平成16年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(村岡キミ子議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十四番村岡キミ子君。
  〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 おはようございます。
 許可をいただきましたので、早速、質問をさせていただきたいと思います。
 まず質問に入る前ですが、本年度の予算で、私が昨年の九月に質問をさせていただきました准看護婦から看護師への進学課程二年制について、開校するという方向での予算がつけられたことに感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 早速、質問に入ります。
 まず、大滝ダム問題についてでございます。
 大滝ダムの五回目の基本計画変更に関連して質問を申し上げたいと思います。この問題については、初日、同僚議員から既に質問をされたところでありますけれども、重複する部分もあるかもわかりませんが、お許しを願いたいと思います。
 昨年の春、三月十七日から完成した大滝ダムの試験湛水を開始いたしましたところ、白屋地区で至るところに地すべりが起こりました。その原因は試験湛水であるということを国土交通省も認めたところです。
 先日、私どもは現地を訪問いたしまして、その亀裂の起きている地域を見させていただきました。対岸から見る白屋地区は本当に日当たりのよいのどかな山村の風情にあふれているところでありました。白屋地区に一歩足を踏み入れますと、数カ所青いシートに覆われた地割れの畑地が見えました。住宅地内の生活道路、そして水路が曲がっていたり、土塀や家屋の傾きやずれなど、そのひどさを驚きをもって見てまいりました。
 地割れによって住みなれたこの白屋地区を放棄して地区住民三十七世帯、七十七人の方々が今、使われなくなった中学校の校庭に建てられた仮設住宅に移転をし、洗濯物を干すスペースもなく雨戸のない仮設住宅で厳しい寒さの中、不自由な生活を強いられておりました。体調不良を訴えて病院通いをする人や入院する高齢者がふえているとも聞きました。
 白屋地区役員の皆さん方とも懇談をいたしました。役員の方々は、「国と直接交渉してやっと全戸移転にこぎつけた。仮設暮らしがこれから何年も続くのかと思うと不安は募るばかりで、もうみんな精神的にも肉体的にも限界に来ている」と訴えられました。また、「五〇%の貯水で地すべりが起こったが、満水になれば一体どういうことが起こるか心配だ」「まずは住民の救済のことを考えてほしい。生活再建を急いでほしい。国から見たら小さなことかもしれないが、地元の私たちにとっては大変なことだ。これは国の大きな失政だ」「国の失政のために恐怖を味わい、住みなれた土地を追われ、こんなところに閉じ込められて村から見捨てられたらだれだって参ってしまう」「もう限界です」と、国や県、そして村当局への不満、怒りの気持ちを語られました。住民は一日も早く安心して生活できるために国が全面的に責任を果たすことを口々に求めておられました。
 私も、こうした住民の声、特にお年寄りの皆さんにこういうつらい思いをさせる結果を招いた国土交通省に怒りを感じるものです。そして、全面移転が決まった現在においては、一日も早く白屋の皆さんが仮設住宅を出て安心して暮らせる生活再建を最優先に国が全力を挙げることは当然のことだと考えるものです。和歌山県としても白屋地区の皆さんに何かできることはないのかと思うばかりでした。
 また、和歌山県として、国が居住地の確保や移転補償費について住民の皆さんと十分な話し合いを行い住民の納得が合意が得られるよう、今回のようなことになった経過からいっても国に意見を当然上げることが必要ではないかと考えますが、知事、いかがでしょうか。
 そして、今回の五回目の基本計画変更がこれまでにも比べて国の責任は重大そのものであると思うのです。大滝ダムの第四回目の基本計画の変更で二百三十億円が積み増しされ、二〇〇二年には完成する予定でしたが、このときの変更は、原石山というのがありますが、この山ののり面にひび割れが発生し、そのための関連費用として百十一億円が最大のものでした。地すべり対策としても七十億円が組まれ、今回地割れした白屋地区のほか六カ所の地区で地すべりをとめるための工事が行われ、十五年度で事業費負担は終了と繰り返し答弁をしてきたところです。大滝ダム建設事業費は、五回の計画変更で当初の二百三十億円が三千四百八十億円に十五倍にも膨れ上がった、本県の全体の負担額は四百三十七億円にも上ります。
