平成16年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


県議会の活動

平成十六年六月 和歌山県議会定例会会議録 第四号
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議事日程 第四号
 平成十六年六月十六日(水曜日)午前十時開議
  第一 議案第八十九号から議案第九十八号まで、並びに報第六号から報第十二号まで(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第八十九号から議案第九十八号まで、並びに報第六号から報第十二号まで(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十四人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       新   島       雄
     四  番       山   下   直   也
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     九  番       東       幸   司
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十五 番       平   越   孝   哉
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       花   田   健   吉
     十八 番       藤   山   将   材
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       木   下   善   之
     二十二番       谷       洋   一
     二十三番       井   出   益   弘
     二十四番       宇 治 田   栄   蔵
     二十五番       山   下   大   輔
     二十七番       前   川   勝   久
     二十八番       原       日 出 夫
     二十九番       冨   安   民   浩
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       中   村   裕   一
     三十三番       浦   口   高   典
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       玉   置   公   良
     三十六番       江   上   柳   助
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       阪   部   菊   雄
     四十 番       新   田   和   弘
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(一人)
     三十七番       森       正   樹
 〔備考〕
     二十六番欠員
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        中   山   次   郎
     出納長        大   平   勝   之
     知事公室長      小 佐 田   昌   計
     危機管理監      白   原   勝   文
     総務部長       宮   地       毅
     企画部長       野   添       勝
     環境生活部長     津   本       清
     福祉保健部長     嶋   田   正   巳
     商工労働部長     石   橋   秀 彦
     農林水産部長     阪   口   裕 之
     県土整備部長     酒   井   利   夫
     企業局長       西       芳 男
     教育委員会委員長   駒   井   則 彦
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員長   大   岡   淳   人
     警察本部長      宮   内       勝
     人事委員会委員長   西 浦   昭   人
     代表監査委員     藤   谷   茂   樹
     選挙管理委員会委員長 北   村   亮   三
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       小   住   博   章
     次長         佐   竹   欣   司
     議事課長       島 光   正
     議事課副課長     藪   上   育   男
     議事班長       山   本   保   誠
     議事課主任      尾   崎   善   亮
     議事課副主査     楠   見   直   博
     総務課長       土   井   陽   義
   調査課長       宗   野   幸   克
 (速記担当者)
     議事課主任      吉   川   欽   二
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課主査      保   田   良   春
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  午前十時一分開議
○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第八十九号から議案第九十八号まで、並びに知事専決処分報告報第六号から報第十二号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十八番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 一番目に、登録を控えた高野・熊野世界遺産にかかわる保護管理についてであります。
 今月末に中国で開催される第二十八回世界遺産委員会蘇州会議において、いよいよ高野・熊野地方の世界遺産登録決定を迎えるわけですが、最終局面を迎えている今、せっかくの世界遺産の保護管理について、今からでも遅くないと思いますので、確認の意味でも以下質問をさせていただきます。
 神仏習合の熊野三山、開祖弘法大師空海の密教・高野山の遺産は、世界に誇る神仏宿る聖地として日本固有の宗教・文化遺産であり、我が和歌山県に高い文化意識をもたらし、大自然とともに文化的遺産の保護管理の重要性を改めて認識させてくれる遺産登録に御尽力、御推進いただいた知事初め県当局の皆様に敬意を表するものであります。
 平成十二年四月に世界遺産登録推進室が設置されて以来、県の指導のもと、高野・熊野の遺産をいかに守り伝え、さらに広く県内外にどのように情報発信していかに多くの観光客や参拝者にお越しいただくかと、県下地元自治体や支援団体が一生懸命取り組んでこられたようですが、その遺産にかかわる史実を正しくつかむための歴史的実証にもなかなか御苦労されていることと思われます。登録後も、世界遺産を守り正しく後世に伝えていくため、さまざまな課題解決のためにさらなる御尽力を、県市町村を初め各支援団体にお願いいたす次第であります。
 現在、世界遺産は七百五十四カ所が登録されている中、そのうち約三十五カ所で破壊が進行していると聞いております。例えば、カンボジアのアンコールワット、それに中国の万里の長城では基礎となる石段を心ない人が持って帰って自分の家の前の石垣に使っているような事例も出てきていると聞きます。
 ここで、高野・熊野においても遺産登録について幾つかの懸念がございます。世界遺産の声が盛り上がってくるに従って、熊野古道及び周辺地域にちょっとした異変が起こっております。
 まず、各古道にハイカーが目立ってふえてきたことです。彼らは単なる観光客ではなく、古道探索また走破を目的とした最低限度の旅支度がなされた旅行者であり、日帰りあるいは数日をかけた古道縦走とさまざまですが、季節にもよりますが、多いときには十組を超える四、五人のグループが中心のハイカーで、特に熊野川町小口より約十六キロの中辺路大雲取山越前峠越えの那智山、青岸渡寺方面へ向かう古道はにぎわっているとのことです。ハイカーがふえること自体は遺産登録の効果であることはもちろんであり、さらなるハイカーに古道を訪ねていただいて、旅行者の訪問が周辺地域への観光につながるよう期待することは自然であります。
 しかし、熊野古道には、いにしえの参拝者が残した数々の物語、中には道中病にて熊野参詣かなわず、あるいは帰路不幸にして自然災害に遭ったりして死を免れず埋葬された無縁仏、あるいはあかしとして刻まれた地蔵などの小さな石仏、石碑、供養塔、多宝塔等が無数に埋もれていると言われます。その歴史の証言者である無名の小さな石仏等が、何と奈良、京都などの一般の骨とう市に出ていたりネットオークションで売られていたというショッキングな話を聞き、未確認ではありますが、衝撃を禁じ得ません。古道にある石ころ一つも、言ってみれば遺産であります。
 また、石碑や道標に刻まれた文字の拓本をとるために、遺産の風化を進めてしまう所作になりかねない、コケむしたその表面を洗う作業のための水を入れてきたペットボトルがごみとして石碑の周辺に無造作に捨てられている光景も目にするわけでありまして、まさに和歌山県の文化度が疑われるというゆゆしき事態であります。
 さらに、千メートル級の山系が熊野灘に迫る地形である那智熊野山系は、温帯植物と高山系の植物が混生する極めて特殊な地域であり、鑑賞用に珍重されるラン科のカンラン、シュンラン、エビネラン等、あるいは昔より漢方薬として知られるセンブリのもとになるリンドウ、ツツジ科の常緑または落葉低木の植物が古道沿いに見られ、かの南方熊楠も珍重したような植物が数多く生息しておりますが、万葉の時代から親しまれた草花を根こそぎ掘っていった形跡が最近後を絶たないようであります。今のままでは絶滅してしまうのではないかと憂慮をいたします。
 残念ですが、背中のリュックサックに何らかの重量物や植物を持ち帰るようなハイカーがあり、また古道周辺には実際何らかを採集した掘り起こした跡が見られるわけであります。かつて、心ない写真家が熊野山系の貴重なラン類の自生地を発表したことが契機となってラン類が数年で取り尽くされた例もあり、関係者の努力によってようやく今少しずつよみがえっていると言われ始めたやさきであります。ともすると経済優先主義になりがちで、どうしても遺産の保護管理がおろそかになるものです。それらの保護管理、セキュリティーはどのような現状なのか、また登録まで時間の限られている中、どのように取り組まれていくのか、教育長、お示しください。
 また、インターネットオークションの流れ等についても調査をいただきたいと思います。
 そして、植物学者と専門家の助言をいただいて植物の生態調査や保護の指導を行っていただきたいと思いますが、環境生活部長、いかがでしょうか。
 例えば、一九九三年に登録された鹿児島県屋久島では、地元の説明者であるインタープリターが旅行者の方々と同行して自然環境保護の意識を高めていると言われます。ぜひ高野・熊野の地にも観光客からの問いかけにわかりやすく答えられる説明ができるインタープリターが少なからず必要であると思いますが、いかがな状況でしょうか。森林労働者や地元のボランティアにもぜひ協力してもらってインタープリターがわりになっていただく、そして遺産の保護管理にいつも目を配っていただく、そして日々記録づけをしていくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。商工労働部長にお伺いいたします。
 また、海の方から一段駆け上がる那智熊野山系は、天候の変化も激しく、冬にはかなりの積雪を見せ、夏季の雨の激しさは尋常でないと地元の方は語っておられます。当該古道約四里には現在、地蔵小屋にトイレと休憩所が設置されておりますが、強い風雨や雪をしのぐには少し厳しい状況であります。事故、被害を事前に防ぐためにも休憩所の充実、すなわち修繕や全体にわたって不足がちな休憩所、トイレを何カ所か増設するなど、取り組んでいただきたいと思いますが、商工労働部長、いかがですか。
 そして、世界遺産登録という願ってもないチャンスに、とかく経済優先の期待感が強く積み残され後世に憂いを残すことが少なくない事例を懸念する立場で、このままでは古道に存在する石仏や草花の悲鳴が聞こえてくる気がしてなりません。世界に誇れるこの遺産を後世に責任を持って引き継ぐためにも、国の内外に発信する知事の決意とアピールをお伺いいたしたいと思います。
 二番目に、里浜づくりについてであります。
 平成十四年度より国土交通省港湾局では、人と海辺のかかわり方を再検討し、人と自然が共生した新たな海辺の文化を創造し、多様な主体の協働による里浜づくりを推進するため、新たな海辺の文化の創造研究会を設置しております。海辺は、人間の生活に潤いをもたらし、文化を創造する役目もあれば、たくさんの生物の生息・生育の場でもあります。
 本年度の新規事業として県は、和歌山里浜づくりとして人と海辺とのかかわりを強くし、良好な海岸環境の創造に資するために開催する地元主導のビーチスポーツ祭典を支援するための事業を進めていただいております。まさにそれにふさわしい海辺が、和歌山市の和歌浦地域の片男波、そして西は雑賀崎、南は浜の宮から和歌山マリーナシティまで続く海岸線であります。
 この里浜づくりの何よりのポイントは、地域や市民が自分たちの共有財産として自分たちで協働して管理し、環境の保全や魅力的な行事を推進していこうというところであります。景気の本格的回復が当分見込めない財政状況の厳しい中にあっては、行政だけに頼らない市民レベルの自然環境、資源を生かした里浜づくりは大きな可能性を秘めた地域おこしであり、一つの港町づくりであると思います。
 私も、ある企業の研修保養所をお借りする形で、万葉時代からのいにしえの歴史と風光明媚な景観を誇る和歌浦の地で、文化芸術、福祉、教育、そして観光などのための活動拠点づくりを、まず長年放置されたままのところを志のある人々と一緒に清掃活動から始めて、市民参加、市民主導でNPOとしての運営を推進していけたらと思っておりますが、こうした活動拠点づくりと里浜づくりとがうまくリンクできれば和歌浦の活性化は大いに進むのではないかと思います。
 そこで質問ですが、一番目、本年度の和歌山里浜づくり事業における二〇〇四年「マリン・ビーチスポーツの祭典in WAKAYAMA」の具体的内容とコンセプトを知事から聞かせてください。
 二番目、和歌浦の海岸沿いは、片男波海水浴場のような砂浜だけでなく、いそ遊びのできるところや整備された遊歩道もあり、また海から見た景色のすばらしいところです。いろいろなビーチスポーツ、そしてマリンスポーツができるところです。この里浜づくり事業を契機に和歌浦の地に海洋スポーツ文化を定着させていくことが何よりの地域おこしになると思います。市民的盛り上がりを県もバックアップしてぜひ継続的事業としてリードしていただきたいと思いますが、いかがですか。県土整備部長に御答弁願います。
 三番目、高野・熊野の世界遺産を見に来ていただいた人にぜひ紀北地方、和歌山市へお立ち寄り、お泊まりいただいて旅の疲れを取っていただきたいと前々から申し上げておりますが、そのためにも里浜づくりは欠かせませんし、そこにさらなる魅力をつけ加えるとすれば、やはり温泉であり、和歌浦ならではの料理だと思います。地元関係者、例えば自治会、旅館関係者、漁業関係者が同じテーブルに着いて議論していく、新しい戦略を生み出していくことが大切であります。ぜひそのような活動に対して、当局におかれましても御理解をいただいてフォローアップしていただくことを要望しておきます。
 四番目、次に、片男波の護岸事業についてでありますが、私も小さいころからよく和歌浦干潟へ出かけては、アサリ、たまにとれるハマグリ、そして釣りえさのゴカイをよく掘りに行ったものです。当時、左右のはさみの大きさが異なるシオマネキといったカニなどの小生物にも大いに興味を覚えたものです。観海閣へ渡る橋から下をのぞくとチヌやカレイの稚魚のような魚が今でも見受けられますし、たくさんの生物の生息・生育場所にもなっている貴重な地域であります。
 ただ、和歌浦における、片男波における海洋文化を定着させるためにも、自然と住民とが共生できる護岸は安全面からも整備されなければならないと思います。現在の当局のお考えをお聞きしたいと思います。県土整備部長からお願いいたします。
 五番目、里浜づくりにあっては、自然環境、住民の生活環境を守っていくための市民の清掃活動やルール・マナーの啓発活動は欠かせないものであります。この和歌山里浜づくり事業を招致するに至る地元先導の積極的なボランティア活動には大いなる敬意を表するものであります。子供たちにとっても、ボランティア活動の中へ入り込んでせっかくの自然資源をみずから磨いていく活動、そして自分たちが磨いた海辺で自然学習、自然と親しみ遊ぶとともに自然の脅威に対する自衛、防御の意識を持てるようになれば、こんなすばらしい道徳教育、社会教育、自然科学教育の場はないと思います。里浜づくりをぜひ教育の場としても積極的に活用いただきたいと思いますが、教育長、いかがですか。
 三番目に、生活の手段として欠かせない南海電鉄についてであります。
 平成十五年九月議会における予算委員会でライフラインの確保に関連して一般質問をさせていただきましたが、利用者の立場で今回も質問させていただきます。
 JR阪和線においても、ことし十月より紀の川橋梁、長さ四百八十六メートルのかけかえ工事に着手されます。この橋は昭和五年にかけられたものであり、七十四年を経過しており、平成十九年度中に新架橋に切りかえて同二十一年度中に旧橋梁を撤去するとのことです。
 南海電鉄の紀の川鉄橋はことしで百一年目、さきの南海地震や阪神大震災も経験して無事乗り越えてきたつわものではあります。昨年九月の野添企画部長の答弁によりますと、南海側も検査診断専門会社とともに平成十三年十一月から同十四年三月に大規模な検査診断を実施、補修も行っていただき、下部工、橋脚の検査について河床の変動調査と橋脚の衝撃振動調査を実施いただき、異常はなかったとのことですが、県としても会社に対して本県の地域防災計画の鉄道施設災害予防計画に基づいて徹底を図っていただくよう申し入れを行っていただいたとの答弁をいただきました。危機管理という面から、来るべき東南海・南海大震災が襲来したときの耐震性と津波への耐久性、安全性をいま一度再確認いたしたいと思います。企画部長、いかがですか。
 次に、会派の和田正人先輩もこれまで何度となく県議会で訴えてこられ、御尽力されております和大新駅についてでありますが、平成二年に和歌山大学駅設置促進協議会が発足、新駅を核とした新しい町づくりに取り組まれ、概略設計が県、市、南海電鉄、土地区画整理組合の四者によって協定のもと、平成十四年三月に設計着手、同十五年四月に完了されたとのことです。新駅設置予定地周辺は、宅地造成が順調に推移して販売されております。いよいよ和大新駅の必要性も高まっている中、さきの紀の川鉄橋のまさかのときのためにもぜひ和大新駅の建設を急いでいただきたいと思いますが、現在の状況を教えてください。同じく企画部長に御答弁願います。
