平成16年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(山下大輔議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○議長(小川 武君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十六番山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 皆さん、こんにちは。
 まず、木村知事には、再選おめでとうございます。この厳しい時代に地方の首長としては単に「おめでとう」では済まない大変なことも多いとは思いますが、しかし頑張っていただきたいと思います。
 今議会の冒頭、知事の就任あいさつで「身命を賭して県政に臨む」という決意が述べられました。今の時代にはそれぐらいの気概が本当に必要なのだと思います。私もその知事の思いを少しでも自身のものとして今回も精いっぱい議会質問をさせていただきたいと思いますので、当局には誠意のある御答弁をお願いいたします。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従って質問をさせていただきます。
 今議会は三つのテーマ、和歌山の自立戦略、そして三位一体改革と財政問題、最後に貴志川線の廃線問題について議論を深める質問をさせていただきたいと思います。本日は一般質問最終日ということもあり、さきに先輩・同僚議員からも質問をされた内容と一部重複する部分もあるかとは思いますが、できるだけ視点を変えて質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、早速、和歌山の自立戦略、新たな視点を持った行政への転換について、これはアテネオリンピック・ヨット競技の御報告を兼ねた質問とさせていただきます。
 まず、今回のアテネ大会では、議会の先輩・同僚議員、また県当局の皆様からも物心両面でお支えいただきましたことを心からお礼申し上げます。皆様に応援していただいたヨット競技ですが、男子レーザー級の鈴木國央君は三十五位、女子四七〇級の吉迫・佐竹ペアは十一位という結果に終わりました。それぞれに大変残念な結果だったのですが、しかし、この和歌山・和歌浦の海からオリンピックに二チームも出場できたということは高い評価を受けています。結果は結果として厳しく受けとめながらも、今回の経験を糧としてまた次の北京に向けて体制の強化を図っていきたいと思っています。
 特に、次の中国・北京大会のヨット競技は、和歌山下津港と姉妹港である青島で開かれます。これからの四年間はヨットを通じた中国との交流もこれまで以上に盛んになると思いますので、これを和歌山の活性化にもつなげられるよう積極的に取り組んでいきたいと思っています。
 さて、今回のアテネオリンピックは、特に日本にとっては選手団の頑張りもあって非常に楽しめた大会だったのではないでしょうか。そもそも、このオリンピック大会というものの歴史を改めて勉強してみると、非常に興味深い話が幾つもあります。その中には、今の時代に新しい視点で地域経営に当たろうとする私たちにとって参考になると思われるものも数多くあります。その一例を挙げ、和歌山の自立戦略ということを考えてみたいと思います。
 一九八四年に行われたロサンゼルスオリンピックは、一セントも税金を使わずに行われた大会としてオリンピックの新たな歴史をつくったものと評価されています。それまではスタジアムの建設や環境整備などで多額の費用がかかり、開催都市は赤字続きで大きなダメージを残すのがオリンピック大会でした。そんなこともあり、一九八四年大会に立候補していたのはロスだけでした。現在のように織烈な誘致競争をしている状況にはなかったのです。
 ロサンゼルスオリンピックを大成功に導いたのは、ピーター・ユベロスという人物です。ビジネスマンとして成功をおさめていた彼が大会実行委員長に選ばれてから、さまざまな改革へのチャレンジがスタートしました。最初に彼が言ったのは、既成概念をすべて捨てようということです。全く新しい視点でオリンピックを見て、この大会自体を商品として考えようということでした。オリンピック大会はそもそも価値の高いものであるが、しかし、その真の経済的価値を高める作業がなおざりにされてきている。
 最初は、税金を使わない大会と宣言した彼に、皆、疑問を投げかけていました。そんなことはお構いなしに彼は戦略を練り、四つの柱、テレビ放映料、スポンサー協賛金、入場料収入、記念グッズの売り上げ、これですべての費用を賄うという行動目標を立てて活動を開始しました。
 テレビ放映権はそれまでの常識を超える金額を最低価格として提示、アメリカ四大ネットワークのうち一番高い金額を示したABCと約四百五十億円で契約しました。また、その放映権料も前払いとして利息を稼ぐという徹底ぶりでした。
 スポンサーは一業種一社、総数を合計で三十社に限定してロゴマーク使用の価値を高める戦略をとりました。これにより、それまでは多くのスポンサー企業が五輪マークを乱用して価値が半減してしまっている状況を一変させたのです。一業種一社、例えば飲料業界ではコカ・コーラとペプシに激しいスポンサー争いを演じさせ、これを見ていた他業種もスポンサーに次々と名乗りを上げ、高額の協賛金を集めました。
 また、ユベロスは、一般市民の聖火ランナーからも参加費用を徴収することを計画しました。聖火を運ぶのはギリシャ委員会の管轄で「聖なる火」を商品化することは許さないと猛反発を受けましたが、しかし、一緒にオリンピックをつくる一員として聖火ランナーに参加してくれる人なら資金的な協力も当然してもらうべきだとユベロスは主張し、結局、ギリシャ委員会も説得され、有料聖火ランナーも実現しました。
 大会そのものは、百四十の国と地域から六千七百九十七人の選手が集まり、史上最大規模のオリンピックとなり、大成功に終わりました。大会の決算はおよそ四百億円の黒字を出し、ユベロスはその全額をアメリカの青少年の育成とスポーツ振興に寄付することとしました。オリンピックを初めて黒字で運営したピーター・ユベロスの功績は非常に大きいとされています。その後、オリンピック開催には多くの都市が立候補するようになっています。
