平成15年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(浦口高典議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○副議長(吉井和視君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十五番浦口高典君。
  〔浦口高典君、登壇〕(拍手)
○浦口高典君 議長のお許しを得まして、通告に従い一般質問をさせていただきます。新生わかやま県議団の浦口高典でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 質問に入ります前に、一言申し上げます。私は、この四月の県議会議員選挙初当選以来、今回初めてこの伝統ある和歌山県議会の壇上に立たせていただくことに大変な感動を覚えるとともに、新たな責任の重さに身が引き締まる思いでございます。と申しますのは、私の政治の師は第三次中曽根内閣で総務庁長官を務めた故玉置和郎先生でありますが、玉置先生は、昭和六十年、ふるさと和歌山の発展のためにと言っても過言ではない半島振興法という法律を国会で成立させました。その前に玉置先生は肝臓がんを患っており、一日も早く手術をしなければ命が危ないと言われながらも、この法律の成立を見るまでは断固手術を受けないと拒み続け、結果として著しく命を縮め、昭和六十二年一月二十五日に他界されました。この政治家としてのすさまじい生きざまをそばで目の当たりにしたとき、その魂の万分の一でも引き継ぎ、玉置先生のこよなく愛したこの和歌山のために仕事ができる政治家になりたいと心に期すものがございました。しかし、何の基盤も持たない一人の人間が政治の場に立つことは並大抵のことではありませんでした。過日、十年表彰を受けられた向井先生は、六年間で二回の落選を経験されたと言われておりましたが、私は今から十年前、初めて衆議院選挙に出馬以来、連続三回落選いたしました。落選のたびに何度もくじけ、その志が崩れそうになってきたとき、私を心から支えてくれたのは支持者の皆さんと家族、そして玉置先生の遺言の中にある一節であります。それは、「政治家が自分の命にかえてでもという覚悟は一朝一夕にできるものではない。人様からたたかれ、笑われ、突き放された中からこの国の一大事に対処する腹というものができるのだ」、という言葉でした。この言葉を、砂をかみ、泥をなめるようなつらい日々の中で何度も何度もかみしめながら、きょう傍聴席にもお越しでいらっしゃいますが、多くの支持者の厚いご支援をいただき、はい上がってまいりました。それだけに、知事初め県幹部の皆様には、小手先のご答弁ではなく真剣なご答弁をよろしくお願いいたします。
 さて、玉置先生の言われたこの国の一大事の「この国」とは、私にとりまして、この和歌山県であり、地元和歌山市であります。私は、今この国、和歌山がまさに一大事を迎えていると思っております。それは、一言で言って人口が激減する時代に入ってきたということであります。少子高齢社会というのは、だれもがまくら言葉のように使っておりますが、他県に比べて既に高齢化率が高く、また若者が県外へどんどん流出している県では、単なる減少ではなく、激減と言ってもおかしくない状況が起こってくることは火を見るより明らかです。それが、まさに我が和歌山県であります。これから二年後、つまり平成十七年をピークに、日本全体の人口が減少傾向に転じるということは皆さんもよくご存じですが、四十七都道府県すべてで減少するわけではありません。これから、まさに地域間格差が著しくなってまいります。ちなみに和歌山県は、二年後に人口が減少に転じるどころか、既に昭和六十年の約百九万人をピークに、少しふえた時期もありましたが、全体としては二十年近く減少しております。
 ここで、お手元にお配りした人口推移表をごらんいただきたいと思います。(パネルを示す)ここでは大きく引き伸ばしたパネルにいたしましたが、まず全国では、やはり平成十七年にピークになりまして、それから緩やかに人口が減っております。その下は、和歌山県と同じ近畿地区の滋賀県を比較した図であります。和歌山県は、このようにずっと緩やかなカーブを描いて今減少傾向にありますが、滋賀県はこのように人口が平成四十二年までずうっと上がっているということなんですね。これ、数字で言いますと、国勢調査によると昭和三十年、和歌山県が人口が初めて百万人台に乗ったときに、滋賀県は約八十五万人でした。