平成15年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


県議会の活動

平成十五年九月 和歌山県議会定例会会議録 第四号
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議事日程 第四号
 平成十五年九月二十二日(月曜日)午前十時開議
  第一 議案第百十七号から議案第百四十五号まで、並びに報第六号及び報第七号(質疑)
  第二 一般質問
  第三 議案等の付託
会議に付した事件
   一 議案第百十七号から議案第百四十五号まで、並びに報第六号及び報第七号(質疑)
   二 一般質問
   三 議案等の付託
   四 休会決定の件
出席議員(四十四人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       谷       洋   一
     四  番       新   島       雄
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十五 番       平   越   孝   哉
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       東       幸   司
     十八 番       山   下   大   輔
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       木   下   善   之
     二十二番       山   下   直   也
     二十三番       井   出   益   弘
     二十五番       浦   口   高   典
     二十六番       藤   山   将   材
     二十七番       原       日 出 夫
     二十八番       玉   置   公   良
     二十九番       野 見 山       海
     三十 番       冨   安   民   浩
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       阪   部   菊   雄
     三十三番       花   田   健   吉
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       前   川   勝   久
     三十六番       江   上   柳   助
     三十七番       森       正   樹
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       中   村   裕   一
     四十 番       新   田   和   弘
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(二人)
     九  番       大   原   康   男
     二十四番       宇 治 田   栄   蔵
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        中   山   次   郎
     出納長        大   平   勝   之
     理事         垣   平   高   男
     知事公室長      小 佐 田   昌   計
     総務部長       宮   地       毅
     企画部長       野   添       勝
     環境生活部長     津   本       清
     福祉保健部長     白   原   勝   文
     商工労働部長     石   橋   秀   彦
     農林水産部長     阪   口   裕   之
     県土整備部長     酒   井   利   夫
     企業局長       西       芳   男
     教育委員会委員長   赤   松   壽   男
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員長   大   岡   淳   人
     警察本部長      宮   内       勝
     人事委員会委員長   西   浦   昭   人
     代表監査委員     藤   谷   茂   樹
     選挙管理委員会委員長 北   村   亮   三
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       中   原   洋   二
     次長         佐   竹   欣   司
     議事課長       島       光   正
     議事課副課長     藪   上   育   男
     議事班長       鷲   山       智
     議事課主任      尾   崎   善   亮
     議事課主査      土   井   富   夫
     総務課長       土   井   陽   義
     調査課長       宗   野   幸   克
 (速記担当者)
     議事課主任      吉   川   欽   二
     議事課主任      鎌   田       繁
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課主査      保   田   良   春
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  午前十時二分開議
○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第百十七号から議案第百四十五号まで、並
びに報第六号及び報第七号】
  【日程第二 一般質問】
○議長(尾崎要二君) 日程第一、議案第百十七号から議案第百四十五号まで、並びに知事専決処分報告報第六号及び報第七号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 四十四番村岡キミ子君。
  〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、二つの項目についてご質問をさせていただきたいと思います。
 まず初めに、やみ金融被害対策についてお尋ねをしたいと思います。
 これは、やみ金の被害から県民の暮らしを守る対策でもありますので、大変重要な問題だというふうに思っております。
 六月十四日のこと、大阪八尾市でやみ金心中事件が発生いたしました。これは、全国に大きな衝撃とショックを与えたところです。一万五千円借りて、十万円払ってもまだ完済していないと言って、執拗な取り立てと近所へもおどしの電話などで三名の老人を自殺に追い込んだものです。八月十三日には、横浜市在住の七十歳の男性が自宅で首つり自殺をしました。やみ金と言われる無登録業者の悪質な取り立てが原因だったと報道されております。
 七月二十四日、警察庁は、昨年一年間の経済苦、あるいは生活苦などを原因とする自殺者は、過去最多であった二〇〇一年度より千九十五人ふえて七千九百四十人に達していると発表いたしました。この数は、ここ三年連続して年間に三万人を超す自殺者数で深刻な社会問題だと私は考えるものです。
 やみ金の被害者は、借りた弱みにつけ込まれ、本人に対する取り立てにとどまらず、職場、親戚、隣近所までおどしまくるといったやみ金業者に逃げ惑い、おびえて、この苦しみから逃れたい、逃げたいの一心で警察や行政に、そして被害者の会に相談に訪れる県民が最近はふえている状況にあります。借りてもいないのに取り立てのはがきが届いたり、その内容は脅迫文でもあります。こうしたものが各個人の家に送られてくるという実態があります。これ、知事ちょっと見ておいてください。(現物を渡す)
 借りてもいないのに、取り立てのはがきがたくさん家に届く。まさに、脅迫文そのものであります。ひどいのになりますと、電報でお悔やみ電報や祝電、それも台紙が五千円もする豪華なツルの舞や漆菊のものが届けられ、中の文書は取り立てに係る内容だけです。中には、一人の人に対して五つの業者から郵送されたそうであります。東京のやみ金業者と思われるところからはがきが毎日郵送されるなど、その手口もさまざまであります。
 被害者の会である「あざみの会」の方に話を聞きに行ってまいりました。「あざみの会」の相談者の方は、「もうやみ金というのはむちゃくちゃよ」と言いながら、ひどい事例を話してくださいました。電話とファクスで融資を申し込んだが、保証料だ、保険料だと言っては、本人の名前で送金せよ、会社経営者なら会社名で送金せよとか、また本人と会社名を併記して送金することを指示され、結果として、その方は一日にして百七十五万円もの送金をしてしまった。これはおかしいなと思ったので、不安になって融資を断りました。そして返金を求めたところですが、この業者は、上司に相談するのに十日間かかると言われました。そこで、相談に来られたそうであります。この「あざみの会」は、早速業者に電話をして、登録業者でなく違法行為であり、犯罪そのものであることを厳しく突きつけると、返金の期日をどうにか指定をしてきたものの、その期日になっても送金されていないという今の実態です。
 私に相談された事例でも、やみ金に借金したのは近所の男性であるにもかかわらず、借りてもいない老夫婦のお宅にある日突然、東京のやみ金業者とも思われるところから電話がかかりました。そして、「あんたの向かいの〇〇を呼んでほしい」と言われ、断ると、大声でどなり散らす。電話を切ると、五分置きにかかる。あんまりひどいので、交番の警察官に来て対応してもらいました。しかし、どうにもなりませんでした。警察官の指導は、「どうしようもないな。ここにおらんことやな。電話番号を変えるしかないな」という指導だったそうです。「悪いことをしていないのに、何でわしが番号を変えなあかんのか」と納得いかずに、警察官の対応に随分と怒っていらっしゃいました。聞くところによりますと、こんなときは警察官に被害届を提出すること、そして一一六番に電話をして相手の電話番号を伝えてつながらないように依頼すれば、あえて番号を変える必要はないことを知りました。これでは住民の不安は解決されないということになってしまっていますから、住民の最も身近な相談者でもあると思うのです。
 また、もう一つの事例を申しますと、小さい会社に勤務する男性です。やみ金の取り立てで、電話であっても、「おまえの会社に電話するぞ。首になってもいいのか」などとおどされたため、この方も警察に相談に行きましたが、「借りたものは返せ」、こう言われ、随分つらい思いをしたとおっしゃっています。そして警察官の対応、これは私たち市民から見れば大変不親切だなというふうに思うわけですが、どう思われるでしょうか。
 既に、平成十三年七月には、警察庁から県警等に対して厳重取り締まりについての文書も出されています。さらに七月十六日、やみ金対策法が成立するに先立って、衆議院財務金融委員会において論議が行われました。その委員として参加している日本共産党の吉井英勝議員は、やみ金融の取り締まりを実効あるものにするため、警察の取り締まり強化について質問をしたところです。冒頭申し上げました八尾市の三人心中事件の被害者は、八尾警察署や大阪府警に七回も相談に行っていたという。これに対して、警察の対応の甘さが批判をされたところでありますが、今後の対応について求めたところであります。瀬川警察庁生活安全局長は、「やみ金の被害者が大変追い詰められている心情にあるということを十分配慮したきめ細かな対応を行っていく。すべての都道府県警察に集中取締本部を設置する。被害者対策を適切に対応するよう第一線の警察官を指導します」、こう答弁されているところです。警察においても、相談件数が激増していると聞きます。被害者にとって最も身近で頼りになる交番警察官への指導はどのようになされているのでしょうか。最近のやみ金融犯罪についての状況、そして県警としての今後の対策についても県警本部長から答弁を求めたいと思います。
 これまでにも積極的な取り組みが行われてきたところでありますけれども、現状と今後の対策についてお尋ねをするところです。県は、特にサラ金やクレジット、高利商工ローン、やみ金を利用することの危険性について、県民への啓発、被害者への指導、違反業者への指導警告、行政処分等について、また相談件数についても商工労働部長、そして県警本部長のご答弁を求めるものです。
 特に、やみ金と呼ばれる業者は、貸金規制法の無登録違反、取り立て行為の規制違反、出資法の高金利貸付禁止違反に加え、野外広告条例違反として、県管理の道路施設や県有地のさくに無許可で看板等を設置するなどの無法ぶりがはんらんしています。こうした違反屋外広告の撤去を求め、県土整備部長のご所見を伺うものです。
 今や、被害は借金した本人だけではありません。家族、親戚、職場に隣近所、地域社会にも広がっていることから、各振興局にやみ金、あるいはサラ金等の相談員を配置されることを求めたいと思いますが、環境生活部長、いかがでしょうか。
 去る七月、やみ金対策法が成立いたしました。既に九月一日から実施をされているところです。罰則の強化や違法な広告、勧誘行為についても新たに罰則が設けられ、取り立てについても訪問、勤務先などへの電話・訪問、そして第三者への弁済要求など、してはならない具体的行為が明確にされました。そして、罰則も引き上げられ、年利一〇九・五%を超える利息の貸付契約の無効化も明記されたところです。その実効ある取り組みに大いに期待をしたいと思います。
 既に長野県では、常設の相談活動「ヤミ金一一〇番」専属の相談員の配置、やみ金情報の一元的集約のための事業費を予算化し、経営者協会に対しても、やみ金被害者の離職防止について要請をされています。やみ金融業者に対する警告文書の入った通知書など、きめ細かな取り組みが始まっています。また、熊本県、滋賀県、山口県、神奈川県などでも、やみ金緊急対策会議が動き出していると聞きます。
 本県には、被害者救済のための対策会議が設置されているのでしょうか。悲惨な事件発生を防止するためにも、行政担当課や県警はもちろんのこと、弁護士、司法書士や被害者の会などの参加する対策会議がどうしても必要だと思うわけですが、この設置を求めるものです。商工労働部長、いかがなものでしょう。お答え願います。
 二つ目の質問に入ります。幼稚園、保育所の一元化問題についてであります。
 就学前の幼い子供の保育のための施設として、今、保育所と幼稚園があります。その保育においては、日中、四八・五%の子供が家庭で保育をされ、二六・五%が幼稚園で保育されているところです。保育所と幼稚園の違いは、児童福祉法に規定される保育所が親の就労等の事情により家庭保育ができない児童に対して保育と教育を行う児童福祉施設であるのに対して、学校教育法に規定される幼稚園は親の希望により幼児教育を行う学校です。そして、幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省の管轄に入ります。保育所の対象児はゼロ歳から就学前まで、幼稚園は満三歳から就学前の幼児であって、保育時間は、保育所が原則八時間とするものの、開所時間は十一時間、さらに今、延長保育や休日保育、夜間保育なども行われていますから、さらに長時間の保育時間が課せられる、こういうことになっております。そして一方、保育時間を四時間とする幼稚園は、預かり保育実施により保育時間が長くなりつつあります。二〇〇二年度では、六割を超える幼稚園が預かり保育を実施しておりますし、中でも私立幼稚園では八割を超える実施率となっています。保育所は、子供の健やかな発達の保障、親の就労の保障という二つの側面を持っているのも特徴です。私自身も、働き続けるために二人の子供もお世話になってきたところです。
 今、まさに過疎と少子化時代にあって、一人の女性が生涯に産む子供の数の平均は、いわゆる出生率は一・三三と下がり続けております。保育所も幼稚園も定員に満たない現状にあり、経営的な困難もさることながら、子供たちの集団としての育ち合い保育が危ぶまれていると私は思うところです。一方、大都市部では、女性の社会参加が増大し、働き方も多様化しています。子供の数が減少している状況でも、保育所への入所希望者がふえ、待機児童数は全国で三万九千人にも上ります。まさに、深刻そのものであります。この数は、入所申請をしたけれども、いっぱいで入所できない子供の数です。そのため、ベビーホテルや共同保育所、保育ママといった認可外保育施設に入っている子供の場合は待機児童数にカウントされていないというのもあります。その数は二十三万人とも言われています。
 国は、こうした深刻な状況を打開する対策として待機児童ゼロ作戦を打ち出しました。これは、「最小コストで最良・最大のサービス」をサブタイトルにしているところです。まさに、そのねらいが見えた思いがいたします。これまでも再三国会で問題になり、解消を求められたものの一向に進みませんでしたから、まさに驚きそのものであります。その具体的内容を見てみますと、待機児解消目標は二〇〇四年度末までに十五万人、この計画を着実に進めるため、二〇〇一年度の第一次補正予算で百九億円、第二次補正予算で百億円が保育整備費として前倒しで予算化されたところでありますし、さらには公立保育所の延長保育実施率を今の一七%から六二%に引き上げる、そして一時保育や休日保育の実施率を倍増するなど数値目標を示したことは、これまでにない政府の姿勢とも言えます。じゃ、なぜ政府が突然待機児ゼロにすると言い出したのでしょうか。保育所に入れない子供、保護者の状況に胸を痛めたのでありましょうか。ご存じのように、今、失業率が急増しています。これは、企業のリストラに原因があると言われているところです。このリストラを側面から支援し、新たな雇用市場を生み出すためと見られているとも言われています。私は、たとえ動機がそのようなものであっても、待機児をゼロにすること自体問題はないと思いますが、これはむしろ私たちがこれまで一貫して求めてきたものでもあります。しかし、この間、児童福祉法が次々と改正された経過から見て、政府がどのように待機児ゼロ作戦を進めようとしているのか。
