平成14年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(玉置公良議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○議長(井出益弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十八番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 最終の日の一般質問──今回、最終日にさせてもらうのは初めてでございますけれども、通告に従ってこれから質問をしたいと思います。
 「県民の飲み水を守り、全国初の危機管理条例を」のテーマで一般質問を行います。
 国連の統計によると、二十一世紀末には世界の人口が九十億人に達すると言われ、そのうちの三分の一の方、つまり三十億の方が水不足により何らかの影響を受け、中には亡くなっていく方も出てくる可能性があるというぞっとする統計が出ています。国連の関係者によると、二十一世紀前半から大きな規模で水をめぐる争いが後を絶たなくなるのではないかと懸念をしています。
 昨年の十月に放映されたNHKスペシャル「ウォータービジネス・水を金に変える男」で、飲料会社に委託されたバイヤーが約九億の人口を擁するインドに入り、小さな飲料水の会社を買収したり、またアメリカのフロリダ州の人たちの水がある日突然バイヤーによって買い上げられたりして、その周辺の人たちは水が飲めなくなって困っている映像が映し出されていました。そのバイヤーは、実に一日に億単位のお金を払って水の権利を得て商売をしていますが、その費用に十分見合う利益を出していると言い、「飲料水はこれから一番もうかる商品だ」とインタビューで言い放っている姿を見て、不気味な気持ちにさせられました。
 世界じゅうで急速に進む水の商品化、ボトルウオータービジネスの市場は実に年間八兆円と言われています。一獲千金をねらって世界を飛び回ってきた欧米の業者が次にねらう市場は、全世界の人口の七〇%近くを占めるアジアにねらいを定めるのは当然の成り行きであると私は思います。
 こうした状態が我が国に起これば、どうなるのでしょうか。仮定でもそんなことが起こっては困ると思いながら、そこで私は県内外の飲み水に関する権威者の大学関係者や専門家、そして地方自治体関係者に会い、調査をしました。その中で、ある大学の先生はこんなことを言っていました。「日本の水は大丈夫だよ。水は重たい。タンカーに乗せて運ぶとすれば高くつく。インドやフロリダのように外国の水バイヤーに買われることはないよ」、非常に楽観的な見方でありました。私はこれには驚きました。それというのも、日本の名水百選に選ばれています中辺路町の「野中の清水」が三年前に日量百トンあったのが四分の一に激減をし、町挙げて水量調査や原因究明の取り組みがされたことがありました。つまり、我が国の飲み水でさえ少なくなってきている中で、フロリダのようになったらどうなるのでしょうか。だからこそ、外国の水バイヤーに対してより一層敏感にならなくてはならないと私は思います。
 また、中東から日本へ原油を運んでくるタンカーが帰りには神戸の六甲のわき水を満載して帰っていったことを聞きます。このことは、中東の砂漠において飲み水の確保がいかに苦労し、高いものにつくのかを物語っていると思います。また、ヨーロッパの幾つかの国では、飲み水は貴重なため、水よりもうんと安いワインを水がわりに飲んでいるのです。それだから、日本の世界一うまいと言われる飲み水が外国からねらわれないはずはないと私は思います。
 次に、私は今の日本の法律ではどうなっておるのか、このことについて調査をしました。その結果、今の法律で地下水の取水規制について調べたところ、これに関連する地盤沈下防止を目的とした工業用水法等はありますが、広くわき水を含めた地下水の飲み水そのものに対する法律の規制は一切ありません。国の法律はない、そこで、それならば我が和歌山県の条例はどうなっているのかを調べましたが、これまた飲み水についての防御策は一切触れていません。私は、全国に問い合わせをしたり、現地に行ったりして調査をしたところ、都道府県では熊本県のほか十五都府県にありました。しかし、これらはすべて今問題にしています地下水の飲み水をバイヤーからガードすることにつながる内容のものではありませんでした。わかりやすく説明すると──皆さん方にお配りをしている資料を説明したいと思います。
