平成13年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(原 日出夫議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○議長(井出益弘君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十八番原 日出夫君。
  〔原 日出夫君、登壇〕(拍手)
○原 日出夫君 お許しを得ましたので、通告に基づき質問させていただきます。
 まず冒頭、会派を代表して、去る七月十日急逝された木下秀男議員に謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたします。
 また、十一日に勃発した米国ニューヨークの世界貿易センタービルほかへの同時多発テロ事件に対しては、理由のいかんを問わず、断じて許せるものではありません。犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被害者の方々、関係者の皆さんに対して心からお見舞い申し上げます。
 では、質問に入ります。
 ITバブルの崩壊により、国内の電機産業においても相次ぐリストラの発表が新聞紙上をにぎわしている中で、今回のアメリカにおける卑劣な同時多発テロにより多数の人命が失われ、世界の金融の中心が麻痺し、その影響で世界的な不況が起こるのではないかと懸念されております。我が国においては、ただでさえデフレが進行し、失業率も上昇し、求人と求職とのミスマッチが言われている中で、本県への影響が心配されております。国においても、雇用確保に向けて補正予算編成の声が上がってきており、小泉首相が構造改革のための公約として掲げている国債三十兆円についても賛否の議論が起こっております。
 そのような中で地方財政は危機的な状況にありますが、本県においても、昨年五月に公表した財政運営プログラムIIにおいて、平成十五年度までの財政健全化期間中に取り組む具体的な健全化方策と削減目標額が示されましたが、その内容を見るとカット、カットのあらしのようで、暗い気持ちになってしまいました。また先日、木村知事が三重県の北川知事と共同で提案された緑の雇用事業は高く評価され、全国の自治体を初め知識人を含めた世論を喚起したことから、これからは経済や政治については地方がリードする時代が到来したと感じました。
 このような状況を踏まえ、間もなく編成に取りかかられるであろう平成十四年度の予算編成方針についての基本的な考え方を知事に伺いたいと思います。
 まず第一は、平成十四年度の予算編成においては、これまでの一律シーリングではなく、県勢活性化、雇用創出など、県の重要課題を解決していくための事業については積極的に予算化するなど、めり張りのきいた予算編成を行うことが必要と考えるが、どのようにお考えでしょうか。
 二点目として、県勢活性化や雇用創出など県の重要課題を解決していくための事業を積極的に予算化するに当たっては、ある程度公債費が膨らむこともやむを得ないのではないかと考えるのですが、どのようにお考えでしょうか。
 もちろん私は、いたずらに借金をふやせと言っているのではありません。六月議会でも述べたとおり、人件費の削減や県単独補助金の見直し、さらには県外郭団体等のスリム化など思い切った行財政改革により、経常経費とりわけ事務費のむだを総点検し、さらには年次別に削減目標数値を設定し、実行していくことで、むだな歳出を絞り込んだ上で、県勢活性化や雇用創出など県民の生活や地域の活性化につながる事業のために行う借金については、その返済を次の世代にゆだねることになっても県民の同意が得られるのではないでしょうか。また、本県のように南北に長く、いろいろな特性を持った地域を抱える県にあっては、費用対効果といった効率性という短期的な尺度だけで判断するのではなく、地方の特性にも配慮して、県民の立場に立った行政を進める公共性という視点が求められており、その期待にこたえていく責任があるのではないでしょうか。知事の和歌山の特性を生かした県政を実行する、その能力を十分に発揮する上でも、また厳しい社会経済情勢の中でこそ、ある程度の借金をしてでも地域経済に活力を与える施策をとることも、公共という立場から求められているのではないでしょうか。
 以上、県の予算編成について私の考え方を申し上げましたが、知事のご見解をお伺いしたいと思います。
 次に、こういった基本的な立場に立って、県勢活性化と雇用確保のため、知事の言う、県内にある特性を生かした産業を構築するための具体的な施策をどうするのかでありますが、私はたくさんの事例の中から、具体的に本来やるべき事業の活性化と雇用についてご提言申し上げたいと思います。
