平成15年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(山下大輔議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時三分再開
○議長(尾崎要二君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十八番山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 こんにちは。六月議会に引き続き質問する機会をいただけましたことを感謝し、心を込めて質問、提案をさせていただきたいと思います。
 それでは、議長からお許しをいただきましたので、通告に従って一般質問をさせていただきます。
 第一問目は、前議会に続き、今の和歌山にとって非常に重要と考える観光振興関連の質問から始めさせていただきたいと思います。
 ことし初め、民放で放送されたドラマで、木村拓哉さんが主役を務め、高い視聴率を上げた「GOOD LUCK!!」という番組がありました。主演は、木村拓哉さんのほか、柴咲コウ、竹中直人、ユンソナ、黒木瞳さんなど豪華キャストによるテレビドラマで、全国の多くの視聴者から支持を受けるものであったのですが、そのドラマの最終回、一番の見せ場となる場面で和歌山の地が撮影場所として選ばれました。設定は海外の一級リゾート地ハワイの海辺というシーンだったのですが、これが知る人ぞ知る話として、和歌山の白浜、白良浜で撮影されたものです。視聴者のほとんどは、まさかそのシーンが国内で撮影されたものとは気づかなかったというのが事実です。これは、和歌山の自然環境、特に海というロケーションは、見せ方によって世界の第一級のリゾートと比較しても決して引けをとるものではなく、和歌山県の潜在能力を示すよい例だと思います。和歌山の今ある財産、海、山、またその条件を生かしたホテルなどといったものは、視点を変えて少し見せ方を工夫する、うまく演出を加えることで多くの日本人があこがれを持って見詰める、海外の有名観光地と肩を並べる実力があるのです。
 今議会でも知事は、観光事業に対して大きな期待を寄せる発言を何度もされていました。同僚・先輩議員の多くも同じ思いだと思いますが、私も全く同感です。この観光事業については、中途半端ではなく、徹底して取り組むことが和歌山の未来に光を差すものになると考えます。地域の特性を生かした、より効果の高い観光プロモーション事業を積み重ね、中でも情報発信力のある、情報の訴求力が高い事業を継続的に行っていくことが今求められています。
 そこで、この夏に行われた海洋レジャー・プロモーション事業のその後の対応についてお聞きします。
 去る七月二十日から二十三日の間、世界のヨット関係者から熱狂的な支持を受けるラッセル・クーツ氏が和歌山に入り、紀州の海を舞台に関連事業が開催されました。アメリカズカップを連覇した世界的な海の英雄ラッセル・クーツが和歌山の海にやってきたという事実は、日本のヨット界でもインパクトのあるニュースとして全国に配信されました。私も今回の海洋プロモーション事業の中で幾つかの事業に参加させていただいたのですが、大きな成果をおさめるものであったと思います。
 事業概要としては、この九月議会の冒頭に知事から簡単に報告もされましたが、改めて少し振り返ってみますと、まず七月二十日には、和歌山県民の皆様を対象にクルーザーヨットの体験会が行われました。定員の二倍を超えるという多くの応募があり、抽選で三百名が参加するという盛況ぶりでした。また、七月の十九日から二十一日の三日間にわたっては、地元を代表する企業である島精機様から提供していただいた「SHIMA SEIKI CUP」ヨットレースが行われ、国内外から百十四艇もの参加を数える、国内でも指折りの大きな大会となりました。これはお手元に配付させていただいている資料でもご確認いただきたいのですが、この中に詳細が述べられています。これは「KAZI」というヨット関係の雑誌になるんですけれども、中でもラッセル・クーツ氏も参加したクルーザークラス──この最初のところに掲載されている写真がそうなんですけれども──は圧巻で、和歌浦に六十一艇もの大型ヨットが繰り出し行われたレースは壮観なものでありました。その他、マスコミを使った広報事業として特別番組の放映、来年七月にはラッセル・クーツ氏が和歌山の海をクルージングした様子をまとめた航海記も出版される予定となっています。和歌山県発の情報発信事業としても、当初の目的どおり成果を上げられたものと思います。
 また、来日記念の式典も、前夜祭、ウエルカムパーティーなど、マリーナシティを舞台に盛大に行われました。そこでは和歌山の特徴である海がうまく演出され、特に前夜祭が行われたロイヤルパインズホテルのプールサイドでは、外国からの多くの招待者も参加する中で、日本ではないような錯覚を覚える、和歌山の日常の風景とはちょっと違った華やかな空間が演出されていました。
