平成13年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(平越孝哉議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時十三分開議
○議長(井出益弘君) これより本日の会議を開きます。
 日程に先立ち、報告をいたします。
 議案の追加提出がありました。
  〔巻末の「参考資料」を参照〕
  【日程第一 議案第百十九号及び議案第百二十号】
○議長(井出益弘君) 日程第一、ただいま報告の議案第百十九号及び議案第百二十号を議題といたします。
 議案はお手元に配付しておりますので、まず当局の説明を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいま上程されました諸議案について、ご説明を申し上げます。
 議案第百十九号は、去る八月二十一日、本県に上陸いたしました台風十一号による被害に対し、早期にその復旧を図るため所要の経費を計上したものであり、議案第百二十号は、災害復旧事業等の施行に伴う市町村負担金について議決をお願いするものでございます。
 何とぞ、ご審議の上、ご賛同賜りますようよろしくお願いを申し上げます。
○議長(井出益弘君) 以上で、当局の説明が終わりました。
  【日程第二 意見書・決議案】
○議長(井出益弘君) 次に日程第二、和議第三十四号「米国における同時多発テロ事件に関する意見書案」を議題といたします。
 案文は、お手元に配付しております。
 お諮りいたします。本案については、提出者の説明等を省略し、これより直ちに採決いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(井出益弘君) ご異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
 和議第三十四号を採決いたします。
 本案を原案のとおり決することに賛成の諸君は、ご起立願います。
  〔賛成者起立〕
○議長(井出益弘君) 起立全員であります。よって、本案は原案のとおり可決されました。
  【日程第三 議案第百四号から議案第百十八号まで、並びに
        報第六号】
  【日程第四 一般質問】
○議長(井出益弘君) 日程第三、議案第百四号から議案第百十八号まで、並びに知事専決処分報告報第六号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第四、一般質問を行います。
 三十一番平越孝哉君。
  〔平越孝哉君、登壇〕(拍手)
○平越孝哉君 おはようございます。
 今、この壇上に立つと、随分昔にこの場所に立ったような気がいたしますが、質問者として久方ぶりの登壇であります。
 平成十三年九月定例会における一般質問のトップバッターとして質問の機会を与えていただきましたことにつきましては、大変光栄であり、議員の皆さん方に厚くお礼を申し上げます。
 議長のお許しをいただきましたので、順次質問に入らせていただきたいと思いますが、その前に、去る七月十日、不慮の事故により急逝されました故木下秀男議員の生前のご遺徳をしのび、謹んでご冥福をお祈りいたします。
 また、ただいま全議員の賛同を得て意見書が採択されたところでございますが、九月十一日に米国で発生した大規模な同時多発テロ事件は、民主主義社会への重大な挑戦であるとともに、世界の平和と安全を脅かす許しがたい卑劣な行為であります。この多発テロ事件で被害に遭われた米国政府、米国国民、そして各国の方々に対し心から哀悼の誠をささげるとともに、お見舞いを申し上げます。
 さて、今、和歌山県を取り巻く社会経済情勢は、長引く不況の影響や県経済が抱える構造的な問題もあり依然として厳しく、県政が取り組まなければならない諸課題が山積をしております。このような情勢のもと、木村知事は昨年九月の県知事選挙に県民の多くの支持を得て当選を果たされました。これは、仮谷知事、西口知事のもとで三年間の総務部長、大阪府副知事などを歴任した豊富な行政経験が評価されたのと同時に、県民の地域づくりへの思いや県政に対する期待にこたえ、新しい和歌山づくりに取り組んでくれるという県民の確信の結果であったと思います。
 当時、全国で最も若い知事として就任されて以来、一年が経過しました。この間、国では森内閣にかわり「聖域なき構造改革」を旗印に小泉内閣が誕生しましたが、木村知事は就任当初から、しがらみのない若さとスピード、そして全国的な視野を持って「聖域なき行財政改革」を唱え、和歌山工科系大学の計画を中止、雑賀崎沖埋め立ての凍結を断行されました。
