平成15年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(高田由一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十六番高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕(拍手)
○高田由一君 お許しをいただきましたので、早速、一般質問をさせていただきます。
 質問に入ります前に、まず先日、韓国大邱市の地下鉄火災で多数の国民が亡くなられましたことに、ご冥福をお祈りしたいと思います。それとともに、我が国においても、いま一度安全管理の徹底が進められるよう要望をしておきます。
 また、緊迫するイラク情勢では、大多数の国が査察を継続し、平和的に解決をと国連安保理では訴えられています。ところが日本政府の代表は、イラクが非協力的で義務を十分に履行していない、査察の有効性に疑問が生じているとし、新たな安保理決議の採択が望ましいと述べました。今、世界じゅうで戦争に反対し、平和解決を求める、史上空前と言ってもいい運動が沸き起こっています。小泉内閣と日本政府は、国際社会とともに、査察の継続そして強化による平和解決を求める立場に立つことこそとるべき態度だと考え、このことを最初に申し上げ、質問に入らせていただきます。
 最初に、新年度予算について伺います。
 知事は、新年度予算の提案説明の中で、産業振興や福祉、環境、教育などの分野で、新たな発想で思い切った施策を実践することを述べられました。予算規模は四年ぶりにプラスに転じました。その中で、新たな息吹を感じる予算も目立っています。知事が提唱してきた緑の雇用事業は、国においても制度化され、緑の雇用担い手育成対策として研修制度ができ、二年間の雇用保障ができるようになりました。それと関連して、今年度新たに緑の雇用担い手住宅整備事業で約五十戸分の定住促進住宅を県が主体になって建設することも、過疎にあえぐ山村にとって大きな意義を持っています。そのほか林業関係では、「木の国」緑の道として小規模な森林作業道の建設に補助を出しますが、これは長年、林業関係者から要望の強かったものであり、さらにこの事業の成果をもって国に補助事業としての採択を要請することなど、大いに評価できるものです。さらに、木質バイオマスの活用を検討するなど、埋もれた地域資源の掘り起こしをすることも重要です。公共事業事前評価システムの導入も、税金のむだ遣いを防ぐ取り組みとして評価できます。しかし逆に、むだな事業への投資が従来型のまま漫然と引き続くものもあります。関空二期工事への出資金や貸付金などはその最たるもので、県民の貴重な財源を有効に使わないばかりか、国のむだ遣いの後追いをするものだと考えます。また、打田町への東急車輛誘致では県費を二十億円以上も損をして誘致をしましたが、これは県民感情から言っても妥当なものでしょうか。さらに、老人医療費への助成について所得制限を厳しくしたため、ことしだけでも約二億五千万円の予算が削られることは、医療費負担がふえている今日、考え直さなくてはいけないのではないでしょうか。個々の事業についての評価はこれくらいにしますが、私はもっと大胆に予算の構造を改革し、不況で苦しむ県民を助け、雇用を生み出す手助けをする県政であってほしいと願い、以下、質問するものです。
 今、最も注目を浴びている県政の一つに田中康夫知事の長野県があります。その長野県ですが、現在の公共事業費は年間約二千二百億円ですが、冬季オリンピックを目前にした一九九五年度には現在の三倍近い年間六千二百億円がつぎ込まれていました。幾ら人口が和歌山県の倍を上回るからと言って、和歌山県の年間予算分のすべてを上回る額を公共事業に突っ込んでいたのでは財政がもつわけがありません。このままでは、あと二年で財政再建団体に転落という土壇場で知事が交代し、今、長野県では財政改革推進プログラムをつくり、財政立て直しに頑張っています。その計画が達成されれば、土木や農林に係る公共事業は二〇〇二年度比マイナス四〇%、単独事業では実にマイナス五〇%など、合計六百三十四億円の削減になると言います。
 その反面、重点化枠として二百十億円の新たな予算がつけられ、福祉、医療、教育、環境の分野には惜しみなく重点投資される予定です。この動きは既に始まっています。田中知事は、二〇〇二年度予算で特別養護老人ホーム八カ所の新設やケアハウスなど老人福祉施設二十カ所の新設など、市町村から希望が上がったものに対して一〇〇%すべて予算をつけました。びっくりしたのは市町村です。花火を上げてお祝いしなくてはとの驚きの声が上がったそうです。新年度は、在宅の高齢者や障害者施策がぐっと強化される予定です。ただ、率直に申し上げまして、従来型のそういう公共事業を大幅に削れば建設業界などに大きな影響が出るのは避けられないところです。その影響を軽減するため、二万人の雇用創出を目標とする産業活性化・雇用創出プランによって就業機会の確保、建設産業の構造改革を支援するとしています。