 今、保育分野での各種規制緩和が進められています。それには、まず設置主体の制限撤廃です。公設民営方式の促進や施設の運営は民間を極力活用して最小のコストで実現を図ること、施設の保育所は民営で行うことを基本にすることを明記しているところです。そして、「待機児童のいる市町村は公設民営保育所整備計画の策定に努める」、ここまで明記をしています。結局、ゼロ作戦では、企業の保育所が受け皿となるということです。しかも、行政の役割が企業参入のための条件整備となり、公立保育所をつぶせと言っていることと同じではないかと思うのです。こんな待機児ゼロ作戦は、今の状況ではとても許すことができません。最良・最大のサービスを保障すると言うのなら、次代を担う子供たちです。子供たちの権利をどのように保障するかという視点が欠けていますし、また公的保障の拡充という視点も見られないということを私は言いたいと思います。
 規制緩和を次々打ち出す中で、今、幼稚園と保育所の一元化という制度再編成へと進もうとしています。骨太方針二〇〇三は、幼保──幼稚園と保育所──総合施設の設置について、その具体的内容を二〇〇六年度までに検討するとしています。しかし、総合規制改革会議の中間答申において、構造改革特区では、幼保両施設に関する行政、基準を一元化する、幼保総合施設に関する規制の水準は幼稚園、保育所に関する緩やかな方の規制の水準以下にすることを明記しているのです。子供たちが生活する施設の水準をさらに引き下げるような一元化をだれが喜ぶでしょうか。私は、ここに幼保一元化の本質があると考えるものです。長い間、幼保一元化については議論が行われてきたところです。それぞれの機能と役割が違うということで、一定の決着がついていたと私は思っておりました。確かに、本県においても、過疎化と少子化による子供たちの減少が極めて大変な状況にあります。現行の基準等を保持することは困難だと理解するところでもあります。地域の実態に合致した、子供が健やかに保育されるための新たな制度の創設が必要になっていることもまた理解するところであります。
 今、国が特区と認めている一次提案、二次提案はいかがな内容になっていますか。そして、和歌山県の地方型こども園の提案とはどのような内容なのでしょうか、国の特区と県の特区との違いについて、お聞かせ願います。
 国の幼保一元化は、三位一体の改革による国庫補助金の削減に軸足を置いたもので、特定財源である保育所運営のための補助金を一般財源化すると一元化しやすいだろうとか、幼稚園にはない調理室の必要規制をなくし、施設整備費も一般財源化すれば一層一元化しやすいだろうという規制緩和論が今行われています。利用する父母、子供たちの願いや現場を無視した論議は問題だと思うのです。長い期間をかけて子供たちの健やかな発達をどう保障するのかを中心に、地域、行政、保護者、保育園、幼稚園関係者が話し合い、最も地域にふさわしい就学前保育の施設づくりが必要ではないでしょうか。
 平成十三年四月に開設されました白浜幼児園がありますが、白浜保育園と白浜第一幼稚園が合築され、就学前教育、保育が今進められている状況を私は視察をしてまいりました。大変立派で、どの子供たちもこういうすばらしい施設で保育されたならどんなに豊かな子供たちが育つだろうなという思いをしてきたところであります。この白浜町の白浜幼児園は、昭和六十三年から一元化に向かって論議が進められてきたようであります。白浜町主導の研究委員会が設置され、そこで一元化を目指すということが決まったそうでありますが、その後、長い年月をかけて、地域の皆さんや保育所、幼稚園の関係の皆さんたちが本当に熱心に、地域の保育所の中核施設として就学前の保育をどういう形にすれば子供たちが一番幸せなのか、こういった点で論議が繰り返されてきたと聞いております。そして、この施設を見てみますと、本当に子供の立場に立った理念が貫かれておりまして、子供の目線で園舎も工夫をされておりました。時間はかかったとしても、みんなの合意形成をどのようにつくるのか。住民がみずから参加してつくり上げている、このことがこれからの大きな課題に県下全域でなるというふうに思いますし、今、国が進めている画一化した一元化というものについても、みんなで意見を申し述べていく必要があるのではないかというふうに思うところです。こうしたことから、今後の一元化についてどのようなお考えをお持ちなのか、含めて知事の所見をお伺いするものです。
 以上で、第一回目の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 幼保一元化についてのご質問にお答えをいたします。
 今、国が特区の中で進めている幼保一元化というのは、今、幼稚園と保育所を合築とか併設した施設があるわけですけれども、合同保育とか合同教育というのは認められていない。事実上は行われている場合があるのですけれども。それを第一次の特区では幼稚園において合同保育をすることを可能にしたと、それから第二次の特区では保育所での合同保育を可能にしたと、こういうことです。
 それに対して、和歌山県が特区として求めたのは──こういうふうな特区は、どちからかと言うと都会型の問題の解決ということにあったのに対して、和歌山県としては和歌山らしさを出した特区を求めていこうということで、和歌山県の田舎というか人口減少地域においては、保育に欠ける子供の数が少ないのでなかなか保育所がつくれない、基準が画一化していてうまくないという問題があって、こういうふうなものをまず一つは緩めてください、地域の実情に合った緩めたようなものにしなさいということが一つ。それからもう一つは、過疎地域にあっては、母親や父親が働いている子供は保育所へ行けるんだけれども、保護者が働いていない子供は今の基準だと保育所へ行けない。ところが、保育所しかないところがあるわけです。そうしたら、親が働いていない場合の子供は、地域の中で保育所へ行けないから孤立してしまうというふうな感じがあって、子供にとっては別に保育所であろうと幼稚園であろうと、みんな一緒に楽しくやらないかんということは同じことなんで、これを緩和してくれというふうなことを和歌山県は特区として要求したわけです。これは、実はお金が要ることなんで、この特区としては認められていないんですけれども、しかしながら、それが二〇〇六年に新しい形のこども園というふうなものをつくっていこうという方向の中に取り入れられている──これは国とよく相談していますので、取り入れられてきているということは間違いないというふうに思っています。
 それで、私は規制緩和ということは大賛成なんで進めているわけですけれども、そうしたら和歌山県は一律に何もかも幼稚園と保育所を全部一緒にしようということを私は考えているわけではありません。その地域地域によって、そして今まで行われてきた歴史によって、それぞれ要求するものが違うわけで、このこども園方式で幼保一元化した方がうまくいく場所、こういうふうなところは幼保一元化していくべきだと思うし、今までどおり保育所それから幼稚園という二元的な形でやっていった方がいいところは、将来的には一元化していくのかもしれませんけれども、当面はそういうふうな形で僕はやっていくべきだろうというふうに思っています。
 いずれにせよ、その地域の子供、親、そういう人たちが一番望ましいような形での保育なり幼児教育ということを考えられるような仕組みを考えていくことが大事で、しかもそれが今、いろんな規制があり過ぎることによって柔軟性に欠けているというところに私は問題があるというふうに考えておりますので、これを和歌山県の方式としていい方法を考えていこうということで今検討している。
 それから、当然のことながら補助金が減るということが、お金を地方へしわ寄せするということだけで行われるんだったら、これはもう大反対でありまして、地方の教育とか保育の裁量度を上げるためにやっていこうということなんで、お金を切りなさいという話では全然ないわけですから、一般財源化がそういうことに結びつかないんであればこれは反対していかなければいけませんし、一般財源化の中で完全にそういうものが保証されるというふうな方向で働きかけていくということは当然のことであろうと思っているわけです。
 それから、僕は白浜のやつも現地へ行ってよく見てきました。ああいうのは本当によく頑張っていると思うんですけれども、今、村岡議員の質問ではゆっくり時間をかけてというふうなことがありましたけれども、確かに教育というのはゆっくり時間をかけないといかん面もあるんだけれども、世の中がこれだけ大きく変わっているときに、余り長いスパンで、本当に子供のためになることをゆっくりするというのはこれも問題なんで、やはりこういうことをある程度スピードを上げて、そして住民とか専門家の意見も聞きながらやっていかないかんということで、今、児童ニーズの調査でありますとか、就学前児童施策研究協議会とか、こういうふうなものを県でつくって、いろんな方の意見を聞いて、どういうふうな形がいいかということを今鋭意検討しているところでございます。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) やみ金融対策に対する現状と今後の対策でございますが、やみ金融業者による被害が全国的に深刻な社会問題となってございます。本県におきましても、商工労働総務課や県民相談室、県消費生活センターに寄せられた相談件数は、昨年度が約七百件でございましたが、本年度は八月までで既に約五百六十件と、昨年夏以降急増している状況にあります。
 県といたしましては、関係部局、機関で構成する連絡会議を設置し、連携を図りながら対処の方法などを指導、助言しているところでございます。また、行政処分につきましては、出資法の上限金利を超える金利を受け取っていた貸金業者等に対する登録取り消しが平成十四年度が二件、今年度が一件となってございます。このため、具体的な対策といたしましては、被害者から相談のあったやみ金融業者に関する情報を県警察本部に提供するほか、やみ金融業者の銀行口座に関する情報を和歌山財務事務所を介して銀行に閉鎖を求めるなど、排除に取り組んでおります。また、新たな被害者を出さないために、県民に向けてテレビスポット、「県民の友」、ホームページ、刊行物などを活用し、登録貸金業者に関する情報を提供するとともに、やみ金融業者の手口などを紹介し、注意を喚起しているところでございます。さらに、和歌山県新聞折込協議会に対し、貸金業者の広告を取り扱う場合には、登録の有無の確認など、被害防止への協力を要請したところでございます。
 今後の対策といたしましては、さきの国会での貸金業規制法及び出資法等の一部改正法、いわゆるやみ金融対策法の成立を受け、県民への啓発など、やみ金融対策をさらに充実してまいりたいと考えてございます。
 次に、議員からご提案のありました被害者救済のための対策会議の設置につきましては、やみ金融被害者の急増という現状を踏まえ、広く関係団体等に呼びかけ、連携を視野に入れながら対策会議の設置について現在検討しているところでございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 違反屋外広告の撤去についてご指摘がございました。
 議員ご指摘のとおり、現在、道路などの公共空間にやみ金融などの違反広告物が大量にはんらんしており、町の美観風致を損ねております。このため、法整備がなかなか進まない中、国に先駆け本県独自でプラスチック板、ビニール製立て看板などの違反広告物を速やかに撤去できるよう、屋外広告物条例の改正を今議会にお願いしているところでございます。条例改正後は広くPRし、県民の皆様のご協力をいただきながら、違反広告物の速やかな撤去を行うなど、町の美観の維持向上に努めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) やみ金被害対策につきまして、各振興局にやみ金等の相談員を設置することについてでございますが、県の相談体制といたしましては、現在、県民相談室や県内二カ所にある消費生活センターの相談員による常設相談、及び月三回の弁護士相談、また和歌山市、田辺市以外の市町村につきましては、年三十回の移動県民相談や移動消費生活センターを随時開設して対応しております。
 なお、相談件数は、やみ金融相談を含め近年増加しておりますが、相談件数の最も多い消費生活センターについて申し上げますと、平成十四年度の相談件数七千八十七件のうち、やみ金融相談は四百五十二件で、その大部分が電話による相談となっております。こうした実態と相談内容の深刻さを踏まえまして、電話による相談につきましても、よりきめの細かい対応ができるよう相談員の研修を実施するとともに、振興局に相談に見えられた方に対しましても、職員が十分話を聞き、スムーズに対応できるようマニュアルの作成や研修等を実施してまいります。
 また、やみ金融被害の相談につきましては、内容により専門的な知識が必要で、その場で解決することが難しい事例もございますので、そのような場合は警察や消費生活センター、弁護士相談等を紹介してまいります。
 今後も、相談体制の充実と関係部局、関係機関の連携を図りながら県民の不安感解消に努めてまいります。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 警察本部長宮内 勝君。
  〔宮内 勝君、登壇〕
○警察本部長(宮内 勝君) 最初に、交番に勤務する警察官等に対する指導状況についてお答えいたします。
 警察に寄せられるやみ金融相談につきましては、県民が切実な気持ちで早急な解決を求めているケースが多いことから、警察としましては、常に県民の立場に立ち、誠実な対応をするよう指導教養を徹底しているところであります。
 議員ご指摘の案件につきましては、事実確認はできておりませんが、もし相談者が警察官の対応に不快の念を抱かれたのであれば残念なことであると考えます。今後とも、やみ金融に関する県民からの相談につきましては、相談担当職員初め、県民と直接接する第一線警察職員に対する指導教養をさらに徹底し、県民の立場に立った積極的な対応に努めてまいりたいと考えております。
 次に、やみ金対策の現状と今後の対策についてお答えいたします。
 昨年来、全国的に高金利、無登録営業、その他、貸金業に関連した詐欺、脅迫等のいわゆるやみ金融事犯が横行しているところであります。本県におきましても、本年八月末現在で約二千件に及ぶさまざまな相談を受けております。その内容は、借りてもいないお金を請求されたという相談が多くを占めておりますが、中には悪質な事犯が見られるところであります。警察としましては、やみ金融事犯が深刻な状況にあるという認識のもと、弁護士会のほか、知事部局等の関係機関と連携しながら、悪質なやみ金融事犯の検挙、被害防止のための広報啓発活動等を基本として、法と証拠に基づき、捜査、警告等の措置を行っております。
 さらに、去る八月十八日には警察本部にヤミ金融事犯集中取締本部を設置し、総合力を発揮した強力な取り締まりを推進しているところであります。本年八月末現在、六事件十二名を検挙しておりますが、今後、貸金業規制法、出資法の一部が改正されたことを踏まえまして、悪質なやみ金融事犯の取り締まり等を一層強化する所存であります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十四番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 ご答弁をいただきました。
 私は、知事の特区の提案、そして今後のあり方というんですか、取り組み方というのについては賛成をするものですけれども、ただ、国は構造改革の中で、やはり補助金のカットというのは大きく打ち出されているわけですから、それがさっきも言われたように一般財源化ということで市町村を圧迫するような、そういうようなことに対しては、知事も市町村も含めて国に対して厳しく対処していただきたいというふうに思います。事は、次代を担う子供たちの発達をどう保障するんかということとあわせて、社会情勢のもとでの保育所あるいは幼稚園のあり方ということになるわけですから、そういう点ではしっかりと意見を言っていただきたいなというふうにお願いしておきます。
 それから、やみ金問題ですけれども、これは今本当に命を落とすまでに深刻な問題になっている。それは、借りた者が悪いじゃないかと言えばそれまでですけれども、しかし、そういう無法を知りながらやっているやみ金業者、こういった人たちが法治国家のもとでまかり通っているということについては厳しい対応が必要だというふうに思うわけです。交番で働くお巡りさんたち、警官の皆さんたちは、本当に地域のことをよく見回っていただいたり、そしていろんなことで相談に乗っていただいているというような状況はあるわけですけれども、しかし住民の皆さんたちは、交番に行って相談したら何とかなるという、そんな期待を持っているわけですよね。これからも大変でしょうけれども、そういう期待にこたえていただきたいというふうに思いますし、法律ができた以上は、この法律が本当に生かされるという、そういうことが今求められていると思うんです。
 そういう点でも、住民も協力できるところ、そんなものがあれば積極的に──あの地域に配られておりますニュースがありますね、そういうものに訴えて、そして住民の皆さんと一緒に地域を守るという、そういう立場で頑張っていただきたいなというふうに要望をしておきます。
 以上です。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十八番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。ただいまから一般質問を行います。
 私は、今議会は、来年の六月予定の高野・熊野の世界遺産登録を前にやり遂げなければならない課題や問題点について提言をし、知事及び関係部長の考えをお聞きしたいと、このこと一つに絞って取り組みを進めてきましたが、IT総合センター建設における地盤沈下問題という事態が起こり、今議会で同僚の議員の皆さん方がその責任や原因について質問されています。私は一日も早い完成を願って期待していました一人でしたが、私どもの地元では、県民に事実経過を明らかにしてもらわなければ、せっかくの世界遺産登録ということにも水を差すことになる、そういう周辺住民の皆さんの声があります。また、知事も記者会見で「小さな金額ではないので、私自身もがっかりした。四億円も五億円も使うわけだから説明が必要だということでやっていく」と述べているとおり、議会や県民に対して十分な説明責任が必要との認識を示されています。そこで、二日間の議会論議、また私が現地調査をしてきたことを踏まえ、疑問点、問題点のみに絞って県当局の見解を求めたいと思います。
 私は、複数の専門家や学者、地元の事情を知っている関係者に会い、調査をしてきました。そして、今日までの当局の答弁を聞いた上で、私なりの三つの理由により、今回の地盤沈下の責任については県及び設計会社の認識の甘さにあったのではないか、そう考え、ただいまからその理由を申し上げたいと思います。
 まず、皆さんに配付をしています資料を見てください。