 南海貴志川線は、現在JR和歌山駅を起点として和歌山市の東部、山東地区を経て那賀郡貴志川町に至る十四・三キロメートルの線区であります。道路などの都市基盤整備が進む中で年々利用者が減少し、南海電鉄としても平成七年四月一日にはワンマン運転化、同十二年十月一日には日前宮駅、岡崎前駅が無人駅化と収支改善にも努力されてきました。平成十一年五月七日には新駅「交通センター前」駅が開かれ、和歌山県と和歌山市が建設費用を負担して建設されました。
 ところが、平成十五年十月、和歌山市と貴志川町に対し南海電鉄より南海貴志川線の運営継続が困難との報告がなされました。南海貴志川線には年間約五億円、過去十年の累積で七十億円以上の赤字があるとのことでした。しかし、沿線には幾つかの学校、運転免許試験場、交通公園といった公共施設のほか、日前宮、竈山神社、伊太祁曽神社、大池遊園など、名所名刹や行楽地も点在し、特に通学生徒や高齢者、それに通勤客にはなくてはならない交通機関であり、とりわけ路線バスも通っていない和歌山市山東地区の菖蒲ケ丘団地のようなベッドタウンもあり、また貴志川町も和歌山市のベッドタウンとして近年人口増加の町として発展しており、生活の足には大きな影響を及ぼすものであります。
 和歌山市、貴志川町、県、沿線住民の代表者らがメンバーの南海貴志川線対策協議会は二十五万人以上の署名を集めて南海電鉄へ提出、国土交通省へも存続協力を呼びかけております。今は、南海の廃線方針と協議会の存続の願いとは平行線をたどったままであります。南海も一つの営利企業であり、会社の経営方針もありましょうが、利用者側から値上げやむなしの意見も多い中、何らかの存続への活路を見出せるよう会社としての理解、協力をお願いしたいし、最悪存続が絶たれたとしても、代替手段として道路渋滞状況も考慮した上で路線バスの運行を考えていただきたいものです。南海貴志川線区域にバスを運行させるとか、この際、近郊を含めた和歌山市内のバス路線を、例えば東西南北それぞれ循環にして大環状バスで東西南北をつないだりしてルートを再検討いただくなど、県当局としても交通体系の改善策を南海へ積極的に働きかけていただきたいと思いますが、いかがですか。企画部長、お答えください。
 以上三点、一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 熊野古道の今後の保存ということについての御質問だったと思います。
 私も今、御質問を聞きながら、インターネットで石仏のようなものが売り買いされているというふうなことを、寡聞にして知らなかったんですけども、そういう事態が起こっているということ、本当にこれは大変なことだなというふうな気持ちがいたしました。
 熊野古道は、言うまでもなく、歴史性もありますけども、そのやっぱりすばらしい自然というふうなものが魅力であるわけです。それがやはり人がたくさん来るということは、一方ではありがたいことだけれども、その自然とか景観というふうなものが毀損されるというふうな非常に大きな危険性をもろ刃の剣のようにはらんでいることもこれ間違いないことですので、後ほど担当部長の方から答えますけれども、この保存ということについても真剣に対応していく必要があるというふうに考えておりますし、またいろんな施策をとっていく必要があるというふうに思っております。
 それから、次に里浜づくりについての質問でございますけども、これは私も大いに期待しておりまして、八月の二十八日、二十九日を中心に片男波海岸を中心として水上オートバイの日本選手権でありますとかビーチバレー、ビーチサッカー、こういうふうなマリンスポーツ、ビーチスポーツの祭典が開かれるというふうなことでございます。そしてこれは、実は東京のお台場で開かれたのが第一回で、この和歌山で開かれるのが第二回ということで非常に注目性の高いイベントでもあろうかと思っております。
 片男波海岸は、非常にすばらしい歴史性と景観があり、また水も非常にきれいだというふうなことなんで、これを機会に大々的に売り出すというふうなことが大事だと思いますし、それからこの活動が水上オートバイの適正な運航ということから始まった地元の人たちの盛り上がりということを核にして行われているということが、またこれ非常に意義のあることだというふうに思っております。
 昨年はラッセル・クーツが来てヨットの大会も開かれましたし、次第にこの和歌浦というふうなものがまた昔の往時のにぎわいというふうなものを取り戻すきっかけもだんだん出てきておりますので、これをまた大きなきっかけにしてこの地域の観光振興、そして地域の盛り上がりを図っていきたい、このように思っております。
○議長(尾崎要二君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 世界遺産の保護管理に関しての植物学者等専門家による植物の生態調査と保護指導についての御質問でございますが、まず希少植物等の分布状況につきましては、平成十三年に「保全上重要なわかやまの自然」、いわゆる「和歌山県レッドデータブック」を作成しております。今回の世界遺産登録を機に来訪者の大幅な増加が見込まれることから、このレッドデータブックの趣旨を十分理解していただき、植物等が心ない来訪者から乱獲されないように、各種会議や研修会等あらゆる機会を通じ周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
 また、古道周辺にはレッドデータブックに記載されていない多くの貴重な植物等も確認されております。これら地元でしか見られない埋もれた自然資源の調査と保護管理について熱心に取り組んでいるNPOや民間団体と協働して検討してまいります。また、現在、世界遺産登録推進三県協議会において動植物の保護やごみの持ち帰りなど、参詣道ルールを作成しておりますので、そのルールの活用も含め、関係団体と連携して自然環境の保全の普及啓発に取り組んでまいります。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) インタープリターの状況と地元の協力について、それから休憩所、トイレの充実をについての二点についてお答え申し上げます。
 まず、熊野古道のインタープリターにつきましては、従来から紀州語り部として登録をいただいております皆様に御協力を賜っております。古道の語り部とは、いにしえの参詣道を現在まで守り続けてきた地域の人たちの思いと努力を来訪者に伝えるキーパーソンであり、特に自然保護などのマナーや安全面での指導でも重要な役割を果たす存在であると考えております。現在、中辺路沿線で四十九名の登録をいただいておりますが、今後ますます需要が増加するものと考えられるため、養成講座を実施しているところでございます。
 また、来訪者のマナーの向上につきましては、観光パンフレットを活用するなど積極的に啓発を行っているところです。本県にとってかけがえのない観光資源である熊野古道と町石道は、地域の皆さんの協力によって守り続けることができるという意識を醸成してまいりたいと考えております。
 次に、熊野古道をだれもが安心して歩いていただけるよう、案内板や道しるべ、休憩所、トイレなど、古道沿いの環境整備についても引き続き関係市町村とも連携し、支援を行ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 里浜づくりについてお答え申し上げます。
 里浜づくり事業を継続的事業にとの御質問ですが、地元自治会等が主体となり全国初の和歌山里浜づくり事業が片男波海岸で進められておりますが、海辺と人々とのつながりを大切にし、継続的な取り組みとして各種活動が定着するよう、地元関係者と連携をとりながら進めてまいりたいと考えております。
 次に、片男波護岸の整備についてでございますが、片男波の護岸につきましては老朽化が著しく、改良や補修等、何らかの対応が必要な箇所もあることは事実でございます。一方、護岸前面に広がる干潟は貴重な生物種の生息場所であるとともに、潮干狩りなど水辺環境を楽しむ場所でもございます。
 このため、干潟の環境面、利用面、さらには自然災害からの防災面等について多面的に検討をし、引き続き関係者との話し合いを持ちながら、多くの方々の納得が得られるような整備方法を見出していきたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 南海電鉄関連の三点についてお答えいたします。
 まず、南海本線紀の川橋梁の安全性につきましては、昨年九月議会で議員にお答えしたところでございますが、その後、ことし二月二十七日から三月三十一日にかけまして南海電鉄において定期検査を実施したところであり、同社から耐震性及び津波の耐久性等、安全性については十分確保されているとの報告を受けてございます。
 なお、JR阪和線紀の川橋梁につきましては、紀の川大堰の上流に位置することから、大堰の本格運用のための河床掘削により橋脚の強度の問題が生じるため、大堰事業の一環としてかけかえを行うものでございます。
 次に、和大新駅建設に向けての現況についてでございますが、新駅設置には国の支援がどうしても必要との判断のもと、和歌山市と協力して国庫補助事業の住宅市街地基盤整備事業における鉄道施設整備に対する補助を平成十七年度から受けられるよう国と事前協議を始めているところでございます。今後、新駅設置を含めた土地区画整理事業や隣接する大規模開発事業の進捗状況等ともあわせて関係者と調整を図りながら、新駅設置に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、南海貴志川線の問題についてでございます。
 現在、南海貴志川線対策協議会におきまして、同線の利用促進を図るとともに今後の対応策についての検討を進めているところでございます。県としましては、鉄道の存続を第一義として、議員御提言の路線バスなどの交通ルートの検討も必要と考えておりまして、沿線自治体である和歌山市、貴志川町の意向を踏まえながら地域住民の生活交通確保の観点に立ち、今後の対応を早急に検討し、あわせて南海への働きかけにつきましても今後とも強力に行ってまいります。
○議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 初めに、熊野古道沿いの遺産の保護管理の現状と今後の取り組みについてお答えします。
 世界遺産のコア部分は既に文化財保護法に基づき保存管理計画を策定しております。バッファゾーンについては、自然公園法や条例により保護されているところですが、コア、バッファゾーンを含めた世界遺産としての保存管理計画については、管理団体である市や町が本年度中に策定することとなっております。
 次に、ネットオークションに係る調査につきましては、参詣道沿いの石仏、石碑などの遺物であるという特定ができないため、現状ではその把握は困難と考えております。今後、このような事態に備えるため、地元と連携の上、石造遺物の調査を行うなど、その管理についての方策を検討してまいります。
 また、心ないハイカーからかけがえのない資産を保護するため、現在、三重、奈良、和歌山の三県が訪れる方々に巡礼道であるという特性を理解いただいた上で守るべき参詣道ルールを作成中であります。今後、このルールを活用し、来訪者のモラルの向上について広報、啓発に努めてまいります。
 次に、里浜についてお答えいたします。
 子供たちの身近にある自然資源を学習教材として学校教育の場に取り入れることは、大切な観点であると考えるものであります。例えば、和歌山市の小・中学校では、理科の授業で和歌浦湾の干潟の生物観察を行うとともに、ボランティア活動として万葉の景勝地を保護するための環境美化活動を長年にわたって実施しております。そのほかの県内各学校におきましても、和歌山の豊かな自然や歴史、文化など、地域から学ぶさまざまな活動を通して、道徳教育、環境教育などに生かしたり、予想される東南海・南海地震等に対応するための防災教育にも活用しているところです。
 今後、里浜づくりを積極的に教育に活用するなど、和歌山のすばらしさを実感できるような教育活動をより一層推進してまいります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十八番長坂隆司君。
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
 高野・熊野世界遺産についてですが、経済効果を追求することも必要でありますが、世界遺産の趣旨からして、ともするとアカデミックな問題意識やモラル、倫理観をもっと徹底させることも大事ではないでしょうか。さらに、高野那智山系古道に限らず、市街地を行く熊野古道、特に和歌山市、海南市、大和街道はもとよりすべての遺産に共通する問題であり、先人、いにしえ人が伝える万葉の世界を後世に伝える義務が我々に課せられていることを県民共通のものとしていかなければならないのではないでしょうか。
 保護管理の啓発、ルール・マナーの徹底ですが、県当局はどうかくれぐれもよろしく御指導をお願いいたします。また、屋久島を初め他の世界遺産登録地域を十分参考にしていただきたいと思います。私もぜひ幾つか訪れてみたいと思っております。
 次に、里浜づくりでありますが、地域住民がやる気になって協力すれば、いかに行政コストを執行予算も節減できるかということが実際あらわれてきそうです。また、この事業のすばらしさは、地域だけでなくスポーツのプロフェッショナルが先頭に立ってごみ袋を持ってボランティア活動を行うということであります。ともにボランティアを行う一般市民、見物客の方々もますます生き生きとその活動に入り込んで、ボランティア自体も活性化してくるわけであります。
 夏のこの祭典でもっと県民、市民を和歌浦里浜へ呼び込むためにも、夜は魚が近場へ集まってきますし、夜の地びき網体験もおもしろいと思います。一つ提案いたします。ぜひ海洋スポーツ文化をこの海岸線に定着させるためにも、県当局は継続的事業として地域住民とともに汗をかきつつ我々をリードしていただきたいと要望いたします。
 南海電鉄でありますが、雑賀崎、和歌浦へ大阪方面からのお客様をいざなう可能性を秘めていた臨港鉄道も一部レールが取り外されてしまった反面、臨港の道路事情は良化しておることは喜ばしいことでありますが、いささか寂しい気もいたしております。
 南海電鉄は、戦後、そして高度成長の時代に和歌山県、殊に和歌山市の観光発展、和歌浦の大阪の奥座敷化に大きく貢献されてこられました。経済環境の厳しい中、経営改善努力に躍起であることと思いますが、世界遺産登録を機に、県当局におかれましても、和歌山市とともに南海、JRと一緒に同じテーブルの上で和歌山市周辺の観光交通体系を再考していただいて、鉄道の経営運営にもできる範囲で物心両面で協力いただきたいと、あわせて要望さしていただきます。
 終わります。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十四番角田秀樹君。
  〔角田秀樹君、登壇〕(拍手)
○角田秀樹君 おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさしていただきます。
 まず初めに、今国会で上程可決されました景観法等に関する法律についてお伺いをいたします。
 今回、新たに国は、景観法の成立に際し、次の事由を列記しております。近年、経済社会の成熟化に伴う国民の価値観の変化等により個性ある美しい町並みや景観の形成が求められるようになっており、各地で景観条例の制定や景観に配慮した都市整備により良好な景観の形成に向けた取り組みが進められております。また、国としても観光立国を実現するという観点から、地域の個性を磨き発揮する「一地域一観光」を推進するための手法として、良好な景観の形成に向けた取り組みを進めることとしています。このような景観をめぐる状況の変化に対応し良好な景観の形成を国政の重要課題として位置づけるとともに、地方公共団体の取り組みを支援するために良好な景観を形成するための法的な仕組みを創設することを求めたものであります。
 こうした状況を踏まえ、都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進し、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図るための総合的な法律であり、その実現を基本理念としております。また、都市、農山漁村等における良好な景観の形成を図るため、良好な景観の形成に関する基本理念及び国等の責務を定めるとともに、景観計画の策定、景観計画区域、景観地区等における良好な景観形成のための規制、景観整備機構による支援等を行うために定めた法律でございます。
 次に、各市町村の役割としては、景観計画の作成があります。広域的な場合は都道府県が行い、また地域住民やNPO法人による提案も可能となっています。景観計画の区域については、都市計画区域外でも指定が可能であるとあります。具体的には、まず一点目に、建築物の建築等に対する届け出、勧告を基本とする緩やかな規制誘導、二つ目には、一定の場合は変更命令が可能、三つ目には、景観上重要な公共施設の整備や電線共同溝法の特例、特に四つ目には、農地の形質変更等の規制、耕作放棄地対策の強化、森林施業の促進などが挙げられています。
 今回の景観法については、私は本県の現在進めようとしている施策をしっかり後押しする法律と言っても過言ではないと思います。目前に迫った紀伊山地の霊場と参詣道の世界遺産認定、今後ますます人と自然との共生が求められ、本県の緑豊かな景観を多くの方々に知っていただく絶好のチャンスであるからであります。中でも、特に私は県内にある棚田保全に強い思いを寄せるものであります。
 先日、六月の六日、日曜日、農村計画課と金屋町沼田の住民と一緒に取り組まれた平成十六年度和歌山県中山間ふるさと水と土保全基金事業「棚田体験隊」の現場を見させていただきました。帰りがけの子供連れの家族の方に感想をお聞きいたしましたら、大変好評でありました。子供さんの手にはため池でとった虫やフナの子のような小さな生き物がいっぱいあり、その子供さんの得意そうな笑顔が印象的でございました。
 また、新聞報道によりますと、去る五月二十三日に日本の棚田百選の一つ、清水町の蘭島の田植え体験の記事が写真入りで掲載されておりました。蘭島は有田川が蛇行する扇状台地で、約二ヘクタールに大小五十四の棚田が階段状に並んでいます。清水町にはこの地域以外にもたくさんの棚田が点在しており、楠本西原・江立川地区などにもあり、棚田復元保存に尽力されている方々も少なくございません。
 六月六日の棚田体験隊を視察した後、楠本西原地区に行き、保存管理作業員の皆さんとともに現場視察と意見交換をさせていただきました。皆さんの思いは、西原・江立川地域の棚田は生石高原への観光バスの行き交う道路が完成され、その生石高原のふもとに位置する棚田であり、二川ダムに支えられ、恵まれた自然環境の中、二川温泉と清水温泉に囲まれた地域の棚田である、この豊かな資源を生かした観光産業の振興に力を注ぐことのできる棚田であると力説されておられました。私は、皆さんの話を聞く中、何としてもこの地域を活性化さしていきたいと、こういう思いが伝わってきたのであります。これちょっと、当日の写真です。見といてください。(写真を渡す)
 しかしながら、地域の方々の高齢化や休耕田もあり、整備保存とその役割を将来世代へと継承するためには、行政の応援が不可欠であると痛切に感じたものであります。
 以上のことから、景観法の成立を受け県はどのような取り組みをなされるのか、知事にまずお伺いをいたします。