 私は、サントリー山崎で有名な大阪の島本町や宮水で有名な兵庫県の西宮市、全国で一番進んでいると思われる熊本県や、和歌山で唯一、条例ではありませんけれども、地下水保全要綱がある白浜町など、全国に問い合わせをしてきました。全国の都道府県における地下水関連条例の制定状況は、都道府県のみでありますけれども、皆さんに配付の表のとおりであります。
 条例の名称はばらばらですが、熊本県を除いたところは地盤沈下を防ぐためにつくられたものであります。唯一、熊本県だけが──表で言えば上から四番目ですけれども──地盤沈下防止だけでなく地下水の水質保全と水量の保全、涵養を目的につくられています。取水をするためには、届け出制になっており、罰則については勧告、公表ができるとなっています。これは言いかえれば、何かがあったときには行政指導ができるということであります。実績報告の義務もうたっておりますが、水量保全の方は報告のみで規制がありません。つまり、水のバイヤーが自由に入ってきて、わき水を含めた地下水の飲み水の取水権を札束に物を言わせて買いあさることが熊本県でさえも自由にできる状況にあると言っても過言ではありません。
 私たちは、全国の地方自治体に先駆けて、このわき水を含めた地下水の飲み水についての外国資本からの買い占めを事前にチェックするための条例をつくらなければならないと思います。国に頼っても頼みにならないのならば、国に先駆けて私たち独自の条例を一刻も早くつくる必要が求められていると思います。知事、その点はいかがでしょうか。
 関西一の環境に恵まれた和歌山。先刻も、緑の雇用事業という画期的な話題になっている和歌山県です。そして、地下水利用が全国でも多い我が県として、環境対策として率先してイニシアチブをとる必要があると私は思います。なぜ和歌山県が率先してやらなければならないか、その証拠に次のようなデータがあります。
 我が県では、飲み水を中心としたわき水を含めての地下水の利用は全国平均の二倍近くまでという極めて高い利用状況にあります。地下水を飲み水に利用しているところが二人に一人あるということです。ちなみに、そのデータですが、和歌山県は約四二%と全国平均の二五%を大きく上回っています。飲み水ばかりではありませんが、これだけ地下水について関係が深いのであります。また、私たちの周りにすばらしい飲み水があるという証拠でもあります。
 私は、わき水を飲み水として利用している県内の現場を調査してきました。今から説明をしたいと思います。(写真を示す)
 今、県下でわき水も含めて地下水を飲み水にしておるのは大体九十カ所ぐらいあるらしいです。そのうちの、これは私自身が下手くそな写真を撮ってきたんですけれども、この二枚は龍神の自然水の水源地です。これは、ちょうど高野龍神スカイラインの入り口の手前のところを入っていって、山のちょうど中腹にあります。これが水源です。
 そして、これは白浜町の富田のわき水の現場です。これは、実は地元のお寺さんの法人がここを守るために整備をしております。そして、大変地元の人たちは敬意を払って、さらに大変ありがたがっております。ここでは実は上水道がもう既に完備されておるんですけれども、地元の人たちは名水ですのでくみに行っておると。さらに、遠くからもくみに行っております。(「知ってるよ」と呼ぶ者あり)──知ってる。この手前にあるのは別の業者さんが売っておるんですけれども、これはただです。
 大体、一日数百人。あいている時間が少ないというぐらい、はやっております。大変地元にとっては誇りに思っているんですけれども、今、県下の市町村合併の話もございます。私は、合併のときにこういう水というのは最高のプレゼントになると思いますけれども、こういう現場も行ってまいりました。これは地元でありますけれども。
 それと、これはちょうど夕方の六時ごろ、松本議員さんの地元の湯浅の自然水の給水地のところに行ってきました。実は、県下で飲料水として売っているところは五カ所あるわけです。そのすべてに行ってきまして、そのうちの一つですけれども、ここは自動販売機で十リッター百円で売っております。そして、大体一日に七十五トンから八十五トンぐらい出ているらしいですけれども、年間売り上げをその近くの人に聞きましたら二千万円ぐらいあると言うておりました。さらに、これ以外の地域でも、大体一日に百五十トンも出しておるところもあります。
