平成17年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(飯田敬文議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時二分開議
○議長(小川 武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第一号から議案第十九号まで、議案第三十九号から議案第九十一号まで及び議案第九十三号から議案第百三十二号まで、並びに知事専決処分報告報第三号から報第五号まで及び報第七号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 二十一番飯田敬文君。
  〔飯田敬文君、登壇〕(拍手)
○飯田敬文君 おはようございます。
 お許しをいただきましたので、質問をさせていただきます。
 今回は、昨年八月の補欠選挙で当選させていただいて初めての一般質問でありまして、いささか緊張ぎみでございますけれども、質問の機会を与えていただきました多くの皆さんに改めて感謝申し上げると同時に、その責任の重さを痛感しておるところでございます。
 今回は三点に絞って質問させていただきたいと思いますが、県知事並びに県当局の簡単かつ明瞭──余り長い答弁は要りませんので、ひとつよろしくお願い申し上げまして質問をいたしたいと思います。
 まず初めに、地方分権社会の実現と市町村合併についてという質問をいたします。
 平成十二年四月の第一次地方分権改革は、機関委任事務制度を全廃し、中央省庁の自治体への関与、言いかえれば規制を緩和いたしました。今回、改革によって中央省庁と自治体はようやく法制上対等の関係になったと言われておりますが、実質は伴っておらないというふうに思うわけであります。中央省庁は今なお法令に基づき許認可権限を維持しており、私たち自治体行政を支配しているのが現状であります。加えて、国の一般会計だけを取り上げてみても、二十兆円余りの補助負担金を所管し、自治体行政をコントロールしておるところであります。
 今回の地方分権改革は、単に「地方のことは地方で」といった次元から推進されるものではなく、日本のこれまでの明治維新以降の中央集権体制を分離分権型に組みかえ、政策や事業の立案から実行までを、地方自治を確立する中で責任を持って展開させるものであります。これこそ二十一世紀型の日本の未来を切り開く社会であり、とかく今言われておる国か地方かといった二者択一の権限争いではなく、もともと国と地方は対立するものではありません。その役割分担を明確にする中で、国民を幸せにするための手段であります。一般国民大衆は、国の権限はどこまでで、地方の権限はここまで持ってこいというふうなコップの中での争いには関心がないわけであります。こうした実態の中で、果たして真の地方分権、地方主権が実現するでしょうか。大きな疑問と不安がございます。
 他方、過去にも申し上げてまいりました東京一極集中の問題は一向に是正されておりません。少子高齢化の進展により、日本の人口は二〇〇六年を境として減少すると予測されております。既に三十以上の道県では人口の減少が続いており、我が和歌山県においてもその例外ではありません。そのほか、政治、行政、経済、金融、文化、情報通信などすべてが東京圏を中心として機能している現状を見るとき、東京圏に対抗し得る魅力ある地域、対外的にも競争力のある地域を構築することが必要であり、地方が府県境を超えた連携を模索しなければならない時期だと考えております。このことが真の地方分権を実現することとなります。
 具体的には、今、地方分権という大きな枠組みの中で、実現の手法といいますか、手段として、三位一体改革や道州制の議論、市町村合併の推進がなされておりますが、うがった見方をすれば、放漫経営において破綻した大手企業や銀行に対する公的資金の注入と同じように、地方が国の財政再建の犠牲になっておるように思われてなりません。真に地方分権を推進するならば、国及び地方がみずから襟を正し、痛みから逃避することなく、国の役割と地方の役割を明確にした上において推進されるものであります。その第一は地方への税源移譲であり、全体的な三位一体改革を推し進めていただきたいと考えるところであります。
 さて、我が和歌山県においては、景気を含め、あらゆる面において厳しい現状であることを見るとき、開会日の知事説明にある現状認識の御説明の中で、政府と地方との分権そのものの理念の共有がないとしている点につきましては私も共感をいたしておりますが、一方、県行政と市町村行政、県民との関係において、その理念の共有があるとお考えなのか、疑問に思っているところであります。私も県政の一端を担っておる者として、県政への県民の皆様の理解を深めていただく手段として懇談会などを開く機会がございますが、理解されておらないことが多く見受けられ、非常に残念に思うところであります。
 そこで、木村知事にお伺いをいたします。