 その理由の一つは、ナンバーで一、二、三と打っておりますけれども、一、二、三にありますように、スレーキングだけでなく、ここの地質は地盤沈下が起こり得る地質ではないかということで、そういう地質に建設する場合は、例えば、基本的な通常言われている木造住宅の方法とか、さらには県の総合教育センターの基本設計の指摘なども含めて、当然地盤沈下が起こり得る地質ではないかと。そういう地質に建設する場合は、こういった今指摘をしたような方法で行うのが常識である。この資料に沿って説明をさせてもらったら、そういうことが指摘をされている。そのことがなされていなかったことが、つまり私流に言えば冒険をしたんではないか、そういうことが一つであります。
 二つ目の理由は、裏のページで四にあります。IT総合センター地質調査報告書に、実はきちんと地盤沈下及びその対策が警告をされております。地盤沈下が起こった事故後、つまり平成十五年五月十五日に、急遽、県が業者を呼んでヒアリングをしております。そのヒアリング結果からも明らかであると思います。今回採用された連続布基礎である直接基礎を採用するのであれば、不同沈下の発生を抑制し得る対策の実施が前提との記載があるわけです。そもそも、この不同沈下に対する認識の甘さが沈下の最大の要因ではなかったのか。ここで不測の事態を想定するのであれば、くい基礎をするのが当然だったのではないかと、私はそのように思います。
 そして、三つ目であります。五番目の地質概要という写真を見てください。答弁でスレーキング現象の予測はできなかったと言われておりますけれども、IT総合センターの建設予定地は、この資料の写真にあります黄色の部分であります。ちょっと見にくいかもわかりませんけれども、黄色の部分。ここに総合センターの建設予定地もございます。「紀伊半島の地質と温泉」という中の黄色の部分であり、スレーキング現象によって強度低下しやすい岩盤特性を持っていると定説化をされているところであります。これも調査をいたしましたが、そうであります。したがって、最初からこの地域はスレーキングが起こりやすい地質であるということはわかっていたはずであります。
 以上、三点の理由によって、だれにも責任がない、予想し得なかったと言うのでは県民への説明責任が果たされていないのではないでしょうか。したがって、今回の地盤沈下についての責任は、県及び設計会社の認識の甘さにあったと私は考えますが、県土整備部長に答弁を求めたいと思います。
 続きまして、来年六月に予想されます我が県の高野・熊野の世界遺産登録にまつわる話題や登録までのスケジュールは順調に進んでいますが、肝心の我が和歌山県の内情は遅々として進んでいません。今日、登録を前に私たちはやり遂げなければならない課題や、知事が大なたを振るわなければならない幾つかの問題を取り上げ、当局の見解を求めたいと思います。
 なぜかと申しますと、先般、小泉総理が、日本に外国の旅行者を今の五百万人から一千万人にしたいと打ち出しました。日本人が外国に一千六百万人も行きながら、なぜ外国人が日本を訪ねようとしていないのか、どこに問題があるのか、探ってみました。
 ちょうど世界遺産登録のうれしいニュースが間近に迫っているときだけに、一層関心が深まり、私は、我が県の登録されようとしている地域の人たちが、この登録をどういう態度で受けとめるのか、そして今、その地域に欠けているものは何なのかをこの夏、高野山と熊野古道の二地域を回り、私なりに調査をしてみました。
 そこで、二つの地域に共通しているものが見えてきました。その一つは、世界遺産というものに対する理解と、指定されることによって何がどういうふうに変わるのか、指定されるという意味は何なのか、そしてその地域は世界に対してどのような権利と義務を背負わなければならないのかであります。つまり、一言で言うと、いまだに「世界遺産登録って何」、人によっては、こんな煩わしい身動きのできない状態になるならばという、本来あってはいけない感情がくすぶっていることを多く見かけました。世界遺産登録に関しての県民の皆さんの理解について、教育長にお答えをいただきたいと思います。
 ある地域では、一年間に多くの観光客を見込んでいながら、自動車による排ガスがさらにひどくなり、環境を浄化して外国人を迎えられるような状態とは全くかけ離れた日常が続いていることです。世界遺産に対する地元住民の意識を高めていくには、私は環境との関連性が大変大事であると思います。自分たちは、世界の人々がこの高野・熊野に来やすい形をつくることによって自分たちの生活も向上する。それをしないで自分たちの生活はよくはならないと思います。世界の人々に何らかの貢献をすることによって、自分たちの生活向上につながる。つまり、自分たちの生活向上は、今まで以上に厳しく対処しなければならない環境対策が前提にあって初めてなし得ることだと思います。世界遺産に登録されることは、きれいに保全をするとともに、それを見に来る観光客にさらなる環境政策を推し進めることです。わかりやすく言えば、地元の人々の義務であると思います。どうも、高野・熊野を回ると、自分たちの生活がどうなるのかということに気をとられて、もっと広い視野で登録されるという地球人的な発想に欠けています。本来そうではなくて、環境に神経質になるぐらいまでに徹底をし、それを理解することが自分たちの生活の向上につながるのです。そういう啓発を県が中心になってやるべきではないでしょうか。県がいろいろパブリシティーをしてもはっきりしないと、上っ面だけのお祭り騒ぎで終わってしまうのではないでしょうか。
 そこで、知事の立場において、まず世界遺産というパブリシティーを一般に行ってもらいたいと私は思います。それは、今まで和歌山が環境立県として緑の雇用政策を進められてきたその集大成が世界遺産登録ということで結実しようとしているのではないでしょうか。
 ユネスコの世界遺産の定義のくだりを申し上げます。「この地球上には、人類にとってかけがえのない自然や文化が数多くあります。これらの顕著で普遍的な価値を持つ貴重な自然や文化の遺産は、人類共通の財産として保護・保全し、次世代へ継承されていくべきものであり、それは私たち人類に課せられた責務でもあります。世界遺産とは、この責務を遂行する上に必要な全地球的な約束(世界遺産条約)に基づいて登録された世界的な価値を有する、地球と人類のかけがえのない宝物なのです」。そういうふうにうたわれています。
 パブリシティーの方法は「県民の友」や県政報告のテレビなど、知事がさまざまな会議や催しに出席した折に触れていただきたいと思います。それを頻繁に引き起こすことで県民の意識が芽生え、そして登録時にふさわしい盛り上がりが期待されるのであると思います。
 また、自動車による公害ですが、これは高野山という聖地に入るのですから、全く自動車による文明社会とは手を切り、極端に言えば最寄りの交通機関はできる限り聖山からストップをしたらどうか。聖山を目指す歩く過程に、さまざまな心の変容、葛藤が生じてくるという宗教性を高く掲げることです。
 熊野古道の場合は、むしろ車社会を追い出してしまうと、遺産の保全にかかわる人たちの生活がだめになります。その場合は、同じ車の規制でも環境に優しい、地球温暖化防止にも役立つディーゼル車規制、電気自動車の利用など、登録されてから準備をするのではなくて、今からでも検討を始めてほしいと思います。
 「よいものはよい環境の中で守られる」と言われます。人間は、よいものを見たいという欲望があります。つまり、自然の価値は大切に守り、美しい姿に接することが人間の至上の喜びです。その喜びに感化され、地元の人たちは目覚めていくのです。だから、守りながら見せる、見せながら守る、これが二十一世紀の人間の素朴な中のこの上ない幸せな状況ではないかと私は思います。そういう和歌山県独特の世界遺産の姿をつくり上げるということを我が県の特徴の一つとしてやり上げたらいかがでしょうか。そんなことを強く感じたのですが、知事いかがでしょうか。
 さて、高野・熊野の現地調査をした後、三十五も世界遺産を持っており、世界から観光客をたくさん誘致をしていますイタリアについて、その実態を探るべく、この夏、私自身が現地調査に飛びました。そこで見たものは、イタリアの日本に当たる県ですが、その県がすべてのことを主体的にやっているということです。つまり、知事の斬新なアイデアとか、積極的な観光政策によっていろいろな旅行の商品がつくり上げられています。国は、その県がつくり出したプランを海外に売り込むためのセレモニーとかイベントを開催して県の要望にこたえるよう努めています。イタリア情報がだれでもとってわかるような政府観光局を、日本はもちろん海外にも置くと同時に、一年のうちに何回もPRのためのイベントを開催しています。しかも、報道機関、各国観光の担当者にわかるような活動をつくり上げています。日本に相当する県は、企画だけではなくて、予算の面でも国に依存するのではなく、反対に財政支出もしているのが現状であります。つまり、県の鼻息が荒いというのは、観光がいかに財政の柱になるかということを物語っている証拠であります。日本の場合、国からの財政援助は実際難しい状況であります。県としては、行く行くはお金のなる木に育つために、まず市町村の世界遺産の要望にこたえるべく支援をしてほしいのであります。
 その一つは、交通アクセス条件の向上であります。
 荷物の送迎や自家用車の配送サービスの拡充など、世界遺産特区のような形で条件緩和の方向を、どこの駅でおりれば目的の熊野古道へ行けるのかわかりにくいため、はっきりした明示を、高野山、熊野古道とのバスの相互乗り入れの実現、ラジオ、携帯電話によるナビゲーションの実現、高野山におけるヘリポートの活用の検討、南紀白浜空港の活用などが必要であります。
 その二つは、熊野古道、道しるべの統一であります。
 熊野古道の姉妹道であるスペインのサンティアゴ巡礼道は、黄色の矢印とホタテガイ印で統一された道しるべが非常に明確に、石畳の道は石畳の中へ、平野部では石柱にホタテガイ印を彫り込んだり、市街地では歩道の石畳の壁に埋め込まれたり、どこにも非常に明確に表示をされ、安心して歩くことができましたと、先般スペインに行かれた中辺路町関係者の方々の声であります。このような、だれでも安心して目的地に行ける統一した道しるべを早急につくる必要があると思います。
 その三つは、歴史文化的景観を保全する全体計画づくりと、熊野古道保全パトロール隊の育成であります。
 熊野古道とともに、歴史文化的景観である棚田、ふるさと風景等の保全や熊野古道を保全するためのパトロール隊の育成、また財政面からの基金制度の創設など、ハードの部分とソフトの部分を含めた総合的な県の全体計画づくりを進める必要があると思います。
 その四つは、こうした要望をまとめ、全体計画を推進するための県の体制づくりを早急につくることであります。
 関係部長の答弁を求めたいと思います。
 さて、話はイタリアの現地取材に戻りますが、日本の場合には、イタリアのように三十五の世界遺産の目玉があるわけではないので、同じような観光収入を期待することはできにくいかもしれませんが、それにしても日本の観光事業推進に投入する費用は少ないのであります。現地の日本人で旅行会社の関係者に聞きますと、韓国で百十九億円、オーストラリアで百億円、カナダで百三十四億円、それに比べ日本では三十四億円程度であるということでした。その関係者は、「こうしたお金が補助として投入をされて、観光のPRを目的とした国際観光振興フェアがことし二月に行われたが、日本は韓国や台湾より国力がはるかに上なのに、そのコーナーは二国に比べてはるかに小さい。日本の政府は、観光にはほとんど目を向けていない。振り向いて反省をしないでいるということが続いています」と言われました。私は、今までの低レベルの日本の観光政策と現実のギャップを強く感じさせられました。しかし、これからの日本は、観光立国を目指すというのだから、やはり初期の段階では政府の事業として観光充実のための財政投入は必要であります。
 そこで提案をいたしますが、世界の中で世界遺産の指定地を持っている和歌山、三重を入れた十三の知事が世界遺産登録サミットのような形で集まり、国に対してパブリシティーのために観光事業推進の財政投入をしてほしいという要望をしたらどうでしょうか。それをすることによって外国の旅行会社も、日本もようやく本格的に動き出したという見方をするだろうと思います。それが、観光客の旅行熱に火をつけるだろうという結果が行われるのではないでしょうか、お伺いをしたいと思います。
 話を次に進めますが、今、私が持っているこのパンフレットです。このパンフレットは三県が共同でつくったものでありますけれども、イタリアの旅行関係者及びイタリア政府観光局の方に、これを持っていって見ていただきました。その途端、大変魅力のあるパンフレットだと褒めていただきました。こんなすばらしいところであれば行きたいと、反応が大変よかったのであります。また、私たちも大いにPRをしていくと約束してくれました。しかしこのとき、私たちがやらなければならないことを指摘されました。それは、こういう資料をローマにある大使館の人も日本の旅行会社も知らなかった。イタリアで仕事をされ、いろいろな情報を集めているガイドさんも、こんなすばらしいところがあるのですかと褒めてはくれましたが、これまた初めてだということでした。このパンフレットそのものは、外国の旅行者、マスコミに見せるためにつくったパンフレットではありませんが、単なる絵はがきにすぎないとイタリア政府観光局の関係者がずばり指摘した話を紹介したいと思います。
 「この図案では、我がイタリア人も日本に行きたいとは思いません。私でしたら、この写真がどこにあるのか、最寄りの空港に行く道、宿泊する場所が何カ所あるのか、料金は幾らであるのか、旅行者にとってぜひ行ってみたいということが欠けている」と指摘を受けました。「これでは、旅行代金を貯蓄するドイツ人、合理的な旅行を楽しむフランス人、そして借金をしてでも旅行を楽しむイタリア人の足がそちらの方に向かわないでしょう」。この観光局の関係者の指摘を真剣に受けとめ、旅行者サイドの情報を織り込むことを県当局に要請いたしたいと思います。
 そして、さらに言われたことは、「このパンフレットを七カ国語別の言葉のパンフレットにして、イタリアの拠点であるイタリア政府観光局に送ってください。そこから州や県や市町村に流れるルートがあるから載せてもらいます。また、マスコミはテレビ、ラジオ、三大新聞紙に送れば必ず載るでしょう。さらに要望として、CDやビデオ等をつくればテレビでこれを紹介してくれるはずだ。イタリアの三つの民放局に送れば必ずPRしてくれる。しかも、長いものは三十分物、十分物、短いもので五分物、一分物等さまざまな長さにして送れば、イタリア全土に広がって効果が出る」。大変心強い支援を約束してくれました。イタリアに絞ってあの手この手を申し上げましたが、こうしたことをヨーロッパ全土に、またアジアやアメリカ等に手を打てばもっと広がると考えます。
 また、ローマに駐在している日本の旅行会社の方と会い、その方は「東洋思想だとか精神修行みたいなものにこれからのヨーロッパ人は傾斜していくだろうし、伸びる要素が大きいと思う。それなのに、日本の姿を伝えるチャンスがなかった。彼らは、行きたくても不安がある。その不安を消すことが必要になってくる。それは、いつも日本をPRすることが大事である。私なら、人気のある航空会社のカレンダーに高野・熊野の写真を入れてもらう。そのことによって何げなく日本をPRする。つまり、何げなく日本をPRすることを怠っていた。日本には行きたいが、不安の方が強い。私の方に今度できるパンフレットを送ってくれれば宣伝をしたい」、と言ってくれたのであります。ここでも、世界遺産の資料が届いていない現状があるのです。
 さらに、未来と古代のユニバーサルジャパンと高野・熊野を組み合わせた商品についての感想を聞くと、「魅力ある商品だ。アプローチできる。高野・熊野は絶対よい商品だ。山の景色が違うヨーロッパ人は大変好む。ヨーロッパ人の旅行の終着駅は日本だ。先行投資すべきだ」と、言葉に熱を帯び、訴えられました。
 いろんなとき、いろんなところで宣伝をしてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
 さらに、全世界にPRする方法があるのであります。それは、全世界に和歌山をパブリシティーする一つの方法として国際観光振興会というものがありますが、そのフェアに和歌山県が情報を持って参加すれば、組織があり利用させてくれるということであります。さらに、私たち和歌山県が人事交流、世界平和のためにつくった姉妹都市をつくっています。県内の県も含めた市町村で二十五都市との姉妹提携をやっています。これを今こそ活用すべきだと、旅行関係者や大使館の関係者からの指摘がありました。そのよい例として、大使館員から前橋市とオルビエート、鹿児島県とナポリなどが紹介されました。日本に来てもらいたいというPRと、日本人がそこに行きたいというPRの情報をお互いに持つことによって、そのことが達成されるのであります。つまり、人事交流から姉妹都市を使った観光情報交流であります。
 さて、日本の魅力を知ってもらう重要性とPR方法を提案してきましたが、もう一つ大きな課題は、日本に対する不安、不信感をなくさせることであります。その一つの壁は、幾らPRをしても、最後に旅行会社からそっぽを向かれるのはイタリアから日本への旅行代金が高いということであります。ちなみに私は、今回参加しましたツアー代金は十七万円余りでありました。そこで、政府、県、市町村が一体となって、できる限りコストダウンを求めて努力しなくてはならないと思います。例えば、イタリアの四人家族の一家が一年に一回、バカンスという滞在期間の長い旅行に出かけるのですが、旅行費用は約二十日間で四十万円までと言われました。なぜ、イタリアは人気があるのか。それは、県が観光客に対して、旅費をなるべく安く、きめ細かな配慮がされているのです。観光を主とする産業は税の優遇措置をしており、それは旅行者の旅費の安さにつながっています。また、旅を一回すればスタンプが押され、それがたまれば県からプラスアルファのお土産が出るのであります。このくらい細かな配慮がされて観光客が来るのだと私は感じました。ここでも、観光産業というのはイタリアの国策から外すわけにはいかないということがわかるような気がします。高野・熊野の世界遺産登録を機に、和歌山からこうした改革を全国に発信してはと考えますが、いかがでしょうか。
 もう一つ壁になっているのが言葉であります。「ヨーロッパ人が日本に行ったら、特に言葉で不自由するだろうと初めから頭にある。まず、言葉のことで行きにくい国だと思っている。また、それがハンディの一つになっている。その考えを根底から崩していくことが必要だ」と言われました。日本でも全国レベルでのガイド資格制度はありますが、これでは来年までには到底おぼつきません。もっと地方限定の、和歌山県レベル限定のガイド制を早急につくる必要があると思います。「イタリアにもローカルガイド制というのがありますが、少なくとも英語、スペイン語、フランス語、イタリア語、中国語、韓国語等が必要です」と指摘をされました。このことによって、新しい雇用が意外なところから生まれてくると思います。まず和歌山県からその体制をつくるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 さらにもう一つ、看板の表示であります。例えば、「日本に行ったら親切な案内の表示がありません。最低、日本語と同じ大きさで英語、韓国語、中国語等の表示が欲しい」とも言われました。こうしたインフラ整備についてはいかがでしょうか。
