平成16年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(浅井修一郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時二分開議
○議長(小川 武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第百三十四号から議案第百六十九号まで、並びに知事専決処分報告報第十四号から報第十九号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 十番浅井修一郎君。
  〔浅井修一郎君、登壇〕(拍手)
○浅井修一郎君 皆さん、おはようございます。
 本日、一般質問二日目のトップバッターとして、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問をさせていただきます。
 それでは、第一点目の有田川の防災対策の一環としてのしゅんせつについてお伺いいたします。
 まず、さきの台風二十三号による大水害や新潟中越地震で被災され、亡くなられた多くの方々に心からお見舞いと哀悼の誠をささげます。
 さて、本年は例年に比べて数多くの台風が上陸するといった異常気象に見舞われた一年でもありました。本県にも被害をもたらした六月の台風六号による災害を皮切りに、七月の新潟、福島及び福井における集中豪雨災害、七月末から八月、九月にかけての台風十号、十一号、十五号、十六号、十八号、二十一号と相次ぐ台風の上陸による災害、さらに十月に入っても、台風二十二号、京都、兵庫県の日本海側に甚大な被害をもたらした台風二十三号による災害と、風水害による災害が相次いでいます。台風の日本への上陸回数は十回と、昨年までの最多上陸数六回を大きく更新しています。さらに、十二月五日未明には、台風二十七号の影響を受けた、いわゆる爆弾低気圧による集中豪雨災害も発生しています。特に、私は台風二十三号で大きな被害の出た兵庫県豊岡市の円山川や、その支流の出石川の堤防が決壊し、濁流が住宅街に流れ込んだ模様がテレビのニュースで克明に放映されるといった大変な状況に驚きを覚えた上、私が幼少の昭和二十八年、有田川を初めとする多くの河川が決壊し、死者、行方不明者千四十六名が出た七・一八災害を思い浮かべました。
 このような状況の中、和歌山県では一年間に十一回もの水防配備体制が発令され、その都度厳重な警戒態勢がとられました。幸いにも、新潟や兵庫などのような甚大な被害の発生は免れたところですが、平日・休日、早朝・深夜を問わず、河川の警戒監視などの業務に当たられた水防関係者の皆様の御尽力に深く敬意をあらわす次第であります。有田川を管理する有田振興局においても五回の水防配備体制が発令され、十月の台風二十三号では、警戒水位を上回る出水に見舞われ、有田川洪水予報も発令されましたが、幸い破堤等の甚大な被害の発生には至りませんでした。
 有田川の防災整備等の対策につきましては、昨年の九月議会でも取り上げ、木村知事、酒井県土整備部長から前向きな答弁をいただきました。その中でも、保田橋周辺の雑木等の伐採を要請したところ、県当局の速やかなる取り組みが功を奏し、さきの大雨の際には、ふるさとの川総合運動公園では大規模な冠水は免れ、被害も以前より少なく済んだと聞いております。しかしながら、有田市を中心とした下流域では年々土砂が堆積してきているとの指摘も市民から数多く寄せられています。
 そのような中、今月三日には、私の地元有田市の連合自治会長の児嶋實男氏を初め、役員、それに有田市役所幹部職員ら一行が県の加藤河川局長を訪れ、木村知事あての有田川しゅんせつ工事に関する陳情を行いました。本来なら堤防全体の整備をお願いしたいところでありますが、近年の財政状況をかんがみますと短期間で整備を願うことは無理な要望であるとのことから、河積を広げ流下能力の増加を図り、各堤防への負担を余りかけないための対策の一つの手段として、今回のしゅんせつについての陳情であります。
