平成13年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(中山 豊議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十三番中山 豊君。
  〔中山 豊君、登壇〕(拍手)
○中山 豊君 議長から発言の許可を得ましたので進めてまいりますが、与えられている時間内に用意した原稿のままを申し上げると言い尽くせない点があろうかと思うので、要点だけを先に申し上げます。
 皆さんにお渡ししている質問の項目表を見てください。四点あります。県下七市の都市基盤整備、二点目は伝統工芸品教育事業について、三点目はイノブタ論争を試みる、四番目は生石高原ススキ原復元についての諸問題、この四項目であります。さしずめ、質問しようとする要点だけを申し上げておきたいと思います。
 県下七市の都市基盤整備というのは、建設常任委員会で県内を視察して回りました。もう至るところでさまざまな要求が県政に投げかけられておるわけなんですが、さしずめ七市の皆さんはことごとく、都市基盤を整備して町を中心としながらその地方の発展のために寄与するというふうな形で燃えておるんですが、特に道路の問題等については県の力の支えがなければどうにもならないと、こういう切実な要求が寄せられているところであります。
 こういう点について、振興局単位であれこれ取り組まれるということでは物事は片づかないんではないか。先ほど来の知事の答弁にもありましたけれども、新しく和歌山県が発展するとするならば、新時代を開く構想を持って当たるというふうなことからしたら、今までのような形態ではちょっと臨めない、こういう感じがしてなりません。マクロ的に和歌山県をどうするかという観点からの迫り方が必要であろうと考えて、ひとつそういう立場からの推進方をお願い申し上げようというところで一番目の問題を掲げたわけであります。
 二つ目、伝統工芸品教育事業。これは、なかんずく海南市の紀州漆器の問題であります。もう低迷がかなり長い期間続いているんですけれども、後継者が生まれてつつがなく海南市の紀州漆器が雄々しく発展するというふうな兆しが一向に見えてこない。これをどうするかというところからいろいろと考えたところ、経済産業省からですか、本年度から新規に事業を立ち上がらせて伝統工芸品教育事業なるものを始めました。これに大きく期待しながら、後継者をどうつくっていくかということに絡んでのお話であります。
 三つ目は「イノブタ論争を試みる」という変わった提起の仕方をしておるんですけれども、県が開発をしたイノブタがやたらとそのあたりに繁殖して増殖し、農産物を荒らし農地を荒らすという被害が続出しているところから、地域の人たちからのお訴えをそのまま提起をしようとするものであります。
 県はしかし、これはイノブタだというふうな明確な対応と答弁をされようとしないのが今までの話であります。せんだって、共産党が議員団を中心にして地方の皆さんと一緒になって来年度の予算編成に向けていろいろ要望を重ねたその席上でも、この問題を投げかけたところ、イノブタだとは言えない、言わない。イノブタは、野に放ち山に放たれると、みずからがえさをとって生き延びているというふうなことにならないでやせこけて飼育されたもとのところへ戻ってきたと、こういうふうな言われ方さえするような話であります。ハンターにしろ、被害を受けている地域の農民や地域の人々は、すべてイノブタだと言っている。この認識を誤っているとするならば、その誤った認識を誤っているとして対処していく取り組みが県の立場においてなされるべきではないか。こういうふうな観点から、ハンターとか地域の人たちから言われているそっくりそのままを代弁して議会を通じて当局の皆さんに投げかけ、いやそうじゃないんだ、そうだというふうなやりとりをして、しっかりした自然認識に至るように供しようとするものであります。
 さらに、その被害をどう防止するかというふうな観点も抜かしてはならない課題だと、その中に入れているわけであります。
 四つ目、これは二回目の訴えですが、生石高原スキキ原復元の問題であります。
 これは、県の行政のあれこれにかかわってみると、自然公園班とか土木だとか、いろいろかかわってくる部署がありますが、それぞれがばらばらに対応したとしてもあの広大な自然に対応していくような好ましい施策が打ち出されにくいという実感を持つので、大所的、高なる立場からマクロ的に、あの自然をどう生かし、我々に供するような状態に持っていくかと、こういうふうな立場からの問題提起であります。