それから、二十五年後の昭和五十五年では約百九万人で並び、さらに二十年後の平成十二年には、和歌山県の約百七万人に対して滋賀県は約百三十四万人と、既に二十七万人以上の差がついて完全に逆転していることがよくわかります。また、国立社会保障人口問題研究所の推計によると、平成四十二年つまり今から二十七年後には、滋賀県が百五十三万人に対して和歌山県は何と八十八万人と、九十万人をも切ってしまうとされています。これを激減と呼ばずして何と呼ぶでしょうか。しかも、このとき高齢化率は、滋賀県の二五・一%に対して和歌山県は三三・四%と、八ポイント以上高くなっております。和歌山県の人口推移を私なりに命名しますと、昭和三十年から五十年までは滋賀県と比べると緩やかですが人口の成長期であり、昭和五十年から平成十二年までは停滞期であり、平成十二年以降は衰退期で、しかも減少率がかなり激しくなってきております。
 また、二番目の最多人口を一〇〇としたときのグラフを見ていただくとよくわかるとおり、滋賀県はまだ人口がふえ続けております。平成四十二年が一〇〇ですが、全国的に見ると、やはり平成十七年を一〇〇に緩やかに減少に転じ、さらに和歌山県、和歌山市の減少ぶりが一目瞭然であります。ちなみに和歌山市の推計人口は、地域づくり推進実行委員会のデータですが、これによると平成四十二年には約二十七万人と、最多人口の昭和五十七年の約四十万人のときに比べると実に約六七%、つまり三人いたのが二人になってしまうという激減ぶりであります。
 ここで誤解のないようにお断りしておきますが、私は人口が減少するのと高齢化率が高くなるのが悪いと言っているのではありません。また、決して悲観的に考え、不景気をあおるわけでもありません。現実の状況と将来の推計を述べているだけです。
 さて、ただここで単純な疑問があります。それは、今、多くの県民の皆さんが政治に求めている大きな役割は景気回復と地元経済の活性化でありますが、人の数が目に見えて減ってきて、高齢化率がさらに高くなる地域で、果たしてそれが可能であるのかどうかということであります。それに対して、ここで言う人口、つまり定住人口がふえないのであれば交流人口をふやすとか、人口が減ってもIT等で効率よく経済成長を考えるとかという発想はわかります。しかし、そのようなことはもう既にどこでも考えて取りかかっていることでありますし、実際に過去数年でIT等で経済が急成長し、雇用が大きく伸びたという話は聞いたこともありませんし、実感として感じられません。
 小泉首相は「改革なくして成長なし」と言いますが、そもそも和歌山では成長という概念そのものを取り除いた方がいいのではないか、そのように私は感じます。もちろん、個々の企業や業界ではまだまだ伸びる余地はあると思いますが、あくまでも県全体としてということであります。
 それでは、おまえはそれをどのように表現するのかと聞かれますと、小泉流に言うなら「改革なくして満足なし」という概念で今後の県政の方向づけをしていった方が望ましいのではないかと思います。人口激減でさらに高齢化率の高い社会では、経済成長期のような数字の成長を追うこと自体、無意味ではないでしょうか。それでは、私の言う満足とは何か。それは、県民一人一人が日々の生活を安全で安心して送れ、生きがい、やりがい、そしてここに暮らすことに誇りを持てることであり、その一人一人の満足の集合体が地域社会であり、大きく言うと県全体の満足につながると思います。そのために、いろんな意味で旧来のシステムを大胆に改革し、県民一人一人が満足を実感できる努力をしていかなければなりません。それにはまず第一に、政治や行政に携わる者の意識改革と発想の転換が必要であります。
 今回初めての質問ということでもあり、まず自分の基本的な考え方を述べさせていただきましたが、和歌山県は人口激減で、さらに高齢化率が高い県になりつつあるという共通のご認識を持っていただき、思い切った独自性のあるご答弁をお願いいたします。また、すべてとは言いませんが、和歌山県は今元気がありませんので、どうか県民の皆さんに勇気を与え、元気になるようなご答弁をよろしくお願い申し上げます。
 まず、商工労働部長にお尋ねいたします。
 部長は、もちろん和歌山県内の商工業の振興と雇用の促進ということについて、だれよりも真剣に考えられて、直接事業所に出向かれ、生の声を聞かれていると思いますが、先ほど来何度も繰り返し述べるとおり、人口激減で、さらに高齢化率の高い社会で、商工業の振興と雇用の促進は果たして可能なのですか。もし可能と言うのなら、どのような形でできるのか、具体的にお答えください。
