平成14年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


県議会の活動

平成十四年六月 和歌山県議会定例会会議録 第三号
     ─────────────────────
議事日程 第三号
 平成十四年六月二十日(木曜日)午前十時開議
  第一 議案第八十九号から議案第百三号まで、並びに報第二号から報第七号まで(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第八十九号から議案第百三号まで、並びに報第二号から報第七号まで(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十五人)
     一  番       新   島       雄
     二  番       山   田   正   彦
     三  番       佐   田   頴   一
     四  番       大   沢   広 太 郎
     五  番       堀   本   隆   男
     六  番       宇 治 田   栄   蔵
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       西   本   長   弘
     九  番       坂   本       登
     十  番       小   原       泰
     十一 番       木   下   善   之
     十二 番       永   井   佑   治
     十三 番       尾   崎   要   二
     十四 番       小   川       武
     十五 番       宗       正   彦
     十六 番       橋   本       進
     十七 番       生   駒   三   雄
     十八 番       原       日 出 夫
     十九 番       谷       洋   一
     二十 番       山   下   直   也
     二十一番       高   瀬   勝   助
     二十二番       吉   井   和   視
     二十四番       町   田       亘
     二十五番       金   田       眞
     二十六番       高   田   由   一
     二十八番       玉   置   公   良
     二十九番       向   井   嘉 久 藏
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       平   越   孝   哉
     三十二番       下   川   俊   樹
     三十三番       中   山       豊
     三十四番       浜   田   真   輔
     三十五番       鶴   田   至   弘
     三十六番       冨   安   民   浩
     三十七番       村   岡   キ ミ 子
     三十八番       中   村   裕   一
     三十九番       井   出   益   弘
     四十 番       阪   部   菊   雄
     四十一番       江   上   柳   助
     四十二番       長   坂   隆   司
     四十三番       森       正   樹
     四十四番       飯   田   敬   文
     四十五番       新   田   和   弘
     四十六番       松   本   貞   次
     四十七番       和   田   正   人
欠席議員(なし)
 〔備考〕
     二十三番欠員
     二十七番欠員
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        中   山   次   郎
     出納長        大   平   勝   之
     理事         内   田   安   生
     知事公室長      小 佐 田   昌   計
     総務部長       稲   山   博   司
     企画部長       垣   平   高   男
     環境生活部長     秋   月   成   夫
     福祉保健部長     白   原   勝   文
     商工労働部長     石   橋   秀   彦
     農林水産部長     辻           健
     土木部長       大   山   耕   二
     企業局長       阪   口   裕   之
     教育委員会委員長   赤   松   壽   男
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員長   中   尾   公   彦
     警察本部長      岩   井   良   行
     人事委員会委員長   青   木   孝   祐
     代表監査委員     藤   谷   茂   樹
     選挙管理委員会委員長 北   村   亮   三
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       中   原   洋   二
     次長         佐   竹   欣   司
     議事課長       北 垣 内       敬
     議事課副課長     松   谷   秋   男
     議事班長       鷲   山       智
     議事課主査      尾   崎   善   亮
     議事課主査      土   井   富   夫
     総務課長       梶   本   皓   造
     調査課長       宗   野   幸   克
 (速記担当者)
     議事課主任      吉   川   欽   二
     議事課主任      鎌   田       繁
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課副主査     保   田   良   春
     ─────────────────────
  午前十時二分開議
○議長(井出益弘君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第八十九号から議案第百三号まで、並びに報第二号から報第七号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(井出益弘君) 日程第一、議案第八十九号から議案第百三号まで、並びに知事専決処分報告報第二号から報第七号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 十一番木下善之君。
  〔木下善之君、登壇〕(拍手)
○木下善之君 おはようございます。議長の許しをいただきましたので、ただいまより一般質問をさせていただきます。
 まず、紀伊丹生川ダム建設の中止問題についてでございます。
 まず最初に、失われた二十八年についてでありますが、今日までの経過とその取り組み等について申し上げ、知事にお尋ねをいたしたいと存じます。
 本年五月十六日、突然、国土交通省近畿整備局は紀伊丹生川ダムの建設を中止すると発表され、国の直轄事業としては近畿で初めてであり、驚きと国の公共投資の抑制が現実のものとしてあらわれたものと推察せざるを得ません。今や日本のダム建設は、自然環境の保全と財政上の問題等、大きなうねりとなって、平成十二年以降において事業の中止したダムは二十四府県に及び、紀伊丹生川ダムを含め、国営、県営合わせ四十八ダムとなっております。
 昭和四十年代の話として、本県最大の河川は紀の川であって、紀の川は日本三つの暴れ川の一つとされました。二十八水、三十四年の伊勢湾台風の教訓を生かし、完全な治水対策を講じなければならないとして、大滝ダムの建設とともに貴志川、紀伊丹生川へダム建設を進め、水を治める構想ができたと聞き及んでおります。当時、日本のある哲学者は「日本の未来に異変現象が生じ、水不足の時代が必ず来る」とも言われ、だれもが予想のできない事態が来ないとは限らない。時には干ばつで断水も経験され、水の重要さはひとしく認識されております。
 さて、紀伊丹生川ダム建設の話が聞かされたのは、私は今から二十八年前の昭和四十九年ごろ、当時地元としてはダム建設の要望はしていないとしている中で、国は治水、利水の面からぜひとも必要であると、昭和五十四年より可能性の調査である予備調査を開始、平成元年より本格的な実施計画調査に入られております。この間、県議会水資源対策特別委員会は昭和五十六年六月発足され、五十八年八月にダム予定地の調査、さらに昭和六十年四月、紀の川流域の三市十二町を中心に紀の川水対策協議会を設立し、大阪分水の検討にも入られ、以降、県議会、建設委員会等、再三現地へ出向かれた経緯もあって、国のダム事務所が平成元年に橋本市へ設置とともに、関係流域の橋本市、九度山町、高野町において自治体としての体制づくりと関係地域の議会においてはダム調査特別委員会を設置され、今日に至っております。
 平成十年、国の調査結果報告はダムの堰堤高百四十五メートル、総貯水容量六千万立方メートルとし、洪水の防止と利水が目的とし、十二回に及ぶダム審議委員会が開催、一部条件を付してダム建設は妥当であるとの結論に達しており、これを受けて関係地元への説明に入られ、水特法の適用するダムとして建設するもので、関係住民の生活再建、地域整備、環境保全、地域交流支援等、万全を期してまいりたいので了承願いたいとの説明があり、地元としても十分検討してまいりたいとするものでありました。
 私も、一般質問で何度かこのダム建設の質問をさせていただきました。昨年六月の質問で、長野県の田中知事の脱ダム宣言はあるが、木村知事として紀伊丹生川ダムの考えはどうかと伺いました。知事には、「地域の環境との調和を図りながら建設されるべきものであり、安全、安心な県土づくりのための一つの有効な施策である」と答弁をいただいております。
 さて、昨年十月、国は計画規模の縮小に着手、その理由としては水需要の停滞と環境保全に万全を期すためと言われ、引き続きダムの高さなど規模の縮小に向け再検討に入られ、今日に至っておるところであります。
 以上のように、ダム建設に向け多大の経費と労力を投下し、関係地域においても何百回という会を重ねた結果、突然のダム建設中止に一体何が起こったのか。多くの水没地域住民は、この二十八年間の心労の償いをどうしてくれるのか、行政のダムに対する取り組みの不信が一層募るばかりであります。
 参考でありますが、賛否両論の中で予備調査等三十年経過した鳥取県の県営中部ダムの突然の中止問題が昨年二月にありましたが、中止後おおむね五カ年で周辺の活性化を図る上で、社会資本整備として百六十八億円、四十二事業が国の協力を得て実施されると聞き及んでおります。
 そこで、知事にお尋ねいたします。紀伊丹生川ダム中止後の水没地域の二十八年間のおくれを取り戻す方策について見解をお伺いいたします。
 次に、中止の理由と今後の治水対策についてでありますが、大阪府は当初、毎秒二・八トンの取水の計画であったが、人口減少に伴い一・三トンに削減、また水の一滴は血の一滴と言われた和歌山市の毎秒〇・二トンが不要となったのが最大の要因とし、利水の目的が当初計画に比べ減少が生じたとされており、事業費概算千五百六十億円は費用対効果の点でスケールメリットが小さいので中止すると言われていますが、具体的な理由を、ほかにもあれば伺います。
 そこで、治水対策についてでありますが、今後、紀の川水系を洪水から守る上で国はどういう構想を持たれるのか、また県としてどう具体的な要望を考えておられるのか、知りたいのであります。