 また、棚田の保全と今後の取り組みについてはどういった対応をなされるのか、農林水産部長にお伺いをいたします。
 関連して、都市景観の整備上の重要性からお伺いをいたします。
 以前より進められています電線地中化の進捗状況について、和歌山城周辺の整備が完了していますが、東西の県道整備がとまったままであります。周辺には、和歌山県立近代美術館が黒川紀章先生の設計・管理のもと、総事業費約百九十二億余円の費用で一九九四年七月八日に開館され、本年で満十年目を迎えます。こういった美術館や博物館など公共施設が集中する和歌山城周辺やその延長線上にある県道和歌山野上線の三年坂・岡山丁より大橋付近の橋向丁までが未整備のままであります。ここ近年、防災上の観点から大地震による災害に対しても電線地中化の必要性が高まる中、今後の整備計画について県土整備部長にお伺いをいたします。
 次に、急傾斜地崩壊危険箇所に対する現在の状況と改良の進め方についてお伺いをいたします。
 去る五月二十日に和歌山市直川の畑地区において、千手川上流沿いに面した箇所でがけ崩れが発生いたしました。畑地区への生活道路が寸断されており、現地に行くためには川を挟んだ隣の和興団地の管財人の協力で仮設道路の確保は現在できてはおりますが、まだまだ状況的には大変厳しいものがございます。また、先日、舗装も完了いたしましたが、内容は急勾配のため歩行者や自転車、また単車などの通行については大変危険な状態であります。
 しかしながら、もともと一本しかない生活道路が今回のようながけ崩れに遭えば、たちまち住民の方々の不安と不便を強いられるのであります。この畑地区には十六世帯、四十七名の方が住んでおられます。また、小学生が一名と中学生も一名おられ、学校への登下校の際にも大変危険を感じるものであります。一刻も早く復旧し、ふだんの生活に戻れることを願うものであります。また、同じ日に和歌山市の滝畑地区への主要県道貝塚線でもがけ崩れがあり、片側一車線通行となっています。仮に崩落箇所の下に民家などあったとすれば大惨事になっていたことは言うまでもありません。
 このような状況の中、平成十五年度の「国土交通白書」によりますと、土砂災害への対策については、集中豪雨や地震等に伴う土石流、地すべり、がけ崩れ等の土砂災害が過去十年、平成六年から十五年で年平均約八百件発生しており、国民の生活に多大な被害を与えております。さらに、土砂災害危険箇所が増加傾向にあると指摘し、土砂災害の防止対策として砂防堰堤等の施設整備を実施しているが、全国に約二十一万ある土砂災害危険箇所に対する整備率は二割といまだ低い水準にあり、警戒避難等々のソフト対策を含めたさまざまな施策に取り組む必要性を示しています。一方、本県の県土整備部の概要では、県土の約八〇%が急峻で脆弱な山地で覆われている上、梅雨前線や常襲する台風に伴う集中豪雨等により被害が発生しています。
 以上のことから、本県での急傾斜地崩壊危険箇所はどのぐらいあるのか、また整備率はどうなっているのか、さらに今後の整備の進め方について、県土整備部長にお伺いいたします。
 次に、学校における歯科保健指導についてお伺いをいたします。
 六月が虫歯予防月間であります。厚生労働省は昨年、平成十五年一月十四日付で医政局長及び健康局長名で各都道府県に対し「フッ化物洗口ガイドライン」を通達しています。この内容は、皆様も御承知のとおり、健康日本21における歯科保健目標を達成するために有効な手段として弗化物の応用は重要であると位置づけられています。また、全国的に啓発されている八〇二〇運動の推進や国民に対する歯科保健情報の提供の観点から、従来の弗化物歯面塗布法に加えより効果的な弗化物洗口法の普及を図るためのもので、このガイドラインの趣旨に基づき関係諸団体等への周知が求められている内容となっております。
 既に、国内外において弗化物応用による齲蝕予防の有効性と安全性は多くの研究により示されており、口腔保健向上のため弗化物の応用は極めて重要な役割を果たしております。我が国においては、世界保健機構いわゆるWHO等の勧告に従って、歯科診療施設等で行う弗化物歯面塗布法、学校等での公衆衛生適応用法や家庭で行う自己応用法である弗化物洗口法という弗化物応用による齲蝕予防が行われてきました。特に、一九七〇年代から弗化物洗口を実施している学校施設での児童生徒の齲蝕予防に顕著な効果が報告されています。
 弗化物洗口は、特に四歳児から十四歳までの期間に実施することが齲蝕予防対策として最も大きな効果をもたらすことが示されており、また成人の歯頸部齲蝕や根面齲蝕の予防にも効果があると示されています。したがって、この弗化物洗口法は、四歳児から成人、高齢者まで年代層も幅広く適応され、特に四歳児から開始し十四歳児まで継続することが望ましいとされ、その後の年齢においても弗化物は生涯にわたって歯に作用させることが効果的であると示されております。
 一方、県下での学校歯科保健の取り組み状況については、健康体育課の資料を見ますと、中学での数値は、平成十五年度で処置完了者は全国では三八・二%、本県では三五・四%、また未処置歯のある者は全国では二九・五%、本県では二九・二%であり、合計いたしますと、全国では六七・七%、本県では六四・六%であり、全国平均水準とほぼ同じであります。また、平成十三年度、十四年度とも、ここ数年減少状況であり大変いい傾向であると思いますが、県下での弗化物洗口を早くから取り組みをしている学校の一つのいい例をこれから申し上げたいと思います。
 金屋中学では二十年以上前から弗化物洗口を実施し、罹患率は既に半分以下となっています。また、金屋町の鳥屋城小学校や小川小学校でも十五年以上前から実施し、着実に虫歯の罹患率が減少しております。過日、テレビ報道で紹介されていましたオーストラリアの町での上水道への弗素注入で町のほとんどの人々は虫歯がなく生活を送っている様子とか、日本では横田基地内の上水道も同じく弗素注入で虫歯がないという、こういう内容でございました。この報道を知った方から、和歌山市の学校は現在どうなっているのかといった問い合わせもございました。
 WHOの二十世紀が残した四大公衆衛生事業の一つとして、虫歯予防における弗素の応用が明示されております。しかしながら、児童生徒数の一番多い和歌山市や、また橋本市等では実施をしていないとお聞きしています。私は早急に全県下において実施すべきと思う観点から、県下の今後の啓発と未実施校に対する各教育委員会への対応について、教育長にお伺いしたいと思います。
 最後に要望でございますが、本年二月議会で一般質問をさせていただきました脳脊髄液減少症、いわゆるむち打ち症や慢性疲労症候群等にブラッドパッチ療法の効果について、事例を示しながら質問をさしていただきました。NPO・鞭打ち症患者支援協会が発行いたしましたパンフレットを皆様にもごらんいただきましたが、知事にもまた御理解を求めさしていただきました。その後、「県議会だより」をごらんいただいた方や、テレビ報道等でこのブラッドパッチ療法の有効性が報道され、私のもとはもちろん、NPO代表の中井さんのところにもたくさんの方々から問い合わせや病院紹介の依頼が殺到しているのが現状であります。
 このような症状で多くの方が苦しんでおられる状況をかんがみ、さきの議会でも強く要望いたしましたが、一刻も早い段階で最先端の医療技術を有する本県の県立医科大学において治療できる体制を確立していただきたく、再度知事に対し強く要望をさしていただき、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの角田秀樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 景観法の成立と和歌山県での良好な景観の保全についての御質問でございます。
 先般来、話題になっておりますように、和歌山県は高野・熊野が世界遺産に登録される、その時期に合わせてこの国会で景観法というものが成立したことは、本当にこの和歌山県のために法律ができたような感じで、非常に意義深いものだというふうに思っております。
 この世界遺産の登録に合わせて十の市町において景観条例というふうなのをつくって景観の保全をやってるんですけども、この法律は、上位法というわけじゃないわけですけども、条例と相まって景観の保全をなす、地域計画をNPOとか住民の代表の人もつくり、さらにそれに一定の規制が加わってくるということで願ってもない法律ですので、この和歌山県を、この景観法のある意味ではモデル地区にもなるような形で今後この法律の内容をよく精査しながら対応していきたいと思っております。
 特に、棚田の保存のことがございましたが、私も昔、自治省に勤めていたときに棚田保全に過疎債を使うというのを初めて制度をつくって非常に喜ばれたことがあったんですけども、棚田も生産の拠点というよりは本当に景観、環境、そういうことでの意味が非常に大きくなってきているんで、この景観法などを通じてこの保全ということが図られると非常に好ましいことだというふうに思っております。
○議長(尾崎要二君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 棚田の保全につきましては、国土保全や水資源の涵養はもとより、農山村の美しい景観の保全など、多面的な機能を維持・確保していく上で重要と認識してございます。
 県におきましては、中山間地域等直接支払制度による中山間地域における農業生産活動の継続への支援や、中山間ふるさと水と土保全基金事業による農業体験活動などにより農地保全の重要性等の普及啓発に取り組んでいるところでございます。
 今後とも、地域住民の意向を踏まえ、農業生産活動への支援や農地の有効利用対策などを通じ、景観に配慮しつつ、棚田を含めた農地の保全に努めてまいりたいと考えてございます。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 和歌山城周辺の電線地中化についてお答えいたします。
 県道和歌山野上線の電線類地中化計画については、県庁前交差点から橋向丁まで、全体延長約一・五キロの電線類地中化事業を進めており、このうち県庁前交差点より岡山丁の約〇・五キロの区間については整備済みであります。残りの岡山丁から橋向丁の約一キロの区間については、来年度から着手すべく関係者と協議・調整を進めており、今後とも早期完成に向け努力してまいります。
 次に、県内の急傾斜地崩壊危険箇所に関する御質問ですが、平成十二年度から十三年度にかけて実施した急傾斜地崩壊危険箇所等の再点検に基づき危険箇所調査をした結果、人家五戸以上を保全対象とする県下の急傾斜地崩壊危険箇所数は三千百四十四カ所で、平成十五年度末までに対応を行った箇所は六百九十五カ所、その整備率は約二二%となってございます。
 急傾斜地崩壊危険箇所の今後の対策の進め方といたしましては、限られた予算の中で人命、財産を守る観点から、人家戸数、斜面高、斜面勾配等を勘案し、今後とも順次、計画的、効果的に整備してまいります。
 一方、ハード対策がすぐさま実施されない箇所などにつきましては土砂災害危険区域図の配布や土砂災害警戒情報の発信といったソフト対策を行っておりますが、市町村と連携を図りながらより充実させてまいりたいと考えており、今後とも県民の皆様方の御理解、御協力をお願い申し上げます。
○議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 学校における歯科保健指導についてお答えします。
 県教育委員会では、従来から歯科保健指導の一環として、歯の磨き方や望ましい食生活等、虫歯予防の重要性について指導してまいりました。その結果、近年、児童生徒の罹患率は減少する傾向にあります。
 弗素洗口は、議員御指摘のとおり、昨年出された厚生労働省のガイドラインでその有効性や安全性が示されており、学校歯科保健研究大会でも成果を上げている事例が報告されております。今後とも、弗素洗口の実施方法や効果などについて市町村教育委員会等に周知するとともに、さまざまな機会を通してこれを推進してまいります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十四番角田秀樹君。
○角田秀樹 知事並びに関係部長から御答弁をいただきました。ありがとうございます。再質問というより要望ということで、私なりに述べさしていただきたいと思います。
 まず初めに、前後しますが、これから梅雨どき、また秋、台風ということで、先ほど県土整備部長の方からも答弁ございましたとおり、県下で三千百四十四カ所、このうちで約二二%の危険箇所ですか、そういったところの整備率ということなんで、あとの約八割近い箇所がこれからの時期を抱えて非常に不安な部分が県民の皆さんも多々あるということをまず認識をしていただきたいなというふうに思います。
 全国的にも、まあ日本そのものは危険箇所だというふうには思うんですけれども、人的にいわゆる無造作に大規模開発をされた地区とか、そういったのり面の関係等々もございますし、これから都市計画も全体的な含む中で、やはりこういう危険箇所を人的に発生をさせないというのが行政の一つの務めではないかなというふうに思う点も多々ありますので、今後、整備率の向上のために格段なる努力をしていただきたいということをまず一点、要望をさしてもらっておきます。
 続いて、景観法等につきましては、今回、国会でぎりぎりで成立したわけなんですが、農林水産省、国土交通省、そして環境省という三省にまたがった関連した法律なんですね。今回、私は、棚田等で先ほども知事に写真を見ていただきましたが、生計を営む皆さんの姿を通じて非常に感じたことは、高齢にもかかわらず、その現状に甘んじることなく、今後どうしたら我々のこの地域がよくなっていくのかという、こういう非常に積極的な、また付加価値をつけたそういった物の考え方で今現在そのお仕事をされてるというところに非常に感動を覚えました。たくましい農事業のそういった方々の姿に声援を再度送っていきたいなというふうに思います。
 皆さんも御承知だと思うんですが、「魅せる農村景観」という、こういう本がございます。この著者である熊本大学の佐藤誠教授という方が農村景観の保全・形成・観光活用について、三つのAがあるんだと、こういうふうにおっしゃっております。いわゆるアメニティー、暮らしの快適性。また、アクセス、交通とか情報のメリットと美しい自然の享受。そして、アトラクション、田舎暮らしの楽しみ方という、こういうキーワードがあるんだと。三A型、いわゆるスリーA型ツーリズムというのが今後観光の潮流のトレンドであるということを主張されております。また、美しい農村の景観というのは具体的な形をとった持続可能な地域でありますので、安心立命の暮らしの象徴であるとも言われておりました。今後、都市住民の方々が田園を訪れて美しいと、こう感じることはそのまま未来へのふるさとへの回帰する魂の働きであると、こういうふうな形で結ばれていたことが非常に印象的でございました。この本を見るにつけ、今後、農業の発展と構造改革こそ多様な社会変革に即応し得るすべではないかなというふうに私自身は思いました。
 「意志あるところ必ず道あり」と言われますが、インドの近代農業の父と言われたスワミナサンという博士がおいでになりますが、穀物の品種改良によって農業の生産性を飛躍的に向上させ、当時、インドやアジア諸国で食糧危機から多くの人々を守ったという非常に有名な話ですが、これは緑の革命として今でも言い伝えられております。
 知事におかれましては、県民のトップリーダーとして今後ますます多くの県民のためにも活躍していただきたく、強く要望いたしまして、一般質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で角田秀樹君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時十九分休憩
     ─────────────────────
  午後一時二分再開
○副議長(吉井和視君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二番尾崎太郎君。
  〔尾崎太郎君、登壇〕(拍手)
○尾崎太郎君 議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
 まず、教育問題についてであります。
 小・中・高とも一度も優等生であったこともなく、やんちゃくれの代名詞であったような私が教育行政を論じるのはいささか口幅ったい気もいたしますが、保守政治を標榜する者の端くれとして昨今の教育のあり方は看過できないものがあり、吉井和視先生を会長とする教育を考える議員連盟で私も末席を汚しつつ、この問題に取り組んでいるところであります。
 先日も、御近所の高校生と話す機会がありました。その子は高校を受け直したというので理由を聞くと、前の学校はとてもじゃないが勉強できるような環境じゃなかったと言うのです。男女を問わず、白昼堂々とくわえたばこで下校し、路上に直接あぐらをかいてたむろする生徒たち。教師を全く無視し、崩壊していく学級。社会問題化する引きこもり、キレる子供たち。今や、こうしたことは我が国の日常の光景とさえなってしまっています。一体我が国の教育はどうなってしまったのか。何かが根本的に間違っていたのではないか。今日の教育行政は、人とはどういう存在であるかといった根源的な問いかけをすることからやり直していかなければならないのではないでしょうか。
 社会主義国家は、人間の本性に対する無知ゆえに、あるいは無邪気なまでの理性への妄信ゆえに、現実から遊離した抽象的な理念に基づく経済政策を推し進め、破綻しました。経済におけるマルクスの誤謬は今や明らかになったわけですが、我が国では教育の世界で巧妙にその姿を変えながら勢力を拡大してきた、その結果が現在の教育の荒廃であると我々保守は考えます。浅薄な観念体系としての理想社会をつくろうと、子供たちを教育されてはたまりません。
 我々保守政治を標榜する者は、現実社会の成り立ちをまずは肯定しようと構えます。そして、現実社会は先人たちの営みの上に積み上げられてきたものですから、過去、歴史もまたできる限りこれを肯定的にとらえていこうと努めます。我々は、日常的で身近なもの、慣習、伝統、文化、過去、歴史を大切にし、知性、理性についてはそれがすばらしいものであり、人間にとって必要不可欠なものであることは認めつつも、時にはそれが人をして過激な行動に走らせることを恐れるのです。
 トクヴィルの言葉をかりるならば、知性には健全な枠をはめなければならないのであり、枠とは悠久の時の流れの中で醸成されてきた慣習、伝統であり、またそれらに根差した道徳であるのです。事ここに至って、ようやく道徳教育の必要性が叫ばれつつあります。法律の強制だけで社会秩序を維持しようとしても、それは無謀というものであり、そんな社会は非常に窮屈で不自由な社会となり、全体主義をほうふつさせます。道徳により各人がみずからによき振る舞いを課して初めて、社会は品格あるものとなるのです。
 そして、ヒュームが言うように、道徳の規制は理性、人間の知的判断の決定ではないのであります。したがって道徳とは、今に生きる我々が頭で考えてつくるルールなどでは決してなく、祖先から受け継いでいくたぐいのものであります。どこかの小学校で、「いただきます」と食事の前に手を合わせて唱和することが問題になったと聞いたことがあります。まさに憂慮すべき事態であります。
 私が市議会議員時代には、ある御婦人が「思春期のためのラブ&ボディBOOK」なる冊子を事務所にお持ちになり、こんなものを学校が娘に配るのは許せないので何とかしてほしいとの陳情を受けました。一読してみて、驚倒いたしました。正気のさたではない。ピルの礼賛のようなことまで書いてある。常識的な親なら、性交を奨励するかのようなこのような冊子は当然、中学生の娘さんには読ませたくはないでしょう。
