平成13年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


県議会の活動

平成十三年二月 和歌山県議会定例会会議録 第三号
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議事日程 第三号
 平成十三年三月七日(水曜日)午前十時開議
  第一 議案第一号から議案第八十号まで、並びに報第一号(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第一号から議案第八十号まで、並びに報第一号(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十六人)
     一  番       新   島       雄
     二  番       山   田   正   彦
     三  番       佐   田   頴   一
     四  番       大   沢   広 太 郎
     六  番       宇 治 田   栄   蔵
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       西   本   長   弘
     九  番       坂   本       登
     十  番       小   原       泰
     十一 番       木   下   善   之
     十二 番       永   井   佑   治
     十三 番       尾   崎   要   二
     十四 番       小   川       武
     十五 番       宗       正   彦
     十六 番       橋   本       進
     十七 番       生   駒   三   雄
     十八 番       原       日 出 夫
     十九 番       谷       洋   一
     二十 番       山   下   直   也
     二十一番       高   瀬   勝   助
     二十二番       吉   井   和   視
     二十三番       木   下   秀   男
     二十四番       町   田       亘
     二十五番       金   田       眞
     二十六番       高   田   由   一
     二十七番       神   出   政   巳
     二十八番       玉   置   公   良
     二十九番       向   井   嘉 久 藏
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       平   越   孝   哉
     三十二番       下   川   俊   樹
     三十三番       中   山       豊
     三十四番       浜   田   真   輔
     三十五番       鶴   田   至   弘
     三十六番       冨   安   民   浩
     三十七番       村   岡   キ ミ 子
     三十八番       中   村   裕   一
     三十九番       井   出   益   弘
     四十 番       阪   部   菊   雄
     四十一番       江   上   柳   助
     四十二番       長   坂   隆   司
     四十三番       森       正   樹
     四十四番       飯   田   敬   文
     四十五番       新   田   和   弘
     四十六番       松   本   貞   次
     四十七番       和   田   正   人
欠席議員(一人)
     五  番       堀   本   隆   男
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        中   山   次   郎
     出納長        大   平   勝   之
     知事公室長      小 佐 田   昌   計
     総務部長       稲   山   博   司
     企画部長       安   居       要
     環境生活部長     道   浦       渥
     福祉保健部長     白   井   保   世
     商工労働部長     内   田   安   生
     農林水産部長     島   本   隆   生
     土木部長       大   山   耕   二
     企業局長       辻           健
     教育委員会委員長   目   黒   威   徳
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員長   高   垣       宏
     警察本部長      岩   井   良   行
     人事委員会委員長   青   木   孝   祐
     代表監査委員     藤   谷   茂   樹
     選挙管理委員会委員長 谷   口   庄   一
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       田   村   徳   美
     次長         蓮   池   康   宏
     議事課長       北 垣 内       敬
     議事課副課長     松   谷   秋   男
     議事班長       露   詰       勤
     議事課主査      井   口   好   晴
     議事課主事      安   井   伸   彰
     総務課長       佐   竹   欣   司
     調査課長       梶   本   皓   造
 (速記担当者)
     議事課主任      吉   川   欽   二
     議事課主任      鎌   田       繁
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課副主査     保   田   良   春
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  午前十時二分開議
○議長(阪部菊雄君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第一号から議案第八十号まで、並びに報第一号】
  【日程第二 一般質問】
○議長(阪部菊雄君) 日程第一、議案第一号から議案第八十号まで、並びに知事専決処分報告報第一号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 四十四番飯田敬文君。
  〔飯田敬文君、登壇〕(拍手)
○飯田敬文君 おはようございます。
 お許しをいただきましたので、項目に従いまして質問をいたします。
 この国は泥沼にはまりかけているのではないか、とめどなく膨張する財政赤字に、だれもがそうした不安に襲われ始めております。数字を見ると、絶望的となる借金が日本にはあります。昨年末、国と地方の債務残高が六百四十五兆円余りとなっており、国債発行額は三十二兆円、国債依存度は三八%に達し、家計で例えてみれば年間支出のうち約四割を借金で賄う生活を送ったこととなり、また国内総生産との比率は第二次世界大戦突入時の水準にほぼ匹敵し、主要先進国中、最悪の債務残高であります。
 質問の最初よりショッキングなことを述べさせていただいた理由は、昨年二月議会において質問をいたしました財政危機が一年たった今日でもさらに進行している現状をとらえ、危機的意識を、行政はもちろんのこと、県民の皆様にも持っていただきたいと考えたからであります。
 臨界点とも言える日本の財政赤字でありますが、ここまで財政が悪化した理由は、言うまでもなく、長引く景気の低迷が底流にあったわけではありますが、政府の一部における政治的既得権者の救済、つまりバブル破綻をいまだに清算できない大手銀行やゼネコンへの大量の公的資金の導入、緊急性のない公共事業への投資により増加したことは間違いのない事実であります。ある経済学者は、まるで穴のあいたバケツに投資しているようなものだと批判しており、国民生活においての将来の不安を一層募らせております。
 我が和歌山県においても、この危機的状況からは逃れることはできません。和歌山県の経済情勢は、阪和銀行、県信用組合の破綻に始まり、優良企業の撤退、中小企業の倒産に至る経済情勢の低下など、景気浮揚にはほど遠いこととなっております。先月も、かねてより経営危機にあった丸正百貨店が自己破産を申し立てたことからしても、県内経済情勢は一層の危機的状況にあります。
 知事におかれては、このような県内経済情勢をどのようにとらえておられるのか、また県民生活に密着した和歌山県の姿をどのように描かれておるのか、まずお聞きをしたいと思います。
 次に、今盛んに言われておるわけでございますけれども、日本経済が、景気浮揚への財政出動か、いや財政再建かとの論争を続けております。景気は本当に回復基調に移ったのでありましょうか。日銀と政府は昨年八月に月例経済報告と金融経済月報を発表し、両報告とも景気が穏やかに回復しているという総括的な現状認識では一致しておりましたが、両者における見解には多少の温度差がありました。
 日銀は、企業短期経済観測調査が大企業の製造業で約三年ぶりにプラスに転じたことが確認され、企業部門の収益が川上のダムにたまり、やがてその水は川下の家計部門にあふれ出すという日銀のダム論の筋書きのとおりとなったため、ゼロ金利解除を促すこととなりました。しかし、日銀のダム論に対し政府与党は、あくまで雇用と消費動向に焦点を当て、設備投資はすべて前向きなものではなく債務返済などに充てている現状があり、また、手放しで景気が自律回復基調に入ったとするところまで決定する段階ではないとするものでありました。それを示す日経平均株価も現在一万三千円台を切っており、バブル経済以降の最安値を下回っておるのであります。景気浮揚策である日銀の公定歩合の今回の引き下げ、政府の株価対策も、景気の再後退の流れを食いとめる力があるとは到底思えないのであります。
 前段でもありました財政赤字は、国、地方を合わせて六百四十五兆円にも及び、その大半は赤字国債に依存しており、将来世代への負担増となるのは明白であります。政府は、財政健全化に向け、省庁再編や公共事業の見直しに着手しておりますが、経済構造の矛盾を置き去りにした空回りする議論と小手先の施策であります。日本経済の再生には思い切った改革が必要であり、例えば、政治主導により、国債の返還を景気の回復と財政再建が完全に達成されるところまで当面利払いだけにして当分の間凍結し、その間に不況の元凶である銀行とゼネコンの不良債権を一掃し、赤字国債をゼロにして福祉、環境、人権にかかわる公共事業にシフトするのも一つの方法と私は考えるところであります。
 一方、和歌山県の現状も、長引く不況の中、県財政の悪化が深刻化しております。知事は、県民に夢を与える予算づくりを基本に二十一世紀初めての予算、平成十三年度当初予算を組まれ、その説明を受けたところであります。その中身は、公共事業の見直しを含めた重要性、緊急性の高い事業への重点配分や給与関係経費の削減などの緊縮予算で、財政の健全化に取り組まれており、さらなる知事のリーダーシップを期待したいと思います。
 さて、公共事業の見直しについて少し述べさせていただきます。
 公共事業は、ある一定の時期、確かに景気の浮揚に役立っておりましたし、また、現在においても県の発展に寄与する重要な事業があることも事実であります。しかしながら、景気対策と公共事業は別のものと認識するべきであります。バブル崩壊以降に打たれた緊急経済対策の事業規模を単純に合計しただけでも百二十兆円近くに上り、巨額の財政赤字を費やして公共事業を行っても景気回復軌道に乗らず、GDPはようやく第二次金融不安以前の水準に回復するのが精いっぱいであり、明らかにこの景気対策は失敗をしております。その原因は、幾ら膨大な赤字を膨らませて公共事業を実施しても、銀行やゼネコンの救済にしか役に立っておらず、膨大な国民の税金がその穴に吸い取られてしまうからであります。したがって、景気対策としての公共事業は見直すべきであり、県民の利益に直結した環境、福祉、生活、人権対策に公共事業をシフトすべきであります。
 例えば、きのうの新田議員の質問にもございましたが、昨年十月、大阪府議会の水資源検討委員会の議論の中で、紀伊丹生川及び紀の川大堰に関する質疑の中で利水を含めたダム建設に対して一たん全面凍結との議論があり、財政事情と環境問題もあわせた公共事業への批判が出てきました。また、和歌山市議会においても同様の意見が出ております。このような意見が出てくることに対して県としてどのような対応をするのか、公共事業のあり方の検討が必要であります。そのほかさまざまな問題が山積しており、新世紀を迎えて多くの課題を抱える和歌山県の未来のあり方、進むべき方向を決めるべきであります。
 これらの課題克服の基本は、県民が安心して暮らせる地域づくりと、これに伴う具体的な指針となる中期計画を策定することが重要であります。昨年、私は九月議会において、目的達成型行政を前面に押し出した財政計画を盛り込んだ三年を基本とする中期実施計画を策定されるようご要望した経緯がありますが、知事におかれましては、知事就任後半年を経過した現在、知事の意見が十分反映された木村ビジョンを作成されているのか否か、お聞きしたいと思います。県の財政再建を念頭に置いた公共事業のあり方と、和歌山県の将来を見据えた知事木村ビジョンをお伺いいたします。
 次に、関西国際空港二期工事にかかわって質問をいたします。
 和歌山県にとって大きな意味のある関西国際空港二期工事は今、大きな障害に遭っております。一期事業の地盤沈下問題や着陸料や施設使用料などの国際競争問題、二期工事のあり方についてであります。中でも、二期工事の予算措置問題にさまざまな意見や疑問が出されております。
 関西国際空港建設に至る経緯は、全国に巻き起こった公害反対運動と相まって大阪空港騒音問題は大きな社会問題となりましたが、大阪空港の代替空港として陸上空港は不可能に近いことと、いかなる空港も陸上にある限り公害とは無縁ではないという現状と反省に立って、泉州沖の海上に公害のない空港を建設する新世紀の環境型空港として計画されたわけであります。当初から海上空港は陸上空港に比べて三倍の費用がかかると言われ、これを承知の上で建設された関西国際空港が今日、不況と財政難の中で羽田、成田と比べて費用がかさむと指摘されていることには承服しかねます。
