平成15年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○副議長(吉井和視君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十一番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 ご指名をいただきましたので、通告に従って質問をさせていただきます。
 私にとって、県会壇上での初めての質問となります。私は、今回の選挙を通じて、有田と和歌山のこの豊かな自然環境を守り育てるとともに住民の暮らしを温める、そんな県政をと訴えてまいりました。県民の声、願いを県政に届けるために一歩一歩頑張ってまいりますので、どうかご指導のほど、よろしくお願いを申し上げます。
 さて、最初に水と緑の環境保全について質問をさせていただきます。
 昨年、私どもが有田地方で実施をいたしましたアンケートの中で、有田のことで誇りに思っていることは何ですかという問いに対して、八割の方が豊かな自然環境だと、こういうふうに答えておられます。ここには、自然豊かなふるさと和歌山に対する誇りや思いが率直に出されていると思うんです。この自然環境を子や孫の世代に引き継いでいきたい、失われつつある自然をよみがえらせたい、こういう思いを今多くの皆さんがお持ちだと思います。それだけに、自然破壊や環境問題に対する県民の意識や関心は年々大変高まり、橋本でのダイオキシン問題や、また最近では中辺路町の産廃処理施設の処分場計画の問題などが大きな話題となりました。有田地方でも、この間、残土や土砂の処分にかかわる問題があちこちで起き始めています。
 一昨年の秋にマスコミでも報じられまして社会問題化しましたが、湯浅町の谷合いに二十万立米もの土砂が、残土と称して畑に入れられました。畑に土を入れるという申請のもとに、これだけの大量の土砂が運び込まれたわけなんですね。ここでは、土砂にまじって産業廃棄物が投入されているんではないか、こういう住民や町の不安や訴えによって、町当局と保健所が連携をして、当時新設をされた環境専門の警察である県警エコポリスが捜査をし、業者が廃棄物の不法投棄で逮捕をされ、土砂の搬入はストップをしました。この業者に対しては、残土と一緒に廃材などを捨てていたのを発見するたびに、住民と一緒になって町と保健所の皆さんが指導してきたわけです。指導したそのときはよく言うことを聞いてすぐ撤去するわけですが、また始まると。そういうことを繰り返しながら、この残土がいつまでも運び込まれました。夜中のうちに大きな穴を掘って、早朝、暗やみに紛れてその中に産廃まじりの残土を投棄する、明るくなるまでに、保健所や町の職員が来るまでには、もうきれいな土で表を隠してわからなくする、こういうことがあったわけですが、この事実をつかんでストップをさせた保健所やエコポリス、関係者の皆さんのご苦労と活躍に深く感謝を申し上げる次第です。
 ところが、捜査で今回不法投棄が明らかになった分は掘り出して戻したんですが、何しろ二十万立米という土砂の大きな山です。これは十トン積みの大きなダンプカーに直しても、約三万三千台。べらぼうな山なんですね。この山が結局そのまま谷合いに残ったままなんです。この土砂の山を底まで掘り返して全部調査をして、そして違反が発見されれば、もとに戻しなさいという原状復帰命令を出せるんですが、命令を出せば、会社は資産がないですから倒産をして、結局撤去費用を町や県が持たんならんということになって、手出しできない状況というふうになっているわけです。
 一方、この処分場への搬入がストップした直後から、今度はかわって広川町の山の中で残土や土砂の投入が始まりました。ここでも住民は、土砂の中に廃棄物の混入が起こらないかとか、急な坂に大量に捨てられている土砂が崩壊しないかとか、そういうふうな心配で今も悩んでおられます。このような事態がほかの市町村でも生まれてきているんですね。
 私は、この湯浅町の事件から、なぜこれだけ莫大な量が積まれるまで対応できなかったのか、この教訓を導かなければならないと思っているんです。現在では、産業廃棄物の処理は法律によって厳しくルールが決められました。ところが、残土の処理とか土砂の搬入ということになりますと、一ヘクタール以内であれば、先ほど申し上げましたような簡単な届けをするだけで、法や条例による許可も要らなければ、直接的なルールもないんです。一たび不法投棄が発見されれば保健所の出番、崩壊が始まったりすれば建設部の出番というふうになるわけですが、事が起きるまで有効な手が打てない、ここに最大の問題点があると思っているんです。