 今後の二十一世紀型分権社会の実現に向けての展望と課題について知事の考えをお聞かせいただきたいと思います。あわせて、国、県、市町村の役割認識、さらに市町村に対する分権の確立と県の指導についてお伺いをいたします。
 次に、地方分権の手法の一つに、全国三千二百余りの市町村を一千程度に減らす市町村合併、いわゆる平成の大合併を促進しております。この平成の大合併も地方分権実現の中の一つでありますが、先ほど述べました国の財政再建の犠牲になっておるところが多うございます。「地方のことは地方で」という知事説明にもあるように、どのような町を、都市をつくり上げるのか。五十年先、百年先を見据えた地域のあり方を抜きにした押しつけの合併のように思えてならないわけであります。しかしながら、真に地域のあり方を模索した合併においては、むだをなくし、都市機能が充実した、地域住民にとって安全で住みやすい地域づくりができることとなるところから、私は、自分たちが考え、自分たちの手で推進される合併は好ましいことと考えておるところであります。
 現在、全国において、一九九九年四月の兵庫県篠山市以降、二〇〇四年十月現在までに二百九十六市町村が参加して八十七の合併が成立しており、今でも五百八十七の法定協議会が進んでおります。和歌山県においても、昨年十月、南部町・南部川村の合併を最初に、県知事申請及び調印済みを含め、本年三月五日現在、十二地域が合併実現及び合併予定に至っております。
 さて、各地で合併協議が進む中で、いわゆる破談に至るケースが続出しており、協議難航の原因など課題が多くあると聞いておりますが、このことについて木村知事におかれましてはどのように認識をされておるのか。また、合併ができたとして、その後の地方分権にかかわっての地方主権の受け皿となり得るのか。また、合併に残された市町村は、このような分権社会の実現の中で生き抜いていけるのか。現状認識と今後の課題について、また地方主権の受け皿としての新地域となれるのか、木村知事のお考えをお聞きしたいと思います。
 次に、市町村合併にかかわって、このほど那賀郡五町、打田町、桃山町、貴志川町、粉河町、那賀町各町による合併が、新市名を「紀の川市」として、打田町役場を本庁舎として、本年十一月七日を合併期日として県に申請し、合併することとなりました。この市は、県内各合併実現地域の中で、いわゆる本当の意味での新設合併であり、平成の大合併のシンボルと言われる浦和市、大宮市、与野市の合併でできた新さいたま市と同じように、和歌山県における合併のシンボル的役割があると考えております。
 しかし、合併後の新市のあり方、住民サービスなど、未来に向けての町づくりを見据えた上でなければなりません。過去県議会において私が提唱、質問をしてまいりました紀泉百万都市圏構想とともに、激動する世界情勢を考慮し、新市のあり方を模索すべきであると思います。もちろん、地域においてのさまざまな課題や問題があることは事実でありますが、個々の問題においては後ほど質問をさせていただくといたしまして、グローバルな視点で新市のあり方、考え方をお聞きしたいと思います。
 現在、景気や国際情勢は、アジア、特に中国、インドなど極東地域が中心となっており、世界経済の面から見てまいりますと、二〇〇〇年代初頭の十年が半ばを迎え、世界の経済構造は急速に変化をしております。アメリカ、日本を軸とした大量生産型製造業の一九八〇年代から通信技術とグローバル化の一九九〇年代を経て、中国、インド、ブラジルなどの巨大人口を擁する農業国が急速に工業化を進める中で、地球環境を初めとするさまざまで困難な問題の挑戦が続いております。昨年は、とりわけ中国の影響が顕著であり、経済のみならず多くの分野で影響を受けることとなりました。日本にとりましても重要な意味を持っております。
 そのことを踏まえ、新市紀の川市の進むべき方向は、私は、関西国際空港二期工事の完成とともに、アジア、特に中国を相手として発展させなければならないと思うわけであります。もちろん、大阪府泉南・泉州地域との連携は最重要課題であり、あえて私が申し上げるならば、将来この地域との合併も視野に入れることが望ましいと考えております。ただ、現在の状況では、広域連合による一体となった取り組みが必要であり、あらゆる課題、可能性に積極的に取り組んでいただきたいと思う次第であります。
 合併後の県と市町村の役割、振興局を初めとする県の組織の再編や整備、とりわけ那賀郡は紀の川市といわゆる岩出市との二つの市に管轄がなるわけであり、町村がなくなるわけであります。そういう意味での振興局の役割、これもひとつ整備についてとりわけ考えていただきたいと思います。また、周辺単独行政庁、例えば那賀郡における岩出町との関係など、どのようにお考えなのか。また、知事説明の中に「行政組織のスリム化と県民サービスの向上」を掲げてありますが、地方分権の中での地方主権や合併を念頭に入れた具体的でわかりやすい改変になっておらないというふうに感じておるわけであります。さらに、現在合併協議されている地域やその他の地域の合併について、今後どのように県として指導されるのか。