 また、政府は総工費一兆円を超える巨額投資を公団方式で進めることに難色を示し、民間活力導入を旗印に株式会社方式を押しつけ、私たちは「近畿圏の経済再生」の前にやむなくこの方式を受け入れたのであります。その結果、関西空港は出発当初から一兆円の借金を抱え、毎年四百億円の利子と膨大な固定資産税にあえぎ、当然ながら、空港施設や連絡橋の利用料金、着陸料が世界一高くなり、国際的な競争力をますます低下させることとなりました。つまり、関西空港は採算を度外視した理想の上に計画されたにもかかわらず、採算性を求められる株式会社方式で行われ、しかも経営感覚に乏しい官僚や天下り集団により運営されることによって現在に至っております。
 関西国際空港は、平成六年、長引く不況の真っただ中に開港いたしました。開港前、大阪空港で十三万回であった離着陸回数が、現在では関西空港で十二万回、大阪空港で十万回の合計二十二万回となり、わずか六年で約七割の増加となっております。関西空港が果たす役割の大きさ、経済効果は着実に伸びておるわけでありますから、本格的なハブ空港として天候、事故などを想定したとき、二本目の滑走路、特に四千メートル級の滑走路を含む二期工事は、関西経済にとっても、我が和歌山県にとっても、欠くことのできないものであります。
 さらに、関西空港は国の第一種空港でありながら、関連近隣自治体は既に一千六百億円の空港建設費を負担し、今後の負担と合わせて約三千億円を投入することとなります。同じ第一種空港の成田や羽田の負担がゼロということを考えると全く不公平であり、当然、我が県としても地元負担の反対を表明され、加えて、政府に対して完成に向け国の責任において取り組まれるよう強い要望を期待するものであります。
 政府は着陸料引き下げの措置として地元負担を求めておりますが、着陸料は明らかに会社運営にかかわることであり、地元自治体に対し負担を求めることは筋違いと言わざるを得ません。関空会社の厳しい経営の原因は、ひとえに理想空港のための公共投資を民間企業の整備投資にすりかえたことにあります。政府は我々自治体に負担を求める前に、経営健全化のために打つべき手は幾らでもあるはずです。
 例えば、空港島や連絡橋の買い取り、借金返済期間の延長、利率の引き下げなどであり、また大阪空港と関西空港の利便性を見たとき、必ずしも利用者側に立ったダイヤの編成になっておらず、ハブ空港としての機能さえも弱めていることとなっております。この原因は両空港の運営主体が異なっているためであり、この経営を一本化することにより、より利用者の利便性が向上し、利用しやすい空港体制になることと思います。
 なお、関西国際空港でさえ経営難を引き起こしている現在、国内の何カ所かで地方空港の建設が計画されておりますが、これも自治体にとって大きな負担となるのは目に見えて明らかなことであり、航空政策自体のあり方が問われているように思います。関西国際空港二期工事建設の現状と地元負担の認識、関西一円の航空政策についてお伺いをいたしたいと思います。
 次に、地方分権、市町村合併についてお伺いいたします。
 地方自治法を初めとする関連法案を一挙に改正する地方分権一括法が昨年四月から施行され、地方分権は、国と地方の関係を上下・主従から対等・協力の関係へと目指す新しい段階に入っております。これにより、自治体の条例制定権の拡大や機関委任事務の廃止、法定外目的税の新設などが実現しております。そのほか、法定外普通税を創設する場合も、国の許可制ではなく事前協議へと変わり、地方自治体の自由が大幅に拡大したこととなりました。
 しかし、その自由を謳歌するためには、地方の自主財源を確保し、地方交付税制度の改革が進められなくてはなりません。一括法では大蔵省──現在の財務省でありますけれども──の圧力に遭い、地方分権推進委員会が自主財源問題を勧告書に盛り込むことができなかったことは、大蔵省の既得権益を何が何でも守ろうとする旧態依然の体質が残されている結果であります。
 ともかく、現状の地方財政は、地方が独自に徴収する地方税、地方交付税など国からの収入と借金である地方債が大きな歳入の柱であります。税収は、国が六〇%であるのに対して地方四〇%、歳出は国の三五%に対して地方は六五%、その不足分を地方交付税などで賄う仕組みとなっております。地方財政を立て直すため地方交付税を廃止し、その分を独自財源である地方税を拡充することで経済的自立が可能になり、地方分権の実効性が高まることとなります。
 いずれにしても、地方分権の進展により市町村は自己決定、自己責任の原則のもとで行財政運営を行っていくことが求められることとなります。とりわけ、住民に最も身近な基礎的地方公共団体である市町村が住民の福祉の向上や地域社会の発展のために果たすべき役割は、ますます大きくなってきております。今後、市町村は、地域住民の意向を十分に把握した上で環境問題、少子高齢化、情報化など多様化、高度化する行政課題への的確な対応はもちろん、みずからの判断と責任で住民ニーズに適合した施策やサービスを企画立案し、実行していく必要があります。
 国、地方を通じての財政状況が著しく逼迫している状況を踏まえ、徹底した行財政改革の推進などによりスリムで効率的な体制を実現していくことも緊急の課題であります。このような中、市町村が将来にわたって持続的な地域の発展を実現していくためには、行財政基盤の充実強化や行財政運営のより一層の効率化が不可欠であることは言うまでもありません。そのためには、自主的で主体的な市町村合併の推進が重要であります。市町村合併は市町村のあり方や住民の生活に大きくかかわる重大な問題であることから、現状や課題の検討を行うとともに、まずこの市町村合併の理念を明確にしていかなければなりません。
 本年一月、和歌山県において市町村合併推進要綱が策定され、これの開示を受けたところであります。なるほど、地域の特性を考慮した合併パターンを幾つか報告されておりますが、単にどことどこを合併するかにとどまっているものであり、県民すべてに、なぜ合併が必要なのか、合併の目的、合併の理念が明確になっておらない、踏み込んでおらないというふうに思われてならないのであります。
 和歌山県は、全国に先駆けて市町村の合併の機運を高めるため、施設整備などを共同で行う自治体に補助金を出す合併呼び水補助制度の導入を決められました。このことは大きく評価をしたいと思います。しかし、これですべての問題が解決されたわけではなく、いよいよ市町村の合併を支援する各種の行財政措置が講じられる中、平成十七年三月三十一日に法期限が切れるわけでありまして、残された期間あと四年、推進の理念とともに基本的で具体的な和歌山県としての合併の基準、理念を早期に作成し、市町村を指導すべきであると思うわけであります。地方分権にかかわる市町村合併の基本的な理念と具体的な基準の策定について、お伺いをいたしたいと思います。
 さて、同時に、地方分権と市町村合併を踏まえた二十一世紀の活力ある和歌山県をつくり上げるためには、行政とともに議会改革が必要であります。二十一世紀の扉が開いた今、日本は明治維新や第二次世界大戦直後に匹敵する歴史的な大転換期を迎えております。
 この間、県議会では議会改革検討委員会が設置され、議会改革がさまざまな観点から検討されてきました。このことを踏まえ、今こそ県民の代表として、この危機的状況にある現状を打破しなければなりません。
 昨年末、五年に一度の国勢調査が実施されました。これの速報値によりますと、我が県人口は前回国勢調査時点より一万五百九十五人減少して百六万九千八百四十人であり、減少は三十七市町村に上り、増加したのは十二市町村だけでありました。地方自治法第九十条「都道府県の議会の議員の定数」によると、人口七十万人未満の都道府県にあっては四十人とし、人口七十万以上は五万人ごとに一名を増加し、人口百万人以上の都道府県にあってはこれに人口七万人を加えるごとに議員一名を増すとあります。我が和歌山県の国勢調査による人口は百七万に百六十人足らないこととなり、このことにより全体の議員定数は四十六名となります。現在四十七名であるところから、この法を遵守するならば一名の定数減が必要であります。
 また、これを受けた一票の格差問題では、選挙区間最大二・八九倍の格差が生じております。もともと県民に与えられた一票の重みは基本的人権に保障された平等の権利であり、地方分権という流れの中で市町村合併推進が取りざたされている今日、格差是正もまた議会改革の柱として見直されなければなりません。この一票の格差、不平等こそ政治不信の元凶ともなっていることもあわせて考えなければなりません。同時に、極めて厳しい財政状況の中で、議会もまたみずから襟を正し、議員定数の削減や権威ある議会のあり方など、改革に強い姿勢で臨むべきであり、そのありようが真に地方分権の魂であり、そのことが県民の負託にこたえることと信じるものであります。
 次に、産業廃棄物問題についてご質問をいたします。
 現在、日本の産業廃棄物の搬出量は約四億トンであり、一般廃棄物は約五千万トンとなっております。一般廃棄物は地域内における公共の手によって処理され、処分場の問題や立地に際しての多少の問題がありますが、おおむね適正に処理がされていると思います。しかし、産業廃棄物は、国内至るところでダイオキシンなど汚染問題で大きく揺れているのが現状であります。また、産業廃棄物処理は地域限定でなく、処分場の不足が主原因で広域間移動をするのが常であります。このような地域間広域移動の過程の中で無断で山林や空き地に捨てる不法投棄が深刻化し、住民の健康や地球環境全体に悪影響を及ぼしております。県内においても、橋本市産業廃棄物問題を初めとする不法投棄、一時投棄の実態があり、この処理に県民の貴重な税金がかけられておるわけであります。ごみ問題の根本的な解決の道は、大量生産、大量消費、大量廃棄物社会の構造転換であることは、一般論としてだれもが認めるところでありますが、社会全体に出回っているごみをどのように処分するかということが当面の重要な課題であります。
 この目的に沿って大阪湾圏域に、広域処分のできるフェニックス計画が昭和五十七年に設立されました。この中身を見ていきますと、受け入れ対象種類が限定されているため持ち込めないものが多数あり、その上に検査の厳しいことと持ち込みコストが高いため、人気がありません。現在のところ、フェニックス処分場には処分の許容量が十分あると聞いておるわけであります。
 また、広域処理対象区域が設けられておりますが、我が県では紀北地域のみがこの区域に設定されており、紀南地区は対象外にされておるわけであります。処分量が不足しているならば受け入れ対象物の拡大や持ち込みコストの引き下げを図ることが必要であり、我が県の問題としては紀南地区をも対象処理地域に加えていただきたいと思うところであります。
 同時に、埋め立てられるように中間で加工処理し、最終的にフェニックス処分場へ持ち込むことが必要であります。このとき、過去の質問でも申し上げたことではありますが、民間業者に全面的な運営を任すことには今までの一部業者による不適正処理に対する不信感が高まっていることから、行政が関与した公共の中間処理場を建設し、民間業者に委託することがいいのではないかと思います。その際、各振興局単位で建設をすることによってより綿密にチェック機能が働く、このように思うわけであります。
 フェニックス計画における最終処分場の取り扱い方法と区域指定、不法投棄の減少とごみ減量にかかわる振興局単位の中間処理施設の建設についてお伺いをいたします。
 次に、人権問題についてお尋ねをいたします。
 二十一世紀は、平和と人権の世紀であります。きのう、山下議員も指摘しておりましたが、差別事件が今なお続発をしておるところであります。昨年八月発覚したインターネットによる差別事件は、さまざまな取り組みがされている最中にも八百件もの書き込みが続けられ、さらに別のサイトでも書き込みされていたことが判明しております。
 この事件は、実にさまざまな問題を提起しております。一つは、インターネットそのもののあり方であり、利用者のモラルやプロバイダーの対応のあり方を含め、一定の法的な対応が必要であることと、教育啓発の推進にもかかわらず依然として差別意識があるということであり、人権意識が極めて低いということであります。こうした事態を踏まえ、同和問題を初めとするあらゆる人権について、県の果たすべき責任と行政のあり方を基本に早急な体制を築き上げることが重要であります。県においてはこれに対処すべく、早急に人権条例が制定されなければなりません。
 人権条例は、あらゆる人の人権が尊重され、差別することのない、されることのない和歌山県を築くための県と県民の責務を明らかにするもので、近年全国的にも制定されている折から、我が県も早急な対処を求めたいと思います。
 さて、県民の教育啓発の拠点となる人権教育センターが具体的な準備に入っておられると伺っており、このことは、前段でも述べた差別のない地域社会の実現に大いに役立つものと、県のご努力に対し敬意を表したいと思います。しかし、センターが設立されたからといって人権施策が完成されたわけではなく、むしろ人権の課題は極めて広範囲に上り、また取り組むほどにその機能や内容の強化が求められるわけであります。人権教育啓発センターの使命は重要であり、柔軟性を持った進化型の体制づくりを強く望むところであります。
 昨年十二月、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律が公布されました。これを受けた県としての施策の推進が求められております。施策の推進に当たっては、これまでの「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画や和歌山県同和行政総合推進プランが基礎となりますが、差別事件の発生状況などの実態を十分踏まえたものとなりますよう強く望みたいと思います。
 その上で、推進していくための体制づくりやネットワークづくりが急がれます。そのかなめとなるのが庁内体制であり、同和行政を人権行政の確立という方向に発展させ、人権行政をさらに実効あるものにするための機構改革など、庁内体制の整備を早急に実現していただきたいと思うわけであります。
 人権条例の制定と人権教育啓発センターの体制づくり、及び人権教育及び啓発推進に係る法律の実効性を示す施策の推進と庁内体制の整備及び市町村の指導についてお伺いをいたします。
 最後に、これまで同和問題並びに人権にかかわって数年間ご質問をさせていただいたところでありますが、知事を初めとする行政からの積極的な答弁をいただいてきたところであります。これまでの質問と少し重なるところもあろうと思いますが、お許しをいただき、同和問題について質問をいたします。