 こういう状況を解決するためには、私は、環境保全や水源保護のための必要な立地規制とか、また産業廃棄物などと同様に何をどこからどれだけ運んできたかという運搬経路の明確化や記録、そしてこれからどれだけ土砂を入れるのかというような搬入計画、それから崩壊防止措置をするならその措置の計画と、こういったものを提出をさせる、こんなルールを条例によって確立することが求められるというふうに考えています。こういうルールがないからこそ二十万立米もの事態になったと思っています。
 ここに持ってきていますのは、長野県の水環境保全条例とそれに基づく水環境保全総合計画です。そして、こちらにあるのが千葉県の通称残土規制条例、正式な名前は「千葉県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例」というものですが、これらの県を初め、全国的には県レベルで条例で土砂や残土の処理に関するルールを明確化して、罰則規定もつけてちゃんとルールを決めるというところが生まれてきています。土砂や残土の処分、また土地造成など、水源や自然環境の保全に大きくかかかわる業務に対して適切なルールと指導を確立することが県行政に今後は求められてくるのではないでしょうか。
 一方、県内の市町村でも水源の森を守ることや川や海の水質を改善しようという取り組みが始まっておりまして、環境保全を目的とした条例が、例えば清水町、串本町、大塔村、幾つかの市町村で既に制定をされています。また、今回産業廃棄物処分場計画で揺れた中辺路町も条例制定を検討中だと、最近、新聞報道にもありました。
 清水の町長さんにお話を聞きますと、私が子供だったころと比べると川の水量は三分の一に減ってきている、下流の皆さんにかけがえのない水資源を供給している清水町としては水源の森条例や美化条例を制定して、広葉樹林の植林など森林の保水力の向上や、また自然の再生に努力をし、近隣市町村にも協力を呼びかけているんですよとおっしゃっていました。また有田川漁協の組合長さんは、森林の保水力の低下や生活排水の増大、ダムによる水質悪化など、有田川の水環境は深刻な状況だ、漁協としても漁民の森運動など、海の漁師も一緒になって山に登って環境保全に力を入れているんですとおっしゃいました。どなたも、行政と住民が力を合わせて取り組んでいくその必要性を強調されていましたし、また環境問題は、思想・信条や立場の違いを超えて広く協力と共同が広がっていると感じていたところでございます。
 さて、幾つか述べてまいりましたが、私は、この和歌山県の豊かな水と緑の自然環境を守り育てていくために、一歩踏み込んだ条例整備が必要だと、こんなふうに考えています。
 和歌山県では、既に作成しております和歌山県環境基本条例、そしてこれに基づく環境基本計画、こういう長期計画があります。この基本的な条例・計画は、いわば罰則規定もありませんし、自然環境を大事にしていきましょうという宣言的な、呼びかけ的な、最も基本的な条例です。ですから、この条例・計画を発展、具体化させて、例えば豊かな水環境と水源を守るために水環境保全条例、こういったものの制定の検討に入ってはいかがでしょうか。環境生活部長のご所見をお伺いいたします。
 またあわせて、先ほどから紹介した湯浅町の事例の教訓に立って、不法投棄を未然に防止するために県としてどういう取り組みを進めておられるのか、環境生活部長より答弁をお願いいたします。
 さて、二つ目の柱に移ります。東南海・南海地震に備えた津波対策についてお伺いをいたします。
 津波対策では、避難計画やハザードマップの作成など、地域と行政が力を合わせて取り組む地道な努力が大変重要になってくるわけですが、住民から出された声をもとに幾つかお尋ねをしたいと思います。
 まず、湯浅広港の弁天堀水門という名前の水門の補修・改善についてです。