 私は、早速教育長に抗議し、和歌山市内の中学校へは配布しないように申し入れるとともに、このような冊子が父兄や議会などのチェックを受けることもなく、あたかも正規の教材であるかのように学校で配られてしまう教育行政のあり方に恐怖を覚えました。幸い、和歌山市では既に配布を終えた数校を除いて配布を中止しましたが、この冊子は厚生労働省所管の母子衛生研究会なるところが全国で百二十七万部も配ったそうですから、問題の根は深いと言わなければなりません。
 また、文部科学省が日本女性学習財団に委嘱してつくらせた「新子育て支援 未来を育てる基本のき」というパンフレットには、「女の子には礼儀正しく、言葉遣いは丁寧に、男の子にはガッツがあって責任感がある子に、こんな押しつけをしていませんか」とか、あるいは女の子にひな祭り、男の子にこいのぼりというのはよくないというようなことが書いてあります。
 「らしさ」という高校教科書では、とにかく男らしさとか女らしさ、日本人らしさとか、そういう「らしさ」というものは差別につながるというのです。男女が共同して社会に参画することと男女の性差をなくすということは、全く次元の異なることであります。某市の男女共同参画課は、両性具有のカタツムリの絵を描き、「人間の理想だ」とするグロテスクなパンフレットを作成しております。いわゆるジェンダーフリーなどは現実から遊離した抽象的な理念そのものであり、思想と呼べるほどのものですらなく、妄想と言ってもよいものでありましょう。
 最新の脳神経科学は、男性の脳、女性の脳の違いを明らかにしています。男女は生まれながらにしてそれぞれの「らしさ」を持っているものなのです。互いの差異を認め合うこと、いや、むしろ差異があるがゆえに男女は引かれ合い、調和することができると言った方がいいのかもしれません。
 無論、「らしさ」には文化的側面があります。例えば、「武士道の国から来た自衛官らしく」といった物言いにそれはあらわれます。民族で共有できる「らしさ」は民族が共有できる価値であり、それを伝えていくことこそ、価値相対主義のわなに落ちた我が国に今まさに必要とされる教育であると言えましょう。どこの国も、どの民族も、それぞれに固有の歴史を持っています。それぞれの固有の歴史こそが、その国、その民族の「らしさ」、すなわちアイデンティティーであり、その国をその国たらしめる共同体意識の源泉であります。固有の歴史の喪失はアイデンティティーの喪失であり、固有の歴史とは国民のアイデンティティーのために叙述された歴史であると言ってよいかと思います。だれの視点で書かれたのかよくわからないような自虐的な歴史は固有の歴史とは言えず、学究的な歴史学としてはともかく、学校教育には適していません。何となれば、そもそも子供たちに自国の歴史を教えることの意義は国民意識を養成することにあるのですから。
 無論、私は偏狭な自国中心主義を唱えているわけではありません。我が国はとりわけ、世界の他の国々と適切な関係を築いていかなければ存立し得ない成り立ちの国であります。しかし、自国のアイデンティティーが揺らいでいては他国と適切な関係を維持し得ないのは、アイデンティティーを見失った人が他人とうまくやっていけないのと同じであります。
 近年、そうした状況を憂い、新しい歴史教科書をつくる会が「新しい歴史教科書」を世に問いました。私も一読しましたが、ようやく我が国にも子供たちに自分たちの国の生き生きとした歴史を語ろうとする教科書が登場したかと、喜んだものであります。
 しかし、御承知のとおり、検定には合格しましたが、採択はほぼゼロという残念な結果でありました。当時、教科書採択をめぐって文部科学省は全国の都道府県教育委員会教育長に対し、採択の公正確保を求める通知を採択作業進行中に重ねて出しております。毎回さしたる混乱もなく行われていた教科書採択が、他の教科書と同じく正規の手続を経て検定を通っている「新しい歴史教科書」が加わった途端、異例の通達を出さざるを得ないほど混乱をしたわけであります。市販本としては六十万部も売れた「新しい歴史教科書」の採択率が〇・〇三九%、ほぼゼロであったのは単なる偶然であったとは私にはとても思えません。教科書の公正な採択については、いま一度考えてみるべきでありましょう。
 次に、ゆとり教育についてであります。
 マスコミに報道されて有名になった円周率を三と教えることが象徴するいわゆるゆとり教育とは、一体どのような教育的見地から導入されていったのか。これもまた、我が国の伝統的な教育のあり方に対する一部の進歩的官僚の生理的な反発ではなかったのか。私には、合理的な根拠があってのことだとは到底思えないのです。
 言うまでもなく、学力の向上を目指すことは学校教育の大前提であります。学力であれ、体力であれ、それを向上させるためには負荷、ストレスをかけることが必要不可欠であります。負荷とは苦しむことと言ってもよいでしょう。人格でも「艱難なんじを玉にす」というぐらいですから、苦労なしには向上し得ないのです。スポーツの世界にゆとり練習などというものがあるでしょうか。それは練習ではなくて、遊びであります。
 ゆとり教育もまた、遊びにはなっていないか。遊びは楽しいものであり、それはそれで人間にとって必要なものであります。よく学び、よく遊べであります。しかし、遊びではパフォーマンスの向上は期待できません。練習や学習を楽しむというのは、ある一定のレベルに達した人の言うことであり、また別の次元の話であります。スポーツ選手なら、ゆとりある練習しか課さないようなそんなコーチは早々に見切りをつけてしまうことでしょう。
 もちろん、過度の負荷は逆効果ではありますが、かつて詰め込み教育だと非難された我が国の教育が子供たちにとって過度の負荷であったのかどうか。今のゆとり教育が適度な負荷なのかどうか。今日の我が国の子供たちの著しい学力の低下と他国の子供たちの学力の向上を見るとき、答えは明らかであります。
 人は、だれしも楽に流れやすいものであり、自分で自分を律することは至難のわざであります。まして、子供においてはなおさらであります。そういう意味では、巷間、子供の権利などということが言われておりますが、子供には厳しく鍛えてもらう権利があると言えます。すぐれたコーチをつけてもらえる権利があると言えるのです。書店に行けば、子供の学力をどのようにして伸ばしていくのかをテーマとしたハウツー本が所狭しと並んでいます。あたかも今日の公教育に対する国民の自己防衛のようですが、売れているものを何冊か読んでみますと、何のことはない、内容は驚くほど伝統的であり、特に目新しいものはありません。音読、書き取り、単純な計算、文章の丸暗記等であります。最新の栄養学に基づいて献立を考えたら伝統的な日本食になったようなものであります。
 子供たちの個性を尊重しながら自由と独創性を認め、指導は抑圧的にならず優しく指導しようとして、学級は崩壊いたしました。江戸時代、我が国の教育は紛れもなく世界最高の水準でありました。寺子屋では、少年たちが正座をさせられ、意味もよくわからない「論語」を一斉に大声で暗唱している。先生のおっしゃることは絶対的で、逆らうことは許されない。たまにはげんこも飛んでくる。それでも、少年たちは先生を尊敬し、元気に勉学に励んでいたのではないでしょうか。
 また、昔日の我が国の家庭でのしつけは、日本を訪れた宣教師たちを驚嘆せしめています。「我々の子供は、その立ち居振る舞いに落ちつきがなく、優雅を重んじない。日本の子供はその点非常に完全で、全く称賛に値する」と、イエズス会の宣教師ルイス・フロイスは著書である「日欧文化比較」に記しています。
 アメリカは、一九六〇年代から七〇年代に深刻な教育問題に直面いたしました。共和党のレーガン政権は、教育には厳しさが必要との観点から、それまでのリベラルな教育行政を修正いたしました。その後の民主党のクリントン政権もさらに基礎学力の向上に力を入れ、数学や理科、国語の授業時間数を五〇%以上も引き上げましたが、その成果はまことに顕著なものがありました。アメリカをまねよとは言いませんが、我が国は悠久の歴史を誇る国柄。教育行政に携わる方々も、ぜひ一度、古きをたずねていただきたいと思います。必ずや、新しきを知ることでありましょう。
 我々が教育をどのように考えているのかを、るる述べさせていただきました。何点かを教育長にお尋ねいたします。
 まず第一点、道徳教育の必要性をどのようにとらえておられますか。また、道徳教育はどのようにして行われるべきものとお考えでしょうか。
 第二点、自国の歴史を教えることの教育的意義をどのようにお考えでしょうか。
 第三点、教科書採択はどのような手続で行われるのですか。また、採択の公平性を確保するためにどのような点に留意すべきでしょうか。
 第四点、いわゆるジェンダーフリーについてはどのようにお考えですか。
 第五点、ゆとり教育についてはいかがでしょうか。
 以上、お尋ねいたします。
 さて、本県は果樹王国であり、中でも紀州ミカンは温州ミカンのトップブランドとして長らく市場に君臨してまいりました。私が子供のころは和歌山と言えばミカン、ミカンと言えば和歌山であったわけですが、近年では、品種の多様化、消費者の嗜好の変化等によりその競争力は低下してきており、激しく変動するミカンの価格は農家の経営を難しいものにしています。
 そこで、食品としてのミカンではなく、原材料としてのミカンの生産に活路を求める試みが金屋町のミカン農家の方々で行われています。ミカンがさまざまな薬効を持つことは古くから知られており、ある俳優が毎日焼きミカンを一つ食べるという健康法を実践していると聞いたことがありますし、私も小さいころ、天日に干してすりつぶしたミカンの皮が入ったおもちを体にいいからと祖母に食べさせられた記憶があります。また、漢方ではミカンは知られた素材だそうでありますし、学会でもミカンの薬効に関する研究が進められ、ミカンの皮に含まれるヘスペリジンを初めとする各種のフラボノイド類がアレルギー体質の改善に効果があるとの論文が発表されております。
 現在の我が国では、花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が増加の一途をたどっております。国は事態を重く受けとめ、中核研究機関である理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターや国立相模原病院、千葉大学などが共同で、アトピー性皮膚炎、花粉症等を今後解決すべきアレルギー疾患とし、まずは花粉症に対する根治療法を五年以内に確立することを目指していますし、文部科学省はアレルギー疾患の原因究明に向けて詳しい調査に乗り出す計画であります。
 現在の薬事法等では薬品と食品ではその意味合いが全く異なり、食品をもって「何々に効く」と表示することはできません。しかし、いわゆる健康食品は国民の健康への関心の高まりとともに大きなマーケットを形成しつつあり、各食品メーカーも新たな商品の開発にしのぎを削っています。こうした現状にかんがみ、厚生労働省も健康食品に係る制度のあり方に関する検討会で、法的な位置づけが不明確ないわゆる健康食品の適切な取り扱いについて協議を始めました。
 こうした状況の中、きのくにコンソーシアム研究開発調査事業の援助を受けて各種かんきつ類の有効成分検索や製造方法を検討した本県の研究者は、ヘスペリジン等の各種フラボノイドは成熟する前の青ミカンにより多く含まれていることを突きとめ、さらには、どの程度の大きさの青ミカンが一番効率的かまでを明らかにしています。この研究を受けて金屋町農家の方々は、金屋町青みかん薬用利用研究会を立ち上げました。去る五月三十日にはこの研究会主催の「青みかんに秘められた力」と題する講演会が金屋町文化保健センターで開催され、大阪府立大学大学院の小崎俊司先生を初め三名の教授から、青ミカンにはまだまだすぐれた薬効がある可能性があり、現在鋭意研究中であるとのお話がありました。また、県内の企業により青ミカンを原材料にした全国初となる健康食品も開発され、四月に発売に至っておるところであります。
 原材料としての青ミカンの栽培生産は、ミカン農家に安定した収入が確保できる、計画生産ができる、ミカン樹木の延命ができる等のメリットがあり、青ミカンの収穫は摘果のような専門性がないので、例えばシルバー人材センターなどからの人材を受け入れられる可能性もあり、新たな雇用の創出につながります。他県に先んじて青ミカンの生産に乗り出したのですから、和歌山産青ミカンを何とかしてブランド化していきたいものであり、そのため品質、安全性をさらに向上させる生産ノウハウの確立が求められるところであります。
 知事の提唱された緑の雇用事業は、かつて本県の代表的産業であった林業に新たな視点から光を当てたものであり、小泉総理もその可能性には大いに注目をいたしております。日本語では、しばしば緑は青と表現されます。青葉、青虫、青信号。青ミカンは緑のミカンのことであります。青ミカンは、さまざまな薬効が期待できる大きな可能性を秘めた農産物ではありますが、いまだ消費者に十分認知されるには至っておりません。ぜひとも青ミカンを活用するこの事業を農業版の緑の事業とでも位置づけていただき、知事持ち前の情報発信力で全国へアピールをしていただきたいと思います。
 現代では、宣伝、コマーシャルが事業の成否を分けると言っても過言ではありません。「文藝春秋」の全国知事ランキングのベストテンに木村知事が入っており、記事には木村知事に対するコメントも載っておりました。別に雑誌のランキングに入ったからといってその知事の評価が定まるわけではないのは言うまでもありませんが、木村知事のキャラクターは少なくとも日本で最も売れているオピニオン誌をにぎわせたことは事実で、歴代の知事にはなかったことのように思います。
 話題になるというのは現代ではとても大事なことであり、一つの才能であります。同じことをしても、知事だから話題になるというのではなくて、木村良樹だから話題になるという要素が確かにあると思います。適切な政策を立案・実行することはもちろん大切なことではありますが、時にはそれを知ってもらうことがもっと重要な場合もあります。青ミカンにつきましても、知事の御活躍に大いに期待をしたいところであります。青ミカンを活用した新しい事業についてどのようにお考えか、知事及び関係部長にお尋ねをいたします。
 最後に、地籍調査についてお尋ねいたします。
 行政を円滑に効率よく進めるためには、我が国を構成する国民、国土の現状を正確に知る必要があることは言うまでもありません。戸籍につきましては、我が国は世界で最もよく整備されており、しばしば羨望の的となっていますが、地籍となりますとまだまだ十分には整備されておりません。登記簿や公図が必ずしも実態をあらわしたものでないことは国民の常識であり、そのため土地の取引に際しては、国民は地籍が整っていればする必要のない折衝を余儀なくされています。また、公図の訂正に大変な時間がかかるような状況をこのまま放置していては、必要な公共事業がスピーディーにできず、本県の競争力はさらに低下してしまいます。したがいまして、本県も早急に地籍を整備する必要があると考えます。
 そこで、地籍調査の意義をどのようにとらえておられるのか、また現在の本県の進捗率はどのぐらいであるのか、今後どのような方針で地籍調査を進めていくおつもりなのかを担当部長にお尋ねいたしまして、質問といたします。
○副議長(吉井和視君) ただいまの尾崎太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 青ミカンを活用した新産業の創出ということですけども、私自身もこれに大変な関心を持っております。今、和歌山県で二つの会社がやっていこうというふうなことで、私はどちらの分も見ておりますけれども、非常に希望が持てるし、それからまた、ミカンをミカンとして売るのではなく青ミカンとして売るというふうな発想が今の時代には非常に貴重なものだというふうに思っております。
 ただ、これも結局、今御質問にありましたように、PRということが非常に大事でして、和歌山県の北山村にジャバラというミカンがありますが、これのジュースが花粉症に効くということをマスコミが報じた途端に、もうこれは今や手に入りにくい、焼酎で言えばすごい焼酎がありますけども、それほどのジュースというふうなことになっております。
 この青ミカンの、これは今錠剤というふうな形ででき上がっておりますけれども、これも早くそういうふうな形で人口に膾炙するようになれば、本当に和歌山県をひょっとしたら支えるような産業の一つになる可能性がありますので、県としてもいろんな形でPRに努めていきたいし、またできる限りの支援をしていきたいと、このように思っております。
○副議長(吉井和視君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 青ミカンを使った新産業の創出についてでございます。
 議員お話しのかんきつ類果実を素材とする機能性食品の開発研究につきましては、平成十五年度のきのくにコンソーシアム研究開発調査事業を活用することにより成果を得られたものであり、研究開発をもとに新事業の創出につながっていく好事例であると考えております。
 今後は販路開拓が重要な課題となってまいりますが、専門分野への展示会出展やマーケティング調査など、制度活用について御検討いただくとともに、新たな研究開発等につきましては事業の各段階に応じた適切な支援策が講じられるよう検討してまいります。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 原料としての青ミカン生産に関する支援についてでございますが、県ではこれまでミカンのベータクリプトキサンチンやカキのビタミン類、梅のクエン酸など、本県主要果実の持つ機能性を前面に押し出した消費拡大対策を関係団体と一体となって取り組むとともに、現在、カキ酢やカキの皮についての新たな機能性成分の研究を関係機関の協力を得ながら進めているところでございます。
 議員お話しの青ミカンの機能性を生かした新商品の開発につきましては、収穫前の未成熟のミカン、いわゆる摘果ミカンを原料として利用するものであり、ミカンの新たな需要を開拓する試みとしてその動向に注目しているところでございます。
 今後は、原料としての安全性の確保とともに安定した生産のために、肥培管理や農薬の適正な使用など、生産技術指導を通じて支援してまいりたいと考えてございます。
○副議長(吉井和視君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 和歌山県の地籍調査につきましてお答えいたします。
 現在、法務局に備えつけられている登記簿と公図の多くは明治時代の地租改正によってつくられた台帳と地図をもとにしたもので、土地の境界や面積が正確とは言えず、議員のお話のとおりでございます。
 地籍調査により土地の実態を正確に把握し、これに基づき正確な登記に改めることにより、公共事業の用地取得の促進、課税の適正化、災害復旧の円滑化、民間の土地取引の効率化など、さまざまな効果が得られるものと考えております。
 地籍調査の現状でございますが、県内五十市町村のうち既に完了した下津町、太地町の二町を除くすべての市町村が実施中で、高野口町は本年度、野上町は来年度に調査完了の予定です。平成十五年度末現在の本県の進捗率は一三・六%で、近畿平均の約一一%を上回っておりますが、全国平均の四六%を大きく下回っております。このため、県としましては、厳しい財政状況の中ではございますが、過去五年間で事業費をほぼ倍増させるなど積極的に取り組みを進めており、今後も必要な予算の確保に努めるとともに、市町村に対し一筆地調査の外注化制度の活用等、事業の効率的処理の指導に努めるなど、引き続き国、市町村と連携し、事業をさらに強力に推進してまいりたいと考えております。