 今回の事業全体を通して、それぞれに地域の特性がうまく生かされ、それは新しい和歌山の魅力、独自の海洋文化の息吹を予見させるものであったと思います。
 また、今回の事業は、多くの民間企業、さまざまな民間団体の方からもご協力をいただき、事業費の面でも、従来から知事がおっしゃられているとおり、より少ない費用で大きな効果を生む費用対効果も非常に高い、よい事業であったと思います。その費用対効果の効果の部分をより一層高めるためにも、何としても今回の成功を単発の打ち上げ花火で終わらせないでもらいたいと思います。今回の成功を糧として、海洋プロモーション事業というくくりの中で継続・発展させ、地域の活性化にしっかりとつなげていってもらいたいと思います。
 今回の事業により新たに生まれた海洋文化の芽をしっかりと地域に定着させ、新たな和歌山の魅力、価値を創造する、それがひいては和歌山が今必死で取り組んでいる地域のブランド化戦略としても有効に作用するものだと思います。地域のブランディングは決して単発の事業で達成されるものではなく、あくまで継続、継続は力です。
 そこで質問ですが、まず今回の事業について改めて知事の所感、事業が終わった現在、どのように事業全体を総括されているのか、お伺いしたいと思います。
 次に来年度以降の取り組みについて、後日談となりますが、この事業が終わった後、株式会社島精機製作所の島社長にお目にかかる機会を得て、そこで今後の取り組みについてお話をお伺いしたところ、「SHIMA SEIKI CUP」ヨットレースの継続について、県の取り組み次第ではご検討いただける可能性があるように私自身は受けとめました。ただし、あくまで県としてどのようにかかわるかがポイントとなるのですが、そこで来年度以降、この海のプロモーション事業の取り組みについてどのように考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
 また、もし来年度以降で事業の継続を考えるとすれば、早急にその事業の構想について検討することが必要となります。民間企業、民間団体など各方面との調整を急ぎ進めて、それぞれに協力していただける環境づくりに向け積極的に取り組むことが望まれるのですが、今後県の組織としてどういった対応を考えられるのか、あわせて知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 続きまして、県庁組織の活性化──人事制度、職員のキャリア形成について。
 先日、ある職員の方とお話をしているときに、たまたま県庁の人事制度の話になりました。その職員の方いわく、これまで県職員として非常にやりがいを感じて仕事をさせてもらってきている、しかしさまざまな経験を経て今、部下を持って仕事をする管理者の立場となって改めて難しい点を時々に感じる、県職員としてどういったキャリアを形成するのか、そこでは単に前向きに仕事をしてくるだけでなく、年相応の職務・職責を果たすための準備が必要で、それを支援する仕組みがもっとあればよいと思う、特にこれからの若い職員の人のためにも新しいキャリア形成の仕組みづくりが必要とされていると強く感じる、と話されていました。
 今の自治体で組織としての力を最大限に引き出すためには、職員の皆さんに、とにかくがむしゃらに仕事に励んでもらうといったことだけではなく、個人個人の能力を組織としてしっかりとマネジメントしていくことが大切だと思います。それぞれの職員の方が経験を重ね、年を重ねる中で、どの年代、どの立場、どの役職で、どういったスキル・能力が必要とされるのか、それを身につけるためにはどういった方法があるのかといったことについて、新たな仕組みづくりを真剣に考えるべきときに来ていると思います。
 自治体が今後みずからの手で戦略的な人事政策を構築するためには、次の三つの視点が重要だと私は考えます。まず一点目として、求める人材像を明らかにする。これは、和歌山県として目標とする将来の行政像を明確に示した上で必要とする職員像を明らかにしていくということです。二点目として、必要な人材の組織内における構成を検討する。そして三点目として、積極的な貢献を引き出す仕組みをつくる。新たな人事制度、研修制度の設計となります。これらの実現に当たってはキャリア形成の仕組みを新しく構築することが不可欠で、求める職員像に到達するために職員一人一人にいつどのような経験、研修を積んでもらうのか、その実現へのプロセスを用意することも必要となってきます。具体的な制度例としては、進路選択制、専門職制度、自己申告制度、自主研修制度、公募制などが挙げられると思いますが、こういった制度を活用しながら県職員の一人一人の方が自身の目標をしっかりと定め、キャリア形成に取り組む必要があります。民間経営同様、自治体経営に当たっても、事業戦略、組織戦略、そしてそれに加えて人材戦略が今重要となっていて、これは何も県庁組織、内部の視点だけを持った取り組みではなく、一般の人材市場いわゆるマーケットで評価される人材の育成について、県としても高い目標を持って進めていくことが求められているのだと思います。この厳しい時代に明確な目標を持って職員一人一人がみずからを有能・有用な財産となる人材に高めていく、これはあくまで職員の方それぞれの長い人生においても非常に大きな意味を持つものであると考えます。