 以上の点について、関係部長の具体的な見解を求めたいと思います。
 現地に行き、強く関心を持てたのは、世界遺産の活用の仕方、演出であります。歴史の建造物や遺産はそのままに置いておくだけで単なる人の目を楽しませてくれるのではなくて、肌で感じながら、現代の空気を吸いながら、古代をほうふつさせるつながりを持ったものをつくり上げていることでした。例えばベローナでは、二〇〇〇年前の建造物の中でオペラを開く演出をすることによって、世界から多くの若者からお年寄りまで来ているという、こうしたエンターテインメントをこの高野・熊野で考えていかなければならないと私は感じました。
 続いて、世界遺産登録に向けての祝賀会やイベントについてであります。
 イタリアの政府観光局の関係者は、「世界遺産になるということは、国家の紋章ということ、つまり国を動かせるということです。世界遺産のイベントをするためにEUからの予算をもらいました」と聞かされました。和歌山の高野・熊野が登録されれば、関西の各府県がこれを祝福し、観光を初めいろんな県づくりに利用することにつながってくるのであります。世界遺産とは、関西や日本全体にこれだけの影響力があるのだと私は思います。知事が中心になって動けば、関西や日本全体が協力してくれるというのがEUの考え方の一つであります。イタリアのマテラというひなびた地域が世界遺産登録されたことを、祝賀会など県がイベントをすることによって大きなブームになったそうであります。すばらしい自然の農業地帯に保養所として企業の研修所が建ち、高野山のように修行所ができ、人づくり、町づくりに活気を帯びているそうです。来年の発信に向けて、和歌山県の土地柄と宗教性を盛り込んだ意義のある祝賀会を準備しておく必要があると思います。そのときに、一番影響力のある人をお呼びしたらどうでしょうか。例えば、世界遺産のバチカン宮殿。同じ宗教者としてバチカンの人が祝賀会に参加してくれれば、この遺産が世界に広まるきっかけになるだろうと現地で強く感じました。イタリアに日本紹介のパンフレットを送る。そうすると、バチカンにも報道陣があります。法王の耳にも入る。あるいは、和歌山県から親書を届ける。異教徒であろうと、積極的に世界平和を唱えながら、みずから会おうという姿勢を打ち出しています。そこで、もしかすると、日本人の精神基盤を築き上げたこの高野山にも使者なりメッセージが届くという事態もなきにしもあらずです。そうしたら、世界のカトリック二十億人に対する偉大なPRにも匹敵するのであります。大きな頼みの綱になると思います。まさに、ユネスコが高野山の存在を認知されてPRする中で、こういう思いもかけない後押しをしてくれる意外な効果もあるでしょう。それは、観光客招致に大きな影響をもたらしてくれると思います。知事、いかがでしょうか。
 最後になりましたが、高野・熊野に行って心を正常にしたいという願いをかなえてもらうというのは、人間に与えられた特権であります。忘れかけたその原点を思い出すのが今度の世界遺産登録の県民への最大のプレゼントだと思います。それほど大きな喜びを復活できるという喜びがあります。確かに、人間はふんぞり返り、横暴で万物の霊長で、そのトップにあるという、このことが人間中心の文明社会が地球をつぶすことになってきたのであります。その人間が、地球上に生存する動物の一つとしての意義がはっきりしたときに、初めて人間が人間らしい行動をとる値打ちと、とらなければならない奥の深い人間観を持ち得るのだろうと思います。そんな意味で、世界遺産登録を考えてみたいのであります。初めて、人間が帰依する。つまり、もう少し考える人間に戻って出直してこいということであります。その結論は、ユネスコが考えている以上の奥の深い世界遺産というものを私たち和歌山県民はつくり出していくことだと思いますが、知事の所見を賜り、一般質問を終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 世界遺産の登録に関する本当に精緻をきわめたいろいろなご質問、参考にさせていただきたいと思います。
 まず一つ、世界遺産の登録ということについて、玉置議員が地元を回られると関心が十分高まっていないというふうなご質問でした。
 これは、今は世の中本当にいろんなことがあるので、和歌山県民が全員年がら年じゅう世界遺産のことばかり考えているわけにはいかない。皆さん、生活があるわけですから。それは、僕はやむを得ない面が一つあると思います。それからもう一つの問題は、まだ登録されてないんで、ほぼ確実に登録されるであろうとはいうものの、登録前に大騒ぎするわけにはいかないというような現実的な制約もあって、実は、近く議長に最終的にユネスコの局長なんかに会っていただいて、だめ押しみたいな形ですることを今お願いしているんですけれども、いずれにせよ、そういうふうな微妙な最終的な時期にあるというふうなことだろうと思っています。
 しかしながら、この世界遺産登録ということが、観光立県ということを標榜している和歌山県にとっては千載一遇のチャンスであるということについても、これはまた間違いのないことでございますので、ありとあらゆる機会を通じて、これから県民への理解ということを求めていきたい。また、わかりやすい形にしていかないと、何となく世界遺産、世界遺産と言っても、私自身も十二分に理解していると言いがたいようなところもあるので、これは皆同じようなことだろうと思います。こういうふうなことなんだということを県民にわかりやすく説明するようなやり方というふうなものも、もうそんなに時間がありませんけれども、早急に検討していかなければならないということだろうと思っています。
 そしてまた、あわせて今回の世界遺産の登録というのが紀伊半島全体を世界遺産にしていくというふうなことでもありまして、その中で、今この紀伊半島の持つ自然と環境というものの重要性ということに対する関心が非常に高まっているときでもありますので、そこに住んでいる人の生活とあわせ、この世界遺産の登録とあわせて、この環境面のすばらしさということをアピールしていく方法を考えていかないといかんと思っています。
 これは、どこでもまだ高まっていないというわけではなくて、例えば高野山なんかでは、高野山の交通を考える協議会というふうなものを立ち上げて、やはり町の中を大きな観光バスが排気ガスを出しながら走り回るというふうなことがいいのかどうか、ヨーロッパでは普通の古い町はそういう形になっていませんから、何かもっといい方法があるんじゃないかということを地元の人なんかが中心になって考えてくれている。なかなか一朝一夕にいくことではありませんけれども、こういうふうな大所高所からの検討というふうなことが必要なんじゃないかと思っているところでございます。
 それからイベントなんですけれども、指定というのはスタートであって終着駅ではないわけだから、正直言ってイベントだけでどうこうしようという気持ちはないんですけれども、しかし、また登録に合わせていろんなイベントを打って関心を巻き起こすということは大事なことは間違いありません。先般、三重県で三県の知事会議が開かれたときもこのことが大きな話題となりまして、とりあえずそこで合意されたのは、一つは大阪で世界遺産を売り出す国際的なシンポジウムを開いていこう、それから東京とか大阪とか名古屋で美術展を開こうと、それから地域内でいろいろな記念イベントを考えていこうと、三県協力してやっていこうというふうなことが合意をされました。
 いずれにせよ、今のところはこういうことですけれども、こういうふうなことについても、役所だけが主導してやるということでは、先ほどの関心が盛り上がらないということにもなってきますので、NPOでありますとか、地域住民の人でありますとか、観光団体でありますとか、もちろん地元の市町村、こういうところと十分連携をとりながら、一番みんなの関心が盛り上がると。そしてまた自分たちだけで大騒ぎしていても仕方がありませんので、外へどういうふうな情報発信ができるかというふうな仕組みを考えていきたいと、このように思っています。
 それから登録に当たっての所感ということですけれども、これは今度の高野・熊野、非常に広い地域を指定します。例えば、法隆寺を世界遺産にということであれば非常にわかりやすいわけです。だけれども、この高野・熊野と参詣道ということで、吉野も入っています。参詣道というふうなことで非常に大きな範囲が指定されるわけで、わかりにくい面があるんですけれども、一方で奥の深さを感じさせる、そしてまた新しい二十一世紀型の世界遺産になり得る大きな可能性も秘めているというふうに思っているわけです。
 そうであってみれば、より一層新しい形の世界遺産としての保存の仕方であるとか、外へのアピールの仕方であるとか、住民参加の仕方であるとか、そういうふうなことについて、今までと一味違ったものを打ち出していく必要がありますし、またそのことが観光立県ということを標榜している和歌山県にとって当然重要なことだろうというふうに思っているわけです。
 イタリアでのお話がありましたけれども、海外に向かっての発信もそういうことですし、それからもう一つ大事なことだと思うのは、日本にも大分、世界遺産に登録されている地域を持つ県がふえてきているので、こういうふうなところが連携をして、これ世界遺産なんで和歌山県遺産ではないわけですから、国としてそういうふうなものについてどういうふうなことを考えていくのかということに対する対応ということを求めていくというようなことも新しい視点として非常に大事ではないかと、このように考えております。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 今回の地盤沈下の責任は、県及び設計会社の認識の甘さにあったのではないかとのご指摘でございます。
 今回の建設予定地が、まさに綿密かつ十分な調査検討が必要な高盛り土の土地であったからこそ、建物の設計に先立って行われました平成十三年八月の地質調査では、細心の注意を払い、通常より多い十カ所のボーリング調査等を実施いたしました。
 この地質調査結果においては、これまでも申し上げているとおり、残念ながら今回の原因と判明いたしました盛り土本体のスレーキング現象による沈下は予測しなかったものの、建築直後に生じる不同沈下、これは予測しておりまして、建物の基礎構造について連続布基礎構造にするか、くい基礎構造にするかの二案が提案されておりました。
 建物の設計においては、この地質調査結果から判明した地盤条件や建物の形態による荷重から、両案について安全性や経済性等の観点から比較検討した結果、連続布基礎構造を選定しており、当初の地質調査結果を踏まえれば、適切な設計であったと判断しております。しかしながら、盛り土材料のスレーキングが沈下の原因であったことが今回判明いたしましたので、今回、必要な工事費の増額をお願い申し上げているところでございます。何とぞ、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 市町村の世界遺産関連事業への支援についての四項目のご質問に一括してお答えいたします。
 まず、交通アクセス条件の向上についてでございます。
 高野・熊野地域は、そのほとんどが山間部に位置するため、公共交通によるアクセス条件が厳しい現状にあります。世界遺産登録によって各地から多くの来訪者が予想されるため、安心して快適に移動できる交通システムなどへの対応が必要と認識しております。そのため、例えば、中辺路、本宮地域及び高野地域それぞれにおきまして、関係自治体や交通事業者等で構成する協議会により、既存のバス路線の整備充実によるアクセス向上や環境に配慮した交通システムなど、地域にふさわしい交通体系について検討を進めているところでございます。議員ご提案の内容を踏まえながら、来訪者がスムーズに世界遺産を訪れることができるよう、関係市町村とも連携しながら必要な対応を行ってまいりたいと考えております。
 次に、熊野古道道しるべの統一についてでございます。
 議員ご指摘のように、古道を目的地まで安全に歩くためには、道しるべの整備が大変重要なことと認識いたしております。現在、関係課室において市町村等と連携して道しるべの整備状況の点検を行い、必要な整備を行うべく作業が進められている状況にあります。統一した道しるべの整備につきましては、先般、三重県において開催されました世界遺産登録推進三県協議会において合意がなされたところでございます。
 次に、歴史文化的景観保全とパトロール隊の育成についてでございます。
 世界遺産を守っていくためには、単に神社や仏閣など文化財として指定されているものだけを保存すればよいというものではなく、これを取り巻くいわゆる文化的景観を保全していくことが重要と認識いたしております。ただし、このことに関しては、地域住民の暮らしにかかわる問題を無視して進めるわけにはいかないこともあり、自然公園法や景観条例等による法的保護以外にどのような対応ができるかなどについて、関係部局及び関係市町村などと検討を深めるとともに、その必要性を県民の皆様の理解が得られるような努力も一面では必要と考えております。また、パトロール隊の育成など、古道の保全に当たっては、議員ご提案のことについて十分研究を行ってまいります。
 次に、県の体制づくりについてでございます。
 議員ご指摘のように、世界遺産登録にあわせ対応しなければならない課題は多方面にまたがります。そのため、和歌山版世界遺産アクションプログラムを早期に策定することとしており、このため副知事を本部長とする現行の和歌山県世界遺産登録推進本部を改組し、世界遺産登録後の保全・活用に向けた関係部局との連携体制の整備を行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 世界遺産を活用した海外からの観光客の誘致につきましては、海外での説明会の開催など積極的な誘致活動を実施し、東アジアを中心に徐々にその成果があらわれてきております。
 ご指摘のとおり、高野・熊野の地域は、欧米の人々にとっても非常に魅力のある観光スポットであると考えてございます。そのため、昨年から国際観光振興会等とのタイアップにより、アジア以外にもイタリア、フランスの雑誌社による取材、イギリス、オーストラリア等の旅行会社による現地視察を誘致したところであり、また今月の下旬から来月にかけて欧米の旅行会社二十四社が本県を視察することとなっております。このほか、英語、中国語、韓国語によるホームページ及び観光パンフレットの作成、旅行エージェントへの情報発信等の積極的な海外PRを実施しておりますが、議員ご提案の趣旨を踏まえ、イタリアも含めた欧米地域へのPRや通訳ガイド等への研修についても今後取り組んでまいります。また、県内の案内看板等の外国語表示につきましても現在進めているところであります。一方、国に対しては、世界遺産の保全と活用に向けての関連予算の確保と新たな支援策等の要望をしております。
 今後も、引き続き国への要望や世界遺産登録府県との連携を密にした取り組み、姉妹都市の活用も含め、さまざまな機会をとらえ、より積極的、効果的な海外からの観光客の誘致事業を進めてまいります。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 世界遺産に関する県民意識の浸透ということに関連してお答えいたします。
 教育委員会では、平成十二年に世界遺産登録推進室を開設して以来、推薦資産のコアとなる史跡の指定や推薦書の作成といった当然必要とされる作業を行うとともに、ユネスコの世界遺産登録の目的と推薦資産の具体的内容について、県民の方々の理解を得るための取り組みを行ってまいりました。
 例えば、平成十三年にユネスコ、国とともに開催したアジア・太平洋地域における信仰の山の文化的景観に関する専門家会議の記念フォーラムを登録資産を抱える地元の高野山と熊野で開催したのを初め、翌十四年には、奈良県、三重県と協力して三県リレーフォーラムを開催してきている例もございます。さらに、こうした特定の企画にとどまらず、各種パンフレットやポスター、ガイドブックを作成配布するなど、普及にも努力をしているところでございます。
 世界遺産登録を目前にして、議員ご指摘の点を十分に踏まえまして、今後も例えば高野地域推進協議会、熊野地域推進協議会に加わっている市町村等と連携をしながら、住民の方々へのご理解を深めるために、学校教育や生涯学習などあらゆる機会をとらえて、人類共通の財産である世界遺産についての理解を深めることになお一層努めてまいります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十八番玉置公良君。
○玉置公良君 答弁ありがとうございました。
 世界遺産については、具体的な答弁をいただきました。有名な方が、「世界の人々が動くということは平和なんだ。人類が世界を移動するということは平和のあかしなんだ」と言われておりますけれども、まさにこの世界遺産登録を契機に、観光立国和歌山を目指して、世界の人々に訪れてもらうことは和歌山が平和の発信県にもなるんだと思います。先ほど、知事も千載一遇のチャンスだと言われました。いろんな角度からきょうの答弁をより具体化していただけますことをお願い申し上げたいと思います。
 それと、時間ございませんから、IT総合センターの件でありますけれども、私の質問の答弁になっていないと思っております。
 質問いたします。先ほど私は、三点の理由を申しました。地質調査報告書には、きちんと警告をされておるということを申し上げました。もう一度言います。連続布基礎を採用するのであれば、不同沈下の発生を抑制し得る対策の実施が前提との記載があります。そもそも、この不同沈下に対する認識の甘さが沈下の最大要因ではないかと私は言っておるんです。ここで不測の事態を想定するのであれば、くい基礎とするのが当然ではなかったと、こう私は思うんです。それとともに、この資料の中にも、事故が発生をしてから県が業者を呼んでヒアリングをしております。そこで県から、建物配置がほとんど盛り土部分にあるが布基礎は一般的と考えるのかと質問しているところで、業者の方が当然くい基礎形式をとる必要がありますと、そういったことを指摘をしているわけです。この調査もされておりますから、もう一度、設計協議が正しかったのかどうか、お教えを願いたいと思います。