 要点を言えばそういうふうなことですが、せっかく与えられた時間のいっぱいを使ってご説明してまいりたいと思います。
 第一番目の七市の基盤整備の問題ですけれども、これは橋本市に例をとってみたら、国道三百七十一号にかかわるバイパスの問題が都市基盤整備の上から欠かすことのできない課題だということが冒頭に訴えられます。まだほかにもありますけれども。
 和歌山市は、特に中心街への流入交通の円滑化の問題が長年訴えられているわけですが、それらに対する対応が遅々として進まないという現状を訴えられるところであります。以下、ずうっと海南市から田辺、新宮市にまで至るところ、すべてそれにかかわるような、類するような問題が訴えられるんですけれども、いずれにせよ、今日県内で検討され始めている市町村合併問題に絡ませても、当然、問題視される課題であります。また、七市をそれぞれ取り巻く各地域においても急がれなくてはならない課題がその中に絡まってくるわけであります。
 そういうふうにして見ますと、いずれも市街地へのアクセス整備がおくれているというのが共通であります。県下地方都市の基盤に係る道路やこれらの整備について、それぞれの市が独自に取り組まれていかなければならない問題ですけれども、県が強力な、しかも計画的な支援策を立ててこそ和歌山県の活性化に大きな見通しが立つものであろうと、こういうふうにも考えられます。長期的展望を持って七市と県による対策協議会を打ち上げてかかるべきではないかというふうにも考えるわけであります。してみると、いずれの形にせよ、振興局単位で事に当たるにしては、全体的な課題追求には迫力が欠けるというふうな感じがしてなりません。県政全体をマクロ的に見て課題解決への手だてを組んでいく、それに値する課題だというふうに考えて問題提起を申し上げておきます。
 二番目は、伝統工芸品教育事業であります。
 平成十三年度から新規事業として興された児童生徒に対する伝統工芸品教育事業は、今日的に海南の紀州漆器を再生、興隆させるための大きな支えになるであろう、こういうふうに期待しているところであります。それだけに、この事業の実施に当たっては、経済産業省の所管する事業だから教育委員会は関係ないなどというようなことじゃなくて、それらを相絡ませながら、学童、生徒に対して、この事業がつつがなく受け入れられるような進め方をしていただきたいわけであります。この事業が広く多くの人々の漆器への関心を深めるということについては、多大な成果を期待することができるでしょう。経済産業省が所管する事業だといって教育行政は横を見て通るというようなことであってはならない、こういうふうに思うから、統一的にこの問題がつつがなく発展していくようにお取り組み願うわけであります。
 伝統工芸品教育事業は、伝統工芸士が保持する伝統的技術や技法に触れたりすることにより伝統的工芸品に対する関心を高め、伝統的工芸品の製造にかかわる人材の発掘や確保を図ろうとしているところです。しかし、実際現地でなされている状況を見れば、漆器のほんまものに迫る取り組みとはほど遠い。短絡化して、多数の児童生徒や人々が体験学習に参加してくれているというその一面だけを見て、漆器とは何たるものかというものに迫っていくそういう事業にはなっていないのではないかという危惧が感じられるわけであります。
 例えば、体験学習一つとってみたとしても、漆器というのは木地とか塗りとかまき絵とか沈金とかというそれぞれの部門に分かれて、全体として一つの商品、作品ができ上がっていくという工程でなされているわけであります。体験学習はただ単にまき絵だけで事済まされているとするならば、ほんまものに迫るということにはほど遠いということを申し上げたかったわけであります。
 「ほんまもん」というのは今NHKテレビで朝流されておりますけれども、あれはただ単に本宮を中心とする熊野の話だけではなくて、紀北の海南にさえほんまものを要求しなくちゃならないようなそういう事態、これを申し上げておきたかったわけであります。
 多くの人々に体験学習をしていただくことによって多くの人々に関心を寄せていただく、このことはよいことですけれども、後継者は自然発生的に生まれてくるものとは思われません。独自的に特別の手だてが必要であります。伝統工芸士はそれぞれの分野に分かれ、一人で最終製品までつくり上げることはできないという難しさがあると、このように本事業の実施要綱の中にも記されているわけであります。ほんまものに触れ、迫る構えと体制が求められてくるのが当然でありましょう。このように申し上げておきたいわけであります。
