平成12年12月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(木下秀男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十三番木下秀男君。
  〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 議長のお許しをいただきましたので質問に入りたいと思いますが、戦争に明け暮れたと表現される二十世紀もあと半月余りとなりまして、各新聞にいろいろと百年を振り返った記事、またテレビ等でも古い戦争映画等が放映されております。ここ数日前の新聞に二十世紀の百大ニュースが出ておりましたが、百の大ニュースの一番は広島、長崎原爆の投下と第二次世界大戦の終結、二番目は人類が初めて月に着陸したこと、三番目は日本の真珠湾攻撃と米国の第二次大戦参戦、このように世界各地の大ニュースをまとめたコラムがありました。我々の先人たちが今までいろいろと取り組んできて、人類、人間社会においてあってはならないこと、そういうものを二十世紀中に片づけて、二十一世紀にはそういうことのない新しい人間社会を築くべきだということもされておりますが、二十世紀に解決できずして二十一世紀に持ち込んで、それが果たして解決に導かれるかどうかという懸念もあります。特に和歌山県におきましては、ここ数年来、この議場でたび重ねて議論されております基幹産業である梅の立ち枯れの問題、そして戦後、輸入品と言われるような形でその撲滅に取り組んでまいりました松くい虫の被害、これらが何の解決も見出せないままに二十一世紀に持ち込もうとされております。そういう意味で私は、私の住まいする美浜町を中心に松くい虫の対策に苦慮している地元町村の意を体して、煙樹ケ浜松くい虫被害対策について質問をいたします。
 私がこの件を取り上げるのは、二回目になります。この樹林は、面積約八十ヘクタール、総延長四・五キロメートル、最大幅五百メートルに及ぶ広大なスケールで、白砂青松の海岸美は東洋一と言われてございます。本県を代表する松林である美浜町煙樹ケ浜の松くい虫被害対策について、私の一考察を含めてお尋ねいたします。
 ご承知のとおり、煙樹ケ浜の松林は、千六百十九年(元和五年)、初代紀州藩主となった徳川頼宣公が、背後にある日高平野の水田や住民の居住地を潮害や風害から守るために、この松林の保護対策として禁伐おとどめ山として指定するとともに、進んで松の植林を奨励し、以来三百八十年の長きにわたり、住民の方々を初め関係する皆さん方のご尽力によって立派に守り続けてきたものであります。しかしながら、昭和三十三年ごろから本県南部の新宮市付近に異常発生した松くい虫の被害は、その後猛威を振るい、県下で四万八千六百六十立方メートルという莫大な被害を受けたとされております。
 煙樹ケ浜においても、昭和二十一年に一部発生した松くい虫被害は三十年代に入って顕著となり、さらに五十年代に急増する中で、特に五十四年から五十七年の四カ年には毎年千本を超える甚大な被害をもたらすことになりました。このため、これでは煙樹ケ浜の松林は全滅してしまうのではないかという危機感から、薬剤の空中散布や伐倒駆除に加え、保安林改良事業等々の事業実施による懸命の防除対策によって被害を最小限に食いとめ、一時はほぼ収束状態を保っていたかのように思えました。私は、自宅が近くということもあって、毎日と言っていいほど煙樹ケ浜周辺を見ております。その後、平成九年度に空中散布から噴霧機による地上散布に切りかえたころから被害は再び増加傾向にあるように見受けられ、調査結果を聞いてみますと、平成十年の七号台風による樹勢の衰弱の影響もあって、十年度には千二百三十三本、十一年度には千九百本と、過去最高水準の被害を記録してございます。
 こうした状況の中で、関係者の方々はいち早くその対策に取り組まれ、平成十一年度からは国が実施する特別調査の指定を受けて被害防止対策の抜本的な検討を行い、マツノマダラカミキリの発生源となる隣接する西山周辺の樹種転換や薬剤の増量、さらに樹高の高い松に散布するスプリンクラーの設置など新たな対策が講じられ、私の見る限りでは、昨年に比べ、今のところ被害は減少したと思います。
 過日十一月二十九日、林野庁森林総合研究所の吉田成章森林生物部生物管理課長が特別調査の中間発表として来庁されました。その発表によりますと、今年度の松枯れ状況は、前年同期に比べて半減した、西山からの松くい虫の飛び込み対策、枯れ松の早期発見と徹底した伐倒駆除、薬剤散布など各種対策の効果があった、今後五年間で被害木を十本に持っていける、それができれば六年目からはゼロに近づけられると明言され、長年松くい虫対策に取り組んできた町当局初め関係者、住民ともども、この朗報で安堵したものであります。が、一方では、今月九日に「松枯れと大気汚染、松くい虫、松枯れの原因を探る」と題した広島大学生物圏科学研究科教授の中根周歩先生の講演を拝聴してまいりましたが、林野庁を中心とするマツノザイセンチュウ説とは全く相反する説明でありました。しかしながら、今後の被害につきましては決して予断を許さない状況にあると思います。