 次に、企画部長にお尋ねいたします。
 企画部長は、かつて東牟婁振興局長としてご活躍され、地域の実情を熟知されていると存じますが、その現場を知る者としての視点から、地域振興ということについて、だれよりもお考えになっていると思います。それでは具体的に、これから何をもって地域振興を図っていくのか、お聞かせください。また、特に和歌山県以上に和歌山市の人口の減少割合が目立っていますが、これは明らかに約二十年前から住友金属が鹿島に移転したことと、それに対する対応がなされていなかったことが今の状況をつくった大きな原因だと私は思います。当時の政治、行政、経済界のトップクラスの方たちは、このままでは人口が減少し、和歌山の経済はじり貧になっていくという危機感はなかったのでしょうか、どのように思われますか。
 ここで一つ、今議会で問題になるであろうコスモパーク加太について質問をさせていただきます。
 今回の調停に代わる決定では、私は過去のことを蒸し返すわけではありませんが、銀行側は、県の債務保証をとらずに、つまり県議会の承認なくして開発公社に金を貸し付けたにもかかわらず、貸し手側の責任は問われなかったと聞いております。また、県もそれを容認する姿勢のようですが、私の周りでは圧倒的にそれはおかしいという意見であります。貸し手責任もさることながら、人口が今後激減し、さらに高齢化率が高くなり、経済が縮小する和歌山において、住友金属移転の後の例を見るまでもなく、企業誘致など簡単にできないことは明らかであります。結局、県民に負担を押しつけることになるのではないでしょうか、企画部長のお考えをお聞かせください。
 次に、農林水産部長へ。
 南部、南部川等の梅農家は別として、農林水産業等、一次産業に携わる人口が減少し、また後継者も少なくなってきているということはだれもが知っています。しかし最近、打田町のめっけもん広場のように地産地消ということで、地元でとれた農作物を地元で消費していく動きもあり、それは地域経済の活性化にもつながり、また持続可能な循環型社会をつくるという意味からもすばらしいことと思いますが、人口が激減し、高齢化率がさらに高くなる社会で、農林水産業等、一次産業を通じての地域振興についてお聞かせください。
 次に、県土整備部長へ。
 私も、先月の二十六日に東京で開催された東南海・南海地震に備える沿岸四県高速道路整備促進大会と地方の実情に合った道路整備の推進と財源確保を求める決起大会に参加し、国や道路公団に対して強く要望してきた一人として、決して公共事業がすべて悪いと言っているわけではありません。しかし、人口が激減し、県の財政が縮小する時代に入ってきて、本来、産業や生活の手段である道路等のハード面の整備をこれ以上積極的に進める必要が本当にあるのかどうか、正直疑問であります。中国の漢詩の一節に「国破れて山河あり」とありますが、「道できて人はなし」ということにならないのでしょうか。
 卑近な例で恐縮ですが、私の住む和歌山市今福地区では、大きな道路が少なく、迷路のような細い道ばかりですが、その方が高齢化率が既に二八%近くあるこの地区では、激しい車の往来がないことで、かえってお年寄りが安心して通行できると実感しております。ただし、今福地区に道はもう必要ではないというふうに言っているわけではございません。きょうは連合自治会長も来られておりますので、よろしくお願いいたします。県土整備部長の所感をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、環境生活部長にお尋ねします。
 私は、「改革なくして満足なし」という表現でこれからの行政の目標として、県民一人一人の満足度ということを挙げました。しかし、これには幾ら行政がラッパを吹いても、本来主役である県民の皆さんがそれに呼応してくれなければ、結果として意味がありません。そこで、三重県の前北川知事の「生活者起点の県政」ではありませんが、生活者から発するニーズを第一に考える、例えば「生活者発信の県政」というような目標を掲げ、生活者つまり県民の皆さんにも責任を持っていただく県政にすることが大事だと思いますが、部長はいかがお考えでしょうか。
 環境生活部長も、かつて海草振興局長としてご活躍され、とりわけ和歌山市、海南市、海草郡の事情については知事に匹敵するほど熟知されていると存じますが、その現場を知る者の視点と生活者により近い環境生活部としての姿勢をお示しください。
 最後に木村知事へ。
