学長にお尋ねいたします。
 南條学長は本年三月、第十一代目の和歌山県立医科大学学長に就任されました。御就任、まことにおめでとうございます。
 先生は糖尿病学の権威者であられ、異常インシュリンの研究で日本糖尿病学会賞、日本医師会医学研究奨励賞を受賞され、一昨年には「遺伝子異常による糖尿病」で日本糖尿病学会賞を受賞されております。いよいよ来年四月から医大は地方独立行政法人化を迎え、困難のときであります。県民の願いは、現在の医療水準を向上させつつ、県民に愛され親しまれる大学附属病院であっていただきたいということであります。
 そこで、医科大学学長の決意とあわせ、今後、患者本位の質の高い医療、患者の視点を持った教育、地域医療への貢献にどのように取り組むお考えか、お伺いいたします。
 次に、紀南方面の医療の充実についてお尋ねいたします。
 県立医科大学附属病院の年間の外来患者数は、平成十六年度で三十三万三千九百五十人──こちらに、資料の一番下につけてございます──そのうち六・七%が大阪府からの患者となっております。ちなみに、日赤和歌山医療センターにおける大阪府からの救急外来患者でございますけれども、実に総患者数の七・二%となっております。大阪泉佐野・泉南方面には大きな病院はないものの、本県の医療水準の高さが容易にうかがえます。
 私が今回注目をしましたのは、医大、日赤の高度医療機関が和歌山県紀北部に位置する関係で、紀南方面からの患者が非常に少ないということであります。見ていただきますと、新宮・東牟婁からは総患者数の〇・五%、さらには田辺・西牟婁方面からは一%となっております。
 少ない理由は、本県は紀伊半島に位置し、南に長い地域の特性から、なかなか病院に行くのが大変だということもあろうかと思いますが、一方で社会保険紀南病院、また国立南和歌山医療センターがその役割を果たしているからだと思います。
 このことを裏づける資料としまして──これも資料をつけておりますが──「全国優良病院ランキング(十二の病気別、開業医の推薦病院)」があります。これは県内の開業医の先生方が推薦をした票数によって──これ、県内の開業医の方が投票しているわけですね──それによってランキングしたものであります。医大、日赤に続いて社会保険紀南病院、国立南和歌山医療センターが第三位に位置することが目立ちます。ちょっと薄い緑で色分けしておりますが、第三位に位置しております。
 県民がひとしく高度の医療を受けられるためにドクターヘリコプターが配備され、毎日のように救急患者を医大に運んでおります。また、小児ドクターも配置されました。そのことによって、一応県下全域がカバーできるわけであります。
 そこで、紀南方面の医療供給体制の強化を図る観点から、田辺市の医療機関に救命救急センターの設置を図るべきだと考えます。また、田辺市から新宮市までの間に地域の中核拠点病院の設置を検討すべきだと考えます。知事の御所見を承りたいと思います。
 次に、がん対策についてお尋ねいたします。
 がんは一昔前であれば不治の病と言われていましたが、現在は検査技術、治療技術などの進歩によって、早期発見で早期治療が行える病気になりました。しかしながら、依然として国民の三人に一人はがんで亡くなっております。がん患者、家族の八割以上が日本のがん医療に不満を持っていると言われております。命を救ってくれる医師を探し求めてさまよう患者の姿を「がん難民」と称する人もいるほどであります。
 県の「新生わかやまベンチマーク~数字で示す政策目標~」の平成十五年三月改訂版では、平成十三年度で人口十万人当たり二百九十・六人のがんの死亡率を平成十八年度には全国平均の二百三十八・八人まで下げるとしております。がん検診の受診率も全国的に見て一定の水準にあるものの、本県でがんの死亡率は高い状況となっております。このような本県におけるがん患者の状況が、医療費、特に老人医療費の負担増の大きな原因と考えられます。
 そこで、がん検診の受診率の向上など、総合的ながん予防対策の推進が必要であると考えますが、福祉保健部長にお伺いいたします。
 がん検診を効果的なものとするためには、最新の医療技術を積極的に導入していくことが必要であります。乳がん検診には、触診のみの検診からエックス線撮影、つまりマンモグラフィーが県下の医療機関と検診施設の三十六施設に設置されております。
 また、乳がん以外にも本県は、気管・気管支及び肺がんの死亡率は全国一であります。特に、女性の肺がん死亡率が高いようでございます。肺がんの発見率が現在行われている検診と比較して六ないし七倍高いと言われておりますヘリカルCTは、医大附属病院、日赤和歌山医療センターに導入されております。
 また最近、マスコミなどでも話題となっているものに、がんの診断において最先端技術と言われるポジトロン・エミッション・トモグラフィーと言われる──PETと言われておりますが、このPETとは陽電子放出断層撮影法のことで、その最大の特徴は、従来の診断方法では臓器や部位ごとに検査が必要だったところが一度の検査で全身を短時間にチェックできることにあります。この検査では、一部の臓器を除き、直径数ミリ程度の小さながんも判断でき、早期発見にも役立ちます。また、PETでは腫瘍が悪性か良性か、さらには悪性の度合いまで判断できるため、むだな手術をしなくて済むという利点もあります。
 本県におけるがん医療の水準を大きく向上させるため、新しい医療機器を積極的に導入すべきであると考えます。地域医療の中核であります第三次高度医療機関である医大附属病院及び日赤和歌山医療センターに、がんの発見率を高めるPET装置を導入すべきであると考えます。福祉保健部長の御所見をお伺いいたします。
 次に、がん患者在宅緩和医療システムの構築についてお尋ねいたします。
 本県は、先ほども申し上げましたように、がんによる死亡者が年間三千人を超え、全国的には第七位のがん死亡者が多い県であります。がん性疼痛に対するモルヒネの使用量は、一九八六年WHOの指針ができているにもかかわらず、日本のモルヒネの使用量は、がん末期患者の手厚いケアを行っているイギリス、カナダの九分の一であります。本県においては、一九九九年には全国都道府県で四十三位、全国の百八の大学附属病院の中では百位と、県内のがん患者は十分と言えるモルヒネなどの疼痛管理を受けていないのが現状でありました。
 県内では、一九九八年に和歌山緩和ケア研究会が発足し、また一九九九年には県立医科大学の総合移転と同時に緩和ケア病棟が開設されました。これは全国の国公立大学病院では初めてのことでありました。以後、県立医科大学が中心となって同研究会を通じてがん性疼痛に対するモルヒネ使用の啓発活動を行ったため、二〇〇三年のモルヒネの使用量は全国都道府県で四十三位から二十二位に、そして大学附属病院としても百位から五十一位にまで上昇しました。このことは、県内では教育と啓発活動が効果を示すことをあらわしています。
 今日、がん性疼痛患者に対する薬物使用に進歩が見られても、県内で承認されている緩和ケア病棟は、県立医科大学の九床、また国立南和歌山医療センターの八床のみで、決して県内終末期がん患者の多くを収容できるものではありません。
 告知されたがん患者の八〇%は、在宅での終末を希望していると言われております。ところが、在宅での介護に対する患者とその家族の不安は強く、かかりつけ医師、訪問看護ステーションにおいても在宅医療としては老人介護が中心であり、がん患者ケアの経験がないことから、がん患者の終末期の在宅看護を敬遠する傾向にあり、在宅医療支援体制ができていないのが実情であります。
 現在、県立医科大学では、がん治療に対する先端医療とあわせ、地域におけるがん患者在宅緩和医療システムの構築への取り組みがなされようとしております。このことは、がん末期患者とその家族にとって大きな朗報になるものと考えます。また、日本のがん末期患者に対する地域医療のモデルになるものとも考えられます。この取り組みをどのようにとらえ、県としてどのように支援していくお考えか、福祉保健部長にお伺いいたします。
 次に、麻酔科医不足についてお尋ねいたします。
 現在、全国の病院で麻酔科医の不足が深刻化しております。手術が予定どおり実施できない病院も出てきております。麻酔科医不足の一因は、手術件数の急増にあると言われております。また、昨年四月に始まった臨床研修制度も麻酔科医不足を加速させております。新人医師に二年間研修が義務づけられ、従来は大学の医局に入っていた新人が民間病院などで研修を受けることになりました。人手不足となった大学側は、他病院への麻酔科医の派遣を控え始めたとも言われております。
 そこで、国立がんセンターを初め全国の病院では、麻酔科医の募集が頻繁に行われております。ホームページで見た限りでも、東北大学病院、さらには東邦大学病院、さらには埼玉医科大学病院、また神戸大学病院等でございます。そして、埼玉医科大学においては、外科医の麻酔科医に対して二倍の給料を払うという病院も出てきております。
 本県においても、手術室に一名の麻酔科医が充足されている病院は、医大と日赤和歌山医療センター、和歌山労災病院の三医療施設だけであります。実際に本県においても麻酔科医が不足して、手術が予定どおりにできない病院も出てきております。現在は医大からの麻酔科医の派遣で何とか対応している現状であります。
 日本麻酔学会はことし二月、麻酔科医不足に対し、各医療機関の麻酔科医の定員をふやす、看護師、薬剤師などによる麻酔準備の導入、麻酔の保険診療の報酬や医師の給与を改善するなどを提言いたしました。結構、診療報酬も高いわけで、二時間の麻酔をかけるのに六万二千円の診療報酬がついております。
 最近では、この麻酔科医が不足しておりますので、東北の医科大学を卒業した麻酔医の方が自分で開業いたしまして、そして各病院と契約をして、「麻酔科医のフリーター」とまで評されておりますけれども、結局それは、本人はおっしゃっていますけど、「私はまじめに開業しているんです。そして、麻酔科医として各病院に契約をしながら行っているんです」、そういう状況まで起きているわけでございます。
 郷土和歌山が生んだ医聖・華岡青洲は、今から約二百年前の一八〇四年、世界で初めて全身麻酔による乳がん摘出手術に成功した外科医であります。この偉業は、広く世界で知られたハーバード大学におけるモートンのエーテルによる全身麻酔の公開実験の約四十年も前のことであります。青洲は、麻酔という概念すらなく痛みに耐えることが美徳とされていた時代に、動物実験を重ね、朝鮮アサガオを主成分とする「通仙散」を合成し、自分の母親や妻をも実験に使ってこの偉業を成功させたのであります。この偉業は一九五四年、シカゴで行われた国際外科学会に発表され、その栄誉館には現在も青洲に関する資料が展示されております。今日の麻酔科医不足の実態を医聖・華岡青洲先生が聞かれたら、さぞかし嘆かれることでありましょう。
 本県における手術患者の安全・安心や医療の質を向上させるための麻酔科医が不足している現状と今後の麻酔科医対策について、福祉保健部長にお伺いいたします。
 次に、災害時の救急医療に関して、トリアージドクター制度についてお尋ねいたします。
 皆様御承知のとおり、「トリアージ」とはフランス語で選別を意味します。死亡または生存の可能性のほとんどない場合は黒、重症の場合は赤、中等症の場合は黄色、軽症の場合は緑によって判断されます。そして、トリアージドクターは、死者の蘇生手術はせず、軽症者は止血程度しか行わず、手当てをしなければ死んでしまう人から判定し、赤のトリアージタグをつけていき、後から来る救急隊はその赤のタグをつけた人から優先的に救助することになります。
 アメリカの州、市、町では、すべての非常事態のとき招集されるトリアージドクターを任命しています。県の保健医療計画では、「一般住民に対する救急蘇生法、止血法、トリアージの意義などに関する普及啓発により防災意識の高揚に努めていく必要があります」と述べております。
 阪神・淡路大震災の際、軽症者が病院に殺到し、重症者が放置され、多くのとうとい人命が失われたことを考えるとき、トリアージ制度は必要であると考えます。尼崎のJR福知山線脱線事故では、負傷者の救助活動にトリアージタグが使用されておりました。
 しかしながら、トリアージドクターの判断ミスのおそれもあり得ることから、この場合、国家賠償などの制度を適用することも必要でないかと考えます。したがって、国の制度としてもトリアージドクター制度を導入すべきだと考えます。先進圏では、日本だけがこの制度がないそうであります。このトリアージドクター制度の導入について、福祉保健部長に御見解を承りたいと思います。
 最後になりました。ドクターヘリコプターの夜間運航についてお尋ねいたします。
 本会議で、私を含む先輩議員、同僚議員の皆様から、ドクターヘリコプターの導入を要望する質問がございました。平成十五年一月から、知事の高い見識と英断によりまして、ドクターヘリコプターが医大を拠点として運航されております。今日まで二年半にわたり無事故で多くの患者を運び、多くの患者を救出し、そしてまた県民の皆さんに大変喜ばれております。
 最近では、一日一回の割合で運航されております。現在は午前九時から五時までの運航でございますが、五月から八月までは午後六時までの運航となっております。夜間運航ができないものか。夜間運航となれば、今よりもっと多くの救急患者を救うことになります。何が障害となっているのか。夜間運航できない理由は何か。夜間運航の実施について福祉保健部長にお伺いいたしまして、私の第一問とさしていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの江上柳助君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、和歌山県の医療水準についてでございますが、種々の資料をお示しいただいて、私も改めて和歌山県の医療水準の高さを再認識したところでございます。こういうふうな傾向がさらに続いていくことを心から願っているところでございます。
 医療制度は、御案内のように一次から三次の三つの体系で整備しているわけでございますが、特に三次については高度医療、そしてまた特殊医療、こういうものを担って県民の信頼にこたえるべく現在、医大と日赤がこの役割を担っているわけでございますけれども、ますますこの両病院が機能充実をしていくことを県としても協力していかなければならいと思っております。
 さらには、このほかに県では、先ほど御質問の中にもありましたように、ドクターヘリ、非常に出動回数もふえて定着してまいりましたけども、こういうものの充実ですとか、それからことしから大きく充実することにしている医療情報ネット──それぞれの和歌山県内の医療機関の情報がインターネットで即時に取り出せて、駐車場の位置までわかるというふうなシステムを全国にある程度先駆けて導入することにしましたが、こういうふうないろんな形での医療の充実ということを図っているわけですが、一方で、御案内のように医師の不足、医師確保の問題でありますとか、それから小児医療についてお医者さんがいないというふうな、いろいろこれから取り組んでいくべき課題もございますので、こういう問題について鋭意努力をしていきたいというふうに思っております。