 その内容は、「近年、土砂の堆積によって河床が上昇して河川の対応能力が低下し、各堤防への負担が増加するとともに、周辺地域の排水能力も低下しております。台風二十三号の際には、警戒水位を超える水位の上昇により堤防決壊の危険を身近に感じたところであり、県知事におかれましては、実情を御賢察の上、有田川本来の機能回復に向け、しゅんせつ工事等が早期に実現されますよう、よろしくお取り計らいのほどお願い申し上げます」というものであります。地球の温暖化現象等によって近年異常気象が続き、局地的な集中豪雨が相次ぐ中、有田川沿線の住民は、過去の七・一八水害が脳裏に焼きついていて、今も強い不安を隠し切れずに日々を送っているのが現実であります。
 次に、有田川を有効かつ適正に利用推進しようと、河口や下流域にマリーナ整備が計画、検討されています。この計画は県内の河川では初めての事業で、各方面から注目を集めています。現在、有田川河口には百三十から百四十隻のプレジャーボートが不法係留をされており、これらへの対策の解決のみならず、河川の安全な流下、それに、近く起こり得ると言われております東南海・南海地震による津波への対策の観点からも、マリーナ整備計画は大きな役割を果たそうとしております。
 それが、ことし一月になって、このマリーナの整備候補地周辺が環境省指定の重要湿地であるとの指摘がなされ、県では当初の計画を見直しているところであります。この重要湿地は湿地の保全を目的に選定されたもので、法的な開発規制はありません。河口には、我が国でも珍しい巻き貝の一つのコゲツノブエやハクセンシオマネキなどの貴重な干潟底生動物が数多く生息していることがことし春の県の調査で改めて確認されたと聞いており、また秋には二回目の調査が行われ、その結果を取りまとめているところであるとのことでありますが、その概要についてもお尋ねをいたします。
 人がすばらしいふるさとの風土、環境のもとで魚釣りや潮干狩りなど水と親しくかかわっていくことや、自然環境の保全、自然との共生といった点は大変大切なことであります。しかしながら、そのために河口付近の景観の保全や改善、有田川流域の住民の生命や財産が脅かされては元も子もありません。
 そこで、知事にお尋ねいたします。
 河川事業の重要性について、どのように認識され、今後どのような対応をされていくおつもりでしょうか。また、有田川のしゅんせつについての取り組みとプレジャーボート対策について、県土整備部長にお尋ねいたします。
 次に、名実ともに日本一のミカンを目指して、有田ミカンについて質問させていただきます。
 私の地元有田市では、あたり一面山々は黄金色に輝き、文字どおりオレンジ色一色となっています。有田市役所のみかん農政課には「味と歴史は日本一、有田みかん」というスローガンが掲げられています。この有田ミカンを中心とする県内産のミカンの予想収穫量が日本一になると、先般、農水省より発表されました。府県別では、本県が十七万四千トンで、長らく日本一だった愛媛県が台風の影響で十七万一千五百トンと、わずかの差で日本一となるものです。この日本一になったのは愛媛県が災害によって収穫量が減少したもので、今後も和歌山が日本一になるといった裏づけはありません。
 そこで、真の日本一になるにはどうしたらよいかであります。関係者に話を聞いたところ、まず販路の開拓であります。愛媛や熊本などの場合は東京を中心とした人口の多い首都圏での販路を開拓している反面、有田ミカンを中心とした本県産は京阪神が主な市場であります。京阪神地方なら輸送等に手間がかからないほか、得意先が身近なところに確保できており、しかも有田ミカンは、日本一の味を誇っている有田ミカンといったブランド力の上にあぐらをかいて長年販売に当たってきたことも事実であります。その間に、愛媛や熊本県では八〇%以上という共選体制を確立させたり、ミカンの糖度や大きさ等を光センサーで選別する最新鋭の自動選別機を本県よりもいち早く導入するなど、首都圏の大型スーパーなどが大量注文をしてきてもすぐに対応できる販売システムを構築しています。
 そこで、本県では、ブランド推進局を中心に、イトーヨーカ堂等、大手量販店などに対し積極的な販路拡大をお図りいただいているところでありますが、今後さらに県や農協、地元の生産者とが一体になった共販体制の確立と強化が必要であります。全国のミカン収穫量は、一九七九年のピーク時の三百六十一万トン余りに比べ、近年は三分の一以下に落ち込んでいます。これは、傷物や変形したものなど市場が嫌う傾向にあり、ジュース等の加工に回されているケースもありますが、全体としては大きく落ち込んでいます。四百年の歴史を持つ有田ミカンの関係者らは、今後も品質や収穫量と名実ともに日本一の有田ミカンの復活に向け、さまざまな取り組みを行っています。
