平成13年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(村岡キミ子議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十七番村岡キミ子君。
  〔村岡キミ子君、登壇〕(拍手)
○村岡キミ子君 おはようございます。
 お許しをいただきましたので、通告に従ってご質問を申し上げてまいります。
 最初に、医療問題についてお伺いするものです。
 リストラ、倒産などによって、失業者はついに史上最悪の三百五十七万人。失業率も五・四%。仕事につきたいがとても無理だと求職活動をあきらめる人も含めると、その数は七百八十万人に及んでいると言われております。潜在失業率一〇%を超えるという深刻な事態の中、労働者の健康破壊も負担増によって一層悪化するのではないかと心配をいたします。
 政府・与党は、十一月二十九日、医療制度改革大綱をまとめて次の通常国会に上程するとしています。その内容を見てみますと、サラリーマンや公務員など労働者本人の患者負担を現行二割から三割に引き上げ、毎月の保険料も値上げをする、そして高齢者医療の対象を現行の七十歳以上から七十五歳以上におくらせるとした、あらゆる階層、年代に痛みを押しつける、極めてひどい改革案であります。実施時期は二〇〇三年としておりますけれども、サラリーマン本人負担については必要なときに引き上げるとしております。しかし、小泉首相は二〇〇三年中に実施をする意向を明らかにしています。また、七十歳から七十四歳の高齢者の負担は一割負担となり、一定以上の所得のある人は二割負担となります。わずかに改善が見られたところですが、負担増になることにはいささかも変わりはないという状況であります。命のさたも金次第の事態を招き、将来不安に一層拍車がかかるのではないでしょうか。
 こうした政府・与党の改悪案には、多くの国民が今、強い怒りを持って署名行動、アンケート、集会、学習会、シンポジウムなどを開き、大きな反対運動が広がってまいりました。中でも日本医師会や開業医の過半数を超える保険医が加入している全国保険医団体連合会などは、病人は早く死ねというような中身には黙っていられないと、並々ならぬ決意で運動を展開しておられますし、それに医療関係者、また労働組合の皆さん方も共同した闘いに発展をしています。国の社会保障審議会の医療保険部会でも、さらなる患者負担は認められないと、厚生労働省に反対意見書を出しているのも極めて特徴的なことであります。その改悪ぶりがわかるのではないでしょうか。この改悪案で問題なのは、最初から医療費の財源を分担することに国は責任を放棄しているということです。患者や保険料を払う国民にだけ痛みを押しつけるのは間違っています。
 ご存じのように、九六年、健康保険本人負担が一割から二割に引き上げられたときから現役時代の受診は減少を続けています。旧厚生省国民生活調査では、自覚症状を訴えている人、いわゆる有訴率は年々ふえていますが、実際に診察を受けて通院している人は、この二割になった九七年、九八年ではがくんと下がっています。そして、我慢率と言われる我慢している人たちはこれまで一%でしたが、九八年には三〇%に増加している。すなわち、負担増によって病院から現役時代が遠くなっているということです。病院にかかりたいけれども、かかれないという現象がひどくなっているということであります。このことからも、負担増による受診抑制がずっと続いている状況にあります。
 この改悪案が施行されたら一体どうなるのでしょうか。具体例を、医療関係者らの話を伺ってきたところです。二つほどの事例をお話しさせていただきます。
 出血性胃潰瘍の男性の方です。この方は、会社を経営していらっしゃいます。人間ドックで胃潰瘍が発見されました。通院開始をしたものの、途中で中断しています。その後、吐血、血便が続き、仕事に行けなくなり、病院へ即入院する事態になりました。そして、病院で毎日点滴を続け、少し回復すると、五日目から会社へ出勤をするために外出いたしました。ところがその方は、十五日目には、私がいないと会社が回らないといって退院していきました。十五日間の費用は八万九千四百八十円。これが三割になりますと、一・五倍の十三万四千二百二十円。何と、四万円ふえることになります。高額療養費の上限額六万三千六百円から今度は七万二千円に引き上げられますので、これを返金してもらうにも額はわずかになります。
