平成14年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(村岡キミ子議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○副議長(堀本隆男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十七番村岡キミ子君。
  〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 お許しをいただきましたので、早速、質問に入らせていただきます。
 まず初めに、紀伊丹生川ダム問題についてお尋ねをいたします。
 紀伊丹生川ダムの建設計画中止については、昨日、木下先生からご質問がございましたので、ダブるところもあろうかと思いますけれども、ご了承願いたいというふうに思います。
 紀伊丹生川ダムの建設計画は、このたび国土交通省近畿地方整備局から中止の発表がありました。六月五日の紀の川流域委員会にも報告されたようであります。
 知事は、今議会のあいさつで以下のように述べておられます。「当初の計画目的である治水、利水、河川環境面における紀の川流域の整備については、今後とも国において適切な対応が図られるよう強く求めてまいりたい」と申されています。
 私は先日、このダム計画で水没予定地とされてきた九度山町北又地区や橋本市の宿地区に参りまして、住民の方々からご意見を伺ってまいりました。知事の発言からは、この二十数年間もの長きにわたって、ふるさとがダムの底に沈んでしまうのではないか、沈んでしまうところだからと行政の施策から放置されてきた住民の皆さんの心に思いを寄せる言葉がなかったこと、これは大変残念に思った次第です。
 また、鈴木近畿地方整備局長は、「水没予定地にお住まいの方を初め、地元市町に長年にわたり大変なご心労、ご苦労をおかけいたしました。今後、誠意を持って説明させていただき、和歌山県の協力も得ながらご理解を賜りたいと思っています」とのコメントを出しています。本当に住民の方々は、大変な心労、苦労をされてきたと思うわけです。
 このダム計画は、一九七四年の紀の川工事実施基本計画で治水対策として紀伊丹生川でのダムの必要性が指摘され、県が七七年から七九年にかけて和歌山県の水需要と水資源活用構想に関する調査を行い、八〇年から八三年にかけて紀の川水系水資源開発調査が行われてきました。国は、七九年から予備調査に入っております。八五年に県と国との間で国の直轄事業として実施計画調査に入ることを確認したわけです。そして、紀伊丹生川ダムからの水を大阪へ送る利水協定が大阪府との間で結ばれ、八九年から国の実施計画調査が始まっております。このように、紀伊丹生川ダムは和歌山県の計画として始められ、国の直轄事業となったものです。和歌山県としても、住民の皆さんに本当に長期間苦しい思いをさせた責任があるはずです。
 ダム予定地は、橋本から高野山に通じる国道三百七十一号線が走っています。ところが、とても国道とは言えない。自動車が交互通行できない箇所が無数にある山道です。これもダムができればと引き延ばされ、あるいはダムができなければ現地の現道整備をしないとされ、放置されてきたところです。また、北又地区のあるお年寄りの方が言っておられました。「どうせ沈む家だからと改築も修理もしないでほうっておいたが、これからも住み続けることができるとなったのだから、あちこちの修理をしなければ」と、寂しくおっしゃっていました。また、昨年の六月、北又橋の流失で集落に入るまで大変遠回りをしなければならず、不便で心配な生活が続いてきたところです。宿地区では、家に車の入らない道のままになっていて、家で病気になったら下の国道までおりる道がないと話しておられたのも印象的です。
 玉川峡は県の指定する数少ない名勝の地でございます。今、アユが解禁となり、釣果も多いとのことです。アユのすむ清流を守るためにダム建設に反対の決議を上げて頑張ってきた玉川漁協は、これからは釣り客の皆さんが楽しんでくれる玉川峡にしていくと話しておられました。玉川峡がダムによって汚されないで残されたことは、本当に喜ばしいことではないでしょうか。
 国土交通省の職員は建設中止を発表した後、すぐに北又や宿地区に来られて住民の方に説明をしたようですが、果たして和歌山県は、これまで積極的に協力してきた、そういう点からも現地の方々への説明を行ったのでありましょうか。国道三百七十一号線の現道整備や待避所の設置など、住民の皆さんが望んでおられる問題について早急に対応していただきたいと思います。土木部長、いかがでしょうか。
 また、住民の方や関係者から意見を聞く場や会議を設定する考えはございませんか。企画部長の答弁を求めるものです。