 それと、スレーキングは予測し得なかったと言いますけれども、これまた私は、この写真を見せて、この黄色の部分について、もともとスレーキングは起こりやすい岩盤特性を持つ地域だということはわかり切っている話だと、定説であるということを申しました。さらに、調べましたら、南紀白浜空港における高盛り土の沈下対策として、株式会社の日本工営というところが論文を書いているんですけれども、「盛り土完成後大きな沈下が発生した事例が数多く報告されており、この沈下の主たる原因が締め固め不足と、それに伴うコラプス現象やスレーキング現象にあることは今日ほぼ定説化している」と、この南紀白浜空港もこの黄色の部分にあるわけですけれども、さらにこの地質調査の報告書でもスレーキングしやすい岩盤特性ということも指摘されておりますから、やはり私は納得いかないわけでございますが、お答え願いたいと思います。
○議長(尾崎要二君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 繰り返しになりますが、不同沈下の指摘もございますので、設計に当たりましては、直接基礎とくい基礎について、安全性それから経済性の観点から比較検討しております。その結果、その地質調査の結果を踏まえますと今回のアウトプットになっている。これについては、そういう地質調査結果を見れば適切であったと思っております。
 それから今の二点目の、この周辺地域あるいは過去のいろいろな事例があったのではないかというご指摘でございますが、まさにだからこそボーリング調査をして、具体的にその本数も多くして、直接その材質等を確認した。それに基づいての判断でございました。しかしながら、その盛り土材料そのもののスレーキングによる沈下というものは、この地質調査のときには予測しなかった、できなかったということでございます。よろしくお願いします。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 二十八番玉置公良君。
○玉置公良君 私は、先ほどからも申し上げましたとおり、こういったIT総合センターをやはり地元のために早くつくってほしいと願う一人でございます。だからこそ、知事も記者会見で言われておりますとおり、やっぱり税金を使っていくんだから、これはきちっと説明責任を県民に果たしていかなくちゃならん。私は、いまだに疑問があります。だから、この問題については、もう二分でありますからあえて申し上げませんけれども、これから建設委員会、総務委員会、さらに知事の方にもご要望をお願いしたいんですけれども、このことについては県民の一定の理解、議員に対しての理解をぜひとも努力をしていただきたいということを申し添えて、終わりたいと思います。
 以上です。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時五十分休憩
     ─────────────────────
  午後一時三分再開
○議長(尾崎要二君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十八番山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 こんにちは。六月議会に引き続き質問する機会をいただけましたことを感謝し、心を込めて質問、提案をさせていただきたいと思います。
 それでは、議長からお許しをいただきましたので、通告に従って一般質問をさせていただきます。
 第一問目は、前議会に続き、今の和歌山にとって非常に重要と考える観光振興関連の質問から始めさせていただきたいと思います。
 ことし初め、民放で放送されたドラマで、木村拓哉さんが主役を務め、高い視聴率を上げた「GOOD LUCK!!」という番組がありました。主演は、木村拓哉さんのほか、柴咲コウ、竹中直人、ユンソナ、黒木瞳さんなど豪華キャストによるテレビドラマで、全国の多くの視聴者から支持を受けるものであったのですが、そのドラマの最終回、一番の見せ場となる場面で和歌山の地が撮影場所として選ばれました。設定は海外の一級リゾート地ハワイの海辺というシーンだったのですが、これが知る人ぞ知る話として、和歌山の白浜、白良浜で撮影されたものです。視聴者のほとんどは、まさかそのシーンが国内で撮影されたものとは気づかなかったというのが事実です。これは、和歌山の自然環境、特に海というロケーションは、見せ方によって世界の第一級のリゾートと比較しても決して引けをとるものではなく、和歌山県の潜在能力を示すよい例だと思います。和歌山の今ある財産、海、山、またその条件を生かしたホテルなどといったものは、視点を変えて少し見せ方を工夫する、うまく演出を加えることで多くの日本人があこがれを持って見詰める、海外の有名観光地と肩を並べる実力があるのです。
 今議会でも知事は、観光事業に対して大きな期待を寄せる発言を何度もされていました。同僚・先輩議員の多くも同じ思いだと思いますが、私も全く同感です。この観光事業については、中途半端ではなく、徹底して取り組むことが和歌山の未来に光を差すものになると考えます。地域の特性を生かした、より効果の高い観光プロモーション事業を積み重ね、中でも情報発信力のある、情報の訴求力が高い事業を継続的に行っていくことが今求められています。
 そこで、この夏に行われた海洋レジャー・プロモーション事業のその後の対応についてお聞きします。
 去る七月二十日から二十三日の間、世界のヨット関係者から熱狂的な支持を受けるラッセル・クーツ氏が和歌山に入り、紀州の海を舞台に関連事業が開催されました。アメリカズカップを連覇した世界的な海の英雄ラッセル・クーツが和歌山の海にやってきたという事実は、日本のヨット界でもインパクトのあるニュースとして全国に配信されました。私も今回の海洋プロモーション事業の中で幾つかの事業に参加させていただいたのですが、大きな成果をおさめるものであったと思います。
 事業概要としては、この九月議会の冒頭に知事から簡単に報告もされましたが、改めて少し振り返ってみますと、まず七月二十日には、和歌山県民の皆様を対象にクルーザーヨットの体験会が行われました。定員の二倍を超えるという多くの応募があり、抽選で三百名が参加するという盛況ぶりでした。また、七月の十九日から二十一日の三日間にわたっては、地元を代表する企業である島精機様から提供していただいた「SHIMA SEIKI CUP」ヨットレースが行われ、国内外から百十四艇もの参加を数える、国内でも指折りの大きな大会となりました。これはお手元に配付させていただいている資料でもご確認いただきたいのですが、この中に詳細が述べられています。これは「KAZI」というヨット関係の雑誌になるんですけれども、中でもラッセル・クーツ氏も参加したクルーザークラス──この最初のところに掲載されている写真がそうなんですけれども──は圧巻で、和歌浦に六十一艇もの大型ヨットが繰り出し行われたレースは壮観なものでありました。その他、マスコミを使った広報事業として特別番組の放映、来年七月にはラッセル・クーツ氏が和歌山の海をクルージングした様子をまとめた航海記も出版される予定となっています。和歌山県発の情報発信事業としても、当初の目的どおり成果を上げられたものと思います。
 また、来日記念の式典も、前夜祭、ウエルカムパーティーなど、マリーナシティを舞台に盛大に行われました。そこでは和歌山の特徴である海がうまく演出され、特に前夜祭が行われたロイヤルパインズホテルのプールサイドでは、外国からの多くの招待者も参加する中で、日本ではないような錯覚を覚える、和歌山の日常の風景とはちょっと違った華やかな空間が演出されていました。
 今回の事業全体を通して、それぞれに地域の特性がうまく生かされ、それは新しい和歌山の魅力、独自の海洋文化の息吹を予見させるものであったと思います。
 また、今回の事業は、多くの民間企業、さまざまな民間団体の方からもご協力をいただき、事業費の面でも、従来から知事がおっしゃられているとおり、より少ない費用で大きな効果を生む費用対効果も非常に高い、よい事業であったと思います。その費用対効果の効果の部分をより一層高めるためにも、何としても今回の成功を単発の打ち上げ花火で終わらせないでもらいたいと思います。今回の成功を糧として、海洋プロモーション事業というくくりの中で継続・発展させ、地域の活性化にしっかりとつなげていってもらいたいと思います。
 今回の事業により新たに生まれた海洋文化の芽をしっかりと地域に定着させ、新たな和歌山の魅力、価値を創造する、それがひいては和歌山が今必死で取り組んでいる地域のブランド化戦略としても有効に作用するものだと思います。地域のブランディングは決して単発の事業で達成されるものではなく、あくまで継続、継続は力です。
 そこで質問ですが、まず今回の事業について改めて知事の所感、事業が終わった現在、どのように事業全体を総括されているのか、お伺いしたいと思います。
 次に来年度以降の取り組みについて、後日談となりますが、この事業が終わった後、株式会社島精機製作所の島社長にお目にかかる機会を得て、そこで今後の取り組みについてお話をお伺いしたところ、「SHIMA SEIKI CUP」ヨットレースの継続について、県の取り組み次第ではご検討いただける可能性があるように私自身は受けとめました。ただし、あくまで県としてどのようにかかわるかがポイントとなるのですが、そこで来年度以降、この海のプロモーション事業の取り組みについてどのように考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
 また、もし来年度以降で事業の継続を考えるとすれば、早急にその事業の構想について検討することが必要となります。民間企業、民間団体など各方面との調整を急ぎ進めて、それぞれに協力していただける環境づくりに向け積極的に取り組むことが望まれるのですが、今後県の組織としてどういった対応を考えられるのか、あわせて知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 続きまして、県庁組織の活性化──人事制度、職員のキャリア形成について。
 先日、ある職員の方とお話をしているときに、たまたま県庁の人事制度の話になりました。その職員の方いわく、これまで県職員として非常にやりがいを感じて仕事をさせてもらってきている、しかしさまざまな経験を経て今、部下を持って仕事をする管理者の立場となって改めて難しい点を時々に感じる、県職員としてどういったキャリアを形成するのか、そこでは単に前向きに仕事をしてくるだけでなく、年相応の職務・職責を果たすための準備が必要で、それを支援する仕組みがもっとあればよいと思う、特にこれからの若い職員の人のためにも新しいキャリア形成の仕組みづくりが必要とされていると強く感じる、と話されていました。
 今の自治体で組織としての力を最大限に引き出すためには、職員の皆さんに、とにかくがむしゃらに仕事に励んでもらうといったことだけではなく、個人個人の能力を組織としてしっかりとマネジメントしていくことが大切だと思います。それぞれの職員の方が経験を重ね、年を重ねる中で、どの年代、どの立場、どの役職で、どういったスキル・能力が必要とされるのか、それを身につけるためにはどういった方法があるのかといったことについて、新たな仕組みづくりを真剣に考えるべきときに来ていると思います。
 自治体が今後みずからの手で戦略的な人事政策を構築するためには、次の三つの視点が重要だと私は考えます。まず一点目として、求める人材像を明らかにする。これは、和歌山県として目標とする将来の行政像を明確に示した上で必要とする職員像を明らかにしていくということです。二点目として、必要な人材の組織内における構成を検討する。そして三点目として、積極的な貢献を引き出す仕組みをつくる。新たな人事制度、研修制度の設計となります。これらの実現に当たってはキャリア形成の仕組みを新しく構築することが不可欠で、求める職員像に到達するために職員一人一人にいつどのような経験、研修を積んでもらうのか、その実現へのプロセスを用意することも必要となってきます。具体的な制度例としては、進路選択制、専門職制度、自己申告制度、自主研修制度、公募制などが挙げられると思いますが、こういった制度を活用しながら県職員の一人一人の方が自身の目標をしっかりと定め、キャリア形成に取り組む必要があります。民間経営同様、自治体経営に当たっても、事業戦略、組織戦略、そしてそれに加えて人材戦略が今重要となっていて、これは何も県庁組織、内部の視点だけを持った取り組みではなく、一般の人材市場いわゆるマーケットで評価される人材の育成について、県としても高い目標を持って進めていくことが求められているのだと思います。この厳しい時代に明確な目標を持って職員一人一人がみずからを有能・有用な財産となる人材に高めていく、これはあくまで職員の方それぞれの長い人生においても非常に大きな意味を持つものであると考えます。
 そこで質問ですが、まず最初に、県庁組織の活性化、生産性の向上といった視点で職員のキャリア形成についてどのように考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
 次に職員研修について、私は、全職員の能力開発を一律的に行い、全体のレベルアップを目指す研修には限界が来ているように思います。今後は、それぞれの職員の方が自主的にみずからの能力開発に積極的に取り組んでいくことが必要だと考えますが、そのための研修プログラムなど、どういった環境を築かれようとしているのか、その基本的な考えについてご答弁をいただきたいと思います。
 次に、現在の人事制度と職員研修の関連について。
 例えば、研修プログラムの習得状況と所属配置の関連づけなどを含め、県の人事政策において民間企業で積極的に活用されているCDP──キャリア・ディベロプメント・プログラム──いわゆる経歴管理の考え方は非常に有効な手段であると思われます。その活用についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 また現在は、技術職の方だけでなく、事務職についても強い専門性が求められます。例えば環境、福祉、経済など、どの政策分野をとっても高度な専門知識が要求される時代となっています。そういった中で、経歴管理、経歴開発といった概念を県庁組織に導入するに当たって個々の職員の方が能力を最大限発揮できるよう、一定の時期にゼネラリストいわゆる総合職、エキスパート・専任職、スペシャリスト・専門職などといったコースを選択して自律的にキャリア形成を行うことのできる人事制度、いわゆる複線型の人事制度の導入も今の時代には有効な人事政策だと私は考えるのですが、この複線型人事制度について、現状における認識と今後の見通しについてお聞かせ願いたいと思います。
 また、例えば複線型人事制度を導入するときなども、職員の方がどのようなコースを選び自己のキャリア形成を進めていくのか、あくまで職員の方が自己の適性を正しく把握してコース選択を行い、能力開発に取り組んでいくことが重要なポイントとなります。そこでは、本人のキャリアの見直し、いわゆるキャリアの棚卸しや能力評価をしっかりと行っていくことが欠かせない条件となるのですが、そのためにもキャリアカウンセリング、キャリアコンサルティングといった相談制度、またキャリアプラン研修などといったものが重要だと考えます。これらの制度の導入について、これもあわせて総務部長にご見解をお聞かせ願いたいと思います。
 最後に、併設型中高一貫教育の実施について。
 さて、この九月議会の一般質問で多くの先輩・同僚議員からこの中高一貫教育についての質問がされてきています。関心の高さがうかがえますが、私なりに視点を変えて質問、提案をさせていただきたいと思います。
 先日、教育委員会から、和歌山市の向陽高校に県立の中学校を併設する、いわゆる併設型中高一貫教育の実施が発表されました。ここに、その取り組みの指針となった「和歌山県における今後の中高一貫教育の在り方について」という報告書がありますが、これを読ませていただくと、その意義について、六年間にわたる計画的・継続的な学習指導を行う中で生徒の個性を伸長させるといったことが大きな目的の一つとして繰り返し指摘されています。
 今回の併設型中高一貫教育の取り組みについては、さまざまに不安視される声があります。しかし、私自身、子供たちの将来を真剣に考える上で、今の時代には公教育の多様化・個性化はぜひとも必要なものであり、今回の併設型中高一貫教育の実施については、単に紋切り型の高校で従来の教育のあり方にあぐらをかいて安住するのではなく、これまでの教育のあり方に一石を投じ、結果として子供の個性・特徴を伸ばしてやり、子供たちが社会に出ていくまでにたくましく生きる力をつけさせるといったことがこの取り組みの本質であれば、私は基本的に賛同する立場です。ただし、将来へ向け、理想と現実のはざまでどこまで実効性のあるものとしていけるのかはこれからだと思います。
 そこで、今回の取り組みを何としても実のあるものにしていっていただきたいとの願いを込めて、現在の教育に対する私自身の思いも含めて何点かの質問をさせていただきたいと思います。
 まず、今回のことで議論を深めるためには、中学・高校といったその一時期をただ切り取って見るのではなく、社会とのつながりといった点をしっかりと押さえて考えなくてはならないと思います。今、社会は大きな転換期を迎えていて、日本の社会はその質が大きく変わろうとしています。この時代、私たち大人は、日本社会が変化している状況をしっかりと踏まえて、子供がその中で社会へ出ていく過程の中でどういった教育、準備を必要としているのかを真剣に考える必要があるのだと思います。社会が変われば求められる人材、必要とされる人間像もおのずと変わってきます。そうなれば、これまでの教育、公教育が担ってきた実質的な内容も確実に変化を求められるのです。
 戦後、我が国では、安い労働力を頼りに、重厚長大と言われる産業構造を柱として高度経済成長を達成し、現在に至っています。そんな時代の中では、公教育が担う役割としては、最低限の読み・書き・そろばんを保障して、均質な歯車として働く標準化された人間をどんどん生み出すことが望まれていました。私自身もその延長線上にある教育を受けてきた一人ですが、このような統一規格に合った人間が必要とされる時代はもう終わりを告げようとしていると強く感じます。
 今の時代に、これまでのような画一化された教育を惰性で続けることは、結果的に多くの子供たちにとって不幸な状況をつくり出すものになると思います。小中学校を出て学力テストにより単純に高校を振り分けられ、確たる目的意識を持つこともなく入学し、卒業し、そして社会へ出ていく、そんなことではこれからの時代を切り開いていく人材は生み出されません。