 今から二十四年も前の話になりますが、このダム建設にかかわって一九八〇年三月の国会で日本共産党の辻第一議員が次のような質問を行っています。「ダムサイト上流の白屋地区の地すべりの危険でございます。白屋地区の要請にて地質調査を行った吉岡金市氏などは──この吉岡さんは当時、龍谷大学の教授でありました──ダム建設により白屋地区の地すべりは拡大され、その防止をする方法がないので、対策としては水没者と同じような安全なところに移転するほかはない、このような指摘もある」と述べ、同じ質問の中で辻議員は、「奈良県地質調査委員会の意見書、これは昭和五十三年十一月二十五日でございますけれども、これには、ダム建設によって水没斜面の地すべりは起こり得るものと言わねばならぬ」との指摘があることを紹介し、建設省の地すべりに対する認識を質問しています。
 この奈良県の報告書では、「深さ七十メートルまで風化した粘土が認められ、これ以深が未風化の基盤となっているため、この境界を不連続面として地すべりの発生が懸念される。そして、基盤の傾斜が流れ盤となっていることを考慮すると、風化岩盤の中での地すべりも発生しないと言いがたい。ただ、その可能性は小さいと考えられる」と述べていますが、今回の地すべりはこの「可能性は小さいと考えられる」と言われたその事態が起きたものだと思います。奈良県としては精いっぱいの危険性の指摘だったと私は思うのであります。
 辻議員の質問に国は、「ダムの貯水によって地すべりを引き起こすことのないよう必要な対策工事というものを十分行ってまいりたい」「対策工法のやり方につきましても、十分長年月耐えるような工法等も考えながら対処してまいりたい」と答えています。住民の委託した地質の専門家や奈良県の委託した専門家のいずれもが白屋地区の地盤の弱さを指摘し、国もそれを認識していたからこそ、この答弁から二十年以上たった四回目の計画変更で、長い年月耐えるはずの地すべり対策が行われることになったのだと思うんです。しかし、試験湛水を始めて水が半分の容量をためた段階で住民の皆さんが不安に思っていた地すべりが起こり、国の地すべり対策は長い年月どころか一年も保たなかったのです。
 ところが、国は昨年春、五月でありますが、地すべりがはっきりした後の国会で共産党の大森猛議員の質問に対し、「白屋地区に対する地すべり対策として、鋼管くい、アンカー、盛り土、集水井などを実施したことで万全な地すべり対策を行ってきた」と答弁をいたしました。大規模な地すべりが発生したことは、平成十四年十一月、第四回の計画変更で実施した地すべり対策は実効性のなかったことを示したもので、国の責任は本当に重大だと思うわけです。
 このように、白屋地区の地すべりは行政も専門家の学者もその可能性を指摘したものであり、白屋地区の方々が水没地域ではないが住宅の全面移転を求め続けてきたのも、今回のような事態が予想されてきたからです。国はこの指摘を軽視し、無視して事を進めたことに本当に反省すべきであります。
 知事は、今回の大滝ダムの五回目の基本計画の変更について同意するとの議案第七十九号を提出しておられます。今回の増加額は二百七十億円であり、その内訳は地すべり対策の工事費が百三十五億円、移転費を含む用地及び補償費に五十億円、その他二十九億円、完成の延期によるダムの維持管理費として四十六億円となっています。本県の負担は治水・利水合わせて新たに二十五億五千万円と巨額なものであります。知事の意見は「同意する」となっています。白屋地区の方々への補償についてこれに同意するのは当然ですが、さきにも申し上げましたように、一日も早く白屋地区の皆さんが平穏な日常生活に戻れるよう国に強く求めてもらいたいと重ねて要望するものです。
 しかし、これまでるる述べてきましたように、四回目の変更で終了したはずの地すべり工事についてさらに大規模な地すべり工事をせざるを得なくなった点については、国に真剣な反省を求め、地方に新たな負担を求めるべきではないと考えます。知事の見解を求めたいと思います。
 さらに、工事の延期によるダム維持管理費四十六億円についても、遅延の責任はひとえに国にあるのですから、これも国の責任で負担すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、和歌山県の利水、毎秒〇・四五トンでありますが、県営水道を持たない和歌山県が水利権を持ち続ける理由をお示しください。この利水権に係る和歌山県の負担額について企画部長からお答えをお願いします。
