平成15年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(平越孝哉議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十五番平越孝哉君。
  〔平越孝哉君、登壇〕(拍手)
○平越孝哉君 皆さん、こんにちは。お許しを得て、平成十五年九月定例会一般質問最終日に最後の質問者として登壇をさせていただきました。議員の皆様には多少お疲れのご様子でございますので、私はできるだけ簡潔に質問を終わらせたいと思いますが、ご清聴のほどをお願い申し上げます。
 去る九月二十日に自由民主党では総裁選挙を実施し、小泉首相が再選をされ、今呼び込みが始まり、きょうじゅうに改造内閣が発足される予定であります。しかしながら、少しは明るさが見えてきたとはいえ、戦後我々が経験したことのないデフレ経済が継続し、景気は一向に回復はしないし、経済活動や国民生活に大きな影響を与えております。このように社会経済情勢が大変厳しい中、木村知事は、地域の発想や個性のある地域経営を展開し、地域から始まる行政を進めながら和歌山らしさを売り出す積極性を持っていろいろな事業の展開を図られております。特に緑の雇用事業は地域の特性・風土を生かした和歌山発の事業であり、地方基準による公共事業の推進や環境林整備、そして特区構想など、全国に向けて情報発信されており、木村知事は改革派知事として名が通り、和歌山県の名も全国に発信をされております。和歌山に全国の目が向けられている今こそ、それをしっかりと受けとめる努力が必要だと考えます。
 私たちの住むふるさと和歌山は、悠久の時を重ねた歴史に根差した文化や伝統が息づき、心のふるさととしての高野・熊野の平成十六年六月の世界遺産登録に向けて地域の期待も大いに膨らんでおります。また、世界遺産に登録することによって世界に誇れる交流拠点ができ、地場産業や農林業との連携で新たな産業が生まれ、雇用の拡大を図ることで地域に活力が生まれ、また観光開発にもつながります。そして、活力和歌山の国づくりが始まりますとともに、健康和歌山の国づくりをもあわせて進めていかなければと考えます。
 そこで最初に、これからの医療の体制について伺います。
 我が国の医療は、だれでも最適の医療を受けられる医療提供体制の整備と国民皆保険制度の導入により大きく前進し、公衆衛生の向上を初め医療関係者の努力等も相まって、国民の安心を支え、世界最高水準の平均寿命や高い保健医療水準を実現してきました。しかしながら、急速な高齢化、経済の低迷、医療技術の進歩、国民意識の変化など、医療制度を取り巻く環境は大きく変化しており、医療の質の向上と効率化を図るための環境整備が課題となっております。
 私は、今後の医療を考える上で、患者の視点を尊重した質の高い医療の提供を推進することが最も重要な課題であると考えております。すなわち今後の医療提供体制は、患者と医療関係者の信頼関係のもと、患者が健康に対する自覚を高め、医療への参加意識を持つとともに、予防から治療までのニーズに応じた医療サービスが提供される患者本位の質の高い医療を確立することこそが基本と考えております。厚生労働省が策定した医療提供体制の改革のビジョンにおいても、患者の視点を尊重した質の高い効率的な医療の提供体制の構築を進めることとされております。また県においても、本年四月に改定した和歌山県保健医療計画の中で、患者の視点に立った安全で良質な医療サービスの提供を推進していくこととされております。
 そこで最初に、患者の視点に立った優しい医療を推進していくための県の取り組みについて伺います。患者の視点の尊重ということを具体的に申しますと、医療機関に関する情報提供と医療の安全対策ということであります。
 まず、医療機関に関する情報提供についてであります。
 現在は、医療機関を選択するための適切な情報が十分提供されているとは言いがたい状況にあります。患者さんや県民の皆さんにとっては、自分が実際に検査・治療を受ける身近な医療機関について、学会等の専門医の認定を受けた医者がいるとか、手術件数、治療方法あるいは平均在院日数等の医療の内容に関する情報を必要とします。情報開示と患者の選択は、今後の医療を考える上でのキーワードであります。今はこのように情報化の時代ですから、インターネットで地域別や専門別に医療情報を提供することなどを行って医療機関の情報公開を進めていくことが必要であると考えます。
