平成16年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


県議会の活動

平成十六年二月 和歌山県議会定例会会議録 第五号
     ─────────────────────
議事日程 第五号
 平成十六年三月八日(月曜日)午前十時開議
  第一 議案第一号から議案第二十号まで、議案第三十七号から議案第七十二号まで、議案第七十四号から議案第八十一号まで及び議案第八十三号から議案第八十八号まで、並びに報第三号から報第五号まで(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第一号から議案第二十号まで、議案第三十七号から議案第七十二号まで、議案第七十四号から議案第八十一号まで及び議案第八十三号から議案第八十八号まで、並びに報第三号から報第五号まで(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十四人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       新   島       雄
     四  番       山   下   直   也
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     九  番       東       幸   司
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十五 番       平   越   孝   哉
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       花   田   健   吉
     十八 番       藤   山   将   材
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       木   下   善   之
     二十二番       谷       洋   一
     二十三番       井   出   益   弘
     二十四番       宇 治 田   栄   蔵
     二十五番       山   下   大   輔
     二十七番       前   川   勝   久
     二十八番       原       日 出 夫
     二十九番       冨   安   民   浩
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       中   村   裕   一
     三十三番       浦   口   高   典
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       玉   置   公   良
     三十六番       江   上   柳   助
     三十七番       森       正   樹
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       阪   部   菊   雄
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(一人)
     四十 番       新   田   和   弘
 〔備考〕
     二十六番欠員
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        中   山   次   郎
     出納長        大   平   勝   之
     理事         垣 平   高   男
     知事公室長      小 佐 田   昌   計
     総務部長       宮   地       毅
     企画部長       野   添       勝
     環境生活部長     津   本      清
     福祉保健部長     白   原   勝   文
     商工労働部長     石   橋   秀 彦
     農林水産部長     阪   口   裕 之
     県土整備部長     酒   井   利   夫
     企業局長       西       芳 男
     教育委員会委員長   駒   井   則 彦
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員    高   垣   博   明
     警察本部長      宮   内       勝
     人事委員会委員長   西 浦   昭   人
     代表監査委員     藤   谷   茂   樹
     選挙管理委員会委員長 北   村   亮   三
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       中   原   洋   二
     議事課長       島 光   正
     議事課副課長     藪   上   育   男
     議事班長       鷲   山       智
     議事課主任      尾   崎   善   亮
     議事課主査      土   井   富   夫
     総務課長       土   井   陽   義
   調査課長       宗   野   幸   克
 (速記担当者)
     議事課主任      吉   川   欽   二
     議事課主任      鎌   田       繁
     議事課主査      保   田   良   春
     ─────────────────────
  午前十時二分開議
○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第一号から議案第二十号まで、議案第三十七号から議案第七十二号まで、議案第七十四号から議案第八十一号まで及び議案第八十三号から議案第八十八号まで、並びに報第三号から報第五号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(尾崎要二君) 日程第一、議案第一号から議案第二十号まで、議案第三十七号から議案第七十二号まで、議案第七十四号から議案第八十一号まで及び議案第八十三号から議案第八十八号まで、並びに知事専決処分報告報第三号から報第五号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 二十番前芝雅嗣君。
  〔前芝雅嗣君、登壇〕(拍手)
○前芝雅嗣君 おはようございます。
 議長のお許しを得ましたので、本日のトップバッターとして一般質問させていただきます。
 雄大な太平洋を望む本州最南端の町・串本町から和歌山市まで三時間余りをかけて本議場に登壇させていただくことは、紀南地方の活性化のために取り組む政治家の一人として身の引き締まる思いであります。
 それでは、通告に従いまして質問させていただきます。
 紀南屈指の漁港を持つ漁業の町、数多くの景勝地を持つ観光の町として発展してきた串本町に、先輩議員や関係者の皆様方のご尽力により県水産試験研究所が建設される運びとなりました。激しい誘致合戦が行われたこの施設は十年来の地元の大きな熱意によって実現されることとなり、厚く感謝の念を抱いているところであります。
 この水産試験研究所は、串本町に現在ある水産試験場と田辺市にある増養殖研究所を統合して二十一世紀にふさわしいこれからの水産業の振興や海の環境保全の研究、都市と漁村との交流を深める拠点として整備されることとなりました。この研究所は、約三十億円の事業費をかけて、本館や魚の病気を研究する魚病研究棟、学習棟や紀州材をふんだんに使った生物棟などを整備して、魚介類や水産物の飼育技術の向上やえさの再発研究などに取り組むもので、平成十七年度末の完成を目指して建設されます。
 また、施設の活用については、オープンラボやレンタルラボといった水産版のSOHOビレッジ方式の採用や、地域の大学の試験研究と役割を分担しながら、新時代にマッチした研究所づくりに取り組んでいると聞いております。また、隣接地には、串本町が水産についての体験や学習、それに食が楽しめる施設として串本町が友好提携しているトルコ共和国のトルコ料理を提供するレストランなど、これまで串本地方にはなかった施設を備える方向で、串本町都市交流海洋施設設立協議会を設置して検討が進められています。
 木村知事は、本会議冒頭の知事説明で、これらの産業を支える地域科学技術の振興については、国の支援のもと、ナノテクノロジーやバイオテクノロジー分野の研究を駆使して県独自の戦略的研究開発プランに基づき研究開発を進めるとともに、産官学が一体となった共同研究も進めたいと述べられています。また、見る、触れる、学ぶ、食べるを基本理念に都市との交流や地域の活性化に寄与できる開かれた研究施設を設備するとも述べています。
 そこで、開かれた研究施設についてのソフト面での取り組みを考えてみますと、都市との交流や紀南の水産物などをどのように発信したりブランド化を図るかであります。研究所や町の施設が水産研究所や食の研究などの面で日本一の発信基地になるためには、県や町、地元が一体となった取り組みはもちろんのこと、国の大きな支援も必要であります。世界遺産の登録を迎える中、ハード・ソフト面での国への働きかけなど、県の取り組みも必要と考えています。私も地元の議員として町の役場などの関係者らとこの二つの施設の運営方法などについて数多くの議論を連日重ねていますが、地元との連携をどう図られるのか、農林水産部長にお伺いいたします。
 和歌山大学が文部科学省の支援を受け、半島を生かした健康・医療・福祉プロジェクトといった事業を串本の観光協会の関係者やダイビング業者らと連携して取り組んでいます。このプロジェクトは、引きこもりや不登校の中高生ら若者を対象に、スキューバダイビングやシーカヤック体験、マリンキャンプなどを楽しんでもらい、自然と触れ合う中で心をいやしてもらうもので、新年度には障害者とその家族を対象にした事業も計画されています。イベントに参加した若者は、「シーカヤックをこぎながら奇岩が立ち並ぶ橋杭岩の周辺を水上散策するのは、これまでにない感動を覚えました。また、船体が透明なクリアカヤックを使ってテーブルサンゴが生息するきれいな海の景色を楽しむのもすばらしいです」と話してくれました。
 紀南地方のマリンスポーツ関係者らは、手軽に楽しめるシーカヤックを小中学生や中高年齢者にも楽しんでもらうようマリンエコスポーツの輪を広げる方向で事業展開を図っています。このような体験型観光への取り組みは、本県では「ほんまもん体験」と銘打って、県内各地で延べ二百五十九の体験プログラムが紹介されています。このうち田辺・西牟婁地方では県内で最も多く六十九の体験プログラムが展開され、串本周辺ではトビウオのすくい取り体験やホエールウオッチング、スキューバダイビング、ホンマグロの養殖体験、それにいそ観察などが人気を呼んでいます。
 このいそ体験でありますが、すさみ町の江住中学校が海の環境や生物、歴史などの研究に取り組んでいる学校として日本海事広報協会が主催する第三回ジュニアマリン賞の中学生部門で優秀賞として全国で三校の中に選ばれ、今月二十九日に東京で表彰されることになりました。生徒らは、いそ場の藻が枯れるいそ焼けについて藻の分布や被害状況を熱心に研究するなどの努力の成果が認められました。
