平成16年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十一番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 それでは、通告に従い、一般質問をさせていただきます。
 私は、さきの二月議会で、県によるコスモパーク加太へのトマト栽培施設誘致の問題点を取り上げました。その後、三月末に県とカゴメとの間で進出協定が結ばれたことを踏まえ、トマト農家だけでなく広く県民から注目されている問題として引き続き取り上げたいというふうに思います。
 私は、カゴメによるガラス張りの大規模ハイテクハウスの現場と近隣農家の様子を実際に確かめたいと、この六月一日に広島県の世羅町の世羅菜園、明くる日の二日には長野県三郷村の安曇野みさと菜園を調査に行ってまいりました。どちらもびっくりするほど巨大な施設でありました。
 広島県の世羅では、三年前に完成した約三ヘクタールの既存のハウスに加え、今五ヘクタールの新しいハウスを増設中でありました。ここは、建設業をされてきた方を中心とする地元の民間の農事組合法人が経営主体です。取締役の方は、この先トマトの供給量の増大や市場価格の低下で二割程度価格が下がっても大丈夫なように計画をしているということや、パック詰めを機械化して二割程度人員削減をしてコストダウンにつなげたいというふうにおっしゃっていました。経営や雇用はやっぱりシビアに見ているそうです。
 役場でお話を聞くと、この世羅町は広島県の中央部の台地に位置し、県内屈指の農業地帯で、世羅ナシやブドウ、花の生産で有名なところです。世羅町では以前にJT(日本たばこ産業)との契約栽培もやっていたそうですが、JTがトマト生産から撤退したのを受けて栽培はやめてしまったそうです。その農家の方々がカゴメと新たに提携をしたという話はなく、町内にトマト農家は一軒もありませんでした。
 明くる日に伺ったのは、ことし完成をし、操業をし始めたばかりの長野県安曇野みさと菜園です。三郷村はアルプスのふもとのなだらかな河岸段丘にある人口一万七千人の村です。農業の中心は、何といってもリンゴと米、そして畜産だそうです。ここは第三セクターで、事実上、村が経営をしておりました。村の担当者の方からお話を伺うと、ここでも以前は長野の気候を生かした加工トマトの栽培を行っていたようですが、現在、トマト農家は全くいない状況だそうです。
 安曇野みさと菜園では、生産部長さんからも詳しくお話を伺い、実際に施設の中も見学をさせていただきました。ハウスの中は思ったよりも暑く、気温は三十度台ですが、柱につるした温度計は四十度を超えて指すそうです。トマトは夏の暑さに弱いので、外気温度が三十三度を超えるとスプリンクラーが作動して気温を三度ぐらい下げる仕組みになっているようですが、これを思い切りやると井戸水がすぐに足りなくなるだろうと心配もされていました。
 この二つの施設を見て感じた特徴は、以下の四点です。
 第一に、どちらも大規模な国の農地開発の失敗遊休農地に目をつけてスタートをしたということです。第二点目には、地元農家との連携の姿が見えてこなかったという点です。第三点目には、水の問題です。栽培用の水だけでなく、水やガスを使って積極的に温度管理をするそのハイテクハウスならではの大量の水を必要とすると感じました。広島では格安の農業用水をふんだんに使っているようですし、井戸がちゃんと出ている長野県でも不安を持っている様子です。第四点目は、雇用の問題です。その実態は、年間を通じて一定の仕事があるというわけではない、雇用人数は四時間、六時間のパートも入れての数だという話でした。暑いハウスの中の仕事は思ったよりきつくて若いかなり元気な人でないと続かないということですし、また先ほど触れましたが、出荷作業の機械化が進むとこの先人手は要らなくなるシステムだということもリアルに見る必要があると感じました。
 私は、こうした実際のハウスの調査と並行して、二月議会以降も県内のさまざまな関係者の方々と懇談を重ねてまいりました。日高や那賀のJAの役員さん方は、県行政への不信感をあらわにしておられました。JAからは、企業の農業参入を進める特区構想やカゴメの誘致による甚大な痛手を受けるとして再考を促す要請書が県に提出されていると聞いています。「文書で回答してくれと言ってあるが、ナシのつぶてだ」と、怒りを隠しませんでした。