 私自身、心に残る話として、松下幸之助さんが、ご自身が育った境遇について語った著述の中で教育にかかわる指摘をされているのですが、これは今の教育問題を考える上でも非常に示唆に富むものだと思います。よくほかでも例え話として話させていただくのですが、幸之助さんが立派に事業を起こせたのは、父親に反対され学校に行けなかった、学歴を持たなかったことが結果的にはよかったと指摘されています。母親のもとから学校に通いたいと話す幸之助さんに幸之助さんのお父さんが話されたことですが、「おれは反対じゃ。奉公を続けて、やがて商売をもって身を立てよ。それが一番おまえのためやと思うから。志を変えずに奉公を続けよ。今日、手紙一本よう書かん人でも立派に商売をして、たくさんの人を使っている例が世間にはたくさんある。商売で成功すれば立派な人を雇うこともできるのだから」と、学校に行きたいと願う幸之助さんにきっぱりとお父さんはおっしゃったそうです。それを受けて幸之助さんは、「自分の今日あるを顧みて、父のことをしみじみと思う。私は学問がないから自己弁護をするのではないが、学問は言うまでもなくとうといことには違いないが、これを活用しなければ何の役にも立たぬのみならず、かえってそれが重荷となって、その人生行路の大きな負担となる場合がある。私はひそかに思うが、学問の素養がなかったことがかえって早く一片の悟りを開き得て今日あるを得たのだと思う」と述べられています。幸之助さんは他の著述の中でも、人によっては学歴を得ることでその人生の足を引っ張ることもあると何度も繰り返し指摘されています。
 この話をそのまますべて今の社会に当てはめることはできないとは思います。しかし一面では、確実に現在の教育の問題点、その本質をつく話だと私自身は感じています。
 今、和歌山県では、九七・四六%という、全国でも八番目の高校への進学率を誇る状況となっています。しかし、本当にほとんどの人が高校に行く必要があり、そうすることで実り多い人生を手に入れることができているのでしょうか。皆が行っているから高校に行く、できれば大学にも行く、そういったステレオタイプの人生観ではこれからの時代をたくましく生き抜いていくことはできないように思います。
 今、時代は確実に変わってきています。企業における採用方法も、ここ何年かでさま変わりしました。採用試験を行うときに学歴を全く伏せて選考する日本を代表する企業ソニーなどは有名な例ですが、幾つも出てきています。それは、単なる歯車となる社員を必要とするのではなく、自立して考える力を持った、困難を打開する知恵のある人間を今の社会が求めているほかありません。程度の差はあれ、こういった状況は特別な話ではなくなってきているのが現在の企業の採用実態でもあります。
 今の子供に人生をたくましく生き抜いてもらいたいと本当に望むのであれば、その子の持つ個性・特徴を徹底して伸ばすことのできる教育環境を与えてあげることが大切です。個性・特徴を伸ばせてこそ、社会に出て自分の役割をしっかりと見出せる人間に育っていけるのではないでしょうか。
 プラモデルをつくるのが得意な子、手先が人並み以上に器用なのも立派な個性、パソコンを月に三百時間も四百時間もさわっていられるのも個性、勉強が得意なのも個性、スポーツの能力が際立って高いのも個性、そういった個性・特徴をしっかりと受けとめてあげ、人と違うところに自信を持たせ、それを伸ばしてあげられる教育が必要だと思います。子供のそれぞれの個性を見守り、その特徴を大切に育ててあげられる環境づくり、またできるだけ早い時期から自分の人生、自分のことについてもっと深く真剣に考えられるよう導いてあげられる教育が必要とされているのだと思います。
 今、和歌山県の教育委員会が進める併設型中高一貫教育の実施をきっかけに、教育改革といった大きな視点を持つ中で、既存の小中学校も連動して、地域全体として子供の育つ環境の抜本的な改善に取り組まなくてはならない時期に差しかかっているのだと思います。
 最初にもお話ししたように、今回の中高一貫は公教育の個性化・多様化を進めるあくまでもその第一歩であり、その目的は、また子供の個性を伸ばすための一つの取り組みであると私自身理解する上で賛同する立場をとるものですが、その確認の意味を含めてお聞きします。
 まず最初に教育長にお尋ねしますが、和歌山県の公教育全般について、どういった将来ビジョンを持って、どういった人材をこの和歌山から輩出されようとしているのか、その内容についてできるだけ具体的にお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 また、その教育の将来ビジョンの中における併設型中高一貫教育の位置づけ、その意義、この先の問題として今後の方針についてどのように考えておられるのか、改めてお聞かせください。
 次に、今後は小学校での指導も重要なポイントになると考えます。そこでは、単純に受験への対応といったものでは当然なく、人生について考えられる教育といったものがふだんの学校教育の中の指導においても重要になってくると思います。そういった視点も含め、小学校の準備はどうなっていますか。また、今後の対応として考えておられるところがあればお答えいただきたいと思います。
 また、義務教育を受け持つ市町村の教育委員会との関係について、今回の取り組みでは、確かにたくさんの課題が指摘されるものとはなっています。しかし、課題・問題があるから消極的になるのではなく、敢然と課題克服に取り組む姿勢が必要だと思いますが、そのためにも県の教育委員会と小中学校の現場を預かる市町村の教育委員会との間で密接な協力関係が不可欠です。しかし、残念ながら実情は、意思疎通といった面でも、かなり両者の間では溝が大きいように感じます。今後はもっと話し合いを進めていっていただきたいと思うのですが、そこで現在の県の教育委員会と市町村の教育委員会との協議状況、問題があるとすればその是正についてどのように考えておられるのか、教育長のご見解を賜りたいと思います。
 以上で、私の第一問目の質問とさせていただきます。ご清聴、ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの山下大輔君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ラッセル・クーツと紀州の海の事業についてのご質問でございます。
 これは、実は一昨年、大阪の国際会議場の社長をしている、同じ山下さんですけれども、私の友達で、和歌山の自然とかそういうふうなものを世界的な規模で何か打ち出すようなことをやりましょうという話から、ひょうたんからこまが出たといいますか、始まった話でございますけれども、担当職員とか民間の関係する団体の方が本当にいろいろ骨を折っていただいたおかげで、ことしの夏、イタリアとかウクライナの国際選手も参加するような大きなヨットレースを和歌山で──これは島精機が協賛してくれたんですけれども、開催することができました。
 それからまた、ヨット体験も三百人というふうな大きな規模で行うことができたんで、今までもマリンスポーツの、ある意味では中心的なところではあったんだけれども、その位置づけというものを改めて確認できたすばらしいイベントだったのではないかというふうに思っております。
 そして、ラッセル・クーツ氏を和歌山の海だけではなかなか呼べないんで、国のビジット・ジャパン・キャンペーンなんかにひっかけようということで、あと瀬戸内海も回って帰られたわけですけれども、来年の七月には和歌山の白浜であるとか白崎海岸であるとか、こういうところのすばらしい景色も入れた写真集が出ますし、それからビジット・ジャパン・キャンペーンの関係ではPRのためのCD-ROMというものの制作ということも行われるということで、和歌山県は本当に自然には非常に恵まれているんで、これを売っていかなければならないということから言えば、その大きな足がかりになったと思います。
 これからのことなんですけれども、費用もかかることなんですが、できれば一回だけのことに終わらせるのではなくて、このラッセル・クーツという世界のヨット界の英雄ですけれども、その人が来てヨットレースを開いたということをきっかけにして何か行っていかないといかんというふうに思っていますし、そしてまた民間企業とか、それから各種団体の方でもそういうことについて強い意欲もあるというふうなことも聞いておりますので、和歌山県としてもこの動向を見きわめながら、協力して何とかいい方向へ行けばいいなと私自身思っています。
 だけど、なかなかこれは一人でできるようなことでもありませんし、これからどういうふうにこれが盛り上がっていくのか、県も重要な部分として関与しながら対応を決めていきたいと、このように思っています。
○議長(尾崎要二君) 総務部長宮地 毅君。
  〔宮地 毅君、登壇〕
○総務部長(宮地 毅君) 人事制度についてお答えを申し上げます。
 県職員のキャリア形成につきましては、入庁後の一定期間、各種の職務内容を経験できるようにローテーションを組んだ人事異動を行いまして本人の適性確認と総合的な人材育成を図っておりますが、一定の経験を積んだ後には、職員の希望・適性にも配慮しながら特定の分野にシフトした人員配置を行うことによりまして複雑・多様化する住民ニーズにこたえられる職員の養成に努めております。
 また、県政の課題業務や他府県、民間企業等への派遣につきましては、職員みずから応募をしてもらい、意欲的に業務に取り組めるように庁内公募制度の導入などを行いまして県庁組織の活性化にも努めております。
 議員ご提言の複線型の人事制度は、こうした人事制度をより一層明確化したものでございまして、これからの複雑・専門化する行政需要にこたえられる体制づくりには有効なものであると考えておりますが、こうした制度を円滑に進めるためには職員みずからが適性を考えて、組織がその考えをくみ上げて配置をする制度が必要となってまいります。そうした意味からも、今後より一層、職員の課題解決能力を高めて自主性と創造性を尊重できるよう、個々の職員の意向を的確に把握できるような方策、業務に関する目標管理を徹底できるような方策、キャリアに関する相談や指導のできるような制度について検討してまいりたいと考えております。
 なお、職員の能力開発のためにさまざまな研修を行っているところでございますが、職員の一層の自主性を促すために選択受講研修の拡大や研修内容の充実に努めますとともに、研修への取り組みを積極的に評価するポイント制の研修制度を導入するなど、研修と人事制度との連携にも努めているところでございます。
 県庁組織の活性化、県民サービスの向上のためには、時代変化に迅速に対応して課題解決に果敢に取り組む職員の育成が何よりも必要となっております。議員ご提案のキャリア・ディベロプメント・プログラムの充実を念頭に置きまして、今後とも職員研修と人事制度の連携のもと、職員の自主性を尊重しながら、その持てる力を最大限に発揮できるような体制づくりに努めてまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 山下議員の教育問題についてのご質問にお答えいたします。
 私は、教育というものは、人間が本来持っている可能性をいかに最大限に花開かせるか、そのための崇高な営みであると考えております。
 本県における公教育、学校教育においては、子供たちに豊かな心や幅広い社会性、そして何よりも確かな学力など、将来にわたってその人一人一人が自分を成長させ発展させていくための基礎を培っていくと。そのためには、お仕着せや借り物でない、自分の頭で考え、自分の言葉で表現し、自分で行動できる、そういう力が最も必要であるということで、議員おっしゃっておられるたくましく生きる力というのはまさにそうであろうということで力を入れて取り組んでいるところでございます。
 その中で、かつて本県のご先祖様たちが非常に不便な交通条件、厳しい立地条件の中で海外に飛躍したさまざまな実例があるわけですけれども、これからの二十一世紀においても世界に飛躍していくことのできる、そういうスケールの大きい人材を和歌山県から生み出していきたい、誠実でたくましい人材、これが世界をリードできる基本的要素であろうというふうに考えておるところでありまして、その考え方に沿って諸般の事業を行っているつもりでございます。
 このたび導入することにいたしました併設型中高一貫教育は、今申し上げたような理念に基づきまして、六年一貫というメリットを生かしながら、国際化に対応できるコミュニケーション能力の育成を重視するなど、特色のある公教育としての最大限に可能性のある教育メニューを提供するということをねらっているものでございます。こうした試みが他の中学校や高等学校での取り組みにも必ずや刺激を与え、互いに切磋琢磨することにつながっていくものと考えておりまして、本県の中等教育のこれからの活性化や質的向上にプラスにさせていきたいと考えております。
 今後とも中高一貫教育に対するさまざまなご期待にこたえられるよう、併設型並びに中等教育校などの中等教育機関を複数校設置できるよう努力をしてまいります。
 次に小学校における指導につきましては、子供たちが将来への夢や希望を持ち、その実現に向かって努力しようとする態度を培うことをより一層重視するとともに、小学校六年生段階での中学教育の進路選択に当たっては、保護者の影響が大変大きいということも考えられますので、併設型中学校に対する十分な県民の理解が得られるよう説明会の開催を初め、さまざまな場を準備しているところでございます。
 さらに、小学校・中学校という義務教育段階の充実が今まで以上に重要になってくるということから、今二年目に入っております小中一貫教育、これは伊都地方、海草地方、そして西牟婁地方で、合計十四の小中学校が独自に一貫教育のあり方を探っております。これらを十分生かしながら、その中で小学校教育のあり方も追求してまいりたいと考えております。
 最後に市町村教育委員会との協力関係でございますが、日ごろから、例えば全県教育長会議や和歌山市教育委員会を含む八地方の教育事務所長会議並びに担当者会議などを頻繁に開催しております。そうした中で、あらゆる分野の問題について協議や情報交換を行っているところでありますが、今後とも、既存のこういう会合だけではなくて、例えば都市教育長会との協議、町村教育長会との協議、さらには小学校長会、中学校長会といった今まで県教委が直接接触する機会の少なかった皆様方ともひざを交えた意見交換をして連携を深めてまいりたいと考えております。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十八番山下大輔君。
○山下大輔君 ご答弁をいただきましたので、再質問をさせていただきます。
 まず、海洋レジャー・プロモーション事業について。
 知事から、今後の取り組みについては関係協力団体・機関との調整を進めて、県としても重要な役割を担いながら検討していくということでお話をいただきました。ぜひ進めていっていただきたいと思います。
 今後は、これはきのうの議会でのやりとりでもありましたけれども、サービス業による内需の拡大というのが国にとっても大きな目標であり、中でも観光サービスは大きな期待をかけられる産業で、きょうの議会の中でも玉置議員も指摘されていたとおり、一面で、世界的に見ても人の交流を通じて平和産業とも位置づけられ、また環境の世紀に公害の心配も少ないクリーンな産業でもあり、この観光産業は二十一世紀の世界の経済をも引っ張るリーディング産業だとも位置づけられています。
 和歌山県は、豊かな自然環境、歴史遺産など、ほかでは得がたい豊富な観光資源を持つ恵まれた地であり、観光の振興によってこそ和歌山の未来は切り開かれていくと強く感じるところです。そんな中、今回のような地域特性を十二分に生かせた海のプロモーション事業などは非常に貴重なものであり、ぜひ官民一体となってしっかりと推進していってもらいたいと切にお願いし、要望といたします。
 次に、人事制度の取り組みについて。
 総務部長のご答弁では、他の自治体と比べて努力されている状況はよくうかがえます。しかし、欲を言えば切りがないのですが、職員一人一人の方がより専門性を持って主体的に仕事に取り組み、はつらつと和歌山県のために働けるよう制度研究を進めていってもらいたいと思います。
 地方分権の進展に伴い、高い専門性や創造力を備えた人材が必要とされます。そんな中で、外部の人材受け入れに関する法律もさまざまに改正される状況にあります。そこでは、外部からの登用ももちろん大切な選択肢ではありますが、しかしまず何よりも最初に取り組まなくてはならないことは徹底した内部人材の活用だと思います。
 最初の質問の冒頭でもお話しした職員の方は、あくまで真摯に職務・職責を受けとめてご自身の至らぬ点について省みておられました。このような実直で誠実な県庁職員の方はたくさんいらっしゃると思います。そういった職員の方の思いにこたえるためにも、県庁組織としてしっかりと取り組みを進めていってもらいたいと思います。これも要望といたします。
 最後に、併設型中高一貫教育の実施について。
 まず、熱のこもったご答弁をいただき、教育長にはご自身の言葉でもさまざまにお話もいただき、ほっとしました。この教育問題については今後さまざまな視点でいろんな課題も出てくるかと思いますが、積極的な教育委員会としての取り組みを続けていただきたいと思います。
 マイスター制──ドイツで有名な職人制度ですが、一例を挙げてドイツなどの取り組みでは、六歳から四年制の基礎学級、「グルント・シューレ」と言うらしいですけれども、グルント・シューレに入り、五学年から、日本で言うところの小学五年生から成績や本人の希望で大きく三つの進路に分かれて学ぶ状況となっています。よって、ドイツの子供たちは十歳で将来のことを考え、進路を決めることになります。早い時期からみずからの進路を見定め、個々の職業のプロフェッショナルとなるべく学んでいる状況があります。マイスターいわゆる職人としての称号を受ける人は、社会的な地位、尊敬を集めるものとなっています。日本にもよき伝統としてたくみ、職人に対する尊敬の念はあったはずですが、今はそういった社会的な価値観といったものが崩れてきているように思います。教育改革を進める中では、もう一度生きること、仕事をすることの意味、価値を問い直すことも必要とされているのだと思います。
 今回の中高一貫を進めるときに、その理念からすれば、決して一校二校の話で済むはずではないと思います。先ほどご答弁でもお答えいただきましたけれども、今後複数校の設置も考えていかれるということでしたけれども、例えば和歌山市などを例に挙げても、幾つも取り組んでいただきたい高等学校の個性化の具体例があります。例えば和歌山工業を物づくり、マイスターの養成校としてはどうか。県和商、市和商を企業家、商売人、アントレプレナーの養成校。例えば和歌山北校ではスポーツ活動に活発に取り組んでくれているので、その特徴を生かした学校整備など、それぞれの学校にはっきりと個性を持たせる取り組みが望まれるのだと思います。
 ただ、すべての高校に県立中学校を設置していくことは現実的な選択とはなり得ないわけですから、そのためにも現在の市町村立の中学校との連携が不可欠であり、そのためには市町村の教育委員会との徹底した協力関係が必要となってきます。あくまで和歌山県全体、地域全体で取り組む教育改革が進められてこそ学校の個性化・多様化の成果も上がることとなるのですから、市町村の教育委員会とも連携をさらに深める中で、ご答弁で教育長がおっしゃられていたとおり、一人一人の個性・能力を最大限に伸ばし、たくましい人材を育てるという理想を実現させていってもらいたいと思います。
