平成16年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時一分開議
○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第八十九号から議案第九十八号まで、並びに知事専決処分報告報第六号から報第十二号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十八番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 一番目に、登録を控えた高野・熊野世界遺産にかかわる保護管理についてであります。
 今月末に中国で開催される第二十八回世界遺産委員会蘇州会議において、いよいよ高野・熊野地方の世界遺産登録決定を迎えるわけですが、最終局面を迎えている今、せっかくの世界遺産の保護管理について、今からでも遅くないと思いますので、確認の意味でも以下質問をさせていただきます。
 神仏習合の熊野三山、開祖弘法大師空海の密教・高野山の遺産は、世界に誇る神仏宿る聖地として日本固有の宗教・文化遺産であり、我が和歌山県に高い文化意識をもたらし、大自然とともに文化的遺産の保護管理の重要性を改めて認識させてくれる遺産登録に御尽力、御推進いただいた知事初め県当局の皆様に敬意を表するものであります。
 平成十二年四月に世界遺産登録推進室が設置されて以来、県の指導のもと、高野・熊野の遺産をいかに守り伝え、さらに広く県内外にどのように情報発信していかに多くの観光客や参拝者にお越しいただくかと、県下地元自治体や支援団体が一生懸命取り組んでこられたようですが、その遺産にかかわる史実を正しくつかむための歴史的実証にもなかなか御苦労されていることと思われます。登録後も、世界遺産を守り正しく後世に伝えていくため、さまざまな課題解決のためにさらなる御尽力を、県市町村を初め各支援団体にお願いいたす次第であります。
 現在、世界遺産は七百五十四カ所が登録されている中、そのうち約三十五カ所で破壊が進行していると聞いております。例えば、カンボジアのアンコールワット、それに中国の万里の長城では基礎となる石段を心ない人が持って帰って自分の家の前の石垣に使っているような事例も出てきていると聞きます。
 ここで、高野・熊野においても遺産登録について幾つかの懸念がございます。世界遺産の声が盛り上がってくるに従って、熊野古道及び周辺地域にちょっとした異変が起こっております。
 まず、各古道にハイカーが目立ってふえてきたことです。彼らは単なる観光客ではなく、古道探索また走破を目的とした最低限度の旅支度がなされた旅行者であり、日帰りあるいは数日をかけた古道縦走とさまざまですが、季節にもよりますが、多いときには十組を超える四、五人のグループが中心のハイカーで、特に熊野川町小口より約十六キロの中辺路大雲取山越前峠越えの那智山、青岸渡寺方面へ向かう古道はにぎわっているとのことです。ハイカーがふえること自体は遺産登録の効果であることはもちろんであり、さらなるハイカーに古道を訪ねていただいて、旅行者の訪問が周辺地域への観光につながるよう期待することは自然であります。
 しかし、熊野古道には、いにしえの参拝者が残した数々の物語、中には道中病にて熊野参詣かなわず、あるいは帰路不幸にして自然災害に遭ったりして死を免れず埋葬された無縁仏、あるいはあかしとして刻まれた地蔵などの小さな石仏、石碑、供養塔、多宝塔等が無数に埋もれていると言われます。その歴史の証言者である無名の小さな石仏等が、何と奈良、京都などの一般の骨とう市に出ていたりネットオークションで売られていたというショッキングな話を聞き、未確認ではありますが、衝撃を禁じ得ません。古道にある石ころ一つも、言ってみれば遺産であります。
 また、石碑や道標に刻まれた文字の拓本をとるために、遺産の風化を進めてしまう所作になりかねない、コケむしたその表面を洗う作業のための水を入れてきたペットボトルがごみとして石碑の周辺に無造作に捨てられている光景も目にするわけでありまして、まさに和歌山県の文化度が疑われるというゆゆしき事態であります。