 事例の二つ目、糖尿病の男性です。四十二歳。インシュリン療法を八年間続けていらっしゃいます。一日三回のインシュリン注射。建設関係の現場監督者です。この方は、不況のために七年間昇給はありません。数年賃金カットもあって、生活は苦しくなっています。家族は、子供三人に奥さんと五人です。月一回の外来診察。二割負担で一回五千円程度です。そして、インシュリンの薬代四千円程度が今まで要りました。この方が一年間支払った金額は、診察に要するお金が七万九千三百四十円。そして、今、院外処方になっておりますので、インシュリン代としても薬局で四万五千五十円。合わせて十二万四千三百九十円になりました。これが三割負担になると、何と十八万六千五百八十五円、年間六万二千百九十五円ふえることになります。
 また最近では、二十歳代の青年がリストラに遭って保険証がなくなりました。体に変調があっても、医者に診てもらえませんでした。結局、倒れて救急車で運ばれる。こういう事例もふえてきつつあるそうです。リストラの影響がここまで及んでいることに、新たな怒りを私は感ずるものです。
 では、高齢者はどうなのでしょうか。ことしの年明けから一割負担が導入されたばかりです。前の森総理大臣は、二〇〇〇年、昨年の十一月三十日の国会の中で、こうした導入は避けるべきだという質問に対して、「今回の改正は、負担額の上限を設けるなどいたしまして、きめ細やかな配慮を行っています」と答弁をされました。ところが、その舌の先も乾かぬうちに上限をなくして引き上げを行うと言うのですから、あきれてしまいます。
 七十歳以上では、毎月平均二千二百二十三円、上位所得者では二割で一万四百五十六円。在宅療養の場合、慢性呼吸不全の女性九十歳の場合を見てみますと、月二回の往診です。今までは、定額千六百円でした。一割定率となりますと、これが何と一万二千三百二十円と、七・七倍に膨れ上がります。
 また、胃がんの末期で自宅療養中の男性の場合ですが、三千二百円。これが、今までの自宅療養中の治療費です。これが、四万二百円になります。何と、十二・六倍になります。それに介護保険によるサービスを受ければ多額の費用が必要となり、少ない年金では安心して医療も介護も受けられなくなるのは火を見るより明らかではないでしょうか。今、お年寄りが「死にたいよ」と言い、それに対して「本当に死にたいのか」、「いや、本当は長生きしたいんや」、こんな会話があります。こんな会話をしなくてもいい社会保障が求められるのではないでしょうか。
 このような負担増に苦しんでいるとき、小泉首相は、「何でもない人が病院に殺到しちゃって、本当に必要な治療が受けにくい面もある」と国会で答弁しています。これでは、国民の痛みが全くわかっていないのではないでしょうか。景気が悪化し、失業やリストラであらしが吹いている今のような時期にこそ社会保障制度の役割は重大です。それには、財政的にも強化しなければならないはずです。改悪は直ちに撤回をすべきだと私は思います。
 経済的理由から、治療中断や自覚症状がありながら病院に行けない人、また国民健康保険料を滞納して資格証明書になっている人、短期保険証の期限の切れた人など実態はさまざまですが、深刻そのものです。市町村においても、滞納者について実態に応じた納付相談は当然でありますが、今後、滞納者は確実に増加すると思います。したがって、資格証明書の発行もふえることになりますが、資格証明書では安心して病院に行くことができません。このことを行政として改善しない限り、本当の保険制度はあり得ないのではないでしょうか。
 これまで、具体例をいろいろと申し上げてまいりました。何といっても、国民は健康でありたい、これが願いです。そのためには、いつでも、どこでも安心して医者に診てもらえること、そして一日も早くその病気の早期発見、早期治療ができるように、これが医療の基本だと私は思うのです。
 そこで、お尋ねをいたします。
 一、相次ぐ医療改悪で患者負担増は限界に来ています。県下の患者や県民の現状をどのように認識しておられるのでしょうか。
 二、国保料の滞納者が、リストラ、倒産、失業などで増加しているのはご存じのとおりです。医者にかかりたくても資格証明書のため、安心して診てもらえません。実態に合った納付相談が最も重要です。そして、保険証の取り上げはやめられたい、そのような法改正を求めたいと思います。
 三、国に対して、今の実態から医療保険改正を直ちにやめるよう求めたいと強く訴えるものですが、いかがでしょう。心のこもった関係部長の答弁を求めるものです。
 次に、男女共同参画推進条例制定についてお尋ねをいたします。
 男女共同参画社会基本法は、一九七五年の国際婦人年以来の男女平等を求める世界と日本の運動の流れの中でつくられました。この四半世紀、「平等」「開発」「平和」を共通テーマに、世界でも、日本でも女性たちのさまざまな運動が広がってきたところです。七九年の国連、女性差別撤廃条約の採択、これは四回にわたる世界女性会議や昨年の国連特別総会、女性二〇〇〇年会議の開催によって、男女平等、女性の地位向上は各国政府の共通課題として取り組まれるようになってまいりました。日本でも、七五年の第一回世界女性会議で採択された世界行動計画を受けて、七七年に国内行動計画を策定後、数度にわたる改定とともに、八五年に男女雇用機会均等法の制定を行い、女性差別撤廃条約が批准されてきたところです。このような国際的な流れの中で、男女平等を進めていく基本法が一九九九年六月制定、施行され、昨年の十二月、基本法に基づく基本計画が策定されたところです。政府は、基本法の前文に、男女共同参画社会の実現を二十一世紀の我が国の社会を決定する最重要課題と位置づけて、積極的姿勢を表明しているところであります。特に、基本法が国とともに都道府県に基本計画策定の義務を、市町村には努力義務を課しているところです。