例えば、脱ダムとの関係では森林整備による治水が大切と位置づけており、造林や間伐に力を入れていますが、この田中県政の森林整備予算の力の入れようは、前の県政と際立った違いです。前知事時代の二〇〇〇年予算と比べて、二〇〇三年度予算では二倍の八十億円以上を森林整備に確保しています。それだけ膨らませた森林整備業務を森林組合だけに任せず、建設業者を参入させているのも特徴です。和歌山県で同じようにしますと、間伐などの森林整備では一ヘクタール当たり七・三人の労働力が必要だと言われています。和歌山県下での現在の実績は年間八千七百ヘクタールですから、これを例えば倍にすれば、通年雇用で三百人以上の新しい雇用が生まれると見ています。また長野では、新年度予算で県が若者を直接短期雇用して年間延べ百七十人の雇用をつくる、あるいは働き盛りの三十から四十五歳の世代を対象とした三カ月のトライアル雇用制度も予算化しています。さらに、小学校三年生までを三十人規模学級とするなどの対策で教職員としての雇用をふやす計画です。これについては、今後市町村と協力しながら、小学校六年生まで拡大するようです。このように長野県では、大きな公共事業は減ったかもしれませんが、老人ホームや保育所の建設、独自の雇用確保策など、地元の業者が潤い、しかも雇用を生み出す事業への重点投資がなされています。
 ここで肝心の和歌山県ですが、お配りした資料をごらんになっていただきたいと思います。同じものをここにパネルで用意いたしましたので、議場の方もごらんください。(パネルを示す)
 共通しているのは、田中康夫知事も木村知事も二〇〇〇年の秋に知事になっておられますので、当選前と後の予算を比べれば、それぞれどういう傾向かというのがリアルにつかめると、私は思っています。
 この表の説明ですが、これは決算の中で、義務的経費や一般施策の経費を除いて普通建設事業だけを取り出したものです。費目ごとに集計しましたので大変簡単な表に見えますが、何時間もかかっています。ぜひごらんください。
 長野県と和歌山県ですが、まず「普通建設事業の推移」の全体を見ますと、長野県では七六%に減、農林水産業費でも七一%に減っている。土木費でも七一%に減っている。これは和歌山県でも同じような傾向でして、やはり全体の普通建設事業は七九%に減ったり、農林、土木関係は減っているという傾向があります。次に民生費の関係を見ていただきたいんですが、和歌山県でも一五九%に伸びています。長野県では、民生関係は二三七%という大幅な伸びを示しています。これで、紹介したような老人ホームや保育所などの建設を進めたわけです。和歌山もなかなかよく伸びているなという感じはするんですが、しかしこの伸びというのは実は南紀福祉センターの大規模改修がこの年度に入っていまして、その後は実はこの値よりも逆に減っているという事態になっております。まだ決算が出ていませんのでわからないのですけれども。減っている農林水産事業の中で、造林費というのに注目をしたんです。今、間伐が造林事業の主体になっているんですが、和歌山県では大体横ばいの一〇一なんですが、長野県では一五一%とかなり伸ばしていて、さっき言ったようにこの部分で建設業者の方々なんかの雇用も確保しているというふうな動きになっています。以上で、表の説明を終わらせていただきます。
 そこで、知事に伺いたいと思います。
 この大胆な改革を進めている長野県政の感想と今後の和歌山県政の進む方向について知事のお考えを聞かせていただきたいと思います。
 次に、県政改革の新プログラムについて伺います。
 私は、和歌山県でも県政改革のための総合的なプログラムが今必要だと思います。これまでは、政策目標は長期計画、財政の改善については財政運営プログラムでと二分化されています。二〇〇三年度予算で財政運営プログラムも終了するわけですから、今、政策と財政を合わせた総合的なプログラムの策定を求めるものですが、いかがでしょうか。
 次に、南海地震対策について伺います。
 和歌山県でも、新年度予算では大規模災害対策として約六千七百万円の予算が組まれました。昨年は一千万円にも満たなかったこの分野の予算がふえたことはうれしいのですが、まだまだ不十分と言えば言い過ぎでしょうか。
 昨年、串本町で行われた講演会で、京都大学の河田教授が「地震対策は県レベルで見ると、高知、大阪、兵庫、奈良、三重県などがかなり進んでいる。和歌山が一番おくれている。和歌山県民は非常にのんびりしている」と、激励の意味もあったのでしょうが、奮起を促しています。そこで、私も三重や高知の予算を調べたのですが、三重県では新年度で緊急地震対策事業費として二億六千万円が組まれています。高知県では、南海地震に備えるとの重点化枠で約六億八千万円の予算です。もちろん、各県ごとに予算の枠組みが違いますので単純に比較はできませんが、和歌山県とは一けた違うというのが実感です。年末には中央防災会議で地震の規模が見直されたのですから、少なくともそれに見合った県の被害想定をやり直さなければなりませんが、その費用は安いものでありません。