 午前中の森議員の質問にも入れていただきましたが、九月議会の予算委員会において、これからの和歌山県づくりの一つの方法としてNPOについて集中的に質問したところ、知事は最大限といっていいほどNPOについて理解を示してくださいました。いわく、「来年はNPO元年にしたい」、また「NPOで先進県と呼ばれるようにしたい」と。しかもその後知事は、京都市の立命館大学での改革派知事のシンポジウムにおいて、「NPOと連携していく」と、はっきり全国に向けて発信されました。それらの発言に、質問者である私だけではなく、自分たちの力で自立した地域社会をつくっていこうというミッション、つまり使命を持って日々活動している県内外のNPO関係者はどれほど喜び、勇気づけられたかわかりません。私は決してNPOを代表する立場の者ではございませんが、知事にこの場をおかりして厚く御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
 本来ならば、今回そのNPOについて議会や行政、さらに県民の皆さんに理解を深めていただこうと、ここで詳しく説明し、具体的な県の取り組みについて質問しようと思っておりました。そのために、九月の予算委員会の翌日、NPOについて県庁内でも知事のトップダウンだけではなく担当の県民生活課からのボトムアップをお願いしようと、課長と副課長に「新しい公共をつくるための市民活動プロジェクト、通称・NPOプロジェクト」という私の案をお渡しし、検討していただくようにお願いしてまいりました。最近になって県民生活課長から、「NPO元年の重点施策体系図」というのをいただき、早速これをNPO関係者に見せたところ、「これでは前へ進まんな」と、一言でございました。しかし私は、つくっていただいただけで大変感謝いたしておりますし、評価いたしております。ただし、どこまで本気でやるかは別問題ですし、必ず検証させていただきますので、県民生活課長並びに副課長、県庁職員の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
 また私自身、九月十三日、十四日に、全国から七百名余りのNPO、行政、民間シンクタンクのメンバーが集まった「NPO全国フォーラム・イン・北海道」に和歌山から一人参加し、そこで多くのNPO関係者の方と知り合いになり、その後視察に行ったなごやNPOセンターでは、二百十八万都市名古屋市でのNPOへの委託事業についてや、愛知県高浜市では、市長が社長を務める行政の民間委託を管理運営する高浜市総合サービス株式会社の内容、また福島県生活環境部県民グループの担当者からは、福島県のNPOへの取り組み、特にNPO基金の創設とその使い方、さらに同県郡山市の公設民営NPOセンターの実情、そしてまた県内では、やはり私が現地で見聞きした橋本・伊都でのNPOの活動状況や、御坊・日高や田辺・西牟婁におけるNPOの進展ぐあい等について知事にご答弁をお願いするつもりでありました。しかし、この十二月十二日に、わかやまNPOセンターが、六月から数回にわたり開催した政策フォーラムとセンター内で議論してつくり上げた政策提言、ここでは項目だけを挙げさせていただきますが、それは、NPOの基盤整備に向けた和歌山県施策の充実・強化について、一、新しい公共への対応、二、人材活用の具体的取り組み(セクター間人事異動の実現)、三、中間支援機関の充実・強化、四、基本方針の見直しと方針実現に向けたロードマップ(工程表)の作成、五、NPO活動の情報共有と交流の五点を知事に行うとのことです。その中に私の意見もしっかり入っておりますので、今回は重複を避け、質問を控えさせていただきました。どうぞ知事、わかやまNPOセンターの政策提言に前向きのご回答をよろしくお願い申し上げます。
 ここで、議会や行政、さらに県民の皆様にもご理解いただきたいのは、和歌山でも現状を憂い、嘆き、自虐的に「和歌山あかな」と言うだけで何もしないのではなく、まず自分たちで自分たちの地域社会を生き生きとさせていこうという市民が確実に育ってきているということであります。そして、その先頭に立ってNPO関係者も頑張っております。
 最後に知事に、私は和歌山県の将来を見据えた上で、知事が今やろうとしている改革にかける姿勢と情熱を高く評価しております。それは、新しい時代を切り開こうと、緑の雇用事業やさきに述べたNPO、さらに県庁内の組織改革等、今までだったら恐らく手をつけられなかったことに対し真剣に知事は取り組んでおられるからです。突然ですが知事、ドイツの哲学者カール・マルクスの言葉で、このような言葉があるのはご存じでしょうか。「地獄への道は善意の敷石で敷き詰められている」という言葉です。「善意の敷石」とは、和歌山弁でわかりやすく言いますと、「ええわいしょ、ええわいしょ、みんなで連れもて行ったらええわいしょ」という雰囲気であります。決して悪気はないんですが、時代の流れを見ず、考えず、改めるべきときに改めない、つまりそのときに戦わないと、気がつけば地獄へ落ちていくということであります。どこかの県の人口推移表をご想像ください。