 重ねて申しますと、伝統工芸士たちの主体的な取り組みの構えとあわせて、一般的に広く多くの人々を対象にしないで、後継者育成のため特定された方々、すなわち工芸品教育で発掘された人材に特別の手だてを講じて集中的、持続的に研修を図ってもらう、その体制が行政に求められているのではないかと、こういうふうに考えるわけであります。後継者育成事業は工芸士の命をかけた仕事としてやってもらうという位置づけをもって、この産業をこの地域に将来残せるかどうかにかかわった仕事だという認識の上でこの事業を進めてもらいたいわけであります。
 紀州漆器は、先ほども申し上げましたように、木地、塗り、まき絵、沈金と四つの部門から成って、製品まで一人で仕上げることができない仕組みになっているということであります。しかし、ともすると、広く皆さんに漆を知ってもらうための講習会や児童生徒の体験学習となると、ほんまものに迫れない弱点をみずから持っているというふうに考えるわけであります。興味をそそるまき絵に集中して、それで終えてしまうというのが常であるからであります。今年度から始めた本事業をさらに実りあるものにするためには、以上申し上げたところを篤と受けとめていただきながら、来年度予算編成に向けても後継者育成のための取り組みを進めてもらいたいわけであります。
 特に、後継者育成及びそれの養育問題については、例えば伝統工芸士が、ごく少数でいい、四人、五人程度の生徒に集中的、持続的にある一定期間、四つの部門をすべて身につけさせていく取り組みを、会館などを利用して伝統工芸士が行政の補助を受けて進めるという事業の形態をつくり上げていただく。こういうふうなことにしないと、先ほども申し上げましたけれども、体験学習にたくさん人が集まってきてそれで事を済ませ、とにかく紀州漆器は万全なのだ、将来にわたっても大丈夫だというふうな誤った認識に陥らせてはならないのではないかと危惧されておりません。そういう立場から申し上げたかったわけであります。
 次に、三つ目のイノブタの問題であります。
 ここに言うイノブタは、ハンターの人たちや地域の人々、ことごとくイノブタだと表現されているからであります。学問的、学術的に事実を正確に表現しているかどうかは別です。ハンターや地域の人たちが申しているその言葉を、そのまま議会を通じて皆さんに申し上げたいところであります。これだけ県下でとやかく言われているにもかかわらず、県当局は何ら打ち消しもせず、認識の違いを正そうともしないのはなぜか、不思議でならないからであります。機会を得て正しい認識に立ち返る、こういうふうなことを念願してやみません。
 そもそもイノブタとは、在来のイノシシと豚をかけ合わせて県畜産課がつくったものであることから、もしこれがイノブタでないとするなら県民の認識を正確にしていただくことが必要であろうと、こういうふうな考えであります。これがやたらと増殖し、都市近郊にまであらわれ、農産物や農地を荒らし回るという事態に対しては、大きな異変と言えます。この異変に的確な対応が迫られているのではないかと考えるからであります。
 イノブタでないという具体的な理由を、よくわかるように述べていただきたい。私は、県民の方々やハンターたちから言われるイノブタではないかとの立場で、そっくりそのまま皆さんにご報告申し上げているところですけれども、いささか不明な点があるとするなら、学問的、科学的に検討、検証される必要があろうし、イノブタであるとするなら、県が開発した立場からそれへの対処が強く求められるのではないか。農業者を初め地域の人々やハンターから聞いたところからの話をそのままに冒頭に申し上げたところであります。
 さて、イノブタが出現している状況についてでありますが、ことしになって急に被害を訴える声が上がりました。タイワンザルに続いてのイノブタ被害であります。ただでさえ農業経営が窮地に追いやられているにもかかわらず、引き続いての被害で大打撃であり、農業放棄へとつながりかねないところになってきています。猿の捕獲が県の方針として決定され、農業者の心の安らぎかとの思いもつかの間、イノブタの稲作、カンショ、タケノコ、桃畑等への被害が拡大されてきているわけであります。
 被害の状況であります。高津の桃が、タイワンザルにやられながらも収穫期を越したところで、桃畑、中でも桃の木の根方を掘り返される。これでは桃の木が傷み、来年の収穫が見込めないと言う。和歌山市山東、岡崎方面では、来春に出てくるであろう地中のタケノコを掘り起こされて食われてしまうと言う。来春の収穫は見込めないと言う。海南市は孟子、野上新、ひや水地域にあっては、カンショ畑やら水田が荒らされ、稲はまだ十分結実していない乳状のうちに食べられ、収穫期は突っ立ったまま、稲穂は天を突いている。サツマイモはイモだけ巧みに食べられ、つるや葉は返されないでいるから被害を受けたとは見えない状態でやられている、このように申されます。山間地の飲料水のパイプや取水施設を壊されたり、まさに被害は多様であります。