 またあわせて、医療安全対策の推進についてでございますが、患者の医療に対する希望として、自分の病気や治療方法等についてわかりやすい説明を十分にしてもらいたいということがあります。医療安全対策として患者が安心して治療を受けられるよう、医療に関する患者、家族の心配や相談に対応する体制の整備について知事のご所見をお伺いいたします。
 次に大きな第二の視点ということで、質の高い医療の提供についてでございます。
 今後、情報化の進展により医療機関相互の比較を客観的に行う環境が整い、患者による選択を通じて、我が国の医療は質の高い効率的な医療が提供されると見込まれております。質の高い医療ということを具体的に申しますと、医療提供の確保と保健・医療・福祉の連携体制の推進ということになります。
 まず医療提供の確保についてですが、私は、医療の確保で最も重要なのは、県民の生命を守る救急医療体制の整備であると考えます。質の高い救急医療を確保することにより患者さんが早期に退院して社会復帰することが可能となります。
 和歌山県における救急医療体制につきましては、これまで傷病者に迅速かつ適切な医療を行うため、傷病の程度により、初期から三次までの体系的な整備が図られてきました。和歌山市の県立医科大学附属病院、日本赤十字社和歌山医療センターには救命救急センターが設置され、三次救急医療機関として重要な役割を果たしております。この和歌山市の二病院から公立那賀病院、国保橋本市民病院へと続く紀の川ライン、そして国保日高総合病院、社会保険紀南綜合病院、新宮市立医療センターへと連なる海岸線における充実が図られてまいりました。さらに、高度な救急医療を必要とする患者を短時間で運ぶことのできるドクターヘリの導入によって本県の救急医療は飛躍的な充実を遂げたと考えます。
 このドクターヘリは、和歌山の地域性を考えた県民の生命を守るための大きな医療施策であり、ヘリの出動により、ヘリが現場に到着すると同時に患者は医師による治療を受けることができ、また受け入れる県立医科大学附属病院では患者の容体の連絡と受け入れ態勢の確立ができるわけであります。
 ちなみに、先日、紀伊高原カントリークラブでゴルフをプレー中に倒れた方の場合、ドクターヘリが連絡を受けて現場に到着するまで約十分、医師が応急処置を完了するまで約五分、県立医科大学附属病院に到着し、医師が処置を開始するまでの時間が三十分以内であったということは驚異的であり、その患者さんは無事退院をされたそうであります。──決して私ではございませんので。
 導入から現在まで多くの方々が救われたと同時に、山間部に住み、医療機関に遠い県民にとって不安の解消と安心の享受ができていると考えますと、このドクターヘリの導入はまさしく知事の大英断であります。
 そこで、このドクターヘリについて、本年一月からこれまでの運航状況等について、いろいろと福祉保健部長にお尋ねをいたしたいと思います。
 次に、保健・医療・福祉の連携についてであります。
 県民だれもが住みなれた地域で安心して暮らせるには、必要なときに質の高い保健・医療・福祉のサービスを受けられるシステムづくりが必要であります。県民の保健・医療・福祉に対するニーズは多様化しており、細分化、専門化が進んでいます。在宅医療を求める県民のニーズにこたえられるような体制の整備や、入院患者が円滑に在宅医療へ移行できるよう、病院と在宅医療を提供できる医療機関との連携体制の構築など、県民一人一人のニーズに合ったサービスを保健・医療・福祉の連携により効率的に進めることが必要です。特に在宅患者には医療とともに福祉サービスの必要な患者が多く、介護保険制度の導入により、介護保険者には総合的なサービス体制がとられています。しかし、介護保険法を見てもわかりますように、制度そのものは複雑なものがあります。このように高度・専門化し、かつ細分化され、複雑に絡み合っている保健・医療・福祉の現場で、これらのサービスを受ける県民はどのような選択をすればよいのでありましょうか。