 そこで、知事に伺います。
 地震、津波対策の今後の予算増額について、知事のお考えを聞かせてください。
 次に、地震による被害想定や津波の浸水想定をどう進めるかについて伺います。
 先ほど紹介した京都大学の河田教授は、現在県が示している津波の高さ予想について次のように述べています。「津波の高さは、残念ながら県が出したあの値ではない。県の値が間違っているとは言わないが、限りなく間違っている」と、微妙な言い回しですが、間違っていると指摘をしております。中央防災会議が示した昨年末の地震規模見直しをもとに、実際に住民が避難するときに参考になる被害想定、浸水想定を今後どう進めていくのか、答弁をお願いしたいと思います。
 予算問題の最後に、昨年の議会で私も問題提起した住宅の耐震改修について伺います。
 私の質問の後、土木部の方でインターネットを利用した耐震診断プログラムを開発してくれました。家に柱が何本ぐらいあるのか、壁や基礎はどうなっているのかなど、住宅の基本部分の数値を入力すればその家の耐震度がわかるという仕組みです。私の自宅はもう建って百年ぐらいたつんですけれども、早速試してみました。結果は「大破壊の危険あり」と診断されて、少々ショックを受けております。
 さて、そうして診断が出た後が問題です。各県の新年度予算を見ますと、静岡県だけで行われていた耐震改修への補助金が、長野県、兵庫県などで予算化されています。今後、和歌山県でも取り組みをしていくべきではないでしょうか。知事の見解をお示しください。
 次に移ります。公共施設への利用料金制導入について伺います。
 今議会に提案されている議案第二十二号から二十四号は、県文化振興財団に運営を委託している県民文化会館やビッグホエールなどの施設の利用料金を定めるものです。これまでは、県有施設の使用料は県使用料手数料条例で定められており、その収入は県の収入として計上されていました。これを、今度はそれぞれの施設が利用者から直接利用料金という形で受け取ることができるようにするものです。これまで県が全額支出していた管理運営に係る委託費を一部だけ委託費として支払い、あとは施設が利用者から徴収するという形になります。お配りした資料の裏側にこの利用料金制の説明をした資料がございます。一番上側が今までの使用料という仕組みでされていたものです。それが一番下の運営費補助と一部利用料金制を組み合わせた形になるという、そういう運営の仕方になります。
 なぜこのようなことをするのかと言えば、九九年度の包括外部監査では、県文化振興財団について、「独立採算性の導入等を検討すべきである」としており、私はその流れの一環だと考えています。県は委託費の一部を予算化しておき、あとの足りない部分については施設の営業努力で賄いなさい、頑張ってもうけた部分については施設の方で自由に使いなさいというものです。結構な話ではないかと思われるかもしれませんが、今の県の財政状況から見て、不足するときには知らんぷりをして、頑張ってもうけたときには、その分、翌年度から委託費は減らされるというようなことはないでしょうか。現在も、県の委託費は減ることはあってもなかなかふえない状況です。そんなときに、この利用料金制度を導入することは、施設の維持管理のためには、利用者の負担をふやすか、それともサービスを低下させるかのどちらかにつながりかねないのではと私は心配しています。
 そこで、公室長に伺います。
 今まで使用料として県の収入として計上していたものを変える理由は何でしょうか。また、県からの委託料と利用料収入だけでは、赤字になった場合どのような手だてをするのでしょうか、答弁をお願いします。
 次に、市町村合併と道州制について伺います。
 昨年九月県議会で、私は小規模な町村に対しては強制的な合併をも国が検討し始めていることについて知事の見解を求めました。知事は答弁で、「議論が深められていくことは結構なこと」と述べられましたが、私はこの答弁に正直驚きました。それと言うのも、昨年の二月議会で、やはり私は市町村合併についてお伺いしたのですが、そのときの答弁では次のように言われています。「単に三千三百ある団体を千にしようとかいうふうなことで、特に過疎の地域においてはこの問題は大変大きな問題であるわけですから、そういうふうな形のやり方というのはよくない」というふうに、そのとき知事はおっしゃられていたからです。その後、昨年十一月の地方制度調査会にいわゆる西尾私案が出て、ますます小規模町村への締めつけが強まってきたわけです。これに対しては、全国町村会や町村議長会も反発していますし、全国約二千五百の町村のうち半数に近い千二百余りの町村議会で西尾私案に対して批判的な決議が上げられています。和歌山県内でも、四十三町村のうち三十三議会で西尾私案を批判する意見書が採択されていると言います。合併特例法を武器に、国は押しつけ合併を強力に推進しています。そんなときに、政府の地方制度調査会の委員が私案という形ででも強制合併をちらつかせる内容の案を提出するということ自体、既に議論の段階を超え特例法期限内での合併誘導になっている事実を見なければならないと思います。このような動きについて鳥取県の片山知事は、「人口が少ないから、もう窓口業務をするしかないと決めつけて権限を剥奪するのは自治の侵害」と議会答弁し、批判をしています。合併特例債などのあめを用意して、特例法が切れた後は西尾私案など強制的な合併もちらつかせるというむちを振るうやり方は許せないと思います。