 次に、紀南の医療の問題でございますが、確かに紀北への医療機関の偏在ということがございまして、こういうふうなことを何とか緩和しようということで、今年度からドクターバンク制度というのを、これも全国で非常に早い方なんですが、行おうということでやっております。
 自治医科大学から先生に来てもらうというふうな制度、それから県立医大の積極的な地域医療への対応とあわせて、この紀南の医療への対応というふうなものを図っていきたいと思っておりますが、最近では国の方で小規模救命救急センター制度というのが創設されましたので、そういうふうなもの──ドクターヘリが大分活躍しているんですけども、そういうものとあわせて、またそういう小規模の救命救急センターの導入というようなことについても改めて考えていきたい、このように考えております。
 さらに、田辺から新宮までの地域に中核病院が少ないというふうなことなんですけども、これについては現在、自治体の合併問題というのがどんどん進んでおりまして、そういう中で自治体病院のあり方というふうなものも今後大きな問題になってくると思いますので、そういう中で積極的に対応していきたいと、このように思っております。
○議長(小川 武君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 保健医療体制の充実についての六点についてお答えを申し上げます。
 まず、がん検診の受診率の向上と対策についてでございますけれども、平成十五年の本県の総死亡者数は一万四百四人で、そのうち死因で一番多いのはがんでございまして、三千七十一人となっております。特に死亡率の高い肺がん対策として、多くの発がん物質が含まれているたばこにつきまして、平成十三年三月、たばこ対策指針を策定し、重点的に取り組んでおります。
 また、乳がん対策につきましては、受診率の向上に向け、本年度、がん発見率の高いマンモグラフィー搭載検診車を二台整備をいたしました。
 さらに、本年九月のがん制圧月間には、これは我が県では初めてでございますけれども、国と共催による「がん予防展」を開催するなど、がんに関する正しい知識の普及と理解を高める啓発活動に努めるなど、がんの死亡率減少に向け総合的に取り組んでまいりたいと思います。
 次に、がん検診のための陽電子放射断層撮影装置いわゆるPET装置の導入についてでございます。
 PET検査は議員お話しのとおり、一度の検査で全身が調べられ、一部の微小ながんの発見に有効とされていることから、全国的に注目をされております。しかしながら、PET検査自体は必ずしも万能なものではなく、その導入に当りましては、高額な検査装置に加え、放射性物質を取り扱うため、厳重な構造設備や専門家の確保、高額な経費が必要となると認識しております。
 県立医科大学附属病院や日赤和歌山医療センターにPET装置を導入するという御提言につきましては、従来の検査法に加えてPET検査が実施できれば、がんの早期発見や高い水準のがん治療に資するものと考えております。この六月から和歌山市内の民間病院がPET検査を開始し、また新たにPET装置を導入予定の医療機関もあると聞いておりますので、当面これらの医療機関と県立医科大学附属病院や日赤和歌山医療センターが連携することにより本県のがん医療の向上に寄与することを期待しているところでございます。
 次に、がん患者に対する終末期医療についてでございますけれども、延命だけではなく精神面での支援を行いながら、疼痛などの症状の緩和に重点を置き、患者の生命の質に配慮した緩和ケア体制の充実が求められております。
 緩和ケア病棟につきましては、県立医科大学附属病院に九床、南和歌山医療センターに八床が設置されてございますけれども、今後、紀北地域に約四十床増床する予定がございます。
 一方、患者が在宅緩和ケアを希望する傾向が高まりつつある中、現在、県立医科大学において積極的な取り組みが考えられておりますけれども、今後このような取り組みをモデルとして、地域特性に応じた緩和ケアの推進体制について検討してまいりたいと考えております。
 次に、麻酔科医の不足と対策についてでございます。
 平成十四年十二月の調査によりますと、県内で医療に従事する麻酔科医は五十九名ございます。大部分が和歌山市に集中している状況で、昨年度、病院協会が公的病院を対象に実施したアンケート調査によれば、二十二病院中七病院で麻酔科医が差し迫って必要であると回答しております。
 今後の確保対策につきましては、現在、厚生労働省の医師の需給に関する検討会において議論されているところでございまして、県としましては、こうした議論を見据えながら、有識者による県の医療対策協議会を設置し、麻酔科医を初めとする医師の確保対策について協議・検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、トリアージドクター制度でございますけれども、トリアージは、議員お話しのとおり、災害等の発生時などに傷病者の緊急度や重症度によって医療機関へ搬送や治療の優先順位を決める手法で、過日発生しましたJR福知山線の脱線事故の際にも一定の成果があったとされております。
 また、トリアージを実施する際に、傷病者の緊急度や重症度を短時間で正確に判断することが求められております。本県では、県内の医療関係者に対しまして、トリアージ訓練を含めた災害医療従事者研修会を実施しますとともに、国主催の各種研修にも積極的な参加をお願いしているところでございます。
 議員御指摘のトリアージドクター制度につきましては、各災害拠点病院や県医師会、県病院協会などで組織します災害医療対策会議におきまして今後検討してまいりたいと考えております。
 最後に、ドクターヘリの夜間運航の実施でございます。
 ドクターヘリは平成十五年一月から運航開始いたしまして、出動件数は平成十七年度五月までの累計七百十件に上ってございまして、救命率の向上と後遺症の軽減に大きな成果を上げているところでございます。
 議員御指摘の夜間運航につきましては、夜間照明設備や運航に携わる操縦士、医師、看護師などの体制の拡充が必要となりますが、ヘリコプターの運航は有視界飛行が原則でございまして、何よりも安全の確保がすべてに優先する課題であると認識しております。
 安全面に最大の配慮をした上で、例えば早朝の時間帯からの段階的な運航時間の延長などを含め、夜間運航の可能性につきまして引き続き研究してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 医科大学学長南條輝志男君。
  〔南條輝志男君、登壇〕
○医科大学学長(南條輝志男君) まず最初に、議員には本学附属病院を高く評価していただきまして、どうもありがとうございます。
 決意ということでございますけれども、私は第十一代学長として、個性輝く魅力あふれる大学、社会・地域に貢献する大学、さらには学生、教職員はもとより県民の皆様に誇りを持って愛される大学づくりを目指して全身全霊を傾けてまいる所存でございますので、今後とも皆様方の御指導、御支援をよろしくお願い申し上げます。
 まず、患者様本位の質の高い医療の提供についてでございますが、本学附属病院は、県内唯一の特定機能病院として県民の皆様に高度先進医療を提供してまいりましたが、今後はより一層の充実に努めますとともに、患者様との十分なコミュニケーションを図りながら、患者様に安心していただける医療の提供に努めてまいりたいと考えております。
 次に、患者様の視点を持った教育についてでございますが、患者様と円滑なコミュニケーションをとるための教育や広く医療の問題を学生自身で考える教育として全国の大学に先駆けて医療ロールプレイを実施するなど、患者様の立場に立って適切な対応ができる医療人の育成教育を行っているところであります。
 次に、地域医療への貢献についてでございますが、これまでも県内の公的病院に医師を供給するとともに大学が持つ高度な医療技術の普及に努めるなど、地域医療の向上に努めてきたところでございます。
 今後とも、県民の医療ニーズ、地域の医療事情により柔軟に対応できるような体制づくりについて関係機関と協議してまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十六番江上柳助君。
○江上柳助君 ただいま知事並びに福祉保健部長、また医科大学学長から前向きの答弁をいただきまして、ありがとうございました。
 私、実は本県の医療水準はどのくらいだということをある方から聞かれまして、一遍調べてみるようにということで、いろんな資料、本を買いあさってまいりました。ようやく行き着いたところが、先ほど申し上げましたこの「週刊朝日」のランキングや、また「ヨミウリウイークリー」とか「日経メディカル」の冊子でございます。これは、この編集者が勝手に書いているんではなくて、これは正確に社会保険事務局に、五%の診療報酬がかさ上げになっていますから、この手術件数というのは全部公のデータで出ているわけです。それをきちっと書かれておりますから、私は正確な情報であると思います。
 これを見まして、勉強させていただいて初めて本県の医療水準が高いということを知り、認識を新たにした次第でございます。医大、また日赤はすごい病院になったなという実感であります。このことをぜひ県民の皆様に知っていただきたいということで、このたび本会議で取り上げた次第であります。
 本当に恥ずかしい話ですが、私、今日までこれだけの手術症例数があり、そしてまた患者ももう本当に三十三万人、日赤医療センターにおいては、数を言うと差しさわりありますから言えませんけれども、医大よりも多いんですね。県の人口のほとんどが日赤、医大というふうになっております。ただ、紀北部だけにその恩恵をこうむっているような感じもありましたので、紀南方面ということで先ほどお尋ねした次第でございます。
 ですから、ぜひ──県費を費やしてきました。医大の新築移転もございました。しかし、一方でやはり、その県費を投入した意味を理解していただくために、この医大、県でしっかりと広報活動を積極的、継続的に行っていただきたいと思うんです。
 例えば、先ほどのドクターヘリも、テレビ和歌山でドクターヘリコプターの救急医療活動の模様が出ておりました。手術の状況なども、患者さんのいわゆるプライバシーに配慮しながら、そういうこともきちっとやっぱり高度医療をやっているんだということもしっかりと県民にアピールしていくことも大事ではないかなと思います。
 さらに、先ほどから知事並びに福祉保健部長、また学長からの御答弁をいただいて、近い将来、本県の医療は必ず今よりも高い水準に育って、そして全国でも有数の医療立県、また地域医療立県として高い評価を受け、県民医療に貢献していくことを確信をいたしました。
 そこで、いわゆる日赤医療センターあって医大あって、医大という病院は、いわゆる医師を教育し、育成をしていく。看護師を教育し、育成していく。また、研究機関でもあります。そしてまた地域に、県下の中核病院にたくさんの医師を派遣をしている。麻酔医も、きょうもどこかの病院へ走っております。そういう状況もこれあり、地域医療に貢献をしているわけでございます。
 そして、来年の四月から独立行政法人化を迎えるわけで、きのうも知事の御答弁がございまして、医科大学の経営責任ということは言うまでもありません。申すまでもないと思います。しかし、この独立法人化というのは、いわゆる業務の効率的かつ効果的な運営というのは大事でありますけれども、本来の目的というのは独立採算制を目指す制度ではないということであります。行政改革の一つであるものの、大学を活性化させていくんだと。その手段が、この地方独立行政法人化であります。
 大学というのは、利潤を追求する企業とは異なっております。しかし、薬事法も改正されまして、これから医師中心の医薬品の開発もできます。ある程度の緩和はされますけれども、他の地方独立行政法人とも性格は異なるわけですね。やはり教育研究機関の特性についても配慮されるべきである。これは参議院の平成十五年七月一日の附帯決議でも、教育研究機関に配慮せよという附帯決議がついております。
 法人化された場合、大学が活性化されて、県民の大学への期待感、存在感を高め、大学がその活動によって県民に貢献できるということが前提でなければならないと思うわけですね。医療技術や医療機器の向上というのは、日進月歩であります。先進医療、地域医療の確保、医療水準の向上を図る観点から、医大が独立法人化されても県としても支援していくということが私は肝要であると考えます。本県も苦しい財政でありますけれども、賢明な御判断をお願いしたいと思います。このことを要望さしていただきまして、私の質問を終わらしていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で江上柳助君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十五番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。早速、一般質問に入ってまいります。
 世界遺産登録のプレゼントは、私たち県民に世界的視野で物事を考える地球人としての生き方をプレゼントしてくれたと思います。その最も大きなものが、世界遺産と密接に関係をする地球温暖化防止であります。
 私は、氷河が解けてきて大変なことになってきている北極に近いデンマーク、フィンランド、ノルウェーの北欧三カ国を四月に訪問し、六月には南極に近いニュージーランドを、県の文化国際課の御協力をいただき、現地調査をしてまいりました。和歌山県だけの地球温暖化防止や世界遺産だけを見ていたら孤立化し、その闘志がなえてしまいそうになりますが、世界はしたたかな生き方をしています。
 私は、一連の海外調査は物見遊山で行っているのではありません。和歌山県は世界遺産地となり、普通の県以上に敏感なアンテナを常に張りめぐらせなければならないと私は思います。特に私が海外へ出る一番の理由を申し上げれば、それは、世界の人々が求めていることと和歌山県が求めていることと一致するものがこれからの新しい雇用促進に期待されるからであります。
 例えば、世界の異常気象に対応する地球温暖化防止は、和歌山がいち早く推進体制をとることで新しい雇用創出が生まれてきます。つまり、日本政府や自治体だけが認めるだけではなく、世界の理解と協力があって雇用創出が生まれるものだと私は思います。そのために、さまざまな形で新しい雇用創出を生み出そうとしている世界の国々を調査をしているのであります。
 そうした意味で、私が聞いてきた今時点での各国の取り上げ方、提案、そしてその国に対しての直言など調査した中で、これから特に知事に聞いてもらいたい点を取り上げて質問をしてまいります。
