平成13年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(玉置公良議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時五分再開
○議長(井出益弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十八番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 議長のお許しを得て、一般質問を行います。
 私が今までの議会質問で一貫して訴えている考え方は、二十一世紀は積極的に和歌山のよさを全国にPRし、県民一人一人が知恵を出し合って、自分たちに必要な経費をみずから生み出すことが求められている時代であるということ、かつてのような国からの交付税や補助金等によって財源を賄うのではなくて、和歌山県内に蓄積されている資源や人材、生き抜くためのノウハウや知恵を使い、和歌山県自身の創造と努力によってそれをなし遂げることが二十一世紀の和歌山県政の進路であること、つまり無から有を生む発想で、県が独立国となって、国、世界を相手に県が財を生み、県民が幸せになる一石二鳥、一石三鳥の政策を生み出していく時代であることを提言してまいりました。その一つが世界遺産登録運動であります。その考え方に沿って、私はさきの九月議会での質問をさらに発展させるために、「京都議定書から読み解く二十一世紀の和歌山の挑戦」─新税・構造改革・画期的な雇用・都市との交流など地球を救う壮大な事業で日本一の環境知事に─と題して一般質問を行ってまいります。
 去る十一月十日、モロッコのマラケシュにおいて、地球温暖化ガスを削減する京都議定書の運用規則を定めた合意文書が採択され、離脱した米国を除き、日本など各国は二〇〇二年の発効に向け批准作業に着手することになりました。二十一世紀は環境の世紀と言われています。京都で行われましたそのシンボリックな会議が地球温暖化防止会議であり、そこで採択された京都議定書にかかわっている森林の大切さを私は九月議会で取り上げました。
 京都会議は、皆さんご存じのように、地球温暖化が進む現状を早急に食いとめなければならない、そのために各国が協力をして、温暖化の元凶であるCO2の排出量を削減しようではないかという会議です。CO2の排出の削減方法は、大まかに言うと、企業活動を縮小するか、森林の持つCO2吸収力によるものかの二通りです。しかし、各国はそれぞれの国の事情から企業活動を縮小してまで京都議定書に同意するわけにはいかないという国もあり、その一つがアメリカです。しかし、日本は幸い森林に恵まれていて、一九九〇年時点のCO2の排出量を、二〇〇八年から二〇一二年の間、平均で六%分削減することに協力することになりました。
 そこで、二十一世紀の我々が挑戦しなければならないことについて京都議定書から読み取れるポイントを考えてみましたので、知事のお考えをお聞きしたいと思います。
 まず、森林のCO2削減量の科学的な分析と金銭価値についてであります。
 和歌山県が、森林という地球にとってかけがえのない大きな宝を豊富に持っているということは、誇りと同時に、これは将来大変な収入財源になるということが京都議定書の中からわかりました。そして、CO2枠の売り買いが考えられるのです。つまり、近畿の府県を仮想の国際社会と見立てて、CO2枠のやりとりをしてはどうかというものであります。ご承知のように、地球環境のためのCO2削減に関する取り決めは、国際的に京都議定書により行われます。その京都が属する近畿においてこそ、まず先駆的に京都議定書の考え方、枠組みに取り組んでみてはどうかというものであります。CO2排出量の削減目標六%を、日本の場合、企業活動を縮小せずに、京都議定書にある日本のノルマである森林吸収力だけで達成しようとする場合ですが、これを公平に近畿各府県に六%削減義務を課すという前提で試算をしてみました。これをもう少しかみ砕いて説明をしてみたいと思います。そのために、私は図表を用意しました。この図表で説明をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。(図表を示す)
 この表は、皆さんご承知のように、日本で有数の杉、ヒノキ、そして広葉樹であります。一ヘクタール当たりのCO2の吸収量については、トンで計算されます。そこで調べましたら、杉は大体一ヘクタール当たり、成木で六十年で切るとしたら千本から千二百本らしいです。ヒノキもそのくらい。広葉樹でシイタケの原木林になるクヌギとかコナラ、こういう木は千五百本から二千本らしいです。