 最後に、今回の計画変更で大滝ダムの完成は二〇〇九年にと延ばされました。当初の計画では一九七七年完成でありました。実に三十二年、完成がおくれることになります。この陰で本当にたくさんの地域住民の恨みや嘆きがあることは想像にかたくありません。こうした事態に至った原因についてどのような見解をお持ちなのか、県土整備部長からお聞かせいただきたいと思います。
 二つ目の質問であります。雇用問題についてお尋ねをしたいと思います。
 今、雇用不安が本当に深刻であります。先日発表された完全失業率では若干の改善傾向を示したとのことでありますけれども、県の雇用悪化は深刻で、九七年から二〇〇二年までの五年間で完全失業者は一万二千人から三万人に二・五倍にもふえています。完全失業率は二・二%から五・八%に三・六ポイントも悪化いたしました。これらはいずれも全国で最悪の増加率となっているんではないのでしょうか。
 大企業が正社員の採用を抑える中、和歌山県内でも雇用者全体の中で正社員の割合は九七年の約七〇%が二〇〇二年には六五%に低下し、同じ時期に正社員は三万一千人減少し、パート・アルバイト社員は八千六百人増加しています。特に二十五歳未満の青年の就職難は深刻で、青年の八人に一人が失業している状態にあります。
 和歌山県地方労働組合評議会の労働相談センターには、解雇や賃金未払いなどの相談が二〇〇三年には二百二十三件もありました。二〇〇二年に比べて三割もふえたことになります。和歌山労働局への労働相談では二〇〇二年下半期は二千五百六十二件で、前期比二・七倍にもふえています。
 私は先日、数人の青年から就職に苦労している実態と職場の現状などを聞くことができました。その一部の事例を紹介し、雇用への積極的な支援策を求めたいと思います。
 二十七歳のAさんです。芸術大学卒業後、印刷会社でデザインの仕事をする正社員でしたが、合理化のために会社が一方的に友人を解雇しました。会社のやり方についていけずにAさんは退職をしたそうです。その後、運よく額縁販売を営む店舗に仕事が見つかりました。そして、アルバイトとして今は勤務しています。Aさんは正職員になりたいと会社に頼んでみましたが、しかし、約半年たった今もアルバイトのままです。土、日、祝日も忙しく、定まった休みはありません。労働時間も毎日十時間以上で、自分の趣味など全くできる余地がありません。
 二十八歳のM君です。八年間勤務をしていた会社でありますけれども、社長から経営が苦しくなったということで突然、やめるかアルバイトになるか迫られたそうです。就職難のときであるということから、M君は仕方なくアルバイト職員にならざるを得ませんでした。仕事は変わらないのに賃金は手取りも大幅に減りました。その上、健康保険も国民健康保険に変わり、国民年金料も加わって自己負担は大幅にふえました。
 二十二歳のK君です。K君はハローワークで紹介された清掃会社で三年間アルバイトをしました。朝八時から翌朝四時まで働くこともありました。そして、一日あけて朝七時から勤務という状態が続きました。勤務予定が直前に知らされることから、全く計画が立ちませんでした。給与が振り込まれていないときもあり、抗議してようやく振り込まれる事態もありました。勤務時間も余りにむちゃくちゃなので、K君は肉体的にも精神的にも耐え切れなくなり、その会社をやめてしまいました。
 その後、ハローワークの紹介で四回ほど面接を受けましたが、四回とも採用されませんでした。今の会社もハローワークの紹介で就職をいたしました。求人広告では朝八時十五分から午後六時までの勤務、土、日、祝日は休みとなっていました。それが現実的には全く守られませんでした。試用期間も三カ月でありながら、これも守られませんでした。K君は疲労が募り、精神的にノイローゼぎみになっていき、親も友人たちも心配するほど顔色も悪くなって、とうとうこの二月いっぱいで会社をやめてしまいました。K君は、この期間の職場の現状を「まるで奴隷のようだった。求人広告に書いていることを本当に守ってほしい」と、怒りを抑えられない気持ちを語ってくれました。
 ほかの青年から、ハローワークの開設時間をせめて夜八時まで延長することや、土、日、祝日も開設をしてほしいなどとの要望も聞かれました。多くの青年が厳しい就職難にあります。不安定なアルバイト、フリーターの雇用と長時間労働、安い賃金です。その上、労働基準法も無視した状況がまかり通っています。こうした現状が若い青年たちの働く意欲を、将来への希望を阻害していることにしっかりと私たちは目を向ける必要があるのではないでしょうか。