 「価値を生み出すのは人間の知恵である。ただあるものをそのままほうっておいてもそれは何の価値も見出さない」、ユベロスが残した言葉ですが、地域経営でも同じようなことが言えるのだと思います。人間の知恵により新たな価値が吹き込まれ、魅力ある地域が創造されていきます。和歌山には、高野・熊野の世界遺産などを初めとして、まだまだ多くの資源が眠っています。地域の自立を実現させるには、地域にあるすべての資源を商品化して価値を上げるといった視点が重要で、これがすなわち自立に向けた一つの戦略となります。
 鳥取県では、自立戦略を専門に考えるセクション「地域自立戦略課」を新設して取り組みを始めています。先日、鳥取県に行ってきました。視点を変え新たな価値を創造する鳥取県の実現を目指して、片山知事を先頭に県内のあらゆる資源、人、物、歴史といったものを商品化するという取り組みが進められています。
 その一例として、鳥取自立塾というものがあります。何名かの和歌山市議会の皆さんと一緒に今回初めて参加させていただいたのですが、そこでは改革者・片山善博を商品として二日間の研修が行われていました。知事の人脈も活用して全国から改革派といわれる政治家、行政マンも講師として招かれていたのですが、会場はあふれんばかりの大盛況で、全国から市町村議会議員、都道府県議会議員も数多く参加し、また鳥取市民の方も含め、たくさんの集客が実現していました。
 また、この事業は簡単に業者委託するのではなく、鳥取県庁の職員の皆さんが土日にもかかわらずボランティアとして参加し、宿手配の案内から会場設営まで行い、知恵を絞り、自分たちの手でイベントを成功させるといったものになっていました。こういったところからも職員の意識は変わってきていると、自立戦略課の担当者の方が説明してくれました。
 既成の概念、考え方に凝り固まることなく、とにかく知恵を絞り、すべての地域資源を価値の高いものに生まれ変わらせていくといった新たな視点を持ち、行政活動を展開していく。和歌山県でもこのような考えは県政運営を進める上でも非常に重要だと思いますが、知事はどのようにお考えになられるでしょうか。
 また、こういった点で現状の県庁の取り組みを評価して、知事の率直な感想をお聞かせください。また、今後、改善・強化していこうとする点などがありましたらお聞かせください。
 あわせて、具体的な提案を一つさせていただきたいと思います。私たちの和歌山県でも改革者として全国的に有名な木村知事がいます。失礼かもしれませんが、木村知事自体を商品化するといったことを考えてはどうでしょうか。鳥取県でもそうですが、トップリーダーを売り出す、県の貴重な商品として活用するということは、県自体のイメージをアップすることにもなりますし、さまざまに波及する効果が期待されます。民間企業でも、トップの商品化、またその活用は、企業ブランドをつくっていく上でも重要な戦略として位置づけられています。
 例えば、木村知事を目玉としてシンポジウム、セミナーなどを開催し、全国から集客を図る取り組みを検討することも一つだと思いますが、いかがでしょうか。
 また、もう少し知恵を絞って、知事は現在、全国知事会の中で道州制研究会の座長を任されていますが、これもよい材料として活用すべきだと考えます。この研究会を和歌山で行うといったことはどうでしょうか。あわせて、「道州制─地方自治を問い直す」などのテーマで勉強会を開催する。そもそも、この道州制研究会については、道州制、分権、地方自治といったことを考える会なのですから、その会議をすべて東京で行うのも芸がないと思います。地方のことを地方から考えるといった視点も大切で、ぜひ和歌山での開催を実現させていただきたいと思いますが、知事はどのようにお考えになられるでしょうか。
 続きまして、二つ目の質問として三位一体改革と財政問題について。
 この夏、知事は、選挙もあり、また地方自治の未来を左右する重要な全国知事会にも積極的に参加され、まさに東奔西走されていたようです。知事会での三位一体改革に係る取り組みについては全国ニュースでも大きく取り扱われ、ニュースステーションなどでも特集として取り上げられる中、木村知事も映っておられましたが、私も興味深く拝見させていただきました。
 この三位一体の改革、これは国任せではなく、地方の切実な問題として我々も当事者意識をしっかりと持って考えていかなくてはならないものです。そもそも、この改革には、私たちの国を分権型社会としていく、地方を自立させていくというストーリーが描かれています。昨年は、私自身もこの改革で国、地方の関係が新たに見直され、地方が自立する姿が徐々にではあるが現実のものとなっていくと喜んでいたのですが、しかしふたをあけてみると昨年のものはとんでもないものでした。昨年、三位一体改革の名のもとで行われたものは、その本来の理念をねじ曲げるもので、財源移譲は担保されぬまま、地方の自主性とは何も関係ないような補助金が削られ、その一方で地方交付税もばっさり切り捨てられる、まさに国の都合、国の財政当局の都合だけで地方財政にしわ寄せが行われたものとなっていました。これには県下の市町村も大きな影響を受け、予算編成で四苦八苦して非常に厳しい状況に追い込まれています。
 さて、今、来年度予算の編成にかかろうとするこの大切な時期に、三位一体改革の議論が改めて注目されています。この改革とセットになる財政の議論は、地方自治に大きな影響を与えます。ここで和歌山の現状を踏まえて知事のお考えを改めてお聞かせいただきたいと思います。
 この改革の初年度となる平成十六年度はその記念すべき第一歩となるべきであったにもかかわらず、ある部分では地方の自由裁量を狭める逆機能をもたらした実態があります。知事は、ここまでの三位一体改革をどのように評価されているでしょうか。
 あわせて、先月、八月十八日、十九日に行われた知事会について、知事はこの会議をどのように総括して、どういった感想を持たれているのか、またその会議を通して三位一体改革の今後の展望、どういったことに期待を寄せられているのか、率直な御意見をお聞かせ願いたいと思います。
 さて、今後、三位一体改革が進み地方の自立ということが実現していく過程では、知事の就任あいさつであったように、リセット県政、地域自立型の社会を新たに構築していくことが求められます。ただ、その実現に向けては小手先の行政対応だけでしのげるものでは決してないのだと思います。これは行政だけの問題ではなく、地域全体としてこの厳しい時代を乗り切っていく知恵が問われていて、地域住民の本格的な参画を前提とした地域運営の仕組み、新たなシステムの構築が必要となります。そこでは、県の行政自体がみずからの地域における存在の意味、存在意義を再定義しつつ、地域住民とともに役割分担の見直しを進めるという新たな和歌山県の構想づくりが急がれると私は考えます。
