平成16年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(前川勝久議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十七番前川勝久君。
  〔前川勝久君、登壇〕(拍手)
○前川勝久君 議長のお許しを得ましたので、一般質問をさせていただきます。
 私にとりましては、もとより今回が初登壇でございます。どうぞ皆さん、よろしくお願いをいたします。
 今回の質問につきましては、私なりにどのような切り口、それからスタイルで質問をしようかなということをいろいろ考えたわけでありますけども、去年四月の選挙で、特に私の場合は「地域の声をダイレクトに県政へ」ということをスローガンに掲げさせていただき、またそのことを強く訴えて信任を得てまいりましたので、今回の質問は特にその原点に立ち戻って、地域発ということに限定して質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 さて、去年の選挙を通じましていろんな地域、いろんな人と接する中で、よきにつけあしきにつけ、確実に地域が変わっているなとの思いを新たにいたしました。今まさに市町村合併の議論が佳境を迎えようとしております。円滑な合併推進を願う者の一人でございますが、そのことの当否は別にして、地方自治体の仕事ほど私たちの日常生活に密着したものはございません。生まれたときの出生届に始まり亡くなったときの死亡届に至るまで、俗に「揺りかごから墓場まで」、自治体の仕事のお世話にならない日はございません。それだけに、特に住民は今日に来てこれまで以上に、自分たちの意思が身近な行政にどのように反映されているのか、また尊重されているのかという自治体の仕事の中身を大切に思い、そのことに大きな関心を寄せてございます。そして、自分たちの足元で起こっている地域環境の変化──この変化には少子化もございます。高齢化もございます。過疎化もございます。こういう変化を敏感に感じ取り、地域の将来に向けてさまざまな提言・意見を発信しております。この中には、なるほど奇抜な、また斬新な、独創的ないろいろなものがございます。こうした地域発の生の声を私なりに承った中で、まさに「株のことは市場に聞け」ということわざのとおり、なるほどやっぱり「地域のことは地域に聞け」だと思った幾つかについて提言をいたします。これについて当局の忌憚のないご見解、感触をお聞かせをいただきたいと思います。
 まず、毎日地域を回っておりますと、いろんな事柄に当面をいたします。地方政治、地方行政にかかわる者として本当に勉強させられ、考えさせられました具体的な事例について三つほど、まず報告をさせていただきます。
 まず第一に、昨年九月一日、二学期の始業式の日に五十年目で独立校舎──開校以来の悲願として、地元住民はもとより約四百名に上る卒業生に喜ばれ、話題になった県立南紀高校周参見分校の事例についてご報告をいたします。
 この周参見分校というのは、定時制の分校でございます。同校は、昭和二十九年、田辺高校周参見分校──このときは、教室は周参見小学校に併設をされておりました──として開校し、三十一年に周参見中学校に併設。三十八年からは定時制南紀高校の分校となり、本年創立五十周年を迎えることになってございます。この間、県立高校では唯一独立・独自の教室がなく、併設された小中学校の教室を間借りして授業を行い、向学心に燃える地域の若者四百余名を世に送り出してまいりました。この間、地元住民は県教委に対し独立校舎を要望し続けてまいりましたが、今日まで実現に至りませんでした。しかし三年前、周参見中学校が新築移転。その際、昭和五十二年に建設された鉄筋コンクリート二階建ての特別教室棟──これは、木工室とか音楽室、調理室の特別棟でございますけれども──これが取り壊されずにすさみ町の生涯学習センターとして残されたわけでありますが、この生涯学習センターとしての活用はほとんどなく、地元住民はこの特別教室棟をぜひ南紀高校周参見分校の校舎として有効活用を図りたいと県教委に要望してきたところでありますが、今日まで実現に至らなかったわけでございます。その理由として、私の聞き及んでいる限りでは、本来、周参見中学校が新築移転するに伴い旧施設はすべて撤去をするというのが原則でありますが、町の生涯学習センターとしての再活用の名目のもとに残されたものでありますので、当初の目的外に使用する場合は三千万円余の補助金を国に返還しなければならない、さりとて町にそんな余力はないというようなお話でございました。