 そこで、首都圏などの市場での競争に勝つためにはどうしたらよいかであります。これまでは、愛媛産などに対抗するためにコスト削減等を中心に取り組んできた一面もありますが、これから最も大切なのは、消費者のニーズの動向をいかにつかむかであります。ミカンを販売している青果店などに聞きますと、最近は少子高齢化が進み、老夫婦の二人暮らし家庭や核家族化で、従来のような十キロ入りミカンを贈ってもすぐに腐らせてしまうので五キロ入りや三キロ入りのミカンがよく売れる傾向にあることや、光センサーで糖度が表示されていることや、おしゃれな箱に入ったミカンを好む若い世代も多く見られるということであります。また、いいミカンは傷みが早いと言われています。特に、普通温州ミカンに比べてわせ温州ミカンは、皮も薄く袋もやわらかいので出荷してから十日から二週間のうちに食べてもらわないと腐り始めるとされています。
 そこで、県におかれましては、さきの消費者のニーズを的確にとらえていただくためにも、農林水産部はもちろんのこと、ブランド推進局、それに県工業技術センターなど関係機関が一体となって、腐りにくいなど工夫を凝らしたミカン箱の開発に取り組まれるなどして他府県との競争に打ち勝ち、首都圏等での販路拡大に当たられてはいかがでしょうか。
 このほか、昨年度から県の補助が打ち切られている光センサー方式の選果機や台風対策のための防風ネット設置等、補助事業の見直しやマルチ栽培などの新技術に対する積極支援、それに田口早生やゆら早生など高品質種への改植事業の推進など、日本一に向けてのさまざまな取り組みがあります。
 さらに、木村知事は先月下旬、吉備町にある大型で最新鋭の設備を持つJAありだのAQ選果場を訪れ、ミカン農家の担い手の青年らとこれからのミカン農業についてふれあい未来づくりトークを行いました。その中で知事は、和歌山のミカンが日本一になったのを契機に、より積極的な動きを行ってはどうかと話されたと聞いています。私もこれに共感した次第であります。このたびの生産量日本一は、他県の台風被害による収穫量の減少によるものであります。そこで、この日本一をいま一度真摯に受けとめ、この機会を契機に、今後さらに県やJA、生産者が連携を密にし、災害に強い消費者ニーズに合った高品質ミカンを生産し、国内はもとより中国等、海外に向けての販路を広げるべく、より一層の御努力を積み重ねていただきますよう願うものでございます。
 そこで、知事に、真の日本一を目指すことについての御感想と抱負をお伺いします。また、消費者ニーズを的確にとらえるための県当局の取り組みについてお尋ねいたします。
 次に、地域病院の医師不足について質問をします。
 本年四月から新しい医師臨床研修制度が開始されました。四月の毎日新聞に、制度開始に伴い医師不足に拍車がかかっているという記事が掲載されておりました。この医師臨床研修制度とは、昔インターン制度というものがありましたが、それの変化したもので、大学卒業後、国家試験に合格して医師免許を取得した後に、医師としての経験を積むために二年間の臨床研修を受け、患者を診るための経験を積みます。これが臨床研修制度のあらましであります。
 医療は日進月歩しています。また、我が国は高齢化社会を迎え、複数の疾患を抱える患者が増加しています。その中で、専門分野にかかわらず、日常よく遭遇する医学・医療の問題にきちんと対応できる医師、また患者と良好な関係を築ける医師が求められています。これまでの臨床研修は、研修医が研修に専念できる環境になく、また研修内容も専門とする診療科中心であることなど、求められる医師の養成に対応できていないと指摘されてきました。こうした状況の中、研修に専念できる体制を整え、プライマリーケアの習得を目的に、内科、外科等の診療科において一定の必要な経験を積む新しい臨床研修制度が開始されたようです。