 そこで、この図の説明に入りたいと思います。この木が、一生でどれだけ、どういう期間にCO2を吸収しておるかと。十六まで升をつくっていますけれども、一齢級が五年です。そうすると、杉が一番CO2の吸収をしておるのが三齢級、十一年から十五年で十・九トンです。そして、ヒノキは同じく三齢級で、十一年から十五年。そして広葉樹は、緑の線ですけれども、六・四が四齢級、十六年から二十年だと思います。こういう形で杉、ヒノキ、広葉樹が吸収をされて、高低はありますけれども、もう植えたときからずっと切るまで吸収をしてくれると。こういうことが今まで評価されなかったということが一つ言えると思います。こういう、僕に言わせてもらったらぴちぴちの青年期というんですか、子供から青年期に入る、このころが一番吸収量が多いのですけれども、もう親のすねをかじらんでも、こういう若いときから吸収をしてくれておると。こういったことが、杉、ヒノキ、広葉樹でわかってくると思います。
 次に、この図は、今の和歌山県の森林とか近畿の森林を描いて数値にしたわけであります。
 先ほど申し上げましたように、京都議定書の排出量の削減については、大まかに言うたら企業活動を縮減する。いわゆる技術改善をして排出をとめ、少なくしていく。もしくは森林の吸収量、ここで補っていくわけでありますけれども、この図は森林のCO2の吸収量にスポットを当てて調べてみました。そして、もう一つ説明しておきますと、先ほど言いましたCO2の吸収量の単位はトンであります。そして、一トン当たりどのくらいの金額かも調べてみました。そうしたら、一トン当たり一万二千七百円であります。これは、火力発電所の化学的湿式吸着法のCO2の回収コスト、そういった表があるらしいんですけれども、そこの金額です。これは、林野庁も使っております。それともう一つは、森林がCO2をどれだけ吸収をしているかと。この計算は、実は国にも問い合わせをしましたけれども、まだ決まっていません。したがって、大変苦労をしたんですけれども、県の専門家の方々に協力を仰いで、基本的には平成十二年に林野庁が出しております「森林の公益的機能の評価額について」を基礎にはじき出してもらいました。
 そこで、説明いたします。時間がありませんから、きょうはこの赤だけ説明いたします。赤の大阪、兵庫、和歌山を見てください。和歌山は森林が多い県です。大阪は森林が少ない。そして、兵庫は森林も多いけれども排出量がべらぼうに多いと、こういうことです。ここを見てください。六%削減する数字がありますけれども、ここと森林の吸収量を見ますと、吸収量が少ない大阪とか兵庫はほかの県の協力を仰がなければならない。反対に、和歌山のように多いところはほかの県に売っていけるという試算であります。
 そこで、一つだけ和歌山を取り上げてみます。これは、京都議定書の排出量のそのままのやつを全部はじき出したんですけれども、和歌山は全体で一千六百二十五万トンであります。そして、六%削減をすれば九十七万五千トン。和歌山県の森の吸収率は二百五万トンあります。二百五万トンから六%削減の九十七万五千トンを引いたら、百七万五千トンが余ってきます。これを他県へ売れると。他県というよりも、そういう価値が出てくる。そして、これを金額に直すと、一万二千七百円を掛けてもらったら百三十六億五千二百五十万円という数字が出てきます。ちなみに、兵庫はマイナスの百四十四億七千八百万円。大阪はマイナスの四百十五億四千百七十万円。ここは他県から協力を仰がなければならない、こういう試算数値であります。ほかに滋賀、京都、奈良もはじき出しましたけれども、一応簡単にわかってもらえるために、こういう形で図表を示しました。
 以上で、この図表の説明はひとまず終わります。いかに和歌山県が豊かな森林を持っているか、それが環境時代に大切なのかがおわかりになったと思います。これが第一のポイントであります。
 二つ目のポイントは、この森林に対する林野庁を中心とする関係者の見方を変えざるを得ない現実がやってくるということであります。つまり、森林の環境への貢献と地球温暖化防止への役目というものがこれだけ大きくなっている中で、国においてもことしの夏に森林・林業基本法という名の法律をつくりました。これは、従来の森づくりの見直しを遅まきながら調整していこうという林野庁関係者の意識改革、構造改革のあらわれだと思いますが、まだまだ不十分であり、さらなる意識改革と構造改革が必要であると私は思います。小泉政権がうたっている構造改革をもう一歩先んじて実行せざるを得ない状況に追い込まれているのであります。