 最初にこの話を聞かされたときには、今どきこんなストーリー、理屈が本当に通用するんだろうかということをまず疑問に思いました。なるほど、表面的・外面的には目的外使用には間違いございませんが、その実質は決して後ろ向きなものではございませんし、反社会的なものでもございません。むしろ、より前向きな、積極的な活用であり、これをもって補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律、いわゆる適化法に違反するとは到底言えないのではないか。いわんや、その新たな活用主体が県立高校となれば、なおさらではないか。この点に関し、今回、文部科学省との折衝に当たられた県教委の担当の方々には大変なご苦労があったと推察いたしますが、おかげで所期の結果が達成されました。その決断、勇気に深く敬意を表するところでございます。
 構造改革特区との考え方とも通じ合いますが、国・地方を問わず財政が非常に厳しい中で、特に行政は、住民が望んでいるところのものは何か、何が、どうすることが住民の利益になるかという視点を中心に据えることがますます求められていると考えます。「専用教室で学べる環境が整い、生徒たちは、「自分たちだけの教室ができて中学生に気を使う必要がなくなった。遠慮せず安心して勉強ができるのでうれしい」と張り切っている」と地元紙は報じております。
 南紀高校周参見分校の事例を報告させていただきましたが、世の中の仕組み、社会環境が目まぐるしく変化している現代社会においては、こうした局面は私たちの日々の仕事の中で多くの分野で生じ得ると思います。時と場合によっては、法上の一字一句の解釈に拘泥することなく、むしろ法上にまさる前向きな、積極的な決断、取り組みを切に要望するゆえんであります。
 なお、先月二十七日、政府の地域再生本部が正式決定しました地域再生推進プログラムでも、補助金で建設した公共施設の転用促進、例えば廃校になった校舎を地元が有効活用することを認める、そしてその際、補助金等は返還しなくてもよいとする方針が盛り込まれております。まさに県教委の周参見分校の事例が先鞭をつけたような形になってございます。
 第二に日置川町での事例でございますが、当該の民家は国道四十二号に面し、田辺方面から直線してきてほぼ左に直角にカーブする内側に位置しており、今日まで六回、前を通る車が生け垣を乗り越えて前庭に飛び込んでくるという経験をしてございます。最後の六回目は、車が家の雨戸の戸袋にぶち当たってとまったそうでございます。たまりかねたこの家の当主が所管の国道事務所に、何とかガードレールを設置してほしいとの話を何回か行ったが、スペースがないとかカーブの内側で本来車が飛び込むのはおかしい等々の理由で設置してもらえなかったとの状況でございました。
 私も現場を確認いたしましたが、なるほど、直角の左カーブを曲がり切れずに直進方向に車が飛び込むというのならわかりますが、左カーブの内側に飛び込むことは普通には考えられにくいことでございます。しかし、現実に六回もこの内側に飛び込んでいるということは、恐らくかなりのスピードで直進してきて、左カーブに慌ててハンドルを左いっぱいに切ったためにこのようなことが起こったものと思われます。いずれにしても、普通には、また理論的には考えにくい事故ではあっても、現実に六回も起こっている、民家に被害を与えているということになれば、何らかの対策を講じなければと思い、所長に直訴させていただきました。幸いにも、この所長がむしろ「情報をよく提供してくれた」ということですぐに行動していただき、二本のガードレールが設置されたわけでございます。
 組織において、第一線を担当する現場の人と上司との意思の疎通、情報交換が現実の行政の中でいかに大切であるかということを考えさせられた事例でございます。