 このように、小中学生や高校生らに海の生き物や自然環境に関心を持ってもらい、楽しみながら学んでもらうためにも、研究所などこれらの新しい施設が中心となって体験型観光や水産体験のイベント展開を積極的に推進すべきだと思います。また、これらの体験型観光を修学旅行に取り入れて大阪や愛知の高校や中学校の生徒たちが紀南地方に訪れるケースがふえていると聞いておりますが、串本町にできる新しい研究施設をこれらの修学旅行や研修旅行にも積極的に取り入れていただくよう働きかけてはいかがでしょうか。観光行政という面から商工労働部長に、学校教育という面から教育長にお伺いいたします。
 次に、紀南の水産物のブランド化の推進と販路の拡大についての取り組みについて質問を続けます。
 先月、東京の有楽町のビルの地下街の一角に和歌山県の地場産品の売り込みや観光客の誘致を図るアンテナショップがオープンし、産地直送や手づくり商品が人気を呼び、好評を博しているとのことです。このアンテナショップから都会の消費者の本音などのニーズがきめ細かく生産地に伝わり、和歌山のイメージのよさが全国に情報発信されます。
 また、県ではイトーヨーカ堂などと提携して去年の春からリレー物産展ソフトアンテナショップをオープンさせて、梅干しやミカンなど二百品目の県産品の販路拡大に当たり、この売上額は二億円余りにも上っているということであります。このほか、北山村特産のジャバラが花粉症などのアレルギーに効果があるとインターネットショップで紹介されたところ、全国的に爆発的な人気を集めています。このようなアンテナショップの積極展開やインターネットなどITを活用した本県の水産物のブランド化の推進について、水産行政としての取り組みを農林水産部長にお伺いいたします。
 また、水産試験研究所や町の施設は仮称であります。これらの施設のすばらしさを和歌山県はもちろんのこと全国に発信するためにも、ネーミング面や運営面でも県としての独自性や独創性を出していただきたいと思うものであります。
 続きまして、紀南地方の漁村の後継者の育成についてお伺いいたします。
 国は、緑の雇用事業の新規事業として立ち上げ、緑の雇用担い手育成事業として七十億円、農林水産業への新規就業を支援するふるさと担い手育成対策として二百億円の地方財政措置を講じることを新たに決めました。県では、水産業の振興策として青の振興和歌山モデルを立ち上げ、諸施策の展開を図る中、後継者の問題も施策の一つとして取り上げていますが、県内の漁村の高齢化率を見てみますと、平成十三年末では六十歳以上の水産業での男子の従事者は全体の従事者五千二百人に対し三千二百九十人で、およそ六割の人が六十歳以上となっています。また、平成四年末に比べて全体の従事者も千六十人減少しているほか、このときの高齢者の占める率は四三%で高齢者率は約一七%も上昇しており、本県の後継者問題には深刻なものがあります。
 このため、県では平成十四年度から漁業への就業者をふやそうと情報提供を行う県漁業就業者確保育成センターを設立し、活動に当たっています。また、一月には西牟婁振興局の中に若者の就業支援センター・ジョブカフェわかやまをオープンさせ、出前相談に当たっていますが、先月の地元新聞には相談者は一カ月でわずか三人と低調でPR不足が原因と紹介されていました。これら二つのセンターのPR不足を解消するためにも、農林水産部と商工労働部が連携を図り、漁業だけでなく海に関連する雇用も含めた後継者問題の解決に取り組んでいただきたいものであります。
 私は、この問題の一因には、漁村での嫁不足が大きなかぎを握っていると思います。嫁が来なければ漁業従事者は減少する一方で、漁村の過疎化の進行に拍車がかかります。そこで、国のふるさと担い手事業や県の青の振興和歌山モデルをフルに活用して、特に女性の雇用を重点課題として取り上げ、事業展開を図られてはいかがでしょうか。
 また、男女均等雇用が大きく叫ばれる中、新しい職種として、さきに述べたトルコ料理の料理人やシーカヤックやスキューバダイビングのインストラクター、観光客や修学旅行生らへの水産版の語り部ガイドの創設に、また豊かな川や海づくりのために広葉樹の植樹に取り組む水源づくりの推進策としてこの事業をPRする語り部ガイドの女性を育成、登用されてはいかがなものでしょうか。
 さらに、紀南の観光地には現在使われなくなっている企業の保養所や休業したホテルなどが数多くあり、これらを活用して女性専用の滞在施設を設備するなどして女性の雇用を創出することで漁業に従事する若者との交流の大きな広がりも十二分に図られます。
 我が自由民主党の小泉総理総裁は、サービス業の拡大を柱とした五百三十万人雇用創出計画を打ち出し、またその後、緊急地域雇用創出特別交付金制度を設け、景気の回復や将来を見据えた国づくりに取り組んでいます。この雇用制度を報じた新聞記事には一万人以上の雇用目標を立てている十九の都道府県が紹介されていますが、そこには和歌山県の名前がなく、残念に思いました。県当局におかれましては、過疎対策も踏まえた上で、これからの青の振興策の今後の展開について、農林水産部長に答弁をお願いいたします。
 次に、防災対策についてお伺いいたします。
 東南海・南海地震が発生した場合、死者の数は最悪で二万八千人が想定される中、政府の中央防災会議はことしに入り、防災計画の指針となる地震対策大綱を決定しました。その中で、重点課題としては十メートルを超える津波対策や全国的な救援ネットワークの整備、それに時間差発生時の被害拡大の防止が挙げられています。また、自治体を初め鉄道、電気、ガス、通信会社などは大綱に沿って早期に防災計画を見直し、作成するよう要請されています。この決定に伴って、防災対策推進地域に二十一都道府県が指定され、そのうち本県では五十市町村すべてが推進地域に指定されています。
 私の生まれ育った串本町では、自主防災が常に叫ばれています。消防庁などが行っている第八回防災まちづくり大賞の最優秀賞に当たる総務大臣賞に串本町の大水崎自主防災組織が選ばれ、ことし一月、東京で表彰されました。この防災まちづくり大賞は地域の防災力を高める行動を行った組織や団体に贈られるもので、大水崎自主防災組織は地震で大津波が発生した際、この地区から指定されている高台の避難場所に向かう場合、この高台はJRの線路をまたいだ反対側にあるなど大変遠回りをしての避難を強いられることから、組織のメンバーを中心に休日に山の斜面の下草を刈ったり、線路際に長さ三十二メートルの木製の橋をつくったり、高台へ通じる階段を整備するなど、資金調達を各方面に呼びかけるなどをして一年三カ月がかりで避難誘導路を整備し、住民が避難する時間を大幅に短縮させた取り組みが認められたものです。
 地震対策大綱をつくった中央防災会議の大学教授らは、「地震発生時にはまず津波による大きな被害が想定される。この被害の軽減には的確な避難誘導が重要である」と指摘しており、「住民が高い意識を持てば死者の数は半減できる」とも話しています。
 串本町は本州の最南端に位置し、大地震が発生すると役場のある地区には揺れから十分ぐらいで津波が押し寄せると指摘されています。このため、串本町の二色区では昨年十月に自主防災会を発足させ、自主防災マニュアルをつくるとともに、町が指定する三カ所の避難場所だけでは逃げられない住民も多くあることから、二色区独自の避難場所を十一カ所に増設したり避難誘導のための看板を設置するなどして津波対策に取り組んでいます。また、先月には大学教授らが講師を務めた自主防災リーダー研修会にも役員ら多くの住民が参加し、さまざまな対策を学んでいます。また町役場も避難場所の確保に取り組み、役場周辺にある三階建て以上の民間ビルを災害時に住民が避難できるようビル所有者と覚書を交わすなど、我が町串本では官民一体となって防災の町づくりに取り組んでいます。
 去る一月二十九日、東南海・南海地震で予想される津波被害をどう防ぐかについて東大地震研究所の教授や内閣府の参事官らがヘリコプターを使って県内の海岸線を空から津波対策を中心に実例を調査しました。視察後、教授らは、「紀南地方は山が海岸線に迫り、国道四十二号しか交通手段がないことが実感できた。四十二号にかわる代替道路が必要である。また、山が多く、四十二号が不通になった場合、孤立するおそれのある地域も見られることもわかった」と新聞にコメントしています。
 県は、災害発生時に地上回線を使ったファクスや電話、それに無線通信が途絶えても国や市町村などと通信衛星を使って被災地の情報がやりとりできる防災システムの導入を決め、三年後の秋に完成する防災センターでの運用を始めますが、新聞報道では全国的には四十三の都道府県が昨年末までに既に導入しており、神奈川県とともに最も導入の遅い県と紹介されていました。しかし、そこに導入される設備は、これまで沖縄県にしかない最新のデジタル通信網を備えた施設が整備されるということであります。
 そこで、県民が求めているのは、これらの最新の設備のフル活用であります。気象庁がことしから稼働させているシステムを紹介しますと、これは大地震発生の際、最初の弱い揺れを検知し、本格的な揺れが起きる三十秒以上のうちに予想震度などが速報されるもので、ナウキャスト地震情報システムと名づけられています。このシステムは列車の運行制御などに活用されるほか、津波の予報を発令するまでの時間も大幅に短縮できる大きな効果が期待されています。このほか、JRでは紀勢線の和歌山と新宮駅間の全線で運行中の列車に衛星無線で連絡できる中継所を整備し、災害発生時に指令室から列車を安全な場所に即時停車させたり、乗客の避難誘導を速やかに指令できるようこのシステムを導入整備するということです。
 そこで、県の防災センターが気象庁や鉄道、電気、ガスなどのライフライン関連事業所と連携・連動がうまく図られるかについて、県の取り組みを知事にお伺いいたします。
 また、県では地震や津波被害に強い町づくりを支援するために新年度から市町村のあらゆる防災施設に対して補助をすることを決め、当初予算に地震防災対策総合補助金として五千万円を計上しています。この制度は研修会開催などの情報収集や避難対策、それにヘリポートの整備や救急・消防活動などを支援するもので、五百万円を限度に県が費用の半分を負担するものとなっており、これまであった防災面だけの補助制度を見直したもので、県では県内全体の防災力アップの相乗効果を期待したいとマスコミにコメントしています。しかし、現実を見てみますと、財源不足に悩む市町村にとっては、数多くの防災対策の事業を計画しても事業費の捻出などは大変なものがあります。
 そこで、県におかれましては、この制度をどのように活用していかれるのかについて、総務部長にお伺いいたします。
 また、国は各地域の自主防災に重点を置いての取り組みを指導していますが、さきのヘリでの視察にもあったように、地方の防災対策のハード面での現状はお粗末なものがあります。そこで、国や県のハード面での取り組みを大きく望むものであります。
 例えば、国道四十二号線を走っているドライバーが道路わきで起きた小規模ながけ崩れを発見した場合、どこへ通報してよいものかわかっている人はほとんどありません。ほとんどが警察か消防、または役場に通報しているのが昨今であります。携帯電話がこれだけ普及している中、道路管理者の国土交通省へ通報する看板もほとんど見られないのが現実であります。道路の異常に気づいたときは「道路一一〇番」の看板設置や、大きな地震や津波発生時には赤色灯やサイレンの鳴る非常警報装置の導入や山間部への避難誘導を呼びかけるハイテク情報案内板を整備し、海岸線を走る国道の拠点に設置したり、それにカーラジオやカーテレビ、加えてカーナビゲーションにも従来以上の災害情報を提供できるシステムを整備導入するなど、国と県、それに市町村などが一体となって人の命を守ることが第一の行政課題として、一日も早く安心できる町づくり、観光地づくりに取り組まれてはいかがでしょうか。県土整備部長の見解をお伺いします。