 私は佐賀県の虹ノ松原の状況について聞き取り調査いたしましたが、そのことも含めて考えてみますと、広大な煙樹ケ浜は場所によって松の生えている状況が異なっています。そこで、松が密生しているところ、あるいは雑木やヤマモモの木が多く生えているところ、さらには落葉が多く堆積しているところというように、地域区分をして対策を講じていく必要があるのではと思うのであります。松の密植されているところは間伐による樹勢の回復、松以外の樹林が多いところは枝払いと松苗木の植栽、落葉(腐葉土)の堆積しているところは一部除去し、松の共生菌である菌根菌──根元にある菌の発達をよくしてやることも大切ではなかろうかと思うのであります。また、二十一世紀は環境の時代とも言われ、地域住民の森林への関心が高まる中で、ボランティアによる林内の清掃、焼却処分などを進めることも必要かと考えますが、次の五項目について農林水産部長の答弁をお願いいたします。
 一、空中散布でありますが、これは海側を中心に空中散布を復活するべきではないか。
 二、松林内及び周辺への松の補植徹底。
 三、スプリンクラーの増設。
 四、日高川左岸の松枯れの伐倒であります。今、右側にある西山という、美浜町と日高町の領域で約一万本を伐倒する計画でありますが、左岸の御坊市、通称・北浜と申しますが、この周辺はほとんど松は枯れてございますけれども、まだ残っております。そこを切らずして、右側だけを切って左側を放置することでは不十分になるんではなかろうか、こういうことで日高側左岸の伐倒も新しく計画の中に取り入れていただきたい。
 五、落葉除去・焼却、これは根をかいて、それを完全に焼却してしまうことです。
 この五点について、部長の答弁を求めるものであります。
 次に、市町村合併の推進についてであります。
 この議会の冒頭、我が会派の小川幹事長が市町村合併の口火を切られまして、この市町村合併を取り上げるのは私で四人目になると思いますが、県議会においてもこの議論を起こすことが市町村に対しても大きく影響するであろうと思いましたので、私もあえてこの市町村合併の推進を取り上げたわけでございます。
 本論に入る前に、和歌山県行政組織の今日までの変遷を見ますと、一八七一年(明治四年)に廃藩置県の制度が設置されまして、その後、一八七九年(明治十二年)、和歌山県の郡区市町村編成が行われておりますが、その当時の和歌山県の町村数は千六百三十九町村──この当時は海岸にある浦というのも勘定の中に入れた千六百三十九町村浦が誕生しております。一九四七年(昭和二十二年)に新生日本の地方自治法が制定され、二百四市町村が編成されました。約七分の一と縮小合併されてございます。その後、一九六一年(昭和三十六年)、新市町村建設促進法施行──一部失効になってございますが──には五十二市町村、設定当初から約四分の一に合併されて今日に至っております。
 森内閣が決定した行政改革大綱には、市町村合併推進が盛り込まれてございます。政府、地方の借金が合わせて六百四十五兆円と言われる厳しい財政状況で、少子高齢化社会の住民ニーズにこたえるためには市町村の行財政基盤の充実が不可欠であり、合併は避けて通れないと言われております。最近の新聞報道等を見ますと、この大綱に政府部内に市町村合併支援本部(仮称)を設置したり、住民投票制度を導入するなどして市町村数を千ぐらいの数値目標に設置したことは、合併の後押しをするということであると思います。戦後五十有余年を経た現在におきまして、予想し得なかった社会構造の大変革と地域住民のニーズの変化により、来るべき二十一世紀にはそのテンポがまだまだ速まるものと思います。このままの行政形態では、住民の福祉増進、地域の振興整備などができなくなることは必定と思考するものであります。市町村合併促進の立場から質問をいたします。
 本年四月の高齢者に対する介護保険の導入を初め、橋本市のダイオキシン対策を契機とするごみ処理問題など、昨今、市町村は新たな行政需要への対応が求められており、単独の団体では処理できないことから、広域的に対応しているのが現状であります。今後も行政需要はますます多様化、高度化するものと予想され、このように単独の団体では処理することが困難な事務も増加するものと考えられます。また、市町村の行政能力の観点から見ますと、市町村の職員数は一般的に人口規模が多ければ職員数も多くなります。ところが、市町村が処理する事務は規模に関係なくすべての自治体が共通して行わなければならないものがたくさんあるわけであります。当然、団体の規模が小さければ一人の担当者が多くの種類の事務を処理している状況にあり、それに加えて新たな事務処理に当たることが必要となるわけであります。このような状況の中で、特に小規模な団体では、今後の行政需要に的確に対応し、住民の負託にこたえることができるのでしょうか。私は、無理であると思います。
