平成14年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(高田由一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十六番高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕(拍手)
○高田由一君 お許しをいただきましたので、早速、一般質問に入ります。
 まず最初に、食と緑の工場特区について伺います。
 六月に発表されました骨太の方針第二弾には、構造改革特区の構想が盛り込まれました。そのうち、農業に関する特区では約九十の提案が自治体から寄せられたそうで、そのほとんどが企業の参入を促すものとなっているようです。
 農地をめぐっては、既に昨年三月の農地法改正で、農業生産法人の枠内ではありますが、株式会社の農地取得を認めています。このとき、日本共産党は、農業生産法人の要件緩和は株式会社、法人大企業の農地取得、農業支配への一歩を踏み出すものであること、そして日本農業の家族経営を守る柱となってきた耕作者主義、つまり実際に耕作に従事する者が農地についての権利を有するという原則を破るものであり、家族経営を基本とした農政のあり方を変えてしまうものだとして、反対いたしました。しかし、結果として法案は成立しました。その影響がまだこれからどのように出るかもわからない現在、また再び農業特区によってなし崩し的に農地規制が緩和されようとするのは、余りにも性急過ぎます。
 この構造改革特区のねらいは、最初、地域的な規制改革をやって、実績が上がっていけば全国的な規制改革へつなげていくというもので、いつまでも地域限定版でやろうという意図ではないようです。農地が乱開発、投機の対象になりはしないか、全国農業会議所や全国農協中央会も懸念を表明しています。
 農業県和歌山が、その基礎を崩す先頭に立ってよいとは思いません。今回、知事があえて既存の法律の枠内ではなくて特区ということにこだわるのは、農業生産法人でも何でもない、株式会社に農地を取得させようとするねらいが最初からあるからではないでしょうか。コスモパークの土地について、なぜ特区に設定する必要があるのか。その意図するところは何なのでしょうか。知事の今回の特区構想への考えを伺いたいと思います。
 次に、県内農業への影響について知事に伺います。
 今回のカゴメの計画では生食用のトマトを生産するそうですが、和歌山県のトマト出荷量は年間約八千トンにしかすぎません。そこに、一カ所で約六千トンもの生産が可能と言われる大団地をつくって大丈夫でしょうか。県内農業に及ぼす影響をどう考えておられるのか、ご答弁をお願いしたいと思います。
 次に、住民基本台帳ネットワークについて伺います。
 八月からこのネットワークが稼働し始めたわけですが、全国あちこちの自治体で、住民の情報が漏れないのか、漏れた場合どうするのかなど、さまざまな疑問が出され、中には、つい先日の東京都中野区のように、ネットワークとの切断をした自治体も出てきました。何よりも問題なのは、住民基本台帳法の制定時に当時の小渕首相もネットワークシステム実施の前提として約束をしていた個人情報保護の法制度がいまだに整備されていないことです。国への早期整備を要望されるとともに、この未整備のまま住民基本台帳ネットワークを始められた状況について知事としてどう考えているのか、答弁をお願いいたします。
 この問題では、今後、県内の市町村の中でも、ネットワークの切断や情報更新のストップをするところも出てくる可能性があります。こうした市町村の意見、態度は政府が約束を守っていないことによるもので、個人情報の保護という観点から市町村の意見を尊重しなければならないと考えますが、いかがでしょうか。
 また、個人情報の保護法案がきちんとできていればそれでいいかというと、それでは済まない問題があります。どんなコンピューターのシステムでも絶対に情報が漏れないというのは、理論的にはあり得ないと言います。また、全員に十一けたの背番号を振るという国民合意があるかというと、今の状況を見れば、ないと言っていいでしょう。
 日本共産党は、この住民基本台帳法に対し、国会審議の中で明確に反対してきました。しかし、法律ができたからといって、国民の十分な納得のないまま運用されることは避けるべきではないでしょうか。引き続き、今からでも見直し、中止を求めていきたいと思います。
 次に、公立学校の耐震診断計画について教育長に伺います。
 文部科学省が、各都道府県教育委員会に七月三十一日付で出した通知「公立学校の耐震化について」では、耐震診断を行っていない校舎について、平成十七年度末までにすべて耐震診断を行うよう求めています。これまでも耐震診断の必要性は言われてきましたが、和歌山県の実施率は三・三%で、全国ワースト五位です。なぜ和歌山県はおくれてきたのか、その理由は何なのでしょうか。この際、明らかにしていただきたいと思います。
