平成16年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(前川勝久議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十七番前川勝久君。
  〔前川勝久君、登壇〕(拍手)
○前川勝久君 おはようございます。議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
 たまたまですけども、きょうの朝刊和歌山版を見ましたら、今まあ町村で六月定例議会が開かれているわけですけども、湯浅町長が合併についてとんざしていることを非常に残念だと、九月末までに展開が望めなければあきらめるという記事が載っています。その横へ「那智勝浦との合併協離脱へ」ということで、太地町が町議会で合併の断念の手続に入るという記事が並んで載っております。
 このように今、皆さんご存じのように、市町村合併については各地域とも非常に混迷を深めております。そこで、今回特に私の質問も、今まさに昭和の大合併から約半世紀ぶりになるんですけども、大きな転機を迎えている市町村合併一本に絞って当局の見解をお聞きしたいと思います。
 さきの六月一日付朝日新聞を皆さん見た方もおられると思うんですけども、高知県が五月三十一日にある試算を公表したということを報じてございます。その試算の内容というのは、三位一体改革による地方交付税の削減等が続けば危機的な状況に陥る、すなわち今と同じ水準の削減が続いた場合、二〇〇六年度、あと二年後に、高知県は五十三市町村があるらしいんですけども、五十三のうち十四市町村が財政再建団体に陥落する、二〇〇九年度、あと五年後には九割を超える五十一市町村、今年度の額のまま推移しても二〇一一年、七年後には八割以上の四十五市町村が財政破綻し、財政再建団体に転落するおそれがあるとして、事実上市町村に合併を促すコメントを出したという内容のものでございます。試算公表の理由を橋本知事は、「合併は市町村が住民と話し合い、自主的に判断する問題だが、現状はよく理解した上で判断してほしい」とコメントしております。
 ちなみに、高知県は二〇〇二年度の市町村の財政力指数──一番わかりやすい数字ですけども、財政力指数の平均値が全国ワーストワンとなっております。和歌山県も五十市町村でございますので高知県と似通った状況でありますけども、いわゆる優遇措置のある現行の合併特例法の最終年である今年、まさに県政の最重要課題として取り組んでいただきたいという思いで質問をいたします。現実的な解決につながるような見解をお聞かせ願います。
 さて、本県の合併協議の状況でありますが、県下各地域で法定協議会が立ち上げられ、県もそれぞれ重点支援地域に指定したところでございますが、最終的には、御承知のように特例法が当初目指しました平成十七年三月、来年三月までに合併スタートのテープカットができるのは新生みなべ町だけであり、その他は一年間の猶予特例を活用するか、ここへ来て合併協議そのものがとんざするということに陥ってございます。今回特に私が問題としたいのはこの後者、つまりこの時点で合併協議そのものがとんざしているところでございます。しかしながら、県下すべての事情について私自身見聞以上の状況を把握することは非常に困難でありますので、私にとって身近な紀南地方、特に西牟婁・東牟婁のケースについて今回取り上げて質問をいたします。
 まず上富田町(人口約一万五千人)は、田辺圏域から離脱し、単独を選択。白浜町(約二万人)・日置川町(約五千人)・すさみ町(約五千五百人)の三町においても、いろいろ途中経過はありましたが、結局は先月、白浜町・日置川町の二町による法定協議会が立ち上がり、協議が進められてございます。ここにおいて、三町のうちすさみ町が立ち往生の形となっております。
 東牟婁郡では、古座川町(約三千五百人)が串本町(約一万五千人)・古座町(約五千五百人)の協議会から離脱し、単独を選択しております。また先日、太地町(約三千六百人)が住民投票の結果、那智勝浦町(約一万九千人)との合併協議を断念する旨報道されておりますし、けさほどのニュースでもごらんのとおりでございます。
 したがって、このまま推移しますと、紀南地域では上富田町・すさみ町・古座川町・太地町・那智勝浦町が好むと好まざるにかかわらず合併できずに残ることになります。
 言うまでもなく、市町村は地方交付税によって行財政が成り立っております。三位一体改革の推進により、国は既に小さな地方自治体への割り増し制度を初め地方交付税の見直しを進めており、今後さらに削減が予想されます。このような状況の中で、これでいいんでしょうか。問題は、和歌山県としてこれでいいんでしょうか。当該市町村が自主的に決めたことだから仕方がないと県として傍観して済む話でありましょうか。実はこの質問も、この点が核心でございます。