 昨年十一月に県主催の津波の避難訓練が県下各地で行われました。湯浅町と広川町でも住民の避難訓練をしました。それとあわせて、防潮堤の水門を閉める訓練も、住民や行政関係者が見守る中で行われたわけなんですね。ところが、この弁天堀の水門、動き始めても、待てども待てどもなかなか閉まらない、こういう事態が起こったわけなんです。ずっとごらんになっていた住民の中からは、地震が起こってから津波が三十分や四十分で来るというのに、これ一体どうなっているんだという声が、行政関係者の方からも口々に出されたそうなんですね。詳しく事情を聞いてみますと、この水門は四十五分で閉まる設計のもので、幸い訓練当日は設計どおり四十三分で閉まったそうでありますが、一週間前に管理を任されている町の職員が試験運転をしてみたところ、何と一時間以上たっても閉まらなかったと。早速業者を呼んで点検すると、水門自体が傾いて、軸に無理がかかってかたくて動かなかったと言うんですね。業者を呼んで二日がかりで必死に応急工事をして、訓練本番に臨んだということなんですね。私、改めて水門の調査に先日参ったんですが、高さ二十メートルもある大変立派な水門です。ごっついものなんですが、この水門は、現在あるような一体型になったものではなくて、二つの柱が立ち上がっていまして、その上の操作室と操作室の間にはステンレスの鉄板でつくられた渡り廊下があるわけなんですね。その渡り廊下が、やっぱり傾いている影響でしょうか、張り詰められたステンレスの鉄板がこちらの端っこでこのぐらい盛り上がっているんですよ。いや、これは大変なことになっているなというふうに私は感じました。
 もちろん、この水門は約二十年前につくられたものですから、今では一般的になっている、緊急降下装置と言いまして、非常の際はいつもの半分の時間で水門がおりるという装置がついているんですが、この水門には残念ながらそういうものもついていません。また、この水門はもともと台風など高潮対策用に設計されたものですから、津波に対する設計がなかったのは仕方がないことかもしれません。しかし、幸いにして今回の訓練を機に発見をされたこのふぐあいについては、この際、きちんと調査・点検をして補修や改善を行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。県土整備部長の答弁をお願いいたします。
 また、これを機に県内の海岸部の水門を総点検して、計画的に改修を進める必要があると考えますが、あわせて県土整備部長の答弁をお願いいたします。
 湯浅広港には三つの水門があるんですが、私は実際にこれらを三月から四月に分けて調査をいたしまして──設置は県ですが、操作は町に任されています。その操作を担当する町の職員さんのお話を聞いて心に残っていることがあります。それは、こんなふうに言うんですね。「地震が起きたとき、私たちが水門を操作をするためには、海岸部から避難をしてこられる住民の人の流れに逆らって、車では絶対行けませんから、自分の足で走って水門まで着かなけりゃならない。そして、余震が続く中、大きな揺れの中、あの高い操作部まで、外についているらせん階段を上って上がって、多分停電をしているだろうから停電用の非常の発電装置を始動させて、それからちょっと上へ上げてかぎを外して水門をおろす。こういう操作をその非常時にすること自体、大変危険だし、現実的じゃないと思う。町民何千人の命を守るために自分は死ぬかもしれんが行ってきてくれと、こういうふうに命令するのは非常につらい」と、こういうふうにおっしゃるんですね。それで、今の時代ですから遠隔操作とか、また大きな地震などの揺れがあったら自動的に水門が降下する、そういう装置のついた水門が静岡県などでは既に設置をされているそうですが、そういうものが設置できないのでしょうかと、こういうご要望をいただきました。私も強い浜風が吹く中、町職員さんと一緒に用意ドンでらせん階段を上まで上ってみたんですが、ただでさえ風が吹く中、本当に正直怖かった思いがしました。
 先ほど取り上げました水門の緊急降下装置の設置や遠隔操作、自動下降装置などの機能改善を可能なものからやっていく必要があると思いますが、県土整備部長の考えをお聞かせ願いたいと思います。
 さて、次に広川町が計画の津波防災教育センター──これは仮称ですが──これについて、国、県の支援をお願いしたいというふうに思います。