 まず世界遺産の効果ですが、私ども高野・熊野世界遺産の地では、観光客の大幅な増加を含め、いろんなところに効果が出てきています。余り世界遺産に対して好意的に思っていない人は、あと一年から二年で観光客は少なくなるなどと言っている方もあると聞きますが、その予測とは裏腹に、現実は旅行客の数はふえています。
 先月の高野山で開いた世界遺産フォーラムでは、パネラーとして参加していただいた白神山地の方から、「入り込み者数が一過性ではなくて十二年間ずっと右肩上がりで、今まで右肩上がりの観光地というのは恐らくないと思いますけど、ずっと右肩上がりで、いまだにふえている。去年再び十和田湖に逆転されましたけど、五年ほど前から有名な十和田湖さえも上回った。それから、地元の人たちの気持ちが変わった。プライドを持って、自分たちの自然環境のすばらしさを訴えることができるようになった。もっと詳しい話をすると、白神関連のグッズもめちゃくちゃ売れているということで地元も驚いている」と、そのように報告をされました。
 もちろん、そのための内なる取り組みや条件整備が必要なことは言うまでもありませんが、登録されて一年弱という短い期間ですから白神山地ほどの効果はまだ出ていませんが、和歌山県内でも次のような効果が出ています。
 県内にある銀行のシンクタンクがことしの五月に発表した世界遺産登録効果は、昨年の登録された七月から半年間で観光客が約百五十三万人増の三千九十万人で、経済効果に直すと約七十八億円増の二千三百八十億円に上る、雇用効果でいえば約一千人増の二万三千人の雇用が生まれた、従来の企業誘致や公共事業に比べ、少ない投資で経済効果は抜群と分析をしています。さらに、県内の総生産を押し上げていると発表されました。このゴールデンウイークでも、登録地でいえば那智勝浦の大門坂等は前年比三倍にも伸びています。まさに県内の市町村は、言葉どおりゴールデンウイークでした。
 新しい雇用でいえば、例えば熊野古道の漂探古道の語り部の皆さんは、約五十人の会員さんにふえていますが、一人月平均七万円から八万円の報酬があり、人気のある人では一人月十四万五千円ぐらいもらえるようになって大変喜んでいます。また、私ども高野熊野世界遺産連絡会の方へ英語の得意な地元の娘さんから、語り部の勉強をし、将来の雇用に生かしたいという、そういった問い合わせも幾つか届いており、その都度紹介をし、喜んでもらっています。私どもは、こうした方々を受け入れるためにも、もっともっと内面を充実させていかなければならないと思います。
 その一つに、高野熊野世界遺産連絡会が秘密兵器のように一年かけて登録地域の皆さんと一緒に知恵を出し、その知恵によって生まれたのが、この「空海の知恵袋」であります。こういうもので、これが空海の知恵袋と申します。(現物を示す)この知恵袋は、手前みそかもしれませんが、本当に喜ばれるものだと思っています。
 私は、長い歴史の中で破壊されずに残った遺産は平和と地球環境を守るシンボルと言えると思います。単なるおもしろおかしい観光ではなく、深く心に残り平和を愛する心をはぐくむための地域にふさわしい知恵袋として「空海の知恵袋」を考えました。
 この知恵袋は、高野・熊野世界遺産の精神文化を発信をしています。その中心をなすものが、空海の教えであります。空海は、地球上にある石にも水にも空気にも植物にも、すべてのものには命がある、その命を大切にする気持ちが大事だ、人間はそれらの命をもらって生かされている、この摂理を未来永劫正しく教え伝えていくことが大事である、人間が優先の社会をつくるのではなく、地球上の生物の中の一つであることをよく理解をして、自然を大切にして地球環境環を守ることを説いているのであります。
 また、高野山へ行ってみますと、高野山の奥の院の墓地にはシロアリや動物のお墓まであります。これもまた空海は、いろんな宗教や生活があってもよい、多様性を受け入れ、争うことなく、みんな仲よく、楽しくすること、すなわち世界平和を説いているのであります。
 この袋には、大辺路富田坂の夢一座の皆さんの「空海の手ぬぐい」、口熊野生馬地区の皆さんの「水は命の源、みんなのもの」を発信する「空海の水」、中辺路高原地区の皆さんがつくられた紀州材を生かした「知恵が湧く木札」、高野山の皆さんに知恵をかりた「空海のことばハガキ」が入っています。さらに、世界遺産の地へ来ていただいた方々の御意見や新しい知恵の提案を生かせるアンケートはがきも入っており、これらの声を参考にして新たな世界遺産地域づくりに取り組んでいこうと考えています。この知恵袋は、人に上げるというお土産ではなくて、この地へ来た人にしか手に入らない自分自身の記念品にしていただくと、そういうことを考えています。
 このように、高野・熊野世界遺産の精神を広く世界に広めるための一つの方法であると同時に、この袋の収益の一部が世界遺産環境保全のための基金へ貢献をするとともに、ふるさとの活性化と新しい雇用創出を可能にする、まさに協力の新しい形の結晶だと考えています。
 私どもの希望的試算では、アルバイトも含めて百人を上回る雇用創出を期待をしています。つまり、ふるさと再生に寄与できる一石五鳥の知恵袋であります。七月の世界遺産週間に販売をスタートさせる予定です。危険性もないし、安全面でも問題はありません。登録地の自治体や関係者はもちろんですが、ホテル関係者や旅行業者も好意的であります。これが好評になった場合、四国のお遍路さんの空海ばかりではなくて、和歌山の空海になると私は思います。
 知事、中身を見てどうでしょうか。感想をお聞かせください。また、こうした取り組みへの支援をお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。これひとつ。(現物を知事に手渡す)
 もう一つ、知恵袋と同時に、将来期待される薬草の話が浮上しました。私どもの世界遺産連絡会の仲間の熱い要望であります。それは薬草の話でありまして、熊野古道沿いの薬草調査とマップづくりの提案であります。
 世界遺産を登録することによって、自分たちにはすばらしい自然があったと気づくと同時に、それを保全し、みんなの誇りにする自然観というものが生まれてきました。その自然に対する見方、世界遺産登録につながりのある自然に対する新しい健全な見方が生まれてきているのであります。つまり、これが世界遺産登録された結果、今まで見えなかったものが見えてきた大きな一つで、薬草とか自然を細やかに見て感動するということなのであります。今までは無関心だった道端の草花にもおのずと優しい視線が注がれ、感動するという変化が出てきたのであります。
 また、熊野古道沿いに生えている薬草というものを三重県では既に調査をし、百五十種ほどマップにつくり古道を歩く人々にPRをしていますが、前回の一般質問でも提案をしました熊野健康村構想と薬草との関係でも、将来、大変必要な事業だと考えています。
 これについて私は、富山医科薬科大学や独立行政法人医薬基盤研究所の筑波研究部及び厚生労働省や農林水産省にも調査をしたところ、世界的にも薬草についてはまだまだ解明されていないところが多い。植物の一〇%程度が薬草と言われている。世界の植物の種類がおよそ三十万種と言われているので、三万種程度と想像される。ちなみに、日本では高等植物が五千五百種で、その中の薬用植物は四百種の七・三%であるそうです。原料の九割近くが中国を中心とした外国からの輸入に依存しているのが現状であり、このことは安いということで中国から入っているのがほとんどであります。しかし、野生の採集品の品質が落ちている。こうした品質の不均一性や原料確保に対する不安感から、国内で薬用植物の栽培が求められているということなのであります。国内では一けたの生産であり、国内生薬の振興が課題であると言っており、将来ビジネスとしてはチャンスである。また、これからはよいものをつくれば少々高くても売れる時代である。したがって、国産で品質のよいものをつくれば少々高くても買ってもらえるのであります。つまり、将来有望であり、需要が圧倒的に多いということが調査をしてわかりましたが、我が県でもこの取り組みをしてはどうでしょうか。知事にお伺いします。
 さて、話は世界に移りますが、地球温暖化によって北極、南極に近いところで氷河が解けている現状を調査をするとともに、世界遺産に対する世界の考え方と、その対策を自分の目で確かめてきました。
 四月に訪れた冷帯地であるノルウェーのフィヨルドでは、氷河が解けてきている現実をこの目で見てきました。氷河は山肌を保護してくれており、地すべりが起こらないようにしてくれているのであります。解けると地すべりの大惨事が起きてくるのです。地球上の温度を調整しているのが氷河であります。氷河がなくなることによって、調整弁がないため異常気象が当然起きて、災害も起こるのであります。ことしはヨーロッパ全域が異常気象に見舞われているとのことであります。この問題は自国の問題であるとともに地球全体の問題としてとらえており、特に世界遺産を持っているこの地域の人々は、世界遺産の登録と地球温暖化防止とは最終目的は同じことだという、そういった認識を持っていることを現地で学びました。
 現地で学んだことは、もう一つあります。それはフィヨルドの川に橋が一本もかかっていないということです。そのことによって周りの風景、景観、自然を残しているのです。橋をかけるよりも船の方がよい。その方が通行料も要らなく、建設コストもかからない。そして、景観が壊されない。橋というものは結果的に自然をだめにするということを、地元の人たちが知っているのです。
 こうした発想を応用することが大事であることに、私は気づかされました。ここに私たちの世界遺産を守るイロハがあると思いますが、知事、いかがでしょうか。
 話は、今度は南極に近いニュージーランドに移ります。
 日本よりも自然環境がはるかによいニュージーランドでさえも、地球温暖化防止に対する時代を先取りした政策が取り組まれていることに大変驚きました。ニュージーランドの面積は日本の約四分の三で人口はわずか約四百万人と、ほかの先進国に比べると公害等の環境汚染が国民の健康に直接影響を及ぼす可能性ははるかに小さいのに、その取り組みが進んでいるからであります。彼らが言うには、地球温暖化防止に取り組むことは世界遺産を守ることにつながる、そして生態系の保全につながるという認識を持っているのであります。
 その一つは、京都議定書の実行を、国が直接入ってCO2の排出権取引を既に実施していることであります。少し専門的な話に入りますが、産業界に対しての炭素税の導入ですが、これは二酸化炭素一トン当たり十五ドル、日本円で約千二百円に設定をし、二〇〇七年四月から導入予定にしているとともに、政府は二酸化炭素の削減に資する取り組みを促進するために、再生可能エネルギーや省エネ等のプロジェクトに対し、二酸化炭素の削減量に応じて炭素クレジットというお金を与える仕組みを導入をしています。二〇〇八年からやってもいいのですが、地球温暖化防止の取り組みを前倒しをして二〇〇三年から既に政府が入って実施されています。つまり、国が直接入って排出権取引を既に始めているのであります。
 京都議定書を発信した我が国は、環境省にも問い合わせをしましたが、国内における排出権の取引に関係する仕組みは、残念ながら導入されていません。
 知事、こうした取り組みこそ、早急に必要ではないでしょうか。政府要望にも入れるべきだと思いますが、和歌山独自の未来志向の取り組みとして県が入った和歌山方式というものを導入していくべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 二つ目に驚いたのは、永久的に森林の二酸化炭素を吸収することを奨励するためのメカニズムを具体的につくり上げたことであります。
 私も、世界じゅうどこでも実施されていないときに、平成十三年の十二月議会で質問をしたことがありますが、その当時は日本の環境省も余り乗り気ではなかったのですが、それがニュージーランドでは実現をしてきているのであります。私は質問をしたときに、これからの森林は経済価値がなかったものが環境価値として、大げさに言えばダイヤモンドのようになると言いましたが、それがニュージーランドでは正夢となっているのであります。
 その実態は、こうなのであります。ニュージーランドは、地球温暖化防止に積極的に取り組むために、山づくりから始めています。その制度は、新たに森林を造成し、これを将来にわたって伐採を行わない旨を政府と約束した場合、その森林は永久保護林とされ、その森林の二酸化炭素吸収量に相当する炭素クレジットは森林所有者に還付されるということであります。つまり、材木だけでは経済効率が悪い森林に、環境を守る森林吸収源としての環境価値による経済効果が生まれてきたのであります。
 参考に日本の森林の現状を申し上げますと、一ヘクタール当たりで成木した木を売るまでの収支計算をすれば、杉の八十年生で約百六十五万円の赤字になります。実際は国の補助制度がありますから、差し引きわずか約五十万円の収入にしかなりません。日本では既に森林が国土全体にありますから、新たに森林を造成するよりも間伐など育林費に重点が置かれるという違いはありますが、地球温暖化防止のためには、森林の二酸化炭素吸収確保のためにニュージーランド方式的なものが必要であります。
 森林の二酸化炭素を吸収することを奨励するための和歌山方式のメカニズムを検討していくべきだと考えますが、知事、いかがでしょうか。
 最後の三つ目に驚いたのは、ニュージーランドでは地球温暖化防止に取り組む傍ら、生態系保全に徹底した検疫体制を実施していることです。なぜ検疫が厳しいのか。それは、地球温暖化防止や世界遺産を守ることにつながっているからだとわかりました。
 昨年、こんなエピソードがあったそうです。アテネ五輪の金メダリストに与えられるオリーブの枝、菊及びバラでできた冠のニュージーランドへの持ち込みが、国内の紙面をにぎわしました。その理由は、この冠の材料が繁殖可能だからで、虫や菌を保持している可能性もあり、伝染するおそれがあることも理由だったそうです。結果的には冠を熱処理または放射線処理することを条件に持ち込みを許可したというエピソードを総領事館で紹介をしてくれましたが、これくらい自然を守る、生態系を守ることに神経質になっているのです。
 このように、人間だけでなく、地球上の生態系全体を見据えた政策が行われています。これらは、地球温暖化防止によって生態系を守るという取り組みでもあります。ニュージーランドのおもしろいところは、ニュージーランドにしかない生き物を観光資源にするとともに、それを残すことによって副産物としてできてくるのであります。
 今、ニュージーランドは、世界遺産が四つあるのですが、新たに六つの世界遺産登録申請をしようとしています。国土の広さと多様性から見ると日本よりも冠たるものを持っていながら、なおかつ世界遺産というものを目指しているのであります。つまり、世界遺産登録というものは、いろんな形で国づくりの形の一つとして用いているのであります。