 また、耐震診断の実施計画の提出期限は八月末ということでしたが、県内ではどのような計画になっているのでしょうか。お示しをいただきたいと思います。
 さらに、実際の耐震補強工事についての国の財政措置はどのようなものでしょうか。不十分なら強化すべき要望を上げるべきではないでしょうか。答弁をお願いいたします。
 次に、事業所でのオゾンという物質の使用について伺います。
 オゾンとは聞きなれないと思うので若干説明いたしますと、酸素原子が三個集まってできた不安定な物質で、強力な酸化作用があり、これにより殺菌、脱臭、殺虫、漂白などの用途に使われています。一般の薬品などと比べると比較的安全な物質で、使用してもすぐに分解・消滅するため、近ごろでは食品などの殺菌にも好まれて使われているようです。
 先日、私のところに、ある食品工場で働く方から相談がありました。食品の消毒に使っているオゾン水というオゾンを溶かし込んでつくっている殺菌用の水でのどが痛んで仕方がないが、どうにかならないかということでありました。その後、いろいろ調べましたが、このオゾンの使用については労働安全衛生法でも明確な規制がなく、日本産業衛生学会というところが定めた〇・一ppmという指針があるにすぎません。一方で、大気汚染という点からこのオゾンの規制を見ますと、環境基準が〇・〇六ppm以下です。そして、〇・一ppmを超えますと光化学オキシダントの予報が出され、〇・一二ppmでは注意報、〇・三ppmでは警報が出ることになっています。ですから、一般に事業所内で使われる基準と大気環境の環境基準には大きな隔たりがあるわけです。
 先日、私は、このオゾン水を使っている模範的な食品工場を見てまいりましたが、そこでは食品の消毒とともに、夜間、無人になったとき、高濃度のオゾンで作業場内を殺菌しているとのことでありました。そして、作業場にはオゾン濃度が基準の〇・一ppmを超えたときに点滅する警告灯が設置され、また携帯用の測定器も備えられていました。工場長の話によると、夜間の消毒を行った後、朝、仕事にかかるときにオゾンが抜け切っていないと警告灯が点滅をしているので、作業にかかる前に十分換気をするとかの対応をしているそうです。また別の工場では、職員が濃度の設定を間違えてかなり濃い濃度になり、ホースなどのゴム類がぼろぼろになったこともあったそうであります。
 そこで、商工労働部長に伺います。
 県内の事業所でのオゾンの使用状況は把握されていますか。もちろん、主には国の労働基準監督署の仕事だと思いますが、県としても任意のアンケート調査をするなど、実態の把握に努める必要があるのではないでしょうか。
 また、先ほど述べたように法的な基準がありませんから、実態調査の上、必要なら国に対し法的規制を求めてはいかがですか。さらに、そうした法的規制ができていない現時点でも、行政指導で警告灯の設置や測定器の配備、安全教育など進める必要があるのではないでしょうか。答弁をお願いいたします。
 最後に、市町村合併について伺います。
 この六月に、政府はいわゆる骨太の方針第二弾を発表しました。その中では、市町村合併にさらに積極的に取り組むことと同時に、小規模市町村には仕事と責任を小さくし、都道府県がそれを肩がわりするなど、これまでの地方行政の根幹を揺るがすような内容が盛り込まれています。そうした中、総務省の私的研究会である地方自治制度の将来像についての研究会では、小規模市町村についての考え方の素案をまとめました。それによると、合併しない人口一万人未満の市町村から憲法上の地方公共団体としての法人格を取り上げ、区に格下げすること、行財政の権限を制約すること、さらに人口三千人未満の市町村は自動合併することなど、地方分権とは縁もゆかりもない行政的合併をちらつかせたひどい内容になっています。この素案が事実上、政府の地方制度調査会のたたき台の役割を果たしていて、今後、この案に基づいて法制化される可能性もあると言われています。こうした方針に全国町村会の山本会長は、小なりとはいえ、町村は住民サービスに責任がある、そこを認識していない論議だと反発しました。また全国町村議長会の会長も、極めて小さい町村との理由で都道府県の直轄にするのは論外だと、これも厳しく批判をしています。こうした国の方向がすんなり受け入れられないのは、当然であります。しかし、こうした議論をちらつかせることによって、小規模市町村に独立独歩の道の選択をあきらめさせる心理的効果は十分にあると言えるでしょう。
