平成15年12月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(花田健吉議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時二分開議
○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第百四十九号及び議案第百五十七号から議案第百七十九号まで、並びに報第八号】
  【日程第二 一般質問】
○議長(尾崎要二君) 日程第一、議案第百四十九号及び議案第百五十七号から議案第百七十九号まで、並びに知事専決処分報告報第八号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十三番花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕(拍手)
○花田健吉君 ただいま議長よりお許しを賜りましたので、九月議会に引き続き一般質問を行わせていただきますが、その前に、私たち平成十五年に初当選を果たした有志議員で「一期一会」を大切にしようという合い言葉で「いちご会」を発足いたしました。そして、その会の代表に今は亡き故大原康男議員を、その卓越したリーダーシップと豊かな経験に裏づけられた識見、温厚な人柄をもって全員一致で会長にご就任いただきました。しかし、そのとき既に病魔に侵されていたことを思うとき、改めて大原さんの責任感の強さに敬意を表しますとともに、まことに惜しい人材を失ったことを痛感いたします。大原康男議員に対し心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、残されたご遺族の皆様に衷心よりお悔やみを申し上げます。
 それでは、早速、一般質問に移らせていただきます。
 このたび、我が県待望の高野・熊野地域が来年六月に世界遺産登録されるという見通しがついたことは大変喜ばしい限りであります。そこで、それに伴い県民の環境美化意識について当局のご見解をお尋ねいたします。
 我が県では、和歌山市を初め五市十一町三村において環境美化に関する条例が制定されております。それぞれの町に合った条例を制定されておられますが、和歌山市のように、通称・排水の色抜き条例や空き缶のポイ捨て条例などは当時全国的に有名になりました。また、白浜町や龍神村のような観光客のたくさんお越しいただくところは観光に関する多様な内容の条例が制定されておりますし、湯浅町のように放置自転車の防止条例、また御坊市や美浜町のように公害対策条例、清流に沿った町村は川の環境を保全するためにと創意工夫がなされております。その他の市町村も含めて、環境美化については、明確に条例を制定していなくても、これまた市町村民のご協力を賜りながら、海岸や河川の清掃作業を定期的に行うなど、また学校教育の一環として環境美化を取り入れるなど、地域一丸となって環境美化意識の向上に努めていただいているところでありますが、このたびの高野・熊野世界遺産登録は県民全般にわたり、また他府県はもとより、外国からのお客様に対しても環境美化意識の向上に対し、さらなる関心を高めていただく絶好の機会だと考えます。
 ある大阪からお越しの私の知人は、「大阪市内に比べると和歌山市は空き缶やごみ袋等、道端に落ちていない。とてもきれいな町ですね」と感心していらっしゃいました。私たちは、ふだん何げなく暮らしていますが、他府県からお越しになった方からそんなにおっしゃっていただくと大変うれしく思いますし、市内在住の皆様のたゆまぬご尽力に改めて敬意を表する次第であります。空き缶やごみのポイ捨ては、一つでも道端に転がっていると連鎖的に放置する心理が働くのではないでしょうか。
 我が県においては、ごみのポイ捨てゼロ運動を展開推進し、世界遺産登録地域を擁する観光立県和歌山の名にふさわしい清潔感あふれるきれいな町づくりを実現したいと考えます。他府県はもとより、世界のいろいろの地域や国から世界遺産を見学にお越しいただくお客様に対し、私たちにできる最高のおもてなしは、きれいで清潔感あふれる町並みでお迎えすることだと思います。私たちもときどき他国に参りますが、その地域のすばらしい景観に圧倒され、また再び訪れたいと思うことがしばしばあります。しかし、その地域の美化意識が低く、町のあちらこちらにごみが散乱している状況をかいま見ることもありますが、まことに残念でなりません。和歌山県をお訪ねいただいた方には、青い海や緑深い山に抱かれた豊かな大自然と、その自然と融合するようにたたずむ歴史的に裏づけられたたくさんの文化財を見学していただくと同時に、おおらかで人情あふれる県民性に触れていただき、心がいやされることは当然ですが、さらに清潔できれいな環境や町並みは、旅行く人々の心に深く刻まれるものであり、その訪れた方は、きっとお帰りの際、友人、知人との土産話に花を咲かせていただけることと確信する次第であります。環境の保全や美しい自然は、今を生きる私たちが後世に残さなくてはならない最も大切な遺産であると考えます。