 また、あるミニトマトの生産部会では、十数人の役員さんが集まってくれました。そして、「県からは説明が全くない。高品質なトマトづくりに取り組む私たちを県は応援してくれていると思ったけれども」と戸惑いを隠せません。また、「高品質化のためにハウスに換気用のファンをつける国の補助事業があるんですが、県は一円も援助してくれない。カゴメにそんなお金を出すのなら」と憤慨しておられました。
 一方、産直に取り組んでおられる紀ノ川農協では、年間通じて一株買い取りのシステムでシーズンを通じて配達をし、消費者からもトマトらしい味がいいと好評だそうですが、ここでも大阪市場のトマトの価格相場が値段設定に響いてきているそうで、カゴメトマトの影響は消費者全体の購買力が落ちてきている中で脅威だというふうにおっしゃっていました。こうした農家の不安にこたえる県の姿勢が見えてこないというふうに思うんですね。
 こういった点に基づき、私はまず第一の質問として、二月議会以降、農家と関係団体への説明や県内農家への影響調査はどのように進められてきたのかをお尋ねいたします。農林水産部長よりお答えをいただきたいと思います。
 次に、私は用地の賃借料の設定について質問したいと思います。
 今回、一平方メートル当たりの値段、年間百円という価格設定をして協議しているというふうに聞いております。その根拠とした経済効果を社会経済研究所の試算では二十年間で五百八十億円の経済効果と大々的に評価をしているのですが、この試算であらわれた問題点を指摘してみたいと思います。
 まずは、県内への経済波及効果の低さです。建設費など一過性のものよりも営業に伴ってどう波及していくかというこの第一次波及効果、この欄を見るとよくわかるんですが、県内への誘発額は二十年間で十一億円。これと比べて県外へは九十三億円。こういうふうに、県内分はわずか全体の一割ぐらいにしかすぎないんです。これは、カゴメは苗は県外から持ってきますし、肥料や農薬、ロックウールなど資材はほとんど県外調達であり、地元調達率の低い事業であるということから来ています。
 その反面、県内農家を初めとするマイナスの経済効果は全く試算をされていません。県内トマト農家の生産額は年間十七億円です。市場は一割入荷がふえれば二割値段が下がり、二割ふえたら半値に下がるとまで言われてきました。実際に、この四月、五月は好天に恵まれて入荷が順調で価格が大きく下がったということも報告されています。この価格低下傾向に関西でカゴメの参入が影響し、もし仮に二割値段が安くなったとすれば二十年間で合計七十億円の県民所得が失われることになり、雇用の創出という看板であるパートの人件費二十年分が全部消えてなくなる、そういう計算になります。それどころか、一層農業の衰退を招きかねません。県内の地場産業と比べても地元への経済効果や他産業への波及効果が低く、県民の所得がマイナスになる要因を抱える今回の誘致を決してバラ色に描き出せるものではないと指摘せざるを得ません。
 そういう今回の誘致に対し、土地代が一平方メートル当たり年間百円というのは他の県内企業用地と比べても安過ぎるのではないでしょうか。私はこの価格の見直しを求めるものです。県が開発公社から借り受ける原価は五百六十円程度。たった六分の一しか請求しないことになります。この差額は年間一億七千万円、二十年間で約三十四億円にも上ります。これは県民の税金で賄うことになります。加えて土地造成費用の二十億円、税金の優遇措置など、合わせて数十億円の補助をする計算になると思います。
 今年度予算の編成においても「お金がないから」と言って県民向けのわずかな予算にも大なたを振るいながら、一営利企業の経済活動にこれだけの県民の税金を投入するのは納得できるものではありません。「県民に向けた県政か、一企業に向けた県政か」、こういう批判の声が上がっているのも私は当然だと思います。
 知事にお尋ねをいたします。
 一平方メートル当たり百円という賃貸料金は他の県内企業用地と比べても格段に安過ぎ、土地造成費用の約二十億円と合わせて、事実上一企業への過大な税金投入となるのではないか、この点について御答弁を願います。
 次に、緑の雇用事業について伺います。
 森林の持つ公益機能に着目し、環境保全事業を展開することによって新たな雇用を創出し地域の活性化を図るとしたこの緑の雇用事業については、私どもは応援する立場で注文をつけてきました。この緑の雇用も三年目に入り、すぐれた成果を開拓しながらも、国の緊急雇用対策の終えんなどを控えて正念場を迎えていると感じています。緑の雇用の実際の現場では、積極面を評価しながらも、率直な意見や提案、批判も出されています。その生の声を紹介しながら、今後の方向について質問をしたいというふうに思います。