 今、自治体の条例づくりが活発になっており、既に北海道を初め東京、鳥取など、十六都道府県で条例が制定されています。本県においても、来年二月の定例議会に提案すべく作業が進められていると聞いております。とりわけ基本計画は、二〇一〇年までの基本方向と二〇〇五年までの具体的施策の実施計画を求めているところです。
 女性は、職場、家庭、地域でも、農村でも大きな役割を担い、力を発揮しています。しかし、女性の賃金は男性の半分にすぎません。子育てや介護の責任も、女性に大きな負担がのしかかっています。日本国憲法には、男女平等がうたわれております。社会のあらゆる場で男女が平等とは言えない現状が続いているのではないでしょうか。
 年々女性労働者の比率が大きくなり、四割を超えました。農村や商工自営業者においても、働き手の主体は女性たちになっています。働く女性労働者は、昇進、昇格でも、賃金でも差別的扱いは放置され、女子学生に対するさまざまな採用差別もありました。女性パート労働者の無権利状態も横行している状況にあります。結婚退職制なども少なくなったとはいえ、強要する企業もあります。同期に採用され、仕事の内容も男性と同じに働いているのに、どうして昇格、昇進でこんなに差別されるのかと、やむにやまれず是正を求めて裁判に訴えている女性たちも後を絶たない状況にあります。人口の半数を占める女性の力が正当に評価されずに生かされないのでは二十一世紀の日本社会の発展は望めない、私はこのように思います。
 これまで、育児・介護休業法の制定や配偶者からの暴力防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)が成立・施行されています。いずれも、実効あるものにするために具体的な計画を盛り込み、制度の充実を望むところです。条例や基本計画をつくる上で大事なことは、その過程にどれどけ多くの女性たちの実態と要求をしっかりつかみ、反映させるかどうかだと私は思うのです。
 ここに、県男女共同参画推進条例論点整理集をいただいているところです。この十月にまとめられたものでありますが、条例に盛り込むべきと考えられる事柄と県民から寄せられた意見が紹介され、さらに今後県民の意見を聞きながら条例案を作成していくものとして出されております。多くの女性の声を聞いてほしいとの思いから、私も県地評女性部や商工業者団体の女性部の皆さんとの懇談を担当課にお願いをいたしまして、さまざまな願いや思いを話し合っていただきました。参加された皆さんからは、初めて行政の方に自分たちの思いを訴えることができたと、大変好評でありました。
 そこで、関係部長にお尋ねをするわけですが、条例に反映させる県民の声をどのような方法で聴取されてこられたのでしょうか。特に、農業や自営業に携わる女性の実態を把握し、その実態に基づく施策を進めることが大事だと考えるものですが、いかがですか。
 そして、県民からの相談窓口は、男女共生社会推進センター一カ所に限定せず、身近なところで相談できるように、本県の地理的条件からも専門職の配置を求めるものですが、いかがですか。
 審議会委員についてでございます。少なくとも五人は公募にすべきではないでしょうか。そして、男女同数の委員による委員会を望むものです。いかがですか。
 基本法の中に、事業主、企業の責務が明記されておりません。これは問題です。働く女性の昇進、昇格、賃金格差を放置することはできない問題であります。ぜひ条例に盛り込んでいただきたい、このことを強く求めるものでありますが、関係部長の答弁を求めたいと思います。
 中小企業対策についてお尋ねをいたします。
 九月議会において鶴田至弘議員が、緊急雇用経済対策会議を県下の情勢にふさわしく機構を充実させ、活動内容も政府政策の消化だけにとどまらず県民の切実な要望に迅速にこたえられるよう活性化させることが必要だと求めたことに対しまして、商工労働部長は「頑張ります」との答弁をされておられました。その後、経済雇用の情勢は日々深刻さを増してきているところでありますが、当該部はいかなる対策をこの間されてきたのでしょうか。体制はどう強化したのか。どのような課題を議論され、どのような方向を出されたのか、具体的にお示しいただきたい。