 私の質問は、県民が保健・医療・福祉サービスの受け手としてそれぞれのニーズに合ったきめ細かいサービスを受けるためには、供給側である県を初め各市町村、各医療機関がどうすればよいのか、どうすれば地域住民に喜んでもらえるサービスができるのかという点であります。保健・医療・福祉サービスの施設や制度はあります。しかし現在、サービスの受益者たる県民のニーズは十分満たされているのでしょうか。この問題の調整・支援・解決のために国家資格を持つ社会福祉士が要るのではないかと言われますが、全くそのとおりであります。しかし、保健・医療に精通した社会福祉士が強く求められているのが現状だと思います。私は、保健・医療の現場を肌で知り、知識と経験がある医療ソーシャルワーカーの育成が急務ではないかと考えます。このような社会福祉士の要請・育成は、本県にとって重要なことではないでしょうか。
 幸いなことに、高野山大学には社会福祉・社会学科があります。社会福祉を学ぶ学生たちに、県立医科大学との十分な連携のもと、社会福祉の教育カリキュラムの中で医療を深く学び、医療の現場をよく経験してもらってはいかがでしょう。県内の大学では単位の互換などを協議するコンソーシアムがあると聞いております。県立医科大学からこのことを高野山大学に提案してみてはいかがでしょう。
 しかし、このような社会福祉士を育成するためには、保健・医療・福祉を総合的に研究・教育することのできる施設の確保が必須かと考えます。県立医科大学は県が設置した施設であり、かつ医療の第一線にある教育研修病院でもあります。高野山大学社会福祉・社会学科と同じ伊都郡にあり、互いに近距離にある県立医科大学附属病院紀北分院を教育・研修のフィールドとすれば、このような人材育成も可能と考えます。
 私は、紀北分院に、保健・医療・福祉に精通した人材育成の拠点あるいは施設を置くべきではないかと考え、知事のご所見はいかがかなものかとお伺いをいたします。
 もう一点、紀北分院についてでありますが、開業以来六十五年、紀北分院は地域医療の拠点病院として大変重要な役割を果たし、絶大な貢献を果たしてまいりました。今後もこの形態が末長く続くことを切望しながら、そのあり方について若干私見を交えながら知事のご所見を伺うものであります。
 近年、この病院を取り巻く環境は、紀の川流域の開発に応じて、地域医療と申しますか個人の開業が多く見られ、県立医科大学附属病院いわゆる大学病院に求められる期待やその役割が大きく変わってきたように感じられます。
 本来、大学病院は、その高度な知見と技術水準から、地域の医療技術をリードし、高度な医療行為を受け持ち、地域医療のレベルアップに貢献すべきであります。一方、紀北分院が立地しております伊都地方には、同時に高野山大学が立地をしておるということは先ほど申し上げました。世界遺産として評価される高野山、その理由は寺院の密集度や景観ばかりではない。弘法大師以来守り継承してきた真言密教の総本山として、その宗教性が大きく評価されているものと思います。物質の繁栄が過大に評価されてきた戦後日本、今ようやくその反省から私たちの心の問題が大きくクローズアップされようとしています。いやしが流行するゆえんでもあります。
 また、高齢化が急速に進み、ことしは百歳以上の方々が二万人を超えたと報道され、本県では四人に一人が高齢者という時代を迎えようとしています。高齢化社会における医療はどうあるべきか。──高度な医療技術のケアはもちろんでありますが、私は一方で、高齢者の方々が安心して治療生活を送ることのできる、そして心豊かに老後を過ごすことができるいわゆる心の治療、心の療養が極めて大切なことではないかと信じております。このことに果たす宗教の役割は大なるものがあります。そして、このことを教え導く高野山大学の役割にも、また大なるものがあります。
 こう考えるとき、これからの紀北分院のあるべき姿は、一歩歩みを進め、県立医科大学が有する高度な医療技術と高野山大学が持ついわゆる心の治療を組み合わせた、我が国でも最も先端的な医療拠点に整備することが私は最もふさわしいと考えます。また、これが可能な立地条件にあると信じております。具体的には、高野山大学の先生方による患者さんを対象とする心の持ち方講座の開設や、一方、県立医科大学の学生、看護師を対象とする高野山大学での心の教育の開始などであります。二十一世紀の医療機関にふさわしい和歌山県立医科大学附属病院紀北分院、私はきっと全国の注目を集めると思いますし、加えて全国から患者さんを集めることができると信じております。
 以上につきまして、知事のご所見をお伺いします。