 そんな中、知事は読売新聞社が行ったアンケートに答えて、「人口が一定規模に満たない自治体を解消することを合併の目標とすべきだ」との意見に対して「どちらかと言えば賛成」と答えられました。また、道州制については賛成の立場を表明されたと報道されています。
 そこで、知事に伺います。
 地方制度調査会の西尾私案についての知事の見解をお示しください。また、道州制についても知事の見解を示してください。
 さらに、先ほども述べた長野県では、合併しないで小規模な自治体の今のままでいこうじゃないかと決めている四つの町村と県が一緒になって市町村自律研究チームがつくられて、県の市町村課の三名が担当しているそうです。私は、合併する、しないにかかわらず、その市町村を支援していこうという姿勢が大切だと思いました。秋田県や福島県、富山県の知事も、合併しない市町村への支援を明言しています。合併をしないと選択した町村、あるいは合併してもメリットがない町村などへの支援について、知事の考えを聞かせてください。
 また、二〇〇五年三月と期限を切って合併を推進する県単独の合併推進事業の補助金、ハード対策分は一億八千万円上がっていますが、ことし十四年度でも使うところがなく、丸々減額補正される予定と聞いております。この際なくしてはどうでしょうか。答弁をお願いします。
 次に、試験研究機関のあり方について伺います。
 今年度完成の果樹園芸試験場に続き、うめ研究センターが整備され、試験研究設備が充実していくことは好ましいことです。農林水産分野では、残るのは老朽化が激しい水産試験場の改修です。今後の課題として、早急に結論を出されるよう要望しておきます。
 この試験研究機関の充実という点で振り返ってみますと、私は九九年の九月議会で問題提起しました。和歌山県のように県内で発電した電力を他府県に移出している県に対しては国から電力移出県等交付金が交付されていて、本県の場合は毎年三億円が来ています。これが、それまでは企業団地の造成などだけに使われていましたが、そのとき私は、この交付金は農業や環境といった分野の試験研究施設を整備する予算にも使えるから、そのようにすべきだと指摘をしました。その後、この交付金が果樹試験場整備に約八億円、うめ研究センターに約三億円と使われており、この点での改革は大いに評価したいと思います。
 本題に入ります。
 先日、行政組織等の見直し実施プログラム案を見ましたが、県立の衛生公害研究センター、工業技術センター、農林水産総合技術センターを二〇〇六年度に統括し、仮称ですが、紀の国産業技術支援センターをつくるとしております。これは、昨年十月に出された県行政組織等検討懇話会の提言を受けたものですが、その意義は「試験研究機関における科学技術振興活動を一元的に統括し、より一層の研究マネジメント機能の充実を図るため」としています。また、新年度予算では戦略的研究開発プランが予算化されています。県の研究テーマで、第三者機関による審査で重要と認められたもののうち、大学や企業との共同研究を行うものについて、多い場合で一件三千万円の重点予算配分が受けられる制度がつくられます。既にお隣の三重県で、九八年度からこういう方式で研究機関をまとめ、予算の重点配分を行っています。多自然型の河川工事、あるいは森林の下草刈りの省力化、陶磁器のユニバーサルデザイン化など、地域に密着したユニークな研究に県と大学、民間企業などが共同して取り組んで、成果も出ているようです。そうした表舞台に出る華やかでお金になる研究もありますが、県という公的な機関でしかできない基礎研究もあります。例えば、私は梅については生理・生態からの研究をと訴えてきましたが、和歌山県の試験場にはその蓄積が残念ながら十分ではありませんでした。木の成長を十年、二十年と観察してわかることや、気温や水温を何十年と観察、記録してきてこそ最近の温暖化傾向がわかるなど、基礎的な研究分野は重要です。
 そこで、伺います。
 組織の見直しや重点的な予算配分制度が新設されるもとでも、基礎研究の分野をおろそかにしないということを言明していただきたいと思います。そのためにも、従来の研究予算を確保した上で、それに上乗せするような形で戦略的研究プランの予算をつけていくべきではないでしょうか、答弁をお願いしたいと思います。