 自然環境をよくするためには、規制を徹底して取り組んだ方がやりやすい、また国民受けをするということを教えてくれました。自然がそのままあるニュージーランドででさえ、地球温暖化防止に率先して取り組んでいる。つまり、公害や環境問題は先に手をつければつけるほど費用も安く上がり、きれいになるということであります。
 生態系を守ることや世界遺産に対する見方、考え方に対しての知事の感想をお伺いいたします。
 世界の国々はしたたかな生き方をしているのがわかりました。また、その答えもわかってきました。最初にも申し上げましたが、世界遺産は私たち県民に地球人として世界的視野で物事を見るということをプレゼントしてくれました。
 知事を初め県の職員の皆さんも、すぐに取り組んでいけるものもありますし、あらかじめPRをして、県民によく理解をされて政策の立案実行に取り組むものもあるでしょうが、ニュージーランド、北欧の取り組み方をぜひ県政の柱にしてほしいと願って、私の質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、最初に見せていただきました「空海の知恵袋」でございます。
 私は、世界遺産の登録の効果は、ただ単に観光客がふえてお金が落ちるというふうなことじゃなくて、地域の人たちがそのことによって自分たちでも何かできるんじゃないかというふうな動きが出てくるということが、ともすれば人口が減ってだんだんと勢いがなくなってくると言われている中山間とか、そういうふうな地域でもいい効果が出てくるということに多くを期待しているところでございます。
 そういう中で世界遺産の登録の効果は、徐々にではありますけれども、いろんなところで非常にいい結果が出だしているというのが今の状況かと思いますし、この「空海の知恵袋」、これもそういうふうな運動の大きな一つとして大いに期待をしているところです。また、その収益の一部を基金に入れていこうというふうな発想が今までなかった発想というふうなことで、すばらしいものだと思います。
 ただ、中身を見せてもらうと、いいもんばっかりなんだけど、あめ玉ぐらい入っている方が山を歩く人なんかに元気が出ていいんじゃないかなというふうに──まあ値段にもあれしますけども──思いましたので、ちょっとつけ加えさせていただきます。
 それから、薬草の活用ということですが、これも物すごくやり方によっては、この高野・熊野世界遺産の地の魅力を高める大きな僕は武器になると思います。やはりこれだけ深い森林のあるところは日本でも少ないわけですし、そういう中には多分、今の人がまだ知らないようなすばらしい薬草が眠っていて、しかも山育ちの人たちはそういうことを経験的に知っているというふうなものがあるだろうと思います。そういうものを、一つはお土産にするということもそうですし、それから今、熊野健康村構想というふうなのをどんどん進めているわけですが、こういう中で薬草セラピーとかいろんなことで使っていくことが僕はできるだろうというふうに思っています。
 食事なんかでも、そういうものが入ったような精進的な料理を出せば必ず都会の人はたくさんのお金を払うというふうなことなので、これも地域おこしの大きなツールになるというふうに思いますので、県としてもいろんな形で研究をしていきたいと思っております。
 それから、地球温暖化防止と世界遺産の関係ですが、特にこの紀伊山地の霊場と参詣道というのは山が中心というふうなことで、この緑豊かな山ということがこの地球温暖化の防止に、これを手入れすれば役に立つということは非常に明らかなわけだし、そしてまたその山を見ることによって地球の温暖化というふうなことに逆に思いをいたすというふうなことでも、非常に効果があると思っております。
 そしてまた、その具体的な取り組みの一つとして排出権取引の問題がありまして、県の方でも今、企業の森を進めていて、企業の森に協賛してくれた企業とか組合とか、こういうところがやはりCO2の吸収に一定の貢献をしているというふうなことで、まず一つは公的なところがその量を認定し、さらにはそれをクレジット、取引ができるような仕組みということで政府要望もしてるんですけども、必ずしも、環境省の認識とはかなり食い違っているので、これはまた別の攻め方を考えないといかんなと今思っているところです。
 さらには、税制上の優遇措置、そういうことに協力した人に、会社とかそういうところに損金算入であるとか償却を早くするとか、いろんな仕組みがあるわけですが、そういうふうなこともちょっと別の観点から考えていかなければならないなというふうなことも思っているところでございます。
 それにしても、ニュージーランドの森林の育成者に森林クレジットを付与して新たな付加価値をつけるというふうな発想というのは、これは非常にユニークなものなんで、和歌山県でもそういうふうなことでまた新しい考え方が出ないか、一度研究してみないといかんと、このように思っております。
 さらに、温暖化と生態系の問題ですけども、世界遺産というのは、やはり昔からある生態系がそのまま残っているというところに皆が魅力を感じて来るわけだから、釣り糸を垂れたらブルーギルとあればっかりやったということでは、やはりぐあいが悪いだろうというふうに思います。
 和歌山県では、例のタイワンザルの問題もあって、日本の古来の生態系を守っていこうということで、今、鋭意努力しているわけですけども、いずれにせよ、この世界遺産の保護ということは生態系の保護ということもあわせて大きな問題になっているということを認識しているということを申し上げておきます。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(小川 武君) 以上で、玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十七分休憩
────────────────────
  午後一時二分再開
○副議長(向井嘉久藏君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十二番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速、質問に入らせていただきます。
 第一の柱は、JR事故にかかわる問題であります。
 百七人もの方が亡くなられたJR福知山線脱線事故から五十数日がたちました。今も多くの皆さんが入院されています。犠牲者の皆さん、家族関係者の皆さんには、心からお悔やみ申し上げたいと思います。
 この事故の原因については、安全装置の問題、運転手の教育のあり方、もうけ本位の会社の体質があったのではないかなど、多角的に議論されています。運転は再開されましたが、さらに教訓を引き出し、こうした事故を再び起こさないようにしなくてはなりません。
 私は、この事故をきっかけにして、幾つか考えてみたいと思います。
 第一に、この事故で私が思い出したのは、昨年五月の海南市冷水で起こったトラックの荷崩れによる事故でした。あの事故は、幸い死亡者はありませんでしたが、一つ間違えば大惨事になりかねない事故でありました。トラックの材木過積載とその荷崩れが第一原因になりましたが、事故対策というものは、あってはならないことが起こった場合に備えるものであります。
 私は、昨年六月の議会でこの問題を取り上げた際、JR線の上を走る国道のガードの問題、さらに、事故で通信線が切断された場合、自動的に信号が赤になって異常を知らせるようなことにはならないのかという指摘もし、JR事故調査委員会の報告を待っていたわけであります。このたびの尼崎事故の後、県の総合交通政策課にお聞きしますと、JRのホームページに事故調査委員会報告が載せられるが、海南市冷水の事故は出てこないということであります。
 今回の尼崎事故の場合は、相当突っ込んだ原因の究明や責任の追及が行われるでしょう。しかし、大きな死亡事故が起こってからではなくて、小さい事故の一つ一つについて真摯な原因究明があってこそ、大きな事故を防ぐことができると考えます。
 JRというものは、大切な公共交通であります。私企業であっても、公的な支援も必要です。それだけに、その安全のためには県との間でも、もっと密接な協力も監視も必要であると考えるわけです。
 このたび、企画部長からJRに安全対策強化を要望する文書が出されています。近畿知事会でも、JR事故の問題が取り上げられたとお聞きしています。冷水事故を含めて和歌山で問題になっていることとかかわって、この際、具体的に問題を提起していかなくてはならないのではないでしょうか。
 JRの安全問題の一つは、駅の安全問題であります。きょうは、駅のプラットホームと電車の段差の問題に絞って考えてみたいと思います。
 海南市のJR黒江駅、私の知り合いのつえをついて歩いておられる方が、和歌山市から帰ってきて黒江駅でおりようとしたが怖くておりられず、海南駅まで乗って、そこから帰ってきたという話から始まりました。その話を聞いて、そういえば段差が大きい、若い者でも怖いなどという話が出て、メジャーを持って調査してまいりました。
 電車が来るのを待っていまして、短い停車の間に、車掌さんにしかられないかと心配しながら、電車に近づいてはかるわけです。こんなぐあいであります。四十センチから四十二、三センチ、このくらいの高さがある。しかられないかと心配しながら近づきましたね。
 黒江駅というのは、近くに智弁学園があります。数年前に小学部ができて、今、四年生まで小学生が通っています。智弁学園を訪問してお話を聞きました。学園としても大変心配していて、朝夕四人の先生が黒江駅に出向いて安全指導をしていること、JR和歌山支社にも改善を要望していることを伺いました。智弁学園では、八〇%を超す生徒が黒江駅を利用して通学しております。現在、黒江駅の乗降人数は、私が持っている資料では四千八百人ですが、智弁小学校六年生まで通学するようになれば五千人を超すでしょう。
 段差が問題になっているのは、黒江駅だけではありません。藤並駅でも大きな段差が問題になり、住民の運動が起こっています。また、段差解消に取り組まれたみなべ町の岩代駅も視察し、みなべ町の役場でもお話を聞いてきました。そこでは地域住民の大きな盛り上がりがあって、旧南部町が七百五十万円、JRが二百万円出してプラットホームの二両の電車が停止する場所だけかさ上げして、大変好評です。県の援助は全くなかったそうです。
 ちなみに、岩代駅は乗降人数は二百人ぐらいで、乗降人数が千人を超えれば県の補助も、五千人を超せば国の補助もあるとお聞きしました。
 こういう中で、まず木村知事にお伺いいたします。
 JR事故にかかわって、和歌山県内の問題に即していえば、どういう改善を求めていかなくてはならないと考えているでしょうか。
 次に、企画部長にお伺いいたします。
 JRのプラットホームの電車との段差など、安全問題についてどういう調査をし、どういう認識を持っておられるのか、お聞かせください。
 そして、きょうは黒江駅について特にお伺いいたしますが、その安全対策のために国、県としてどういう支援をされるのか、またできるのかをお聞きしたいと思います。
 さらに、プラットホームの安全対策というのは、JRにとってはお客さんの安全問題です。プラットホームの規格に合わない電車を導入するとき、本当ならJR西日本とか和歌山支社が考えなくてはならない問題です。だからといって、私はすべてJRで負担せよと言うのではありません。公共交通には、それにふさわしい公的援助があってしかるべきです。それならJRの側から、私とこの乗客の安全のためにプラットホームを改修したいんだが、それについて地方自治体の援助はいただけないかというふうに言い出すのが本来であろうと思うわけです。本当はJRと自治体の間でこういう関係ができなくてはいけないと私は思うんですが、企画部長はどうお考えか、そういう関係についてJRに働きかけていくお気持ちがおありかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
 さらに、JRにかかわるもう一つ気になる点ですが、岩代駅の改修にしてもそうですが、JRにかかわる工事はすべてJRの関連会社に回されると言われます。そして、その単価が大変高いと言われる問題です。国、県、市町村が半額以上の補助をする工事であるならば、入札方法についてもJRが独占的なことをするのでなくて、公開された入札で適正な価格で工事するようにすべきだと考えるわけですが、企画部長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に大きな問題は、道路問題であります。
 私は、県議会に出させていただいてから何度も道路問題を取り上げてきました。特に最近のテーマは、必要な道路を早くつくるという問題でした。二十年以上も前につくった都市計画道路を見直しもせずにその一部だけを進めると、どんなことになるのか。日方大野中藤白線という日方川に沿った工事の部分を例にとって問題にし、二月県会では、都市計画道路の見直しもやりますという知事の積極的な答弁をいただきました。
 さて、問題の日方大野中藤白線の工費は、ことしは二億七千万円の予算がついています。必要な道路を早くという立場で現道を広げていたら三分の一の予算でできたのでしょうが、ここまで来たからには仕上げてもらわなければなりません。いまさら中止せよなどとは申しません。
 しかし一方で、早く広げてほしいのに遅々として進まない道路がたくさんあるわけです。その一つは岩出海南線という道路ですが、黒江から亀川へ向かう部分、海南市では大変大事な道路なんですが、この拡幅につけられた予算は、ことしは千五百万円でありました。
 実は、この道路と並行して都市計画道路の線引きがやられているわけです。しかし、全く事業化はされていない。恐らく、この都市計画道路の計画があるために岩出海南線は国の補助を受ける事業にはならずに、小規模道路改良事業として細々と進められているんだろうと思います。
 そこでお聞きしますが、今申し上げました都市計画道路黒江旦来線の事業化の見通しは立っているのか。事業化するとしても、十八メートル道路にするかどうかも含めて検討が必要だと思いますが、それでも完成するのには、もし事業化されたとしても何十年も先までかかるのではないでしょうか。
 私は、今細々と進められている岩出海南線の今申し上げた部分について、道路改修事業の格上げを行い、国の予算も補助もいただけるようにして、二車線片側にそう広くない歩道をつけるだけでいいから、幾ら遅くても五年ぐらいで完成する計画でお願いしたいと考えるわけですが、県土整備部長のお考えをお聞きしたいと思います。
 道路問題の第二は、国道四十二号海南市内での渋滞にかかわる問題です。琴の浦から郵便局へ、バイパスへという部分。