 三つ目に、宅地や建物いわゆる不動産の取引を業とする者は、宅地建物取引業法第三条第一項の規定により宅地建物取引業者の免許──これは知事免許でございます──受けなければなりません。この免許の交付について、本県では同じ称号または名称であっても法的には問題がないという立場で取り扱っている結果、昨年御坊市の業者が──これは仮称でありますけども、「紀南不動産」という名前で報告しますが──免許を取得いたしました。ところが、この紀南不動産という称号の業者が既に十七年も前から田辺市に存在し、しかも田辺・西牟婁から日高・御坊市に及ぶ地域を営業エリアとしてございます。この結果、同じ営業エリア内に紀南不動産という業者が二つ存在することになったわけであります。田辺の業者は、当然のことながら、長年にわたって御坊・日高をエリアとする地元紙に「紀南不動産」の名の広告を出し続けてきたわけでございます。そこへ突如として今回同じ名前の業者が御坊市にあらわれましたので、びっくり仰天して県に問い合わせたら、「法的には何ら問題はない。現に、県下にはほかにも同じ称号・名前の業者がある」との答えであり、また一方、相手の業者に名前を変えてほしいと要請したら、「県がええと言うて免許を出したんだから、毛頭変えるつもりはないよ」という返事であるとのことでございます。この田辺の業者は、この件があって以後、御坊市から、顧客から三件売ってほしいとの依頼を受けたが、御坊市の地元紙に広告を出したら相手の宣伝をやるようなものだということで困惑しているという状況でございます。
 この件については、過日、業界団体である社団法人全日本不動産協会和歌山県本部から県に対し「以後このようなことのないよう配慮願いたい」との要請をしたと聞き及んでいますので、その対応を注視していきたいと思いますが、田辺の業者いわく、「新規に免許申請が出てきたときに、「同じ営業エリアで、既に同じ称号の業者がありますよ。お互いに紛らわしい。時と場合によってはお互いに迷惑がかかりますよ。そういうおそれも考えられますよ。この際、称号変更を考えたらどうでしょうか」というぐらいのことを何で指導ができなかったのか」という疑問でございます。まことに本質を鋭くえぐられるような指摘であると思います。サービスを提供する行政の側のちょっとした配慮、何げない気配りがサービスを享受する住民・県民にとってはより大きな満足をもたらす、これもまた真でございます。
 以上、三つの事例報告をまず報告をさせていただきました。
 次に、通告に従って質問に移らせていただきます。
 まず第一に、観光振興についてでございます。
 現在、我が国においては、海外旅行者数が千六百五十二万人であるのに対して訪日外国人旅行者数が五百二十四万人と三倍の格差があり、その是正が大きな課題となっており、二〇一〇年までに訪日外国人旅行者数を倍増するという目標を掲げ、官民挙げて積極的に取り組んでおります。特にアジア地域は、世界観光機関(WTO)の予測でも、世界的に見て観光交流が今後最も拡大する地域とされております。今後、我が和歌山県においても、国内旅行者はもとより、訪日外国人旅行者の増加のための取り組みを一層強力に推進していかなければなりません。
 観光和歌山、とりわけ紀南地方にとっては観光振興、観光産業振興は地域活性化の中核であり、それゆえにこの壇上においても過去幾多の先輩議員がそのことを論じ、行政も今日まで長年にわたりさまざまな切り口からありとあらゆる施策を展開してまいりました。しかしながら、ライフスタイルがますます多様化し、人々の嗜好がどんどん変化し、社会環境が急激に変化する現代社会にあってなお人々を引きつけるためには、既存のものに絶えず新しい魅力を加えていかなければなりません。一口に観光と言っても、その難しさ、奥深さはまさにこの点にあると言っても過言ではございません。
 そこで、泉都白浜において、新しい魅力の一つとして地元旅館組合の強い呼びかけで、白浜町も参画し、白浜町公共交通体系改善協議会──これは、会長は町長でございます──を組織し、白浜周遊ワンコインバス、すなわち南紀白浜空港、白浜駅、主要な名所旧跡、主なホテル・旅館を結び、十五分から二十分間隔で、しかもワンコインすなわち百円玉一枚で乗れるという構想の検討を始めております。