 さらに、千メートル級の山系が熊野灘に迫る地形である那智熊野山系は、温帯植物と高山系の植物が混生する極めて特殊な地域であり、鑑賞用に珍重されるラン科のカンラン、シュンラン、エビネラン等、あるいは昔より漢方薬として知られるセンブリのもとになるリンドウ、ツツジ科の常緑または落葉低木の植物が古道沿いに見られ、かの南方熊楠も珍重したような植物が数多く生息しておりますが、万葉の時代から親しまれた草花を根こそぎ掘っていった形跡が最近後を絶たないようであります。今のままでは絶滅してしまうのではないかと憂慮をいたします。
 残念ですが、背中のリュックサックに何らかの重量物や植物を持ち帰るようなハイカーがあり、また古道周辺には実際何らかを採集した掘り起こした跡が見られるわけであります。かつて、心ない写真家が熊野山系の貴重なラン類の自生地を発表したことが契機となってラン類が数年で取り尽くされた例もあり、関係者の努力によってようやく今少しずつよみがえっていると言われ始めたやさきであります。ともすると経済優先主義になりがちで、どうしても遺産の保護管理がおろそかになるものです。それらの保護管理、セキュリティーはどのような現状なのか、また登録まで時間の限られている中、どのように取り組まれていくのか、教育長、お示しください。
 また、インターネットオークションの流れ等についても調査をいただきたいと思います。
 そして、植物学者と専門家の助言をいただいて植物の生態調査や保護の指導を行っていただきたいと思いますが、環境生活部長、いかがでしょうか。
 例えば、一九九三年に登録された鹿児島県屋久島では、地元の説明者であるインタープリターが旅行者の方々と同行して自然環境保護の意識を高めていると言われます。ぜひ高野・熊野の地にも観光客からの問いかけにわかりやすく答えられる説明ができるインタープリターが少なからず必要であると思いますが、いかがな状況でしょうか。森林労働者や地元のボランティアにもぜひ協力してもらってインタープリターがわりになっていただく、そして遺産の保護管理にいつも目を配っていただく、そして日々記録づけをしていくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。商工労働部長にお伺いいたします。
 また、海の方から一段駆け上がる那智熊野山系は、天候の変化も激しく、冬にはかなりの積雪を見せ、夏季の雨の激しさは尋常でないと地元の方は語っておられます。当該古道約四里には現在、地蔵小屋にトイレと休憩所が設置されておりますが、強い風雨や雪をしのぐには少し厳しい状況であります。事故、被害を事前に防ぐためにも休憩所の充実、すなわち修繕や全体にわたって不足がちな休憩所、トイレを何カ所か増設するなど、取り組んでいただきたいと思いますが、商工労働部長、いかがですか。
 そして、世界遺産登録という願ってもないチャンスに、とかく経済優先の期待感が強く積み残され後世に憂いを残すことが少なくない事例を懸念する立場で、このままでは古道に存在する石仏や草花の悲鳴が聞こえてくる気がしてなりません。世界に誇れるこの遺産を後世に責任を持って引き継ぐためにも、国の内外に発信する知事の決意とアピールをお伺いいたしたいと思います。
 二番目に、里浜づくりについてであります。
 平成十四年度より国土交通省港湾局では、人と海辺のかかわり方を再検討し、人と自然が共生した新たな海辺の文化を創造し、多様な主体の協働による里浜づくりを推進するため、新たな海辺の文化の創造研究会を設置しております。海辺は、人間の生活に潤いをもたらし、文化を創造する役目もあれば、たくさんの生物の生息・生育の場でもあります。
 本年度の新規事業として県は、和歌山里浜づくりとして人と海辺とのかかわりを強くし、良好な海岸環境の創造に資するために開催する地元主導のビーチスポーツ祭典を支援するための事業を進めていただいております。まさにそれにふさわしい海辺が、和歌山市の和歌浦地域の片男波、そして西は雑賀崎、南は浜の宮から和歌山マリーナシティまで続く海岸線であります。