 同和問題の早期解決に向けて、具体的な課題の解決やこれまでのさまざまな取り組みの成果、手法や今日的な状況を十分踏まえて推進することは大事であります。そういう視点に立って考えてみますと、国においては現行法の地対財特法が来年三月末に期限切れとなり、これまでの経過措置を含めた特別対策が終了するわけであります。このことに対しては、さきの地対協の意見具申や和歌山県同和行政総合推進プランの中で言われているように、特別対策の終了は同和行政の終わりを意味するものではないという基本的な立場で、今後も差別がある限り同和行政を強力に推進されるべきであります。国の施策が法に基づいて実施されることはもちろんであり、地方自治体もこれを基本として実施されるわけでありますが、今回のような時限立法の期限切れ後の対応については特にそれぞれの地方自治体の主体的な判断に任されるのが通常であり、そういう意味から、県内の実態を十分認識された上で、これまでの成果を基礎としてさらなる目的達成のためのきめの細かい対応が必要であろうと思います。つまり、これまでの「差別が存在する限り同和行政は必要」という基本的な立場を堅持され、和歌山県同和行政総合推進プランの早期達成に向け努力されんことを強く望むものであります。
 具体的な課題も含め、特に法の動向にかかわっての財政的な問題が非常に大きいわけであります。全体的な国の動向である交付税、補助金の減額、交付税への振りかえといった抽象的な対応が今進んでいるわけでありまして、県が主体的に推進することに大きな障害が生まれてきております。県内同和地区の実情と具体的課題を踏まえ、手法の変化に惑わされることなく、同和行政を人権行政の確立という方向に発展させ、人権行政の中に同和行政を明確に位置づけられ、県としてのきめ細かい工夫と国に対しての強力な要請を強く望むものであります。
 地対財特法期限後の同和問題のあらゆる課題と財政的な問題に対しての知事の所見をお伺いし、一回目の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(阪部菊雄君) ただいまの飯田敬文君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 飯田議員の質問にお答えを申し上げます。
 まず、県内経済の現状認識でございます。
 バブル経済の崩壊以降、相次ぐ金融機関の破綻に象徴される我が国経済の不況の波は、ご指摘のとおり、本県にも容赦なく押し寄せているところでございます。たび重なる経済対策もありまして、昨年の前半ぐらいには少し日本全体としては経済に明るさが見えてきたということがございますけれども、ことしに入ってからは、ご指摘にもありましたように、株価の急激な下落やアメリカ経済の減速、デフレスパイラルへの懸念など、景気の先行きに再び赤信号がともっているというふうな認識でございます。個人的には将来的にもかなり厳しいという感じを持っております。
 本県におきましても、ご多分に漏れず、個人消費の低迷や厳しい雇用情勢に加えて、中小企業では景況に対する低迷感が強まっており、先般の百貨店の自己破産など、地域経済に大きな影響を及ぼす事態も発生しているということで、非常に厳しい情勢にあるということでございます。
 私は、このため、IT和歌山の推進など時代潮流に即応したタイムリーな施策展開で何とか和歌山県の経済に勢いをつけようということを目指すとともに、従来型の経済対策もあわせ行うことによって、県内産業や地域の活性化、県民生活の充実を図ってまいらなければならないと考えております。
 次に、財政再建と公共事業のあり方についてでございます。
 本県を取り巻く社会経済情勢は非常に厳しいものがあるということは、ただいま申し上げたとおりでございます。また、県財政も深刻な状況にございます。そして、昨今、公共事業のあり方をめぐっては、いろんなところでさまざまな議論がなされており、風当たりも相当厳しいものがあります。そして私個人も、毎日、公共事業はどうあるべきかということについて真剣に考えているところでございますけれども、基本的には和歌山県の場合、本県の発展を支える社会基盤については引き続き積極的に整備を進めていく必要があるという基本認識を持っているところでございます。
 このため、来年度の予算におきましても、公共事業については、道路等は思い切った重点配分を行うなど、分野間での見直しを強力に進めるとともに、それぞれの分野の中でも、例えば府県間道路など必要性の高い事業には重点的に予算配分を行っていくというふうに、めり張りをつけたところでございます。ご提言の新しい分野での公共事業につきましては、大変重要なことだと考えておりますので、これから前向きに検討をしてまいりたいと考えております。
 次に、私の県政に対するビジョンということでございます。
 私自身も日々知事の仕事を続ける中で勉強を続けているという段階でございまして、今新しいビジョンを示していないこと、非常に恥ずかしいことだと思っているわけでございますけれども、今後、時代潮流に即した政策展開が何よりも大事であるという認識に立って、ご指摘のように、県政の具体的な指針となる新しいビジョンを早急に作成していき、二十一世紀の和歌山がどのようになっていくのがいいのかということを県民の皆様と一緒に考えていきたいと、このように考えているところでございます。
 次に、関空の関係のご質問でございます。
 関空の二期工事につきましては、一昨年七月の現地着工以来、順調に工事が進んでおりまして、昨年の十一月には地盤改良工事を完了、現在、鋭意、護岸築造工事が進められているというところでございます。地元負担につきまして、関空は本県の至近に位置するということで、いわば和歌山空港と言っても過言ではないというふうな認識を私自身持っておりまして、これまでも大阪を初めとする関係自治体や経済団体と事業の推進に取り組んできたところでございます。
 お話にもありましたように、昨年末、大蔵大臣と運輸大臣の協議によって二〇〇七年の供用開始に向けて引き続き工事を進めることが、いろいろあった後合意されたわけで、政府予算案でも予算措置がなされたところでございます。そしてまた、この合意に際しては、事業スキームの再構築について国土交通省の方で検討を進めることとされておりますけれども、地元でも協議をするということになっておりまして、私自身も先般その会に行ってまいりました。そういうことで、今後、関係自治体の対応についても協議を進めてまいりたいと考えているところでございます。
 次に、関西一円の航空政策でございますけれども、一応、大阪空港──伊丹空港ですけれども──は、国内線のための基幹空港、そしてまた神戸空港等については周辺の航空需要に対する第三種空港という位置づけでございまして、関空とはおのずから役割が異なっているということになっており、何といいましても、今後とも関空を中心とした航空ネットワークの充実が大事であるという考えから、そうなっていくよう、注意深く本県としても見守っていきたいと考えております。
 次に、人権問題についてのご質問でございます。
 人権に関する条例の制定については、人権教育啓発に関し、国、地方公共団体及び国民の責務を定めた人権教育及び人権啓発の推進に関する法律が施行され、また人権擁護推進審議会から人権救済制度のあり方に関する答申がことしの夏に予定されるなど、人権問題への取り組みが急速に高まってきているところでございます。このような国の動向や今なお不当な人権侵害が発生している現状等を踏まえ、今後、県民の皆さんのコンセンサスを得ながら、人権に関する条例の制定に向けて検討してまいる所存でございます。
 また、「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画等に基づき、人権教育啓発に関する施策の推進について努めてまいりたいと考えております。
 それから、地対財特法の期限後における同和対策の推進についてでございます。
 同対審答申の「差別が現存する限り、同和行政を積極的に推進しなければならない」との基本姿勢のもとで、残された課題の解決のため、これまでの成果が損なわれることのないよう、和歌山県同和行政総合推進プランに基づき積極的に推進してまいりたいと考えております。その際、市町村との連携を図りながら、同和行政を人権行政の確立という方向に発展させ、人権行政の中に同和行政を正しく位置づけていくように努めてまいりたいと、このように考えております。
○議長(阪部菊雄君) 総務部長稲山博司君。
  〔稲山博司君、登壇〕
○総務部長(稲山博司君) 市町村合併についてのご質問にお答えいたします。
 まず市町村合併推進の理念についてでございますが、ご指摘にありましたような国、地方を通じた大変厳しい財政状況を踏まえたとき、地方分権の時代を迎え、ますます高度化、多様化する行政ニーズに市町村が的確に対応していくためには、市町村の行財政基盤の充実強化を図ることは大変重要な課題でございまして、そのためにも合併を推進する必要があるものと考えております。
 次に、合併の基準の策定についてでございます。
 一般的には、合併後の人口が相当規模を有する方が広域的な町づくりや行政の一層の効率化を図ることができると考えられます。ただ、本県の場合、山間地域が多く、また小規模な町村が比較的多いことから、合併後の面積が広大となることにより市町村の一体性の確保の観点などから支障が生じる場合も考えられます。このため、県において策定した市町村合併推進要綱におきましては、合併後の人口規模が一万人以上を原則として、市町村間の時間距離や住民の日常生活行動の状況、さらには広域行政の連携の状況などを勘案しながら合併パターンを策定したところでございます。
 なお、市町村合併は地域において自主的に判断することが基本であり、その方法については可能性の高い地域から順次行われることも考えられます。県といたしましても、新しい補助制度や合併総合アドバイスシステムを創設し、このような地域における取り組みを積極的に支援してまいりたいと考えております。
○議長(阪部菊雄君) 環境生活部長道浦 渥君。
  〔道浦 渥君、登壇〕
○環境生活部長(道浦 渥君) 環境問題に関するご質問にお答えいたします。
 大阪湾フェニックス計画は、大阪湾の埋め立てにより、近畿圏から発生する廃棄物の最終処分を行い、埋め立てた土地を活用する事業で、現在、尼崎沖と泉大津沖の二カ所に埋立処分場を設置し、近畿二府四県の百六十八市町村の受け入れ対象区域から発生した廃棄物を受け入れています。
 議員ご指摘のとおり、現行のフェニックス計画においては廃棄物の受け入れ対象区域が紀北地域に限定されていること、海面を埋め立てる最終処分のみであるため有機汚泥、廃油、廃酸等の廃棄物についてはそのままでは受け入れられないという問題点があります。こうしたことから、廃棄物処理計画策定のため、来年度実施を予定している実態調査の中で、必要な中間処理施設の確保について市町村とも連携しつつ検討してまいります。
 なお、受け入れ対象区域の拡大については、今後、県議会、関係市町村とも機会をとらえて環境省にも要望してまいります。
 以上です。
○議長(阪部菊雄君) 福祉保健部長白井保世君。
  〔白井保世君、登壇〕
○福祉保健部長(白井保世君) まず最初に、同和問題を初め、さまざまな人権問題に関する情報の集積と県民に対する人権教育啓発を推進するための拠点となります、仮称でございますが、人権教育啓発センターにつきましては、ビッグ愛に設置するための予算を今回お願いしてございます。設置後も教育啓発の中核施設として、その機能の充実に努めてまいりたいと考えております。
 また、議員ご提言の人権施策推進のための庁内体制につきましては、人権教育啓発の重要性を認識し、人権の世紀にふさわしい体制づくりに向けて取り組んでまいる所存でございます。
 次に市町村指導でございますが、人権教育啓発の取り組みを促すため和歌山県人権教育啓発推進市町村モデル事業を実施し、市町村における取り組みを支援しているところでございます。また、人権教育啓発を総合的に推進していくためには関係機関とのネットワークの構築が重要であることから、平成十年度に和歌山県、和歌山地方法務局、和歌山県人権擁護委員連合会の三者で和歌山県人権啓発ネットワーク協議会を設立し、各種啓発活動を行ってきたところでございます。本年度には、すべての市町村を構成員とし、すそ野の広いネットワーク協議会として発足したところでございます。今後とも、市町村と連携を密にしながら、人権が尊重される社会づくりに向けて取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十四番飯田敬文君。
○飯田敬文君 知事及び関係部長のご答弁をいただきました。数点にわたり、ご要望を申し上げたいと思います。
 基本的な問題として大事なことは、やはり経済動向、経済がどうなっておるのかということの認識が一番大事なことではなかろうかと思います。そういう意味で、知事の答弁と私の答弁とは大体同じ認識ではないのかなと、このような感じを持ったわけでございます。これから和歌山県にはさまざまな課題があるわけでございますけれども、非常に厳しい状況がまだまだ続いていくであろう、予断を許さないということだと思いますので、そういった視点でひとつ取り組みを特にお願い申し上げたいと思います。
 それから、県の財政再建の問題にかかわって、景気回復との関係もあるわけでございますが、県が今、今度の予算でも少し赤字を減らしておるとか、人件費を削ったとか、こういった問題で苦労をされておるのは非常によくわかるわけでありますけれども、和歌山県だけで財政再建ができるような問題ではないと、私は特に思うわけでございます。各県、地方、市町村も含めてでありますけれども、このような財政状況の中で交付税を削減しようという国自身の動きの中で、国から出してきている景気対策について十分検討していただいて、国にお付き合いをするということではなしに、やっぱり県が主体的に判断をしていかなければ県も市町村も財政がもたないと思います。
 特に、公共事業にかかわって、自分とこの金を出さないと国の金が出ないということでございますので、そういった意味で、弱い地方や市町村、この合併の問題も同じだと思うんですけれども、そういう状況が根底にあるということをひとつ頭に入れていただいて、和歌山県だけではなしに、例えば大阪府とか近畿レベルで、国に対して申し入れや要請といった、地方や弱者にしわ寄せをするなという行動を起こさないと、幾ら財政再建で金を削減しても限りがあると、私はそのように思います。
 その点、全国知事会議とか近畿知事会議レベルでのいろんな話もあろうと思いますので、そういった視点でもひとつ取り組みをしていただいたらどうかなと、要望をしておきたいと思います。これは、関空の問題あるいは産業廃棄物の問題も一緒でございますので、そういう視点で地方から、反乱ではないですけれども、国に意見を申し述べるというふうなスタンスでひとつ取り組みをお願いしたいと思います。
 それから、木村ビジョンについてでございます。