 そんな中、知事がこの夏の選挙で提示されたマニフェストの中で指摘されている県民自治という考えは非常に重要だと思います。改めてこの県民自治という言葉について、具体的な説明をお願いしたいと思います。
 また、さきの知事選挙で重要な位置づけを与えられていたマニフェストですが、残念ながら、それを手にとり理解していただいている県民の方はごく少数だと思います。知事の考え、県政の進もうとする方向性を多くの住民に理解してもらうことが大切だと考えますが、どのようにして県民に広め、理解してもらおうとしているのか、また、住民との協働による地域づくり、県民自治を実際に実現していくプロセスとしてどういったことをお考えになられているのか、あわせて知事のご所見を賜りたいと思います。
 次に、財政の問題について。
 まず、現状における厳しい財政状況の認識について。これまで和歌山県では多額の県債を発行してきています。二〇〇三年度普通会計の決算状況を見ても県債は昨年度より一五・七%ふえ、残高は二・八%増の六千七百九十一億円余りとなり、過去最高となっています。これは、予算規模の一・二倍、県民一人当たり老人から幼児まで約六十四万円もの借金を抱える計算となります。三位一体改革を進めて地域を自立させていくとはいっても、大変厳しい状況にあるように思います。
 そこで、まず知事はこの状況をどのように認識しておられるのか、お聞かせください。また、財政を健全化させると一言で言っても、これにはかなり大胆な取り組みが必要だと思いますが、そのポイントとして知事はどのようなことをお考えになられているのか、ご所見を賜りたいと思います。
 次に、先日、県財政課から出されたコメントでは、今後、三位一体改革の中で地方交付税や国庫支出金の先行きは不透明で、行政運営の一層の合理化、効率化が必要ということでした。これからの三位一体改革の進展次第では、平成十七年度以降の県予算がことし以上に厳しい状況に陥る可能性もあると心配されます。そんな中、財政課では県財政の抜本的改革プランとして財政構造改革プログラムといったものを作成されているようです。そこで、その中身として、例えば数値目標なども含めてあくまで実効性の高い具体的なプランとすべきだと私は考えますが、現在の取り組み状況についてお聞かせいただきたいと思います。
 また、二〇〇四年度予算で大幅に削減された地方交付税について、来年度の見通しをどのように持たれていますか。平成十六年度の状況は、三位一体改革に伴う一兆二千億円の交付税削減が昨年末に決定され、県下の市町村でも年明けに急遽基金の取り崩しを検討するなど、厳しい対応に迫られました。財務省は来年度も改革路線を堅持して地方歳出で一兆を超える削減を目指すといった意向もあるようですが、実際のところはどういった状況だと認識されていますか。
 また、あわせて市町村への対応として、県内の各市町村としても昨年の二の舞とならないような対策が必要ですが、ただ、国からの情報を得る環境などが県とは大きく違う中では市町村独自の努力にも限界があります。そこでは県としても市町村に対する何らかの対応も必要だと考えますが、現状における市町村への対応状況についてお聞かせください。
 また、例えば京都府などでは、財政の健全化に向けて府と市町村が協力し、同じテーブルに着いて協議する連絡会議、行財政連携推進会議といったものを立ち上げています。ここでは特に財政をキーワードとして情報交換、ある面では府からのアドバイス、また市町村と府との間での協力関係の模索といったことが進められています。和歌山でもこの厳しい状況下で市町村を支えていくためには、京都府のように市町村と一緒に考え協働する仕組みをつくっていくことも有効な手段だと私は考えますが、県当局として市町村との間でこういった協働の場をつくっていくことに対する御見解をお聞かせ願いたいと思います。
 さて、今回の三位一体改革は、この国の未来のためにも何としてもなし遂げなくてはならない大改革だと思いますが、しかし、今後は補助金の配分権限を持つ中央省庁の巻き返しや党、族議員の反発も必死だと言われています。そんな中、どうやってこの改革を実現させていくことができるのでしょうか。
 私は、この三位一体改革を成功に導くための唯一最高の戦略として、広く国民を味方につけることが何よりも重要なポイントだと考えます。この改革を本来の理念どおり進めるためには、今以上にもっと広い土俵でこの議論を展開させることが必要です。この和歌山でも、ニュースなどで三位一体改革といった言葉自体は耳にしている県民の方も多いとは思います。しかし、どのおばちゃん、おっちゃんに聞いても、その中身を理解している人はほとんどいないのが現実だと思います。この改革の趣旨をしっかりとわかっていただければ、必ず多くの国民が味方になってくれると思います。
 変な横やりを入れさせず、この改革を矮小化した議論にしないためにも、今が正念場だと思います。木村知事のリーダーシップでぜひ知事会などに改めて国民の理解が少ないことなどを訴えていただいて、改革の中身について議論しているだけでなく、三位一体改革の全体像を国民に周知する取り組みについて、もう一度しっかりと考えていただきたいと思います。この改革には国民的運動としていくための努力が欠かせないものと私は考えますが、知事の御所見を賜りたいと思います。
 最後の質問として、南海電鉄の貴志川線廃線問題について。
 この九月議会では、先輩の山田正彦議員、藤井健太郎議員からも熱のこもった質問が行われてきていますが、この問題については今議会、私が最終の質問者となるようですので、ぜひ当局においては、今後の協議を進展させるためにも、さらに踏み込んだ御答弁を期待して質問させていただきます。
 さて、先月八月十日、南海電鉄は正式に貴志川線の鉄道事業から撤退することを表明しました。現在の鉄道事業法では、従来の免許制とは異なり、あくまで許可制であり、事前に届け出を行えば通常であれば一年後には廃止できるものとなっています。この九月末にも届け出が出されるということで、南海貴志川線が廃線となるまで、このままいくと残された時間はあとわずかです。
 そんな中で今、多くの利用者の方から不安を打ち明けられる状況となっています。生活路線がなくなる、地域の過疎化が加速する、学校にどうやって行けばいいのか。この貴志川線は、和歌山市にある和歌山駅と貴志川町の貴志駅を結ぶ十四・三キロの路線です。駅の数は十四、そのうち和歌山市にある駅は十駅で、先日和歌山市が行った調査では多くの和歌山市民が利用しており、私自身、強い危機感を持って取り組まなくてはならない問題だと思っています。