 福祉関連施策では、特別養護老人ホームの整備必要見込み数を県が定めておりますが、三百五十床必要で、五十床ホーム、七施設つくるとして、一施設職員数三十名としても二百十名の雇用であります。老人保健施設では、県では五百床必要で百床の五施設をつくるとして、一施設五十名として二百五十名の雇用創出が図れます。これにデイサービス等の付加サービスがあればさらに雇用増になり、地域経済への波及効果は大きいものがあります。ただ人を雇うだけではなくて三度の食事をしてということなので、事務経費や仕入れ材料にしても大変な波及効果があると思います。また、ほかにケアハウスも考えられますし、支援センターのデイサービス、訪問看護ステーション等の要望計画を実施するならば、かなりのホームヘルパーの確保が必要であります。国もホームヘルパーを確保していく方向を定めていますが、県においても、その計画にこたえていくためにはかなりの予算も必要とされると思うのであります。
 次に環境施策においては、これは一点だけですけれども、この不況の中で土木建設業者はかなり落ち込んでいくのではないか。近畿管内では、この八月末の倒産件数三百八十のうち百二十が土木建設業者だったと言われております。国においては、土木建設業者の転換事業として環境ビジネスを取り上げ、支援していくとしております。例えば、建材、廃材のリサイクルに関しては、それに対する初期投資への補助、また低利融資の金融補助、そういったことも緊急雇用対策の中で考えられると聞いております。そういう緊急雇用対策という意味だけではなくて、和歌山県が今必要としている環境問題について、建設リサイクル法や食品リサイクル法等を通じて新たに環境ビジネスを起こす事業者に対する支援をすることにより雇用の場が確保できるのではないでしょうか。
 教育施策においては、ハード面では大規模改造整備、教育内容の改定等に伴う新築改造整備事業、部分修繕事業、耐用年数から見て毎年一校の建てかえを必要とする新築事業を実施すれば、毎年の投資額は七十四億円が必要であります。ソフト面では、緊急対策として県下で専門職の補助教員を六カ月で三百名余りを雇用すると言われておりますが、専門職に六カ月というのは非常に実情に合っていないと考えます。きのう、おとといと各議員が言われましたように、むしろ四十人学級を三十人にするということで大幅な教員増になり、新たな雇用を創出するのではないでしょうか。
 土木施策においては、県民の生命と財産を守るというこの一点だけを見ても、平成十一年度末で本県の河川の整備率は三二%、平成八年度の土砂災害対策に関する整備率を見ると一七%、地すべり七%であります。土石流の土砂災害危険箇所では千六百十一の渓流がありますし、地すべりでは四百九十五カ所、急傾斜においては二千二百八十七カ所がまだ放置されたままであります。県民の生命と財産を守るという意味からも、事業としてかなりのお金が要るわけであります。
 県単独事業は、和歌山県の中山間地域にとっても大きな役割を果たしています。農林分野だけ言いますと、農業構造改善事業は国の補助事業ですが、規模、金額も大きく、農家がその事業を活用することは非常に難しい。一方県単独事業は、百万円単位、多くて一千万円程度の金額であります。農家の負担が割安になって、地域にとって大きな成果を上げております。このように、県勢活性化と雇用確保のための施策はたくさん考えられます。
 私は県財政が大変厳しい実態を勉強させていただいておりますが、県民の要望にこたえ、不況で沈滞した和歌山県の状況に少しでも明るい風を吹かすために、あえて借金をしてでもやることの必要性を提起したいわけであります。
 私は二月議会で、知事に対して、森林、林業政策について、これが雇用と新たな産業を創出するという立場で問題提起させていただきました。二月議会の知事答弁では、非常に前向いた話をしていただきました。とりわけ緑の雇用事業について知事は、三重県と共同しての林業経営、そして森林の果たす役割について答弁されました。それが、期間を置かず即座に実現されたことについては大変評価すべきことであります。
 ちょっと雑談で悪いのですが、あるとき私は、知事の大阪時代の友達の和大の教授とお話しする機会が何回かありました。その先生が、八月二十一日の「地方活性化 山の環境保全で雇用創出」という知事の論文を読まれて、「いや、知事、大変変わったね。大阪でおるときは、そんなことちっとも言うてなかったけどな」と言っておりました。もう一つは、「ガバナンス」の九月号にも知事が緑の問題を取り上げながら和歌山県の問題について対談をしております。こういった意味で、和歌山県の実情に触れて、和歌山県を何とかしなければならないという意思が全国にインパクトを与えたということを高く評価したいと思います。その教授に、私はこんなことを言うたんです。「もうじき知事の言葉も田辺弁で言うたら「やにこいええとこやさかいに紀南へも来てくれよ」という言葉になるで」と、一杯飲みながらそんな冗談を言うたわけです。それほどに、知事が和歌山県の今の立地条件の中で、どういうふうにして経済活力と雇用を創出していくかということが、いみじくもそこにあらわれていると思います。