 この間、本宮町、中辺路町、龍神村、清水町と回って関係者から声を聞いてまいりました。地域のリーダー的な山林業者の方は、「大変いい事業だが」と前置きをして「せっかくの若い子らを短期間で帰してしまっていることにはなってはいないか」、こういうふうに指摘をされました。
 Iターン者の方々にお話を伺うと、「とっても仕事は楽しいが、先が不安で仕方がない」という答えが次々と返ってきました。「今の収入では、子供が大きくなったらやっていけない。戻るなら今。しかし、ここでほかのことにかけてみるのも今と悩んでいる」、こういうふうにおっしゃいます。そして、「一緒に働く高齢の山林労働者の皆さんには頭が下がります。でも、五年後ぐらいには世代交代が必要な時期が来ると思うんです。そのときに役に立ちたい。僕たちはすぐには一人前になれなくても、四年か五年あればせめて半人前ぐらいにはなれると思う。その間、やる気がある人が続けられるようにしてほしい」、こういうふうに言います。また、ある奥さんは、「今の制度では六カ月ごとに肩たたきをされているように思えてくる」と、六カ月、一年間で区切られ、来年の予算はわからないという中での不安をにじませていました。森林組合の方は、「一人前になるまで所得の補てんをしてあげて、一人前に旅立てるようにすることが本当だろう。不安な中で仕事をしていてもいい結果は出ないと思う」と言います。自転車操業のような細切れの形を改めるべきだと強く感じました。
 次に、「環境保全で雇用の創出」というのが事業の目的なんですが、肝心の環境保全の事業が全体として山の仕事をふやすというところまでいっていないという点があります。あるIターンの人は、「環境の面からも山を大事にするというそういうやりがいのある仕事が和歌山にあるというふうに思ってやってきた。過疎で若い後継者がいないから募集をしている、そう思ってやってきた。しかし、実際は違った。人がいないのではなく、仕事がなかった。僕らが緑の雇用を終わったら山に仕事はないんだ。へえ、そうなんだと感じた」と言うんですね。
 また、地元の山林労働者の声は実感がこもっていました。ある男性は、「去年は三カ月しか仕事がなかった。五十三万円の収入だった。緑の雇用にはみんな期待していた。山のことに政治が目を向けてくれたと思った。月のうち一週間でも十日でも仕事ができるのではと期待をした。よそから来てくれた若い子らとまじり合うて仕事ができるようになると希望を持った。しかし、実際は私には何の仕事も回ってこなかった」とおっしゃっていました。肝心の環境保全の仕事や林業が業として成り立っていくその方向性がないと、この緑の雇用は一時的な職業体験で終わってしまうんではないでしょうか。
 また、昨年度、農林水産委員会でも意見が多数出されました緑の雇用担い手住宅、これも実際に回ってみますと問題点がよくわかりました。「きれいな住宅を用意してもらってありがたい」、こういう感謝の声とともに、「台風が来るというのに、雨戸もない。山は虫が多いのに、網戸もなくて窓もあけられない。細長く大きい窓なので既製品も合わずに、後から網戸をつけるのにもかなりの出費だった」とか、「おふろの給湯が田舎暮らしにはコストの高いガスのボイラーで、ガス代が月に四万ほど要るのでふろには毎日入れない」などの意見が次々と出され、和歌山の山間地での生活にマッチしないまるで都会のモデルハウスのような住宅に役場関係者からも批判が続出をしました。「県は国の予算をとってこなければならないので、実績づくりに必死だったように思う」と言うんですね。「言いかえれば、格好をつけるのに精いっぱいで、地域に合わせた柔軟性がなかった」というふうな声も聞かせていただきました。
 私は、これらの点を踏まえて、以下三点にわたって質問をさせていただきます。
 まず、知事に伺います。
 担い手を育成するという点では、六カ月や一年ごとの細切れの制度ではなく、技術的にも生活面でも見通しの持てる四、五年の期間を打ち出すべきではないか。
 そして、二点目には、「環境保全で雇用の創出を」というスローガンを掲げながら、肝心の森林整備の予算が不十分。林業が業として成り立っていくような方向性や環境保全事業の方向性などの展望が持てる事業であるべきではないか。そのためにも、山を荒廃させた国の林業政策の転換を迫るべきではないか。御答弁を願います。
 そして、農林水産部長には、緑の雇用担い手住宅での問題点などに学び、農業との組み合わせなど、今後の方向性は地域の実情に合わせて県内市町村ともよく相談しながら進めていくべきではないかという点についてお答え願いたいと思います。
 質問の第三の柱、有田川の問題に移らせていただきます。