 先月、県ではコンビニエンスストアを全国展開している株式会社ローソンと防災面での協力提携を行いました。これは、災害時の物資調達など、地域ぐるみでの防災を推進する上で非常に明るい話題であります。また、災害時の物資の調達についてでありますが、昨年十一月に県や海上保安部、それに串本漁協や古座漁協などが一体となって大規模地震を想定した緊急物資の輸送訓練を繰り広げました。漁船が参加しての訓練は県内では初めてとのことで、漁業無線を使った災害時の通信体制の確保についての取り組みも展開されたと聞いております。この種の訓練は地震で陸路が寸断されたことを想定したもので、阪神・淡路大地震のときも海上輸送が重要な役割を果たしたことから、今日、緊急物資や医薬品を積んだ県の漁業取締船とヘリコプターなどが見事な連携のもと、本番さながらに訓練が繰り広げられたということであります。
 そこで、今後地域ぐるみでの防災や震災後の物資輸送体制について県としてどのように取り組まれるのかについて、総務部長にお伺いします。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの前芝雅嗣君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 県防災センターの取り組みとライフラインとの連携について、お答えをいたします。
 気象台や鉄道、電力、電気通信等、ライフライン事業者との防災面での連携については、これまでも防災会議や防災訓練等の機会を通じてその充実強化を図ってまいったところでございます。
 現在進めております防災センターの心臓部とも言うべき総合防災情報システムにおいては、災害発生時に県、市町村、防災関係機関等が同一の情報を共有し、一体となって総合的な応急・復旧対策が実施できるようなシステム開発を予定しており、ご指摘のナウキャスト地震情報を含めた各種防災情報の迅速な伝達やライフライン事業者との情報の共有化については、現在実施している総合防災情報システムの基本設計業務と並行して関係機関と協議を進めているところでございます。
○議長(尾崎要二君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 水産試験場の運営と青の振興についてお答えいたします。
 まず、試験場の運営と取り組みについてでございますが、新しく統合整備される水産試験研究機関は、平成十八年四月に開所すべく作業を進めているところです。新施設は、研究員の効率的配置、地域に密着した基礎的・先導的な試験研究の効率的な推進及び成果の普及、多様化・高度化する漁業者、消費者のニーズへの対応、研究成果等を活用した地域全体の振興に寄与できる機能・体制の整備を行うことにより、開かれた研究施設として運営してまいります。
 開かれた研究施設としての取り組みの内容につきましては、研究施設を活用した広報、普及、研修、教育に係る取り組みの充実や付設予定の自由に利用できる研究室を活用した国や民間研究機関等との研究交流及び一般県民やNPOを参画させた新しい調査研究スタイルの維持などによって、漁業者のみならず県内外から可能な限り多くの来訪者を確保し、地元町等が計画する地域振興施設などと連携のとれる人の流れをつくっていきたいと考えております。
 議員ご提案の修学旅行、研修旅行における活用につきましても、水産試験研究機関の研修・教育に関する業務の一つとして関係部局等と連携をとりながら対応してまいります。
 次いで三点目、水産物の販路拡大とブランド化についてでございますが、紀州おさかな応援団による橋本市周辺や大阪方面へのPR活動を引き続き来年度も行い、直販ルートなどの販路拡大に努めるとともに、ブランド推進局とも連携してソフトアンテナショップやインターネット販売のふるさと和歌山わいわい市場等を活用し、一層の販路拡大に努めてまいります。また、ブランド化についても現在、カツオやアジ、サバのほか、地域の特産品としてヒジキやヒロメのブランド化に向けての取り組みが行われており、関係部局と連携をとりながら推進してまいりたいと存じます。
 四点目、青の振興の取り組みにつきましては、国民の共有財産である海の恵みの永続的な利用を図るため、一つ、漁業環境の維持・改善、二つ目、水産資源を活用した観光的な取り組みによる都市との交流促進、三つ目、水産物の販路開拓や漁家の収益拡大を図るという三本柱で海の総合的な振興策を実施してまいります。
 具体的には、海を取り巻く関係者である漁業者、遊漁者、マリンレジャー関係者、NPO、学校関係、企業等が連携しながら、アマモ場の造成など漁場環境の維持・保全に取り組む海の恵みネットワーク事業を新たに推進する一方、海遊体験、紀州おさかな応援団、ヒロメの産品化促進、漁民の森づくり活動など、ソフトによる総合的な振興策を事業展開することにより漁業資源の維持増大を図り、漁業への就業機会が拡大できるよう水産業のすそ野の拡大を図ってまいりたいと存じます。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 体験型観光の積極的推進についてお答えを申し上げます。
 現在、はえ縄漁、ホンマグロの養殖体験などの漁業体験やいそ観察などの自然観察体験等、本県の自然や農林漁業を活用しながらありのままに楽しんでいただくプログラムを整備し、PR活動を行っております。
 体験型観光の推進につきましては、交流人口の拡大や地域への経済効果、活性化につながり、リピーターの増加にもつながるものであると考えております。体験を取り入れた修学旅行や教育旅行につきましては、紀南地方を訪れる学校が増加しつつあり、今後も積極的なPRや誘致活動を行うとともに、議員ご提案の新しい水産研究施設につきましても、地域並びに関係部局と連携をとりながら積極的な活用を推進してまいります。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 総務部長宮地 毅君。
  〔宮地 毅君、登壇〕
○総務部長(宮地 毅君) 防災対策についてお答えを申し上げます。
 地震防災対策総合補助金につきましては、ご紹介いただきましたように、地震防災に関する地域の実情に応じた課題に対応し、市町村等における防災対策の強化を図るため早急に実施する必要がある事業に対し総合的に補助する制度として、当初予算に計上しております。
 本制度では、従来の市町村防災事業促進事業では補助対象とならなかった小規模な事業も対象とし、補助率を三分の一から二分の一へ引き上げるとともに、補助限度額も増額することとしております。今後、市町村に対しまして制度の趣旨を積極的に伝達し、有効な活用を図っていただく中で県全体の防災力向上につなげていきたいと考えております。
 次に、コンビニエンスストアとの提携についてでございますが、広域に配置された店舗網、認知のしやすさ、本部や地域拠点への情報集中体制、二十四時間営業といった点で、コンビニエンスストアに防災活動にご協力いただけるというのはありがたく、心強いことだと思っております。ローソンとは昨年から協議を進めてまいりましたが、この二月に防災関係の協働事業に関する協定を締結いたしました。協定には、物資調達、帰宅困難者支援などの災害発生時の支援に限らず、平常時の防災情報の提供や防災啓発などの支援も盛り込んだところでございます。
 なお、現在、他のコンビニエンスストアとも協定締結に向け協議を進めているところでございます。企業に対しいわば一方的に地域貢献を求める点でなかなか難しい面もございますが、さらに取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 続いて、物資輸送体制についてでございます。東南海・南海地震発生時には県南部は基幹道路が寸断され、陸上からの物資輸送が困難になるとの想定がなされており、代替手段としての海上輸送体制の強化が大切であります。昨年十一月の漁船に協力をいただいて実施した物資輸送の実験は県土整備部が中心となって行った初めての試みでございます。
 阪神・淡路大震災のときは、漁協の協力を得て本県から神戸に漁船による物資輸送を行った経験もありますので、今後こういった取り組みを進めるなど、物資輸送にかかわる関係部局が一体となって物資輸送体制の強化を図ってまいります。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 国道四十二号での防災対策についてでありますが、議員ご指摘のように、一般の方からいただく通報は道路管理上あるいは危機管理上極めて重要でございます。現在、通報につきましては道路管理者のほか道の相談室でも対応しておりますが、今回ご提案の通報先の明確化につきましては、国へ強く働きかけてまいります。
 また、この道の相談室ですが、いわゆる「道路一一〇番」と呼ばれているもので、高速道路、国道、県道、市町村道など道路に関することなら何でも受け付ける窓口で、平成十三年に設置されたものであります。電話番号は、フリーダイヤルで〇一二〇─一〇六─四九七、「道路よくなれ」でありますが、現在余り知られておりませんので、改めてその周知につきまして、県のホームページへの掲載を初め、国と連携しながら効果的な広報に努めてまいります。
 次に、災害情報を提供できるシステムについてでございますが、紀南地域では現在、国、県、市町村による紀南地方道路災害情報連絡会において導入された紀南地方災害対策支援システムが稼働しており、道路情報提供の迅速化及び共有化の体制が整ったところでございます。今後、津波危険地区・区間の表示や避難誘導施設の設置などを国に働きかけるとともに、国、県、市町村が一体となって危機管理体制の充実に努めてまいります。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 児童生徒が和歌山の海や山の自然に直接触れたり、水産試験場、自然博物館、大学の研究施設などを活用して学習を深めることは、豊かな心や探究心、創造力を高める上で極めて大切なことであります。
 本県においては、遠足や研修旅行を通してこうした体験に取り組んでいる学校が少なくありません。また、他府県の学校に対して本県での体験学習の場を提供する「あさもよし紀の国スクール事業」を実施し、好評を得ているところであります。
 今後、こうした活動がより一層幅広く展開できるよう、県内外に積極的に情報を発信してまいります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、前芝雅嗣君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十四番村岡キミ子君。
  〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 おはようございます。
 許可をいただきましたので、早速、質問をさせていただきたいと思います。
 まず質問に入る前ですが、本年度の予算で、私が昨年の九月に質問をさせていただきました准看護婦から看護師への進学課程二年制について、開校するという方向での予算がつけられたことに感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 早速、質問に入ります。
 まず、大滝ダム問題についてでございます。