 なぜ急増したかに触れてまいりたいと思います。
 イノシシは山深く山地に生息して、海南東部の山間などに出没することはなかったわけであります。本年、なぜイノシシが人家近くまで出現するようになったか。山にえさとなるものがなくなるという自然環境が劣悪化し、生態系が崩されたこと。また、それより頭数がやたらと増殖したからだとハンターや農業者は申されるわけであります。加えて、出現するのはイノブタであると言います。なぜイノブタなのかを関係者たちやハンターに聞きますと、次のように言われます。イノブタは県農林水産部畜産試験場が養豚農家の経営安定化のために改良開発し、増殖、生産物の品質向上、産地経営の近代化及び普及に努めてきた。いわば動物性たんぱく質の需要とイノシシ肉を好む嗜好に基づいて食肉環境に寄与するとの期待にこたえるため改良・開発し、普及に努めてきたと。よくご存じのようであります。しかし、肉食への嗜好傾向の変化及びイノシシでないイノブタ肉が求めに合致しないとして思うほど伸びてこないことから、それに向け当て込んで大量飼育した業者がその処置に困ることとなった。県下では該当する飼育者は平成十三年二月一日現在で次のようであるが、大量飼育している業者が困り抜いて野に放したとの話が、ハンターや地域の農業者たちからよく言われるところであります。
 ちなみに、イノブタ飼育農家戸数及び頭数は、るる当局から資料をもらったところによると、貴志川町を初め本宮町まで合わせて十二戸の方たちが飼育なさっている。頭数でいえば三百三頭。当局の方の話では、県内で放したりしたことはただ一頭もないと申される一方、なぜふえたのか──話は続きます。県外に持ち出され、それぞれ逃したり放したりしたと言われていることには触れられないわけであります。例えば、猟犬の訓練に使ったイノブタが逃げ出したなど、県外の事情は全く把握されていないようであります。
 増殖の理由として次のようにも話されているけれども、まさに県内のイノブタの状況については、ひょっとしたらそうかもわかりません。しかし、現実に海南市の東部にまで及んで、紀の川筋から始まって葛城山系、そのあたりに随分とたくさんあるわけであります。経験則からすると──海南のハンターたちの話ですが、一冬に二十頭、三十頭、ある冬には四十頭さえ捕獲したと、こういうふうな話がまことしやかに語られているところです。イノシシなんていうのは僕らの感じから言うとそんなにたくさんとれるものではないというふうに認識しているところですが、それほどに増殖していると、こういう話であります。イノシシは年に一回の出産であるのに対し、イノブタは二回。しかも、一回の出産数はイノシシは一、二頭であるけれども、イノブタは七頭から八頭だということですから、まさに急増の原因はここにあると見て間違いないだろう。こういうふうに考えるわけであります。
 さて、そういう状況から被害をどう防止するか、こういうふうなところに及ばなければなりません。
 皆さんから聞きますと、被害が出たら被害が出たとして自治体の長にその旨を申し上げる、自治体の長はそれがイノシシかどうかということを確かめて、イノシシだとなったら猟友会の皆さんに出動してもらってそれの捕獲のために働いてもらうと、こういうことであります。しかし、実態としては、ハンターの皆さん、猟友会の皆さんは老齢化してその求めに十分応じられる体制に今日的にはないと、地域の皆さんから聞かされるわけであります。
 被害が出たらまさにそのようなハンターたちに依拠して被害を防止するということだけれども、被害がなくなるためには、猟友会の皆さんに依拠しなければならないということのみならず、わな、くくりもこのごろ随分と皆さん普及しているみたいであります。わな、くくりというのは大変危険なようであります。イノシシが出たら、出たという山を猟友会の皆さんが取り囲んで、猟犬を連れてその山から追い出す、追い出されたイノシシは待ち構えているハンターたちの前に出現してくる、それで射とめると、こういうふうな仕組みのようですけれども、山の事情によって必要なハンターの数が確保できないということになってくると十分な効果を上げることにはならない。出動したからといって、必ず射とめるということの方が少ないようであります。そういうふうなことからしたら、ハンターをどう確保するかという問題であります。