 今回の中高一貫に踏み込んだ覚悟は相当なものであると、私自身、思っています。そうであるからこそ賛同するわけですが、県内の各高校がしっかりとそれぞれの個性を発揮し、そして和歌山に育つ子供たちがたくましく成長し、自信を持って胸を張って社会に出ていけるよう心を込めた取り組みをお願いしたいと思います。
 最後に、今回の中高一貫を含め、教育改革全般にわたっては、総合行政としての取り組みも求められるものとなると思います。そこでは知事のリーダーシップも問われるものとなると思うのですが、そこで知事に、今回の中高一貫に対する思い、教育改革全般にわたって感じておられるところ、その所感といったものをぜひ最後に一言でもお聞かせいただきたいと思うので、よろしくお願いいたします。
 以上、要望二点、質問一点として、私の再質問を終わらせていただきます。
○議長(尾崎要二君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 教育改革についてどのように考えるかということですけれども、私は、かねてから言っておりますように、やはり今社会が複雑・多様化している、そしてまた子供たちの能力もいろんな面で才能があると。そうすると、やっぱり地方分権の観点から、その自治体が責任を持って、それぞれの子供たちの能力が発揮できるような多様な教育の場というふうなものをしつらえていくということが僕は必要だろうというふうに思っています。
 今までの日本の国の教育──義務教育もそうですし、高等学校の教育も、大学もそうですけれども、画一的に行うことによって集団として力を発揮するという方向に来たわけです。それはそれで非常に大きな役割を果たしてきたわけですけれども、やはりこれから日本の国が発達した先進国というんですかね──「先進」、「後進」という言葉はよくないわけですけれども、国として、成熟型国家としてこれからもそういう位置を保っていくためには、やはり教育の多様化、そしてまた分権型の教育というふうなことが大事であろうと思っています。
 そういうふうな中で和歌山県も、先日も言いましたけれども、いつもよその県とかのやったところの後塵を拝するのではなくて、少々の抵抗などはあってもやはり新しいところへ踏み込んでいく教育というふうなことをやっていく必要があるというのが私の考えで、これは私が専権でやることじゃありませんけれども、教育委員会の方もそういうふうな観点から、ここ一、二年、新しいことに非常に取り組んできているわけです。
 和歌山県の教育については、まだ結果が出るところまではもちろん行っていませんけれども、その新しい取り組みについては非常に全国的にも高い評価を得ていると。ただ、先般、ほかの議員のご質問にもありましたように、生徒・子供というものを実験材料にするわけにはいきませんので、これはもうその子供の一生がかかっていることなんで、真剣に対応しつつ、やはりある程度迅速にこの時代の変化というものに対応できる教育制度というものを和歌山から発信していくということをしていきたいと、このように思っています。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、山下大輔君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十五番平越孝哉君。
  〔平越孝哉君、登壇〕(拍手)
○平越孝哉君 皆さん、こんにちは。お許しを得て、平成十五年九月定例会一般質問最終日に最後の質問者として登壇をさせていただきました。議員の皆様には多少お疲れのご様子でございますので、私はできるだけ簡潔に質問を終わらせたいと思いますが、ご清聴のほどをお願い申し上げます。
 去る九月二十日に自由民主党では総裁選挙を実施し、小泉首相が再選をされ、今呼び込みが始まり、きょうじゅうに改造内閣が発足される予定であります。しかしながら、少しは明るさが見えてきたとはいえ、戦後我々が経験したことのないデフレ経済が継続し、景気は一向に回復はしないし、経済活動や国民生活に大きな影響を与えております。このように社会経済情勢が大変厳しい中、木村知事は、地域の発想や個性のある地域経営を展開し、地域から始まる行政を進めながら和歌山らしさを売り出す積極性を持っていろいろな事業の展開を図られております。特に緑の雇用事業は地域の特性・風土を生かした和歌山発の事業であり、地方基準による公共事業の推進や環境林整備、そして特区構想など、全国に向けて情報発信されており、木村知事は改革派知事として名が通り、和歌山県の名も全国に発信をされております。和歌山に全国の目が向けられている今こそ、それをしっかりと受けとめる努力が必要だと考えます。
 私たちの住むふるさと和歌山は、悠久の時を重ねた歴史に根差した文化や伝統が息づき、心のふるさととしての高野・熊野の平成十六年六月の世界遺産登録に向けて地域の期待も大いに膨らんでおります。また、世界遺産に登録することによって世界に誇れる交流拠点ができ、地場産業や農林業との連携で新たな産業が生まれ、雇用の拡大を図ることで地域に活力が生まれ、また観光開発にもつながります。そして、活力和歌山の国づくりが始まりますとともに、健康和歌山の国づくりをもあわせて進めていかなければと考えます。
 そこで最初に、これからの医療の体制について伺います。
 我が国の医療は、だれでも最適の医療を受けられる医療提供体制の整備と国民皆保険制度の導入により大きく前進し、公衆衛生の向上を初め医療関係者の努力等も相まって、国民の安心を支え、世界最高水準の平均寿命や高い保健医療水準を実現してきました。しかしながら、急速な高齢化、経済の低迷、医療技術の進歩、国民意識の変化など、医療制度を取り巻く環境は大きく変化しており、医療の質の向上と効率化を図るための環境整備が課題となっております。
 私は、今後の医療を考える上で、患者の視点を尊重した質の高い医療の提供を推進することが最も重要な課題であると考えております。すなわち今後の医療提供体制は、患者と医療関係者の信頼関係のもと、患者が健康に対する自覚を高め、医療への参加意識を持つとともに、予防から治療までのニーズに応じた医療サービスが提供される患者本位の質の高い医療を確立することこそが基本と考えております。厚生労働省が策定した医療提供体制の改革のビジョンにおいても、患者の視点を尊重した質の高い効率的な医療の提供体制の構築を進めることとされております。また県においても、本年四月に改定した和歌山県保健医療計画の中で、患者の視点に立った安全で良質な医療サービスの提供を推進していくこととされております。
 そこで最初に、患者の視点に立った優しい医療を推進していくための県の取り組みについて伺います。患者の視点の尊重ということを具体的に申しますと、医療機関に関する情報提供と医療の安全対策ということであります。
 まず、医療機関に関する情報提供についてであります。
 現在は、医療機関を選択するための適切な情報が十分提供されているとは言いがたい状況にあります。患者さんや県民の皆さんにとっては、自分が実際に検査・治療を受ける身近な医療機関について、学会等の専門医の認定を受けた医者がいるとか、手術件数、治療方法あるいは平均在院日数等の医療の内容に関する情報を必要とします。情報開示と患者の選択は、今後の医療を考える上でのキーワードであります。今はこのように情報化の時代ですから、インターネットで地域別や専門別に医療情報を提供することなどを行って医療機関の情報公開を進めていくことが必要であると考えます。
 またあわせて、医療安全対策の推進についてでございますが、患者の医療に対する希望として、自分の病気や治療方法等についてわかりやすい説明を十分にしてもらいたいということがあります。医療安全対策として患者が安心して治療を受けられるよう、医療に関する患者、家族の心配や相談に対応する体制の整備について知事のご所見をお伺いいたします。
 次に大きな第二の視点ということで、質の高い医療の提供についてでございます。
 今後、情報化の進展により医療機関相互の比較を客観的に行う環境が整い、患者による選択を通じて、我が国の医療は質の高い効率的な医療が提供されると見込まれております。質の高い医療ということを具体的に申しますと、医療提供の確保と保健・医療・福祉の連携体制の推進ということになります。
 まず医療提供の確保についてですが、私は、医療の確保で最も重要なのは、県民の生命を守る救急医療体制の整備であると考えます。質の高い救急医療を確保することにより患者さんが早期に退院して社会復帰することが可能となります。
 和歌山県における救急医療体制につきましては、これまで傷病者に迅速かつ適切な医療を行うため、傷病の程度により、初期から三次までの体系的な整備が図られてきました。和歌山市の県立医科大学附属病院、日本赤十字社和歌山医療センターには救命救急センターが設置され、三次救急医療機関として重要な役割を果たしております。この和歌山市の二病院から公立那賀病院、国保橋本市民病院へと続く紀の川ライン、そして国保日高総合病院、社会保険紀南綜合病院、新宮市立医療センターへと連なる海岸線における充実が図られてまいりました。さらに、高度な救急医療を必要とする患者を短時間で運ぶことのできるドクターヘリの導入によって本県の救急医療は飛躍的な充実を遂げたと考えます。
 このドクターヘリは、和歌山の地域性を考えた県民の生命を守るための大きな医療施策であり、ヘリの出動により、ヘリが現場に到着すると同時に患者は医師による治療を受けることができ、また受け入れる県立医科大学附属病院では患者の容体の連絡と受け入れ態勢の確立ができるわけであります。
 ちなみに、先日、紀伊高原カントリークラブでゴルフをプレー中に倒れた方の場合、ドクターヘリが連絡を受けて現場に到着するまで約十分、医師が応急処置を完了するまで約五分、県立医科大学附属病院に到着し、医師が処置を開始するまでの時間が三十分以内であったということは驚異的であり、その患者さんは無事退院をされたそうであります。──決して私ではございませんので。
 導入から現在まで多くの方々が救われたと同時に、山間部に住み、医療機関に遠い県民にとって不安の解消と安心の享受ができていると考えますと、このドクターヘリの導入はまさしく知事の大英断であります。
 そこで、このドクターヘリについて、本年一月からこれまでの運航状況等について、いろいろと福祉保健部長にお尋ねをいたしたいと思います。
 次に、保健・医療・福祉の連携についてであります。
 県民だれもが住みなれた地域で安心して暮らせるには、必要なときに質の高い保健・医療・福祉のサービスを受けられるシステムづくりが必要であります。県民の保健・医療・福祉に対するニーズは多様化しており、細分化、専門化が進んでいます。在宅医療を求める県民のニーズにこたえられるような体制の整備や、入院患者が円滑に在宅医療へ移行できるよう、病院と在宅医療を提供できる医療機関との連携体制の構築など、県民一人一人のニーズに合ったサービスを保健・医療・福祉の連携により効率的に進めることが必要です。特に在宅患者には医療とともに福祉サービスの必要な患者が多く、介護保険制度の導入により、介護保険者には総合的なサービス体制がとられています。しかし、介護保険法を見てもわかりますように、制度そのものは複雑なものがあります。このように高度・専門化し、かつ細分化され、複雑に絡み合っている保健・医療・福祉の現場で、これらのサービスを受ける県民はどのような選択をすればよいのでありましょうか。
 私の質問は、県民が保健・医療・福祉サービスの受け手としてそれぞれのニーズに合ったきめ細かいサービスを受けるためには、供給側である県を初め各市町村、各医療機関がどうすればよいのか、どうすれば地域住民に喜んでもらえるサービスができるのかという点であります。保健・医療・福祉サービスの施設や制度はあります。しかし現在、サービスの受益者たる県民のニーズは十分満たされているのでしょうか。この問題の調整・支援・解決のために国家資格を持つ社会福祉士が要るのではないかと言われますが、全くそのとおりであります。しかし、保健・医療に精通した社会福祉士が強く求められているのが現状だと思います。私は、保健・医療の現場を肌で知り、知識と経験がある医療ソーシャルワーカーの育成が急務ではないかと考えます。このような社会福祉士の要請・育成は、本県にとって重要なことではないでしょうか。
 幸いなことに、高野山大学には社会福祉・社会学科があります。社会福祉を学ぶ学生たちに、県立医科大学との十分な連携のもと、社会福祉の教育カリキュラムの中で医療を深く学び、医療の現場をよく経験してもらってはいかがでしょう。県内の大学では単位の互換などを協議するコンソーシアムがあると聞いております。県立医科大学からこのことを高野山大学に提案してみてはいかがでしょう。
 しかし、このような社会福祉士を育成するためには、保健・医療・福祉を総合的に研究・教育することのできる施設の確保が必須かと考えます。県立医科大学は県が設置した施設であり、かつ医療の第一線にある教育研修病院でもあります。高野山大学社会福祉・社会学科と同じ伊都郡にあり、互いに近距離にある県立医科大学附属病院紀北分院を教育・研修のフィールドとすれば、このような人材育成も可能と考えます。
 私は、紀北分院に、保健・医療・福祉に精通した人材育成の拠点あるいは施設を置くべきではないかと考え、知事のご所見はいかがかなものかとお伺いをいたします。
 もう一点、紀北分院についてでありますが、開業以来六十五年、紀北分院は地域医療の拠点病院として大変重要な役割を果たし、絶大な貢献を果たしてまいりました。今後もこの形態が末長く続くことを切望しながら、そのあり方について若干私見を交えながら知事のご所見を伺うものであります。
 近年、この病院を取り巻く環境は、紀の川流域の開発に応じて、地域医療と申しますか個人の開業が多く見られ、県立医科大学附属病院いわゆる大学病院に求められる期待やその役割が大きく変わってきたように感じられます。
 本来、大学病院は、その高度な知見と技術水準から、地域の医療技術をリードし、高度な医療行為を受け持ち、地域医療のレベルアップに貢献すべきであります。一方、紀北分院が立地しております伊都地方には、同時に高野山大学が立地をしておるということは先ほど申し上げました。世界遺産として評価される高野山、その理由は寺院の密集度や景観ばかりではない。弘法大師以来守り継承してきた真言密教の総本山として、その宗教性が大きく評価されているものと思います。物質の繁栄が過大に評価されてきた戦後日本、今ようやくその反省から私たちの心の問題が大きくクローズアップされようとしています。いやしが流行するゆえんでもあります。
 また、高齢化が急速に進み、ことしは百歳以上の方々が二万人を超えたと報道され、本県では四人に一人が高齢者という時代を迎えようとしています。高齢化社会における医療はどうあるべきか。──高度な医療技術のケアはもちろんでありますが、私は一方で、高齢者の方々が安心して治療生活を送ることのできる、そして心豊かに老後を過ごすことができるいわゆる心の治療、心の療養が極めて大切なことではないかと信じております。このことに果たす宗教の役割は大なるものがあります。そして、このことを教え導く高野山大学の役割にも、また大なるものがあります。
 こう考えるとき、これからの紀北分院のあるべき姿は、一歩歩みを進め、県立医科大学が有する高度な医療技術と高野山大学が持ついわゆる心の治療を組み合わせた、我が国でも最も先端的な医療拠点に整備することが私は最もふさわしいと考えます。また、これが可能な立地条件にあると信じております。具体的には、高野山大学の先生方による患者さんを対象とする心の持ち方講座の開設や、一方、県立医科大学の学生、看護師を対象とする高野山大学での心の教育の開始などであります。二十一世紀の医療機関にふさわしい和歌山県立医科大学附属病院紀北分院、私はきっと全国の注目を集めると思いますし、加えて全国から患者さんを集めることができると信じております。
 以上につきまして、知事のご所見をお伺いします。
 次に、観光立県についてであります。
 観光は、旅行業、宿泊業、飲食業、土産品業など、極めてすそ野の広い産業であります。また、その経済効果は極めて大きく、旅行などの直接効果だけでも約二十一兆円にのぼり、二次的な経済波及効果をも含めれば四十九兆円と国内生産額の五・四%を占め、その雇用効果を見ても、総雇用の五・九%に当たる三百九十三万人がかかわっているものと推計をされております。しかしながら我が国の観光産業は、諸外国と比べてみると、全産業に占める規模はまだ小さく、今後ますます発展する可能性を持っております。そういった意味から、私は観光を本県の二十一世紀の第三次産業の基幹産業として位置づけることこそ今後の地域の活性化につながるキーになるものと思っております。
 「観光」という言葉は、中国の古典「易経」の中に出てくる「国の光を観る」という表現に由来すると言われております。「易経」によれば、一国を治める者は、その治める国を旅して、その暮らしぶりを観ることによりよい政治が行われるかどうかをみずから確認したそうです。よい政治のもと人々が生き生きと暮らすことができれば光り輝く国として他国に国の威信を示すことができると説いたのです。つまり、観光の原点はみずから光り輝くことにあるのだと思います。人々がみずから住む地域に誇りを持ち、快適に暮らすことができなければ、だれもその地を訪れたいとは思わないでしょう。観光立県を実現するためには、まず第一に和歌山に住む私たちが美しい和歌山の再生、新しい地域文化の創造という光を積極的に磨き上げ、その輝きを増すことが必要であると考えます。
 現在、和歌山県は、他府県に先駆けて観光局を設置し、地域資源を生かしたほんまもん体験ツーリズムの促進に努めており、また観光情報以外にも、大手スーパーと提携し、首都圏におけるソフトアンテナショップの開設による県産品のPRに積極的に取り組んでおりますが、観光は、こういった情報発信のソフト施策だけにとどまらず、本来、訪ねてみたい、住んでみたいといった地域そのものを光り輝くものにするハード整備が必要であります。それは、交通網の利便性向上のためのインフラ整備、良好な景観形成のための電線地中化、周囲の緑にマッチした道路擁壁の緑化など、安全・便利・快適な歩行者空間の確保や集客、文化交流施設の整備などであります。