 その一方で、大学病院の医局員の確保や研修医への指導体制充実のため、これまでのように大学から地域の病院に医師が派遣されなくなり、地域の病院で混乱が発生していると記事の中で説明されておりました。私の地元にある有田市立病院においても、内科医師が五月に一名退職し、来年三月にも退職者が出ることになっているようですが、その補充のめどが立っていない状況にあります。そのため、夜間、内科系・外科系二名体制で診療に当たっていたのが一名体制になるなど、大きな影響が出ております。
 また、新しい臨床研修制度開始にあわせて研修医が研修病院を自由に選択できるマッチング制度も導入され、全国の研修病院が同じ土俵の上で研修医を確保する競争状況に置かれるようになりました。二回のマッチング結果を見れば、研修医はプライマリーケアの習得に有利で研修実績を有する東京、大阪等の都市部の有名病院に集中し、和歌山などの地方の病院が敬遠されているところであります。将来の和歌山の医療を担う研修医が確保できなければ和歌山の医療が今後どうなっていくのか、大変危惧をしているところであります。医師臨床研修制度そのものはよい制度であるとしても、研修医が都市部へ集中するのを緩和するため、制度の見直しを求めていくことも必要ではないでしょうか。
 医師の過不足の状況を示す指数に、人口十万人当たり医師数というものがあります。和歌山県は全国平均を上回る十三番目で、医師不足の状況にないそうです。しかしながら、医師は和歌山市に集中し、そのほかの地域はそうでもないようで、病院協会が実施した県内の公的病院のアンケート調査によれば、多くの病院で有田市立病院と同様に一部医師が不足していると回答しております。こうした公的病院は、従来から関連する大学からの医師派遣に依存してきたところでありますが、医師の専門、都会志向が強くなっていることや新臨床研修制度等の開始等もあって、こういった状況になっているようです。さまざまな制約がある自治体病院では、医師給与を高額にして公募する方法等も困難で、医師確保のため行えることは限られております。どうしても大学からの派遣に依存せざるを得ない状況にあります。
 そこで、福祉保健部長に質問いたします。
 将来の和歌山の医療を担う臨床研修医をどのように確保していこうとしているのか、また地域の自治体病院の医師不足の状況にどのように対応されようとしているのか、お考えをお聞かせいただきたい。
 また、医師不足などの課題を抱えている中で、今後の病院経営と地域医療への貢献という観点から、新たな方向性を見出す必要があると考えております。有田市立病院は、有田保健医療圏域の基幹病院であり、災害拠点病院にも指定されるなど、有田地域の中核的な医療機関としての地位を確立しているところであります。特に、医師不足を補うためには地域の開業医の方々と病床を共同利用する開放病床の整備などが有効であり、そのためにも地域医療支援病院の承認を受けることも一つの方策ではないかと考えますが、その前に、患者紹介率を初めとするさまざまな承認要件が必要になると聞いております。
 つきましては、地域の実情に応じた地域医療支援病院の新たな制度がぜひとも必要であり、県当局としても国に対し承認要件の緩和について要望していただきたいと考えます。福祉保健部長の見解を求めます。
 次に、中学校に配置されておりますスクールカウンセラーについてお尋ねします。
 文部科学省補助事業として、平成十三年度から十七年度にかけて小規模校を除くすべての中学校にスクールカウンセラーを配置することを目標としています。本年六月、長崎県佐世保市の小学校において、六年生女児が同級生女児をカッターナイフで切りつけ死亡させるという痛ましい深刻な事件が発生しました。また先日は、奈良県でも女児の誘拐殺人事件が発生しており、さらに新潟中越地震に被災した子供たちの心を支える学校の取り組みも報道されておりました。
 不登校やいじめだけでなく、非行、虐待、キレる子、閉じこもり、家庭内暴力等々、子供に関する問題が後を絶たず、非常に大きな社会的な課題となっている現況であります。スクールカウンセラーは、このような問題に対し、児童生徒へのカウンセリングやカウンセリングに関する教職員及び保護者に対する助言・援助や情報収集・提供を業務とし、問題解決に当たっています。本県における不登校児童生徒数はここ数年減少傾向にあるものの、平成十五年度は小学校で二百八十二名、中学校では千三十一名、計千三百十三名もあり、比率では全国四十七都道府県中ワースト第六位であり、依然として憂慮すべき問題であります。また、いじめに関しても、昨年度は減少しておりますが、ここ数年ほぼ横ばい状況であり、今後もいじめ解消への取り組みを進めていかなければならないと考えています。