 そして、不況が一段と深刻さを増しています。さらに、不良債権の早期処理というような強引な措置が進められようとしています。中小企業にとっては、今まで経験したことのない厳しい事態を迎えています。そのような状況下、中小企業を守るための金融対策が一段と強化されることが求められるところであります。以下のような金融対策面での措置を求めるものであります。
 一、昨年度実施された金融安定化特別保障制度、通称・貸し渋り対策資金ですが、県下でも一万件を超えて適用されました。多くの中小企業から歓迎されたところでありますが、この制度はことし三月で打ち切られてしまいました。そして、早くも返済期間に入り、新たな課題を抱えるに至っております。ついては、この制度を再開し、新規貸し付けを含め、返済猶予や借りかえなどの措置ができる便宜を図れるよう国に要望するとともに、県としてもしかるべき制度を設けていただきたいと思うのです。
 二、ベンチャー支援資金は、残念ながら過去三年は十件に満たない程度で、十分活用されていない状況にあります。和歌山県の産業界にベンチャーに余り大きな期待をするということ自体、現実的ではないようにも思いますが、新たな起業家の育成と支援にはそれなりの努力が求められるところであり、この制度自体は評価するものですが、現実は厳しい状況です。一方、既存の企業家の中には、その企業の中で技術革新を行い、新しい商品開発あるいは技術開発を行うに当たって、いわば既存企業内でのベンチャーとも言える事業にあっても、この資金が適用されることを望む方々も多くあります。ベンチャー融資の適用範囲をこのようなところまで拡大してはいかがなものでしょうか。
 三、資金を求める中小企業にあっては制度融資が極めて貴重な役割を果たしているところでありますが、それにも第三者保証が求められます。経済情勢が厳しいだけに、この保証人を立てること自体が困難なためにせっかくの制度融資を活用できないということになり、破綻を来すことも起こっています。保証協会も代位弁済を抱えて厳しい状況であるでしょうが、経済状況が異常に厳しいときだけに、中小零細企業の立場に立った思い切った措置が必要だと思うのです。昨年来、第三者保証を立てる条件が相当緩和されてまいりましたが、まだまだ依然として保証人を要求される制度、あるいはケースがあります。経営内容が健全に進むという展望を持てるならば、これら制度融資にあっては第三者保証なしでも貸し付けられるよう一層条件を緩和する必要があるのではないでしょうか。
 四、ペイオフに関連して。二〇〇二年度よりペイオフが実施されますが、幾つかの自治体で制度融資のための預託を廃止して利子補給の方式に切りかえようとしているところが出てまいりました。制度融資の果たしてきた役割は中小零細企業にとっては極めて大きく、もしこの制度がなくなるようなことがあれば、県下の中小企業の死活問題ともなってまいります。ついては、ペイオフ実施に当たっても、この預託制度を継続されることを求めたいと思います。同時に、東京、大阪など八大都道府県が国に対して、ペイオフ実施に当たっても預託金の性格を考え、その全額保護を求めたと伝えられております。本県もしかるべき要望を行われたいと望むものですが、いかがなものでしょうか。
 これらについて、関係部長のご答弁をお願いいたします。
 次に、住友金属の人減らし・合理化について質問を申し上げたいと思います。
 住友金属は、この二年ほどの間に相次いで合理化を打ち出し、実行してきたところです。定年前の退職勧奨、出向者の解雇と出向先への転籍、下請単価の切り下げなどを内容とするものです。労働者の雇用と暮らし、地域経済に対して、これまで以上に犠牲を強いるものと言わざるを得ません。とりわけ、労働者の意向はお構いなしに、法からも逸脱して、しゃにむに進められようとしていること、多くの労働者と家族を不安と苦悩に陥れていることを、私は見過ごすわけにはまいりません。
 リストラのあらしは、住友金属に限ったことではありません。和歌山県地評が、ことし三月から専任の相談員を置いて労働相談を行っています。十一月末までに百四十件の相談がありました。そのうち三割強が解雇と退職強要に関するものとお聞きをいたしております。
 一例を挙げますと、あるサービス業の会社では、業績が悪くなってきたからと賃金切り下げの同意を迫られ、嫌なら自己都合として退職してくれと強要されているということです。解雇に関する相談は、十一月一カ月だけでそれまでの一カ月平均の三倍に上るといいますから、深刻になる一方の雇用情勢を見る思いです。昨日、商工労働部長は、本県の失業率は近畿ブロックの六・五%を上回るのではないかと言われておりました。そうした中での、住友金属の人減らしと労働条件の切り下げです。和歌山の雇用情勢をますます悪化させることも懸念されるところであります。
 そこで、住友金属の定年前退職勧奨と出向者の解雇、転籍の問題に関連して質問を申し上げます。