 ただ、私はこの沿線に住む住民ではありませんので、昔遠足で行ったことがあるといったような記憶しかなく、特に最近の実態については理解が不足している状況でした。よって、廃線問題が浮上してから、夏休みの間の利用状況、また通勤・通学で混雑するこの九月の新学期が始まってからの状況などを調べるために、実際に何度か朝の始発からこの貴志川線に乗りに行ってきました。
 平日の朝は、現在も貴志川線は満員の状態で運行しています。お手元の資料をちょっと御確認いただきたいんですけれども、このパネルにしたものの縮小したものをお配りさしていただいていると思います。(パネルを示す)
 一つが、早朝、電車で通勤・通学に通う状況なんですけれども、少し驚いたのが、この写真の中にちょっと小さく写っていますけれども、小さい小学生なんかも含めて若い人が本当に多いということを感じました。また、これは和歌山駅のその電車からおりられている状況なんですけれども、本当にたくさんの通勤客がおりられている状況があり、行く前のイメージとは少し違いましたので、ちょっとでも現状の貴志川線を知っていただければと思います。
 現場では多くの利用者の生の声を聞くことができたのですが、そこでは特に若い人たち、中学生、高校生の訴えは切実なものがありました。和歌山工業に通う高校一年生の男の子は、「電車で高校に通い始めたばかりで、こんなことになるとは思ってもみなかった。もし廃線になったら、原付バイクで親戚の家まで行って自転車に乗りかえて学校に行くことになる。仕方がないけど、毎日貴志川から原付バイクで市内の親戚のところに通うのは危ないし、怖いと思う。今さら学校を変わるわけにもいかないし、悩んでいる」と打ち明けてくれました。彼は、貴志駅から毎朝電車に乗って竈山駅でおり、そこに置いてある自転車に乗って学校へ通っているそうです。若い子供たちの意見を聞く中では、現在の通学に関する不安とあわせて将来の就職、生活に関する不安も大きいと感じました。
 貴志川線に実際に乗ってみると、沿線にある向陽高校などを含め、和工、県和商など、また小中学校への通学も含めて本当に多くの子供たちがこの貴志川線を利用している状況を目の当たりにします。また、この貴志川線は、若い子供たちとあわせて高齢者、いわゆる交通弱者にとってなくてはならない路線となっています。高齢者にとっては通院、買い物などの生活路線として、平日は一日往復九十六本、土日は八十本が運行されていて、本当に重要な交通機関であり、簡単に廃線にするわけにはいかないと、実際に利用の現場を見てきて改めて実感しました。
 貴志川線は、大正三年、一九一四年に山東軽便鉄道として開業、その後、和歌山電気軌道との合併を経て一九六一年から現在の南海が経営する貴志川線となっています。貴志川線の経営状況を見てみると、確かに厳しいものとなっているようです。
 先日、大阪の南海電鉄の本社にも行き、直接話を伺ってきました。南海の鉄道事業の統括本部長である兜常務取締役と御面談をいただき、一時間半ほどの時間をかけて現在の南海電鉄本体の実態、貴志川線の置かれている状況など具体的な説明を受けたのですが、結局、「南海本体としてもこれまで賃金カットやホテルの売却など事業見直しを行い、あわせて貴志川線単体としても経営改善を図る努力をしてきたが、毎年約五億円、累積で七十億円以上の赤字が出ているこの貴志川線をこれ以上放置しておくことは経営上許されない状況となっている。特に企業の格付会社などからの厳しい指摘も受けていて、どうしようもなくなった。本音を言って鉄道マンとしてはレールをはがすということはたまらないものであり、感情論では残したいのはやまやまではあるが、株式会社としては当然株主に責任を負うものであり、これ以上南海電鉄として貴志川線を存続させることは不可能だ」ということでした。
 ただし、南海ではなく事業主体が変わって今の資産を引き継ぎ、初期投資を最低限に抑えてやっていくのであれば鉄道事業としての存続は可能ではないかといった見方を示されていました。南海が事業を行うとなると大手私鉄といった姿勢が問われ、中小私鉄が経営する以上に大きなコスト負担が発生する。もし単にこの路線を確保するためだけの最低限のコストをはじくと経営が成り立つ可能性はあるのではないかといったことを話されていました。
 ここで、もう一つ、少しお手元の資料を見ていただきたいのですが、これは伊藤雅博士──鉄道関連を専門で御研究されている先生ですけれども──のリポートで、南海貴志川線の廃線問題を受けて、その状況を分析していただいたものです。全国で貴志川線と同規模の二十路線を調査して比較・分析したレポートの一部で、まだ何ページかの分析説明のページがあるのですが、とりあえずまとめの部分だけをお配りしています。
 詳細の説明は避けますが、そこにも書かれているように、経営努力は必要ではあるが、利用実態から見ても廃線にするような路線ではなく、民間の鉄道事業として経営が成り立つ可能性が決して少なくない。伊藤先生は、この貴志川線の場合、鉄道をなくすデメリットが大き過ぎると心配されています。
 さて、鉄道事業として存続させるには、鉄道運営と関連施設の管理を分ける上下分離方式の採用、また地域のサポートとして駅掃除、切符のもぎりといった駅管理に係る協力体制の確立など、さまざまな知恵を絞る必要は当然あります。また、市、町、県、国といったそれぞれができる範囲で協力し、あわせて何といっても地域住民の積極的なかかわりも必要とされますが、それらの環境が整うとするならば鉄道事業の存続は十分に可能だと私自身は思っています。先日の和歌山市議会では大橋市長が鉄道存続に向けて精いっぱい努力するといった決意を表明されていましたが、この問題に関して地元自治体の取り組みとあわせて県の対応が今後の展開には大きく影響するものとなります。
 そこで、貴志川線廃線問題に関しての県の基本姿勢について幾つかお尋ねをいたします。
 まず最初に、この貴志川線の経営に関しては、私自身もいろいろ調べてみたのですが、まだまだわからない部分があります。特に財務内容については、貴志川線だけをとってのバランスシートがないので実際にはよくわかりません。この財務状況を分析し明らかにしない限り、民間の経営先を探すにしても、話は前に進みません。県としてこれまで貴志川線単体での経営実態、財務状況について分析されてきているように伺っていますが、その中身についてお聞かせいただきたいと思います。