 その昔、紀州の殿様が紀の川の余りにも多いはんらんに頭を痛め、「水を治められない者は国を治められず」の考えで、築堤とあわせ、紀伊の国を初め紀の川上流の大和の国へ参り、水を治めるため今日のような三県知事会議を持たれたようで、その後、植林を奨励されたと言われているが、今日、水を治める上で水の流れのみをとらえることだけでなく、ダムが中止された以上は水の貯水を行う力点を見出され、山林の保水力の維持方法も考えるべきと思います。
 私見でありますが、現在、紀の川は少し疲れているのではないかと私は思っておるわけであります。上流では河床が下がり、肋骨がむき出しのように岩が見え、やせ細り、水の流れに活力がない。昭和三十年から四十年代の水の流れは生き生きとして、時には暴れもしたが、平均流量も今日の三倍は常時流れていたように思う。
 このことは、戦後の植栽熱が高く、山の手入れもよくされ、保水力があったが、昨今の山の人工林の多くは死にかけているのではないかと思ってなりません。当局は既に緑の再生に向け取り組まれておりますが、緑の再生に向け長期的視点に立った検討をいただきたい。治水はただ単に堤防のみに依存するだけでなく、補助的な治水つまり緑のダムにも目を向けながら環境保全に努め、木の国にふさわしい自然のよさ、日本一の県土づくりを切望し、関係部長より答弁をいただきたい。
 次に、水没地域の整備計画についてであります。
 水没地域にあっては、道路の新設、改良等、社会資本の整備が三十年間されていない実情で、一方、生活再建は一体どうしていくのか、基盤が一層脆弱となってしまったと、地域住民は不安のどん底の中で嘆いているのが実態であります。
 そこで、国道三百七十一号の現道改良等についても、水没区域とその周辺は全く手つかずの状態で、待避所あるいは駐車場の設置等、地元の意向に対し速やかな対応を講じるべきだと考えますが、いかがでしょう。
 さらに、当初、ダム実施の場合は、道路を初め周辺整備に関係自治体から多くの地元要望が出されていましたが、ダム中止後においても適正な対処が必要と考えます。このような周辺整備等を円滑に進める上で、近畿整備局紀伊丹生川ダム調査事務所には、事業の補完に至るまでの間、一部職員を残し存続されるよう強く申していただきたいのであります。また、県としましても伊都振興局にダム関連の担当職員の配置を行うなど、関係自治体とも十分協議調整され、少なくとも五カ年程度で水没地域及びその周辺の整備を国と県は主体性を持って完成させることについて、県当局の考えを伺うものであります。
 次に、分水協定に基づく協力費問題であります。
 紀の川利水に関する協定を昭和六十二年十二月、大阪府と本県との間で結ばれ、財団法人紀の川水源地域対策交付金として、百三十一億円のうち昭和六十三年より平成十二年度末までの間に八十三億六千万円を大阪府より受けており、それぞれ紀の川流域の治山治水及び府県間道路、県道整備及び土地改良事業等、有効かつ適正に生かされていることとなっておりますが、その使途の主なものについて聞かせていただきたい。
 ところで、ダム中止の場合はどうなるのか。府県間で調印できているが、残りの四十七億四千万円はいただけるものかどうか。協定内容について示していただき、責任は大阪府にあるものと考えますが、今後当局としてどう取り組みされるのか、企画部長の答弁を求めます。
 次に、紀の川流域委員会の今後の取り組みについてであります。
 昨年六月より過去八回の流域委員会が開かれ、過日十二日にも開催され、近畿整備局より中止について了承されたと言われるが、中止を先に発表することはおかしいのではないか。私は、流域委員会ですべて先に中止問題等を十分審議され、了承を得るべきでなかったのか、国の取り組みに若干の不信感を持つものであります。ダム中止となった以上やむを得ないと考えますが、下流域の治水・利水・環境対策等、今後も本委員会が継続して検討されるのか、土木部長にお伺いをいたします。
 次に、本年度の調査費問題について。
 ダム建設に向けての調査費については、平成元年から十三年までの予備調査費は県負担七億六千万円を含め総額三十五億六千万円要したこととなっており、平成十四年度の調査費四億五千万円を計上されているようでありますが、中止に至った段階で国はこの予算をどう考えておられるのか、土木部長にお尋ねをいたします。
 なお、費用を水没地域及び周辺の再建整備のための調査設計であるとか道路改良等に振り向ける働きかけを当局より国に対して積極的に取り組むよう強く要望するものであります。
 続いて、交通網の整備について申し上げます。
 地域整備の柱とする国道三百七十一号橋本高野山道路についてであります。
 紀伊丹生川ダム建設のつけかえ道路として、平成六年に地域高規格道路の候補路線に位置づけされました。ご承知のとおり、現道の三百七十一号の橋本─高野山区間は狭隘で、全面改修を行うことも困難で国道としての機能は果たせず今日に至っており、本道路は橋本より高野山を経て串本に通じる本県内陸部はもとより南紀への夢を運ぶ道路として大変重要と位置づけております。
 ところが、本道路の事業化はダム関連の地域整備の柱として間もなく着工の運びと聞き及んでおりましたが、ダムが突然中止となり、国道三百七十一号橋本高野山道路も一たん白紙となる公算が生じてまいりました。しかしながら、関係地域の一市二町などにおいても大きな期待をしていただけに、このショックは隠し切れないものと存じます。幸い、国道三百七十一号橋本バイパスあるいは本線の延長としての仮称・新橋本橋の完成に向け、知事初め当局の熱意で形として見えてまいりましたので、続いて本路線の新線をぜひとも前向きに検討を願いたいのであります。
 余談でありますが、昨年十月、中国南昌市──人口は四百八十万人ほどあるようでございますが、そこへ参りました。南昌市は上海より奥地へ八百キロほど入ったところでありますが、その近郊に世界遺産である廬山へ視察調査を行ったのであります。世界遺産に指定になるや、南昌市より約百八十キロ程度の距離であろうと思いますが、ハイウエーが完成してございます。まだ末端は黒い状態のようでございました。
 日本は超大国・中国のようにまいりませんが、橋本─高野山間約二十キロを、数年でとは申しません、高野熊野世界遺産を目途に事業の採択をされるよう期待し、国道三百七十一号橋本高野山道路について、知事の所見を伺うものであります。
 以上で、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの木下善之君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 先般、突如中止が発表されました紀伊丹生川ダムの建設についてのご質問でございます。
 紀伊丹生川ダムにつきましては、長年にわたり地元が大変ご苦労されてきたことは十分承知しているところでございます。そうした中で今回、国土交通省の発表があったわけでございますが、ダムの中止に伴う水没予定地域の皆さんへの対策や今後の地域振興策については国土交通省が誠意を持って解決に当たるべきであり、地元市町長と十分連携して全力で国と折衝をしてまいりたいと、このように考えております。また、今後そうした事業が計画的に実施されるよう、国と地元市町及び県が協議と調整を行う場の設置を国に申し入れていく所存でございます。
 次に、この関係で地域整備の柱となる国道三百七十一号橋本高野山道路につきましては、府県間のラダー状、はしご状のネットワークに関連した重要な路線であり、地元としても大きな期待がある道路であるというふうに認識をしております。
 ダム計画が中止となった現在は地域高規格道路の優先順位を考える中で取り組むこととなりますが、水源地域整備の柱となっていた経緯も踏まえ、今後水源地域整備事業をどうするかの一環として国に責任ある対応を働きかけてまいりたいと、このように考えております。
○議長(井出益弘君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 紀伊丹生川ダム建設の中止問題について、順次お答えいたします。
 まず、中止の理由と今後の治水対策についてですが、紀伊丹生川ダムは治水、利水、環境を目的とする多目的ダムとして計画されたところですが、利水面で大阪府と和歌山市から必要水量を減量するとの意向表明があり、利水容量が減ったことでスケールメリットが小さくなり、事業継続が困難であると国において判断されたものでございます。
 国の今後の紀伊丹生川ダムにかわる治水対策につきましては、河床掘削、堤防かさ上げ、狭窄部解消など、紀の川流域委員会の意見を踏まえ検討をしていくと聞いております。県といたしましては、紀の川の治水、利水、環境について、今後も国において適切な対応を図られるよう強く求めてまいります。
 次に、水没地域の整備計画のうち国道三百七十一号の現道対策につきましては、地元の意向を聞きながら必要なものから優先順位をつけて順次対策を進めてまいります。
 次に、紀の川流域委員会においては、今後紀伊丹生川ダムを建設しない場合の紀の川のあり方を治水、利水、環境の観点から継続して検討されると聞いております。
 次に、今年度の調査につきましては、調査施設の撤去等の残務整理を行いまして、成果をまとめた上で打ち切り、新たな調査は行わないと国から聞いております。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 農林水産部長辻  健君。
  〔辻  健君、登壇〕
○農林水産部長(辻  健君) 紀伊丹生川ダム建設の中止問題についてのご質問のうち、今後の治水対策についてでございますが、戦後、先人たちのご努力によりまして植栽されました人工林につきましては、木材価格の低迷や山村地域の過疎化などによりまして手入れが行き届かず、一部では公益的機能の低下した森林もございます。
 本県では、森林整備の柱となる間伐を推進するため、平成十二年度から和歌山県緊急間伐五カ年対策として緊急に整備を要する森林四万五千ヘクタールの間伐実施を目標に取り組んでいるところでございまして、紀伊丹生川ダム地域を含む紀の川流域におきましても、四千九百ヘクタールの間伐を実施する計画でございます。
 また、今後は間伐による人工林の整備のほか、広葉樹林の造成など、地域の実情に即した多様で活力ある森林の整備に積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 企画部長垣平高男君。
  〔垣平高男君、登壇〕
○企画部長(垣平高男君) 紀伊丹生川ダム建設の中止に伴います二点についてお答えを申し上げます。
 まず第一点は水没地域の整備計画についてでございますが、現在の紀伊丹生川ダム水源地域の整備計画の素案でございますが、それにつきましては、ダムが建設された場合における地域の姿を取りまとめたものでございまして、今回のようにダム計画が中止に至った場合における地域整備のあり方につきましては、これまでとは百八十度違った取り組みが必要となってまいります。
 今後の地域整備の事業推進に当たりましては国が主体的に取り組むこととなりますが、県といたしましても、地元の意向が事業に反映されていくということが最も重要でございますので、関係機関と連携のもと計画的に事業が実施されるよう積極的に対応をしてまいります。また、紀伊丹生川ダム調査事務所につきましても引き続き存続を申し入れてまいりたいと思っております。
 次に、大阪府との分水協定に基づく協力費の問題でございます。
 紀の川利水に関する協定書に基づきましてこれまで大阪府から支払いを受けた地域整備協力費につきましては、紀の川流域の治山事業四十二地区に約十七億八千万円、治水事業八河川に約十九億一千万円、土地改良事業四地区に約二億五千万円、及び国道三百七十一号、国道四百八十号、国道四百二十四号、県道泉佐野岩出線、県道泉佐野打田線といったいわゆる府県間道路の整備につきまして約四十四億二千万円、合計八十三億六千万円をそれぞれ財源として整備を進めてきているところでございます。また、地域整備協力費につきましては、平成十二年度の阪和水問題検討会におきまして、紀伊丹生川ダム建設採択の時期が不明瞭なため、平成十三年度以降、地域整備協力費の取り扱いを一時凍結するということになってございます。今回のダム中止に伴って派生してまいります諸問題につきましては、今後、国の協力もいただきながら大阪府と協議を行ってまいります。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十一番木下善之君。