 そもそもの発想は、せっかく空港がありながら十分に活用されていない原因の一つに、東京から空港におり立ってホテル・旅館に行くにはタクシーかバスに乗る。そこからまたどこかを見学に行こうとすると、またタクシーか路線バスに乗る。すなわち、この二次交通の不整備があるということでございます。なるほど、自分が旅行者の立場だとすると、まことにもっともな話でございます。旅館組合等の話によれば、これまで何回もこの構想を発信をしてきたが、既存のタクシー・バス会社との調整、採算性等の壁にぶつかり発信倒れになってきたとのことでございます。そこで、次善の策として旅館組合独自でシャトルバス──これは無料のバスでございますが──を運行しておりますが、平成十四年三月から十五年十二月まで、少ない月で二千六百七十人、多い月で五千四百九十八人が利用してございます。
 今、白浜では、観光関連産業すべてがかつて経験のしたことのない厳しい試練に直面しております。そうした状況の中で、何としてもこの構想を実現して国内外旅行者を吸引し、活路を切り開きたいとの地元の取り組みに賛同するものであります。
 そこで、どうでしょうか、観光関連産業振興の側面からでもいいですし、より総合的に地域経済活性化の立場からでも結構ですが、県としてこの構想の実現に支援を願いたいと考えますが、いかがでしょうか。
 なお、その際、どのような手法による支援であるにせよ、だらだらいつまでもというわけではなく、いわゆる創業あるいは立ち上げを支援するという意味で、とりあえず三年間、官民挙げてやってみてはどうでしょうか。地元では既に、環境に配慮して電気自動車などのエコバスを走らせてはとか、レトロ調のレトロバスがいいんじゃないか、あるいは円月島・三段壁をライトアップして夜間周遊の目玉にできないかなど、いろんな意見が飛び出しております。
 高野・熊野の世界遺産登録を目前にして、口角泡を飛ばして議論ばかりしていては何の展望も開けません。差し当たり、前記協議会に県も参画していただき、みんなで知恵を出し合っていいものを実現し、南紀白浜発として全国に発信したいと考えますが、いかがでしょうか。
 なお、昨年、一周四キロ・無料・十五分間隔の丸の内周遊バスが運行され、大好評であると報じられてございます。すべての面で比較対象にはなりませんが、お客様、利用者の利便性を第一に考えるという原点は同じ発想でございます。
 ちなみに、春夏秋のシーズンには一日何回かを中辺路の熊野古道へ、清流の日置川峡へ、黒潮洗う枯木灘へと回遊させれば来訪者に歴史と自然を満喫していただけると思いますし、そうすることによって泉都白浜がボリュームのあるリゾート地として輝きを増してくるものと考えます。商工労働部長にお願いをいたします。
 第二に、構造改革特区についてでございます。
 我が国経済の活性化のためには規制改革を行うことによって民間活力を最大限に引き出し、民業を拡大することが重要であるとの目的で構造改革特区が導入され、二〇〇三年四月に第一号が誕生して以来、これまでに二百三十六の特区が認定されております。私たちの周りには、「何でこんなことまで」と思う規制がたくさんございます。特区の数がますます増加し、それぞれの特区内での成功がやがて全国的な規制改革へとつながっていくことを期待してやみません。この点については、政府においても、構造改革特区に限って認めた規制緩和について、担当省庁が弊害があると立証できない限り原則として全国に広げる方針で、先月二十四日の閣議で構造改革基本方針の改正を正式決定したと報じられてございます。
 さて、この特区制度に関連して、西牟婁郡内のある青年からこんな提案を持ち込まれました。その中身は、「両親にはいつまでも健康で長生きをしてもらいたい。しかし、たとえ自分や身内の親であっても、健康なうちはともかく、何らかの介護を要するときが来たときに果たして家庭で面倒が見れるのか。周りからは、老人を家庭で介護するのは大変なことやとか、家族生活のリズムが破綻するといった話をよく耳にします。いっそのこと、我が町全体をシルバー特区あるいは生き生き特区に認定してもらって、この特区内に老人福祉施設や介護施設を設置しようとする者には今のような複雑な規制をなくして、みずからの責任と裁量において設置ができるようにする。そうすることによってそこに施設が集積し、必然的に若者の雇用が生まれますし、何よりも施設に入りたくても順番待ちで長いことかかるといったことがなくなる」という内容のものでございます。