 また最近、東南海・南海地震で注目を集めている歴史上の人物に「稲むらの火」の浜口梧陵翁がいらっしゃいますが、和歌山では、初代県会議長として、また百五十年余り前に日本一古い学校耐久舎、今の耐久高校を創設されたことはよく知られております。余談ですが、県議会ではこちらにいらっしゃいます吉井副議長、浅井議員、松坂議員、そして私の四人が耐久高校出身であります。なかなかの名門でございます。そのエピソードは、安政の大地震のとき、当時の広村の海岸の波が沖に大きく引いて、それを津波の前兆だと気づいた浜口翁は、高台にある自分の稲むらに火を放って村人の注意を集めて高台へと誘い、津波の災害から約四百名の村人を救ったということは、皆さんもよくご存じの、余りにも有名な話であります。
 知事、私は、真の改革者には、先ほどのカール・マルクスの言葉の認識と浜口梧陵翁の決断力と行動力が必要であると確信しております。これからの和歌山県は、本格的に人口激減で、さらに高齢化率の高い社会が確実に来ることを考えれば、この改革のスピードとパワーをさらにアップさせなければなりません。どうか木村良樹知事、真の改革者として生き生きとした和歌山県をつくるために、全国の人たちが「和歌山革命」と評価するほどのダイナミックな木村改革をさらに強力に推し進めてください。私はそのように強く望むところでございますが、知事のご決意をお聞かせください。
 これにて、第一回目の質問を終わらせていただきます。
○副議長(吉井和視君) ただいまの浦口高典君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 今の浦口議員のお話を聞いていて、非常に私も慄然とするものを感じました。近畿でというか、日本の中で成長している県のトップの方にある滋賀県と比べるとなかなか厳しいものがあるわけです。そしてまた、今の和歌山県の置かれている状況は、これは県民がどうとか県政がどうとかということよりも、非常に日本の国の構造的なものを一身に受けているということがあろうかと思います。ただ、そうではあっても、それを甘んじて受けて、そのままこれでいいわというふうなことをしていっていいということではありません。今の時代、はっきり言って一発逆転の大ホームランというふうなことはないと私は認識しておりまして、産業の分野、農業の分野、民生の分野、福祉の分野、いろんな分野で今までのしがらみにとらわれることなく、相当思い切った改革をしていっております。しかしながら、変えていく対象は県民の人ですので、県民の人がもう変わらなくてもいいというふうなことであれば、これはもうこちらとしてそれを独善的に進めていくわけにはいかないので、こういうふうな理解を県民に求めながら、徐々にではなくてスピーディーに、そしてダイナミックに改革を進めていこうというふうなことを考えているわけでございます。
 私自身は、どちらかと言うと、真の改革者というよりは、むしろえせ改革派であるということは、これはもう外で公言しているんですけれども、そのえせ改革派というのは、これは何も悪い意味で言っているのではなくて、例えば県議会議員の考え方とか、県民の考え方とか、市町村長の考え方とか、そういうふうなものを入れていきながら、しかしながら今の状況に合わせて改革をしていく、そういうふうな意味で、私は自戒の念を持ってえせ改革派という言葉を自分に使っているということでございます。今の日本は、このごろ「ゆでガエル論」というのが言われます。おふろの中へ水からカエルをほうり込んでおいたら、いつ飛び出したらいいのかわからないでゆで上がってしまうというふうな状況だと思います。日本の国は、戦後五十八年ぐらい、ずっと右肩上がりの中で、その経済成長の恩恵を国民全員でそれに浴するというふうな社会になってきていたので、なかなかそのおふろから飛び出すことができないというふうなのが今の状況だと思います。しかしながら、ここ二、三年、もうそれではだめだということが外部からも力が働きまして、金融界なんかでは相当大きな改革が行われました。都道府県とか市町村だけが最後の護送船団になると、護送船団になることによって、それがひいては県民、市町村民に迷惑をかけるということにならないように、私一人がというよりは、むしろ県の職員全員がそういうふうな気持ちでやっていかなければなりません。