 また、知事には、就任間もなく梅生育不良問題で田辺市や南部町、産廃問題で橋本市と続けざまに現地を調査し、地域住民の方々と積極的に対話を進められました。そして、産廃問題については、解決に向けて全国で初めて現場でのジオメルト工法を実施されました。これらの懸案に対する知事の迅速な対応と実行力に、県民は木村県政に改めて大きな信頼と期待を抱いたところであります。
 さて、知事は就任に当たり、本県の目指すべき姿として、時代の変化に鋭敏に対応しながら外に向かって進んでいく開かれた和歌山を基本理論として県政を推進すると発表されました。そして、近畿自動車道紀勢線、京奈和自動車道、第二阪和国道を初めとする大都市圏との交通連携を促進するための基盤整備を重点的に進められています。また、産業活性化策として「ふるさと和歌山わいわい市場」構築や株式会社バーチャル和歌山への出資に代表されるIT関連施策、国際チャーター便を活用した白浜空港への海外観光客の受け入れなど、国際観光施策にも取り組まれております。そして、開かれた県政の実現として、ふるさと未来づくりトークや農林水産業ステップアップ会議、アドバイザー会議等、県民との対話や若者や有識者の意見、提案を施策に反映させる仕組みをつくられました。
 知事は、折に触れ、職員に対し、常にアンテナを高くしてさまざまな情報を収集し、従来の考え方にとらわれることのないよう指示していると。私も、県民福祉の向上のため、さらには自治体間競争に打ち勝つためには、時代の厳しい変化と時の流れを的確にとらえ、素早く対応できるよう県職員の意識改革を進めていく必要があることを痛感しております。今後、改革派知事としてその言動が世間からさらに大きな注目を集められるよう、また、現下の厳しい状況の中ではありますが、より一層行政手腕を発揮され、県政を着実に推進されますよう、私も大いに期待をしております。
 そこで、木村知事にお尋ねいたします。
 知事は、就任以来、山積する諸課題に果敢に挑戦し、県政の運営に全身全霊で取り組まれてきたと思いますが、この一年を振り返り、知事ご自身のご感想をお伺いいたします。
 さて、次に、地方と地方経済の活性化についてであります。
 国の経済財政諮問会議においてまとめられた「骨太の方針」において、個性ある地方の競争、自立した国・地方の競争が重点分野の一つに位置づけられました。これからは、自助と自立の精神のもとで個性ある地域の発展、知恵と工夫による競争による活性化を図ることが地方経済において極めて重要であります。つまり、それぞれの地方がこれまで以上に地域の魅力と自立性を高め、他の地方とは異なる独自性を創造し、発信していくことがますます重要となってまいります。
 まず、緑の雇用事業についてでありますが、木村知事は、北川三重県知事と共同で緑の雇用事業の創設を提言されました。この提言は、他の自治体を初め、各方面からの大きな反響と高い関心を呼び起こしました。共同とはいえ、どちらかといえば木村知事主導であったと伺っております。和歌山県知事の提言が全国を席巻し、他の道府県をリードしていくということは、地方分権の時代を先取りするすばらしい取り組みであり、私にとっても大変喜ばしいことであります。
 今まさに、国挙げての財政再建、公共事業費縮減の流れの中で、秋から年末にかけて深刻な失業問題や地方経済の落ち込みが憂慮されるところであります。こうした中での新しい雇用事業の提案は、農山村の豊かな自然環境を守り、雇用の受け皿の多様化を図り、地域の活性化につながるものと、森林関係者はもちろん、多くの県民の期待の声が高まってきております。
 森林を取り巻く状況を見ますと、近年の木材価格の低迷を反映して、その荒廃ぶりは深刻と言わざるを得ません。人手不足により荒れるに任せ、経済林としての管理はおろか、本来の自然環境としての役割も保持し得なくなっております。この影響は、森が生み出す水環境や、さらには海の豊かさにまで及んでいるということです。特に、県土面積の七七%が山林という木の国和歌山にとって、森林の盛衰はそのまま県勢に反映すると言っても過言ではありません。
 「地球愛」という言葉があります。森を守り、水を守り、海を守る。このことによって地球全体の環境を守り育てていこうということだと思います。そして、この運動は、我々が生活する身近な地域の単位から始めねばなりません。地球の環境は、同時に地域の大きな資源です。緑を求めるハイキングは、熊野古道で実証済みです。清流やきれいな海は、多くのスポーツやレクリエーション人口を呼び込んでいます。これからの地方の活性化は、こうしたすばらしい自然環境がもたらす交流人口によって大きく左右されてまいります。知事の緑の雇用事業に似て全国的に注目された考え方には、約十年前、中山喜弘前本宮町長が打ち上げ、十年の間、森林交付税フォーラムを積み重ねてこられた森林交付税構想があります。現在では、森林交付税フォーラム加入自治体が九百十一市町村にまで広がり、構造改革のあらしは森林交付税にとっても追い風になる可能性があります。また、環境保護の意識が高まる中で、知事の緑の雇用事業の提言と相まって、緑の雇用事業、森林交付税ともに実現に向けてさらなる発展が必要であり、補正予算や来年度の当初予算に大きなテーマとなるよう大いに期待をしております。