 この里浜づくりの何よりのポイントは、地域や市民が自分たちの共有財産として自分たちで協働して管理し、環境の保全や魅力的な行事を推進していこうというところであります。景気の本格的回復が当分見込めない財政状況の厳しい中にあっては、行政だけに頼らない市民レベルの自然環境、資源を生かした里浜づくりは大きな可能性を秘めた地域おこしであり、一つの港町づくりであると思います。
 私も、ある企業の研修保養所をお借りする形で、万葉時代からのいにしえの歴史と風光明媚な景観を誇る和歌浦の地で、文化芸術、福祉、教育、そして観光などのための活動拠点づくりを、まず長年放置されたままのところを志のある人々と一緒に清掃活動から始めて、市民参加、市民主導でNPOとしての運営を推進していけたらと思っておりますが、こうした活動拠点づくりと里浜づくりとがうまくリンクできれば和歌浦の活性化は大いに進むのではないかと思います。
 そこで質問ですが、一番目、本年度の和歌山里浜づくり事業における二〇〇四年「マリン・ビーチスポーツの祭典in WAKAYAMA」の具体的内容とコンセプトを知事から聞かせてください。
 二番目、和歌浦の海岸沿いは、片男波海水浴場のような砂浜だけでなく、いそ遊びのできるところや整備された遊歩道もあり、また海から見た景色のすばらしいところです。いろいろなビーチスポーツ、そしてマリンスポーツができるところです。この里浜づくり事業を契機に和歌浦の地に海洋スポーツ文化を定着させていくことが何よりの地域おこしになると思います。市民的盛り上がりを県もバックアップしてぜひ継続的事業としてリードしていただきたいと思いますが、いかがですか。県土整備部長に御答弁願います。
 三番目、高野・熊野の世界遺産を見に来ていただいた人にぜひ紀北地方、和歌山市へお立ち寄り、お泊まりいただいて旅の疲れを取っていただきたいと前々から申し上げておりますが、そのためにも里浜づくりは欠かせませんし、そこにさらなる魅力をつけ加えるとすれば、やはり温泉であり、和歌浦ならではの料理だと思います。地元関係者、例えば自治会、旅館関係者、漁業関係者が同じテーブルに着いて議論していく、新しい戦略を生み出していくことが大切であります。ぜひそのような活動に対して、当局におかれましても御理解をいただいてフォローアップしていただくことを要望しておきます。
 四番目、次に、片男波の護岸事業についてでありますが、私も小さいころからよく和歌浦干潟へ出かけては、アサリ、たまにとれるハマグリ、そして釣りえさのゴカイをよく掘りに行ったものです。当時、左右のはさみの大きさが異なるシオマネキといったカニなどの小生物にも大いに興味を覚えたものです。観海閣へ渡る橋から下をのぞくとチヌやカレイの稚魚のような魚が今でも見受けられますし、たくさんの生物の生息・生育場所にもなっている貴重な地域であります。
 ただ、和歌浦における、片男波における海洋文化を定着させるためにも、自然と住民とが共生できる護岸は安全面からも整備されなければならないと思います。現在の当局のお考えをお聞きしたいと思います。県土整備部長からお願いいたします。
 五番目、里浜づくりにあっては、自然環境、住民の生活環境を守っていくための市民の清掃活動やルール・マナーの啓発活動は欠かせないものであります。この和歌山里浜づくり事業を招致するに至る地元先導の積極的なボランティア活動には大いなる敬意を表するものであります。子供たちにとっても、ボランティア活動の中へ入り込んでせっかくの自然資源をみずから磨いていく活動、そして自分たちが磨いた海辺で自然学習、自然と親しみ遊ぶとともに自然の脅威に対する自衛、防御の意識を持てるようになれば、こんなすばらしい道徳教育、社会教育、自然科学教育の場はないと思います。里浜づくりをぜひ教育の場としても積極的に活用いただきたいと思いますが、教育長、いかがですか。
 三番目に、生活の手段として欠かせない南海電鉄についてであります。
 平成十五年九月議会における予算委員会でライフラインの確保に関連して一般質問をさせていただきましたが、利用者の立場で今回も質問させていただきます。
 JR阪和線においても、ことし十月より紀の川橋梁、長さ四百八十六メートルのかけかえ工事に着手されます。この橋は昭和五年にかけられたものであり、七十四年を経過しており、平成十九年度中に新架橋に切りかえて同二十一年度中に旧橋梁を撤去するとのことです。