 ところが、高校生の就職率が和歌山県は他の県に比べて悪いという状況です。全国平均と比べても、県内への就職を希望する生徒が少なくなっていると聞きます。初めから県外しか就職できないからと、県外を希望することになっていると思うのです。高校新卒の県内就職をふやすために、鳥取県では県職員の給与カット分を中・高生卒などを雇用した企業に助成をしていると聞きます。鳥取県は、二〇〇一年度から中小企業を支援する独自の助成制度をつくり、雇用の創出を積極的に進めています。とりわけ今、中・高・大学新卒の就職が厳しく、就職後の離職率も高い状況にあることから取り組まれたと聞いております。
 その制度は、中小企業等雇用創出支援奨励金と新規・成長分野雇用創出奨励金の二つがあり、中学、高校の新規卒業生や十五歳以上から四十五歳未満で事業主の都合による離職者、解雇された人を雇い入れた事業主に対し、一人につき三十万円または七十万円を助成しているものです。研修にも支払う場合もあるそうです。二〇〇二年での実施状況を見てみますと、中小企業等雇用創出支援事業で一人三十万円が五百七十三人、これは三百六十件です。新規・成長分野雇用創出事業で一人七十万円が百三十二人に交付されています。二〇〇三年度では、ことしの二月まで既に九百六十八人の雇用を生み出しているそうです。さらに鳥取県は、二〇〇三年度から二〇〇六年度の四年間で一万人の雇用創出計画を策定して取り組みが進んでいると言われています。
 和歌山県の県職員などの給与カットは二〇〇一年から始まりました。来年度分の十二億円も合わせて四十億円に達することになります。一般財源分だけでも三十三億円が職員給与のカットで生まれています。県は十五年度補正予算で、職員の給与カットなどで余ったお金から二十億円の繰り上げ償還や基金への積み立てを行っています。そして、来年度の予算に高卒者を三人以上新規雇用する場合などに融資する雇用創造対策資金がつくられることになっていますが、この融資枠はわずかに十億円にすぎません。
 そこで、県職員などの給与カット分を高校生などの雇用拡大にぜひ活用していただきたいと思うものです。同時に、雇用創出計画を策定されることを願うものでありますが、知事、いかがでしょうか。
 先ほども述べましたように、ハローワークの開設日を土、日、祝日にも広げ、平日の開設時間の延長についても国にぜひ求めていただきたいと思うところです。そして、県独自でも相談窓口や無料職業紹介所をぜひ開設していただきたいと考えるものですが、知事、いかがでしょう。
 次に、障害者の就業訓練についてお尋ねをいたします。
 この質問を行うに当たって、訓練手当支給事業の中に来年度から、障害を持っておられる方が県外で職業訓練を受ける際の負担金として七人分、一千百万円が初めて予算化されていることを予算書で見ました。これまで、和歌山県出身の障害者の方が大阪や兵庫県などの障害者職業訓練校で訓練を受けた際には、大阪や兵庫県が負担金を出してくれていたと聞いてびっくりしたところです。和歌山県内に障害者のための職業訓練校がないために、遠くの地へ行ってそうした学校などに入るしか方法がなく、その上に寄宿舎費や訓練の負担金を他府県から出してもらっていたと聞いて、これまでそうした事実を知らなかったことを私は恥じ入るしかありませんでしたが、実に情けないことだと思います。
 調べてみますと、障害者の職業能力開発のための学校は、国立、都道府県立含めて全国で十九校あります。近畿では、国立が大阪府の堺市と兵庫県の伊丹市に、京都府立の障害者高等技術専門学校が城陽市に、兵庫県立の障害者高等技術専門学院が神戸市西区にあることを知りました。和歌山県にもこうした障害者自立支援のための職業訓練学校の設置をぜひとも今必要だと考えるところですが、商工労働部長、どのようにお考えですか。見解をお示しください。
 また、現在の県の事業では不十分ながらも、障害者の就職相談事業や来年度からNPOと共同してジョブコーチを育成する障害者就業支援事業が始められることになっていますが、求職者職場適応訓練事業を多様な障害を持つ方がそれぞれの障害に応じて企業の中で職業訓練を積み、技術を習得し、社会で働けるように実効性のある事業に拡充していただきたいと考えるものです。そして、予算をもっとふやして企業もこの制度を利用しやすいように改善してほしいと考えますが、商工労働部長、答弁をお聞かせください。
 これで、第一回の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 大滝ダムの問題でございますが、白屋地区住民の皆様におかれては、今回の地すべりの発生により大変ご苦労されていると聞き及んでおります。心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 白屋地区住民の生活再建問題については、基本的には事業主体である国土交通省及び地元自治体である奈良県や川上村において対応すべき問題であると認識しておりますが、心の底から心配を申し上げているところでございます。