 九月議会に、私はこの議会でビジョンを示していただきたいと質問したわけでありますけれども、来年度中に策定するということだと思います。しかし、私は、木村ビジョンがきちっと策定されなければ、例えば知事が一番危惧をされている、しがらみであるとか、つき合いであるとか、言われたからするとか、あるいはこういう人から頼まれたからするとか、こういうことではいかんと思うんです。そういうことではなしに、医大の跡地の問題など、いろんな問題があると思いますけれども、やっぱり少なくともこの九月議会までにはきちっとしたビジョンを策定しないと、力の強い方、声の大きい方を採択していくということではいかんと思いますので、そのための基準として木村ビジョンをひとつ早急に策定していただきたい。西口知事が二十一世紀計画ということで総合計画を策定されておりますけれども、あれは少し総花的ですべて入ってございますので、あれではちょっと不十分だと思います。木村ビジョンをつくって示していただくことを、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 最後に、人権教育啓発センターの関係です。
 私も、二十一世紀は人権の時代だということで、四、五年ずっと、和歌山県には県立の人権にかかわるセンターや施設がないが、これは近畿、全国に対してやっぱり風の悪いことやということで強く要望しておった結果、来年度何とかセンターを設置しようという運びだそうでございます。ひとつ来年度中にできるように、また延びるというようなことのないように特にお願いをしたい。
 それとあわせて、人権の条例に基づいてセンターができたというような形をつくっていただければ和歌山県全体の人権意識の向上に大きくつながるものではないかと、このように期待をするところでございます。そういうことでございますので、ひとつよろしくお願い申し上げまして、ご要望として再質問とします。
 終わります。
○議長(阪部菊雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で飯田敬文君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十九番谷 洋一君。
  〔谷 洋一君、登壇〕(拍手)
○谷 洋一君 議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして、ただいまから一般質問を行います。
 本県は、海、山、川などの豊かな自然に恵まれており、それぞれが全国的に見ても一級品であり、誇るべき貴重な資源であると考えます。まさに文豪・佐藤春夫先生が「空青し山青し海青し」と詠まれたとおりであります。これらの豊かな自然の恩恵を受けて、農業、林業、漁業が各地域で盛んに営まれ、ミカン、梅、カキ、木材、備長炭、マグロなど、本県の主要な農林水産物もまた全国に誇れるものがたくさんございます。
 農林水産業は、古くから本県の基幹産業として地域を発展させてきましたが、安価な輸入品の増加、後継者難、消費者ニーズの多様化、高度化への対応、就業者の高齢化等々、さまざまな課題や問題を抱えております。
 農業、林業、漁業といったいわゆる第一次産業は、農林水産物を生産し供給するという産業的な面だけでなく、例えば農業や林業は、県土の保全や水源涵養といったすぐれた公益的機能など多面性を有しており、自然環境の保全という観点からも大変重要であります。第一次産業の振興に関しましては、農林水産部において本来的な立場から専門的、積極的に種々の施策を講じられておることは私も十分認識してございます。
 さて、バブルが崩壊して以降、例のないほど長期にわたって景気の低迷が続いていますが、私の住んでいる紀南地方においても非常に厳しい状況が続いており、地元の人々は自分たちの地域をどうしたら活性化させることができるか、いろいろと研究したり話し合いを持ったりしており、そうした試みの幾つかに私もかかわっているところであります。本日は、紀南地方の課題を念頭に置きながら、少し違った切り口から、私なりの提案も含め、県当局へ質問をさせていただきます。
 本県におきましては、中山間地域を中心に急激に過疎化が進み、過疎地域自立促進特別措置法に基づき十八町村が過疎地域として公示されていますが、これらの過疎地域を活性化するには、地域の第一次産業を活用し、交流人口の増加ということを考えていく必要があると考えます。事実、全国的に見ても、過疎と言われる地域では積極的に都市部との交流の促進が図られています。
 そこで、私は、豊かな自然を活用するとともに、第一次産業と連携した観光振興という視点により交流人口の増加を図り、地域の発展につなげていくということを提案したいと考えます。
 現在、経済的には豊かになったが、生活の中でその豊かさが実感できないという指摘があります。このことは、人々が経済的な豊かさに加え、もう一段上の豊かさを求めているのではないでしょうか。このような人々のニーズにこたえながら交流人口の増加を図っていくためには、地域の自然や第一次産業を正しく、より深く理解してもらうことが重要であり、単なる知識の吸収ではなく、目や耳など五官を通じて実際に体験してもらうことが有効であると考えます。
 第一次産業における人と自然のかかわり、農林水産物はどのような自然条件においてどのようにして生産されているのか、森林の間伐は何のためにどのようにして行われているのか、またそれはどのような効果があるのかといったことを体験を通じて理解してもらうことが、都市部に住んでいる人たちにとって、またその地域に住んでいる子供たちにとっても非常に有意義なことではないでしょうか。ただ単に見るという観光ではなかなか交流にまでつながっていきませんが、体験によって地域の実情を知ってもらうことにより人と人との交流が生まれ、観光客というよりは地域の理解者あるいは後援者となり、ひいては交流人口から定住人口へと進展することも考えられます。
 ここで少し、私の住んでいる紀南地方の状況について触れさせていただきたいと思います。
 本州最南端の串本町、日本一の那智の滝がある那智勝浦町、鯨で有名な太地町、それに挟まれ、清涼な古座川の流域に沿って古座町と古座川町があります。この地域は、農林水産業を主な産業とし、地域の人々が日々の生活の中で自然を守り続けてきたところでもあります。町としても、宿泊施設の整備や交通アクセス改善のための標識整備などを実施して観光振興に努めているところですが、周辺の町のことを思えば、知名度や観光客の数においてまだまだ低い状況にあります。
 古座町は、面積の八〇%が山林で占められ、人口も減少傾向が続き、若年層の社会的減少が著しく、高齢化も急激に進行しています。観光資源としては、吉野熊野国立公園に属する荒船海岸を有し、海岸一帯でのいそ釣りや南紀熊野体験博を契機に取り組みが始められたホエールウオッチングなどがあります。
 古座川町は、面積は県下最大でありますが、人口の減少は著しく、高齢化率も県下で第一位となっています。町の面積の九六%が山林で占められ、JR紀勢線や国道四十二号線といった県内幹線交通網からも離れています。観光資源としては、一枚岩や滝の拝、世界最小種のハッチョウトンボなどが知られています。
 両方の町とも、自然には恵まれているものの、過疎や高齢化の問題を抱え、地域産業の方向や振興策をいろいろと模索しつつ、体験型観光といったものを幾つか立ち上げ、現在置かれている厳しい状況に立ち向かおうとしているのが実情であります。
 さて、最近、有名な大規模テーマパークの不振が次々と伝えられています。大きな投資をして大規模な観光施設を建設しても、リピーターの確保は非常に困難な時代となってきており、また現在の経済情勢においては大きな投資は期待できません。私の提案したい体験型観光というのは、大きな投資は必要でなく、資源は地域そのものであり、有名な観光地や観光施設がない地域においても実現が期待できることから全県下での展開が可能であると考えますが、いかがでしょうか。
 過疎地域や第一次産業では高齢化という大きな問題を抱えていますが、豊かで充実した長寿社会の形成といった観点からも、体験型観光という仕組みの中で高齢者の方々に生きがいを持って豊富な知識や経験を生かしてもらえるのではないかと考えますが、いかがでしょう。
 最近の観光客のニーズは多様化、高度化し、旅行の形態も多人数の団体から個人や家族、グループのような少人数に変化してきており、これに伴い旅行の目的も、「どこかへ行く」から「どこに行く」、さらには「何をする」といったふうに変わってきているように思います。団体でやって来て、夕方ホテルにチェックインし、宴会、宿泊して終わりというようなものから、目的に応じて広域的に周遊するといったように変わってきているのではないでしょうか。このような状況の変化を考えますと、既存の観光資源だけに頼っていては近年の観光客のニーズに十分対応していけないのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 本県では、一昨年、南紀熊野体験博が開催され、自然等を活用した体験メニューを数多く提供し、三百十万人もの人々が当地を訪れ、テーマの一つであった「癒し」という言葉が流行語大賞を獲得するなど大成功をおさめたところであり、私は体験型観光の下地はできていると考えています。
 少し視点を変えて、教育の面からも話をさせていただきます。
 最近の子供たちは、情報化社会の進展によって驚くほどたくさんの情報や知識を持っていますが、山間部に住んでいる子供でも杉とヒノキの違いを知らないというようなことを聞いたりもします。将来を担っていく子供たちが自分たちの地域の生産活動や自然、文化などを知るということは非常に重要なことであります。この子供たちに、バーチャルではない現実の世界を体験できる機会と場所を提供し、体験を通じた教育を行ってはどうでしょうか。
 ヨット、カヌー等のスポーツを通じた自然体験、海、山、川の生態系の観察、農林水産業の体験を通した自然と人間とのかかわりなど、いろいろな学習メニューが考えられると思います。林業体験や農業体験を行っているという話は時々聞いたりしますが、漁業体験など海を利用した体験学習が少ないように思います。いかがでしょうか。
 体験型の観光や体験学習ということについて私なりの考えを種々述べさせていただきましたが、県当局に三点ほどお伺いいたします。
 第一点目は、体験型観光の推進について、今後の取り組みを商工労働部長からお答え願います。
 二点目は、南紀熊野体験博が閉幕して一年半が経過したわけですが、その成果、反省などを踏まえ、どのような地域振興策が考えられ、実践されようとしているのか、企画部長からお答え願います。
 三点目は、新学習指導要領において体験という観点がどのように位置づけられているのか、また学校における体験学習の実情と今後の方向性について、教育長からお答え願います。
 次に、第一次産業の一つである水産業について、二点ほどお伺いいたします。
 私は長年地元で水産業にかかわってきたこともあり、漁業関係者の方々と直接話をする機会も多く、本県のこれまでの水産業に対して大いに期待をしており、また漁業者の現在抱えている悩みに対して心配をしている一人であります。
 我が国の水産業は、平成八年六月の国連海洋法条約の批准により本格的な二百海里時代に入り、過去のような自由な海と豊かな資源を背景とした生産拡大という手法によって問題が解決できた時代は終わり、新たな海洋秩序へ移行するという大きな転換期を迎えています。また、漁業関係者は、水産資源の悪化による漁獲量の減少、後継者の減少、高齢化の進行、漁村の活力の低下等々、さまざまな問題を抱え、厳しい状況に直面しているのが現実であります。本県におきましても、漁獲量は平成元年の七万四千トンから減少が続き、平成十一年には五万四千トンに、また漁業就業者数は七千二百人から五千七百人となり、この十年間で漁獲量及び就業者数とも大きく減少しております。
 二十一世紀を迎え、水産庁ではこれまでの政策を見直し、我が国の周辺水域における水産資源の適切な保存管理と持続的利用を基本とした方向へと再構築すると聞き及んでいます。具体的には、資源をふやすということから生産、流通、さらには漁村の環境整備といった点にまで一貫した横断的な事業展開が可能となるよう、これまでの漁港漁村整備事業と沿岸漁場整備開発事業を水産基盤整備事業として再編・統合し、漁港、漁場、漁村づくりをより効率的に進めていくとのことです。県下各地域においては、これまで第九次漁港整備長期計画や第四次沿岸漁場整備計画に従って漁港、漁村、漁場の整備が積極的に実施されてきており、その成果は高く評価され、中でも本県の漁業の特色の一つであるひき縄釣り漁業を対象とした中層式浮き魚礁の設置は漁業者の注目を集めております。
 農林水産部長にお尋ねいたします。
 新しい二十一世紀を迎えた今日、漁業の低迷傾向が続いている中で、漁業者が希望を持ってこれからも漁業を続けていくことが可能となるような県の水産行政のあり方が求められています。このような情勢にかんがみ、水産基盤整備に係る国の事業再編に対応した県のこれからの漁業振興策について、考えをお聞かせ願います。
 次に、私の地元である紀南地方の漁業関係者が抱えている課題を取り上げ、今後の対応策についてお伺いいたします。
 近年、紀南地方の漁業の状況は、カツオ、ヨコワなどの回遊資源やいそ焼け等によるイセエビ、アワビなどのいそ根資源を中心に漁獲量が減少してきており、漁業者の生活は苦しく、また漁業協同組合の経営も厳しい状況にあります。紀南地方の主要漁業の一つにイセエビ、アワビ、サザエ、トコブシなどを漁獲する刺し網や採貝藻漁業があり、中でも和歌山県のイセエビの漁獲量は、かつての昭和四十三年には三百トンを記録したこともあり、最近では百四十トンから百八十トンと全国的に見ると比較的高い漁獲量で推移しており、平成十年の漁獲量は百四十七トンと千葉県に次いで全国第二位となっていますが、かつての記録から見ますと半分に減少している状況にあります。また、アワビ類は、昨今のいそ焼けの影響もありますが、昭和六十三年の百五十七トンを最高に減少の一途をたどり、平成十年には四十六トン、平成十一年には四十二トンと、約三割にまで落ち込んでいる状況にあります。このような厳しい状況の中で漁業者は、稚エビや稚貝の放流、禁漁期間や禁漁区の設定、漁具や漁法の制限など、みずからも厳しい制限を課して、つくり育てる漁業に取り組み、イセエビやアワビなどいそ根資源の維持管理に努めているところであります。
 しかしながら、近年、このいそ根資源に対する密漁が増加してきており、しかも年々その密漁が巧妙かつ広域化、組織化され、その被害は定かではありませんが、相当な金額に上ると思われます。このため漁業者は、自衛手段としていそ番を組織し、監視を行っていますが、密漁の取り締まりは現行犯が原則であり、証拠品がないと処罰することは難しく、海岸近くで見張っていても、密漁したイセエビやアワビなどを捨てて上がってこられれば逮捕することができないのが現状であり、密漁の取り締まりへの効果的な方法がなかなか見つからないというのが実情であります。昨年のことですが、太地町においてイセエビ八十匹の密漁を警察が検挙し、太地漁協で告訴の手続をとりましたが、結果として不起訴処分となった事例などもあり、地元漁民はやり場のない怒りが絶えない状況であります。
 以上のように、紀南地方の各漁協においてはイセエビ、アワビ等のいそ根資源の管理を積極的に進めてきており、また外部からの密漁を食いとめるため漁業者みずからも努力しておりますが、密漁は後を絶たない状況であり、今後県ではどのような密漁防止策を考えておられるのか、農林水産部長の考えをお聞かせ願いたいと思います。