 私ごとで恐縮ではございますが、私は中学校一年のときに父親を、母親を十数年前七十三歳で亡くしましたので、いわゆる老いた親の介護を経験しておりません。しかし、この青年の話を身につまされる思いで聞きました。というのも、昨年四月の選挙で選挙区内をくまなく歩き回りましたが、老人とりわけおばあさんのひとり暮らしが多いのに驚きました。このおばあさんたちは、いつまでも元気で一人で暮らしができるわけではございません。ごく近い将来、施設に世話になるか、子供に世話になるかの選択をしなければなりません。そのときに、先ほどの青年の不安が現実のものとなります。
 一方で、施設設置希望者からは、「施設設置を申請しても、当該地域は国のベッド数を満たしている、あるいは充足率が高い、また先順番がある等の理由でなかなか認可されない」との話をよく聞かされるわけでございます。地域の実態と余りにもかけ離れた議論のような気がしてならないのでございます。
 施設設置・維持等に係る補助金等の予算上の制約はあるとしても、まさにこの国の基準なるものの改革を行うことこそが特区制度の最大の特色であり、その基本理念にも、「国があらかじめモデルを示すのではなく、自立した地方がお互いに競争していく中で経済社会活力を引き出していけるような制度へ、発想を転換する」、「「規制は全国一律でなければならない」という考え方から、地域特性に応じた規制を認める考え方に転換する」とうたわれてございます。
 第一次・第二次で認定された特区の中に、福祉特区というのがございます。これは、特別養護老人ホームについて公設民営方式またはPFI方式により株式会社が施設運営を行うことを認めるというものであり、施設の設置認可そのものに対する規制改革ではございません。急速に進む少子高齢化社会の最先端を行く紀南地方の地域特性に応じた規制改革として、施設設置の自由化を前面に打ち出したシルバー特区、生き生き特区を提案しますが、いかがでしょうか。
 例えば、これが認められますと、一例を挙げますと、既にご承知のとおり、すさみ町にあるいこいの村わかやまは現在雇用能力開発機構が施設を所有し、運営は当該機構から県に委託され、さらに県から財団法人和歌山県勤労福祉協会に再委託をしておりますが、本年四月からすさみ町が施設を買い取り、民間事業者に運営を委託する予定と伺っております。この施設についても、従来どおりの宿泊施設だけの運営だけでは経営に明るい展望が望めないんじゃないかと危惧されますし、逆に民間委託となれば、現在十二、三名いる職員の合理化にもつながりかねません。
 そこで、宿泊施設に何か付加価値を与えられないかということを考えたときに、敷地は広大であり、枯木灘を見おろすロケーションも最高であり、ここに老人福祉施設を併設したらどうなるだろうかという思いをめぐらすわけでございます。そして、施設入所者については、県外在住者を優先するというようなことにしたら、施設を訪れた家族の方の宿泊施設利用を期待できるんじゃないか、また東京方面からでも南紀白浜空港を利用するとアクセスもよいし、何よりも若者の雇用創出につながる等、さまざまな分野の多くの人が斬新なアイデアを構想できるんじゃないかと考えるわけでございます。福祉保健部長にお願いをいたします。