 そこで、知事にお伺いいたします。
 高野・熊野地域が世界遺産に登録されるという大イベントが行われる来年六月に向かって、県民はもとより、日本さらには他国の皆さんにも、我が和歌山県の環境保全並びに美化意識の向上に対し深くご理解を得る絶好の機会と考えますが、環境・美化意識の浸透を図るため、県民挙げて取り組んではと思いますが、いかがでしょうか。
 また、環境生活部長にお伺いいたします。
 現在、環境美化について、当局はどのような施策を具体的に実施されているのでしょうか。例えば、これから世界遺産のポスターやチラシ等を制作することがあると思いますし、さらにまた日常的に県が発行する刊行物にも環境美化に関する標語等を広く県民に募集して、その作品を盛り込むなどの工夫をしてはいかがでしょうか。
 私たちの誇れるふるさと和歌山が、どの地域にも増して美しい景観を保ち、うらやまれるためには、ふだんから県民一人一人が意識を高く持ち続けることに尽きると思います。県当局の一層のご尽力を期待いたします。
 次に、障害のある方に対する県当局の施策についてお伺いいたします。
 我が県は、全国的に見ても障害のある方に対する施策が格段に劣るというわけではありません。しかし、まだまだ万全というわけではないと考え、幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 その前に、私たちは、障害の有無にかかわらず、ともに生活できる社会づくりが大前提と考えます。昨今、バリアフリーという言葉が世間に広く行き渡り、公共施設や駅、または宿泊施設など、さらには公共交通機関やその周辺を取り巻く道路等にも、ハード面では段差を解消し、車いすのスロープの併設や、エレベーターもかなり普及し、また手すりの設置、目に障害のある方に対する配慮も官民問わず格段に進歩し、認識も深まったと大変うれしく思うものでありますし、心から感謝を申し上げたいと思います。と申しますのも、私自身も幼少のころより左足に障害があり、その障害のため階段の上りおりには、時にはため息をつくこともあります。しかし、私の障害などはまだ軽微なもので、もっと重い障害のある方のご不便を思うとき、さらなるバリアフリーにご理解、ご認識を賜りますよう、重ねてお願い申し上げる次第であります。また、バリアフリーと申しましても、心のバリアフリーに対しても、より一層の推進を図っていただくこともあわせてお願いし、本題の質問に入らせていただきたいと思います。
 今回は、動作法というまだ一般的には知られていない臨床法について県当局のご見解をお尋ねいたします。
 臨床動作法とは、九州大学の成瀬名誉教授が、動作を通したコミュニケーションをもとに、適切な体の動きを学習していく過程で、自己の活動が主体的、能動的となり、生き生きとした心と体の調和的体験ができていくことをねらいとした援助法を提唱、体系化し、脳性麻痺の児童の動作改善や肢体不自由児のための訓練法として開発されました。さらに、その後の研究と実践により、自閉・多動児、知的障害児、ダウン症児、重度重複障害児、緘黙児、知覚・聴覚障害児、学習障害児、不登校児等、適用範囲が拡大され、現在では障害児教育全般における発達援助法としてさまざまな教育現場に導入、適用されているとお聞きいたしました。近年では、福祉分野からのニーズが高くなってきており、ホームヘルパー一、二級テキストの心理学的援助法の中にも紹介されており、高齢者の健康増進法やスポーツ選手への援助技法として、それぞれ顕著な効果が報告されているそうであります。
 動作法は、動作や姿勢の歪みや不適切なパターンの改善を主目的にし、場面や状況に応じた情緒や行動をコントロールする力の促進を図り、障害のある児童にかなり効果があると報告されております。また、もう一つの目的として、児童が課題とする動作に取り組む中で行われる努力の仕方を望ましい努力の仕方に変えていくことを目指しており、身体の動きと心の活動の両面の自己コントロールする力を高めることにあるとあります。全国的にも、心理リハビリテイションの会の全国大会も既に二十九回の回を重ね、ことしは滋賀県と京都府の共催で行われ、来年は奈良県で開催される予定だということであります。既に、兵庫県、大阪府では開催済みであります。現在、和歌山県には、和歌山動作法研究会ときのくに親の会が動作法に対して大変な期待を寄せ活動をしております。ここに、動作法を始めてからの子供たちの変化の様子を保護者の方から寄せられておりますので、ご紹介させていただきたいと思います。原文をそのまま引用させていただきます。