○木下善之君 それぞれ答弁をいただいたところでございますが、紀伊丹生川ダム問題につきましては、私も恐らく今回で最後であろうと思います。先ほどの答弁のそれぞれの一つ一つを見てみますと、やはり本ダムは国の直轄ダムであるという観点での、国への要望等を中心に答弁をいただいたわけでございますけれども、やはり県としましては、地元のそれぞれの水没地域の問題を窓口を一本化していただいて、そして関係一市二町の意見も十分踏まえて、ひとつ今後できるだけ早期に問題の解決に取り組んでいただきたいなと、強く要望するものでございます。
 特に、私はダムなしの考えで大阪分水を行うこと、どういう形の水を大阪へ分けていくんだということ、今後いろいろあろうと思います。しかしながら、本県が将来、水不足を来すことのないよう、後々までも十分な対策を講じていただくことを強く要望して、一般質問を終わります。
 以上です。
○議長(井出益弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で木下善之君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十八番原 日出夫君。
  〔原 日出夫君、登壇〕(拍手)
○原 日出夫君 議長のお許しを得ましたので、質問に入りたいと思います。
 まず冒頭、議長の了解を得ました資料を二枚配付させていただいております。それと、二項目めの介護保険事業計画の見直しについての要望については時間の関係上カットさせていただきます。よろしくお願いします。
 一番目に、南海地震、東南海地震を予測した防災対策についてであります。
 平成十三年九月二十七日、政府の地震調査委員会の評価発表は、私たち昭和南海地震の経験者にとっては新たな驚きと危機感を持って受けとめました。三十年以内に南海地震が起きる確率は四〇から五〇%と発表され、南海地震はマグニチュード八・四。これは、阪神・淡路大震災の三十倍のエネルギーを持つ巨大地震というふうに言われております。しかも、私たちの最も恐れる津波は平均五・八メートルの高さで押し寄せ、串本町へは十分、田辺市へは二十二分、四十分以内にほぼ県下全域に押し寄せるとされています。しかも、南海トラフの動きの状況から見て東南海と同時発生する可能性も想定されております。
 私を含めた南海地震・津波の経験者はこの発表をどう受けとめたのでしょうか。ある体験者は、東海地震についてはかなり前から研究が進められ、二十五年前からいろんな対策を官民あわせてやっておられるので、その方は勉強にも行ってきました。今回、南海地震、東南海地震が取り上げられたことは前進だが、遅きに失した感があるということも言われております。東海地震は、今来るぞと言われて、おくれている。東南海、南海もそれに引きずり込まれて南海トラフが同時発生することを最も恐れているというようにその人が言っています。地震が来るぞ来るぞと言うばかりで、私たちからすれば行政がどのような対策をするのか、何も見えていません。私たちは、昭和南海地震の経験から、とにかく早く逃げるだけです。でも、あの当時は戦後間もないときでした。今は時代も違うし、何とかハード面でも行政の支援に頼りたいということを語っておられました。また、ある体験者は、いずれにしてもソフト面での対応は、社会教育、地域防災等の啓発をその方自身も活発に取り組んでいきますと言っておられました。しかし、ハード面では行政の力が必要です。津波そのものを防ぐことはできなくても、津波の直接破壊力を弱めるとか、避難道の確保とか、停電時の対応とか、避難場所への誘導等、行政の力が今求められていると言われておりました。
 そこで、私はこの九月二十七日に発表された中での──その前の九月一日が「防災の日」でした。それに関連して、新庄の公民館の館長のコメントが新聞紙上でやられておりました。この方は、南海地震を体験したのは十六歳のとき。父親に「津波が来るから逃げなさい」と言われ、三歳下の妹を連れて山へ逃げた。家の近所の人は、一度は逃げたものの、荷物を取りに行って命を落とした人もいた。昭和五十八年の日本海中部地震では、地震があったにもかかわらず、海岸で弁当を食べていた遠足の小学生たちがたくさん津波の犠牲になって亡くなられたということで、地震の後は必ず津波が来るということの啓発がなかなか行き届いていなかったという教訓が示されております。
 また、「津波を完全に防ごうと考えることは無理かもしれない。しかし、どんな工事をするにも防災面のことを頭に入れて考えていれば、少しは効果のあることができるはずだ。例えば、文里湾入り口の防波堤は南海大地震級の津波を防ぐことはできないだろう。しかし、むき出しになったコンクリートの上に土を盛って植樹帯を設けるだけでも、少しは効果があるかもしれない。せっかくの歴史上の体験を生かしてほしい」と言われております。
 もう一人の方は新庄の津波対策委員会の会長の西さんという方ですが、この方が実際に体験をして、自分自身が学校の先生をしていて当直でいち早く逃げたということの中で、自分がその中で寒さに震える家族のために津波で死んだ牛の肉を切り取って持って帰り食べさせたとか、少し落ちついてから水中眼鏡をつけて遺体の収容に当たったと、その方のコメントであります。
 そういう中で、先ほどと同じように、今後の港湾事業や行政の公共事業をやる場合、津波対策を兼ねた構造にできないかということをいつも行政にお願いしている、何とかして少しでも津波の衝撃を和らげてほしいという住民の意識と行政とのずれを何とかなくしてほしい、そういうことを述べられておりますし、「財政の厳しい中で、三陸海岸にあるような立派な防波堤を、巨費を投じて建設してほしいと言っているのではない。しかし、どんな工事をするにしても、どんな計画を立てるにしても、常に津波のことを考えに入れておいてほしい。庭に木が植えられていただけで助かった家もあった」と、こういうことの事例を挙げながら行政にそういう感想を述べられておりました。
 私も、五歳のときに津波を体験しました。昭和南海地震の体験者という方がこちらの執行部の方では少ないかと思われますので、実際に昭和二十一年の十二月二十一日にその大地震が起こったとき、午前四時十九分でした。私は、ほとんど玄関のドアを家族がたたき倒して──路上が歩けませんでした。手を引っ張ってもらっていった記憶がありますが、もうほん目の前に津波が押し寄せてきておりました。そういう体験上、非常に──要は当時の状況からいきますと、我が和歌山県はもちろんですが、愛知県から九州まで一帯にわたる地震がありました。そういう中で特筆すべきことは、一つは死者、行方不明が二百六十九人、被災者が六万四千人、とりわけ津波被害による浸水とその死者が多いということがあったわけであります。だから、家屋の全壊というのもありますが、家屋の全壊がたくさんある中でも死者が少なかったと言われております。
 もう一つは、阪神・淡路大震災と共通する点が、実は新宮市の火災被害が大変なことが記録に出されております。二千三百九十八軒の家が焼け野原になり、新宮駅の一帯が焼け野原になったということが記されております。このことについても、阪神・淡路大震災の昭和地震と同じように、消火のための水道が停止してしまったとか、水がめが一つもなくて消火作業が何もできなかったということが記されております。このことも一つの大きな教訓になるのではないかというふうに思っております。
 このような昭和南海地震からの教訓を学ぶということがたくさんありますが、私は詳細は次の質問の中で紹介していきながら、具体的に質問する前にまず三人の方の防災に対する基本理念を皆さんにご紹介しながら、この理念を守っていくことが大切だというふうに思っております。
 貝原前兵庫県知事は、阪神・淡路大震災の教訓から、本気になって県民の生命と財産を守るという政治家としての強い姿勢と防災に対する意識改革が求められているというように言われています。静岡県の石川知事は、県民の生命と財産を守るのは、災害が発生してから対応するのではなく、私たちの使命は災害を予測して、かけがえのない県民の生命と財産を守るための施策を着実に実施することです、災害が発生しないと公共投資をしないという考えから、防災対策へ公共投資をするという考え方が国を初め私たち政治家に求められているというふうに語っておられます。
 木村知事は、今議会冒頭の知事説明の中で「災害から県民の命と財産を守ることが行政の最も重要な使命であると認識しているところであり、災害対策を迅速かつ効率的に行うための中枢である防災センターの早期整備を図るため、現在鋭意準備を進めている」と述べられています。昨年九月二十七日の政府の地震調査委員会評価発表、昭和南海地震からの教訓を生かしながら南海地震、東南海地震に県防災対策をどう構築していくのか、まず冒頭、知事にお伺いしたいと思います。
 次に具体的な質問に入るわけですが、今回質問するに当たり、平成七年二月議会での大先輩の和田議員の質問議事録、静岡県防災局、内閣府地震災害担当、気象庁、五月二十五日の「よみうりシンポジウム─激震が襲う日─」、「和歌山縣災害史」、田辺市新庄公民館発行の「昭和の津波」を参考にさせていただきました。いみじくも平成七年二月の和田議員の質問の答弁者は木村良樹、当時総務部長でした。今回は木村良樹和歌山県知事という、立場を変えた中での答弁をいただくことになったことは光栄であります。
 私の数点の質問の前提として、防災対策に関し市民一人一人の果たす役割、行政の役割、そして市民と行政が協力、共同した取り組み、また今すぐできること、二十年、二十五年の長期施策計画を立てること、それを五年の短期計画ごとに継続立案していくことの必要性を理解しながら質問に入りたいと思います。
 まず第一点として、防災の組織体制をどう整備し、何カ年計画で防災局体制を確立するのか。しかも、自主防災体制を県下でどう具体的に確立していくのかであります。
 第二点は、防災体制におけるソフト面の専門家の人的確保についてですが、専任の研究員を少なくとも一名配置することを検討すべきではないでしょうか。地震はあす起きても不思議ではないという。東海地震防災に取り組む静岡県防災局へ人材を派遣・研修してはどうでしょうか、また先進的に取り組んでいる県との人事交流を考えてはいかがでしょうか、総務部長に見解をお聞きします。
 次に第三点目として、地震・津波対策事業計画についてですが、昭和南海地震、阪神・淡路大震災の教訓から、系統的、継続的に進める課題について問題提起したいと思います。
 まず一つは家屋の倒壊対策についてですが、阪神・淡路大震災は六千人の死者のうち八〇%は家屋の倒壊によるものです。全国では耐震補強を要する戸数が二千百万戸あると言われていますが、和歌山県においても旧耐震基準の民間住宅の実態調査は進んでいるのでしょうか。耐震診断は県も平成十年から十三年の四年間、建築耐震モデル事業を実施してきたが、これからの家屋の倒壊防止のための施策はどう行っていくのか。行政と民間の負担責任をどう位置づけていくのかという課題があります。
 また、公共施設、学校、市町村の防災拠点、福祉医療施設の耐震実態調査は行っているのでしょうか。また、これからの新建築物に対する県独自の耐震指導要綱をつくる必要があると考えますが、いかがなものでしょうか。
 また、昭和南海地震・津波の教訓から、一つは避難地の確保、避難路、消防用施設、緊急輸送路、通信施設の整備を初め、防災の拠点となる市町村の防災拠点司令部が地震、津波に耐えられるものになっているのでしょうか。
 二つ目は、津波対策としての防潮堤、水門等の現状把握と行政としてどう整備していくのか。どの程度までハード面で対応していくのか。地域住民との信頼関係で整備計画を立案する必要がないのか。
 この二点は、地域住民が一番深刻に考えている課題であります。これらの必要性から私は、過去の昭和南海地震とその後の対策の事例を述べながら──昭和南海地震では大きな役割を果たしてきました北別館前の浜口梧陵翁の築かれた防波堤について、このときに広国民学校の方が昭和南海地震の教訓の中で述べられております。今度こそその効果を完全に示し、浜口梧陵翁のこの偉大な防波堤がこのとき生きた、みんなこれで救われたということを語っておられます。また新庄地域では、南海地震後、当時、小野知事が肝いりで昭和二十三年から二十五年の間、防潮堤を建設されました。これも今、四十二号線で生きております。
