平成16年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十二番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
 第一は、海南市冷水で起こった交通事故の問題でございますが、この事故については、朝ほどから藤山議員から状況の説明がありました。また、トレーラーの事故や代替道路の問題等についても答弁がありましたので、私は一点だけ、JRにかかわる問題、通報があったのにJRの事故を防げなかったことについて、どういう問題があったと見ているのか、企画部長に質問をいたします。
 第二番目の教育の問題に入ります。
 またも衝撃的な悲しい事件が起こりました。長崎県佐世保市の小学校六年生の女の子が、仲よしの同級生をカッターナイフで切りつけて殺してしまったという事件であります。当日の和歌山放送で駒井教育委員長が、この事件を、厳罰主義に向かっても問題の解決にならないこと、スクールカウンセラーを配置しているが、普通の子供が突然かっとなるという問題には対応できないことなどを述べておられましたが、私もそうだろうと思いながらお聞きしました。
 そして、今日の教育問題の背景として、国連の子どもの権利委員会が日本政府への勧告の中で、極度に競争的な教育制度によるストレスのために日本の子供たちが発達のゆがみにさらされていると警告していることを思い返さなくてはなりませんし、また、子供の人間関係が大変希薄になっている問題、ネット社会がそれに拍車をかけていることもあるでしょう。いろいろな面から考えなくてはならないというふうに思います。
 さて、少し話が変わるんですが、先日、私が最初に教壇に立ったときの教え子数人と焼き肉をつつく機会がありました。「君らにいじめられて、何回先生をやめようと思ったかわからんよ」などと言って話したんですが、その中で「君ら、家庭科教室でバケツにおしっこをして怒られたのを覚えているか」、こういう話をしてみました。「覚えている」と言います。
 話はこんなことです。やんちゃな中学二年生の男の子のグループが、夜中に学校に遊びに来ました。教員の宿直があった時代です。その日は宿直室に来ずに家庭科教室に忍び込んだ。女の子だけが使う教室だから、多分興味があったんでしょう。そして、そこでバケツを引っ張り出して、そこにみんなでおしっこをして、そのまま帰ってしまったという事件でありました。
 翌朝、家庭科の先生はかんかんであります。家庭科教室というのは、その先生のお城です。「校長先生、何とかしてください」ということで調べると、芋づる式にグループのメンバーは明らかになりました。親も呼んで家庭でも注意してもらおう、こういうことになったわけでございます。当時の親は素直に先生の言うことを聞いてくれます。「まことに済みません。家でもよく言うて聞かせます」、こんなぐあいに言って、平身低頭であります。
 ところがそのとき、一人のお父さんが帰りがけに言い出したわけです。「まことに済みません。私とこも厳しく言うて聞かせます。けれども、わし、ちょっとうれしい気もしてるんです。というのは、わしとこの子は小学校のころから物言わず──無口ですね──のおとなしい子でした。それがみんなと一緒に悪さをできるようになったんだと思うとうれしいんです」、こういうお話であります。
 生徒指導の先生が、その問題をどんなふうに受けとめたのかが問題であります。翌日、職員朝礼という打ち合わせの会がいつも学校であるんですが、そこで報告しました。「昨日、親を呼んで厳しく注意しました」、こういう報告をした後で、そのお父さんの発言を紹介したわけです。そして、「このお父さんの言われたことは、私たち教師にとってしっかりと受けとめなくてはならない問題を含んでいるように思います」、こういうふうに言って、その報告を結んだわけです。
 子供の成長や発達というものは、ジグザグのコースをたどるものであります。最近、よくあるでしょう。小学校、中学校まで、よい子だ、よい子だと思って育ててきた子供、そして、高等学校へ行っても優等生だった、ところが大学へ入ってから引きこもりになってしまって学校へ行けなくなった、こういう子供がよくあります。そういうケースをよく耳にします。
 そうしたことを考えるとき、「みんなと一緒に悪さをできてうれしい」、こんなふうに言われたお父さん、そして、その発言を「この発言は学校の教師にとってもしっかり受けとめなくてはならない大事な問題だ」と言って、わざわざ職員朝礼で報告した海南市立野上中学校という、今は統合してなくなった学校ですが、その学校での教育論議、今振り返ってみても、私はこれは大変貴重なものを持っていたんだなという思いをするわけであります。
 今、学校現場が大変忙しい中で、ジグザグのコースをたどる子供の成長を親と教職員が余裕を持って見詰めることができているんだろうかという思いもいたします。同時に、そうした子供のとらえ方をした教育実践も少なくないことも知っています。