 先日の黒潮交流シンポジウムには私も参加をさせていただいたんですが、堂本千葉県知事や浜口ヒゲタ醤油の社長さん、大橋和歌山市長と木村知事のシンポは、両県の食文化や産業、そして観光、水と緑の環境保全まで幅広い両県の交流がお話をされて、とても楽しくてよい企画であったと思いました。ちょうどその会場で、広川町の公民館長さんから、こんな話があったんです。「きょうは和歌山の広川町がふるさとの浜口さんが見えていますが、実は、あの「稲むらの火」が今また燃えてきているんですよ」と、こういうお話をされるんですね。今、「稲むらの火」に今日的に光を当てようという機運が町民の中で沸き上がってきているというんですね。シンポジウムでパネラーを務められたヒゲタ醤油の浜口さんの屋敷を広川町の地元では東浜口、「稲むらの火」で有名な初代県議会議長の浜口梧陵さんのところを西浜口というふうに両家を親しみをもって呼ばれています。そういう中で、浜口梧陵の偉功を記念する記念館を建設したいという声が町民の中から広がって、既に基金に取り組まれているそうです。今回、西浜口家の屋敷──浜口梧陵が住んでいた旧家なんですけれども、この広大な屋敷を浜口家が広川町に無償で寄附をしてくださると、そういう話がありまして、町の方ではそのご好意にこたえてぜひやりたいと。旧家の塀とか土蔵とか、そういったたたずまいを残しながらも浜口梧陵記念館を建設して、浜口梧陵の果たした功績や足跡を展示するとともに、その中に津波防災教育センターというものを設置して、この記念館を津波防災教育の拠点としても整備しよう、こういう計画が今練られているわけです。ここでは、津波被害の実際の写真などのパネル展示を初め、3Dの立体映像の映画が見れるようにしたらどうかとか、津波が来るのを再現する、そんな実験水槽ができないものかとか、そういう議論がされているようであります。
 ご存じのように、津波は人がつくるハード的な設備だけでは決して防げるものではありません。津波とはどういうものかを肌身をもって知り、そして津波は何よりも逃げることが大事だという、そういう災害教育と避難訓練などというソフト面での粘り強い時間をかけた取り組みが決定的に重要です。そのためには、津波被害を受けた町というだけじゃなくて、津波から命を守った町としての教訓は大変今日的に大きな意義があると思うんですね。阪神大震災の記念館も立派なものが今建設をされていますが、まさに津波被害を未然に防いだ記念館としてこの津波防災教育センターが機能するならば、津波対策を学ぶならば和歌山の広川町にと、きらりと光る大きな役割を発揮するものだと思います。
 そして、またもう一つの側面から見ますと、広川町では、この記念館と防災教育センターを町づくりの一環として位置づけようとしているんですね。これはおもしろいと思います。この一角は、先ほどお話ししました西浜口家と東浜口家の歴史的な建物だけじゃなくって、船の板を使ってあるという、くぎ跡のあるごっつい板を外壁に使ったようなすごいいいたたずまいの民家などがあって、古くからの町並みが残されています。そこにこの記念館防災センターがあり、浜口梧陵の建設した防波堤がずうっと伸び、そしてその先には耐久舎の建物が残っていると。こういう「稲むらの火」を中心とした散策や交流もできる歴史体験ゾーンにしようと、こういう計画なんですね。私は、これはとてもすばらしい、魅力ある計画だと思っています。
 木村知事、「稲むらの火」という震災・津波から命を守った経験を持つ県として、そして二つ目にはすぐれた先人である浜口梧陵の功績に光を当てるという点からも、そしてまた今回この黒潮交流シンポジウムで知事みずからが築かれた浜口家とのご縁も大いに生かしていただいて、防災教育センターの整備と、そして内容の充実にひとつ積極的なご支援をいただきたいと思いますが、ご所見をお聞かせください。
 さて、次に三番目の柱、和歌山の地場産業であり、基幹産業の一つであるミカン対策についてお伺いをいたします。
 ミカン対策に県が全力を挙げてほしいという声が、地元吉備町初め、多くの皆さんから寄せられています。この冬のミカンの時期に、金屋町にお住まいの三十代の若い専業農家の方からお話を聞きました。東京の太田市場に見学に行くと、和歌山県のミカン、有田のミカンは見つけるのが難しいぐらい本当に少なくて、それぐらいの量しか扱われていない、そういう扱いだ、それに愕然としたと言うんですね。数ある市場の中でも政策市場と言われるこの太田市場では、各県の取り組みの強弱がそのままシェアに忠実に反映されているというふうに言われています。愛媛や熊本に負けていないで、県もミカンの売り込みやコマーシャルなどにしっかり力を入れてほしい、こういうふうにおっしゃっていました。