 そしてまた、NPOとの協働ということについては、先ほどもお答えしたんですけれども、結局、収入もどんどん少なくなっていく、そういうふうな中で自治体がしなければならない仕事は、弱肉強食の世界が来るわけだから余計に多くなる。これをひとり公務員だけがやっていく──公務員というのは月給も高いですし、そういうふうな仕組みというのは、もう日本の国のこれからの時代には合わないということで、行政と市民団体がイコールパートナーとして住民のための仕事を担っていくような社会にしていかなければもうもたないというふうな認識でやっているわけです。
 先ほどのお話では、県が一生懸命つくったやつもこんなんではあかんというふうなお話もあったようですので、またそれに合わせていろいろ勉強していきたいと思いますけれども、議員各位からも積極的な前向きな提言をいただけたら、私どもそれに合わせていろんな仕事をしていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
○副議長(吉井和視君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 人口が減少し、さらに高齢化率の高くなる社会にあって、経済の活性化、産業の振興は、県の持続的な発展や雇用の維持、創出のため最も重要であり、全力で取り組まなければならないと考えております。
 このため、将来の県経済をリードするオンリーワン企業を発掘・育成する事業の実施や、大学発ベンチャー事業、起業者支援事業など、県独自の施策に加え、創造法や経営革新法などを活用し、創業から成長段階まで多様な施策を講じています。また企業誘致につきましては、新たな雇用の創出と地域経済の活性化への起爆剤になることから積極的に取り組んでいるところであります。現在のように社会環境が急激な変化を遂げる中、地域産業の再生と先進的産業の育成を両輪としながら、若者が魅力を感じる就業の機会をふやすことにより、地域間競争に打ち勝ち、息吹の感じる和歌山となるよう全力を傾注してまいりたいと考えています。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) これからの地域振興、特に和歌山市での対応等についてでございますが、最近における本県の人口動態については、平成八年以来、八年連続の減少となるほか、高齢人口比率につきましても、今年度の調査で二二・三%に及ぶなど、人口減少、高齢化傾向にあると考えております。
 このような社会環境の変化の中、これまでのいわゆる右肩上がりの経済成長を前提としたシステムや手法では対応できず、従来の重厚長大産業の立地促進による地域振興施策は困難な状況と認識しております。このような状況のもとでは、本県の既存の資源、地域の特性を生かし、都市から地方への人口流動を目指す新ふるさと創りを推進するとともに、地場産業や農林水産業といった資源を見直し、科学技術導入による高付加価値化などでブラッシュアップして、和歌山の個性あふれる産業、産品を生み出していくことが重要であると考えます。また、来年、高野・熊野地域が紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産登録されることが見込まれ、その保全と活用を通して和歌山県の自然、歴史、文化といった財産を磨き、京阪神の都市住民はもとより、世界の人々との交流の拡大により、和歌山の魅力を高めるためのさまざまな地域づくりが和歌山県の地域活性化につながるものと考えてございます。
 なお、和歌山市との振興につきましては、本年四月に和歌山県・和歌山市政策連携会議を設置し、中心市街地活性化、産業振興など、県市が相互に連携して解決を図るべき重要な施策課題について意見交換、連絡調整を図っております。今後とも、人口減少、高齢化社会といった社会環境の中、自立を目指す創意工夫ある取り組みを県民の皆様とともに進めてまいります。
 次に、コスモパーク加太の特定調停についてでございます。
 県土地開発公社の金融機関からの借入金問題につきましては、県も利害関係人として調停に参加する中で、コスモパーク加太対策検討委員会からのご報告を踏まえ、県の債務保証については、全額保証は考えられず、必要最小限度の範囲に限ること、公社借入金に係る将来利息については、公社の負担を軽減するため、より低くすること、公社借入金は可能な限り長期間の返済を望むことなどを強く主張してまいりましたが、金融機関もそれぞれの立場、考えに基づき主張を行い、主張の隔たりが解消できないことから当事者間における合意は困難となり、和歌山地方裁判所において調停に代わる決定がなされました。