 そこで、知事にお伺いします。知事はよく「和歌山の教育は古い」というような発言を何度かされていますけれども、私が申し上げたようなことについてどういう感想をお持ちでしょうか、お伺いいたします。
 さて、子供の成長をじっくりと見守る余裕がない。このことが、親による児童虐待を見る場合も大事な問題であります。そうした親への支援も求められますし、また学校では、そのためには教職員定数の改善が急がれます。前回の議会で、私は少人数学級の施策が進んだことを評価しながらも、しかし、和歌山県では県単独負担の教職員がどんどん減らされている問題を指摘をしました。小中学校の教職員は昨年からことしにかけて百七十人ほど減らされていますが、その原因は児童生徒の減だけではありません。県単独負担の教員が五十三名も減らされています。
 歴史を振り返ってみますと、和歌山県の教職員定数は同和教育運動の中で県民の世論を反映して前進してまいりました。和歌山県独自で同和地区三十五人学級が実施されました。同和の課題は基本的に達成された中で、同和の施策の解消は当然でございます。しかし、今回、佐世保で起こったような悲劇、教育の問題はますます深刻です。従来は百四十人ほど抱えていた県単独負担教員は、今では三十人ほどに減らされてしまっている。どんどん減らすだけなのか。そうではなくて、今日の教育課題に応じて確保していくつもりなのか。教育長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 第三に、和歌山の部落史編さんへの補助を行うという問題についてお伺いします。
 さきの県議会で通された予算で、和歌山の部落史編さんとして二百万円の新規の歳出が組まれていることがわかってまいりました。私は人権問題特別委員会に所属していますが、委員会での予算や施策の説明でも触れられませんでした。二百万円とはいっても、新規事業であります。今後継続を予定している事業のスタートです。こういうものはきちんと説明する必要があると思います。
 私は、こんな予算が組まれていることを知ったとき、私の不注意で見逃したのかと思いました。ところが、予算書のどこを繰ってみても、また人権問題特別委員会の資料を繰ってみても、この提案はどこにも見つからないのであります。予算を審議する私たち議員の目に触れないような提案をするなどということは、議会無視ではありませんか。なぜこんな扱いをしたのか、まず企画部長の説明を求めます。
 さて、担当課の方に問い合わせてみますと、社団法人和歌山人権研究所が編さんする「和歌山の部落史」という本のために、県として二百万円の補助をするということです。和歌山市も百万円の補助を決定しているといいます。他の自治体にも補助を求めるようにもお聞きしています。また、事業は十年間をかけて一億二千万円ほど費用を見込んでいるということであります。補助金を出すための要綱も見せていただきました。しかし、実際には社団法人和歌山人権研究所という特定の団体が補助を受けることを前提として話が進んでいることも不明朗であります。
 補助事業の要綱はいつつくられ、どのように県民に知らされるのか。和歌山の部落史を編さんしたいという団体がほかにあらわれれば応募できるのか。また人権研究所及び和歌山市、その他の市とはどういう話し合いがこれまで進められてきたのか。これも企画部長にお伺いをしたいと思います。
 さらに、その趣旨をまとめた文書を見せていただきました。「和歌山の部落史はなぜ必要か」という表題の文書であります。人権研究所の総会か何かで出された文書だそうです。一応「趣意書」と呼んでおきましょう。その文書の検討もした上で質問いたしますが、第一は、その趣意書では、和歌山の部落史が存在していない、だからやるんだと、こういうふうに書かれている。
 この和歌山の部落の歴史的研究に取り組んだのは、和歌山大学の既に亡くなられた渡辺広教授でありました。渡辺教授の研究書として、「未解放部落の史的研究」「未解放部落の形成と発展」「未解放部落の源流と変遷」という三つの大部な著作があります。渡辺教授の業績によって、和歌山の部落の歴史的研究は他府県と比べて決して負けない、大変実証的な研究がなされていると言えると考えるわけであります。和歌山の部落史が存在していないというのは余りにも認識不足だと思いますが、和歌山県の部落問題の歴史研究の到達点をどう考えておられるのか、知事にお伺いしたいと思います。
 第二番目の問題は、この和歌山の部落史というものを行政がかかわってまとめる必要があるのかどうかという問題です。同和問題だから、どこまでも行政が特別な扱い、責任を持たなければならないものでしょうか。同和対策事業というものは、同和地区の生活実態がかつて劣悪であり、部落差別が厳然として存在するという状況の中では、積極的意義を持っていました。