○副議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育問題、五点についてお答えいたします。
 まず初めに、道徳教育のあり方といたしまして、子供たちが相互の心の交流を大切にし、正義感や公正さ、命を大切にするなど、豊かな人間性や社会性を身につけることが重要であると考えております。こうした観点に立って、あらゆる教育活動の根底に道徳教育を位置づけるとともに、家庭や地域と連携して子供たちに実践力を伴った豊かな心をはぐくむ指導を強めているところです。
 次に、歴史教育、とりわけ中学校における歴史学習の目標は、子供たちに多様な歴史的事象を通して我が国の歴史への関心を高め、その流れや特色を世界の歴史を背景に理解させることにあります。さらに、我が国の文化と伝統のすばらしさを学ぶことにより日本人としての自覚を育てることが大切であると考えております。
 続いて、教科書の採択についてお答えします。
 国の検定に合格したすべての教科書について、県内八つの採択地区の市町村教育委員会がその権限と責任をもって綿密な調査研究を行い、さまざまな視点からの意見をもとに公正かつ適正な採択を行っております。県教育委員会としましては、有識者、教育関係者や保護者等で構成する県教科用図書選定審議会を設置して、各採択地区に対し指導・助言しているところです。
 次に、ジェンダーに係る指導は、男女共同参画社会の実現のために行われる取り組みであると認識しております。したがって、男らしさ、女らしさは一概に否定されるものではなく、性別にかかわらず、自分らしさを大切にし、一人一人が個性や能力を十分に発揮できる社会を目指すことに主眼が置かれるべきであると考えるものであります。
 学校教育においても、こうしたことを踏まえ、固定的な男女の役割分担意識によって自己実現の幅が縮まることのないよう留意しながら、これまで長年にわたって築かれてきた文化や伝統を大切にするとともに、互いに異性についての理解を深め協力し合う態度を育てていくことが必要であると考えております。
 最後に、いわゆるゆとり教育については、新しい学習指導要領では、知識、技能を単に教え込むことに偏りがちであった教育から、みずから学び、みずから考える力などをはぐくむ教育へとその基調を転換したものと受けとめております。しかしながら、基礎的な学習が軽視され、学力が低下するのではないかという心配の声が上がったことも事実であります。
 教育委員会としましては、教育内容を厳選することで生まれる時間的、精神的なゆとりを活用し、子供一人一人の理解の状況や習熟の程度に応じたきめ細かな指導を行い、基礎・基本の確実な定着を図るとともに、発展的な学習を取り入れることによりさらなる学力向上を目指すよう各学校に対し指導いたしております。
 また、昨年度から全県的に学力診断テストを実施して基礎的、基本的な学力が定着しているか、これを客観的に把握し、確かな学力の育成に努めているところでございます。
 以上であります。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二番尾崎太郎君。
○尾崎太郎君 教育問題につきましては、我々教育を考える議員連盟で勉強を続けまして、また大いにこの本会議場で教育長とあるべき教育の姿について議論を展開してまいりたいと思います。
 また、青ミカンにつきましては、知事の熱意ある決意が伝わってまいりまして、非常に心強い感じがいたしました。農家の方、特に青ミカンを生産して新しい農業のあり方を模索しておられる方々にもよい励みになったのではないか。新しい産業の創出に向けてこれからも御支援賜りますようお願い申し上げまして、要望といたしまして質問を終わります。
○副議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で尾崎太郎君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十一番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 それでは、通告に従い、一般質問をさせていただきます。
 私は、さきの二月議会で、県によるコスモパーク加太へのトマト栽培施設誘致の問題点を取り上げました。その後、三月末に県とカゴメとの間で進出協定が結ばれたことを踏まえ、トマト農家だけでなく広く県民から注目されている問題として引き続き取り上げたいというふうに思います。
 私は、カゴメによるガラス張りの大規模ハイテクハウスの現場と近隣農家の様子を実際に確かめたいと、この六月一日に広島県の世羅町の世羅菜園、明くる日の二日には長野県三郷村の安曇野みさと菜園を調査に行ってまいりました。どちらもびっくりするほど巨大な施設でありました。
 広島県の世羅では、三年前に完成した約三ヘクタールの既存のハウスに加え、今五ヘクタールの新しいハウスを増設中でありました。ここは、建設業をされてきた方を中心とする地元の民間の農事組合法人が経営主体です。取締役の方は、この先トマトの供給量の増大や市場価格の低下で二割程度価格が下がっても大丈夫なように計画をしているということや、パック詰めを機械化して二割程度人員削減をしてコストダウンにつなげたいというふうにおっしゃっていました。経営や雇用はやっぱりシビアに見ているそうです。
 役場でお話を聞くと、この世羅町は広島県の中央部の台地に位置し、県内屈指の農業地帯で、世羅ナシやブドウ、花の生産で有名なところです。世羅町では以前にJT(日本たばこ産業)との契約栽培もやっていたそうですが、JTがトマト生産から撤退したのを受けて栽培はやめてしまったそうです。その農家の方々がカゴメと新たに提携をしたという話はなく、町内にトマト農家は一軒もありませんでした。
 明くる日に伺ったのは、ことし完成をし、操業をし始めたばかりの長野県安曇野みさと菜園です。三郷村はアルプスのふもとのなだらかな河岸段丘にある人口一万七千人の村です。農業の中心は、何といってもリンゴと米、そして畜産だそうです。ここは第三セクターで、事実上、村が経営をしておりました。村の担当者の方からお話を伺うと、ここでも以前は長野の気候を生かした加工トマトの栽培を行っていたようですが、現在、トマト農家は全くいない状況だそうです。
 安曇野みさと菜園では、生産部長さんからも詳しくお話を伺い、実際に施設の中も見学をさせていただきました。ハウスの中は思ったよりも暑く、気温は三十度台ですが、柱につるした温度計は四十度を超えて指すそうです。トマトは夏の暑さに弱いので、外気温度が三十三度を超えるとスプリンクラーが作動して気温を三度ぐらい下げる仕組みになっているようですが、これを思い切りやると井戸水がすぐに足りなくなるだろうと心配もされていました。
 この二つの施設を見て感じた特徴は、以下の四点です。
 第一に、どちらも大規模な国の農地開発の失敗遊休農地に目をつけてスタートをしたということです。第二点目には、地元農家との連携の姿が見えてこなかったという点です。第三点目には、水の問題です。栽培用の水だけでなく、水やガスを使って積極的に温度管理をするそのハイテクハウスならではの大量の水を必要とすると感じました。広島では格安の農業用水をふんだんに使っているようですし、井戸がちゃんと出ている長野県でも不安を持っている様子です。第四点目は、雇用の問題です。その実態は、年間を通じて一定の仕事があるというわけではない、雇用人数は四時間、六時間のパートも入れての数だという話でした。暑いハウスの中の仕事は思ったよりきつくて若いかなり元気な人でないと続かないということですし、また先ほど触れましたが、出荷作業の機械化が進むとこの先人手は要らなくなるシステムだということもリアルに見る必要があると感じました。
 私は、こうした実際のハウスの調査と並行して、二月議会以降も県内のさまざまな関係者の方々と懇談を重ねてまいりました。日高や那賀のJAの役員さん方は、県行政への不信感をあらわにしておられました。JAからは、企業の農業参入を進める特区構想やカゴメの誘致による甚大な痛手を受けるとして再考を促す要請書が県に提出されていると聞いています。「文書で回答してくれと言ってあるが、ナシのつぶてだ」と、怒りを隠しませんでした。
 また、あるミニトマトの生産部会では、十数人の役員さんが集まってくれました。そして、「県からは説明が全くない。高品質なトマトづくりに取り組む私たちを県は応援してくれていると思ったけれども」と戸惑いを隠せません。また、「高品質化のためにハウスに換気用のファンをつける国の補助事業があるんですが、県は一円も援助してくれない。カゴメにそんなお金を出すのなら」と憤慨しておられました。
 一方、産直に取り組んでおられる紀ノ川農協では、年間通じて一株買い取りのシステムでシーズンを通じて配達をし、消費者からもトマトらしい味がいいと好評だそうですが、ここでも大阪市場のトマトの価格相場が値段設定に響いてきているそうで、カゴメトマトの影響は消費者全体の購買力が落ちてきている中で脅威だというふうにおっしゃっていました。こうした農家の不安にこたえる県の姿勢が見えてこないというふうに思うんですね。
 こういった点に基づき、私はまず第一の質問として、二月議会以降、農家と関係団体への説明や県内農家への影響調査はどのように進められてきたのかをお尋ねいたします。農林水産部長よりお答えをいただきたいと思います。
 次に、私は用地の賃借料の設定について質問したいと思います。
 今回、一平方メートル当たりの値段、年間百円という価格設定をして協議しているというふうに聞いております。その根拠とした経済効果を社会経済研究所の試算では二十年間で五百八十億円の経済効果と大々的に評価をしているのですが、この試算であらわれた問題点を指摘してみたいと思います。
 まずは、県内への経済波及効果の低さです。建設費など一過性のものよりも営業に伴ってどう波及していくかというこの第一次波及効果、この欄を見るとよくわかるんですが、県内への誘発額は二十年間で十一億円。これと比べて県外へは九十三億円。こういうふうに、県内分はわずか全体の一割ぐらいにしかすぎないんです。これは、カゴメは苗は県外から持ってきますし、肥料や農薬、ロックウールなど資材はほとんど県外調達であり、地元調達率の低い事業であるということから来ています。
 その反面、県内農家を初めとするマイナスの経済効果は全く試算をされていません。県内トマト農家の生産額は年間十七億円です。市場は一割入荷がふえれば二割値段が下がり、二割ふえたら半値に下がるとまで言われてきました。実際に、この四月、五月は好天に恵まれて入荷が順調で価格が大きく下がったということも報告されています。この価格低下傾向に関西でカゴメの参入が影響し、もし仮に二割値段が安くなったとすれば二十年間で合計七十億円の県民所得が失われることになり、雇用の創出という看板であるパートの人件費二十年分が全部消えてなくなる、そういう計算になります。それどころか、一層農業の衰退を招きかねません。県内の地場産業と比べても地元への経済効果や他産業への波及効果が低く、県民の所得がマイナスになる要因を抱える今回の誘致を決してバラ色に描き出せるものではないと指摘せざるを得ません。
 そういう今回の誘致に対し、土地代が一平方メートル当たり年間百円というのは他の県内企業用地と比べても安過ぎるのではないでしょうか。私はこの価格の見直しを求めるものです。県が開発公社から借り受ける原価は五百六十円程度。たった六分の一しか請求しないことになります。この差額は年間一億七千万円、二十年間で約三十四億円にも上ります。これは県民の税金で賄うことになります。加えて土地造成費用の二十億円、税金の優遇措置など、合わせて数十億円の補助をする計算になると思います。
 今年度予算の編成においても「お金がないから」と言って県民向けのわずかな予算にも大なたを振るいながら、一営利企業の経済活動にこれだけの県民の税金を投入するのは納得できるものではありません。「県民に向けた県政か、一企業に向けた県政か」、こういう批判の声が上がっているのも私は当然だと思います。
 知事にお尋ねをいたします。
 一平方メートル当たり百円という賃貸料金は他の県内企業用地と比べても格段に安過ぎ、土地造成費用の約二十億円と合わせて、事実上一企業への過大な税金投入となるのではないか、この点について御答弁を願います。
 次に、緑の雇用事業について伺います。
 森林の持つ公益機能に着目し、環境保全事業を展開することによって新たな雇用を創出し地域の活性化を図るとしたこの緑の雇用事業については、私どもは応援する立場で注文をつけてきました。この緑の雇用も三年目に入り、すぐれた成果を開拓しながらも、国の緊急雇用対策の終えんなどを控えて正念場を迎えていると感じています。緑の雇用の実際の現場では、積極面を評価しながらも、率直な意見や提案、批判も出されています。その生の声を紹介しながら、今後の方向について質問をしたいというふうに思います。
 この間、本宮町、中辺路町、龍神村、清水町と回って関係者から声を聞いてまいりました。地域のリーダー的な山林業者の方は、「大変いい事業だが」と前置きをして「せっかくの若い子らを短期間で帰してしまっていることにはなってはいないか」、こういうふうに指摘をされました。
 Iターン者の方々にお話を伺うと、「とっても仕事は楽しいが、先が不安で仕方がない」という答えが次々と返ってきました。「今の収入では、子供が大きくなったらやっていけない。戻るなら今。しかし、ここでほかのことにかけてみるのも今と悩んでいる」、こういうふうにおっしゃいます。そして、「一緒に働く高齢の山林労働者の皆さんには頭が下がります。でも、五年後ぐらいには世代交代が必要な時期が来ると思うんです。そのときに役に立ちたい。僕たちはすぐには一人前になれなくても、四年か五年あればせめて半人前ぐらいにはなれると思う。その間、やる気がある人が続けられるようにしてほしい」、こういうふうに言います。また、ある奥さんは、「今の制度では六カ月ごとに肩たたきをされているように思えてくる」と、六カ月、一年間で区切られ、来年の予算はわからないという中での不安をにじませていました。森林組合の方は、「一人前になるまで所得の補てんをしてあげて、一人前に旅立てるようにすることが本当だろう。不安な中で仕事をしていてもいい結果は出ないと思う」と言います。自転車操業のような細切れの形を改めるべきだと強く感じました。
 次に、「環境保全で雇用の創出」というのが事業の目的なんですが、肝心の環境保全の事業が全体として山の仕事をふやすというところまでいっていないという点があります。あるIターンの人は、「環境の面からも山を大事にするというそういうやりがいのある仕事が和歌山にあるというふうに思ってやってきた。過疎で若い後継者がいないから募集をしている、そう思ってやってきた。しかし、実際は違った。人がいないのではなく、仕事がなかった。僕らが緑の雇用を終わったら山に仕事はないんだ。へえ、そうなんだと感じた」と言うんですね。
 また、地元の山林労働者の声は実感がこもっていました。ある男性は、「去年は三カ月しか仕事がなかった。五十三万円の収入だった。緑の雇用にはみんな期待していた。山のことに政治が目を向けてくれたと思った。月のうち一週間でも十日でも仕事ができるのではと期待をした。よそから来てくれた若い子らとまじり合うて仕事ができるようになると希望を持った。しかし、実際は私には何の仕事も回ってこなかった」とおっしゃっていました。肝心の環境保全の仕事や林業が業として成り立っていくその方向性がないと、この緑の雇用は一時的な職業体験で終わってしまうんではないでしょうか。
 また、昨年度、農林水産委員会でも意見が多数出されました緑の雇用担い手住宅、これも実際に回ってみますと問題点がよくわかりました。「きれいな住宅を用意してもらってありがたい」、こういう感謝の声とともに、「台風が来るというのに、雨戸もない。山は虫が多いのに、網戸もなくて窓もあけられない。細長く大きい窓なので既製品も合わずに、後から網戸をつけるのにもかなりの出費だった」とか、「おふろの給湯が田舎暮らしにはコストの高いガスのボイラーで、ガス代が月に四万ほど要るのでふろには毎日入れない」などの意見が次々と出され、和歌山の山間地での生活にマッチしないまるで都会のモデルハウスのような住宅に役場関係者からも批判が続出をしました。「県は国の予算をとってこなければならないので、実績づくりに必死だったように思う」と言うんですね。「言いかえれば、格好をつけるのに精いっぱいで、地域に合わせた柔軟性がなかった」というふうな声も聞かせていただきました。
 私は、これらの点を踏まえて、以下三点にわたって質問をさせていただきます。
 まず、知事に伺います。
 担い手を育成するという点では、六カ月や一年ごとの細切れの制度ではなく、技術的にも生活面でも見通しの持てる四、五年の期間を打ち出すべきではないか。
 そして、二点目には、「環境保全で雇用の創出を」というスローガンを掲げながら、肝心の森林整備の予算が不十分。林業が業として成り立っていくような方向性や環境保全事業の方向性などの展望が持てる事業であるべきではないか。そのためにも、山を荒廃させた国の林業政策の転換を迫るべきではないか。御答弁を願います。
 そして、農林水産部長には、緑の雇用担い手住宅での問題点などに学び、農業との組み合わせなど、今後の方向性は地域の実情に合わせて県内市町村ともよく相談しながら進めていくべきではないかという点についてお答え願いたいと思います。
 質問の第三の柱、有田川の問題に移らせていただきます。
 私は、昨年の九月議会で洪水対策としてのダムの操作規則見直しを取り上げました。今回、川の濁りの面から有田川の問題を取り上げたいと思います。
 去る五月二十六日から有田川でもアユ釣りの解禁となり、この日を待ちかねた人々が近隣他府県からも大勢おいでになるシーズンとなりました。しかし、ことしの解禁日は、五月十三日夜から降った雨によりダムが泥濁りとなって、つい最近まで約一カ月にわたって濁りが続いてきました。解禁日の釣り客は例年の半分程度であったと言われています。
 雨が降ったら川が濁るのは自然のことでありますが、雨が上がれば支流の水がまず澄んできて、そして上流からの水もだんだん澄んでくるわけですが、二川ダムを持つ有田川はこのダムがあることによって濁りがいつまでも続くことになっているわけです。有田川漁協の組合長さんに話を伺うと、「ダムと発電所にしょっちゅう言うていくが、さっぱりらちがあかん。ことしはアユの遡上も多くて最高やと思っていたのに」と嘆きます。
 なぜダムによる濁りが続くのでしょうか。それは、この二川ダムは御荷鉾構造線という四国から続く大きな断層、破砕帯の真横にあり、粘土の粒子が細かく、一度濁るとなかなか水が澄みにくいという地質的条件があるんです。それに加えて、多目的ダムの構造上、可能な限り満水に水をためて発電用の水を確保するということになっている、これが原因です。
 この六月十五日からはやっと夏季制限水位となって、大雨に備えてわずか五メートルばかり水位を抑えることになっていますが、それまでは海抜二百一メートルまでためるのが規定になっています。ダムゲートの最高の高さが二百三メートル、ダムのてっぺんが二百四メートルしか高さがないわけで、まさにぎりぎりのところまでためておく設計なんですね。二百メートルの高さまで水がたまると、東京ドームの二十杯以上の二千六百万トンの濁り水をどっさりためることになります。上流からわずか毎秒数十トン程度の澄んだ水が流れてきても、ちょっとやそっとでは濁りがとれない、こういうわけなんです。