 南海電鉄の紀の川鉄橋はことしで百一年目、さきの南海地震や阪神大震災も経験して無事乗り越えてきたつわものではあります。昨年九月の野添企画部長の答弁によりますと、南海側も検査診断専門会社とともに平成十三年十一月から同十四年三月に大規模な検査診断を実施、補修も行っていただき、下部工、橋脚の検査について河床の変動調査と橋脚の衝撃振動調査を実施いただき、異常はなかったとのことですが、県としても会社に対して本県の地域防災計画の鉄道施設災害予防計画に基づいて徹底を図っていただくよう申し入れを行っていただいたとの答弁をいただきました。危機管理という面から、来るべき東南海・南海大震災が襲来したときの耐震性と津波への耐久性、安全性をいま一度再確認いたしたいと思います。企画部長、いかがですか。
 次に、会派の和田正人先輩もこれまで何度となく県議会で訴えてこられ、御尽力されております和大新駅についてでありますが、平成二年に和歌山大学駅設置促進協議会が発足、新駅を核とした新しい町づくりに取り組まれ、概略設計が県、市、南海電鉄、土地区画整理組合の四者によって協定のもと、平成十四年三月に設計着手、同十五年四月に完了されたとのことです。新駅設置予定地周辺は、宅地造成が順調に推移して販売されております。いよいよ和大新駅の必要性も高まっている中、さきの紀の川鉄橋のまさかのときのためにもぜひ和大新駅の建設を急いでいただきたいと思いますが、現在の状況を教えてください。同じく企画部長に御答弁願います。
 南海貴志川線は、現在JR和歌山駅を起点として和歌山市の東部、山東地区を経て那賀郡貴志川町に至る十四・三キロメートルの線区であります。道路などの都市基盤整備が進む中で年々利用者が減少し、南海電鉄としても平成七年四月一日にはワンマン運転化、同十二年十月一日には日前宮駅、岡崎前駅が無人駅化と収支改善にも努力されてきました。平成十一年五月七日には新駅「交通センター前」駅が開かれ、和歌山県と和歌山市が建設費用を負担して建設されました。
 ところが、平成十五年十月、和歌山市と貴志川町に対し南海電鉄より南海貴志川線の運営継続が困難との報告がなされました。南海貴志川線には年間約五億円、過去十年の累積で七十億円以上の赤字があるとのことでした。しかし、沿線には幾つかの学校、運転免許試験場、交通公園といった公共施設のほか、日前宮、竈山神社、伊太祁曽神社、大池遊園など、名所名刹や行楽地も点在し、特に通学生徒や高齢者、それに通勤客にはなくてはならない交通機関であり、とりわけ路線バスも通っていない和歌山市山東地区の菖蒲ケ丘団地のようなベッドタウンもあり、また貴志川町も和歌山市のベッドタウンとして近年人口増加の町として発展しており、生活の足には大きな影響を及ぼすものであります。
 和歌山市、貴志川町、県、沿線住民の代表者らがメンバーの南海貴志川線対策協議会は二十五万人以上の署名を集めて南海電鉄へ提出、国土交通省へも存続協力を呼びかけております。今は、南海の廃線方針と協議会の存続の願いとは平行線をたどったままであります。南海も一つの営利企業であり、会社の経営方針もありましょうが、利用者側から値上げやむなしの意見も多い中、何らかの存続への活路を見出せるよう会社としての理解、協力をお願いしたいし、最悪存続が絶たれたとしても、代替手段として道路渋滞状況も考慮した上で路線バスの運行を考えていただきたいものです。南海貴志川線区域にバスを運行させるとか、この際、近郊を含めた和歌山市内のバス路線を、例えば東西南北それぞれ循環にして大環状バスで東西南北をつないだりしてルートを再検討いただくなど、県当局としても交通体系の改善策を南海へ積極的に働きかけていただきたいと思いますが、いかがですか。企画部長、お答えください。
 以上三点、一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 熊野古道の今後の保存ということについての御質問だったと思います。
 私も今、御質問を聞きながら、インターネットで石仏のようなものが売り買いされているというふうなことを、寡聞にして知らなかったんですけども、そういう事態が起こっているということ、本当にこれは大変なことだなというふうな気持ちがいたしました。