 あるお母さんからは、「未熟児で生まれたため、脳性麻痺の娘は、小さいころより病院の理学療法でお世話になっていましたが、なかなか歩こうとしませんでした。ところが、動作法を知って一カ月後の三歳八カ月のとき、大阪の一泊二日のキャンプに参加させていただき、生まれて初めて歩き、しかも十一歩も歩きました。動作法を知って五カ月後の大阪の一週間キャンプでは、地面から自分で立ち上がれるようにしていただきました。 またその後、和歌山での訓練会や大阪、九州でのキャンプ訓練会では、後ろに歩いたり、片ひざ立ちができたり、ジャンプをできるように教えていただいたのも動作法訓練会においてです。 理学療法は一回に約四十分ほどで、特に体の姿勢や動きにくいところを整えてはいただきますが、自分で意識して自分の体を動かすという点では動作法はよかったと思います。」。──お嬢さんが初めて第一歩を歩まれたときのお母さんの感動が手にとるように伝わってきます。
 また別のお母さんは、「動作法を始める前は、体を動かそうにも緊張の余りむだな動き、ぎこちない動きで自分の思うように体が動きませんでした。いすに腰かけさせても、ひざ、関節が曲げられず、生活に不自由がありました。が、動作法のおかげで、子供自身が体のむだな「力」を抜くこと、動かしたい部分に「注目」できるようになりました。小学校入学時は四つんばいすら満足にできなかった息子が、今では手をつないで歩行するまでに成長しています。精神面でも喜怒哀楽の表現が豊かになり、こちらの「指示」に注目できるようにもなってきています。」と、子供さんが変わっていくさまに一喜一憂されているお母さんの姿がうかがえます。
 もう一例、「動作法は、子供の身体だけでなく、心にも働きかけながら、親と子が一緒に一つの目的に向かって行うリハビリ法です。子供の意思に関係なく親だけが一方的に働きかけていたころに比べ、子供の表情が豊かになり、また身体面では介助しながらではありますが、子供の意思でしっかり足を踏み締めながら歩行できるようになっています。子供の目を見ながら、声かけをしながら、親と子が気持ちを一つにして日々の訓練をしてきたことにより、あうんの呼吸というものが二人の間に生まれたのだと思います。最近では、親以外の人の介助にも子供自身がリズムをつかもうと注目する場面も見られるようになっています。」と、母と子が一体となり動作法に取り組む様子がうかがえます。また、「以前はよく興奮状態(パニック)になり、三十分から一時間手をつけられない状態だったけど、興奮状態になりかけたとき動作法をすると、興奮状態が抑えられ、子供が楽になった。親は、動作法を覚えたことにより、子供の興奮状態になりかけがわかるようになり、ひどいパニックを防げるようになった。他の家族も、月例会の後は落ちつきがあるので、月例会に行くように応援してくれる。」──月例会に参加し、動作法を受けることにことにより、お母さんの気持ちや家族の心までも和ませています。
 最後に、「肢体不自由児(者)、知的障害児の親、関係の仕事につかれる方々に、理学療法の方法であるボイター、ボバースの訓練以外に動作法という訓練もあるということを知ってもらい、子供の成長につなげていってほしいと願っています。子供たちが、いつまでも地域で生活でき、動作法を通してもっと楽に生きられる方法を身につけることを教えてあげたいと思います。」。
 以上、お母さんの大切な我が子に対する愛情あふれる心の声に当局も耳を傾けていただきたいと思うものであります。まだまだたくさん紹介したいのですが、後ほど担当部局に参考にしていただくため提出させていただきますけれども、このアンケートには当局に対しての要望も添えられておりますので、ご紹介させていただきます。
 一番の要望は、トレーナーの育成についてであります。これも、原文をそのまま使わせていただきます。
 「和歌山県では、認知度の低い動作法は、当然他県に比べトレーナーも少なく、今後この会を存続させる上ではトレーナーの育成が最重要課題となります。トレーナーには資格が必要で、キャンプに多数回参加し、技術を習得、動作法を理解していかねばなりません。健常者のサマーキャンプとは異なり、場所にはまずバリアフリーであることと大勢の人員が収容できる訓練室が必要となります。障害を持つ子供一人につき、最低でも保護者一人、トレーナー一人がつきます。その上、指導者であるスーパーバイザーが数人、家庭の事情で子供の兄弟や講習会を行えば見学者も参加し、大規模な会になります。キャンプ参加には、保護者及びトレーナーの費用の負担が重くのしかかっており、またキャンプ場所も今後会が充実していけば手狭になることから、県の強力なサポートを望んでいます。」とあり、長期合宿時の費用の補助やキャンプ施設のバリアフリー化に対しても訴えております。また、このキャンプには、指導員として大阪府教育センターの指導員の方を初め、他府県から五名、和歌山県からは、トレーナー、サブトレーナーとして、みはま養護学校から二名、はまゆう養護学校から三名、南紀養護学校から四名、由良あかつき園から二名、たちばな養護学校、きのかわ養護学校、松原小学校から各一名、その他四名の計十八名の方が研修を兼ね、ご協力をいただいております。しかし、まことに残念なことに、この動作法はまだ一般的に認知されておらず、我が県においても認識不足の感は否めません。