 先ほど、県の猟友会の会長、県会議員の宗猟友会会長にもお聞きすると、まさに実態はそうだというお話ですけれども、少なくなってきておるからといって、それの補充は不可能かといったら決してそうではない。若い人たちにそのような立場に立って立ち働いてもらうというふうな取り組みをすれば、猟友会の皆さんの増員は可能だと申されます。その可能な条件を確保するための県行政の支援が要るであろうと、こういうふうに宗会長のお話を聞きながら思ったわけであります。
 銃を持ってやたらとだれしもが山に入るということができない。県知事の認可を受けた者だけが保有することができるわけです。その認可を持った若い人たちが、与えられたからといって銃が必ずしも巧みに操作できるものではない。巧みに操作できるような訓練をしなくちゃならない。訓練する場所が要る。その場所が県内にはないと、こういうお話であります。今日そういうふうな状況に陥りつつあるところでしかるべき対処方が要るのではないかということを、ここで申し上げたいわけであります。
 さらに、わなの問題についても、人々がそれぞれ勝手に、イノシシが出てくる、イノブタが出てくるからといって、山にくくりをかけに行くというふうなことにもならない。たまたまハンターの人たちが犬を連れて山へ入ったとする。イノシシに迫っていくために猟犬を放つ。むしろイノシシよりも、放った猟犬がかかって帰ってこない、こういう事態もよくあるみたいであります。ハンターたちは、犬が帰ってこないから山を駆けめぐって猟犬を探し求めるというふうな事態にもよく陥るようであります。だから、くくりとかわなとかいうのは、資格があるからといって、そうやたらと山に仕掛けていいものかどうかということも検討しなくちゃならない課題であろうと、こういうふうな形であります。
 だから、戻りますが、イノブタかイノシシかという判定はやがて科学的、学問的な検証と検討が必要なところに来ているとするならば、県はそのような立場で潔しとして、イノブタなのかイノシシなのか、県民やハンターたちが誤認しているあたりを明確に対応してあげていただきたいわけであります。
 次に、もう時間も迫ってきましたから、生石山の問題について申し上げたいと思います。冒頭にも申し上げましたように、二度目の取り上げであります。
 十一月の十八日に、ボランティアたちが二百名ほど集まってススキ刈りをしましたが、それに僕も参加して、事態はどういうことなのかということをつぶさに見てきたつもりであります。他の雑木が侵入してきてススキ原が大きく狭められているということは、まさにそのとおりであります。
 これを防ぐためには、あそこに火を放ち、ススキの原を燃やすことが一番効果的だということを共通認識として皆さんが皆持っているわけです。しかし、それがそのようなことになりにくい。山を取り囲む自然環境が、あるいはまた人為的な環境がそれを許さないというふうなことになっているようであります。これを、その燃やすということによってススキ原がつつがなく再現されるために、そういう条件を確保するいろいろな取り組みが要るであろう。そのいろいろな取り組みの中で、それぞれの分野、それぞれの与えられた部署でその課題を個々に追求しているようでは対応し切れないのではないかと、こういうふうな感じもします。例えば、道路の問題があります。例えば、あれを利用しようとする人々の数の問題もあります。自然公園を訪ねてくる人たちによってまさにもう一遍再認識してもらうというような問題もあります。さらには、開発ブームに乗せられて、あの周辺の山林地が開発の対象として多くの融資を受けて買われたという話もあります。買われたけれども開発に至らず、そのまま放置して償還期限が来て難儀していると、こういうお話でもあります。さらに、山に上がっていく道が整備されていないために、心ない人たちによって都市部から廃棄物が運ばれてきて路肩や山林に放置されるということも間々あるようであります。
 こういうふうなことに対処しようと思ったら、総合的に対応する協議会のようなものを立ち上がらせて検討し、それに迫っていくという、こういうふうなことがあるであろう。ましてや、あの山に上がっていく道の整備も求められておるようであります。かなり整備は進んでいるけれども、まだ狭隘なところが、数多くはないけれども残されておる。そういうふうなあたりは、やはり生石山高原が多くの人々によって利用され、そして特にあの高原を利用して青少年のいろいろな活動に供されるような環境を整備するためには、それぞれの部署、それぞれのところで個々ばらばらに対応するだけでは話にならんのではないか。