 そこで、緑の雇用事業の理念、内容について、ここで改めて知事にお伺いいたしたいと思います。
 また、知事は緑の雇用事業について、三重県の北川知事とともに全国の知事に広く協力を呼びかけられました。その結果、二十八道府県の知事のご賛同を得たと聞いております。そして、三十道府県知事の連名で緑の雇用事業を国の予算の重点分野に取り入れることについて、川口環境大臣と武部農林水産大臣に対して提言を行われたところであります。国への提言について、環境・農林水産両大臣の感触はどのようなものでありましたか。また、国において緑の雇用事業がこれからどのように具体化される見込みでありますか、お伺いをいたします。
 次に、地方経済の活性化についてであります。
 今、全国的に景気が低迷し、その影響は地方都市にも及んでおります。経済の分野も、景気は引き続き悪化しているとされております。雇用情勢についても、全国の完全失業率が調査開始以来初めて五%の大台に乗るという大変厳しい事態であります。このような状況において、特に地方では人口の減少と高齢化の進展が不況に拍車をかけるように進行しております。
 これらの危機を克服するためには、地方が自立し発展する方策を考え出さなければならず、まず経済的な自立という裏づけが必要となります。しかし、近年の経済のグローバル化の進展は地域産業の空洞化をさらに加速させるおそれがあります。例えば、中国では工業が急速な発展を遂げており、今や世界の工場となりつつあります。かつて、中国製品は低価格であるが品質面において先進国に劣っているというのが定説でありました。しかし、近年、各国の技術指導、生産設備の近代化等により品質面においても飛躍的な進歩を遂げ、特に製造業の生産拠点が中国へ大きくシフトされ、この流れが本県においては繊維関係に代表される地場産業など、県内産業に深刻な影響を及ぼしています。
 国内外の競争に打ちかつためには、本県の特色や個性を生かした技術力や商品の開発を目指さねばなりません。本県には、機械や化学などの分野で独自の技術を駆使して、国内はもとより世界のトップシェアを占める企業も輩出しています。このような個性ある成長企業の中に、本県産業の進むべき道が示されているのではないでしょうか。この不況が長期化するおそれのある今こそ、打つべき手は早く効果的に実施すべきだと考えます。本県経済の活性化のためどのような施策を考えておられるか、知事のご所見をお伺いいたします。
 次に、地方都市の空洞化についてであります。
 和歌山の人々にとって、繁華街・本町通りの象徴とも言うべき丸正百貨店がこの春閉店し、人々は口々に和歌山の経済的な地盤沈下を嘆きました。地元に住む人間にとって中心市街地は、長い歴史の中で地域の文化や伝統をはぐくみ、相互に交流する地域のコミュニティーの核であります。しかし、ここ数年、大型店舗の撤退もあり、ぶらくり丁では入り込み客が激減し、商店街の空き店舗が目立つようになっております。もちろん、これは商店街の努力不足もあるかもしれませんが、郊外の大型店との競争の結果であり、商店街の空き店舗の増加により地価が下落し、再開発も滞り、中心市街地のみならず、このままでは都市全体の衰退を招くこととなります。
 国としても、中心市街地活性化は重要と考えております。これら国の動向や県内市町村への取り組み状況を踏まえて、今後県として中心市街地の活性化、特に商店街の活性化にどのように取り組まれていくのか、商工労働部長にお尋ねをいたします。
 次に、医大跡地の取り組み状況についてであります。
 県都和歌山市の活性化を図る上で、現在医大跡地で県が進めている計画の果たす役割は非常に大きなものがあると考えますが、その取り組み状況について企画部長にお伺いをいたします。
 次に、教育改革についてであります。
 国民すべてが教育に関心を持ち、国も積極的に教育改革を進めておりますが、何より次代を担う子供たちがたくましく豊かに成長することは、二十一世紀を確固たる豊かで幸せな時代にするための基本であると私は考えます。本県においても、教育改革の一環として、総合学科、中高一貫教育の導入、スクールカウンセラーや心の教育相談員の配置、そして学校評議員制度の導入など、多岐にわたって改革、改善がなされています。このような改革のねらいは特色ある学校づくりであり、子供たちに希望と夢を持たせながら生きる力をはぐくみ、知識、道徳、体育、いわゆる知・徳・体をバランスよく身につけることであります。このためには、学校、社会、家庭の教育、この三育を並進させながら、学校、地域社会、家庭の確かな連携、協力が今後ますます重要であると思います。