 そういうことを見れば、大変この方々は、地域のPR、いわゆる村おこしですね、そして財政収入というようなことで、第三セクターとか個人の業者さんが今五カ所でやっているわけですけれども、国内でさえももうかると。だから、金に糸目をつけんような水バイヤーがもしこれを見たら、上陸をしてきてやっぱり買い取っていくだろうと、そんなことを私は思いますけれども、以上がちょっと現場を見てきた実情であります。
 これを見てくる中で私は感じたわけでありますけれども、実は、これだけ水が豊富でありますけれども、この地域の水がこんなに短期間──一部の人でありますよ。一部の人でありますけれども──で水を売るということについては大変心配しておるという方々も聞きます。温泉のように水源が枯渇するのではないかと、これはあくまでも一部の声でありますけれども、こういう声があります。
 そういうことで、私は、乱暴な言い方をさせていただければ、行く行くは──今すぐではありませんけれども──私はやっぱり飲み水というのはお金の売買の対象にしないということが地域の平和な生活を支えるためにも必要ではないかと、この現地調査をしながら感じた次第であります。
 そこで、わき水はきれいでおいしいから、直接人の口に入ります。川の水とか田に引いた水など、またごく一部の汚染された水とは使用目的が違うのであります。余計に神秘と言うべきわき水を含めた地下水の飲み水の利用について関心と監視を払い、感謝の気持ちを持つべきであると私は思います。それが、和歌山から全国に発信したいと思っているわき水を含めた地下水の飲み水に対する私のメッセージなのであります。
 また、わき水はいろいろなところで役割を果たしてくれています。例えば、わき水は緊急のときに大きな役割を果たしてくれます。運んですぐ飲めるという手っ取り早い対応等ができるからであります。外国資本に搾取されずに、いざというときのわき水を確保しなければならない。だから、県内の人の日常ののどを潤すとともに、大震災のときにも役立つのです。水を確保することは危機管理に対する対応の一つであります。その証拠に、阪神大震災があります。阪神大震災では百二十万世帯が断水に見舞われ、この直後に発生をした火災に対して消火用水が行き渡らず被害を大きなものにしたこと。このような混乱の中で地下水の井戸水が災害発生時の貴重な水資源として活用された教訓からも、地下水の有効利用ということにつながると思うのであります。
 少なくとも、このわき水を含めた地下水の飲み水規制がぜひとも必要であり、この後、我が県でつくられるであろうその条例が各府県に普及し、そしてそれがさらに国の法律につながる、つまり和歌山を変えることによって国の地下水への対応というものは変わっていく。そのターニングポイントにしたいと思います。
 そこで、非常に具体的なケースを挙げながら、これから質問に入りたいと思います。
 まず第一点目として、新しい危機意識、リスクマネジメントを和歌山から発信させ、国を変えるという視点についてであります。つまり、不審船、震災、外国からの攻撃から守るための危機管理ではなく、我々の飲み水に対する日常の意識と感謝の気持ちから武器を使わないで条例で飲み水を守る、そういう新しい危機管理であります。
 知事さん、私の調べたところでは、外国人バイヤーが日本に来てわき水を含めた地下水の飲み水の取水権を地主と交渉して買うという行為は、今の県条例では規制できないと思いますが、どうでしょうか。自由だとしたら、日本の豊かな水が外国人バイヤーに買い占められ、日本人すら自分の国の水を飲むことができなくなる可能性が出てきます。先ほども申しましたが、インドでは自国の水でありながら買い占められたために自分の土地の水が飲めないということが現実に起こっています。これはゆゆしき問題であり、また極めて現実性の高いケースであると思います。知事さん、どうでしょうか。
 第二点目として、危機管理と同時に新しい水というものをクローズアップさせ、条例をつくる意識として、個人の所有権よりも公共性が優先するという新しい視点についてであります。つまり、従来の私有権の法体系が環境問題が出てくるために変わってきた。水を通じてはっきりさせるという新しい視点を打ち出すということであります。