 そこで質問ですが、まず最初に、県庁組織の活性化、生産性の向上といった視点で職員のキャリア形成についてどのように考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
 次に職員研修について、私は、全職員の能力開発を一律的に行い、全体のレベルアップを目指す研修には限界が来ているように思います。今後は、それぞれの職員の方が自主的にみずからの能力開発に積極的に取り組んでいくことが必要だと考えますが、そのための研修プログラムなど、どういった環境を築かれようとしているのか、その基本的な考えについてご答弁をいただきたいと思います。
 次に、現在の人事制度と職員研修の関連について。
 例えば、研修プログラムの習得状況と所属配置の関連づけなどを含め、県の人事政策において民間企業で積極的に活用されているCDP──キャリア・ディベロプメント・プログラム──いわゆる経歴管理の考え方は非常に有効な手段であると思われます。その活用についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 また現在は、技術職の方だけでなく、事務職についても強い専門性が求められます。例えば環境、福祉、経済など、どの政策分野をとっても高度な専門知識が要求される時代となっています。そういった中で、経歴管理、経歴開発といった概念を県庁組織に導入するに当たって個々の職員の方が能力を最大限発揮できるよう、一定の時期にゼネラリストいわゆる総合職、エキスパート・専任職、スペシャリスト・専門職などといったコースを選択して自律的にキャリア形成を行うことのできる人事制度、いわゆる複線型の人事制度の導入も今の時代には有効な人事政策だと私は考えるのですが、この複線型人事制度について、現状における認識と今後の見通しについてお聞かせ願いたいと思います。
 また、例えば複線型人事制度を導入するときなども、職員の方がどのようなコースを選び自己のキャリア形成を進めていくのか、あくまで職員の方が自己の適性を正しく把握してコース選択を行い、能力開発に取り組んでいくことが重要なポイントとなります。そこでは、本人のキャリアの見直し、いわゆるキャリアの棚卸しや能力評価をしっかりと行っていくことが欠かせない条件となるのですが、そのためにもキャリアカウンセリング、キャリアコンサルティングといった相談制度、またキャリアプラン研修などといったものが重要だと考えます。これらの制度の導入について、これもあわせて総務部長にご見解をお聞かせ願いたいと思います。
 最後に、併設型中高一貫教育の実施について。
 さて、この九月議会の一般質問で多くの先輩・同僚議員からこの中高一貫教育についての質問がされてきています。関心の高さがうかがえますが、私なりに視点を変えて質問、提案をさせていただきたいと思います。
 先日、教育委員会から、和歌山市の向陽高校に県立の中学校を併設する、いわゆる併設型中高一貫教育の実施が発表されました。ここに、その取り組みの指針となった「和歌山県における今後の中高一貫教育の在り方について」という報告書がありますが、これを読ませていただくと、その意義について、六年間にわたる計画的・継続的な学習指導を行う中で生徒の個性を伸長させるといったことが大きな目的の一つとして繰り返し指摘されています。
 今回の併設型中高一貫教育の取り組みについては、さまざまに不安視される声があります。しかし、私自身、子供たちの将来を真剣に考える上で、今の時代には公教育の多様化・個性化はぜひとも必要なものであり、今回の併設型中高一貫教育の実施については、単に紋切り型の高校で従来の教育のあり方にあぐらをかいて安住するのではなく、これまでの教育のあり方に一石を投じ、結果として子供の個性・特徴を伸ばしてやり、子供たちが社会に出ていくまでにたくましく生きる力をつけさせるといったことがこの取り組みの本質であれば、私は基本的に賛同する立場です。ただし、将来へ向け、理想と現実のはざまでどこまで実効性のあるものとしていけるのかはこれからだと思います。
 そこで、今回の取り組みを何としても実のあるものにしていっていただきたいとの願いを込めて、現在の教育に対する私自身の思いも含めて何点かの質問をさせていただきたいと思います。