 二つ目は、跡ノ浦の防波堤。これも昭和地震後の昭和三十九年から四十二年に建設され、これによって実際に、チリ地震の津波で跡ノ浦のあの辺一帯が津波に遭ったんですが、一軒もつかることなく防護されたという経験が述べられております。
 こういった中で、静岡県では防潮堤、水門は必要距離二百七十キロメートルに対して二百三十キロメートルを既に達成していることと、一方、和歌山としてどうしていくのかということについてぜひとも研究していただきたいと思います。
 さらに、今後新たな公共事業の中で地震・津波対策を総合的に考え、どう設計していくのかということであります。例えば、今差し迫って求められている港湾事業、それから紀州灘沿岸海岸保全基本計画等の中で、今はいわゆる波よけだけで高潮対策的な範囲内でしか防災対策はされていないわけでありますが、私たちは、今後の公共事業、港湾事業やそういういろんな事業の中で、耐震または津波よけ対策としての防災のかさ上げをしていかないといけない時期に来ているのではないか、それを考えていく必要があるのではないかということについて、総務部長並びに土木部長に見解をお聞きしたいと思います。
 第四点目といたしまして、防災対策上での財政的措置についてでありますが、東南海・南海地震への大規模地震対策特別措置法の適用については既にきのう知事から述べられておりまして、記者会見でもきのう国会に提出されたことについて知事の呼びかけでなったということが発表されております。これは大規模地震対策特別措置法ではありませんが──現在、事前の予知情報が出せる仕組みが確立していないということの中で、東海地震しか適用されていない。今回の東南海・南海地震対策特別措置法の立法化に向けては、より大規模地震対策特別措置法に準じるようぜひとも努力をお願いしたいというふうに思うわけであります。
 私はそこで、国民の生命と財産を守る公共投資はやっぱり最優先されるものと考えております。防災対策とりわけ地震列島日本の国を守る立場から言うなら、特別措置法を制定して列島を守ることは経済大国日本、先進国日本として当然でありますし、世界に向かってODA援助をする国が自国の防災対策ができない、または軽視することは私は許されないというふうに考えているわけであります。防災対策に公共投資することは国民の生命と財産を守るとともに社会資本整備と地域活性化にもつながり、決してむだな公共事業ではないと考えるわけであります。東南海・南海地震防災対策特別措置法案が議員立法として国会に昨日提出されましたけれども、大規模地震対策特別措置法に準じるものに、知事を先頭にひとつぜひとも運動を強めていただきたいというふうに思っております。
 次に、既にある地震防災対策特別措置法について、県としてこの活用の基本方針と具体的指針ができているのか。とりわけ、既に第一次が終わり第二次が平成十三年から十七年まで五カ年計画で始まっておりますが、これについてどういうふうに取り組んでいるのでしょうか。このように、国の支援策はもちろんですが、県として県民の生命と財産を守るために県単独の防災予算を毎年どれぐらい見ていくのか検討に入る時期に来ているのではないかというふうに思うわけであります。耐震・津波対策に対してどの程度、県の全体の予算の中で何%これから見込んでいくのかということが今課題としてあるのではないかというふうに考えるわけですが、いかがなものでしょうか。
 静岡県では、地震対策超過課税を一九七九年から十五年間実施し、百五十六億円の税収入で二分の一を市町村に交付して地域防災への財源にしてきたそうです。今の経済情勢ではこういった税制は難しい中で、私は特定目的のための県民公募債を発行して財源を確保し、県民とともに防災を考え、ともに協力、共同して生命と財産を守る行動の問題提起にしてはどうかと思うわけであります。この発行を財政当局としてぜひとも検討していただきたいというふうに思うわけであります。これは既に全国的にも取り組まれておりまして、その主なものは、県立病院の整備とか浄化対策、学校・病院建設とか学校スポーツ施設、防災センター、鳥取情報ハイウエイ、ごみ総合リサイクルセンターというふうに、各県で既に市とか県で住民参加型ミニ市場公募債というのが発行されております。こういう意味で、本当に県民の皆さんのご協力を得ながら県民公募債を募っていってはどうかということについての検討を財政当局で開始いただけたらありがたいというふうに考えております。その点について、総務部長のご見解をお聞きします。
 次に総合情報ネットワーク、昭和南海地震、阪神・淡路大震災の教訓でありますが、そういう意味でのライフラインの確立について県の考え方と取り組みについてお聞きしたいと思います。これについては、詳細は省略させていただきます。
 最後に予知可能性の展望についてでありますが、国の文部科学省、気象庁では、東南海・南海地震は東海地震と異なりプレート境界が海域であるため、現時点では十分な精度の観測データを得ることができず予知は非常に困難な状況とされております。そこで、私は一つの側面として、科学的ではない昔から伝えられている自然界、動物界が予兆する環境の変化に着目をした宏観現象予知を参考材料にすることも大いに検討してもらいたいというふうに思うわけであります。
 これについては、昭和南海地震のときの前ぶれということで、これは昭和南海地震の中で新庄町の皆さんの見解でありますが、大きな三日月ができた、何ぞ起こるんと違うか、こんな三日月初めてやのうということが述べられたり、二、三日前から潮の引きが物すごく大きかったとか、真っ赤な夕日が二、三日前から出たとか、海鉄砲の海鳴りの音が二、三日前から起こったとか、こういうことが言われております。それから、田辺だけではなく新宮市の青年会の皆さんが、一週間ばかり前から暖かい小春日和が続いたとか、いろんなことが述べられております。こういうことを宏観現象と言うらしいんですが、こういった幾つかの形態が実際にあったということや、実際に新宮、尾鷲、あの辺のところはもう二、三カ月前から地盤沈下が甚だしく起こっていたとか、そういったことが当時述べられ──一部の学者がその発表を怠ったわけですが──尾鷲地域の皆さんにはそれがわかって、みんな避難して一人も死者を出さなかったとか、そういういわば宏観現象がいみじくも、「そんな」ということではなくて、案外このことが過去の歴史的に見て──こういう現象についても、ぜひともネットワークづくりをお願いしたいというふうに考えるわけであります。それが、一点の質問であります。
 次に、緑の雇用事業と林業施策についてであります。
 私は昨年の二月議会において、和歌山県の森林・林業施策について質問をしました。豊かな森林づくりに関し、循環利用林と広葉樹林の位置づけを提言し、森林の果たす県土の保全、災害防止、水資源涵養機能、生物の多様性保存、環境の視点での地球温暖化防止などの公益的機能の役割を指摘しました。
 知事は今、緑の雇用事業の中で森林の公益的機能を取り上げ、積極的に推進されていることを高く評価しつつ、私はこのこととあわせ、木の産業づくり、林業活性化、つまり紀州材をいかに活用するか、そのことによって入り口の森林を守ることと出口の林業活性化が一体となってこそ森林・林業を発展させるというふうに考えているわけであります。したがって、知事におかれては、緑の雇用事業の公益的機能だけでなく、林業施策をもう一つの柱として位置づけられることを強く要望するものであります。
 従来、和歌山県は、国有林が少なく、民間山林所有者が大半を占めています。木材が売れなければ森は守れないということであります。既に、杉だけに関して言えば、一本の杉が本県では十二年では平均二千六百円、昭和五十五年当時に比べると四六%も価格が下落しています。十三年に至っては、一本当たり杉においては平均価格が八百円であります。これに要する、山から切っておろしてきて市場へ出すのに約千五百円かかっております。このように、二分の一近い。費用が要って、売るのは半分という実態であります。こういった状況の中で、市場に出せばまあ二分の一でしか売れない。木を切れば切るほど損をするのが現状ではないでしょうか。この部分を抜本的に打開しないと、せっかくの施策が継続しないことになりかねません。
 森林・林業は、一次産業としてのいわゆる山林従事者の振興と雇用の拡大、あわせて紀州材の振興による二次産業を初め職人さんの復活、間伐材等を利用した産業とエネルギー産業の構築など、日本の伝統ある木の文化に立ち返るものです。この分野についての位置づけもぜひとも知事の方においてはお考え願いたいというふうに思います。
 また、もう一つは、木村知事を先頭に五県の地球温暖化防止に貢献する森林県連合共同アピールを大いに評価して、私は次のことを要望したいと思います。
 国内の森林による地球温暖化防止への貢献とともに地球的規模の視点に立つなら、外国からの木材輸入によって世界の森林の乱伐採が続き、それによる砂漠化、大洪水を引き起こして、地球温暖化に拍車をかけています。この木材輸入を一定制限することは、日本の環境団体だけでなく、国際的にもこの乱伐採をやめるよう訴えられておりますが、日本の国もこの輸入の制限をするよう進めるべきではないかというのが一つであります。このことは当然のことであります。このことも大いに五県で取り上げることは、地球的規模の視野に立つことであり、国内林業、木材を守り発展させることにつながるのであります。国内の地球温暖化防止、世界的視野に立った地球温暖化防止のためにも、バランスのとれた森林・林業の観点に立ち返るべきではないかというふうに思います。
 あわせてこのことは、緑の雇用事業を継続させるための行政──官がいつまでも責任を持っていく必要があるのかということも問題になってきます。そういう意味で、民間が一九五五年、先ほど言いました当時の林業に立ち返れるように施策を進めていくことが、引き続き緑の雇用事業そのものが民間に受け継がれて、林業者に受け継がれていく。そういうものにしていく必要があるのではないかという立場で、私はそのことをお願いしているわけです。
 以上で、私の第一回の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの原日出夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 南海地震に対するこれからの県の防災対策についてのご質問でございます。
 東南海地震、南海地震については、議員方も既にご承知のとおり、昨日、特別法が上程されたということでございます。これにつきましては、和歌山県選出の与党の国会議員の方々と一緒に、保守党の二階幹事長を中心とする、自民党幹事長、そして公明党幹事長、三党幹事長にこの立法の重要性ということをご要望いたしましたところ、本当に考えられないぐらいのスピードで──ちょうど一月でございます。一月で法案ができて提出されたと。今国会中には私は必ずや成立するものというふうに確信をいたしております。
 これは、今までこの南海地震、戦後二年目に和歌山で起こったわけで、大体百年に一回ずつぐらい起こるような形で起こってきているわけでございますが、先ほどご質問の中にもありましたように、昨年、次の南海地震が三十年以内に四〇%の確立で起こるということが初めて政府によって公式に発表されたと。そのことを受けてのことでございます。
 南海地震につきましては、現にこの議場におられる方の中にも体験された方がおられると思うわけでございますけれども、やはりこれがナショナルプロジェクトになるというふうなことの中で対応していかなければ十分な措置ができないということもありまして、立法化を要請したところ、このような形で実現しそうだということで喜んでいるところでございますけれども、このような国による支援を受けながら、県としてこれからよりきめ細やかな津波対策を中心とする各種対策、これはソフトもあればハードもあると思いますけれども、力いっぱい取り組んでいかなければならないというふうに思っているところでございます。
 できるだけこの法律ができたということの趣旨を県民の方々が酌んでいただいて、そしてこの南海地震の持つ大きな意味、これはもう日本全国的な大きな意味ということを酌み取り、そして和歌山県はその先頭に立ってこの東南海・南海地震対策に取り組んでいくということが必要なのではないかと思っておりますし、私もそのことを肝に銘じているところでございます。