 こうしたことから、専門的な知識や技能を持つ人材の活用が必要であり、臨床心理士の資格を持つスクールカウンセラーを中学校に数多く配置することは有効な方策であると考えます。しかし、県内の中学校のスクールカウンセラーの配置率は三三・五%と、全国平均と比べても低い状況であり、県内のみならず近県に在住する臨床心理士及びスクールカウンセラーに準ずる者を有効に活用することが重要であると考えます。
 そこで、今後スクールカウンセラーの配置についてどのようなお考えか、教育長にお伺いいたします。
 また、さきのスクールカウンセラーとともに、学校における教育相談において県教育委員会教育研修センターの心の教育相談事業がありますが、このことについてお尋ねいたします。
 現在、本県における学校教育相談は、俗にスーパーバイザー方式と呼ばれ、相談をする中心は学校担任を初めとする学校教職員であるという他県にない方式をとり、他県からは和歌山方式と呼ばれ、注目をされているように聞いております。この和歌山方式は、相談児童生徒やその保護者だけを相談の対象としているのではなく、あくまで学級担任を初めとする学校教職員をその対象としているところが特徴であります。それによって、相談者である学校教職員は、児童生徒の不登校等の改善だけでなく、その相談を通して教職員自身も不登校やいじめについてや子供の心について研修しております。
 心の教育が叫ばれている現在、教職員の心の教育について、研究と教職員自身の研修が大変重要であります。このことを考えても、和歌山方式と呼ばれる本県の教育相談事業は、不登校等の解決だけでなく、前段で申し上げました、いつ発生するかわからない事件や事故、災害に対して、児童生徒の心のケアを自校が自力で初期対応ができるといった体制づくりのための教職員の研修の場として大きな役割を果たしてきたと思うのであります。スクールカウンセラーの高設置率とともに、さらなる本県の心の教育相談事業の充実はもとより、本県教育相談事業の中心として直接教職員の相談を受けている教育相談主事とスクールカウンセラーの連携及び教職員の心の教育についてのより一層の研修が重要であると思うのであります。そのことについてどのようにお考えか、教育長にあわせてお伺いいたします。
 以上で、第一回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの浅井修一郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、水害、治水の重要性、そしてまた有田川のしゅんせつ、堤防の改修等の必要性についての御質問でございます。
 今、ともすれば、公共事業不要論というふうなことから、特に治山とか治水とか、こういうふうな事業についていろいろなことが言われている状況でありますけれども、今回の台風、そして集中豪雨、こういうふうなことの被害を目の当たりにしたときに、この治水ということの重要性というふうなことを改めて国民全体が感得したのではないかというふうに私は思っております。私自身も、先般、福井県へ行きまして、集中豪雨で鉄橋が三つ落ちたところの現場を、これは自分で私的に行ったんですけども、見てきました。本当に水の威力というふうなものは想像を絶するものがありますし、そしてまた堤防決壊によって浸水に遭った家というのが、完全に崩壊した家よりもまだ始末に悪いと。要するに、壁とかそういうふうなところが水を吸い込んでしまって、もういっそつぶれてくれた方が簡単に言えば補償とかいろんなものが出るけれども、浸水だったので出ないというふうなちょっと皮肉な話があるほどに、この治水の問題というのは大きな問題だというふうに思っております。
 和歌山県でも、この有田川、二十八年の水害という非常に大きな被害があったわけですけれども、確かに今、底が浅くなってきたり、いろいろなことがあって、水害に見舞われる可能性が高まっているという御指摘もありましたので、十分検討して前向きな対応をしていきたいと、このように思っております。
