平成16年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(玉置公良議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十五番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。
 まず最初に、木村知事におかれましては、二期目の当選、本当におめでとうございます。これからも思い切った県政改革をやっていただきたいと思います。
 きょうは、世界遺産登録後の反響と、さらなる課題について質問いたしますけども、きょうは実を言いますと傍聴席の方にそういった世界遺産に関連をする方々も見えておられますので、誠意のある御回答をお願いしたいと思います。
 それでは、早速始めます。
 私たちの念願でありました高野・熊野が七月一日に世界遺産登録決定をされました。この間の関係者の方々の御尽力に対して心から感謝を申し上げます。
 登録決定以降二カ月がたちました。その結果、初めに予想していたとおりの期待に近い数字がいろんなところに出てきました。そして、それにまつわる関連の産業も本腰を入れて取り組み始めました。
 まず、皆さんに私なりに現地を調査した今までの成果を申し上げます。 
 最初に、一番気にかかっていました観光客のことですが、主な登録地では、登録された七月、八月中の実績は、前年の同月と比べてみますと、九度山町では三万七千百人だったのが五万五千四百人になりました。これは一・五倍ですね。さらに、町石道を歩く観光客は三千五百四十人で、昨年の二倍と増加をしています。中辺路町では、六万五千八百人だったのが十三万八千八百人になりました。これは二倍強であります。本宮町では、十三万九千六百人だったのが十九万五千六百人になりました。これは約一・四倍です。主な登録地の残りの高野町、那智勝浦町を入れた五町全体では、八十万七千二百人だったのが百一万二千六百人になりました。約一・三倍です。これらの数字を見ると、今まで私が議会質問で申し上げましたほぼその推定どおりの数字になっているということにほっとしております。
 さて、私の地元のことですが、きょうもお見えでございますが、白浜温泉にあるホテルでは、世界遺産地のホテルということでワンランクアップされ、七月、八月は定価料金で満室にできるようになってきたとの喜びの声が寄せられました。
 また、うれしい悲鳴ですが、本宮町ではいつもなら日帰りで約一千三百人ぐらいの観光客ですが、登録直後には二倍以上の三千人もの人が押し寄せました。当日は郵便局が臨時に店を出し、切手とエコはがきを売り出したところ、約四十万円近い売り上げがあったと聞いています。それが、取り寄せたんですが、こういうはがきです。
 熊野本宮大社への参拝客が登録前に比べて二倍になったり、また気になる外国人観光客のことでありますけども、直接登録地の自治体に問い合わせますと、高野山では、登録前の昨年の八月の宿泊は一日五十二人から、登録後のことしの八月は百五十九人にふえました。これは何と三倍であります。
 また、これまたきょうもお見えでございますけども、和歌山市内の主要ホテル八カ所の宿泊客の稼働率も、昨年七月は六九・一%、登録後の七月は七〇・七%と、一・六ポイント伸びています。また、和歌山市内のあるホテルでは、高野・熊野世界遺産観光だけで七十本のグループの予約が入っています。一本のグループで四十人から五十人ですから、この商品については昨年まではゼロでしたから、まさに世界遺産登録の大きな成果です。つまり、登録地以外でも効果が出てきています。
 語り部、つまり世界遺産ガイドのことですが、その要請も登録前から比べると十五倍にもふえました。散発ですが、熊野古道では、今まで来たことの少なかったヨーロッパ人やアメリカ人が来られました。また、見たこともない顔つきの人も来ていました。旅館やホテルでは、まだ外国人が日本人ほどふえていませんが、今までは東南アジア系の人が多かったのに、登録以降、アメリカ人とヨーロッパ人が目につくようになって変化が起きています。このことは、今後の観光行政を考えるとき、有利な状況が生まれてくると思います。アメリカとかヨーロッパから来るのは、どちらかというと、すべてではございませんが、生活にゆとりがあって旅行費用は余り気にしない人が多いので、日本としてはありがたいのであります。