 熊野古道は、言うまでもなく、歴史性もありますけども、そのやっぱりすばらしい自然というふうなものが魅力であるわけです。それがやはり人がたくさん来るということは、一方ではありがたいことだけれども、その自然とか景観というふうなものが毀損されるというふうな非常に大きな危険性をもろ刃の剣のようにはらんでいることもこれ間違いないことですので、後ほど担当部長の方から答えますけれども、この保存ということについても真剣に対応していく必要があるというふうに考えておりますし、またいろんな施策をとっていく必要があるというふうに思っております。
 それから、次に里浜づくりについての質問でございますけども、これは私も大いに期待しておりまして、八月の二十八日、二十九日を中心に片男波海岸を中心として水上オートバイの日本選手権でありますとかビーチバレー、ビーチサッカー、こういうふうなマリンスポーツ、ビーチスポーツの祭典が開かれるというふうなことでございます。そしてこれは、実は東京のお台場で開かれたのが第一回で、この和歌山で開かれるのが第二回ということで非常に注目性の高いイベントでもあろうかと思っております。
 片男波海岸は、非常にすばらしい歴史性と景観があり、また水も非常にきれいだというふうなことなんで、これを機会に大々的に売り出すというふうなことが大事だと思いますし、それからこの活動が水上オートバイの適正な運航ということから始まった地元の人たちの盛り上がりということを核にして行われているということが、またこれ非常に意義のあることだというふうに思っております。
 昨年はラッセル・クーツが来てヨットの大会も開かれましたし、次第にこの和歌浦というふうなものがまた昔の往時のにぎわいというふうなものを取り戻すきっかけもだんだん出てきておりますので、これをまた大きなきっかけにしてこの地域の観光振興、そして地域の盛り上がりを図っていきたい、このように思っております。
○議長(尾崎要二君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 世界遺産の保護管理に関しての植物学者等専門家による植物の生態調査と保護指導についての御質問でございますが、まず希少植物等の分布状況につきましては、平成十三年に「保全上重要なわかやまの自然」、いわゆる「和歌山県レッドデータブック」を作成しております。今回の世界遺産登録を機に来訪者の大幅な増加が見込まれることから、このレッドデータブックの趣旨を十分理解していただき、植物等が心ない来訪者から乱獲されないように、各種会議や研修会等あらゆる機会を通じ周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
 また、古道周辺にはレッドデータブックに記載されていない多くの貴重な植物等も確認されております。これら地元でしか見られない埋もれた自然資源の調査と保護管理について熱心に取り組んでいるNPOや民間団体と協働して検討してまいります。また、現在、世界遺産登録推進三県協議会において動植物の保護やごみの持ち帰りなど、参詣道ルールを作成しておりますので、そのルールの活用も含め、関係団体と連携して自然環境の保全の普及啓発に取り組んでまいります。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) インタープリターの状況と地元の協力について、それから休憩所、トイレの充実をについての二点についてお答え申し上げます。
 まず、熊野古道のインタープリターにつきましては、従来から紀州語り部として登録をいただいております皆様に御協力を賜っております。古道の語り部とは、いにしえの参詣道を現在まで守り続けてきた地域の人たちの思いと努力を来訪者に伝えるキーパーソンであり、特に自然保護などのマナーや安全面での指導でも重要な役割を果たす存在であると考えております。現在、中辺路沿線で四十九名の登録をいただいておりますが、今後ますます需要が増加するものと考えられるため、養成講座を実施しているところでございます。