 具体的に申しますと、今の厳しい林業情勢の中で森林所有者の意識改革も必要です。山林に木を植えて成木になるまでいろんな手入れをしてやっと伐採をして、市場に出しても採算がとれない。多くの森林所有者はこうした中で森林への投資意欲を低下させ、整備されずに放置された森林が増加しています。しかし、森林のCO2吸収の能力が世界的に求められることをきっかけに、これが莫大な財を生む宝であるということになってきたのであります。それは、先ほどの表でもおわかりのとおりであります。
 それと、皆さん方のお手元の方にカラー刷り──これは県庁の大変優秀な方が私の考え方をイラストにしてくれたんですけれども、それを見てもらいながら、もう少しおつき合いをお願いしたいと思います。
 つまり、従来の林野庁の考えにある森林を経済的価値から評価することから、環境という視点に変わることによって、大げさに言えば、今の山林が金やダイヤモンドに変わるのです。つまり、森林を持つ環境という側面から、国民全体、ひいては和歌山県民の大きな財産となります。しかもこの事業は、森林づくりは景気、不景気には影響されません。ただ、山に木を植え、成長させ、間伐などで手助けすればよいのであります。そして、この環境価値は未来永劫続き、年とともにその評価はおのずと高まることが必至です。なぜならば、特に東南アジアあたりの発展途上国が経済活動を活発にすればするほど地球上のCO2の量がふえるとともに森林面積が減少するからです。それにつれて、いや応なしに我が県の森林育成というものは大きな意義と価値を生み出すものです。また、県内にも山林以外に遊休農地等、多くの土地があります。いろんな意見がありますが、ある森林の専門家は、これらの土地に植林をしていくことによってさらに価値が高まると言っています。
 この和歌山方式について大阪府、兵庫県が難色を示したとしても、日本は京都会議の議長国でもある立場から環境への実績を積むという責務を持っています。また国も、交付税というものを環境という視点から見直す動きも当然出てくるはずであります。そして、年々CO2吸収量を中心として算定基準の見直しが行われていくのは必至であります。地球温暖化に鋭い視線を注いでいる世界じゅうの人たちの後押しが、私たちのこの試みを支援してくれるものと確信しています。来年、日本が京都議定書を批准するのが確実視されていますが、もしこれが実現すれば、つまり和歌山森林元年として世界から注目されることになるでしょう。
 続いて第三のポイントは、この森林の排出量をめぐる取り組みの中で、私が最も期待をし、各界から注目されるのが雇用という問題であります。
 ご承知のとおり、日本は未曾有の不況が続き、毎日マスコミでリストラの話が絶えるときはありません。一説によると、その数字は五百万人から八百万人と言われ、その失業者が職を探すのに大変難しい状況にあります。その人たちのために、この元気な森林づくりが大きな雇用を生み出す母体になるのではないかと考えます。結論から申しますと、近畿で有数の和歌山県が持っている森林にどれだけ雇用が創出できるかと計算をしてみました。その結果は、五千七百人から七千五百人近くにもなります。今、国がしゃかりきになって雇用回復をすると言っていますが、明るい兆しは出ていません。ましてや、地方においても財政緊迫のために雇用に重点を置く予算計上をすることは大変苦しい状況であります。そんな中で、和歌山県の森林づくりだけで五千七百人から七千五百人近い雇用というのは、まさに救国の地方自治体として評価されてもよいと思うのであります。
 その五千七百人から七千五百人近い根拠ですが、和歌山県における森林労働者の現行の基準を目安とするならば、一日日当一万二千円掛ける年間百五十日労働で、年収百八十万円となります。これが、現在の森林組合の調べの実態であります。しかし、現実問題として、この収入で生活を営むことはできますが、もう少し余裕が欲しいと思います。
 そこで、この基準を若干修正し、年間二百日労働で年収二百四十万円とした場合、どのぐらいの人が雇用できるかと言いますと、単純な計算ですが、先ほどの試算数値、CO2吸収量を売った場合の金額百三十六億五千二百五十万円を、この修正年収二百四十万円で割ると約五千七百人が雇えることになり、また年収百八十万円とすると約七千五百人の雇用が生まれます。これは、大企業を誘致してきたほどの大きな数字となります。しかも、この企業は永久に続くのであります。企業は、その時々によって拡大したり、あるいはリストラによって、そこに働く従業員は不安がありますが、私流に言わせていただくと、森のサラリーマンにはそんなリストラへの不安も心配も解消され、しかもいつも周りの人から地球人として感謝されることで、生きがいも生まれてくるのであります。失業者を救済する方法としては画期的なことですが、果たしてそれだけ人員が要るのかという専門家もいます。そこで私は、森林の雇用について関係者に当たってみました。