 また、その分析の中で民間で経営が成り立つ可能性をどのように考えておられるのか、またそのためにはどういった条件が必要と考えられるか、お聞かせください。
 先日、九月七日に貴志川町でこの廃線問題に関するシンポジウムがありました。私も出席していたのですが、その中で国土交通省鉄道局・大口官房審議官の講演があり、地方鉄道の事業に対する国の支援策の説明がありました。この国の制度、近代化補助並びに運営費補助などは今回の貴志川線存続ではぜひ利用すべきだと考えます。この国の制度の活用に関して現時点での見通しはどうか、また制度活用が難しいとすればどういったところがネックになっているのか、お伺いします。
 また、この貴志川線を引き継いで事業を継続させるとして、どこが経営主体になるにしても、初期投資をできるだけ抑えることがポイントとなります。また、県としても毎年毎年この鉄道事業にお金を出し続けることは、現在の財政状況を見ても難しいと思います。そこで、県として具体的にどこまで鉄道事業をサポートする意思があるのか。そこでは、これ以上はできないといった一線もあると思います。現状でどういったところまでの手助けが可能と考えているのか、お伺いいたします。
 最後に、知事の所見をお聞かせ願いたいと思います。
 これまで、和歌山市議会、貴志川町議会を初めとして海南市、野上町、美里町、桃山町の各議会で存続を求める決議書が可決されています。年間で二百万人もの県民が利用するこの鉄道事業の廃線は、県民生活に大きな影響を与えます。これまでに県内でも幾つかの路線が廃線となってきていますが、利用者の状況を考えると、それらとは明らかに性格の異なる廃線問題です。また、沿線には県営団地も分譲しており、この長山団地を選んだ住民の最大の理由は南海貴志川線が運行していることであり、現在も多くの団地住民が通勤、通学、また生活路線として利用しており、この団地を分譲している県の責任は少なからずあるものと思います。
 また、そもそも鉄道事業というのは、その社会的意義としても地域の都市インフラとして重要なものであり、和歌山市や貴志川町の経済圏において都市の活性化装置として利用価値の高い資源です。あわせて、これからの時代の環境問題の視点からも鉄道事業の価値はさらに大きなものとなると考えます。
 このようなさまざまな視点に立つ中で、改めて知事に、この貴志川線存続に向けた決意をお聞かせいただきたいと思います。
 以上で質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの山下大輔君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) たくさんの質問があったので、忘れてしまいますけれども。
 まず、私はこの和歌山県を発展させるということの中で、できるだけ自立をするというふうなことを探っていくことが大事だというふうに思っています。特に、景気が回復基調にある今こそ、和歌山の持てる力、すなわち例えば観光資源であるとか、歴史性であるとか、農林水産業であるとか、地場産業であるとか、こういうふうなもののいいところをできるだけ付加価値をつけて伸ばしていく、そしてそれに県がいろんな形で後押しをしていくというふうなことが大事だと思うんで、何もかも県の方が考えてやっていくというような形では絶対にうまくいくことありません。やっぱりその自分たちの伸びていこうというふうな力に、できるだけ県の方がそれに合ったような形で応援していくというふうなことが大事だと思います。今までもそういうふうな観点でやってきたわけですけれども、これからまたより一層新しい形でそういうことをしていきたいというふうに思っております。
 それから、そういうことをする県の組織ですけれども、この一期目にいろいろ組織改革を行いました。そういうふうな中で、うまくいったところもあるし、さほどでもないところもありますけども、例えば新しいマーケティング、イトーヨーカ堂であるとかジャスコとか、こういうふうなところと組んでやっていくような仕事とか、わざわざ新しい局をつくってやってるんですけども、いろんな成果が上がっています。それから、緑の雇用なんかについても局をつくってやった。そうすると、もう今は私がこういうふうに考えるということなしにでもどんどん自律的に進んでいくような形になっています。
 これからほかのいろんな部局についてもそんなふうな形で、この和歌山のポテンシャルがどんどん発揮されるような形になるような組織づくりということをしていかないといかんし、そのときに、NPOでありますとか、そういうふうな民間団体との協力が欠くことができないので、こういう面もどんどんやっていきたいというふうに思っています。
 そういうふうな形で組織づくりとか運営をやってきたんですけども、まだなかなか仏つくって魂入れずというふうなところもあります。今、鳥取の例なんかも出されてましたけども、こういうところ非常に進んでいるみたいなので、そういう先進的なところの例というふうなものも十分参考にしながら対応をしていきたいということです。
 それから知事の商品化ということで、まあ商品になるほど大したものでもないんであれですけども、いろんな形でいろんな場に顔を出して、そしてできるだけ和歌山をアピールしていくというふうなことが大事だろうと思います。この間も本を出して、余り売れてないかもしれませんけども、いろんな形で自分の考えということを外に披瀝していく。それと、いろんな批評家の方であるとか評論家の方であるとか、そういう方からも感想みたいなのが全国から届いてきてますけれども、そういうふうなことをすることによって「鄙の底力」というか、ひなにも底力があるんだということを認識してもらう必要があると思いますし、場合によっては、前回はやらなかったんですけども、これからは例えば和歌山でいろんな人を呼んできてシンポジウムをやったりセミナーをやるというふうなことも考えていかないといかんと思います。これは幾らでもそういう人たちがいますのでできないことはないんですが、ただ今の状況の和歌山にそれがちょっと受け入れられるかどうかというふうなことで一抹の不安がありますので今まで控えてたんですけども、これからはそういうことも考えていく必要がありますし。