 新市紀の川市の和歌山県における認識と町づくり、振興局を初めとする県行政のかかわり及び整備について、さらに、これから問題になるであろう単独市町村等に対する県の取り組みをお伺いいたしたいと思います。
 続きまして、二つ目の課題でございます。五点にわたり質問いたします。
 関西国際空港と紀の川市を中心とした紀北地域の一体的な発展についてお伺いをいたします。
 関空については、二〇〇七年に四千メートル滑走路の供用を目指す第二期工事が、問題のあった中で進められております。開港当初には、大阪府はもちろん、和歌山県にとりまして、一向に浮上しない県勢のカンフル剤になることと大きな期待をいたしておりました。私は、県議会初当選の年の開港であり、登壇初質問の中にも、関西国際空港を利用した和歌山県の発展を模索することが大事であると当時述べさせていただいたと記憶をいたしております。
 しかし、さまざまな要因の中で、関西国際空港の業績が思惑外れに終わり、二〇〇三年度までの三年間で連続して旅客数の減少により一兆円を超える有利子負債を抱えることとなり、経営の不安視が叫ばれることとなりました。このようなとき、関西国際空港の大きな競争相手として、愛知県常滑市沖の伊勢湾上に本年、中部国際空港が開港いたしました。これは、関西国際空港にとって、また関西地域にとっても強力なライバルの出現となると同時に、東京圏を打破し、広域連携の中で地方が打って出るチャンスでもあると思うわけであります。そういう意味では、関西国際空港二期工事の完成は大きな意味があります。
 話は少し横道にそれましたが、前段で申し上げました我が地域の発展は、府県間の壁を取り除き、広域的な視点のもとで推進されるであろうと思います。幸いにも二期工事が完成を見るところまで進展してきておるところを見据え、大阪泉南・泉州地域と和歌山県紀北地域が関西空港を中心として発展を強力に推進することと相なれば関西圏の中心的役割を担う地域が誕生することとなり、ひいては地方分権時代における地域の構築ができるものと考えます。関西国際空港二期工事完成と新市紀の川市を中心とした紀北、大阪泉南・泉州地域と一体となった発展に向けて、和歌山県の認識を木村知事にお伺いをいたしたいと思います。
 二点目として、そのための道路交通体系についてお尋ねをいたします。
 先ほど申し上げましたように、和歌山県の発展に大きな意味を持つ関西国際空港の二期工事完成、二〇〇七年まで、あと秒読みとなってまいりました。今度こそ関西国際空港二期工事完成におくれることなく、地方主権の受け皿となるように早急に対応をしなければなりません。その一つとして、関西国際空港に通ずる道路交通体系の早期完成が重要であります。
 和歌山県におきましては、県内交通道路に重点的に改修、新設をいただいておりますが、県内道路交通体系は、高速道路としては阪和高速道路があるのみであり、他府県に比べ大きなおくれをとっております。現在建設中の京奈和自動車道路は、紀北地域の発展にとり大きな意味を持っております。とりわけ前段で申し上げてまいりました地方分権時代の主権の受け皿として、京奈和自動車道路の完成は将来の和歌山県発展を左右するものであり、早期の完成を望むものであります。
 一方、泉南地域と紀北地域の生活道路として重要視されておる府県間道路についてであります。
 現在、岩出町からの泉佐野岩出線の拡幅工事が急ピッチで進捗しており、このほど風吹トンネルの工事開始ができましたことは喜ばしいことであり、早期な完成をお願いしたいと思います。なお、合併により新しくできる新市紀の川市の中心と言うべき泉佐野打田線につきましては、当選以来何回も質問をさせていただいておるところでございますが、大阪側の進展が全くと言っていいほど進んでおらない現状を見るとき、新市の町づくりにおける重要課題であるところから、早期の改修を強く望んでおるところであります。
 ちなみに、国道四百二十四号線が打田町竹房橋南詰までの改修が進んでおる中、これを接続することによって、美里、野上両町を含めた一体的な道路交通体系の完成が見られるわけであります。新市紀の川市の重要道路としての京奈和自動車道路と泉佐野岩出線、泉佐野打田線及び周辺県道の進捗状況と整備についてお伺いをいたしたいと思います。
 次に、三点目でございますが、和歌山県の基幹産業である農業問題についてお伺いをいたします。
 さて、農業のあり方について、現在多くの課題が提起されております。国においても新しい農業政策が打ち出されております。一つは、二〇〇三年六月、農業生産者保護の代名詞とも言われてきた農水省の外部機関である食糧庁、そして一九三九年から続いてきた食管制度がいずれも廃止になりました。これは、日本の農業行政が初めて生産者から消費者側に転換されたことを意味する歴史的な行政組織改革であります。その後、新たに農林水産省に食品安全局が新設され、食品安全基本法に基づいた取り組みが行われ、特に食の安全という面においての道が確保できるようになりました。