 また、言うまでもなく、災害対策上も満水での運用は不意な雨に対応できません。一例として、ことしのアユの解禁前の雨とダムの関係をデータで見せてもらいました。五月十三日の夜に山間部でまとまった雨が降りました。有田川水系でも五十ミリ程度の雨になったんです。そうすると、一晩でダムがいっぱいになってしまいました。それもそのはず、初めからダムの水位が高過ぎるんです。わずか毎秒三十トンから九十トンの流入量の雨が一晩降ると、海抜百九十五メートルの水面がもう二百メートルぎりぎりまでぽんと上がってしまうわけです。地元の住民からは、「雨が降るのわかってたら、早うからちょっとずつ放水すりゃええのに、いっぱいためてからどんと放流する」とか、「濁った水をダムいっぱいためやんと、濁った水は早う出してしもて、上流からの水が澄んでダム湖もきれいになってからゲートを閉めたらええのに」、また「何せダムの所長がかわって新人が来たら水をいっぱいためるんで恐ろしてかなわん。ダムの水位をうんと下げてほしい」など、不安と怒りの声がいっぱい出されています。
 以上の点から、ダムと発電事業のあり方について考える時点に来ていると思い、二点についてお尋ねをいたします。
 まず、県土整備部長に質問します。
 二川ダムは常時ほぼ満水になるよう運用されているので、一度濁るといつまでも濁りがとれず、また不意な大雨に対応できない危険な状態です。雨の多い時期のダム水位をもっと下げるよう操作規則を見直すべきではないかと思いますが、御答弁願います。
 次に、発電事業と治水の関係です。
 私は、水力発電が全部だめだという立場ではありません。自然エネルギーを有効に利用すべきですし、今後はダムのようなものではなく、小規模な環境負荷の小さい水力発電が主流になってくると考えています。しかし、この二川ダムの場合で考えると、近年の自然条件の変化も踏まえ、濁水問題の改善のためにも、また洪水対策のためにも、ダムの水位を下げるために発電の貯水量を減らす必要があると考えています。発電のための貯水は冬だけにするとか、雨が多い時期には発電をやめて水位を下げ、雨が降ったときの放水で発電するだけにするとかの方法もあるでしょう。こういうふうに、ダムによる発電の貯水量、スタイル、方向性を見直す時期に来ている。加えて、一昨日の答弁にもありましたように、企業局廃止で発電そのものをどうするかということも検討するという状況もあり、タイミングも外せない問題だと思っています。
 知事にお尋ねをいたします。ダムを満水にするぐらい川の水を大量にせきとめることの環境面、治水面でのデメリットを今日的に考慮し、ダムによる水力発電の方向性を見直すべきではないかという点について御答弁を願います。
 最後に、四つ目の柱として、間近に控えた高野・熊野の世界遺産登録が契機となり、このことが県内各地の歴史文化や観光に光を当て、そして町づくりの追い風になるよう願って質問をさせていただきます。
 先日、県の観光課が熊野古道の散策マップを八分冊で作成されました。駅から駅へ歩けるような大変いいものをつくっていただいたと考えています。その熊野古道が海岸部の町中を通るというのが有田郡の湯浅町です。この湯浅町は、熊野古道の通る町として、またしょうゆ発祥の地として古くから栄え、現在でも往時を伝える町家や史跡、迷路のような小路が数多く残り、懐かしく落ちついたたたずまいを残す町であります。
 このしょうゆ倉やみそづくりを初め、歴史的な価値を持つ建造物や町並み、これを生かした町づくりをと、国の伝統的建造物群の指定に向けた調査が文化庁や県文化財センター、そして大学関係者、識者の皆さんによって行われ、専門家からも指定にふさわしいその価値が認められています。この伝統的建造物群の指定は全国で約六十カ所、近畿では大阪富田林の寺内町や奈良の橿原市今井町など、各府県で合計約十カ所あるわけなんですが、残念ながらまだ和歌山では一件も指定をされていないんですね。その和歌山初の指定を目指して頑張っています。
 湯浅町では、町民参加による町づくり委員会の答申を受け、歴史的景観を生かし、町中の商店街に活気をと、古道の通る中心市街地の活性化に町民や商工会、町行政が取り組み、町並みそのものを美術館に見立てた街角ミュージアムや散策マップも発行され、歩道整備もことしから始まります。「サバっとアジまつり」やことしから始まった「白魚まつり」など、地元特産品を生かしたイベントも盛り上がっています。
 知事にお尋ねをいたします。
 世界遺産登録と相まって、熊野古道が町中を通るこの湯浅町での町並み保存や中心市街地活性化など、歴史文化や観光、町並みを生かす町づくりの取り組みに追い風となるようぜひ支援をしてはどうかと思いますが、所見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
 以上で、第一回目の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○副議長(吉井和視君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、コスモパーク加太へのトマト菜園の誘致についてでございますけれども、このコスモパーク加太の利活用というのは和歌山県にとって本当に長く積み残されてきた非常に重要な課題でございまして、それをカゴメに貸して、そしてトマトを生産するということになったわけです。
 御質問の中にありましたように、トマト農家への影響ということについては私も物すごく重く受けとめておりまして、できるだけの共存が図れるようにいろいろ手を尽くしているところでございますが、何分これ和歌山県にできなくても近畿のほかの県にはできるということもありますので、そういうことからいえば和歌山で雇用が確保されるということは、まあ私は結構なことじゃないかと思っております。
 それから、賃貸価格ですけども、賃貸価格の設定に当たっては、県議会のコスモパーク加太対策検討委員会からの「民間企業へは無償も視野に入れて貸し付けることなど、相当思い切ったインセンティブを導入すべき」との御報告も踏まえ、雇用者数、経済波及効果等を勘案して、他県の状況も勘案しながら一平方メートル当たり百円というふうに決めたということでございます。
 次に緑の雇用についてでございますが、緑の雇用についてのただいまの御質問の中身、私にも非常に参考になるものがございました。しかしながら、そういうふうな厳しい条件の中でも新しいことをやっていっているということにやはり僕は意義があるというふうに思っております。
 私も、今は二年間までの雇用になっておりますけども、これを三年、四年と延ばしていけるような形で国に対して働きかけを行い、そしてその結果として先日の「骨太の方針」の中に大きくこの緑の雇用が取り上げられたということは、これはやはり国の方もこの事業を今後も続けていこうというふうなことだと思っておりますので、和歌山県の独自の施策も踏まえてこの問題について対応をしていきたいと思っております。
 それから、国の方の林業政策の転換ということですけども、林野庁も大きく変わってきておりまして、林野庁、この緑の雇用を施策のほぼ中心に据えるぐらいまで変化してきております。まだ十分とは言えませんけれども、やはり環境問題ということが国を挙げての事業ということになってきておりますので、こういうふうな面もあわせて働きかけを強めていきたいと、このように思っております。
 それから、有田川のダムの話でございますけども、私は水力発電というのは非常にクリーンなエネルギーで有用だというふうに思っておりますけれども、その放流の仕方等について、地元の方々の意見というふうなものにも私はやはり聞くべきものがあるというふうに考えておりますので、これはそういうものに虚心坦懐に耳を傾けて対応できるべきものは対応していきたい、このように考えております。
 それから、世界遺産の登録と相まって湯浅町の町並み保存ということでございますが、私もかねてから、他県には非常に、例えば徳島県の脇町でありますとか、それから愛媛県の内子でありますとか、このあたりでも奈良県の橿原にある今井町でありますとか、いろいろ非常に整備の整った歴史的なものを大事にしている町があるんだけど、和歌山には意外とそういうものがないというふうなことを残念に思っておりましたけれども、湯浅町、非常に住民の方も熱心に取り組んでおられるということでございますので、県としてもできる限りの支援ということをしていきたいと、このように思っております。
○副議長(吉井和視君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) まず、コスモパーク加太へのトマト菜園誘致についてお答えいたします。
 二月議会以降、農家と関係団体への説明や県内農家への影響調査はどう進められてきたのかということでございますが、山下議員にお答えいたしましたように、これまで関係団体に働きかけ、県内JA組合長・常任理事会議を初め、県養液栽培研究会において直接カゴメ株式会社からトマトの生産計画について説明を受け、種々意見交換が行われるなど、積極的な取り組みも見られてございます。さらに、地域段階においても研修会が開催されるなど、新たな取り組みも行われていると聞いてございます。農林水産部といたしましては、各振興局を初め組織を挙げての対応を進めてきているところでございます。
 しかしながら、県内トマト農家では品種的には競合しないものの今後の経営に大きな不安を抱いており、県としても他県での先進事例を参考にしながら、今後ともさらにあらゆる機会をとらえ農家の意向や実態把握に努めるとともに、共存できる体制づくりとトマト農家にとって向かい風とならないように努力してまいりたいと存じます。
 次に、緑の雇用は地域の活性化を図ることを目的としており、議員お話しのとおり、市町村との連携は不可欠となってございます。また、所得や住宅の確保のために市町村と協議を重ねておりますが、例えば梅の剪定や収穫といった農業の繁忙期に業務提携するなど、市町村やJAとの連携をより一層深めていきたいと考えてございます。
○副議長(吉井和視君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 有田川の濁水、災害対策についてでございますが、洪水の初期段階からできるだけ多くのダム放流を行い、ダムの貯水位をあらかじめ低い状態にした上で洪水調整を行うとともに、ダム貯水位のより低い状態から洪水末期の比較的濁りの少ない河川水をより多く貯留することは、洪水対策のみならず、濁水長期化対策としても有効な施策であると認識しているところでございます。
 現在、二川ダムにおいてはより効果的な洪水調整を行う観点からダム操作規則を見直すべく検討を行っているところですが、濁水長期化対策の観点からも、より効果的なダム運用ができるだけ早く行えるよう検討を進めてまいります。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 それぞれ答弁をいただきました。積極的な御答弁もいただきましたし、より一層取り組みを強めていただきたい、そういう問題もあります。
 今回、私はトマトの問題に絞って再質問をさせていただきたいと思います。
 農林水産部長から答弁いただいた県内農家への説明と影響調査、これについては答弁していただいた取り組み、そして私紹介したその実態、これ非常に不満であります。それだけしか説明に行ってないのかということになるというふうに思うんですね。
 また、影響調査、これについてはどうやっていくのかというのは本当にまだはっきりしません。農家の立場に立ち県内農業の振興を図る直接の部署として責任ある説明、そして調査をするよう、重ねてこれは要望しておきたいというふうに思います。
 次に、その税金投入の問題で知事に再質問をさせていただきます。
 ただでもいいという検討委員会の意見を踏まえて百円は仕方がないと、こういう答弁であったかと思うんですが、しかし、知事、他の県内の企業用地と比べたら、その価格の差はいかにも開きがあり過ぎるというふうに思いませんか。ここにあるのは「和歌山県企業局造成地分譲・賃貸価格表及び各種優遇制度のあらまし」、こういう県のパンフレットなんですが、これ見ますと、和歌山市内の西浜地区の工業用地、これ年間の貸し出し価格、年額二千七百円です。御坊の第二工業団地、これ年額千七百円です。最近できたところでは日高港、これも千六百五十円程度と。これらと比べると本当に十倍、二十倍以上の開きがあるわけなんですよね。
 これらの工業・企業用地には、既に県内企業にも利用されてますし、また募集もしています。不況の折、この賃貸料金の引き下げを要請されているというふうにも聞いております。しかし、これらの県内企業には「造成費用や他の用地の価格との関係もありますので」と丁重にお断りをしておきながらコスモだけは別格だと、こういう理屈は通らないというふうに思うんです。県内企業や県民に到底納得を得られないんじゃないかと思いますが、この点についてどうお考えになっているのか、再度答弁をお願いしたいというふうに思います。
○副議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) コスモパーク加太につきましては、御案内のように非常に大きな土地、これをたくさんの企業で埋めていくというふうなことが可能であれば非常に好ましいわけですけども、なかなかそうはいかない。やはりその中核となる大きな部分を占めるものが必要だというふうなことが一つあるわけでございます。
 それから、もう一つは、あそこは造成は全然されてなかった、もうそのままの土地だったので、やっぱりそれなりのお金は、ものを呼んでくるときには必要であるということで今造成がかかっているというふうなことがあります。
 それから、農業を──トマトをつくっている農業者の方との問題は、先ほど言いましたように、これは説明責任を果たし、そしてまたいろいろな協調していくような仕組みを考えていかなければならないわけですけども、一つこのトマトというふうなものをつくっていくということが、ある意味では自然に優しい開発であるというふうなことのイメージが高いということも、これの進出が決まるときにあったということもこれまた事実でございます。
 そういうふうないろいろなことを勘案した中で、そしてまた先ほど御質問にもありましたけども、私の方が答えたように、議会の決定というふうなことも踏まえた上でこのような価格にしたというふうなことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 今、知事の方からは中核としてのものが欲しいんだと、またトマトの栽培は自然に優しいと、こういうものなのでぜひ理解してほしいという答弁であったと思うんですが、その答弁にどれだけの県民の方が納得できるかなと私は思うんですよ。
 というのは、価格をまけてもらう当のカゴメの方はそら納得されるでしょうけども、そのまけるためにしわ寄せを受ける県民は私は納得できないというふうに思うんですね。まさに大企業優遇じゃないかというふうに思うんです。県内の中小企業や中小業者の方に、今回カゴメにするだけのそんなふうな手厚い援助をしてるでしょうか。県内の農家の方々にそれだけの援助をしているというふうに映ってるでしょうか。もうけなくてもええけれども、大きな損をしない額に設定するべきじゃないかと思うんです。今回で言えばその持ち出し分。県の持ち出し分を、この予算を県民向けに使うことができたらどれだけのことができるだろうかという思いをしながら、私は答弁をお聞きいたしました。
 それから、その自然に優しいという話ですが、私もあちこちのハウスを見せていただいて思ったんですよ。そらまあ、公害をまき散らす企業よりは優しいかもしれません。でも、水も化石燃料もばんばん使うそういうハイテクハウスが本当に自然に優しい農業生産なのかという点では、いろんな意見があろうかというふうに思います。
 いずれにせよ、今回のその誘致にまつわるこういう税金投入、これは過大な税金投入であって私は認めるわけにはいかないということを強く申し上げて、今回は終わりたいというふうに思います。
○副議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 この際、十分間程度休憩いたします。
  午後二時二十六分休憩
     ─────────────────────
  午後二時三十七分再開
○副議長(吉井和視君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十五番山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 お疲れのところですが、本日の最終バッターとして、いましばらくお時間をいただきたいと思います。当初議会に引き続き質問する機会をいただけましたことを感謝し、心を込めて質問、提案をさせていただきたいと思います。
 それでは、議長からお許しをいただきましたので、早速、通告に従って一般質問をさせていただきます。
 まずは、うれしい御報告を兼ねて、アテネオリンピック出場のチャンスを生かしてナショナルトレーニングセンター構想のさらなる推進について。
 最初の質問は、私が現在和歌山県セーリング連盟の会長をお引き受けしている中で、御報告かたがたの質問とさせていただきます。
 これまで「和歌浦の海からアテネへ」を合い言葉にオリンピック出場を目指し活動を続けてきました和歌山県セーリング連盟所属の佐竹美都子、吉迫由香のペアが、先ごろ行われましたオリンピックの最終選考レース、四七〇級世界選手権大会で、見事、日本の候補チーム中トップの成績をおさめ、アテネオリンピック代表の座を獲得しました。これもひとえに関係の皆様のお力添えのおかげと、心から感謝する次第です。
 二年前、私が最初に彼女たちに出会ったときは、本当にアテネは遠い夢の話でした。しかし、高い目標を掲げ、信念を持って活動をしていれば道は開ける。「一念、岩をも通す」ということを今回、改めて実感させられました。彼女たちの強い意志、精神力には脱帽します。ここまで、彼女たちの取り組みは決して順風満帆なものではありませんでした。通常、オリンピック出場が期待されるヨット選手の多くは、企業から潤沢な資金提供を受けて活動しています。しかし、彼女たちは単に和歌山県セーリング連盟所属ということで、資金的にも恵まれない本当に厳しい環境に置かれ、また一たんはオリンピック強化選手から外されるという状況の中で、しかし、決して希望を捨てずに和歌浦でヨットに乗り、戦い続けてきたのでした。
 その彼女たちのいちずな姿に感動した多くの人が、助けの手を差し伸べてくれました。資金難を何とか救おうと、草の根でキャンペーンTシャツを販売してくれた多くの個人サポーター。彼女たちのセーリング環境を手弁当、ボランティアで支えてくれたセーリング連盟のスタッフ。また、最終では、資金難から海外で行われる最終選考レースへの出場自体が危ぶまれた中、企業としてその窮地を救っていただいた株式会社島精機製作所、ノーリツ鋼機株式会社、株式会社サイバーリンクス、日吉染業など、多くの県内企業の皆様。本当にたくさんのお力をいただいて、アテネへの出場権を手にしました。彼女たちも心から感謝しており、その御恩に報いるためにも、オリンピックの晴れ舞台で必ずよい成績を残して帰ってくると誓っています。
 お手元に、二人の顔写真とヨットの写真、並びにアテネでのスケジュールを配らせていただいておりますので、ぜひ皆様にも名前と顔を覚えていただき、アテネオリンピックでは大いに応援をしてあげてもらいたいと思います。
