平成16年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(前川勝久議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十五番前川勝久君。
  〔前川勝久君、登壇〕(拍手)
○前川勝久君 議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
 私は西牟婁に今住んでるんですけども、今何が一番大事かと問われたら、間違いなくちゅうちょせずに町村合併やというように答えます。そういうことで、今回も町村合併についてお伺いをいたします。
 既に初日から三人の議員が質問をいたしました。一部重複するところがあると思いますが、御容赦を願います。
 いわゆる優遇措置を盛り込んだ合併特例法のタイムリミットが目前に迫っております。すなわち、特例法の適用を受けるには来年三月までに各市町村議会で議決をして県知事に申請し、十八年三月までに合併することが条件という状況でございます。このような状況のもとで県内の市町村合併協議がいよいよ大詰めを迎え、相次ぐ離脱、枠組み変更等、極めて波乱含みに推移していることを私自身心から残念に思うと同時に、このまま何の調整もなしに合併の幕引きとなることは和歌山県の将来にとって大きな禍根を残すと深く憂慮をいたしますので、今回も六月議会に引き続いて、市町村合併に絞って当局の見解をお聞きをいたします。
 六月議会で私は、高知県が五月三十一日にある試算を公表したということについて触れさせていただきました。その後、本県においても七月十二日に三位一体改革が及ぼす市町村財政への影響と題する試算を公表しております。その内容は、国から地方に合計で三兆円の税源移譲が平成十八年度に行われるという前提のもとで、三位一体改革による地方交付税等の影響額、いわゆる削減額でございますけども、五十市町村合計で平成十六年度百七十八億円、十七年度二百五十六億円、十八年度三百五十億円、十九年度三百五十億円、二十年度三百五十億円となる一方、これと逆比例して、市町村の貯金である財政調整基金あるいは減債基金の残高は、平成十六年度三百十七億円、十七年度六十一億円、十八年度は△二百八十九億円、十九年度は△六百三十九億円、二十年度は△九百八十九億円となる。その結果、十八年度で二十二団体──これは五十市町村のうちの二十二団体でございます──十九年度で四十二団体、平成二十年度で四十六団体が財政再建団体に転落するという危機的状態になる。しかも、十七年度以降、平成十六年度以上の歳出削減努力を行うと仮定した場合でも、平成十八年度で十六団体、平成十九年度には八割の四十団体が財政再建団体に転落するというものでございます。
 また、これらの三位一体改革の直接的な影響に加えて、平成十七年度より実施予定のさらなる段階補正、いわゆる小規模団体への交付税の割り増し制度ですけども、これの縮減や平成十七年度に予定されております国勢調査の人口減少に伴う交付税の減少見込み等、より一層厳しい財政状況となるとしております。
 そして、このような厳しい状況を踏まえて今後の市町村の行財政運営については、一つ、歳入歳出の徹底的な見直しを行うこと、一つ、住民、NPO等との協働や民間活力の活用等による行政の責任領域の見直し、一つ、市町村合併の推進等、時代の流れに沿った持続可能な財政構造へ転換していく必要があるとしております。
 この報告の中で、前段の厳しい状況については具体的な数字が示すところであり、極めて明瞭でございます。問題は、後段の今後の行財政運営への取り組みの部分であります。極めて抽象的であり、私に言わせれば全く机上の作文であり、これを読んだ市町村議員初め市町村行政に携わる者が果たして「時代の流れに沿った持続可能な財政構造」とは一体どのような財政構造なのか、イメージすることさえできないのではないでしょうか。
 第一に歳入歳出の徹底的な見直しでありますが、言うはやすし、行うはかたしの典型でございます。まだまだ思い切った見直しをしなければならないことは数多くあると私も率直に思います。しかし、歳出面の典型的な見直しターゲットである職員数、議員数、各種行政委員数の削減、特別職や議員報酬の削減、各種団体への補助金の廃止・削減、普通建設事業の縮小等にはおのずから限界がございます。極端な話、先ほどの試算で二十二団体、非常に努力しても十六団体が平成十八年度に再建団体に転落するとありますが、これらの団体が平成十八年度で再建団体へ転落を免れるために平成十七年度で職員数あるいは議員数を半数にする、また給与、報酬を半額にする、普通建設事業は全くやらない、そんなことは現実にできないわけであります。また歳入面についても、過疎化と少子高齢化の激流にのみ込まれている町村にとって、いかにみずからの努力と創意工夫をもってしてもどこに新たな税源を求めることができましょうか。