 例えば、あの生石高原の家。あれは、青少年課が担当しながらも、教育委員会とは何ら関係のないような話であります。だから、健全育成という立場から見たとしても、自然公園というサイドから見るのではなくて健全育成にかかわる青少年の分野で見たときに、ともに総合的に対応していくという行政の力の発揮のしようがどこかにあってしかるべきだと、こういうふうな点を申し上げながら、以上四点にかかわって、冒頭に申し上げたあたりを篤とお受けとめいただきながら、第一回の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの中山豊君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 商工労働部長内田安生君。
  〔内田安生君、登壇〕
○商工労働部長(内田安生君) 伝統工芸品教育事業についてお答えをいたします。
 県では、平成十二年に海南地域の漆器産地の活性化計画を策定し、この計画に基づいて漆器組合が行う事業の支援を行っているところでございます。特に、後継者の育成については重要なことだと認識をしてございます。伝統漆器技術者養成事業や漆器組合青年部への実技指導に取り組んでいるところでございます。今後とも、漆器組合及び地元海南市と十分連携をとりながら、漆器産業が新しい時代へ脱皮を図れるような取り組みを県も積極的に支援してまいりたいと考えてございます。
 また、伝統工芸士の活用による伝統的工芸品教育事業については、教育委員会とも連携をとりながら事業の周知を図ってまいります。
○議長(井出益弘君) 農林水産部長辻  健君。
  〔辻  健君、登壇〕
○農林水産部長(辻  健君) イノブタなのかイノシシなのか、その実態についてのご質問でございますが、豚はもともとイノシシを改良したものでございまして、イノシシの血液が濃くなればなるほどイノブタとの判別は難しくなってまいります。畜産試験場におきましては、イノブタの子の配布を行っておりますが、雄のイノブタにつきましてはすべて去勢をして農家に配布してございます。
 なお、近年、農家から豚やイノブタが逃げたり放逐されたという情報は入ってございません。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 環境生活部長秋月成夫君。
  〔秋月成夫君、登壇〕
○環境生活部長(秋月成夫君) イノブタに関する三点についてお答えいたします。
 まず、イノブタの野外における繁殖状況については、近年、狩猟関係者等から伺ってはおりますが、その存在の有無や生息状況については現在までのところ把握できてございません。
 野生下でのイノブタの存在の確認方法については、イノシシと同種であり、DNA鑑定によって可能かどうかなど技術的な問題もあることから、今後の課題と認識しております。
 次に、イノシシが人里近くに多く出没するようになった原因については、耕作放棄地の増加によりイノシシのえさ場やぬた場などの生息域が人里近くに増加したことや、シイやドングリの実を供給する広葉樹林が減少したこと、あるいは狩猟者が減少したことなども人里におりてくる原因となっているものと考えております。
 次に被害駆除策について、近年の被害発生量の増加に対しては、今年度から県といたしましても有害駆除事業に対しての市町村補助制度を創設したところでございます。今後は、今年度の状況を踏まえつつ有害駆除事業に取り組んでまいる所存でございます。
 次に、狩猟者の減少に関する点でございますが、本県のみならず、全国的に狩猟者数は減少傾向にあります。その対策として、環境省及び大日本猟友会において一般啓発用冊子の作成や狩猟者資格取得手続の改善対策の検討、狩猟者定着対策の検討などが行われているところでございます。本県におきましても、これらを踏まえ、今後の対策について検討を進めてまいりたいと考えております。
 続きまして、生石山のススキ草原の保全・復元活動につきましては、本年四月、ボランティアの方々によって生石山の大草原保存会が設立され、自然観察会や資料展示、ススキ刈り取り会などの活動を実施していただいております。これらの活動に対する支援としては、本年度から地元の一市四町及び民間企業で構成する生石高原観光協会を窓口として保全活動に要する経費の一部を補助することとしているほか、先般実施されましたススキ刈り取り会に対しても職員を派遣するなど、同会と連携し、協力を行っております。また、こうした保存会の活動への参加呼びかけにつきましては、県の広報番組や関係市町の広報紙など、各種の方法で協力を行ってまいりました。