 そこで知事に、ただいまご紹介した動作法という臨床法についてのご見解をお聞かせ願いたいと思います。
 また、子供たちが成長していく過程でのお母様方の生の声をお聞きになりどう思いますか、ご感想をお聞かせください。
 次に、福祉保健部長にお伺いします。
 今回、質問に先立ち、動作法についていろいろお調べいただき、認識が深まったと存じますが、今後の対応についてお伺いいたします。
 先ほども保護者の方からのご要望にもあったとおり、人材の育成について、またキャンプ(合宿)の際、施設の利用に当たっては、官民問わず条件に合った施設の紹介やそれに伴う助成制度の確立、さらに動作法に対する認識を深めていただくため、将来、全国大会の誘致等が挙げられますが、いかがお考えでしょうか。
 最後に、障害のある方の症状は個人によって異なり、一概にこの方法が有効であるかないかを論じることは難しいと思います。大切なことは、いろんな治療法を受ける機会と適切な指導ができる体制の確立を早急に整備することが最も重要なことだと思います。このたびの動作法においても、まだまだ広く関係者に認知されておりませんが、障害のある児童の保護者にとっては、そういう治療法もぜひ試してみたいと考えるのは至極当然ですし、合う、合わないは個人によって選択することが望ましいと思います。障害児にとっては、なるべく幼少期にいろいろな治療法に接し、あらゆる可能性に挑戦させたいと思うのは親心として当然のことであります。あのとき、もっと早く知って体験させていればと後悔することのつらさははかり知れません。将来、生まれてくるかもしれない障害児のために、今後も県当局が積極的にお取り組みいただくことを切にお願い申し上げ、次の質問に移らせていただきます。
 東南海・南海地震について、津波対策及び家屋の倒壊対策についてお尋ねいたします。
 この問題については、去る九月議会の一般質問にも取り上げましたが、そのときは台風十号が到来した直後であり、美浜町煙樹ケ浜に面する浜の瀬、本ノ脇地区に高潮が押し寄せ、被害をこうむった直後だったので、高潮対策の一環として取り上げました。
 ご承知のとおり、東南海・南海地震は海溝型の地震であり、東海地震と比較として震源域が海域にある割合も多く、広域に巨大な津波が押し寄せ、海岸地域に甚大な被害が発生することが予想されております。また、戦後襲来した津波とは異なり、強い揺れにより建物が倒壊したところへ津波が押し寄せることが予想され、複合災害による人的被害が増大されるのではないかと大変心配されております。もちろん、大きな地震が起こった場合、揺れたら状況を把握し、素早く避難することが大前提でありますが、私たちは必ず訪れる来るべき大地震に、でき得る限りの対策を講じていかねばなりません。それは、日ごろから避難路の整備や周知徹底、避難場所の確保、時間帯によっては火の後始末や家族との連絡方法及び家庭にあっては非常食の準備等、市町村や個々の家庭で心がけておかなければならないことは言うまでもありません。地震が起こったとき、県民の津波に対する意識が低い場合は、昼間と夜間とでは差がありますが、最大で八千六百人の死者が想定されております。私たちは絶えず警笛を鳴らし続けなくてはなりませんが、県当局も県民の生命と財産を守るための対策を怠ってはなりません。
 次に津波に関しての対策について、県土整備部長にお尋ねいたします。
 和歌山県は、六百五十キロに及ぶ海岸線を有しておりますが、そのうち海岸保全区域でも二百十キロに及んでおります。これらのすべての地域を防波堤や防潮堤で防護することは大変な費用と時間を要するものと考えます。しかし、津波災害については、堤防や水門が正常に機能するかどうかによって建物全壊棟数に約二倍の差が想定されるとあり、私たちは一歩一歩着実に計画を立案し、「備えあれば憂いなし」のことわざどおり、それらを実行していかねばなりませんが、県当局においても危険な地域の優先順位や対策等、調査・点検をしていただいていると思います。
 そこで、県内の海岸保全区域の状況を、現在把握している範囲で結構ですので、お伺いいたします。
 続いて、地震の揺れによる家屋の倒壊についてお尋ねいたします。
 東南海・南海地震が発生した際、建物の耐震については、昭和五十六年以降に建築された建物が、仮にそれ以前の耐震基準で建築されていたとすると、全壊棟数は現時点で約十六万六千五百棟が想定されているものが、約二十一万三千百棟と大きく増加するとあります。逆に今後、昭和五十六年以前の耐震基準で建築された建物を耐震強化し、昭和五十七年以降の建物と同様の耐震性を持たせることにより、死者の数は現時点で六千五百人と想定されるものが、約千三百人と五分の一程度に大きく減少すると推算されております。我が県においても、地震の揺れによる家屋の倒壊は約二万二千三百棟から、場合によっては約二万五千四百棟になると推計されております。また、地震が実際起こった時点で、家の中にいる人の数は全体の約六割とも統計上示されていますが、県民の生命と財産を守ることが政治と行政の責任だとすれば、東南海・南海地震による家屋倒壊への備えについて、知事の所見をお聞かせください。