 私は、何回も丹生川に行ってまいりました。山の土砂崩れが北又地区に入るところから各地で見かけることができました。山肌が大きく崩壊して大きな根っこが谷底に幾つも転がっています。水没するからと、災害復旧も十分にされないまま放置されてきたのではないかと思います。緑の雇用事業をおっしゃる和歌山県が土砂災害を放置することは許されないと思うのです。昨年六月に北又橋が流失をしたのも倒木が橋げたに当たって橋が落ちてしまったのですから、山と川を守り、住民の皆さんの安全を守るためにも、川に入り込んでいる土砂や木の根っこ、倒木を処理することがまず必要だと考えますが、土木部長、見解を求めたいと思います。
 次に、教育長と商工労働部長にお尋ねをいたします。
 ご存じのように、玉川峡は県内に六カ所しかない県指定の名勝の一つです。保護をするために指定をしてきたのでありますから、訪れた方々に名勝としての値打ちや保護の意義を呼びかけることが必要ではないかと思います。とりわけ、この間、紀伊丹生川ダム建設を考える会の皆さんがクマタカの営巣や四十八石というすばらしい奇石を発掘、あるいは鍾乳洞が発見されるなど、これまた保全が望まれるところです。また玉川峡には年間二十五万人の方々が訪れるということですから、貴重な自然が残された地域でもあります。自然を残したまま都会の方に来てもらえる観光策を求めたいと思います。教育長と商工労働部長の答弁をお願いするものです。
 住民の方の中には、ダムの中止で公的補償を求める声もたくさんございました。国土交通省の職員は「補償はしない」とはっきりと言っているそうです。住民の皆さんを長い間苦しめておきながら、こんな言い方はないと私は思うのです。鳥取県では、一昨年、三朝町に計画していた中部ダムの建設を中止し、それに伴って五年間で百六十八億円の地域振興策が立てられたと聞いています。その中で、水没予定地だったため住宅改修も手につかなかった住民に配慮して一戸当たり三百万円を上限とした住宅改修への補助金や高齢者のバリアフリー対策のための補助金、上限が八十万円だそうです。また、二つの集落に対して県が五千万円ずつ、町が一千万円ずつ援助しているそうです。地域の公民館も今年度に完成すると聞いていますし、圃場整備を援助するなどの振興策を積極的に進めていると聞いています。
 国と協力してダム建設計画を進めてきた和歌山県として、こうした鳥取県の姿勢に学んで国に公的補償や地域振興策を要望するとともに、県としても誠実に対応することが今大切ではないかと考えますが、企画部長、見解をお示しください。
 二つ目の質問に入ります。
 県民の健康を守り、さらに水準を向上することについて、ご質問を申し上げていきたいと思います。
 だれでも、健康でありたい、心豊かに暮らしたいと願っています。高齢化が進む中にあっても、健康を守り発病を予防することが何より大切なことではないでしょうか。
 国は、第三次国民健康づくり対策として「健康日本21」を定めています。目標達成期間を平成十二年度から二十二年度までの十年間とし、すべての国民が健康で明るく元気に生活できる社会の実現と、早死にの減少、痴呆や寝たきりにならない状態で生活できる期間延伸などを目的に健康づくりを総合的に進めるとしています。平成十二年からの対策でありますから、本県においても具体的な計画が策定され、そして市町村とともに進められているのでありましょう。どのような特徴ある和歌山県の計画になっているのでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
 ふだんから病気にならないように気をつけるとともに、病気の原因となるものを予防、改善することが大切だと思います。すなわち、日常生活を見直してみることだと思うのです。そして、定期健診などで病気を早く見つけること、病気にかかったら治療を最後まできちんと受け健康を取り戻すことが何よりです。
 本県における生活習慣病による死亡率は、人口十万人に対し悪性新生物──すなわちがんですが──全国で六番目、心臓疾患で見ると全国第二位、脳血管疾患で全国二十三位です。中でも、胃がん、肺がんは全国で三位、四位、そして大腸がん八位と高い水準にあります。女性特有の子宮がんは全国第四位と高く、乳がんは第四十二位と低い位置にありますが、しかしこれもまた改善が必要だというふうに思うわけです。
 四十歳以上の老人保健事業による基本健康診査を見てみますと、平成十一年度の受診率は、全国平均が四〇・四に対し和歌山県は二八・四で、全国四十三位という大変おくれた部分にあります。平成十二年度についても、少しは改善されたものの全国水準にはほど遠い位置であり、これを急いで全国水準までに引き上げるための対策が求められるのではないでしょうか。