 今、和歌山の山林常用雇用者は、森林組合調べで、年間平均百五十日労働で五百五十八人であるということであります。現在の山林の状況で、年間百五十日の常用雇用者はどれぐらい必要なのかと聞くと、一千五百人ぐらいと聞かされました。今の山の経済性からいうと、人を使うということが全く経済的に合わないから、できる限り人数を減らして最低限の従業員に抑えているだけであり、CO2を吸収できる健全な山にするために、それだけの従業員を雇用することができれば、植栽、下草刈り等の手入れをすることにより、山の本来持っている健康な姿を取り戻すことができます。そして、山の重要な機能を十分発揮でき、決してむだな人員ではないとのお墨つきをもらいました。最盛期の昭和三十年ごろには、県内で一万四千人も働いていたこともあるのであります。つまり、森に従事することによって、本来の日本の山が復活するということであります。しかも、リストラに遭わない人たちの中でも、都会の雑踏から逃れて山の生活に引かれる人たちがふえている中でもあり、より優秀な人たちを雇用できる環境にあることも、この事業をさらに前進させる勇気を与えてくれると思います。
 続いて第四のポイントは、雇用対象者をどうするのか、都市との交流をどう図っていくのか、県内の雇用をどうしていくのか、その人たちの訓練をどうしていくのかについてであります。
 その雇用対象者は、地元対象者はもとより、リストラに遭って生活に困窮している働き手の都会のサラリーマン失業者を主流にすることにします。その人たちは、都会での厳しい試練を受けている人たちであり、そして時代の最先端のノウハウを身につけている人たちであります。サラリーマンと言えば、今までは都会のサラリーマンというまくら言葉がつきものでしたが、これからは農村のサラリーマン、森のサラリーマンという状況が生まれてきそうであります。この人たちが山に入ることによって、森林全体が森のサラリーマンゾーンという形で、今までの農村の森とは一味違い、その様相が一変し、地元の人たちとの活発な交流が図られることは必至であります。お互いの交流が深められ、それぞれのよさが生かされるのであります。二十一世紀の新しい都会と農村との、私がつくった言葉で言いますと「混合文化」というものが生まれるのであります。この雇用の中には、他県からのサラリーマンの希望者以外にも、地元におられる元気な中高年齢者の方々や子育てを終えた主婦、若者たちにも働いてもらえる新しい雇用システムの始まりでもあります。例えば和歌山県内で、平成七年の国勢調査ベースですが、六十歳から七十四歳の中で、元気だが未就労の中高年齢者が十万二千九百六人もあり、その人たちの就労の場としても広がるのであります。そして、この森づくりに関連して、間伐、伐採だけでなく、苗木づくり、植林作業など、初心者から訓練した者まで就労できる、いろいろな職場が生まれてくると私は思います。
 続いて、その人たちを訓練する場が必要であります。それには、廃校した小中学校を借りて、県下の農業学校の先生や森林関係者が質問に答えたり、実習ができるような体制をつくってもらいたいと思います。つまり、働く人はできる限りお金を使うことなしに森づくりに入れるようなシステムを考えてもらいたいということであります。そのためには、運営、人事配置、作業手配の進め方のスケジュール等でNPO等に働きかけることも、このサラリーマンの森づくりを成功させる陰の力としての重要なポイントであると思います。
 以上申し上げてきましたが、最後のポイントとして、森林のCO2の吸収で得られると思われる収入を、この新しい森づくりのために重点的に投資することをあえてお願いしたいと思うのでありますけれども、知事としてどのように考えておられるのでしょうか。