 実はきょう、たまたまオフの日に当たりまして、もうあした、あさってには日本を立つんですけれども、急遽、議会の傍聴ということで来てくれていますので(拍手)。右から、雑賀コーチと佐竹美都子、吉迫由香です。最終二十一日にはメダルセレモニーがある予定で、余り欲張ってもいけませんが、ぜひメダルを獲得し、アテネの地で日の丸を掲げてきてもらいたいと思います。
 さて、そこで、このアテネオリンピック出場のチャンスを生かしてナショナルトレーニングセンター構想のさらなる推進として、知事並びに教育長に御所見を賜りたいと思います。これまでも知事、教育長を先頭に和歌山県として積極的に取り組んできてくれていることは重々承知した上で、この機会を生かしてさらなる誘致活動につなげていただきたいと、二点だけ要望を含めて質問をさせていただきたいと思います。
 今回のアテネオリンピックは、和歌山からさきの吉迫・佐竹ペアとレーザー級では鈴木國央選手が出場を決め、七種目中、二種目に出場することになりました。日本代表枠がたった七つしかないうち、和歌山県連に所属する選手たちが二つの枠を手にしたことは快挙だと評価される状況にあり、また今回、アテネに出場するヨット競技の日本代表チームとしても、コーチを含めた総勢十四名のチーム編成が行われたのですが、その中で和歌山県から雑賀秀夫コーチを含め四名ものオフィシャル参加が実現するものとなっています。
 今、日本のセーリング界では和歌山の地位が大きく浮上する状況となっています。今回のアテネに向けた結果を見て、和歌山・和歌浦の環境はヨット練習には非常に適しているという認識を改めて多くのヨット関係者に持ってもらい、現にオリンピック出場を決めた後、早速この和歌浦湾で練習をしたいと、企業チームで有名なミキハウスから合宿地として利用したいとの申し出を受けています。また、国内に限らず、アテネの次に決まっている北京オリンピックをにらんで中国のナショナルチームもこの和歌浦での練習を希望していて、今、日本国内はもとより世界的にもこの和歌山・和歌浦が大いに注目を集める状況となっているのです。
 こういった状況をしっかりと把握した上で、ぜひ吉迫、佐竹の心意気と同じく「一念、岩をも通す」の精神でナショナルトレセンの取り組みを加速させていただきたいと思います。改めて、日本オリンピック委員会、文部科学省への働きかけについて、知事並びに教育長からその意気込みをお伺いしたいと思います。
 また、今回のアテネ出場の効果は、マスコミを通じての情報発信という点でも大きな成果を得ているものと考えます。彼女たちがオリンピック出場を決めてから取材を受けた主なものを御紹介すると、朝日、読売、産経、毎日の四大紙を初め、読売新聞広島、朝日新聞あいあい京都、中国新聞、京都新聞社などからの取材を受け、また有線放送のジェイコム関西、情報誌ではアエラ、フライデーなどの全国誌で扱っていただいています。また、テレビ局関係の取材では、NHK、TBS、テレビ朝日、テレビ新広島、関西テレビは一日同行取材をしていただくなど、数多くのマスコミから注目を集める状況となり、大きな宣伝効果を生むものとなっています。これらを代理店に勤める友人に広告効果としてその測定を大まかにしてもらうと、そこでは五、六千万の広告効果が上がっていると試算してくれました。今後、ナショナルトレセンが実現するならば、オリンピック代表選手の多くはこの和歌浦で合宿を行い、通常の練習にも日常的にこの和歌山が舞台となるわけで、和歌山を売り出すチャンスが数多く訪れるものとなります。
 そこで、改めて、ナショナルトレセンを設置する和歌山県のメリットということについて、広報的側面から見たその効果を含め、教育長から御認識を伺いたいと思います。
 次に、第二問といたしまして、エリート教育だけでない、より個性的な人材育成の視点として個性を伸ばす和歌山教育への取り組みについて。
 まず、質問に移る前に、長崎県佐世保市で起きた小学生の事件について、私も同じように小学生の娘を持つ親として、御家族には心から哀悼の意を表します。少しでも今の時代の教育、学校がよりよいものとなるよう、心を込めて質問をさせていただきます。
 さて、先ごろ、作家の村上龍さんが出版された「十三歳のハローワーク」という本が話題を呼んでいます。これがその「十三歳のハローワーク」という本で、少し高い本なんですけれども、この「十三歳のハローワーク」、去年十二月に発売されたこの本はおよそ二カ月で五十万部を突破し、発行から約半年で百万部を超えたという大きなセールスを生んでいる本です。本の推薦人となられている坂本龍一さんいわく、「この困難な時に、この本に出会えるかどうかは、その子の一生を決定するだろう。この本に出会えた子は幸運だ」と、推薦の言葉を寄せられています。これはちょっと大げさかもしれませんが、しかし、今の時代に少なからず意味のある本だと私も思います。
 本の中で著者は、「人生は一度しかない。好きで好きでしょうがないことを仕事にしたほうがいいと思いませんか?「いい学校を出ていい会社に入れば安心」という時代は終わりました。十三歳から大人まで、自分の本当に好きなことをもう一度よく考えて仕事を選ぼう!」と呼びかけています。この本は、動物、スポーツ、映画、音楽、料理など、いろいろな「好き」を入り口にして五百十四種の職業を紹介していて、派遣、起業、資格など、雇用の現状を網羅した仕事の百科全書となっています。
 なぜ、こういった本が今そんなに売れるのでしょうか。現在、私たちの生きる社会は大きな曲がり角に来ているのだと思います。日本の会社、その雇用環境、社会システムも大きく変わろうとしています。終身雇用が崩壊し、会社への絶対の信頼も根本から崩れていくこの時代に、いい学校を出ていい会社に入れば安心という何かに頼る絶対安心の時代は確実に終わりを告げようとしています。
 私の大学院時代の友人に小寺さんという方がいます。出会った当時、彼は大企業に勤め、将来を嘱望されていたのですが、大学院の在学中にその会社をやめてしまい、奥さんの実家の美術工芸品の修復を行う小さな小さな会社を手伝い始めました。しかし、その小さな職場は、今の学校ではなかなか伝えられない大きな魅力を持った職場だったようです。
 先日、彼に会って話を伺ってきました。彼の入った会社は、京都にある株式会社文化財保護という会社です。そもそも文化財の保護・修復は文化財保護法により規定されているもので、その文化財を保護・修復する企業は、建造物の分野では大手ゼネコンを初め中小建設会社、設計会社などが多数存在していてしのぎを削っている状況にあるそうです。しかし、これに対して美術工芸品の分野では、彫刻のみを専門的に扱う財団法人の美術院と、それ以外のすべての美術工芸品を扱う国宝修理装こう師連盟という団体に加盟している十社だけだそうで、そこに国内外約二百五十人と推定される技術者がおおよそ一万点ある国宝及び相当数の重要文化財の保存・修復を行っていて、内情は慢性的な人不足となっているそうです。小寺さんの会社もこの美術工芸品の保存・修復を行っている中の一社なのですが、その仕事は熟練のわざが必要であり、これまでは徒弟制度などで人材の確保をしてきたが、現在の社会環境ではその人材確保が難しいのが実態だと話されていました。
 この業界は決して魅力のない職場ではなく、その仕事自体が知られていないことと、高学歴の時代にあって年の若い器用な子が門をたたきにくい状況にあることなどで雇用のミスマッチが起こっていると説明してくれました。雇用のミスマッチは先端産業の例などがよく紹介されますが、アナログの伝統職にも当てはまります。ここでは、決して勉強のできる・できない、また高学歴が問われることはありません。この世界では感性を磨くことが重要で、できるだけ早くから熟練者について訓練を受けることが大切であり、こういった仕事に年齢の若いうちからめぐり合えば能力を発揮できる子供はたくさんいるはずだと話されていました。
 この業界での仕事は、国内にとどまらず広く海外にも市場は拡大しており、人によってはあこがれの仕事にもなるはずだと小寺さんは指摘します。日本固有の重要文化財は遠く海外にも点在しており、欧米の美術館や博物館からも多くの仕事が発注される状況だそうです。アメリカのフリーア美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、英国の大英博物館、オランダの極東美術保存センターなどでは多くの日本人技術者が招かれ、尊敬される職人として受け入れられているそうです。本人さえ望めばその活躍の場は世界にも広がる状況となっていて、また収入面を見ても三十歳前後で年収一千万を超える収入を得ることも珍しいものではなく、非常に魅力ある仕事だと話されていました。
 これはあくまで一例ですが、世の中には今の学校では教えられていないような価値観、たくさんの仕事、可能性があるわけで、そのような多様な価値観をしっかりと子供たちに示せるかどうかが今の教育で試されているのだと思います。受験用の学力などといったものは、人生を生きる上の価値基準の中でたかだか一つの物差しでしかありません。本来は、そのほかにも子供たちが評価されるべき価値基準はたくさんあるわけで、それぞれの子供に合った生き方、個性の伸ばし方を教え諭していくことが重要です。
 実際に私の周りでも、学校の成績、学歴ではなく、その人の持つ人格、技術、知恵といったものが大いに生かされ、立派に社会で活躍されている方がたくさんいらっしゃいます。逆に、学歴があっても社会で通用しない人もたくさんいるのも現実です。私たちの今の社会は、これまでの成功モデルが崩れていく中で新たな模索を始めなくてはいけない状況であり、そこではまさに学校教育のあり方そのものが問われていて、その答えは決してこれまでの延長線上にはなく、また応急処置で取り繕えるものでもなくなっています。子供の個性、一人一人の能力を最大限に引き出す学校とはどういったものなのか、その根本から問い直さなくてはいけない時期に来ているのだと思います。
 さて、そこで、昨年から和歌山県では新たな取り組みとして中高一貫の教育が始められていますが、その目的はあくまで一校、二校の受験用のエリート校をつくるものではないはずです。この中高一貫教育は、その進め方次第では新たな公教育の世界を切り開き、子供の多様な個性を伸ばしていく取り組みが大いに進展する可能性があるのだと思います。
 昨年の議会でも少し触れましたが、例えば和歌山市で現在ある高等学校の特色を生かした具体例として和歌山工業を物づくり、マイスターの養成校とする中高一貫の実現、また県和商、市和商などでは企業家、商売人の養成校、また和歌山北校などでは現在スポーツ活動に活発に取り組んでくれているので、その特徴を生かした中高一貫による環境整備など、それぞれに明確な特色を持たせて子供に選択をさせていく。そこでは、決して勉強といった一元化された価値基準ではない学校選択が行われ、その中で胸を張り自信を持ってそれぞれの学校に入学していく子供が数多く生まれることを期待するものです。
 公教育による、例えば工業専門の中高一貫などは全国にも例のないもので、もし実現すれば和歌山県が新たな公教育の扉を開くことになると大きな期待を寄せる中、教育長の御意見をお伺いしたいと思います。
 また、ことしの夏ごろには中高一貫の新たな教育委員会の方針も出されるようですが、その前の今のこの時期に、改めて中高一貫を進めるその方針と、できるだけ具体的な内容についても教育長の御所見を賜りたいと思います。
 続いて、学校教育における職業観の育成とキャリア教育の実践について。
 今後は、より具体的に社会の実態を子供たちに伝え、将来、実社会で直面する、ある面では厳しさも含めて知らせることが子供たちの大きな成長につながるのだと思います。今議会では新たな予算としてきのくにデュアルシステムといった取り組みもされるようで大いに歓迎するところですが、子供たちに幅広く職業、働くことについて、そこではお金の話、収入などにも触れるなど、より現実をリアルに映す学びを実現させていくことが大切だと考えますが、教育長の考えをお聞かせ願いたいと思います。
 次に、シルバー人材の学校への受け入れ、定年を迎えた特に民間の方を新たに学校の現場へ確保していく仕組みづくりについて。
 現在の学校の先生は、その大半が普通科の高校を出て、大学に入り、教職をとり、試験に受かって学校の先生になった人たちで、いわばこれまでの社会の成功モデルの型にはまった人たちだと言えます。今の学校の先生が子供たちに多様な社会の実態を教えようとしても、先生自体に経験がなく、それは難しいのだと思います。そこでは、豊かな社会経験、貴重な民間の知恵を持った外部の人材の受け入れに積極的に取り組むことが重要だと考えますが、これも教育長の御所見を賜りたいと思います。
 教育問題の最後として、和歌山教育のグランドデザインの策定について。
 今、教育、学校を取り巻く環境は激動期に入っていて、この大きな変動期に当たる時代にこそ、将来を見据えて和歌山独自の教育のグランドデザインをしっかりと描くべきだと思います。不透明な時代だからこそ和歌山の公教育の未来について明確に青写真を描き、どのようにして子供の個性、一人一人の能力を最大限に引き出す教育環境をつくり上げていくのか、和歌山県としての方針をしっかりと打ち出すことが必要とされています。ころころ変わる教育方針ではなく、一貫した方向性を示し、ぶれなく人材育成に努めるためにも和歌山教育のグランドデザインを策定することを提案しますが、教育長にこれも御所見を賜りたいと思います。
 次に第三問目、最後の質問として、和歌山県庁の広報力強化に向けた戦略的取り組みについて。
 この夏には知事選があることから、今いろんなところで知事に対しての県民の皆様からの声を聞く機会が多くなっています。そこでは、よく頑張ってくれているとしっかりと評価してくれている人がたくさんいる反面、やはりまだ県として取り組んでいる内容について理解の少ない方がいらっしゃることも事実です。
 私自身は、知事のこれまでの県政運営については、実際に全国の自治体にも出向きその取り組み内容を比較してくる中で、非常によく頑張られているというのが正直な印象です。県政の改革に取り組まれ、国、中央政府に対してもこれまでの和歌山では考えられないほどさまざまな提言をされ、和歌山に対するイメージも変わってきていることを肌で感じています。全国のいろんな勉強会に参加させていただくときも和歌山の県議会議員としてそれなりの関心も持ってもらい、県政に関する質問をされる機会も多くなっていて、そういった面では和歌山県で政治にかかわる者として誇らしく感じ、素直にうれしくも思っています。
 しかし、今後は、より強く情報発信を行い、もっともっと県内外を問わず和歌山県の取り組みについて知っていただくための努力が必要とされているのだと思います。「よらしむべし、知らしむべからず」といったことではこれからの厳しい時代の地域づくりは難しく、そこでは、今回提案をさせていただく広報力の強化を徹底して進めることが非常に重要なことだと考えます。あくまでも今の時代は、単によい政策を立案し実行していくだけではなく、より多くの人の理解を得て協力関係に引き込んでいくことが重要であり、そこでは多くの人に理解を広めていく行政活動、いわゆる広報の果たすべき役割がますます重要なものとなってきます。
 今回、広報にかかわる提案をさせていただこうとする中では、あくまで机上の論理ではなく、他の先進の自治体での実態を確認するとともに、行政に限らず民間の知恵も得ようと、幾つかの民間企業、広報関係の専門機関にもお邪魔して話を伺ってきました。その中で、特に民間では、多くの企業において広報を経営の根幹にかかわるものとして非常に厳しい目でとらえている実情を目の当たりにしました。広報力はイコール会社の経営力で、広報が会社の経営を左右するとまで言われていました。
 総合商社でニチメン・日商岩井の持ち株会社で広報部門を取り仕切る山口俊之さんのお話では、「近年、多くの企業では広報を単なる情報の下請屋ではなく総合的な経営管理のセクションといった位置づけを与え、企画部門などと一体のものとして企業経営の中核に据えている。実際に企業のトップが経営の一環として広報をとらえている会社は大きく業績を伸ばしていて、これは行政でも同じことが言えるのではないか。行政が地域を経営すると言われる時代では、民間も行政も同じで広報を徹底して強化することが非常に有効な手段であり、それにより従来とは全く次元の異なる業績向上につながる可能性が大きい」と指摘されていました。
 また、民間企業を幾つか回り広報についての話をお聞きしてくる中では、多くの企業で「広報」という言葉にかわる意味に「コミュニケーション」という言葉を使われていることに気づきました。株式会社電通で民間企業のみならず現在の小泉内閣に対しても広報アドバイザーとして御活躍されているソーシャルプロジェクト室室長の渡辺広之さん、シニアプロデューサーの澤茂樹さんにも直接お会いし、お話を伺ってきたのですが、お二人とも口をそろえて「コミュニケーションパワーが重要な時代となっている。広報活動は経営のすべての機能、すべての資源を戦略的、有機的に統合して実施されるトータルなコミュニケーション活動である」と話されていました。「これまでのように、単なる情報発信、お知らせ広報では、情報がはんらんする今の社会では到底実効性は上がらない。今こそきめの細かい対話型の広報、コミュニケーションとしての重要性を認識するときであり、これまでの広報の視点を変えて、コミュニケーションセクションといった位置づけの中で組織情報の設置点、集約拠点として情報戦略を組み立てることが求められている。また、その時代には広聴機能を強化し、マーケティングへの取り組みも本格化させるべきである。広報とマーケティングは一対の関係であり、そのマーケティングの重要性をしっかりと認識しないと質の高い広報も実現しない。経営トップとマーケティングと広報のいわゆる三位一体のコミュニケーション活動が大きな武器となる」と指摘されていました。
 次に、行政に目を向けると、静岡県を初め東京都、岩手県、高知県、岐阜県、富山県などで、これまでの行政には見られなかったような民間のノウハウを取り込んだ熱心な広報活動が進められているようです。社団法人日本広報協会の調査・企画部長である渡辺昭彦さんのお話では、静岡県などは民間広報を徹底して研究し、昨年から県庁内における広報の位置づけを見直し、企画部との連動を緊密に図る広報局を新たに設置して戦略的な広報の取り組みを推進しているとのことです。積極的に広報改革に取り組む静岡県では、その手始めにこれまでの広報活動の問題点の洗い出しを行っているのですが──その資料がここにあるのですが、この資料を見せていただくと、これは現在の和歌山県にも当てはまる課題が相当数挙げられるものとなっています。
 広報の課題として整理されたものを幾つか見てみると、まず第一点目として静岡県の努力が正確に県民に理解されていない、第二点目として部局広報が放置されている、第三点目として広報の重要性が庁内幹部職員に理解されていない、そして四点目として職員向け庁内広報という意識がないといったことが指摘され、これらを改善する対策について具体的な改善計画が示され、速やかに実行に移されています。静岡県を初めとする幾つかの自治体では、民間の問題意識と同じく広報は地域の未来を左右するものとして受けとめ、積極的な取り組みが進められています。
 もう一つだけ参考例として、民間に近い広報戦略を打ち出しているとよく例に挙げられる東京都について。