 住民健診は市町村事業でありますけれども、市町村においてもこれまで受診率を高めるための取り組みがさまざまな形で進められているようです。そこで最も大事なのは、県が市町村とご一緒につくり上げてきた県民総合健診センターが非常に大きな役割を果たさなければならない、このように思うわけです。このセンターは、県を初め、和歌山市を除く県下全市町村の出資と県医師会や病院協会、県共済連、農協連、県漁連、生命保険協会、県保連、そして対がん協会、結核予防会などの出資金によって設立され、運営されてきたところです。
 仕事は、検診車による健診活動を中心に、各市町村や事業所の要望に沿って活動を実施していると聞いています。これまでの豊富な経験と高い技術を生かしたさらなるセンターとしての住民健診に努力されることが大いに期待されるところです。最近は医療機関においても健診事業を行うようになっていますから、センターから医療機関に変更する市町村もふえてきていると聞きます。これは料金問題や、あるいはなるべく近いところでいつでも健診が受けられるという利便性といった条件も考えられるところですが、どのような原因によるのでしょうか。非常に疑問に思うところです。
 県は、健診事業の中核である健診センターの今後をどのように充実発展させようと考えておられるのでしょうか。関係部長の答弁をお聞かせください。
 健診率を引き上げるために、私は提案をしたいと思います。これまで桃山町や貴志川町ほかの幾つかの町村で健診率を引き上げるためいろいろな工夫をされていると聞きます。こうしたすぐれた経験を他市町村にも広げることはもちろんのことでありますが、この際、県下に幾つかの自治体をモデル地域に指定し、住民参加による健康づくりを進められたらいかがなものでしょうか。この際、県は積極的な財政支援も含めた支援をすることも忘れてはなりません。関係部長の所見をお聞かせ願います。
 次に、臓器移植問題についてお尋ねをしていきたいと思います。
 一九九七年七月十六日、臓器移植法が制定をされ、十月十六日から施行されてきました。そして、早くも四年八カ月が経過をしているところです。これまで十九件の脳死患者から臓器提供を受けて移植が行われてきたと聞きます。今なお移植を受けるため日本臓器移植ネットワークに登録して待機している患者は、五月三十一日現在、心臓で六十名、肺で五十二名、肝臓で四十九名、腎臓では一万二千八百八十名、膵臓が五十六名に及んでいる状態にあります。
 旧厚生省保険医療局は、我が国における脳死臓器移植の現状を、年間の脳死者数三千人から八千人と言っており、そして肝臓移植の必要な患者数は年間約三千人、心臓移植の必要な患者数は年間約六十人から六百六十人いるとしています。法律施行に一点の光を見た思いで私は期待をするものですが、助かる唯一の移植を待っている患者にとっては、待てる時間的余裕には限界があります。一刻も早く移植手術が可能となる環境を保障することが望まれるところです。
 私自身も、人の死という生命の尊厳にかかわる重大な問題として改めて認識を深めなくてはと考えている次第です。臓器移植について国民的理解と合意を得るにはまだまだ時間がかかると思うのですが、行政や関係する医療機関などと国民が共同してさまざまな取り組みを強化することが急がれるところです。
 そこで、移植法第三条に「国及び地方公共団体は、移植医療について国民の理解を深めるために必要な措置を講ずる」ことを責務として明記しているところです。本県におけるこれまでの取り組みと今後の具体的取り組みについて、関係部長の答弁を求めるものです。
 また、アメリカを初め欧米諸国では、既に一九七〇年代後半以降、法制化が進みました。脳死移植は通常の医療行為として認められ、その事例も年間三千から四千件に上ると伝えられています。昭和五十九年から平成十二年までの十七年間に、心臓移植を受けるため四十八名の患者が海外渡航しているそうです。十五歳以上を臓器提供の有効年齢と定めているために十五歳未満の子供からの臓器提供は受けられないことから、生きたい、助けたいという強い願いは海外に頼る以外ないのが現実ですし、それでなければ死を待つという耐えがたい状態を患者や家族に強いることになっています。命を救う機会が子供にだけ奪われている現状をこのまま放置していいのか、疑問でなりません。
 今、国ではこうした移植法の改正が検討されていると聞いているところです。どのようなことが検討されているのでしょうか。わかる範囲で結構です。関係部長からお聞かせ願いたいと思います。
 さて、既にテレビ、新聞、ビラ等でご存じのことと思いますが──こうしたビラを皆さんごらんになったことがおありと思います。(現物を示す)和歌山市在住の青陵高校一年生、竹井俊隆君の心臓移植を受けるための医療費を初めとした諸経費支援について、この場をおかりしてお願いをするものです。