 第二に、住民、NPO等との協働や民間活力の活用等による行政の責任領域の見直しについても、民間でできるものは可能な限り民間へということはここ一年や二年前から言われ出したものでは決してございません。バブル崩壊後十数年間一貫して言われ続け、各自治体においてもそれぞれ精いっぱいの努力をしてきたにもかかわらず、今日の状況に至ってなおそのことが市町村自立のための中核的な努力目標に掲げられること自体が、そのことがいかに困難なことであるかの証左であります。加えて、特に紀南地方においては、行政と責任を分担するに足り得るNPOや個人、法人等の民間組織が現に存在するのか、あるいは近々誕生するのか、そもそも受け皿の存在そのものが極めて心もとない、あるいは不透明な状況であります。
 第三に、市町村合併の推進等について、つまるところ、今日のさまざまな状況を考えるときに、今、二十年、三十年先の我が町、我が地域の存立のために適正な規模の合併を促進し、自力本願で足腰を強くすることが簡単明瞭な道筋であり、これしかないと強く信ずるものでございます。
 さて、冒頭にも述べましたとおり、波乱含みに推移している県内の合併協議についてであります。
 お手元に「県内の法定合併協議会の設置状況」というのを配付させていただきましたが、これを見ていただきながら聞いていただいたらありがたいんですけども、これによりますと、現在十四の法定合併協議会があり、五十市町村のうち三十六市町村が加盟、加盟率は七二・〇%、ちなみに全国平均は七月一日現在で六二・七%だそうでございます。このまま推移しますと二十八市町村に編成されることになりますが、他方で、この図で白地の部分、この町村が現時点で法定協議会に参加をしておりません。これを見ていただきますと、特に際立っているのが西牟婁郡、東牟婁郡の状況でございます。このエリアでは六町村が白地になってございます。
 上富田町、那智勝浦町を除く四町村は人口六千以下の小規模町村であり、しかもこの地域は県下で最も過疎化、少子高齢化が進んでいる地域であり、前述の県の試算でもいち早く再建団体に転落する可能性のある地域でございます。私は、地元であるだけに、だれにも増して一層、このままで合併特例法の期限が徒過し、市町村支援策である合併特例法の特典を活用することすらできず、二、三年後には間違いなく財政再建団体に転落する状況に強く危機感を抱くものでございます。
 ちなみに、「財政再建団体」という言葉を我々もよく聞くわけですけども、私なりに若干これを箇条書きで整理してきましたので、再建団体の復習の意味でちょっと読み上げてみますと、この再建団体とは、昭和三十年に地方財政再建促進特別措置法いわゆる再建法により定められた制度でございます。市町村の場合は、赤字額が標準財政規模の二〇%を超えると財政再建団体に転落いたします。民間企業でいえば一種の破産状態で、会社更生法の適用を受けることに相当をいたします。
 それでは、再建団体になった場合の具体的な影響はどうかということになりますと、総務大臣の承認を受けた財政再建計画、これはおおむね七年間をめどに計画をされるそうですが、現実には十年を超す再建計画もございます。この再建計画に基づいて歳入、歳出の両面にわたって厳しい見直しが求められ、自治体として主体的な自治能力の発揮と責任を果たすことが不可能になります。
 歳入面では、各種の使用料、手数料や国民健康保険料などが国の基準または当該地方で最も高い額を徴収している市町村と同一となり、住民の負担が増加します。また歳出面では、市町村独自で実施している事業の廃止や各種団体への補助金の削減はもちろん、環境、福祉、教育などの事業が類似市町村あるいは当該地方で最も低い水準の市町村と同程度となります。また、将来に向けた都市基盤の整備や学校施設、道路など、市民生活に欠くことのできない施設・設備の改修・整備についても計画的に実施できなくなる等、行政サービスの著しい低下が予想されます。
 さらに、毎年の予算は再建計画の範囲内で編成するため、再建計画の変更を伴う補正予算の編成に当たっても、その都度、国、県の同意が必要になります。要するに、市町村の判断で予算が組めないし、何も決められないのであります。全国の自治体が何が何でも回避しようとする財政再建団体とは、おおむねこのような内容のものでございます。
 ここで、本当に皆さん、考えてほしいんでございます。今言いましたこういう内容を有する財政再建団体に、紀南地域でこれだけの町村が十八年度、十九年度というほぼ同一時期にこういう再建団体に転落することが現実化したら、それこそバブル崩壊後のいわゆる失われた十年どころか、紀南地域の将来ひいては和歌山県の将来にとって取り返しのつかない事態に陥ることは必定でございます。
 知事は六月議会における答弁で、「できる限り法期限内により望ましい枠組みの合併が行われるよう、市町村の自主性を尊重しつつ、できる限りの調整やさまざまな支援を行うなど、最大限の努力を行ってきた。県は県内の市町村がどういう形になっていくのが一番よいのかということについて責任を持っておりますので、今後とも市町村と一緒になって合併推進に最大限努力したい」と述べられております。