 それから、緑の雇用と林業施策についてのご質問でございます。
 緑の雇用につきましては、当然のことながら、雇用の面もあるわけですけれども、最終的にその人たちが活躍することによって維持された林、木というものが活用されるということがなくては十全なものにはなりません。今まで林というとどうしても経済林的な発想が強くて、お金にするのにどうというふうな発想があったわけですが、この緑の雇用というのは環境林的な面に着目している──とはいうものの、しかしながら最終的にやはり売れていかなければこのような施策を今後維持していくということは難しいということがありますので、当然のことながら──私が考えておりますのは、この紀州材を公共事業の中で何か活用していくような方策はないか。新しい公共事業のあり方を今進めておりますけれども、そういう中で活用はできないか。そしてまた県産品として、そしてまた住宅を建てるときとか公共施設を建てるときにもっともっと県産材を利用する、そしてそれで若干コストは上がったとしても、トータルの地域としての力というふうなものは増していくのではないかというふうなことを考えております。そこまで緑の雇用ということの中に含めて考えていきたいと思っておりますので、ご支援方よろしくお願いいたします。
○議長(井出益弘君) 総務部長稲山博司君。
  〔稲山博司君、登壇〕
○総務部長(稲山博司君) 南海地震、東南海地震の防災対策につきまして、多岐にわたるご質問がございました。順次、お答えを申し上げます。
 まず、防災の組織体制についてでございますが、昨年度から防災監を設置するなど、その充実に努めているところでございます。さらなる組織体制の整備につきましては、今後、防災センターの整備でございますとか新法の推進を行っていく必要があることを念頭に置いて、その体制強化を検討していきたいと考えております。
 次に、自主防災組織についてでございます。
 平成十三年度現在、県下全体での組織率が四七・九%となっております。前年に比べますと一一・一ポイント上昇したところでございます。平成十年度から自主防災組織に対する補助制度を設けるとともに、十一年度以降、リーダー育成研修を県下各地で実施するなど、その育成を支援しているところでございますけれども、平成十七年度にはこの組織率を七〇%にまで高めるよう目標を設定しまして、市町村の自主防災組織の育成強化を図っていきたいと考えております。
 次に、防災体制における専門家の人的確保についてのご質問でございます。
 とりわけ防災分野における人材の養成は重要であると考えております。防災担当職員をあらゆる研修会、研究会等に参加させ、その専門知識を備えさせたいと考えております。ご提案の専任研究員の配置、とりわけ防災先進県への人材派遣・研修等につきましては、これは有意義なことと考えており、他府県の取り組みなども参考にしながら今後検討課題としていきたいと考えております。
 次に、地震・津波対策の現状のうちで、公共施設の耐震実態調査はどうなっているかというお尋ねでございますけれども、本県におきましては、毎年、県と市町村の公共施設につきまして耐震改修の状況調査を実施しております。これによりますと、平成十三年四月一日現在で見ますと、昭和五十六年以前の、すなわち建築基準法の耐震基準が強化される前に建築されました公共施設に対する耐震診断の実施率でございますが、県が四六・五%、市町村が九・二%という状況でございます。また、各市町村の防災拠点の耐震性等につきましては、全体として百四十六棟のうちで六十八棟の耐震性が確認されているという状況でございます。
 なかなか難しい課題ではございますが、今後、本年四月に設立いたしました県の地震対策協議会の耐震化対策部会などを通じまして耐震診断の早期実施について行政指導をしてまいる所存でございます。
 次に、東南海・南海地震対策のための特別措置法の立法化に向けての取り組みについてでございます。
 地震の予知を前提としました、また東海地震を想定して制定されました大規模地震対策特別措置法の対象とならないこの東南海・南海地震の対策につきましては、これを東海地震対策に準じるような別の法的枠組みを設け、また国家プロジェクトとしての位置づけを明確にする必要があるといった観点から、本県が中心となりまして三重県、大阪府、高知県とも連携しながら特別法の制定活動を行ったところでございます。この結果、異例のスピードで法案として取りまとめていただき、昨日、国会に上程される運びとなったものでございまして、この早期成立を心から期待しているところでございます。
 次に、地震防災対策特別措置法に基づく地震の防災緊急事業についてのお尋ねでございます。
 本法に基づく五カ年計画を二次にわたり策定したところでございます。平成八年度から十二年度までの第一次の五カ年計画では、計画事業費として三千四百八十六億円に対しまして三千八十五億円の事業を実施し、八八・五%の進捗率となっております。また、平成十三年度を初年度とする第二次の五カ年計画の計画事業費として二千五百五十七億円を計上し、現在鋭意各事業に取り組んでいるところでございます。
 次に、防災に関する県単独事業の長期計画についてでございます。
 東海地震におきましては、先ほど申し上げました特別立法に基づいて早くからその対策に取り組まれていたところでございますが、東南海・南海地震対策につきましては、率直に申し上げてその取り組みがおくれていると認識をしております。今回、こういったことを踏まえまして、まずは南海地震に対する特別法の制定に取り組んだところでございまして、これを一つの重要な機会ととらえまして、さまざまな対策の強化に結びつけていきたいと考えております。
 現在、国の東南海・南海地震等に関する専門調査会におきまして、地震の被害想定や防災対策のあり方などが検討されているところでございまして、本県といたしましてはそれらの結果も踏まえながら、県単独事業を含めた事業の重点的、計画的実施について検討してまいりたいと考えております。
 また、その財源としての県民公募債の発行をとのご提言についてでございます。
 いわゆるミニ公募債につきましては、県民の方々の県政への参加意識高揚とともに、県としましても今後の資金調達先の多様化にも寄与するものと考えております。ただ単に資金調達のための地方債発行、これは制度上困難でございますが、特定目的での県民公募債発行につきましては一つのご提言と受けとめまして、他県の状況等も踏まえながら広く検討してまいりたいと考えております。
 続きまして、総合情報ネットワークの構築についてでございます。
 災害の発生時におきまして、県、市町村、防災関係機関が必要な情報を迅速に把握し、かつこれを正確に伝達することは非常に重要なことでございます。このため、防災情報の一元化、高度化、共有化を図ると、こういったことをコンセプトとして現在、庁内の五部十五課と警察本部で構成する防災情報通信システムの研究会を設置しまして、防災総合情報システムに導入すべき情報の内容あるいはその通信基盤などの検討を鋭意進めているところでございます。
 次に、ライフラインの確立の取り組みについてのお尋ねでございますが、県地域防災計画におきまして、ライフライン関係の予防計画、それから災害応急対策計画として電気、ガス等の実施主体ごとにその実施方針、実施内容等を定めているところでございます。平素から災害に強い環境整備を図っていくとともに、いざ災害が発生した場合には、これに基づき応急の復旧対策を実施することといたしております。さらに、震災時におきましては、電気、通信、ガス、交通等の事業者と県、市町村の応急復旧事業が円滑に行われますよう、防災会議や防災訓練等を通じまして連携を一層密にしてまいりたいと考えております。
 最後に、予知の可能性を目指す展望についてのご質問でございます。
 東南海・南海地震につきましては、ご指摘のとおり、東海地震と異なりまして、その発生時期についての警報が出せるほどの確かさで事前の予知を行うことは現在の科学技術の水準では困難であると聞いておるところでございますが、将来の予知に向けて地震観測体制の整備充実を国に要望しているところでございます。
 現在、政府の地震調査研究推進本部では、東南海・南海地震に関する調査観測の強化の検討に着手しておりまして、今年度末をめどに調査観測強化計画──仮称でございますけれども──こういったものを取りまとめる予定になったと聞いております。これも今回、県から国へ提言した内容がいち早く実現に向けて動き出したものでございまして、期待をしているところでございます。
 ご提案の地震の前兆をとらえましたいわゆる宏観現象のネットワークづくりにつきましては、現時点ではなかなか取り組みが難しい面もございますが、今後こういった地震予知に向けた研究動向等も見きわめながらこれを生かすことができないかと、こういったことで関心を持っていきたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 地震・津波対策事業についてお答えいたします。
 まず、民間の家屋倒壊防止対策についてでありますが、民間建築物の耐震対策は本来所有者みずからで対応するのが基本でありますが、昨日特別法が国会に上程され、地震防災対策の必要性が改めて強く認識されているところでありまして、民間建築物の耐震対策は重要であるというぐあいに考えております。そのため、県民に対し震災対策の啓発を行い、防災意識の向上を図り、耐震診断、改修の促進に努めてまいりたいと考えております。
 県内の民間建築物の耐震実態調査につきましては、現状把握はできておりませんが、不特定多数が使用する大規模な建築物については防災上特に重要であるため、今年度より調査に取りかかる予定でございます。
 木造住宅の耐震診断につきましては、平成十年度より耐震診断費用の一部を補助する事業を行ってまいりましたが、四年間の実績が二十七件と少なく、より効果を上げるため、ホームページを開設し、簡易に耐震診断できるプログラムを一般に提供してまいります。
 また、耐震対策に要する改修費用につきましては、住宅金融公庫等の融資制度の活用を推奨してまいりたいと考えております。
 なお、新築建物につきましては現行建築基準法の新耐震基準で一定の安全性は確保されておりまして、県独自の耐震指導要綱は必要ないと考えております。
 次に津波対策でありますが、従来、海岸保全施設は主に高潮対策として整備を行ってきたところでありますが、津波のハード対策としては湯浅広港において津波防波堤の整備を進めております。今後の津波対策としましては、引き続きハード対策を進めてまいりますが、これには多くの費用と時間がかかり、その間に津波発生の危険性も増すことから、特別法制定の動きを踏まえて、市町村と連携を図り、一刻も早くソフト対策すなわち避難対策を充実させていく必要があると考えております。例えば、現在検討中の紀州灘沿岸海岸保全基本計画案におきましても、津波対策としては当面ソフト面での対策を図ることとしております。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十八番原 日出夫君。
○原 日出夫君 質問というよりも要望にかえさせていただきます。
 冒頭、私ちょっと漏れましたんですが、六月の三日、四日とかけて、県民クラブ、和田議員、開政クラブ、中村・冨安・浜田議員、公明党県議団、森・新田議員、新保守クラブ、私と山下議員、二十一世紀、野見山議員ということで合同勉強会で行ってきた経過の中で、私もこの六月議会、いろんなことでこれも勉強しながらぜひやりたいという中で、知事がすぐさま──私たちの関係ない部分ですけれども──行動を起こされて、ちょうどうまく私の質問と合ったわけでありますが、そういう意味で、国へも行ったときにそういう動きを積極的にやられているということもお伺いして、このように短期間で、いわば──大震法にはまだいっていませんが、大震法により近づいた特別措置法がつくられると。私はこれをぜひとも、大震法に基づかないと実際のハード面での財源的裏づけが国からまだまだできにくいと。簡単に骨子しか見ていませんが、ほとんどがソフト面の予算の特別措置法になっておると思いますので、大震法により近づけるという意味でのさらなる努力をお願いしたいと、一つはこう思います。