 さらに、知事が緑の雇用事業を全国に先駆け提唱され、山間部の雇用による人の定住と、森林保全に随分ご理解が深いわけでありますが、先ほど来の提言にもあるとおり、家屋の耐震強化が有効かつ急務であるとするならば、昭和五十六年以前に建てられた家屋の補強材に紀州材が活用できないか、また間伐材が耐震強化の材料に使えないかどうかも、あわせて調査研究の価値があると思いますので、関係部局においては、あらゆる面から前向きにお取り組みいただきたいと思いますが、いかがですか。
 多分、地震の揺れに弱いのは、かなり建築年数の低下した家屋と考えられます。日本家屋に鉄骨で補強するというのは余りにも居住性の面からも、また見た目にも適切ではないように思いますので、この際ぜひ調査研究をしていただき、コスト面や強度面、さらには内装面においても耐え得るすばらしいものを開発していただくことを期待しております。
 次に、企業団地の現況と企業誘致についてお尋ねいたします。
 企業の誘致は、我が県にとって最も重要でかつ迅速に対応しなくてはならない課題の一つであります。企業の誘致は、その地域にとって活力の源であり、固定資産税等の税収は言うに及ばず、その地域の雇用問題の解決や購買力の増加による地元商店街に及ぼす影響、また若者の定住による人口の増加に伴い、少子高齢化の問題解決、特に子供が増加すれば学校も生き生きとなり、祭りも若者でにぎわい、私たちの社会にとって数え上げれば切りがないほど多岐の分野にわたり影響を及ぼすものであります。逆に言うと、企業の少ない地域はすべての分野において大変厳しい状況に置かれているわけであります。現在、我が国が抱えている最大の課題は過疎と過密の問題であると言っても過言ではありません。日本全体の人口はバランスが崩れ、都市には地方から人が押し寄せ、山村には年老いた父母が生活しているという現実を目の当たりするとき、この国は一体どうなってしまうのかと危惧するのは私一人ではないと思います。都会は人口が過密になり、お隣に住んでいる人も面識がないほど地域社会のつながりが希薄になり、あふれる若者は無軌道でせつな的になり、近ごろでは私たちの想像を超える事件が多発し、内容は複雑化、国際化、さらに低年齢化しています。また、住環境問題やごみ処理の問題等さまざまな問題も抱えています。また一方地方では、人口の減少によって産業が落ち込み、若者の雇用が減り、基幹産業の農林水産業の後継者も減少し、高齢化率が上がり、老人のひとり住まいがふえ、いわんや子供の数は年々減少の一途をたどり、過疎の学校は統廃合され、人口が少ないため必要な社会資本の整備もおくれ、下水整備一つとっても、昔子供たちが泳いだり魚釣りができた小川は生活排水によって汚れ、海岸もいそがれし、環境汚染においては都会よりも深刻ではないかと思うほどであります。人口が少ないから、費用対効果が合わないからと切り捨てられ、ますます人口が減少していくという悪循環を繰り返し、我がふるさと、特に中山間部は本当にどうなってしまうのかと考えさせられるときがあります。しかし、嘆いてばかりいても始まりませんし、これらの諸問題に立ち向かい、解決していくのが伝統ある和歌山県政に身を置く者の宿命と考え、懸命の努力を重ねてまいりたいと改めて心に期すところであります。
 さて、本題から少しそれてしまいましたが、それほど熱望している企業誘致について、現状を商工労働部長並びに企業局長にお尋ねいたします。
 現在、県下の企業団地の状況はどうなっているのでしょうか。企業団地への進出状況と利活用されていない未利用地の現状をお聞かせください。また、私の住む御坊・日高には第一、第二工業団地と、間もなく完成する日高港湾埋立地と大変広くてすばらしい土地が企業誘致のために整備されております。とてもありがたいことと感謝をしておりますが、第二工業団地は売り出してはや七年目になりますが、当初進出していただいた金門製作所の和歌山工場である和歌山精機のみであります。第二工業団地の今までの経過と進出がおくれているのはどこに問題点があるのか、主な理由があればお聞かせ願いたいと思います。
 また、あわせて日高港湾の現況と今後の見通しについてお答えいただきたいと思います。もし、進出企業にとって他府県より条件が悪いというのであれば改善の余地はないのか、他府県の取り組みも参考にしてお考えをお伺いしたいと思います。