 大滝ダムの五回目の基本計画変更に関連して質問を申し上げたいと思います。この問題については、初日、同僚議員から既に質問をされたところでありますけれども、重複する部分もあるかもわかりませんが、お許しを願いたいと思います。
 昨年の春、三月十七日から完成した大滝ダムの試験湛水を開始いたしましたところ、白屋地区で至るところに地すべりが起こりました。その原因は試験湛水であるということを国土交通省も認めたところです。
 先日、私どもは現地を訪問いたしまして、その亀裂の起きている地域を見させていただきました。対岸から見る白屋地区は本当に日当たりのよいのどかな山村の風情にあふれているところでありました。白屋地区に一歩足を踏み入れますと、数カ所青いシートに覆われた地割れの畑地が見えました。住宅地内の生活道路、そして水路が曲がっていたり、土塀や家屋の傾きやずれなど、そのひどさを驚きをもって見てまいりました。
 地割れによって住みなれたこの白屋地区を放棄して地区住民三十七世帯、七十七人の方々が今、使われなくなった中学校の校庭に建てられた仮設住宅に移転をし、洗濯物を干すスペースもなく雨戸のない仮設住宅で厳しい寒さの中、不自由な生活を強いられておりました。体調不良を訴えて病院通いをする人や入院する高齢者がふえているとも聞きました。
 白屋地区役員の皆さん方とも懇談をいたしました。役員の方々は、「国と直接交渉してやっと全戸移転にこぎつけた。仮設暮らしがこれから何年も続くのかと思うと不安は募るばかりで、もうみんな精神的にも肉体的にも限界に来ている」と訴えられました。また、「五〇%の貯水で地すべりが起こったが、満水になれば一体どういうことが起こるか心配だ」「まずは住民の救済のことを考えてほしい。生活再建を急いでほしい。国から見たら小さなことかもしれないが、地元の私たちにとっては大変なことだ。これは国の大きな失政だ」「国の失政のために恐怖を味わい、住みなれた土地を追われ、こんなところに閉じ込められて村から見捨てられたらだれだって参ってしまう」「もう限界です」と、国や県、そして村当局への不満、怒りの気持ちを語られました。住民は一日も早く安心して生活できるために国が全面的に責任を果たすことを口々に求めておられました。
 私も、こうした住民の声、特にお年寄りの皆さんにこういうつらい思いをさせる結果を招いた国土交通省に怒りを感じるものです。そして、全面移転が決まった現在においては、一日も早く白屋の皆さんが仮設住宅を出て安心して暮らせる生活再建を最優先に国が全力を挙げることは当然のことだと考えるものです。和歌山県としても白屋地区の皆さんに何かできることはないのかと思うばかりでした。
 また、和歌山県として、国が居住地の確保や移転補償費について住民の皆さんと十分な話し合いを行い住民の納得が合意が得られるよう、今回のようなことになった経過からいっても国に意見を当然上げることが必要ではないかと考えますが、知事、いかがでしょうか。
 そして、今回の五回目の基本計画変更がこれまでにも比べて国の責任は重大そのものであると思うのです。大滝ダムの第四回目の基本計画の変更で二百三十億円が積み増しされ、二〇〇二年には完成する予定でしたが、このときの変更は、原石山というのがありますが、この山ののり面にひび割れが発生し、そのための関連費用として百十一億円が最大のものでした。地すべり対策としても七十億円が組まれ、今回地割れした白屋地区のほか六カ所の地区で地すべりをとめるための工事が行われ、十五年度で事業費負担は終了と繰り返し答弁をしてきたところです。大滝ダム建設事業費は、五回の計画変更で当初の二百三十億円が三千四百八十億円に十五倍にも膨れ上がった、本県の全体の負担額は四百三十七億円にも上ります。
 今から二十四年も前の話になりますが、このダム建設にかかわって一九八〇年三月の国会で日本共産党の辻第一議員が次のような質問を行っています。「ダムサイト上流の白屋地区の地すべりの危険でございます。白屋地区の要請にて地質調査を行った吉岡金市氏などは──この吉岡さんは当時、龍谷大学の教授でありました──ダム建設により白屋地区の地すべりは拡大され、その防止をする方法がないので、対策としては水没者と同じような安全なところに移転するほかはない、このような指摘もある」と述べ、同じ質問の中で辻議員は、「奈良県地質調査委員会の意見書、これは昭和五十三年十一月二十五日でございますけれども、これには、ダム建設によって水没斜面の地すべりは起こり得るものと言わねばならぬ」との指摘があることを紹介し、建設省の地すべりに対する認識を質問しています。
 この奈良県の報告書では、「深さ七十メートルまで風化した粘土が認められ、これ以深が未風化の基盤となっているため、この境界を不連続面として地すべりの発生が懸念される。そして、基盤の傾斜が流れ盤となっていることを考慮すると、風化岩盤の中での地すべりも発生しないと言いがたい。ただ、その可能性は小さいと考えられる」と述べていますが、今回の地すべりはこの「可能性は小さいと考えられる」と言われたその事態が起きたものだと思います。奈良県としては精いっぱいの危険性の指摘だったと私は思うのであります。
 辻議員の質問に国は、「ダムの貯水によって地すべりを引き起こすことのないよう必要な対策工事というものを十分行ってまいりたい」「対策工法のやり方につきましても、十分長年月耐えるような工法等も考えながら対処してまいりたい」と答えています。住民の委託した地質の専門家や奈良県の委託した専門家のいずれもが白屋地区の地盤の弱さを指摘し、国もそれを認識していたからこそ、この答弁から二十年以上たった四回目の計画変更で、長い年月耐えるはずの地すべり対策が行われることになったのだと思うんです。しかし、試験湛水を始めて水が半分の容量をためた段階で住民の皆さんが不安に思っていた地すべりが起こり、国の地すべり対策は長い年月どころか一年も保たなかったのです。
 ところが、国は昨年春、五月でありますが、地すべりがはっきりした後の国会で共産党の大森猛議員の質問に対し、「白屋地区に対する地すべり対策として、鋼管くい、アンカー、盛り土、集水井などを実施したことで万全な地すべり対策を行ってきた」と答弁をいたしました。大規模な地すべりが発生したことは、平成十四年十一月、第四回の計画変更で実施した地すべり対策は実効性のなかったことを示したもので、国の責任は本当に重大だと思うわけです。
 このように、白屋地区の地すべりは行政も専門家の学者もその可能性を指摘したものであり、白屋地区の方々が水没地域ではないが住宅の全面移転を求め続けてきたのも、今回のような事態が予想されてきたからです。国はこの指摘を軽視し、無視して事を進めたことに本当に反省すべきであります。
 知事は、今回の大滝ダムの五回目の基本計画の変更について同意するとの議案第七十九号を提出しておられます。今回の増加額は二百七十億円であり、その内訳は地すべり対策の工事費が百三十五億円、移転費を含む用地及び補償費に五十億円、その他二十九億円、完成の延期によるダムの維持管理費として四十六億円となっています。本県の負担は治水・利水合わせて新たに二十五億五千万円と巨額なものであります。知事の意見は「同意する」となっています。白屋地区の方々への補償についてこれに同意するのは当然ですが、さきにも申し上げましたように、一日も早く白屋地区の皆さんが平穏な日常生活に戻れるよう国に強く求めてもらいたいと重ねて要望するものです。
 しかし、これまでるる述べてきましたように、四回目の変更で終了したはずの地すべり工事についてさらに大規模な地すべり工事をせざるを得なくなった点については、国に真剣な反省を求め、地方に新たな負担を求めるべきではないと考えます。知事の見解を求めたいと思います。
 さらに、工事の延期によるダム維持管理費四十六億円についても、遅延の責任はひとえに国にあるのですから、これも国の責任で負担すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、和歌山県の利水、毎秒〇・四五トンでありますが、県営水道を持たない和歌山県が水利権を持ち続ける理由をお示しください。この利水権に係る和歌山県の負担額について企画部長からお答えをお願いします。
 最後に、今回の計画変更で大滝ダムの完成は二〇〇九年にと延ばされました。当初の計画では一九七七年完成でありました。実に三十二年、完成がおくれることになります。この陰で本当にたくさんの地域住民の恨みや嘆きがあることは想像にかたくありません。こうした事態に至った原因についてどのような見解をお持ちなのか、県土整備部長からお聞かせいただきたいと思います。
 二つ目の質問であります。雇用問題についてお尋ねをしたいと思います。
 今、雇用不安が本当に深刻であります。先日発表された完全失業率では若干の改善傾向を示したとのことでありますけれども、県の雇用悪化は深刻で、九七年から二〇〇二年までの五年間で完全失業者は一万二千人から三万人に二・五倍にもふえています。完全失業率は二・二%から五・八%に三・六ポイントも悪化いたしました。これらはいずれも全国で最悪の増加率となっているんではないのでしょうか。
 大企業が正社員の採用を抑える中、和歌山県内でも雇用者全体の中で正社員の割合は九七年の約七〇%が二〇〇二年には六五%に低下し、同じ時期に正社員は三万一千人減少し、パート・アルバイト社員は八千六百人増加しています。特に二十五歳未満の青年の就職難は深刻で、青年の八人に一人が失業している状態にあります。
 和歌山県地方労働組合評議会の労働相談センターには、解雇や賃金未払いなどの相談が二〇〇三年には二百二十三件もありました。二〇〇二年に比べて三割もふえたことになります。和歌山労働局への労働相談では二〇〇二年下半期は二千五百六十二件で、前期比二・七倍にもふえています。
 私は先日、数人の青年から就職に苦労している実態と職場の現状などを聞くことができました。その一部の事例を紹介し、雇用への積極的な支援策を求めたいと思います。
 二十七歳のAさんです。芸術大学卒業後、印刷会社でデザインの仕事をする正社員でしたが、合理化のために会社が一方的に友人を解雇しました。会社のやり方についていけずにAさんは退職をしたそうです。その後、運よく額縁販売を営む店舗に仕事が見つかりました。そして、アルバイトとして今は勤務しています。Aさんは正職員になりたいと会社に頼んでみましたが、しかし、約半年たった今もアルバイトのままです。土、日、祝日も忙しく、定まった休みはありません。労働時間も毎日十時間以上で、自分の趣味など全くできる余地がありません。
 二十八歳のM君です。八年間勤務をしていた会社でありますけれども、社長から経営が苦しくなったということで突然、やめるかアルバイトになるか迫られたそうです。就職難のときであるということから、M君は仕方なくアルバイト職員にならざるを得ませんでした。仕事は変わらないのに賃金は手取りも大幅に減りました。その上、健康保険も国民健康保険に変わり、国民年金料も加わって自己負担は大幅にふえました。
 二十二歳のK君です。K君はハローワークで紹介された清掃会社で三年間アルバイトをしました。朝八時から翌朝四時まで働くこともありました。そして、一日あけて朝七時から勤務という状態が続きました。勤務予定が直前に知らされることから、全く計画が立ちませんでした。給与が振り込まれていないときもあり、抗議してようやく振り込まれる事態もありました。勤務時間も余りにむちゃくちゃなので、K君は肉体的にも精神的にも耐え切れなくなり、その会社をやめてしまいました。