 全国には、小さいけれども、いや小さいからこそ住民と一体となって活気ある地域づくりに成功している市町村が幾つもあります。そうした市町村は、行政能力でも独自の景観条例をつくったり、職員の知恵と工夫が生かされる行政をしています。にもかかわらず、人口が少ないからだめなんだ、能力がないんだなどと言うのは、実際の地方行政を知らない中央官僚の傲慢な発言と言わざるを得ません。
 知事、あなたは強制的市町村再編とも言うべきこの流れをどう感じておられますでしょうか。率直な感想を聞かせていただきたいと思います。
 次に、市町村合併で、特に財政面から幾つか総務部長に伺います。
 最初に、地方交付税の算定がえ特例の問題であります。
 総務省は、合併後十年間は合併しなかった場合の普通交付税を全額保障、その後五年間で激変緩和措置がとられると説明をしております。しかし現実には、地方交付税の額は、毎年度ごとに基準財政需要額を算定するための単位費用、測定単位、補正係数などが総務省によって変更されており、これは合併後も当然変更がされていくものです。ですから、合併した場合の交付税算定がえの特例も地方交付税の算定を合併前の単位で行うだけのものであり、合併以前に交付されていた金額を十年間保障するものではありません。
 大変わかりにくいと思うので資料で説明をしたいと思います。──資料の左の上、一をごらんください。例えば、田辺広域七市町村が特例法の期限までに合併して、新しい市がつくられたとします。ここで、お配りした資料の一番ですが、上の欄では、総務省の言い分どおり平成十七年に合併しても、合併後十年の交付税は百七十六億円ですね。合併しない場合も合併した場合も百七十六億円が平成十七年から二十六年まで保障されて、その後五年をかけて本来の一本算定と言われる交付税の額に減らされるという流れになるわけです。これは総務省の言い分どおりなんですが。
 しかし問題は、合併した後も今やられているような小規模自治体への段階補正の見直し──段階補正というのは、標準的な自治体の人口を十万人として、それより人口が少ない自治体の交付税については割り増しして配分されるようになっているわけなんですけれども、この段階補正やその他の補正が縮小されれば、合併後の特例期間の十年以内でも新しい市の交付税額は削減されてしまいます。それをあらわしているのが一の下の方です。合併しない場合は、そういう段階補正の見直しなどがあって百七十六億円から百五十八億円に約一割、この十年間で減らされるという試算をしたわけなんですが、じゃ、合併した場合はこの百七十六億円が保障されるかというと、やはり合併しなかった場合と全く同じように百五十八億円に減らされてしまいます。これは、総務省の言っていることと矛盾するように思うんです。
 なぜ、こういうふうになるのか。これは、さっきも言いましたが、合併した場合の交付税というのは、もとの市町村がそのまま存在すると仮定して計算をして、それを足した額、合計額を十年間は保障するという仕組みだからであります。したがって、もとのそれぞれの市町村に来る交付税が少なくなるような見直しがあれば、当然、合併後の新しい市に来る交付税も減少することになるのであります。しかし、このことをきちんと理解できている首長や職員さんは少ないのではないか。
 先日、ある町の合併に詳しい職員にこのことを尋ねましたが、そんな計算になるとは知らなかったと言われていました。合併に詳しい職員でも勘違いする。私の試算が間違いなければ、合併前の交付税が全額保障されるなんてことはとても言えないと私は思います。
 総務部長に伺います。
 この試算は合っていますか、間違っていますか。答弁をお願いいたします。
 次に、合併二十年後の財政の姿がどうなるか、お尋ねをいたします。
 合併した場合の財政問題で最も重要なのは、合併後十五年たって先ほどの交付税算定の特例がなくなった時点で、極端な地方交付税の落ち込みにどう対応するかだと思います。
 ここに示したのは、新潟県のある合併協議会の長期財政シミュレーションです。──左の下側ですが、資料の二です。四つの町村が平成十七年度に合併をして、合併により職員を約二割減らして投資的経費については赤字にならない範囲で実施という、かなり厳しい前提のシミュレーションだと思います。下のグラフを見ていただきたいんですが、これは合併した場合としない場合で、普通建設事業が将来どうなるかを試算したものです。普通建設事業とは、道路をつくったり学校を建てたり、いろんな投資的な事業のことでありますけれども、この試算によると、合併した場合は、合併特例債などの活用で合併後十年までは従来の倍以上の事業を確保できますが、十五年たつと、やはり先ほど言ったように交付税が大幅に減らされ、これはつまり事業の元手になる一般財源が不足するものですから普通建設事業も合併前の二分の一以下に落ち込まざるを得ないという状況をあらわしたものです。そして、この財政シミュレーションは次のように結論づけています。「この結果は、単なる人件費の削減と財政支援措置による箱物建設だけでは、合併は所期の効果を十分に上げ得ないということを示しています。合併を成功に導いていくためには、投資効果を考えた特例債の活用を図るとともに、さらには事務事業経費の軽減に取り組んでいくことが重要となります」と、このように述べています。つまり、特例債も野放図に使っちゃだめですよ、また行政サービスはもっと見直して減らしなさいというようなことだと思います。