 そこで私は、森林、林業の雇用実績についてのデータを林業の方からもらって、これを計算させてもらって表にしてみました。平成七年から平成十二年までの集計を各年度別に事業費として、とりわけ林道事業、治山事業、造林事業、そして平成十一年から十二年、今年度までの雇用緊急対策事業とそこで働く林業労働者の延べ実績、それを載せております。最高で平成十年では五十二万七千七百三十三名が延べにして働いておりますし、平成十二年では四万一千三百七十六名が林業従事者として働いているという実績が出ております。そういう意味では、知事の言われている大きな成果がここにあらわれていると思います。そのことを高く評価しながらも、ただ私が心配するのは、景気が悪化し緊急雇用対策が検討される過程で、必ずと言ってもいいほど国から出てくるのが森林整備による雇用創出構想です。しかし、いずれも期限つきで、便宜的なものであります。どうか、緑の雇用事業を一時しのぎではなく永続的な国の施策となるよう、知事を先頭に地方の声を国に訴えていかなくてはだめだと考えますし、知事も言われているように、粘り強く頑張っていただきたいと思います。
 それに加えて、この議会が緑の雇用事業議会と言われるぐらい、皆さん質問されておりますが、緑の雇用事業を進めるに当たっては、森林、林業基本計画と一体でなくては継続できません。林業を育てる入り口と出口の政策を強化することであります。そのためには、公共事業による木造、木質化の推進、木造住宅を県内外に拡大推進する、木質活用によるバイオマスエネルギーのモデル試験場建設等の木の産業づくりに向けた施策が必要ではないでしょうか。森林、林業を中心とした一次産業によって山林従事者を中心とした雇用と地域振興に役立ち、紀州材の振興によって製材所を含めた二次産業が活発化し、木造住宅に伴う職人さんの復活と新しい産業及びエネルギー産業の構築が生まれるのではないでしょうか。日本の木の文化に立ち返る方向に必ず進むと確信しておりますし、和歌山県の基幹産業に発展すると確信しております。
 知事に提言したいことは、二月議会でも申させてもらいましたが、緑の雇用事業が全国的に評価され有名になった機会を活用して、国に対し、NEDOとか筑波大学等とも連携しての木質バイオマスエネルギーのモデル試験場建設を強く要望したいのであります。緑の雇用事業を活用しての木質バイオマスエネルギーのモデル試験場を建設すれば──県はお金は要りません。高知県の深層水もそうであります。NEDOが建設して高知県に無償で提供したということもあります。そういう意味でも知事の見解をお聞きしたい。
 最後になりますが、二月議会において、森林、林業政策に林務局体制をとるよう要望しましたが、再度、この議会で要望しておきたいと思います。
 ところで、緑の雇用事業のサブタイトルとして、緑の雇用事業というだけでなくて「森と人間の共生 緑の雇用事業」というネーミングにしていただけたらありがたいなと思っております。
 次に二番目の、御坊火電のばいじん暴露試験の実施についてお尋ねします。
 梅生育不良原因解明は、あらゆる手だてをしてきた。この時点に至って、唯一残された研究課題である御坊火電のばいじん暴露試験に県は踏み切るべきだという点であります。今、梅産業は大きな転換期にあると言われています。農家は梅の価格、販路について大変厳しく受けとめ、克服するため、あらゆる知恵と努力で立ち向かっていますけれども、農家にとって命である梅の木の立ち枯れは農業を継続していく上で大きな問題であり、試練として片づけられるものではありません。なぜなら、この十数年間、栽培管理を初め農家ができることはすべてやり尽くしたのに結果が出ないことから、農家はみずからの努力に限界を感じているわけであります。梅生産価格が厳しい中で、梅の立ち枯れ問題が弱っていくのではとか、軽視されるのではといったことはみじんもありませんし、見過ごされるべきものでもありません。梅の木は、農家の命であり、働く人生であるからです。
 この前の六月議会において、田辺地方の新規の立ち枯れ本数が減るのではないかと述べましたが、南部川村や印南町では立ち枯れ街道と言われるぐらい、ことしも増加しています。紀南梅産地の技術のモデル園であった印南町の切目の農園とその周辺は、もう見る影もありません。今まで、田辺からも、日高からも、上富田の丘からも訪れ、指導を受けたその農園がもう見る影もない状態になっていることは、非常に情けない話であります。