 それからもう一つは、私が体験者の事例をたくさん挙げさせていただいたのはなぜかと言いますと、一般の公共事業に──先ほども土木部長が答えていただきましたし、もちろん農林水産の漁港の関係も入るわけですが、そういった関係をする場合に、すべての積算設計が最高で高潮対策にとどまっていると。したがって、少なくとも我が和歌山県のこの海岸通りは津波対策に対するかさ上げ──六メートルも七メートルもということは言っていません。この前の昭和の南海地震では、最高で大体四メートルから五メートル、今度襲ってくるのは大体五・八から六メートル前後というふうに言われておりますが、そういう堤防をつくれとは皆さんは言っていません。現在、例えば先ほど言いました関係のところで、普通は三・一から三・二メートルが平均的にやられているわけであります。これをせめて四メートルにするだけのかさ上げをして、少なくとも一斉に来る波を消してほしい、消波してほしいと。それで浸水しようが、それでも家はもつと、こういうことを皆さんが強く言われているわけであります。今後そういう意味でも、地域の皆さんの要望にこたえながら、港湾事業や海岸の漁港事業、その他の事業に対して、そこの地域に合った形での一定の方針を早急に打ち立ててほしいと、これをぜひともお願いしたいと思うわけであります。
 それから、耐震の建物とか、いろんな問題で答弁もありました。平成十三年度で実は耐震モデル事業が終わって、今部長が答えたように二十六件プラス一、二十七件しかできてなかったということでありますし、これも含めて先ほどの第一次、第二次計画、第二次が十七年度までやられるわけですが、こういった問題が、防災に関するすべての分野が市町村や県、それにかかわる関係者、住民、例えば耐震に対しては設計工務店、こういった人たちの連携がなされていない。なぜこれが平成十三年度でカットされたのかと、設計士の皆さんが言っていました。そうかなということで私も勉強不足だったんですが、実際に調べますと、耐震モデル事業は実は件数が少なかったので、財政の方ではこれは少ないからということで打ち切ったと。これは簡単に打ち切ったと言うんですけれども、私は、そういう啓発と市町村や関係者とが本当に一体となった耐震診断事業が具体的にやられていなかったからこういう結果を招いたと思うわけであります。財政としたら中身がわからず、そんなもんということでカットしてしまった。こういうことでは、実際に防災そのものを全体の各セクションで統括しながら防災に関係するすべての分野では防災を必ずその中に位置づけていくという基本理念がやっぱりきちっと柱として庁内でできていないんじゃないかということを感じましたので、その点、ぜひ統一をしていただけたらありがたいと、私はこう思うわけであります。
 それからもう一つは、いわゆる防災対策に対する組織から始まって全部言いました。しかし、私があえてそのことを言いましたのは、我が和歌山県として、防災に対する基本方針、それから施策体系いわゆるカテゴリーができていない。だから、私が見たのは、平成七年の阪神・淡路大震災以降における本県の地震防災対策並びに一次、二次。五カ年計画はこうですというふうに出るんですが、長期的に見て、我が防災をするために昭和南海地震の経験を踏まえて基本方針と施策方針、そのカテゴリーを各分野で立てていくという部分では非常にまだないのではないかと。そのことをぜひとも庁内挙げて、防災──先ほど出ていた委員会においてそれを打ち立ててほしいと。こういう全体の構想の中で毎年こういう形で地震・津波対策に対して一丸となって取り組んでいるんだということを県民に早く指し示してほしいと、このことを要望したいと思います。このことについては終わります。
 次に、緑の雇用事業と林業施策です。知事の答弁をいただきまして、そのとおり、ありがたいと思っております。
 その中で、この間、農水省と環境省の両省が地球環境保全と森林に関する懇談会がされましたが、今知事が申されたとおり、そういう意味で、緑の雇用事業の動きがこの地球環境保全と森林に関する懇談会にかなり強く打ち出されております。これは大変な力だったと思います。森林を就業の場とする緑の雇用の促進、森づくりへの市民参加の必要性を初めてこの地球環境保全と森林に関する懇談会の中で取り入れたと。その中で、私はこのことも知ってほしいと思うんですが、人工林と天然林の計画をきめ細かく書き込むべきだという意見とか、先ほど私が言いました木材利用の重要性をもっと明確に位置づける必要があるというふうに言われております。この部分でも緑の雇用事業の中に木材業の重要性をも引き続き強調するならば、この地球環境保全と森林に関する懇談会が、さらに国においても農水省、環境省において積極的に考えていただけるように思うので、この点でも声を大にしてぜひとも反映していただけたらありがたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で原日出夫君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十六分休憩
     ─────────────────────
  午後一時二分再開
○副議長(堀本隆男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十六番高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕(拍手)
○高田由一君 お許しをいただきましたので、早速、一般質問をさせていただきます。午前中の原議員の地震の質問とは少し重複するところも出るかと思いますが、ご容赦ください。
 最初に、東南海・南海地震への対策について伺います。
 昨年九月に発表になった政府の地震調査委員会の分析は、東南海と南海地震が今後三十年以内に四〇%の確率で発生することを明らかにしました。いよいよ南海地震対策が待ったなしの状態になっています。
 先日、知事も出席されていました「激震が襲う日」というテレビシンポジウムを私も見ました。その中である著名な学者は、一七〇七年と一八五四年に起こった巨大地震は、東海、東南海、南海の三つの地域が同時に動いて起こった地震だったことを取り上げて、この三つの地震は本来同時に起こるのが普通であって、ばらばらに起こるものではないんだということを強調されていました。政府の中央防災会議のメンバーも出席されていて、やはり三つの地震は同時発生するかもしれない、国もこれまでの考えを変えて対策を進めるとの発言がございました。さらにこのシンポジウムでは、内陸の活断層による直下型地震についても警告がありました。兵庫県南部地震を皮切りに、西日本は地震の活動期に入ったと言われています。そして、約五十年後に起こる南海地震あたりまで危険な状態が続くと言います。その間は、およそ五年に一度は大きな地震が起こるというのが前回の活動期の状況でした。今回も兵庫県南部地震を皮切りに、一昨年の鳥取県西部地震、昨年の芸予地震と、シナリオどおりの発生をしています。和歌山市から紀の川沿いに走る中央構造線は、学者に言わせると世界に誇れる第一級の活断層だそうで、およそ二〇〇〇年周期で動きますが、ここ千数百年は動いたことがないという大変不気味な存在であります。今回の活動期に動く候補になっているそうであります。大津波を伴う巨大地震と県庁所在地を襲う直下型地震、和歌山県の地震対策はこの二つを相手にしなければならないのです。
 実際、政府の中央防災会議は、今、東海、東南海、南海の三つの地震が同時に起こったケースも含め、各ケースごとに各地の震度と津波の高さを割り出す予測作業中で、その資料がことしの秋にまとまり、被害想定を発表する予定になっています。和歌山県内での具体的な対策はそれができてから、あるいは知事が昨日発言されたように、南海地震への特別措置法が成立してから、今までの対策を仕切り直しして再検討することになると思います。しかし、少なくとも今からすぐにできる対策を確実に進めることが必要であります。人的な被害の規模は、地震が起きた直後から三十分以内の対応によって大きく左右されます。今回の私の質問では、その時間帯への対応に絞って議論をしたいと思います。
 その点でまず第一に、倒壊する家屋に押しつぶされないこと、第二に、津波からいかに早く逃げるかということが重要だと考えています。
 まず第一の、家屋の倒壊を防ぐ対策について伺います。
 県の防災計画の予想でも、南海地震では、県南部の地域で震度七、和歌山市周辺でも震度六弱が予想されます。また、中央構造線が引き起こす直下型の地震では、和歌山市周辺で震度七の予想が出ています。これらの地震での住宅の倒壊は、阪神・淡路大震災並みになるかもしれません。個人の住宅については、昨年度まで耐震診断への補助事業がありましたが、先ほど議論があったように余り人気がなく、本年度から廃止になりました。耐震診断だけしても、実際の住宅の補強には多額の費用がかかり、そこまでできないということだと思います。私は、この際、静岡県がやっているような古い木造住宅の補強に補助を出していくことを求めたいと思いますが、土木部長のご答弁をお願いいたします。
 第二に、津波からいかに早く逃げるかということであります。
 県の防災計画では、マグニチュード八・四の南海地震の場合、最も波の高い地域で八メートルを超える予想が出ています。また串本町では、たった十分で四メートル前後の津波が押し寄せると言います。
 昨年十一月に行われた日本災害情報学会の「南海地震に備えて」というシンポジウムで、東京大学地震研究所の阿部教授は次のように述べています。「前回の南海地震がマグニチュード八・一、想定される次の地震がマグニチュード八・四。マグニチュードで〇・三の差というのは、地震のエネルギーに直すと約三倍です。昭和の南海地震が三つ同時に発生したようなエネルギーを持つことになる。津波の高さから言うと二倍くらいになる。現在、当時の経験を持って生きておられる方は、昭和の南海地震は経験したけれども、次の地震はそれが再現されるというより、むしろ危険性はもっと高くなる。地震の規模が大きいということは、強い揺れの領域が広がるということで、昭和の南海地震は当てにならない。津波の発生域も広がる。そのため、過去に津波が何分後に来たということも、地震が大きくなるともっと早く来る可能性がある。前回十分後に津波が来たといっても、今回は五分後かもしれない」、このように言って警告を発しております。
 また、同じシンポジウムで高知県の消防防災課の職員は、次のように述べています。「実際に芸予地震があって、そのとき高知市では震度五弱でした。その瞬間には、これが南海地震か何地震かは当然わからないわけです。ずっと、沿岸地域の人には避難訓練ということで、揺れたらすぐに逃げましょうということにしていたけれども、皆さん、ラジオ、テレビをつけてじっと見ている。津波なしと出るまで八分かかりましたが、八分というと既に津波は到達している。そういうものを待って行動していては遅い。実際、みずから避難した人は一人しかいなかった。情報というものを当てにし過ぎたために命を失うケースが出てくる。揺れたら逃げるということがどれだけ徹底しているかが一番の心配です」、このように述べて、住民の主体的な判断の重要性を述べています。
 したがって、今後、住民には地震が来たらすぐに高台に避難すること、できなければ近くのコンクリート製の建物の三階以上に避難すること、この周知徹底を図らなければなりません。また、前回の南海地震より震度も津波も大きくなるということを、ふだんから住民に意識づけをしておく必要があります。その一環として私が提案したいのは、例えば、今、海岸部の市町村に行きますと、昭和南海地震の当時に津波がここまで来ましたという石柱なんかが立っていて、赤いラインで到達の線が引かれているんですけれども、それを見て住民は日々警戒しているわけです。しかし、今度に限って言えば、それ以上のが来るかもしれないということなんです。ですから、次の南海地震で予測される津波の高さ、これは秋に出るそうですが、これも同時に標示することによって、ふだんから住民に、今度のは危ないよという意識づけをきちんとしておくことも必要ではないかと考えています。その点について、総務部長のご答弁をお願いいたします。
 次に、避難場所に指定されていることの多い公的な建物の耐震診断の進捗状況はどうなっているでしょうか。おくれているのなら、今後どのように推進していくのでしょうか。さらに、避難場所で心配なのは、休日や夜間など、建物にかぎがかかってあけられない状態にある場合一体どうしたらいいか、この声も串本町でせんだって聞いてまいりましたが、そうしたことへの対策はどうなっているでしょうか、答弁をお願いしたいと思います。