 一方、合併しない場合のシミュレーションは地方交付税が約二〇%も減額されるという相当厳しい条件で試算をしていますが、それでも二十年後には四町村合わせて二億円の赤字が出るという試算が出ています。合併した場合と比べて、私は随分有利な試算だと思います。
 田辺広域合併協議会でも、実はこのような試算が出されています。──右端の資料三のグラフです。こちらは一般職員の削減による効果が入っていない試算ですが、歳入から歳出を差し引いた額──点線の方です──これで見ますと、合併後十二年ぐらいで赤字になり、それ以後赤字が拡大していって、十五年後では約四十三億円にまで赤字が膨れる結果になっています。そういうもとで普通建設事業がどうなるかというと、これは上の実線のグラフですが、合併後十五年の数字では年間三十四億円の事業費しか確保できない。
 実は、現在、田辺広域七市町村では、平成十二年度で百七十七億円の事業が実施されています。それとこの三十四億円を比べますと、約五分の一に激減をするわけです。五分の一に事業費を減らしたとしても、単年度の収支は、先ほど見ましたように十五年後には赤字になってしまっています。ということは、合併十五年後に事業量を現状維持か少し削減する程度を維持しようと思ったら、かなりの借金をしなければならないという状況があらわれてくると思います。
 合併特例債によるバブルの後は極端な緊縮財政、借金財政となり、財政破綻が懸念されるというのは、この二つのシミュレーションから私は大変心配しているところであります。
 そこで、総務部長に伺います。
 地方自治体にとって、合併特例債のような巨額の地方債を短期間に使うというのは後年度の財政を硬直化させ、必要な公共事業でさえできないような財政状況になるのではと私は危惧していますが、このことについていかがでしょうか。
 また、今後、それぞれの合併協議会で財政のシミュレーションをする場合、私は少なくとも合併特例債の返済がほぼ終了する二十年後まで行うことが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。答弁をお願いしたいと思います。
 この合併問題の最後に述べたいことがあります。
 先日来、西牟婁郡大塔村の富里地区で、産業廃棄物の処分場建設計画が持ち上がっています。この計画地の下流には日置川が流れているんですが、それに対し村長さんはこのような意見書を県に提出しました。「県下的にも数少ない清流であり、現在まで保存された良い環境を「将来の世代に引き継ぐ責務を有している。」と考えています。依って(中略)産業廃棄物最終処分場設置については、同意出来ません」、このような明確な反対の態度を表明されています。
 今、産廃の処分場をめぐって各地で行政と業者を裁判する中で、行政側が敗訴するという事例も出ているもとで、この明確な意見表明は、私は大変勇気のある行政の態度だと思います。しかし、こうした地域に根差した判断が、田辺広域のような広大な行政になったときに本当にできるかどうかというと、私は実際は不可能だと思います。
 私は、これまで合併問題を幾度となく取り上げる中で、自分なりに研究もし、合併先進地と言われる兵庫県篠山市や香川県の讃岐市も見てまいりました。また、小さくても元気な自治体の例として、高知県の馬路村、長野県の栄村、小布施町なども調査いたしました。そして、今はっきり言えるのは、住民自治という点から見ても、また将来的な財政破綻の心配から、今論議されているこの田辺の広域合併についてはどう見ても住民の利益にはならないという判断をしています。こうしたとてつもない大きな広域合併計画には、私は明快に反対の立場を表明して、この問題の締めくくりといたします。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(宇治田栄蔵君) ただいまの高田由一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、食と緑の工場特区についてお答えをいたします。
 国において法制度化を目指している構造改革特区は、規制緩和による経済活性化を基本方針とし、自治体等からの提案を踏まえ、現在具体的な内容を検討しているところでございます。
 本県といたしましては、地域特性を生かした和歌山らしい特区構想ということで、緑の経済特区というものを提案したところでございます。この内容は、定住促進タイプ、交流促進タイプ、企業促進タイプの三タイプによって、都市から地方への人口の逆流動や交流活性化を図るものでございます。