 日本には一度も来たことのない人が、今回初めて直接高野山、熊野古道に来て歩いたという外国人の方とお会いをしました。そのとき、この方はこんなことを言っていました。日本の中の和歌山県という意識はなく、初めての日本行きで高野・熊野を見に来たのですと。このように、高野・熊野が世界遺産に登録されたことが初めて日本を知ってくれるきっかけになった意義は大きいと思います。日本に行くきっかけは経済やビジネスだけではなくて観光、旅行が優先したという、これからの観光行政に教訓を残してくれたのではないでしょうか。そこに私は大きな意義があると思います。
 何も外国人だけでなく、国内でも大きな反響と同時に、意外な見方をしている人が多いのであります。それは、私ども新生わかやま県議団が八月十七日に会派の政務調査で熊本へ行ったら、空港から乗ったタクシーの運転者さんから「NHKテレビで世界遺産と南方熊楠を見たので行ってみたい」と言われたり、また名水百選で有名な白水村へ行けば、村長みずからが「十一月に町村会で高野・熊野世界遺産を見学に行く予定だ」と言っていただき、大変大きな反響に驚くとともにうれしく思いました。
 高野山では、昨年の七月、八月は二十二万四千百人だったのが、御存じのとおり、夏は観光客で満杯ですが、その上さらに登録後の七月、八月には二十六万六千七百人になりました。売り上げでは、道の駅のある熊野古道本宮では去年の同時期より二けたの伸びがあり、びっくりしています。また、和歌山市内からことし四月より高野・熊野への直通バスを土日、祝祭日のみ運行をしていただいていますが、登録前の六月と登録後の七月と比べると約七倍にも乗客は伸びています。
 世界遺産になることによって、地元の人たちの表情に活気が出てきました。また、常日ごろ遠くの人と触れ合いがなかった人たちが、その触れ合いによって表情が明るく、活気が出てきました。サッカーのワールドカップのとき、大分県の村がカメルーンチームを歓待しまして、それからは人に対する接し方が細やかで日々笑顔で人づき合いもよくなった、これが大会の大成功の一つですよと言ったことと同じように、住民が変わったことこそ世界遺産登録の貴重な財産であると私は思います。つまり、お金では買えない成果であります。私が会った登録地周辺の首長が、さすが世界遺産だと、その影響の大きさに驚いていました。
 もう一つ、海外からはこんなことがありまして、うれしいやらびっくりするやらの報告をさせていただきたいと思います。
 それは、八月二十五日の日付で、自宅に一通の外国からのお手紙をもらいました。差出人は、欧州和歌山県人会組織委員会中口和己さんという方であります。私自身は全く会ったことのない初めての方でありました。
 手紙の内容を要約をしますと、こういう一枚物の手紙でありますけども、「高野・熊野の世界遺産登録が正式に認定されましたこと、海外に住む県人としてうれしく、和歌山を誇りに思っている者でございますが、私は、和歌山県は国際的交流の要素を備えた県だと思っております。ここに来まして高野・熊野世界遺産登録が認定されましたこと、世界に和歌山を知らしめるまたとないチャンスかと存じます。私は、これからは和歌山県もEU諸国とかかわることが大切だと思っております。来年の春ごろ、私はデンマーク、ドイツ、イギリス、ポーランド、イタリアなどで高野・熊野世界遺産登録記念展のようなものを開催企画しております。せっかく和歌山県に生まれ、せっかくヨーロッパに住んでおる者として、何かのかけ橋になれることは冥利に尽きることだと考えております」、このような手紙をいただきました。
 話は進みますが、昨年から私どもと一緒にやってきた熊野古道沿いの地元の若い人たちは、世界遺産のフリーマーケットを定着させたり、手打ちそばを開店させたり、それぞれがふるさとに誇りを持ち、新しい仕事をつくろうとしています。また、私の住んでいる白浜の地元の人たちが相談に来てくれ、一緒になって知恵を出し、手づくりの土産物をつくろうと話し合いを持っています。今までは問屋さんから来るのを待っていましたが、初めて自分たちが創造力をかき立ててつくり出しています。
 例えば、地元のおじいさんのアイデアでありますけども、間伐材を利用したキーホルダー、また、子供さんのアイデアでありますけども、大きなせんべいをつくって熊野古道の地図を入れて、古道の道しるべせんべいということでつくっていこうではないかと、そんな取り組みが始まっています。さらに、歌で申しますとこういった、山田議員さんの地元でございますけれども、貴志川町の樫葉好次さんという方が「熊野路旅情」というのを九月からクラウンレコードから発売をされております。さらに、和歌山市内の演歌歌手の山口智世さんですけれども、こういう「悠久の道~熊野古道」というのを出しながら世界遺産をアピールしております。さらに、この間送ってきてくれたんですけれども、これまた小原議員さんの出身の本宮町でありますけども、役場の職員さん方が、こういうデザインをつくって、今、宣伝をしてくれております。