 知識を取得する場所としての学校に家庭で担うべきしつけや家庭教育を任せっきりにして親としての権利義務を放棄する家庭が多く見られますが、家庭での体験、例えば掃除、炊事、洗濯など、家事はある程度子供に任せ、家庭という一番小さい社会単位の中で子供が役割を担い、社会性を身につけることが必要であります。しかしながら、教育環境は大変厳しい状況にあります。また、子供を取り巻く現状は危機的様相を深めております。
 今、和歌山の教育問題を考えながら、手にした小冊子「古寺をゆく」の文中に、高野山真言宗管長和田有玄座主の「法灯の言葉」で弘法大師様のお言葉が引用されており、大変感銘を受けました。
 「それ禿なる樹、定んで禿なるにあらず。春に遭うときはすなわち栄え華さく。増れる氷、なんぞ必ずしも水ならん。夏に入るときすなわち解け注ぐ」、人間社会、今は殊に社会状況、経済状況や教育環境は、悪いときもあるが、必ず人々の努力により春が訪れるもので、決してあきらめず精進することを忘れてはならないという意味であります。すなわち、葉の落ちた樹木を見て枯れ木と思ってはならない。その樹木も、春が来れば芽を吹き、やがて花をつける。厚く重なった氷も初夏にはすべて溶け、田畑を潤すのである。樹木も春が来れば芽を吹き、やがて花をつける。かくのごとく、子供たちへの教育に今情熱を注ぎ、活力ある新世紀和歌山の担い手となるよう成長させたいものです。
 そこで、教育長にお尋ねをいたします。
 今、家庭や地域の教育力の低下が指摘されておりますが、家庭教育の支援や地域ぐるみで子供を育てるためにどのような取り組みをされているか。
 次に、来年から新学習指導要領で教育内容が三割削減されますが、今以上の学力低下が予想されます。また、不登校児の増加も心配され、ゆとりを重視した教育が本来の学校教育の基礎的な学力を習得させるという目的から乖離して、現実には勉強しなくてもいいといったふうに誤解をも生じるおそれがあると思いますが、いかがお考えですか。
 また、本県ではこの四月から二つの地域において連携型中高一貫教育がスタートいたしました。来年度以降には、兵庫県、新潟県などで県立の中等教育学校が設立される予定です。本県における、その新設も含めた今後の中高一貫教育の取り組みについてお伺いをいたします。
 最後に、これは知事と教育長に要望をいたしますが、それは教育の専門職である教職員の定数改善に努めていただきたいということであります。国が策定した今年度から五カ年計画の教職員定数改善計画を重く受けとめ、県単独でも定数確保に努め、ぜひとも少人数での授業を実現していただきたい。二十人以下の学級では、授業もよくわかり、成果も上がり、楽しく学べるという調査結果も発表されております。思い切って国の標準を上回る学級編制の実現のために人と金を投入し、学校教育の再生と大胆な教育の地方分権に努力をされるように希望するものであります。
 次に、児童虐待防止法の施行と対応についてであります。
 今、教育環境や社会情勢が激変する中、児童虐待の問題が深刻さを増しております。学校と家庭あるいは地域と家庭のつながりは、糸のような細いつながりから太くて温かみのある強いつながりにすることが何より大切であります。また、両親への指導やサポートを効果的にできる機関をふやす必要があります。
 厚生労働省の調査によりますと、昨年度、全国百七十四カ所の児童相談所で受けた子供虐待に関する相談件数は一万八千八百四件に上り、前年度に比べて約一・五倍以上増加したと報告されております。また、昨年十一月に施行された児童虐待防止法では、早期発見のため、教職員を初め児童の福祉に職務上関係あるものには通告義務と早期発見の努力義務が課せられており、法施行後の本県における現状と虐待防止の取り組みについて、また通告を受けた後、児童相談所ではどのような対応をされているのか、福祉保健部長にお伺いします。
 次に、子供の保護活動についてであります。
 去る六月二十日、大阪教育大学附属池田小学校における児童等多数殺傷事件が発生するなど、子供が被害者となる痛ましい事件・事故が全国で多く発生しております。警察に対しては、子供の保護活動に関して地域に密着して活動している交番、駐在等を通じた地域住民の相談窓口の役割を果たすことが期待されています。また、子供を通じて関係機関との連携及び学校や家庭とのパイプ役としての活動を行っていくことは一層望まれております。これらの点について、最近の取り組みを県警本部長にお伺いをいたします。