 うめ対策研究会の最終報告によると、梅生育不良の発生メカニズムは、栽培、土壌、気象原因などが複合的に絡み合って、樹体内に養水分ストレスを引き起こした結果であるとされています。私は、養水分ストレスの問題も取り上げました。ことし一月から五月下旬の雨量の実績を見ると、乾期が続き、約四百ミリを切っている状態であります。JA紀南での立ち枯れ発症本数が多かった平成九年は一万七千五百本ですが、そのときの雨量は六百ミリを超えていました。平成十一年の一万八千本の立ち枯れのときは、四百ミリを上回っているわけであります。四百ミリを切った過去二番目の乾期であることしは、立ち枯れの症状が一気に出るのではないかと心配していましたが、秋津川を初め一部の地域では昨年より少ない状況であります。
 さて、御坊火電の稼働率を見てみると、平成八年までは三〇%を超えていますが、平成十年が一〇・四%、平成十一年が一一・三%、平成十二年が六・七%、十三年の初期においては、夏場以外はゼロに近い稼働率であります。水不足、水ストレスでも枯れるけれども、少なくとも過去二番目の乾期でも軽症樹が生き返っている実態を見たとき、やはり大気との関係を究明する非常に大切な時期に来ていると、私は指摘しているわけであります。
 これまで県が実施してきた生理・生態特性の総合解明、適正着果管理技術の開発、適正な土壌管理技術の開発、優良台木の選抜と大量増殖技術の開発、土壌微生物診断、総合実証園を核とした技術対策の浸水、糸状菌の微生物診断、大気環境等影響調査と、八項目にわたり全般的に調査していることについては評価しております。しかし、その努力の中でも原因がはっきりしない状態がいまだに続いていることについては、他の要因が誘発して原因が起こっているのではないかということを考える以外にないわけであります。原因究明と対策の確立のための調査検討を実施していますが、大気環境等影響調査について、降下ばいじん量の調査とばいじんの成分分析を県はやると言っていますが、現状ではなかなかそれだけでは実態に合わない。
 二月議会における私のばいじん暴露試験に関する質問に対し、知事から、「ばいじんの直接暴露については、技術的な面などから現在のところ難しいものと考えております。 今後の調査研究を進めるに当たっては、多くの方々の意見をお聞きするとともに、専門家の指導も受ける中で、科学的に評価できるものについては迅速に取り組まなければならないものと考えております」と答えております。また、部長の答弁では「直接暴露の点につきましては(中略)科学的評価ができる研究手法があるかどうかは検討してまいりますし、また別途、他の人々から新たな研究手法のご提案があれば、県としても他の専門家の意見も聞きながら総合的に検討し、対応してまいりたい」との答弁がされています。ばいじん暴露試験について、やるのかやらないのか、理解に苦しみます。
 私は、過去九回の議会を通じて、一貫して大気と梅の立ち枯れについて研究テーマを提言してきました。ばいじん試験に関する答弁を受け、科学的に評価できる新しい研究手法があるかどうか専門家の意見を聞きながら検討したいとの考えに立ち、私たちは田辺梅対策協議会で専門家の協力をいただき、大気と梅生育障害の研究を実施し、この一年六カ月間にわたるハウス内とハウス外に植えた梅の木の実証研究の中間成果をまとめた中で、内と外では対照的な結果が出てまいりました。今後、その露と霧の発生量頻度と酸性降下物に焦点を当てた梅生育障害の原因究明が求められるということが中間総括の中で述べられております。とりわけ酸性降下物の問題で、私たちは唯一残されたばいじん暴露試験による原因究明が立ち枯れ問題の解決への足がかりになるのではないかと期待しております。田辺市長初め、田辺梅対策協議会も期待しております。県当局の答弁に誠意があるのなら、専門家の意見を聞いてばいじん暴露試験をすることが農家やJAの期待にこたえるものですし、それを否定する理由は見当たらないと思うのです。もし県が行わないのなら、県はばいじんの提供を関電に対し求め、専門家を含めた研究機関に提供してください。県当局のお考えを聞きたいと思います。
 最後になりますが、私たち農家は大気について、雨が降ったら雨の中にどういう成分があるかと、pHの検査とかアサガオの検査をずっとやっております。知事にこれを見ていただきたいのですが、六、七、八月とフル稼働した御坊火電であります。そのときに、このカラー写真でも全部見えるくらい、アサガオの斑点の現象が起こりました。これは以前からも起こっているんですが、一番新しい資料でも、こういうアサガオの斑点が出ております。これは泉南でもそうですけれども、全国の火電の周辺でほとんどこういう症状が出てきたということが全国の公害の中で発表されていましたが、いみじくも我々のところもこういう症状が起こってきているという状態であります。それを踏まえながら、唯一残されたばいじん暴露試験に対して、県が今そのことを──私は、シロやクロやとは言っていません。県が試験をして問題がなければいいわけでありますから、積極的に対応してほしいというのが私たちの願いであります。