 まず、今回のことで議論を深めるためには、中学・高校といったその一時期をただ切り取って見るのではなく、社会とのつながりといった点をしっかりと押さえて考えなくてはならないと思います。今、社会は大きな転換期を迎えていて、日本の社会はその質が大きく変わろうとしています。この時代、私たち大人は、日本社会が変化している状況をしっかりと踏まえて、子供がその中で社会へ出ていく過程の中でどういった教育、準備を必要としているのかを真剣に考える必要があるのだと思います。社会が変われば求められる人材、必要とされる人間像もおのずと変わってきます。そうなれば、これまでの教育、公教育が担ってきた実質的な内容も確実に変化を求められるのです。
 戦後、我が国では、安い労働力を頼りに、重厚長大と言われる産業構造を柱として高度経済成長を達成し、現在に至っています。そんな時代の中では、公教育が担う役割としては、最低限の読み・書き・そろばんを保障して、均質な歯車として働く標準化された人間をどんどん生み出すことが望まれていました。私自身もその延長線上にある教育を受けてきた一人ですが、このような統一規格に合った人間が必要とされる時代はもう終わりを告げようとしていると強く感じます。
 今の時代に、これまでのような画一化された教育を惰性で続けることは、結果的に多くの子供たちにとって不幸な状況をつくり出すものになると思います。小中学校を出て学力テストにより単純に高校を振り分けられ、確たる目的意識を持つこともなく入学し、卒業し、そして社会へ出ていく、そんなことではこれからの時代を切り開いていく人材は生み出されません。
 私自身、心に残る話として、松下幸之助さんが、ご自身が育った境遇について語った著述の中で教育にかかわる指摘をされているのですが、これは今の教育問題を考える上でも非常に示唆に富むものだと思います。よくほかでも例え話として話させていただくのですが、幸之助さんが立派に事業を起こせたのは、父親に反対され学校に行けなかった、学歴を持たなかったことが結果的にはよかったと指摘されています。母親のもとから学校に通いたいと話す幸之助さんに幸之助さんのお父さんが話されたことですが、「おれは反対じゃ。奉公を続けて、やがて商売をもって身を立てよ。それが一番おまえのためやと思うから。志を変えずに奉公を続けよ。今日、手紙一本よう書かん人でも立派に商売をして、たくさんの人を使っている例が世間にはたくさんある。商売で成功すれば立派な人を雇うこともできるのだから」と、学校に行きたいと願う幸之助さんにきっぱりとお父さんはおっしゃったそうです。それを受けて幸之助さんは、「自分の今日あるを顧みて、父のことをしみじみと思う。私は学問がないから自己弁護をするのではないが、学問は言うまでもなくとうといことには違いないが、これを活用しなければ何の役にも立たぬのみならず、かえってそれが重荷となって、その人生行路の大きな負担となる場合がある。私はひそかに思うが、学問の素養がなかったことがかえって早く一片の悟りを開き得て今日あるを得たのだと思う」と述べられています。幸之助さんは他の著述の中でも、人によっては学歴を得ることでその人生の足を引っ張ることもあると何度も繰り返し指摘されています。
 この話をそのまますべて今の社会に当てはめることはできないとは思います。しかし一面では、確実に現在の教育の問題点、その本質をつく話だと私自身は感じています。
 今、和歌山県では、九七・四六%という、全国でも八番目の高校への進学率を誇る状況となっています。しかし、本当にほとんどの人が高校に行く必要があり、そうすることで実り多い人生を手に入れることができているのでしょうか。皆が行っているから高校に行く、できれば大学にも行く、そういったステレオタイプの人生観ではこれからの時代をたくましく生き抜いていくことはできないように思います。
 今、時代は確実に変わってきています。企業における採用方法も、ここ何年かでさま変わりしました。採用試験を行うときに学歴を全く伏せて選考する日本を代表する企業ソニーなどは有名な例ですが、幾つも出てきています。それは、単なる歯車となる社員を必要とするのではなく、自立して考える力を持った、困難を打開する知恵のある人間を今の社会が求めているほかありません。程度の差はあれ、こういった状況は特別な話ではなくなってきているのが現在の企業の採用実態でもあります。
 今の子供に人生をたくましく生き抜いてもらいたいと本当に望むのであれば、その子の持つ個性・特徴を徹底して伸ばすことのできる教育環境を与えてあげることが大切です。個性・特徴を伸ばせてこそ、社会に出て自分の役割をしっかりと見出せる人間に育っていけるのではないでしょうか。
 プラモデルをつくるのが得意な子、手先が人並み以上に器用なのも立派な個性、パソコンを月に三百時間も四百時間もさわっていられるのも個性、勉強が得意なのも個性、スポーツの能力が際立って高いのも個性、そういった個性・特徴をしっかりと受けとめてあげ、人と違うところに自信を持たせ、それを伸ばしてあげられる教育が必要だと思います。子供のそれぞれの個性を見守り、その特徴を大切に育ててあげられる環境づくり、またできるだけ早い時期から自分の人生、自分のことについてもっと深く真剣に考えられるよう導いてあげられる教育が必要とされているのだと思います。