 私は、あえて申し上げます。これらの貴重な県民の税金は、必ず財を生み、返済ができ、そしてそれにつぎ込むことによって新たな財を生むという確かな保証、しかも継続性がある。それと、この事業が県益、ひいては日本のため、世界じゅうからも歓迎される対象であることは、言うまでもありません。そうした観点から見ると、私はあえて都会から森林に入山する人たちを「森のサラリーマン」と呼びますが、この人たちへの投資は、今、口酸っぱく言われている税金のむだにはならないと思います。もし、この和歌山で五千七百人から七千五百人もの雇用が誕生するとなると、これは画期的な事業です。国は、失業率五%を超えていることから、景気浮上に巨額の金を投入し、景気回復すれば雇用が創出されると強調していますが、いつになってもその明るい兆しは生まれてきません。まして地方自治体は、税収不足と国の煩雑な法律の壁に遭い、新しい雇用政策まで踏み込めていません。
 私が調べたところでも、ほとんどが時間給での短期雇用対策等であります。進んでいると言われているお隣の三重県で、本格的な雇用促進計画を実施しても、今のところ新規の雇用は二けたぐらい、つまり百人にも満たない数字にとどまっていると聞いています。一県だけで何千人という雇用創出をすること、しかも長期に継続性があるということは、まさに信じられない奇跡というべきものであります。その上、森林吸収によるいわば外貨獲得という手法は、新税の形の変えたものと言えなくはありません。さきの石原知事の銀行に対する課税、あるいは三重県の北川知事の産廃税は、その県の特色を生かした中で新税が生まれていますが、これらの新税はいずれも徴収される側との対立抗争が起こり、将来の展望がなかなか描きにくいものであります。それに比べてこの和歌山県の方式は、人間の生命に直接つながる大切な事業であり、政府も環境に力を入れているという後押しもあり、世界も地球環境を守るという視点からの強い支援と、世界各国からの後押し、追い風も期待されると私は思います。つまり、手前みそになりますが、よいことずくめであります。しかも、将来どんどんこの事業は必然的に拡大しなくてはならない性格を持った事業なのであります。「意義のある」、そして「人の役に立つ」、ひいては「地球を救う」という大義名分が幾つもつくのであります。この取り組みをきっかけに、ほかの県にもかなりの刺激を与えるのではないかと思います。そして、国も助けることになります。新税をつくるのは大はやりですが、新税とともに雇用促進を絡めたのは日本では初めての挑戦と言えます。つまり、和歌山県での初めての新税によって、日本じゅうの失業者救済という一石二鳥の試みにトライするということは、救国の主として持ち上げられてもいいほどの価値があると確信します。
 以上、京都議定書を読み解く中から、二十一世紀の重要なテーマが解きほぐされ、五つのポイントとして申し上げてきましたが、これから知事のご意見を伺いたいと思います。
 その一点目は、近畿知事会においでになって提言されましたとき、どのような空気だったのでしょうか。どのような反応と感触があったのでしょうか。お聞かせください。
 第二点目は、和歌山方式が具体的に行動するには、どういう形でこの計画を遂行していかれるのか。私たち県民がどのような支援ができるのかを考えています。なぜかと言いますと、この問題を取り巻く状況は、国及び世界じゅうの人たちの方が好意的に見てくれているのではないかと思います。むしろ、国や世界へ訴えた方が通りやすいと思いますが、いかがでしょうか。
 第三点目は、もしこれが実現したときに入ってくる収入の使い方は、とらぬタヌキの皮算用ですが、こうした新しい二十一世紀の事業に投資すべきだと思います。森に従事する人たちに投資することは新たな雇用創出につながることになると思いますが、いかがでしょうか。また、このことは永久的に新たな安定した財源を創出することになり、財政状況が厳しい本県にふさわしい政策になると思われますが、いかがでしょうか。あわせて、知事のお考えをお聞かせください。
 第四点目は、都市との交流については、実際に約五千七百人から七千五百人も都会からサラリーマンが来れば、いや応なしにそこの地域が活性化すると思います。そして、都会と田舎の混合文化が生まれ、近い将来、「過疎」という言葉が死語になる日も来ると思います。森林を通じていろんな成果が得られると思いますが、知事の考え方はいかがでしょうか。
 第五点目は、健全な森林をふやすことについて和歌山はさらに力を入れていくべきだと思いますが、どうでしょうか。