 しかし、同和対策事業と社会の進歩の中で、同和地区をめぐる状況が大きく変わりました。いつまでも線引き、特別対策を続けることは、同和地区内外の垣根をつくるという弊害の方が大きいという段階に来たのです。だから同和特別対策は廃止されたのです。この観点に立てば、同和問題の痕跡がなくなるまで同和を特別扱いした行政を進めるということは適当ではなく、同和問題の歴史だから行政が支援して責任を持つのが当然だということにはならないと考えます。知事、いかがでしょうか。
 さらに、参考までに申し上げておきたいと思います。この趣意書の中では、「大阪の部落史」というものが今刊行中ですが、それが参考になるということが書かれています。取り寄せて検討してみました。現在刊行中なのは資料集であります。
 一九六九年に、部落解放同盟大阪府連が、矢田教育差別事件と呼んだ糾弾事件が起こりました。これは、「同和教育は大事だけれども、それだからといって、勤務時間が守られないのを我慢しなくてはいけないのでしょうか」という教員組合の役員選挙で配られた文書を、同和教育を妨害する差別文書だと決めつけた事件でありました。この糾弾については、一九八一年、大阪高裁でこの糾弾行為が有罪として判決が出された、そういう糾弾事件でありました。
 この事件について、「大阪の部落史」第八巻資料編にどういう資料が載せられているのか探してみました。二つの資料を掲載しています。その一つは、糾弾をした解放同盟大阪府連の文書であります。いま一つは、この矢田文書を差別と断定した「大阪市政だより」という文書であります。矢田問題にかかわって、矢田文書は差別でない、不当な糾弾だという文書はたくさんありますが、何一つ掲載されていないのです。大阪高裁判決文さえも資料集には収録されていません。矢田問題という大阪の同和問題で見解が分かれた大事件、しかも司法の判断では糾弾行動が有罪と断罪された事件で、一方の意見のみを紹介する資料集になっています。こうしたものをモデルとして、大変参考になるといって和歌山の部落史を編集しようとしているわけですから、私としては大変心配するわけでございます。
 和歌山の部落史にかかわっては、以上であります。
 第四番目は、海南市、国道三百七十号の阪井バイパスの問題です。
 この阪井バイパスは、海南市の動脈とも言うべきものであります。二車線もきちんととれないような道を大型トラックやバスが苦労しながら対向している、それが現道であります。二十四時間の交通量は二万台、それだけに早期の実現が求められています。県の担当課も海南市も、その実現、住民合意のために全力を挙げています。私も地域からいろいろ意見をいただきますが、バイパス実現の方向でまとまるように努力しているところであります。
 道路の問題ですから、いろいろな意見が出ます。個人の意見に私はかかわるつもりはありません。ただ、私はこうした問題で、いろいろな関係者と話し合ってみて気がついたのは、海南市の動脈とも背骨ともいえる阪井バイパスをめぐって、海南市の責任者と県の担当課がどこまでひざを交えて協議しているのかという問題です。県と海南市の協力関係は大変よくなってきています。それでも、気のついた問題を一つ挙げてみましょう。
 それは、阪井バイパスで龍部池という池に橋をかける計画があります。一方、龍部池の堤防を補修してほしいという要望が上がっている、大変お金がかかる、龍部池の農業用水としての需要は減っているので一部を埋め立てて道路を通せば一石二鳥ではないか、こういう意見もお聞きしました。こういう意見が公式の場で検討されないままくすぶっているわけです。
 私は、この話を県の工事担当者にお話ししました。こういう答えです。「そりゃあ、池を埋められるんなら工事はしやすい、安上がりです。けれども、いろいろ難しい問題があるでしょう。水利権の問題もあれば、貴重な生物がいるかもしれない」とおっしゃいます。それは全くそのとおりです。しかし、県としても、できるかどうかは別として、海南市と一緒に正面から検討すればいいのではないか。そういう場を持っていないのではないでしょうか。海南市の側からも、住民合意がとれるかどうかもわからないのに、県の方にこうしませんかという提案はしにくいという関係も恐らくあるんでしょう。まあ、こんな間を取り持つのが県会議員の仕事の一つかなとも思うわけです。県会議員の場合は、割合気楽にいろいろなとこと話ができます。だから、おせっかいだと言わないでいただきたいと思います。
 私は、何も池を埋める方がいいと主張しているわけではありません。その方が合理的だと言うのなら、住民の理解が得られるかどうか、検討のテーブルにのせればいいと言っているのであります。