 国土交通省及び奈良県におきましては、白屋地区住民の移転問題を一日も早く解決するとともに、ダムの早期運用を図っていく意向であると聞いているところでございます。本県としても、治水・利水の効果の大きな大滝ダムの早期運用を求めていく立場に変わりはなく、また白屋地区住民の方々の一日も早い生活再建が図られるためにも、大滝ダム基本計画を早急に改定する必要があると判断しているところでございます。
 ご指摘のとおり、白屋地区においては、当時の建設省において専門家等による委員会での検討等も踏まえ地すべり対策工が実施されており、これは今回発生した地すべりに対しても一定の抑止効果を有しているというふうに聞いております。しかしながら、今回生じたような大規模な地すべりの発生を予見することは現在の技術力においても困難であると国土交通省が設置した検討委員会において結論づけられたところであるというふうに聞いております。
 今回の計画変更が五回目ということで、またこれで供用をおくらせるということになれば地区の人々の生活再建もおくれるということもございますので、そしてまた今回のことについては国土交通省も真剣な検討をした結果というふうに考えておりますので、私といたしましては断腸の思いで議案を提出したところでございますので、ご理解をいただきたいと、このように思います。
 次に雇用問題でございますが、長引く景気の低迷を受けて、若者を取り巻く雇用情勢は非常に深刻な状況にあります。このため、県としては新規学卒者等若年求職者の就業支援対策として、各種セミナーの開催やジョブカフェ・わかやまの開設などに努めております。また、雇用のミスマッチ解消のため、求職者の能力開発などの再就職支援対策や緊急雇用創出特別基金を活用した雇用のセーフティーネットの整備にも努めているところでございます。
 ご提言の賃金カット分の雇用対策への活用についてでございますが、昨今の厳しい財政状況を踏まえ、県におきましても平成十三年度から議会のご協力もいただきながら職員等の県単独給与カットを行っているところでございますが、ここで生み出された一般財源につきましては、雇用対策はもちろんのこと、県政の重点施策や地域に根差した発想や工夫を盛り込んだ新規事業など、各般の事業推進に活用しているところでございます。
 今後とも、和歌山労働局や教育界、産業界等、関係機関とも連携を図りながら、若者の職業意識の醸成、能力の向上等、就職への環境づくりに努め、若者の早期就職と職場定着を図ってまいりたいと考えております。
 次に、雇用創出につきましては県の重要な施策の柱であり、来年度の当初予算では景気対策本部において雇用の創出に重点を置いた雇用を生み出す産業対策、雇用のセーフティーネット対策、雇用への環境づくりの三つを柱に総額九十九億円の予算を取りまとめたところでございます。県内各地の地域特性に応じた企業誘致、高野・熊野世界遺産登録から生じる観光振興、福祉サービス分野等での雇用拡大、新事業創出や販路開拓支援を積極的に進めることによって各分野で雇用が生まれてくることから、複数年を念頭に置いた雇用創出計画の策定について検討をしてまいります。
 次に、ハローワークの開設時間の延長についてでございますが、ご要望の趣旨を改めて国に対して伝えてまいりたいと考えております。
 また、無料職業紹介の実施についてでございますが、先般の職業安定法の改正に伴い、地方公共団体が住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策を推進するに当たり、これらの業務に附帯する範囲で無料職業紹介事業を行うことができるようになりました。このため、本県におきましても、ハローワーク等と明確な役割の調整に努めながら、平成十六年度中に開始できるよう進めてまいる予定でございます。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 県の利水分を持ち続ける理由とこれまでの負担額についてでございますが、県が大滝ダムに設定を予定しているダム使用権につきましては、流域の市町村における水需要の増大に備えて確保したものでございます。
 当初のダム使用権毎秒一・四五トンが、昭和五十二年度の第一回基本計画変更時に橋本市の水道拡張事業に対応して毎秒一トンを橋本市へ変更した結果、現在、毎秒〇・四五トンとなっております。
 水資源は県民の生活に欠かせないもので、その確保は一朝一夕にできるものではなく、長期的視点に立って考え合わせると、今後も県として毎秒〇・四五トンのダム使用権を将来に向けて確保することは意義のあることと考えております。