 道州制研究会は、これは全国知事会の組織ですので、これをこっちへ引っ張ってきてというふうなことにすぐになるかどうかわかりませんが、私がこの道州制の委員になりましたのも、例えば和歌山はずっと昔に小野知事が阪奈和合併なんていうことを大分熱心に言われたような歴史があるんです。これはまだみんながそんなふうなことをちょっと常識的じゃないと思うころにそういうふうなことを言われた先人がおられるというふうなこと──稲むらの火も先人ですけども、こういうふうなことで外へはっきり訴えかけられていったということも僕は大きなことだと思いますので、別に阪奈和合併がいいわけじゃないんですけども、そういうふうなこれからの地方制度の枠組みということを和歌山県も割と先頭になって考えていってもいいんじゃないかなというような気持ちでこれをお引き受けしたというふうなことがあるわけです。
 それから、三位一体の改革ですけども、この三位一体の改革、これ自身は基本的には今、国からの補助金とあわせていろいろ国が地方へ介入してくるというふうなことが地方自治体がいろいろ自分たちで創意工夫をしてやっていくことの妨げになっているということ、これはもう何十年も言われてきたことなんで、このこと自体はもう原則としては疑う余地のない正しいことなんだけども、ただその起こってきた動機が、地方に対する補助金を上げたりするのをもう減らそうとか、それから交付税もあわせて減らしてしまおうとか、そしてちょびっとだけ税源を上げようというふうな形になれば、これは逆に地方の力を弱めてしまうという形になりつつあるというふうなこと、特に去年の改革なんかはそんな形になっているというふうな面も否めませんので、今回そういうことにならないようにいろいろ言っているわけです。
 全国知事会でもこの間、かんかんがくがくの議論がありました。私なんかはまだおとなしくしていた方で、もうこのごろは皆どの知事も百家争鳴というような形で意見を言い、これをテレビで中継もしてたんですけども、いずれにせよ、そういうふうな中で一定の方向の補助金削減の案を出したと。これからこの実現に向かっていろいろ大変なことが多いと思います。私のとこへも国の役所から働きかけとかいろんなものがありますけれども、余りそう頑迷に考えるほどのことはないんで、やはり柔軟に対応していかないといかんと思うんですが、基本的にはこういうふうなことが人口に膾炙してテレビの番組でも言うようになったということがやっぱり今回の大きな成果だと思うし、これは総理大臣から出しなさいと言われて出したわけだから、やっぱり何がしか今度は中央政府の方で一つの答えを出してこないといかんというふうな形になってくるんで、これがやっぱり大きな意味では地方分権の進展にもうつながるだろうというふうに思います。
 ただ、御案内のように、今、和歌山県にしても、それから県下の市町村にしても、非常に財政的に厳しい状況にあるし、自立する自立すると言っても自立にはほど遠い状況にあるのも、これはもう──これは和歌山だけじゃなくて地方の県は皆そうですけど──否めない状況なわけです。そういう中で本当の意味の三位一体改革を実現するには、やはり交付税制度も含めて地方制度全体の仕組みの見直しということを考えなければ、これははっきり言ってあり得ないことなんで、今回の三位一体の改革の話はその入り口というふうなことだと私は位置づけています。ただ、これが完全に失敗に終わると分権ということからほど遠い状況になってしまう可能性もあるので、ここはやはり注意しながら対応していく必要があります。
 次に、マニフェストで県民自治というふうなことを書いてあるわけですけども、私自身がこう言ってるのは、簡単に言えば、普通の人がおかしいなと思うことと、それから自治体の方、行政当局がおかしいなと思うことを大体同じぐらいの線に持っていくというふうなことなんです。今はかなりそういうことに乖離があります。一般の人が、こんなつまらん手続でいろいろ縛られるのは大変だなと片方で思う。役所の方は、いやこれはもう絶対に大事な手続だからと思う。かなり乖離があります。そうすると、間をどういうふうなことでとっていくかということを真剣に考えていくというふうなことがやはり住民の目に立った県政というふうなことになっていくのだろうと思っております。
 そういうふうなことの中で、やはりこういうことを全部県民にわかっていただく必要があるんで、去年の暮れぐらいから大分、県政報告会というのをやったんですけども、県政報告会という形じゃなくて、やはり私これから県下を回って、ある程度の数の人に集まってもらって、今県政がどういうふうな方向に向いているか、地方自治の問題点は何かというようなことをできるだけ話していくような機会を新たに設けていこうというふうに思っております。
 それから、厳しい財政状況への対応ということですが、先ほど申し上げましたように、和歌山県にしても県下の市町村にしても、大きな交付税制度、それから補助金制度、そういうふうなものの中で生きているというふうな仕組みがありますので、おのずから今の中で自立するという制度、仕組みは限られてるんですけども、そういうふうな中でも、例えば人件費の縮減でありますとか、いろいろな不要不急の事業の見直しでありますとかいうふうなことをどんどんやっていかないといかんと思うんですけども、そういうときに、せっかく今景気が回復しつつあるときに自治体がその足を引っ張るというふうなことになってはこれはもう元も子もないということですので、必要なものには重点的に投資していくという差別化というふうなことを改めて考えていかなければならないというふうな感じで思っているわけです。
 それから、真の三位一体の改革は何かということですが、これは今お話ししましたように、今やってることはかなり今の制度を前提とした、小手先と言ったら悪いですけども、小手先のことなんだけど、こんなことすら今までの国と地方の関係の中では初めてのことだったわけです。ただ、やっぱり国民の人にもっとこういうことをわかってもらうためには、その行く先のところにどういう社会があって、それが自分たちの生活にどういうふうな関係で影響を及ぼしてくるのかというふうなことの具体的な例をやはり示していくということなくしては、三位一体なんてわけのわからん──その「三位一体」自身がわけのわからない言葉として有名なわけです。要するにそういうふうなことですので、この言葉自体がわからなくなってしまったら本当に元も子もありませんから、そういうふうな具体例を示していく必要があると思います。
 それから、最後に貴志川線の問題ですけれども、これは非常に難しい問題です。何か、今その写真も見ましたけど、本当にたくさんの人が利用しているわけだけど、多分生徒の人は皆定期だから安い値段しか多分払ってないと思うんです。そうなると、やっぱりある程度は住民の負担もふやしていくというふうな仕組みとか人件費を減らすとか、いい方法があればやっていかないと、本当にここの場合は利用者が多いんで大変だというふうな気がしますけども。