 それから、ミカンのお話です。
 私、実はこの間、JAありだの選果場へ行ってまいりまして、非常に感心しました。もう光センサーといっても、ただ単に一カ所から光を当てるんじゃなくて六カ所ぐらいから光を当てて、そして、それによって質を見て、ベルトコンベヤーでコンピューター管理で必要な等級のところへ落ちていくと、こういうふうな形。そしてまた、生産者がわかるような、いつ出荷したかというような、トレーサビリティーというか、そういうものが確立された仕組み。やはりこういうふうな形で品質の高いものを出していかないと、なかなか都会の消費者というふうなものにはマッチしないのかなと。そして、またマルチドリップ方式という新しい方式でやっているミカン、これは非常に質が高いわけですけども、こういうものもことしからその選果場へ入って出荷ができるようになったというふうな喜びの声とか聞きました。
 県の方も、以前から東京の大手の量販店なんかへ販売を拡大するとか、それから、マルチドリップ方式等の売り方等についていろいろ相談に応じたり支援するとかいうふうなことをやってきたわけですけれども、ここはひとつ、この間の話では三十五年ぶりに日本一だという話だったんだけど、よく聞いてみると三十五年前になっていたのは静岡県で和歌山県が日本一になったのは有史以来初めてということですので、まあ、敵失というか、よその県のある意味では不幸な台風の被害によってということではあるんだけども、これを大きなきっかけとして、和歌山県のミカンの再ブランド化ということに僕は挑戦していきたいと思います。
 日本一を滑り落ちた愛媛県では非常に危機感を持っているというふうな話があるんで、これは来年も日本一が続くかどうかわかりませんけども、だけど少なくとも日本一を続けるような気持ちで頑張っていきたいと思うので、私自身も先頭に立って、愛媛なんかでは相当思い切ったトップセールスみたいなことをやっているみたいなんで、こういうふうなこともやっていきたいと思いますし、それから、この日本一が確定した時期に、余りよそを刺激しないような形で日本一祭りのようなものをやっぱりしていかないと、もうひとつミカン和歌山というふうなものが、日本一になった割にはしらっと県全体がさめているというふうな感じもしないでもないので、こういうふうな問題、より積極的に取り組んでいくような方法を考えていきたい、このように考えております。
○議長(小川 武君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 有田川のしゅんせつについてでございます。
 有田川の堆積土砂の測量調査を実施したところ、堆積と洗掘が入りまじった状態であり、前回の平成十二年度測量調査結果と総量的には大きな変化はありません。しかしながら、局所的に低水流路が蛇行している区間もあることから、今後より安全な洪水の流下が図られるよう、上下流の流下能力バランスや河川環境などに配慮しながら、整備の優先順位や整備の手法も含めた対応について、関係機関とも協議しながら前向きに検討してまいりたいと考えております。
 次に、プレジャーボート対策でございます。
 河川事業を実施するに際しましては、洪水や地震・津波対策といった自然災害から流域住民の生命、財産を守る防災面での対応が最優先されるのは当然のことですが、整備を進めるに当たっては、動植物の生息、育成を初めとする河川環境面にも可能な限り配慮していくことが重要であると認識しております。
 有田川においては、係留施設整備の検討に関連して汽水域における環境調査を実施していますが、当初検討していた有田川左岸の有田大橋から安諦橋間には、コゲツノブエを初め多くの貴重な底生動物が生息していることが確認されており、当該区域における施設整備にはなお慎重な検討が必要であると認識しているところです。
 今後、早急に環境調査結果の取りまとめを行うとともに、その結果や地元住民の方、学識者の意見なども踏まえながら、不法係留船対策の進め方について、さらに検討してまいりたいと考えております。