 今、和歌山県の教育委員会が進める併設型中高一貫教育の実施をきっかけに、教育改革といった大きな視点を持つ中で、既存の小中学校も連動して、地域全体として子供の育つ環境の抜本的な改善に取り組まなくてはならない時期に差しかかっているのだと思います。
 最初にもお話ししたように、今回の中高一貫は公教育の個性化・多様化を進めるあくまでもその第一歩であり、その目的は、また子供の個性を伸ばすための一つの取り組みであると私自身理解する上で賛同する立場をとるものですが、その確認の意味を含めてお聞きします。
 まず最初に教育長にお尋ねしますが、和歌山県の公教育全般について、どういった将来ビジョンを持って、どういった人材をこの和歌山から輩出されようとしているのか、その内容についてできるだけ具体的にお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 また、その教育の将来ビジョンの中における併設型中高一貫教育の位置づけ、その意義、この先の問題として今後の方針についてどのように考えておられるのか、改めてお聞かせください。
 次に、今後は小学校での指導も重要なポイントになると考えます。そこでは、単純に受験への対応といったものでは当然なく、人生について考えられる教育といったものがふだんの学校教育の中の指導においても重要になってくると思います。そういった視点も含め、小学校の準備はどうなっていますか。また、今後の対応として考えておられるところがあればお答えいただきたいと思います。
 また、義務教育を受け持つ市町村の教育委員会との関係について、今回の取り組みでは、確かにたくさんの課題が指摘されるものとはなっています。しかし、課題・問題があるから消極的になるのではなく、敢然と課題克服に取り組む姿勢が必要だと思いますが、そのためにも県の教育委員会と小中学校の現場を預かる市町村の教育委員会との間で密接な協力関係が不可欠です。しかし、残念ながら実情は、意思疎通といった面でも、かなり両者の間では溝が大きいように感じます。今後はもっと話し合いを進めていっていただきたいと思うのですが、そこで現在の県の教育委員会と市町村の教育委員会との協議状況、問題があるとすればその是正についてどのように考えておられるのか、教育長のご見解を賜りたいと思います。
 以上で、私の第一問目の質問とさせていただきます。ご清聴、ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの山下大輔君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ラッセル・クーツと紀州の海の事業についてのご質問でございます。
 これは、実は一昨年、大阪の国際会議場の社長をしている、同じ山下さんですけれども、私の友達で、和歌山の自然とかそういうふうなものを世界的な規模で何か打ち出すようなことをやりましょうという話から、ひょうたんからこまが出たといいますか、始まった話でございますけれども、担当職員とか民間の関係する団体の方が本当にいろいろ骨を折っていただいたおかげで、ことしの夏、イタリアとかウクライナの国際選手も参加するような大きなヨットレースを和歌山で──これは島精機が協賛してくれたんですけれども、開催することができました。
 それからまた、ヨット体験も三百人というふうな大きな規模で行うことができたんで、今までもマリンスポーツの、ある意味では中心的なところではあったんだけれども、その位置づけというものを改めて確認できたすばらしいイベントだったのではないかというふうに思っております。
 そして、ラッセル・クーツ氏を和歌山の海だけではなかなか呼べないんで、国のビジット・ジャパン・キャンペーンなんかにひっかけようということで、あと瀬戸内海も回って帰られたわけですけれども、来年の七月には和歌山の白浜であるとか白崎海岸であるとか、こういうところのすばらしい景色も入れた写真集が出ますし、それからビジット・ジャパン・キャンペーンの関係ではPRのためのCD-ROMというものの制作ということも行われるということで、和歌山県は本当に自然には非常に恵まれているんで、これを売っていかなければならないということから言えば、その大きな足がかりになったと思います。
 これからのことなんですけれども、費用もかかることなんですが、できれば一回だけのことに終わらせるのではなくて、このラッセル・クーツという世界のヨット界の英雄ですけれども、その人が来てヨットレースを開いたということをきっかけにして何か行っていかないといかんというふうに思っていますし、そしてまた民間企業とか、それから各種団体の方でもそういうことについて強い意欲もあるというふうなことも聞いておりますので、和歌山県としてもこの動向を見きわめながら、協力して何とかいい方向へ行けばいいなと私自身思っています。
