平成15年12月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第百四十九号及び議案第百五十七号から議案第百七十九号まで、並びに報第八号】
  【日程第二 一般質問】
○議長(尾崎要二君) 日程第一、議案第百四十九号及び議案第百五十七号から議案第百七十九号まで、並びに知事専決処分報告報第八号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十八番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、一般質問に立たせていただきます。
 まず冒頭に、去る十一月二十九日、イラクにおいて凶弾に倒れた奥克彦大使、井ノ上正盛一等書記官に対し、謹んで哀悼の誠をささげたいと思います。
 奥克彦さんは、私の大学時代、二年間同じ語学クラスで机を並べて学んだ奥さんの妻恵美子さんとともに、親友、同級生であります。私と一緒に学ランを着て大学へ通い、一年のときはラグビーに明け暮れ、外交官志望であった彼は特に二年生より目覚ましく一生懸命勉学に取り組み、外交官試験に見事パスした、おおらかでさわやかな人柄のスポーツマンでありました。いかにもみずから体を使って現場へ赴いて、自分の目で見て行動することを是とする、日本のために真の外交官としての生きざまを貫いた男であったと思います。悲しく寂しい限りですが、このお二人の死を決してむだにせぬよう、日本政府のイラク復興支援、平和の回復に対する真摯な取り組みを要望したいと思います。
 それでは、通告に従いまして順次一般質問をいたします。
 まず、和歌山港みなとまちづくりについてであります。
 和歌山下津港本港区は、明治時代には沿岸航路の定期船寄港地として栄え、それ以降、木材・綿織物等の取り扱いで大いに盛り上がったこともありましたが、今では埠頭用地、港湾関連用地、そして工業団地とそれぞれ遊休地が多く、非常に利用効率が悪いと言わざるを得ません。定期コンテナ船の増便もなかなか難しい、取扱量の目立った増加もすぐに見込めない状況であります。人が集まるところといえば中央卸売市場とフェリー乗り場の定期便がある時間帯ぐらいで、あとは寂しい港であります。
 昨年十一月に国の交通政策審議会答申において「みなとまちづくり」が提言されております。港町というのは、そもそも海と町との接点にあります。海というものは不思議なもので、そこに働く人の活気が感じられると自分自身も元気づけられる、そんなものであります。港は、元来、地域の歴史文化、生活、そして産業が集まり散ずるにぎわいの場であるはずです。和歌山港の整備されるはずの緑地帯も、まだその名には遠く、雑賀崎の高台から見ても無彩色のコンクリートの敷地が続いているようにしか見えません。
 中央市場からフェリー発着場の間は、例年七月二十日の海の日には港まつりの花火で市内外から二十数万人の人が押し寄せて夏の風物詩を楽しみますが、この地域に人が集まり、食事、買い物を楽しみ、海の風情を味わいながら散歩、休憩できるような場所につくり上げていき、市民レベルで港に親しみ、港の町づくりをしていって、子供たちにも港に来て港湾の経済活動、税関、作業現場、貨物船を初めさまざまな船や上屋・倉庫、そういうものを見学してもらって生きた体験ができるような総合学習の場にしていくようにすれば、港も一般市民に親しまれ、活気を取り戻して、ともすれば暗いイメージを払拭して港の遊休地の利活用の機運も芽生えてくるのではないかと思うのです。
 これまで国は、ともすると港湾整備を中心に取り組んできており、地元レベルの利活用にまでなかなか踏み込めていなかった側面があります。港湾管理者である県とともに市町村あるいはNPOなどの市民団体、地元企業と連携しながら和歌山港を活気づけていくみなとまちづくりを行っていく、そんな活動のお手伝いをしていけたらと私は思っております。
 地方各港で個性を生かしたさまざまなみなとまちづくりが既に展開されております。
 例えば下関港では、オープン型の観光施設として、市場の競り終了後にオーペンスペースにいすを並べて、仲卸が売っている魚をお客さんが買ってそこで調理するといったスタイルや、隣接地の水族館海響館の周囲にオープンカフェを設置してくつろぎのスペースをつくって人気を博しております。
 清水港は、富士山を借景にした三保の松原を有する自然景観のよさに恵まれた日本三大美港の一つに挙げられますが、ほかの港にもよくあるように不つり合いな煙突や倉庫によって殺伐とした港にもなっていたのを、民間の事業者、行政、学識経験者が官民一体となって平成四年度より清水港・みなと色彩計画によって、自然景観と調和した人工景観を創出しようとして色の塗りかえによってイメージアップに成功しております。