 今、県内のミカン農家は、ほかの農作物の例に漏れず、深刻な価格低迷に打ちひしがれています。これまでは、収穫量の多い表年は価格は低く、でも収穫量の少ない裏年はまずまずの値段がついたものでした。ですから、価格の乱高下に悩まされながらも、悪い年もあればええ年もあらよと、そう言って辛抱してきたんですね。ところが、最近はそうもいかなくなってきました。
 きょうは、ここに、ミカンの価格がどうなっているかというパネルを用意しました。資料としても配付をさせていただいています。これは、この十年間のミカンの価格と生産量をグラフにしたものです。生産量は全国の生産量で、単位は万トン。ミカンの価格の方は、和歌山県産の価格のキログラム当たりの単価です。このグラフより前の時代は、先ほど申し上げましたように表年と裏年の高い低いがきれいに相関関係があったわけなんですけれども、この十年間を見てみますと、やっぱり生産量の方は表年・裏年でずうっと推移をしているんですが、価格の方に注目いただきたいんですね。裏年で価格のいい年、線グラフの山の部分に当たるわけですが、この山の部分が急降下で下がってきているわけです。特に昨年度の場合は裏年であったわけですが、このグラフのカーブが上がるどころか、もうほとんど横ばいの状態、こういう状況です。そして下の方──表年の暴落した年ですが、九七年、ミカンの価格の大暴落で、緊急融資制度なども発動して大騒ぎをした年です。この年の暴落をしたレベルの価格が毎回毎回豊作の年には繰り返されている、こういう状況なんですね。このまま行けばことしは、予想ですが豊作で、このカーブが、折れ線グラフが落ちる番ということになってきますから、これは一体どうなることかと。豊作でも裏年でももう価格はべたべたに安いと、こういう状態になっているわけなんです。
 ですから、こういうミカンの安値が何年も続いては赤字持ち出しの農家も多くて、奥さんがパートに出て例えば農薬代を稼いでいるとか、高齢者の農家では年金をつぎ込んで何とかミカンづくりを続けている、若い元気な農業後継者のある家でも定期貯金をおろそうかどうしようかという相談ばかりだという実態なんですね。こうなっては、融資と言われても、お金を返す当てが持てないので、今は融資の声すらも出ないと、こういう状態なんです。ですから、こういう値段が続いたら、これから先ミカンづくりが続けられるかどうか、本当に展望が持てない、先が見えてこないという状況です。
 私は、この問題の解決には、日本全体の景気回復を図り、農産物の輸入の野放しを改めて日本農業の再生を図っていく、このことが根本的には大事だと考えています。そしてまた、消費者の味覚の変化や流通の変化にも対応していくという課題もあるでしょう。だからこそ、県としてはこのミカン対策に全力を挙げていただきたいと訴えるものなんです。ミカンが元気でこそ和歌山が元気になる、私はそんなふうに思っています。
 そこで、農林水産部長にお尋ねをいたします。
 私は、このミカン対策としては、県が先頭に立ってミカンの販売やPRの強化、消費拡大に全力を挙げる必要があるというふうに考えますが、県としてのこの点での取り組みの状況をお聞かせ願いたいというふうに思います。
 さて最後に、展望の持てるミカン対策という点でも、品種改良や優良品種の普及に対する期待も大変大きいものがあります。この点では、昨年の九月議会でも議論のあったように、熊本県を初めとする九州各県の取り組みは本当に目覚ましいものがあり、新品種が続々と登場しているという状況です。熊本県では、ことしになってまた一つ新品種を登録したそうですが、この勢いに負けていていいのでしょうか。
 先日、県立の果樹試験場の竣工式にお招きをいただきました。大変立派な施設が完成をし、新しい研究機器も導入をされました。試験場の実験室で研究機器の説明をしていただいた職員の皆さんの緊張感あふれる誠実な姿勢を拝見して大きな期待を感じるとともに、農家の本当に切実な声にこたえて、この試験場を先頭に農家と一体となって品種改良に一層取り組んでいくことが何よりも大切だと改めて感じた次第です。
 そこで、農林水産部長に、県の品種改良や優良品種普及への取り組み状況はどうなっているのか、その状況と今後の方向についてお答えをいただきたいというふうに思います。
 以上、三つの柱についてお尋ねをいたしまして、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。ご清聴に感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。