 その後、ハローワークの紹介で四回ほど面接を受けましたが、四回とも採用されませんでした。今の会社もハローワークの紹介で就職をいたしました。求人広告では朝八時十五分から午後六時までの勤務、土、日、祝日は休みとなっていました。それが現実的には全く守られませんでした。試用期間も三カ月でありながら、これも守られませんでした。K君は疲労が募り、精神的にノイローゼぎみになっていき、親も友人たちも心配するほど顔色も悪くなって、とうとうこの二月いっぱいで会社をやめてしまいました。K君は、この期間の職場の現状を「まるで奴隷のようだった。求人広告に書いていることを本当に守ってほしい」と、怒りを抑えられない気持ちを語ってくれました。
 ほかの青年から、ハローワークの開設時間をせめて夜八時まで延長することや、土、日、祝日も開設をしてほしいなどとの要望も聞かれました。多くの青年が厳しい就職難にあります。不安定なアルバイト、フリーターの雇用と長時間労働、安い賃金です。その上、労働基準法も無視した状況がまかり通っています。こうした現状が若い青年たちの働く意欲を、将来への希望を阻害していることにしっかりと私たちは目を向ける必要があるのではないでしょうか。
 ところが、高校生の就職率が和歌山県は他の県に比べて悪いという状況です。全国平均と比べても、県内への就職を希望する生徒が少なくなっていると聞きます。初めから県外しか就職できないからと、県外を希望することになっていると思うのです。高校新卒の県内就職をふやすために、鳥取県では県職員の給与カット分を中・高生卒などを雇用した企業に助成をしていると聞きます。鳥取県は、二〇〇一年度から中小企業を支援する独自の助成制度をつくり、雇用の創出を積極的に進めています。とりわけ今、中・高・大学新卒の就職が厳しく、就職後の離職率も高い状況にあることから取り組まれたと聞いております。
 その制度は、中小企業等雇用創出支援奨励金と新規・成長分野雇用創出奨励金の二つがあり、中学、高校の新規卒業生や十五歳以上から四十五歳未満で事業主の都合による離職者、解雇された人を雇い入れた事業主に対し、一人につき三十万円または七十万円を助成しているものです。研修にも支払う場合もあるそうです。二〇〇二年での実施状況を見てみますと、中小企業等雇用創出支援事業で一人三十万円が五百七十三人、これは三百六十件です。新規・成長分野雇用創出事業で一人七十万円が百三十二人に交付されています。二〇〇三年度では、ことしの二月まで既に九百六十八人の雇用を生み出しているそうです。さらに鳥取県は、二〇〇三年度から二〇〇六年度の四年間で一万人の雇用創出計画を策定して取り組みが進んでいると言われています。
 和歌山県の県職員などの給与カットは二〇〇一年から始まりました。来年度分の十二億円も合わせて四十億円に達することになります。一般財源分だけでも三十三億円が職員給与のカットで生まれています。県は十五年度補正予算で、職員の給与カットなどで余ったお金から二十億円の繰り上げ償還や基金への積み立てを行っています。そして、来年度の予算に高卒者を三人以上新規雇用する場合などに融資する雇用創造対策資金がつくられることになっていますが、この融資枠はわずかに十億円にすぎません。
 そこで、県職員などの給与カット分を高校生などの雇用拡大にぜひ活用していただきたいと思うものです。同時に、雇用創出計画を策定されることを願うものでありますが、知事、いかがでしょうか。
 先ほども述べましたように、ハローワークの開設日を土、日、祝日にも広げ、平日の開設時間の延長についても国にぜひ求めていただきたいと思うところです。そして、県独自でも相談窓口や無料職業紹介所をぜひ開設していただきたいと考えるものですが、知事、いかがでしょう。
 次に、障害者の就業訓練についてお尋ねをいたします。
 この質問を行うに当たって、訓練手当支給事業の中に来年度から、障害を持っておられる方が県外で職業訓練を受ける際の負担金として七人分、一千百万円が初めて予算化されていることを予算書で見ました。これまで、和歌山県出身の障害者の方が大阪や兵庫県などの障害者職業訓練校で訓練を受けた際には、大阪や兵庫県が負担金を出してくれていたと聞いてびっくりしたところです。和歌山県内に障害者のための職業訓練校がないために、遠くの地へ行ってそうした学校などに入るしか方法がなく、その上に寄宿舎費や訓練の負担金を他府県から出してもらっていたと聞いて、これまでそうした事実を知らなかったことを私は恥じ入るしかありませんでしたが、実に情けないことだと思います。
 調べてみますと、障害者の職業能力開発のための学校は、国立、都道府県立含めて全国で十九校あります。近畿では、国立が大阪府の堺市と兵庫県の伊丹市に、京都府立の障害者高等技術専門学校が城陽市に、兵庫県立の障害者高等技術専門学院が神戸市西区にあることを知りました。和歌山県にもこうした障害者自立支援のための職業訓練学校の設置をぜひとも今必要だと考えるところですが、商工労働部長、どのようにお考えですか。見解をお示しください。
 また、現在の県の事業では不十分ながらも、障害者の就職相談事業や来年度からNPOと共同してジョブコーチを育成する障害者就業支援事業が始められることになっていますが、求職者職場適応訓練事業を多様な障害を持つ方がそれぞれの障害に応じて企業の中で職業訓練を積み、技術を習得し、社会で働けるように実効性のある事業に拡充していただきたいと考えるものです。そして、予算をもっとふやして企業もこの制度を利用しやすいように改善してほしいと考えますが、商工労働部長、答弁をお聞かせください。
 これで、第一回の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 大滝ダムの問題でございますが、白屋地区住民の皆様におかれては、今回の地すべりの発生により大変ご苦労されていると聞き及んでおります。心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 白屋地区住民の生活再建問題については、基本的には事業主体である国土交通省及び地元自治体である奈良県や川上村において対応すべき問題であると認識しておりますが、心の底から心配を申し上げているところでございます。
 国土交通省及び奈良県におきましては、白屋地区住民の移転問題を一日も早く解決するとともに、ダムの早期運用を図っていく意向であると聞いているところでございます。本県としても、治水・利水の効果の大きな大滝ダムの早期運用を求めていく立場に変わりはなく、また白屋地区住民の方々の一日も早い生活再建が図られるためにも、大滝ダム基本計画を早急に改定する必要があると判断しているところでございます。
 ご指摘のとおり、白屋地区においては、当時の建設省において専門家等による委員会での検討等も踏まえ地すべり対策工が実施されており、これは今回発生した地すべりに対しても一定の抑止効果を有しているというふうに聞いております。しかしながら、今回生じたような大規模な地すべりの発生を予見することは現在の技術力においても困難であると国土交通省が設置した検討委員会において結論づけられたところであるというふうに聞いております。
 今回の計画変更が五回目ということで、またこれで供用をおくらせるということになれば地区の人々の生活再建もおくれるということもございますので、そしてまた今回のことについては国土交通省も真剣な検討をした結果というふうに考えておりますので、私といたしましては断腸の思いで議案を提出したところでございますので、ご理解をいただきたいと、このように思います。
 次に雇用問題でございますが、長引く景気の低迷を受けて、若者を取り巻く雇用情勢は非常に深刻な状況にあります。このため、県としては新規学卒者等若年求職者の就業支援対策として、各種セミナーの開催やジョブカフェ・わかやまの開設などに努めております。また、雇用のミスマッチ解消のため、求職者の能力開発などの再就職支援対策や緊急雇用創出特別基金を活用した雇用のセーフティーネットの整備にも努めているところでございます。
 ご提言の賃金カット分の雇用対策への活用についてでございますが、昨今の厳しい財政状況を踏まえ、県におきましても平成十三年度から議会のご協力もいただきながら職員等の県単独給与カットを行っているところでございますが、ここで生み出された一般財源につきましては、雇用対策はもちろんのこと、県政の重点施策や地域に根差した発想や工夫を盛り込んだ新規事業など、各般の事業推進に活用しているところでございます。
 今後とも、和歌山労働局や教育界、産業界等、関係機関とも連携を図りながら、若者の職業意識の醸成、能力の向上等、就職への環境づくりに努め、若者の早期就職と職場定着を図ってまいりたいと考えております。
 次に、雇用創出につきましては県の重要な施策の柱であり、来年度の当初予算では景気対策本部において雇用の創出に重点を置いた雇用を生み出す産業対策、雇用のセーフティーネット対策、雇用への環境づくりの三つを柱に総額九十九億円の予算を取りまとめたところでございます。県内各地の地域特性に応じた企業誘致、高野・熊野世界遺産登録から生じる観光振興、福祉サービス分野等での雇用拡大、新事業創出や販路開拓支援を積極的に進めることによって各分野で雇用が生まれてくることから、複数年を念頭に置いた雇用創出計画の策定について検討をしてまいります。
 次に、ハローワークの開設時間の延長についてでございますが、ご要望の趣旨を改めて国に対して伝えてまいりたいと考えております。
 また、無料職業紹介の実施についてでございますが、先般の職業安定法の改正に伴い、地方公共団体が住民の福祉の増進、産業経済の発展等に資する施策を推進するに当たり、これらの業務に附帯する範囲で無料職業紹介事業を行うことができるようになりました。このため、本県におきましても、ハローワーク等と明確な役割の調整に努めながら、平成十六年度中に開始できるよう進めてまいる予定でございます。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 県の利水分を持ち続ける理由とこれまでの負担額についてでございますが、県が大滝ダムに設定を予定しているダム使用権につきましては、流域の市町村における水需要の増大に備えて確保したものでございます。
 当初のダム使用権毎秒一・四五トンが、昭和五十二年度の第一回基本計画変更時に橋本市の水道拡張事業に対応して毎秒一トンを橋本市へ変更した結果、現在、毎秒〇・四五トンとなっております。
 水資源は県民の生活に欠かせないもので、その確保は一朝一夕にできるものではなく、長期的視点に立って考え合わせると、今後も県として毎秒〇・四五トンのダム使用権を将来に向けて確保することは意義のあることと考えております。
 なお、これまでに負担しました建設負担金は約四十二億円でございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) ダム工事が三十二年間もおくれている理由につきましては、国土交通省から、地すべり地が多いなど地質条件が非常に悪く、つけかえ道路を初めダム本体工事も困難をきわめたため長期間の工期を要した、水没地域内の移転対象家屋が約五百戸と多く、その方々との用地交渉、移転問題などの生活再建対策に多くの時間を要したとの説明を受けているところでございます。
 当県といたしましては、工期の長期化はコストの増加を招く要因であることから、一日も早い地すべり対策工の完了を求めていく所存でございます。また、ダムの治水・利水の効果は大きなものであることから、一日も早い運用開始による効果の早期発現を望んでいるところでございます。
 このため、繰り返しになりますが、今回の基本計画の改定には基本的に同意するものの、事業費の縮減と効果の早期発現に対する最大限の努力、並びに適時適切な情報提供を求める意見を付すこととした上で議案第七十九号を提出しているものでございます。