 ことしの三月、和歌山市内から海南市に入ったあたりで大渋滞が続きました。この議場におられる皆さんも、この渋滞に巻き込まれて、これはひどいと思われた方も多かったのではないかと思います。この渋滞は国道四十二号の電線を埋設する工事が行われたためで、国道四十二号が渋滞したために裏道にまで車が流れ込み、市民生活に大きな支障が出ることになったわけです。しかも、大変長く続きました。一たん工事は終わっていますが、電線埋設計画はまだ四分の三程度残っていますので、渋滞に十分配慮するように、私どもは海南市の幹部とともに国土交通省の出先に出かけていって申し入れたところであります。
 このときの工事というのは、国道の両側で同時に工事を行うという、交通渋滞への配慮を大変欠いたものでした。こうした問題について、県の交通関係課は事前にどうかかわっておられたのか。前回の反省を踏まえて、今後の工事ではあんなひどい渋滞は起こさないために国土交通省和歌山事務所と連携してどうされるのか、県土整備部長にお伺いいたします。
 もう一つ申し上げておけば、電線埋設は終わればそれまでですが、この道路、マリーナシティで大きなイベントがあるたびに大渋滞を起こすわけです。自動車道の海南インターからマリーナシティへ向かう道路がもう一本必要です。
 実はこの問題、昨年の六月議会で同じ海南市の藤山将材議員が取り上げられました。その後の大渋滞で、この道路の必要性について県民の理解が得られる条件が広がったと思います。さらに検討を進められるように私からも要望いたしたいと思います。
 さて、質問の大きな第三番目の柱として、ため池の防災問題についてお伺いいたします。
 海南市の鳥居という地域に、慶権寺池という古い池があります。山の間をせきとめたダム型の農業用ため池でありますが、以前から地域住民から防災の上での心配の声が上がっておりました。
 昨年度、海草振興局と海南・海草の私たち議員団の話し合いの席上でもこの問題を取り上げ、そのとき、全県的にもことし、来年でため池の安全診断に取り組むというお話を聞いておりました。
 先日六月九日のこと、振興局の担当課長などがおいでいただき、市役所の職員、地元住民の立ち会いで、この池の第一次調査が行われました。海草振興局では、和歌山市、海南市、海草郡で百一のため池を調査する第一号として、私たちが心配していましたこの池の調査をしていただいたわけです。地元自治会の方は、八年前から言っていたことがやっと実現したと言って大変喜んでおられました。
 実は、それまでに私は、担当課から危険ため池の一覧表をいただいておりました。そこにはこの心配している慶権寺池は危険ため池には指定されていなかったことを知り、住民が不安を感じているものと行政としてつかんでいるものにはずれがあるのではないかと感じておりましたが、今回の調査では危険ため池として指定されていなかったものも調査対象に加えるということで、この慶権寺池も選ばれたわけです。この調査の場には隣の自治会の会長さんも参加され、今回その調査対象からも外されていた、隣に細工谷池というのがあるんですが、それについても大変心配していると訴えられ、振興局の担当課も調査の検討を約束いただいたわけであります。
 それにしても、今回のため池調査は画期的なものであろうと思います。今まで地域住民が長い間調べてほしいと言っていたものが八年ぶりにやられたということに示されるように、画期的なものであります。ぜひ成功させて、地域住民が安心して暮らせるようにしていただきたい。そういう立場で幾つかの質問をいたします。
 第一は、今回のため池安全について、調査の規模、計画の全体像をお聞かせいただきたいと思います。
 第二に、危険が明らかになったときは相当の予算をかけて改修となりますが、その際の国、県、地元の財政負担はどうなるのか、またその地元負担は合併特例債の対象になるのかどうか、お聞かせください。
 第三に、ため池の改修という仕事は、県市町村と水利権者と地元住民の密接な協力がないとできるものではありません。その点で県として市町村、水利組合、地元住民にお願いしたいことがあれば、この場でお聞きしておきたいと思います。
 第四番目の柱は、産業廃棄物問題であります。
 私はたびたび産業廃棄物の問題を取り上げてきましたが、平成十六年二月県議会で取り上げた池を黄色くしていた油の問題、県市一体で油のくみ出し作業をやっていただきました。去る五月十一日、くみ出した油のドラム缶三十四本が撤去されました。まだ課題は残っていますが、迅速な対応で、油が川に流れ込むような事態は避けることができました。まず、お礼申し上げたいと思います。
 今回は、野上町内の問題です。
 先週の十七日、野上町議会で日本共産党の林議員が、野上町福井での産業廃棄物積みかえ保管つき収集運搬業というものの許可について取り上げました。心配された地元住民の皆さん二十数人が傍聴し、私も一緒に聞かせていただきましたが、野上町当局も、住民との意思疎通を図っていくという立場で、県に強く申し入れていくと表明されました。
 また、「周辺住民との合意を」という陳情署名は、吉野地区では住民の一〇〇%に近く、先ほど県担当課に、地元の尾崎要二議員とともに私も立ち会って提出したところです。事業の許可に当たっては住民との合意を得るよう業者を指導されるのかどうか、環境生活部長にお伺いいたします。
 ところで、野上町の皆さんは、この問題にかかわって、坂本の二の舞になってはいけないと言われるんです。意味が私にはよくわからなかったのですが、四、五年前に野上町の坂本という地域での産業廃棄物の問題です。建設廃材や医療機器など、ありとあらゆるものが捨てられて山になっていると言います。
 そこで、地元の皆さんに案内していただいて現場を見てきました。今ではその上に草も生えているけれども、その下に産業廃棄物が積まれたままになっていると言います。水が川に流れ込みます。廃棄物の中に有害物質があれば大変です。
 この問題で住民の皆さんは、県当局の当時の対応に不信感を持っていらっしゃる。だから、絶対に新しい廃棄物置き場はつくらせないというふうにおっしゃっている。これでは、もしもまじめな産業廃棄物業者であっても住民の皆さんからは不信の目で見られる状況にあります。
 そこで、さかのぼっての話でありますが、野上町坂本における投棄された産業廃棄物の中身をどのように認識し、現時点で環境上支障はないのか、また、実行行為者に対してどのような指導を行い、指導上どのような問題があるのか、さらに、撤去する計画はどうなっているのかを環境生活部長にお伺いいたします。
 最後の柱は、中国、韓国などアジア外交にも大きな支障を生んでいる靖国神社参拝問題や教科書問題であります。
 中国などで広がっている反日行動。行き過ぎもありますし、日本の商店への投石など許されない行動もあります。しかし、その底流に、さきの侵略戦争への反省を欠いた日本の指導的立場を握る一部の人々への怒りがあることは明らかだと思います。海南市の地場産業である日用家庭品業界は、中国と大きな関係を持っています。この問題は、外交、教育の問題にとどまらず、地場産業の問題でもあります。
 小泉首相の靖国参拝に対しては、国益のために公式参拝を控えるべきだという声が保守の立場の方からも聞かれ始めています。私なりに言えば、政府要人の靖国参拝は道理に反し、アジア各国を初め国際社会で大きな批判を浴び、日本は国際的にも孤立をするということだと思います。それは結果として、国益にも反するということでしょう。
 なぜ道理に反するのでしょうか。靖国神社参拝とはどういう問題でしょうか。一つ紹介をいたしましょう。
 「日本は、明治開国以来、欧米列強の植民地化を避け、彼らと同等の国力を養うべく努力してきました。日本を邪魔者扱いにし始めた米英の抑圧と中国の激烈な反日運動にも我慢を重ねてきました。──少し飛ばしますが──極東の小国・日本が大国を相手に立ち上がった大東亜戦争、これは国家と民族の生存をかけ、一億国民が悲壮な決意で戦った自存自衛の戦争だったのです」、これは戦争さなかのラジオ放送ではありません。今、靖国神社の展示館で毎日上映している映画「私たちは忘れない」のナレーションの一節です。
 靖国神社は、戦争犠牲者を追悼しているだけの神社ではありません。日本が行った戦争を正義の戦争と宣伝し、戦死した軍人を神として祭る神社であります。たまたまA級戦犯を合祀したから問題だというものではありません。戦争を正義の戦争とたたえる神社だから、戦争を推進した人たちをだれよりも神として祭らなくてはならないというのが靖国神社の論理でしょう。映画のナレーションにもあった、アジア太平洋戦争を大東亜戦争と呼び、自存自衛のための戦争だったと説明するところに、その歴史観が象徴されています。
 ところで、この靖国神社と同じ歴史観を持つ教科書が検定を合格し、今、教科書採択の対象とされています。県内でも十七日から各地で教科書展示会が開かれていますので、私も展示会場に足を運び、扶桑社の教科書、そのほかの教科書を手にしました。扶桑社の教科書、靖国史観そのままであります。
 さらに、この問題になっている扶桑社の教科書が、事前に関係者に配られるというルール違反が行われたという問題が報じられております。文部科学省はそのことで扶桑社を指導したと言い、扶桑社教科書が配られた地域の一つとして和歌山県が挙げられています。
 まず、知事にお伺いします。
 アジア太平洋戦争は大東亜共栄圏を建設するための自存自衛のための戦争であり、だから大東亜戦争と呼ぶという戦争当時の国民への宣伝をそのまま行っている靖国神社の歴史観について、どうお考えでしょうか。
 教育長にお伺いいたします。
 靖国神社の歴史観、戦争観を教育の場に持ち込むことについて、どうお考えでしょうか。
 また、教科書採択のルール違反が行われたことについて、どういう人たちに教科書が渡されたのか調査なさったでしょうか。調査されたとすれば、どういうことだったのか、お伺いいたします。
 以上で、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○副議長(向井嘉久藏君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、先般のJR事故についての対応でございますが、今回のJR事故に際しては、鉄道輸送の安全性確保とJR西日本との連絡体制の構築が和歌山県にとっても非常に大事であるというふうに考えまして、今議会の冒頭に御説明したとおり、去る五月の九日にJR西日本和歌山支社に列車の安全運行に関する申し入れを行ったところでございます。
 この申し入れに対して、先般、和歌山支社の方から、ATS─SWの設置など、県内の曲線区間における速度超過防止の緊急安全対策を早急に実施するという回答を得ました。また、万一の危機事象発生に備えて、和歌山支社との連絡体制及び庁内体制の整備充実を図っているところでございます。
 今後ともJR西日本との連携を一層緊密にし、安全対策をとっていきたいと、このように考えております。
 次に、靖国神社の問題につきましては、国の内外を問わず、さまざまな意見があると承知をしております。
 先般も、私もゴールデンウイークに知覧へ行って、これはもう三度目ですけれども、特攻隊の記念館を見てきました。十五、六の人の手記は、これは本当に、小泉総理じゃないですけども、涙なくしては読めない。そしてまた、こういうことを絶対に忘れてはいけないというふうな気持ちを改めて強くしたところでございます。
 さきの第二次世界大戦では、国の内外を問わず、多くのとうとい命が奪われました。今後このような惨禍を二度と起こさないためにも、我が国を初め各国が主権国家として互いに尊重し合い、協調を図りつつ、国際平和の実現に努めることが肝要であると肝に銘じているところでございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 議員御質問の四点にわたってお答えをいたします。
 まず、プラットホーム段差の実情でございますが、現在、JRの駅のプラットホームの高さには、百十センチと九十二センチの二種類がございます。このうち、県内の和歌山市駅を除く紀勢本線の駅で百十センチとなっているのは六つの駅でありまして、黒江駅など九十二センチの駅は四十九駅というふうな現状でございます。
 JRによりますと、以前列車にはステップが設けられていたんですけれども、現在、車両の床がフラット化になっておりまして、段差が生じてきております。駅によっては、カーブ上に設置された駅もございまして、場所によっては段差がより大きくなるというふうなことでございます。
 黒江駅や藤並駅につきましては、JR和歌山支社とも段差が高いという認識を持っておりますが、JR西日本全体でとらまえた場合、これらの駅より乗降客数が多い駅を優先して整備を進める計画というふうになっておりまして、どうしても優先順位が低くなるというふうなことでございます。
 県といたしましては、プラットホームのかさ上げ等、駅のバリアフリー化の整備について、市町村が積極的に国や県の補助制度を活用できるよう働きかけてまいりたいというふうに考えております。
 次に、黒江駅の安全対策についてでございますが、議員御指摘のとおり、交通バリアフリー法に基づきまして、一日当たりの乗降客数が五千人以上の駅を対象に国の補助制度があります。これまで県内におきましては、和歌山駅、紀伊駅のバリアフリー化の整備を進めてきたところでございます。また、一日当たりの乗降客数が千人以上から五千人未満の駅につきましては県単独の補助制度がございまして、平成十五年度には紀伊勝浦駅構内にスロープが設置されておるというふうな現状でございます。
 黒江駅につきましては、平成十六年度の一日当たりの乗降客数が四千九百二十四人となっておりまして、今後とも増加傾向にございますので、交通バリアフリー法に基づきました整備を進めるのが適当かと考えております。国の補助制度を活用するためにはまず市町村が基本構想を策定しなければならないことになっておりまして、県といたしましては、海南市に対しまして積極的に基本構想の策定を働きかけてまいりたいと考えております。
 それから、段差の解消や駅のエレベーター設置などバリアフリー対策につきましては、従前からJRと協議を重ねているところでございます。JRといたしましても、今回、事故を契機により一層の安全対策について十分認識されておりますので、今後ともJRとの連携を密にしながら安全対策への取り組みについて強く働きかけてまいりたいというふうに考えております。
 それから、JRにかかわる工事の公開性ということについてでございます。
 国土交通省におきましても、JRが行う工事の透明性の確保というものにつきまして、昨年、各出先機関に通達を出しておりまして、周知を図っているところでございます。
 そういうわけで、県におきましても、JR西日本に対しまして工事の内容及び費用等の関係資料の提示を強く求めてまいりたいというふうに考えております。また、市町村に対しましても、この透明性の確保というものにつきまして指導してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 道路の関係二点、お答え申し上げます。
 まず、県道岩出海南線につきましては、海南市岡田地区において小規模道路改良事業により整備中であり、現在、二ツ池付近から黒江駅方面に約二百五十メートルが完成しております。