 県の担当課は道路を通すのが仕事です。専門的知識を持っている優秀な職員がおられます。けれども、次々担当がかわっていく。一方、海南市や地元住民は、阪井バイパスの早期実現を願いながら、海南市の町づくりや農業問題、池の防災など、総合的に考えています。節目節目で重要な政策決定を県と市が行わなくてはならないのです。しかし、だれがどこでそれをしているのか、大変わかりにくいわけです。
 この工事の計画として示されたもので住民の理解の得にくい問題の一つは、一部の地域で盛り土にして既存の道路と立体交差にするということであります。しかも、十数年前に示された計画では平面交差になっている箇所が今度は立体交差になっています。平面交差にしてほしいという住民の声も検討に値するものがあると思います。こうした住民から出された問題について、県の担当課と海南市の関係者がとことん議論をして、そしてこれが最善なんだという案を練り上げて、その練り上げた上で、どうしても住民の皆さんに協力していただきたいというふうにお願いをしていく、こういうことが大事だというふうに思います。
 阪井バイパスの工法、規格など、現在どういう計画をしておられるのか。高架、平面交差、橋をかけるかどうか、道路の規模などという問題で地元の意見を含めて政策決定する場をどう持たれるのか、県土整備部長にお伺いをいたします。
 さて、最後の問題は、前回の質問で取り上げた下津町、橘寮建設にかかわる大阪の大手ゼネコンの島本建設への丸投げに近い工事、島本建設倒産に伴う第二次下請への未払いにかかわる問題です。
 私たちは、大阪のゼネコンが島本建設に工事を丸投げするほど密着した関係にあるわけですから、島本建設の経営内容も、島本建設が第二次下請に支払いをしていない状況もつかんでいたと考え、第二次下請を救済する社会的・道義的責任があると主張してまいりました。その後、県及び国土交通省は、このたびの工事にかかわって大阪の大手ゼネコンを処分したとお聞きしています。そのことは大手ゼネコンと島本建設が密接な関係にあったことを裏づけるものではないかと私たちは思っているわけですが、その処分の内容、処分理由について、この場でお聞かせいただきたいと思います。
 また、恐らく今回は、私たちに相談に来た第二次下請の皆さんからの告発によって問題が明らかになってこの処分に至ったものだと思いますが、今後こうした丸投げなどを防止するためにどういう指導をされるのか。以上の点について、県土整備部長にお伺いしたいと思います。
 以上で、私の第一回目の発言を終わります。どうもありがとうございました。
○副議長(吉井和視君) ただいまの雑賀光夫君に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 教育問題についての御質問ですが、私自身は和歌山県の教育が古いということを言ったことはありません。私が言っているのは、基本的には今の世の中、子供を取り巻く状況が非常に変わってきている。例えば、私自身の子供を見ても、テレビゲームばっかりやったりいろんなことをしている。そういうふうな中で、例えば、この間起こったような事件も起こってくる。これは必ずしも社会の問題だけに僕はする必要もないと思いますけれども、起こってくると。
 そういうふうな中で、昔の「二十四の瞳」のときのような状況があれば一番いいんだけど、そういうものが失われた中で子供がよりよく育っていくような仕組みはどんな仕組みがあるか。そして、それは今までの画一的な日本全体一律で物事を行っていくような教育システムというのはやっぱり必ずしも好ましくないだろうと。それぞれの子供の発達過程とかいろんなことに合わせたような、能力を伸ばせるような教育ということを和歌山から発信していきたい。
 そして、そういうことについては、やっぱり新しいこともやっていかなければならない、新しいことにはそれぞれいろいろな抵抗とかあるけれども、やはりそういうことを排して和歌山から新しい教育をというふうなことが望ましいんじゃないかということで、いろいろなことを教育委員会等と協力しながら進めているということでございますので、この点は、和歌山の教育はどうだというふうな観点で物を考えているわけではありません。
 それからもう一つは、やはり私が常から言っているのは、今中国なんかへ行くと、本当にもう子供が目の色を変えて勉強しているわけです。これはもうイデオロギーとかなんとか関係なしにやっている。そういうふうな状況の中で、日本だけが微温的な形で何でもいいんだと、競争はしなくてもいいんだというふうな形でやっていくことが、果たしてこれから先も可能であるかどうか、そういうふうな厳しい立場もやっぱりとっていかなければならない、そういうことをやっぱり折衷しながら和歌山県で新しい形の教育ということを行っていくことが正しいと、そういうふうな信念で行っております。それが教育についてのあれです。