 だけど、なかなかこれは一人でできるようなことでもありませんし、これからどういうふうにこれが盛り上がっていくのか、県も重要な部分として関与しながら対応を決めていきたいと、このように思っています。
○議長(尾崎要二君) 総務部長宮地 毅君。
  〔宮地 毅君、登壇〕
○総務部長(宮地 毅君) 人事制度についてお答えを申し上げます。
 県職員のキャリア形成につきましては、入庁後の一定期間、各種の職務内容を経験できるようにローテーションを組んだ人事異動を行いまして本人の適性確認と総合的な人材育成を図っておりますが、一定の経験を積んだ後には、職員の希望・適性にも配慮しながら特定の分野にシフトした人員配置を行うことによりまして複雑・多様化する住民ニーズにこたえられる職員の養成に努めております。
 また、県政の課題業務や他府県、民間企業等への派遣につきましては、職員みずから応募をしてもらい、意欲的に業務に取り組めるように庁内公募制度の導入などを行いまして県庁組織の活性化にも努めております。
 議員ご提言の複線型の人事制度は、こうした人事制度をより一層明確化したものでございまして、これからの複雑・専門化する行政需要にこたえられる体制づくりには有効なものであると考えておりますが、こうした制度を円滑に進めるためには職員みずからが適性を考えて、組織がその考えをくみ上げて配置をする制度が必要となってまいります。そうした意味からも、今後より一層、職員の課題解決能力を高めて自主性と創造性を尊重できるよう、個々の職員の意向を的確に把握できるような方策、業務に関する目標管理を徹底できるような方策、キャリアに関する相談や指導のできるような制度について検討してまいりたいと考えております。
 なお、職員の能力開発のためにさまざまな研修を行っているところでございますが、職員の一層の自主性を促すために選択受講研修の拡大や研修内容の充実に努めますとともに、研修への取り組みを積極的に評価するポイント制の研修制度を導入するなど、研修と人事制度との連携にも努めているところでございます。
 県庁組織の活性化、県民サービスの向上のためには、時代変化に迅速に対応して課題解決に果敢に取り組む職員の育成が何よりも必要となっております。議員ご提案のキャリア・ディベロプメント・プログラムの充実を念頭に置きまして、今後とも職員研修と人事制度の連携のもと、職員の自主性を尊重しながら、その持てる力を最大限に発揮できるような体制づくりに努めてまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 山下議員の教育問題についてのご質問にお答えいたします。
 私は、教育というものは、人間が本来持っている可能性をいかに最大限に花開かせるか、そのための崇高な営みであると考えております。
 本県における公教育、学校教育においては、子供たちに豊かな心や幅広い社会性、そして何よりも確かな学力など、将来にわたってその人一人一人が自分を成長させ発展させていくための基礎を培っていくと。そのためには、お仕着せや借り物でない、自分の頭で考え、自分の言葉で表現し、自分で行動できる、そういう力が最も必要であるということで、議員おっしゃっておられるたくましく生きる力というのはまさにそうであろうということで力を入れて取り組んでいるところでございます。
 その中で、かつて本県のご先祖様たちが非常に不便な交通条件、厳しい立地条件の中で海外に飛躍したさまざまな実例があるわけですけれども、これからの二十一世紀においても世界に飛躍していくことのできる、そういうスケールの大きい人材を和歌山県から生み出していきたい、誠実でたくましい人材、これが世界をリードできる基本的要素であろうというふうに考えておるところでありまして、その考え方に沿って諸般の事業を行っているつもりでございます。
 このたび導入することにいたしました併設型中高一貫教育は、今申し上げたような理念に基づきまして、六年一貫というメリットを生かしながら、国際化に対応できるコミュニケーション能力の育成を重視するなど、特色のある公教育としての最大限に可能性のある教育メニューを提供するということをねらっているものでございます。こうした試みが他の中学校や高等学校での取り組みにも必ずや刺激を与え、互いに切磋琢磨することにつながっていくものと考えておりまして、本県の中等教育のこれからの活性化や質的向上にプラスにさせていきたいと考えております。
 今後とも中高一貫教育に対するさまざまなご期待にこたえられるよう、併設型並びに中等教育校などの中等教育機関を複数校設置できるよう努力をしてまいります。