 ちなみに、先ほど高知県の例を出しましたが、数字で恐縮ですけども、今申しました五町について数字をちょっと披露してみますと、まず一番簡単な数字の財政力指数で言いますと、上富田町が〇・四四六、これは五十市町村のうちで十四位、すさみ町が〇・二一〇、三十八位、古座川町が〇・一三〇、四十七位、太地町が〇・三一六、二十七位、那智勝浦町が〇・三九〇、二十位でございます。また、皆さんよくご存じの普通交付税の額について若干申しますと、十五年度の普通交付税の額で、上富田町は十五億六千六百万円。これは、例えば上富田町の場合は、十三年から十四年度にマイナス五・五%、約一億円が減少しております。また、十四年から十五年にはマイナス八・八%、一億五千万減少しております。同じように申しますと、すさみ町は十五年度で十五億一千万、十三から十四はマイナス九・七、一億八千万、十四から十五はマイナス一〇・七、一億八千万。古座川町は、十五年度の交付税額十七億一千万、十三から十四はマイナス五%、一億円、十四から十五年度はマイナス八・二%、一億五千万円。太地町は、十五年度交付税額六億一千万円、十三から十四年度へはマイナス九・一%、六千八百万円、十四から十五へはマイナス一一・三%、七千七百万円。那智勝浦町は、十五年度決定額二十三億八千万、十三から十四はマイナス八・四、二億三千万円、十四から十五はマイナス六・一、一億六千万円の減となっております。したがって、各町村とも今後毎年一億五千万から二億円というような額が減額されることが想定されます。平成十四年度一般会計で見ますと、最も少ない太地町で一般会計の予算額が約二十億円、最も多い那智勝浦町で約七十五億円であります。そして、これのうち、大体三割から四割が人件費、扶助費、公債費等といった義務的経費でありますから、この毎年一億五千万から二億近い減額というこの数字が町村にとっていかに深刻な数字であるかは容易に想像がつくところでございます。
 ここで、改めて、今なぜ合併が必要なのか、すなわち合併の必要性論について私なりに三つに立ち返って考えてみます。
 まず第一に、この西牟婁・東牟婁地方のそれぞれの地域は歴史的、地理的に強い結びつきを有し、現在も日常的な生活活動において強い一体性を持っている地域でございます。第二に、生活圏の一体化と計画的、総合的な町づくりの展開という点から見ますと、交通網や情報通信手段の発達によって住民の日常生活圏は飛躍的に拡大をしております。地域の一体性も増している反面、半世紀近く市町村の区域が変わっていないということにより施策の重複や不整合が効果的、効率的な町づくりの推進を阻害していることにかんがみ、地域の発展のためには住民の日常生活圏を直視し、計画性と広い視野を持ち、総合的な観点から行政サービスの向上を図る必要があると考えられます。第三に、自治能力の向上と住民ニーズの多様化、高度化への対応という観点からは、平成十二年四月に地方分権推進一括法が施行され、今後は市町村への権限移譲が進み、その役割が増すと同時に負うべき責任もさらに大きくなってまいります。したがって、みずから政策を立案し実行する能力と、それを可能にする財政基盤が従来以上に必要とされます。しかしながら、当地方を取り巻く少子高齢化や過疎化などの影響を考えると明るい展望は開けず、合併のスケールメリットを生かして行政の効率化を図り、財政基盤を強化する道を選択しなければレベルの高い行政サービスの提供は到底おぼつかないことになると思います。
 以上述べたこの合併必要論の三つの中心的な視点から考えましても、今述べました五つの町がこの恩恵から外される、適用除外され取り残されるということは、紀南地域の発展のためにも和歌山県として将来に大きな禍根を残すことになると思います。
 過日今国会で成立しましたいわゆる合併新法は、平成十七年四月一日以降に合併申請のものに適用され、平成二十二年三月三十一日までの時限法となってございます。この新法の特徴は、まず第一に総務大臣が自主的な市町村の合併を進めるための基本的な指針、いわゆる基本指針を定める、第二に、知事はこの基本指針に基づき合併を推進する必要があると認められる市町村──これは構想対象市町村ですけども──を対象として合併の推進に関する構想を定める、そしてこの構想においては、最大の難関である対象市町村の組み合わせ等も定めることとするとなってございます。第三に、知事が構想対象市町村に対し地方自治法に基づき合併協議会設置を勧告したときは、勧告を受けた市町村の長はこれを議会に付議し、もし議会が否決した場合には住民が有権者の六分の一以上の連署により、または市町村の長が住民投票の請求ができる、そして住民投票により有効投票の過半数の賛成があった場合には議会が可決したものとみなすとなってございます。