 また、戦略的研究プランを選定する第三者機関は、他県の事例を見ると大学や企業からの任命がほとんどですが、もっと暮らしの中で出ている県民の声が届く体制が必要なのではないでしょうか。例えば、後でも触れますが、梅衰弱症の原因解明のために、圧倒的多数の梅農家が求めているのは御坊火電のばいじんの暴露試験です。科学的な評価ができないという理由でこれまで取り組まれていませんでしたが、県民の要望が強いのですから、科学的に評価する手法の確立から始めてもいいわけですから、そうした取り組みを試験研究に取り入れさせる。あるいは、農産物への鳥獣被害がどこへ行っても大変ですが、いかに被害を軽減するかといった実践的な研究に取り組むよう求めてきましたが、いまだになされていません。また、食の安全性や環境に負荷をかけない農業のあり方など、取り組むべき課題は多いものがあります。しかし、そういう取り組みをしてこそ、私は県立研究機関の存在意義が出てくるのではないかと思います。いかにして県民に開かれた研究をするのか、そのために第三者機関が有効に働くよう求めたいと思いますが、人選も含めた知事のお考えを聞かせていただきたいと思います。
 次に、梅衰弱症研究の到達とうめ研究センターでの課題について伺います。
 梅衰弱症をめぐる問題は、これまでも白熱した議論がされてきました。原因究明にはいまだ至っていませんが、御坊火電が操業率を昨年で約四%と落としている状況のもとで、最近、衰弱症の発生が減っており、農家の中では御坊火電原因説はぬぐい去ることができない状況です。新しい研究機関の体制が組まれていくもとで、先ほど述べたように、農家の声が直接反映できるようなシステムができることを要望しておきます。
 さて、梅衰弱症をめぐる国の指定試験事業は、梅樹体内の養水分バランスに重点を置いて研究されてきましたが、二〇〇三年度で終了予定です。これまでの成果と、あと一年どんな取り組みをするのか、お聞かせいただきたいと思います。
 また、うめ研究センターの人的体制や研究テーマはどうなるでしょうか。梅衰弱症の原因として、いまだに疑われている大気環境要因を引き続き研究されたいと思いますが、いかがでしょうか。
 そして最後に、梅衰弱症原因究明への農林水産部長の決意をお示しいただきたいと思います。
 最後に、日中友好のあり方について伺います。
 新聞報道などによりますと、昨年七月、木村知事を会長とした和歌山県日中友好交流推進協議会なる団体が設立され、田辺市内に日中国交正常化三十周年を記念した石碑を建てるために募金を集める活動を展開していました。
 私ども日本共産党は、日中友好の目的をもって記念碑が建てられること自体に、もちろん反対ではありません。ところが今回の問題では、一部の方々だけで準備を進めたため、記念碑の内容についても決まったものを押しつける形になり、また財政的にも地元の事業者などに事実上寄附が割り当てられるなど、「これだけみんな不況で苦しんでいるときに、一体どういう感覚なのか」など、怒りの声が出ていたのも事実です。そうしたやり方が大いに問題になり、結局中止になるようです。ただ、この問題については新聞や週刊誌などであれこれと報道していますが、肝心の会長である木村知事の見解を見たことがありません。
 そこで、伺います。
 県日中友好交流推進協議会の立ち上げの経緯と、石碑断念までの事の経過を明らかにしていただきたいと思います。また、結果として日中友好に水を差すような形になった今回の問題の教訓は何だと思われますか、答弁をお願いします。
 また、私はこの機会に、日中友好運動に係る行政のあり方について一言申し上げます。それは、友好運動を県民全体のものにしていくことが大切だということです。私は、今回の問題もこうした原因から起こったものだと考えます。例えば、和歌山県には五十年の歴史を持つ日中友好協会和歌山県連合会という団体があります。民間団体とはいえ、正式に中国との関係を持った団体ですが、中国から国家旅游局長さんがお見えになって東急インで歓迎会がされましたが、あのときなども各界各層の皆さんが多数来られておりましたけれども、肝心のこの協会には声がかからないままでした。このほかすべてがそうですが、意図的な排除と言われても仕方がない状態です。少なくとも、県が行政として進める公費を使った交流運動については、広く県民に開かれたものでなくてはなりません。
 そこで、公室長に伺います。
 特定の団体を排除するなど偏った日中友好運動は見直していくべきではありませんか。また、県民に広く開かれた友好運動とするために今後どのような取り組みをされるでしょうか。答弁をお願いして、私の一回目の質問とさせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(宇治田栄蔵君) ただいまの高田由一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、長野の田中知事の取り組みについての感想ということですけれども、これはそれぞれの県によっていろいろな事情があるということで、私は私なりにこの和歌山県をよくしようということでいろいろな施策に取り組んでいるところでございます。