 十二月三日の日経新聞の朝刊に紹介されておりますが、大阪府は、今年度十一月までの主要八団地の新契約面積は前年度の二・五倍になった、兵庫県、京都府、滋賀県でも前年度より軒並み進出がふえた、賃料引き下げなど誘致対策強化が奏功したと掲載されております。御坊、日高地方は、ハローワークの統計でも、県下で有効求人倍率が最も低い地域であります。近隣の町村も企業団地を造成し、企業の誘致に懸命に努力をしております。また地元御坊市では、企業誘致促進策として、土地購入企業だけではなく、土地の賃貸企業にも賃貸料の五%を最大に五百万円まで五年間、市が助成し、さらに工場などを建設した場合の固定資産税も優遇すると、十二月市議会に条例改正案を上程するとのことです。さらに御坊商工会議所は、御坊市民の情報提供で企業誘致が実現した場合に、一件百万円の成功報酬を支払う誘致促進活動を始めました。私たちも、みずからが企業誘致の先頭に立ち、努力していく覚悟でありますが、お互いに力を合わせて頑張っていこうではありませんか。県知事初め県当局のさらなるご尽力を心からお願い申し上げ、私の一般質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの花田健吉君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず県の美化意識の向上についてのご質問でございますけれども、これからの時代、和歌山県はやはり環境とか自然とか、そういうふうなこの県が持っているよさというものを最大限に活用していく必要があると思います。そのときに、そういうものを求めて和歌山県へ来たけれども、意外と汚いな、ごみは落ちているしというような話だと、これは思ったような形にはならない。きのうのご質問の中にもありましたけれども、内川の中をさらってみたら、ごみの袋がどんどん落ちていたとか、こういうふうな意識ではなかなかよくならないと思います。それから看板なんかも、これはごみではありませんけれども、不統一にけばけばしいものがあるというふうな状況、こういうふうなものも改めていく必要が僕はあると思っています。
 そういうふうな中で、こういうこともなかなかきっかけがないと大きな運動にならないというふうなことがある中で、世界遺産の登録というのは、今回の場合、ほとんど和歌山県がみんな入るような世界遺産になってきますので、このきっかけとしては非常に私はいいものだと思っておりますので、この高野・熊野の世界遺産登録に挙げてのいろんな運動、きのうのご質問の中でも答えましたけれども、そういうふうな中に県土の美化ということを一つ大きな要素として入れてやっていきたいと思いますし、そしてそれには県下の市町村とかNPOというふうな団体、例えば新宮では、ウミガメの海岸をみんなで、そして京阪神からも人が来て清掃しているというような動きもあるらしいし、全くやっていないというふうなことではないんですけれども、もっともっとこういうものを支援してやっていくような方向にしていきたい、このように思っています。
 それから臨床動作法というのは、私も専門ではありませんので、正直言ってこのご質問があるまで全然知らなかったわけです。だけれども、今、父兄の方なんかが物すごく効果があるんだ、そして子供にそういうことをさせなかったがために、将来立ち上がれなかったというふうなことになったときの悔いといいますか、そういうふうなものがあるんだというようなお話を聞いて非常に感銘を受けました。和歌山県にも専門家の人がいると思いますので、こういう人が積極的に臨床動作法を勉強し、そしてまたそれが和歌山県の障害を持っている人の機能回復ということに役に立つように取り組んでいきたいと思います。
 それから、東南海・南海地震についての家屋倒壊の話でございます。
 地震については、今、地震が起こってつぶれた家を建て直すときのお金を直接、保険制度みたいに出そうというような動きはあるんですけれども、やはり何といっても大事なのはつぶれる前に手当てをするというふうなことだろうと思います。特に木造家屋を中心に非常に老朽化の進んでいる家が多いので、こういう家については早急に対策が求められることから、今、国に対してもそういうふうなことの制度化を要求しているんですけれども、ただもう既によその自治体では県独自でもそういうことを始めているところがたくさんあります。そういうふうな中で、和歌山県も東南海・南海地震ではある意味ではメッカになっているわけですから、おくれてしまってはいけませんので、単独でもいろんな施策を考えていきたいというふうに思っています。
 その中で、ご示唆にありました、まあ緑の雇用を進めているんだけれども、なかなか県産材のはけ口がない、そういうものも活用した耐震補強はどうかと。私は、これはもう大賛成です。木の強度ということについてはいろいろ問題があるので、これですべてが解決するとは思いませんけれども、十分筋交い等に間伐材や県産材は使えると思います。そういうことについて早急に検討を始めたいと思いますし、そしてまたそれは美化というか景観という意味からも、まあ命と景観を一緒にするとおかしなことになるんですけれども、景観という面からも非常に僕は大事だと思います。白川郷とか、こういうふうなところが皆からもてはやされるのも、いろんなものを直すときも木でやってきているということがあるんで、和歌山の町も村も、もしアルミサッシの窓枠のかわりに木の窓枠みたいなものを使っていたらどれだけすばらしい景観だったかなと思うところがたくさんあるわけです。