 次に、観光立県についてであります。
 観光は、旅行業、宿泊業、飲食業、土産品業など、極めてすそ野の広い産業であります。また、その経済効果は極めて大きく、旅行などの直接効果だけでも約二十一兆円にのぼり、二次的な経済波及効果をも含めれば四十九兆円と国内生産額の五・四%を占め、その雇用効果を見ても、総雇用の五・九%に当たる三百九十三万人がかかわっているものと推計をされております。しかしながら我が国の観光産業は、諸外国と比べてみると、全産業に占める規模はまだ小さく、今後ますます発展する可能性を持っております。そういった意味から、私は観光を本県の二十一世紀の第三次産業の基幹産業として位置づけることこそ今後の地域の活性化につながるキーになるものと思っております。
 「観光」という言葉は、中国の古典「易経」の中に出てくる「国の光を観る」という表現に由来すると言われております。「易経」によれば、一国を治める者は、その治める国を旅して、その暮らしぶりを観ることによりよい政治が行われるかどうかをみずから確認したそうです。よい政治のもと人々が生き生きと暮らすことができれば光り輝く国として他国に国の威信を示すことができると説いたのです。つまり、観光の原点はみずから光り輝くことにあるのだと思います。人々がみずから住む地域に誇りを持ち、快適に暮らすことができなければ、だれもその地を訪れたいとは思わないでしょう。観光立県を実現するためには、まず第一に和歌山に住む私たちが美しい和歌山の再生、新しい地域文化の創造という光を積極的に磨き上げ、その輝きを増すことが必要であると考えます。
 現在、和歌山県は、他府県に先駆けて観光局を設置し、地域資源を生かしたほんまもん体験ツーリズムの促進に努めており、また観光情報以外にも、大手スーパーと提携し、首都圏におけるソフトアンテナショップの開設による県産品のPRに積極的に取り組んでおりますが、観光は、こういった情報発信のソフト施策だけにとどまらず、本来、訪ねてみたい、住んでみたいといった地域そのものを光り輝くものにするハード整備が必要であります。それは、交通網の利便性向上のためのインフラ整備、良好な景観形成のための電線地中化、周囲の緑にマッチした道路擁壁の緑化など、安全・便利・快適な歩行者空間の確保や集客、文化交流施設の整備などであります。
 こういった最近のニーズの多様化にもこたえられる地域の資源を活用した魅力ある空間づくりのためのハード及びソフトの政策を総合的に推進することが観光立県の本質であろうと思います。特に、高野・熊野が紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産に登録される来年六月を控え、和歌山県が国内外の注目を集めることは間違いありません。多くの人々が光を見に、また光に触れ、光を浴びに本県への観光を計画されていることと思います。世界遺産登録を大きな契機ととらえ、和歌山県の観光空間づくりのための戦略本部を設置し、県庁全体の総力を結集していただきたいのであります。今こそ、地域みずからが光り輝くためのハード・ソフトを組み合わせた魅力ある空間づくりを総合的かつ強力に推進することが必要と考えますが、知事のご所見をお伺いします。
 具体的な地域として私の伊都地域を見ますと、金剛峯寺を初め九度山から高野山に至る町石道や、その出発点となる慈尊院、丹生官省符神社など、八件の世界遺産登録予定資産があります。地域が世界遺産に登録されるという誇りと後世に引き継ぐ責任、そしてそれとともに新たな観光需要への期待が高まっております。
 高野山では、山内の環境、景観を守るために、バイパス、駐車場施設の整備により通行車両を制限するパーク・アンド・ライドの可能性の検討が行われております。また紀北地方としては、根来寺、粉河寺、丹生都比売神社や一乗閣といった社寺や史跡、自然、文化を結ぶ回廊構想をも展開されようとしております。この地域は、めっけもん広場の盛況に見られるように、農業体験観光の取り組みにも適した地であり、これら観光客の増加も期待できるポテンシャルを持った地域であると思います。そのためには、道の駅を初め、訪れる観光客と地元が触れ合う伝統・文化交流施設の整備や府県間道路の整備の促進が必要であります。