○副議長(吉井和視君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの広川町の津波防災センターの話でございます。
 浜口梧陵のお話は、戦前は「稲むらの火」──もともとはラフカディオ・ハーンが「生ける神」ということで英語で書いて、それが「稲むらの火」ということで国定教科書に載っていて、昔の人はみんな知っていた話のようなんですけれども、今は余り皆知らないという話になっていたんですが、幸か不幸かというか、南海地震の問題が国の法律になるような状況になってきまして、また「稲むらの火」が燃え始めているというお話がありましたが、今、そのとおりのような状況になってきております。そういうふうな中で、今度の東南海・南海地震でやはり津波対策ということが一番大事になってくるというふうに思っておりますので、この浜口梧陵翁の故事を和歌山県、そしてまた東南海・南海地震に襲われるであろう地域の共通の神話というか──神話じゃないんですけれども、統一の話として生かしていこうという気持ちを私は物すごく持っております。
 そういう中で、西の浜口家というのが寄附をされて、そしてあの地域──私も立派な屋敷が多くていいところだなと思っていたんだけれども、四十二号線から中へ入っているんで、なかなかみんなが知らない地域なんですけれども、その屋敷を中心に津波防災センターと合わせて町づくりの中心にしていくというふうな広川町の考えがあるとしたら、これは僕はすばらしいことだと思いますので、こういうふうな財政状況が非常に厳しい折なんで、県としてどれぐらいの支援ができるかよくわからない面もあるんですけれども、いずれにせよ、いろんな形で町がそういうことを進めていけるように手を差し伸べてやっていきたいと思います。
○副議長(吉井和視君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 水と緑の環境保全についてお答えいたします。
 まず一点目の水環境保全条例の制定についてでございますが、申すまでもなく、きれいで安全な水の確保や清流を守ることは県民みんなの願いであります。
 県では、水質汚濁防止法や瀬戸内海環境保全特別措置法、県環境基本条例、公害防止条例等により、工場・事業場の排水監視指導等、水質の保全に万全を期しているところでございます。また、生活排水が水質汚濁の大きな要因になっていることから、市町村や関係団体と連携して家庭や地域での生活排水対策を促進するため、県民への啓発にも積極的に取り組んでいるところでございます。
 水環境の保全対策につきましては、多岐にわたる環境法令での対応、あるいは環境基本計画に基づく施策などにより、総合的に取り組んでまいります。
 ご提案の条例の制定につきましては、その必要性、有効性等を他府県の動向も見守りながら研究してまいりたいと考えてございます。
 次に、不法投棄の未然防止についてお答えいたします。
 不法投棄を未然に防止することは、県民の生活環境保全上、大変重要なことであると考えております。未然防止策といたしましては、本年度から各振興局に環境指導員を配置するとともに、民間に委託した特別監視パトロールチームと連携しながら巡回パトロールを実施しているところでございます。また、不適正処理やいわゆる残土処理と称した不法投棄が行われている可能性のある地点での定点監視なども実施しております。
 今後とも、庁内関係部局及び市町村や警察などを含めた関係機関で構成する各振興局単位の廃棄物適正処理地域連絡会等で連絡を密にしながら早期発見、早期対応に努め、不法投棄の未然防止を図ってまいります。
○副議長(吉井和視君) 県土整備部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○県土整備部長(大山耕二君) 東南海・南海地震に備えた津波対策について、順次お答えいたします。
 まず湯浅広港弁天堀水門につきましては、点検の結果、老朽化が著しく、補修する必要があるため、国に対して補助事業の予算を要望しております。
 次に、県内の水門につきましては現在点検中でありまして、今年度末までに取りまとめる予定であります。この点検結果を受けまして、必要な箇所につきまして改修計画を策定していきたいと考えております。
 次に水門の遠隔操作等につきましては、津波に対する水門の管理のあり方について検討していく中で機能改善の必要性を検討してまいります。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) ミカン対策についてお答えいたします。