 私は、昨年の九月議会で洪水対策としてのダムの操作規則見直しを取り上げました。今回、川の濁りの面から有田川の問題を取り上げたいと思います。
 去る五月二十六日から有田川でもアユ釣りの解禁となり、この日を待ちかねた人々が近隣他府県からも大勢おいでになるシーズンとなりました。しかし、ことしの解禁日は、五月十三日夜から降った雨によりダムが泥濁りとなって、つい最近まで約一カ月にわたって濁りが続いてきました。解禁日の釣り客は例年の半分程度であったと言われています。
 雨が降ったら川が濁るのは自然のことでありますが、雨が上がれば支流の水がまず澄んできて、そして上流からの水もだんだん澄んでくるわけですが、二川ダムを持つ有田川はこのダムがあることによって濁りがいつまでも続くことになっているわけです。有田川漁協の組合長さんに話を伺うと、「ダムと発電所にしょっちゅう言うていくが、さっぱりらちがあかん。ことしはアユの遡上も多くて最高やと思っていたのに」と嘆きます。
 なぜダムによる濁りが続くのでしょうか。それは、この二川ダムは御荷鉾構造線という四国から続く大きな断層、破砕帯の真横にあり、粘土の粒子が細かく、一度濁るとなかなか水が澄みにくいという地質的条件があるんです。それに加えて、多目的ダムの構造上、可能な限り満水に水をためて発電用の水を確保するということになっている、これが原因です。
 この六月十五日からはやっと夏季制限水位となって、大雨に備えてわずか五メートルばかり水位を抑えることになっていますが、それまでは海抜二百一メートルまでためるのが規定になっています。ダムゲートの最高の高さが二百三メートル、ダムのてっぺんが二百四メートルしか高さがないわけで、まさにぎりぎりのところまでためておく設計なんですね。二百メートルの高さまで水がたまると、東京ドームの二十杯以上の二千六百万トンの濁り水をどっさりためることになります。上流からわずか毎秒数十トン程度の澄んだ水が流れてきても、ちょっとやそっとでは濁りがとれない、こういうわけなんです。
 また、言うまでもなく、災害対策上も満水での運用は不意な雨に対応できません。一例として、ことしのアユの解禁前の雨とダムの関係をデータで見せてもらいました。五月十三日の夜に山間部でまとまった雨が降りました。有田川水系でも五十ミリ程度の雨になったんです。そうすると、一晩でダムがいっぱいになってしまいました。それもそのはず、初めからダムの水位が高過ぎるんです。わずか毎秒三十トンから九十トンの流入量の雨が一晩降ると、海抜百九十五メートルの水面がもう二百メートルぎりぎりまでぽんと上がってしまうわけです。地元の住民からは、「雨が降るのわかってたら、早うからちょっとずつ放水すりゃええのに、いっぱいためてからどんと放流する」とか、「濁った水をダムいっぱいためやんと、濁った水は早う出してしもて、上流からの水が澄んでダム湖もきれいになってからゲートを閉めたらええのに」、また「何せダムの所長がかわって新人が来たら水をいっぱいためるんで恐ろしてかなわん。ダムの水位をうんと下げてほしい」など、不安と怒りの声がいっぱい出されています。
 以上の点から、ダムと発電事業のあり方について考える時点に来ていると思い、二点についてお尋ねをいたします。
 まず、県土整備部長に質問します。
 二川ダムは常時ほぼ満水になるよう運用されているので、一度濁るといつまでも濁りがとれず、また不意な大雨に対応できない危険な状態です。雨の多い時期のダム水位をもっと下げるよう操作規則を見直すべきではないかと思いますが、御答弁願います。
 次に、発電事業と治水の関係です。
 私は、水力発電が全部だめだという立場ではありません。自然エネルギーを有効に利用すべきですし、今後はダムのようなものではなく、小規模な環境負荷の小さい水力発電が主流になってくると考えています。しかし、この二川ダムの場合で考えると、近年の自然条件の変化も踏まえ、濁水問題の改善のためにも、また洪水対策のためにも、ダムの水位を下げるために発電の貯水量を減らす必要があると考えています。発電のための貯水は冬だけにするとか、雨が多い時期には発電をやめて水位を下げ、雨が降ったときの放水で発電するだけにするとかの方法もあるでしょう。こういうふうに、ダムによる発電の貯水量、スタイル、方向性を見直す時期に来ている。加えて、一昨日の答弁にもありましたように、企業局廃止で発電そのものをどうするかということも検討するという状況もあり、タイミングも外せない問題だと思っています。
 知事にお尋ねをいたします。ダムを満水にするぐらい川の水を大量にせきとめることの環境面、治水面でのデメリットを今日的に考慮し、ダムによる水力発電の方向性を見直すべきではないかという点について御答弁を願います。