 定年前退職勧奨は、五十九歳の労働者千二百人を対象に、昨年七月から進めておられるものです。既に九百八十人を超える労働者がこれに応じたと言われています。これは、定年は六十歳を下回ることはできないと定めている高齢者雇用安定法にも違反していると思うのです。会社は、自発的な希望退職だけでは余剰人員を解消するために必要な規模の退職者を募ることは到底困難だとして、退職を断る労働者に何度も退職を迫る人権無視の面接を強要しております。経営状況が悪くなれば退職金がなくなることもあり得るなどとおどされるケースもあるという訴えを聞いております。労働者からは、高炉を立ち上げるのに苦労し、会社のために懸命に働いてきた、定年まで働けると信じて生活設計を立ててきたのに裏切られた思いだ、こういった声が聞かれます。退職勧奨は来年三月まで続けられるということですから、行政の対応は緊急の問題となっていると思うのです。
 出向者の転籍は、労働者にとってはさらに深刻です。入社して間もない二十歳代の人も含めて出向者全員を解雇し、現在の六割から八割の賃金で出向先に転籍させるという計画に対し、不安と怒りの声が上がっています。出向先への転籍を労働者が何度断っても、応じなければ戻る職場はない、ボーナスなしで年収二百万円の職場しかないぞなどと迫られているのが現状です。そんな仕打ちに、住友金属を見限って退職する労働者も少なくないと言われています。転籍は労働者の同意がなければできないことは、労働基準法や民法に照らせば明らかです。ですから、会社は面接で同意を求めているわけですが、これが執拗に行われているということです。
 こうした問題を、先月二十一日、我が党の小川和秋衆議院議員が厚生労働委員会で質問いたしました。労働基準局長は、本人の自由な決定を妨げる一定限度を超えた転籍や退職の勧奨は原則的に違法であるという見解を示したところです。違法行為であるだけに、会社が転籍を撤回せざるを得ないケースもあります。ある四十一歳の労働者のAさんの場合、今の六〇%の賃金での転籍を言われました。しばらくは激変の緩和措置で加算されると説明をされましたが、小さな子供と住宅ローンを抱えているAさんは転職を考えたと言います。そんなとき、転籍は本人の同意が必要なことなどを我が党が発行するビラで知ったAさんは、繰り返し転籍強要の面接に呼び出されながらも転籍拒否を貫いたのです。そして、会社は転籍強要を撤回いたしました。
 知事に伺います。
 県は、こうした合理化の実態、労働者、家族の苦悩をご承知でしょうか。景気・雇用対策本部でヒアリングを行うなど、実態を把握すべきではないでしょうか。また、こうした人減らし・合理化については、事前に県との協議を義務づける条例制定などが求められると思うのですが、いかがでしょう。
 住友金属は、大企業としての社会的責任を果たす、これは当然のことです。今、これはひとり我が党だけの主張ではありません。労働者、地域社会の多数の声ではないでしょうか。県自身も、事あるごとに言明をされてきたところです。県民は、住友金属を迎え、育ててまいりました。住友金属を含む臨海工業地帯を整備するため、埋め立て、港などに、国、県、和歌山市などで一九五八年から六七年の十年間で合わせて三千億円という多額の血税が注がれたんです。その後、企業も地域もともに発展をという旗印で企業活動が行われてきたはずです。そういった意味からも、今日の乱暴な合理化は重大な問題だと考えるものです。
 知事、労働者の暮らしと地域経済に多大な影響を与える今のやり方を中止されるよう会社に求められたらいかがですか。そして、国にも必要な指導を求めるべきではないでしょうか。明確な決意と実行を求めるものです。知事のご答弁を期待いたします。
 第一回の質問を終わります。
○議長(井出益弘君) ただいまの村岡キミ子君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの住友金属のリストラ・合理化問題でございます。
 ただいま、非常に厳しい状況のお話を聞かせていただきました。我が国の製造業は、言うまでもなく非常に厳しい状況の中に置かれておりまして、これは製鉄業もその例外ではなく、いろいろな形での合理化を行っているところでございます。
 住金の件につきましては、転籍、退職勧奨が非常に大規模に行われているということでございますが、これは規模が相当大きくて、そしてまた影響も大きいため、県といたしましても、随時状況の報告を求めるとともに、景気・雇用対策本部においても実態把握に努めているところでございます。