 何とぞ、よろしくお願い申し上げます。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 雇用問題の二点についてお答え申し上げます。
 まず、障害者職場適応訓練校の設置についてでありますが、県は障害者の皆さんに対する職業訓練の必要性を十分認識し、これまでも各高等技術専門校におきまして訓練可能な障害者の方々の受け入れを図ってきたところでございます。
 しかしながら、障害者のための職業能力開発施設の新設につきましては、訓練科目等のニーズの把握を初め、病院等の関係機関と連携が図れるところでの用地確保や施設の建設費等、課題が多く困難な状況でございますが、障害者の方々の要望を踏まえ、高等技術専門校等における施設をより有効に活用し、訓練が実施できるよう検討しているところでございます。
 次に、求職者職場適応訓練事業の拡充についてでございますが、求職者職場適応訓練につきましては、就職困難者を対象に事業所において業務に係る作業についての訓練を行うことにより作業環境に適応していただき、訓練終了後は当該事業所に雇用させることを目的としてございます。
 しかしながら、訓練期間が原則六カ月と長期なこと、事業主にとっても常用雇用への移行が原則となっていることなどから利用者が減少しているのが現状であります。一方で、平成十二年度から国においてトライアル雇用事業が開始され、期間が三カ月と短期なこと、運用が柔軟であることなどから活用企業も増加し、障害者の方にとっての定職への移行、事業主にとっての人材の採用に効果を発揮しているところであります。また、平成十六年度より新たに障害者就業支援事業も実施することにしているところであります。
 いずれにいたしましても、障害者の方の雇用促進を図る上でこれらの事業の果たす役割は非常に大きいことから、今後とも和歌山労働局やハローワーク等関係機関との連携に努めながら、事業の周知、啓発、採用企業の拡大など、制度の有効活用を図ってまいりたいと考えてございます。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十四番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 ご答弁をいただきました。
 まず雇用問題の中で、具体的に今でもいろんな形で進めてはいらっしゃいますけれども、しかし、それがまだまだ効果的に上がるというような状況には至ってないというふうに思いますけれども、しかし、何せ今は中・高・大卒の新規卒業生の就職が非常に困難だということで、もう働く意欲さえも失ってる若者たちもたくさんいるわけですね。そういう人たち──そして就職しても、現実的な職場の実態っていうのは、ハローワークに示された求人広告とは全く違うということが現実的にあるわけですね。安い労賃で長時間労働を強いるということが、これはあってはならないというふうに思います。
 そういう点でも、ぜひとも積極的にハローワークに対する意見、それから県が直接かかわっていく今度の雇用計画に基づく無料紹介所の問題とか、そういった点でもそういう労働条件、求人広告そのものをやっぱりきちんと守るということを中心に雇用拡大への道を進んでいただきたいというふうにお願いをしておきます。
 そして、とりわけ障害者の問題ですけれども、これ和歌山県は、五十六人以上の従業員がいるところで法定の二%ですか、それを雇うようにということで見れば障害者の雇用率は高いというふうになっていますけれども、しかし、なかなか長続きはしないという状況が往々にしてあるというふうに思いますが、それはやはり就職する以前の職業訓練がどれだけ大きくされたかということが大事だというふうに思うんです。これ、他府県に今まで依頼をしていたということの行政のあり方としては非常に恥ずかしいことだと思うんですね。
 そういう点でも、学校は難しいというふうになっておりますけれども、しかし、高等技術専門学校を三校も持ってるわけですから、そういうところでの活用というものをもっと検討すべきではないかというふうに思います。そういう点で、それらについては有効に活用していきたいというふうに答弁をされたわけですけれども、もう一回、これは具体的にいつの時点で学校の活用をされようと考えているのか、もう一度その方向性をちょっと明らかにしていただきたいというふうに思います。そういう点で、ぜひとも具体的な計画とあわせて具体的な取り組みを積極的にこれからも進めていただきたいというふうなことは要望としておきたいと思います。
 それから、雇用の中で事業としてあるトライアル雇用事業というのがことしから始まる──既に始まっているわけですけれども、これは非常に、三カ月間のお試し期間ですね。その後、事業者とそのお試しをした労働者が連携を、理解し合いながら雇用へ結びつけていくという事業で、随分と──三カ月間でその労働者をお試しとして採用した場合には、月額五万円を国が助成をすると、こういうふうになっているわけですね。ここらは、非常にこれが随分と利用者が多いというふうになっているところですが、現在まで行われてきました求職者職場適応訓練事業の実施が、実績そのものが随分と減少しているという状況にあるというふうに思います。これは、事業主の方が受け入れるのに使いにくい制度ではないのかというふうに思います。
 これは、六カ月間の訓練をして、それを雇うということが前提条件になっているわけですよね。そうしますと、実際に訓練は受けるということ自体の方が、労働者の方も雇用者側も期間が長いという問題がそこにあるんじゃないかと思うんです。トライアル事業というのと比べましてもね。だから、必ず採用しなければならないというような前提条件の上で事が進められますので。しかもそれは、トライアルは一人につき月額五万円ですけども、これは労働者一人につき月二万四千円ですね。一日の場合だったら九百六十円。障害者の場合は二万五千円ということになってますが、ここらの問題をもっと、このトライアル事業との関連で使いやすい方法に検討すべきではないかというふうに思うわけですが、国の制度でありますから、これはぜひとも国との、積極的に進めるという立場から、ぜひ国ともう少しこの中身が活用できる方法で制度改正も含めて要請をしていただきたいなというふうに思います。
 それから、大滝ダムの問題ですけれども、知事が非常にご苦労されて結論を出したんだと。「断腸の思いで」というふうに、この計画そのもの、基本計画変更について同意せざるを得ないというご答弁だったというふうに思うんですけども。
 しかし、これは、もう歴然としているのは、国のこの工事、地すべり対策に対する非常に軽い気持ちっていうのかな。真剣にやったんだと思いますけれども、しかし、予測できなかったという問題では私はないと思うんです。経過をたどって見てみましても、これはもう当初から地すべり地帯であって非常に危険だと。それなりの対策をとらなければいけないというのは、これはもう奈良県の地質調査委員会あるいは住民の皆さんたちがあえてこの白屋地区の地すべりについての地質調査を依頼した専門家の皆さんたちの結果から見ても、深いところで地すべりがあるというようなことがちゃんと主張されている。国会答弁の中でも「対策はちゃんととります」と言っておきながらこのような事態が起こったということ自体に、私は国の地質調査検討委員会の予測の甘さがあったというふうに思うんです。
 そういう点では、ぜひとも、だんだんおくれていく事業でありますけれども、私たち日本共産党はこうした点でも本当に──起こった原因そのものの予測そのものが甘かったという点は認めているわけですよね、国も国会の答弁の中で。だから、しっかりやりますと言うけれども、しかし、第四回の基本計画見直しのときにも同じ答弁をしてるんですね。それをやったはずなのに今の事態が起こったということは、非常に私は問題だと思うんです。あえてまた新たに負担を強いられると。それは地方自治体、奈良県や和歌山県、和歌山市、橋本市に新たな負担が強いられるということについて、やはり国が大きな責任を持たなくちゃいけない。負担をあえて求めてくるということについて、私はやっぱり毅然として物を言うべきことだと思うんです。
 そういう点で、知事が「断腸の思い」とおっしゃいますけれども、住民の皆さん方に対する言葉が今ありました。しかし、知事、現地へ行ってみえられましたか。住民の皆さん方のところに、仮屋住まいされているところへおいでになりましたか。恐らくきのうも大雪で、本当に大変だったと思うんですね。お年寄りの皆さんたちが日々この寒さの中で耐えなけりゃならないという事態で本当に──今、国との関係で責任を持つべきだというふうにおっしゃいましたけれども、しかしやっぱりこれは地方自治体に責任を負わせるのではなくて、国の直轄事業なんですから、これはやはり国が責任を持ってこの誤りをちゃんと財政的にも責任を持つということだと思うんです。このことなくして、これからどんなことが起こるかわからないという──これも四回目で終わりだって明言してきたでしょう。県も「そう言っております」と言っていますから。だから、議会の方も水資源特別委員会というのを解消したわけですよね。
 そういう点の経過から見ても、先に住民や専門家がもう既に地すべりは深いところでも起こるというのを予知していたのに、その半分の深さしかくいを打ってない、対策を打ってないという、そこに大きな問題があるということを指摘して、ぜひ国にこういった経過の問題をあえて県は指摘すべきじゃないですか。そして、負担を本当に国が責任を持つということ。そうではなかったとしても、もっと負担を軽減させるということが今やっぱり私は必要だと思うんです。
 そういう点で、知事、もう一回、こうした点で経過を振り返ってみても国の責任の重大性、そして私たちへ新たな負担を押しつけるということについてはやめるべきだということを主張されたらどうですか。そこのところをお聞かせください。
○議長(尾崎要二君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 大滝ダムの直轄事業の負担金の話ですけども、これは今の制度で──私自身は直轄事業については国が責任持ってやるべき事業だというふうに考えていて、今後、将来的に地方自治を確立していく上からは直轄事業の負担金は、維持費についても最初の建設費についてもなくしていくべきだという考えを持っております。
 ただ、今の制度では直轄事業負担金というものがあって、そしてしかもこのダムについてはもう非常に最後の五回目の計画変更については、これはもう世間的にも非常に大きな注目を集めた中で国土交通省としてもこれは本当に予測不可能であったということを十分県に対しても説明に来ておりますし、そういう過程の中で今回、大きな制度の今後の姿としてはやめていくべきだろうと思うけども、今回のものについてはこれは今制度に乗っかっているわけだから応分の負担をしていこうというふうなことで決断をしたということでございますので、ご理解いただきたいと、このようなことでございます。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 障害者訓練の高等技術専門校を利用した訓練についてでございますが、先ほども答弁をさしていただきましたように、この件につきましては既に検討を始めているところでございます。ただ、ニーズの問題、またスペースの問題等々、検討する余地がございますので、私どもといたしましてはできるだけ早いうちに開設できるように努力をしてまいりたいと、このように考えてございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 所定の時間六十分が過ぎておりますが、再々質問をされますか。