 竹井俊隆君は、現在大阪の国立循環器病センターで拡張型心筋症のため補助人工心臓を装着して国内での心臓移植を待って一年間が過ぎてまいりました。しかし、これ以上国内での早急な移植が望めないため、並行してアメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLA附属病院での移植を受けることになっています。しかし、渡航費や手術費、そして滞在費など、約九千万円という個人では到底負担できない巨額が必要となりました。一日も早く渡航できるようにと「としたか君を守る会」が結成をされて、会は全国にインターネットやさまざまなマスコミを通して訴えています。そして、大阪府下あるいは和歌山の各駅、スーパーなど、また労働組合や各種団体、そして高校など、さまざまな方々に協力をお願いして募金活動を進めているところです。県庁においても、正面玄関や北門、あるいは県庁内でも多くの方々に協力をいただきました。六月二十日、きのう五時現在で三千十九万円余りの募金が寄せられました。これまで募金を寄せていただいた皆様に、この場から感謝のお礼を申し上げたいと思います。そして、一日も早く渡航できるように、さらなるご支援を心からお願いをしたいと思います。どうかよろしくお願いをいたします。
 ここで、国内移植を受けた場合と海外での移植にかかる諸費用を調べてみました。国内では、心臓移植手術費として保険適用されないため千五百万円、患者負担です。ただし、国からの補助金として大学研究費あるいは高度先端医療として一千二百万円が支給されますので、自己負担金は三百万円です。臓器運搬のための飛行機チャーター費百万円から二百万円、移植後の負担は各種健保を使用し、二割から三割負担となります。これで国内では自己負担が五百万円から七百万円と、決して負担は軽いものではありませんが、必要であります。
 一方、海外ではどうかと言いますと、すべて患者負担となるわけです。医療費として──いわゆる移植手術費ですが、これを海外の病院に前金として払わなければ医療ビザが申請できないことになっているそうです。これに五千二百万円から六千七百万円が必要とのことです。医療費予備費あるいはCCU一日数十万円から百万円、そして退院後の通院治療費一千二百万円から一千五百万円、渡航費に五百万円から一千七百万円、そして現地滞在費百七十万円から三百万円が少なくとも必要ということ。そして、それに加えて事務経費百万円から三百万円だそうです。合わせて七千万円から八千万円、国内の十倍の費用が必要になるというびっくりしたお金でございます。
 治療法として移植しかない、しかも早期に移植が国内で望めない現状と海外に望みをかけざるを得ない現実に、せめて渡航費あるいは医療費負担に助成制度の創設を国に求めていただきたい、このように思うわけです。同時に、県においてもできる限りの助成をお願いしたいというのが私の願いであります。知事の心温かい答弁を期待し、この問題について質問を終わりたいと思います。
 最後に、有事法制に関連して幾つかお尋ねをいたします。
 去る六月十二日、全国の知事また副知事が首相官邸で、有事関連三法案をめぐって国の方からの説明と関係閣僚との間で意見交換があったと報道がありました。その後、全国知事会が国に対して武力攻撃事態対処法の法制に関する緊急提案が要望として出されたところであります。この要望書は、我が国が直接武力攻撃にさらされる事態に至ったときは国、地方が協力してその事態に対処する必要があるという前提から問題を提起したものでありますが、内容そのものは現在提出されている法案の極めて重要な部分に地方の安全と住民福祉をつかさどる行政責任者としての疑問を呈したものであり、私も大きな関心を持って読ませていただきました。
 その要望の第一は、武力攻撃事態の概念を一層明確にされたいというものであります。それはまさに法案の核心部分であろうかと思います。全国の知事の皆さんからこのような質問が出されるということは、法案の核心部分の概念がいかにはっきりしていないかを物語っているのではないでしょうか。
 同時に、国会の議論の中で明らかになった幾つかの点で、私は大きな懸念を抱くものであります。それは、この法案が日本が直接攻撃を受けたときへの対処というだけでなく、周辺事態法によりアメリカ軍の戦闘作戦行為に日本が後方支援する際、日本の領土外においても、相手国からの武力攻撃が予測されたり攻撃のおそれがあると判断されたとき、この有事関連法が発動されるという点であります。つまり、日本の領土への武力攻撃でなくても、あるいはまだ攻撃にさらされていなくても、先制的に戦争態勢に入るということになります。政府も再三認めるように、あるいは中谷防衛庁長官の国会答弁にもあるように、日本がどこかの国から大規模な武力攻撃を受ける現実的な可能性はこの短期間の間には考えられません。しかし、周辺事態法との関連でアメリカとの共同作戦により紛争に巻き込まれるということは、それよりはるかに現実的です。そのような際、この法案が発動されるとするならば、それは日本を武力攻撃から守るということとは全く違った内容となってまいります。明らかに憲法にも反することであると、私は思うのであります。