 それから、部落史の問題につきましては、これはまた企画部長の方から答弁があると思いますけども、隠すとかそういうふうなことではなくて、和歌山県では、私が聞いた話では、例えば高野山にはいろいろ近世のそういうふうな差別問題に関する文書がたくさん残っていると。そういうものを今やはり調べ出して、そして一つのまとまったものにしておく必要があるんだというふうな質問を受けて、そしてまた、それを行っていくための事前の調査が、なかなかそういうふうなことについて十分お金を出してくれるところもないし、何とか補助をもらえないだろうかというふうな話の中で決まってきたことで、これは、その同和問題とじかに結びつけて考えるべきものではない、むしろ学問的研究、日本の社会の構造というふうなものを考えていくという観点から考えているというのが私の基本的な認識でございます。
 それから、同和問題に関しては、確かに法律が切れたけれども、いまだにやっぱり差別事象は現にあるわけです。そして、そういうふうなものがある限り、やはり行政としてはそれに対応していく必要がありますし、そしてまた、この矢田問題は私はよく知っていますけれども、これはまあ言ってみれば一九六九年、もう日本全体が物情騒然としていた時代の事柄でありまして、このことと今の状況を全く一緒に考えていくということは、これはまた逆に科学性を問われるというふうな形になっていくというふうに思っております。
 いずれにせよ、皆さんの御理解を得ながら進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○副議長(吉井和視君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 六月二日の冷水でのトラックの横転、JR事故についてお答えいたします。
 電車をとめられなかったことにつきましては、JR西日本和歌山支社によりますと、列車無線のケーブルが落下した木材により切断されたものと推定され、そのため運転手への指令が届かなかったというのが原因とのことでございます。なお、現在、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会による調査が行われておりまして、原因究明と今後に向けた対策が検討されるものと思われますが、県といたしましても、この経過を見ながら、必要に応じ安全運行の確保についてJR西日本と関係機関に申し入れを行ってまいりたいと考えてございます。
 次に、「和歌山の部落史」についての予算についてでございますが、十六年度予算は部落史研究の構想を具体化できるかどうかを見きわめるための予備調査に対して補助するものであり、その他各種団体への負担金等とあわせて、人権行政総合調整事業という事務的経費の集めたものですけども、その経費として一括計上したものでございます。
 次に、同じく補助金要綱、また市町村等との話し合いの経過についてでございますけども、補助金要綱は事業が具体的に予算化された後に制定するものでありまして、補助金交付の事務処理を適正に行うための行政組織内部の規範でございます。
 部落史研究につきましては、初めに和歌山人権研究所から提案があり、これまで協議を重ねてまいりました。社団法人和歌山人権研究所は人権問題の調査研究、啓発を目的とした公益法人であり、さまざまな研究者との連携が期待できることから部落史を研究するにふさわしい機関であると判断してございます。
 また、歴史の研究解明そのものは、民間研究者、専門家にゆだねることが重要と考えてございます。また、県と各市とは、これまでも必要な情報交換を行い、また協力を依頼してございます。
 また、各市町村には、今後、資料収集などの必要な協力を依頼したいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 阪井バイパスについてでございます。
 阪井バイパスの計画案につきましては、野上電鉄の廃止に伴い、鉄道と並行する市道阪井三号線との交差方式を立体交差から平面交差に変更するなど、以前の計画案を一部見直したものであり、例えば、議員御指摘の市道阪井十三号線との交差については、前後の道路勾配の制約や切り土、盛り土等の経済性、施工性を考え、やむを得ず道路の計画高を上げ、ボックス構造としたものであります。
 この現在の計画案については、昨年十二月より地区ごとに説明会を開催し御意見を承っており、今後、いただいたさまざまな意見を踏まえ、県と市で検討を行い、より使い勝手のよい最善の計画案としてまいりたいと考えております。
 今後とも海南市とともに、地元の御理解、御協力を得て手続を進め、早期都市計画決定に向け努力してまいります。
 次に、島本建設倒産のその後でございます。
 御質問の大手ゼネコンの処分の内容についてでございますが、養護老人ホーム新築工事において配置した監理技術者が、一定の期間、当該工事現場に専任しているとは認めがたい状態にあったため、建設業法第二十六条第三項違反で、国土交通省から建設業法第二十八条第一項の規定に基づく指示処分を受けました。これを踏まえまして、和歌山県指名停止措置要綱に基づき、四月十二日から一カ月間の指名停止をいたしました。