 もし仮に水バイヤーを規制することができなかったら、次の手段として、この地下水の取水権を所有している地主に売らないよう指導監督するということが考えられますが、この場合、ほかの法律との整合性はどうなのでしょうか。わき水を含めた地下水の飲み水の所有権は所有者の権利というよりも日本全体の公共的な商品ということであり、つまり一人で勝手に売買できるものではなく、売らない間は個人の権利だが、売る場合は国や県の権利に移行するものではないかと思うのですが、その解釈はどうでしょうか。
 私の持論ですが、これからの環境対策というのは、すべて水とか空気、太陽は自由にできるものではなくて、個人の所有から離れて公共的な性格のものであり、地球共通の財産という見方をしないと我々の生きていく生活環境を守ることはできないし、そうした認識がないと和歌山発の条例にはならない。私がさきの十二月議会で質問をいたしました地球温暖化防止で空気のことに触れたのも、その一つであります。そういう自然というものを公共的性格だと認識することが新しい条例の視点につながると考えますが、どうでしょうか。
 ある人は財産権との兼ね合いを心配しますが、はっきり違うと思います。つまり、金銭や家屋敷などとは違うと思います。だれでもが生きていく上で最低限必要なものであり、一人が独占するものとは違う。水の危機管理と同時に、水というものは個人の所有権よりも公共性が優先するという新しい視点であります。条例の段階でそれを判断するというのは画期的な解釈だと思いますが、いかがでしょうか。
 第三点目として、わき水を含む地下水による飲み水のハザードマップをつくり、和歌山発の防災を含めた地下水情報網の県と市町村、県民のホットライン化についてであります。
 事前に地下水に関する動き、外国人バイヤーが暗躍しているとか調査が入っているとか、こうした情報をできる限り早く県の当局者に情報として入ってくるようなシステムをつくることが必要であり、それがあればインドやフロリダのようになる前に予防策として手を打てるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。特に、市町村の責任者と県とホットラインを持つことが大事だと思います。そして、県全体、県民全体の目でそういう人たちの監視、観察をする必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 また、地下水が減ってきているのか、水質はどうなのかなど、危機的になっているのか科学的に探知する必要があります。そして、先ほどパネルを使って説明をした場所のように、ハザードマップのようなものをつくって、ここのわき水というのは今危険信号だ、ここは多少余裕があるなど、県民の目に入るようにして県民に水のありがたさを認識してもらうとともに、災害発生時の貴重な水資源としての重要な意味もあり、わき水も含め地下水による飲み水の危険度を知らせるべきだと考えるが、いかがでしょうか。そういうところは、少しでも売ってはだめだなどの危険度のランクづけをしてみてはどうか。そのために総点検というものを県民に徹底すべきと思うが、いかがでしょうか。
 行政だけに任すのではなくて、県民の親水性や──つまり県民が水に親しみ敬意をあらわすということですが──そして防災上の認識を高めるとともに、今知事が進められています森林づくりの水資源確保につながり、さらに事前に水バイヤーからの予防にもつながると思うが、いかがでしょうか。
 第四点目は、飲み水を守るべき水は国外に出さないという新しい視点についてであります。
 ハザードマップの中で、水の売買に関してのもめごとがあったときに外部から水バイヤーの侵入を許してしまう危険性がある。もめごとのない状態に保っておくことが、バイヤーを寄せつけない防衛策であると思います。いつも平和な関係が保たれないと信頼関係が壊れ、一方的に水バイヤーに売られる可能性があります。つまり、トラブルがあるために外国に売られるかもしれない。そうならないためにも、仮定ですが、夫婦の離婚の調停のようなものがあるとすれば、水のトラブルの問題での調停の部署が県にできてもよいくらいであると思います。地下水業者と周りのいつも地下水を利用する住民とはどういう折衝をしているのか、トラブルがないのか、いかがでしょうか。
 世界は、三十億の人が水を飲めない悲惨な状況に来ています。まず、これからの時代は水を確保しなければならないと私は思います。貴重な県民の飲み水を守るという県の方針を全国に先駆けて強く打ち出すべきだと思いますが、いかがでしょうか。先進国で水の豊かなカナダでも、水を外に出すことについては厳しい規制があったり、禁止されている州もあると聞いております。