 次に、二〇〇二年サッカーワールドカップキャンプの招致についてであります。
 開幕まで残り八カ月余りのサッカーワールドカップに出場する各国チームの公認キャンプ地に和歌山県も立候補し、招致活動を進めております。招致に成功すれば、子供たちに大きな夢を持たせ、国際交流においてこのすばらしい自然を持つ和歌山の名を世界に発信する絶好の機会となり、経済効果を初め、さまざまな効果が期待できます。出場チーム三十二カ国に対し候補地は現在八十四カ所あり、キャンプ地に内定した候補地も既に十カ所あると聞いておりますが、この招致活動の状況と見通しについて、教育長にお伺いいたします。
 最後に、高野熊野の世界遺産登録の推進についてであります。
 先日、和歌山市内で行われたアジア太平洋地域における信仰の山の文化的景観に関する専門家会議、そして信仰の山会議を記念して開催された高野フォーラムで大きなアピールの機会をつくれたと思います。
 さかのぼれば、高野山の世界遺産登録への取り組みは、日本有数の聖山である高野山の歴史と文化、自然を広く世界に知らしめ、二十一世紀に引き継ぎ守っていくために、平成十年八月に地元が世界遺産登録準備会を発足し、その後も町民総意で運動を展開しているところでありますが、このたびの会議の成果も含め、世界遺産登録への見通しについて教育長にお伺いをし、私の質問を終了させていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの平越孝哉君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまのご質問にお答えを申し上げます。
 まず最初に、アメリカで起こりました同時多発テロ事件、私からも謹んで犠牲になられた方々に対して哀悼の意を表したいと思います。
 そしてまた、私が知事に就任して一年がたってどのように考えているかという平越議員のご質問でございました。非常にいろいろありがたいお言葉をいただいたわけでございますが、私も、県議会の議員の方々、そしてまた県の職員の人たちの助けを受けて、当初思ってきたようなことをいろいろこの一年間で手をつけることができました。そしてまた、和歌山の特性を生かした形で何とか和歌山県が発展するようにと思って頑張ってきたことは事実でございます。
 ただ、ご案内のように、この一年間、非常に経済情勢は厳しい状況が続いております。失業率も高まっておりますし、経済成長率もマイナス。和歌山県も例外ではなく、非常に厳しい状況が続いている。そしてまた、ここへ同時多発テロ事件が起こって先行きが見えないというふうな状況で、私といたしましても、自分が思ってきたことの何もかもができたわけではないことに対して、本当に内心じくじたる思いを抱いているというのが正直なところでございます。
 しかしながら、和歌山県は大都市圏に近接するという非常に地域的特性がありますし、そして豊かな歴史、自然、環境、そういうふうなものに恵まれているということもあります。そういうものをもう一度見直して、何とか和歌山県がますます発展するように今後も力を尽くしていきたいというふうな感想を持っているところでございます。
 そしてまた、最近は余り言われなくなりましたけれども、関空の二期工事も進んできております。関空というのは、いろいろ言われますけれども、やはり和歌山県にとっては大変有意義な大きな工事だろうというふうに考えておりますので、こういうふうなものを活用した和歌山県勢の進展ということも、もう一回気持ちを改めて考えていきたいと、このように考えているところでございます。
 次に、緑の雇用事業でございます。
 これは、実は私がかねてから考えておりまして、新聞に投稿し、そしてまた、お話がありましたように三重県の北川知事──何といっても、森林関係等は和歌山と三重県は山林を所有している方も共通している場合がありますし、非常に関係の深い県でございます。そういうこともあって、私が思いつきました緑の雇用事業、これを何とか三重県と一緒にやりませんかという話を北川知事に申し上げましたところ、ご快諾をいただきまして、そして共同提言という形でアピールをしたところでございます。
 何かといいますと、今、都市と地方、中山間、こういうところは非常に人的な交流が細っておりまして、片方では都市的ないろんな問題を抱えて自分のところ中心の見方になる。そしてまた中山間はどんどん過疎化が進んでいくと。こういう中で、新たな人口流動を起こさないと二十一世紀の日本は十全たる発展をできないんじゃないかというのが私の考えでございます。