 例えば、先ほども申しましたように、公共事業一つとってみても、和歌山県では六千社を超える土木建設業の人がいるわけです。こういうふうな中で公共事業は確実に減ってきているんですけれども、そういうふうな中でそういう人たちの雇用も確保していかなければならない。そういう中で、例えば緑の雇用事業でありますとか、先ほど言いましたIターンとかUターンの人の住宅を県が公共事業扱いでつくっていくとか、それから公共事業の中に県産材を使うような優しい公共事業というふうなものをつくっていく。いろんな形で、今の世の中の流れというものに合わせた形で、そしてまた雇用も確保していくというふうなことに努力していることを申し上げておきたいと思います。
 それから、県政改革のプログラムということでございますけれども、これはご案内のように、昔のように総合計画をつくって十年先までのことを見通すというようなことはできない時代になってきているわけです。しかしながら、場当たり主義で行き当たりばったりでやっていったらいいということではもちろんないわけでございまして、そういうことの中で、私は他県の知事なんかとも共同しながら、いろいろな新しい改革の方向を出していき、それに合わせた施策を国とも協調しながら、そして県独自にもいろいろなことを行っていくということで、それをまた県議会等へ諮りながら進めていくというような手法をとっているわけでございます。いずれにいたしましても、これからもそういうふうな形でいろいろな新しい時代に合った和歌山県づくりについて県議会等の協力を得ながら進めていきたいと思っております。
 それから南海地震の対策なんですけれども、金額について──河田教授がどう言われたかわからないんですけれども、和歌山県の場合、実は防災センターをこれからつくる、それから防災無線──これも無線だからといって安い値段でできると思っていたら大分違っていて莫大な費用がかかるわけです。それから、被害想定の見直しがあるんですけれども、これについても実は私が以前、総務部長をしているときに阪神・淡路大震災を受けてやったという、そのときもえらい高いなという感じがあったんですけれども、これがまた違ってきたということでやっていかなければならない。そういうふうなこともいろいろ含めて、実は和歌山県でも来年度六億円近いお金を──これは予算の計上の仕方がいろいろあるんですけれども──計上しているということで、地震対策というのは大変金額がかさむ。ただ、人の命にかかわることなんで、これは第一義的に重要なものとして対応しているということです。
 それから、被害想定についてはただいま申し上げたようなことで、前回やったことがむだにならないような形で、十五年度から二カ年をかけてやっていくということです。特に津波なんかに重点を置いて考えていきたい、このように考えています。
 それから、耐震化の助成ということです。
 これについては、実は以前は個人財産補償は絶対したらいかんということが言われていたんですけれども、今、全国的に新たな動きが出てきているということもご質問のとおりですので、このような動きも踏まえて、いろいろ県としての対応をこれから考えていかなければならない、このように思っております。
 それから、市町村合併に対する西尾私案です。
 これについては、全国の市町村からいろいろ反発があることも私は存じております。しかしながら西尾私案の中の、例えば自治体の基盤強化を図るということでありますとか、合併をした場合、旧来の市町村にあったものを一定の役割を持たして取り込むというふうな考え方には私は賛成でございます。というのはどういうことかというと、今、日本の自治体というのはコミュニティー的なものと、行政区画としての市町村というものが余り分明になってなくて、今の市町村合併の問題でも、そのあたりが十分整備されないままに来ているというふうなことがあると思いますので、こういうところは私の考えているところと一緒だなという感じがあるわけです。しかしながら、いずれにせよ、この地方制度調査会の答申はことしの十一月に最終報告が出るので、それまでいろいろな市町村の声を反映しながら議論がなされると思いますので、和歌山県としてもこれを見ていきたいと思っております。
 それから道州制についての考え方ということでございますけれども、私は実は、もう今みたいな大変な世の中、二十一世紀になって国というものが非常に大きな役割を逆に増すような時代になってきているという考え方を持っております。そういうふうな中で、国は例えば防衛の問題でありますとか、外交の問題でありますとか、国土整備の基盤とか、いろいろな基準とか、そういうことを今ある以上にもっともっと真剣に高度な知識を集めて対応していかなければ、この二十一世紀の時代に日本の国が世界において名誉ある位置を占めるということは難しくなってくると思う。しかしながら一方で、住民の生活にかかわること、こういうふうなことの端々まで国がいろんなことを言ってくる必要はない。そういうところは、自治体というか、もっと大きな範囲での分権化された地域というものが自分のところの判断で決めていく。そしてまた収入も自分のところで入ってくるような仕組みにしていく。それが本当の自治であろうと思っています。こういうふうな両々、国は国としての立場をもっともっときわめていくという考え方、そして地方は地方として、住民の生活については、もうおれたちに任せておいてくれと、余り細かいことまで言ってくれなくてもいいというふうな体制、これが本当の二十一世紀の国づくりというものではないかということを考えております。「道州制」という言葉は何か手あかのついたような言葉で、私はこの言葉が嫌いなんで使わないんですけれども、いずれにせよ、そういう形の本当の意味での分権、地方主権ということを目指していきたいと思っているわけでございます。