 第五点目は、これからの環境対策は厳しい規制や売買する双方に対する罰則の適用という視点についてであります。
 これからの環境問題とは、今言われている規制緩和とは逆に、うんと厳しい規制を強いる、強いられるというのが環境対策と思います。その最も厳しい規制、それは罰則を設けることであると思います。買ったバイヤー側はもちろん、売った者に対しても罰則を与える厳しさがあってもいいのではないかと思うが、いかがでしょうか。
 以上、五項目にわたる質問をしましたが、全般にわたる知事の考え方と取り組み姿勢についてお伺いをし、具体的な項目については関係部長の答弁を求めます。
 既に、和歌山県には実績があります。それは、緑の雇用事業であります。環境について和歌山発の第二弾として、全国に先駆けて取り上げていただきたいと思います。外国に売らずに水を確保することは、阪神大震災のような地震が起きたときに被災者に水を送ることにも役立ち、また県民の生命を維持し、関西圏の災害時の救済に役立つことになります。さらに、知事が進めています森林づくりは、まさに水源の確保と切っても切れない関係にあります。水を守るということは、県民の意識を高めるとともに和歌山の緑の雇用事業を成功させることにもつながると私は思います。今定例会の知事の説明でも、本県独自の施策や提言を和歌山モデルとして全国に発信していくことの重要性を強く訴えられました。今回質問をさせていただいた、県民の飲み水を守り全国初の危機管理条例を全国に先駆けて発信することを知事としてご決断いただき、この和歌山方式を全国に広げ、日本を地方が変えることを宣言していただきますよう心から願い、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの水を守ろうという内容のご質問、非常に感銘を受けました。
 以前、私もある人から、いずれ中東では石油よりも水の方が上等だと、それから中国でも非常に黄河なんかも泥のような水になってきて水が少なくなってきている、そういうときに例えば和歌山の豊かな水というものは大変な値打ちのあるものなんだ、そういう観点から物を考えていかなければならないというふうなお話を承ったことがあって、それもそうだなというふうに考えていたことがあるんですけれども、今のお話はそれをより進めて、例えばわき水であるとか、それから打ち抜き井戸とか、いろんなもので取水をするわけですけれども、そういうふうなものについて、今までは地盤沈下とかそういう観点での規制条例というものは全国に幾つかあるわけだけれども、それを環境であるとか人の飲み水、日本人の飲み水を確保するという観点から規制を加えていくべきだろうと、そしてそれを条例という形で和歌山から発していくことに意義があるというご質問は、本当になるほどなと思いました。
 ただ、今のところ水の採取というものは、私は詳しくは知りませんけれども、土地の所有権とか土地の使用権とか、そういうふうなものと分かちがたく結びついていて、土地を持っている人はそこの下を流れている地下水は幾らでも適当に井戸を掘ったり打ち抜きして抜くということは地盤沈下につながらない限りはいいというふうな形にもなっていると思うので、そこに新たな権利概念をどういうふうにして構築していくのか。またそれを規制するときに、例えば温泉を掘る人とか、そういう人との絡みなんかをどういうふうにしていくのか。実際に条例をつくっていくとなると、なかなか難しい問題があると思うんですけれども、いずれにせよ非常に興味深い話でもありますので、例えば諸外国でそういうことについて何か先進的に、例えば環境を守るというふうな、法益を──環境というような、ちょっと漠然とし過ぎていて規制の対象になるかよくわからないんですけれども、そういうことも含めて先進的な例を一度よく勉強して、そしてまたそれから和歌山発で条例化できるようなことがあればそういうことについては積極的に考えていきたいと、このように思っております。
○議長(井出益弘君) 企画部長垣平高男君。
  〔垣平高男君、登壇〕
○企画部長(垣平高男君) 玉置先生のご質問、四点に対して一括してご答弁をさせていただきます。
 議員ご指摘のように、水を取り巻く価値観は大きく変化してきているものと判断をしてございます。かつては、どこにでもあり、あるいはいつでも自由に使用できました水は、今や限られた資源であり、その有限性のゆえに質、量にわたる保存、確保は重要な行政課題としてとらえていかなければならない時期に来ているのではないかと考えてございます。