 二つ目には、農政の基本課題についての転換であります。土地利用型農業の零細分散制から資源管理型農場制への変革、安全・安価な食糧を安定供給できる環境保全型の農場制農業であり、もう一つは、農業を第二次、第三次産業へとシフトすることで多角化を図ることが大事であります。現在、打田町等に見られるファーマーズマーケット「めっけもん広場」等は、食の安全、特に新鮮であることのほか、グリーンツーリズム的要素が人気を博している例を見ても明らかなように、これからの農業は、単に産業という一面だけではなく、農村住民同士や都市と農村双方の交流の場として、生活上の最も身近な食を通じて地域や地元を見直す地産地消を目指すべきであり、臨空農業を視野に発展させなければならないと考えております。このことは、知事が常々推進されております緑の雇用事業、これの将来の具体的な、典型的な発展であろうというふうに思うわけであります。
 なお、これを達成するためには、農協を初めとする農業委員会のあり方、改良普及センターなどの支援体制の整備、役割を再構築することから始めなければなりません。新市における臨空・都市近郊型農業への展開と、農業委員会や農協の役割、改良普及センターの整備についての考え方及び認識をお伺いいたします。
 四点目に、都市基盤の整備についてであります。
 安全で住みよい地域には、都市機能の充実が欠かせない問題であります。その第一は、昨年大雨や地震など自然災害が多く発生いたしましたが、災害時にどのように対処するかという問題は数多く議論されており、重要課題であります。一方、人的災害を防ぐ防災意識が希薄であるように思えてなりません。例えば河川改修をとってみても、県管理の河川において改修が進まない箇所が多数あり、一たび増水すると水害が起こる危険な河川も数多く存在をしております。また、必ず出るごみ処理施設の老朽化は、既に処理能力の限界が来ており、新市の大きな課題でもありますので、県の全面的な協力が必要であり、バックアップをお願いするものであります。同時に下水道の早期整備でございますが、紀の川流域下水道整備については、環境及び都市機能の充実に向け、早期の完成を強く要望いたします。
 新市紀の川市においてはこれらの課題が山積しており、県としての指導や予算措置を早急に計画され、安全で環境に優しい地域づくりが構築できますよう新市とともに図っていただきたいと思います。
 五点目に、交通政策のあり方について警察本部長にお伺いをいたします。
 新都市の基盤整備の中に、県民の安全と財産を守ることがございます。この中で一番重要な事柄として、人の命を守る体制の整備が急がれるわけであります。昨今、犯罪発生件数は、治安を守る警察や国の法律の強化によって若干の減少に転じておりますが、重犯罪、いわゆる凶悪な犯罪が増加しつつある傾向であります。また、交通事故件数も二〇〇三年以降減ってきておりますが、死亡事故が後を絶たないこととなっております。
 交通事故の発生する原因は多岐にわたっておりますが、特に交差点内の事故が一番多いように思われます。このような中、交通体系の根本的な整備が必要であろうかと考えております。交差点内の事故発生率が高いという原因は、もちろん運転者の交通に対する認識不足も一因でありますが、信号機等の不備によるところにも大きな欠陥があるように思われてなりません。交通体系の整備、特に現在の信号機設置の現状をお伺いいたしたいと思います。
 次に、三項目めの人権先進県づくりについてお伺いをいたします。
 さて、個人が生まれながらに有する基本的人権を守る歴史は、一九四五年の七月、ポツダム宣言の訳語に人権が登場して以来、御存じのように日本国憲法第十一条並びに第九十七条に明記されました。人権が自然的権利という思想は、もともと社会契約説を背景とし、そのための国家に先立つ権利とも言われておりますが、個人が人間としてそうした自然権を持つということは、厳密には論証不可能な命題であります。その意味では、現在、憲法による権利保障にとっては、むしろ公理と見るべきであります。国連や国際社会においても人権という議論は中心的課題であります。
 今、地方分権が大きな岐路に立っておるとき、また、地方主権が叫ばれている中で、今後の地域の将来を形づくる政策が必要であります。私は、過去にも申し上げてまいりました我が和歌山県の進むべき方向として、人権先進県を目指すべきであると考えております。人が生きていく上でかかわりのある生活、労働、環境、文化、歴史などあらゆる局面において人権が存在をしておるわけであり、人間一人一人が持っている歴史、文化などを尊重するところから個人の尊厳が図られることとなり、ひいては全体的な人権の機運が高まるわけであります。いわば人権とは、あらゆる差別と偏見から解放され、人間が人間としていやされ、尊敬されて生きる基本的権利であります。
 特に和歌山県は、豊かな自然、伝統のある文化遺産の宝庫であり、人間が人間としていやされ、尊敬される魂の人権文化の先進県であります。そのことが全国に誇るべき和歌山県の和歌山県たるゆえんであり、全国に誇りを持って発信できるものであると思います。人間の尊厳のふるさと和歌山県づくりについて、知事の見解をお伺いいたします。