 能登半島の七尾市、ここも万葉の時代から港中心に発展した能登の中核都市でありましたが、昭和六十年代に港湾産業が衰退し、能登有料道路が七尾から外れたりして地域経済の落ち込みが進行しておりました。地元が港の再活性化策として七尾マリンシティ推進協議会を立ち上げ、能登国際テント村を出店したり能登食祭市場をつくったりして、県市のみならず企業も協賛して十一年間で通算一千万人の入り込み客を数えるほどになりました。そこに能登・和倉の旅館も活況を呈することができるようになったそうであります。
 港も、人流・交流の拠点として魅力あるものをつくり上げれば地方の経済の活性化に大きく貢献できる一つの実証となったわけです。
 そこで質問ですが、和歌山港を一般県民・市民が日ごろの生活の中で親しんで利活用できるようなみなとまちづくりについて、知事の所見をお伺いいたしたいと思います。
 次に、和歌山港に隣接する雑賀崎地区から片男波地区には美しい海岸線が続きます。ここも、漁港を含めた一種の港であります。ここには生活の息吹があり、海辺、そして公園の散歩に最適の場所であります。強いて大きなお金をかけて人工の手を加える必要はありません。
 県立和歌公園は、多くの市民あるいは観光客の散策スポットとして親しまれております。和歌山市の方で整備いただいている海辺の遊歩道が海辺の道ならば、和歌公園の山合いの道は山の道であります。近自然工学で有名な山脇正俊先生、この方も環境に優しい新しい道づくりを提唱されております。常日ごろ、地元の人々を初めボランティア団体等が付近の海岸清掃等一生懸命取り組んでいただいておりますが、地域が主体的にそうした活動を行っていくことは今後とも町づくりには前提として必要な要素でありましょう。
 県立和歌公園全体を見渡して、和歌の浦という歴史文化に彩られた地域の中で、公園内の海辺から、そして山合いから望み見る風光明媚な景観を持った県立公園としての存在意義をいま一度考えていただいた上で、地元中核都市和歌山市とも十分連携をとっていただいて、市民・県民に気軽に、身近に親しまれる和歌山、和歌の浦の再発見のために、高齢者や障害者にも優しい、細かいところへの平生からのさらなるご配慮を要望したいと思います。
 去る十一月の暖かいべたなぎの日に、有志で雑賀崎漁港より底びき網漁船に乗せていただいて、約八時間足らずの間、水軒沖から白崎海岸手前沖まで船を動かしていただきました。網にかかってくるプラスチック容器類や大きなシャベルといった金属片等たくさんのごみの量、それにヘドロにも驚きましたが、クルマエビ、モンゴウイカ、カニ類、ウシノシタ、カレイ、巻き貝等、たくさんの獲物がとれました。子供たちに青い海といその潮風を感じながら和歌浦湾に生息する魚介類を見せてあげて、さわらせてあげて、食べてもらって和歌浦の魅力を肌で感じる一種の体験学習の機会になればと、そういう意図もありました。獲物の中に、タツノオトシゴやはさみや足をコンパクトに折り畳んだ丸い石のようなカニや、細長い木の枝のような魚や、アンコウの稚魚など珍しい生き物もいて、子供以上に私自身も楽しみ、勉強させていただきました。
 以前、雑賀崎の方に双子島の大島の下にワカメなどの海藻やアワビ、イセエビがいっぱい生息していると聞いておりましたが、魚介類の産卵場所にもなる藻場の育成、それに高級魚でなくてもいいのです、和歌浦ならではの地の魚を育ててふやして、旅館で地魚料理のコースを観光客、宿泊客に食べていただけたらどんなにか満足していただけるかと思いをはせました。
 加太でも尽力されている温泉を掘って高齢者、障害者の皆様にも介護保険を利用して、できるだけ経済負担をかけずに中長期の保養・療養として旅館・ホテルに宿泊いただき、海辺の遊歩道をゆっくり景観を楽しみながらリハビリを兼ねて歩いていただく、そしてリピーターの観光客を県内外でふやせるよう地元の住民、市民参画で、地域的盛り上がりで、せっかく有する天与の自然資源が活用できればと改めて考えさせられた次第です。
 最近、紀南の水産試験場増養殖研究所の方のお話を聞かせていただきました。オニオコゼの種苗を生産し、中間育成しているとのこと。それなら、日ごろおなじみの根魚であるカサゴやメバル、アイナメのような魚を同じように生育しながら養殖できないものかと思いました。成魚への生育にかかる年月、コストの問題もありましょうが、和歌山市周辺の海において身近で、それでいておいしい魚の栽培漁業について、藻場の育成とあわせて現況と今後の施策を農林水産部長にお伺いいたしたいと思います。観光振興に、漁業振興に、そして漁港におけるみなとまちづくりのためにも必要だと考えるからであります。