 最後に、四つ目の柱として、間近に控えた高野・熊野の世界遺産登録が契機となり、このことが県内各地の歴史文化や観光に光を当て、そして町づくりの追い風になるよう願って質問をさせていただきます。
 先日、県の観光課が熊野古道の散策マップを八分冊で作成されました。駅から駅へ歩けるような大変いいものをつくっていただいたと考えています。その熊野古道が海岸部の町中を通るというのが有田郡の湯浅町です。この湯浅町は、熊野古道の通る町として、またしょうゆ発祥の地として古くから栄え、現在でも往時を伝える町家や史跡、迷路のような小路が数多く残り、懐かしく落ちついたたたずまいを残す町であります。
 このしょうゆ倉やみそづくりを初め、歴史的な価値を持つ建造物や町並み、これを生かした町づくりをと、国の伝統的建造物群の指定に向けた調査が文化庁や県文化財センター、そして大学関係者、識者の皆さんによって行われ、専門家からも指定にふさわしいその価値が認められています。この伝統的建造物群の指定は全国で約六十カ所、近畿では大阪富田林の寺内町や奈良の橿原市今井町など、各府県で合計約十カ所あるわけなんですが、残念ながらまだ和歌山では一件も指定をされていないんですね。その和歌山初の指定を目指して頑張っています。
 湯浅町では、町民参加による町づくり委員会の答申を受け、歴史的景観を生かし、町中の商店街に活気をと、古道の通る中心市街地の活性化に町民や商工会、町行政が取り組み、町並みそのものを美術館に見立てた街角ミュージアムや散策マップも発行され、歩道整備もことしから始まります。「サバっとアジまつり」やことしから始まった「白魚まつり」など、地元特産品を生かしたイベントも盛り上がっています。
 知事にお尋ねをいたします。
 世界遺産登録と相まって、熊野古道が町中を通るこの湯浅町での町並み保存や中心市街地活性化など、歴史文化や観光、町並みを生かす町づくりの取り組みに追い風となるようぜひ支援をしてはどうかと思いますが、所見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
 以上で、第一回目の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○副議長(吉井和視君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、コスモパーク加太へのトマト菜園の誘致についてでございますけれども、このコスモパーク加太の利活用というのは和歌山県にとって本当に長く積み残されてきた非常に重要な課題でございまして、それをカゴメに貸して、そしてトマトを生産するということになったわけです。
 御質問の中にありましたように、トマト農家への影響ということについては私も物すごく重く受けとめておりまして、できるだけの共存が図れるようにいろいろ手を尽くしているところでございますが、何分これ和歌山県にできなくても近畿のほかの県にはできるということもありますので、そういうことからいえば和歌山で雇用が確保されるということは、まあ私は結構なことじゃないかと思っております。
 それから、賃貸価格ですけども、賃貸価格の設定に当たっては、県議会のコスモパーク加太対策検討委員会からの「民間企業へは無償も視野に入れて貸し付けることなど、相当思い切ったインセンティブを導入すべき」との御報告も踏まえ、雇用者数、経済波及効果等を勘案して、他県の状況も勘案しながら一平方メートル当たり百円というふうに決めたということでございます。
 次に緑の雇用についてでございますが、緑の雇用についてのただいまの御質問の中身、私にも非常に参考になるものがございました。しかしながら、そういうふうな厳しい条件の中でも新しいことをやっていっているということにやはり僕は意義があるというふうに思っております。
 私も、今は二年間までの雇用になっておりますけども、これを三年、四年と延ばしていけるような形で国に対して働きかけを行い、そしてその結果として先日の「骨太の方針」の中に大きくこの緑の雇用が取り上げられたということは、これはやはり国の方もこの事業を今後も続けていこうというふうなことだと思っておりますので、和歌山県の独自の施策も踏まえてこの問題について対応をしていきたいと思っております。
 それから、国の方の林業政策の転換ということですけども、林野庁も大きく変わってきておりまして、林野庁、この緑の雇用を施策のほぼ中心に据えるぐらいまで変化してきております。まだ十分とは言えませんけれども、やはり環境問題ということが国を挙げての事業ということになってきておりますので、こういうふうな面もあわせて働きかけを強めていきたいと、このように思っております。