 次に、具体的な行政の責任についてお伺いをいたします。
 知事説明の中にもあったように、規制緩和の時代に合った行政組織のスリム化と県民サービスの向上は、もちろん推進されなければならない課題でありますが、経費最少、民益最大の目標は、まず第一に県民の人権を守るところから出発し、本当のむだをなくすところから取り組み、より具体的な予算を伴ったものでなければ意味のないものとなってしまいます。県として人権擁護に係る体制の整備と基本方針の具体化、予算についてお伺いをいたします。
 次に、まず実態調査の実施等を含め、実態の把握について御質問をいたします。このことについては、山下直也議員もさきの県議会において一般質問されておりますが、重ねて質問をいたしたいと思います。
 和歌山県では、昨年八月、人権施策基本方針が策定されましたが、これは二〇〇二年に施行された人権が尊重される社会づくり条例の具体化を目指したものであり、人権擁護の確立に向けた具体的な施策を実施するための基本方向を示したものであります。しかし、人権はこの基本方針の中でも触れられておるように、それぞれ具体的な人権の課題があり、またそれぞれの歴史や社会性及び具体的な課題があります。つまり独自性と共通性があるわけであり、そのことを見きわめる必要があります。
 特に今後、この基本方針を受けて具体的な施策といいますか実施計画を進めていくためには、条例の中でも規定されているように、それぞれの人権課題についての実態の把握が不可欠であり、新年度に計画されている同和問題に係る調査については極めて重要な意味があります。特に同和問題については地域に対する差別と地域出身者を含めた関係住民という二つの要素があり、このことを十分踏まえられることを強く要請するとともに、さまざまな他の人権課題についても引き続き実態の把握に努められるよう要望いたします。実態調査実施の考え方についてお伺いをいたします。
 最後に、昨年十二月、和歌山県議会において、多くの先輩・同僚議員の御理解を得、人権侵害救済法の意見書を採択していただきました。国に提出できましたことは、県議会の人権に対する認識があふれ出たことと深く敬意を表するところであります。国においては、こうした地方議会や多くの人権団体の思いを受け、現通常国会の場で成立を期して議論されております。この法案についてはこの場で詳細な論評は避けますが、骨子は、人権委員会という独立した人権の擁護と侵害への救済をするための機関を設置することであります。しかし、有効性や迅速性の面から見ますと極めて不十分であり、行政改革の中、地方にとりましても非常に難しいと言われております。
 こうしたことを踏まえたとき、さきに述べた人権施策基本方針の中でも言われている独自の人権擁護と侵害への救済をするための機関やシステムについて十分検討する必要がございます。国会の動向や国の人権委員会との関係について、和歌山県としての人権侵害救済法の考え方と県独自の人権委員会の設置についてお伺いをいたします。
 以上で、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの飯田敬文君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、二十一世紀型分権社会の展望と課題ということでございますが、このところ分権、分権ということで、かなり実質的にも地方の方が意見を言っていくというふうな環境ができてきたということは間違いないことだというふうに思っておりますが、しかしながら、高齢化社会が進展する中で来るべき分権社会がどんなものになるのかということの姿というものを国民にいまだ示すことができていないというふうなことの中で、十分な理解が得られるところには至っていないというふうなことを思っております。これからの課題としては、分権型社会になればどういうふうなメリットがあって、どういうことが国民の生活にプラスになってくるのか、日本の国にとってどういういいことがあるのかということを明らかにしていくことが必要であろうかというふうに思っております。
 そういうふうな中で、国、県、市町村の役割ということですが、分権型社会では、当然のことながら住民に一番身近なところの市町村というふうなものが主体になって、そしてそれを都道府県が補完し、国は本来国が行うべき仕事に特化し、これを専門的に行っていくということが日本の国のこれからの進むべき方向として望ましいのではないかというふうなことになろうかと思います。国は県や市町村に対する過度のおせっかいをやめる、県もまた市町村に対するおせっかいをやめる、そういうふうなことの中から、それぞれが本来行っていくべき仕事をちゃんと見きわめて責任を持ってやっていくということが必要かと思っています。