 コスモパーク加太につきましては、企業促進タイプの一つとして食と緑の工場特区構想と位置づけ、その中で民間資本の活用によるトマトの大規模生産を通して雇用の確保と地域の振興を図ることとしております。
 次に県内農業への影響でございますが、この大規模温室の立地が実現いたしますと、和歌山県は、現在の県内生産量と合わせ、近畿圏でのトマトの主要産地となります。産地化が進みますと、市場での競争力の強化や加工産業への発展の可能性などを秘めておりますので、県内の生産者と連携することで相乗効果を生み出し、トマトと言えば和歌山県と言えるようなブランドの形成を目指してまいりたいと、このように考えております。
 次に、住民基本台帳ネットワークについてでございます。
 まず、ネットワークと個人情報保護法の関係ですが、住民基本台帳法は個人情報保護の基本法である個人情報保護法に対する個別法と考えられるものでございまして、住民基本台帳ネットワークにつきましては、住民基本台帳法により関係職員の守秘義務違反に通常より重い罰則が適用されるなど、個人情報保護法と同等あるいはそれ以上の個人情報保護措置が講じられているものでございます。しかしながら、住民基本台帳ネットワークの運用を契機といたしまして、情報化社会の進展に伴ってプライバシー保護に対する漠然とした不安、懸念があるということも事実でございますので、これらの不安を払拭する意味で早期の個人情報保護法制の整備が必要であると考えております。このような趣旨から、全国知事会等におきましても、個人情報保護法制の早期整備に関する緊急決議をいたしております。今後、継続審議となっております個人情報保護法案が国会において審議がなされるものと期待をいたしております。
 次にネットワークへの参加についてでございますが、住民の選択制、市町村の任意制の参加方法を認めるとすれば、一部の住民の本人確認情報が記録されないこととなり、全国共通の本人確認を可能とするシステムの機能を十分果たすことができなくなったり、住民の転出入に伴って複雑な事務処理を行わざるを得ないなど課題があり、その結果、事務処理時間の増加や高コスト化により、かえって住民の利益、利便性を妨げるおそれがあると考えられます。
 県内市町村におきましては、このことを十分ご理解いただき、ネットワークの適正な運営にご尽力いただいているものと考えております。
 次に、市町村合併についてのご質問でございます。
 分権時代にふさわしい自治制度のあり方について、国においては地方制度調査会を中心に議論が進められているところでございます。地方分権を進め、少子高齢化の進展、人口減少に直面している状況にあって、二十一世紀における我が国の国家像をどのように構築していくかは大変重要な課題であり、このような観点から、合併後の都道府県や市町村のあり方について私もかねてから問題提起を行ってきたところであり、議論が深められていくことは結構なことであると、このように考えております。
○議長(宇治田栄蔵君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 事業所でのオゾン使用についての三点でございますが、労働安全衛生法におきましては、事業所内で使用されるオゾンは、健康障害を生ずるおそれのある化学物質のうち、特に有害性が強いとされる作業環境測定対象の化学物質として規定されてはおりません。しかし、労働基準監督署においては、化学物質等による労働者の健康障害を防止するため、必要な措置に関する指針に基づき、国の所管する社団法人日本産業衛生学会がオゾンの使用に当たって基準としている〇・一ppm以下を許容濃度として事業所の指導を行っていると聞いております。
 県といたしましては、使用状況の把握はしてございませんが、議員ご提言の測定器や警告灯の設置を含む三項目につきまして、機会をとらえ、労働局に対し申し入れを行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(宇治田栄蔵君) 総務部長宮地 毅君。
  〔宮地 毅君、登壇〕
○総務部長(宮地 毅君) 市町村合併についての二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、交付税算定がえ特例の関係でございますが、お示しいただきました試算につきましては、試算の前提となります各年度の算定方式が具体的に実際にどうなるかがはっきりしておりません。そのため、具体的な数値につきましては、算定方式が実際どうなるかによって変わってくると考えます。