 次に小学校における指導につきましては、子供たちが将来への夢や希望を持ち、その実現に向かって努力しようとする態度を培うことをより一層重視するとともに、小学校六年生段階での中学教育の進路選択に当たっては、保護者の影響が大変大きいということも考えられますので、併設型中学校に対する十分な県民の理解が得られるよう説明会の開催を初め、さまざまな場を準備しているところでございます。
 さらに、小学校・中学校という義務教育段階の充実が今まで以上に重要になってくるということから、今二年目に入っております小中一貫教育、これは伊都地方、海草地方、そして西牟婁地方で、合計十四の小中学校が独自に一貫教育のあり方を探っております。これらを十分生かしながら、その中で小学校教育のあり方も追求してまいりたいと考えております。
 最後に市町村教育委員会との協力関係でございますが、日ごろから、例えば全県教育長会議や和歌山市教育委員会を含む八地方の教育事務所長会議並びに担当者会議などを頻繁に開催しております。そうした中で、あらゆる分野の問題について協議や情報交換を行っているところでありますが、今後とも、既存のこういう会合だけではなくて、例えば都市教育長会との協議、町村教育長会との協議、さらには小学校長会、中学校長会といった今まで県教委が直接接触する機会の少なかった皆様方ともひざを交えた意見交換をして連携を深めてまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十八番山下大輔君。
○山下大輔君 ご答弁をいただきましたので、再質問をさせていただきます。
 まず、海洋レジャー・プロモーション事業について。
 知事から、今後の取り組みについては関係協力団体・機関との調整を進めて、県としても重要な役割を担いながら検討していくということでお話をいただきました。ぜひ進めていっていただきたいと思います。
 今後は、これはきのうの議会でのやりとりでもありましたけれども、サービス業による内需の拡大というのが国にとっても大きな目標であり、中でも観光サービスは大きな期待をかけられる産業で、きょうの議会の中でも玉置議員も指摘されていたとおり、一面で、世界的に見ても人の交流を通じて平和産業とも位置づけられ、また環境の世紀に公害の心配も少ないクリーンな産業でもあり、この観光産業は二十一世紀の世界の経済をも引っ張るリーディング産業だとも位置づけられています。
 和歌山県は、豊かな自然環境、歴史遺産など、ほかでは得がたい豊富な観光資源を持つ恵まれた地であり、観光の振興によってこそ和歌山の未来は切り開かれていくと強く感じるところです。そんな中、今回のような地域特性を十二分に生かせた海のプロモーション事業などは非常に貴重なものであり、ぜひ官民一体となってしっかりと推進していってもらいたいと切にお願いし、要望といたします。
 次に、人事制度の取り組みについて。
 総務部長のご答弁では、他の自治体と比べて努力されている状況はよくうかがえます。しかし、欲を言えば切りがないのですが、職員一人一人の方がより専門性を持って主体的に仕事に取り組み、はつらつと和歌山県のために働けるよう制度研究を進めていってもらいたいと思います。
 地方分権の進展に伴い、高い専門性や創造力を備えた人材が必要とされます。そんな中で、外部の人材受け入れに関する法律もさまざまに改正される状況にあります。そこでは、外部からの登用ももちろん大切な選択肢ではありますが、しかしまず何よりも最初に取り組まなくてはならないことは徹底した内部人材の活用だと思います。
 最初の質問の冒頭でもお話しした職員の方は、あくまで真摯に職務・職責を受けとめてご自身の至らぬ点について省みておられました。このような実直で誠実な県庁職員の方はたくさんいらっしゃると思います。そういった職員の方の思いにこたえるためにも、県庁組織としてしっかりと取り組みを進めていってもらいたいと思います。これも要望といたします。
 最後に、併設型中高一貫教育の実施について。
 まず、熱のこもったご答弁をいただき、教育長にはご自身の言葉でもさまざまにお話もいただき、ほっとしました。この教育問題については今後さまざまな視点でいろんな課題も出てくるかと思いますが、積極的な教育委員会としての取り組みを続けていただきたいと思います。
 マイスター制──ドイツで有名な職人制度ですが、一例を挙げてドイツなどの取り組みでは、六歳から四年制の基礎学級、「グルント・シューレ」と言うらしいですけれども、グルント・シューレに入り、五学年から、日本で言うところの小学五年生から成績や本人の希望で大きく三つの進路に分かれて学ぶ状況となっています。よって、ドイツの子供たちは十歳で将来のことを考え、進路を決めることになります。早い時期からみずからの進路を見定め、個々の職業のプロフェッショナルとなるべく学んでいる状況があります。マイスターいわゆる職人としての称号を受ける人は、社会的な地位、尊敬を集めるものとなっています。日本にもよき伝統としてたくみ、職人に対する尊敬の念はあったはずですが、今はそういった社会的な価値観といったものが崩れてきているように思います。教育改革を進める中では、もう一度生きること、仕事をすることの意味、価値を問い直すことも必要とされているのだと思います。