 それから合併しない市町村への支援ということで、今、県下の市町村が皆合併に向けていろいろ市町村長が苦労しておられるときに、合併しないところにどんどん応援しますよなんて言うと皆さんの熱情に水を差すようなことになるわけで、これはなかなか難しいんですけれども、かといって別に合併しないところを冷遇するというふうなことは考えておりませんので、あれしていただきたいと思います。
 それから合併推進の補助金については、これはいよいよ来年度必要になってくると思っておりますので、やっていきたい。
 それから試験研究機関についての考え方ですけれども、これは県の試験研究機関というのは原則的には実践が求められると、要するに県に本当に役に立つということが求められるのであって、純粋研究ということはそう重きを置かないべきだというふうに考えております。しかしながら、それはしたらいかんということではないんで、もちろんそういうこともしながらやっていくということではあるわけです。そして、今度の戦略的な研究というのは、これはもちろん上乗せということですし、それの選択に当たっては、当然のことながら一部の人だけで決めるというようなことではなくて、広くいろんな人の意見が入ってくるような形で物を考えていきたい、このように思っております。
 それから最後に、友好記念碑の建立の問題ですけれども、この記念碑につきましては、平成十二年に日本全国から訪中した五千人の文化観光交流使節団を歓迎して発表された江沢民主席の重要講和の石碑を日中国交正常化三十周年を記念して全国各地に建立し、中国との友好をさらに深めるとともに、観光等経済面の交流を推進するという計画が持ち上がりまして、その候補地の一つに本県の田辺市が入ったものでございます。これを受けて和歌山県日中友好交流推進協議会を設立し、計画を進めてきたところですけれども、建設予定地である田辺市並びに田辺市民の皆様方を初めさまざまなご意見があり、今回、計画を白紙に戻すことにしたということでございます。
 以上です。
○議長(宇治田栄蔵君) 知事公室長小佐田昌計君。
  〔小佐田昌計君、登壇〕
○知事公室長(小佐田昌計君) まず、公共施設への利用料金制の導入についてでございます。
 現在、県民文化会館やビッグホエールなどの施設は、財団法人和歌山県文化振興財団に管理運営を委託しておりますが、施設管理運営の一層の効率性を高めるため利用料金制を導入することといたしました。このことによって施設管理者の自主的な運営を促し、施設の有効活用と一層の利用促進を図ることを期待しております。
 なお、利用料金収入が伸びず、一定の委託料のみでは管理運営経費が不足するような場合には、基本的には施設管理者の営業努力や経費削減努力等により経費不足が生じることのないように対応するのが原則と考えておりますが、万が一そうしたことが起こった場合にも、県民への負担増加やサービスを低下させることのないよう対処してまいりたいと考えております。
 もう一点、日中友好のあり方で、県民に開かれた友好運動へというご質問でございます。
 中国との友好交流につきましては、昭和五十九年の友好提携締結以来、山東省との間で、県と省という行政レベルでさまざまな交流を行っております。また民間レベルでは、山東省と関係の深い民間交流団体が中心となって、文化、経済、教育などさまざまな分野で積極的な交流活動を行ってまいりました。その結果、現在では本県と山東省との間に民間同士のパイプがたくさんでき、民間主導の交流が盛んに行われていると聞いております。県といたしましては、このような民間主導の交流を支援し、今後とも特定の団体に偏ることなく、県民の皆様に広く開かれた幅広い交流を推進してまいりたいと考えております。
○議長(宇治田栄蔵君) 農林水産部長辻  健君。
  〔辻  健君、登壇〕
○農林水産部長(辻  健君) 梅衰弱症についての三点のご質問にお答えいたします。
 生育不良につきましては、これまでの栽培や大気環境などの研究では、その原因を完全に解明するまでには至ってございませんが、着果負担や高温、土壌乾燥が樹体に及ぼす影響をこれまで見出してきたところでございます。
 その技術対策といたしましては、整枝剪定方法、有機物マルチ、緑肥作物による土壌改良などであり、樹勢維持の成果を得ていることから地元農家で活用いただいているところでございます。また指定試験では、これまでに梅の樹体内の養水分の分布や使われ方の知見が得られたところであり、引き続き生育不良との関係について研究を進めてまいります。