 これからは、そういうふうなことを売りにしていかないといかん時代ですので、地震と売りとを一緒にするというのはちょっと不謹慎かもしれませんけれども、いろんな施策を一つのことを目的に行うんではなくて、複合的な効果を上げていくようにするということは非常に大事なことですから、そんな観点から県産材を使った耐震措置ということについては、本当にこれは僕は大いに前向きに考えていきたいと、このように思っています。
○議長(尾崎要二君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 環境美化施策についてのご質問でございますが、自然環境や地域の美化に対する意識、関心を高めていくためには、県民一人一人が理解と認識を深め、地域、職場、家庭、学校など多様な場所においてさまざまな自発的活動を総合的に実施していく必要があるものと考えております。このため、模範的な取り組みに対して、わかやま環境大賞での表彰を初め、NPO等民間団体への支援を行うとともに、環境保全に取り組む方々と共同でフォーラムを開催するなど、活動の輪を広げるための取り組みを行っております。また、去る十一月二十九日には、県民の方々にごみ問題の理解を深めていただくため、紀南地域廃棄物シンポジウムを開催させていただきました。このシンポジウムでは、「百年たっても美しい紀南」というテーマが参加者の共通の認識となったところでございます。世界遺産に対しましても、こうした共通のテーマや認識を持つことも大事なことであると考えてございまして、世界遺産登録推進三県協議会において、例えば植物を折らない、ごみは捨てずに持ち帰るなど、参詣道を守っていくため、公募による共通のルールの策定を行っております。今後、これをポスターやパンフレットに掲載するなど、世界遺産のみならず環境への認識、心がけとしてその普及啓発に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) 動作法の今後の対応についてお答えいたします。
 動作法についての効果、また保護者の皆さんの大きな期待について、改めて今回認識したところでございます。
 さて、本県の臨床動作法への取り組みでございますが、現在、子ども・障害者相談センターの相談業務や児童福祉の関係者を対象とした動作とイメージを用いたストレスマネジメント講座に取り入れているほか、知的障害者更生施設の由良あかつき園で、対象となる児童と保護者の皆さんを対象に動作法の指導を毎月一回実施しております。その際、養護学校や障害者施設の職員に対する研修も実施しておりますが、今後も関係者の認識を深めるとともに、普及し、すそ野を広めるため、動作法に関する情報提供や人材の育成など研究してまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 東南海・南海地震の津波対策の関係でございます。
 まず県内の海岸保全区域の関係でございますが、県内では百七十七カ所の海岸保全区域が指定されておりまして、その堤防や水門などにつきましては主に高潮対策として整備しておりますが、既存の施設を正常に機能させることにより、津波に対しても一定の効果があるものと思われます。このため、施設の点検と補修が現時点では重要であると考えております。また、その施設管理につきましては、本年九月二十八日に行われました沿岸二十一市町の津波避難訓練において、一部の市町で実施されました水門等の閉鎖訓練、その結果を参考に、よりよい施設管理の方策を検討しているところでございます。
 今後の対策でございますが、現在県全体で行っております津波被害想定の結果をもとに、市町村との連携を図り、ソフト対策及びハード対策の総合的な組み合わせにより安全性の向上が図られるよう検討するとともに、国に対しても津波対策が円滑に進捗するよう財政的支援を働きかけてまいります。
 次に家屋の耐震強化推進と紀州材、間伐材の活用でございますが、木造住宅に対する耐震補強は、筋交いや金物での補強が一般的に行われております。議員ご指摘の紀州材、間伐材が簡便で安価な耐震補強材として活用できるかどうか、材料や工法などについて関係部局と連携しながら、具体的に調査研究を進めてまいります。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) ご質問の企業誘致の現状と県下の企業団地の状況等の二点につきまして、一括して答弁させていただきます。