 私は六月議会で、一般質問では異例であることを承知の上で、合併問題の一事に絞って質問をいたしました。それは、現行合併特例法の期限が来年三月末であることにかんがみて今この時期がさまざまな調整等を行う上で最も重要な時期である、またそのことを県当局にも認識していただきたいとの思いでの行動でございました。六月議会から今日までほぼ三カ月。その間、参議院選挙、知事選挙等がありましたが、三カ月という期聞は決して短い期間ではありません。この間、恐らく市町村と一緒になって合併推進に最大限努力をしていただいたことと存じますが、その結果がなお今日の波乱含みの推移でございます。
 知事がこれまでこの議場でたびたび言ってきた市町村の自主性の尊重、県の役割にはおのずと限界があるとの認識を前面に掲げ続ける限り、このまま波乱含みのままで推移して、結果として責任があるという県の責任が果たされないことになる。そのことが和歌山県の将来にとって大きな禍根を残すと危惧をいたします。
 なるほど、現行特例法の第一条には「この法律は、市町村行政の広域化の要請に対処し、自主的な市町村の合併を推進し」とありますが、そこには「市町村財政」云々という文言は一言もございません。すなわち、この法律が制定された当時は、今日市町村を追い込んでいる三位一体改革の影響といったせっぱ詰まった背景がなかったのでございます。したがって、今日、状況が大きく変わっているのであります。国の三位一体改革という政策によって追い込まれている市町村に対し、なお法律制定当時の主として広域化の要請に対処するための自主的な合併を強調し、県としては依然としてその推移を見守るということであれば、現実との認識の乖離がいかにも大きいと思わざるを得ないのでございます。すなわち、この地域では県が指導力を発揮し、もっと積極的に調整を行うべきとの意見が圧倒的に多いのでございます。私も今日に至って強くそう思います。
 そこで、知事に単刀直入にお尋ねをいたします。
 まず第一に、合併特例法によるいわゆる平成の大合併の議論が本格的に始められたのはここ二、三年の間でございます。この間、市町村と一緒になって望ましい枠組みの合併推進に最大限努力してきたとの自負をお持ちでございますか。
 第二に、お手元の資料の白地の部分、いわゆる法定協議会に未加入市町村の部分でございますが、これらを抱えるそれぞれの地域について、県が考える望ましい枠組み実現のため知事みずからが調整、指導に当たる考えはございますか。
 第三に、現行法においても、地方自治法二百五十二条の二第四項及び合併特例法第十六条の二により、関係市町村に対し合併協議会を設けるべきことを勧告できるのであります。県として責任があるという責任を全うする意味でも、また将来の和歌山県の均衡ある発展のためにも、適正な整合性のある合併を推進するという強い決意のもとに知事勧告も視野に入れておられますか。
 第四に、知事みずからの調整あるいは勧告もあり得るとお考えならば、そのタイムリミットをいつごろとお考えですか。
 とりあえず、以上を質問させていただきます。
○議長(小川 武君) ただいまの前川勝久君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいま御質問にありましたように、現在市町村合併については非常に大事な時期を迎えているということは、これはもう間違いのない事実でございます。そして、全国的に今まで協議会を開いていたところがだんだんだめになるとか、そういうふうなことがもう日常茶飯事のように起こっておりまして、和歌山県内でもそういうふうな事例もあります。そしてまた、だめだったところがまた一緒になるというふうな例も出てきているわけでございます。
 この間、今随分県は努力してないというふうな論調でしたけれども、職員をなさったらよくわかると思いますけども、県の職員は物すごく一生懸命努力しています。はっきり言って、中へも入り込み、職員も派遣し、そしてできる限りの努力をしてきて、そして全国より高い協議会の率ということに現在なっているわけでございます。
 言うまでもなく、今住民投票をすれば非常に厳しい結果が全国的に出てきておるわけです。これはなかなか住民の方の意見も一体ではないというふうなことの中で、県も、そしてまた地元の市町村も、非常に悩みながらやってきているというふうなことだろうと思います。そういうことは十分御理解いただきたいと思うのと、それから三位一体の改革の中で財政が厳しくなっているのは、別に合併したからすべてが解決するというふうな話ではありません。ただ、日本の国に三千数百の自治体はやっぱり多過ぎるだろうというふうなことの中から適正規模というものを目指していこうということでやっているわけで、合併したから再建団体にならないとか、そしてまた、日本じゅうの団体が言ったように再建団体になるよう形になれば、おのずから違った地方財政の制度が出てくるというふうなことになってくるということでございます。