 次に、紀州梅のブランドを守る販売戦略についてお尋ねします。
 日本経済の現実は梅産業にとっても今までの右肩上がりから厳しい実態を味わい、梅生産日本一の産地である私たちは大きな転機を迎えています。この危機を乗り越えるために、今、梅生産農家、JA、加工業者、行政が立場を超えて、紀州梅産業と産地を守り抜くために一丸となって将来への取り組みを考えていかなければならないという方向で真剣に議論されています。こういった時期に、県行政の果たす役割は大きいと思います。
 これからの方向を見出していくために、一つ目は、梅の消費拡大をするために梅の製品開発と梅の効能を科学的に分析して消費者に安心してもらい、健康食品として確実なものにするために県行政の支援をどうしていくのか、お尋ねしたい。
 二つ目は、情報収集、市場流通、国内産地間競争、中国梅輸入とその商品の動向等を的確に把握してどう対応していくのか、販売戦略が今求められています。ことしの青梅出荷の現実は、産地としてのコントロールタワー、つまり県下を総合的に把握して、どう手を打っていくのか、組織的経験が薄いために非常に混乱をしました。そのことを痛感しました。県行政は、指導という立場でなく、関係するJA、農家、加工業者をコーディネートする役割を果たし、関係者がまとまり、知恵と力を出せる組織の確立をどうしていくのか、お尋ねしたいと思います。
 三つ目は、私たちは果樹王国日本一の上に少しあぐらをかいたのではないかな。果樹王国日本一は、生産者だけのものでなく、消費者である県民に支えられた果樹県として、地味であっても具体的なPRに取り組むという意識が少し軽薄ではなかったか。和歌山県に入れば、梅と四季の果樹が至るところにちりばめられている風景をつくろう、私はそう思います。駅をおりれば梅があり、ミカン、カキが盛られた風景、飲食店に行けば食前酒に梅酒が出て、最初のつまみの一品に梅料理が出される、会社や役所を訪ねるとお茶と梅茶菓子が出され、応接室などにミカン、カキが花のかわりに盛られている風景、小中学校の給食にご飯と梅、料理にも果樹を利用した一品がといった風景をつくっていく姿勢や、そのような県民に支えられ、県民の食卓に支えられる果樹県として足元からスタートして、県内外に情報発信することが消費拡大につながるものと信じています。県当局としても、農林水産部という枠ではなく、関係部局がそういう姿勢で、あらゆる機会、イベントを含め、一定の方針により確立された県民運動として定着していくよう、官民協力し合って進めていきたいと思いますが、どうでしょうか。
 最後になりますが、梅産業にとって厳しいことであることは確かです。日本の企業が中国に進出し、日本の産業を空洞化させてでも利益を求めて出ていくが、農家は農地を持って中国へ行けないのです。だからこそ、セーフガードを含め、主権国家として農業保護政策をとることが求められているわけであります。繰り返しになりますが、中国梅にどう対抗していくのか、国内産地間競争にどう打ち勝つのか、梅加工業者が中国に全面移転するような事態が発生するとしたら──ある加工業者は、これからしばらくは中国からの輸入製品、最終製品も含めての戦いが続くだろう、もしそれで国内加工品が負ければ、輸入梅を扱っている加工業者は中国に全面的に工場進出せざるを得ないと語っております。私たちはこの転機を好材料として、梅生産日本一、果樹王国和歌山の存亡をかけ、官民一体となっていく必要に迫られています。県当局のご見解をお聞きして、私の第一回の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの原日出夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 予算についての基本的な考え方でございます。
 来年度の予算編成については、非常に厳しいというか、先行き不透明な状況を感じております。一つは何かと言いますと、国の小泉構造改革の中でいろんな問題が出てきています。一つは、交付税等の税制がどういうふうになってくるのかが不分明ですし、道路特定財源を中心とする補助金なんかの動きがどういうふうになってくるか、こういうことは県の予算に大きくかかわってきますので、こういうことの見きわめも必要です。そして一方では、痛みを伴うということの痛みをなくすということから、雇用対策が今度の補正予算でも大きな問題となると思いますが、来年度の当初予算でも大きな問題になってくる。こういうことにも県として対応していく必要があります。そしてまたご案内のように、和歌山県の景気が非常に悪い中で、産業再生のための施策ということも県独自でも考えていかなければならないということで、いろんなことを考えていかなければならない予算になってくると思います。