 それから、有田川のダムの話でございますけども、私は水力発電というのは非常にクリーンなエネルギーで有用だというふうに思っておりますけれども、その放流の仕方等について、地元の方々の意見というふうなものにも私はやはり聞くべきものがあるというふうに考えておりますので、これはそういうものに虚心坦懐に耳を傾けて対応できるべきものは対応していきたい、このように考えております。
 それから、世界遺産の登録と相まって湯浅町の町並み保存ということでございますが、私もかねてから、他県には非常に、例えば徳島県の脇町でありますとか、それから愛媛県の内子でありますとか、このあたりでも奈良県の橿原にある今井町でありますとか、いろいろ非常に整備の整った歴史的なものを大事にしている町があるんだけど、和歌山には意外とそういうものがないというふうなことを残念に思っておりましたけれども、湯浅町、非常に住民の方も熱心に取り組んでおられるということでございますので、県としてもできる限りの支援ということをしていきたいと、このように思っております。
○副議長(吉井和視君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) まず、コスモパーク加太へのトマト菜園誘致についてお答えいたします。
 二月議会以降、農家と関係団体への説明や県内農家への影響調査はどう進められてきたのかということでございますが、山下議員にお答えいたしましたように、これまで関係団体に働きかけ、県内JA組合長・常任理事会議を初め、県養液栽培研究会において直接カゴメ株式会社からトマトの生産計画について説明を受け、種々意見交換が行われるなど、積極的な取り組みも見られてございます。さらに、地域段階においても研修会が開催されるなど、新たな取り組みも行われていると聞いてございます。農林水産部といたしましては、各振興局を初め組織を挙げての対応を進めてきているところでございます。
 しかしながら、県内トマト農家では品種的には競合しないものの今後の経営に大きな不安を抱いており、県としても他県での先進事例を参考にしながら、今後ともさらにあらゆる機会をとらえ農家の意向や実態把握に努めるとともに、共存できる体制づくりとトマト農家にとって向かい風とならないように努力してまいりたいと存じます。
 次に、緑の雇用は地域の活性化を図ることを目的としており、議員お話しのとおり、市町村との連携は不可欠となってございます。また、所得や住宅の確保のために市町村と協議を重ねておりますが、例えば梅の剪定や収穫といった農業の繁忙期に業務提携するなど、市町村やJAとの連携をより一層深めていきたいと考えてございます。
○副議長(吉井和視君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 有田川の濁水、災害対策についてでございますが、洪水の初期段階からできるだけ多くのダム放流を行い、ダムの貯水位をあらかじめ低い状態にした上で洪水調整を行うとともに、ダム貯水位のより低い状態から洪水末期の比較的濁りの少ない河川水をより多く貯留することは、洪水対策のみならず、濁水長期化対策としても有効な施策であると認識しているところでございます。
 現在、二川ダムにおいてはより効果的な洪水調整を行う観点からダム操作規則を見直すべく検討を行っているところですが、濁水長期化対策の観点からも、より効果的なダム運用ができるだけ早く行えるよう検討を進めてまいります。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 それぞれ答弁をいただきました。積極的な御答弁もいただきましたし、より一層取り組みを強めていただきたい、そういう問題もあります。
 今回、私はトマトの問題に絞って再質問をさせていただきたいと思います。
 農林水産部長から答弁いただいた県内農家への説明と影響調査、これについては答弁していただいた取り組み、そして私紹介したその実態、これ非常に不満であります。それだけしか説明に行ってないのかということになるというふうに思うんですね。
 また、影響調査、これについてはどうやっていくのかというのは本当にまだはっきりしません。農家の立場に立ち県内農業の振興を図る直接の部署として責任ある説明、そして調査をするよう、重ねてこれは要望しておきたいというふうに思います。
 次に、その税金投入の問題で知事に再質問をさせていただきます。