 道路整備につきましては、厳しい財政状況の中、重点的、効果的、効率的な観点から優先順位を決め整備しているところであり、海南市内におきましても、都市計画道路及び既存道路のネットワークの中で優先度を考慮しながら今後とも効率的に整備を進めてまいります。
 次に、国道四十二号での工事による渋滞問題の件でございますが、このことにつきましては、国土交通省和歌山河川国道事務所によりますと、ことしの三月に施工した工事箇所は、直角曲がりの交差点部のため片側二車線を確保しながらの工事ができず、また一般交通、沿道環境に影響を与える期間を短縮するため、やむを得ず工事を同時に行った、今後は可能な限りセンターラインを移動すること等により片側二車線を確保し、交通への影響を最小限にとどめる施工方法をとっていくとのことでございました。
 今後は、この国の工事だけではなく、県の工事も含め、できるだけ交通に影響を与えないようその方法や時期など十分に配慮するとともに、十分な情報提供を行い、周辺の方々や道路利用者の皆様にできる限り御理解と御協力をいただきながら実施するよう、国へも改めて強く働きかけてまいります。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 農林水産部長西岡俊雄君。
  〔西岡俊雄君、登壇〕
○農林水産部長(西岡俊雄君) ため池調査についてでございますが、和歌山県地域防災計画において警戒を要するため池に指定されている二百九十七カ所を含む四百二十カ所のため池について、その耐震診断を平成十六年度から三カ年計画で実施してございます。
 なお、これら以外のため池につきましても、関係市町村の意向を踏まえ、必要な診断を実施してまいりたいと考えてございます。
 また、診断結果に基づき緊急性が高いと判断されるため池につきまして、関係市町村と十分な協議を行いながら順次改修してまいりたいと考えてございます。
 次に、ため池改修の地元負担につきましては、事業主体の区分によりまして一〇%ないし四五%となってございますし、市町村建設計画に位置づけられているものにつきましては合併特例債の適用対象となってございます。
 次に、地元の協力についてでございますが、ため池の利水機能や洪水調整等、公益的機能を十全に発揮するためには適正な維持管理を行うことが特に重要と考えてございますので、利水関係者のみならず、地域住民の方々が協調して維持・保全していただく体制づくり、そういった取り組みをお願いしたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 環境生活部長楠本 隆君。
  〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 産業廃棄物問題の二点の御質問にお答えをいたします。
 一点目の野上町福井の産業廃棄物積みかえ保管つき収集運搬業の許可についてでございますが、産業廃棄物の施設設置の審査に際し、地元同意につきましては廃棄物処理法における許可の要件とはなっておりませんが、しかしながら、和歌山県が独自に制定しております産業廃棄物許可申請に係る事前調査の手続の中で、地元野上町の意見を申請者に説明をいたしまして町と十分協議するよう通知しているところでございます。
 次に、二点目の野上町坂本における産業廃棄物不法投棄問題についてでございます。
 この問題につきましては、行為者が賃借をいたしました土地に不法に廃棄物を投棄したもので、廃棄物の中身につきましては、コンクリート殻、金属くず、かわらくず、廃プラスチック類であると認識をしております。
 行為者に対しまして、事案発生後、たび重なる行政指導を行いまして、また平成十三年五月には改善命令書を発出いたしましたが、覚せい剤取締法違反の罪で収監をされまして、その後所在不明となり、今日に至っております。
 この間、県におきましては隣接する坂本川の水質検査を継続して実施しておりますが、現時点で問題となる結果は出ておりません。また、土地を賃貸した地権者と協議を行いまして、地権者からは行為者に対して具体的な撤去に向けての話を行う旨の回答を得ております。
 今後とも、行為者との接触に努める一方、地権者に対しましても、適正な土地管理の観点から自主的に撤去を行うよう働きかけてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 学校における歴史教育は、歴史的事象に対する関心を高め、歴史の大きな流れと各時代の特色を理解させるとともに、我が国の歴史に対する愛情と日本人としての自覚を育てることを目標になされるものと考えております。
 各学校では、この歴史教育の目標に基づき、適切な指導を行っているところであります。
 次に、教科書検定以前の申請図書が送付されていた件につきましては、検定を行う文部科学省が調査を行い、当該出版社に対し指導しております。したがって、本県独自の調査はいたしておりません。
○副議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 答弁ありがとうございました。幾つか要望と再質問を申し上げたいと思います。
 まず、JRの安全についてはいろいろ申し上げましたが、一番具体的な住民の願いであります黒江駅のプラットホームの改善、交通バリアフリー法に基づく整備が適当との助言をいただきました。
 企画部長の答弁で一日四千九百二十四人という乗降人数が示され、私の誤算に気がつきました。古い資料を見て二年後に五千人と思っていたんですが、実はことしじゅうに五千人になるわけですね。海南市にも積極的に基本構想を働きかけていくとのこと、大変ありがたいことです。
 ところで、交通バリアフリー法によった場合、国の補助や県、市の財政負担はどうなるのでしょうか。この点だけお答えください。
 なお、プラットホームの問題は、段差の実測値をつかまなくてはならないと思います。高さが百十センチ、九十二センチのものがあるということでありますが、これでは段差が大きい駅と小さい駅があるということしかわかりません。実際の段差がどれだけあるのか。
 企画部長が答弁された根拠になる資料は私もいただいておりまして、平成十二年十一月に県身障者連盟の要望にこたえてJRから出されたものだろうと思います。資料には「注」として、「上記数値は規定値であり実測値ではない」と記されています。つまり、レールからの高さが九十二センチのはずだが、はかってみなければわからないという、こういう数字であります。
 同じ資料では、電車の床とプラットホームの段差は大きいもので三十センチになっています。しかし、私が先ほど示しました、苦労して電車に近づいてはかったところでは四十二センチぐらいある。
 かつて普通鉄道構造規則第百九十二条の第五項に、空車の状態において床面の高さがプラットホームから三百八十ミリ、三十八センチを超える車両の昇降口には踏み段を設けるとしています。これは昔の電車についていたステップのことなんだと思いますが、三十八センチ以上だと危険だと決めていたわけです。まだバリアフリーなど余り言われなかった時代のことです。
 私たちがはかったのはお客さんが乗っている電車ですから、空車なら、四十二センチ、四十三センチじゃなくて四十五センチにもなるかもしれません。問題は、お金があるかないか、優先順位がどうかという議論の前に、どれだけの段差があるのか、危険があるのかどうかの正確な認識がなくてはならないと思います。空車でその段差をきちんと計測できるのはJRしかありませんから、その点、JRに実測値を出すように要望していただきたいと思います。これは要望とします。
 それから、道路の問題、ため池の防災対策、野上の産業廃棄物問題で、それぞれ地域の皆さんに傍聴をいただいていますが、それぞれ前向きの回答をいただいたと思っています。
 産業廃棄物積みかえ保管つき収集運搬業許可の問題については、これから地域での話し合いにかかわる問題ですが、坂本での産業廃棄物問題の山は相当悪質な業者の問題であることが答弁でもはっきりしています。行為者、地権者への指導が先行することは当然ですが、場合によっては──この行為者も行方不明という話もある。場合によっては県及び野上町に、代執行というんですか、お願いしなくてはならないかとも思います。その点も見通しに入れて取り組みをお願いしたいということを要望しておきます。
 それから、国道四十二号の渋滞問題。
 私自身、毎日その場を車で走って確認していますが、今度はセンターラインを引き直して渋滞を避ける工夫をしていることがうかがえます。しかし、前回の渋滞についてはやむを得なかったというのは全くのお役所答弁ですが、しかし、ここには国土交通省の担当者がいるわけではないので、これ以上の追及はもういたしません。
 ただ、私はいつも言っておりますように、道路工事をするにしても、道路工事をする者は道路工事ができたらいい、道路をつくる者は立派な道ができたらいいということでなくて、県民、市民の生活全体を考えて、国道工事を担当する者、県民の交通を考える担当課、警察、海南市などがもっと知恵を絞るべきだったということが、このことの教訓として言えるのではないかと思っています。
 さらに申し上げておきますと、現在センターラインを引き直しているのはいいんですが、その交通規制をしてから約半月たつでしょうか、その場所でさっぱり大型重機が動いているのを私は見ていないわけです。こういう大事な国道の工事というものは、交通規制をしたらそれに満を持したように工事にかかって短時間でこの工事を終わらせるというのが本当だと思うんですが、どうもこの交通規制は、交通規制をしたままでしらっとしている。素人だから勘違いをしているのかもわかりません。私ももう一回また国土交通省の方へ、また私が行かんなんかなというふうに思うんですが、私は近所に住んでおりますから関係も深いので行かんこともないですけども、ひとつ県の担当課もそういう問題についてはよく目を光らせて、交通規制やったんやったらはよ工事やれというようなことを、例えば交通に関係する警察も関係するでしょうし、ひとつよく見ておいていただきたいと思います。
 最後に、靖国神社参拝など教科書の問題ですが、最近各新聞にも靖国問題とはそもそも何かという特集を組むようになってきました。日本が進めた戦争は正義の戦争だったと宣伝するセンターになっているところに、問題の眼目があると思います。それは村山首相談話にも示され、小泉首相が最近繰り返された日本政府の見解とも相反するものです。そこに首相が参拝するということは、言うこととやることが違うじゃないかというアジア各国の不信を招いている。ここのところが大事だと考えるということを申し上げまして、私の第二回目の質問を終わりにさせていただきます。
○副議長(向井嘉久藏君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 再質問の答弁をいたします。
 バリアフリー化事業を実施する場合の補助の割合でございますが、国が三分の一、それから鉄道事業者が三分の一、それと地方自治体──これは市町村と県が六分の一ずつというふうなことで、三分の一というふうな割合でございます。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○副議長(向井嘉久藏君) 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十七番花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕(拍手)
○花田健吉君 ただいま議長にお許しをいただきましたので、通告に従い、一般質問に入らせていただきます。
 去る三月二十九日から三十一日まで、私を含む自由民主党和歌山県議団の九名の有志で視察団を結成し、中村裕一団長を先頭に、平越孝哉議員、向井嘉久藏議員、吉井和視議員、浅井修一郎議員、前川勝久議員、須川倍行議員、藤山将材議員とフィリピン共和国を視察訪問いたしました。
 主な目的は、昨年十一月二十九日、小泉純一郎総理がアロヨ大統領との首脳会談により日本とフィリピン共和国との間で日本フィリピン経済連携協定が大筋で合意に達したことにより、両国の今後の対応について、現地の日本語学校を視察するためであります。
 この協定は、皆さんも御承知のとおり、日本とフィリピンの間の物品とサービス、資本の自由な移動を促進し、双方の経済活動の連携を強化するとともに、知的財産、競争政策、ビジネス環境整備、さらには人材養成、情報通信技術や中小企業等の分野で二国間協力を含む包括的な経済連携を推進することを目的としております。この協定の締結の暁には、日本、フィリピン共和国、両国が本来有している相互補完性を発揮し、二国間経済関係を一層強化することが期待されております。
 そこで、特に私が注目した項目は、鉱工業品と農林水産品の包括的な関税の撤廃と引き下げを行うということと、人の移動について、日本側はフィリピン人の看護師及び介護福祉士候補者の入国を認め、日本語等の研修終了後、日本の国家資格を取得するための準備活動の一環として日本国内で就労することを認めるという項目でありました。
 フィリピン共和国は七千百九の島から成り、面積は日本の約八割、人口は七千六百五十万人で、主な産業は農業であり、全就業人口の約三七%が農業に従事をしております。また、御承知のとおり、メキシコに次いで世界の百九十カ国に労働力を派遣し、その数、何と八百万人にも達する労働者の派遣大国であり、海外から本国へ送金される額は年間八十億ドルにも上るということです。日本にもたくさん働きに来ておられますが、フィリピンと我が国の関係は、政治的に懸案事項も存在せず、大変友好的で良好であります。
 以上のことを踏まえ、中村裕一団長以下九名の議員団は、三月二十九日八時、関西国際空港に集合し、一路フィリピンへと向かいました。一時間の時差がありますので、現地時間一時三十分、マニラ空港に到着いたしました。
 早速、このたびの視察に際し大変お世話になったNPO法人日本フィリピン文化産業交流協会の理事長さん初め職員の皆さんに空港までお出迎えをいただき、協会の運営する日本語学校を訪問いたしました。生徒による熱烈な歓迎式典の後、当校の日本語の授業風景を見せていただきました。
 その内容は、ただ単に日本語を詰め込むというのではなく、日本の文化や生活様式まで取り入れた充実したものであり、大変驚かされると同時に感心をいたしました。学校内には日本人が実際生活している部屋を模した教室があり、日本人の生活様式を踏まえた実践的な日本語の習得カリキュラムになっており、たくさんの生徒が熱心に聞き入り、勉学に励まれておられました。
 視察後、マニラ市内の宿泊先でもあるダイヤモンドホテルにおいて、農務省副長官のセザール・ドリロン氏、また元上院議員レネ・エスピーナ氏、フィリピン共和国弁護士協会会長リタ・ヒメノ女史、フィリピン看護師協会会長ルース・パデリア女史等と意見交換並びに懇談会を開催いたしました。各氏は日本に対し大変友好的であり、経済交流はもとより人材の派遣や相互交流に対し期待しておられることがひしひしと感じられました。