 このように、世界遺産に登録をされてから県民自身が社会に自分から率先をして溶け込むようになってきており、世界遺産に感謝をしながらふるさとにだんだんと誇りを持ってきておると、そういうことを私は回る中で強く感じました。こうした登録後の反響について、まず知事の御感想をお聞きをしたいと思います。
 続いて、世界遺産登録後のさらなる課題について、当局の見解を求めてまいりたいと思います。
 これだけ観光客がふえ、十月からはさらに観光客二百万人増を目指そうとしています県大型観光キャンペーンが展開されていく中で、まだまだ受け入れる側のサービスが手薄なことについて、一つ一つその考えをお聞きをしていきたいと思います。
 その一つは、語り部のことであります。
 語り部の要請が登録前と比べて十五倍にふえていますが、県が取り組んでいる語り部養成では、私は足りないと思います。これから来るであろう観光客に十分な体制は届かないのではないでしょうか。また、和歌山市内のあるホテルでは、宿泊していただける観光客にサービスとPRを兼ねて高野・熊野の語り部コーナーを企画しており、既に十月以降二十グループの予定が入っており、高野熊野世界遺産連絡会にも要請が来ています。
 このように、県としても語り部養成に力を入れ、取り組んでいただいているところでありますけども、想像以上のこのニーズにこたえていくためにも、NPOなどに委託をし、語り部養成の拡充を図っていただきたい。また、通訳ガイドについても、私が提案していました地方独自のものが国としての方針として示されてきたようですが、その取り組みについて県としてはどのように考えているのでしょうか。
 さらに、八月末にオーストラリアのシドニーへ世界遺産観光客の受け入れ調査に行ってきましたが、JALの支社長との話の中で、日本の観光地・高山でオーストラリア人二名をJALが推薦をして通訳などの仕事をしてもらうワーキングホリデー制度を活用しているとのアドバイスを受けましたが、この高野・熊野の地でもこうした制度を活用すべきだと考えますが、いかがでしょうか。商工労働部長にお伺いをします。
 二つ目は、世界遺産情報の一元化についてであります。
 世界遺産登録地の役所では、登録以降、登録前より二倍の問い合わせがあり、ほかの地域のことも聞かれ、対応に苦慮しており、結果的に観光客にも不便をかけているとのことであります。そのあたりは、情報を一番持っており速やかな対応ができる県庁が情報を集めて、何を聞かれても答えられるようなスタッフを配置し、そしてお客さんに混乱しないで的確な指示ができる情報の一元化を県庁でつくっていただきたいと思うのであります。そうした一元化をしてもらうと私ども県民がお手伝いできるスタッフがありますから、その情報を有効に使い、観光客に親切に対応できるのであります。
 私も一緒に活動しています高野熊野世界遺産連絡会では、高野・熊野世界遺産を保全し活用していくための五つのシンポジウムなどを開き、その情報を観光客の役に立たすにはどのようにするのか、検討準備をしています。
 私は、こんな内容がいいんではないかと思います。あくまでも私見ですが、例えば道順や語り部の手配については、そこに行くにはこことここを通れば一番近い、混雑するのでこちらの道を通ってください、滑りやすくなっているからこちらを回ってください、急なところもあるし、雨が降ったら歩きにくくなるから、その安全のための情報を流す、休憩所やトイレはどことどこですよとか、そうしてくれるとお客さん一人でもわかるし、迷うこともありません。
 観光客の地域別で入り込み状況が一目でわかるシテスムづくりなど、そういう満足していただける雰囲気をつくってあげることではないでしょうか。そうしたところに県庁の役人を派遣することが大事ではないでしょうか。既に民間会社にも派遣をしていますが、世界遺産を活用するのは、ごく一部の県民がやるのではなく、行政が後押しをすることが重要であると私は思います。こうしたことをすることが観光客を招くサービスにつながるのではないでしょうか。NPOなどに任せっ切りでそれで終わりではなく、県が中心になって後押しをすることが本当の成果になると思いますが、いかがでしょうか。
 今議会で補正予算として上げています世界遺産センターの設置ですが、二〇〇七年開設予定とお聞きをしていますが、どのようなことをするのか、予算はどうなのか、高野・熊野全体を網羅するのか、二〇〇七年までの対応はどうするのか、知事にお伺いをしたいと思います。