 ミカンの販売、PRの強化、消費拡大についてでございますが、厳しい経済情勢による消費の低迷や若年層を中心とした果実離れが進む中で、ミカンの消費拡大は重要なことであると考えてございます。これまでも県では、生産者団体等と連携しながら、テレビや新聞等のマスメディアを活用した県産ミカンのPR、首都圏でのアンテナショップや農林水産品フェアの開催、健全な食生活を目指した毎日くだもの二百グラム運動の推進など、さまざまな取り組みを行ってございます。また、発がん抑制効果があると言われているベータクリプトキサンチンを多く含むミカンの機能性に着目し、新たな観点からの消費拡大についても努めてございます。
 今後、さらに食生活の改善に関する教育の重要性を踏まえ、学校教育との連携を図りながら、将来を見据えた消費拡大対策に積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に品種改良の研究や優良品種の普及についてでございますが、本県におきましても優良品種の育成は果樹振興の中で特に重要な柱の一つと位置づけており、これまでに果樹試験場での育種や枝変わりによる優良系統の探索に努め、宮本早生や紀の国温州など極わせからおくてまでの十数品種を育成してございます。その中で、近年の消費者ニーズに合った、糖度が高く、味のよい由良早生や田口早生といった県内で育成された品種を、県果樹農業振興アクションプログラムに基づき、育苗組合や生産者団体と連携を図りながら生産拡大に向けて取り組んでいるところでございます。県といたしましても、このような取り組みを一層支援するため、改植を推進する新規対策として和歌山の果樹ブランド強化対策事業を今議会にお願いしてございます。
 今後、新しく整備しました果樹試験場を中心に、地元農家との情報交換など連携をより密にしながら、次代の和歌山を担うオリジナル品種の育成に一層努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 再質問をさせていただきます。
 水環境保全条例の制定については、他県の動向も踏まえて勉強していきたいと、こういう意味の答弁をいただきまして、積極的な答弁として受けとめて歓迎をしたいというふうに思います。
 新しいことを一つ起こすということは大変なエネルギーが要ることですので、ぜひ環境行政のトップとしてリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思います。
 産廃処理や残土の処理──残土と称して行われている不正な処理のことですけれども、住民側にとって本当に悩みというのはストレートで、深刻なんですね。例えば、先ほどの土砂の投棄を言いますと、どこの業者さんだかわからないような遠くのトラックが最近どんどん土砂を運んでくるようになった、一体どこの土砂かもわからない、一体この先どれだけ持ってくるつもりなのかも周りの人にはわからない、こういう状況なんですね。
 あるところの話を聞きますと、心配して住民が役場に問い合わせたら、所有者は転々としたあげくに県外の人が所有されている、土砂を搬入されている業者さんもペーパーカンパニーで、実態のない業者さんだ、だから問い合わせをしようにも、注文をつけようにも相手先がないと、こういうことが往々にしてあるわけですよね。それで町や振興局、保健所の方に相談に行くわけですが、廃棄物が混入されて水が危ないというふうに思うし、ひょっとしたらあんな土の入れ方やったらいつ崩れてくるかわからんということで駆け込むわけですけれども、ところがそこでは、廃棄物を捨てたりということがわかったり、それから水路をふさいだりという法律違反があればその法律に基づいて指導はできるけれども、今のところは土を入れるという届けも出ているし、見守る以外にないんだと、そういうやりとりがよくあるわけなんですよ。ですから、住民の側としては非常に心配事はストレート、全然住民には情報が伝わってこないという悩みがある。