 次に、一括下請いわゆる丸投げは建設業法等で禁止されておりますが、県工事においては、今後施工体制の点検強化を図るべく、契約時に配置技術者の写真提出を義務づけるとともに、抜き打ち的に工事現場の立入調査を実施する施工体制点検特別グループ、通称「施工体制Gメン」を組織するなどの取り組みをしてまいります。
○副議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教職員の定数につきましては、平成十三年度から実施されている小中学校に関する第七次改善計画に基づき、年度ごとに取り組んできたところです。また、平成十五年度には、県単独で少人数学級編制を導入いたしました。本年度は定数改善計画を活用し、大幅に拡充いたしました。今後、県単独措置による教職員の増員は財政上も大変厳しい状況ですが、きめ細かな指導を充実させるため、工夫を凝らしながら定数の確保に努めてまいります。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 御答弁ありがとうございました。
 一つ、やっぱりどうしても納得できない、もちろん意見の違いもありますけども、しかし、それでも特に納得できないのは、予算が提案されたのにそれを審議する私たちにはわからなかったというこの問題です。だから、予備調査というふうに言われますけども、例えば、何かの埋め立て工事をする場合に調査費てつけるでしょう。調査費をつけたら、それは調査費がつくということがみんなに明らかになって、この仕事は一応行政は前向きに進めてるんかなと、こういうふうになるわけでしょう。
 だから、この調査費というふうな名目であっても、それが何かの中へ入っているというふうに言われましたけども、そういうものをつけるということは、一応前向きに行政は検討するんだなと、こういうふうに県民は見るわけでしょう。そういうものが今回は提示されなかったというのは大変不満ですので、もう一度このお答えいただきたいと思います。
 それから、いろいろ知事がおっしゃった問題で、矢田事件の話で、時代が違うからというふうな話がありましたけども、何も私は時代が一緒だと言うてるわけじゃなくて、今、矢田問題のようなことが起こっているということを言うてるんではなくて、例えば、よくわかる矢田問題を例にとれば、そういう事件を極めて一面的な資料で紹介をしているその「大阪の部落史」というものがこのモデルになっているとすれば大変心配だと言うてるわけですね。
 ですから、知事も、民間の研究者などに入ってもらって──これ、企画部長が言われたんですか。民間の研究者などに入ってもらって研究するのが適当というふうに言われたわけですけども、例えば、この研究所にお願いをした場合にはこの研究所が抱えている研究者だけに絞られてやられるんではないかという心配もありますから。ひとつ今後十分、そういう心配がたくさんあるということだけは申し上げておきたいと思います。
 教育論の問題では、知事はもう少し、私がせっかくあれだけだらだらといいますか、長話ししたわけですからね、それにかかわって少ししゃべってほしかったという気はありますが、まあいいでしょう。再質問というほどでもありませんので。もう少し教育論議をしてみたかった。
 ただ、私、申し上げたいんですが、次の質問あたりで問題にするかもしれませんが、今、学校評価なんて問題を文部科学省も言っていて、恐らく県の教育委員会も苦慮、考えておられるんだと思うんですけども、学校評価なんてものは難しいんですね。私が、この子供のいたずらができるんやと、悪さできてよかったという話をこんなふうに職員会議へ持ち込んでまで議論をしたという話をしましたけども、そういう学校の温かさというか、そういうものが数字で出した場合のこの学校評価なんかにどんなに出てくるんだろうかと、こういう心配もありますので、今後そういう議論も恐らくする必要はあると思うので、その伏線としても、きょうはこんな話に時間をとらせていただいたわけでございます。
 それから、教職員定数の問題、これは教育長も、財政源は知事さんの方が握っているわけだから、「こうします」とは言いにくいと思うんですよ。教育に携わる者としては教員定数は一人でもたくさんとりたいという気持ちは恐らくあるけれども、まあああいう回答になると思うんですけどね。