 三つ目に水産業とりわけ養殖業についてでございますが、昨年十月ごろ、串本町大島の須江養殖漁場において発生した魚病──いわゆる魚の病気でありますけれども──十一月初めにマダイ成魚及び中間魚が大量死、その被害状況は五社で約六十八万匹、被害額二億三千二百万円、一社当たり二千万から五千万の被害となっていると十二月十四日付各紙が一斉に報じているところでございます。この件に関し、県は地元での聞き取り調査、病理検査、環境調査を実施し、一月十五日にその調査結果を関係漁協へ報告いたしました。その概要でありますが、「病名は白点病。この疾病は養殖漁場では普通に見られ、白点虫と呼ばれる繊毛虫が魚のえらや体表に寄生して引き起こされるものでありますが、通常、漁場の潮が流れていれば白点虫の仔虫──いわゆる子虫でありますが──が分散し、白点病は発生しにくいと考えられている。しかし、当時の海洋構造を検討した結果、夏季から秋季に四カ月以上も黒潮が接近しており、養殖漁場での海水交換が阻害され、結果として沿岸水が滞留し、白点病の大規模発生につながったと考えられる。ただ、このような現象は周辺海域でも生じていたと考えられることから、須江漁場での被害が特に大きくなった原因については特定できなかった」と結んでいます。一方で、「水質・底質調査を行った結果、須江漁場は県内でも有数の清浄な環境を備えた健全な漁場と判断された」としております。
 私も以前から須江の漁港はよく知っておりますが、この被害が発生した後、改めて現地に行ってまいりました。まず最初に思ったのは、太平洋に面し、こんな水のきれいな漁場で養殖魚が壊滅するのであれば、およそ日本全国どこを探しても養殖する場所がなくなるんではないかというようなことでございました。皆さんも串本へ行ったら、ぜひ一度この須江の漁港に立ち寄っていただきたいと思います。
 このように、大島の須江においてすらこのような事態に遭遇するということは、とりもなおさず養殖業という産業が常に自然相手の危険と隣り合わせているという宿命を負っていることを如実に物語っているところでございます。
 近年、日本の沿岸漁業を取り巻く環境がますます厳しくなり、「とる漁業からつくる漁業、育てる漁業へ」と言われて久しくなります。とりわけ、大島を中心とする串本地域においては養殖漁業は最大の地場産業であり、雇用及び生産面において地域経済に重要な役割を果たしているところでございます。本県においても、過去も現在も、恐らく将来も、第一次産業すなわち農林水産業が最大の地場産業であり、この分野の健全な発展が何よりも重要であることに異論はございません。しかるに、その一翼を担う水産業とりわけ養殖漁業に対する行政の支援は極めて貧弱であると断ぜざるを得ない状況にあると危惧する一人でございます。
 すなわち、今回の養殖魚大量へい死においても、養殖事業者は大きな損害、打撃を受け、経営に支障が生じており、今後の事業継続に言いようのない不安を抱いております。このような状況のもとで養殖業者が切実に訴えているのは、当面の資金繰りを行うための運転資金の確保であり、融資などの救済措置でございます。これに対し県の答えは、「台風や津波などの災害により養殖中の水産動植物がこうむった損害に対して共済金を支払って翌年の事業資金を確保できるようにする漁業災害補償法に基づく養殖共済制度があり、疾病による死亡も対象になる。県では従来よりこの養殖共済への加入を前提にしており、今回の白点病による被害の補てんを融資対象とする制度資金はございません。当面の資金繰りを行うための運転資金についても、制度資金としてはありません。信漁連や市中銀行の一般資金を活用願います」というものであります。しかし現実には、串本大島地区の養殖業者でこの養殖共済に加入しているのは串本の二業者のみであり、今回被害が大きい大島須江地区の業者は、養殖共済に加入していないか、または加入していても疾病を不てん補としています。さらに、信漁連を活用せよと言っても、信漁連が扱う漁業近代化資金はその使途を一年以上育成する種苗購入に限定をしています。
 そこでまず養殖共済についてでありますが、地元で養殖漁業者が異口同音に訴えるのは、掛金が高過ぎてとても加入できないという現実でございます。加入しておいたら安心だし、できれば加入したい、しかし高額掛金がネックとなってとても加入できない。このジレンマにあえいでいる業者に「共済制度があるから加入せよ。不慮の災害が起こったら共済に加入していないから仕方がない」では、いかにも行政として配慮に欠けるのではございませんか。
 次に、信漁連が扱う唯一の資金である漁業近代化資金は一年以上育成する種苗購入に限定されており、当面の資金繰りのための運転資金には使えません。この点、中小企業者に対する幅広い各種支援と比べても雲泥の差がございます。