 また、来訪者のマナーの向上につきましては、観光パンフレットを活用するなど積極的に啓発を行っているところです。本県にとってかけがえのない観光資源である熊野古道と町石道は、地域の皆さんの協力によって守り続けることができるという意識を醸成してまいりたいと考えております。
 次に、熊野古道をだれもが安心して歩いていただけるよう、案内板や道しるべ、休憩所、トイレなど、古道沿いの環境整備についても引き続き関係市町村とも連携し、支援を行ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 里浜づくりについてお答え申し上げます。
 里浜づくり事業を継続的事業にとの御質問ですが、地元自治会等が主体となり全国初の和歌山里浜づくり事業が片男波海岸で進められておりますが、海辺と人々とのつながりを大切にし、継続的な取り組みとして各種活動が定着するよう、地元関係者と連携をとりながら進めてまいりたいと考えております。
 次に、片男波護岸の整備についてでございますが、片男波の護岸につきましては老朽化が著しく、改良や補修等、何らかの対応が必要な箇所もあることは事実でございます。一方、護岸前面に広がる干潟は貴重な生物種の生息場所であるとともに、潮干狩りなど水辺環境を楽しむ場所でもございます。
 このため、干潟の環境面、利用面、さらには自然災害からの防災面等について多面的に検討をし、引き続き関係者との話し合いを持ちながら、多くの方々の納得が得られるような整備方法を見出していきたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 南海電鉄関連の三点についてお答えいたします。
 まず、南海本線紀の川橋梁の安全性につきましては、昨年九月議会で議員にお答えしたところでございますが、その後、ことし二月二十七日から三月三十一日にかけまして南海電鉄において定期検査を実施したところであり、同社から耐震性及び津波の耐久性等、安全性については十分確保されているとの報告を受けてございます。
 なお、JR阪和線紀の川橋梁につきましては、紀の川大堰の上流に位置することから、大堰の本格運用のための河床掘削により橋脚の強度の問題が生じるため、大堰事業の一環としてかけかえを行うものでございます。
 次に、和大新駅建設に向けての現況についてでございますが、新駅設置には国の支援がどうしても必要との判断のもと、和歌山市と協力して国庫補助事業の住宅市街地基盤整備事業における鉄道施設整備に対する補助を平成十七年度から受けられるよう国と事前協議を始めているところでございます。今後、新駅設置を含めた土地区画整理事業や隣接する大規模開発事業の進捗状況等ともあわせて関係者と調整を図りながら、新駅設置に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、南海貴志川線の問題についてでございます。
 現在、南海貴志川線対策協議会におきまして、同線の利用促進を図るとともに今後の対応策についての検討を進めているところでございます。県としましては、鉄道の存続を第一義として、議員御提言の路線バスなどの交通ルートの検討も必要と考えておりまして、沿線自治体である和歌山市、貴志川町の意向を踏まえながら地域住民の生活交通確保の観点に立ち、今後の対応を早急に検討し、あわせて南海への働きかけにつきましても今後とも強力に行ってまいります。
○議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 初めに、熊野古道沿いの遺産の保護管理の現状と今後の取り組みについてお答えします。
 世界遺産のコア部分は既に文化財保護法に基づき保存管理計画を策定しております。バッファゾーンについては、自然公園法や条例により保護されているところですが、コア、バッファゾーンを含めた世界遺産としての保存管理計画については、管理団体である市や町が本年度中に策定することとなっております。
 次に、ネットオークションに係る調査につきましては、参詣道沿いの石仏、石碑などの遺物であるという特定ができないため、現状ではその把握は困難と考えております。今後、このような事態に備えるため、地元と連携の上、石造遺物の調査を行うなど、その管理についての方策を検討してまいります。