 続いて、もう一つ要望します。それは古道を保全するためのマナーをきちんとしてほしいことであります。
 わかりやすく言うと、こういうことなんです。世界の世界遺産地を調査する中で私自身アドバイスをいただいたことなんですが、毎日毎日、その日が暮れたら鉄道の線路を点検するのと同じように、毎日毎日、職員が点検をしてほしいのであります。オーストラリアの世界遺産地のブルーマウンテンでは、山をパトロールし、山火事情報を流し、観光客に徹底をしています。安全か、そうでないか、事故が起こってからでは遅いのであります。つまり、古道パトロール隊のようなものが必要であります。
 また、古道を歩く観光客も、適度な人数で歩けるように規制や整理が必要であります。靴底から入る外来種対策をし、古道の植物の保全をしていく必要もあると、私の知っている学者がアドバイスをしてくれました。さらに、つえの先に植物保護のための保護ゴムを取りつけるなど、保全のためのルールをつくり、マナーを徹底しなければならないと思います。
 これらは、大もとでは県に強力な支援をしていただくことによって将来の不安というものが解消するのです。つまり、整備や管理が県を中心に動かなければ、せっかくの世界遺産も長い将来活用できなくなってしまうおそれがあると思いますが、知事、いかがでしょうか。
 先ほども申し上げましたが、八月末からオーストラリアに世界遺産観光調査に行ってきましたが、どちらかというとオーストラリアは観光立国であります。したがって、観光にはかなり厳しいのであります。観光客をふやすために、国内の国民の観光に対するモラルを厳しくしています。例えばごみのことをとりますと、捨てると二百オーストラリアドルの罰金、日本円にしまして約一万六千円です。シートベルトをして車で行きますが、日本では運転手と助手席だけがペナルティーがありますが、オーストラリアではバスも含めて後部座席もベルトをしなければ罰せられます。それはひいては、交通安全だけではなく、少なくとも観光というところに意識をしているのであります。受け入れる体制を厳しくすることによって、観光客が事故をできるだけ少なくする。つまり、車でやってくる人は安全を守るためにまずオーストラリア人が模範を示せよということであります。自国の人が観光客の被害を絶対に起こさないということを徹底をしています。
 観光立国和歌山を目指すためにも、こうしたことを参考にするとともに、世界遺産登録地にふさわしい交通安全対策について、県警本部長にお伺いをしたいと思います。
 話は前後しますが、再度、知事にお伺いします。
 暴論と言われるかもしれませんが、自動車と世界遺産と関係ありませんよという思い切った、人間の知恵と歩くという体力のみにしか許さないという世界遺産からスタートするという姿勢を貫くことはどうでしょうか。二十一世紀の文化とは、こうした文明社会の自動車とか無縁の、自分自身の足で歩きながら創造力など自分自身を鍛える場にしてみたらと思います。それがもう一つの魅力になるのではないでしょうか。この高野・熊野のすばらしい世界遺産は、私たちが守ること、地球がいつまでも壊されることなく人々に見てもらうためには、自動車という文明の力を遠ざけるという新しい暮らしや文化をこの登録地で宣言することが必要ではないでしょうか。そういう方向に持っていくことにどのような考えを持っているのか、知事にお伺いをしたいと思います。
 続いて、知事にぜひとも実行していただきたいことがございます。それは、高野・熊野世界遺産登録地の目指す方向であります。先月、高野山に行き、高野山文化フォーラムに参加をしてきましたが、豪華なゲストがパネラーとして参加していましたが、何を目指すのかということが参加者にはわからなかったように思います。
 私は、今までも議会質問の中で幾つか提言をしてきましたが、高野・熊野の世界遺産の精神文化を私なりに申し上げますと、空海の教えなどから今までの地球を壊す文明と決別することをこの登録地で私たち県民が実行していくことだと考えます。
 例えば、空気や水など環境を世界の登録地のどこよりもきれいにすること。そのため、地球温暖化防止の取り組みを世界に先駆けて実施をすることや、森林や水を守るための先進的な取り組みや、車社会主体から人間の足で歩くということを主体にした社会をつくることなど。また、人間の飽食、グルメ社会への警鐘にと、空海や南方熊楠の教えを広げた和歌山にふさわしいスローフードの創出など、そして、世界平和の話し合いの舞台をこの高野・熊野世界遺産地に実現をすることなどであります。これらを実現することが、七百五十を超える世界遺産のどこよりも魅力のある、行ってみたい、住みたいところとなり、ふるさとに住んでいる私たちもここに生まれてよかったと誇りが持てるのではないでしょうか。そして、これらを実行することによって新しい産業や雇用というものもたくさん生まれてくると思います。