 本決定につきましては、県、公社、金融機関がそれぞれ調停委員会において主張してきた結果によるものと考えられ、妥当なものと考えおります。本決定を受けまして、コスモパーク加太の利活用は極めて重要なことであり、今後人口が減少し、高齢化がより進むといった社会環境が予想される中でありますが、検討委員会からのご報告を踏まえ、土地利活用を図ってまいりたいと考えてございます。
 具体的には、喫緊の課題としての東南海・南海地震などの大規模災害時における応援要員の集結場所や救援物資の集積地、仮設住宅用地など防災対策の用地とする一方で、平常時には広場として県民の皆様に開放し利用していただけるよう整備を図ることとしておりますが、並行して特区制度等を活用し、和歌山県、和歌山市の活性化につながる企業の誘致にも全力で取り組むなど、コスモパーク加太の利活用を図り、県民の皆様にご負担をかけないよう、県議会のご協力もいただきながら取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 農業を初め一次産業を通じての地域振興についてお答えいたします。
 農林水産業は、本県の基盤産業であり、農林水産業の振興はもちろんのこと、一次産業を核とした他産業との連携により地域の活性化、振興を図ってきてございます。現在、安全・安心をキーワードに、ソフトアンテナショップなどにより和歌山の農林水産品のよさを全国に情報発信するとともに、消費者との交流を図るため、直売所の設置による地産地消の推進はもとより、漁協による海遊モデル事業の実施など、観光等とのタイアップを図る施策も展開しており、今後とも取り組みを強化してまいりたいと考えてございます。
 また、人口減少、高齢化の進む地域の活性化を図るため、新たな担い手としてIターン者等の定住化を進める施策である緑の雇用事業、農業をやってみようプログラムの展開や青の振興策の検討など、農・林・水産業を三位一体とした推進を行っていくとともに、橋本市杉尾地区の古代米への取り組みや古座川町平井地区のユズの加工などの地域資源を活用して地域の活性化を図ろうとする団体やNPO等に積極的に支援し、農林水産業の振興を通じて地域の振興を図ってまいりたいと考えてございます。
○副議長(吉井和視君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 道路等のハード面の整備の必要性についてでございます。
 和歌山県では、今後、人口減少、高齢化がますます進むということですが、このような社会においては、今よりもさらにより効率的な経済活動や、より安全で安心な社会生活が求められるものと思われます。そのため、効率的な経済活動や社会活動を支える高速道路等の幹線道路の整備はもとより、生活にかかわる施設におけるバリアフリー化や高齢者ドライバーに対応した道づくりなど、新しいニーズに対応した社会資本の整備も必要だと考えております。さらに、そのやり方については、例えば町中においては、自動車優先から歩行者優先へ方向転換を図り、住民の皆様方のご協力やご参加を前提とした道の使い方の工夫などにより、既存の道路幅の中で車道を狭めて歩道を拡幅するような既存施設を最大限有効活用するというような実施面での工夫も、限られた予算の中で今後必要になると考えております。今後とも、人口減少や高齢化にも対応し、時代のニーズに合った、明るく、安全で安心な地域づくりを目指して、地方の実情に合った公共事業を戦略的、重点的に進めてまいります。
○副議長(吉井和視君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 生活者発信の県政という目標設定についてのご質問にお答えいたします。
 人口減少や高齢化など社会情勢の変化に伴い、県民の生きがいや満足感も多様化しているところでございますが、環境生活部におきましては、環境の保全や食の安全、県民生活の安全確立など、生活者に近い、県民が安心して暮らせる施策を担当してございます。そして、これらの施策の推進に当たって、特に重要と考えている点が幾つかございます。