 二番目に、和歌山市内の河川のしゅんせつについてであります。
 紀の川の河口は、平安期に和歌川より和歌浦、鎌倉期には水軒川の大浦、さらに近世になって現在の流路をとるようになったと考えられています。江戸時代には和歌川、水軒川の旧流路は、紀の川と連絡して水運の役割を果たすことになったようであります。
 さて、和歌山港につながる水軒川ですが、黒く濁った悪臭の漂う川として、また護岸も傷んできており、地元でも何かと要望の多い川であります。紀の川河口の薬種畑地区と南港を結ぶ海水の川であり、整備すれば、それこそ港近郊でもありますし、小舟でも浮かべて気軽に遊べる川であります。
 私の子供のころは既に黒ずんでおりましたが、水軒川河口でよく釣りをして、セイゴやフッコが釣れたものです。ぜひ、みなとまちづくりの一環としてもしゅんせつ工事を積極的に推進いただきたいと思いますが、いかがですか。
 しゅんせつといえば、和歌山市内の内川のほとんどに言えることであります。内川とは、和歌川本川、市堀川、大門川、有本川、真田堀川を総称した呼び名ですが、特に大門川は、羽柴秀吉の紀州攻めの際の太田城水攻めで出てくる川です。近年、沿岸の染色工場の廃水もあって水質汚濁が進んでおりました。
 去る十一月十六日、和歌山市の一万人大清掃の際に、大門川沿いの新在家の自治体の有志の皆様で、そろそろ水の冷たい中、川にお入りになって二時間かけてごみの引き揚げを行ったのです。わずか約十メートル──十メートルしか進まなかったんですね──その区間で、何と単車、自転車、農機具、家電品、缶、瓶、長い黒ビニール、それに一般ごみの入ったごみ袋、こんなものまで次々と引き揚げられて、川がまるで廃棄物処分場のごみだめのようになっていたのです。
 当自治会では、長年にわたり清掃作業に取り組んでおられます。最近は、コンクリートブロックの堤防にしていただいたおかげで草刈り等の作業は多少は楽になったとはいえ、川の汚れは年々悪化して悪臭も漂い、心ない人たちのために、粗大ごみを初めとしてごみの投棄は後を絶ちません。不法投棄に対する行政処分はもちろんのこと、川ざらいというか、しゅんせつが急がれます。堆積土砂だけでなく、大小いろんなごみがあるので、まことに厄介であります。
 江上議員、角田議員も議会で取り上げていただいておりますが、大門川を初めとする和歌山市内の内川、土入川等のしゅんせつなどについて、瀕死の状況を救っていただくために取り急ぎの施策をお願いいたしたいと思いますが、いかがですか。県土整備部長にお尋ねいたします。
 これで一回目の質問を終わらせていただきます。ご清聴、ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 和歌山下津港を利用したみなとまちづくりについてのご質問でした。私も、本当にご質問のとおりだと思います。今までは、どちらかというと岸壁をつくるとか、そういうふうなことに港湾整備の中心が置かれてきたわけですけども、やはりこれからの時代はソフトを中心に、人が集まりやすい地域整備という形で行っていくということは非常に大事なことだと思います。
 そういう中で、私もよく和歌山下津港へは行くんですけども、本当にある意味では無味乾燥といいますか、一般の人にはあんまり関係のない場所という感じになってるんですけども、うまく掘り起こしていけば養翆園もありますし、それからこれは港湾区域ではないかもしれませんけども、番所庭園からずうっと田の浦、和歌の浦へ通じる付近のすばらしい景観というふうなものがあるので、こういうふうなものを、余り港湾だとかそれ以外の地域だとかそういうふうな感じじゃなくて、連関する、しかも身近な集まり場所として整備していくというふうなことが私は非常に大事なことであると思います。
 私も、和歌山へ初めて来たときに、和歌浦の地域の景色を見たとき、こんな日本三景みたいなところがよくこんな町の中にあるなというふうに驚いたのを覚えています。今はもうなれてしまったのでそういう感覚がなくなってしまったんですけども。いずれにせよあの地域は、本当にそういうことから言えばかけがえのない地域です。ただ、今までどおりのやり方ではもうらちが明かないところまで来てるんで、見方を変えてやっていく必要があるし、そしてまたそれだけのことをやっていく値打ちのある地域だというふうに私は思います。
 そして、今まではともすれば、我々もいけないんですけども、和歌浦とか、それから下津港はまあ県が管理者なんだけども、何となく和歌山市の仕事というふうな感覚が非常に強かったんですけども、これからはどこの仕事というふうなことじゃなくて、県、市、そして住民の人が、三者がスクラムを組んでよくしていくというふうな形にしないと、こういうふうな時代ですのでなかなか大きな改善ということは見られないと思いますので、また議員各位のご意見なんかも入れながら積極的に取り組んでいきたいと、このように思っています。