 しかし、議員のご見解のとおり、地方交付税の算定がえの特例は、毎年毎年、その年の算定方式により、合併後の市町村が合併しなかったものとみなして十年間算定されるものでございます。総務省の説明も、「合併しなかった場合の」というふうにされておりまして、「合併前の」とはされておらず、まさにこのことを説明しているものと考えております。
 もし、算定方式が削減の方向で改正されました場合には、合併した市町村でも合併しなかった市町村でも削減されることになるところでございまして、こうした厳しい状況を踏まえ、行財政の効率化に資する市町村合併は重要であると考えております。
 次に合併二十年後の財政の予想についてでございますが、議員ご指摘の田辺広域合併協議会の試算は、市町村建設計画の根幹の一つとなる財政計画を立てる上で参考とするため、合併特例債の上限額すべてを発行した場合の試算であると認識しております。
 今後、市町村建設計画の策定作業が進み、事業の重点化や実施時期などが明確になってくる中で、中長期的な見通しも含めた財政計画が明らかになってくるものと考えております。
 また、合併後の市町村につきましては、行財政を取り巻く環境の変化を的確に反映をさせながら絶えず財政計画を検討し、健全財政の維持に努める中で、元利償還の際により有利な交付税措置がなされる合併特例債を有効に活用し、町づくりを進めることが肝要であると考えております。
○議長(宇治田栄蔵君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 学校の耐震診断についてお答えいたします。
 学校施設は児童生徒の学びの場であると同時に、非常災害時には地域住民の応急避難場所ともなり、その安全性が確保されていることが重要であります。
 昭和五十六年以前に建築された小中学校の校舎について、従来から、設置者である市町村に対し耐震診断を進めるよう働きかけを行ってきたところですが、校舎改築計画との関連や財政事情等のために現在のところ低い実施率となっていることは事実であります。
 このたび、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法が成立した中で、先般、市町村長に対し、学校施設の耐震診断を早急に実施するよう強く要望いたしました。各市町村においては、八月末に平成十五年度からの三カ年でほぼ全部の校舎の耐震診断を実施する計画を策定したところです。
 今後、当該計画に基づき早期に完了できるよう市町村に対して積極的に指導するとともに、国に対しても必要な予算措置を働きかけてまいりたいと考えております。
 なお、県立学校につきましては、平成十三年度末現在で約六二%が実施済みとなっており、今後さらに計画的に進めてまいりたいと存じます。
○議長(宇治田栄蔵君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十六番高田由一君。
○高田由一君 答弁をいただきましたが、まず先に教育長さん。耐震診断なんですけれども、今、ご答弁にあったように、やはり財政の状況というのが一つのネックになってできていないというのは事実だと思うんです。国へ十分な予算措置を要望するとともに、ぜひ県からも応援を一遍考えていただけたらというのが現場の状況だと思うんです。ぜひ、これは要望しておきたいと思います。
 それから、ちょっと食と緑の工場特区で知事と議論をしたいと思うんですけれども。
 私、質問の最初には、大規模な株式会社に農地を取得させるのが知事さんの特区の一つのねらいではないかということを質問として申し上げたんですが、それにどうも明確に答えられなかったように思います。その点、もう一度ご答弁をお願いします。
 今のご答弁の中では、近畿圏でのトマトの主力産地に和歌山県がなるんだ、トマトと言えば和歌山県なんだというようなことで言われたんですけれども、たしかカゴメさんが六千トンつくって、大きな産地になると思うんですが、八千トンしかない県の生産に対して、さあ小さな農家も一緒になって和歌山県をトマト王国としていきましょうよということをカゴメさんが言ってくれるかどうかというと、私はそれは絶対できない話じゃないかと思っているんです。もしそういう意図がカゴメさんにあるのなら、また行政の側にあるのなら──この特区の研究会というものにも肝心の農業団体なんかは一切入っていないわけですよね。そんな意見をまだ聞いていないまま、この間の記者発表では十六年にも着工したいと、これは部長ですけれども言われていましたよね。私は、このやり方というのは、やはり県内の農業者の理解は得られないんじゃないかというふうに思います。もしそうなら、今後、そうした県内の農業団体やトマト生産者たちとの対話というのは日程として入ってくるのかどうか、このことも改めてお伺いしたいと思います。