 最後に、この場でどうしても取り上げておきたい問題があります。去る二月二十六日にも報道されていましたが、東京─那智勝浦─高知の間を運航している「さんふらわあくろしお」が休止の事態に追い込まれるのではないかという問題です。
 この航路は、昭和四十八年三月に日本高速フェリー株式会社が開設し、平成二年一月に株式会社ブルーハイウェイラインに引き継がれましたが、開設以来、首都圏と本県紀南地方を直結する非常に重要な交通アクセスとして、地域経済にも多大な貢献をしてきたところであります。この航路の特徴は、東京─那智勝浦の間では観光客を初めとする旅客が中心であり、東京─高知の間では首都圏向けの園芸野菜や高知向けの養殖のえさなど、貨物輸送が中心であると聞いております。那智勝浦での乗降客は平成十二年で四万一千人になっており、そのうちの約四分の三が東京からの旅客であります。東京発は那智勝浦着が朝八時五分と時間帯もよく、大部分が首都圏を中心とした地域からの観光客で、当然ながら宿泊客であり、那智勝浦町周辺だけでなく、紀南地方を周遊する観光客も多数おられるように聞いております。
 折しも昨年、本県の高野・熊野が三重県の熊野古道伊勢路や奈良県の吉野を含め、紀伊山地の参詣道として文化庁の世界遺産暫定リストに登録されたところであり、観光客誘致に弾みをつける絶好の機会が生まれつつあります。紀南地方の観光客全体を見れば関西圏や中部圏の観光客が大半であると思いますが、南紀白浜空港やJRと並んで、このフェリー航路は紀南地方と首都圏を結ぶ数少ないアクセス手段の一つであり、今後の紀南地方の観光産業の振興といった面でも非常に重要なものであります。
 また、平成十二年の那智勝浦での乗降車両を見ますと約四千五百台となっており、そのうちの乗用車とバスの半数近くが東京からの車両であり、車両の面から見ても観光が中心であることがうかがえます。貨物については量的には少ないものの、東京からは養殖のえさであるイワシ、東京への木材製品、高知からはキノコ栽培用のおがくずなどが運ばれており、物流の面においても地域経済に大いに貢献しております。
 この重要なフェリーが本年六月末で休止されると聞き及んでいますが、観光立県を掲げ、また高野・熊野の世界遺産登録を目指している本県にとって、人流と物流の両面で首都圏と紀南地方を直結する海の玄関口がなくなってしまうということでは、実質的にも、またイメージ的にもその影響は非常に大きなものがあると考えます。地元の那智勝浦町や那智勝浦町観光協会等の団体も危機感を募らせ、フェリーを運航している株式会社ブルーハイウェイラインに対して存続の要望を行ったところであります。
 また、木村知事さんにおかれましては、その重要性をいち早く認識され、去る一月十七日には東京で高知県の橋本知事や三重県の関係者と合同で対策会議を持つなど、航路の存続に向けて積極的に取り組んでおられると伺っており、地元の関係者ともども感謝申し上げるところであります。この航路は、主として燃料の高騰や東京─高知の間の貨物輸送の減少などにより毎年四、五億円の赤字を出し、累積では四十数億円の赤字を抱えて経営が厳しく、休止という事態に追い込まれているようであります。一民間企業に対する支援は困難であると推察いたしますが、和歌山県としてこの航路存続のためにどのような対策を考えておられるのか、知事にお伺いしたいと思います。
 以上で、私の一回目の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(阪部菊雄君) ただいまの谷洋一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの「さんふらわあくろしお」の休止問題についてお答えを申し上げます。
 谷議員ご指摘のとおり、「さんふらわあくろしお」の航路は、本県の観光業界を中心にした紀南地域の活性化にとって大変重要なものであると認識をしております。
 この航路につきましては、休止問題が起こりました当初、ことしの二月末をもってやめたいということをブルーハイウェイラインが言っていたわけでございます。私も、こういうことがございましたので、会社に対して航路存続を働きかけ、高知県と協力して働きかけたことによって、ようやくことしの六月末までは継続されることになり、そういう中で何とか地元としての支援策を考えていくということになったわけでございます。
 そしてまた、先ほどご質問の中にもありましたように、高知県のみならず、三重県、東京都も含めた実務者会議を設けて現在協議をしているところでございまして、和歌山県といたしましては、フェリーの利用観光客をふやすための旅行業者への補助や新たな旅行商品の開発とPRを支援策として提案しているところでございます。
 こういうふうにいろいろな措置を進めておりましたところ、去る二月二十六日に突然、株式会社ブルーハイウェイラインの解散、そして航路の再編についての発表があったわけでございます。しかしながら、こういうふうなことではございますけれども、引き続きその親会社である商船三井といったところとも鋭意、地元の市町村と協力しながら働きかけを行い、そしてまた引き続き協議も行って、非常に厳しい状況の中ではございますけれども、県として何とか存続に向けて努力を続けてまいりたいと考えておるところでございます。
○議長(阪部菊雄君) 商工労働部長内田安生君。
  〔内田安生君、登壇〕
○商工労働部長(内田安生君) 体験型観光の推進についてお答えをいたします。
 議員ご指摘のとおり、体験型観光は二十一世紀にふさわしい新しい観光と認識してございます。今後は、南紀熊野体験博での経験を生かし、地域独自の自然、歴史・文化資源を活用し、豊かな知識、経験を持たれている高齢者の方々の力もおかりしながら、農林漁業体験等の体験型観光を積極的に推進し、交流人口の増加を図ってまいりたいと考えてございます。
 現在、和歌山ツーリズム大学を開設し、体験インストラクター等の人材育成に努めており、新年度事業として地域全体で体験型観光のメニュー開発等に取り組むためのわかやま観光オプションメニュー創造会議支援事業に要する予算をお願いしてございます。このほか、インターネットによる情報発信にも努めるなど、体験型観光を今後の地域振興、観光振興の柱の一つとして取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(阪部菊雄君) 企画部長安居 要君。
  〔安居 要君、登壇〕
○企画部長(安居 要君) 南紀熊野体験博を踏まえた取り組みについてお答えいたします。
 議員ご指摘のとおり、南紀熊野体験博を契機といたしまして、各地で住民主体の地域おこしの機運が醸成されたものと認識しており、これらを支援し、定着させ、発展させていくことが肝要と考えております。
 このため、昨年四月、県及び関係十六市町村で南紀熊野二十一協議会を設立し、地域からの要望を踏まえ、地域づくりリーダーの養成、地域情報の発信などの事業を中心に継続的な取り組みを続けているところでございます。
 今後も、地域特性を生かした地元の主体的な地域づくりを積極的に支援してまいりたいと考えてございます。
 以上です。
○議長(阪部菊雄君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 水産業の振興についてお答えいたします。
 まず、今後の漁業振興策についてでございますが、県では国の水産基盤整備計画の骨子を踏まえ、平成十三年度を初年度とする五カ年計画を策定中でございます。この中で、漁場整備の沖合への展開を積極的に推進し、ひき縄釣り漁業を対象とした中層型浮き魚礁設置を初め、まき網漁業や一本釣り漁業を対象とした沖合域の人工礁漁場の造成を考えてございます。また、つくり育てる漁業の一層の推進、漁場環境の保全と創造を重点に、内湾域での藻場造成を実施し、漁場の機能回復を図ってまいります。さらに、市町村等が地先海面で実施する藻場造成事業に対しても助成を行うこととしてございます。
 本県のすぐれた海岸域の自然等の地域資源を活用し、なぎさに親しむ場づくりや体験漁業、朝市等を推進し、都市住民との交流による水産振興について漁業関係者とも協議を図ってまいりたいと考えております。
 次に、密漁の取り締まりと防止策についてでございます。
 イセエビ、アワビ等は本県にとって重要な水産資源の一つであり、各地域の漁業者の権利保護は大変重要であると考えます。これらいそ根資源を含め、漁業取り締まりにつきましては、これまで県下の各漁業協同組合と一体となって、夜間取り締まりや借り上げ船による取り締まりを実施し、平成十一年には十三件、平成十二年には九件を検挙してございます。今後とも、海上保安部や県警と連携を図りながら効果的な取り締まりを実施してまいりたいと存じます。
 一方、流通段階におきましては、卸売市場への立入検査の回数をふやし、採捕期間や体長制限の徹底を図るとともに、広報紙等を通じ、広く県民に対しいそ根資源の重要性と密漁防止の啓発をあわせて行ってまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(阪部菊雄君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 体験学習の実情と今後の方向性についてお答えいたします。
 今日の子供たちは、多くの知識を持っているにもかかわらず、それが生活に根差したものとなっていないことが指摘されております。このため、新学習指導要領では、みずから考え、みずから学ぶ力など、いわゆる生きる力を子供たちに身につけさせるために、体験的な学習や問題解決的な学習を重視しております。とりわけ、このたび新たに設けられた総合的な学習の時間では、自然体験やボランティア活動などの社会体験、見学や調査、生産活動などを積極的に取り入れることとしております。
 本県では、既に多くの学校で農林業や介護の体験、地域の清掃活動、職場での体験などを組み入れた多様な授業展開を行っています。また、東牟婁や有田地方では子供たちにケンケン漁などを体験させる授業を実施している学校もございます。本県は海、山、川など豊かな自然に恵まれ、それぞれの地域でこうした学習が可能であります。今後とも、地域の特色を生かした体験的な学習が一層行われるよう各学校を指導してまいります。
○議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(阪部菊雄君) 以上で、谷洋一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十三分休憩
     ─────────────────────
  午後一時二分再開
○副議長(尾崎要二君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十二番下川俊樹君。
  〔下川俊樹君、登壇〕(拍手)
○下川俊樹君 ただいまお許しをいただきましたので、若干の時間をちょうだいして当局の所信をお伺いしたいと思います。
 本日、午前中の質問で、飯田敬文議員が産業廃棄物の件で当局をただされました。また、谷洋一議員が紀南の体験型観光の問題について当局をただされました。重複をする点が多々あろうかと思いますけれども、お許しを賜りたいと思います。
 二十一世紀を考えるキーワードとして「環境」と「健康」が重要でございます。もちろん、これは地球規模の議論であり、日本全体の課題でもありますが、本県にとっても例外ではございません。
 そこで今回は、和歌山県特に紀南、熊野地方における環境と健康、そして観光の三Kに焦点を当ててみたいと思います。
 紀南地方特に熊野は、一昨年の南紀熊野体験博を契機に、いやしの里熊野として広く全国に知られるところとなり、また高野と熊野三山と参詣道が世界遺産リストに暫定登録されるなど、我が国を代表する自然、歴史、文化地域としての地歩を固めてまいりました。観光をベースとする南紀熊野地域にとって、こうした一連の流れはまことに喜ばしい限りであり、一日も早い正式登録が待たれるところであります。今後の組織体制、スケジュール、予算措置等について、当局の積極的な取り組みを強く求めておきたいと思います。
 今回は、こうした状況の変化、価値観の急激な変化などを背景に、南紀熊野の環境への関心が急速に高まりを見せているその一方において、地域を守り育ててきた住民の日常生活が生み出す環境への影響に対し、これをどう対策するかという視点に立って質問をいたしたいと思います。
 高野・熊野地域は、文化遺産として世界遺産にリストアップされたところでございます。その理由としては、熊野三山とそこに至る参詣道が対象の中心になっていることは論をまちませんが、加えてこれを取り巻く豊かな自然環境も大きな役割を果たしているものと考えます。特に、那智の滝とか原生林といったすぐれた自然環境についても、これを文化的景観と評価し、自然も文化の一部であると位置づけしているところであります。和歌山県の顔となる高野・熊野地域は、これを取り巻くすぐれた自然環境によって支えられ、形成され、成り立っているものと思います。言いかえますならば、本県としては、この地域を世界遺産にふさわしい地域として保存整備に努めていく大きな責任を負ったことになると思います。一方、環境に負荷を与える側から南紀熊野地域の現状を見てみますと、最大の問題は廃棄物対策であり、さらに問題を煮詰めれば、これを処分する最終処分場の確保ということになります。
 産業廃棄物の処理に関し、現在の廃掃法は排出者責任としています。事業者が住民の同意に基づき処分場の設置を行うとされています。しかるに、住民の同意は年々厳しくなり、全国的に見てもその実績は激減しております。県は平成九年、産業廃棄物の越境に関する指導要綱を作成、県外からの持ち込みを原則禁止し、また県内の産廃物は極力県内で処理しようとの方針を打ち出しました。しかしながら、産廃物を持ち出さないための最終処分場は県内に一カ所もございません。これを大阪湾フェニックスに依存をしているのが現状であります。問題はさらに広がります。この大阪湾フェニックスに搬出処分できる市町村は、和歌山市から広川町までの四市十四町一村の十九市町村に限られております。それ以外の三十一の市町村はどうすればいいのでしょうか。やむなく民間業者に処理委託をし、一部は県外で処理されているのが現状であります。
 今、公的な処理場で処分する場合と民間業者に処分を委託する場合の費用を比較するため新宮市の一般廃棄物を例にとると、まず新宮市の焼却場の残灰はすべて毎日十トン車で三重県に搬出され、これに要する予算は平成十二年度で六千三百万円にも上ってございます。一トン当たりの処分料金は一万五千五百円で、フェニックスの四千四百十円に対し三倍強となっています。来年度からは民間委託の処分料が八〇%アップの一トン当たり二万八千円となり、財政負担は市の予算の約一%に当たる一億円を見込んでいるとのことであります。このことは新宮市、田辺市に限らず、東牟婁七町村、それに串本町を加えた九市町村のほとんどが三重県の民間業者に委託されており、その処理費は大きな財政負担となるとともに、大変肩身の狭い思いをしてございます。このような事例を民間に置きかえますと、中小企業の負担が大変大きく、企業の育つ要素がありません。