 こういうふうな転籍とか退職の勧奨というのは、基本的には企業の判断で労働関係法規を遵守しつつ行われるものでございまして、条例の制定にはなじまないと思いますけれども、非常に厳しい状況があるという中で、県といたしましても十分留意し、必要があれば会社に対してもいろいろな要請をしていくということもやぶさかでないと考えております。また、県が行っておりますいろいろな雇用対策、こういうふうなものにつきましても、主要な企業と連携をとりながら実効性のあるものにしていきたい、このように考えております。
 また、これは今のご質問の中にもあったわけでございますけれども、こういうふうないろいろな企業のとっている措置において法律上問題があれば、当然のことながら労働局等で必要な指導を行っていくと、このように考えております。
○議長(井出益弘君) 福祉保健部長白井保世君。
  〔白井保世君、登壇〕
○福祉保健部長(白井保世君) 医療保険問題のうち、まず現状認識と国に対する意見等についてお答えをいたします。
 急速な高齢化、医療技術の進歩等により、老人医療費を初めとする医療費が増大を続け、医療保険制度は極めて厳しい状況にございます。こうしたことから、国では、保険料、患者負担、公費という限られた財源の中で将来とも良質な医療が確保できるよう医療保険制度の改革に取り組んでおりまして、議員ご案内のとおり、政府・与党社会保障改革協議会は、先月の十一月二十九日、医療制度改革大綱をまとめたところでございます。今後、この大綱に沿って、年末までに政府案が決定され、次期通常国会において持続可能で安定的な制度の構築といった観点から十分な議論がなされるものと考えてございます。県民生活に直結する重要な問題である等との認識のもと、県といたしましては、特に低所得者への配慮、地方財政への配慮が十分なされるよう、再三にわたり国に対し要望を行っているところでございます。
 次に、国保滞納者等についてでございますが、国保料一年以上の滞納者につきましては、被保険者間の負担の公平を図るといった観点から、平成十二年度より被保険者証の返還と資格証明書の交付が義務的になりました。しかしながら、資格証明書の交付に先立っては、十分な納付相談の機会を確保するとともに、特別の事情の有無を十分把握し対応するよう指導をしているところでございます。今後とも、安易な取り扱いにならないよう十分市町村を指導してまいりたいと考えてございます。
○議長(井出益弘君) 環境生活部長秋月成夫君。
  〔秋月成夫君、登壇〕
○環境生活部長(秋月成夫君) 男女共同参画推進条例の基本的なあり方につきましては、男女共生社会づくり協議会におきまして、県民意見を参考に継続的に議論をいただき、その結果を、過日、知事に提言書として提出いただいたところでございます。私どもといたしましても、提言の趣旨を最大限尊重しながら、ただいま具体的な条例案文づくりを行っているところでございます。
 まず一点目の、県民の声をどのような方法で聴取したかについてでございますが、本年六月下旬より第一段階として、県内四カ所の会場において公聴会を開催し、県民の皆様から多くのご意見を聞かせていただきました。また、十月中旬にはこれらのご意見を取りまとめた論点整理集を作成し、再度、県内四カ所で公聴会を開催しております。並行して、市町村、商工関係団体、農林水産関係団体等への意見照会や「県民の友」等による広報を通じて、郵便、ファクス、電子メールでも意見募集を行い、延べ三百人以上の方々から生のご意見をちょうだいし、県民の声の把握に努めてきたところでございます。
 議員ご指摘のとおり、条例や基本計画の策定は社会の実態に即したものであることが必要です。条例に基づき、具体的施策を取りまとめる基本計画づくりにおいても、各方面の県民の皆様のご意見を積極的にちょうだいしながら、関係部局とも協議しつつ、実効性ある計画づくりを目指したいと考えております。
 次に相談体制についてでございますが、同協議会からも相談員の設置についての提言がなされており、この趣旨をできる限り尊重してまいりたいと考えているところでございます。あわせて、各振興局においても、男女共生の観点から相談に対応できるような体制づくりも検討してまいりたいと考えます。また、企業や事業主の責務についても重要と考えており、条例の中に取り入れてまいりたいと考えております。
 最後に審議会委員の公募制等についてでございますが、幅広い分野から参加いただくことは大変重要であり、委員数の男女同数とあわせ、運用面で検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 商工労働部長内田安生君。
  〔内田安生君、登壇〕
○商工労働部長(内田安生君) 中小企業対策について、景気・雇用対策本部の取り組み経過でございます。