 翌三十日は大変日程が過密になり、早朝六時にホテルを出発いたしました。向かう先は、マニラから二十キロ離れたラスパニャスにある国立フィリピン大学農学部並びに農場を訪問いたしました。マニラ市内は慢性的な渋滞であり、しかも路面状態が余りよくないこともあって、約二時間を要して目的地に到着いたしました。
 農学部長を訪問し、大学の研究内容や、また研究施設の説明をしていただきました。中村団長からの「農学部を卒業された生徒さんはどんなところで働かれるのですか」との質問に「コンビニエンスストアやスーパーの店員が主です」との回答に、少し驚かされました。日本の東京大学に匹敵する最高学府を卒業された農学部の学生でも、その勉強や研究が生かされることなく、全く別のお仕事に従事されるのが現状だそうです。
 昼食を挟み、イントラムロスにある労働省を訪問し、パトリシア・サント・トマス労働省長官と意見交換を行いました。
 その後、日本語学校の建設中のマラボン分校を視察いたしました。その行く途中、フィリピンの下町も車中から見学をいたしました。大変子供たちが多いということが印象深く、少子高齢化が政治課題の我が国のことを思うとこの国ともっと協力の余地があるのではないかと考えながら、一日の日程を終えました。
 最終日は、下院議員議長のホセ・デ・ベネシア氏と意見交換をする機会を得ました。議長は日本に対し、「もっと積極的にフィリピンと日本の間で物や人の交流を進めなくてはならない。和歌山県は大変農業の盛んなところだとお伺いしました。私の出身地は広大な農業用地があるので、和歌山の農業技術を導入し、農業振興に協力していただきたい。そのためのどんな協力も惜しまない」旨の強い要望がありました。
 当初は、二国間自由貿易協定の中の看護師、介護福祉士の養成のための日本語学校の視察が大きな目的でありましたが、相手の国の要人はもっと多種にわたって労働力を受け入れてほしいとの要望が強かったことが印象に残りました。
 しかし、それは国と国との間の問題であり、私たち地方の議員にはその権限を与えられていない旨を伝え、民間レベルの経済や文化交流は積極的に行いたいとお伝えし、帰路につきました。
 三十一日夕刻、無事関西空港に到着し、全日程を終えました。
 この視察を終えた後、私は新たにフィリピンの労働力と和歌山県の産業の関連について注目をするようになりました。これから和歌山県においてどの分野の労働力が不足するのかを考えました。
 和歌山県は農林水産の一次産業が主な産業でありますが、果たしてその後継者や労働力は足りているのだろうか。また、将来的にはどうなのか。我が県の人口は、ことし四月一日現在で百四万五千二百四十一人になり、前年より六千八百八十九人減少をいたしております。当然、労働力も労働者も減少していると容易に推察できます。
 木村知事は緑の雇用事業を提唱され、中山間地域の労働力の確保と人口の減少に歯どめをかけるために一石を投じていただきました。水産業についても青の雇用事業を唱えられ対応をお考えいただいておりますが、就業者の高齢化や従事者の減少は漁獲量の減少と比例しており、対応策に大変苦慮されているのではないかと推察をいたしております。そして、農業については、今の農家の労働力は家人に頼ることが多く、作物によっては一時的に労働力を雇用することもあると思いますが、日ごろは大抵家人で賄っておられます。
 いずれにいたしましても、農林水産の各分野にそれぞれ安定した良質の安い労働力があれば、また違った振興策や対応も考えられるのではないかと思いをめぐらします。
 また、私は、さきの一般質問でも取り上げましたが、我が国の食糧の自給率について危機感を持っている一人であります。
 隣国の中国は、ここ数年の間に目覚ましい発展を遂げております。中国国民全体が現在の先進国並みの生活水準に達するのはまだまだ時間を要すると考えますが、人口十三億人の国ですから、かなりの富裕層ができるのはそう遠くないと推察されております。そうなると、世界の食糧状況はどうなるのか、常に考えておかなければなりません。
 一説には、中国の年間経済成長率を八%と仮定し、二〇三〇年まで続くとすると、穀物消費量は十三億五千二百万トンとなり、昨年の世界の穀物総生産量は二十億トン強だったので、単純に計算すると約三分の二が中国で消費されるという計算になります。
 今世界に存在する耕地の生産性を高めることには限界があります。中国の消費にこたえるため穀物の追加生産をするとすれば、ブラジルの熱帯雨林の大部分に匹敵する耕地が必要となること、ただし砂漠などのような耕作に適さない土地を除くと果たして供給にたえ得る面積を確保できるのかが大変憂慮されるとの内容でした。
 現在でもその傾向が出ているそうですが、中国の経済がこのまま成長し続けると、日本と同じように農民は農村を離れ、食糧の自給率も低下し、やがては農林水産の輸入国になると予想されております。
 私たちの国も年々食糧の自給率が低下しておりますが、早急に自給率を上げ、将来は輸出できるぐらいにしなくてはなりません。しかし、依然として農業従事者が減少する大きな原因の一つに、商品価格の競争からくる収入の低下と、生産コストの中の人件費の割合が他国に比べ高過ぎ、価格競争についていけず付加価値の高い農産物以外はやっていけないというのが現状でなかろうかと考えます。そういう背景のもと、農家の若い後継者が別の産業に生活基盤を変え、農業人口が減少しているのではないでしょうか。
 我が和歌山県の販売農家──これは三十アール以上、五十万円以上と規定されております──や自給農家──これは三十アール未満、五十万円以下の農家のことです──のここ二十年の統計を見ますと、減少傾向が顕著であります。販売農家並びに自給農家は、一九八五年には五万一千八百十五戸あったのが、二〇〇〇年には三万九千八百六十三戸に減少いたしました。
 さらに、農業を主な仕事としている基幹的農業従事者数はというと──これはもう農業に専従しているということです──年齢別にすると大変興味深い統計となりますが、一九八五年を起点に置くと十五歳から二十九歳までは千七百八十二人から二〇〇〇年には七百八十一人に、約半分に減っております。最も中心的役割を果たす三十歳から五十九歳までは三万三百四十六人から一万五千九百三十七人と、これまた半減しております。六十歳から六十四歳までは七千九十八人から五千八百五十六人にやや減少し、六十五歳以上は何と九千八百九十八人から一万八千八百十五人にふえるという結果になっております。聞くところによりますと、定年退職された方が農業に第二の人生を見出した結果であり、高齢者が農業を支えている現実がよくわかります。
 また、経営耕地面積は、同じく一九八〇年には三万五千二百五十九ヘクタールから二〇〇〇年には二万八千三百八十七ヘクタールに減少し、耕作を放棄する──耕作というか田んぼを放棄した耕地面積も、一九八〇年には四百五十二ヘクタールであったのが二〇〇〇年には千八百九十九ヘクタールにふえ、二〇一〇年には二千二百七十ヘクタールになると予測をされております。耕地はあっても耕す人がいなくなり、農業用地としては一等地であるにもかかわらずこのごろ荒れ地で放置しているところが目立ち始めたことの裏づけになる統計数値でもあります。
 ここ十年間、紀南の農協は取扱額が大幅に減少していると聞いております。その原因はとお聞きいたしますと、高齢化と後継者不足だろうと、ある農協の組合長さんがおっしゃっておりました。生産する人の能力と数が減ったからだということであります。
 農業が重要な産業である我が県にとって、このまま手をこまねいているだけなのでしょうか。現状を打破するため、早急に対応策を考え、政策の指針を実行に移していかなくてはならないときに来ているのではないでしょうか。
 また、食糧の自給率のアップや地産地消などを総括的に考え、今までの既成観念にとらわれない政策も視野に入れていかなくてはならないと思います。価格面でも国際競争に耐え得る商品でなければなりませんし、当然、品質の安全かつ安心なものでなくてはなりません。
 以上のようないろんな観点から和歌山県の農業の問題点と可能性を考えるとき、近い将来、農業への法人の参入や海外からの労働力の導入も真剣に考えるときに来ているのではないでしょうか。
 なぜならば、先進国の中で食糧の自給率が極端に低いのは我が国だけでありますが、アメリカやヨーロッパの農業の実態を見ますと、メキシコや中東アジアやアフリカ等の他国の安い労働力を導入し、国際競争に対抗し、食糧自給率を確保しています。単に労働力が安いからと安易に海外においての農業経営や農業技術を持ち出すのは、最近のアジア情勢を考えるとき、賛成しかねます。将来にわたって食糧の安定確保ができるかどうかわからない他国で農業をするよりも、国内で安定供給できる方法を考えるとき、フィリピンのようなお互いの国の利益が争わない国の労働力を一定の割合で導入することも、未来の農業経営の選択肢の一つではないでしょうか。
 我が国の法務省も、ことし三月末に公表した今後五年間の外国人に関する第三次出入国管理基本計画で、単純労働者の受け入れも着実に検討をしていくという方針を打ち出しております。一九九二年の第一次、二〇〇〇年の第二次基本計画からいたしますと、受け入れに向けて一歩踏み出したと論評されておりました。
 もちろん、現在、外国人の労働者はブラジルやペルーのように改正入国管理法の日系人の特例により単純労働者として働いておられますし、技能研修制度による技能実習という形で中国や東南アジアからも研修に来ておられ、それぞれの職場に派遣されていると聞いております。
 さらに、国連の試算によると、少子化が加速する日本は、一九九五年時点の生産年齢人口──十五歳から六十四歳までの労働者の年齢幅での人口ですが、これを維持するには二〇五〇年まで毎年六十万人の移民を受け入れることが必要となり、先進国では最も深刻な状況にあると警告をされております。昨年のアジア太平洋会議でも、自由貿易協定が主要議題となり、各国から人の移動がクローズアップされ、日本への労働力の受け入れを強く要望されました。
 そこで、質問に入らせていただきます。
 まず、木村知事にお伺いいたします。
 将来の和歌山県の農業の経営のあり方についてお考えをお伺いいたします。
 また、一次産業での労働力の不足は統計的に見ても明らかでありますが、特に今回は農業分野で安定した労働力の確保についてお考えをお伺いいたします。
 あわせて、フィリピン等の外国人労働力の今後の活用についてお考えをお伺いいたします。
 和歌山における平成の農業維新のときと考え、他府県に先駆けて和歌山プランをお示しいただき、柔軟でかつ弾力的な対応で活力ある農村の復活にお力添えを賜りたいと思います。
 続いて、農林水産部長にお伺いいたします。
 農業分野での外国人研修生の受け入れに際し、現在も受け入れていただいておりますが、農繁期、農閑期があるので一年を通して一軒の農家で受け入れるのは難しいとの現場の声も聞きます。しかし、地域によって特産物も違うと思いますし、梅やミカン等の栽培農家が連携を密接にとれるシステムを工夫すれば将来受け入れ可能な幅がより広がるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、福祉保健部長にお伺いをいたします。
 もともと今回の視察目的は、FTAに盛り込まれた看護師や介護福祉士の受け入れに関してフィリピンでの現況を視察することでした。
 そこで、我が県では現在、看護師や介護福祉士の数は足りているのでしょうか。看護職員の需給に関する資料を拝見すると、平成十六年は七百五十一人が不足しておりますが、これは全国的に見て多いのか少ないのか。また、この不足分は増加傾向なのか。また、不足分に対しては今後どのような対応をしていくのかをお聞かせください。
 さらに、十六年度は世界遺産登録のおかげで、三千万人を超す観光客にお越しいただきました。随分外国の旅行者の方も目立つ今日ですが、外国のお客様が万一病気や事故に見舞われ入院したとき、それぞれの医療機関に英語など話せる医師や看護師さんは配置されているのでしょうか。
 また、これからさらに少子高齢化が進む中、高齢者のお世話をする介護福祉士の現状と将来の見通しについてお伺いをいたします。
 次に、ゆとり教育の見直しと肢体不自由児を介護していただく介助員の処遇についてお伺いをいたします。
 まず最初に、昨年、小中学校を対象とした国際数学・理科教育動向調査で一九九九年に比べると平均得点がダウンするなど、学力低下が進んでいることが各新聞紙上で大きく取り上げられ、中山文部科学相は新学習指導要領の全体的な見直しを進めると表明されました。それを受けて文部科学省も、具体的、効果的な対策をとるとの発表をしていました。またまた朝令暮改、猫の目のように変わる文部科学省の方針でありますが、和歌山県教育委員会においても当然いろいろな影響が出ているのではないかと考えます。
 現場を預かる教職員の皆さんにとっては、大変戸惑いもあると思います。ある校長先生にお話を聞いたところ、ゆとり教育のすべてが悪いとは思わない、総合学習もそれなりに効果を上げていると述べておられましたが、どうして学力が他の国の生徒と比較して落ちてきたのか、もっと別な観点から考え直さなくてはならないときに来ているのではないかと考えます。
 いずれにいたしましても、和歌山県も全国に並び学力低下が顕著なのか。そうであるとすれば、これから先どのような対応をとっていかれるのか。今後のゆとり教育のあり方の見直しについてどう対応するのかをお伺いいたしたいと思います。
 さらに、この際、和歌山県の自主性を発揮し「教育立県わかやま」を目指し、他府県のモデルとなるような新しい和歌山方式等を推進するお考えはないのか。あるのであればどのような構想をお持ちなのか。あわせて教育長にお尋ねをいたします。
 次に、小中学校において肢体不自由児の介助員の待遇についてお伺いをいたします。
 現在、小中学校において、車いすでの学校生活を余儀なくされている生徒さんも県内にはかなりおられるのではないかと思います。そういう生徒さんがある程度自力で不自由なくそれぞれの教室を移動できるように学校内のバリアフリー化も、最近新築された学校では進んでいると聞いていますが、比較的古い校舎の学校ではまだまだ十分とは言えません。
 そこで、そんな生徒さんの日常活動を支えるために介助員さんがそれぞれの市町村の教育委員会によって配置されていることと思いますが、諸般の理由により、その介助員さんの身分は大抵臨時職員だとお聞きいたしました。確かに、管轄する学校数に限りのある市町村においては、常勤となると大変経費負担が重くなることは容易に想像できます。
 しかし、介助を必要としている生徒さんからすると、学校外の学習などのとき、例えば遠足とか修学旅行となりますと、かなりの熟練した介助していただく方に同行してもらわないと、環境が一変するのですから大変不安になるのではないでしょうか。自由行動のとき、電車やバスの乗りおりのとき、車いすの介助はかなりの体力と経験を要すると思いますし、養護教員の先生の協力は、その場にいれば当然お手伝いいただくのですが、お手伝いいただいたとしても大変だと思います。そんなとき、一番頼りになるはずの介助員さんの経験や知識が少ないために子供たちが不安になるというのでは困ると思います。