 私どもは、これからも残された期間、合併に向けていろいろな努力を積み重ねていきます。そしてまた、新しい法律の中では新しい法律の中で状況を見きわめながら我々として十分な責任を果たしていきたいと、このように考えております。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十五番前川勝久君。
○前川勝久君 再質問をさせていただきます。
 知事答弁の後に再質問で部長答弁という大変恐縮に思うんですけども、若干内容が具体的になりますので、答弁は総務部長にお願いをいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 この先ほどの図面の中、特に紀南地域について具体的にお尋ねをしたいんですけども、この地域では、九月三日に合併協定調印が行われた串本町と古座町の合併については最終的に古座町が住民投票によって単独を選択をいたしました。太地町は、今年六月に住民アンケートで合併反対が過半数を占めたため、那智勝浦町との法定協議会を解散いたしました。北山村は、昨年二月、事実上の住民投票で県内合併を決めたが、消防・救急体制の意見の食い違い等から新宮市、熊野川町との法定協議会を離脱いたしました。これらのケースは、いずれも一度は同じテーブルに着きながら、住民投票、住民アンケートあるいは意見の食い違い等により所期の目的を達することができなかった事例でございました。
 すさみ町は、平成十四年八月の住民アンケートでは六八%、今年行われた住民有志による署名活動では有権者の七割、三千三百余名の町民が白浜町、日置川町との三町合併を強く希望しておりますが、白浜町、日置川町二町のみで法定協議会を設置し協議を進めてございます。したがって、前述の三町村とすさみ町の場合では状況が異なります。
 古座川町、太地町、北山村の場合は、とにもかくにも住民の意思を問うた結果として今日を迎えているわけでございますが、私個人的には、前述のように三町村内部の財政的、社会環境的な厳しさのみにとどまらず、紀南地方の将来の発展のためにもこの枠組みが望ましいとは思えないのであります。過疎化、少子高齢化の激流と立ち向かい、三位一体改革の大波をかぶりながら、合併メリットである国のさまざまな支援措置すら受けられず、単独を維持し、相当の行政サービスを提供することは「一層の経費節減に努める」という言葉だけでは乗り切れないと危惧するからでございます。
 県は、この地域についてはとりあえずこの枠組みでと考えておりますか。あるいは、県のリーダーシップで再度自立可能な適正な規模の他の枠組みを提示し、調整に乗り出す考えがございますか、どうでしょうか。
 次に、すさみ町について、町議会初め町民の圧倒的多数が白浜町、日置川町との合併を望んでいるのに、協議のテーブルにさえ着けない現状でございます。したがって、前述の三町村と明らかにその対応が異なります。私は、このような対応の場合こそまさに県の出番、県が責任を果たすべき場合であると考えます。このすさみ町のような対応の場合においてすら、自主的な合併を推進するという建前のもとに県の姿勢が一歩も二歩も後退していると思えてならないのであります。
 そこで、伺います。第一に、白浜町、日置川町が自主的に決めた結果であるのでいたし方ないと現時点では考えてございますか。
 第二に、どういう枠組みになるかは県としても責任があるという県の立場からして、責任を持てると言い得るためには二町合併でございますか、すさみ町を加えた三町合併ですか。
 第三に、三町合併が望ましいと考えるのであれば、今日までどのような努力を重ねられてきたのでしょうか。例えば、振興局長さん初め振興局の担当者が一生懸命努力していただいておりますことは私もよく存じておりますし、心から感謝をしておりますが、本庁としての対応はどうでありましたか。
 第四に、現行法での合併に向けての協議のタイムリミットは恐らく十一月ごろと個人的には想定されますが、今後部長みずから、あるいは三役が調整に当たってもらえる可能性がございますか。
 以上、よろしくお願いいたします。
○議長(小川 武君) しばらく休憩いたします。
  午前十一時二十六分休憩
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  午前十一時二十七分再開
○議長(小川 武君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 二十五番前川勝久君。
○前川勝久君 今の再質問についてでございますけども、今、通告をしていないので再質問できないという忠告をいただきました。そのとおりであると思いますので、ただいまの再質問は要望にかえさせていただきます。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で前川勝久君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十七分休憩
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