 そういう中で、シーリングにつきましては、これまで予算を一定の規模に抑えていくということで非常に大きな役割を果たしてきたことは否めないわけですけれども、シーリングを行うことが、ともすれば新しいことを考えていく気持ちに枠をはめることにもなってきた経緯もございますので、来年度については、シーリングは一定維持しながらも、新しい施策にどんどん進んでいけるような形での予算編成ということも、そういう不分明な中でも行っていきたいと思っています。
 それから、こういう時期であるので公債費をふやしてでも仕事をしたらどうかというお話でありますけれども、和歌山県の公債費と借金の残高がここ十年間で二倍になっております。それで和歌山県の景気がどんどんよくなっているなら、税金が入ってきて、交付税が入ってきてこれを返していけるんですけれども、税金が入ってこなくなってきている一方で、借金と借金を返すお金が二倍になっているという状況の中では、安易に借金をふやしていくわけにはいかないだろうと思います。ただ、そうは言っても、本当に必要な事業と、必要であるけれども、それに比べれば優先度が低いもののチェックは、今まで以上にもっと厳しくしながら、本当に必要なものについては積極的にやっていかないと、これからの和歌山県の大計を誤ることにもなりますので、その辺は真剣に考えていきたいと思っております。
 何といいましても、国の方は幾ら赤字国債を発行しても、大変にはなるけれども国がつぶれるということはないんですが、自治体の場合は財政再建団体になるというたががはまっておりますので、そうなると責任ある財政運営とは言えないことになりますので、その両にらみでやっていかなければならないところに非常に難しさがあると思っております。
 そして、来年度の予算の中では、特に今ご質問の中でご示唆もありましたけれども、雇用を生み出していくような施策を県も考えていかなければならない。これは非常に大事なことだろうと思います。先日、別の議員のご質問にもありましたが、人の移動が雇用を生み出すという貴重なご示唆もありました。そういうことも踏まえて、何とか県の施策で雇用を生み出していくという形も考えていかないといけませんし、現に今一定の雇用を行っている部分について、それも尊重していかなければならないという気持ちも非常に持っているところでございます。
 それから緑の雇用につきましても、先ほども言いましたようにトータルな産業政策、地域政策ということで考えておりまして、ただ単に山の下草刈りとか枝打ちに日々雇用の感じで人を雇い入れるのではなくて、大きく山を守りながら、その山から出てくる間伐材であるとか材木を県内等で大きく使うことによって、今和歌山県にあるものを大事にしながら産業を興していくという視点が非常に大事だと思っております。まず国に提言したのは、そういう意味では何といっても国には使おうというお金がたくさんあるわけですから、それを和歌山県に持ってくるのが一番有利であろうということで発想したわけですけれども、そういう人頼みだけではいけませんので、和歌山県としても独自にそういう政策を考えていきたいと思っております。
 バイオマスエネルギーの問題、これは非常にいいことだと思います。これは、他人のあれでやれるんだったらそれにこしたことはありませんので、いろいろ研究を進めていきたいと思います。
 それから、緑の雇用創出事業につきましても、「森と人間の共生」というお話、本当にそのとおりだと思います。小さな枠、森林作業とかに限られることではなくて、大きく森と人間の共生、都市と地方の共生という大きな意味での施策になっていくことを心から願っているところでございます。
 私から以上でございます。
○議長(井出益弘君) 農林水産部長辻  健君。
  〔辻  健君、登壇〕
○農林水産部長(辻  健君) 紀州梅産地の危機を乗り越えるためについての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、御坊火電のばいじん暴露試験の実施についてでございますが、これまでもお答え申し上げてきましたように、技術的な面などから難しいものがあると考えてございまして、これまで直接暴露にかわるバナジウム、ニッケルを用いた暴露試験などを実施してきたところでございます。こうした中で、専門家のご意見をお聞きしながら、科学的評価が可能な研究手法があるかどうか検討してございますが、現段階では難しい状況でございます。
 なお、直接暴露試験について、科学的に評価できる研究手法のご提案があれば、多くの専門家のご意見もお聞きしながら検討してまいりたいと考えてございます。