 次に、平成十六年度開所予定の(仮称)うめ研究所についてでございますが、地域に密着した研究機関としての体制を整備するとともに、梅産業の持続的な発展を図る観点から、生育不良の早期解明を初め、環境に優しく省力的な安定生産技術の確立やDNA検定を利用した優良品種の選抜育種、また環境制御温室を利用した新たな研究など、総合的な取り組みを行うこととしてございます。今後とも、生育不良の原因究明に向けまして積極的に取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(宇治田栄蔵君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十六番高田由一君。
○高田由一君 答弁をいただきました。
 まず、地震対策の部分です。
 知事も言われましたように、和歌山県の大規模災害対策という点では新年度予算が六千七百万円ですが、いろんな分野を合わせると六億円近いお金を計上しているというのはそのとおりです。ただ、例えば私紹介したように、高知県でも六億八千万円程度予算化しているんですが、和歌山県の場合は、先ほども触れられましたけれども、九割方が県立施設にいかに耐震化を施すかという予算になっていて、市町村への支援とか、自主防災組織をどう支援するかという部分については、やはり少ない部分があるんですね。
 それで見ると、高知県なんかは、この六億八千万円のうち県立施設は三割ぐらいの耐震化で、あとは例えば自主防災組織が比較的自由に使える総合防災補助金みたいな形で七千万円を組んでいたり、かなり力を入れているなというのは実感として思うわけです。防災センターの整備や無線の整備、費用もかかります。そういう中で工夫をしていただき、より一層の対策充実をこの点では求めて要望したいと思います。
 それから、私は長野の事例をあちこち言いましたけれども、もちろん長野が全部よくて和歌山が全部よくない、こう言うつもりはございませんが、改革の仕方の事例として一つ紹介をさせていただいたわけです。その中で、やはり木村カラーといいますか和歌山モデルといいますか、そういう改革の部分で我々が大いに評価できるところがあります。ただいかんせん、まだいろいろ問題がある部分があるとは考えています。そういう点でご指摘を申し上げた次第です。
 ただ、最後にこれはもう一回お伺いしますが、日中の友好の碑の問題で、知事は今、田辺市や市民のさまざまなご意見があって白紙に戻ったというふうに言われるんですけれども、私はこの問題の教訓は何かということをお伺いしたんです。
 提案された案自体が問題もなくてよくて、ただ市民の側で議論があってさまざまな意見があった、だからだめになったというんだったら、これは会長としての知事の教訓や反省というところにはないと思うんです。この点、明確にする必要があるのではないでしょうか、この点をお伺いして二問目とします。
○議長(宇治田栄蔵君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの記念碑の問題なんですけれども、こういうふうなものというのは、皆さんが合意してやっていく必要があるだろうというふうなことの中で、非常に大きな反対とかいろんな考えが示されたと。初めにそういうふうな考えをすべて集約してこういうふうな行動を起こせばよかったんだろうと思いますけれども、これは十分そういう形にならなかったというふうなことの中で行われたと。いずれにせよ日中の友好ということは非常に大事なことですので、これから山東省との友好なんかも含めて、また新たな形での和歌山県と中国との友好を図っていきたいと、このように思っております。
○議長(宇治田栄蔵君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 二十六番高田由一君。
○高田由一君 日中の石碑の問題について答弁をいただきました。
 私は、やはり石碑の内容まで、あるいは形まですべて決まったような中で号令がぽんとおりてきて、そして値段が幾らかかるからこれだけ出してよという、このやり方というのは友好運動としての形態にふさわしくないと思うんです。こういうことに注意をされながら、真の日中友好が発展することを願って質問を終わらせていただきます。
○議長(宇治田栄蔵君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で高田由一君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は二月二十四日定刻より再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時五十三分散会

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