 とりあえず、県として、それに対してどうするのかというふうなことなんですけれども、この二月一日に和歌山県の県・市町村連絡会議というのを設置いたしました。これは、これからやっていくことについては、まだある程度五里霧中なところがあるわけですけども、権限の移譲でありますとか財源の移譲でありますとか、それから税源の確保のあり方でありますとか、お互いのコスト縮減の方向とか、いろいろな事柄について走りながら双方で考えていく、協力していくというふうなこと、そしてそれから新しいことを生み出していく会議にしていって、和歌山県内の市町村自治というふうなものの確立に向けて頑張っていきたいというふうに思っております。
 それから、合併の認識と課題、分権の受け皿になれるのかどうかとというふうなことでございます。現在、全国で大体三千二百あった市町村が、今回の合併が終わると大体二千ぐらいになる。和歌山県もほぼ同じぐらいの割合で市町村の数が減ってくるというふうなことになってこようかと思います。そしてまた、この過程の中で、合併を目指していたけれども、なかなか最終的にはうまくいかなかったというふうなところが出てきていることも事実でございます。
 いずれにしても、合併したところについては、この合併を形式的なものだけに終わらせずに、本当にその地域の発展に結びつくような形でこれを生かしていかなければならないと。例えば、南部川村と南部町はもう既に合併してみなべ町になったわけです。非常にうまくいっているというふうな話を聞いておりますけども、こういうふうなところが先行モデル事例になってよりよい形を示していくことも必要であろうかというふうに思っているところでございます。
 そしてまた、うまくいっていないところというふうなことですが、これについても、第二期の合併というふうな問題が出てまいりますので、そういうふうな中で県も十分協力しながら今後の方向を探っていきたいというふうに思っております。
 そして、今回合併していく紀の川市ということですけども、この地域は、和歌山県で人口が発展している、大阪との関係もあって非常に活力あふれる地域であるわけです。そこが今回の合併によって六町が──岩出町も市になりますから二市になるというふうなことで、環境が激変するというふうに思っているわけです。こういうふうな形になったときに、この地域の持っている潜在的な発展能力を思い切り引き出してこの地域が発展するようにしていくということが、私は和歌山県の変化にとっても非常に大きな要素であるというふうに思っておりますので、県としても大いに協力をしていきたい、このように思っております。
 次に、こういうふうになったときに振興局の仕事がどうなるのかというふうなことでございます。
 振興局のあり方については、和歌山県は地域が広いので、一気になくすとかいうふうな激論というのはなかなか難しいと思います。その地域によっては非常に大事なところがあるわけです。ただ、やっぱり合併によって状況が変わってきていることも、これはもう疑いもない事実ですので、所管区域の広域化でありますとか、それから本庁への事務の集約化、こういうふうなことを通じて、組織の簡素、効率的な体制づくりということを今鋭意検討して、近々また発表するような方向になっております。その他の地方機関につきましては、それぞれの行政管内の区域ということの変化に合わせて対応していくというふうなことになろうと思います。
 それから、今回単独で残った町村というふうなものへの取り組みということですが、単独で残ったところも、それぞれに非常に重い事情を抱えて単独で残ったというふうな事情があるわけです。これから財政面等でいろいろ歩んでいく道は厳しいと思いますけども、県としても、こういうふうなところについても十分できる限りの支援をしていきたい、このように思っております。
 それから次に、関空の二期工事で紀北と泉州の一体的な発展というふうなことでございます。
 今、一般的に祝詞のようにこういうふうなことは言われるわけですけども、しかしながらやっぱり二期工事が完成するということは、一つの大きなきっかけになると思います。特に泉佐野岩出線なんかも広くなってきているわけですし、そういう中で、泉州と紀北地域の一体的な発展ということをもう一度改めて見直すいい契機だと僕は思います。今、現にめっけもん広場なんかを見てもわかるように、非常に交流人口がふえてきている。そういう中で、近場の観光資源というふうなものにも恵まれ、緑にも恵まれ、そしてまた住環境としても非常にすぐれたもののあるこの紀北の紀の川流域地域が関空の二期工事の完成と一体となって発展するというふうな要素は僕は大いにあると思いますので、そういうふうな観点からも十分考えていきたいと思いますし、あわせて府県間道路の整備については、これは非常に重要なことだと思っておりますので、これからも力を入れてやっていきたい、このように思っております。
 最後に、人権尊重の社会づくりということでございます。