 一方、行政の側としても、これまでずっと悩んでこられたというふうに思うんですね。今回、今の答弁の中では、特別パトロールや、また定時定点の観測など、いろんなご苦労や新しい努力についてご答弁いただきましたけれども、今まで本当に歯がゆい思いをしてきたというふうに思うんですね。私どもも、こんなことがあるから見に来てくれと保健所に電話したら、電話一本で飛んできてくれたりと、本当に頭の下がる思いなんですが、広い管内、なかなか行き届かないというもどかしさもあるし、環境の側としては、そういう土砂の投棄があっても周りから見守っていくしかない、違反や事件が起こってから動くと、こういう後追いの行政だという面は否めない。そして、ここが不正な処理をしたということで正したら、今度はまた別の谷で始まるというふうにモグラたたきのような状況にあるというのも、これまた一つの状況だというふうに思うんですね。ですから、今回、新しいメニューも含めて現在枠の中でできること、いろいろいただきましたけれども、現行の枠では限界があるんじゃないですか。その認識があるかどうかというのをもう一度お聞きしたいというふうに思うんですよ。
 私は、水環境の条例というのは、森林の涵養とか下排水の問題とか、また河川の問題とか、いろんな間口があると思うんですけれども、今回特に土砂や残土と称して偽っている問題や、また土地造成、こういったことにかかわっての分野では、やっぱり現行の枠では限界があると、一歩進んでやっていきたいと、そういう問題意識が県としてお持ちかどうかというのが問われると思うんですね。ぜひその部分のご答弁を再度環境生活部長からお願いをしたいと思います。
 それから津波対策では、知事の方からも津波防災教育センターをやっていくのであれば手を差し伸べてやっていきたいというご答弁をいただきました。ありがとうございます。また水門の方では、具体的な予算要望の話もあって、大変いい回答だったと思うんです。
 住民の命を守っていきたいという一番の共通の思いをぜひ胸に、さまざまな要望や避難対策にも住民とキャッチボールしながら今後とも進めていっていただきたいというふうに思います。
 ミカン対策については、販売強化や消費拡大、それから品種改良について部長から取り組みとともに決意も述べていただきました。このままではミカンづくりを続けていけないという、先ほどご紹介したミカン農家の叫びというのは本当に切実です。県としても必死の努力を重ねてお願いをしておきます。
 それから、学校給食のお話も出ましたので、一言要望しておきたいんですが。
 消費拡大には、子供たちの食生活をどうやって豊かにしていくのかというのは大変大事な問題だと思うんですが、ミカン産地の私どもの地元でも、年間に小学校や中学校で一体どれだけミカンが給食に出るのかと調べたら、多分、年間三個か四個ぐらいなんですよ。多い有田市さんなんかでも十個ぐらいだというふうに私は思うんです。ですから、地産地消の運動も含めて、県行政の力を合わせて頑張っていただきたい、こういうことを要望しておきたいと思います。
○副議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 廃棄物の不法投棄に関しまして、現行の制度や枠では限界があるのではないかというご質問でございますけれども、本年度から保健所に環境指導員を配置いたしまして、それから民間パトロールの巡回回数も相当ふやしてございます。こうしたことを踏まえまして、地域に設置してございます廃棄物適正処理地域連絡会において十分話し合ってまいりたいと思います。
 また法制度につきまして、先ほどの答弁でその有効性、必要性について勉強すると申し上げましたが、そういった点についても十分検討してまいりたいというふうに考えてございます。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 ご答弁をいただいたんですが、大枠は先ほどの答弁から変わらなかったというふうに思うんですね。ですから、私どもはこの先で、例えば議員提案の条例案なんかもお示しをして、皆さんと一緒に具体的な議論を重ねていきたいというふうに思うんです。
 先進県の実態や苦労、そして成果なんかも、私自身も調査して、和歌山県が環境の先進県として、環境を大事にする県として頑張っていけるように、知事初め関係部局が力を合わせて取り組んでいただけますよう要望いたしまして、私からの質問を終わりたいというふうに思います。
○副議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松坂英樹君の質問が終了いたしました。

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