 全国知事会が国に対して最も肝要な武力攻撃事態の概念が不明確であると疑問を呈し、慎重審議を求めたことは大変貴重なことだと評価するわけでありますが、今申し上げましたような内容がこの法案に含まれている以上、県民の安全、福祉の立場から知事としてこの法案は認められないとすべきだと私は思いますが、知事のご所見を伺いたいと思います。
 次に、要望事項の二番目についてです。
 それは、国と地方公共団体の責務や役割分担に関係する点です。知事も記者会見で「よく見れば都道府県の仕事もはっきりしていない点もある」と語っておられますように、全国知事会がこの点を明らかするよう求め、さらにそれを定めるに当たっては地方公共団体の意見を十分に反映することを求めたのは当然のことではないでしょうか。
 ここには二つの問題があると思うのです。一つは、この法案には自治体の権限に関する点で極めて重要な問題があるにもかかわらず、法案作成に当たって地方の意見を聞き取っていないということ。初めから、地方自治、地方分権の軽視あるいは無視の姿勢がここにあります。二つ目は、そこからの当然のことでしょうが、法案そのものに地方自治、地方分権の無視または軽視が色濃く出てきているということであります。法案は、武力攻撃の事態に際して地方自治体や指定された指定公共機関が国と協力をして必要な責務を実施する義務を規定しています。この点に関してその内容が不明確であると全国知事会は指摘しているわけですが、私はさらに自治権の侵害が重大な問題だと思うのです。それは、自治体が国と意見を異にして国の指示に従わないときにはそれを国が知事にかわって地方を無視して代執行できるとしている点であります。地方自治体の命運にかかわる事柄がまともに自治体の意思を問うことなく決定をされ、自治体はそれに強制的に従うことが命ぜられる仕組みになっているのです。これは国の戦争行為に直接影響を受けるその地域住民の意思を問うことなく当該地域を戦争協力に動員するものであり、憲法が想定する地方自治の理念に反するものだと考えるのです。
 そこで、鳥取県の片山知事は「手足を縛られたまま自治体が責任だけ背負わされるのは耐えがたい」と、このように述べて大きな懸念を表明しておられます。知事にあっては、この点についていかがお考えでしょうか。
 三番目の問題として、全国知事会議は国に対して、国民の不安を払拭して国民的な合意が得られるよう国会での十分な議論を尽くされたいとしています。私も大変貴重な意見だと考えますが、知事に対してさらに一歩踏み込んだ姿勢をお願いしたいと思います。
 今提案された有事三法案は、その内容から見て憲法を逸脱するおそれが十分に心配されるところであります。このことが各界からたくさん疑問点を投げかけられていますし、法案自体の不備が指摘をされているところであります。有事法制が必要だとされる立場からもそのような意見が多いことも、知事はご承知のことと思うわけです。ついては、国家百年の計にかかわることでもありますから、この三法案は一たん廃案にされることを求められてはいかがですか。お答えいただきたいと思います。
 これで、第一回の質問は終わります。
○副議長(堀本隆男君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、臓器移植問題についてお答えを申し上げます。
 臓器移植については、臓器を提供していただく方の善意に支えられておりますが、現状では国内での臓器提供者が少ないため、今回のように海外に渡航をされる方や国内で臓器移植の機会を待たれている方が多いことも認識しております。
 今回の件につきましては、巨額な経費も必要なことから、ご家族や多くの県民の方々が募金を初めさまざまな形での支援活動をなさっておられます。県といたしましては、このような状況を国に伝え、臓器移植医療についてのさらなる充実を要望してまいりますとともに、できる限りの努力をさせていただきたいというふうに考えております。
 次に有事法制についてでございますが、一括してお答えを申し上げます。
 我が国が武力攻撃事態に至った場合には、国民の理解と協力のもと、国、地方が相互に協力して対処することが肝要であると考えております。しかしながら、現在国会で審議されております法案は、武力攻撃事態の概念に不明確さが残るとともに、具体的な地方公共団体の責務や役割分担並びに権限が明確でないこと、さらには国民の生命、身体及び財産の保護を図る国民の保護のための法制が先送りになっていること等が地方公共団体はもとより国民の不安が払拭されない要因であると考えておりまして、こうした地方公共団体や住民にかかわりの深い事項を早期に明確にするとともに、地方の意見が十分反映されることが必要であると考えております。