 こうした認識のもと、まず第一点の貴重な資源である地下水をビジネスの対象から保護しなければならないという危機管理と同時に、水というものは個人の所有権よりも公共性が優先するという新しい視点に基づいて地下水の取水権及び販売権は規制できるのかという点についてでございますが、地下水や湧水の利用権限は現行法制度では民法に定められた土地の所有権に付随するものでございますので、地下水の利用権限を制限するために土地売買等を制限することは現行では難しいものと考えてございます。しかしながら、地下水は土地の所有にかかわりなく地下を広い範囲で流動しているものでございまして、常識的には個人が所有権を盾に無尽蔵にこれを採取するということは許されるべきものではないのではないかというふうに考えてございます。
 また、地下水や湧水は、水道水源として大きな比重を占めているばかりでなく、工業用水や農水産用水等として幅広く利用されている地域の貴重な資源でございますので、その維持・保全には万全の意を配していかなければならないと考えております。
 次に、議員ご提言の危機管理と関連しての地下水の公共性の概念につきましては、こうした考え方はこれまでの想定にはなかった新しい視点でございますので、よく研究してまいりたいと考えてございます。
 第二点の、湧水や地下水を対象とした飲み水のハザードマップをつくり、防災を含めた地下水情報網を県と市町村、県民のホットラインとして構築してはどうかということでございますが、戦後最大の渇水と言われた平成六年の干ばつ時にありましても地下水に依存している水道では支障を来すことなく取水ができたとの実績があり、地下水の持つ資源としての可能性を再認識したところでございますが、正直申し上げまして、地下水の賦存量につきましては十分調査するに至ってはございませんので、ご提言の件につきましては現況を調査する中で検討してまいりたいと考えております。
 第三点の地下水を外国に持ち出させないようにとのご指摘でございますが、現行法制度では買い手による規制をかけることは難しいものとされております。地下水は貴重な資源であり、その活用と危機管理とをあわせ研究してまいりたいと考えております。
 最後に、これからの環境対策は厳しい規制が必要ではないかとの点でございますが、確かにこれからは水に代表される環境を保全整備する上からは、それに必要なコストの負担に加え、新しいルールを確立していくことも大変重要な課題であると認識してございます。こうしたことから、平成十四年度予算案におきましても、水を守る、水を生み出す森を守るという新しい視点での幾つかの施策が提案されてございます。罰則の適用というご提言につきましては、地下水の公共性の問題とあわせ、研究させていただきたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 環境生活部長秋月成夫君。
  〔秋月成夫君、登壇〕
○環境生活部長(秋月成夫君) 四点目のご質問の飲み水は守るべきもの、水は国外に出さないという新しい視点についてのうち、地下水業者と周辺住民とのトラブルについては、現在までのところ聞いてございませんが、今後、地下水の利用に関するトラブルが生じることも予想されますので、速やかな解決が図られる方策について関係部局を含め研究してまいりたいと考えてございます。
 続きまして、五点目のご質問のこれからの環境対策は厳しい規制をとの部分についてお答えいたします。
 議員ご提案の件につきましては、地下水の保全のためには新しい課題と認識してございます。今後、関係機関とも協議を行いながら研究を行ってまいりたいと考えてございます。
 なお、現在、環境を保全する面から汚染防止対策の充実が重要なことであり、これらを視野に入れながら施策を行っており、水質汚濁防止法において有害物質の地下浸透禁止の規定があり、この規定の運用によって工場、事業場等の指導を行っております。
 また、地下水の水質汚染の実態把握については、平成元年度より県内にある井戸等を利用した地下水調査を実施してきており、おおむね水質については良好な状況にございます。本県においては「野中の清水」を初め、全国に誇るべき湧水が多くあります。この貴重な財産である湧水、地下水を将来に引き継ぐためにも、今後とも関係機関との連携を密にするとともに、湧水、地下水に対する保全意識の高揚を図ってまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十八番玉置公良君。