 以上五点申し上げましたが、あえて一つ、東京の石原知事が提唱しています、東京を中心に関東を経済圏にしようとしていることに比較をして申し上げますと、経済は好不況があり不安であります。その上、企業活動につきものの資源消費によって、CO2がいや応なく発生します。経済成長にCO2はつきものになっています。これは、今の二十一世紀のあるべき環境の姿から見ると問題があると思います。日本のために経済成長をと頑張れば頑張るだけ京都会議の打ち出したメッセージとは逆行し、いろんな矛盾を抱えることになりがちだと思います。それに比べて、北川三重県知事と木村和歌山県知事が取り組もうとされている環境重視の関西圏づくりの動きは、世界から評価をされてくるものであると私は思います。しかも身近には京都会議があり、いよいよ来年が山場で、これが批准されて日本が環境大国になろうとしています。今、この森の植林というものに全力を投球することは身近な京都会議の提唱を生かすことになり、まさに意義のあることであり、日本の知事の中でも傑出した環境知事として呼ばれることを祈っています。私も、県民の一人として、環境人として、あるいは環境の民として、我がふるさとの森林に熱い視線を注いでいくことをお誓い申し上げまして、私の質問を終わります。 
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの、京都議定書から読み解く二十一世紀の和歌山の挑戦に関するご質問にお答えを申し上げます。
 前議会で、玉置議員の方からこの和歌山方式、CO2の吸収の売買ということで、近畿知事会議でぜひ発言するようにということがありましたので、私も先般の近畿知事会議で、余りそういう雰囲気でもなかったんですけれども、勇を鼓して発言をいたしました。余り関心は呼ばなかったんですが、とにかく都会地の自治体も和歌山県なんかの持っている森林の重さということを感じてくれないと困りますよという発言をしたところ、二、三の知事からは非常に強い支持を得たというふうなことがございました。
 今、議員の方から図表によってご説明された中身、非常に興味もありますし、また実際問題として、京都議定書が批准されて、各国ごとのCO2の吸収量の売買ということになってきたら、今度は国内でそれをどうしていくのかという話が当然次の課題になってくる。そうなってくると、やはり都市はCO2をたくさん排出している、地方は森林によって吸収していると、そういうふうな関係が出てくると思います。その間の財源の調整といいますか、そういうことが必ずしも──今、都市の方も非常に手元不如意なんで、たちまちすぐに大阪府から何百億和歌山に来るという形にはならないと思いますけれども、ただ、今、地方交付税のことを考えたりするときに、何か都会地から恩恵的に地方の方へ交付税という形でお金が回ってきているというふうな論調が世の中にあるわけですけれども、そうではないと。お互いに非常に重要な役割をこの地球、国土に対して果たしているんだという物すごく強いアピールになってくると思いますし、いよいよ厳しい状況になってきたときに、やはりこういうふうなものが切り札となって、そこで交付税の中に算定するかどうかは別として、そういうことで胸を張って、これだけのお金は当然地方というものを維持していくのに必要なんだということの大きなよりどころになると考えております。
 それから、新たな雇用創出についてということでございます。
 私が緑の雇用事業を提唱いたしましたのも、現に今、大変な痛みというか、毎日のように新聞にリストラの記事が載っております。こういうふうなことで、今は知識を持った、意欲を持った人たちが職を失うと、しかも都会地においてそれにかわる職が簡単には手に入らないというふうな中で、先ほど森のサラリーマンというお話がありましたけれども、これは非常にいい言葉だと思います。本当に森がサラリーマンを受け入れるというふうな新しい発想ということがなければやっていけないということで、やりたいということで考えたんですけれども、実際問題として先ほどお話にありましたように、森のサラリーマンに保障できる年収は百八十万円ぐらい。しかし、百八十万円ではなかなかしんどいという問題もあります。そしてまた、今のところその百八十万円もわずか五百人ぐらいの人にしか和歌山県では出せないというふうな状況ですので、これを何とかしないといかんということでいろんな提唱を行った。その結果として、今度の基金のお金として、和歌山県は全国で伸び率が四番目だったと思いますけれども、かなりの額が来たんですが、先ほどお話があったように、これは六カ月の非常に短期的な話であって、長期的に都会から地方へ人が移ってくるというふうな形にはならないということです。これについては、国の補助金なんかについてもそういう方向へ回ってくるように働きかけをしていかなければなりませんし、そして和歌山県でも、乏しい財源の中からいろいろ工夫をして、何とかそちらの方へ財源を向けていくという努力をしていく必要があると思います。