 和歌山県は、人権尊重の社会づくり条例をつくり、さらには昨年八月に人権施策の基本方針を定めていろいろな施策を進めているわけですけども、今、非常に能力主義とか、それから弱肉強食とか、そういう形での経済の回復というふうなことになっておりまして、非常にぎすぎすした社会になりつつあると。そういうふうな社会では、ともすればいろんな形での人権侵害が今までよりも起こりやすいような環境にあるというふうな基本認識を私は持っております。そういうふうな中で、こういう条例とか要綱とか、そういうふうなことのお題目だけということではなくて、実質的ないろいろな面での弱者に対する人権侵害というふうなことが起こらないように県としては力いっぱい対処していきたいと、このように考えております。
○議長(小川 武君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 道路交通体系の早期完成についてでございます。
 御指摘の各道路について、その状況を申し上げます。
 まず、京奈和自動車道につきましては、橋本道路については平成十七年度供用に向けて工事が全面展開されております。また紀北東道路につきましては、用地買収について、関係町の協力のもと、県としても全面的に支援しており、現在、かつらぎ町と那賀町域において用地買収中であり、今後、西側へ順次用地買収の展開を図ってまいります。紀北西道路につきましては、予備設計が進められております。今後ともより効果的・効率的に早期整備が図られるよう、国に対して強く要望してまいります。
 次に県道泉佐野岩出線につきましては、和歌山県側は現在用地買収率九八%で、昨年十二月に新風吹トンネルの掘削に着手し、事業の促進を図っております。大阪府側につきましては、平成十四年十一月に金熊寺バイパスが暫定供用され、現在残る区間の用地買収と工事が進められております。
 また、県道和泉佐野打田線につきましては、和歌山県側は既に用地買収を完了しており、工事も府県境から百メートル間を残してすべて改良済みの状況であります。しかしながら大阪府側では、府県境部の大木工区で公図訂正作業が難航していると聞いております。大阪府においても鋭意努力していただいておりますが、公図訂正を早期に完了し、本格的に事業が進められるよう、今後とも阪和開発連絡協議会等の場で強く府に対し働きかけてまいります。
 その他、周辺県道の整備状況につきましては、県道粉河加太線の岩出町山地内から和歌山市中筋日延地内間の延長一・三キロにつきまして、長年懸案であった用地問題も解決し、三月七日、昨日でございますが、供用したところでございます。また、県道西川原粉河線の中ノ歳地内から猪垣地内間について、平成十三年度より事業着手し、現在、用地買収率四二%と事業進捗を図っております。県道かつらぎ桃山線の黒川峠につきましては、特に交通の支障となる箇所の現道対策を検討してまいります。
 次に、都市基盤についてでございます。
 新市紀の川市の設置が進められている那賀五町における安全で環境に優しい都市基盤を形成するための県管理河川の改修につきましては、現在、新しい市の建設計画にも位置づけられている春日川の改修に重点的に取り組んでいるところでございます。直轄管理区間、上流端から支川森川合流点までの延長三・八キロのうち、下流から藤崎井用水横断部までの一・七キロの区間は改修済みであり、引き続き上流に向け、築堤、護岸等の工事を実施してまいります。また、近年の流域における開発に伴う流出形態の変化が見られる烏子川においても、流下能力の増大を図るべく、下流側より順次河川拡幅、護岸等の整備を進めているところでございます。これらの河川につきましては、引き続き計画的な整備を進めてまいります。
 その他の河川につきましても、治水機能の確保、河川環境の保全を図るため、護岸の修繕、河床のしゅんせつ、除草等、適切な維持管理に努めているところでございます。今後とも流域の開発状況や浸水被害の状況等を勘案し、広域的な観点から重要度、優先度を判断しながら効率的・効果的な河川改修に取り組んでまいります。
 以上です。
○議長(小川 武君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 臨空・都市近郊型農業への展開と農業委員会や農協の役割、改良普及センターの整備についてでございますが、新市の地域におきましても農業振興は大きな課題であり、議員御指摘のとおり、これからは農業は生産だけではなく、加工や観光、体験などを含めた独自産業への展開が重要と存じます。
 紀の川流域は、大阪泉南地方に隣接し、関西国際空港にも近いことから、都市近郊型農業を進める地域として位置づけ、観光部門と連携し、都市部からの人口流動を図っているところでございます。そして、こうした取り組みが当地域の農業版緑の雇用と言えるものではないかと考えてございます。
 今後、当地域で生産が拡大している有機農産物を初めとした新鮮で安全な和歌山ブランド農産物の生産、消費拡大を進める中、JAや市町村、振興局などが参画している那賀郡農業体験観光推進協議会や農業委員会と連携を図りながら、遊休農地の活用や農地の集約を推進することとしてございます。また、高度技術の普及、意欲的な担い手の育成はもとより、地域農業のコーディネーターとして地域により密着し、かつ効率的な普及活動に取り組むため普及センター組織を見直し、体験農園を初めとする多彩な都市近郊型農業の取り組みを支援してまいりたいと考えてございます。