 一方、御坊発電所のばいじんの成分を県としても確認するため、事業者から本年八月に試料の提供を受けて、目下、農業試験場と民間分析機関において、重金属等十三成分の分析を行っているところでございます。また、県下の広域的なばいじん量、あるいは成分を比較検討するために、梅産地を中心とした県下十三カ所に降下ばいじん捕集装置を設置し、六月上旬から調査を開始してございまして、これらの調査結果は取りまとめ次第、地元梅対策協議会などを通じ、お示ししてまいりたいと考えてございます。
 次に、紀州梅ブランドを守る販売戦略についてでございますが、最近の果実消費は、景気低迷のもとで消費の伸び悩み、あるいは安価な輸入物の増加等により、厳しい状況にございます。このような状況の中で、県といたしましては、果樹王国和歌山の展開を図る上で販売戦略の構築が重要であると考えてございまして、現在、農業団体とも協議しながら、戦略プランづくりのための問題点の整理や方策について検討を進めているところでございます。今後、さらに多くの関係者のご意見をお聞きしながら、梅も含めて果実全体の方向づけを早急に行ってまいりたいと考えてございます。
 なお、梅を初めとする果実については、近年新たな機能成分についての研究が進められており、例えば血液の循環をよくするムメフラールといった成分が梅肉エキスから見出されたという成果が出てございまして、こういった成果につきましては、ITを活用した情報発信や各種イベント等を通じて今後とも積極的に消費宣伝に生かしてまいります。また、県内それぞれの地域において、地産地消を積極的に推進し、和歌山の果樹を広く県内外にPRしてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 十八番原 日出夫君。
○原 日出夫君 一点目の問題ですが、知事、大変なときに知事になられたと思います。先ほど言いました二倍の借金を抱えた中で和歌山県の行政をやっていかなければならんということで、非常に厳しいものがあると思います。限られた財源で、知事の特性を生かしていくという政策には限界があるのではないかと思います。めり張りをつけて、重点的に政策をするにしても、そこに財源がなければ、なかなか思い切ったことはできないと思うんです。知事が一期目の一年間をやってきて、誤解がいっぱいあるのですが、何や、シーリングで削るばっかりやないかということが風潮として流れ過ぎていることに、私は非常に苦しんでおります。そうではないということは数字的にも言えますが、知事が二年目の十四年度予算で、一つは少し借金して後世に──私は財政当局に、国が金を貸してくれるのだったらという腹案を提案したんですが、国は貸してくれるということです。その選択肢の一つとして、合併特例債ではありませんが、先ほど言いました福祉とか環境とか教育とかいう部分で、二十年ぐらいのスパンで目的別の県債を発行して、一方では行財政改革をやる金にどんどん充当していくという構想に立てないのだろうか。そういうことで、知事が二年目に少し借金をしたことについては県民が理解してくれるのではないか。それがどこかに消えてなくなったというのであったら疑問が残りますが、知事は六月議会でも、地域に密着した地域福祉や社会に密着した公共事業をやらないと雇用や地域活性につながらないという和歌山県の実態を答弁されておりましたが、まさにそのとおりであります。
 そういう点で、私の提案について、知事からもしご意見がありましたらお聞きしたいと思います。私の要望にしておきたいと思いますけれども。
 平成十二年では、公債費比率が二〇・二%です。大胆ですけれども、私は三〇%ぐらいまで行ってもいいのではないかということでちょっと試算もし、県ではないですけれども、ある財政責任者に聞いてみました。今、起債比率は一二・四%ですが、一四%未満だったらいいのではないかということで考えてみました。知事がおられた大阪みたいになられたら困りますけれども、我々はそういう意味ではまだまだやれる幅があるのじゃないかと感じておりますので、その点、もし意見があったらお聞かせ願いたいと思います。
 それから、知事が研究したいというバイオマスの関係です。これは、今、山口県の萩でやっているのですが、実際に森林バイオエネルギー活用事業検討委員会というのをつくってやっております。これは、もちろん高知県もやっております。この問題については、森林を七〇%以上抱えた県は積極的にやっております。テロ事件があって、世界はこれから石油問題、いわゆる化石燃料の問題も出てくるでしょう。そういう意味では、その果たす役割も叫ばれておりますし、我々森林を抱える地域として、少なくともそのエネルギーはそこから発信しているという実情について国のそういう機関等を通じ、参考にしてやっていただけたらなと思っております。──知事、今のやつ答弁してくれますか。お願いいたします。総務部長でも結構ですけれども。