 次に、子供たちへの教育について伺います。
 地震は、それこそいつ起こるかわかりません。時と場合によっては、たとえ小さな子供たちでも、自分の命を守るための主体的な判断が必要になる状況が生まれてきます。学校教育の中で防災訓練の実施などはもちろんですが、学校外にいるときの対処の仕方、あるいは地震と津波の科学的な理解を進める必要があるのではないでしょうか。教育長の答弁を求めます。
 この問題の最後に、東海地震への対策について若干伺います。
 東海地震については、さきに地震防災対策強化地域が拡大され、三重県でも熊野市までの海岸の市町村が指定をされています。この東海地震の強化地域に入ると、東海地震の警戒宣言が政府から出された場合に、あらかじめ決めておいたマニュアルに従い、交通や安全管理の面でいろいろな規制が行われることになっています。しかし、東海地震による津波が来るのは、新宮市から串本町にかけての海沿いの市町村も同じであります。指定地域では警戒宣言による規制がかかっているのに、こちらはふだんどおりというわけにはいかないと思います。鉄道や交通、ライフライン、さらには小中学校での対応などさまざまな検討課題があると思いますが、そのマニュアルをつくっておく必要はないでしょうか。答弁をお願いいたします。
 次に、ホームレスの問題について伺います。
 先日、田辺市内にいましたホームレス状態にあった方が、もう腰が痛くてどうしようもなくなって、生活保護を受けたいんだという旨相談がございました。早速、市や県の福祉事務所と相談いたしましたが、まず住むところを決めてくださいとの指導でありました。また、入院が認められるような健康状態なら入院した時点で職権保護ができるとのことでしたが、その方は病院には行っていたものの、薬を出されただけの状態でした。私は、仕方なく、知り合いに頼み込んで、アパートの一室を借りて、そこの住所から生活保護の申請を現在しているところです。たまたま相談に乗りましたので、あれこれと手を尽くすことができましたが、例えば、もし仮にそうしたホームレスの方が一人で相談に行ったとき、まず住所を決めてくださいと言われればどうでしょうか。せっかく福祉事務所を訪ねたが、やはり救われなかったと悲観するのではないでしょうか。白原部長、住所が定められないからホームレスをやっているんじゃないですか。こんなひどい話はないと思います。
 私は、こんなはずはないとその後いろいろ調べてみますと、厚生労働省も、今不況のもとで大変な事態になっているということで、昨年三月の全国の担当課長会議ではっきりと見解をこのように出しています。少し読んでみます。「ホームレスに対する基本的な生活保護の適用について」という資料ですが、その中に「居住地がないこと(中略)のみをもって保護の要件に欠けるものではない」、このようにきちんと書かれています。ちゃんと、ホームレスの状態でも保護はできるんだということだと思います。でも、現場での運用は必ずしもそうなっていないというのが実情であります。以下、福祉保健部長に質問いたします。
 一、各福祉事務所別のホームレスの状況は把握されているでしょうか。
 二、ホームレスの方が生活保護を申請した場合の対応が間違っているのではないでしょうか。
 三、ホームレスの方が相談に行ったときなど、公営住宅の空き部屋の活用などをして、一時避難できるような対応が必要ではないでしょうか。答弁をよろしくお願いいたします。
 次に、市町村への総合交付金制度の創設について伺いたいと思います。
 聞きなれない言葉だと思いますが、例を挙げて言いますと、今お手元にお配りしております鳥取県のパンフレットがありますが、中山間地域活性化交付金というのがございます。過疎地の住民がみずから集落を元気にするアイデアに、県と市町村が一地域当たり三年間で最大二千万円を交付する制度になっています。お金を出す側がメニューを限定しない自由さが売り物になっています。二〇〇一年度は十三地区の採用を予定していたらしいですが、申し込みが殺到し、補正予算を組んで対応したといいます。
 この事業の適否については、一、住民が広範な参加をした話し合いのもとに計画されているか、二、計画が住民合意を得ているか、三、将来にわたる継続性があるか、この三点で県や市町村が各集落の計画を判定して採択します。しかし、中身には口を挟みません。行政が住民を信頼するやり方で、当然その裏返しとしては住民には自己責任がつきまとうのです。いいか悪いかは別にして、鳥取県の担当者は市町村を均等に支援することは考えていない、こうはっきり言っていて、この制度は集落や市町村に創意工夫の知恵比べを迫っています。
 そして、この交付金をもらうのに欠かせない取り組みが地域住民の参画によるワークショップの開催であります。ワークショップとは、みんなで寄り集まって自由濶達に意見交換しながら計画を練り上げていくやり方であります。住民みずからが地域の資源を掘り起こし、問題点を明らかにするために、子供から大人まで参加する意見交換の場を持っています。このワークショップ方式は、今各地で地域おこしの原動力になっています。岩手県では、それを「地元学」と呼び、県の総合計画の中で推進を図っています。岩手県の総合計画は、次のように述べています。「住民が何げなく過ごしてきた地域には、実は貴重な資源が存在しています。こんなものがと思うような当たり前のものが、実は地域外の人々にとっては新鮮で価値あるものだったりする。それを見出すことが地元学の第一歩です」、このように書いています。お隣の三重県では「三重ふるさと学」と言っていますが、こうした取り組みを市町村職員の研修の場として取り入れているようです。「仏つくって魂入れず」というような、今まで余りにもこのような補助事業が多かったのではないでしょうか。これからは、まず行政がしっかりお手伝いをして、地域の魂をつくった上で仏さんをつくる。この方法が税金のむだ遣いをなくすためにも有効であると考えます。
 和歌山県にも振興局単位ではそうした趣旨の補助金がございますが、まだまだ不十分だと思います。市町村への総合交付金制度の創設、及び住民がみずからの地域を元気にするためのワークショップの開催を推進していくことを提案いたしますが、知事の考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、観光地バリアフリー情報のPRについて伺います。
 今、観光地ではホスピタリティー、いわゆる温かくもてなす心の重要性が言われています。どんなに設備が豪華な施設でも、お客さんに対して心のこもった対応が行われなければ満足されないという接客の基本がこの言葉の背景にあると言われています。ホテルなら接客、部屋の掃除、食事などを一つのまとまりとしてお客は評価するそうです。
 なぜこんなことを言うかというと、私の地元の県内最大の観光地の一つである白浜町を振り返るとき、この温かくもてなす心が欠けていはしないかと心配しているからです。特に夏場は、早朝、深夜を問わず、どこもかしこも車だらけやごみだらけになって、かつてならカランコロンとげたの音がして、お客さんがにぎやかに歩く音がうるさいぐらいでしたが、そんな音の風景も今は車によってかき消されているような状態です。町内にあふれ返る車を減らせば、お客さんにとっても住民にとっても居心地のいい町になりますが、しかしそれではお客さんが減ってしまいます。この相反する課題を解決できないかということで、先日私は地方新聞の紙上に投書をいたしまして、旧白浜空港の跡地利用についての提案を行いました。要点を言えば、かつて白良浜と旧空港付近を結んでいた白浜ロープウエーというのがありましたが、これを復活させて、その上で夏場の車の渋滞対策として空港跡地の一部を駐車場として無料開放し、町内にあふれる車を誘導する、そこでロープウエーに乗りかえ、旧空港から白良浜までの約四分の空中散歩は大変楽しいと思うのです。もちろん、ロープウエーの採算をとるためにも、一年を通してお客がなければなりませんから、町民からも、また合宿に訪れる大学のスポーツクラブなどからも大変要望が強いスポーツグラウンドを含めた公園を空港跡地につくってはどうかと提案しています。今後、県当局にも知恵をかりたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 さて、このホスピタリティーの問題で考えさせられることがありました。この前の日曜日には、白浜町で介助犬についての講演がありました。飼い主の名前は木村さん、介助犬の名前はシンシアといい、その方面では知る人ぞ知る有名人と有名犬であります。介助犬とは、体の不自由な人の手や足のかわりとなって働く犬のことです。折しも、五月二十二日には超党派の議員立法で身体障害者補助犬法が国会で成立したばかりであります。盲導犬や聴導犬、介助犬などは、今後、公共施設でも民間施設でも堂々と同伴できるようになってまいります。もちろん、観光地としても、介助犬など同伴の方にも開かれた観光地としてのPRが今後欠かせなくなってまいります。
 その点で、最近の三重県の観光PRを見たんですけれども、大変よくできているなと感じました。ここに「三重バリアフリーレジャーガイド」というのがあるんですけれども、各施設について、車いすでの利用や介助犬の同伴の可否についても記載をされています。「誰でも、行けそう、楽しそう」というのがキャッチフレーズになっていまして、三重県ですから中尾ミエさんを表紙にしていることがしゃれになっているんですけれども、いろいろな障害がある人でも、あちこち観光できますよという意思表示といいますか、地域全体でホスピタリティーあふれる観光地としてのPRを展開されています。和歌山県でも、バリアフリーを強調することは得になっても損はしないと思います。
 観光地のバリアフリー化並びに体験型観光にもバリアフリーメニューを取り入れること、さらにその積極的なPRについて、今後の決意を商工労働部長にお尋ねをしたいと思います。
 最後に、JRきのくに線の合理化問題について伺います。
 このJRの問題については、昨年十二月議会でも取り上げ、大きな問題になりましたが、早くも次の合理化計画が提案されているんです。今度は、きのくに線の御坊から紀伊田辺間の普通電車をワンマン電車にしようという計画で、予定ではこの十月のダイヤ改正で導入されるようであります。基本的に、ワンマン電車は安全上二両編成になっています。今は四両編成で運用されていますから、利用者に不便にならないか私は心配しています。何よりワンマン運転では、あの悪名高い田辺から新宮間のトイレなし電車の例がありますから、どうなるのか大変危惧をしております。私はこの話を労働組合の方から伺いましたが、この問題では知事にも骨を折っていただき、県とJRとの十分な協議をするようになっているはずです。今回の合理化計画を県としてどのように把握され、またどう対応しようとされているのか、企画部長に明快な答弁をお願いしたいと思います。
 以上で、第一回の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(堀本隆男君) ただいまの高田由一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの元気が出る地域づくりの交付金、こういうふうなものを和歌山県も取り入れたらどうかというご質問です。
 和歌山県でも、これに類するような小さな規模のものはあるわけですけれども、これからのいろいろの仕組みというのは、NPOであるとか、地域の住民が自分たちで地域をつくっていく、そういうふうなものに県が支援するという形でなかったら、本当に補助金などがむだになっていくというようなことがあります。
 先般、和歌山県でも根来山げんきの森がオープンしました。これは大々的なもっと大きな公園にする予定だったんですけれども、今回その一部をオープンしたわけです。これについては、私もオープンに行きましたけれども、その整備に住民とかNPOの人たちが参加しており、それゆえにその人たちが物すごくその公園を大事にする気持ちが強いということで、非常にうまくいっているということもあります。そういうことですので、これは非常にいいご提言だと思いますので、和歌山県でもこういうふうな方向をいろいろ取り入れてやっていけるような形で考えていきたいと、このように思っております。