 ただでもいいという検討委員会の意見を踏まえて百円は仕方がないと、こういう答弁であったかと思うんですが、しかし、知事、他の県内の企業用地と比べたら、その価格の差はいかにも開きがあり過ぎるというふうに思いませんか。ここにあるのは「和歌山県企業局造成地分譲・賃貸価格表及び各種優遇制度のあらまし」、こういう県のパンフレットなんですが、これ見ますと、和歌山市内の西浜地区の工業用地、これ年間の貸し出し価格、年額二千七百円です。御坊の第二工業団地、これ年額千七百円です。最近できたところでは日高港、これも千六百五十円程度と。これらと比べると本当に十倍、二十倍以上の開きがあるわけなんですよね。
 これらの工業・企業用地には、既に県内企業にも利用されてますし、また募集もしています。不況の折、この賃貸料金の引き下げを要請されているというふうにも聞いております。しかし、これらの県内企業には「造成費用や他の用地の価格との関係もありますので」と丁重にお断りをしておきながらコスモだけは別格だと、こういう理屈は通らないというふうに思うんです。県内企業や県民に到底納得を得られないんじゃないかと思いますが、この点についてどうお考えになっているのか、再度答弁をお願いしたいというふうに思います。
○副議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) コスモパーク加太につきましては、御案内のように非常に大きな土地、これをたくさんの企業で埋めていくというふうなことが可能であれば非常に好ましいわけですけども、なかなかそうはいかない。やはりその中核となる大きな部分を占めるものが必要だというふうなことが一つあるわけでございます。
 それから、もう一つは、あそこは造成は全然されてなかった、もうそのままの土地だったので、やっぱりそれなりのお金は、ものを呼んでくるときには必要であるということで今造成がかかっているというふうなことがあります。
 それから、農業を──トマトをつくっている農業者の方との問題は、先ほど言いましたように、これは説明責任を果たし、そしてまたいろいろな協調していくような仕組みを考えていかなければならないわけですけども、一つこのトマトというふうなものをつくっていくということが、ある意味では自然に優しい開発であるというふうなことのイメージが高いということも、これの進出が決まるときにあったということもこれまた事実でございます。
 そういうふうないろいろなことを勘案した中で、そしてまた先ほど御質問にもありましたけども、私の方が答えたように、議会の決定というふうなことも踏まえた上でこのような価格にしたというふうなことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 今、知事の方からは中核としてのものが欲しいんだと、またトマトの栽培は自然に優しいと、こういうものなのでぜひ理解してほしいという答弁であったと思うんですが、その答弁にどれだけの県民の方が納得できるかなと私は思うんですよ。
 というのは、価格をまけてもらう当のカゴメの方はそら納得されるでしょうけども、そのまけるためにしわ寄せを受ける県民は私は納得できないというふうに思うんですね。まさに大企業優遇じゃないかというふうに思うんです。県内の中小企業や中小業者の方に、今回カゴメにするだけのそんなふうな手厚い援助をしてるでしょうか。県内の農家の方々にそれだけの援助をしているというふうに映ってるでしょうか。もうけなくてもええけれども、大きな損をしない額に設定するべきじゃないかと思うんです。今回で言えばその持ち出し分。県の持ち出し分を、この予算を県民向けに使うことができたらどれだけのことができるだろうかという思いをしながら、私は答弁をお聞きいたしました。
 それから、その自然に優しいという話ですが、私もあちこちのハウスを見せていただいて思ったんですよ。そらまあ、公害をまき散らす企業よりは優しいかもしれません。でも、水も化石燃料もばんばん使うそういうハイテクハウスが本当に自然に優しい農業生産なのかという点では、いろんな意見があろうかというふうに思います。
 いずれにせよ、今回のその誘致にまつわるこういう税金投入、これは過大な税金投入であって私は認めるわけにはいかないということを強く申し上げて、今回は終わりたいというふうに思います。
○副議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 この際、十分間程度休憩いたします。
  午後二時二十六分休憩
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