 質問の第一点は、廃棄物について、同じ県内の市町村でフェニックスに持ち込める地域と持ち込めない地域の格差を是正し、すべての市町村がフェニックスに搬出できるよう対策することが必要と考えるが、知事の考えをお伺いいたしたいと思います。
 質問の第二点は、産業廃棄物の対策についてであります。現在、田辺商工会議所を中心に、紀南地方に県主導の産業廃棄物処理センターの設置を求める動きが大きくなってきていることにかんがみ、この際、県が主体性を持った産廃物処理センターを設置してはどうかということであります。
 私の手元に、田辺市の関係者から悲痛な手紙が届いております。県外の業者が最終処分場の存在を背景に和歌山県にまで進出し、住宅や建築物の取り壊しについて坪当たり五千円も安く見積もって、ただでさえ仕事の少ない紀南地方の解体業者が廃業に追い込まれているのであります。また、その波及として住宅の建てかえ需要も激減していると訴え、最後は、「木村知事の管理型最終処分場建設への一日も早い決断をお待ちしています」と締めくくってございます。
 本年四月からは、リサイクル法が施行されます。趣旨には全く同感でございますが、現実の対応はと考えますとき、このことが余計産廃物の増加につながらなければいいのになと杞憂をめぐらすものであります。山や谷は、ごみで埋まりつつあります。警察が思い切ってエコポリス制度を創設され、取り締まりに万全を期していただいていることはまことに心強いものがあり、その成果に大きな期待をしています。しかし最近、地方紙には山林に捨てられた産廃物の対応をどうすればよいのかと何度も報道されているところであり、絶対的に処理場が不足している現状では、このことがモグラたたきと申しましょうか、イタチごっこにならないようにと、ひたすらこいねがう者の一人であります。
 県民は、廃棄物の処理場の建設に対し、これは社会全体が必要とするコストであり、今や他の行政課題に最も優先するとの意識に来ていると考えます。県主導による廃棄物の最終処分場の設置について、知事の見解をお伺いするものであります。
 悠久たる時間の中で、今、私たちに世界遺産という途方もない宝物をプレゼントしてくれる我がふるさと熊野を、子や孫に、さらに世界の人々に対し、大切に保存し、整備し、引き継いでいくことが、長い歴史の一瞬とも言うべき現代にあって、政治を預かっている私たちの責任ではないでしょうか。歴史に恥じないよう、先人に恥じないよう、子や孫に恥じないよう、これから続く未来に恥じないよう、知事の勇気ある決断を期待いたしたいと思います。
 二つ目の質問は、新宮市民病院──今回「新宮市医療センター」と改名して新設をされた件についてお伺いしたいと思います。
 新築移転中だった新宮市民病院は、おかげさまで平成十三年五月、病床数二百九十五床でオープンすることになりました。環境に恵まれた佐野の地での県立なぎ看護学校との一体的な運用は、市民から大きな期待を持って迎えられております。しかしながら、手放しで喜んでばかりはいられません。と申しますのは、当病院の建設に要した事業費総額百三十一億五千万円のうち、国、県からの補助金二億円、市負担分を除いた残り百二十六億五千万円がすべて企業債によるものであり、この分については今後三十三年にわたって償還することとなっており、財政構造極めて脆弱な新宮市民病院並びに新宮市財政にとって大きな財政負担が待ち受けているからであります。
 一方、新宮市民病院を利用する患者の地域別状況を見てみますと、平成十一年度の資料によりますと、まず入院患者の状況は、新宮市民は四万三百六十二人で全体の四八・四%に対し、那智勝浦町など東牟婁郡からは二万八百三十一人で二五%、三重県からは一万五千七百十二人で一八・九%、奈良県などその他地域からは六千四百八人、七・七%となっており、地元新宮市の利用状況は半分以下であり、逆に新宮市以外の利用が五〇%を上回っているのが現状であります。また外来患者を見てみますと、新宮市民の患者数は九万六千八十一人で全体の五六%、新宮市以外の方々の患者さんが四四%という比率になってございます。このように、新宮市民病院に対する利用状況は和歌山県、三重県、奈良県の三県にまたがり、文字どおり広域の中核病院としての役割を担っていることがわかります。さらに、新しい新宮市民病院の内実を見ますと、お医者さんの数を二十九名から四十五名へと増強し、救急の場合は非番の先生方の協力を得てやりくりをしていく予定のようでございまして、県立医大の支援、協力が強く待たれているところであります。市からの要請があればどう対応されるのか、医科大学長の見解を伺います。
 和歌山県、三重県、奈良県の三県にまたがる熊野地域は、今後ますます高齢化することが予想され、高度医療に対する住民の需要はさらに高まってくることでしょう。熊野は、いやしの里です。そこに住む人々が心豊かに暮らすことができ、このことを実現することが政治を預かる我々の責務ではないかと思います。役割は広域、しかしながら財政負担は新宮市だけ、これが新宮市の悩みであります。これは何も新宮市民病院だけの問題ではなく、近隣地域を見ましても、那智勝浦温泉病院、古座川病院、串本病院、すべて同じ悩みを抱えております。要は、新宮市のような財政基盤の極めて脆弱な自治体における病院経営に関する考え方の問題ということになります。今後ともこうした状況を地方任せのまま放置するのか、あるいは国や県が乗り出して必要な地域に必要な病院を維持、運営していくのかといったことが問われていると思います。知事は、既にこうした事情はよくご存じのことと思います。私の立場からは、今回新宮市に対する財政支援を強くお願いしたいところでありますけれども、紀南地域に対する医療行政全般についての木村知事の考え方をお伺いするのは初めてだと思います。今回はまず第一弾として、以上のような状況を踏まえて、今後の紀南地域の医療行政に対してどう取り組んでいこうとされているのか、知事の基本的な考え方をお伺いするものであります。
 あわせて、救急医療対策をどう進められようとしているのか、福祉保健部長の答弁を求めたいと思います。
 次に、観光についてお伺いをいたしたいと思います。
 知事は、今回の機構改革で新たに観光局を設置されようとしてございます。これまで、観光立県和歌山の名のもとに、特に紀南出身の議員がひとしく、機会あるごとに観光局の設置を強く求めてまいりました。それだけに、念願がかない、ありがたく、改めて厚くお礼を申し上げたいと思います。
 観光は、新たな展開を見せ始めてございます。国立民族学博物館教授石森秀三氏によれば、観光は今、第三期のブームを迎えようとしているとのことであります。ヨーロッパが中心の第一期、アメリカが主導した第二期、そして今、中国が高い経済成長を背景に新たに世界に飛び出そうしている第三期目を迎えているとのことであります。昨年二月、白浜で開催されたWTOの大会におきましても、アジア各国から日本に対する期待、要望がたくさん出されたと聞いてございます。一方、国内の状況を見てみますと、景気の長期にわたる低迷、先行き不安などから、国民の旅行に対する意欲が急速に減退し、また一人当たりの消費額も大きく低下させています。宮崎シーガイアの例を見るまでもなく、地方における施設型観光は大変厳しい時代を迎えていると聞いてございます。
 私は、これからの観光には三つのキーワードがあると思っています。すなわち、「感動」「体験」「自然」の三つであります。
 メディアが発達し、いつでも、どこでも、世界のほとんどの様子が、家庭にいて見たり聞いたりできる時代であります。人々が感動を持って出会い、触れることのできる観光地は、もはや本物中の本物でなければなりません。我が国における施設型観光にあっては、東京ディズニーランドがその代表例と言えます。東京ディズニーランドの成功の秘訣は、大都市近郊にあって、入場者に飽きさせないリニューアル等々の設備にあると言われておりますが、その分析は専門家にお任せをするとして、この関西版とも言うべきユニバーサル・スタジオ・ジャパンがいよいよ三月三十一日に大阪にオープンいたします。景気刺激策としての期待も大きなものがございますが、我々にとっては、この巨大な観光開発による波及効果をどう本県に引き込むかといった点が当面の最重要課題でございまして、観光局にかかる期待は大変大きなものがあろうかと思います。この際、観光局設置という英断をなされた木村知事の本県観光にかける抱負というか、基本的な考え方をお伺いするものであります。
 もう一点は、USJへの来訪者をどう本県に誘致するかといった点であります。USJになくて本県が有する魅力ある資源はと申しますと、まずは温泉であろうと断言できるわけであります。白浜、勝浦、本宮までのルートをUSJの開設に絡んでどう確立できるか、既に手は打ってあると思いますが、具体的にお伺いをしたいと思います。
 次に、体験を取り上げてみたいと思います。南紀熊野体験博の成功にも見られるように、これからの観光は一方的に見たり聞いたりする観光から、みずから参加し体験するというスタイルに急激に変化していくという予感もございます。南紀熊野体験博のメニューから拾ってみましても、自分で備長炭を焼き、その炭でかば焼きをし、コーヒーを入れる、あるいは風鈴をつくる。備長炭を焼く体験が観光資源と、今まで考えたことがあったでしょうか。川では、カヌーやラフティングを楽しむ。アユ釣りに興じる。今まで見るだけであった清流が大きな観光資源になりつつあります。梅をとる。その梅で自分の梅酒をつくる。梅干しを漬ける。地域の温かい人情に支えられた梅もぎ体験が博覧会終了後も上富田町と神戸をつなぎ、神戸に上富田ファンクラブが結成され、これまで比較的観光資源としては弱いとされていた上富田町に人々が訪れてございます。例を挙げれば切りがございませんが、全国的なニュースや話題を聞いておりましても、どうやら新しい観光のキーワードは体験にあるように思います。
 しかしながら、このことの取り組みは、これまで観光を支えてきたシステムを考えれば大変難しい要素をはらんでいます。すなわち従来の観光は、大量輸送、大量消費というシステムによって成り立ってまいりました。団体旅行、宴会などは、その典型であります。これに対して体験型観光は、その単位が個人であり、家族であり、少人数の同好の集まりといった単位であろうと思います。気の合った者同士のキャンプそのものが体験型観光の重要なメニューであります。この流れをとらえ切れないで、空き室の目立つ観光旅館の目の前がキャンプのテントでいっぱいという状況も見受けられます。新しいトレンドに対し、新しい取り組みが必要と考える次第であります。
 三つ目は、自然であります。
 私は、現代を「時間持ち、不安持ちの時代」ととらまえてございます。高齢化が急速に進む現代にあって、元気で積極的な人生を送りたいと願う高齢者の方々が急増してございます。時間はある。健康でいたい。将来の不安に備えて貯金もできるだけ手をつけないで置いておきたい。こうした方々の関心はどこへ行くのでしょうか。時間はかかるが、安くて体によいことを楽しくやりたい。典型的な例は、ウオークです。私は、ウオークブームはしばらく続くと思います。しかしながら、人間というのは欲なものであります。同じ歩くにしても、そこに何らかの意味づけを求めたり、環境を求めたりするものであります。歴史を訪ねたい、大自然の中に身を置きたい、地域の人々と心の交流を図りたい、こうしたことが熊野古道ブームの背景にあるような気がしてなりません。
 一方で、現代は勝ち組と負け組が選別される時代とも言われてございます。過酷なまでの競争やリストラ、あるいはITに代表される先端技術についていけない人々は、心の救いを何に求めるのでしょうか。我が国は、しばらくいやしが必要と言われています。熊野が最も得意とする分野であります。高野・熊野が世界遺産になろうとしている今こそ、思い切ってこの流れを加速することが必要です。しかしながら、先ほども申しましたように、従来の観光地はすぐさま方向転換できるものではありません。行政が思い切った施策を展開することにより、事業者のリスクを軽減し、流れをつくり出していく。このことが熊野の新しい魅力となり、熊野地域の活性化に結びついていくものと確信いたします。
 以上、長々とお話をさせていただきましたが、知事からは、観光局の新設に関連して、今後の観光振興に対する基本的な認識と施策の大要をお聞かせいただければと思います。
 商工労働部長からは、第一点、USJ開設に関連した和歌山の観光戦略、特に南紀地域への観光客誘致に対する取り組みについて、第二点、体験あるいは自然といった新しい観光動向に対する取り組みについて伺うものであります。
 ご清聴ありがとうございました。
○副議長(尾崎要二君) ただいまの下川俊樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 産業廃棄物の処理問題に関する二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、紀南地方のフェニックスへの参画についてでございます。
 紀南地方における一般廃棄物の最終処分の問題について、これが大きな課題となっていることは十分承知しているところでございます。ご指摘のとおり、現状の大阪湾フェニックスの受け入れ対象区域は、県内では有田郡以北の十九市町村に限定されているため、紀北地方と紀南地方の間では処理形態において格差が生じております。このため、広域臨海環境整備センター法に基づく対象区域の変更指定が必要になるなど非常に困難な問題もございますけれども、今後、県議会、関係市町村とともに私も積極的に東京の方へ出向きまして、環境省に対し、受け入れ対象区域の拡大を働きかけてまいりたいと考えております。
 次に、県主導による産業廃棄物最終処分場の設置についてでございます。
 廃棄物処理施設の適正な確保は、廃棄物の適正処理を推進し、県内産業の健全な発展を促すためにも不可欠であると考えております。廃棄物処理施設の確保については、本来事業者において努力すべきものではありますが、最近の情勢を勘案すると一定の公共の関与も必要であると考えておりますので、来年度実施する廃棄物処理計画策定のための実態調査の中で、県内の事業者の実態や他府県における公共関与事例等について把握し、検討をしてまいります。
 この問題は非常に大事だ、早急に何らかの方策を見出していかないといかんという気持ちを肝に銘じて進めていくということを申し述べたいと思います。そうは言っても、この問題についてはいろんな面で非常に難しい問題もございますので、どこの地域にどのような施設が必要かなど、これからいろいろ検討していかないといかん問題については関係者の話を十分お聞きするとともに、県議会ともよく相談をしながら、本当の意味での実現に向けて具体的に検討してまいりたいと考えております。
 次に、紀南地域における医療についてでございます。