○議長(小川 武君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 消費者のニーズを的確にとらえたミカン対策についてでございますが、議員御指摘のとおり、最近の消費者ニーズは、安全・安心への関心の高まり、少子高齢化や核家族化による購入量の減少など、大きく変化してございます。そのため、県におきましては、多様なニーズの変化に迅速に対応するため、全国百七十二市場で構成する青果物流通消費情報協議会を通じまして、安全・安心を初め、糖度などの食味や品質などに対するより詳細な情報収集に努めるとともに、関係機関に速やかに伝達し、活用いただいているところでございます。
 また、消費者の安全・安心志向を踏まえ、生産情報の記録や伝達を行うトレーサビリティーシステムを推進するため、ミカンを初め、主要果実の選果場において情報機器の整備に取り組みつつあります。さらに、規制緩和の中で多様な流通ニーズに対応できるよう、昨年六月に出荷規格に関する県条例の廃止を行い、現在、出荷団体におきましては、容器サイズやデザイン等が工夫され、地域の特性を生かした新たな販売への取り組みが始まってございます。
 今後とも関係部局と連携を図りながら、生産者団体と一体となって消費者ニーズに対応した産地づくりを推進するとともに、海外輸出も視野に入れた攻めの農業を積極的に展開し、名実とも日本一のミカン産地を築いてまいりたいと考えてございます。
○議長(小川 武君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 地域病院の医師不足についてお答えを申し上げます。
 まず、これからの県内医療を担う臨床研修医の確保につきましては、今年度から始まりました新しい臨床研修制度におきまして県内研修医が募集定員の六割にとどまっていることから、将来の医師の確保にも影響してくることが懸念されます。こうしたことから、県といたしましては、本年三月に県立医大を初めとした県内十二の臨床研修病院、医師会、病院協会と県で和歌山県臨床研修病院連絡協議会を立ち上げまして、全国の医学部学生に対する県内研修病院のPRや魅力ある研修プログラムづくり等に関係者が一体となって取り組んでいるところでございます。また、県立医科大学におきましても、卒業生の県内定着を図るため、研修環境の整備を初めとして、さまざまな取り組みがなされているところでございます。
 しかしながら、研修医が都市部の有名病院に集中する傾向にありますので、県といたしましては、引き続き臨床研修の質の向上に努めますとともに、募集定員を地域ごとで設定すること等について国に対しても要望してまいります。
 次に公的病院の医師確保についてでございますが、医療を取り巻く環境が大きく変化する中で、地域の公的病院にとって医師の確保が大きな課題になっていると認識をしてございます。県といたしましては、派遣可能な医師の確保を初め、効果的かつ効率的な方策について、県立医大、病院協会等、関係者による協議、検討を進めてまいりたいと思います。
 次に地域医療支援病院についてでございますが、県民が身近な医療機関で安心して医療を受けるには、開放病床の共同利用など、病院といわゆるかかりつけ医との密接な連携が必要と考えております。平成九年の医療法の改正によりまして導入された地域医療支援病院は、二次保健医療圏単位で位置づけられた病院類型でございまして、地域のかかりつけ医との適切な役割分担と連携を図ることが求められており、とりわけ高い患者紹介率が要件となってございます。地域医療支援病院の整備につきましては、地域の中核病院となるための病院みずからの経営努力をお願いするとともに、承認要件の緩和について国に対し要望するなど、県としましても県内の各二次保健医療圏における整備を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育問題、二点についてお答えいたします。
 まず、スクールカウンセラーは、不登校を初め心に不安を持つ児童生徒に対するカウンセリングを行い、保護者や教員の相談に応じるなど重要な役割を果たしております。しかし、臨床心理士の資格を持つ者が県内に少ないため、十分な配置は困難な状況にありました。そうした中で、平成十四年度以降、ここ三年間に二十一校、三十五校、五十校と順次配置校を拡充してまいりました。今後も不登校生徒に対する対応やいじめ問題の解消、学校の教育相談能力の向上に果たす役割の重要性を踏まえ、配置校数を大幅に増加させるとともに、幅広い活用のあり方についても検討してまいります。