 今回の中高一貫を進めるときに、その理念からすれば、決して一校二校の話で済むはずではないと思います。先ほどご答弁でもお答えいただきましたけれども、今後複数校の設置も考えていかれるということでしたけれども、例えば和歌山市などを例に挙げても、幾つも取り組んでいただきたい高等学校の個性化の具体例があります。例えば和歌山工業を物づくり、マイスターの養成校としてはどうか。県和商、市和商を企業家、商売人、アントレプレナーの養成校。例えば和歌山北校ではスポーツ活動に活発に取り組んでくれているので、その特徴を生かした学校整備など、それぞれの学校にはっきりと個性を持たせる取り組みが望まれるのだと思います。
 ただ、すべての高校に県立中学校を設置していくことは現実的な選択とはなり得ないわけですから、そのためにも現在の市町村立の中学校との連携が不可欠であり、そのためには市町村の教育委員会との徹底した協力関係が必要となってきます。あくまで和歌山県全体、地域全体で取り組む教育改革が進められてこそ学校の個性化・多様化の成果も上がることとなるのですから、市町村の教育委員会とも連携をさらに深める中で、ご答弁で教育長がおっしゃられていたとおり、一人一人の個性・能力を最大限に伸ばし、たくましい人材を育てるという理想を実現させていってもらいたいと思います。
 今回の中高一貫に踏み込んだ覚悟は相当なものであると、私自身、思っています。そうであるからこそ賛同するわけですが、県内の各高校がしっかりとそれぞれの個性を発揮し、そして和歌山に育つ子供たちがたくましく成長し、自信を持って胸を張って社会に出ていけるよう心を込めた取り組みをお願いしたいと思います。
 最後に、今回の中高一貫を含め、教育改革全般にわたっては、総合行政としての取り組みも求められるものとなると思います。そこでは知事のリーダーシップも問われるものとなると思うのですが、そこで知事に、今回の中高一貫に対する思い、教育改革全般にわたって感じておられるところ、その所感といったものをぜひ最後に一言でもお聞かせいただきたいと思うので、よろしくお願いいたします。
 以上、要望二点、質問一点として、私の再質問を終わらせていただきます。
○議長(尾崎要二君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 教育改革についてどのように考えるかということですけれども、私は、かねてから言っておりますように、やはり今社会が複雑・多様化している、そしてまた子供たちの能力もいろんな面で才能があると。そうすると、やっぱり地方分権の観点から、その自治体が責任を持って、それぞれの子供たちの能力が発揮できるような多様な教育の場というふうなものをしつらえていくということが僕は必要だろうというふうに思っています。
 今までの日本の国の教育──義務教育もそうですし、高等学校の教育も、大学もそうですけれども、画一的に行うことによって集団として力を発揮するという方向に来たわけです。それはそれで非常に大きな役割を果たしてきたわけですけれども、やはりこれから日本の国が発達した先進国というんですかね──「先進」、「後進」という言葉はよくないわけですけれども、国として、成熟型国家としてこれからもそういう位置を保っていくためには、やはり教育の多様化、そしてまた分権型の教育というふうなことが大事であろうと思っています。
 そういうふうな中で和歌山県も、先日も言いましたけれども、いつもよその県とかのやったところの後塵を拝するのではなくて、少々の抵抗などはあってもやはり新しいところへ踏み込んでいく教育というふうなことをやっていく必要があるというのが私の考えで、これは私が専権でやることじゃありませんけれども、教育委員会の方もそういうふうな観点から、ここ一、二年、新しいことに非常に取り組んできているわけです。
 和歌山県の教育については、まだ結果が出るところまではもちろん行っていませんけれども、その新しい取り組みについては非常に全国的にも高い評価を得ていると。ただ、先般、ほかの議員のご質問にもありましたように、生徒・子供というものを実験材料にするわけにはいきませんので、これはもうその子供の一生がかかっていることなんで、真剣に対応しつつ、やはりある程度迅速にこの時代の変化というものに対応できる教育制度というものを和歌山から発信していくということをしていきたいと、このように思っています。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、山下大輔君の質問が終了いたしました。

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