 このように、この新法は合併を推進するために知事の権限を明記、強化しているところに最大の特徴がございます。したがって、早い話が、来年四月以降は市町村で枠組みも含めて議論が進捗しないときは知事勧告により合併を推進できることになります。地方の厳しい将来を考えるときに、私自身、個人的にはこの新法の立場を支持したいと考えますが、しかしそれならなおのことと思うことがございます。それは、この新法では、現行法で認められている、すなわち来年三月までに合併するか合併申請をした場合に認められる特例措置がほとんどなくなってございます。いわゆる地方にとって甘いみつと言われる部分が、この新法では来年以降なくなっております。その最たるものである地方交付税の合併算定がえの特例期間が十年プラス激変緩和五年から段階的に五年プラス激変緩和五年に縮小されますし、よく言われる合併特例債による財政支援措置も廃止されます。この合併算定がえの話ですけども、これは、合併をしたら今の交付税の水準を十年間は保証しますよ、十一年後から十五年後までは激変緩和で少しずつ減らしますよということですけども、この部分が極めて縮小されるという意味でございます。
 このように見てきますと、合併協議の調わない、あるいは協議が進んでいない市町村に対して、県として当該地域の将来を考えたときにこのような合併が望ましい旨の勧告をし、その勧告に沿って合併協議が進められるのであれば、同じ勧告でも現行法と来年以降の新法とではその効果には雲泥の差があるわけでございます。そして、現行法においても、地方自治法第二百五十二条の第四項及び合併特例法第十六条の二により、関係市町村に対し合併協議会を設けるべきことを勧告できるのでございます。県として、将来の和歌山県のために均衡ある、整合性のとれた合併を推進するという強い決意のもとに勧告も視野に入れておるのであれば、その時期はまさに今であると確信いたしますとともに、時期を失することのないよう果敢な対応を提言するものでございます。
 昭和の大合併においても、県下の幾つかの地域で、最終的に県の調整により決着したという話も地元の古老から聞かされるところでございます。市町村合併というような余りにも住民の生活と密着した問題は、市町村の自主的な合併が本義であることは論をまちません。このことのゆえに、県も今日まで状況、成り行きを注意深く見守ってきたものと推察をいたしますが、私論として言わせてもらえれば、現行特例法の特典をどん欲に活用し、今後二十一世紀の紀南地方の発展の基礎固めをしっかり行うべきとの信念のもとに、紀南地方でいまだ合併協議に加わっていない前述の五つの町についてこのままでいいとは到底思われないのであります。
 冒頭でも述べたとおり、歴史的にも同じ地域エリアに属し、過去幾多の困難や自然災害にもともに知恵を出し汗を流し、地域振興の旗印のもとに頑張ってきた隣町同士が、片や合併の恩恵を受けて新しい町づくりのつち音が響き、片や財政再建団体転落への不安におののきながらやりたいこともできずただただ経費節減と住民への忍従を説得するしかないという姿は、双方の大方の住民の期待するところではないはずであります。市町村合併は、ここに至ってもはや理論や理屈の話ではなく、住民があすに向かって希望を持って日常生活を営むための生きた社会の現実そのものの問題なのでございます。
 知事はこれまで幾度か合併問題に対する先輩・同僚議員の質問に対し、第一義的には市町村が住民、議会とよく話し合って自主的に決めるべきものと考えるので状況、推移を見守っていきたいとの考えを表明されてございます。私も、今日までは知事のこの判断は正しかったものと思います。しかし、現行法の法期限を目前にして、そして今回取り上げた五つの町を初め、なお県下の何カ所かで合併協議さえもとんざしていることを踏まえて、改めて知事から今後に対する基本的な認識を、また総務部長から今後の具体的な対処方策をお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、ここにすさみ町役場の企画課が出している町民向けの広報誌第十七号、平成十六年五月一日というのがございます。これを、たまたますさみ町のこれを起草した若い職員が読んどいてくれということでくれたわけですけども、非常に今の合併の中身をよくあらわしている文章であると思いますんで、御披露させていただいて質問を終わらせていただきます。
 平成十六年四月三十日、白浜町、日置川町でそれぞれ臨時議会が開催され、白浜町・日置川町の二町の合併協議会の設置が可決され、すさみ町民の代表により請願されていた三町合併協議会の設置請願については見送りとなりました。
 しかし、すさみ町としては国の三位一体の改革推進による財政難の中、少子高齢化の進行、多様化する住民ニーズや生活圏の拡大等に対応し、行政の効率化と高度化を図り活力ある豊かな町づくりを進めるためには合併は必要であるとの観点から、従来からの方針である「白浜町・日置川町・すさみ町の三町合併」をねばり強く推進してまいります。
 三町は共に、豊かな景観の海岸や、近く世界遺産に登録予定の大辺路の古道を有するなど地理的、歴史的、文化的にも深い繋がりを持っています。また、地域的にもまとまりも良く、白浜町には温泉と南紀白浜空港が、日置川町には清流日置川が、すさみ町にはスキューバーダイビングやマリンスポーツの舞台で、関西の釣りのメッカといわれる枯木灘海岸があるなど、それぞれ特色を有しています。その上、高速道路についてもすさみ町までが整備計画の段階で、国の新直轄方式で進められ、その実現が促進されるなど三町合併の有利な条件が備わっています。