 一方で、滋賀県の信楽鉄道の大事故みたいなことがあったりして、何でもかんでも合理化すれば済むというものでないところにこの鉄道事業等の難しさがあるということですし、それから自治体の負担というものにも限りがあるというふうなこともありますので、いずれにせよ、関係のところとこれからいろいろ協議しながら何がいい方策かということを探っていきたいと、このように思っております。
○議長(小川 武君) 総務部長宮地 毅君。
  〔宮地 毅君、登壇〕
○総務部長(宮地 毅君) 財政の問題についてお答えを申し上げます。
 まず、財政構造改革プログラムについてでございますが、七月に発表しております三位一体の改革が及ぼす県財政及び市町村財政への影響の試算にありますように、本県の財政は非常に厳しい状況にございまして、三位一体改革の結論次第では、歳出削減努力を行わなかった場合に平成十八年度に財政再建団体に転落する可能性もあろうかと思います。
 こうした危機的な状況を迎えまして、今こそ財政健全化に取り組まなければ本県はこれからの激しい時代の流れに対応できる力を失ってしまうのではないかと、財政の担当として憂慮しているところでございます。
 現在検討を進めております財政構造改革プログラムは、財政再建団体への転落を回避しつつ、福祉、治安、教育といった必要な施策の財源を捻出するために、歳入・歳出両面にわたって目標額を設定して財政の健全化に取り組もうというものを考えております。なお、このプログラムは来年度の予算編成方針にかかわってくるものでありますので、早急に策定したいと考えております。
 次に、地方交付税の見通しでございますが、総務省から政府の概算要求にあわせて今回初めて地方財政の収支見通しなども考慮して地方への配分ベースで今年度と同額とする試算が公表されておりますが、一方で地方歳出の一層の削減により地方交付税を抑制しようとする動きもございまして、これから国の方で検討が進められていくものと承知しておりますが、現在のところ見通しは不透明な状況でございます。
 いずれにいたしましても、昨年のような一方的かつ唐突な地方交付税の削減が行われないように、地方六団体は改革案の前提条件として、改革期間中は不合理な地方交付税などの削減をしないことや、地方交付税は地方固有の財源であるので、その総額を決めるための地方財政対策、地方財政計画の作成に当たっては地方公共団体の意見を反映させる場を設けることを求めているところでございます。
 次に、市町村についてでございますが、まずは県、市町村が連携して国に対し分権の趣旨に沿った三位一体改革がなされるよう引き続き強く訴えていくことが重要であると考えております。また、市町村に対しましては、時代の流れに即した持続可能な財政となるように、歳入・歳出や組織機構の構造的な見直し、住民との協働、民間活力の活用、市町村合併の推進などを積極的に助言してまいりたいと考えております。
 あわせまして、住民の協力を得つつ改革を進めることが重要でございまして、中長期的な財政見通しや対処方針などを積極的に住民に広報するように働きかけてまいります。
 さらに、地方分権の推進や三位一体改革による国と地方の関係の見直しなども踏まえまして、県と市町村の間につきましても自己責任、自己決定に基づく行財政関係を構築しながら、お互いがコスト縮減等の共通課題に連携して対処できるように、議員御指摘の県と市町村との連絡会議の立ち上げも含めまして検討してまいりたいと考えております。
○議長(小川 武君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 南海貴志川線の廃線問題についての御質問、三点についてお答えいたします。
 まず、南海貴志川線の財務状況についてでございますが、南海電鉄の資料及び聞き取りによって検討した内容について申し上げます。
 平成十五年度の南海貴志川線の営業収入は約三億一千万円、営業費用は約八億二千万円であり、よって営業損益は約五億一千万円となってございます。
 財務状況の分析内容についてでございますが、中小民鉄との違いを加味しながら申し上げます。
 まず第一点目ですが、役員給与や広告宣伝費、庶務費など、南海電鉄全体の共通経費を貴志川線でも分担していることが挙げられます。二点目といたしまして、人件費につきましては、平成十四年度末現在、貴志川線全体の職員四十二名の平均年齢は四十五・二歳となっており、南海全体の四十・二歳と比較して平均年齢が高いことから人件費が多少高くなっていると思われます。三点目といたしまして、運賃につきましても、南海電鉄の運賃体系の制限から中小民鉄と比較した場合、安く抑えられてございます。四点目といたしまして、安全面におきましても大手民鉄としての高いレベルでの保守管理が実施されておりまして、中小民鉄とは一概に比較できないところがございます。
 この中で、一点目に申し上げました本社費用については約一億円が計上されておりまして、貴志川線の営業費用から単純に除きますと貴志川線単体での営業損益は約四億一千万円となります。
 民間経営の成立の可能性でございますが、まず一点目は、給与水準や職員数を抜本的に見直す必要があると考えますが、職員数につきましては非常時における迅速な対応等を考える必要があると考えます。二点目といたしましては、運賃や外部委託などの雇用形態等についても見直すことが必要と考えます。
 現在の貴志川線の施設につきましては、先ほど申し上げましたとおり高いレベルで整備されておりまして、安全確保のためこれを維持していく必要があると考えております。
 なお、貴志川線単体に係る職員の人件費は現在約四億円となっておりまして、現在の運賃水準、運行本数を維持した場合には、仮に人件費を除いたとしてようやく収支が均衡する状況でございます。したがって、より一層のコストの縮減や運賃の値上げ、また利用者の増加等が必要であると考えております。
 次に、地方鉄道の事業に対する国の支援策についてでございます。
 国土交通省に確認しましたところ、現在の補助制度としては中小民鉄が行う安全性向上のための近代化設備の整備費を補助する制度がございますが、国の平成十七年度概算要求にこの補助制度の拡充が盛り込まれておりまして、具体的には駐車場の整備や新駅設置に係る経費等が補助対象として追加されてございます。このため、貴志川線が仮に大手民鉄以外の事業者によって存続運営された場合は、今申し上げました駐車場の整備や新駅設置に係る事業が補助対象となります。なお、運営費補助につきましては対象外とのことでございます。