 次に、市町村が設置している公共施設の状況についてであります。
 例えば、ある団体が文化施設を建設すると、隣接する団体が競うように類似の施設を建設するということが多く見られます。地域住民の利便の向上に寄与していると言えなくもありませんけれども、モータリゼーションが発達した今日、狭い地域内での類似施設の重複設置、いわゆるフルセット方式でありますが、これは行政の効率という観点から見ていかがなものかと考えるのであります。さらに、県下市町村の財政状況を見ますと、地方債の借入残高が非常に増大し、平成十一年度末の地方債残高は五千二百二十六億円となっており、歳出決算額四千八百七十億円を上回る額となっております。また、経常収支比率も八三・四%と高い水準にあり、財政構造の硬直化が進行し、市町村財政は厳しいものとなっております。
 このような市町村行財政の現状を見ますと、私は市町村合併を推進し、行政体制を強化するとともに、財政の効率化を図らなければならないと考えるものであります。市町村は、現状のままでは立ち行かなくなるとの認識が広がりつつあり、ある首長も、市町村の合併は正面から取り組まなければならない課題と言っております。
 過日十二月六日、知事の大先輩である元自治省事務次官で現在は財団法人地方自治研究機構理事長の石原信雄氏が和歌山にお越しになって特別講演をされ、その折の記者会見で、地方交付税は減らさざるを得ない中で、これまでの地方行政サービスを続けるには市町村合併を進めるしかないと話されております。また十二月七日には、お隣の大阪府の太田知事が、大阪府の市町村合併要綱を作成し、これから四十四町村を十四町村に合併を促進するため学習会、シンポジウムを開催すると発表されました。また、和歌山県中部の田辺市を中心に、近隣十カ町村の有志議員の集まりである「広域行政を考える議員の会」の皆さん方が、田辺市周辺組合会議に広域合併問題の早急検討を要請するとも報道されております。
 現在の市町村合併特例法において、合併特例債や地方交付税の算定の特例など各種の手厚い財政支援が設けられております。私は、現在の市町村合併特例法の法期限内にこれらの制度を有効に活用し、地域整備を行いながら市町村合併を進めることが地域にとって有益であると考えております。
 そこで、知事にお尋ねいたします。
 知事は、自治省で幾多の行政経験を積まれ、地方行財政に精通され、和歌山県の将来を負託されたわけでありますが、市町村合併の推進を県政の重要課題と位置づけて取り組んでいかれることが必要であると考えるのでありますけれども、知事のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 以上で、私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(阪部菊雄君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 市町村合併についてのご質問にお答えを申し上げます。
 市町村合併は、市町村や住民の方々が自主的に判断されることが基本でございます。しかしながら、本県におきましては、昭和の大合併によって、おおむね現在の市町村の区域となって以来四十年余りが経過し、その間ご指摘のように、行政需要の高度化、多様化、地方分権の推進、国、地方を通じた厳しい財政状況など、市町村行政を取り巻く状況は大きく変化をしてきております。二十一世紀を迎える今、このような時代の潮流を考えますと、本県におきましても市町村の合併を推進していくことが非常に重要な課題であると考えております。
 現行の市町村合併特例法におきましては、市町村の合併を支援するための種々の財政支援制度などが設けられておりますが、その法期限まで残すところ四年余りとなっております。私といたしましては、これらのことを踏まえ、市町村合併推進要綱を早期に策定し、合併の機運の醸成を図るとともに、合併に向けた取り組みを支援するなど対応を行ってまいりたいと考えております。
○議長(阪部菊雄君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 煙樹ケ浜の松くい虫被害対策についてでございます。
 この松林は、潮の害や風の害を防ぐとともに、保健休養機能等、地域住民の生活環境保全に大きな役割を果たしており、本県を代表する重要な松林であると認識してございます。