 厳しい景気・雇用情勢を踏まえ、緊急に景気・雇用対策を効果的かつ円滑に推進するため、十月十七日に和歌山県景気・雇用対策本部幹事会を開催し、企業等へのヒアリング調査を行うとともに、各部局の効果的な施策を取りまとめた上、十一月二十七日に和歌山県景気・雇用対策本部を開催し、緊急雇用創出、再就職対策と失業者の生活安定、並びに緊急経済対策等の施策を講じていくことを決定いたしました。これを受け、今議会におきまして、雇用、中小企業対策関連として総額五十四億五千万円の補正予算を提案するとともに、公共事業における土木・建築資材等の県産品活用促進行動を決定し、来月中の制度実施を目指しております。今後、これらの施策を迅速に実施するとともに、平成十四年度当初予算編成におきましても、引き続き効果的な景気・雇用対策を積極的に検討してまいります。
 次に、金融安定化特別保証制度についてでございます。
 中小企業金融安定化特別保証制度は、金融環境の大きな変化の中、中小企業への円滑な資金供給を行うための緊急対策として、平成十年十月より本年三月末まで実施されました臨時異例の措置でございます。多くの中小企業者が本制度を活用され、金融の円滑化に大きな成果があったものと考えております。現在、条件変更等の弾力的な取り扱いは実施されておりますが、国では、制度の再開や返済猶予、借りかえ等の制度化は考えていないと聞いております。県といたしましては、依然として厳しい県内景気の状況を踏まえ、本年十月より不況対策特別資金の借りかえ制度を創設しており、また今議会には、景気・雇用対策本部で決定いたしました緊急経済対策として、平成十三年度、十四年度に返済期限の到来する一部の運転資金について、最大二年間の期間延長を行う措置等についてお願いしているところであります。今後とも、できる限り制度融資の充実に努めてまいりたいと考えてございます。
 ベンチャー支援資金の拡充についてでございます。
 創造的な事業活動を行う中小企業者等が、県の認定を受けた事業計画に基づき、新技術、新商品を開発しようとするときには、補助金や低利の融資等で支援を行っており、現在まで六十一件の計画を認定しております。県のベンチャー企業支援資金は、平成八年度に創設し、総額六十億円の融資枠に対し、四十九件、約十三億円の融資を行ったところでございます。本資金は、既存企業が商品開発や技術開発を行う場合にも、その事業計画が知事の認定を受けた場合には融資対象となります。今後とも、制度の周知を図るなど、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、制度融資の保証人なしの条件緩和についてでございます。
 県の制度融資では、小規模事業者を対象とした特別小口融資資金制度や新規開業支援資金B型制度で、無担保かつ無保証人の制度を既に実施しているところであり、本制度の融資限度額の引き上げについても今議会にお願いをしているところであります。また、信用保証協会におきましても、保証人の取り扱いについて現在弾力的な取り扱いを行っているところであります。今後とも、制度融資の円滑な運用に積極的に取り組んでまいります。
 ペイオフについてでございます。
 ペイオフ凍結解除後の制度融資の預託金につきましては、預託制度や利子補給方式等、種々の方策について検討を行っているところでありますが、さまざまな問題点もあり、現在のところ結論を出すに至っておりません。県の制度融資は、中小企業への円滑な資金供給を図り、経営の安定と振興を図るための制度であり、引き続き安全で効率的な運用ができるよう、他府県の動向や県ペイオフ対策研究会の情報を得ながら検討してまいりたいと考えております。なお、国への要望につきましては、他府県と連携し、全国知事会で同趣旨の要望を行ったところであります。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十七番村岡キミ子君。
○村岡キミ子君 医療保険問題についてですけれども、今、小泉さんは一貫して、「痛みに耐えれば、あしたは楽になる」と、こういう言葉をずっと言ってこられているんですけれども、本当にそうなのかというのは大変私は疑問に思う状況です。今、国民の暮らしも、失業、リストラ、倒産、そういった状況のもとで本当に大変な事態になっている。これがいつよくなるというのは全くわからないわけですから、痛みだけが強調されるというのはいかがなものかというふうに私は非常に危惧をいたします。
 そこで、当局が「良質な医療を確保するために」とか、先ほど答弁されていたんですけれども、では医療法の改悪がされ、医療保険制度が改悪されると、本当に良質な医療が今以上に確保できるかどうかということを私は問いたいと思うんです。良質な医療というのをどういうレベルでおっしゃっているのかということをぜひお聞きしたいと思いますが、部長の答弁を求めたいと思います。
 私たちは、今度の保険が改悪をされますと、本当に悲惨な状況が数多く出てくるだろうと思っています。ですから、今その負担を引き上げるのではなくて、現状を維持するということも含めて、国の責任が明確に出てきていないというふうに思います。