  〔「はい、一言」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 再々質問を許します。簡潔に願います。
 四十四番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 予測不可能であったというのは、これはもう行政側のこれまでのごく常識な答弁なんですね。だから、私たちは予測不可能ではなかったというふうに思っていますから、これは負担すべきではないというふうなことを主張して、終わります。
○議長(尾崎要二君) 以上で、村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十七分休憩
     ─────────────────────
  午後一時二分再開
○議長(尾崎要二君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 一番須川倍行君。
  〔須川倍行君、登壇〕(拍手)
○須川倍行君 議長のお許しをいただきましたので、通告どおり一般質問をさしていただきます。
 最初に、商店街活性化の即効性のある特効策についてです。
 和歌山県は消費の県であります。小売業者が大変多い。したがって、人口が減っていけばいくほど購買力がなくなる。だから、県外からの交流人口をふやさなければいけない。
 現在の県内の商業環境は、衰退の一路をたどっています。その原因はたくさんあると思いますけども、例えば、郊外型の大型店の進出、商店街の適切な駐車場整備がなされていない、空き店舗・非店舗が存在し連続性に欠けているなど、いろいろあると思うんですけど、私自身はこれの原因の多くを占める部分の一つに通信販売、それからインターネット販売、テレビショッピング、こういったものの隆盛によって消費者が直接メーカーから安くてよいものを家にいながら楽しみながら見て物が買える時代の全盛期を迎えたと、いわゆる代理店や小売店は消費者サイドで見ると不必要になってきたからなんだと思うんです。だから、全国的にどこでも今は同じ現象のはずです。
 この年間の売上高なんですけども、通信販売は二兆五千億円ぐらいあるんです。それから、インターネットに至っては数字が把握できないぐらい流通しているんです。しかもこれは、毎年ずっと上昇の線を描いているといった状況です。そしてこれは、今後、在宅医療とか在宅教育の時代に突入して町の開業医とか塾にも影響が出始めてくるんです。さらに、長引く経済不況の中、個人消費の低迷という悪循環も生んでいます。だからといって、このままほうっておくわけにもいきません。もちろん、これまでにもさまざまな商店街活性化対策を講じてきたと思いますが、起死回生の切り札とはなり得ていないのが現状であります。
 そこで私は、県の財政を最小限にして、しかも多大の効果を出すために、和歌山県独自の共通商品券をつくって、各市町村単位の商品券や地域通貨とタイアップして県の行事や催し物、あるいはイベントとか記念式典や表彰、そういったもので用意されている景品や記念品、贈り物などを可能な限り県の共通商品券に変えることを一つ。そして、各種委員会や審議会、協議会など非常勤の方の報酬、これも一回一万円程度以下の報酬でしたら、これも可能な限り共通商品券に置きかえていただくことを提案いたします。
 共通商品券の大きなメリットは、一つ、通信販売やインターネットはもちろんのこと、大型店舗では使用できないため、商店街における経済活性化に大きな活力を与える、一つ、従来の記念品や景品ではもらう方もダブったり不要のものもあるなど、せっかくの贈り物もむだになったり苦情にもつながりかねません、一つ、共通商品券なら、もらう方も金券でありますから、たとえ五百円一枚でもいつでも自分の都合のよいときに好みの店に必要な物を買いに行ける、一つ、商品券が数多く県内に出回ることによって各商店に獲得戦略を練るといったような企業努力が芽生える、などであります。
 そして、県がこれを実行することによって当然市町村も同調、協力していただけるでしょうし、また、あるいは県内の観光所や民間の事業所に出向いてこの趣旨を十分に説明してご理解とご協力をいただいて、全県挙げて不況にあえぐ商店街に活気を取り戻すように力を尽くせば大きなうねりが起こるものと信じてやまないのです。そして、これはずっと続けることで大きな力になります。継続は力なりであります。うちもうちもと商品券の利用できる加盟店に参加する店舗もふえて活気がよみがえってくると思いますが、この私の提言に対する知事の見解をお尋ねいたします。
 次に、捕鯨再開と紀州人の食文化について質問させていただきます。
 現在、日本は南氷洋等における商業捕鯨は全面禁止されております。現在認められているのは、北西太平洋での調査捕鯨で二百六十頭と南極海での約四百頭ほどなんです。これは、アメリカのごくわずかな青年の運動がきっかけとなって、現在はグリーンピースを初めとする環境保護団体が主となって大変非難されているんです。いわゆるジャパンバッシングでありまして、鯨の次はマグロにくるんですよね。ですから、商業捕鯨再開というか、この捕鯨を守るということは、紀南地域はもちろんのこと、日本の水産業界全体を守るということなんです。当然、この和歌山県にとりましては、鯨はもちろんマグロも大事な子孫へ伝えていかなければいけない紀州人の食文化であります。
 太地町は、この問題について長年取り組んでまいりました。聞くところによりますと、ヨーロッパ諸国で行われたときのIWC──国際捕鯨委員会ですが──の総会でも、町を挙げて総会の方に出向いて、何とか世界の人々にこの食文化を守っていくという思いを訴えようと赴いたときには、その環境団体を初めとする方々にペンキとか投げつけられたそうです。そういった非常に残念な思いをして帰ってきたそうです。
 今、この鯨、特にミンククジラは物すごくふえてきているんです。それが現状の水体系を非常に壊しているんです。最近の捕獲調査では鯨が大量の魚類を捕食していることが判明して、沿岸漁業にも大きな被害を与えているということなんです。今、日本は調査捕鯨でミンククジラは約五百五十頭ほどしかとっていませんが、科学的な調査をもとにすると南極海だけでも年間二千頭は捕獲が可能だという調査結果も出ております。
 平成十四年に国際捕鯨委員会(IWC)の総会が日本の下関で開催されたとき、太地町はこの総会に向けて捕鯨再開を強く訴えることにして、我が県議会に対して捕鯨の早期再開に関する請願書を提出している経緯もございます。現在の和歌山県としてのこの問題に対する対応はどうなっているのか、あわせて私たちの子孫に伝えていく紀州人の食文化を守っていく、また日本の水産業界を守っていくという観点からこの問題に対する考えはどのような見解をお持ちなのか、お尋ねいたします。
 三番目は、伝統文化の保存と継承についてでございます。
 新宮市で毎年二月六日に行われている日本三大火祭りの一つ・お燈まつり、テレビでもよく紹介されますのでご存じの方もいらっしゃると思います。私も毎年参加していますが、毎年たくさんの上り子が地元はもちろん全国から参加されています。男性でしたらどなたでも参加することができますので、機会がありましたら皆さんもぜひ一度体験していただきたいと思います。
 このお祭りですが、五百三十八段の石段を火のついたたいまつを持って駆けおりる千四百年という長い歴史の中で培われてきた伝統ある神事のお祭りです。他地域のお祭りなどと比べれば参加者も多く、行事そのものは継承されていますが、このお燈まつりのたいまつをつくっている職人の方の後継者がいないんです。新宮市に限らず、和歌山県のお祭りや伝統行事の後継者と行事などに必要な道具類の製作に携わっていらっしゃる双方の方が今どこでも不足していたり、あるいは後継者問題に悩んでいるのではないでしょうか。和歌山県の伝統文化を守っていく上で県においても積極的に保存・継承に取り組む必要があると思いますが、いかがでしょうか。これは教育長にお尋ねいたします。
 四番目は、神宿る清流・熊野川に桜前線を、そして紅葉前線をというテーマで質問させていただきます。
 長い冬が去り、やがて若葉も揺れる春が訪れようとしているこの時期に、桜前線や紅葉前線のわかる川のほとり計画を官民挙げて練り上げ完成してはどうかと、私はそのモデル地域として三県にまたがる熊野川を思いつきました。
 皆様ご存じの悠久の歴史を語る熊野川は、今も太古の昔より神々しいほどの美しさと尽きせぬ水量を擁し、流域住民の生活を支え、夢をはぐくんでおります。まさしく神宿る聖なる熊野川であります。ある人は、日本の美しき青きドナウだとも表現しています。そして、何と近畿第一の長流でもあります。実に年間五十億トンという命の水を太平洋に注いでいます。
 私は、春の風物詩とも言える桜前線計画をこの熊野川に取り入れたらと思うのであります。当然、この計画の実行には河川管理者の国、県の絶大なるお力とご指導が欠くことができません。かつ、この趣旨に賛同する県民や全国の桜ファンの方、また熊野がこよなく好きな方々たちに呼びかけ、夢づくりに取り組んでいければと思います。折しも、ことしは高野・熊野が世界遺産に登録されるという最高の慶事に浴する年でもあります。
 桜前線計画を具体的に申しますと、桜前線が一目でわかるように位置を選定し、それにあわせて日本全国から桜を集め、植える。全国の桜が熊野川河口からさかのぼっていく桜プロムナードもできる。上流の北山川、十津川に向かって川の沿線に桜前線が進む。そのために県が主導で桜前線調査研究チームのようなものを立ち上げ、桜に夢託した事業が展開されるといったようなものであります。つまり、熊野川を日本の桜前線の地図となるようにしてはどうかということです。三重、奈良県とのつながりも深いのですから、各県の知事に相談なり提案されてはいかがでしょうか。河川環境の再認識にもつながりますし、協力が得られやすいのではないでしょうか。
 昨今の経済不況や混沌とした世の中にこうしたソフト面の事業展開がなされるならば、熊野川に映える華麗なる桜の姿が人々に安らぎといやしをもたらすものと考えます。植物の季節による変化をあらわしたものが桜前線ですが、これ以外にも紅葉前線があります。もし桜前線事業を展開するならば、ぜひこの紅葉前線も加えてほしいと思います。川を使っての前線事業なんて、どこにもありません。何とかこの夢をかなえてほしいものです。
 もしこの事業が完成したら、次のようなイベントとか経済投資による効果が予想されます。都会の喧騒から離れ、一時を熊野でいやしていただく。かつて熊野川が熊野もうでの川の道だったことからも、屋形船で悠々と川を下るというみやびで華やかな現代版の熊野もうでが再現できると思います。川の両岸に桜の並木があるようになると、例えば鎌倉・平安時代に使われていた川舟を復元して北山、本宮あたりから新宮まで観光ツアーを組んでお客を乗せることもできるし、川でのなりわいの方も盛んになるでしょう。四季に応じた食事も出せるし、その地域独自の旬の食べ物と桜見物、味わい深い景色、旅の疲れをいやす温泉地、山海の珍味に舌打ちし、あすへの英気を養う。また、親子連れでの桜や紅葉の観察旅行、あるいは学校での桜についての歴史や文化などを共同して調査研究し、その成果を発表させる野外授業など、企画次第では無限の楽しさが演出できます。