 これら地域が光り輝こうとする高まりの中で、世界遺産登録を契機に、地域の歴史文化施設を見直し、ネットワーク化するソフト・ハードの今後の展開について、ソフト事業について企画部長のお考えを、また本県の観光にとって極めて重要な府県間道路の進捗状況及び取り組みについて県土整備部長に、それぞれお伺いをいたします。
 次に、科学技術振興による地場産業の振興についてお伺いいたします。
 我が国経済は、最近の株価上昇や平成十五年四月から六月までの四半期速報が一・〇%のプラス成長となったことから、一部では楽観的な声も聞かれるようになりました。しかしながら景気持ち直しの実感はなく、依然としてデフレ経済を脱却したと言える状況にはまだないと思います。長引くデフレの中で、我が国においては地域経済が疲弊し、元気を失っている現状であります。しかし、過去二百年の歴史を見れば、次世代の社会を特徴づけ、経済の飛躍的発展をもたらした画期的発明の多くは、むしろデフレ期になされたことに気がつくのであります。
 産業革命以降、最初の世界的なデフレの最中である一八二五年にイギリスのスチーブンソンが蒸気機関車の改良に成功し、鉄道時代の幕が開き、二度目のデフレ期には一八七九年のエジソンの電灯の発明、一八八五年にはベンツによるガソリン内燃機関を搭載した最初の実用的な自動車が発明されたのであります。我々人間は行き詰まり、苦境の中にあるときこそ、進歩・飛躍することを歴史が示しているのだと私は思います。
 このような歴史に対する視点を持つとき、私は、恐らく今回も例外ではないと思います。このデフレの激しい、厳しい状況の中で次世代の経済発展をリードする新しい科学技術の芽生えが、今、そこかしこで膨らみ始めているに違いないと思うのであります。
 科学技術はこれからの和歌山県の発展と再生の切り札であります。この七月に、県工業技術センター職員と築野食品が共同で研究開発した、米ぬかを原料とするフェルラ酸製造技術が産業界で高い権威を持つと言われております井上春成賞を受章しました。また今年度、和歌山市エリアが文部科学省の都市エリア産学官連携促進事業に採択をされました。これは、地元化学産業と県工業技術センター、大学等の連携により、ナノテクノロジー技術を活用し、新たな有機材料を研究開発するものであります。ナノテクノロジーは、一ナノが一メートルの十億分の一の大きさに当たり、分子の大きさと同程度の微細な世界を扱う技術であり、ナノテクノロジーは鉄よりも十倍高い強度を持ち、同じ強さのものでは五十分の一の軽さとなるカーボンナノチューブ素材の開発や病変患部に直接薬を運ぶ医療技術などITや医療、環境など、幅広い分野で革命的な飛躍をもたらすものと言われております。現在では、女性用化粧品など身近な製品にも応用されており、私も今後の広がりに期待をしているところであります。
 一方、本県には多くの地場産業がございます。地場産業は、地域の資源と地域の特性の中から生まれ、それらを十二分に活用しつつ、長い歴史の中で製造ノウハウを培ってきた産業であります。しかしながら、ナノテクノロジー、バイオ、ITなど、近年の科学技術の発達は目覚ましく、これまで地域経済を支えてきた地場産業のみではこれらの最新技術の導入が十分には図られていないのが現状ではないでしょうか。
 大学、研究機関等の最新科学技術を導入して地場産業の高付加価値化を図るために、県がその橋渡しをする産学官の連携が重要だと考えます。営々と培ってきた地域資源を活用する技術と最新の科学技術が融合することにより、これまで思いもよらなかった研究開発などが可能になるのではないかと私は考えております。これまではぐくまれてきた地場産業に最新の科学技術を導入し、二十一世紀の地場産業に刷新させることが今後の地域活性化の柱となると考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 これで、私の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございます。
○議長(尾崎要二君) ただいまの平越孝哉君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまのご質問にお答えを申し上げます。
 まず第一点の医療情報の提供ということでございますけれども、この医療情報の提供ということについては意外となされているようでなされていない、しかも患者の人に相当不満もあるというふうな分野でございまして、これは和歌山県だけに限ったことではなくて、全国的に問題になっていることでございます。