 そしてちょうど、今度、小泉構造改革の中で「痛みを伴う改革」ということで、たくさんの雇用を失う方々が出てくるとか、それからまた、一般の方々の中にも自然とか憩いとか、そういうものを大事にする風潮が出てきている。一方、先般の京都議定書の問題の中にもありましたように、森林のCO2の吸収ということが非常に高く評価されている。こういうふうなことを結びつければ、都市の人にも一定の理解を求めることができる産業といいますか、事業というようなものを、人口流動と絡めて地方で起こすことができるのではないかというのがこの緑の公共事業、雇用事業というのを考えついた原因でございまして、その中には、今和歌山県にはたくさんの森林がありますけれども、八十年ぐらいたった木じゃないと切っても値段が出ないということで、山が非常に荒れてきているというふうな現状もあります。これは、ただ単にそういうような経済的な問題だけじゃなくて、日本の国全体として守っていくべきものを守れなくなってきているという極めて厳しい現状があるということで、これを今の構造改革の中で訴えていったらうまくいくんじゃないかなという発想で行ったわけです。
 先般も東京へ行って、総理大臣にはこういうテロ事件が起こりましたのでお会いできなかったんですけれども、環境大臣、そして農林水産大臣にお会いすることができまして、どちらも「これは非常にいい」と。「既にこういうふうな方向で補正予算の事業に取り上げていく努力をしている」という、力強いご示唆というか、あれを受けたんですが、ただ、実は、議員の方々もご案内のように、先般も緊急雇用対策ということで何年か前にそういうような事業があったことがありました。だけどそれは非常に短期的なものに終わってしまって、例えば六カ月間一定の雇用をしたらお金を出すと、そういうふうな仕組みだったんですけれども、私が考えておりますのは、やはり長期的に都会の人とか、それから地方で仕事を失った若い人なんかが中山間に定住してくれるというふうな仕組みということを考えてほしいと思っておりますので、その点を先般強く訴えてまいりました。どの程度ご理解いただけたか、なかなかわからないところもありますので、この問題についてはこれからももっともっと力強く関係各県と手をつないで運動を繰り広げてまいりたいと思いますので、ご支援方よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それから、経済の問題でございます。
 経済の問題については、冒頭にも申し上げましたように、IT関係とか、それから例えば田辺の方にITの関係の会社を呼んでくることとか、そういうふうなことでいろいろ私としても力を尽くしてきたつもりでございます。しかしながら、大変な不況の中で、地場産業を中心に非常に苦境にある。そしてまた、先般、私も山東省へ行ってまいりましたけれども、中国の発展といいますか、この面の進歩というのは本当にもう目覚ましいものがありまして、はっきり言って、今まで型の工業団地を造成して工場を呼んでくるというふうな形ではなかなか産業の振興が難しいということを感じたのも、これまた事実でございます。
 私といたしましては、今またこういうふうなテロ事件が起こって非常に厳しい中ではございますけれども、そういうふうなITとか新しい産業の活性化ということに引き続き力を入れていくとともに、やはりこれから自立した県政を営んでいくという上からは、和歌山県に今あるものを大事にしていくという観点をもう一回大事にしていかないといかんじゃないかと。だから、第一次産業もそうですし、そして化学工業とか繊維工業とか、和歌山県で今まで息づいてきた地場産業に何か支援することができるようなことがあればやっていくというふうなことで、この産業の振興、経済の活性化を図っていきたいというふうに思っています。
 このため、まだ正式の名称は考えておりませんけれども、早急にこの雇用と極めて厳しい不況に対する対策を検討するための学識経験者を含んだ検討会議というものを早急に立ち上げて、その中で和歌山県の経済活性のために何が手を打てることかということを早急に検討してまいりたいと、このように考えているところでございます。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 商工労働部長内田安生君。
  〔内田安生君、登壇〕
○商工労働部長(内田安生君) 地方の都市の空洞化について、お答えをいたします。
 急速に進みつつある中心市街地の空洞化は、商業機能のみならず、地域経済全体が沈滞し、都市の衰退を招くことから、県としても強い危機感を持ってございます。