 また、議員お話しのありました和歌山方式の教育相談主事、これとスクールカウンセラーは本県教育相談の両輪であることから、緊密に連絡協議会を開催し、相互の連携強化に努めているところです。
 心の教育相談に係る研修については、教職員が相談活動の具体的な技能等を習得できるよう、毎年十日間程度、教育臨床心理学講座を実施しており、本年度は管理職を含め約五百名が参加いたしました。この講座の受講者が校内の教育相談や研修等の中心となって取り組むことにより、それぞれの学校でカウンセリングマインドを生かしたさまざまな教育活動を幅広く展開することとしております。今後もより多くの教職員が児童生徒や保護者の悩みや課題にこたえ、適切に対応できるよう研修講座を一層充実させてまいります。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十番浅井修一郎君。
○浅井修一郎君 ただいま、それぞれの質問に対し、知事初め担当部長並びに教育長より御答弁をいただきました。何点かについて再質問をさせていただきます。
 まず、有田川の河川整備についてであります。
 県土整備部長の答弁は、具体的な取り組みについて余り文言がなく、何か奥歯に物が挟まったような感じで釈然としないわけでありますけれども、しかし、自分には厳しく人には優しくと、私はこれをモットーにしておりまして、これ以上深くは申しませんが、この件につきましては、本日もごらんのとおり傍聴席の方へ市議会や自治会等、多くの皆さんが傍聴に見えられるぐらい関心が高く、地元の熱い期待が寄せられているあかしでもあります。どうか一日も早く具体的な計画を示していただき、着手していただきますよう強く要望いたします。
 二点目につきましては、地域病院の医師不足についてであります。
 今、地域の病院は、医師不足による痛手を受けまして軽症から重症へと移行している状況でありまして、早急な医師の確保といった手当てをしなければ、今後ますます重体に陥り、死亡するというふうな状況に陥るかもしれません。つまり、自治体病院の健全な運営ができず、存続すら危ぶまれるほど深刻な状況下にあります。どうか地域医療のかなめである各地域の自治体病院等に対し、和歌山県立医大はもとより、全国の医科大学や病院からの医師の確保を図るべく、制度の改正や改革、緩和について、国等への積極的な働きを要望するものでございます。
 最後に、教育問題についてでありますが、先ほどの質問の中で、平成十五年度の不登校児童生徒数の比率はワースト六位であると申しましたが、近畿の中学校におけるスクールカウンセラー等の配置率を見ますと、大阪府では、平成十五年度六〇・一八%、平成十六年度九四%、滋賀県では、平成十五年度六六・六七%、平成十六年度では八〇%、本県では、平成十五年度では二三・四%、十六年度では三三・三三%と、配置率の高い大阪府、滋賀県ともに、和歌山県よりか上位の──悪い方の上位で三位タイでございます。この配置率のはるかに低い本県がまだ不登校児童生徒の比率が低いというのは、地域性でも、たまたまでもないと思います。先ほどの県独自の心の教育相談事業、いわゆる和歌山方式の成果であると思うわけであります。
 しかしながら、今のままでよいというものではありません。かねてより私自身思っていることでありますが、直接児童生徒や保護者に接する学級担任という立場の重さであります。学級担任となれば、クラス四十人の児童生徒、そして八十人近いその保護者に対しても適切なアドバイスができるよう、カウンセリング等の技術をしっかりと身につけていただきたいと思うところであります。
 以上のような観点から、スクールカウンセラーの配置率の向上と本県心の教育相談事業の充実を図り、より一層の教育相談環境の整備拡充を強く要望いたします。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で浅井修一郎君の質問が終了いたしました。

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