 私は、このような一つ一つの課題について県民の皆さんに参加していただき、昨年からシンポジウムやフォーラムを開催してきましたけども、多くの賛同をいただきました。知事及び教育長の御見解を賜りたいと思います。
 もう一つ、大きなことを知事に聞かなくてはなりません。それは、世界遺産とクリーンエネルギーのことであります。
 先般、美浜原発の事故がありました。亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げます。安全管理体制を強化をするとともに、原子力発電に対する国民の信頼を回復することが求められていると思います。
 それとともに、日本も原子力発電に頼るだけでなく、風力発電など自然エネルギーの方向に大きくかじをとることが必要ではないでしょうか。とりわけ世界遺産登録地の和歌山県にその必要性が求められていると思います。そこには、一段高いところから知事の姿勢、発言というものが重みを持ってくると思います。そして、多少電力不足の事態が起きて不便になるかもしれませんが、風の力などによって我々の必要な社会エネルギーをつくり出すことが必要ではないでしょうか。世界遺産登録は、周りのすべての環境がきれいになるということでもあると思います。
 この和歌山の地を風力発電など自然エネルギーの地にしていくこと、それこそが世界遺産のもう一つの重要な側面ではないでしょうか。知事にお伺いをしたいと思います。
 最後の項目ですが、日本を知ってもらう、来てもらう、高野・熊野世界遺産のPRと海外から日本に来る観光客対策であります。
 国も二〇一〇年まで、外国人観光客を日本に今の五百万人から一千万人にしていくことを打ち出していますが、なかなか進んでいません。
 私は、昨年はイタリア、ことしは東ヨーロッパ、オーストラリアなどに行ってきましたが、日本に来る観光対策を成功させることについて聞いて歩きました。既にイタリアや東ヨーロッパ、EU対策については議会で提言をしてきましたが、オーストラリアでは、こういう人たちにどう接触すればいいんではないかというヒントを得られました。
 それは、オーストラリアにもある日本人会の婦人部の協力であります。婦人部の幹部の方々は、その国の要人とパーティーなどで接触をしています。そういう人たちの啓蒙というのを、その婦人の方々の力をおかりすることの効果が大きいのであります。シドニーで日本人会の幹部の婦人にお会いをし、和歌山のことを説明すると、男の人と違って──男の場合は、どちらかといいますとビジネスのつき合いをしていてもそんなに親密なつき合いはないのですが、しかし、御婦人方は新しいニュースとか、そういうものにしょっちゅう接しています。
 高野・熊野世界遺産のパンフレットを見て、私の話を聞いてくれました。そして、その明くる日には、婦人部の役員会でその話をしてくれました。まず、その人たちを和歌山にお呼びをしたらどうでしょうか。総領事館で、二〇〇六年は日本とオーストラリア交流年としてお互いの国を相互訪問し、交流し合うように決まりました。和歌山の高野・熊野世界遺産を売り込んではどうかと提言を受けました。地元のマスコミも取り上げるだろうと言われました。そういう機会をつかんでPRすべきだと思います。二〇〇六年にはオーストラリアの首相も日本へ行く、そのときに日本の首相とともに高野・熊野に来てもらうことを今から準備を始めてはどうでしょうか。
 このように、高野・熊野を知ってもらうために世界の日本人会へのアプローチを始めることについて、お伺いをしたいと思います。
 さらに、和歌山県内の世界の友好提携国や和歌山県人会などを活用することをしているでしょうか。また、すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 さらに、JALパックのオーストラリアの支社長とお会いをし、高野・熊野世界遺産観光のPRについてお話をしましたが、そこでは百人ものスタッフがオーストラリアから日本も含めた国外への観光関連の仕事をしていましたが、言われたことは、オーストラリアでもまず日本というものが余り知られていない。今は年間七万人から八万人が日本に行っているが、初めて日本を紹介するこうしたパンフレットをつくったと見せていただきました。こういうパンフレットでありますけども(現物を示す)、それを見て愕然としました。実は、地図には和歌山では白浜と勝浦しか載っていません。高野山などありません。もちろん、観光紹介のところには和歌山は全くありませんでした。同じ日本の会社であります。こうした日本の海外での旅行会社にもきめ細かくアタックしていくことが大変必要ではないでしょうか。お伺いをしたいと思います。