 なお、これまでに負担しました建設負担金は約四十二億円でございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) ダム工事が三十二年間もおくれている理由につきましては、国土交通省から、地すべり地が多いなど地質条件が非常に悪く、つけかえ道路を初めダム本体工事も困難をきわめたため長期間の工期を要した、水没地域内の移転対象家屋が約五百戸と多く、その方々との用地交渉、移転問題などの生活再建対策に多くの時間を要したとの説明を受けているところでございます。
 当県といたしましては、工期の長期化はコストの増加を招く要因であることから、一日も早い地すべり対策工の完了を求めていく所存でございます。また、ダムの治水・利水の効果は大きなものであることから、一日も早い運用開始による効果の早期発現を望んでいるところでございます。
 このため、繰り返しになりますが、今回の基本計画の改定には基本的に同意するものの、事業費の縮減と効果の早期発現に対する最大限の努力、並びに適時適切な情報提供を求める意見を付すこととした上で議案第七十九号を提出しているものでございます。
 何とぞ、よろしくお願い申し上げます。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 雇用問題の二点についてお答え申し上げます。
 まず、障害者職場適応訓練校の設置についてでありますが、県は障害者の皆さんに対する職業訓練の必要性を十分認識し、これまでも各高等技術専門校におきまして訓練可能な障害者の方々の受け入れを図ってきたところでございます。
 しかしながら、障害者のための職業能力開発施設の新設につきましては、訓練科目等のニーズの把握を初め、病院等の関係機関と連携が図れるところでの用地確保や施設の建設費等、課題が多く困難な状況でございますが、障害者の方々の要望を踏まえ、高等技術専門校等における施設をより有効に活用し、訓練が実施できるよう検討しているところでございます。
 次に、求職者職場適応訓練事業の拡充についてでございますが、求職者職場適応訓練につきましては、就職困難者を対象に事業所において業務に係る作業についての訓練を行うことにより作業環境に適応していただき、訓練終了後は当該事業所に雇用させることを目的としてございます。
 しかしながら、訓練期間が原則六カ月と長期なこと、事業主にとっても常用雇用への移行が原則となっていることなどから利用者が減少しているのが現状であります。一方で、平成十二年度から国においてトライアル雇用事業が開始され、期間が三カ月と短期なこと、運用が柔軟であることなどから活用企業も増加し、障害者の方にとっての定職への移行、事業主にとっての人材の採用に効果を発揮しているところであります。また、平成十六年度より新たに障害者就業支援事業も実施することにしているところであります。
 いずれにいたしましても、障害者の方の雇用促進を図る上でこれらの事業の果たす役割は非常に大きいことから、今後とも和歌山労働局やハローワーク等関係機関との連携に努めながら、事業の周知、啓発、採用企業の拡大など、制度の有効活用を図ってまいりたいと考えてございます。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十四番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 ご答弁をいただきました。
 まず雇用問題の中で、具体的に今でもいろんな形で進めてはいらっしゃいますけれども、しかし、それがまだまだ効果的に上がるというような状況には至ってないというふうに思いますけれども、しかし、何せ今は中・高・大卒の新規卒業生の就職が非常に困難だということで、もう働く意欲さえも失ってる若者たちもたくさんいるわけですね。そういう人たち──そして就職しても、現実的な職場の実態っていうのは、ハローワークに示された求人広告とは全く違うということが現実的にあるわけですね。安い労賃で長時間労働を強いるということが、これはあってはならないというふうに思います。
 そういう点でも、ぜひとも積極的にハローワークに対する意見、それから県が直接かかわっていく今度の雇用計画に基づく無料紹介所の問題とか、そういった点でもそういう労働条件、求人広告そのものをやっぱりきちんと守るということを中心に雇用拡大への道を進んでいただきたいというふうにお願いをしておきます。