 そういうことでございますので、現在、幾つかの県で地方分権研究会というのを開催して、いろんなテーマごとに勉強を進めているわけですけれども、その中でもこの医療情報の提供ということのシステムづくりを一つのテーマにしておりまして、現在インターネットによる医療情報の提供システムについて検討を進めているところでございます。
 それから、医療の安全対策ということでございますけれども、これも非常に重要な分野でございまして、この四月に医療安全支援センターというのを設置いたしました。そこに専任の相談員を置きましたところ、これまでに三百件を超える相談が来ているということで、この活動を続けるとともにこの関係の協議会を設置いたしまして、その相談の中身みたいなものを分析・検討して、よりよい安全対策というものを講じていきたいというふうに考えているわけでございます。
 次に、紀北分院に関する問題でございます。
 この紀北分院は非常に長い歴史があるわけですけれども、最近の期待の変化というふうなものを踏まえた貴重な提言をいただきました。高野山大学、ここで心の宗教を扱って、そこに社会福祉の学科なんかもあるわけですけれども、こういうふうな、これから人の心の平安ということと保健・医療・福祉というものを結びつけて、そしてそこでユニークな活動というものを紀北分院を中心に行っていくというのは、これは二十一世紀の医療というものを踏まえたときに非常に情報発信力のある貴重な提言だというふうに私は思います。
 すぐにこれがどういうふうな形で結びつくかどうかは、現在、紀北分院のあり方について大分長く研究しているんですけれども、特に医大の独立行政法人化の問題もございますし、そういうこととの絡みでこの紀北分院には新しい装いで活動を始めていかないといかんという時期に来ていると思いますので、ご提言の趣旨も踏まえて、本当に紀北分院というのが県民のため、そしてまた和歌山県から外へ発信できる拠点になるようなものにしていきたいと、このように考えているところでございます。
 次に、観光についてでございます。
 今、議員のご質問にありましたように、ただ単に産業としてどうこうということだけじゃなくて、地域そのものを光り輝かせるような努力ということが観光なんだというご質問の内容、本当にそのとおりだというふうに思っております。
 和歌山県の場合、地形とかいろんなことからして産業立県というのは非常に難しい面があるわけでございますけれども、観光産業というのは、今までは若干横の方の産業というような感じだったんですけれども、二十一世紀には観光産業というのが国でも中心的な産業になってくるというふうな考えが確立されてきておりますので、そういう意味で言えば、世界遺産の登録も控えて、そしてまた豊かな自然と歴史に恵まれた和歌山県というふうなものは二十一世紀には非常に売り物のある県ということになってくるだろうと思います。
 そういうことも踏まえてハード──後でハードの問題も答えがあると思いますけれども、ハード・ソフト合わせて、本当に外の人が来てよかった県、もう一回来てみたいと思うような──一回行ったらもう二度と行きたくないわというようなことになったら、幾ら世界遺産に登録しても元も子もありませんので、そういうふうな県になるように頑張っていきたい、このように考えております。
 それから、地場産業の振興でございます。
 私は、かねてより、ないものねだりをできるような時代ではない、今地元にあるものをどんどんブラッシュアップしてよくしていくことしか和歌山県の発展する道はないんだというふうに申しております。そうふうな中で、和歌山県の地場産業については素材型ということで非常に苦戦を強いられているわけでございますけれども、実は今、少し株価が上がってきて景気がよくなるんじゃないかという期待があるわけですけれども、これはあくまでデフレ下の景気変動だということであることは間違いないわけです。これ、ちょっと言葉の矛盾かもしれませんけれども、今までみたいに、景気がよくなる局面ではありとあらゆる産業がみんな手をつないでよくなるというふうなことではなくて、やはりその中で付加価値があり、希少性があり、他にまねができなく、そして人件費等の固定経費みたいなのを大いにカットしたようなところだけがいろんなものが上がっていくというような、ある意味では非常に厳しいデフレの中での景気の回復ということだろうと思います。