 訪日対策として世界を回りながら強く感じたことは、日本に来てください、日本に来てくださいと、そういうことだけではなかなか進まない。もっと具体的な政策を打つべきだと私は実感をいたしました。例えば、ODA費用の一部を観光客促進の誘致策として、知事が国に働きかけてはどうでしょうか。具体的には、日本に来たときの宿泊に支援をするとか、ポイント制をつくって日本に来た人は今度来るときは何割かを安くするとか、小泉首相が訪日観光対策を大きく打ち出し、外国人の観光客に来てもらうため、そのぐらいの大胆な発想があってもいいのではないかと私は思います。
 民生のためのODA政策をやっていますが、その国の国民の生活を豊かにする中に、すばらしい地球を知ることも欠かせない日本の責務であります。つまり、観光をしてもらうことも民生活動の一つであります。結果として、箱とか物ではなく、人々のいやしやきずなをつくるためにも、人々の往来は必要であります。特に二十一世紀、世界が時間的にうんと近くなり、片や民族の紛争が勃発をするという中で、観光は一つの平和のきずなを強める役目があるんではないかと思いますが、商工労働部長にお伺いをしたいと思います。
 以上、八点をもって世界遺産登録の和歌山県の変化について見てまいりました。当局の御見解をお伺いし、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの玉置議員の質問、数字を上げたいろんなこと、私も本当に初めて耳にするものが多くて非常に参考になりました。
 この高野・熊野の反響ということでございますけれども、実は私自身も驚くほどのものがございまして、和歌山の中よりも例えば東京とか、そういうふうなところへ行きましたら、このごろ和歌山のことをテレビでやることが物すごく多くなったねというようなことをいろんな人から言われます。これは何も別に僕が和歌山の知事をしているからということじゃなくて、ほかの人が間接的にまた聞いたような話も入っておりますので、そういうふうなことで、先ほどいろいろ土産物なんかを自分たちで考えていくような動きが出てきたとか、いろんなお話が出てましたけども、私もそういうふうなこの世界遺産の登録ということが、ただ単にそういうことじゃなくて、地域の元気ということに結びつきつつあるということを物すごくうれしく思っておりますし、これを県としても、この民主導の動きというものを何とかサポートしていくというふうな形でいろんな取り組みを進めていきたいというふうに考えている次第でございます。
 そういう中で、情報の一元化というふうなことがありました。これは非常に大事なことでございまして、この高野・熊野というのは物すごく広いと。そして、どこかわからないというところが、メリットでもありデメリットでもあるというふうに思うわけでございます。メリットとしては、いろんな広がりがあるものだから、同じ人でも何回でも来れると。例えば法隆寺だったら一回行けば宝物まで全部見れますけれども、高野・熊野はそうはいかないというふうなところがあって、これは非常なメリットだと思いますけれども、逆に、取りとめがないと。要するに、どこへ行けばその真髄に触れることができるのかというふうなことについてのコンセンサスがなかなか得がたいというふうなことがあります。そういう意味でいろんな情報というふうなことを的確に流していくということは、これはよその世界遺産よりももっとこの地域については大事だろうというふうに思っております。
 県も今ホームページをつくったりしていろんなことをやってますけれども、今、本宮町の方で計画しております世界遺産センター、こういうふうなところに、私はぜひそういうふうな情報のある意味では一元的な管理をするような機能も持たせて、何でもわからんことがあったらそこへ行ったらいろんなことを教えてもらえるというふうな形、しかもそのアクセスは来てからのことじゃなくて、例えばよそからこれから行こうと思っているような人にも、高野なんかも含めて情報が出ていくような形も考えれば非常によくなってくると思いますし、そういうときにも今までの官制といいますか、公務員ばっかりが中心になってやるようなことじゃなくて、NPOの人たちと協働しながら、よりよい使う人の身になったような情報提供というふうなことを考えることができればというふうに考えているわけでございます。