 また、山焼きに関しましては、大草原保存会も将来の目標であると言っておりますように、消火用水の確保や民有地の混在などの課題があるところですが、草原維持の効果的な手法の一つでありますので、地元市町や保存会の方々とも協議を行い、取り組んでまいりたいと思っております。
 議員ご指摘のとおり、生石高原のススキ草原は近畿でも有数の規模を持ち、多様な動植物が生息する豊かな生態系であります。この生態系を保存するため県では平成八年に生石高原県立自然公園の公園計画見直しを行い、保護計画及び利用計画を策定したところでありますので、今後ともこの計画を踏まえ、関係機関とも連携を図り、適正な利用を促進してまいります。
 また、生石高原の家は、昭和五十三年、地元市町村からの強い要望にこたえ青少年のための施設として開設したものでございますが、他の施設より小規模であり、利用団体の自主性を重視した施設としております。今後、生石山の自然環境を生かしていかに利活用できるのか、検討を進めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 県道野上清水線の生石高原までの間につきましては、特に交通の支障となる箇所に待避所を設置する等の現道対策を講じております。しかしながら、一部の事業区間につきましては地権者の協力が得られてございません。
 今後、地元関係者のご協力をいただきながら地権者のご理解を得てまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十三番中山 豊君。
○中山 豊君 生石山への道は、土木部長のお話のように随分よくなっております。改良してほしいと求められている箇所というのは、ごく──野上町から上がっていく道についてはそうたくさんあるとは申しがたいところにあります。だから、一層のご努力をお願い申し上げておきたいと思います。
 それと、特に生石山のススキ草原の保存問題については、山焼きというのは効果的な手法だというふうな当局のご認識をいただきました。まさに一緒であります。その効果的な手法をいかに実現するか、具現するかという点についての迫り方が今後の大きな課題であろうと思われますから、懸命な検討と各機関との調整を進めながら、どう具現するかの課題に迫っていけるように鋭意努力していただきたいとお願い申し上げておきたいと思います。
 イノシシの問題ですけれども、増殖して随分と被害が拡大されてきているという事実があります。そして、ハンターや地域の農業者や地域の人たちはイノブタだと申されている。それがそうでないとするんやったら、そうでないというふうにはっきりした理由でもって県が答えていく、こういうふうな立場に立たされているのではないかと。もしイノシシだとしたら、イノシシがこういう近郊に出てきて荒らし回るというふうなことになっているその具体的な関係をどう認識するか。自然が壊されて──イノシシは山深いところで生息して、人里に出てくるというふうなことがかつてはなかった。そういう事態が壊されて人里へ出てきて農地とか農産物を荒らす、これは何なのかと。それが、山が荒れてイノシシがすむことができなくて人里に出てこざるを得ないということであるとするならば、荒れている山をどうするかというふうな大きな課題に迫っていかなくちゃならないという問題もあるでしょう。
 だから、これはイノブタなのかイノシシなのか、こういう点についての判断は極めて重要な問題だと思われます。そして、イノシシのふえ方とイノブタのふえ方の違いからして、ふえているというこの事実からしたとしても、イノシシなのかイノブタなのかという点についてははっきり言えないというのもまさに問題であります。
 このまま放置すると、紀北だけにあるんではなくて、ただでさえ昔の県民が言っていたイノシシに加えてイノブタ、紀北の方でふえているイノブタが紀南の方へ伸びていって、さらに大きな自然を破壊し、農家や農産物を荒らすという、こういうふうな事態が出てこないとも限らない。まさに火を見るよりも明らかだというふうに申しておきたいと思います。しっかりとこれについての検証、検討を加えていただくことをお願い申し上げて、はっきり「そうします」と言ってほしいんだけれども、もう時間がないので終わります。よろしくお願いします。
○議長(井出益弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で中山豊君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午後零時九分休憩
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