○玉置公良君 答弁ありがとうございました。
 ただ、今の答弁を聞いておりますと、ちょっと言葉悪く言いますと、前向きであるか、どっちもつかずのような、私はそういうことを思うわけです。したがって、今の知事の答弁の中でも、感銘をしていただいたとか、なるほどなと思ったとか、それは大変ありがたいんですけれども、「ただし」というところがあるわけですね。今の答弁を聞きましたら。新たな権利概念とか先進的な例を勉強して、和歌山県で必要であればと、そういう言葉がありましたけれども。さらに、企画部長の答弁の中でも、地下水の公共性はよく研究してまいりたいと、こういう答弁。さらに、地下水を外国に持ち出させないようにとの指摘については、現行法制度では買い手による規制をかけることは難しいものと考えられている、活用と危機管理とをあわせ研究してまいりたいと。
 私が聞きたいのは──もう単刀直入に聞きます。いわゆる和歌山発、新しい意識改革、こういうことを唱えておられる和歌山県ですから、とりわけ聞きたいんです。それは、きょう提起をさせてもらいました飲み水を外国に出すことについてどう思われているのか、はっきり答えてほしい。困ったことだと思うのか、それとも仕方がないと思うのか。外国に出してはいけないと思うのか、どっちなのか、申しわけないですけれども、イエスかノーで、知事と企画部長に答えていただきたい。
○議長(井出益弘君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ちょっとイエスかノーかでは愛想なしだと思いますので考えを申しますと、例えば今、私も「エビアン」をずっと飲んでおります。これはフランスの南アルプスの水ということで、これは貴重な輸出品になっているわけでございます。
 そういうことで、基本的には国家存亡とかいうふうなことに至るようなことに──ちゃんと管理された形で海外へもしそれが出るという限りは──日本の水はまだ出ていないと思いますけれども──私はそれはもう当然、商売の品にしていくということであっていいとは思うんですけれども、ただそれが、先ほど言いましたように、日本の国の人も飲めなくなるような形で持っていかれるというようなことになるとこれは大変なので、そこはやはりちょうどいいところで線を引く知恵ということが必要だと思うので、そのことも含めて考えていきたいというようなことを思っているんですけれども。
○議長(井出益弘君) 企画部長垣平高男君。
  〔垣平高男君、登壇〕
○企画部長(垣平高男君) 基本的には今知事がお答えしたとおりだと思いますが、やっぱり地下水、水は有限であって、かつ貴重な資源だというふうに考えますので、その適切な管理というようなものがやはり必要だというふうに思います。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 二十八番玉置公良君。
○玉置公良君 私の言いたかったことと答弁とは、やっぱり一致しないんです。それだけ難しい問題もあると思いますけれども、ただ、私がきょう言わせてもらったのは、その危機意識です。いわゆる水というのが、今の時代の要請の中でやっぱり公共性が優先をしていくのではないかという私の提案。さらには、危機管理というものの中に、昔法律ができたころには、そういう水というのは危機管理になかったと思うんです。ところが今は、世界も注目をしているように、とりわけ飲み水というのは危機管理の対象になってくるんだと。このことについて「そうです」ということを答えてほしかったし、これからもこの問題はあれですけれども、まあそこらについて、もしはっきり言うてくれるのであれば言うてください。知事にお願いします。
○議長(井出益弘君) 以上の再々質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 危機管理の意識は必要だというふうに、それから今までの土地の所有権とか、そういうことの概念でははかれないものになりつつあるというふうに思っております。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──以上で、玉置公良君の質問が終了いたしました。

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