 それから、保全とマナーというふうなことです。
 私も実は、時々熊野古道であるとか町石道を歩いたりしたんですけれども、むしろ世界遺産に登録されないときにもっと歩いとけばよかったなというふうな気持ちを逆に持つというふうなこともあります。ということは、そういうことでは実はこれは逆説的な話でいけないんで、なぜかというと、みんなが歩き出したらもう荒れたりして昔のよさがなくなってしまうんじゃないかという危惧がやっぱり心の底に若干あるからです。そういうことも含めて、先ほど言われたような例えば古道パトロールでありますとか、それから語り部の人たちとうまく連携をとってやるとか、それから地域の子供たちとうまく連携をとってやるとか、そういう形でこの古道というものを保全していくというふうな取り組み、これはあわせて強力に行っていく必要があるというふうに思っております。
 さらに、この高野とか熊野で自動車を遠ざけるというふうなことがございました。この高野・熊野はやはり自然に着目するということで、なかなか自動車と相入れないというふうな面があることは、これは否めないところでございます。ただ、やはり観光客というふうなことに着目しますと、今は自動車の時代ですので、やはりどこへでも自動車である程度行って、そこから体験できるというふうな形がやはり必要になり、それがやはりこの高野・熊野というものを発展させる大きな原動力にもなってくると思いますので、この自動車との共生のあり方ということをより進んだ形で考えていきたいと。
 例えば、高野山なんかは実は山上都市でありますので、できるだけ歩く人が心配しないで歩いて回れるというふうな形が望ましいと思います。ただ、やっぱりそこで商売をしたり生活したりしている人の利便性ということもありますので、そういうものをうまく調整をとりながら、例えばヨーロッパの中世の都市、なかなか車は入ってきません。そういうふうなものが実現できるようなことがあれば、これはますますこの高野・熊野というものがよくなるんじゃないかなと。これはすぐにできる話じゃありませんけども、そんなふうなことも考えております。
 それから、高野・熊野の理念というふうなもの、余りはっきりしないじゃないかというふうなことでございます。これはなかなか、歴史があるところですし、それぞれに例えば江戸時代と平安時代ではまた持つ意味が違っていたとか、いろんなことがあると思うんですけども、今のこの時代においては、やはりいやしであるとか、それからよみがえりであるとか、自然を生かした歴史と自然とが合わさったいやし、よみがえりの地として、これを都会人とか外国の人とか、そういう人たちに何か新しいものを提供できるような地にしていく。そしてまた、ライフスタイルでもちょっとやっぱり二十一世紀型のライフスタイルをここから発信できるような形にしていくというふうなことが私は大事だろうと思います。
 そういうふうな中で、今、健康村構想ということで、この地に来たら健康を回復する。中高年の人も、それからお年寄りの方も、やはりそこで何かを得てくるというふうな形のものをこの和歌山から発信できないかということで、これは主要なプロジェクトとしてこれから取り組んでいきたいというふうに思っております。
 さらには、先ほどお話のありましたエネルギーです。今もエネルギー、原子力発電とか火力発電とかいろんなものがありますけれども、これからエネルギーについてもある程度、私は、大規模なところはまた別の考え方をしていかなければなりませんけれども、ローカルエネルギーについてはエネルギーの地産地消というふうなことが非常に大事だろうというふうに思っております。例えばバイオマスでありますとか、水力。水力についても小水力発電というふうなものがあります。こういうふうな新しい、この和歌山の地に合ったようなクリーンなエネルギーというものをどんどん導入することによって、そういう面でもこの地を先進地としていきたい、このように思っております。
 以上です。
○議長(小川 武君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 二項目めの世界遺産登録後のさらなる課題の二点についてお答え申し上げます。