そうであってみれば、和歌山県の地場産業も、化学産業とかいろいろいいものがあるんですけれども、やはりそういう時代に耐え得るようなものに県としてもできるだけの助力をしていく必要があるというふうに考えておりまして、ご質問の中にもありました、これは文部科学省ですか、都市エリア産学官連携促進事業にも選ばれて、県の工業技術センターでありますとか、和歌山大学でありますとか近畿大学、こういうふうなものと連携を深めながら和歌山県にある地場産業の生産物の付加価値を高めるとともに、さらにその売り方であるとか、そういうふうなことについても及ばずながら──これは県が主導できるような話ではありません。もうやっぱり日ごろから自分の商売についてはそれをやっている人が一番詳しいわけだし、汗を流しているわけだけれども、県としても及ばずながらいろんな形での対応をしていきたいし、それから金融面についても制度融資とかいろんなことでできるだけの援助というふうなものをしていく、そのことによって和歌山県の地場産業の振興を図り、ひいては和歌山県の発展につなげていきたいと、このように考えているところでございます。
○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) ドクターヘリの運航状況についてお答えいたします。
 本年一月から開始し、八月末までで百四十五件出動しております。地域別では、紀北六十一件、紀中三十一件、紀南四十五件、三重県七件、奈良県一件となっております。県立医科大学附属病院で受け入れた患者は百三十四人で、そのうち退院された方が百一人、入院中の方が二十人で、十三人の方が亡くなられております。
 なお、議員から一例をご紹介いただきましたけれども、具体例では、紀伊水道沖を航行中の貨物船内で熱傷患者が発生した際、海上保安庁のヘリが南紀白浜空港まで搬送し、ドクターヘリに引き継がれたのを初め、極めて緊急性の高い心臓疾患の新生児の搬送や心筋梗塞、脳血管疾患、転落事故などに対応し、救命や後遺症の軽減に大きな成果を上げております。
 今後とも、消防機関、医療機関との連携を図り安全航行に資するとともに、ドクターヘリの特徴を発揮し、県民の救命率の向上を目指し、救急医療の充実を図ってまいります。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 地域の歴史文化施設をネットワーク化するソフト事業の展開についてでございますけれども、紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産登録されることによりまして本県に対する国内外からの関心が高まり、多くの人々が訪れるものと考えますが、これらをうまく本県の活性化に結びつけるために、それぞれの地域特性を生かしたさまざまな対応が必要と考えます。
 中でも、議員ご提言のように、伊都地域には高野山を初めとする世界遺産登録予定資産のほかにも多数の社寺、史跡、豊かな自然、そして温泉などがあり、またさまざまな体験型観光プログラムも展開されており、バラエティーに富んだ地域資源があります。
 県といたしましては、このような豊富な資源を活用して緑の回廊として結びつけ、大阪府を中心とする日帰り交流圏において一体的に、総合的にPRを継続して行うことにより交流人口の拡大を図ることが可能と考えており、市町村を初めとする関係機関と連携しながらその実現に努めてまいります。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 議員ご質問の府県間道路につきましては、県としてこれまで重点的に整備を推進してまいりました。このうち国道三百七十一号橋本バイパスにつきましては用地買収及び工事を促進しており、平成十七年度を目途に国道二十四号から橋本インターチェンジまでの間について京奈和自動車道との同時供用を目指しているところでございます。
 また、新橋本橋につきましては、今年度から橋げたの架設工事に着手し、これも平成十七年度の供用を目指しているところでございます。
 国道四百八十号平道路につきましては、今後、四郷地区の早期部分供用を目指し、用地買収及び工事を促進してまいります。