 ちなみに、中小企業者に対しては、ここにございます県が出している「金融のしおり」がございます。この中にはありとあらゆる制度があるんですけれども、すべて「漁業は対象になりません」ということで漁業が除かれております。こういう現実でありますんで、漁業者に対するこういう制度が一切ございません。
 大島は、念願の架橋が実現し、利便性が高まったことにより養殖業に従事する若い人もふえ、後継者も、今では二代目、三代目の時代に入ってございます。話をしていても、養殖業にかける意気込みがひしひしと伝わってきます。それだけに今回の事件は、彼らに自然と生き物を相手とする養殖事業そのものに対する言い知れぬ不安を惹起したのも事実でございます。
 第一次産業の振興、農林水産業の活性化が本県の最重要課題であることにかんがみても、その一翼を担う養殖事業者に対して、その本来内蔵する危険に対応する手だてを考えるべきと考えます。農林水産部長にお願いをいたします。
 次に、最後でございます、防災対策に関連して。
 平成十四年七月に東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法が制定され、十五年七月から施行されました。その間、十五年三月十七日、中央防災会議の東南海・南海地震等に関する専門調査会において、これらの地震が発生したときの各種被害想定が発表されました。南海地震が起こったときの和歌山県の被害についても、死者約五千二百人、全壊家屋七万七千五百棟などとなってございます。県においても、特別措置法制定以来、シンポジウムの開催やいろんな機会での啓発普及活動を展開されております。おかげで、住民の防災意識が従来にも増して高まっていることを肌身で感じております。いつ起こるかわからない地震への備えであるだけにご苦労も大変なものと推察いたしますが、今後とも格段の取り組みを要望いたします。
 さて、地震災害の中でも住民がまず心配するのは、道路と電気だろうと思います。この二つは文明を支えるライフラインであり、これがストップすれば被害が多方面に波及すると同時に、被害状況の把握が極めて困難になります。加えて、地震による災害は広域で同時に発生する災害であるため、その復旧には相当の日時を要することを覚悟しなければなりません。そして、何よりも住民の心理的不安を一層増幅することが考えられます。特に地方にとっては、道路の損壊は致命的でございます。陸の孤島化する地域・集落が多数発生するものと想定されます。本県は地形的に川沿いに開ける集落が多く、したがって必然的にそれらを国道・県道でつないだ町村が多くなっており、これらの町村ではいわゆる川沿いの縦の線一本が生活道路であり、住民の命と財産を守る道でございます。地震等で一カ所が寸断されれば一瞬にして陸の孤島になります。
 私自身もかねてから、緊急時に隣町へ抜ける道として、また国道四十二号の補完道として、内陸部に横の線がぜひ必要だと痛感しておりましたが、今回、地元で地震対策についていろいろ議論をする中で、具体的にすさみ町旧佐本村小河内というところから県道上富田すさみ線、日置川大塔線、白浜久木線を経由して白浜町庄川で国道四十二号に通ずるルートが非常に重要であり、地域住民の長年にわたる悲願であることがクローズアップされてまいりました。差し当たり、白浜町庄川─日置川町久木間において普通自動車が通行可能になれば、とにもかくにもこのルートが確保されることになります。白浜町・日置川町・すさみ町の合併の行方も、現時点では定かでありませんが、この地域の緊急時対応として、また中山間地域振興対策として提案いたします。県土整備部長のご所見をお聞かせをいただきたいと思います。
 以上で、終わります。ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの前川勝久君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 観光振興の白浜周遊ワンコインバスの取り組み支援についてお答え申し上げます。