 まず、語り部、通訳ガイドにつきましては、現在、紀州語り部として百五名を登録しているところですが、需要の増大に対応すべく、先般、百六名の希望者に語り部養成講座を開催したところでございます。既に一部の方は活動を開始しており、一層の活躍を期待をしているところでございます。
 今後の語り部の養成につきましては、旅行者のニーズや需要等も考える中で、議員御提言のようなNPOなどとの協力も検討してまいります。
 次に、昨年より国に要望しておりました地域限定の通訳案内業制度の創設については、国においてガイドライン等の作成が行われる予定であり、それらの動きを注視して対応してまいります。
 また、海外からの誘客については、ワーキングホリデー制度の活用等の幅広い観点から検討していく必要があるものと考えております。
 次に、世界遺産のPRと海外から日本に来る観光客対策についてでありますが、海外からの観光客の誘致につきましては、東アジアのみならず欧米の旅行会社やメディア招請等の積極的な活動を実施しております。
 海外誘致宣伝活動の重点地域については、国のビジット・ジャパン・キャンペーンの対象国である東アジア及び欧米の八カ国と考えております。オーストラリアにおける誘客活動については、今後の訪日需要動向等を見きわめた上で、議員御指摘の交流などを活用しながら観光PRを実施していきたいと考えております。
 友好提携先や在外和歌山県人会については、世界遺産関連パンフレトなどを送付し、PRに努めております。また、日本人会への情報発信等はもとより、海外の日本旅行会社にも働きかけを行ってまいります。
 次に、御提言のODAに係る観光客誘致の活用について今後研究するとともに、当面はビジット・ジャパン・キャンペーン予算の拡大及び連携等を働きかける方法により、観光を通じ各国の相互交流と相互理解に貢献していきたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 高野・熊野世界遺産登録地の目指す方向についてお答えいたします。
 紀伊山地の霊場と参詣道は、日本古来の自然崇拝に起源する神道と中国から伝えられた仏教の融合をあらわすもので、広大な面積の資産と周辺の森林景観が千二百年以上にわたる聖山の伝統を良好に保っているという評価を受け、このたび世界遺産に登録されたところでございます。
 この悠久の自然と歴史が形成してきた資産及び文化的景観を後世に継承するため保護保全に万全を期すとともに、紀伊山地の持つ日本人の心の原点とも言われる歴史性を広く周知してまいりたいと考えております。
○議長(小川 武君) 警察本部長宮内 勝君。
  〔宮内 勝君、登壇〕
○警察本部長(宮内 勝君) 世界遺産にふさわしい交通安全対策についてお答えいたします。
 高野・熊野地域の世界遺産登録に伴い観光客の来県が増加することが見込まれることから、県警察といたしましても、この地域を初めとする県内の交通の安全を確保することが重要であると認識しております。そのため、交通事故をなくする県民運動推進協議会を初めとする関係機関と連携し、県民の交通マナーの向上に努めるとともに、県内各地の古道を歩く人たちの安全確保を含め、交通事故の発生状況に応じた交通安全対策を推進してまいりたいと考えております。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十五番玉置公良君。
○玉置公良君 御答弁ありがとうございました。
 質問ということではありませんけども、今の答弁を聞いておりましても、やはり登録地以外の和歌山県全体の動きになってきておると、そういう押さえをしていただいておりますし、さらに、やっぱりこれは和歌山県全体の世界遺産だと、こういう取り組みを深めていかなくてはならんと思っていますんで、その点をまた今後ともよろしくお願いをしたいと思います。
 それと、知事が健康村構想を触れられましたんで少しだけ要望しておきますと、私はそれぞれの考え方があると思うんですけども、できればその一千二百年前に空海さんがそこでどういう健康法をしやったんかと。例えば、歩いて疲れたら、今の現代風のマッサージじゃなしに、何か葉っぱを使ってマッサージをしたとか、そういった思い切ってタイムカプセルのように一千二百年前に戻ると。そういったことが本当の世界遺産登録地の健康村構想になるんではないかと思いますし、その点、今後、御検討をお願いしたいと思います。
 以上です。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時四十分休憩
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