 それから、交流が地域の活性化をもたらすんだと。この話につきましては、先般、玉置議員のご質問の中で、人口の交流が産業を生むんだというお話がありました。私も、いろんなところで引用してその話をさせていただいているんですけれども。この緑の雇用ということについても、必ずしも別に都市で職を失った方だけではなくて、先般来、新聞に連載されていましたが、文化人の方なんかが、若いうちに早く第二のふるさとを持たなければならないというふうな提唱をなさっていました。それは、東京に研究や活動の拠点を持ちながら、早いうちから中山間地域にも自分の心のふるさとみたいなものを持っていろいろつながりをつけているという方々ですけれども、そういうふうな動きが出てきておりますので、和歌山県では両面をにらみながら、中山間地域へいろんな才能のある人たち、そして職がなくなった人たちを呼び込んでくるような仕組みを考えていく。そして、そのことがただ単に都市の人のためだけじゃなくて、そのことがその地域の人たちに活気をもたらして、そしてまたその交流の中からいろいろな新しい産業が生まれてくるということになってくると思います。
 そしてまた、今の地方の公共事業については、口の悪い人は、キツネとかタヌキしか走らない道路ということを言う人がいますけれども、そんなことは現にないわけですが、仮にそういうことがあるにしても、こういうふうな形で都市から地方へ人が行くようになれば、それぞれの公共事業とか文化施設なんかもまた新しい光を放つようになるのではないか。そして、それがひいては過疎化、高齢化に悩んでいる和歌山県の南部等の市町村にとって福音になってくるのではないかということで、いろいろこういうふうな事業を進めているわけでございます。
 いずれにいたしましても、先ほど石原東京都知事の──今はもう、何か東京とそれ以外というふうに日本の国がくくられるような形になってきましたけれども、私はどこそこの県ということは余り好きな言葉ではないでんすが。仮に関西が景気が悪くて沈滞していると。すべてではないですけれども、救う一つの方策があるとすれば、環境というふうなものに力を入れて、環境ということから関西が一つぬきんでたものになっていくということによってオリンピックも来ると。こういうふうな感じも持ったりするわけでございます。いずれにせよ、この緑の雇用事業、力を入れてやっていきたいと思いますので、ご支援方よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十八番玉置公良君。
○玉置公良君 ご答弁ありがとうございました。
 ちょっと大きな話になってきたのであれですけれども、今の知事の答弁から言いますと、本当にこの趣旨が伝わって、積極的な答弁をいただきました。
 一つだけ。最近、私も選挙区を回っていますと、県民が誇りに思う一つとして、今テレビにも出ていますから、自分のところのふるさととともに、自分のふるさとのトップの県知事が、どういうユニークな発想をしているとか、どういう傑出をした発案をしているとか、そういうところに大変興味が持たれておりまして、さらにそれを誇りに思っているということをよく聞きます。
 この間も、全国都道府県議会の研修会がありまして東京へ参加をしたんですけれども、パネラーに出てきておられる方々は、全部、有名な知事のところの県会議員さんなんです。例えば、東京の石原知事はいろいろやっておられますけれども、「東京から日本を変える」というメッセージを出しておられるし、宮城県の浅野知事は、これも私流ですけれども、「福祉厚生県を先取りしていく」という取り組み、長野県の田中知事は、これまたいろいろ出していますけれども、やはり考え方としたら、「納税県民のための政治」というんですか、そういうところかなと。北川さんは「生活者基点の県政」と、こんなことでやっておられますけれども。
 知事が大変すばらしい発想をされて、緑の雇用事業を生み出しました。私がきょう提案させてもらったことをさらに検討していただいて、できれば環境と雇用の和歌山県知事として傑出をした知事になってほしいと思いますし、私らも頑張っていきますので、ひとつよろしくお願いを申し上げまして、質問を終わります。
○議長(井出益弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。

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