 中心市街地の活性化は、市町村が策定した基本計画に基づき進めていくことが重要であります。本県では、和歌山市のほか五市町において中心市街地活性化に取り組んでおり、特に、中心市街地の管理運営をするいわゆる町づくり会社として、和歌山市では株式会社ぶらくり、有田市では株式会社まちづくり有田が設立されております。県としましては、町づくり会社の活動や商店街振興組合等の事業に対し助成するなど、構想具体化に向け支援をしてまいります。
 また、丸正閉店後の和歌山市の中心市街地活性化については、県、市、商工会議所、地元商店街により中心市街地活性化連絡協議会を設置し、連携を強化しながら対策に取り組んでいるところでございます。 商店街のにぎわい創出は地方都市の活性化にとって重要な課題であり、今後も商店街からの要望にこたえ、市町村と緊密に連携し、ハード・ソフト両面からさまざまな支援を行ってまいります。
 以上です。
○議長(井出益弘君) 企画部長垣平高男君。
  〔垣平高男君、登壇〕
○企画部長(垣平高男君) 医大跡地の取り組み状況についてでございます。
 医大跡地利用計画の取り組み状況についてでございますが、議員ご指摘のとおり、和歌山市の中心市街地の活性化を図る上で医大の跡地利用計画の推進は重要な課題であると認識してございます。このため、県では県内で初めてとなる事業コンペにより民間活力を生かした宿泊施設、商業施設等を中心とした都市型複合施設の整備を図るために全力を挙げて取り組んでいるところでございます。これまでにも、議員の皆様を初め、関係者の方々のご協力をいただく中で、今議会冒頭で知事が説明いたしましたように、去る八月二十日に事業コンペの説明会を開催するなど募集作業を開始したところでございまして、年内にも施設を整備する民間事業者を選定いたしたいと考えてございます。
 県といたしましては、和歌山市が策定した中心市街地商業等活性化基本計画などとの整合性に十分配慮しながら、中心市街地の集客力の向上、魅力ある都市空間の創出に加え、町づくりのシンボルとなる施設の整備を目指して事業の推進を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 福祉保健部長白井保世君。
  〔白井保世君、登壇〕
○福祉保健部長(白井保世君) 教育改革についての、児童虐待とその取り組みについてお答えをいたします。
 本県の児童相談所における相談処理件数は年々増加しておりまして、平成十一年度が八十四件、十二年度が百六十件と、ほぼ倍増してございます。これは、近年の保護者の育児力の低下により件数がふえていることや、法施行後の県民の方々の認識が高まり、埋もれていた事例も掘り起こされているものと考えてございます。こうした児童の痛ましい状況の増加については、心を痛めているところでございます。
 通告後の対応につきましては、児童相談所が民生児童委員や学校などから情報を収集し、虐待の有無や状況を総合的に判断し、必要に応じて児童相談所の一時保護を活用して親子分離を図り、児童精神科医、心理判定員、ケースワーカーによるチームを組んでの子供の心のケアと親のカウンセリングを実施しているところでございます。
 児童虐待への対応には、啓発や対応のための体制づくりといった面から、民生児童委員、学校、警察等、関係機関との連携を深め、地域全体で取り組んでいるところでありますが、今後ともより一層きめ細やかな対応に努力してまいりたいと考えてございます。
○議長(井出益弘君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育改革についてお答えいたします。
 来年度から始まる完全学校週五日制のもとでは、学校、家庭、地域がそれぞれの役割を踏まえつつ相互に取り組みを進めていくことが重要であります。このため教育委員会では、学校教育と連携を強めながら、家庭や地域の教育力の向上に資する施策を実施いたしております。具体的には、子育てのヒントになる内容を盛った冊子を配布したり、家庭における父親の役割について考える講演会を開催するとともに、地域の人を指導者とするさまざまな体験活動について掲載した情報誌を作成し発行するなど、取り組みを進めているところであります。
 これからの変化の激しい社会に船出する子供たちにとって必要とされる学力は、単なる知識の量ではなく、学ぶ意欲や思考力などを重視した知的な力ととらえる必要があります。こうした力をはぐくむため、少人数の授業や複数の教員による授業、習熟の程度に応じた指導など、子供の実態に応じた指導を一層充実させることにより、基礎・基本を確実に定着させるとともに、より発展的な学習内容についても取り上げることができるよう指導しているところであります。
 また、思考力や判断力、表現力などの育成につきましては、総合的な学習の時間はもとより、各教科の授業においても、観察や調査、討論などの体験的、問題解決的な学習を積極的に取り入れることが重要であり、さまざまな機会を通じて学習の到達度を適切に評価することを含め、指導の工夫、改善等の徹底に努めているところであります。