 初めに企業団地の状況についてですが、誘致を目的としている企業団地は十五団地、約百四十七ヘクタールとなってございます。このうち、分譲済み面積は約六十五ヘクタール、四四・三%となってございます。
 次に企業誘致の現状につきましては、昨今の経済状況から、各企業は組織のスリム化や生産拠点の海外移転などを図っており、加えて地域間競争等により誘致活動は大変厳しい状況となってございます。こうした中、本県では、最近の企業進出の動向や他府県の取り組みなどを踏まえ、思い切った優遇制度の改正を図るとともに、企業の情報収集や企業訪問を強力に行うなど、さまざまな角度から強力に取り組んでございます。その結果、本年度、製造業では三社が相次いで操業を開始し、情報通信産業関連でも四社の進出決定を見るなど、相当の成果を上げてまいりました。今後とも、地域経済の活性化や雇用の確保を図るため、地元市町村を初め関係機関との連携を一層密にしながら誘致活動に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 企業局長西 芳男君。
  〔西 芳男君、登壇〕
○企業局長(西 芳男君) 企業団地の現況と企業誘致についてのご質問のうち、二点についてお答えいたします。
 まず御坊第二工業用地についてでございますが、平成七年度に三区画、約二十七ヘクタールを売り出し、一区画約八ヘクタールを売却、残り約十九ヘクタールが未売却用地となってございます。残り二区画については数社からの問い合わせがございましたが、希望面積の不一致あるいは用水の供給量の不足、また分譲価格の問題などにより売却に至らなかったところでございます。
 また日高港企業用地につきましては、来年春の供用開始を予定してございますけれども、本年八月から十八区画、約九ヘクタールを売り出したところ、五区画、約一・五ヘクタールの分譲・賃貸の申し込みがあったところでございます。
 企業局では、売り出し価格を見直すとともに、進出企業の初期投資の軽減を図るための賃貸制度や進出企業を紹介していただくことによる成功報酬制度を創設して売却の促進に努めてございます。企業誘致につきましては、今後も厳しい状況が続くものと思われます。企業局といたしましては、関係部局はもとより、御坊市を初め地元関係機関との連携を図りながら、地域の振興、活性化に資するよう積極的に取り組んでまいります。
 また、先ほど花田議員から力を合わせて頑張っていこうという力強いお言葉を賜りました。本当にありがとうございます。今後とも、議員の皆様方の積極的なより一層のご支援をお願いいたします。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十三番花田健吉君。
○花田健吉君 もう、質問ではありません。要望だけです。
 県土整備部長に、先ほど水門の話が出ていましたけれども、まだ水門のない河川もあると思います。私の住んでいる印南川というのはまだ水門がありません。ただ、ここは祭りのお渡りという儀式がありまして、水門がその地域に合うかどうか、それはちょっと別問題ですが、二十一年の津波災害のときは、印南町の役場のところまで漁船が津波によって送られたというか乗ってきたということも過去にはありますので、地域住民の祭事のことにもかかわりますから、水門をつけてくれという話ではないんですけれども、現時点でも水門のある川とない河川もありますので、その辺調査していただいて、地域住民の皆さんのご意見も賜りながら、水門については効果はあるという調査ですので、漸次調査していただいて、もし希望があれば、厳しい予算の中ではありますが、そういう地域住民の期待にもおこたえいただきたいというふうに思います。
 動作法に関して、知事のご答弁をいただいて本当にありがとうございます。私自身も知事同様、動作法についてそんなに造詣が深いわけではありません。ただ、先ほどの知事の答弁でもいただいたように、こういう動作法を受けるということよりも──私もお母さん方とお話しさせていただいたんですが、今回この問題を取り上げるというのは、今現在、あなた方が受けておられる方のためにするというのはもちろんですけれども、それよりもまだこれから生まれてくるであろう、この動作法によって、ひょっとしたら機能回復がされて社会復帰ができるであろうという未来の子供たちのために啓発と、それをまた支える体制をぜひこの際ご認識いただいて整備していただきたいというのが今回の質問の趣旨でございます。それにのっとった知事のご答弁をいただきましたので大変安心しているわけですが、再度、要望させていただいて、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で花田健吉君の質問が終了いたしました。

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