 ご指摘のとおり、高度医療面や医師の確保、自治体病院の経営等課題がある中で、このたび新宮市立市民病院が移転整備されることは、高度の診療機能を有する基幹病院として圏域全体の医療供給体制の充実強化にもなり、県としても高く評価しているところでございます。また、県の第三次救急医療の補完的機能を新宮市にお願いしているところでもあり、このたび非常に厳しい財政状況の中ではございますけれども、施設及び設備整備に係る補助金を補正予算案の中で上程させていただいております。医師の派遣につきましても、県立医科大学と連携しながら必要な支援をしてまいりたいと考えております。
 それから、紀南全体の医療、救急医療でございますが、これもまた非常に大事な問題です。和歌山県は県土が非常に広い、山がちであるということから、この問題は非常に重要だと考えております。今、ドクターヘリというものが大分進んできておりますけれども、和歌山県でも真剣にこのドクターヘリの導入ということを検討していきたい、そしてまたしかるべき時期に導入していきたいと考えているところでございます。
 次に、観光についてのご質問でございます。
 実際問題といたしまして、けさの新聞にも、二十一世紀には技術が進み過ぎて人間がそれを制御できなくなるのではないか、そういう意味で人間はいやしを求めていかないといかんし、そういうところに哲学の意味があるんだという記事が載っておりましたけれども、こういう時代にこそ和歌山県の今の姿というものが生かされてくるのではないかという気持ちを新たにしたところでございます。そういう中で、観光ということについても、ご指摘にあったように、二十一世紀のキーワードは「環境」「健康」「観光」ということで私も認識しているところでございまして、このすべてが和歌山県には備わっているのではないかと考えております。
 和歌山も、今までいろいろな観光施策をしてきましたし、それも成果を上げてきたと思いますけれども、これをブラッシュアップして、より発展させることはもちろんのこと、和歌山の美しい海、山、川、そして全国に誇れる農林水産業等を活用した観光客のニーズに合った体験型観光を本県の新しい観光の柱として、地域の皆さんと一緒になって育成発展に努め、全国に先駆けた観光振興に取り組んでまいりたいと考えております。
 今後は、和歌山のすばらしさをITの活用、そしてまた三月の末にオープンするUSJとの組み合わせ、世界遺産登録活動、こういうふうなあらゆるものを活用しながら国内外からの観光客の誘致に積極的に努めていくことを考えております。
 以上、基本的な考え方を申し上げましたけれども、このようなことを推進するために観光局を設置し、現在の一課体制から二課体制にして組織の充実強化を図り、和歌山の魅力を国内、世界に向けて発信していきたい、名実ともに和歌山のリーディング産業は観光にあるということを明らかにしていきたいと考えております。
 なお、昨日、NHKの方から発表がありました。十月からの朝の連続ドラマで、新宮や本宮を中心とする熊野地域が大阪と並んで舞台になるということです。先般、私が和歌山にお世話になっておりましたときも、ちょうど徳川吉宗を大河ドラマでやって、身の震えるような感動を体験したところでございますけれども、今回また新宮や本宮を中心とする熊野が連続ドラマに取り上げられるということについては、地域的に非常にうれしいという気持ちを持っておりますし、これをまた一つの核として和歌山の観光振興、特に紀南の観光振興を進めていかなければならないと考えております。
 以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 福祉保健部長白井保世君。
  〔白井保世君、登壇〕
○福祉保健部長(白井保世君) ご質問の紀南地域、特に新宮保健医療圏における救急医療対策についてでございますが、紀南地域は急激な高齢化、山間僻地などの状況や医療資源の偏在などが見られるため、傷病者に対する迅速かつ適切な医療を行うための救急医療体制の整備に重点的に取り組んでいく必要があると考えてございます。このため、移転整備された新宮市立市民病院を中心として、救急告示病院、病院群輪番制参加病院と連携し、広域的な取り組みをお願いしてまいりたいと考えてございます。
 また、重篤救急患者が発生した場合には防災ヘリコプターによる病院間搬送を実施しておりますが、紀南地域に対する救急医療の充実強化を図るため、先ほど知事からもお答えいたしましたように、防災ヘリの利活用とあわせてドクターヘリの導入に向け、現場への救急活動に伴う諸課題についても検討を行ってまいりたいと考えてございます。
○副議長(尾崎要二君) 商工労働部長内田安生君。
  〔内田安生君、登壇〕
○商工労働部長(内田安生君) ユニバーサル・スタジオ・ジャパンと和歌山の観光戦略についてお答えをいたします。
 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、初年度の入場者が八百万人、そのうち宿泊客が二百七十万人と予想されており、現在、この国内外の入場者を本県へ誘致するため、大手旅行業者提携旅館、ホテル連盟とともに具体的な旅行商品の開発を進めてございます。今後は、熊野地方の豊かな自然や文化、白浜、勝浦などの温泉を活用し、大手旅行エージェントとのタイアップや積極的なPRにより観光客の誘致に努めてまいります。
 次いで、新しい観光動向に対する取り組みについてでございます。議員ご指摘のとおり、最近の観光客のニーズは従来の「見る観光」から「する観光」へと変わりつつあり、自分で何かをして、精神的、知的な満足を得ることを求めてございます。また旅行の形態も、団体から個人やグループへと移行しつつございます。このような状況に対応するには、本県の豊かな自然や歴史・文化資源を活用した農林漁業体験やアウトドアスポーツ体験といった体験型観光の推進が重要であり、その体験を通じて地域の人々との心の交流や地域に対する理解が生まれてくると考えております。
 今後は、体験型観光を推進する人材の育成や現代人が求めている「自然」「健康」「環境」といったテーマのメニューの開発等に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 医科大学学長山本博之君。
  〔山本博之君、登壇〕
○医科大学学長(山本博之君) 地域医療における県立医大の対応につきましてお答えいたします。
 地域医療への貢献は本学の大きな使命でございまして、地域医療機関などへの医師の派遣につきましては、できる限りご要望におこたえできるよう努めているところでございます。本学といたしましては、この使命が十分に果たせるように、学内に渉外委員会、関連病院委員会を常置いたしまして、県内の病院からの医師の派遣要請に積極的に対応しているところでございます。
 議員ご質問の新宮市立市民病院につきましては、本年五月の開院に向けた新宮市からのご要請に対しまして、意思の疎通を十分に図りながら、本学としてできる限り協力してまいりたいと考えてございます。今後とも、県内医療機関からの医師派遣要請など、県民の皆さんの保健医療に対するニーズにおこたえできるよう努めてまいる考えでございます。
 以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十二番下川俊樹君。
○下川俊樹君 二点、要望させていただきたいと思います。
 救急医療の件でありますけれども、現在救急医療を取り扱っている病院が和歌山にしかありません。木村知事、就任早々、大変困難な問題をお願いするわけでありますけれども、今度、田辺圏域の中に国立病院も改築・新築をされてできるわけです。県も応分の出資をするならば、田辺を中心とした地域に救急医療二十四時間の体制が可能かとも思います。ぜひ紀南地域に、場所をどことは限定いたしませんけれども、一時間以内で人命を救える、救急治療のできる病院が必要だということをお訴えしておきたいと思います。
 そして、第二点目の産業廃棄物の最終処理場について、本当に力強い前向きの答弁、感激をいたしております。
 ただ、知事から今答弁いただいた来年度予算ということでありますけれども、九月に補正予算を組めることもあります。そして、現状を打破するために、ぜひ一日も早く調査に着手していただいて、着工を一日も早くしていただけるように、心からお願いを申し上げたいと思います。
 岩手県や鳥取県のように先進県もあります。そして、県民がこぞってその県の積極的な姿勢に評価をしてございます。ぜひ、和歌山県も産業廃棄物で先進県の仲間だと言われるように、一日も早いお取り組みを心からお願いをして、終わります。
○副議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で下川俊樹君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十番野見山 海君。
  〔野見山 海君、登壇〕(拍手)
○野見山 海君 通告に従いまして、三点質問をさせていただきます。
 最初に、知事の政治姿勢についてであります。
 二十一世紀の幕あけがスタートいたしました。国民は、政治の安定、景気回復、社会保障の充実、雇用の創出を思い、そして国民がひとしく安心して過ごすことができる社会を願いながら新世紀を迎えたことと思います。
 しかし、バブル経済崩壊後の経済の停滞と政治の混迷が今なお続き、新たな展望が見えてこない状況ではないでしょうか。しかも、一部の国会議員によるKSD中小企業経営者福祉事業団との癒着による賃貸料の負担、ものつくり大学構想を有利にする国会質問への見返り、さらに参議院選挙での名簿順位を上位にするためKSD会員に相談もなく入党させるとともに、党費を丸抱えさせたり、また外交機密費の乱用やハワイ沖で起きた実習船えひめ丸沈没事故発生時の対応のまずさがあり、首相自身の危機管理意識が欠けていたことで、国民の怒りは頂点に達していると思います。こうした国会議員による私利私欲、また政府の気の緩みなど、永田町政治に対する国民の不信は深まるばかりであります。もう露骨な利益誘導型政治を繰り返すことなく、国民のための政治を心がけてくれる政治家、そして国内外から信頼される政治家が求められていると思います。
 また、景気の回復の兆しが実感として一向に見えてこない中で、企業倒産、合併、縮小、リストラなどによって現在の失業率は四・九%に達し、失業者は全国で三百十七万人と史上最高を記録しております。一方、高校卒業者の就職内定率は全国で七二%、本県では六三・九%、大学卒業者では七八・二%、短大卒業の女子では四八・五%と大変厳しい状況にあり、これからの日本を背負っていく若者の雇用創出が強く求められていると思います。こうした出来事でのことしのスタートであるだけに、政治も経済も先行き不透明であります。今、強力な日本丸のかじ取りが求められております。
 さて本県においては、二十一世紀を目前に、関西国際空港の開港やJRの新大阪乗り入れ、南紀白浜空港のジェット化や高速道路の南伸、県内二時間圏道路整備など、交通機関等の利便性が飛躍的に向上いたしました。また、世界リゾート博や一昨年の南紀熊野体験博が成功するなど、和歌山県は全国で一躍有名になったのではないでしょうか。今後とも、本県は全国に誇れる海岸美や自然美に恵まれた数々の温泉、歴史・文化に彩られた多くの観光資源を生かし、「いやしの和歌山県」を全国に発信すれば、さらなる発展が期待できると思います。
 さて、平成十三年度は木村知事として初めての予算編成であり、県民は県勢の一層の発展と飛躍へのスタートとして、大いに期待しているところであります。知事にとりましても、新しい世紀に県民に夢を与え、本県が活力みなぎる力強い県となるための新たなスタートとして大変重要な年度であると位置づけられております。
 そこで、二十一世紀のスタートに当たり、和歌山県政のトップリーダーとして、知事が考えられている二十一世紀の県政の夢はどのようなものなのか、またそれをどう実現させていくのか、お伺いいたします。
 次に、旧南紀白浜空港跡地利用対策についてでございます。
 旧南紀白浜空港の利用計画については、この議場において多くの議員の皆さんが提言をなされてきました。だれもが、約四十七ヘクタールに及ぶ広大な用地を一日も早く有効活用できるよう何らかの対策が必要であると思っていることでしょう。平成七年三月の南紀白浜空港跡地利用懇話会の報告書の中で、一、紀南地方全体の活性化に資する、二、新空港の利用促進につながる相乗効果が期待できること、三、民間活力の導入を基本方向とする、などが示されております。これらを受けて航空工学系大学基本計画検討委員会が組織され、幾たびかの会議、種々の論議の末、まとめられました。検討委員会の報告書では、結びに「基本計画案に基づく事業化の是非は、県民及び町当局の判断にゆだねられるもの、広域的な地域の発展、活性化への貢献や事業効率の高さを真剣かつ積極的に勘案し、適正な決断を下されんことを期待するものである」と、駒井則彦委員長から報告されております。
 これを受けて、県庁内でも賛否両論があった中で、二十一世紀の人づくり教育が重要ととらえられ、平成十二年度に工科系大学関連の予算が計上されたことで、紀南地域の活性化、紀南浮上につながると大きな期待をし、完成を心待ちにしておりました。木村知事就任後も、だれもがそのまま事業を継続していただけるものと考えておりました。しかし、知事の和歌山工科大学整備事業の凍結宣言は、動き出したらとまらない公共事業をとめることの勇気を評価する人もいるでしょうが、紀南の活性化の切り札の一つとしていた紀南県民の期待を大きく裏切る結果となりました。南紀熊野体験博の成功と、それに引き続く高野山と一体となった熊野地域の世界遺産への登録活動に進展が見られますが、紀南の県民が待望する活性化の切り札が今のところ見当たりません。こうしたことから、旧白浜空港跡地利用には紀南の活性化のシンボル的な事業として地元の期待は大きいものがあります。
 そこで、今後、和歌山工科大学整備事業にかわるべき事業を行うつもりがあるのか、あるとすればそのお考えをお聞きしたいと思います。
 続きまして、梅の問題について質問させていただきます。
 昭和六十年ごろから始まった梅生育不良が続く中、梅農家の方々は不安を持ちながら梅づくりに精を出しています。梅の生育不良問題については、西口前知事時代から県の最重要課題の一つとして位置づけられ、試験研究機関を中心に積極的な取り組みが行われてきたと思います。しかし、いまだ原因究明まで至っておりません。木村知事におかれても、橋本市のダイオキシン対策と同様、梅生育不良原因究明は県政の最重要課題としてとらえられていると思います。知事は、就任されるやすぐに、現地において梅農家の方々とひざを交えて対話をしていただくなど、精力的な取り組みをしていただきました。しかしながら、依然として生育不良が拡大している厳しい現実の中で、これまで地元関係者の皆さんから、一日も早く梅の専門研究機関をぜひ地元に設置してほしいという強い要望がたびたび出されました。本会議においても、この問題が数多く取り上げられたところであります。
 こうした中で、知事が去る二月二十一日に地元市町村長の同席のもと、梅専門研究機関を南部川村に設置することを発表されたことは、知事の梅生育不良問題の積極的な取り組みのあらわれだと思います。今回、厳しい財政状況の中で梅専門研究機関の設置を挙げられたことは梅問題の重要性を再認識するものであり、一日も早く問題解決が望まれるところであります。これまで、暖地園芸センターを中心に原因の早期解明と対策の確立に向けて全力を傾注されてきましたが、梅専門研究機関の設置を機会に、今後スタッフの充実と大気汚染も含めた試験研究や樹勢回復対策にいかに取り組まれるのか、お伺いします。