 次に、県が鉄道事業を支援する内容についてでございますが、現在、和歌山市、貴志川町とともに国、南海電鉄を交えて鉄道存続を第一義として協議を重ねているところでございます。県といたしましては、地元の意向を十分に踏まえながら、地域住民の方々の生活交通確保のためできる限りの協力をすることとしてございます。今後、さらに沿線自治体とも十分協議を進める中で対応を考えてまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十六番山下大輔君。
○山下大輔君 御答弁をいただきましたので、再質問をさせていただきます。
 まず和歌山の自立戦略について、知事の御答弁でもありましたように、確かに今の和歌山県の頑張りは評価できるものだと思っています。その上で一層の取り組みを期待します。この和歌山は素材的には本当にたくさんの資源に恵まれた地域だと思っていますので、そこではこれまで非貨幣的な価値とされていたものを実際の経済的な価値に結びつけるような知恵のある行政を展開し、豊かな地域、皆が誇りを持って住み続けられる地域をぜひとも実現していってもらいたいと思います。
 次に、三位一体の改革と財政問題について。
 今回の三位一体改革では、地方は地方でこれまでの反省もしなくてはいけないのだと思っています。例えば、地方交付税の削減の問題をとっても、昨日の議論でもあったように、国の甘い言葉、口車に乗っていろんなことをやってきた中では国に恨み言もありますが、しかし、裏を返せば地方もその国の敷いた路線に乗って甘えてきた現実があるんだと思います。今回の三位一体改革で改めて考えていかなくてはいけないことは、地方は国の方針に従っていればよいと、そういった時代が確実に終わったのであり、これから本当の意味での自立する精神、みずからの目で将来を見通し、みずからの頭で考え行動していかなくてはいけないということだと思います。ぜひ今後とも、外部環境に振り回されることなく主体的に何事も判断できる能力を身につけていけるような和歌山県政というものを木村知事の強いリーダーシップのもとつくっていっていただきたいと思います。
 以上、要望二点ですが、最後に一つ、これは知事の御所見をいただきたいと思います。
 今議会で当局の答弁をお伺いしてくる中では、私の今の御答弁いただいた中でも、地元、地元と、沿線の自治体の地元の努力ということを話としては出てきています。ただ、県としても、和歌山県の地域における交通政策としてやっぱり主体的に取り組んでいくということは必要とされるんじゃないかと。県として、今の段階で鉄道として必ず残すとは約束できないと理解します。しかし、鉄道として残すことが重要な選択肢としてあるのであれば、今こそ最善の努力をしてもらいたいと思います。
 今回の問題は、時間との勝負といった側面があります。どういった枠組みで鉄道事業の存続が可能となるのか、そのフレームをつくることが急がれます。県として何ができるのか、地元自治体として何をすべきか、また地元住民としてどういった協力が可能なのか、その具体的な中身を早く詰めて協力体制を明らかにした上で、公募をするなり一本釣りをするなりして早急に新しい経営主体を探すことが求められます。
 しかし、現在は県、地元市町、そして地域住民と三すくみの状況となっているように私は感じます。それぞれに出方をうかがい、ある面ではそれぞれに責任を押しつけ合っている、そんなことでは事態は打開できないのではないかと心配するところです。他の地域で同じような例を見ても、県の決断が大きな影響を与えています。三重県の近鉄北勢線は昨年四月に三岐鉄道が引き継いでいますが、ここでは当時の県知事であった北川さんの判断が話の流れをつくりました。福井県、長野県などでも、それぞれ京福電鉄、しなの鉄道の存続には県として積極的なかかわりを持っている状況があります。それぞれに事情は異なります。支援するといっても、金額だけの問題じゃなくて、県としてどういう姿勢で臨むかということがこういった事態を打開することには大きな影響力を与える、県の対応は大きく事態を動かすインパクトがあるんだと思います。今こそ木村知事の強いリーダーシップを期待するものです。
 私の今回の質問は、県に何でもしてあげてほしいといったことを決して望むものではありません。しかし、県としてあくまで主導的な役割は強く期待するものです。県が主体的にできること・できないことを早く判断して、ここまではできるがここからはできないといった条件を先に提示して他の関係先にも働きかけてもらいたいと思います。
 最後にもう一度、知事に、できれば年内を一つの区切りとして鉄道事業への協力体制を明確にするといったことなど、県として主導的役割を果たす決意を改めてお伺いできればと思います。
 以上、要望二点、知事への質問を一点として私の第二問を終わらせていただきたいと思います。
○議長(小川 武君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 鉄道の存続の問題については、非常に難しい問題と思います。よその地域が存続を判断したときと財政状況も違いますし、今まで和歌山県にもいろんな鉄道があったのを廃止してきた前例もあります。そういうふうなことも、いろんなことを考えながら県も最大限の対応をしているわけですけども。
 そういうふうな中で、やはり僕は、先ほど部長も答えましたけども、どういうふうな仕組みだったら存続の可能性があるのか、例えば一億円上納金みたいなのがあるとか、社員の年齢が四十六歳か何かで人件費が非常に高いと、こういうふうなことはかっちりやっぱり詰めてみて、そしてまた本当の意味の維持管理にどれぐらいのことが要るのか、そういうふうな基礎的な数字を見た上で、さらには収入としてあとどれぐらい上げたらやっていけるのかというふうなこと、こういうふうなことの検討ということは十分やっていく必要があるというふうに思っています。
 それは、この三つのところが一緒になってやっていかないといかんし、国の方も、応援している、応援していると言いながら赤字の補てんは全然しないというふうな補助制度だったら、これははっきり言って何の役にも立ちませんので、そのあたりも踏まえて物事を考えていかなければならないというふうなことです。
○議長(小川 武君) 所定の時間が参りましたので、以上で山下大輔君の質問が終了いたしました。

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