 そこで、教育長にお伺いをいたします。
 そういう介助員さんの資格及び待遇は規定されているのでしょうか。
 また、市町村の採用状況をどのように把握されているのでしょうか。聞くところによりますと、重労働の上、精神的にも負担が重く、その割に時給が安く、月収にすると手取りが低いため、臨時職員として求人しても応募が少ないと聞いております。子供たちの心のケアや専門用具の取り扱い等も含め、技量が伴っている方が応募に応じていただいているのかどうかも疑問であります。
 何はともあれ、生徒さんが安全で安心して学園生活を送るためには、介助員さんはなくてはならない存在であります。修学旅行など特別なとき、短期間だけでも本人や保護者の希望があれば、支援費制度のもと社会福祉法人やNPO法人に所属する熟練の介助員さんに御同行をお願いすることはできないのでしょうか。県教委と市町村の教育委員会が連携を深め、肢体不自由児の学園生活をしっかり保障することが大切だと思いますが、いかがでしょうか。
 あわせて、県立高校の状況もどうなっているのかをお伺いいたします。
 続きまして、インターネットのADSL回線の届かない地域の通信格差の是正についてお伺いをいたします。
 インターネットのNTT回線でいろいろな情報を取り込むときの速度は、ADSL使用可能な地域とそうでない地域では、時間もさることながら、料金も随分違いがあるとお聞きいたしました。NTTの収容局から二キロ以内にある程度の人家が密集しており利用者があれば、ADSLに変更する工事費は局内の工事だけなのでそんなにかからないということで、現在、県内においてもその対象地域が拡大されているとお聞きいたしました。しかし、人家が密集せず点在している地域だと、たとえADSLに切りかえ工事をしても、距離が遠いと信号が減衰し通信速度が落ちるので効果が薄いということで、今後の見通しも暗いとお伺いをいたました。
 では、主に山間地域においては今後インターネットの通信格差を是正する方法はないのでしょうか。例えば、光ケーブルなどの利用は困難なのでしょうか。私の近くの御坊市などは、ADSL回線の利用可能な地域であるにもかかわらず、関西電力の電柱を利用して光ケーブルを施設しているシステムがあるとお聞きいたしました。
 そこで、企画部長にお伺いをいたします。
 この光ケーブルの活用について県当局は御認識いただいておりますか。
 営利企業であれば、費用対効果の面からいっても、なかなか中山間地域にまでこの事業を拡大していただくには無理もあろうかと考えます。そこで、県当局として先ほどのような地域の通信格差の是正について、ただ手をこまねいているだけなのでしょうか。携帯電話にしても電波の飛ばない地域であり、ますます通信において地域間格差が広がっていくようで、若者にとって魅力のない地域になってしまいはしないかと、いささか不安であります。県当局におかれましては、過疎対策も視野に入れ、ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。
 以上をもちまして、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○副議長(向井嘉久藏君) ただいまの花田健吉君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 和歌山県の農業経営のあり方とその担い手の確保ということですが、議員の御質問にもありましたように、和歌山県では第一次産業がまず非常に大事だと、その中でも農業は非常に大事だという大前提があります。それから一方で、国際関係とかいろんなものを見たときに、やはりこの農業というものを国策的にも大事にしていかなければならないと。それから、人口の配分ということから考えても、地方に人が住まないようになるということは非常に好ましいことではない。これぐらいの三つのことの中から、私も農業に非常に力を入れているんで。
 それについては、一つは農業が魅力のあるものにするというふうなことで、和歌山県の産品がよく売れるようにする、付加価値が高まるようなことでいろんな形の支援をしていくということ。それからもう一方は、どんどん減っていく担い手、これを何とかしていこうということで、緑の雇用の農業版というような形で農業をやってみようプログラムというようなことで、都会から農業に参入するような人たちを呼び込んでくるというふうなこと。これはことしももっと大々的にやっていこうと思っているんですが、しかしながら、景気がやや回復基調にあること、そしてまた長期的にはもう来年をピークにして日本の労働力人口が減っていくというふうな中で、なかなか将来的には非常に厳しい問題があるというふうな認識を持っています。
 そういうふうな中で、このフィリピンの話、行かれたら、その国立大学の農学部を出た人なんかがコンビニとかそういうところで働いていると。
 今、例えばIT関係ではインドの人なんか非常にそういうものが強いんで、日本へ来てもらったというような話もあります。そういうふうなことで、例えばフィリピンのそういうふうな農業に対して非常に技術とか知識を持ったような人が和歌山県へ来て農業をやってくれるというふうな仕組みができれば、非常に一つはいいんじゃないかと思います。
 それからもう一つは単純労働ということで、これはまあ永住という形でなくても、時期的に和歌山県へ来て農業を手伝って一定の収入を得てまた帰るというふうなことも必要なんじゃないだろうかというふうに思います。
 ただ、こういうふうな移民政策といいますか、これから日本の人口が減っていくのをどういう形で補っていくかということについては、これは非常に多分に国策的な面もあって、今、出入国管理法でいろいろ厳しい縛りもあるわけです。そういうふうな中で、もし可能であれば和歌山から何か一つのいいような方針を打ち出すことができれば、事が農業分野だけになかなか難しいというふうには思うんですけれども、できればというようなことを今、御質問を聞きながら考えていたところです。また頑張っていきたいと、このように思います。
○副議長(向井嘉久藏君) 農林水産部長西岡俊雄君。
  〔西岡俊雄君、登壇〕
○農林水産部長(西岡俊雄君) 外国人研修生の受け入れにおける農家の連携システムについてでございますが、これまで和歌山県国際農業交流協会が中心となりまして海外農業研修生の受け入れを行ってございまして、本年もインドネシア共和国からの研修生を受け入れてございます。このほか、県内の農業法人等におきましても研修生の受け入れを行っている事例もございます。
 また、外国人研修・技能実習制度につきましては、平成十二年三月に拡充され、これまで認められていなかった農業分野における技能実習が三年まで可能となったところでございます。この制度におきましても、研修途中での受け入れ農家の変更はできないなどの制約もございまして、議員御提案のシステムの実現に向けまして、国等関係機関に制度の一層の充実を働きかけてまいりたいと考えてございます。
 以上です。
○副議長(向井嘉久藏君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 看護師、介護福祉士の需給の現状と将来の見通しということでございますが、まず、日本におけるフィリピン人看護師、介護福祉士の就労の受け入れにつきましては、昨年末、大筋で合意されまして、現在、厚生労働省において、指導体制など就業施設の要件や受け入れ人数などを検討中とのことでございます。県といたしましても、国の動向を見きわめながら対応してまいりたいと考えております。
 看護職員の就業状況でございますが、平成十二年に策定した需給見通しに基づく平成十六年時点では本県では七百五十一名が不足してございまして、全国的に見ても本県は不足している状況にあると認識してございます。このため、和歌山県ではナースバンク事業の機能強化など養成力の強化、離職防止、再就業の促進、資質の向上を四つの柱としまして看護師の確保に取り組んでいるところでございます。
 また、介護福祉士につきましては、平成十七年三月末の和歌山県内の登録者数は四千三百十五名でございまして、ここ数年では毎年約五百名ずつ増加してございまして、現在のところ介護福祉士は不足する状況にないと考えております。
 なお、英語で対応できる県内の医療機関は、病院で四十施設、診療所二百四十四施設、歯科医院百五十三施設と把握してございます。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) インターネット通信の地域間格差の是正についてでございますが、現在、高速インターネット通信は、民間事業者による光ファイバーやADSL、ケーブルテレビ等の事業展開が進んでおりまして、利用可能な世帯の割合は県内全世帯の九〇%を超えております。
 ADSLサービスにつきましては、既存の電話線を利用いたしまして局舎整備のみで、そういうことの対応だけでできるというふうな特徴がございまして、そういうことから中山間地域では主な高速インターネット通信手段の一つとなっております。
 しかしながら、ADSLサービスが導入されておりましても、議員御指摘のとおり、局舎からの距離が長くなりますと速度が低下するというふうな場合がありまして、またいまだ高速インターネット通信を全く利用できない地域も存在しております。
 このため、このような地域の解消を目指しまして、本年度は日高町、由良町、それに日高川町で国の新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業を活用いたしました基盤整備を予定するなど、積極的な取り組みを進めているところでございます。
 高速インターネット通信への需要は、多様なサービスの提供等によりまして、ますます増加するものと考えております。そのため、今後とも民間事業者の積極的な事業展開を促しながら、市町村と連携しながら国の支援措置の活用を図ることによりまして、高速インターネット通信サービスの地域間格差の是正に努めてまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 初めに、これまでのいわゆるゆとり教育は、知識、技能を単に教え込むことに偏りがちであった教育から、みずから学びみずから考える力などをはぐくむ教育へと、その基調の転換をねらいとしたものであります。
 しかしながら、先般の国際学力調査から、児童生徒の読解力や学ぶ意欲の低下などが課題として指摘されております。
 平成十五、十六年度に実施した県下一斉の学力診断テストでは、本県児童生徒の基礎的、基本的な学力の定着状況はおおむね良好であるものの、国語力に課題が見られたことから、中学校の国語科教員を小学校に派遣するなどの小中一貫国語力向上モデル事業を行っております。
 議員御指摘の時代に即応した和歌山らしい教育の創造は、特に重点的に取り組むべきテーマであるという認識を持っております。昨年のきのくに教育協議会からも、「子どもたちの未来を切り拓く和歌山らしい「学び」を創るために」という提言をいただきました。また、本年六月に設置した義務教育ニュービジョン研究会議においても、次代を築く確かな学力の定着や和歌山の個性ある教育の創造等について議論を行っていくこととしております。
 教育委員会としましては、和歌山の豊かな自然、歴史、文化を生かした学びを創造し、和歌山に誇りを持ち、世界に発信していける人材を養成してまいりたいと考えております。
 次に、重度の肢体不自由児を初めとした介助を必要とする児童生徒については、基本的には専門の教員を配置した養護学校で受け入れ、個々の障害に応じた教育がなされております。
 御指摘の介助を要する肢体不自由児に対する介助員は、現在、市町村の判断で配置されている例もあり、資格や待遇についてはそれぞれの財政状況等に応じて決められております。
 県教育委員会としては、市町村教育委員会に対してこれまでも児童生徒の障害に応じた人的支援を行ってきており、今後も十分な連携を図りながら適切な対応をしてまいります。
 なお、県立高校において、生徒や学校の実態等を踏まえ、必要な非常勤講師を配置し、対応しているケースもございます。
 以上であります。
○副議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十七番花田健吉君。
○花田健吉君 要望にさせていただきますが、知事から大変前向きな、また農業に対しての将来にわたってのお示しをいただきまして、本当にありがとうございます。
 私も、近所にしばしば、一等地で荒れ地がちょっと目立ち始めた──これはさきの町田先生の御質問にもありましたとおり、紀南へ行くと大変多くなってまいりました。こういう遊休地と申しますか荒れ地ですね、こういうのをいかに農地として再生していくかということは、知事のお話にもありましたように、株式会社の参入というお考えも、これ全国的に今進んでいるとお聞きしております。
 それには、やはり高い農業技術と、やはり安い労働力。それと株式が農業を経営する力、これが今まで農家にはちょっと足りなかったんじゃないか。JAという大変大きな組織がありますけども、そこにちょっと頼りがちで自分たちの経営する力というのがちょっとおろそかになってたんじゃないかというのも、今までの農業政策の反省点としまして、今後、やはり今の専業農家の方も、また農業に従事しようと思われている方も含めて、この株式という組織の中での農業運営をぜひ前向きに御指導いただきたいなというのを要望としておきます。──いつの間にか、これ九分になってる。十五分さっきあったような気するんやけども。これちょっとようわからんのですけども、もうあんまり話するなということなんで。
 ただ、企画部長さん、これもひとつ要望ですけども、九割と言いますけども、私が住んでいる印南原というのは、今ADSLの区域外でございます。私とこはもしか、その残りの一割に入っておるんかもわかりませんので、どうか速やかにこの和歌山県内の、いろんなその通信格差があるところをぜひ是正していただくように前向きに御検討いただきまして、すべて要望とさしていただきます。
 ありがとうございました。
○副議長(向井嘉久藏君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で花田健吉君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明二十二日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時三十六分散会

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