 府県間トンネルにつきましては、国が今年度から調査に着手しており、今後とも直轄代行事業の早期採択に向け、国に強く働きかけてまいります。
 次に県道泉佐野岩出線についてでございますが、備前から根来間は昨年九月に供用済みで、続く根来から府県境間は現在工事中であり、用地買収率は六五%、工事進捗率は二八%となっております。
 以上、各路線について、今後とも大阪府と連携を図りながら事業促進に努めてまいります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十五番平越孝哉君。
○平越孝哉君 知事初め関係部長の答弁、いただきました。
 一件だけ、知事への要望であります。
 今、県立医科大学をめぐる環境というのは、国公立大学の独立法人化というのが目前に迫っておりますし、そういう現状を考えますときに、時期を失せずに新たな発想で大学附属病院の運営のあり方というものが必要であろうと思いますので、ぜひよろしく頼みます。
 それと、もう一つ紀北分院についてでありますけれども、県立医科大学のあり方懇談会の中でよりよき結論を出していただけるとは思いますが、私は、紀北分院が老朽化したから改築してほしいということではありません。そういうことを提起しているのでありませんので。
 ただ、先日、紀北分院のある先生から、質問をされるらしいですがということで、こうして資料をいただきました。その中には、紀北分院はやっぱり地域医療の拠点だし、長い歴史があるし、いろんな中で地域医療の核になるところだからぜひ残してほしいというようなこともあります。これはまあ六十五年間という長い歴史でもありますし、この紀北分院検討委員会というのは平成十二年かにつくられて、そのときにはいろんなことを議論されたそうでありますが、改築費の試算やとか分院の改革と、いろんな意見はこれに集約されております。それを一々、改築費が何ぼやというようなことは申し上げません。それはそれとして、この保健、それから医療・福祉に精通した人材育成の拠点として、また私は、総合診療ができるといいますか、地域医療と僻地医療の担い手となるような医師の育成といいますか養成可能な病院にしてほしいと思います。
 医大の本院はスペシャリスト、専門科医の育成ということでありますけれども、紀北分院はまた新たな意味で、そういう総合的な治療のできるような医師づくりをしてほしいと思いますし、仏教文化と近代医療、いやしと高度医療とを兼ねた、本当に時代が求める新しい病院づくりというようなこと、これはぜひ知事の英断で実現をしてほしいと思います。それを要望しまして、終わります。
 ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で平越孝哉君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問は、これをもって終結することにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) ご異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
  【日程第三 議案等の付託】
○議長(尾崎要二君) 次に日程第三、議案等の付託について申し上げます。
 ただいま議題となっております全案件のうち、議案第百四十四号平成十四年度和歌山県歳入歳出決算の認定について及び議案第百四十五号平成十四年度和歌山県公営企業決算の認定についてを除くその他の案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
 お諮りいたします。九月二十四日から二十六日までは委員会審査のため休会といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) ご異議なしと認めます。よって、九月二十四日から二十六日までは休会とすることに決定いたしました。
 なお、委員会審査の会場はお手元に配付しておりますので、ご了承願います。
 次会は、九月二十九日定刻より再開いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時四十二分散会

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