○議長(小川 武君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 人権先進県づくりについての三点についてお答えを申し上げます。
 まず、体制の整備につきましては、企画部に人権局を設置するとともに、人権施策の推進を図るための全庁組織であります人権施策推進協議会の設置とか、あるいは各部局の課や室に人権同和施策推進員を配置するなど、人権施策推進体制を整えてまいりました。これらが核となりまして、昨年八月に策定いたしました和歌山県人権施策基本方針にうたわれております事項をより具体的に着実に、すなわち人権の視点に立った行政をさらに全庁的に、あらゆる人権侵害を許さない、そういう強い意思で推進してまいります。
 そういったことも踏まえまして、平成十七年度から人権課題の克服、市町村との連携、NPO等との協働といった新たな事業について取り組みをいたします。また、人権啓発センターのさらなる充実強化など、すべての人の人権が尊重されるふるさと和歌山県づくりに積極的に取り組んでまいります。
 人権尊重の社会づくり条例では、「人権施策の推進に当たっては、人権に関する実態の把握に努める」と定められているところであります。人権施策基本方針を具体化していく上で、実態の把握のための調査が必要と考えております。そのため、平成十七年度予算においては、同和問題を初め、さまざまな人権課題の現況を調査するための予算を計上させていただいております。今後、その方法、内容等を十分検討し、効果的な調査を実施してまいりたいと考えております。
 平成十五年十月に廃案になりました人権擁護法案につきましては、政府・与党は一部修正して本年の通常国会へ再提出することを決定したというふうに聞いております。県といたしましても、実効ある救済制度としての人権擁護法の一日も早い成立を期待しております。
 議員御質問の委員会の設置についてでございますが、この法律の状況を見守りながら、人権侵害に対する救済手法や組織体制など、被害者の視点に立った、より有効な救済のあり方について検討してまいります。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 警察本部長宮内 勝君。
  〔宮内 勝君、登壇〕
○警察本部長(宮内 勝君) 交通体系の整備、特に信号機設置についてお答えいたします。
 交通信号機は、現在県下で一千五百五十九カ所に設置しており、毎年二十基程度を新設しております。交通信号機設置に対する県民の皆様からの要望も約三百カ所を数えており、警察としましては、交通の安全と円滑を図るため、今後も信号機を設置していく必要があると考えております。新設に当たっては、毎年新設できる基数が限られることから、交通事故の危険性、交通量、道路状況、通学路等の交通環境等を勘案の上、必要性、緊急性の高いところから計画的に整備しております。
 今後も、地域の交通実態の変化を踏まえ、交通信号機の新設、改良等、必要な安全施設の充実に努めてまいる所存であります。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十一番飯田敬文君。
○飯田敬文君 御答弁いただきました。一点だけ要望を申し上げたいと思います。
 これからの分権型社会の実現に向けて、第一次の市町村合併は終わりましたが、地方が責任を持って自己決定していくという社会が今求められておるわけでありまして、これからは市町村の激烈な競争社会に入っていくんではないかという感がいたしておるわけでございます。これは、各都府県も一緒だろうと思います。そういう意味で、今度、第二次合併等、さまざまな受け皿社会としての取り組みが真剣にこれからは求められてくるというふうに思うわけでございます。
 先ほど知事からも、県及び市町村連携会議を立ち上げていくんだと、こういう答弁をいただきまして、こうした流れを踏まえて、第一次合併の教訓を踏まえてこの分権社会に耐え得る、そういう県の強力な指導性を強くお願いをするものでございます。
 また私は、県議会としても県会議員としても、この応分の責任は負わなければならない必要があるというふうに思っておるわけでございまして、この会議、あるいはこの会議に県議会の代表を送るとか、あるいはそれぞれの市町村の合併において県会議員が果たす役割を一定の組織の中で意見が言えるような場をひとつつくっていただいて、反映できるような形でこれからの社会を築いていかなければ大きな禍根を残すんじゃないかと、このように思うわけでございまして、そういうことで、そういったことをひとつ知事の頭の中に入れていただきまして、強く要望を申し上げまして質問にかえさせていただきます。ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で飯田敬文君の質問が終了いたしました。

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