 このようなことから、三町での国の支援である合併特例債の活用により、活力と特色のある新しい町づくりができ、新市として飛躍できるものと大きく期待されます。
 また、平成十四年十二月に行ったアンケートでは回答者の六八%が、さらに、今回住民の代表の皆様による署名活動においては有権者の約七割にのぼる三千三百余名の町民の方々が白浜町・日置川町・すさみ町の三町の合併を強く望んでいるところであり、このことを重く受け止めて今後においても従来から進めてきた三町合併を強く推進してまいります。
 今回、白浜町、日置川町においては、先行して二町での合併協議会が設置されますが、田辺広域合併での本宮町の例にあるように途中から協議会に参加することも十分ありえることから、町内の態勢を整えて今後もねばり強くはたらきかけていきます。
 このように広報を出してございます。これを起草した若い担当者のこの熱意を、何とか私個人的にも実現したい。そして、すさみ町のみならず他の町村においても、五十年、百年先の紀南地方を見据えて、胸襟を開いて速やかに協議のテーブルに着いてほしいと願うものでございます。
 以上で終わります。
○議長(尾崎要二君) ただいまの前川勝久君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 市町村合併についてお答えを申し上げます。
 本県の市町村は交付税依存度が非常に高いため、三位一体改革による地方交付税の削減等が続けば大半の市町村が財政再建団体に転落するおそれがあるという高知県の試算と同様の懸念があり、行財政基盤の強化は喫緊の課題と申せます。
 また、御指摘のとおり、同じ合併でも特例法期限内であるか否かについては、国のさまざまな支援措置の有無から大きな差があると認識しております。
 県内の合併の状況につきましては、各地で最大限の努力がなされる中で、さまざまな経緯により現在の状況に至っているわけでございます。県といたしましても、できる限り法期限内のより望ましい枠組みの合併が行われるよう、自主性を尊重しつつ、できる限り調整の労をとってきたところでございますし、またいろいろな支援を行ってきたところでございます。しかしながら、今回の合併は国の方針や地方分権の精神として自主的な合併として推進されてきたものであり、現行法においてはおのずから限界があるところでございます。このため、現在のところ、自治法に基づく合併推進の勧告がなされたのは日本で広島県一件のみというふうな状況になっているところでございます。
 県としては、大きな流れの中で和歌山県内の市町村がどのような形になっていくのが一番よいのかということについて責任を持っておりますので、住民福祉の維持向上や地域全体の発展を考えながら、議員の御指摘も踏まえ、今後ともより一層市町村と一緒になって合併推進に努力をしてまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 総務部長宮地 毅君。
  〔宮地 毅君、登壇〕
○総務部長(宮地 毅君) 市町村合併の具体的な対処方策についてお答えを申し上げます。
 御指摘のとおり、特例法期限内の大きな合併効果を踏まえますと、できる限り期限内の合併が行われることが望ましいと考えております。
 特例法の期限につきましては、先般の合併特例法の改正を受けまして実質的に一年延長されることになっております。また、現在県内で合併協議会を構成していない市町村においても、合併を目指す動きもあると承知しております。このため、県といたしましては、法期限内の合併をぎりぎりの最後まであきらめずに引き続き市町村と一緒になって合併推進に努力していくことが大切であると考えております。その際に重要なことは、それぞれ難しい個別の問題があるとは承知しておりますが、それぞれの市町村の自主性を尊重しつつ、住民の福祉の維持向上や地域全体の発展という合併の大局を見据えた議論が大変重要であることを引き続き粘り強く訴えていきたいと考えております。
 また、議員御指摘のとおり、三位一体の改革などによる交付税の減少が続く中で、この先、市町村財政を取り巻く状況は非常に厳しいものがありますので、高知県のように本県市町村においても現状と今後の状況を正確に認識した上で合併の判断をしていただくことが必要でございます。このため、県といたしましては、引き続き国の動向や今後の財政状況等についての市町村への説明に努力してまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、前川勝久君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十二分休憩
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