 また、観光士の活躍のチャンスもあります。そして、桜前線気象台や紅葉前線気象台を設置し、民間公募し嘱託で運営させる。さらに、桜気象士や紅葉気象士といったユニークな資格をつくってリアルタイムな情報発信をさせることも可能ではないでしょうか。また、十津川、北山川を経て形成される熊野川を大きな地図にして、各地点での桜や紅葉の定点観測を行いインターネット上のマップに掲載する。そうしたホームページもつくれば、全国に観測地点のご案内ができる。花の見ごろも瞬時にご案内が可能です。
 思いつくまま挙げてみましたが、ほかにもたくさんのアイデアが考えられるのではないでしょうか。どうでしょう、これは知事にお尋ねいたします。
 最後に、新宮市立医療センターに県の助成をという項目で質問させていただきます。
 新宮医療圏の基幹病院である新宮市立医療センターは、平成十三年五月に新築移転し、間もなく三年になろうとしています。心配されていた外来・入院患者の利用は盛況をきわめています。入院の利用率は開院以来上昇を続け、実に九五%に達するという状況です。しかし、これほど高い利用率を占めているにもかかわらず、平成十四年度の決算状況は、初期投資が大きいために収支が六億円ほどマイナスという結果になっています。この費用の中で、金銭支出は伴わないが費用として計上しなければならない病院施設や医療機器などの減価償却費の割合が高く、経営を圧迫する形となっています。これは企業会計制度上やむを得ないわけでありますが、一方、医業収益は前年度よりも九億円余りアップしています。つまり、患者を優しく受け入れ、的確な医療を施すというごく当たり前のことですが、常日ごろから病院の基本理念である「私たちはすべての患者様の安全と権利を守り、良質な医療環境のもとに安心して適切な医療が受けられる病院を目指します」、これを忘れず経営努力を続けてきたたまものではないかと思います。市民の間では、あんなにはやっているいい病院なのに赤字なんてどういうわけだろうと、不思議がられています。
 さて、振り返ってみますと、今、新宮市立医療センターという名称に変わっておりますが、旧市民病院は昭和二十二年四月一日に開設されました。その後、ふえ続ける地域の医療ニーズにこたえ、施設の充実強化、医療スタッフの増員を図るとともに、診療機能や看護水準の向上を目指してきたところであります。時代の経過とともに老朽化と手狭になったことと、平成七年の阪神・淡路大震災の教訓から、移転・新築となったわけであります。
 現在の医療センターは、非常に療養環境のすぐれた場所にあります。敷地三万平米、この用地はすべて和歌山県土地開発公社所有地でありました。当時、県の温かい理解とご指導をいただき、適正な価格で取得したわけであります。広大な敷地にゆったりと近代的な総合病院として鮮やかに生まれ変わったのであります。一般病床三百床、鉄筋コンクリート六階建て、地下一階、延べ約二万平米であります。そして、五百台の駐車スペースもでき、県外の患者にも大変喜ばれております。
 ともあれ、近年の医療技術の進歩は目をみはるものがあります。これまで先進的な特殊治療であった手術などでも、現在は一般的な治療技術ということになっています。また、不採算性のものであっても、自治体病院としては住民のために無理をしてでも高度医療に対応するための選択をとらざるを得ないため、可能な限り医療機器を整備したり専門化した診療科、専門外来を設置することにより病院全体の高機能化を図るとともに、救急医療の充実、新宮医療圏における災害拠点病院としての整備、そして何よりも患者さんにとって少しでも過ごしやすい環境を整えることをいつも考えているようです。このことは、昭和二十二年に開設以来、新宮周辺の住民の要請にもこたえ、あらゆる努力を重ねながら新宮医療圏の基幹病院としての使命を果たしてきていますが、何といっても人口三万余りの弱小自治体では、だれの目から見てもいささか無理なところもあるのではないでしょうか。
 今や、超高齢化社会となりつつある現況ではありますが、真に心豊かで健康長寿の喜びが県民ひとしく享受でき、紀南地方の中核医療機関としてより信頼できる医療への期待は日増しに高まってきております。県の南部地方、とりわけ山間僻地の多い地理的条件にあっても、辺境の地の医療需要にこたえんとする姿勢は崩してございません。
 とは申せ、広域的な県民医療充実の観点から、医療センターの財政状況にも心いたし、この際、県としても大胆な対応策を樹立する必要性があろうかと思います。つまり、広域県民の命の重要性にかんがみ、二十四時間対応の救急医療を行う能力のある県立の救急医療センターを医療センターに併設していく必要、これもあるのではないかと思うのであります。
 また、現在、紀北には県立病院の分院があります。人口規模にもよるでしょうが、人命は人口の多い・少ないによって格差がつけられるものではありません。県の財政逼迫の折ではありますが、一度県民医療の観点から、そしてこれまで半世紀以上にわたって紀南におけるポジションをかたくなに守備してきている医療センターが県民医療の一翼を担うという理想を貫徹してきて多大の貢献をしてきた現新宮医療センターを、県民である新宮市民の頑張りを多としてその労に報いる意味からも、温かい県政の光を当てるに値すると思いますが、どうでしょうか。
 医療センターを県立紀南分院に移管できれば申し分ございませんが、現実、厳しい問題が多くございましょう。しかしながら、ただいま医療センターに対する県からの助成金は、平成十四年度は五百万円、平成十五年度に至ってはゼロであります。県としての医療政策のバランスを世に示す意味からも県政としての大義、威力を発揮してほしいと考えますが、いかがでしょうか。答弁をお願いいたします。
 以上で、私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの須川倍行君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 県では、商店街振興対策として地元自治体や県中小企業振興公社と協調しながら、商店街振興組合などが行うアーケード等の集客施設整備やイベント等のソフト事業に対し支援を行ってきておりますが、現状は非常に厳しい状況にあるという認識を持っております。
 このため、平成十五年度から個々のやる気のある小売商業者に対し、商業者ニーズに対応した店づくり等のアドバイスを行う小売商業コンサルティング特別対策事業を開始し、予定を上回る百八十一店舗の派遣希望があり、大変好評を得ているところでございます。また、平成十六年度にはあきんどインキュベータ事業を創設し、新たに小売商業に乗り出そうとされる方々に商売のノウハウを身につけていただく場を提供するなど、一歩踏み出した施策を展開することとしております。
 今後もより効果的な施策を実施してまいりたいと考えておりますので、ご提言のような従来の枠組みにとらわれない新たな考え方も十分参考にしながら施策展開を図っていきたいと思っているところでございます。
 それから、熊野川に桜前線やもみじ前線を整備し、地域活性化に向けての事業を展開しようという大変夢のあるご提言でございますが、世界遺産登録予定資産にもなっている熊野川沿いは、現在においても四季の自然を楽しめる絶好のポイントであり、地形的な制約、河川管理、道路管理上の問題などありますが、今後、桜前線、もみじ前線の整備が進むこととなれば、春秋の季節の彩りが増し、地域の魅力がさらに高まり、熊野川を活用しての新たな地域振興の可能性が広がるものと考えております。
 三重県、奈良県との連携も必要となってまいりますが、地域主導のこのような夢のあるプロジェクトの実現に向け、県としても地域の皆様方の取り組みに積極的に参加してまいりたいと、このように考えております。
○議長(尾崎要二君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 捕鯨再開と紀州人の食文化についてでございますが、東牟婁郡太地町は我が国の古式捕鯨発祥の地として四百年にわたる捕鯨の歴史があり、捕鯨の町ならではの個性豊かな食文化、鯨文化が形成されています。現在、捕鯨に反対する国々もございますが、食べ物は各地域の歴史と伝統に裏打ちされた地域特有の民族文化であり、一定の条件のもとで保護されるべきものであると考えております。
 県といたしましても、こういった紀南地域に根づく鯨文化を守るため、平成十四年二月定例会におきまして捕鯨の早期再開に関する意見書を採択していただくなど県議会並びに議員各位のお力沿えをいただきながら、国及び関係県との協力のもと、地域伝統捕鯨としての沿岸捕鯨を含む商業捕鯨の再開に向けた取り組みを行ってまいりました。また、水産試験場による小型鯨類の資源量調査を初め、昨年五月には捕鯨関係四県の共催による第二回地域社会と捕鯨に関する全国自治体サミットを開催し、鯨の多面的利用への正しい理解や鯨資源の持続的利用などを訴えたサミット宣言を発表するとともに、IWC総会の場においても本宣言に関するプレゼンテーションを行うなど、捕鯨に関する文化、伝統を各地域、自治体の声として広く内外にアピールしたところでございます。
 今後も、今日まで脈々と受け継がれてきたこの鯨文化を確実に次代へと引き継いでいくために、国の動向に注視し、関係県との連携を図りながら、科学的調査結果に基づいた鯨資源の持続的利用、捕鯨の早期再開を訴えてまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) 新宮市立医療センターについてお答えいたします。
 新宮医療圏域につきましては、ドクターヘリの導入により救急医療等で相当な成果を上げてまいりましたが、僻地医療や小児医療の対応など、課題を抱えております。
 議員ご指摘のとおり、新宮市立医療センターは新宮医療圏の高度な診療機能を有する基幹病院としてこれらの課題に取り組んでいただいているほか、民間の医療機関では対応できない不採算医療を確保するなど、大きな役割を果たされております。県もこれまで新宮市になぎ看護学院を開設し新宮医療圏域の看護師や医療従事者の確保を図るなど、当センターを中心とした広域的な取り組みを支援してまいりましたが、今後も自治体病院の機能向上と経営の安定を図るため、高度医療機器の設備や地方交付税の拡充強化等を国に対し働きかけてまいりたいと考えております。
 また、議員ご提言の当センターのあり方につきましては、振興局を中心に管内の市町村や公立病院、医療関係者等で当地域の医療に関する課題や対応、将来のあり方等とあわせて総合的に検討してまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 伝統文化の保存と継承についてお答えします。
 本県の無形民俗文化財は、国指定、県指定合わせて七十四件あり、全国では第四位という多くの民俗芸能や祭礼などの行事が残されております。このため、昭和五十年に和歌山県民俗芸能保存協会を設立して保存団体の育成に取り組むとともに、約四十年にわたって民俗芸能大会を開催するなど、その普及と啓発に努めているところです。
 しかしながら、近年、伝統文化を受け継ぐ者や用具類を製作する技術者が少なくなりつつあることは議員ご指摘のとおりであります。このような状況を踏まえ、県教育委員会では新宮市の熊野速玉祭に使用する早船の製作や古座町、古座川町にまたがる河内祭の御舟行事などに対し助成や指導を行うとともに、映像記録の作成や技術者の顕彰を行ってきております。
 今後とも市町村教育委員会や保存団体とより一層連携を密にし、伝統文化とそれを支える技術の保存・継承に努めてまいる所存であります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、須川倍行君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時三十五分散会

このページの先頭へ