 そして、とりわけ障害者の問題ですけれども、これ和歌山県は、五十六人以上の従業員がいるところで法定の二%ですか、それを雇うようにということで見れば障害者の雇用率は高いというふうになっていますけれども、しかし、なかなか長続きはしないという状況が往々にしてあるというふうに思いますが、それはやはり就職する以前の職業訓練がどれだけ大きくされたかということが大事だというふうに思うんです。これ、他府県に今まで依頼をしていたということの行政のあり方としては非常に恥ずかしいことだと思うんですね。
 そういう点でも、学校は難しいというふうになっておりますけれども、しかし、高等技術専門学校を三校も持ってるわけですから、そういうところでの活用というものをもっと検討すべきではないかというふうに思います。そういう点で、それらについては有効に活用していきたいというふうに答弁をされたわけですけれども、もう一回、これは具体的にいつの時点で学校の活用をされようと考えているのか、もう一度その方向性をちょっと明らかにしていただきたいというふうに思います。そういう点で、ぜひとも具体的な計画とあわせて具体的な取り組みを積極的にこれからも進めていただきたいというふうなことは要望としておきたいと思います。
 それから、雇用の中で事業としてあるトライアル雇用事業というのがことしから始まる──既に始まっているわけですけれども、これは非常に、三カ月間のお試し期間ですね。その後、事業者とそのお試しをした労働者が連携を、理解し合いながら雇用へ結びつけていくという事業で、随分と──三カ月間でその労働者をお試しとして採用した場合には、月額五万円を国が助成をすると、こういうふうになっているわけですね。ここらは、非常にこれが随分と利用者が多いというふうになっているところですが、現在まで行われてきました求職者職場適応訓練事業の実施が、実績そのものが随分と減少しているという状況にあるというふうに思います。これは、事業主の方が受け入れるのに使いにくい制度ではないのかというふうに思います。
 これは、六カ月間の訓練をして、それを雇うということが前提条件になっているわけですよね。そうしますと、実際に訓練は受けるということ自体の方が、労働者の方も雇用者側も期間が長いという問題がそこにあるんじゃないかと思うんです。トライアル事業というのと比べましてもね。だから、必ず採用しなければならないというような前提条件の上で事が進められますので。しかもそれは、トライアルは一人につき月額五万円ですけども、これは労働者一人につき月二万四千円ですね。一日の場合だったら九百六十円。障害者の場合は二万五千円ということになってますが、ここらの問題をもっと、このトライアル事業との関連で使いやすい方法に検討すべきではないかというふうに思うわけですが、国の制度でありますから、これはぜひとも国との、積極的に進めるという立場から、ぜひ国ともう少しこの中身が活用できる方法で制度改正も含めて要請をしていただきたいなというふうに思います。
 それから、大滝ダムの問題ですけれども、知事が非常にご苦労されて結論を出したんだと。「断腸の思いで」というふうに、この計画そのもの、基本計画変更について同意せざるを得ないというご答弁だったというふうに思うんですけども。
 しかし、これは、もう歴然としているのは、国のこの工事、地すべり対策に対する非常に軽い気持ちっていうのかな。真剣にやったんだと思いますけれども、しかし、予測できなかったという問題では私はないと思うんです。経過をたどって見てみましても、これはもう当初から地すべり地帯であって非常に危険だと。それなりの対策をとらなければいけないというのは、これはもう奈良県の地質調査委員会あるいは住民の皆さんたちがあえてこの白屋地区の地すべりについての地質調査を依頼した専門家の皆さんたちの結果から見ても、深いところで地すべりがあるというようなことがちゃんと主張されている。国会答弁の中でも「対策はちゃんととります」と言っておきながらこのような事態が起こったということ自体に、私は国の地質調査検討委員会の予測の甘さがあったというふうに思うんです。
 そういう点では、ぜひとも、だんだんおくれていく事業でありますけれども、私たち日本共産党はこうした点でも本当に──起こった原因そのものの予測そのものが甘かったという点は認めているわけですよね、国も国会の答弁の中で。だから、しっかりやりますと言うけれども、しかし、第四回の基本計画見直しのときにも同じ答弁をしてるんですね。それをやったはずなのに今の事態が起こったということは、非常に私は問題だと思うんです。あえてまた新たに負担を強いられると。それは地方自治体、奈良県や和歌山県、和歌山市、橋本市に新たな負担が強いられるということについて、やはり国が大きな責任を持たなくちゃいけない。負担をあえて求めてくるということについて、私はやっぱり毅然として物を言うべきことだと思うんです。