 いずれにいたしましても、国民的合意が得られるべく国会で十分な議論を尽くすことを期待するとともに、私といたしましても、こうした観点から今後とも国に対して機会あるごとに意見を申していきたいというふうに考えております。
○副議長(堀本隆男君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 紀伊丹生川ダムに関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず国道三百七十一号の現道対策につきましては、地元の意向を聞きながら必要なものから優先順位をつけて順次対策を進めてまいります。
 次に、北又川の倒木や土砂の処理についてでございますが、流水に支障のある箇所は緊急に撤去したところであります。今後、必要に応じ調査を行い、その結果を踏まえ、適切な対応をしてまいります。
 以上でございます。
○副議長(堀本隆男君) 企画部長垣平高男君。
  〔垣平高男君、登壇〕
○企画部長(垣平高男君) 紀伊丹生川に関連します二点について、ご答弁申し上げます。
 まず、紀伊丹生川ダム中止に伴って、関係する住民等から意見を聞く場を設定してはどうかという点についてでございますが、ダムの中止に伴う水没予定地域の皆さんへの対策や今後の地域振興策につきましては国土交通省が誠意を持って解決に当たるべきものであり、県としては地元の意見、要望が十分反映されることが最も重要であると考えてございますので、国土交通省に対し地元及び県も参画した形での協議調整の場を設けることを強く申し入れてまいります。
 続きまして、公的補償と地域振興策に対する対応についてでございますが、議員ご紹介の鳥取県三朝町の県営中部ダムの例につきましては私どもも承知してございますが、紀伊丹生川ダムは国直轄のダム計画でございまして、その中止に係るもろもろの問題につきましては事業主体である国土交通省が責任を持って解決していくべき事柄であると考えてございまして、国の主体的な対応を求めてまいります。県としては、関係機関と連携のもと、計画的に事業が実施されるよう積極的に対応してまいります。
 以上でございます。
○副議長(堀本隆男君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 玉川峡の観光対策についてでございますが、奇石と清流の玉川峡は葛城高野山系県立自然公園に位置し、キャンプ、水遊びなど野外レクリエーションの場としてこれまでも多くの観光客に親しまれてきたところでございます。
 ご質問の観光振興策につきましては、その地理的条件や自然環境等から、今後とも自然資源の保全と共生を図りながら、これらをフルに活用した都市近郊型のアウトドアリフレッシュゾーンとして大いにPRしていけるものと考えており、現在県が推進している体験型観光等との組み合わせなどによる新たな展開の可能性も考えられるところでございます。
 いずれにいたしましても、観光振興はまず地元の取り組みが重要でございますので、地域の観光関係者等の意見を承りながら地元市町村や観光協会等と連携をし、振興に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(堀本隆男君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) まず、県民の健康を守り、さらに水準の向上についての三点についてお答えいたします。
 「健康日本21」の本県の計画でございますが、平成十三年に元気わかやま行動計画提言書を策定しております。さらに本年度、県としての具体的な取り組みを示した実施計画を策定いたします。この行動計画では、平成二十二年までに達成すべき健康指標の数値目標を設定しております。重点課題として、肺がん、肝がん、心臓病など、他府県に比べて死亡率の高い疾患への積極的な対応やたばこ対策への取り組み、さらには温泉や郷土食材など、本県の豊かな自然や伝統風土に恵まれた健康づくり資源の積極的な活用をうたっております。
 健康診査の受診率の向上につきましては、各保健所を通じて受診勧奨の充実や住民が受診しやすい健診体制の充実を働きかけております。さらに、本年度創設しました集合健診推進事業により市町村を支援してまいります。今後も、県民の皆様に生活習慣病の知識の普及や啓発を積極的に行ってまいります。
 次に、県の健診事業の中核である財団法人和歌山県民総合健診センターについてお答えいたします。
 当センターは、昭和六十年に設立以来、市町村等が実施する健診を受託し、疾病の早期発見など県民の健康づくりに貢献してまいりましたが、近年、民間検診機関の参入や医療機関への委託など、検診の多様化が進み、当センターを取り巻く環境は大きく変わってきております。しかし、どのような状況においても、過疎地域を含むすべての県民の方々に質の高いサービスを提供する必要があります。今後とも、当センターが県民の健康増進に最大限活用されるよう努めてまいります。