 しかし、この間、私は長野県へ調査に行ってまいりました。そこで話を聞いて、まず言われてびっくりしたのは、今教育が大変な中で教員の採用を百人ふやしましたという話を聞きましてね。そして、一体県単独負担で長野県では何人持っているんですかと言ったら、四百四十三人持っていますと、こういう話。あるいは、複式の基準は和歌山は十六人だけども八人とか、いろいろ話を聞きまして、やっぱりまだまだいろんな点で、長野の場合も「緑のダム」という言い方で、知事の「緑の雇用」と言い方はよく似ていますが、そういう土木事業中心の県政を大きく変えたということで非常に注目されてる県政ですが、そういう中でこんなことができているということがあるわけですから、ひとつ教育ではやっぱり人という問題が一番大事でありますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
 あと、海南市冷水の事故の問題で少しお話ししておきたいんですが。
 これは、警察でも、それからJRでも調査中ですから、それ以上、今ここでどうこう言うてくれというふうに申しませんが、これから調査に基づいていろいろ突っ込んでいただきたいという問題があるわけです。
 例えば、素人考えですが、JRの問題でいうと、例えばそういう通信線が切れたという場合は、これは異常があったわけですから、例えば自動的に信号がとまるようにならないんかなということを素人としては考えますね。それから、JRの方からいうと、あの上の国道が大変危ないので、もっとしっかりガードをしてくれというふうにJRからは申し入れをしていたんだという話もありますね。これは国土交通省に対して物申す問題です。さらに、トラックの横転事故、過積載、これは文句なしに許せない問題なので、逮捕しましたという話もありまして、それもやむを得ないかなと思うんですが、ただ私、このトラック会社へも行ってまいりました。原池運送という西浜にある小さいトラック会社なんですね。そこで、もう入ってくる人ごとに、「申しわけございません」と会社の人は頭下げてばかりしておられましたけども、そこで少し業界の話を聞いたんです。
 鉄なんかはトンではかりますけども、木の場合は立米、あるいは今、尺貫法で一石、二石と石ではかるんだそうですね。大体あのトレーラーでどれだけ積めるんですかと。規定でいうと八十石と言いましたね。広川まで運ぶ予定やったんですが、広川まで運んで一石二百七十円だそうです。大体二万円ですね。それで、ディーゼルですから軽油をどれだけたくかというたら、大体五千円ぐらい、八十リットルたくと言いますね、往復で。トラックにはタイヤが十四本ついています。大体半年でだめになるんですよという話をしてましたね。こういうトラック業界の大変な状況もある。もちろん、だからといって過積載が許せるわけではないので、絶対これは許せないわけですけれども。
 だから、そういう問題からいうと商工労働部の関係なんかでもいろんなものを考えんなん、たくさん問題を提起をしていると思います。ぜひとも、そういう問題も含めて今後取り組む必要があるというふうに思います。
 そういうことで、それから特に、きょうは阪井の皆さんもお見えですけども、海南市と一緒に阪井バイパスの問題で皆さんの意見を検討するというお答えをいただきましたので、しっかり検討をお願いをしたいというふうに思います。
 以上で、私の第二回目の発言を終わります。一応その予算の問題だけお答えください。
○副議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 再質問にお答えいたします。
 先ほどからお答えしていますとおり、今回の和歌山の部落史の研究につきましては同和問題解決のために必要な取り組みの一つと考えてございますけれども、社団法人和歌山人権研究所の取り組みにつきましては、いまだまだ調査準備といった構想段階でございまして、具体的に適切に研究がなされるかを見きわめたいと、見きわめる必要があると考えてございます。そういったことから、事務的経費の一環として人権行政総合調整事業に措置したものでございます。
 なお、当然こういった研究には、やはり一定の期間とか一定のかなり経費が必要になろうと考えています。そういったことがありまして、県としましては、今後この史料の所在とか、あるいはまた保存状況の調査とか、保存状況の調査結果とか、あるいはまた編さん計画等々を見きわめまして判断を行った後、適当と判断した場合には、当然、議会に対してお諮りいたしたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 まあ恐らく何回聞いても同じ答弁しか出てこないと思いますので、もう再々質問しませんが、今後絶対こういうことのないようにしてほしいという問題と、そして、やはり私たち議員の側からいうと、わからないところで通ったわけですから、これは一年間できることなら凍結していただきたいという気持ちを私は表明しておきます。
 以上です。
○副議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時二十六分散会

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