 次に、ケシキスイという害虫の対策についてであります。
 今では少なくなりましたが、以前にはカメムシが異常発生して農産物の被害が多くあったことがありました。しかし今度は、地方紙でも取り上げられましたように、ケシキスイという虫の問題が新たに出てきました。県としても早く対策を講じる必要があると思いますが、いかがお考えでしょうか。
 次に、輸入梅に関してであります。
 国際化の進展とともに、野菜を初めとする農産物の輸入量が増加していることは、スーパーの売り場に並ぶ外国産を見れば明らかであります。本県特産の梅を見ると、現在の梅の輸入は従来の台湾から中国産に大きくシフトしております。中国産の占める割合は、日本の輸入量全体の九〇%近くに至っており、特に梅加工業者が多い本県では、日本の輸入量全体の七〇%以上を輸入しております。このように増加する中国産は、本県の梅生産者にとって脅威になるのではないかと思います。こうした状況の中で、いかにして和歌山ブランドを守っていくのか。本県の梅産業全体のさらなる発展に向けた今後の取り組みも、あわせてお伺いしたいと思います。
 最後に、観光行政についてお伺いいたします。
 本県はこれまで観光立県として発展してまいりましたが、長引く不況の中、本県への観光客はここ数年、停滞ないし減少傾向にあります。手元にある県観光課の観光客動態調査報告書によりますと、平成元年に二千五百万人台だった観光客は平成七年に三千万人台まで順調にふえ、その後、平成八年、九年は三千万人台で推移していましたが、平成十年は二千九百万人台に減少しております。平成十一年は南紀熊野体験博があって再び増加しておりますが、大幅な観光客の伸びには至っておりません。体験博後、淡路花博の影響を受けた平成十二年の動向が気になりますが、さらに本年三月末、大阪市此花区にオープン予定のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の影響が大変気になるところであります。今、県内の観光地では、多くの観光客が大阪に流れてしまうのではないかという不安が広がっているところであります。
 そこで、観光客誘致にどう取り組むのか、観光行政のあり方、方向性についてお伺いしたいと思います。
 知事は、大阪市にUSJがオープンするので、この来訪者をターゲットに和歌山県への観光客の誘致に努めるとともに、アジア方面を中心とした国際的観光客の誘致についても積極的に取り組みたいと述べられ、このUSJのオープンを積極的に利用しながら、攻めの観光行政を展開されようとしております。こうした姿勢を評価し、大いに支持したいと思います。
 二月二十日の産経新聞によりますと、USJ対策として、県は観光課を観光局に格上げし、またUSJ観光と紀南地方の温泉をセットにしたツアープランの提案を旅行代理店に依頼していると報じられております。しかし、こうしたすばらしいプランを計画倒れにさせないためにも、和歌山県をどうPRするかが大切になってくると思います。現在、本県を訪れる七割近い方々は、県内ないし近畿圏内からであります。恐らく、この多くは海水浴、釣り、ゴルフなどのスポーツやアドベンチャーワールド、和歌山マリーナシティなどのレジャー型の観光であろうかと考えますが、遠方から本県に来てくれる観光客は、また別の目的があろうかと思います。それは、他の地域では得られない本県だけが持つ特異性、独自性を求めるために来られるわけであります。そうしたニーズに対応するために、地域の特性を最大限活用した誘致活動を展開する必要があろうかと思います。
 既に、熊野古道が高野山とともに国の世界遺産暫定リストに登録されたと聞いております。登録にはまだまだ多くの課題も残されていると思いますが、手続が順調に進めば二〇〇四年ごろ正式にユネスコの世界遺産に登録される見込みと、新聞で報道されております。私は、現時点における紀伊山地の霊場と参詣道の世界遺産登録に向けての活動が本県の宣伝材料になり得ると考えております。したがって、世界遺産に向けてのさまざまなイベントを企画し、常に情報を発信し続けることが大変重要であるかと思います。知事は、今年度、特に高野・熊野の世界遺産登録の機運を盛り上げることに力を入れると述べられておりますが、このことと本県のPRをしっかり結びつける必要があろうかと思います。
 そこで、県として観光客の誘致に向けて本県のPRをどのように考えておられるのか、知事のご見解をお聞きしたいと思います。
 以上、一回目の質問を終わります。
○副議長(尾崎要二君) ただいまの野見山海君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、二十一世紀の県政の夢についてということでございます。
 私は、本県は豊かな自然と恵まれた歴史、文化資源や大都市圏に近接していること、また関西国際空港のアクセスのよさなど、他府県に比べても決して引けをとらない、すぐれたポテンシャルを持った地域であると考えております。先日も青森市の雪おろしをテレビでやっておりましたけれども、和歌山はこういうふうな雪もあるわけじゃなく本当に豊かな恵まれた地域であり、このポテンシャルをこれから生かしていくことが私の夢でございます。この地域ポテンシャルを生かして、本県を二十一世紀の先進県にしていきたいことでございますけれども、そのために二十一世紀は、「いやし」ということが大分、人口に膾炙してきたわけでございますが、この「いやし」を一つのキーワードとして、本県ならではの魅力ある観光振興、関空や南紀白浜空港の活用、高速道路等の整備による内外との交流促進、IT等を活用した農林水産業や中小企業の活性化と新しい産業の育成などによる安心と活力みなぎる、そしてまた自然に恵まれた和歌山の創造、これに全力で取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
 次に白浜空港の跡地でございますけれども、この跡地は紀南地方全体の貴重な財産であり、県民の皆様からもこの活用についてさまざまなご提言をいただいているところでございます。
 この利用方法につきましては、民間活力の導入など幅広く検討し、紀南地域の活性化に努めてまいりたいと考えております。このため、関係者による検討の場の設置など、これから積極的に取り組んでいきたいと思っております。
 次に、観光行政でございます。
 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの開業により、国内はもとより、東アジアを中心とした海外からも多くの方々が近畿地方に来訪されることが予想されているところでございます。このUSJの開業を契機として、近畿の他府県とも広域的な連携を図りながらそれらの方々を本県への観光客として誘導する、今までにない新しい取り組みを行っていきたいと思っております。今までは、近畿の他府県はすべてライバルという形で行ってきたわけでございますが、こういうUSJができたことから、ライバルであってもある程度は協力し合って、いいものを出し合うという形の観光を考えていかないと、USJに来たからすぐ和歌山へ来るというわけにいかないと思いますので、そのあたりにも十分注意して観光行政を進めていきたいと考えております。国内向けとしては、旅行会社と旅館、ホテルとタイアップした商品の造成、海外向けには、韓国や台湾での観光展や国際チャーター便を用いたセールス活動を行うなど、USJと本県観光を組み合わせた積極的な誘致活動を展開していきたいと考えております。
 また、自然、歴史、文化豊かな本県の特性を生かした、これからの観光産業の主流となると考えられる体験型観光を地域の皆さんと一体となって取り組み、わかやま観光オプションメニュー創造会議を立ち上げたいと考えております。これは、従来、一つのスポット的な観光地にお客さんがとどまりがちだったのを和歌山県下全域に広げて、その中で体験的なものも組み合わせることによって、和歌山県全体が観光基地であるという形のものにしていく、それが和歌山県の旧来の観光地の振興にも大きくつながるであろうという考えから行うものでございます。
 次に、言うまでもなく高野・熊野は和歌山県の貴重な財産でございます。世界遺産登録活動は、高野・熊野のすばらしさを全国、世界に発信する絶好の機会であり、その雰囲気を堪能していただくためのイベントを実施していくほか、インターネットも活用してPRに努めていきたい、そしてまた、登録ということが最終の目標ではなくて、それに至る過程で和歌山をどんな形で世間に発信していくかということにより大きな意義を見出しているということを申し上げておきます。
 以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 梅の問題に関するご質問にお答えをいたします。
 まず梅研究所の役割、機能、研究課題についてでございます。
 梅の専門研究機関の設置につきましては、南部川村東本庄地区に決定し、去る二月二十一日に知事から公表したところでございまして、生育不良の原因解明と地域に密着した技術開発の拠点として、暖地園芸センターのウメ部を中心に、普及との連携を図りながら、研究体制の充実強化に努めてまいりたいと考えてございます。
 試験研究の取り組みにつきましては、予定地内の既存園を有効に活用し、新年度からすぐに研究に着手したいと考えてございまして、梅の木の栄養状態を簡易に診断する技術の開発などに取り組むこととしてございます。
 また、一部生産農家から要望のある大気環境面の調査研究につきましては、研究機関の予定地を含め、県下十一地点で降下ばいじん量の測定を行うとともに、関西電力に申し入れているばいじんの成分分析を試料の提供があり次第実施してまいりたいと考えてございます。
 次に産地支援対策といたしましては、地元の協力のもと設置している総合実証園の成果を現地指導に生かす中で、改植や土づくりを行う日本一うめ産地支援事業を積極的に推進するとともに、生育不良によって経営に著しい支障を受けた生産者に対しうめ対策緊急特別利子補給事業を引き続き実施することとしてございます。今後とも、地元との連携・交流を密にして対策技術の推進を図るとともに、国や大学の専門家の指導、協力を得ながら試験研究に取り組み、この問題の早期解決に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、梅のケシキスイ防除対策についてでございます。
 去る一月十九日に果樹園芸試験場を初め普及センター等の関係者でケシキスイ対策会議を開催し、その被害状況と対策について検討したところであります。これまでの調査では、ケシキスイ類の発生は山畑や山林に近い園に多いこと、高温時での繁殖力が旺盛であること、ネット収穫であっても落下後二、三日経過すると侵入が見られることがわかっておりますが、土壌中に生息していることなどから、いまだ不明な点も多くございます。こうしたことから、ケシキスイ類の当面の防除対策としては、梅が地面に接しないように収穫ネットを設置し、落下後の収穫は一日一回以上行うとともに、漬け込み前の品質管理の徹底に努めるよう、JA等と連携を図りながら生産者への指導を強化してまいりたいと考えております。また、地元関係者の協力を得ながら、果樹園芸試験場が中心となって早急に現地試験等を実施するとともに、今後、総合的な防除技術の確立に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、輸入梅に対する今後の対応についてであります。
 近年、中国の梅については、安価であり輸入量も増加していることから、産地にとって大きな脅威となりつつあります。このような状況に対応するためには、最近の安全や本物を求める消費者ニーズを踏まえ、和歌山県産として品質面での有利性を最大限に発揮していくことが重要であると考えております。県では、平成三年より良質の県産原料を使った梅干しをふるさと認証食品として認定し、県産ブランドの向上に努めてきておりまして、これまで七十三業者の三百五十四商品の認定を行い、消費者から高い信頼を得ているところであります。
 また、本県の梅産業関係者から要望しておりました梅干しの原料原産地表示については、このたび農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、いわゆるJAS法の改正により本年十月から実施される運びとなっておりまして、これに伴い、加工業者等を対象とした地元説明会を本年一月に開催するなど、この制度の周知徹底に努めているところであります。
 今後、このような取り組みをより強化するとともに、家庭における青梅の用途開発やITを利用したふるさと和歌山わいわい市場を活用し、消費者から信頼される和歌山ブランドの確立に努め、和歌山の梅産業のさらなる振興に積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十番野見山 海君。
○野見山 海君 答弁ありがとうございました。
 知事、一件だけお伺いしたいと思います。
 工科大学整備事業について、正直言って、紀南の皆さん方はいまだに大きな期待をされております。今でも、凍結ということになっております。そして、この凍結の解除に向けて、工科大学実現に向けての動きが今紀南の地域であるんですよ。凍結ということだから。
 だから、もういっそのこと、中止なら中止としていく方が紀南の皆さん方にはっきりわかるし、そのことによって白浜空港の利用についてこれから積極的に取り組んでいくということが一番大事ではないかと思います。
 その辺、知事のお考えをお聞きしたいと思います。
○副議長(尾崎要二君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの白浜の工科大学のことでございますけれども、凍結ということの中でその後のいろいろな手続を進めてきております。そのことで、どういうことかということをご理解いただきたいと思います。
 そしてまた、この跡地につきましては、先ほども申し上げましたように非常に大事な土地でございます。そしてまた、議員の方々からもいろいろご提言をいただいておりますし、これから理事者側と議会が車の両輪として、この地域をどういうふうにしていくのかということについていろいろご相談をしながら利活用の方法を考えていきたいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
○副議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(尾崎要二君) 以上で、野見山海君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時二十二分散会

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