 こういった最近のニーズの多様化にもこたえられる地域の資源を活用した魅力ある空間づくりのためのハード及びソフトの政策を総合的に推進することが観光立県の本質であろうと思います。特に、高野・熊野が紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産に登録される来年六月を控え、和歌山県が国内外の注目を集めることは間違いありません。多くの人々が光を見に、また光に触れ、光を浴びに本県への観光を計画されていることと思います。世界遺産登録を大きな契機ととらえ、和歌山県の観光空間づくりのための戦略本部を設置し、県庁全体の総力を結集していただきたいのであります。今こそ、地域みずからが光り輝くためのハード・ソフトを組み合わせた魅力ある空間づくりを総合的かつ強力に推進することが必要と考えますが、知事のご所見をお伺いします。
 具体的な地域として私の伊都地域を見ますと、金剛峯寺を初め九度山から高野山に至る町石道や、その出発点となる慈尊院、丹生官省符神社など、八件の世界遺産登録予定資産があります。地域が世界遺産に登録されるという誇りと後世に引き継ぐ責任、そしてそれとともに新たな観光需要への期待が高まっております。
 高野山では、山内の環境、景観を守るために、バイパス、駐車場施設の整備により通行車両を制限するパーク・アンド・ライドの可能性の検討が行われております。また紀北地方としては、根来寺、粉河寺、丹生都比売神社や一乗閣といった社寺や史跡、自然、文化を結ぶ回廊構想をも展開されようとしております。この地域は、めっけもん広場の盛況に見られるように、農業体験観光の取り組みにも適した地であり、これら観光客の増加も期待できるポテンシャルを持った地域であると思います。そのためには、道の駅を初め、訪れる観光客と地元が触れ合う伝統・文化交流施設の整備や府県間道路の整備の促進が必要であります。
 これら地域が光り輝こうとする高まりの中で、世界遺産登録を契機に、地域の歴史文化施設を見直し、ネットワーク化するソフト・ハードの今後の展開について、ソフト事業について企画部長のお考えを、また本県の観光にとって極めて重要な府県間道路の進捗状況及び取り組みについて県土整備部長に、それぞれお伺いをいたします。
 次に、科学技術振興による地場産業の振興についてお伺いいたします。
 我が国経済は、最近の株価上昇や平成十五年四月から六月までの四半期速報が一・〇%のプラス成長となったことから、一部では楽観的な声も聞かれるようになりました。しかしながら景気持ち直しの実感はなく、依然としてデフレ経済を脱却したと言える状況にはまだないと思います。長引くデフレの中で、我が国においては地域経済が疲弊し、元気を失っている現状であります。しかし、過去二百年の歴史を見れば、次世代の社会を特徴づけ、経済の飛躍的発展をもたらした画期的発明の多くは、むしろデフレ期になされたことに気がつくのであります。
 産業革命以降、最初の世界的なデフレの最中である一八二五年にイギリスのスチーブンソンが蒸気機関車の改良に成功し、鉄道時代の幕が開き、二度目のデフレ期には一八七九年のエジソンの電灯の発明、一八八五年にはベンツによるガソリン内燃機関を搭載した最初の実用的な自動車が発明されたのであります。我々人間は行き詰まり、苦境の中にあるときこそ、進歩・飛躍することを歴史が示しているのだと私は思います。
 このような歴史に対する視点を持つとき、私は、恐らく今回も例外ではないと思います。このデフレの激しい、厳しい状況の中で次世代の経済発展をリードする新しい科学技術の芽生えが、今、そこかしこで膨らみ始めているに違いないと思うのであります。
 科学技術はこれからの和歌山県の発展と再生の切り札であります。この七月に、県工業技術センター職員と築野食品が共同で研究開発した、米ぬかを原料とするフェルラ酸製造技術が産業界で高い権威を持つと言われております井上春成賞を受章しました。また今年度、和歌山市エリアが文部科学省の都市エリア産学官連携促進事業に採択をされました。これは、地元化学産業と県工業技術センター、大学等の連携により、ナノテクノロジー技術を活用し、新たな有機材料を研究開発するものであります。ナノテクノロジーは、一ナノが一メートルの十億分の一の大きさに当たり、分子の大きさと同程度の微細な世界を扱う技術であり、ナノテクノロジーは鉄よりも十倍高い強度を持ち、同じ強さのものでは五十分の一の軽さとなるカーボンナノチューブ素材の開発や病変患部に直接薬を運ぶ医療技術などITや医療、環境など、幅広い分野で革命的な飛躍をもたらすものと言われております。現在では、女性用化粧品など身近な製品にも応用されており、私も今後の広がりに期待をしているところであります。
 一方、本県には多くの地場産業がございます。地場産業は、地域の資源と地域の特性の中から生まれ、それらを十二分に活用しつつ、長い歴史の中で製造ノウハウを培ってきた産業であります。しかしながら、ナノテクノロジー、バイオ、ITなど、近年の科学技術の発達は目覚ましく、これまで地域経済を支えてきた地場産業のみではこれらの最新技術の導入が十分には図られていないのが現状ではないでしょうか。
 大学、研究機関等の最新科学技術を導入して地場産業の高付加価値化を図るために、県がその橋渡しをする産学官の連携が重要だと考えます。営々と培ってきた地域資源を活用する技術と最新の科学技術が融合することにより、これまで思いもよらなかった研究開発などが可能になるのではないかと私は考えております。これまではぐくまれてきた地場産業に最新の科学技術を導入し、二十一世紀の地場産業に刷新させることが今後の地域活性化の柱となると考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 これで、私の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございます。
○議長(尾崎要二君) ただいまの平越孝哉君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまのご質問にお答えを申し上げます。
 まず第一点の医療情報の提供ということでございますけれども、この医療情報の提供ということについては意外となされているようでなされていない、しかも患者の人に相当不満もあるというふうな分野でございまして、これは和歌山県だけに限ったことではなくて、全国的に問題になっていることでございます。
 そういうことでございますので、現在、幾つかの県で地方分権研究会というのを開催して、いろんなテーマごとに勉強を進めているわけですけれども、その中でもこの医療情報の提供ということのシステムづくりを一つのテーマにしておりまして、現在インターネットによる医療情報の提供システムについて検討を進めているところでございます。
 それから、医療の安全対策ということでございますけれども、これも非常に重要な分野でございまして、この四月に医療安全支援センターというのを設置いたしました。そこに専任の相談員を置きましたところ、これまでに三百件を超える相談が来ているということで、この活動を続けるとともにこの関係の協議会を設置いたしまして、その相談の中身みたいなものを分析・検討して、よりよい安全対策というものを講じていきたいというふうに考えているわけでございます。
 次に、紀北分院に関する問題でございます。
 この紀北分院は非常に長い歴史があるわけですけれども、最近の期待の変化というふうなものを踏まえた貴重な提言をいただきました。高野山大学、ここで心の宗教を扱って、そこに社会福祉の学科なんかもあるわけですけれども、こういうふうな、これから人の心の平安ということと保健・医療・福祉というものを結びつけて、そしてそこでユニークな活動というものを紀北分院を中心に行っていくというのは、これは二十一世紀の医療というものを踏まえたときに非常に情報発信力のある貴重な提言だというふうに私は思います。
 すぐにこれがどういうふうな形で結びつくかどうかは、現在、紀北分院のあり方について大分長く研究しているんですけれども、特に医大の独立行政法人化の問題もございますし、そういうこととの絡みでこの紀北分院には新しい装いで活動を始めていかないといかんという時期に来ていると思いますので、ご提言の趣旨も踏まえて、本当に紀北分院というのが県民のため、そしてまた和歌山県から外へ発信できる拠点になるようなものにしていきたいと、このように考えているところでございます。
 次に、観光についてでございます。
 今、議員のご質問にありましたように、ただ単に産業としてどうこうということだけじゃなくて、地域そのものを光り輝かせるような努力ということが観光なんだというご質問の内容、本当にそのとおりだというふうに思っております。
 和歌山県の場合、地形とかいろんなことからして産業立県というのは非常に難しい面があるわけでございますけれども、観光産業というのは、今までは若干横の方の産業というような感じだったんですけれども、二十一世紀には観光産業というのが国でも中心的な産業になってくるというふうな考えが確立されてきておりますので、そういう意味で言えば、世界遺産の登録も控えて、そしてまた豊かな自然と歴史に恵まれた和歌山県というふうなものは二十一世紀には非常に売り物のある県ということになってくるだろうと思います。
 そういうことも踏まえてハード──後でハードの問題も答えがあると思いますけれども、ハード・ソフト合わせて、本当に外の人が来てよかった県、もう一回来てみたいと思うような──一回行ったらもう二度と行きたくないわというようなことになったら、幾ら世界遺産に登録しても元も子もありませんので、そういうふうな県になるように頑張っていきたい、このように考えております。
 それから、地場産業の振興でございます。
 私は、かねてより、ないものねだりをできるような時代ではない、今地元にあるものをどんどんブラッシュアップしてよくしていくことしか和歌山県の発展する道はないんだというふうに申しております。そうふうな中で、和歌山県の地場産業については素材型ということで非常に苦戦を強いられているわけでございますけれども、実は今、少し株価が上がってきて景気がよくなるんじゃないかという期待があるわけですけれども、これはあくまでデフレ下の景気変動だということであることは間違いないわけです。これ、ちょっと言葉の矛盾かもしれませんけれども、今までみたいに、景気がよくなる局面ではありとあらゆる産業がみんな手をつないでよくなるというふうなことではなくて、やはりその中で付加価値があり、希少性があり、他にまねができなく、そして人件費等の固定経費みたいなのを大いにカットしたようなところだけがいろんなものが上がっていくというような、ある意味では非常に厳しいデフレの中での景気の回復ということだろうと思います。そうであってみれば、和歌山県の地場産業も、化学産業とかいろいろいいものがあるんですけれども、やはりそういう時代に耐え得るようなものに県としてもできるだけの助力をしていく必要があるというふうに考えておりまして、ご質問の中にもありました、これは文部科学省ですか、都市エリア産学官連携促進事業にも選ばれて、県の工業技術センターでありますとか、和歌山大学でありますとか近畿大学、こういうふうなものと連携を深めながら和歌山県にある地場産業の生産物の付加価値を高めるとともに、さらにその売り方であるとか、そういうふうなことについても及ばずながら──これは県が主導できるような話ではありません。もうやっぱり日ごろから自分の商売についてはそれをやっている人が一番詳しいわけだし、汗を流しているわけだけれども、県としても及ばずながらいろんな形での対応をしていきたいし、それから金融面についても制度融資とかいろんなことでできるだけの援助というふうなものをしていく、そのことによって和歌山県の地場産業の振興を図り、ひいては和歌山県の発展につなげていきたいと、このように考えているところでございます。
○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) ドクターヘリの運航状況についてお答えいたします。
 本年一月から開始し、八月末までで百四十五件出動しております。地域別では、紀北六十一件、紀中三十一件、紀南四十五件、三重県七件、奈良県一件となっております。県立医科大学附属病院で受け入れた患者は百三十四人で、そのうち退院された方が百一人、入院中の方が二十人で、十三人の方が亡くなられております。
 なお、議員から一例をご紹介いただきましたけれども、具体例では、紀伊水道沖を航行中の貨物船内で熱傷患者が発生した際、海上保安庁のヘリが南紀白浜空港まで搬送し、ドクターヘリに引き継がれたのを初め、極めて緊急性の高い心臓疾患の新生児の搬送や心筋梗塞、脳血管疾患、転落事故などに対応し、救命や後遺症の軽減に大きな成果を上げております。
 今後とも、消防機関、医療機関との連携を図り安全航行に資するとともに、ドクターヘリの特徴を発揮し、県民の救命率の向上を目指し、救急医療の充実を図ってまいります。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 地域の歴史文化施設をネットワーク化するソフト事業の展開についてでございますけれども、紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産登録されることによりまして本県に対する国内外からの関心が高まり、多くの人々が訪れるものと考えますが、これらをうまく本県の活性化に結びつけるために、それぞれの地域特性を生かしたさまざまな対応が必要と考えます。
 中でも、議員ご提言のように、伊都地域には高野山を初めとする世界遺産登録予定資産のほかにも多数の社寺、史跡、豊かな自然、そして温泉などがあり、またさまざまな体験型観光プログラムも展開されており、バラエティーに富んだ地域資源があります。
 県といたしましては、このような豊富な資源を活用して緑の回廊として結びつけ、大阪府を中心とする日帰り交流圏において一体的に、総合的にPRを継続して行うことにより交流人口の拡大を図ることが可能と考えており、市町村を初めとする関係機関と連携しながらその実現に努めてまいります。
○議長(尾崎要二君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 議員ご質問の府県間道路につきましては、県としてこれまで重点的に整備を推進してまいりました。このうち国道三百七十一号橋本バイパスにつきましては用地買収及び工事を促進しており、平成十七年度を目途に国道二十四号から橋本インターチェンジまでの間について京奈和自動車道との同時供用を目指しているところでございます。
 また、新橋本橋につきましては、今年度から橋げたの架設工事に着手し、これも平成十七年度の供用を目指しているところでございます。
 国道四百八十号平道路につきましては、今後、四郷地区の早期部分供用を目指し、用地買収及び工事を促進してまいります。
 府県間トンネルにつきましては、国が今年度から調査に着手しており、今後とも直轄代行事業の早期採択に向け、国に強く働きかけてまいります。
 次に県道泉佐野岩出線についてでございますが、備前から根来間は昨年九月に供用済みで、続く根来から府県境間は現在工事中であり、用地買収率は六五%、工事進捗率は二八%となっております。
 以上、各路線について、今後とも大阪府と連携を図りながら事業促進に努めてまいります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十五番平越孝哉君。
○平越孝哉君 知事初め関係部長の答弁、いただきました。
 一件だけ、知事への要望であります。
 今、県立医科大学をめぐる環境というのは、国公立大学の独立法人化というのが目前に迫っておりますし、そういう現状を考えますときに、時期を失せずに新たな発想で大学附属病院の運営のあり方というものが必要であろうと思いますので、ぜひよろしく頼みます。
 それと、もう一つ紀北分院についてでありますけれども、県立医科大学のあり方懇談会の中でよりよき結論を出していただけるとは思いますが、私は、紀北分院が老朽化したから改築してほしいということではありません。そういうことを提起しているのでありませんので。
 ただ、先日、紀北分院のある先生から、質問をされるらしいですがということで、こうして資料をいただきました。その中には、紀北分院はやっぱり地域医療の拠点だし、長い歴史があるし、いろんな中で地域医療の核になるところだからぜひ残してほしいというようなこともあります。これはまあ六十五年間という長い歴史でもありますし、この紀北分院検討委員会というのは平成十二年かにつくられて、そのときにはいろんなことを議論されたそうでありますが、改築費の試算やとか分院の改革と、いろんな意見はこれに集約されております。それを一々、改築費が何ぼやというようなことは申し上げません。それはそれとして、この保健、それから医療・福祉に精通した人材育成の拠点として、また私は、総合診療ができるといいますか、地域医療と僻地医療の担い手となるような医師の育成といいますか養成可能な病院にしてほしいと思います。
 医大の本院はスペシャリスト、専門科医の育成ということでありますけれども、紀北分院はまた新たな意味で、そういう総合的な治療のできるような医師づくりをしてほしいと思いますし、仏教文化と近代医療、いやしと高度医療とを兼ねた、本当に時代が求める新しい病院づくりというようなこと、これはぜひ知事の英断で実現をしてほしいと思います。それを要望しまして、終わります。
 ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で平越孝哉君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問は、これをもって終結することにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) ご異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
  【日程第三 議案等の付託】
○議長(尾崎要二君) 次に日程第三、議案等の付託について申し上げます。
 ただいま議題となっております全案件のうち、議案第百四十四号平成十四年度和歌山県歳入歳出決算の認定について及び議案第百四十五号平成十四年度和歌山県公営企業決算の認定についてを除くその他の案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
 お諮りいたします。九月二十四日から二十六日までは委員会審査のため休会といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) ご異議なしと認めます。よって、九月二十四日から二十六日までは休会とすることに決定いたしました。
 なお、委員会審査の会場はお手元に配付しておりますので、ご了承願います。
 次会は、九月二十九日定刻より再開いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時四十二分散会

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