 そういう点で、知事が「断腸の思い」とおっしゃいますけれども、住民の皆さん方に対する言葉が今ありました。しかし、知事、現地へ行ってみえられましたか。住民の皆さん方のところに、仮屋住まいされているところへおいでになりましたか。恐らくきのうも大雪で、本当に大変だったと思うんですね。お年寄りの皆さんたちが日々この寒さの中で耐えなけりゃならないという事態で本当に──今、国との関係で責任を持つべきだというふうにおっしゃいましたけれども、しかしやっぱりこれは地方自治体に責任を負わせるのではなくて、国の直轄事業なんですから、これはやはり国が責任を持ってこの誤りをちゃんと財政的にも責任を持つということだと思うんです。このことなくして、これからどんなことが起こるかわからないという──これも四回目で終わりだって明言してきたでしょう。県も「そう言っております」と言っていますから。だから、議会の方も水資源特別委員会というのを解消したわけですよね。
 そういう点の経過から見ても、先に住民や専門家がもう既に地すべりは深いところでも起こるというのを予知していたのに、その半分の深さしかくいを打ってない、対策を打ってないという、そこに大きな問題があるということを指摘して、ぜひ国にこういった経過の問題をあえて県は指摘すべきじゃないですか。そして、負担を本当に国が責任を持つということ。そうではなかったとしても、もっと負担を軽減させるということが今やっぱり私は必要だと思うんです。
 そういう点で、知事、もう一回、こうした点で経過を振り返ってみても国の責任の重大性、そして私たちへ新たな負担を押しつけるということについてはやめるべきだということを主張されたらどうですか。そこのところをお聞かせください。
○議長(尾崎要二君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 大滝ダムの直轄事業の負担金の話ですけども、これは今の制度で──私自身は直轄事業については国が責任持ってやるべき事業だというふうに考えていて、今後、将来的に地方自治を確立していく上からは直轄事業の負担金は、維持費についても最初の建設費についてもなくしていくべきだという考えを持っております。
 ただ、今の制度では直轄事業負担金というものがあって、そしてしかもこのダムについてはもう非常に最後の五回目の計画変更については、これはもう世間的にも非常に大きな注目を集めた中で国土交通省としてもこれは本当に予測不可能であったということを十分県に対しても説明に来ておりますし、そういう過程の中で今回、大きな制度の今後の姿としてはやめていくべきだろうと思うけども、今回のものについてはこれは今制度に乗っかっているわけだから応分の負担をしていこうというふうなことで決断をしたということでございますので、ご理解いただきたいと、このようなことでございます。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 障害者訓練の高等技術専門校を利用した訓練についてでございますが、先ほども答弁をさしていただきましたように、この件につきましては既に検討を始めているところでございます。ただ、ニーズの問題、またスペースの問題等々、検討する余地がございますので、私どもといたしましてはできるだけ早いうちに開設できるように努力をしてまいりたいと、このように考えてございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 所定の時間六十分が過ぎておりますが、再々質問をされますか。
  〔「はい、一言」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 再々質問を許します。簡潔に願います。
 四十四番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 予測不可能であったというのは、これはもう行政側のこれまでのごく常識な答弁なんですね。だから、私たちは予測不可能ではなかったというふうに思っていますから、これは負担すべきではないというふうなことを主張して、終わります。
○議長(尾崎要二君) 以上で、村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十七分休憩
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