 中高一貫教育につきましては、本年四月から古座・古座川と龍神の二つの地域でスタートした連携型の一貫教育において、中学校と高校間の教員の相互乗り入れによる授業や合同で行うチームティーチング、さらに地域学、ふるさと学習を実施するなど、その充実を図ってきております。また、六月に本県で開催した近畿地区中高一貫教育フォーラムにおいて多彩な実践発表や授業公開を行い、多くの参加者から好評を得ることができました。こうした取り組みの成果を踏まえ、今後、都市部及び都市周辺部でのさまざまなタイプの中高一貫教育校の設置についても検討してまいりたいと考えております。
 次に、ワールドカップサッカーキャンプの誘致についてでありますが、キャンプ地の決定には、実際に交通アクセス、練習場、ホテルなどの環境を見ていただくことが効果的であるので、諸外国の視察を積極的に受け入れております。八月下旬からは、スペイン、イングランド、ドイツ等の強豪国を初め、既に出場を決定しているアフリカ諸国の関係者が相次いで本県を訪れております。
 誘致の見通しについてでありますが、十二月一日の組み合わせ抽せんの前後までに最終的な決定がなされるものと考えております。今後、このような状況を見ながら、誘致委員会として迅速に対応できるよう取り組んでまいります。
 最後に、信仰の山会議の成果と世界遺産登録への見通しについてでありますが、山岳信仰の地を世界遺産に登録する際の評価基準などを決めるこのたびの国際会議では、信仰の山の評価指針や保存、管理のあり方などが示されました。それらを参考にして、高野熊野の世界遺産への登録に向け作業を進めてまいりたいと考えております。
 また、今回、ユネスコの関係者を本県に迎えたことは、世界遺産の登録を目指す上でまたとない機会であり、現地を視察してもらい、高野熊野の奥深い歴史や独自の文化を感じていただけたことは大きな成果であったと考えております。今後とも、これを弾みに関係市町、また奈良県、三重県と連携し、国との協議を重ねながら登録実現に向けて積極的に取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 警察本部長岩井良行君。
  〔岩井良行君、登壇〕
○警察本部長(岩井良行君) 子供の保護活動に関してお答えを申し上げます。
 最近、子供が被害となる事件・事故が、ご指摘のように続発しておりまして、その背景には地域における無関心層の増加や連帯感の希薄化などが指摘されております。
 警察といたしましては、関係法令の厳正な執行を通じ子供の保護活動を行ってきておりますが、今申し上げた社会環境の変化を踏まえますと、従来からの警察みずからの活動に加え、種々の関係機関に警察が働きかけを行い、それぞれの関係機関の有機的連携のもとでの協力を進めていくことが一層重要になってきていると認識しておりまして、この意味でのパイプ役としての役割が期待されております。
 このため、県教育委員会と警察本部との連絡会議を毎月定期的に開催し、児童生徒の安全対策を協議しているほか、青少年対策連絡会議、少年保護関係機関会議等の定例会議を通じて関係機関と情報交換するなど、相互の連携を深めているところであります。
 また、大阪教育大学附属池田小学校における児童等多数殺傷事件以降、制服警察官による学校周辺の警戒、警らの強化に加えて、地域安全推進員等、ボランティアと帯同しての警戒活動を実施するなど、地域ぐるみで児童生徒の安全対策に取り組んだところであります。
 このほか、学校、PTA及び地域安全ボランティア等が協力して創設している子供の緊急避難場所としての「きしゅう君の家」の活動についても側面から支援しているところであり、事件後新たに四百三十五カ所増設され、さらに県福祉輸送サービス協会加盟のタクシー会社三社においても「移動きしゅう君の家」としての「きしゅう君タクシー」が創設、九月一日から運用されているところであります。
 このような地域ぐるみによる子供の保護活動は、警察がまさしく学校、家庭及び地域に積極的に働きかけて推進している一例であります。警察といたしましては、引き続き、地域住民にとって一番身近な相談窓口の役割を果たしている交番、駐在所などの活動に加え、子供とかかわりのある関係機関、団体と連携しながら子供の保護活動に一層努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(井出益弘君) 以上で、平越孝哉君の質問が終了いたしました。

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