 その第一点目は、徹底した情報開示のもと、住民との話し合いの中で信頼関係を築くことです。橋本市での高濃度ダイオキシン類問題におきましては、関係住民の方々が参加した協議会で、徹底的な情報開示と話し合いにより円滑な問題解決に向かっているところであります。この橋本市での教訓を施策推進の基本として進めてまいりたいと考えてございます。
 二点目は、NPOとの協働でございます。NPOが公共サービスの一翼を担い、社会のさまざまな課題解決に活躍されることやNPOが行政運営に参画していただくこと、これも大事と思っております。NPOが活発に活動できるための支援と環境づくりを積極的に行ってまいりたいと考えております。同時に、県民の皆様とも行政との協働というよい関係を構築し、地域での役割を果たしていただくことも大事であると思っております。
 三点目は、消費者の立場に立った食品の安全に係る総合的な対策でございます。生産から消費に至るまでの食の安全を確保するため、「和歌山県食の安全・安心・信頼確保のための基本方針」を現在策定中ですが、消費者の安心を基本とする食品安全行政に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上三点ばかりの基本姿勢を申し上げましたが、今後とも常に生活者の行政への期待、ニーズを的確に把握し、生活者の視点に立った行政運営を心がけてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十五番浦口高典君。
  〔浦口高典君、登壇〕
○浦口高典君 各部長へ。決して小手先ではない大変誠意あふれるご答弁をいただき、まことにありがとうございました。
 人口減少で、さらに高齢化率の高い時代での行政のあり方というのは、正直本当に難しいなあというのが本音ではないかと私は思います。今後さらに思い切った施策を推進していただきたいと、そのように要望しておきます。
 その一つの参考までにお話をさせていただきますが、五日の尾崎議員の質問の中で、犯罪の拡大を未然に防ぐために、アメリカの犯罪防止学の考え方としてブロークン・ウインドーズ・セオリー、日本語に訳しますと「割れ窓理論」と言って、窓ガラスが一枚割れただけでもすぐに取りかえて、それ以上連鎖的に割られるのを防ぐということでありますが、私はこれに大賛成であります。そのために、もっと警察官を増員して、地域の安全確保に力を入れることは大変大事なことだと思います。しかし、財政難の折、それが難しいのであればどうしたらいいのか。それは、問題意識のある市民に立ち上がってもらうことだと私は思っております。決して理想論で言っているのではありません。和歌山でも三年前から、ブロークン・ウインドーズ・セオリーを基本に、ディア・ツー・ケア(あえておせっかいをやく)というマインド(心)で夜のJR周辺や新内を防犯パトロールしているグループがあります。それが、ガーディアン・エンジェルスというNPOの団体であります。私もその一隊員として、こういう形でパトロールに参加をしております。(帽子をかぶって示す)ぜひまた、ごらんになりましたらお声をかけていただきたいと思います。このような市民、つまり自立しようとする市民を支援するのがこれからの行政の役割ではないかと私は思います。今まで、住民と行政の関係は「依存」と「分配」でしたが、これからは「自立」と「支援」という関係をつくり上げていかなければ、とても人口激減で高齢化率の高い社会ではやっていけないと私は確信しておりますので、参考までに申し上げます。
 さて、知事へ。いよいよ来年は知事選がございます。もちろん、私にはとても恐れ多くてこの場で出馬の意向を確かめるなどということはできません。しかし、もしそのようなご意思があるのでしたら、次の四年間できちっと何をして、何をどのような順序でいつまでにするのか、つまりマニフェスト、政権公約を一日も早く県民の皆さんに示していただきたいと思います。そして、その中にきょう私が何度も繰り返し述べた人口が大きく減少しているという現実をきちっと踏まえた上での政策を正直に訴えていただければ、県民の皆さんも健全な危機感を持って知事の改革の味方になってくれると私は思っておりますし、またどのような大物政治家が対抗馬として出てこようが決して恐れることはございませんので、ぜひマニフェストの作成を強く要望して、私の要望にかえさせていただきます。
 ありがとうございました。
○副議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で浦口高典君の質問が終了いたしました。

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