 松枯れの原因は、マツノマダラカミキリを媒体としたマツノザイセンチュウによるものと既に認められており、その防除対策として農薬取締法に基づき登録されて三十五年の使用実績があり、世界八十カ国で登録、使用された安全性の高い薬剤の散布を行ってまいりました。さらに平成十一年度には、国の地域指定を受けて噴霧機による地上散布の濃密実施や固定式によるスプリンクラー散布など、徹底した防除を進めてまいりました。その結果、平成十年度、十一年度に比べ、現時点での被害の発生は減少してございます。
 議員ご質問の第一点目の空中散布についてでございますが、平成九年、国の防除実施基準により、人家、公共施設等に隣接する周辺松林での空中散布ができなくなっており、海辺側の散布につきましても人家や公共施設等への影響が少なからず懸念されます。そのため、従来の地上散布を中心とした濃密防除に加え、ヘリコプターを活用した被害木の確認により、徹底した伐倒駆除、及び西山周辺森林の樹種転換等を実施してまいります。
 二点目の松林への補植でございますが、松の植生密度が低下している箇所については、これまで同様、保安林改良事業等により補植し、機能回復を図ってまいります。
 三点目のスプリンクラーの増設でございますが、今後継続してその効果を確認し、対応してまいります。
 四点目の日高川左岸の枯れ松の伐倒駆除についてでございますが、煙樹ケ浜松林への影響も考えらますことから、伐倒駆除の徹底を図ってまいる所存でございます。
 五点目の落葉除去・焼却でございますが、林内環境整備のため、林地の状況に応じた地域区分を行い、落ち葉の除去・焼却、枝払い、下草刈りなど、住民の方々の協力を得て積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 今後とも、煙樹ケ浜松林保護のため、ボランティア組織等とも連携し、地域住民と行政が一体となって取り組み、より一層被害の減少に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十三番木下秀男君。
○木下秀男君 来年のことを言えば鬼が笑うと言いますけれども、これは現実にあることでございますが、来年早々には中央省庁が合併されます。そして、特殊法人も大きく見直され、改革されました。この次は地方交付税制のあり方を見直そうという方向で論議するようでありますが、地方交付税は市町村にとりましては財源の柱であります。今知事も答弁されましたが、合併は市町村議会の議決が必要であって、自主的なものであるのは当然であります。しかし、今度新たに住民投票制度が導入されれば、住民が合併の是非を判断するのに必要な自分の住まいする自治体の行財政情報をわかりやすく公開すべきである。自分のところがどれくらい借金してあるか、税収がどれくらいあるか、そういう町や村の基本的なものを公開することによって住民の判断を仰ぐ。こういう意味から、県として市町村を指導するべきであろうと思うのでありますが、この点について知事のご見解を伺います。
 もう一点、農林水産部長。私の言うヘリコプターによる薬剤散布というのは、大型のヘリコプターではなしに、今は無人で操舵するリモコン式の請負会社もある、またその愛好者でボランティアで奉仕してやろうという団体もある、こういうことでございますから、特に私が海岸べりと申し上げましたのは、人家から離れたところはゾーンをつくっても結構ですから、空中散布を取り入れていただきたい。これは地元民の強い願いでありますので、この点は要望にしておきます。
○議長(阪部菊雄君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまのご質問にもありましたように、国、地方を通じる借金が六百四十五兆円に上っているという現在の状況を勘案しますと、ただいまの地方交付税制度がこのままの形でずっといくということは非常に難しいことは一般的に言われているところでございます。そうなってまいりますと、当然のことながら和歌山県下の市町村の状況なり運営といったものは非常に厳しい状況になってくると思います。
 市町村合併の中で、今後住民投票制度が検討されておりますけれども、そうなったときに、住民の方々が、その地域の行財政の状況がどういうふうになっているかということに対する十全の知識を持った上で合併が是か非かを判断していただくことは当然のことでございますので、私どもといたしましては、市町村に対しまして住民の方々にその市町村の財政状況等々、十分な情報を提供することを求めてまいりたいと考えております。
○議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(阪部菊雄君) 以上で、木下秀男君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時十四分休憩
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