 議員ご指摘のとおり、観光は社会環境の変化や旅行者のニーズを的確にとらまえ、常に新しい魅力を加えていかなければ地域間競争に生き残ることは厳しい時代となってございます。本年は世界遺産登録を契機として十月から大型観光キャンペーンの展開を予定しておりますが、地元の受け入れ体制や観光客の利便性の向上は重要な課題と考えております。
 ご質問の白浜町内の二次交通の充実につきましては、現在、白浜町公共交通体系改善協議会においてさまざまな角度から検討されていると聞いておりますが、この構想が実れば魅力ある観光地づくりが大いに期待できるものと考えております。
 現状のバス路線との調整や採算性等、課題は多いと思いますが、同協議会で協議が進められていく中で県といたしましてもその状況を踏まえ、ともに考えてまいりたいと存じてございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) 構造改革特区についてお答えいたします。
 特別養護老人ホーム等の施設サービスにつきましては、各圏域ごとに市町村の利用者見込み数を積み上げ、必要ベッド数を算定し、それをもとに各市町村の介護保険料を算定しております。こうしたことから、地域の住民を優先的に考え、特別養護老人ホーム等の施設整備を計画的に行っております。しかし、施設サービスに対する県民のニーズが高く、入所申込者も多い状況にあります。こうした現状では、県民の皆さんのための施設整備を優先的に図っていくべきと考えております。
 また、県としては、施設サービスとあわせ、高齢者が地域で身近に利用できる居宅サービスの充実を図るなど、バランスのとれた介護サービスの提供を推進してまいりたいと考えております。しかしながら、議員ご指摘のように、県勢の活性化施策として他府県からの人口流入を促し雇用を創造していくことも極めて重要であることから、観光資源と健康・医療・福祉とが連係した地域づくりの支援のため健康村再生構想を策定し、地域の再生を図り、雇用の創出を行ってまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 養殖漁業者への支援についてでございますが、昨年十一月、串本町須江の養殖漁場で発生した白点病被害につきましては、調査結果を踏まえ、漁場改善計画の遵守や寄生虫性疾病対策として有効とされる養殖いかだ移動のための避難漁場確保などの対策について、関係する漁協に対して適正な指導を行ってまいりたいと思っております。
 議員ご提案の運転資金につきましては、現状では対応が困難でありますが、既存の制度資金の活用が一部可能なものがございますので、経営再開のための種苗購入、経営再建のための負債整理等につきましては、漁業近代化資金、漁業経営維持安定資金、農林漁業金融公庫の資金などの利用をお願いいたしたいと思います。
 なお、今後とも融資制度の充実に努めてまいりたいと考えております。
 また、自然を生産の基盤とする漁業におきましては、漁業災害対策の一環として漁業共済制度が設けられ、国及び県が積極的に支援や推進を行ってきたところでありますので、今回の被害を契機に漁業共済制度への理解と加入を一層推進してまいります。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 県道白浜久木線についてでございますが、紀伊半島沿岸部においては、東南海・南海地震等の災害時における国道四十二号の代替路として近畿自動車道紀勢線が最も重要であると考え、その整備促進に取り組んでおります。
 県道白浜久木線については、この近畿自動車道紀勢線の整備計画を踏まえ、議員ご指摘のように防災、地域連携、観光振興等の観点から当地域の道路ネットワークを考える中で、その必要性や整備のあり方について検討を進めてまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、前川勝久君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十一分休憩
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