 東京都では、石原知事の就任後、改めて広報の重要性を認識し、その見直しに徹底して取り組んでいると東京都知事本局政策部報道課の波田健二さんは話してくれました。石原知事は、就任以来、人事と広報は最重点のものとして自分自身がやると明確にし、自身がスポークスマンになるとともに、全庁を挙げて効果的なコミュニケーション環境の確立に力を注ぎ、積極的、効率的な広報活動の推進に努めています。この姿勢は都庁全体に浸透しており、全部局に広報担当を置き、それを統括する立場で知事本局政策部に専属の報道課を設置し、民間の取り組みにも決して引けをとらないコミュニケーション活動を実践しています。また、東京都では従来からの単年度で場当たり的に行ってきた広報事業も根本から見直し、効果的、効率的な広報計画の立案に努め、また都政への信頼をより一層厚くするため、特に都民の声を初めとして東京都に寄せられるさまざまな情報について、その収集、蓄積、分析に力を入れ、民間手法で導入したマーケティングにも積極的に取り組んでいるとのことでした。
 今回の質問で私自身いろいろなところにお邪魔し、お話を伺い、アドバイスをいただいてくる中で、当初考えていた以上に改めて広報の重要性を強く認識するものとなりました。現在は官民を問わず広報活動の強化が進められており、こういった動きは今後さらに強まるものと思われます。和歌山県としても他におくれをとることなく、積極的な取り組みをお願いしたいと思います。
 今回、私が提案させていただく広報力強化の取り組み、その本質は、和歌山が日本一の自治体、和歌山はナンバーワンなのだという誇り、プライドづくりであると思います。和歌山の望ましいイメージを徹底して伝えていく、これは県政運営を現場で進める多くの職員さんを勇気づけますし、県民にとっても大きな自信となっていくものです。当然、広報だけではなく、そもそもはよい政策、よい施策を実現していかなくてはいけないのですが、あくまで広報と両輪となった行政活動により世間のよい評価をこれまで以上に得ることができるのだと考えます。
 和歌山県は今、まさにチャンスのときを迎えているように私には思えます。木村知事のもと、県政改革、さまざまな新しい政策、施策への積極的な取り組みが実行され、また高野・熊野の世界遺産登録なども加わって全国への情報発信力も格段に高まっている状況にあります。こういった機会を逃すことなく徹底して広報活動の改善に係る広範な取り組みを進め、県勢の発展につなげていってもらいたいと心から願うものです。今回の提案は、担当部署の皆さんにとってはしんどいことも多いかと思いますが、それは私自身が大きな大きな期待を込めてのものとお許しいただき、ぜひ表面的な対応にとどまることなく根っこの部分からの広報改革に取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、まず知事にお伺いいたしますが、今回提案させていただいている広報力強化への取り組みについて、これは私自身、今後の木村県政を左右するぐらい大きな課題だと感じていますが、知事御自身はこの広報部門の強化についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。また、あわせてその改善に向けて取り組まれる意気込みも一緒にお伺いできればと思います。
 続いて、広報戦略並びに広報計画の検討について。
 これには少し予算の持ち方などを工夫しなくてはなりませんが、単年度の予算に縛られることなく、広報の戦略並びに複数年にわたる具体的な広報計画を立案していくことを提案します。例えば、ことし予定されている高野・熊野の世界遺産登録などについても、場当たり的にことしの広報だけをその場しのぎで考えるのではなく、今後五年、十年でどういった広報戦略を組み上げるのかが重要なものとなります。和歌山県が取り組む広報活動について、広報戦略、広報計画の策定、その重要性をどのように認識し、今後具体的にどのように取り組まれようとするのか。またあわせて、そこでは内部の人間だけではなく外部の専門家なども招き入れての検討会議、例えば広報戦略会議などといったものを設置して広報戦略、広報計画をしっかりと練り上げていく必要性を強く感じるところですが、あわせて公室長の御所見を伺いたいと思います。
 次に、広報の効果測定への取り組みについて。
 広報した結果、どのような効果が上がったのか、広報後の成果を把握し、次の広報計画、広報戦略に生かしていくといったサイクルが大切で、そこでは広報の効果測定が非常に重要なものとなります。特に現状のように厳しい財政状況、限られた予算の中で効果的、効率的な広報を実現していくためにも、また政策評価の上でも効果測定は欠かせないものと考えますが、公室長にお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 次に、マーケティングへの積極的な取り組みについて。
 今回、さまざまなところでお話をお伺いしてくる中で、広報力強化のためにマーケティングの重要性を改めて強く指摘されました。現在の広報室は、従来は広報広聴といった名前であって、現状では広聴は班として残っているようですが、この広聴機能を強化した和歌山県全体を指してのマーケティング活動を推進する体制の再整備が必要だと考えます。現在の和歌山県では、ブランド推進局とその中にマーケティング担当のセクションもありますが、そこはあくまでミカンを売る、梅干しを売るといった狭義、狭い意味でのマーケティング活動しか受け持たれていない状況にあるようです。今後は県全体に係るマーケティング活動の充実が急がれるものと考えますが、いかがでしょうか。
 また、広報活動とブランド化に向けた取り組みについて。
 現在、和歌山県ではオンリーワンを目指す取り組みをさまざまに進め、そこではブランド化といったことをよく口にされます。私もこれからの地方自立の時代に向け非常に重要な取り組みだと思いますが、しかし、実際問題として和歌山ブランドを確立させていくプロセスについては、まだまだ明確にはされていないものと思います。地域のブランド化に向けては、個々個別の取り組みとあわせて地域全体としての一貫性のあるブランド戦略を持たなくてはなりません。そこでは、広報室を初め、広告宣伝を受け持つ観光局、またブランド推進局などがそれぞれに意識的に強く連携して地域のブランド化を推進していかなくてはならないのだと思います。ここでも広報部門は非常に重要な役割を担わなくてはいけないと考えますが、和歌山県というブランドをつくっていくための組織内における連携のあり方と今後の取り組みについてのお考え、認識といった部分についてあわせて御意見を賜りたいと思います。
 最後に、庁内広報、組織内部のコミュニケーション活動の充実について。
 今回提案させていただいた広報力強化では、組織内部のコミュニケーション活動を活発にする取り組みが不可欠です。組織内部のコミュニケーションは外部へのコミュニケーションの基盤であり、内部のコミュニケーションが不十分では外部との満足のいくコミュニケーション活動は到底望めません。現状で和歌山県庁内のコミュニケーション活動はスムーズに行われているでしょうか。例えば、県庁の重要な決定事項は内部の伝達よりも新聞やテレビ、ラジオなどを通して知ることの方が多くはないでしょうか。情報管理のポイントとして、県庁内の情報は他のどんなマスコミよりも、外部に出る前にまず全職員に常に早く知らせるということが鉄則です。庁内広報を強化することで県庁職員一人一人に和歌山県の組織としての一体感を持たせ、さらには強力に県政運営に巻き込んでいくこととなります。広報改革の第一歩は組織内のコミュニケーション環境の改善にもあると言われる中、そのための仕組みづくり、新たな組織的な対応も必要となるかもしれませんが、庁内広報の強化について、これも公室長の御所見を賜りたいと思います。
 以上で、質問を終わらせていただきます。御清聴、ありがとうございました。
○副議長(吉井和視君) ただいまの山下大輔君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まずナショナルトレーニングセンターの誘致の問題でございますけれども、私も、実は去年、ラッセル・クーツが来たというふうなこと、そしてまた今回、オリンピックに吉迫・佐竹両選手が──今来られてますけども──出るというようなことで、この和歌浦というふうなものに対して改めて認識を深めていたところでございますけども、今のお話にありましたように、北京オリンピックで中国チームが和歌浦で練習しようというふうな話を聞いたら、これはもう相当力を入れないといかんなというふうな感じになってきております。
 このナショナルトレーニングセンターの誘致については、従来から教育委員会を中心として取り組んでおり、昨年の十一月には副知事を会長とする誘致委員会を設置して文部科学省やJOCなどに対して働きかけを行ってきており、また国の施策に対する要望についても重点項目として挙げているところでございますけれども、今のような事態を踏まえてさらに一層その働きかけを強めていきたいというふうに思っております。
 それから、広報についての御質問でございますが、広報が重要だということについては全く私も同意見でございます。今の時代は、内容とともにそれを外へ発信していく努力ということが同じぐらい重要性を持つような時代になってきている。そういう中で、今まで私自身もいろいろな形で発信という努力をしてきたわけですけれども、非常にやはり今思い返してみると場当たり的な形、それからスポット的なものであったというふうな感じを持っておりますので、今後は組織的に、そしてまたいろんな形の効果というふうなものを測定しながら有機的連関を持って広報が行えるような組織づくり、体制づくりということを進めてまいりたいと、このように考えております。
○副議長(吉井和視君) 知事公室長小佐田昌計君。
  〔小佐田昌計君、登壇〕
○知事公室長(小佐田昌計君) 広報力強化に向けた戦略的な取り組みについて、お答えをいたします。
 まず、広報戦略、広報計画の必要性と広報戦略会議についてでございますが、これまでも広報広聴委員会など庁内の広報関連組織を活用して定期的に広報広聴の方針などを説明し、重点施策については広報戦略を協議・検討しております。また、県内市町村と県とで構成する県広報協会の研修会など、専門家から具体的な指摘をもらったり他の自治体や民間広報担当者から現場の話を聞くなど、広報力の強化に努めているところでございます。より和歌山を売り出すために、また各施策についてより多くの理解と評価を得るために、中長期スパンでの広報戦略や広報計画を策定することは非常に必要なことだと考えてございます。また、外部の専門家の意見も踏まえた広報計画のあり方については、関係課室と連携しながら十分検討してまいりたいと考えております。
 次に、広報事業に係る効果測定についてでございますが、各メディアの調査データやそれぞれの広報媒体、また個々の事業でのアンケート結果などを参考にしているところですが、トータルな広報の効果測定はなかなか難しいことも事実でございます。広報の効果測定は、ニーズの把握や政策評価とあわせて今後の広報計画を立てるに当たり非常に大切でありますので、庁内外の各種データの集約を強化するとともに、より効率的な効果測定の方法などを研究してまいりたいと考えております。
 次に、マーケティング活動とブランド化への取り組みについてでございますが、広報活動に当たり、県民ニーズの把握いわゆるマーケティングは欠かせないものでございます。このため、県民の皆さんと直接ひざを交えて懇談や説明をするふれあい未来づくりトーク、県政おはなし講座、また直接提案をいただく知事と親しメールなどを通して現場の生の声を施策に生かしているところですが、今後もニーズの把握方法の拡大、またそれを施策に生かす仕組みの見直しなどを含め、より積極的な展開を図ってまいりたいと考えております。
 地域ブランドへの取り組みにつきましては、これまでもそれぞれの担当部局で実施され、自然や観光を初め、農林水産物、さらには工業技術等々、国内外に誇れる成果も数多くございます。これらの各分野の集積がブランドであり、それが本県のイメージをつくり上げていくのではないかとも思っております。本県の一元的なイメージづくりはなかなか難しいものとも感じておりますが、例えば、今回の世界遺産登録が実現しますと、まさしく世界に通用するブランドを得たことになりますので、これを機に世界遺産を有する県として関係課室がより連携して、さまざまな機会をとらえて情報収集・発信の強化を図り、総合的な地域ブランドの創造に向けて努力してまいりたいと考えております。
 次に、組織内コミュニケーションについてでございますが、現在、毎月の広報連絡会議など庁内の各種連絡調整会議を通して、新しい情報の交換を初め、広報広聴の方針などの再確認や協議をしております。また、庁内イントラネットやホームページを活用して職員相互の意見や知識の共有化、報道機関への資料提供の周知なども行っているところです。こうしたコミュニケーションは広報力強化の観点からも重要でありますので、全職員が広報担当者であるとの意識づけをより徹底させてまいりたいと考えております。
 いずれにしましても、議員御指摘のとおり、行政の事業遂行に当たっては的確な情報の収集と発信が何よりも大切であると思います。そうした意味において、広報の重要性をいま一度再確認し、県勢の発展につなげてまいりたいと考えております。
○副議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 最初に、ナショナルトレーニングセンターについてお答えします。
 このたび、和歌浦湾を拠点にトレーニングを積んでこられたセーリング競技の吉迫、佐竹、鈴木の三選手と雑賀コーチの四名の方がオリンピック日本代表に選ばれたことは、県民の喜びであるとともに、本県の青少年に大きな希望を与えてくれるものと期待しております。
 今回のアテネオリンピック出場が強力なアピール材料となり、和歌山へのナショナルトレーニングセンターの誘致が実現することを願っております。そのことでセーリング競技のトップアスリートが和歌山に集まり、トレーニングや各種大会などのイベントが多数開催されることになれば、各種のメディアを通じて和歌山の海のよさをPRできる機会が多くなるものと考えております。ナショナルトレーニングセンターの誘致はスポーツや観光の振興など本県の活性化に資するものであり、今後も国や競技団体に対して精いっぱい働きかけを続けてまいります。
 次に、個性を伸ばす和歌山教育への取り組みについてお答えします。
 本県の中高一貫教育は、早期からみずからの個性や才能を見つけ、それを伸ばし、豊かな人間性をはぐくむとともに、生徒が希望する進路を実現できるようにすることをねらいとしています。この春開校した県立向陽中学校においても、理数系の確かな学力を育てる特色ある教育課程を展開する中で、現在、生徒たちは生き生きと学習に取り組んでいます。今後の中高一貫教育校の設置は、県民のニーズを踏まえ、多様な個性の伸長という視点を大事にしながら、特色あるものとなるようさまざまな角度から検討をしてまいります。
 職業教育において社会の現実を体験することは、職業人としての自覚を培う上で極めて大切であります。本県では、これまでインターンシップなどの普及に取り組んできており、本年度は長期間の企業内実習等を通して地域の産業が求める有為な人材を育成するきのくにデュアルシステムを田辺・西牟婁地方をモデルに実施することとしています。これらの取り組みを通して確かな勤労観、職業観の育成や将来のスペシャリストとしての専門性の向上等、キャリア教育を大きく前進してまいりたいと考えております。
 次に、学校におけるシルバー人材の活用は、貴重な人生経験や技術を子供たちに直接伝えることを通して学校での学びをより豊かなものにし、人間的な成長を促すという大きな意義を持つものであります。現在、小中学校において長年の職業経験を持つ大工職、漆器職等、外部の人材を特別非常勤講師として招く取り組みを行っているところです。また、とかく視野が狭いと言われる教職員についても、数年前から毎年三十人平均、これを民間の会社等に派遣して長期社会体験研修を実施しております。今後もさまざまな方法を工夫して、より積極的、計画的にそうした人材の活用を進めてまいる考えであります。
 最後に、本県教育のグランドデザインを描くに当たっては、和歌山という地域、風土をフィールドにした真の学びを構築し、二十一世紀をたくましく生きる人材を育成することが大切であると考えております。とりわけ、今日のように先行きの不透明感が増幅する状況にあっては、厳しい変化に流されることなく、みずからの意思と責任で進路を開拓し、社会人、職業人として自立していく力を身につけさせる教育が強く求められており、そのために必要な改革を積極的かつ腰を据えて展開してまいる所存であります。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十五番山下大輔君。
○山下大輔君 御答弁いただけましたので、再質問させていただきます。
 アテネオリンピック出場、ナショナルトレセンについて、まず、先ほど先輩議員である向井議員の方からお教えいただいたのですが、今回、和歌山からパラリンピックの方で中村智太郎さんも出場されるということをお伺いいたしました。大いに健闘を期待したいと思います。
 先ほどから、吉迫・佐竹の件ではお話をいただいていますけれども、実は彼女たちがオリンピックでメダルをとれる可能性というのは──余りこうプレッシャーをかけてもいけないんですけれども、実はこの女子四七〇級というのは三大会連続入賞してきている種目でして、日本のヨット界では一番世界に近いと言われている種目です。そういった部分もありますので、とにかくよい成績を残してナショナルトレセンのさらなる弾みにつなげてもらえればと祈るばかりです。
 あと、広報力強化に向けた取り組みについては前向きな御答弁をいただけましたので、ぜひしっかりとお取り組みいただきたいと、これも要望といたします。
 最後に、個性を伸ばす和歌山教育の取り組みについて、これ一点だけ知事に少しお伺いしたいんですけれども、先ほどお話ししたように、教育長が向陽高校の方では生き生きと生徒がしているというお話をお聞きして、私もつい先日、向陽高校に行き、校長にもお話をお伺いして実際に授業も見てきました。確かに生き生きとした取り組みが進められていて、よい取り組みが始まっていると感じています。だからこそ、ここで立ちどまらずに取り組みを進めていっていただきたいと。
 最後に、知事に一点だけ、工業系の中高一貫、商業系の中高一貫などについて、私はぜひ前向きに進めていただきたいと。単に学校で競争がだめだということじゃなくて、競争の目標とするところを幾つも山をつくると。子供の個性に合ったところで競争させていくような教育環境。だから、学校で勉強はできるというところも一生懸命競わせたらいいし、そこのいい学校もつくればいいし、ほかにはいろんな個性に合わせた学校の目標というものも今後教育環境ではつくっていくべきだと考えるのですが、そのあたりについて知事の御所見を賜りたいと思います。
○副議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 今の工業系とか、それから商業系の中高一貫、これは僕は発想としては非常におもしろいと思います。発想としては非常におもしろいけれども、なかなかそれに応募してくる人がいるかどうか、やっぱりいろいろな準備というか、そういうふうな調査も必要だと思いますので、一つの貴重な御意見として、これは教育委員会がやることですけども、これを受けとめながら考えていくということだろうと思います。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(吉井和視君) 以上で、山下大輔君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後三時二十九分散会

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