 また、心ないハイカーからかけがえのない資産を保護するため、現在、三重、奈良、和歌山の三県が訪れる方々に巡礼道であるという特性を理解いただいた上で守るべき参詣道ルールを作成中であります。今後、このルールを活用し、来訪者のモラルの向上について広報、啓発に努めてまいります。
 次に、里浜についてお答えいたします。
 子供たちの身近にある自然資源を学習教材として学校教育の場に取り入れることは、大切な観点であると考えるものであります。例えば、和歌山市の小・中学校では、理科の授業で和歌浦湾の干潟の生物観察を行うとともに、ボランティア活動として万葉の景勝地を保護するための環境美化活動を長年にわたって実施しております。そのほかの県内各学校におきましても、和歌山の豊かな自然や歴史、文化など、地域から学ぶさまざまな活動を通して、道徳教育、環境教育などに生かしたり、予想される東南海・南海地震等に対応するための防災教育にも活用しているところです。
 今後、里浜づくりを積極的に教育に活用するなど、和歌山のすばらしさを実感できるような教育活動をより一層推進してまいります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十八番長坂隆司君。
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
 高野・熊野世界遺産についてですが、経済効果を追求することも必要でありますが、世界遺産の趣旨からして、ともするとアカデミックな問題意識やモラル、倫理観をもっと徹底させることも大事ではないでしょうか。さらに、高野那智山系古道に限らず、市街地を行く熊野古道、特に和歌山市、海南市、大和街道はもとよりすべての遺産に共通する問題であり、先人、いにしえ人が伝える万葉の世界を後世に伝える義務が我々に課せられていることを県民共通のものとしていかなければならないのではないでしょうか。
 保護管理の啓発、ルール・マナーの徹底ですが、県当局はどうかくれぐれもよろしく御指導をお願いいたします。また、屋久島を初め他の世界遺産登録地域を十分参考にしていただきたいと思います。私もぜひ幾つか訪れてみたいと思っております。
 次に、里浜づくりでありますが、地域住民がやる気になって協力すれば、いかに行政コストを執行予算も節減できるかということが実際あらわれてきそうです。また、この事業のすばらしさは、地域だけでなくスポーツのプロフェッショナルが先頭に立ってごみ袋を持ってボランティア活動を行うということであります。ともにボランティアを行う一般市民、見物客の方々もますます生き生きとその活動に入り込んで、ボランティア自体も活性化してくるわけであります。
 夏のこの祭典でもっと県民、市民を和歌浦里浜へ呼び込むためにも、夜は魚が近場へ集まってきますし、夜の地びき網体験もおもしろいと思います。一つ提案いたします。ぜひ海洋スポーツ文化をこの海岸線に定着させるためにも、県当局は継続的事業として地域住民とともに汗をかきつつ我々をリードしていただきたいと要望いたします。
 南海電鉄でありますが、雑賀崎、和歌浦へ大阪方面からのお客様をいざなう可能性を秘めていた臨港鉄道も一部レールが取り外されてしまった反面、臨港の道路事情は良化しておることは喜ばしいことでありますが、いささか寂しい気もいたしております。
 南海電鉄は、戦後、そして高度成長の時代に和歌山県、殊に和歌山市の観光発展、和歌浦の大阪の奥座敷化に大きく貢献されてこられました。経済環境の厳しい中、経営改善努力に躍起であることと思いますが、世界遺産登録を機に、県当局におかれましても、和歌山市とともに南海、JRと一緒に同じテーブルの上で和歌山市周辺の観光交通体系を再考していただいて、鉄道の経営運営にもできる範囲で物心両面で協力いただきたいと、あわせて要望さしていただきます。
 終わります。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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