 次に、二番目のばいじん暴露の問題です。
 これは新聞でも見ていただいたように、南部の岩代の地域住民の皆さん三百戸相手にアンケート調査をしました。アンケート結果で、パイロット事業を行っている海側の余り立ち枯れのないところでさえ御坊火電との関連があるというのは六三%ありますし、立ち枯れによって農業の経営が非常に困難になるだろうというのが八〇%を超えています。私たち地域の農業経営者、とりわけ梅農家にとっては、毎日、朝早く起きて梅畑へ行って、ばらばらと枯れている状況を見ると、もう本当に意欲がわいてこないという状況の中で十数年たっているわけですから、そういう意味ではばいじん暴露試験をやってほしい。
 研究手法が確立できたらということでありますが、私たちが研究手法の確立を提言すればそういう方向でやっていただけるんですかということであります。県が考える学者の研究手法もあれば、私たちがお願いする学者の研究手法もある。いずれもやっていただいたらいい、そして結果を見たらいいというのが私たちのオーソドックスな考え方です。だから、県が言う学者はいいけれども、我々の言う学者はあかんという観点ではなくて、部長が答弁されたように、そういう専門家の手法があれば考えてみたいということについては、いい意味で、そういう手法の確立ができたらやっていただけるんでしょうねと思うんですが、答弁をお願いしたいと思います。
 以上、お願いします。
○議長(井出益弘君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまのご質問でございます。
 たくさん借金をして仕事をしたらどうかと。私も、それができるものなら本当にそうしたいわけです。仕事をして好ましくない人はだれもいません。しかしながら、今もう日本の国全体が先が見えない状況になっている中で責任ある行財政運営ということになると、そういうこと全体を見ながらしていかなければなりません。知事という職は人気取りの職ではありませんので、県民全体のことを考えてやっていくという観点からも、私は甘んじて批判のあるところは受けざるを得ないという気持ちを持っております。
 ただ、そうは言っても、国のお金を取ってくるとか、今までの県行政の中のいろんな冗費を削ってそれを県民の方の福祉とか生活に回していくということはもう非常に大事なことなんで、そういうことについては私は一生懸命頑張っているということでございます。ただ、いい仕事であれば思い切りやっていく気持ちもありますので、またいろいろご意見をいただければありがたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○議長(井出益弘君) 農林水産部長辻  健君。
  〔辻  健君、登壇〕
○農林水産部長(辻  健君) 新たな研究手法のご提案をいただければ、県といたしましても、専門の方々のご意見をお聞きしながら総合的に検討してまいります。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 十八番原 日出夫君。
○原 日出夫君 ちょっと誤解されたら悪いんで。使えるだけ使えという意味ではございませんので。公債比率が現在の二五%が三〇%により近づいてもやむを得んのではないかということと、起債比率の一二%が一三・五、六ぐらいまでに行ってもやむを得んのと違うかという範囲内における毎年の公共事業の積算をしてどうやるかということです。
 一面では、行政が非常に厳しいと言われていますけれども、今はどん底の低金利時代です。どん底の低金利時代に、今、日銀が金融緩和を言うても借りる企業はほとんどないんです。低金利だし、地方自治体はちょっと借りてもいいのではないか。これがインフレターゲットでずっと上がってき出したら、我々もちょっと楽になるのと違うかな。この底のときに、起債比率一三・七ぐらい行ってもいいのと違うか、くどいようですけれども公債比率二九%ぐらいまで行ってもいいのではないかというのが私の考えであります。
 最後になりますが、山のことで。
 第八回南方熊楠賞を受けた「森の人 四手井綱英の九十年」という本が出ています。後でお渡ししますけれども、この京都大学の教授が言われているように、知事が緑の公共事業を言われたことは、国内外における林業、森林に対する専門学者の期待にこたえた、非常に時宜を得た動きだと思いますし、大変ありがたいと思っております。
 以上で終わります。
○議長(井出益弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で原日出夫君の質問が終了いたしました。

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