 次に、モデル地域による健診率向上と健康づくりについてでございますが、平成十三年度から住民参加のもと健診受診率の向上を含めた市町村健康モデル事業を県内四町村で実施しております。今後これらの成果をすべての市町村に還元し、各市町村で健康づくりに効果的に取り組めるよう、モデル地域の指定を含めてその支援策を検討してまいります。
 財政支援につきましては、平成十四年度から市町村が行う健康づくり事業に対し交付税措置がなされております。また、受診率の向上や健康づくりの推進に取り組むための各種補助事業がございます。これらの制度のなお一層の積極的な活用を促してまいります。
 次に、臓器移植問題の二点についてお答えいたします。
 県民の理解を深めるための取り組みについてでございますが、臓器を提供しようとする方は、その意思をあらかじめ臓器提供意思表示カードに表示しておくことが必要になります。県といたしましては、臓器の移植に関する法律施行後、移植医療の推進を図る立場から、臓器提供意思表示カードを各市町村初め関係機関に配布しております。それ以外に、臓器移植普及推進月間には街頭啓発や「県民の友」に掲載するなど、普及啓発に努めているところでございます。国内における臓器移植をより一層促進し、多くの人に対応できるようにするため、今後も県民の皆さんに移植医療への理解等を深めてまいりたいと考えております。
 次に、国における検討状況についてお答えいたします。
 臓器の移植に関する法律の附則第二条では、施行後三年を目途として検討が加えられることとなっております。臓器移植の課題となっている臓器提供施設以外での意思表示カードの取り扱いや本人の提供の意思を生かすための方策、またあっせんの確保を初め日本臓器移植ネットワークのあり方など、国の審議会で検討を進める予定であると聞いております。
 また、十五歳未満の方からの臓器提供等につきましては、国会を初め国民的議論の推移を見守っているとのことでございます。
 以上でございます。
○副議長(堀本隆男君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 名勝玉川峡は、豊かな自然環境が残されている本県の特質を示した全国的にも数少ない都市近郊の渓谷でございます。
 教育委員会といたしましては、この残された貴重な清流や渓谷美を子供たちの体験学習や県内外の多くの方々の憩いの場として一層親しんでもらえるよう、名勝の管理者であります九度山町ほか関係機関と連携を図り、地域の皆様のご協力を得てその保全と活用に努めてまいりたいと考えております。
○副議長(堀本隆男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十七番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 きょうは私、知事さんに竹井俊隆君──何としても一人の命を救うという立場から、あらゆる角度でご支援をお願いしたいというふうに思うわけです。
 支援の仕方でも私は、今はとにかく九千万円というお金がなければ手術を受けられないという現実の前に立っていますから、どうしてもそのことを実現させたいという思いで、守る会の一員として皆さん方に訴え、さまざなところでご協力を求めているところですけれども。
 いずれにしましても、法律はできたけれども、それが十分かなえられないというような、ドナーの問題もさることながら、そういう点では外国に頼らざるを得ないという実態があるわけですから、それを本当に乗り越えていくためには募金活動以外はないと思うわけですけれども、ぜひともこういう点で皆さん方のご協力を求めたいというふうに思うところです。
 それで、行政機関としてもさまざまな形でできることもおありだと思いますので、ぜひとも積極的なご協力をお願いしたいと思いますと同時に、ぜひ知事さん、この会の皆さんたちが知事さんに会って今の実情をお話したいというふうに言っておられますので、ぜひ一度お会いをしていただいてお話を聞いていただければありがたいと思います。そのことだけをきょうはお願いしておきたいと思います。
○副議長(堀本隆男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で村岡キミ子君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は六月二十四日定刻より再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時五十二分散会

このページの先頭へ