 特に、これまで改悪されるたびにどれだけ国が医療費への国庫負担を削減してきたかということを見てみたいと思うんです。老人医療費については有料化が進められてまいりましたので、それだけに個人負担は多くなっているんですけれども、八三年に有料化が始まったわけですが、このときに国の負担は四四・九%でした。ところが、この十三年度の予算で見てみますと、三一・九%、約一三%がもう既に削られてきているということです。それから、現役世代の方々、いわゆる中小企業に働いている政府管掌の健保本人を見てみますと、九四年、一六・四%から一三%、三・四%削減をされてまいりました。国保はどうかと言いますと、八四年、国の負担率が四五%だったのが三八・五%、六・五%が減らされているわけです。だから、今の医療負担を引き上げないで済むというのは、国が責任を持っていた負担率へ戻すということがまず第一だと思うのですね。
 今、健康保険なんかでは、老人保険に対しての拠出金があって非常に大変だという話になっているわけですけれども、これをもとに戻せば健保の皆さん方の拠出金というものもうんと軽減されてくると思うんですね。そういう点では、健保自体が元気が出てくるというふうに思うわけです。だから、こうした国の責任、いわゆる国が憲法上にある国民の命と健康を守り、増進させるというところに基点が置かれていないというふうに私は思います。そのこと自体が大きな問題だと思います。
 そういう点で、ぜひ今の制度改悪、改悪案を取り消してもらいたいということは、知事の方でもあるいは担当部の方でも切に国に申し上げていただきたいなとお願いをしておきたいと思います。
 患者さんたちの実態というのは、非常に大変な事態になっているわけです。患者さんが外来に行くことをちゅうちょすると。国民健康保険もないし、資格証明書では全額払わなければなりませんから、やっぱりやめておこうと。胃のあたりがおかしいんだけれども、脈がすごく乱れているんだけれども、どうも風邪を引いたような気がするんだけれどもと言いながら、もうちょっと、もうちょっとと言って、そしていざ病院に行ったときにはもう重症化してしまっていると。そうなりますと、医療費というものは重症化の場合は多額の診療報酬を使います。そういう点から見れば、医療費そのものがもっとふえることになるわけですから、可能な限り早い時期に診察を受けて早い時期に治療をすると、こういうのが基本だと思いますので、そういう点でも今の県下の大変な事態を改善するためには、この保険制度そのものを守るという立場からも、ぜひ国への働きかけを積極的にやっていただけたらありがたいと思います。
 とにかく、今もうこれ以上負担を引き上げられることについては、もう死ねと言うのかという声がお年寄りの中ではあちこちで聞かれます。電話でも、この負担がふえるのは一体どうなるのかという不安の声が私どものところにもたくさん寄せられていますので、そういった不安を解消するために、そもそも国の法律ですけれども、先ほど部長が言われたように、県民生活に直結する重要な問題だと、こういう認識を示されているわけですから、地方自治体、行政が国にどれだけ県民の立場で働きかけるかというのは、この制度をどのようにするかということのかかりになると思いますので、この県民生活に直結する重要な問題というところで、ぜひ国への働きかけ、そして県民の声をもっともっと実態として把握に努めていただきたいと思います。これも要望しておきます。
 以上で、もう時間がありませんので、あとはまたのときにいたしたいと思います。ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 福祉保健部長白井保世君。
  〔白井保世君、登壇〕
○福祉保健部長(白井保世君) 医療保険制度の関係でございます。
 先ほどもお答えを申し上げましたが、何と申しましても改革の中心課題は、今後とも持続可能な皆保険制度をいかにつくっていけるか、また構築できるかということにあると思います。
 この問題は国民生活に直結する重要問題でありますので、良質な医療とはとのお話もございましたが、議員ご指摘のような件を含め、さまざまな観点から、当然真剣な議論がなされるものと考えてございます。県といたしましては、低所得者への配慮等、国へ働きかける姿勢は今後とも変わりませんので、ご了解をいただきたいと思います。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──所定の時間が参りましたので、以上で村岡キミ子君の質問が終了いたしました。  これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午後零時六分休憩
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