○副議長(堀本隆男君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 地震対策のうち、住宅の安全性についてお答えいたします。
 昨日、特別法が国会に上程され、地震防災対策の必要性が改めて強く認識されているところでもあり、古い木造住宅の耐震対策は重要であると考えております。そのため、耐震診断につきましては、ホームページを開設し、簡易に耐震診断できるプログラムを提供してまいります。また、耐震対策に要する改修費用につきましては、住宅金融公庫等の融資制度の活用を推奨してまいりたいと考えております。
○副議長(堀本隆男君) 総務部長稲山博司君。
  〔稲山博司君、登壇〕
○総務部長(稲山博司君) 東南海・南海地震対策のうち、住民へのふだんからの意識づけが必要ではないかというご質問でございます。
 県では、地域防災計画の策定に当たり、その前提となる南海地震の地震想定を、過去に発生した最大規模のマグニチュード八・四として、各地域の震度分布の予測あるいは津波浸水想定を立てているところでございます。住民への啓発も、当然のことながらこの想定を前提として行っているところでございます。例年、防災安全地方講習会、「県民の友」での防災特集記事の掲載、あるいは自主防災組織を対象とした図上訓練等を行っているところでございますが、本年度からは新たに沿岸地域住民を対象とした津波避難訓練も実施してみたいと考えております。今後とも、住民の皆様に対しまして、防災の基本である自分の命はまず自分で守るという意識づけをさまざまな機会を通して行ってまいりたいと考えております。
 また、その関連でご指摘のありました浸水高の実績及び想定を示す標識の設置についてでございますが、既に幾つかの市町村におきまして浸水の実績を示す標識あるいは石碑等が設置されているところでございますが、津波避難対策をする上で一つの有効な方策であると考えております。
 それから、避難場所の安全性についてでございます。
 市町村によりまして、その多くを避難場所として指定されております県と市町村の公共施設の耐震診断の進捗状況につきましては、平成十三年四月一日現在で見ますと、全六千百九十五棟のうち、建築基準法の改正により耐震基準が強化された昭和五十七年以降に建築されたものが二千百六十三棟で三四・九%でございますが、また昭和五十六年以前に建築されたものが四千三十二棟で六五・一%という状況になっております。この昭和五十六年以前に建築された四千三十二棟のうち六百五十棟について耐震診断が実施されているという状況でございます。実施率といたしましては県施設で四六・五%、市町村施設で九・二%、全体の実施率としては一六・一%という状況でございます。今後は、本年四月に設立いたしました県地震対策協議会耐震化対策部会などを通じまして、その早期実施について要請・指導してまいる所存でございます。
 また、災害時の避難場所につきましては、県の地域防災計画におきまして、「市町村長がそれぞれの地区の実情、災害の種類等を十分検討の上、危険区域と危険図を想定し、関係機関と協議の上、あらかじめ選定」すると定めておりまして、これを受けまして、県下市町村により避難場所として九百十六カ所、広域避難場所として一カ所、避難施設千四百五十施設が指定されている現状でございます。ご指摘のありました夜間、休日等の対応につきましては、市町村の地域防災計画の修正協議等を通じまして、市町村に対して要請・指導してまいりたいと考えております。
 最後に、東海地震の警戒宣言への対応についてでございます。
 東海地震の警戒宣言が発せられた場合における応急対応につきましては、県の地域防災計画におきまして、東海地震の警戒宣言に伴う対応措置計画を定めているところでございます。東海地震の想定震源域の見直しがされましたことから、警戒宣言が発令された場合における対応について定めておくことが重要でございますので、津波の影響があるとされております熊野灘沿岸の関係市町に対しまして、まずその基本となる地域防災計画にこれを定めるよう要請・指導を行っていくこととしているところでございます。
○副議長(堀本隆男君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) ホームレス問題の三点についてお答えいたします。
 まず、県内のホームレスの状況でございますけれども、平成十三年九月現在で各市町村が把握している直近の状況は、和歌山市四十六名、海南市二名、橋本市二名、田辺市一名の合計五十一名となっております。
 次に、ホームレスの方が生活保護の申請を行った場合の対応についてでございますが、居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものではなく、一般世帯と同様に取り扱うこととなっております。したがって、個々のケースの実情に応じ保護の要否を判定することとなっておりますが、保護が必要な場合は施設入所等の方法により保護を行うことができますので、各振興局等に対し、さらにこの趣旨を徹底してまいります。
 次に、緊急避難場所としての公営住宅の活用等につきましては、ホームレスの方々の個々の実情等を勘案しながら、市町村等関係機関と連携を図り対処するよう各振興局等を指導するとともに、自立に向けての指導、援助を十分行うようケースワーカーを指導してまいります。
 なお、国においてはホームレスの自立支援対策が進められており、県といたしましても国の動向等を見ながら対応してまいりたいと考えております。
 以上です。
○副議長(堀本隆男君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 観光地バリアフリー情報のPRについてでございますが、社会の急速な高齢化や障害者の自立と社会参加の要請等に適切に対応していくためには、観光面においてもバリアフリー化は極めて重要であると考えてございます。こうした観点から、これまでも啓発や情報発信などに努めてきたところでございますが、特に本年度予算におきましては、新規事業として市町村が実施する観光地のバリアフリー化事業に対して補助することとしてございます。
 議員ご指摘のバリアフリー情報の発信につきましても、観光連盟が定期発行している観光情報誌など各種刊行物を活用し積極的にPRをしてまいりたいと考えており、今回の身体障害者補助犬法の趣旨徹底を含めた事業者に対する啓発など、ハード、ソフト面にわたる施策をより一層推進してまいる所存でございます。また、体験型観光のバリアフリー化につきましても、今後も市町村並びに受け入れ側の施設にご理解が得られるよう努力してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(堀本隆男君) 企画部長垣平高男君。
  〔垣平高男君、登壇〕
○企画部長(垣平高男君) JRきのくに線の合理化問題についてお答えを申し上げます。
 ご指摘の合理化策につきましては、JR西日本和歌山支社によりますと、JR内部の調整段階であって、社としての方針決定には至っていないということでございます。県といたしましては、時期を失することなく情報収集に努め、県議会や沿線自治体のご協力を得ながら、利用者の利便性確保を第一義として対応してまいりたいと考えてございます。
○副議長(堀本隆男君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 地震対策のうち、子供たちの教育に関してお答えいたします。
 平成七年一月に起こりました阪神・淡路大震災は、学校等における防災体制や防災教育のあり方に大きな課題を残しました。災害時の危機管理や安全に対する判断能力を高めることは極めて大切であると考えております。
 このため、大震災以降、防災教育担当者講習会や防災教育、災害時の心の健康に関する研修会等を開催し、防災教育の一層の充実を図るとともに、教員等の指導力の向上に努めているところでございます。また、各学校では、各教科、道徳、特別活動の教育活動全体を通じて、日ごろから防災上必要な安全教育の推進を図り、避難訓練等を実施して防災対応能力の育成を図っているところであります。
 なお、このたび東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案が国会に提出されたところであり、その内容を踏まえ、これまで以上に防災の重要性について指導の充実に努めてまいりたいと考えております。
 以上です。
○副議長(堀本隆男君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十六番高田由一君。
○高田由一君 三点、少し文句といいますか、要望も言わせていただきたいと思います。
 まず地震対策では、子供の教育について要望したいと思います。
 私自身は、海の近くで生まれ育って、波というものの怖さは十分わかっているつもりなんですけれども、例えば白浜へ来ているお客さんが千畳敷なんかへ行って、土用波のあるときにでも行って足をすくわれてはたき込まれるというのが何年かに一度必ず起こるんです。大人は県なりがする勉強会である程度学習する場があるかもわからないんですけれども、やはり子供には教育の場で海の波の持つ破壊力のすごさというのが実感としてわかるようなプログラムといいますか、それが必要かなと考えているんです。
 実は、那賀郡の消防組合なんですけれども、夏休みを利用して、防災問題の試験にチャレンジして、受かったら防災博士認定ということで子供たちに表彰状を渡して啓発をしているそうなんですけれども、小中学生が楽しく学ぶ中で知識を得ていくというような工夫も大事じゃないかなと思っています。よろしくお願いをしたいと思います。
 次に、ホームレスの問題です。
 県内の状況についてはご答弁いただきましたが、今、議場のあちこちから声が上がったとおり、地元の方の認識とは違っているわけなんです。もっと多い状況にあります。この状況把握はきちんと──これは多分、目視でずっと回られたやつだと思うんですが、把握できるような状態を確立していただきたい。
 それから、全国的にも今大きな問題になっています。どんな実情かと言うと、行き倒れ状態になって医療機関へ運び込まれると。そこでは生活扶助を職権で適用されて、しばらく入院するんだけれども、治療を終わりましたと。その後、行く場所をきちんと探してくれるかというと、そうじゃなくて、そのまままた野外へ行って、そういうことが繰り返されているというふうになっています。私は、行政機関が相談を受けたら、この住み場所の確保も含めてもっと真剣に探してあげる対応をしていただきたいと思うのです。職員が、住むところをきちんと一緒に考えましょうよというふうに対応してもいいと思うんですね。現場にいる職員に、一緒に行って住むところを見つけてくださいよと言われて、僕らが相談に乗って探し回ったりするわけなんですけれども、おかしな話だと思うんですよ。やはり、相談を受けた現場が親身になってきちんと対応をするようにしていただきたいと思います。
 それからJRの合理化問題ですが、部長、十月のダイヤ改正からもうやられようとしているのは、これは一つの情報なんですね。いまだ何の話もない、県と協議する機関をせっかくつくったのに、そんなことでは意味をなしていないということだと思うんです。
 実は、きのう現場に聞きました。ワンマン化への車両の改造とか、御坊で折り返し運転ができるように──ワンマンは御坊から北へ向いて行けませんから──そういう工事の計画がもう入っていると言うんです。現場はそうなのに、肝心の県がそういうところを把握できない状態にあるというのはおかしいと思います。舞台裏で準備しておいて、県との協議は形だけということになっていはしないかということを危惧しています。私は、こういう姿勢のJR西日本に大変憤りを感じています。それとともに、周辺自治体や利用者の声が十分反映できるようにきちんと意見集約をして、しっかりした態度で臨んでいただきたい。これも要望して、私の質問を終わります。
○副議長(堀本隆男君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で高田由一君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時五十分散会

このページの先頭へ