○議長(尾崎要二君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 和歌山市周辺の海における栽培漁業と藻場の育成についてお答えいたします。
 藻場の育成についてでございますが、議員ご指摘のとおり、藻場は窒素、燐の除去や二酸化炭素の固定を行うなど漁場環境の改善機能を有するとともに、水産生物の幼稚仔の育成場、あるいはえさ場や産卵場としての重要な機能を有しております。しかしながら藻場は、近年、全国的に減少傾向にあります。その回復を目指して県内各地でその造成に取り組みを進めておるところでございます。
 和歌浦湾においては、平成十五年度から試験礁の設置や水質・底質調査などの環境調査を実施中であります。その結果を踏まえて、最適な場所や工法等を決定して平成十六年度から藻場造成工事を行うこととしています。
 栽培漁業につきましては、第四次栽培漁業基本計画に基づき、財団法人和歌山県栽培漁業協会においてクルマエビを放流するとともに、マダイ・ヒラメ・アワビなどの種苗を計画的に生産し、放流しています。カサゴ・メバル・アイナメについては、平成十七年度を初年度とする第五次栽培漁業基本計画の策定に向けた取り組みを始めておりますので、地元の要望、適地性、費用対効果など、さまざまな観点から栽培漁業対象魚種としての可能性を検討したいと考えております。
 漁業を地域の振興策として活用し、また水産資源の維持のための取り組みなど漁業への理解を深めていただくために海遊体験事業を行っていますが、雑賀崎漁協では本年度から底びき網漁業を活用した取り組みを始めました。参加者のアンケート結果も非常によく、今後とも地域の活性化につなげていきたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 水軒川、大門川を初めとする和歌山市内の河川しゅんせつについてでございます。
 良好な河川環境を保全・再生することは大変重要なことだと考えており、大門川で行われているような地元自治会等による河川の清掃や草刈りなどの河川愛護活動は、河川環境の保全に大きな役割を果たしていると認識しているところでございます。県といたしましても、和歌山市内の河川の水環境改善のため、現在、和歌川、水軒川のしゅんせつに取り組んでいるところでございますが、引き続き工事の推進に努めてまいります。
 また、大門川のしゅんせつにつきましては、河川の流下能力向上とあわせて、河床掘削工事として実施することとしています。掘削を行うに当たっては、まず護岸及び橋台の補強工事が必要であり、現在、護岸の補強工事を行っております。それらの工事が終わった区間から順次掘削工事を進めることとしております。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十八番長坂隆司君。
○長坂隆司君 まず、みなとまちづくりについて知事よりご答弁いただきました。港に行ってみたくなるような、例えばライトアップされて港夜景がきれいだとか、海を眺めながらいその香を感じながら食事ができるとか、横浜の山下公園とまではいかなくても防潮堤沿いに緑の木々が美しくてベンチで休憩や談笑ができるような、そんな県民・市民の憩いの場所としての港、これを市民レベルでつくっていこうという機運を盛り上げて、まず住民が港を活用することから始めるべきではないかと思います。そのためにも、例えば港内の老朽化したような倉庫、建物を民間に貸し出していただいて、それこそ港のSOHO、そういうものにしてみてもおもしろいのではないかなと思います。
 次に河川のしゅんせつの件ですが、先ほど申し上げたように、一部の市民のマナーが実によろしくないわけで、粗大ごみやごみを入れてぱんぱんになったごみ袋を川へ放り込むなんてことは、許されていいものではありません。時代的傾向としてごみの有料化が進んでまいりますと、近い将来、もっと産廃のみならず一般廃棄物の不法投棄も増加してくるものやと思います。どうか、環境生活部と県警当局におかれましても厳正な行政処分、適正な対処をご検討いただきたいとご要望申し上げまして、一般質問を終わります。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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