 それから、知事はカゴメの会社の構想というのはご存じだと思うんですけれども、以前から、全国を対象にした大型温室産地ネットワーク構想というのを打ち出しています。その第一弾が茨城県の美野里町でやられていて、これはカゴメが約四億円で温室を建設して、それを農事組合法人にリースするというやり方でやっています。彼らの会社の計画によると、こうした農場を全国に十カ所、五十法人つくれば年間四万トンの生産が可能だというふうに言っています。トマトと言えば和歌山、このように言われましたけれども、私は、カゴメさんはそんなことは考えていないと思います。温室団地を全国展開して、強いて言えばトマトと言えばカゴメという、そういう体制をつくろうとしている。各地の温室を中央本部が管理して、アグリフランチャイズチェーン構想と言うらしいんですが、まあコンビニみたいなものです。だから、カゴメには昨年の農地法改正や今回の特区構想は、私は大変うまみのある話だと思うんです。
 私は、この質問をするに当たって担当課に聞いたんですが、なぜわざわざコスモパークにやるのかと。そうすると担当課は、泉南にも遊休地はいっぱいあって、そこでやられても同じ結果になるんじゃないですかという返事なんですけれども、まさにそうだと思うんです。大企業の力をもって農業経営に参入すれば、コスモスパークでやろうが泉南でやろうが茨城でやろうが、家族経営のトマト農家は大打撃を受けることは、私は同じだと思うんです。ですから、和歌山県が大企業の農業参入の露払いをさせられるような、そういうような特区構想になっていないか。私は、そういう特区なら認められないというふうに意見を表明しておきたいと思います。
 再質問の部分だけ、答弁をお願いします。
○議長(宇治田栄蔵君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまのご質問ですけれども、株式会社に農地をということを考えているんじゃないかというお話ですが、コスモパーク加太は雑種地ということですので、これは農地ではありません。
 それから、基本的には、もともと特区構想というものが先にあってこの構想が出てきているんじゃなくて、やはり和歌山県として何とか雇用を確保していきたいと。今、非常に不景気な中で、地元の人の働き口がないと。そういうふうなときに、なかなか製造業が新たに立地することは難しい。そういうときに、こういうふうな環境に優しい、ある意味で和歌山のイメージアップにつながるようなものが出てきて、これは非常にいいんじゃないかということが一つあるということです。
 それからもう一つは、ご案内のように、コスモパーク加太につきましては借入金で造成を行っていて、そして後、ずうっとたくさんの人を抱えていろんな経費が積み重なってきて、今、はっきり言ってにっちもさっちもいかなくなっている中で、いろんな方面に手を伸ばして、一番和歌山に合ったような何か処分方法はないかということを考えてきている中からこういうものが出てきており、大方のご賛同をいただいているというふうに私は考えております。
 それからまた、和歌山県が日本のトマトの大産地になるかどうかは別として、仮に和歌山県が手をおろしたら、必ずどこか別のところが手を上げて同じようなことが行われるわけで、和歌山県として──私は和歌山県の行政を預かっておりますので、和歌山県の雇用確保ということを一番大事に考えたいということでこの問題についてこれからも頑張っていきたい。
 ただ、いずれにしましても、地元の農家──これは全国レベルの話ですので、和歌山県でトマトをつくっている人にじかにすごく大きな影響が出るというふうには考えませんけれども、しかしながら、皆さんに理解を求めていくということは情報公開の時代には非常に大事なことだと思っておりますので、適宜、県民の皆様にこの進捗状況なんかを情報公開しながら対応していきたいと、このように考えております。
○議長(宇治田栄蔵君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 二十六番高田由一君。
○高田由一君 トマトの問題については、雇用確保が大きなポイントだというふうに言われたんですが、私は、やはりこの農業特区の中でも、今、そうした大企業の農地取得という問題で、ここに先鞭をつけて、そこを穴にして突破していこうという戦略があると思いますから、それを和歌山県の行政として進めるというのは本当に注意をしていただきたいというふうに考えています。
 そのことだけ申し上げて、終わりたいと思います。
○議長(宇治田栄蔵君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で高田由一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十七分休憩
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